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特開2024-99913エッチング装置、およびエッチング方法
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  • 特開-エッチング装置、およびエッチング方法 図1
  • 特開-エッチング装置、およびエッチング方法 図2
  • 特開-エッチング装置、およびエッチング方法 図3
  • 特開-エッチング装置、およびエッチング方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099913
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】エッチング装置、およびエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
H01L21/302 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003537
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(71)【出願人】
【識別番号】515315440
【氏名又は名称】アルバック コリア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ULVAC KOREA,LTD.
【住所又は居所原語表記】5,Hansan-Gil,Cheongbuk-Myeon,Pyeongtaek-Si,Gyeonggi-Do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】隣 嘉津彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 寛揚
(72)【発明者】
【氏名】小野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュンチャン
(72)【発明者】
【氏名】キム ウォンヨン
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004BB14
5F004BB19
5F004DA00
5F004DA17
5F004DA25
5F004DA26
5F004DB03
(57)【要約】
【課題】エッチング速度の低下を抑制可能にしたエッチング装置、およびエッチング方法を提供する。
【解決手段】基板が備えるシリコン含有膜にフッ素含有ガスとプラズマとを供給することによってシリコン含有膜をエッチングするエッチング装置10であって、マイクロ波を照射される放電管24Aと、放電管24Aに混合ガスを供給する混合ガス供給部21と、を備え、混合ガスのプラズマを放電管24Aから供給するように構成され、混合ガスは、水素原子、窒素原子、および酸素原子を含み、放電管24Aは、酸化アルミニウムを主成分として構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が備えるシリコン含有膜にフッ素含有ガスとプラズマとを供給することによって前記シリコン含有膜をエッチングするエッチング装置であって、
マイクロ波を照射される放電管と、
前記放電管に混合ガスを供給するガス供給部と、を備え、
前記混合ガスの前記プラズマを前記放電管から供給するように構成され、
前記混合ガスは、水素原子、窒素原子、および酸素原子を含み、
前記放電管は、酸化アルミニウムを主成分として構成される
ことを特徴とするエッチング装置。
【請求項2】
前記放電管は、サファイアから構成される
請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項3】
前記基板が収容された空間における前記酸素原子の量を酸素分子の量に換算した前記空間における前記酸素分子の濃度である酸素ガス濃度は、10ppm以上1000ppm以下である
請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項4】
前記混合ガスは、窒素ガス、アンモニアガス、および酸素ガスから構成される
請求項3に記載のエッチング装置。
【請求項5】
基板が備えるシリコン含有膜にフッ素含有ガスとプラズマとを供給することによって前記シリコン含有膜をエッチングするエッチング方法であって、
放電管に混合ガスを供給することと、
前記放電管にマイクロ波を照射することによって前記放電管から前記シリコン含有膜に前記混合ガスの前記プラズマを供給することと、を含み、
前記混合ガスは、水素原子、窒素原子、および酸素原子を含み、
前記放電管は、酸化アルミニウムを主成分として構成される
ことを特徴とするエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング装置、およびエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板から自然酸化膜を除去するエッチング装置の一例は、マイクロ波の照射によって生成されたプラズマ中のラジカルによって自然酸化膜のエッチャントを生成する。エッチング装置は、エッチャントと自然酸化膜とから生成される錯体をシリコン基板の加熱によって気化させる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-59358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エッチャントを生成するためのプラズマは、水素ラジカルや窒化水素ラジカルなどのように、自然酸化膜を還元するための水素原子と、ラジカルの寿命を延ばすための窒素原子と、を含む。水素原子と窒素原子とを含むプラズマの生成は、水素ガスやアンモニアガスを供給される石英管にマイクロ波を照射する。一方、水素原子と窒素原子とを含むプラズマを生成し続ける石英管は、使用期間の長期化に伴う窒化の進行などによって自然酸化膜のエッチング速度を低めてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのエッチング装置は、基板が備えるシリコン含有膜にフッ素含有ガスとプラズマとを供給することによって前記シリコン含有膜をエッチングするエッチング装置であって、マイクロ波を照射される放電管と、前記放電管に混合ガスを供給するガス供給部と、を備え、前記混合ガスの前記プラズマを前記放電管から供給するように構成され、前記混合ガスは、水素原子、窒素原子、および酸素原子を含み、前記放電管は、酸化アルミニウムを主成分として構成される。
【0006】
上記課題を解決するためのエッチング方法は、基板が備えるシリコン含有膜にフッ素含有ガスとプラズマとを供給することによって前記シリコン含有膜をエッチングするエッチング方法であって、放電管に混合ガスを供給することと、前記放電管にマイクロ波を照射することによって前記放電管から前記シリコン含有膜に前記混合ガスの前記プラズマを供給することと、を含み、前記混合ガスは、水素原子、窒素原子、および酸素原子を含み、前記放電管は、酸化アルミニウムを主成分として構成される。
【0007】
上記各構成によれば、水素ラジカルや窒化水素ラジカルを生成する放電管が酸化アルミニウムを主成分として構成される。このため、放電管が石英などの酸化シリコンから構成される場合と比べて、放電管の窒化が抑制される。結果として、放電管の窒化に起因したエッチング速度の低下が抑制される。なお、酸化アルミニウムの表面に存在するダングリングボンドは、水素ラジカルの失活を促す。この点、混合ガスのなかに酸素原子が含まれるため、酸化アルミニウムの表面におけるダングリングボンドの発生が酸素ラジカルによって抑制される。これにより、シリコン含有膜のエッチング速度を高めることが可能ともなる。
【0008】
上記エッチング装置において、前記放電管は、サファイアから構成されてもよい。この構成によれば、放電管の窒化、および放電管の表面におけるダングリングボンドの発生がさらに抑制される。
【0009】
上記エッチング装置において、前記基板が収容された空間における前記酸素原子の量を酸素分子の量に換算した前記空間における前記酸素分子の濃度である酸素ガス濃度は、10ppm以上1000ppm以下でもよい。この構成によれば、酸素原子の含有によるエッチング速度の向上効果がさらに高まる。
【0010】
上記エッチング装置において、前記混合ガスは、窒素ガス、アンモニアガス、および酸素ガスから構成されてもよい。この構成によれば、酸素原子の含有によるエッチング速度の向上効果の実効性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、エッチング装置の構成を示す装置構成図。
図2図2は、処理チャンバーの構成を示す装置構成図。
図3図3は、酸素ガス濃度とエッチング量との関係を示すグラフ。
図4図4は、酸素ガス濃度とエッチング量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[エッチング装置]
図1が示すように、エッチング装置10は、エッチングチャンバー11、ロードロックチャンバー12、およびゲートバルブ13を備える。エッチング装置10は、混合ガス供給部21、フッ素含有ガス供給部23、およびプラズマ供給部24を備える。エッチング装置10は、制御装置10Cを備える。
【0013】
エッチングチャンバー11は、基板S(図2を参照)を収容する空間を区切る。エッチングチャンバー11は、基板Sを収容する空間のなかでシリコン酸化膜をエッチングする。ロードロックチャンバー12は、エッチング前の基板Sを外部からエッチングチャンバー11に搬入する。ロードロックチャンバー12は、エッチング後の基板Sをエッチングチャンバー11から外部に搬出する。
【0014】
ゲートバルブ13は、エッチングチャンバー11とロードロックチャンバー12との間に配置されている。ゲートバルブ13が開くことによって、エッチングチャンバー11がロードロックチャンバー12に連通する。ゲートバルブ13が閉じることによって、エッチングチャンバー11がロードロックチャンバー12から遮断される。
【0015】
ロードロックチャンバー12は、冷却ガス供給部12Aに接続されている。冷却ガス供給部12Aは、冷却ガスをロードロックチャンバー12に供給する。冷却ガスは、エッチング後の基板Sを冷却するための不活性ガスである。
【0016】
エッチングチャンバー11は、第1加熱部11A、排気部11B、および第2加熱部11Cを備える。第1加熱部11Aは、エッチングチャンバー11を加熱する。排気部11Bは、エッチングチャンバー11を所定圧力に減圧する。第2加熱部11Cは、エッチングチャンバー11に収容された基板Sを加熱する。
【0017】
エッチングチャンバー11は、フッ素含有ガス供給部23、およびプラズマ供給部24に接続されている。フッ素含有ガス供給部23は、エッチングチャンバー11のなかで基板Sを収容する空間にフッ素含有ガスを供給する。フッ素含有ガスの一例は、三フッ化窒素ガスである。プラズマ供給部24は、エッチングチャンバー11のなかで基板Sを収容する空間にプラズマを供給する。
【0018】
プラズマ供給部24は、放電管24A、導波管24B、およびマイクロ波源24Cを備える。マイクロ波源24Cは、導波管24Bを通じて、放電管24Aにマイクロ波を照射する。放電管24Aは、混合ガス供給部21に接続されている。放電管24Aは、酸化アルミニウムを主成分として構成される。放電管24Aは、サファイアから構成されるサファイアチューブでもよいし、焼結アルミナから構成されるアルミナチューブでもよい。焼結アルミナは、酸化アルミニウム粉末やアンモニウムドーソナイトなどの前駆体から合成される焼結体であり、酸窒化アルミニウムを含有してもよいし、イットリウムなどのアルミニウム以外の金属元素を含有してもよい。酸化アルミニウムの純度は、放電管24Aの全質量に対して50質量%よりも高く、90質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましい。
【0019】
混合ガス供給部21は、放電管24Aに、水素原子、窒素原子、および酸素原子を含む混合ガスを供給する。混合ガス供給部21は、窒素ガス供給部21A、アンモニアガス供給部21B、および酸素ガス供給部21Cから構成されている。窒素ガス供給部21Aは、放電管24Aのなかに窒素ガスを供給する。アンモニアガス供給部21Bは、放電管24Aのなかにアンモニアガスを供給する。酸素ガス供給部21Cは、放電管24Aのなかに酸素ガスを供給する。
【0020】
プラズマ供給部24は、放電管24Aのなかで混合ガスにマイクロ波を照射することによって、放電管24Aのなかにプラズマを生成する。プラズマ供給部24は、エッチングチャンバー11のなかで基板Sを収容する空間に、放電管24Aのなかに生成されたプラズマを供給する。エッチングチャンバー11に供給されるプラズマは、水素ラジカル、窒素ラジカル、および窒化水素ラジカルを含む。
【0021】
制御装置10Cは、記憶部10CMを備える。記憶部10CMは、シリコン酸化膜をエッチングするためのプロセス条件を記憶する。プロセス条件は、エッチングチャンバー11の圧力、基板Sの温度、各種ガスの流量、およびマイクロ波源24Cの出力を含む。制御装置10Cは、エッチング条件がプロセス条件と一致するように、第1加熱部11A、排気部11B、第2加熱部11C、混合ガス供給部21、フッ素含有ガス供給部23、およびプラズマ供給部24の駆動を制御する。
【0022】
[エッチングチャンバー11]
図2が示すように、エッチングチャンバー11は、支持部10Aを収容する。支持部10Aは、複数の基板Sを支持する。支持部10Aに支持される複数の基板Sは、相互に隣り合う基板Sの間に隙間を空けた状態で積み重ねられている。基板Sは、シリコン酸化膜を備える。基板Sの一例は、円盤状を有したシリコン基板である。
【0023】
エッチングチャンバー11は、シャワーヘッド11Dを備える。シャワーヘッド11Dは、放電管24Aに接続されている。シャワーヘッド11Dに接続される放電管24Aは、1つでもよいし、2つ以上でもよい。なお、図2は、2つの放電管24Aがシャワーヘッド11Dに接続される例を示す。シャワーヘッド11Dは、複数の供給口を備える。シャワーヘッド11Dの供給口は、基板Sの積み重なる方向に並ぶ。シャワーヘッド11Dの供給口は、放電管24Aから供給されるプラズマを基板Sに向けて供給する。
【0024】
エッチングチャンバー11は、回転部11Eを備える。回転部11Eは、基板Sの周方向に支持部10Aを回転させる。回転部11Eは、シャワーヘッド11Dから基板Sに向けて供給されるプラズマ、およびフッ素含有ガス供給部23から基板Sに向けて供給されるフッ素含有ガスを基板Sの周方向に分散させる。
【0025】
エッチングチャンバー11は、温度測定部11Fを備える。温度測定部11Fは、エッチングチャンバー11の内部における温度を基板Sの温度として測定する。温度測定部11Fは、制御装置10Cに接続されている。温度測定部11Fによる温度の測定結果は、制御装置10Cに入力される。制御装置10Cは、温度測定部11Fによる測定結果に基づいて第1加熱部11A、および第2加熱部11Cの駆動を制御する。
【0026】
[エッチング方法]
エッチング装置10が実行するエッチング方法は、放電管24Aに混合ガスを供給すること、放電管24Aにマイクロ波を照射すること、および放電管24Aからシリコン酸化膜に混合ガスのプラズマを供給することを含む。
【0027】
エッチング装置10は、エッチング方法の実行に先駆けて、ロードロックチャンバー12に支持部10Aを配置して、支持部10Aに複数の基板Sを収容する。次いで、エッチング装置10は、ゲートバルブ13を開けて、複数の基板Sを支持している支持部10Aをロードロックチャンバー12からエッチングチャンバー11に搬入する。続いて、エッチング装置10は、ゲートバルブ13を閉じて、エッチングチャンバー11を排気する。
【0028】
エッチング装置10は、エッチング方法を実行するとき、第1加熱部11A、および第2加熱部11Cに基板Sを加熱させると共に、回転部11Eに基板Sを回転させる。次いで、エッチング装置10は、プロセス条件に基づいて、混合ガス供給部21に混合ガスを供給させると共に、フッ素含有ガス供給部23にフッ素含有ガスを供給させる。続いて、エッチング装置10は、プロセス条件に基づいて、マイクロ波源24Cにマイクロ波を出力させて、放電管24Aから基板Sに向けて混合ガスのプラズマを供給させる。これにより、基板Sの備えるシリコン酸化膜がエッチングされる。
【0029】
この際、エッチング速度の向上を要求される場合、エッチング装置10は、エッチングチャンバー11のなかで基板Sが収容される空間における酸素ガス濃度が10ppm以上1000ppm以下であるように酸素ガスの流量を設定してもよい。酸素ガス濃度は、エッチングチャンバー11のなかで基板Sが収容される空間における酸素原子の量を酸素分子の量に換算することによって得られる酸素分子の濃度である。
【0030】
[安定性評価]
放電管24Aに石英チューブを適用した比較例のエッチング装置10と、放電管24Aにサファイアチューブを適用した実施例のエッチング装置10とを用いて、それぞれのエッチング装置10におけるエッチング速度の安定性評価を行った。
【0031】
安定性評価は、複数回にわたり下記プロセス条件によるエッチングを繰り返した。そして、安定性評価は、1回のエッチングごとに、シリコン酸化膜のエッチング量、および当該エッチング量から得られるエッチング速度を計測した。また、エッチング速度が放電管24Aの使用期間に変動するか否かを評価した。なお、放電管24Aの使用期間は、エッチング時間の積算値である。
【0032】
[プロセス条件]
・窒素ガスの流量:4000sccm
・アンモニアガスの流量:1000sccm
・酸素ガスの流量:1sccm
・三フッ化窒素ガスの流量:4000sccm
・基板Sの温度:25℃
・マイクロ波源の電力:3000W
・エッチングチャンバー11の容積:70L
・エッチングチャンバー11の圧力:200Pa
・エッチング時間:1000秒
【0033】
安定性評価において、比較例のエッチング装置10では、放電管24Aの使用期間が長くなるに連れてエッチング速度が低下し続けることが認められた。この際、単位使用期間当たりのエッチング速度の低下量は、エッチングの開始時からほぼ一定であった。すなわち、放電管24Aが石英チューブである場合、放電管24Aの使用開始時から、エッチング速度が低下し続けるように、放電管24Aが窒化などによって劣化し続けることが認められた。
【0034】
一方、実施例のエッチング装置10では、エッチング速度が低下せず、比較例のエッチング装置10と同一の使用期間の全体にわたり、ほぼ等しいエッチング速度が認められた。このため、放電管24Aがサファイアチューブであれば、エッチング速度が放電管24Aの使用開始から低下しはじめることを抑制できることが認められた。また、放電管24Aがサファイアチューブであれば、エッチング速度の安定する期間を長期化できることも認められた。言いかえれば、放電管24Aがサファイアチューブであれば、エッチング装置10の初期安定性を高められると共に、放電管24Aの寿命を長期化できることが認められた。
【0035】
[酸素ガス濃度評価]
実施例のエッチング装置10を用いて、上記プロセス条件における酸素ガス濃度を0ppmから6000ppmまでの範囲のなかで変更し、それぞれの酸素ガス濃度におけるシリコン酸化膜のエッチング量を計測した。図3は、各酸素ガス濃度における単位時間当たりのエッチング量の測定結果を示す。図4は、図3における酸素ガス濃度軸に対数軸を適用したグラフである。
【0036】
図3、4が示すように、酸素ガス濃度が0ppmから100ppmに高まるに連れてエッチング量が急峻に増加することが認められた。また、エッチング量にピークを示すような酸素ガス濃度が存在し、かつ酸素ガス濃度が100ppmから6000ppmに高まるに連れてエッチング量が徐々に減少することが認められた。そして、酸素ガス濃度が10ppm以上1000ppm以下の範囲であれば、酸素ガス濃度が0Ppmである場合と比べて、十分に高いエッチング量を得られることが認められた。なかでも、酸素ガス濃度が50ppm以上500ppm以下の範囲であれば、高いエッチング量を得られると共に、エッチング量にばらつきを抑えられることも認められた。
【0037】
以上、上記実施形態によれば、以下に列挙される効果が得られる。
(1)放電管24Aが酸化アルミニウムを主成分として構成されるため、放電管24Aが石英などの酸化シリコンから構成される場合と比べて、放電管24Aの窒化が抑制される。結果として、放電管24Aの窒化に起因したエッチング速度の低下が抑制される。
【0038】
(2)混合ガスのなかに酸素原子が含まれるため、酸化アルミニウムの表面におけるダングリングボンドの発生が酸素ラジカルによって抑制される。これにより、放電管24Aが酸化アルミニウムを主成分として構成されるとしても、ダングリングボンドの存在による水素ラジカルの失活を抑えてシリコン酸化膜のエッチング速度を高めることが可能ともなる。
【0039】
(3)放電管24Aがサファイアから構成される場合、放電管24Aの窒化、および放電管24Aの表面におけるダングリングボンドの発生がさらに抑制される。
(4)酸素ガス濃度が10ppm以上1000ppm以下である場合、酸素原子の含有によるエッチング速度の向上効果がさらに高まる。
【0040】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施される。
[エッチングチャンバー11]
・エッチングチャンバー11は、第1加熱部11Aを割愛されてもよいし、第2加熱部11Cを割愛されてもよい。
【0041】
・エッチングチャンバー11は、不活性ガス供給部に接続されてもよい。不活性ガス供給部は、基板Sを加熱するための窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスをエッチングチャンバー11に供給する。
【0042】
・エッチングチャンバー11は、1回のエッチングによって1枚の基板Sをエッチングする枚様式に変更されてもよい。
【0043】
[シリコン含有膜]
・エッチングの対象膜であるシリコン酸化膜は、ポリシリコン膜、アモルファスシリコン膜などのシリコン含有膜に変更可能である。
【0044】
[ガス]
・フッ素含有ガスは、フッ化水素ガスでもよいし、四フッ化炭素ガスでもよいし、四フッ化ケイ素ガスでもよい。フッ素含有ガスは、混合ガスから生成されるプラズマとシリコン含有膜において反応することによってエッチャントを生成するガスである。
【0045】
・混合ガスは、水素原子、窒素原子、および酸素原子を含む。混合ガスは、アンモニアガス、水素ガス、窒素ガス、一酸化二窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、オゾンガス、水蒸気ガスからなる群から選択される二種以上のガスの組み合わせでもよい。混合ガスは、例えば水素ガス、窒素ガス、および酸素ガスの組み合わせでもよいし、水素ガスと一酸化二窒素ガスとの組み合わせでもよいし、アンモニアガスと酸素との組み合わせでもよい。混合ガスは、アルゴンガスやヘリウムガスなどの希ガスをさらに含有してもよい。混合ガスは、窒素原子、および酸素原子の供給源として、一酸化二窒素ガスと二酸化窒素ガスとの混合ガスを含有してもよい。
【符号の説明】
【0046】
S…基板
10…エッチング装置
10C…制御装置
11…エッチングチャンバー
12…ロードロックチャンバー
21…混合ガス供給部
21A…窒素ガス供給部
21B…アンモニアガス供給部
21C…酸素ガス供給部
23…フッ素含有ガス供給部
24…プラズマ供給部
24A…放電管
24B…導波管
24C…マイクロ波源
図1
図2
図3
図4