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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099918
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】塗装システムおよびヘッド洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20240719BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240719BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20240719BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
B05B12/00 A
B05D1/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003553
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 智也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂
【テーマコード(参考)】
4D075
4F035
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AA37
4D075AC06
4D075AC88
4D075BB65X
4D075EA05
4F035AA03
4F035BA15
4F035BC02
4F035CD06
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA36
4F041BA59
4F041BA60
4F042AA09
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042CB08
4F042CB12
4F042CB20
4F042CC04
4F042CC08
(57)【要約】
【課題】ヘッドの洗浄が開始されるまでの時間を短縮する。
【解決手段】
塗料を吐出するノズル孔を有し、前記塗料が供給される供給経路と、前記ノズル孔から吐出されなかった前記塗料を排出する排出経路とに接続されるヘッドと、前記ヘッドを移動させる移動機構を有するロボットと、種類の異なる塗料を収容した複数の塗料収容部に接続され、前記供給経路に供給する塗料を切り替える切替バルブと、前記排出経路の開閉を行う排出バルブと、前記排出バルブの開閉を制御する制御部と、を備える塗装システムであって、前記供給経路に供給する塗料を切り替える場合、前記制御部は、切替前の塗料による塗装作業の終了後、前記ヘッドを前記移動機構に装着した状態のまま前記排出バルブを開く。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を吐出するノズル孔を有し、前記塗料が供給される供給経路と、前記ノズル孔から吐出されなかった前記塗料を排出する排出経路とに接続されるヘッドと、
前記ヘッドを移動させる移動機構を有するロボットと、
種類の異なる塗料を収容した複数の塗料収容部に接続され、前記供給経路に供給する塗料を切り替える切替バルブと、
前記排出経路の開閉を行う排出バルブと、
前記排出バルブの開閉を制御する制御部と、
を備える塗装システムであって、
前記供給経路に供給する塗料を切り替える場合、前記制御部は、切替前の塗料による塗装作業の終了後、前記ヘッドを前記移動機構に装着した状態のまま前記排出バルブを開くことを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
前記塗装システムは、さらに、前記ヘッドのノズル面を清掃する清掃ステーションを備え、
前記制御部は、前記排出バルブを開いた状態で、前記ヘッドが前記清掃ステーションに位置するように前記移動機構を制御することを特徴とする請求項1記載の塗装システム。
【請求項3】
前記ヘッドは、前記ノズル孔を開閉する弁部材を有し、
前記切替バルブは、前記複数の塗料収容部と、洗浄液を収容した洗浄液収容部と、洗浄エアを供給するエア供給部とに接続されており、
前記供給経路に供給する塗料を切り替える場合、前記制御部は、切替前の塗料による塗装作業の終了後、前記排出バルブを開いた状態で、かつ前記弁部材が前記ノズル孔を閉じた状態にするとともに、
前記切替バルブから前記供給経路に対して第一番目に前記洗浄エアを供給することを特徴とする請求項1または2記載の塗装システム。
【請求項4】
前記洗浄エアの供給終了後、前記弁部材が前記ノズル孔を閉じた状態のまま、前記切替バルブから前記供給経路に対して前記洗浄液を供給し、前記洗浄液の供給終了後、再び前記洗浄エアを供給することを特徴とする請求項3記載の塗装システム。
【請求項5】
前記洗浄液を供給する動作、および前記洗浄エアを再び供給する動作を1サイクルとし、このサイクルを繰り返して行うことを特徴とする請求項4記載の塗装システム。
【請求項6】
前記サイクルの繰り返しのうちの最終サイクルにおいては、前記ヘッドが前記清掃ステーションに位置した状態にするとともに、前記弁部材を少なくとも1回以上開閉動作させることを特徴とする請求項5記載の塗装システム。
【請求項7】
前記弁部材を開閉動作させている間、前記排出バルブは開いていることを特徴とする請求項6記載の塗装システム。
【請求項8】
前記最終サイクルを実施後、前記弁部材を閉じ、前記切替バルブから前記供給経路に対して前記洗浄エアを供給することを特徴とする請求項6記載の塗装システム。
【請求項9】
前記洗浄エアを供給している間、前記清掃ステーションにおいて前記ヘッドのノズル面を清掃することを特徴とする請求項8記載の塗装システム。
【請求項10】
塗料を吐出するノズル孔を有し、前記塗料が供給される供給経路と、前記ノズル孔から吐出されなかった前記塗料を排出する排出経路とに接続されるヘッドと、
前記ヘッドを移動させる移動機構を有するロボットと、
種類の異なる塗料を収容した複数の塗料収容部に接続され、前記供給経路に供給する塗料を切り替える切替バルブと、
前記排出経路の開閉を行う排出バルブと、
前記排出バルブの開閉を制御する制御部と、
を備える塗装システムのヘッド洗浄方法であって、
前記供給経路に供給する塗料を切り替える工程において、
切替前の塗料による塗装作業の終了後、前記ヘッドを前記移動機構に装着した状態のまま前記排出バルブが開かれる工程と、
前記排出バルブが開かれる工程の後、前記ヘッドの内部洗浄が開始される工程と、
を含むことを特徴とするヘッド洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装システムおよびヘッド洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、塗料を吐出するノズルを有するノズルヘッドと、ノズルの駆動を制御するノズル制御手段と、塗料がノズルヘッド内を循環するヘッド側循環経路とを一体的に設けたノズルヘッドユニットを、ロボットアームのチャック部に対して着脱自在に設けるとともに、チャック部に装着されているノズルヘッドユニットを、待機保持部に保持されているノズルヘッドユニットに交換するためのヘッド交換手段を備えた塗装機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2021/028983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、使用する塗料を種類の異なる塗料に切り替える際、ヘッド交換手段を用いて、待機保持部に保持されているノズルヘッドユニットに交換するとともに、使用済みのノズルヘッドユニットをステーション部の洗浄機構に搬送する必要があった。そのため、塗装が終了してから洗浄が開始されるまでに時間がかかるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、塗料を吐出するノズル孔を有し、前記塗料が供給される供給経路と、前記ノズル孔から吐出されなかった前記塗料を排出する排出経路とに接続されるヘッドと、前記ヘッドを移動させる移動機構を有するロボットと、種類の異なる塗料を収容した複数の塗料収容部に接続され、前記供給経路に供給する塗料を切り替える切替バルブと、前記排出経路の開閉を行う排出バルブと、前記排出バルブの開閉を制御する制御部と、を備える塗装システムであって、前記供給経路に供給する塗料を切り替える場合、前記制御部は、切替前の塗料による塗装作業の終了後、前記ヘッドを前記移動機構に装着した状態のまま前記排出バルブを開くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ヘッドの洗浄が開始されるまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る塗装システムの一例を示す全体概略図。
図2】実施形態に係る制御部のハードウェアブロック図。
図3】ヘッドの一例を示す概略断面図。
図4】ヘッドの動作説明図。
図5】ヘッドモジュールの一例を示す概略断面図。
図6】塗装ロボットと供給・排出経路の関係を示す概略図。
図7】塗装システム全体の供給・排出経路の一例を示す説明図。
図8】切替バルブの構成を示す説明図。
図9】内部洗浄動作の一例を示すタイミングチャート。
図10】ヘッドの別の例を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
[塗装システムの概略]
はじめに図1を用いて塗装システムの概略を説明する。図1は、実施形態に係る塗装システムの一例を示す全体概略図である。
【0010】
塗装システム10000は、塗装ロボット1000、清掃ステーション4000、全体制御部900、ロボット制御部901、ヘッド制御部902および清掃ステーション制御部904を備える。
【0011】
ロボットの一例である塗装ロボット1000は、例えば多関節ロボットであり、多関節アームデバイス1100の先端部にヘッド100(またはヘッドモジュール700)が装着される。ヘッド100およびヘッドモジュール700の構成については後述する。塗装ロボット1000は、例えば自動車の車体である被塗布物Uに対してヘッド100を自由に動かし、被塗布物Uの塗装位置にヘッド100を正確に配置させることができる。塗装位置に配置されたヘッド100は、被塗布物Uに向けて塗料を吐出し、被塗布物Uを塗装する。
【0012】
塗装ロボット1000は、設置台1004、多関節アームデバイス1100、ヘッド保持部1009およびヘッド100等を備える。設置台1004は、多関節アームデバイス1100を支持するためのベース部材である。多関節アームデバイス1100は、第一アーム1001、第二アーム1002、第三アーム1003、可動部1005、第一関節部1006、第二関節部1007および第三関節部1008を備える。ここで、多関節アームデバイス1100は移動機構の一例である。
【0013】
設置台1004上に設けられた可動部1005は、設置台1004に対して水平方向(矢印a方向)に回転が可能なように設置台1004に支持されている。また、可動部1005には、第一関節部1006が設けられている。第一関節部1006には、第一アーム1001の一方の端部が接続されるとともに、第一関節部1006は第一アーム1001を矢印b方向へ回転可能に支持する。第一アーム1001のもう一方の端部は、第二関節部1007を介して第二アーム1002の一方の端部に接続されている。
【0014】
第二関節部1007は第二アーム1002を矢印c方向へ回転可能に支持する。第二アーム1002のもう一方の端部は、第三関節部1008を介して第三アーム1003の一方の端部に接続されている。第三関節部1008は第三アーム1003を矢印d方向へ回転可能に支持する。第三アーム1003のもう一方の端部は、後述するチャック部を備えており、このチャック部に対してヘッド保持部1009が着脱可能に装着されている。被塗布物Uに対して塗料を吐出するヘッド100(またはヘッドモジュール700)は、ヘッド保持部1009に取り付けられている。
【0015】
なお、多関節アームデバイス1100における各部材の回転方向は一例であり、上記に限るものではない。例えば、各回転方向a,b,cの回転軸と直交する軸を回転軸とする回転動作が追加されてもよい。
【0016】
清掃ステーション4000は、塗装ロボット1000の多関節アームデバイス1100が届く領域内に設置される。塗装が終了した時、待機時間が一定時間以上の時、あるいは塗装時間が規定の時間を経過した時、ヘッド100は多関節アームデバイス1100によって清掃ステーション4000に移される。清掃ステーション4000にはヘッド100を清掃するための清掃機構が設けられており、ヘッド100に対して所望の清掃処理を実施する。
【0017】
塗装ロボット1000には、多関節アームデバイス1100の動作等を制御するロボット制御部901が電気的に接続されている。ヘッド100には、ヘッド100からの塗料の吐出動作等を制御するヘッド制御部902が電気的に接続されている。清掃ステーション4000には、清掃ステーション4000に設けられた清掃機構の動作等を制御する清掃ステーション制御部904が電気的に接続されている。さらに、ロボット制御部901、ヘッド制御部902および清掃ステーション制御部904には、塗料の吐出同期や各動作の同期制御等、全体動作を司る全体制御部900が電気的に接続されている。
【0018】
全体制御部900、ロボット制御部901、ヘッド制御部902および清掃ステーション制御部904は、例えば図2に示されるような構成からなる。図2は、実施形態に係る制御部のハードウェアブロック図である。
【0019】
各制御部900,901,902,904は、CPU(Central Processing Unit)900a,901a,902a,904a、ROM(Read Only Memory)900b,901b,902b,904b、RAM(Random Access Memory)900c,901c,902c,904c、I/O(Input/Output)ポート900d,901d,902d,904d、およびバスライン900e,901e,902e,904eを備える。
【0020】
CPU900a,901a,902a,904aは、ROM900b,901b,902b,904bに記憶されたプログラムを実行することにより、順次処理、分岐処理、反復処理等を実行する演算装置である。
【0021】
ROM900b,901b,902b,904bは、CPU900a,901a,902a,904aで実行されるプログラム等が記憶された不揮発性記憶装置である。
【0022】
RAM900c,901c,902c,904cは、CPU900a,901a,902a,904aの動作のワークエリア(作業領域)として機能するメモリである。
【0023】
I/Oポート900d,901d,902d,904dは、塗装システム10000内に設けられる各種センサの出力信号等の各種信号やデータが入力され、ヘッド100、塗装ロボット1000、清掃ステーション4000への駆動信号等の各種信号を出力するインターフェースである。
【0024】
バスライン900e,901e,902e,904eは、CPU900a,901a,902a,904a等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0025】
例えば、全体制御部900には、塗装システム10000を操作する操作部からの設定情報がI/Oポート900dから入力されてもよく、他の制御部901,902,904への出力データがI/Oポート900dから出力されてもよい。
【0026】
なお、全体制御部900、ロボット制御部901、ヘッド制御部902および清掃ステーション制御部904は、それぞれを個別に設ける構成に限らず、これらのうちの1つ以上の制御部が有する機能を、他の制御部に移してもよい。また、4つの制御部が有する機能を1つにまとめた構成としてもよい。
【0027】
塗装ロボット1000の各アーム1001,1002,1003は、ロボット制御部901からの指示に基づいて各関節部1006,1007,1008に内蔵された駆動モータが制御されることで動作する。これにより、ヘッド100は、被塗布物Uに対してXYZ方向への移動が可能となる。
【0028】
[ヘッドの構成]
次に、図3を用いてヘッドの構成について説明する。図3は、ヘッドの一例を示す概略断面図であり、ヘッド最小単位(1ノズル)の構成が図示されている。
【0029】
ヘッド100は、中空状に形成された筐体110と、筐体110の一端部に設けられたノズル板101を備える。ノズル板101は、塗料10を吐出するノズル孔102が形成された板状の部材である。ノズル孔102は、直径0.04~0.15mm程度の微小な開口である。
【0030】
筐体110は、ノズル孔102の近傍の側面に、塗料10を注入する注入口113と、塗料10を排出する排出口115を備える。注入口113から注入された塗料10は、筐体110内の液室114へ送られる。液室114に送り込まれた塗料10のうち、ノズル孔102から吐出されなかった塗料10は、排出口115からヘッド100の外部へ排出される。液室114は、概略としてノズル板101と、筐体110内に設けた封止部材135との間に形成される空間によって形成される。
【0031】
液室114内には、弁部材の一例であるニードル131が設けられる。ニードル131は、ノズル板101が設けられている側の先端部に、ノズル孔102と対向するように先端部材130が接合されている。先端部材130は、例えばゴム等の弾性体からなり、先端部材130を設けることでノズル孔102に対する密着性が上がり、より確実にノズル孔102を閉鎖することができる。なお、ニードル131の構成は上記に限るものではなく、先端部材130を備えずに、ニードル131の先端部によって直接ノズル孔102を閉鎖する構成としてもよい。
【0032】
封止部材135は、例えばOリングからなり、筐体110の内面とニードル131の外周面との間の隙間を封止するように、ニードル131に嵌め込まれている。これにより封止部材135は、液室114の塗料10が圧電素子132側へ流入することを防止する。
【0033】
圧電素子132は、封止部材135を境に液室114の隣(図3では上方)に形成された空間内に設けられる。圧電素子132はヘッド制御部902に電気的に接続されており、圧電素子132は、ヘッド制御部902からの駆動信号(駆動波形)に応じて、ノズル孔102を閉鎖する位置と、ノズル孔102を開放する位置との間でニードル131を移動させる。
【0034】
ノズル孔102を閉鎖する位置では、先端部材130がノズル板101に当接した状態を成し、ノズル孔102を開放する位置では、先端部材130がノズル板101から離間した状態を成す。なお、先端部材130を設けない構成の場合は、ノズル孔102を閉鎖する位置では、ニードル131がノズル板101に当接した状態を成し、ノズル孔102を開放する位置では、ニードル131がノズル板101から離間した状態を成す。
【0035】
圧電素子132は、ピエゾ素子(Piezoelectric element)であり、ジルコニアセラミックス等を用いて形成されている。その形状等は吐出される液滴の量などに応じて適宜設定される。
【0036】
ヘッド制御部902は、圧電素子132に対して電気的に接続されており、圧電素子132に駆動信号を印加してニードル131の開閉を制御する。
【0037】
次に、ヘッドの動作について図4を用いて説明する。図4は、ヘッドの動作説明図であり、図4(a)はノズル孔を閉じた状態を示す概略断面図、図4(b)はノズル孔を開いた状態を示す概略断面図である。
【0038】
圧電素子132は、ヘッド制御部902によって駆動信号が印加された場合、圧電素子132に閉鎖電圧が印加された状態では図4(a)に示すように、先端部材130はノズル板101に当接した位置にあり、先端部材130はノズル孔102を閉鎖する。このため、液室114内の塗料10はノズル孔102から吐出されない。
【0039】
圧電素子132に開放電圧が印加された状態では図4(b)に示すように、圧電素子132は収縮し、圧電素子132はニードル131を図において上方へ動かす。このニードル131の移動により、ニードル131に接合された先端部材130はノズル板101から離間する位置に移動し、先端部材130の先端部とノズル孔102との間に隙間Gが形成される。液室114内の塗料10は、後述する加圧エアによって所定の圧力で加圧供給されているため、隙間Gの形成と共に液室114内の塗料10はノズル孔102から液滴10´となって吐出される。
【0040】
このようにして、先端部材130は、ヘッド制御部902から圧電素子132に対して駆動電圧(閉鎖電圧、開放電圧)が印加された場合、ノズル板101に当接する位置と離間する位置との間(図4(b)矢印a方向)で移動し、先端部材130はノズル孔102を開閉する。圧電素子132は、ニードル131を介して高速(2kHz程度)でノズル孔102の開閉を行っており、塗料10を一滴ずつ吐出することが可能である。
【0041】
[ヘッドモジュールの構成]
次に、図5を用いてヘッドモジュールの構成について説明する。図5は、ヘッドモジュールの一例を示す概略断面図である。
【0042】
ヘッドモジュール700は、筐体710に複数(本例では8個)のヘッド100を備える。筐体710は、筐体710内に塗料10を供給する供給口711と、供給口711と注入口713とをつなぐ供給路712と、液室714を挟んで注入口713の反対側に設けられた排出口715を有する。また、筐体710は、筐体710内の塗料10を回収する回収口717と、回収口717と排出口715とをつなぐ回収路716を有する。複数のヘッド100の基本的な構成は、図3および図4で説明したものと同様であり、図5では対応する要素について700番台の符号を用いている。
【0043】
本例では、8個のヘッド100が、それぞれのノズル孔702が一方向(図5では左右方向)に略等間隔で配列されるように設けられている。ヘッド100のそれぞれは、図中下部のノズル孔702から塗料10を下方に吐出するように上下方向に延在して設けられている。8個のヘッド100の配列方向の一方側(図5では左側)から他方側(図5では右側)に塗料10が流れるように、各ヘッド100の液室714は、貫通して設けられている。
【0044】
以上のように図3および図4のヘッド100および図5のヘッドモジュール700は、ニードル131(731)によるノズル孔102(702)の開閉によって塗料10を吐出させる弁開閉式ヘッドもしくは弁開閉式ヘッドモジュールとして構成されている。ヘッド100またはヘッドモジュール700は、所望の数および所望の配列で塗装ロボット1000のヘッド保持部1009に取り付けられる。
【0045】
[塗料供給・排出経路の概略]
次に、図6を用いて塗料の供給・排出経路について説明する。図6は、塗装ロボットと供給・排出経路の関係を示す概略図である。塗装ロボット1000の構成等、図1図5で説明した構成要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0046】
塗装ロボット1000の第三アーム1003の一方の端部は、第三関節部1008を介して第二アーム1002に接続されている。第三アーム1003のもう一方の端部は、チャック部1010を備えており、このチャック部に対してヘッド保持部1009が着脱可能に装着されている。このヘッド保持部1009を介してヘッド100(またはヘッドモジュール700)は塗装ロボット1000に保持されている。
【0047】
塗料10は、図示のように供給経路1、供給経路2の順に送られてヘッド100の注入口113(またはヘッドモジュール700の供給口711)に供給される。供給経路1と供給経路2との間には、両経路を中継する切替バルブ620が設けられている。切替バルブ620の詳細は後述するが、概略として切替バルブ620は、ヘッド100(またはヘッドモジュール700)に供給する塗料の色を替える場合などの塗料の切り替えに用いられる。
【0048】
また、ヘッド100の排出口115(またはヘッドモジュール700の回収口717)から排出された塗料10は、図示のように排出経路1、排出経路2の順に送られて排出装置643に排出される。排出経路1と排出経路2との間には、両経路を中継する排出バルブ642が設けられている。排出バルブ642は、排出経路の開閉を可能とするバルブであり、例えば、ヘッド100(またはヘッドモジュール700)に供給する塗料の色を変更する場合に排出バルブ642が開き、切替前の塗料等を排出経路2を経て排出装置643へ送り出す。
【0049】
[塗料供給・排出経路の構成]
図7および図8を用いて塗料の供給・排出経路についてさらに詳しく説明する。図7は、塗装システム全体の供給・排出経路の一例を示す説明図、図8は、切替バルブの構成を示す説明図である。
【0050】
<供給経路1の構成>
図7において、塗料Aタンク606は塗料Aを収容し、洗浄液タンク607は洗浄液を収容し、塗料Bタンク608は、塗料Aと種類(例えば色)の異なる塗料Bを収容する。ここで、塗料Aタンク606および塗料Bタンク608は、塗料収容部の一例である。これら各タンク606,607,608と、切替バルブ620とをつなぐ経路を「供給経路1」と定義することとする。供給経路1は、塗料A供給経路、塗料A循環経路、洗浄液供給経路、塗料B供給経路および塗料B循環経路から構成される。
【0051】
塗料Aタンク606には塗装工場内を循環している工場循環塗料A(601)が供給され、塗料Bタンク608には塗装工場内を循環している工場循環塗料B(602)が供給されている。塗料Aタンク606、洗浄液タンク607および塗料Bタンク608には、それぞれ加圧エア供給経路を介してレギュレータ603,604,605が接続されている。これにより、各タンク606,607,608の内部は、各レギュレータ603,604,605から供給される加圧エアによって加圧され、各タンク606,607,608から塗料または洗浄液を押し出すことが可能になっている。レギュレータ603,604,605はエア供給部の一例である。
【0052】
塗料Aタンク606は、塗料A供給経路を介して切替バルブ620に接続されている。また、塗料Aタンク606は、塗料A循環経路を介して切替バルブ620に接続されている。塗料A供給経路は、レギュレータ603からの加圧エアによって塗料Aタンク606から押し出された塗料Aを切替バルブ620に供給する。塗料A循環経路は、切替バルブ620から塗料Aが下流側(供給経路2)に送り出されなかった場合に、塗料Aを塗料Aタンク606に戻す。このように切替バルブ620から塗料Aが送り出されない間は、切替バルブ620の上流で塗料Aを循環させ、塗料中の固形成分を沈降させないようにしている。
【0053】
塗料Aタンク606と切替バルブ620との間で塗料Aを循環させているときは、塗料Aタンク606に加える圧力は0.1MPa程度に設定されており、塗料A循環経路に設置したポンプ609の力で塗料Aを塗料Aタンク606に戻すことが可能となっている。また、塗料A循環経路にはフィルタ610を設置し、塗料Aタンク606への異物の進入を防止している。
【0054】
洗浄液タンク607は、洗浄液供給経路を介して切替バルブ620に接続されている。洗浄液供給経路は、レギュレータ604からの加圧エアによって洗浄液タンク607から押し出された洗浄液を切替バルブ620に供給する。
【0055】
塗料Bタンク608は、塗料B供給経路を介して切替バルブ620に接続されている。また、塗料Bタンク608は、塗料B循環経路を介して切替バルブ620に接続されている。塗料B供給経路は、レギュレータ605からの加圧エアによって塗料Bタンク608から押し出された塗料Bを切替バルブ620に供給する。塗料B循環経路は、切替バルブ620から塗料Bが下流側(供給経路2)に送り出されなかった場合に、塗料Bを塗料Bタンク608に戻す。このように切替バルブ620から塗料Bが送り出されない間は、切替バルブ620の上流で塗料Bを循環させ、塗料中の固形成分を沈降させないようにしている。
【0056】
塗料Bタンク608と切替バルブ620との間で塗料Bを循環させているときは、塗料Bタンク608に加える圧力は0.1MPa程度に設定されており、塗料B循環経路に設置したポンプ611の力で塗料Bを塗料Bタンク608に戻すことが可能となっている。また、塗料B循環経路にはフィルタ612を設置し、塗料Bタンク608への異物の進入を防止している。
【0057】
切替バルブ620には、さらに切替バルブ制御エア供給経路を介してレギュレータ613が接続され、洗浄エア供給経路を介してレギュレータ614が接続されている。レギュレータ613,614はエア供給部の一例である。
【0058】
<供給経路2の構成>
切替バルブ620は、供給マニホールド630に接続されている。ここで、切替バルブ620と、供給マニホールド630とをつなぐ経路を「供給経路2」と定義することとする。
【0059】
供給マニホールド630は、切替バルブ620から供給経路2へ送り出された塗料A、塗料Bまたは洗浄剤を分岐させ、例えば、各ヘッドモジュール700の供給口711に塗料A、塗料Bまたは洗浄剤を供給する。なお、供給経路2は、供給マニホールド630を必須としない場合もある。例えば、ヘッド保持部1009に保持されるヘッドモジュール700が1つであり、切替バルブ620から供給経路2へ送り出された塗料A、塗料Bまたは洗浄剤を分岐する必要がない場合は、供給マニホールド630を設けない構成としてもよい。その場合、供給経路2は、切替バルブ620と、ヘッドモジュール700とをつなぐ経路となる。
【0060】
<排出経路1の構成>
各ヘッドモジュール700の回収口717は、排出マニホールド640に接続されている。排出マニホールド640は、各ヘッドモジュール700においてノズル孔702から吐出されなかった塗料A、塗料Bまたは洗浄剤を回収してひとまとめにする。また、排出マニホールド640は、排出バルブ642に接続されている。ここで、排出マニホールド640と、排出バルブ642とをつなぐ経路を「排出経路1」と定義することとする。
【0061】
なお、排出経路1は、排出マニホールド640を必須としない場合もある。例えば、ヘッド保持部1009に保持されるヘッドモジュール700が1つであり、ヘッドモジュール700から排出経路1へ送り出された塗料A、塗料Bまたは洗浄剤をまとめる必要がない場合は、排出マニホールド640を設けない構成としてもよい。その場合、排出経路1は、ヘッドモジュール700と、排出バルブ642とをつなぐ経路となる。
【0062】
<排出経路2の構成>
排出バルブ642は、排出装置643に接続されている。ここで、排出バルブ642と、排出装置643とをつなぐ経路を「排出経路2」と定義することとする。排出装置643は、排出バルブ642から排出経路2へ送り出された塗料A、塗料Bまたは洗浄剤を回収し、廃液として処理する。排出バルブ642には、さらに排出バルブ開閉制御エア供給経路を介してレギュレータ641が接続されている。レギュレータ641はエア供給部の一例である。
【0063】
<切替バルブの構成>
次に、切替バルブ620の構成を少し詳しく説明することとする。切替バルブ620は、図8に示されるように、例えば4つのポート621,622,623,624を備える。
【0064】
第一ポート621には、図7に示された経路のうち塗料A供給経路、塗料A循環経路および切替バルブ制御エア供給経路が割り当てられている。切替バルブ制御エア供給経路から供給されるエアは、塗料Aを供給経路2へ送り出すための塗料A制御エアとして第一ポート621に供給される。
【0065】
第二ポート622には、図7に示された経路のうち洗浄液供給経路および切替バルブ制御エア供給経路が割り当てられている。切替バルブ制御エア供給経路から供給されるエアは、洗浄液を供給経路2へ送り出すための洗浄液制御エアとして第二ポート622に供給される。
【0066】
第三ポート623には、図7に示された経路のうち洗浄エア供給経路および切替バルブ制御エア供給経路が割り当てられている。切替バルブ制御エア供給経路から供給されるエアは、洗浄エアを供給経路2へ送り出すための洗浄エア制御エアとして第三ポート623に供給される。
【0067】
第四ポート624には、図7に示された経路のうち塗料B供給経路、塗料B循環経路および切替バルブ制御エア供給経路が割り当てられている。切替バルブ制御エア供給経路から供給されるエアは、塗料Bを供給経路2へ送り出すための塗料B制御エアとして第四ポート624に供給される。
【0068】
上記構成において、レギュレータ613からの切替バルブ制御エアは、全体制御部900等からの指示に応じてポート621~624のうちいずれかのポートに供給される。切替バルブ制御エアが供給されたポートは、オン状態となり、当該ポートに割り当てられた流体(塗料A、塗料B、洗浄液または洗浄エア)を供給経路2へ送り出す。これによって、切替バルブ620から供給経路2へ送り出される流体が切り替えられる構成となっている。
【0069】
[実施形態の動作]
以下、実施形態の動作の一例について説明する。
【0070】
<塗料の充填動作>
塗料Aを用いて塗装を行う場合は、塗料Aをヘッドモジュール700に充填する必要がある。ヘッドモジュール700への塗料Aの充填は、切替バルブ620に供給されている塗料A制御エアをオン状態にし、塗料Aを供給経路2へ送り出すことにより行われる。塗料Aをヘッドモジュール700に充填するときの塗料Aタンク606に加える圧力は、0.4MPa程度に設定される。また、このとき排出経路上に設置した排出バルブ642は開放状態にする。
【0071】
切替バルブ620から供給経路2へ送られた塗料Aは、供給マニホールド630で分岐され、ヘッドモジュール700に供給される。塗料Aがさらに供給されると、塗料Aはヘッドモジュール700から排出マニホールド640、排出経路1を経て排出バルブ642まで達する。
【0072】
排出バルブ642は、排出経路1および排出経路2間の開閉のみを行うバルブである。また、排出経路1および排出経路2は、供給経路2へ戻る経路(塗料Aを供給経路2へ戻す経路)は持たない。そして、塗料Aが排出経路1まで充填された時点で、排出バルブ642を閉鎖する。これにより、ヘッドモジュール700内に、加圧された状態の塗料Aが充填される。また、排出バルブ642を閉鎖することで、塗料Aが排出経路2および排出装置643に送り出されなくなるので、塗料Aを無駄にすることがない。
【0073】
なお、排出バルブ642の開閉は、レギュレータ641から供給される排出バルブ開閉制御エアのオン・オフによって行われる。ヘッドモジュール700に充填された塗料Aは、ヘッド制御部902からの指示に応じてニードル731を駆動させることによって、ノズル孔702から吐出される。このように、切替バルブ620に対し流体供給方向下流側に、流体を循環させる循環経路を形成しない構成とすることで、塗料の充填時間を短縮することが可能となる。
【0074】
<塗料の切替動作>
塗料Aを吐出している状態から塗料Bに塗料を切り替えるためには供給経路の洗浄(以下、内部洗浄ともいう)が必要になる。以下、内部洗浄動作について、図7図8に加え、図9を用いて説明する。図9は、内部洗浄動作の一例を示すタイミングチャートである。なお、図9は、各信号のオン・オフの順番に主眼を置いており、個々のパルス幅(オン時間、オフ時間)は適宜変更されてよい。
【0075】
塗料Aによる塗装が終了し、塗料の切り替え(例えば、色替え)が必要となった場合は、切替バルブ620の塗料A制御エアがオフ状態となり、塗料Aの供給は停止される。
【0076】
次に、排出バルブ642が開かれるとともに、切替バルブ620の洗浄エア制御エアがオン状態となり、供給経路2へ洗浄エアが供給される。排出バルブ642は、洗浄エアの供給開始よりも先に開いておき、エアの逃げ場を確保しておく。これにより、逃げ場のない洗浄エアによってノズル板701が剥がされてしまうような不具合を未然に防ぐことが可能になる。このとき、ヘッドモジュール700のニードル731を閉じておく(ノズル孔702を閉じておく)ことで、供給経路2、ヘッドモジュール700および排出経路1に残っている塗料Aは洗浄エアで押し出され、排出経路2を通って排出装置643へと流される。洗浄エアの供給時間は、塗料Aを排出経路2へ押し出すために、最初のエア供給時間は長く設定することが好ましい。以降、供給経路2、ヘッドモジュール700および排出経路1に残っている塗料を、残塗料ともいう。
【0077】
次に、残塗料Aの大部分が排出装置643へ押し出されたならば、洗浄エア制御エアをオフ状態にし、洗浄エアの供給を停止する。
【0078】
洗浄エアによって残塗料Aを押し出しても経路内には塗料Aがある程度残った状態になっているため、次に、供給経路2へ洗浄液を供給する。洗浄液は、洗浄液タンク607で加圧され、切替バルブ620まで供給された状態になっており、洗浄液制御エアをオン状態にすることで、供給経路2に向けて洗浄液を供給することが可能となる。洗浄液の作用によって、洗浄エアだけでは落としきれなかった残塗料Aを除去することが可能となる。本実施形態において洗浄液制御エアのオン時間は1秒未満に設定しており、供給経路への洗浄液の供給量は、洗浄液が供給経路を満杯にしない量にしている。
【0079】
洗浄液の供給後は、再び洗浄エアを供給し、少量の洗浄液を洗浄エアの力で排出経路まで押し出しながら経路内を洗浄する。このときも、ニードル731は閉じた状態で、かつ排出バルブ642は開いた状態のままである。
【0080】
洗浄エアと洗浄液の作用により切替バルブ620より下流側の経路内の洗浄が完了すると排出バルブ642は一度閉じられる。次に切替バルブ620から塗料Bを充填するときに再び排出バルブ642を開放状態とし、塗料Aの充填動作と同様に、塗料Bが排出経路1まで充填されて、吐出可能状態となる。塗料Bが排出経路1まで充填された時点で、排出バルブ642を閉鎖する。
【0081】
このように、塗料Aから塗料Bへの切り替えは、ヘッドモジュール700やヘッド保持部1009を交換することなく行うことができる。さらに、ヘッドモジュール700は塗料を吐出するノズル孔702に加え、ノズル孔702から吐出されなかった塗料を排出する回収路716を備える。ヘッドモジュール700が回収路716を備えない場合は、排出したい塗料もノズル孔702から排出しなければならなくなる。その場合は、排出したい塗料を塗装エリアに飛散させないようにするために、ヘッドモジュールを専用の清掃ステーションに接続してから排出動作を行わせる必要があった。
【0082】
これに対し実施形態はヘッドモジュール700が回収路716を備えるため、塗装が終了したならば、その直後から排出バルブ642を開いて排出動作を開始することができる。従って塗料の切り替えにかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0083】
上述のように、本実施形態は、塗料を吐出するノズル孔102(または702)を有し、塗料が供給される供給経路1,2と、ノズル孔102から吐出されなかった塗料を排出する排出経路1,2とに接続されるヘッド100(またはヘッドモジュール700)と、ヘッド100(またはヘッドモジュール700)を移動させる多関節アームデバイス1100を有する塗装ロボット1000と、種類の異なる塗料を収容した複数の塗料タンク606,608に接続され、供給経路2に供給する塗料を切り替える切替バルブ620と、排出経路1,2の開閉を行う排出バルブ642と、排出バルブ642の開閉を制御する制御部900と、を備える塗装システム10000であって、供給経路2に供給する塗料を切り替える場合、制御部900は、切替前の塗料(例えば塗料A)による塗装作業の終了後、ヘッド100(またはヘッドモジュール700)を多関節アームデバイス1100に装着した状態のまま排出バルブ642を開く。
【0084】
これにより、塗装終了直後から排出バルブ642を開いて排出動作(内部洗浄)を開始することができるので、塗料の切り替えに要する時間を短縮できる。
【0085】
また、塗料吐出後のノズル面(ノズル板701の表面)には塗料が付着しているため、内部洗浄に加えてノズル面の洗浄を行うことが望ましい。ノズル面はヘッドモジュール700において外側に露出する面であるため、ノズル面の洗浄は、清掃ステーション4000で実施される。従って、ヘッドモジュール700を清掃ステーション4000に塗装ロボット1000で移動させる必要がある。この場合、排出バルブ642は開いたままの状態で、塗装ロボット1000の多関節アームデバイス1100を動作させ、ヘッドモジュール700を清掃ステーション4000に位置させる。
【0086】
この場合にも、ヘッドモジュール700が回収路716を有するため、ヘッドモジュール700が清掃ステーション4000に到達するまで内部洗浄の開始を待つ必要はなく、塗装ロボット1000による移動中も内部洗浄を行うことができる。
【0087】
上述のように、本実施形態は、さらに、ヘッド100(またはヘッドモジュール700)のノズル面を清掃する清掃ステーション4000を備え、制御部900は、排出バルブ642を開いた状態で、ヘッド100(またはヘッドモジュール700)が清掃ステーション4000に位置するように多関節アームデバイス1100を制御する。
【0088】
これにより、ノズル面の洗浄を含めた塗料切替全体の時間を短縮することができる。
【0089】
また、内部洗浄においては、供給経路2に対して洗浄液を供給する前に、まず洗浄エアが供給される。第一番目に洗浄エアを供給することで、残塗料Aを洗浄エアで押し出し、残塗料Aの大部分を排出することが可能となるため、残塗料Aを洗い流すための洗浄液の使用量を少なくすることができる。
【0090】
上述のように、本実施形態において、ヘッド100(またはヘッドモジュール700)は、ノズル孔102(または702)を開閉するニードル131(または731)を有し、切替バルブ620は、複数の塗料タンク606,608と、洗浄液を収容した洗浄液タンク607と、洗浄エアを供給するレギュレータ614とに接続されており、供給経路2に供給する塗料を切り替える場合、制御部900は、切替前の塗料(例えば塗料A)による塗装作業の終了後、排出バルブ642を開いた状態で、かつニードル131(または731)がノズル孔102(または702)を閉じた状態にするとともに、切替バルブ620から供給経路2に対して第一番目に洗浄エアを供給する。
【0091】
また、洗浄エアの供給終了後、ニードル131(または731)がノズル孔102(または702)を閉じた状態のまま、切替バルブ620から供給経路2に対して洗浄液を供給し、洗浄液の供給終了後、再び洗浄エアを供給する。
【0092】
これにより、洗浄液の使用量を削減することができる。
【0093】
また、内部洗浄においては、洗浄エアと洗浄液の供給を繰り返して行う構成としてもよい。
【0094】
例えば、洗浄液を供給する動作、および洗浄エアを再び供給する動作を1サイクルとし、このサイクルを繰り返して行う。
【0095】
これにより、洗浄エアによって残塗料を押し出す機会(残塗料に対して洗浄液が触れる回数)が増え、洗浄液の少ない使用量で洗浄効率を上げることができる。
【0096】
また、内部洗浄を実施中は、ニードル731を閉じているものの、ニードル731の先端とノズル板701との間に極少量の塗料が残ってしまう。そこで、内部洗浄時の洗浄エアと洗浄液の繰り返しサイクルのうち最終サイクルでは、ニードル731を少なくとも1回(好ましくは連続で複数回)開閉させて、洗浄液をノズル孔702から吐出させる動作を実施する。この動作によって、ニードル731の先端とノズル板701との間に残った塗料を洗い流すことが可能となる。
【0097】
この場合のノズル孔702からの洗浄液の吐出は、ヘッドモジュール700が清掃ステーション4000に接続された状態で、ニードル731を駆動させて実施される。従って、被塗布物Uや塗装エリアに洗浄液は飛散せず、ノズル孔702から吐出された塗料および洗浄液は清掃ステーション4000で回収される。
【0098】
上述のようにヘッドモジュール700は、内部洗浄を行いながら清掃ステーション4000に移動し、ノズル孔702から洗浄液を吐出する段階では、ヘッドモジュール700は既に清掃ステーション4000に到達しているため、生産性を悪化させることもない。
【0099】
また、繰り返しサイクルの最終サイクル時点において、供給経路内は既に洗浄された状態であり、残塗料はニードル731の先端とノズル板701との間に残った極少量の塗料のみとなる。この状態でニードル731を駆動させることで、内部洗浄時にノズル孔702から吐出される塗料を最小限に抑えることができ、清掃ステーション4000内の塗料による汚れを最小限に抑えることができる。
【0100】
上述のように、本実施形態は、上記サイクルの繰り返しのうちの最終サイクルにおいては、ヘッド100(またはヘッドモジュール700)が清掃ステーション4000に位置した状態にするとともに、ニードル131(または731)を少なくとも1回以上開閉動作させる。
【0101】
これにより、清掃ステーション内の汚れを最小限にできる。
【0102】
また、洗浄エアと洗浄液の繰り返しサイクルのうちの最終サイクルにおいて、ニードル731が開閉動作を行なっている間も、排出バルブ642は開いた状態にしている。洗浄液制御エアのオン時間は1秒未満に設定しており、供給経路への洗浄液の供給量は、洗浄液が供給経路を満杯にしない量にして、洗浄エアの送り圧によって供給経路全体に洗浄液を押し流している。また、洗浄液制御エアのオン時間は1秒に満たず、ニードル731が開閉動作を行なっている間の大部分は、切替バルブ620から洗浄エアが供給されている状態になる。
【0103】
このとき、排出バルブ642を閉じた状態でもノズル孔702から洗浄液を吐出することは可能だが、ノズル孔702は0.04~0.15mm程度の微小な開口のため、圧力損失が大きく洗浄エアが流れにくく、供給経路に残った洗浄液の流れは悪くなる。排出バルブ642を開くことで大気開放状態になるため、洗浄液が供給経路を流れやすくなり、ヘッドモジュール700内への洗浄液供給量も多くなりノズル孔702の洗浄性がよくなる。
【0104】
上述のように、本実施形態は、最終サイクルにおいてニードル131(または731)を開閉動作させている間、排出バルブ642は開いている。
【0105】
これにより、経路内の圧を抜いておくことで経路内の洗浄液の流れをよくすることができる。
【0106】
また、洗浄エアと洗浄液の繰り返しサイクルが終了した後は、ニードル731を閉じ、切替バルブ620から洗浄エアを供給する。最後に洗浄エアを供給することにより、供給経路に残った洗浄液が排出装置643へ確実に押し出され、内部洗浄終了後に、切替後の塗料(例えば塗料B)を充填した際に、残存する洗浄液によって塗料が薄められてしまうことを防ぐことができる。なお、最後の洗浄エアの供給時間は、残存する洗浄液を確実に排出するために、最初のエア供給時間と同様、長く設定することが好ましい。また、排出バルブ642は、洗浄エアの供給が停止された後に閉じられる。これにより、逃げ場のない洗浄エアによってノズル板701が剥がされてしまうような不具合を未然に防ぐことが可能になる。
【0107】
上述のように、本実施形態は、最終サイクルを実施後、ニードル131(または731)を閉じ、切替バルブ620から供給経路2に対して洗浄エアを供給する。
【0108】
これにより、次の塗料の充填時に経路内に洗浄液がない状態にし、塗料が薄まることを防止できる。
【0109】
さらに、内部洗浄後にはノズル面を清掃することが望ましい。ノズル面の清掃手段としては、例えば払拭方式の清掃装置が挙げられる。清掃装置によってノズル面を清掃している間は、ニードル731を閉じた状態にして経路内に洗浄エアを供給してもよい。この場合は、ノズル面の清掃と、経路内の洗浄液を押し出す洗浄エアの供給とを同時並行で進めることが可能となり、ノズル面の清掃および内部洗浄の全体で必要となる時間を短縮することができる。
【0110】
上述のように、本実施形態は、洗浄エアを供給している間、清掃ステーション4000においてヘッド100(またはヘッドモジュール700)のノズル面を清掃する。
【0111】
これにより、ノズル面の清掃および内部洗浄の全体で必要となる時間を短縮することができる。
【0112】
[ヘッドの別の構成例]
図10を用いてヘッドの別の構成について説明する。図10は、ヘッドの別の例を示す概略断面図であり、ヘッド最小単位(1ノズル)の構成が図示されている。図10(a)はノズル孔を閉じた状態を示す断面図、図10(b)はノズル孔を開いた状態を示す断面図である。
【0113】
本構成例は、ニードル131と圧電素子132との間に逆バネ機構134を備える点が図3および図4に示したヘッドの構成と異なる。従って、ここでは逆バネ機構134の構成および動作を中心に説明し、図3および図4のヘッドと同等の構成および機能を有する部材には同一符号を付し、説明は省略する。なお、本構成例では、圧電素子132として、開放電圧VLを印加するとノズル板101側へ伸長する伸縮特性を有する圧電素子を用いることとする。
【0114】
逆バネ機構134は、適宜に変形可能なゴムや軟質樹脂等または薄い金属板等を成形加工することによって形成された弾性部材である。逆バネ機構134は、変形部134a、固定部134b、ガイド部134cおよび屈曲辺134dを備える。
【0115】
変形部134aは、ニードル131の基端側の面(図10(a)ではニードル131の上側端面)に当接するようにして形成された断面略台形状を有する。固定部134bは、変形部134aと筐体110の内壁面に固定される。ガイド部134cは、固定部134bと圧電素子132とを連結する。屈曲辺134dは、台形状の変形部134aの長辺(台形の下底に相当)と固定部134bとを連結する。
【0116】
上記のような構造を備えた逆バネ機構134は、圧電素子132に所定の開放電圧VLが印加されて圧電素子132が伸長すると、圧電素子132の伸長により、ガイド部134cがノズル孔102側(図10(b)の矢印a方向)に押される。この押される力に伴い、変形部134aをノズル孔102から遠ざかる方向(図10(b)の矢印b方向)に引き込む。すなわち、逆バネ機構134を備えたヘッドの場合は、駆動電圧の印加極性に対するニードル131(または先端部材130)の開閉動作の方向が、逆バネ機構134を備えないヘッドと逆になり、逆バネ機構134は、圧電素子132の伸びる力を、ニードル131を引き込む力に変換した上で、ニードル131へ伝達する。
【0117】
本構成例に係るヘッド100は、圧電素子132へ電圧印加することにより、圧電素子132が伸び、それに伴い先端部材130がノズル孔102を開放し、ノズル孔102から液滴10´を吐出する。
【0118】
そして、上述の塗装システム10000に本構成例のヘッド100を用いた場合にも、図3および図4のヘッドと同等の作用効果を奏することができる。また、逆バネ機構134を備えたヘッド100は、逆バネ機構を備えないヘッドに比べて圧電素子132の少ない変位で大きな変位を得ることができる。
【0119】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0120】
[第1態様]
第1態様は、塗料を吐出するノズル孔を有し、前記塗料が供給される供給経路(例えば供給経路1,2)と、前記ノズル孔から吐出されなかった前記塗料を排出する排出経路(例えば排出経路1,2)とに接続されるヘッド(例えばヘッド100、ヘッドモジュール700)と、前記ヘッドを移動させる移動機構(例えば多関節アームデバイス1100)を有するロボット(例えば塗装ロボット1000)と、種類の異なる塗料を収容した複数の塗料収容部(例えば塗料Aタンク606、塗料Bタンク608)に接続され、前記供給経路に供給する塗料を切り替える切替バルブ(例えば切替バルブ620)と、前記排出経路の開閉を行う排出バルブ(例えば排出バルブ642)と、前記排出バルブの開閉を制御する制御部(例えば全体制御部900)と、を備える塗装システム(例えば塗装システム10000)であって、前記供給経路に供給する塗料を切り替える場合、前記制御部は、切替前の塗料(例えば塗料A)による塗装作業の終了後、前記ヘッドを前記移動機構に装着した状態のまま前記排出バルブを開くことを特徴とするものである。
【0121】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記塗装システムは、さらに、前記ヘッドのノズル面を清掃する清掃ステーション(例えば清掃ステーション4000)を備え、前記制御部は、前記排出バルブを開いた状態で、前記ヘッドが前記清掃ステーションに位置するように前記移動機構を制御することを特徴とするものである。
【0122】
[第3態様]
第3態様は、第1態様または第2態様において、前記ヘッドは、前記ノズル孔を開閉する弁部材(例えばニードル131,731)を有し、前記切替バルブは、前記複数の塗料収容部と、洗浄液を収容した洗浄液収容部(例えば洗浄液タンク607)と、洗浄エアを供給するエア供給部(例えばレギュレータ614)とに接続されており、前記供給経路に供給する塗料を切り替える場合、前記制御部は、切替前の塗料による塗装作業の終了後、前記排出バルブを開いた状態で、かつ前記弁部材が前記ノズル孔を閉じた状態にするとともに、前記切替バルブから前記供給経路に対して第一番目に前記洗浄エアを供給することを特徴とするものである。
【0123】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、前記洗浄エアの供給終了後、前記弁部材が前記ノズル孔を閉じた状態のまま、前記切替バルブから前記供給経路に対して前記洗浄液を供給し、前記洗浄液の供給終了後、再び前記洗浄エアを供給することを特徴とするものである。
【0124】
[第5態様]
第5態様は、第4態様において、前記洗浄液を供給する動作、および前記洗浄エアを再び供給する動作を1サイクルとし、このサイクルを繰り返して行うことを特徴とするものである。
【0125】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記サイクルの繰り返しのうちの最終サイクルにおいては、前記ヘッドが前記清掃ステーションに位置した状態にするとともに、前記弁部材を少なくとも1回以上開閉動作させることを特徴とするものである。
【0126】
[第7態様]
第7態様は、第6態様において、前記弁部材を開閉動作させている間、前記排出バルブは開いていることを特徴とするものである。
【0127】
[第8態様]
第8態様は、第6態様または第7態様において、前記最終サイクルを実施後、前記弁部材を閉じ、前記切替バルブから前記供給経路(例えば供給経路2)に対して前記洗浄エアを供給することを特徴とするものである。
【0128】
[第9態様]
第9態様は、第8態様において、前記洗浄エアを供給している間、前記清掃ステーションにおいて前記ヘッドのノズル面を清掃することを特徴とするものである。
【0129】
[第10態様]
第10態様は、塗料を吐出するノズル孔を有し、前記塗料が供給される供給経路と、前記ノズル孔から吐出されなかった前記塗料を排出する排出経路とに接続されるヘッドと、前記ヘッドを移動させる移動機構を有するロボットと、種類の異なる塗料を収容した複数の塗料収容部に接続され、前記供給経路に供給する塗料を切り替える切替バルブと、前記排出経路の開閉を行う排出バルブと、前記排出バルブの開閉を制御する制御部と、を備える塗装システムのヘッド洗浄方法であって、前記供給経路に供給する塗料を切り替える工程において、切替前の塗料による塗装作業の終了後、前記ヘッドを前記移動機構に装着した状態のまま前記排出バルブが開かれる工程と、前記排出バルブが開かれる工程の後、前記ヘッドの内部洗浄が開始される工程と、を含むことを特徴とするものである。
【符号の説明】
【0130】
100 ヘッド
101 ノズル板
102 ノズル孔
131 ニードル(弁部材の一例)
132 圧電素子
601 工場循環塗料A
602 工場循環塗料B
603 レギュレータ(エア供給部の一例)
604 レギュレータ(エア供給部の一例)
605 レギュレータ(エア供給部の一例)
606 塗料Aタンク(塗料収容部の一例)
607 洗浄液タンク(洗浄液収容部の一例)
608 塗料Bタンク(塗料収容部の一例)
613 レギュレータ(エア供給部の一例)
614 レギュレータ(エア供給部の一例)
620 切替バルブ
630 供給マニホールド
640 排出マニホールド
641 レギュレータ(エア供給部の一例)
642 排出バルブ
643 排出装置
700 ヘッドモジュール
701 ノズル板
702 ノズル孔
731 ニードル(弁部材の一例)
732 圧電素子
900 全体制御部(制御部の一例)
901 ロボット制御部(制御部の一例)
902 ヘッド制御部(制御部の一例)
904 清掃ステーション制御部(制御部の一例)
1000 塗装ロボット(ロボットの一例)
1001 第一アーム
1002 第二アーム
1003 第三アーム
1009 ヘッド保持部
1010 チャック部
1100 多関節アームデバイス(移動機構の一例)
4000 清掃ステーション
10000 塗装システム
図1
図2
図3
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図10