(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099401
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】液位測定方法及び液位測定装置
(51)【国際特許分類】
G01F 23/22 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
G01F23/22 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003322
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】金吉 樹
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AB02
2F014AB04
2F014CB01
2F014GA01
(57)【要約】
【課題】容器内の液位を精度良く測定する。
【解決手段】容器内の液体に浸される振動子であり、振動方向に対して垂直な面が長方形をなす前記振動子を有する液位測定装置を使用して実行される液位測定方法であって、加振器により前記振動子を加振するステップと、前記振動子の加振を停止したときに前記振動子に発生する振動の振幅が予め定められたレベルまで減衰する時間を計時するステップと、減衰時間と前記液体の液位との相関情報に基づき前記レベルまで減衰する時間に対応する前記液位を算出するステップと、を含む、液位測定方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の液体に浸される振動子であり、振動方向に対して垂直な面が長方形をなす前記振動子を有する液位測定装置を使用して実行される液位測定方法であって、
加振器により前記振動子を加振するステップと、
前記振動子の加振を停止したときに前記振動子に発生する振動の振幅が予め定められたレベルまで減衰する時間を計時するステップと、
減衰時間と前記液体の液位との相関情報に基づき前記レベルまで減衰する時間に対応する前記液位を算出するステップと、
を含む、液位測定方法。
【請求項2】
前記液位を算出するステップは、前記減衰時間をTとし、前記液体の液位をlとしたとき、以下の式(a)が示す前記相関情報に基づき前記レベルまで減衰する時間に対応する前記液位を算出する、
【数13】
なお、Iは前記振動子の慣性モーメント、Lは前記振動子の支点から前記振動子の先端までの距離であり、k
c、n、I、Lは定数である、
請求項1に記載の液位測定方法。
【請求項3】
減衰時間と前記液体の液位との測定値に基づき減衰時間と前記液体の液位との相関情報を予め記憶部に記憶するステップを含み、
前記液位を算出するステップは、前記記憶部を参照して、前記相関情報に基づき前記レベルまで減衰する時間に対応する前記液位を算出する、
請求項1に記載の液位測定方法。
【請求項4】
液体の種類ごとの減衰時間と前記液体の液位との測定値に基づき液体の種類ごとの前記相関情報を予め記憶部に記憶するステップと、
前記液位を算出するステップは、前記記憶部に記憶した前記相関情報のうち、前記容器内の液体の種類に応じた前記相関情報に基づき前記レベルまで減衰する時間に対応する前記液位を算出する、
請求項3に記載の液位測定方法。
【請求項5】
前記振動子の加振により前記振動子に発生する振動の振幅が第1のレベルで安定したとき、前記加振器による前記振動子の加振を停止し、
前記減衰時間を計時するステップは、前記振動の振幅が前記第1のレベルから前記第1のレベルよりも小さい第2のレベルまで減衰する時間を計時する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の液位測定方法。
【請求項6】
前記第2のレベルは、前記第1のレベルの1/2~1/10である、
請求項5に記載の液位測定方法。
【請求項7】
算出した前記液位が予め設定された閾値以下の場合、前記容器に前記液体を補充する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の液位測定方法。
【請求項8】
容器内の液体に浸される振動子であり、振動方向に対して垂直な面が長方形をなす前記振動子と、
前記振動子を加振する加振器と、
加振により振動する前記振動子の振幅を測定する測定部と、
前記液体の液位を算出する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記振動子を加振するステップと、
前記振動子の加振を停止したときに前記振動子に発生する振動の振幅が予め定められたレベルまで減衰する時間を計時するステップと、
減衰時間と前記液体の液位との相関情報に基づき前記レベルまで減衰する時間に対応する前記液位を算出するステップと、
を制御する、液位測定装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記液位を算出するステップにおいて、前記減衰時間をTとし、前記液体の液位をlとしたとき、以下の式(a)が示す前記相関情報に基づき前記レベルまで減衰する時間に対応する前記液位を算出する、
【数13】
なお、Iは前記振動子の慣性モーメント、Lは前記振動子の支点から前記振動子の先端までの距離、k
c、n、I、Lは定数である、
請求項8に記載の液位測定装置。
【請求項10】
前記制御装置は、
減衰時間と前記液体の液位との測定値に基づき減衰時間と前記液体の液位との相関情報を予め記憶部に記憶するステップを制御し、
前記液位を算出するステップにおいて、前記記憶部を参照して、前記相関情報に基づき前記レベルまで減衰する時間に対応する前記液位を算出する、
請求項8に記載の液位測定装置。
【請求項11】
前記液位測定装置は、前記容器を有する気化器に設けられる、
請求項8~10のいずれか一項に記載の液位測定装置。
【請求項12】
前記気化器は、配管を介して基板処理装置に接続され、前記気化器内の前記液体を気化させて前記基板処理装置に供給する、
請求項11に記載の液位測定装置。
【請求項13】
前記振動子は、前記容器と同一材料で形成されている、
請求項8~10のいずれか一項に記載の液位測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液位測定方法及び液位測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、容器内の粉粒体若しくは液体が容器内の振動子を押圧している場合としていない場合とによって生じる電気信号の振幅の差異を検出することにより、粉粒体若しくは液体のレベルが所定のレベルに達したか否かを判定する検出器を提案する。
【0003】
特許文献2は、振動子を用いて液位を測定する液位計を提案する。液位計は、棒の横振動を利用したI字形音片のハウジングから露出している検出部を有し、粉粒体が検出部に接触し、拘束すると振動が減衰して停止し、粉粒体が除かれると再び振動することから、I字形音片の振動を拘束するもののレベルを検出する。
【0004】
特許文献3は、貯留された液体中に液面を通して一部が挿入され、該液体の液位に応じて自由振動周波数が変化する振動子と、振動子に振動を付与する振動機構とを有する液位計を提案する。液位計は、振動の付与に伴う振動子の自由振動の周波数を検出する周波数検出手段と、周波数検出手段の出力に基づいて液位を算出し表示する手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52-12860号公報
【特許文献2】特開昭54-37782号公報
【特許文献3】特開昭60-202311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、容器内の液位を精度良く測定することができる液位測定方法及び液位測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一の態様によれば、容器内の液体に浸される振動子であり、振動方向に対して垂直な面が長方形をなす前記振動子を有する液位測定装置を使用して実行される液位測定方法であって、加振器により前記振動子を加振するステップと、前記振動子の加振を停止したときに前記振動子に発生する振動の振幅が予め定められたレベルまで減衰する時間を計時するステップと、減衰時間と前記液体の液位との相関情報に基づき前記レベルまで減衰する時間に対応する前記液位を算出するステップと、を含む、液位測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
一の側面によれば、容器内の液位を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る液位測定装置が固定された容器の一例を示す図。
【
図2】一実施形態に係る液位測定方法の一例を示すフローチャート。
【
図3】一実施形態に係る液位測定装置が有する振動子に発生する振動の振幅の一例を示す図。
【
図5】一実施形態に係る気化器及び成膜装置の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
本明細書において平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわないほどのずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直、円、一致には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直、略円、略一致が含まれてもよい。
【0012】
[はじめに]
気化器等で使用するタンク(容器)内に貯留された液体の液面(液位)を測定する技術の一例として、フロートスイッチがある。また、振動を用いて液位を測定する技術の一例として、アクチュエータによって振動子に振動を与え、その後加振を停止した際の振動減衰の有無によって振動子に液体ないしは粉体が触れているかどうかを検知するレベルスイッチがある。
【0013】
フロートスイッチは、浮力を発生させるためにある程度の体積を持つフロートを液体に浮かせるため、タンク内に収容可能な液量が小さくなってしまう。また、フロートの上下運動によるスイッチのオン・オフによって液位を測定するため、一フロートにつき一つの特定の液位を上回るか下回るかといった情報しか検知することができない。フロートの数を増やすことで多点の液位を検知可能だが、その分、タンク内に収容可能な液量が更に減少してしまう。また、液面の測定が離散点になる。
【0014】
レベルスイッチは、一つの振動子への液体ないしは粉体の接触の有無で一つの液位を測定するため、複数の液位を測定するためには複数の振動子を用いる必要がある。
【0015】
これに対して、本実施形態では、タンク内に収容可能な液量の減少を回避しつつ、液位を振動子の長さ分、リニア(連続的)に測定が可能な液位測定装置を提供する。これにより、容器110内の液位をより精度良く測定することができる。
【0016】
[液位測定装置]
図1を参照して、一実施形態に係る液位測定装置100について説明する。
図1は、一実施形態に係る液位測定装置100が固定された容器110の一例を示す図である。
【0017】
容器110内には、液体が貯留されている。容器110は、ステンレス等、腐食性の液体への耐性がある材料で形成されている。例えば、容器110は気化器等のタンクである。
【0018】
液位測定装置100は、容器110内の液体に浸される振動子101と加振器102と振動センサ103と制御装置150とを有する。振動子101は、板状部材であり、ある程度の硬さと柔軟性を有し、振動方向Dに振動する。振動子101は、振動方向Dの厚さが薄く、振動方向Dに対して垂直な面が長方形をなす。振動子101は、ステンレス等、腐食性の液体への耐性がある材料で形成され、例えば容器110と同一材料であってもよい。振動子101は、板状に限らず棒状であってもよいが、振動し易い厚さと形状を有することが好ましい。
【0019】
加振器102は、振動子101の上端に取り付けられ、振動子101を加振する。振動子101の初期の振動は振動子101の固有振動数に近い値であってもよいが、これに限らない。また、加振器102による加振により振動子101に発生する振動の振幅は、振動子101が容器110に接触せず、かつ、容器110内の液面が概ね変化しない範囲に制御される。
【0020】
振動センサ103は、振動子101の上端付近に取り付けられる。振動センサ103は、加振により振動子101に発生する振動の振幅を測定する。振動センサ103は、振動する振動子101の振幅を測定する測定部の一例である。
【0021】
液位測定装置100は、容器110に固定される。例えば、振動子101は、容器110の蓋体110aに空けられた穴(図示せず)から容器110内へ差し込まれ、一部が容器110の液体に浸るように配置される。加振器102は蓋体110aの外部に配置され、これにより、振動子101の上端にて振動子101が蓋体110aに固定される。
【0022】
振動センサ103は、蓋体110aの直下に配置され、容器110内にて振動子101の運動(振動)を検知するように使用される。振動センサ103は、液体による腐食から保護されるように構成されている。なお、加振器102は、液体による腐食から保護されるように構成されていれば、容器110内に配置してもよい。
【0023】
制御装置150は、本開示において後述される液位測定方法の種々のステップを実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。一実施形態において、制御装置150は、図示しない処理部、記憶部及び通信インターフェースを含んでもよい。制御装置150は、例えばコンピュータ、プロセッサ、コントローラにより実現され、容器110内の液体の液位を算出する演算装置である。処理部は、記憶部からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部に格納され、処理部によって記憶部から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェースに接続されている通信回線であってもよい。処理部は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェースは、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介して液位測定装置100との間で通信してもよい。通信インターフェースは、無線又は有線により液位測定装置100との間で通信してもよい。
【0024】
制御装置150は、加振器102に加振を開始させる制御信号を送信する。制御装置150は、振動センサ103が測定した、振動する振動子101の振幅を取得する。制御装置150は、振動センサ103が測定した振幅が安定したとき、加振器102に加振を停止させる制御信号を送信する。
【0025】
振動センサ103は、加振器102が加振を停止したときの振動子101に発生する振動の振幅を測定する。制御装置150は、加振を停止したときに振動センサ103が測定した振幅を第1のレベルとしたときに、第1のレベルに対して振動子101の振幅が予め定められた第2のレベルまで減衰する時間を計時する。例えば、制御装置150は、加振を停止したときに振動センサ103が測定した第1のレベルの振動子101の振幅に対してその振幅が第1のレベルの1/2~1/10である第2のレベルになるまでの減衰時間を計時してもよい。ただし、これに限らず、第2のレベルは、第1のレベルよりも小さければよい。
【0026】
図1に示すように、液体に浸っている振動子101の振動方向Dと垂直な方向の面積Sによって振動子101の運動に対する抵抗が変化する。例えば、液体中に浸っている振動子101の面積Sが大きくなるほど、振動子101が振動する際の抵抗値が増え、減衰時間が短くなる。したがって、液位が高くなれば振動子101が液体に浸かっている深さ(面積S)が大きくなり、液体から受ける抵抗値が増大し、振動子101に発生する振動の振幅の減衰時間が短くなると言う相関関係が成り立つ。このため、測定したい液体の粘性、振動子101の復元力が一定であれば、制御装置150は、減衰時間は液位のみによって変化するため、減衰時間と液位との相関情報に基づき、振動する振動子101の振幅の減衰時間から液位を計算することができる。
【0027】
後述する解析モデルを用いて導出した減衰時間と液位との相関式によって減衰時間と液位との相関を示してもよい。その相関式は記憶部に記憶してもよい。減衰時間と液位との相関は、減衰時間と液位との関係を複数測定しておき、測定結果を制御装置150内の記憶部や制御装置150に接続される記憶部に予め記憶してもよい。減衰時間と液位との関係を液体の種類毎に測定し、液体の種類毎の測定結果を制御装置150内の記憶部等に予め記憶してもよい。
【0028】
制御装置150は、相関式に基づき、計時した減衰時間から液位を算出してもよい。また、制御装置150は、記憶部を参照して、減衰時間と液位との相関情報に基づき、計時した減衰時間から液位を算出してもよい。
【0029】
液体の種類ごとの減衰時間と液体の液位との測定値に基づき液体の種類ごとの減衰時間と液位と相関情報を予め記憶部に記憶している場合には、制御装置150は、記憶部に記憶した相関情報のうち、容器110内の液体の種類に応じた相関情報を取得する。そして、取得した相関情報に基づき減衰時間に対応する液位を算出してもよい。
【0030】
[液位測定方法]
次に、
図2及び
図3を参照して、一実施形態に係る液位測定方法について説明する。
図2は、一実施形態に係る液位測定方法の一例を示すフローチャートである。
図3は、一実施形態に係る液位測定装置100が有する振動子101に発生する振動の振幅の一例を示す図である。
【0031】
図2に示す液位測定方法が開始されると、ステップS1において、制御装置150は、加振器102により振動子101を加振する。制御装置150は、例えば、加振器102を動作させるモータ等のアクチュエータを制御することにより加振器102による加振を開始する。
【0032】
次に、ステップS3において、制御装置150は、振動センサ103が測定した、振動子101に発生する振動の振幅を取得し、振動子101の振動が安定したかを判定する。例えば、制御装置150は、振動子101に発生する振動の振幅の変動が予め設定された許容値以内になったとき、振動子101の振動が安定したと判定してもよい。制御装置150は、振動子101に発生する振動の振幅が予め設定された値になったとき、振動子101の振動が安定したと判定してもよい。
【0033】
ステップS3において、制御装置150は、振動子101の振動が安定したと判定するまで、ステップS1及びS3を繰り返し、これにより、振動子101の振動が安定するまで待機する。
【0034】
振動子101の振動が安定したと判定すると、ステップS5に進み、制御装置150は、アクチュエータを停止して加振器102による振動子101の加振を停止する。制御装置150は、例えば、振動子101の加振により振動子101に発生する振動の振幅が第1のレベルで安定したとき、加振器102による振動子101の加振を停止する。振動センサ103は振動子101の加振を停止したときの、振動している振動子101の振幅を測定する。制御装置150は、振動子101の加振を停止したときに振動センサ103が測定した振動子101の振幅を取得する。
【0035】
図3に示す振動子101に発生する振動の振幅の一例では、横軸が時間を示し、縦軸が振動子に発生する振動の振幅を示す。時刻t
0より前に振動子101の振動が振幅Aで安定したため、時刻t
0において、振動子101に対する加振器102による加振が停止されている。振幅Aは、第1のレベルの振幅の一例である。
【0036】
図2に戻り、ステップS7において、制御装置150は、振動子101の加振を停止したときの振動子101の振幅に対して、振幅が1/nに減衰する減衰時間Tを計時する。
図3では、時刻t
0から時刻t
1までの時間Tの間に振幅が1/nに減衰している。
【0037】
1/nは、第1のレベルの振幅よりも小さい第2のレベルの振幅を示す。1/nは、例えば第1のレベルの振幅の1/4に設定されてもよい。このようにして、制御装置150は、振動子101の加振を停止したときの振動子101に発生する振動の振幅が第1のレベルから第2のレベルまで減衰する時間を計時する。
【0038】
次に、ステップS9において、制御装置150は、減衰時間と液位との相関情報(例えば相関式)に基づき、計時した減衰時間に対応する液位を算出する。
【0039】
次に、ステップS11において、制御装置150は、算出した液位が予め設定された閾値以下であるかを判定する。制御装置150は、算出した液位が予め設定された閾値以下であると判定した場合、容器110に液体を補充し、本処理を終了する。制御装置150は、算出した液位が予め設定された閾値よりも大きいと判定した場合、液体を補充することなく本処理を終了する。
【0040】
本実施形態に係る液位測定方法によれば、振動子101の振幅を一定(例えば
図3の振幅A)にすることによって、振動がある振幅(例えば
図3の振幅A/n)に減衰するまでの時間は、振動子101が液から受ける抗力のみによって定まる値とみなすことができる。振動子101が液体に浸かっている面積が大きいほど減衰力が大きくなり、減衰時間が短くなる。よって、減衰力に対応する減衰時間から液位を計算することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る液位測定方法によれば、容器110で使用されているフロートスイッチのフロートと比較した場合、振動子101の長手方向(液面と垂直な方向)の長さ分、リニア(直線的)又は細かい刻み幅で液位の測定が可能である。
【0042】
また、フロートスイッチのフロートと比較した場合、液位測定装置100が占める容積の大幅な減少による、容器110内に収容可能な液体の増加を図ることができる。振動子101の材質は自由に変更可能である。よって、腐食性の液体等においても耐食性のある容器110と同一材料を振動子101、加振器102及び振動センサ103に使用することが好ましい。これにより、液体から気化したガスが振動子101、加振器102及び振動センサ103に触れても液位測定が可能である。
図1に示すように、液位測定装置100を配置した容器110を気化器等の機器に利用した場合に機器の小型化が可能である。
【0043】
なお、
図1では、液位測定装置100は蓋体110aに固定され、振動子101は蓋体110aから下垂し、容器110の底面に振れないようにして容器110の底面付近まで延在する。このようにして液位測定装置100を蓋体110aに固定すると、振動センサ103を液面から遠ざけ易く、振動センサ103の保護が容易になる。また、振動子101を加振させたときの振動の振幅が容器110の底面付近で最も大きくなるため、振動の減衰の効果も大きくなり、液位測定装置100の液位測定の精度を高めることができる。
【0044】
しかし、液位測定装置100は、容器110の上部に固定することに限らない。液位測定装置100は、容器110からの液体の漏れを回避しつつ、容器110の底面側から振動子101を蓋体110aの下面付近まで延在させてもよい。この場合、振動子101の先端は、容器110の上部に位置し、振動センサ103は振動子101の先端に取り付けられ、加振器102は底部に配置される。よって、容器110の底面付近から蓋体110aの下面付近まで、高さ方向により広い範囲の液位測定が可能となる。また、この場合、液位測定装置100の設置が容易になる。
【0045】
[解析モデル]
振動子101が容器110内の液体に浸っている面積によって、振動子101の運動に対する減衰力(抗力)が変化する。液体に浸っている振動子101の面積は長方形である。したがって、前述したように、液位が高くなれば振動子101の浸っている深さ(面積)が大きくなり、液体から受ける減衰力(抗力)が増大し、振動子101の減衰時間が短くなるという関係が成り立つ。このため、測定したい液体の粘性、振動子の復元力が一定であれば減衰時間は液位のみによって変化するため、減衰時間から液位を計算することが可能である。
【0046】
解析モデルにおいて行った減衰時間から液位を計算するための線形方程式(相関式)の導出について説明する。
図4は、一実施形態に係る解析モデルを示す図である。線形方程式の導出に使用する解析モデルは、
図4(a)に示すように、振動子101が液体に浸かった状態で、
図4(b)に示すように回転運動(振動)するモデルである。Lは、振動子101を固定した固定点101aから振動子101の先端までの長さを示し、lは、振動子101が液に浸かっている長さを示す。振動子101の先端は容器110の底面に接触していないので、容器110内の液体の実際の液位は本明細書中で算出される液位lに、振動子101の先端から容器110の底面までの距離を加算した値となる。
【0047】
解析モデルでは、振動子101が固定点101aを支点として回転運動(振動)する。振動子101と液面に対して垂直方向の軸とのなす角をθとする。なお、θは振動子101による振動の程度を示し、
図4(b)に示す角度よりも微少である。解析モデルに対して振動させるもの(
図1では、加振器102)に対する復元力を、
図4(b)ではバネ105として図示し、可視化して示す。
【0048】
図4に示す解析モデルにおける各条件を次のように仮定する。振動子101の回転運動(振動)の慣性モーメントをIとし、復元力を-kθとする。復元力は、振動子101がθ変化したときに復元しようとする力であり、
図4(b)では実際は存在しないバネ105として可視化して示している。
【0049】
抗力によるモーメントを、粘性抵抗(液体の粘度と速度によって決まる値)を仮定して
【0050】
【数1】
とする。つまり、抗力によるモーメントは、θの微分値と定数-cとの乗算値である。なお、重力、空気抵抗は無視する。
【0051】
(振幅の導出)
以上の解析モデルにおける振動子101の運動方程式は、(1)式により表すことができる。
【0052】
【数2】
(1)式の運動方程式の初期条件は、以下である。
【0053】
【0054】
【数4】
とおけば、(1)式は次の(2)式のように表される。
なお、c
cは臨界粘性減衰係数、ζは減衰比、cは前述した定数(粘性項の定数)、ω
0は固有角振動数である。
【0055】
【数5】
ζが0よりも大きく1よりも小さい場合、(2)式は減衰振動となり、時間tを用いて次式のように表される。c
c=2√Ik、及びζ=c/c
cから、減衰比は、ζ=c/2√Ikで表される。ここで、c、I、kは定数であり、
図4で示している系の設計の仕方で値が決まる。つまり、減衰比ζは、
図4で示している系の設計の仕方で決まる値であり、設計段階で寸法や復元率を調整することにより、0<ζ<1の条件を満たすことができる。
【0056】
【数6】
解析モデルでは、振動子101の運動状態は、振動子101の振幅のみに注目すればよい。このため、振幅a(t)の項を取り出すと、(3)式で示すことができる。
【0057】
【数7】
(3)式は、tが増えることにより、振幅a(t)は指数関数的に減衰していくことを示している。
【0058】
(減衰時間の導出)
振幅a(t)が、AからA/nまで減衰するのにかかる時間T(
図3参照)を算出する。つまり、時刻t
0のときの振幅a(0)がAであり、時刻t
1のときの振幅a(T)がA/nであるとき、a(0)はna(T)と等しい。このとき、式(3)から次式が成り立つ。
【0059】
【数8】
これを変形すると、減衰時間Tを求める(4)式が導出される。
【0060】
【数9】
(抗力によるモーメント)
水中の振動子101が受ける抗力を求める。粘性抵抗のみを考えれば、振動子101の単位長さ当たりに受ける抗力は、速度vと定数k
cとを用いて-k
cvと表すことができる。
【0061】
このとき、固定点101aから距離xの振動子101の部分が受ける抗力による支点周りのモーメントは、次式で表せる。
【0062】
【数10】
これにより、液体に浸かっている振動子101の部分全体の受けるモーメントは、L中のl部分が浸っているから、前式をL-lからLまで積分して算出する。
【0063】
【0064】
【数12】
(液位lの導出)
(4)式及び(5)式より、振動子101の液に浸かっている長さlと減衰時間Tとの関係は次の(a)式で示される。
【0065】
【数13】
(a)式におけるk
cは、振動子101の断面形状、液体の粘度により決まる値であり、定数である。また、n、I、Lはすべて定数である。よって、(a)式の左辺が単調増加関数であることから、減衰時間Tが分かればlは一意に定まる。
【0066】
上記解析モデルでは、粘性抵抗を仮定し、振動子101の単位長さ当たりに受ける抗力を求めたが、液体中を動く物体に働く抗力は、速度二乗抵抗が一般的である。速度二乗抵抗の場合、運動方程式は、次式で示される。
【0067】
【数14】
このように、実際のモデルはより複雑な非線形の方程式になると思われるが、液位増加によって減衰力が増加するという関係は崩れない。よって、(a)式のような相関式を用いることができる。
【0068】
[基板処理装置]
以上に説明した液位測定装置100は、様々な機器に取り付けられ、使用され得る。次に、液位測定装置100を気化器180に取り付けて使用する例について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、一実施形態に係る気化器180及び成膜装置200の一例を示す図である。
図5に示す成膜装置200は、基板処理装置の一例である。
【0069】
成膜装置200は、チャンバ201、排気装置202、シャワーヘッド206、およびステージ207を有する。本実施形態において、成膜装置200は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)装置である。
【0070】
チャンバ201の上部には、シャワーヘッド206が設けられている。チャンバ201には、シャワーヘッド206を介してガスが供給される。シャワーヘッド206には、液体の成膜原料を収容する原料供給源203が、配管204を介して接続されている。
【0071】
原料供給源203から供給された成膜原料は、配管204に介在する気化器180の容器110内に貯留される。気化器180では、液体の成膜原料を容器110に設置されたヒータ(図示せず)で温めて気化させる。気化器180によって気化された原料ガスは、配管204を介して、シャワーヘッド206に導入される。
【0072】
シャワーヘッド206の下面には、図示しない多数の吐出孔が形成されている。シャワーヘッド206は、配管204を介して導入された原料ガスをチャンバ201内にシャワー状に吐出する。排気装置202は、チャンバ201内のガスを排気する。チャンバ201内は、排気装置202によって予め定められた圧力の真空雰囲気に制御される。排気装置202は、制御装置150によって制御される。
【0073】
チャンバ201内には、基板Wが載せられるステージ207が設けられている。基板Wは、ステージ207に支持される。ステージ207には、基板Wの温度を調整するためのヒータ(図示せず)が設けられている。制御装置150は、ヒータを制御することにより、基板Wの上面が原料ガスの成膜に適した温度となるように、基板Wの温度を制御する。
【0074】
このような成膜装置200を用いて、基板Wの表面において原料ガスによる成膜を行うことができる。なお、成膜装置200では、原料ガスとともに反応ガスを供給し、基板W上に所望膜を形成することができる。
【0075】
気化器180が有する容器110には、液位測定装置100が取り付けられている。液位測定装置100は容器110内の原料の液位を測定する。例えば、液位が閾値以下になったら、液体の成膜原料を自動で容器110内に補充することができる。
【0076】
ただし、液位測定装置100の使用方法は、これに限らない。例えば、液位測定装置100は、液体供給装置に使用することができる。容器自体を加熱する方式では気化しきれないような蒸気圧の低い原料では、液体供給装置の容器中にストローのような配管を指して容器内の空間にN2ガス又はArガスを供給する。これにより、容器内の上部空間に圧力をかけることによって、容器内の液体を押し出す。押し出された液体は、ヒータ等の加熱部を有する配管等に供給され、加熱により気化され得る。液位測定装置100は液体供給装置の液位を測定する。液位が閾値以下になったら、自動で液体を容器110内に補充することができる。
【0077】
以上に説明したように、本実施形態の液位測定方法及び液位測定装置100によれば、容器内の液位をリニア(連続的)に精度良く測定することができる。
【0078】
今回開示された実施形態に係る液位測定方法及び液位測定装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0079】
なお、本明細書に開示の基板処理装置は、一枚ずつ基板を処理する枚葉装置、複数枚の基板を一括処理するバッチ装置及びセミバッチ装置のいずれにも適用できる。本明細書に開示の基板処理装置は、例えば、成膜処理、エッチング処理等の基板処理を行う。本明細書に開示の基板処理装置は、プラズマを用いて基板処理を行う装置であってもよく、プラズマを用いずに基板処理を行う装置であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
100 液位測定装置
101 振動子
102 加振器
103 振動センサ
110 容器
150 制御装置
180 気化器
200 成膜装置