(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099954
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】導線の酸化度の評価方法、巻線の品質管理方法、電動モータの品質管理方法、及び検査システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/65 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
G01N21/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003606
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 和史
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043AA03
2G043BA01
2G043BA17
2G043EA03
2G043EA10
2G043FA02
2G043HA01
2G043JA01
2G043LA01
2G043NA02
2G043NA05
(57)【要約】
【課題】導線の表面の酸化度を定量化して評価することのできる導線の酸化度の評価方法、その導線の酸化度の評価方法を用いて銅線の酸化度を定量化して巻線の品質を管理することのできる巻線の品質管理方法、その巻線の品質管理方法を用いる電動モータの品質管理方法、及び導線の酸化度の評価方法に用いることができる検査システムを提供する。
【解決手段】表層の主成分が銅又は錫である導線の表面にレーザーを照射し、ラマンスペクトルをマッピング測定する測定工程と、前記マッピング測定により得られた複数の前記ラマンスペクトルにおける、酸化物の格子振動に帰属されるピークの強度に基づいて、前記導線の表面の酸化度を評価する評価工程と、を含み、前記表層の主成分が銅である場合の前記酸化物が酸化銅であり、前記表層の主成分が錫である場合の前記酸化物が酸化錫である、導線の酸化度の評価方法を提供する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層の主成分が銅又は錫である導線の表面にレーザーを照射し、ラマンスペクトルをマッピング測定する測定工程と、
前記マッピング測定により得られた複数の前記ラマンスペクトルにおける、酸化物の格子振動に帰属されるピークの強度に基づいて、前記導線の表面の酸化度を評価する評価工程と、
を含み、
前記表層の主成分が銅である場合の前記酸化物が酸化銅であり、前記表層の主成分が錫である場合の前記酸化物が酸化錫である、
導線の酸化度の評価方法。
【請求項2】
前記評価工程において、前記マッピング測定により得られたマッピング像の各ピクセルに含まれる前記ピークの強度の値を横軸、前記値の出現頻度を縦軸とするヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムから求められる前記ピークの強度の平均値を用いて、前記導線の表面の酸化度を評価する、
請求項1に記載の導線の酸化度の評価方法。
【請求項3】
前記評価工程において、前記マッピング測定により得られたマッピング像の各ピクセルに含まれる前記ピークの強度の値に前記酸化物の存在を判定するための閾値を設けて、前記マッピング像を二値化し、前記二値化されたマッピング像から求められる前記酸化物の占有面積比を用いて、前記導線の表面の酸化度を評価する、
請求項1に記載の導線の酸化度の評価方法。
【請求項4】
前記評価工程において、Cu2Oの振動モード2Euの格子振動に帰属されるピークの強度とCuOの振動モードAgの格子振動に帰属されるピークの強度の少なくともいずれか一方に基づいて、前記表層の主成分が銅である前記導線の表面の酸化度を評価する、
請求項1に記載の導線の酸化度の評価方法。
【請求項5】
前記評価工程において、前記ラマンスペクトルにおいて190cm-1以上、250cm-1以下の範囲内で最大強度をとるピークの強度と前記ラマンスペクトルにおいて250cm-1以上、310cm-1以下の範囲内で最大強度をとるピークの強度の少なくともいずれか一方に基づいて、前記表層の主成分が銅である前記導線の表面の酸化度を評価する、
請求項1に記載の導線の酸化度の評価方法。
【請求項6】
前記評価工程において、SnOの振動モードA1gの格子振動に帰属されるピークの強度とSnO2の振動モードA1gの格子振動に帰属されるピークの強度の少なくともいずれか一方に基づいて、前記表層の主成分が錫である前記導線の表面の酸化度を評価する、
請求項1に記載の導線の酸化度の評価方法。
【請求項7】
前記評価工程において、前記ラマンスペクトルにおいて180cm-1以上、240cm-1以下の範囲内で最大強度をとるピークの強度と前記ラマンスペクトルにおいて605cm-1以上、665cm-1以下の範囲内で最大強度をとるピークの強度の少なくともいずれか一方に基づいて、前記表層の主成分が錫である前記導線の表面の酸化度を評価する、
請求項1に記載の導線の酸化度の評価方法。
【請求項8】
銅線を含む巻線の品質管理方法であって、
請求項1~5のいずれか1項に記載の導線の酸化度の評価方法を用いて前記銅線の酸化状態を管理する、
巻線の品質管理方法。
【請求項9】
電動モータの製造に、請求項8に記載の巻線の品質管理方法を用いて品質管理された巻線を用いる、
電動モータの品質管理方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の導線の酸化度の評価方法における前記測定工程を実行することのできるラマン測定装置と、
請求項1~7のいずれか1項に記載の導線の酸化度の評価方法における前記評価工程を実行することのできる評価装置と、
を備えた、検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導線の酸化度の評価方法、巻線の品質管理方法、電動モータの品質管理方法、及び検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機や変圧器等の電気機器のコイルに使用される巻線(エナメル線)は、一般的に、コイルの用途や形状に応じた断面形状に加工された導体の周囲に絶縁体が被覆された構造を有する(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の巻線においては、無酸素銅や低酸素銅からなる導体が、コイルの用途や形状に応じた、断面丸型(例えば、円形断面や楕円形断面)や断面角型(例えば、正方形断面や長方形断面)などの形状に成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
巻線の製造においては、一般的に、小径化や平角線化などの導体の加工に伴って導体の表面に酸化が生じる。この導体の表面の酸化は、巻線の不良原因となり得るが、従来この導体表面の酸化度を定量化する手段がなかったために、酸化に関わる不良原因の特定が曖昧であった。
【0005】
本発明の目的は、導線の表面の酸化度を定量化して評価することのできる導線の酸化度の評価方法、その導線の酸化度の評価方法を用いて銅線の酸化度を定量化して巻線の品質を管理することのできる巻線の品質管理方法、その巻線の品質管理方法を用いる電動モータの品質管理方法、及び導線の酸化度の評価方法に用いることができる検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、表層の主成分が銅又は錫である導線の表面にレーザーを照射し、ラマンスペクトルをマッピング測定する測定工程と、前記マッピング測定により得られた複数の前記ラマンスペクトルにおける、酸化物の格子振動に帰属されるピークの強度に基づいて、前記導線の表面の酸化度を評価する評価工程と、を含み、前記表層の主成分が銅である場合の前記酸化物が酸化銅であり、前記表層の主成分が錫である場合の前記酸化物が酸化錫である、導線の酸化度の評価方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、銅線を含む巻線の品質管理方法であって、上記の導線の酸化度の評価方法を用いて前記銅線の酸化状態を管理する、巻線の品質管理方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、電動モータの製造に、上記の巻線の品質管理方法を用いて品質管理された巻線を用いる、電動モータの品質管理方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記の導線の酸化度の評価方法における前記測定工程を実行することのできるラマン測定装置と、上記の導線の酸化度の評価方法における前記評価工程を実行することのできる評価装置と、を備えた、検査システムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導線の表面の酸化度を定量化して評価することのできる導線の酸化度の評価方法、その導線の酸化度の評価方法を用いて銅線の酸化度を定量化して巻線の品質を管理することのできる巻線の品質管理方法、その巻線の品質管理方法を用いる電動モータの品質管理方法、及び導線の酸化度の評価方法に用いることができる検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)は、加熱処理を施す前の初期状態の銅線の表面の光学顕微鏡像である。
図1(b)は、
図1(a)に示される測定範囲においてラマン散乱測定により得られたマッピング像を示す。
図1(c)は、
図1(a)に示される光学顕微鏡像に含まれる“1”、“2”で示される測定点において測定された2つのラマンスペクトルを示す。
【
図2】
図2(a)は、
図1(b)に示されるマッピング像の各ピクセルに含まれるCu
2Oラマンピークの強度の値を横軸、その値の度数を縦軸とするヒストグラムである。
図2(b)は、
図1(b)に示されるマッピング像を二値化することにより得られた二値化画像である。
【
図3】
図3(a)は、温度45℃、湿度95RH%の環境下で4時間の加熱処理を施した銅線の表面の光学顕微鏡像である。
図3(b)は、
図3(a)に示される測定範囲においてラマン散乱測定により得られたマッピング像を示す。
図3(c)は、
図3(a)に示される光学顕微鏡像に含まれる“1”、“2”で示される測定点において測定された2つのラマンスペクトルを示す。
【
図4】
図4(a)は、
図3(b)に示されるマッピング像の各ピクセルに含まれるCu
2Oラマンピークの強度の値を横軸、その値の度数を縦軸とするヒストグラムである。
図4(b)は、
図3(b)に示されるマッピング像を二値化することにより得られた二値化画像である。
【
図5】
図5(a)は、温度20℃、湿度95RH%の環境下で4時間の加熱処理を施した銅線の表面の光学顕微鏡像である。
図5(b)は、
図5(a)に示される測定範囲においてラマン散乱測定により得られたマッピング像を示す。
図5(c)は、
図5(a)に示される光学顕微鏡像に含まれる“1”、“2”で示される測定点において測定された2つのラマンスペクトルを示す。
【
図6】
図6(a)は、
図5(b)に示されるマッピング像の各ピクセルに含まれるCu
2Oラマンピークの強度の値を横軸、その値の度数を縦軸とするヒストグラムである。
図6(b)は、
図5(b)に示されるマッピング像を二値化することにより得られた二値化画像である。
【
図7】
図7(a)は、銅線の加熱処理の処理時間と、Cu
2Oラマンピークの強度の平均値の、処理時間ごとの10~45℃での平均値との関係を示すグラフである。
図7(b)は、銅線の加熱処理の処理時間と、Cu
2Oの占有面積比の、処理時間ごとの10~45℃での平均値との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8(a)は、銅線の加熱処理の処理温度と、Cu
2Oラマンピークの強度の平均値の、処理温度ごとの0~48時間での平均値との関係を示すグラフである。
図8(b)は、銅線の加熱処理の処理温度と、Cu
2Oの占有面積比の、処理温度ごとの0~48時間での平均値との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9(a)、(b)は、本発明に係る導線の酸化度の評価方法に用いられる検査システムの構成例を模式的に示す側面図と上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る導線の酸化度の評価方法は、表層の主成分が銅又は錫である導線の表面の酸化度を評価するものである。ここで、表層の主成分が銅である導線は、典型的には、巻線などに用いられる銅線である。また、表層の主成分が錫である導線は、典型的には、錫めっき銅線である。なお、表層の主成分が銅又は錫であるとは、例えば、表層における銅又は錫の濃度が99.9%以上であることをいう。
【0013】
以下、本発明に係る導線の酸化度の評価方法の一例として、巻線に用いられる銅線の表面の酸化度を評価する方法について説明する。
【0014】
巻線に含まれる銅線には、巻線が用いられる電動モータの仕様に応じて、小径化や平角線化などの加工が施されるが、その加工に伴って銅線の表面に酸化が生じる。本発明に係る導線の酸化度の評価方法によって、巻線に含まれる銅線の表面の酸化度を評価することにより、銅線の酸化に関わる巻線の不良を抑えることができる。
【0015】
銅線の表面の酸化度の評価により、銅線の加工時の温度、湿度、時間などの環境条件と酸化度との関係を知ることができる。例えば、酸化の温度依存性を知ることにより、銅線に酸化が生じやすい加工温度がわかる。また、酸化の時間依存性を知ることにより、加工時間と銅線の酸化度の関係がわかる。また、酸化の湿度依存性を知ることにより、銅線に酸化が生じやすい湿度条件がわかる。
【0016】
そして、銅線の表面の酸化度の評価により得られた上記のような銅線の酸化特性に基づいて、巻線の品質に悪影響を及ぼさない範囲に酸化を抑えるような状況下で銅線の加工やその後の保管等を行うことができる。すなわち、本発明によれば、導線の酸化度の評価方法を用いて銅線の酸化状態を管理する、巻線の品質管理方法を提供することもできる。
【0017】
また、本発明に係る巻線の品質管理方法によって品質を管理された巻線を用いて電動モータを製造することにより、電動モータの品質を管理することができる。すなわち、本発明によれば、電動モータの製造に、巻線の品質管理方法を用いて品質管理された巻線を用いる、電動モータの品質管理方法を提供することができる。この品質管理された電動モータは、例えば、鉄道、xEV(電動車)、及び各種産業機器に内蔵される。
【0018】
本発明に係る導線の酸化度の評価方法においては、ラマン散乱測定を用いて銅線の表面の酸化度の評価を行う。ラマン散乱測定によれば、銅線を破壊することなく、非接触で表面の酸化度の評価を行うことができる。また、ラマン測定装置の共焦点機能を用いることにより、測定領域に凹凸がある場合であっても精度よく測定を行うことができる。
【0019】
また、本発明に係る導線の酸化度の評価方法によれば、後述するように、ラマンスペクトルに含まれる酸化銅の格子振動に帰属されるピークの強度を用いるため、銅線の表面の酸化度を精度よく評価することができる。例えば、元素分析により銅線の表面の成分の分析を行う場合、銅の酸化物に含まれる酸素以外の酸素の情報が混在して得られるため、酸化度を精度よく評価することが難しい。
【0020】
銅線のラマン散乱測定を行う際には、エナメル被膜で被覆される前の状態の銅線であれば、そのままの状態で測定を行い、エナメル被膜が被覆された巻線の状態であれば、測定箇所のエナメル被覆を剥いで導線を露出させ、測定を行う。
【0021】
本発明に係る導線の酸化度の評価方法は、銅線の表面の酸化度を評価する場合、銅線の表面にレーザーを照射し、ラマンスペクトルをマッピング測定する測定工程と、そのマッピング測定により得られた複数のラマンスペクトルにおける、酸化銅の格子振動に帰属されるピークの強度に基づいて、銅線の表面の酸化度を評価する評価工程と、を含む。
【0022】
ここで、マッピング測定とは、測定対象物の表面の所定の測定領域内で測定点(レーザーの照射点)を走査させながら測定を繰り返す測定方法である。マッピング測定により得られる二次元の測定データであるマッピング像は、1回のラマン散乱測定で得られるラマンスペクトルに含まれる酸化銅の格子振動に帰属されるピークの強度のデータを、そのピクセルごとに有する。ラマン散乱測定において銅線の表面に照射されるレーザーのスポット径は、例えば、0.3~2.2μmであり、得られるマッピング像の1ピクセルのサイズは、例えば、2μm×2μmである。
【0023】
ラマンスペクトルに含まれる酸化銅の格子振動に帰属されるピークの強度は、銅線の表面の酸化物の量に応じて変わるため、このピークの強度が銅線の表面の酸化度の評価材料となる。
【0024】
ここで、本実施の形態におけるラマンスペクトルのピークの強度は、ピーク高さ又は積分強度を意味するものとする。例えば、ピークの積分強度やピーク高さは、Pseudo-voigt関数、Lorentz関数、Gauss分布関数などの統計分布関数を用いるフィッティング解析により得られるピークプロファイルを用いて算出されるものであり、ピークプロファイルをバックグラウンド補正した後に求められる。バックグラウンド補正は、蛍光、照射レーザー光起源のレイリー及びミー散乱光、照射レーザー光以外の擾乱光などの不可避の光に起因すると考えられるバックグラウンドの影響を除去するために実施されるものであり、多項式関数やスプライン関数などを用いるフィッティング解析により求められるバックグラウンドプロファイル(ベースライン)を上述のピークプロファイルから差し引いて行われる。また、ピークの積分強度を求める際の積分範囲は、上述のピークプロファイルとバックグラウンドプロファイルの2つの交点の間の範囲である。
【0025】
ラマンスペクトルに含まれる酸化銅の格子振動に帰属されるピークは、例えば、Cu2Oの振動モード2Euの格子振動に帰属されるピーク、CuOの振動モードAgの格子振動に帰属されるピーク、Cu4O3の振動モードA1gに帰属されるピークであり、上記の評価工程には、これらのうちの少なくともいずれか1つを用いることができる。
【0026】
Cu2Oの振動モード2Euの格子振動に帰属されるピークは、ラマンスペクトルにおいて、220cm-1近傍の、190cm-1以上、250cm-1以下の範囲内で最大強度をとる。また、CuOの振動モードAgの格子振動に帰属されるピークは、ラマンスペクトルにおいて、280cm-1近傍の、250cm-1以上、310cm-1以下の範囲内で最大強度をとる。また、Cu4O3の振動モードA1gに帰属されるピークは、ラマンスペクトルにおいて、540cm-1近傍の、510cm-1以上、570cm-1以下の範囲内で最大強度をとる。これらのピークの最大強度をとる波数は、測定時の環境温度などによって、上記の範囲内でシフトし得るが、これらのピークの最大強度をとる波数の大小関係は変わらないため、識別を誤ることはない。例えば、CuOの振動モードAgの格子振動に帰属されるピークがCu2Oの振動モード2Euの格子振動に帰属されるピークよりも低波数側に現れることはない。
【0027】
銅線の表面は、酸化反応により、Cu、Cu2O、Cu4O3、CuOの順にその組成を変化させると考えられる。このため、銅の酸化物のうち、酸化反応の初期に現れるCu2Oの格子振動に帰属されるピークの強度を用いることにより、より精度の高い評価を行うことができる。このため、上記の評価工程においては、Cu2Oの振動モード2Euの格子振動に帰属されるピークの強度を用いることが好ましい。
【0028】
また、Cu2O、Cu4O3、CuOのうち、Cu2Oのバンドギャップが最も大きい。このため、例えば、銅線を編組シールドに用いる場合には、Cu2Oが最もシールド性能を低下させることになる。したがって、シールド性能の観点からは、上記の評価工程において、Cu2Oの振動モード2Euの格子振動に帰属されるピークの強度を用いることが好ましい。
【0029】
また、Cu2OはCuOよりもCuとの熱膨張係数差が大きく、銅線の表面から剥離しやすい。このため、酸化物が銅線から剥がれることによる異物の発生を抑える観点からは、上記の評価工程において、Cu2Oの振動モード2Euの格子振動に帰属されるピークの強度を用いることが好ましい。
【0030】
上記の評価工程では、マッピング測定により得られるマッピング像を用いて銅線の表面の酸化度の評価を行うが、その具体的な方法の例として、マッピング像に含まれる酸化銅の格子振動に帰属されるピークの強度の平均値に基づいて評価を行う方法(方法Aとする)や、マッピング像における、酸化銅が存在すると判定されるピクセルの面積比率に基づいて評価を行う方法(方法Bとする)が挙げられる。
【0031】
方法Aにおいては、マッピング像の各ピクセルに含まれる酸化銅の格子振動に帰属されるピークの強度の値を横軸、その値の度数(出現頻度)を縦軸とするヒストグラムを作成する。そして、作成されたヒストグラムから求められるピークの強度の平均値を用いて、銅線の表面の酸化度を評価する。
【0032】
方法Bにおいては、マッピング像の各ピクセルに含まれる酸化銅の格子振動に帰属されるピークの強度の値に、酸化銅の存在を判定するための閾値を設けて、マッピング像を二値化する。そして、二値化されたマッピング像から求められる酸化銅の占有面積比(酸化銅の存在する領域の面積のマッピング像全体の面積に対する比率)を用いて、銅線の表面の酸化度を評価する。
【0033】
以下に、本発明に係る導線の酸化度の評価方法の実施例として、銅線の表面の酸化度の温度依存性及び時間依存性の評価を実施した結果を示す。
【0034】
図1(a)は、加熱処理を施す前の初期状態の銅線の表面の光学顕微鏡像である。この光学顕微鏡像に含まれる長方形の枠は、ラマン散乱測定の測定範囲を示す。
図1(b)は、
図1(a)に示される測定範囲においてラマン散乱測定により得られたマッピング像を示す。このマッピング像の1ピクセルの大きさは2μm×2μmであり、各々のピクセルにCu
2Oの振動モード2E
uの格子振動に帰属されるピークの強度(以下、Cu
2Oラマンピークと呼ぶ)とCuOの振動モードA
gの格子振動に帰属されるピーク(以下、CuOラマンピークと呼ぶ)の強度のデータが含まれている。
図1(c)は、
図1(a)に示される光学顕微鏡像に含まれる“1”、“2”で示される測定点(十字の中心の点)において測定された2つのラマンスペクトルを示す。
【0035】
図2(a)は、
図1(b)に示されるマッピング像の各ピクセルに含まれるCu
2Oラマンピークの強度の値を横軸、その値の度数(出現頻度)を縦軸とするヒストグラムである。このヒストグラムから、Cu
2Oラマンピークの強度の平均値が3.24と求められる。
【0036】
図2(b)は、
図1(b)に示されるマッピング像の各ピクセルに含まれるCu
2Oラマンピークの強度の値に、Cu
2Oの存在を判定するための閾値を設けて、マッピング像を二値化することにより得られた二値化画像である。ここでは、
図2(a)に示されるヒストグラムにおいて横軸のCu
2Oラマンピーク強度を256(2の8乗)に分割した上で、酸化する前の銅線を基準としたときに、Cu
2Oの面積比が0.1%となるラマンピーク強度を横軸における閾値として二値化を行った。すなわち、Cu
2O面積比が0.1%以上になるラマンピーク強度を含むピクセルにおいてCu
2Oが存在すると判定した。なお、この二値化のための閾値の値は一例であり、状況に応じて適宜設定することができる。この二値化画像から、Cu
2Oの占有面積比が1.5%と求められる。
【0037】
図3(a)は、温度45℃、湿度95RH%の環境下で4時間の加熱処理を施した銅線の表面の光学顕微鏡像である。
図3(b)は、
図3(a)に示される測定範囲においてラマン散乱測定により得られたマッピング像を示す。このマッピング像の1ピクセルの大きさは2μm×2μmであり、各々のピクセルにCu
2OラマンピークとCuOラマンピークの強度のデータが含まれている。
図3(c)は、
図3(a)に示される光学顕微鏡像に含まれる“1”、“2”で示される測定点(十字の中心の点)において測定された2つのラマンスペクトルを示す。
【0038】
図4(a)は、
図3(b)に示されるマッピング像の各ピクセルに含まれるCu
2Oラマンピークの強度の値を横軸、その値の度数(出現頻度)を縦軸とするヒストグラムである。このヒストグラムから、Cu
2Oラマンピークの強度の平均値が124.4と求められる。
【0039】
図4(b)は、
図3(b)に示されるマッピング像の各ピクセルに含まれるCu
2Oラマンピークの強度の値に、Cu
2Oの存在を判定するための閾値を設けて、マッピング像を二値化することにより得られた二値化画像である。ここでは、
図2(b)に示される二値化画像などの他の測定条件で得られた二値化画像から求められるCu
2Oの占有面積比との比較を行うため、
図2(b)に示される二値化画像の二値化のための閾値と同様の条件で閾値を設定した。すなわち、
図4(a)に示されるヒストグラムにおいて横軸のCu
2Oラマンピーク強度を256(2の8乗)に分割した上で、酸化する前の銅線を基準としたときのCu
2Oの面積比が0.1%となるラマンピーク強度の値を二値化のための閾値とした。この二値化画像から、Cu
2Oの占有面積比が100%と求められる。
【0040】
図5(a)は、温度20℃、湿度95RH%の環境下で4時間の加熱処理を施した銅線の表面の光学顕微鏡像である。
図5(b)は、
図5(a)に示される測定範囲においてラマン散乱測定により得られたマッピング像を示す。このマッピング像の1ピクセルの大きさは2μm×2μmであり、各々のピクセルにCu
2OラマンピークとCuOラマンピークの強度のデータが含まれている。
図5(c)は、
図5(a)に示される光学顕微鏡像に含まれる“1”、“2”で示される測定点(十字の中心の点)において測定された2つのラマンスペクトルを示す。
【0041】
図6(a)は、
図5(b)に示されるマッピング像の各ピクセルに含まれるCu
2Oラマンピークの強度の値を横軸、その値の度数(出現頻度)を縦軸とするヒストグラムである。このヒストグラムから、Cu
2Oラマンピークの強度の平均値が8.54と求められる。
【0042】
図6(b)は、
図5(b)に示されるマッピング像の各ピクセルに含まれるCu
2Oラマンピークの強度の値に、Cu
2Oの存在を判定するための閾値を設けて、マッピング像を二値化することにより得られた二値化画像である。ここでは、
図2(b)に示される二値化画像などの他の測定条件で得られた二値化画像から求められるCu
2Oの占有面積比との比較を行うため、
図2(b)に示される二値化画像の二値化のための閾値と同様の条件で閾値を設定した。すなわち、
図6(a)に示されるヒストグラムにおいて横軸のCu
2Oラマンピーク強度を256(2の8乗)に分割した上で、酸化する前の銅線を基準としたときのCu
2Oの面積比が0.1%となるラマンピーク強度の値を二値化のための閾値とした。この二値化画像から、Cu
2Oの占有面積比が24.7%と求められる。
【0043】
上記の条件が異なる3つの測定を含めて、銅線の加熱処理の処理温度と処理時間を変えつつ測定を行い、得られたCu2Oラマンピークの強度の平均値(Cu2O平均強度)を以下の表1、Cu2Oの占有面積比(Cu2O面積比)を以下の表2にそれぞれ示す。
【0044】
【0045】
【0046】
図7(a)は、表1に含まれるCu
2Oラマンピークの強度の平均値に基づいて作成された、銅線の加熱処理の処理時間(経過時間)と、Cu
2Oラマンピークの強度の平均値の、処理時間ごとの10~45℃での平均値(表1の平均値A)との関係を示すグラフである。
図7(b)は、表2に含まれるCu
2Oの占有面積比に基づいて作成された、銅線の加熱処理の処理時間(経過時間)と、Cu
2Oの占有面積比の、処理時間ごとの10~45℃での平均値(表2の平均値C)との関係を示すグラフである。
【0047】
図8(a)は、表1に含まれるCu
2Oラマンピークの強度の平均値に基づいて作成された、銅線の加熱処理の処理温度(環境温度)と、Cu
2Oラマンピークの強度の平均値の、処理温度ごとの0~48時間での平均値(表1の平均値B)との関係を示すグラフである。
図8(b)は、表2に含まれるCu
2Oの占有面積比に基づいて作成された、銅線の加熱処理の処理温度(環境温度)と、Cu
2Oの占有面積比の、処理温度ごとの0~48時間での平均値(表2の平均値D)との関係を示すグラフである。
【0048】
図7(a)、(b)は、銅線の表面の酸化度の時間依存性の判断の指針とすることができ、
図8(a)、(b)は、銅線の表面の酸化度の温度依存性の判断の指針とすることができる。そして、これらから得られる銅線の酸化度に関する情報に基づいて、巻線の品質に悪影響を及ぼさない範囲に酸化を抑えるような状況下で銅線の加工やその後の保管等を行うことができる。
【0049】
なお、
図1(b)、
図3(b)、
図5(b)などのマッピング像の各ピクセルに含まれるCuOラマンピークの強度の値を横軸、その値の度数を縦軸とするヒストグラムを作成したり、マッピング像の各ピクセルに含まれるCuOラマンピークの強度の値に、CuOの存在を判定するための閾値を設けて、マッピング像を二値化したりすることにより、CuOラマンピークの強度に基づいて銅線の表面の酸化度を評価してもよい。さらに、Cu
4O
3の振動モードA
1gに帰属されるピークを用いる場合でも、上記と同様の方法で銅線の表面の酸化度を評価することができる。また、湿度などの、温度、時間以外の加熱処理の条件を振って測定を行うことにより、上記と同様の方法で、銅線の表面の酸化度の他の条件への依存性を調べることができる。
【0050】
本発明に係る導線の酸化度の評価方法におけるラマン散乱測定に用いられるラマン測定装置には、上記の方法Aや方法Bなどの、上記の評価工程を実行するための評価装置が接続されていてもよい。この評価装置は、例えば、上記の方法Aや方法Bなどを実行するプログラムをストレージに格納したパーソナルコンピューターである。すなわち、本発明によれば、導線の酸化度の評価方法における上記の測定工程を実行することのできるラマン測定装置と、導線の酸化度の評価方法における上記の評価工程を実行することのできる評価装置とを備えた、検査システムを提供することができる。
【0051】
図9(a)、(b)は、本発明に係る導線の酸化度の評価方法に用いられる検査システム50の構成例を模式的に示す側面図と上面図である。検査システム50によれば、上述の銅線などの導線70の表面のラマン散乱測定を実施し、導線70の表面の酸化度を評価することができる。
【0052】
検査システム50は、導線70を検査システム50に導入するための導入リール51と、導入リール51により導入された導線70をラマン散乱測定の測定領域まで送り出すための送出リール52と、測定領域を通過した導線70を引き取るための引取リール53と、引取リール53に引き取られた導線70を巻き取るための巻取コイル54と、導入リール51と送出リール52の間に設置された、導線70の進行をガイドするための送出ガイド治具55と、引取リール53と巻取コイル54の間に設置された、導線70の進行をガイドするための引取ガイド治具56と、送出リール52、引取リール53などを支持する支持部57と、送出リール52と引取リール53の間の測定領域において導線70の表面の酸化度を測定するラマン測定装置58とを備える。
【0053】
図9(a)、(b)には、ラマン測定装置58のプローブ部のみを概略的に示す。ラマン測定装置58のプローブ部は、レーザー光Lを導線70に集光させる対物レンズ59を有する。また、ラマン測定装置58に接続された上記の評価装置の図示は省略されている。
【0054】
上記の銅線の表面の酸化度を評価する方法は、銅線以外の表層の主成分が銅である導線の表面の酸化度の評価にも用いることができる。これは、銅線以外の表層の主成分が銅である導線も、銅線と同様に、酸化により表面に銅の酸化物が形成されるためである。
【0055】
また、上記の銅線の表面の酸化度を評価する方法と同様の方法により、錫めっき銅線などの表層の主成分が錫である導線の酸化度の評価を実施することができる。この場合、本発明に係る導線の酸化度の評価方法は、表層の主成分が錫である導線の表面にレーザーを照射し、ラマンスペクトルをマッピング測定する測定工程と、そのマッピング測定により得られた複数のラマンスペクトルにおける、酸化錫の格子振動に帰属されるピークの強度に基づいて、表層の主成分が錫である導線の表面の酸化度を評価する評価工程と、を含む。
【0056】
ラマンスペクトルに含まれる酸化錫の格子振動に帰属されるピークは、例えば、SnOの振動モードA1gの格子振動に帰属されるピークや、SnO2の振動モードA1gの格子振動に帰属されるピークであり、上記の評価工程には、これらのうちの少なくともいずれか1つを用いることができる。
【0057】
SnOの振動モードA1gの格子振動に帰属されるピークは、ラマンスペクトルにおいて、210cm-1近傍の、180cm-1以上、240cm-1以下の範囲内で最大強度をとる。また、SnO2の振動モードA1gの格子振動に帰属されるピークは、ラマンスペクトルにおいて、635cm-1近傍の、605cm-1以上、665cm-1以下の範囲内で最大強度をとる。
【0058】
すなわち、本発明によれば、表層の主成分が銅又は錫である導線の表面にレーザーを照射し、ラマンスペクトルをマッピング測定する測定工程と、前記マッピング測定により得られた複数の前記ラマンスペクトルにおける、酸化物の格子振動に帰属されるピークの強度に基づいて、前記導線の表面の酸化度を評価する評価工程と、を含み、前記表層の主成分が銅である場合の前記酸化物が酸化銅であり、前記表層の主成分が錫である場合の前記酸化物が酸化錫である、導線の酸化度の評価方法を提供することができる。
【0059】
(実施の形態の効果)
上記本発明の実施の形態によれば、ラマン散乱測定を用いて導線の表面の酸化度を評価することにより、導線の表面の酸化度を定量化して評価することのできる導線の酸化度の評価方法、その導線の酸化度の評価方法を用いて銅線の酸化度を定量化して巻線の品質を管理することのできる巻線の品質管理方法、その巻線の品質管理方法を用いる電動モータの品質管理方法、及び導線の酸化度の評価方法に用いることができる検査システムを提供することができる。
【0060】
また、上記実施の形態に係る導線の酸化度の評価方法や、巻線の品質管理方法、電動モータの品質管理方法、検査システムなどは、機械学習や人工知能(AI)などを活用してデータを分析するマテリアルズ・インフォマティクス(MI)を用いた材料開発に適用することもできる。
【0061】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0062】
[1]表層の主成分が銅又は錫である導線の表面にレーザーを照射し、ラマンスペクトルをマッピング測定する測定工程と、前記マッピング測定により得られた複数の前記ラマンスペクトルにおける、酸化物の格子振動に帰属されるピークの強度に基づいて、前記導線の表面の酸化度を評価する評価工程と、を含み、前記表層の主成分が銅である場合の前記酸化物が酸化銅であり、前記表層の主成分が錫である場合の前記酸化物が酸化錫である、導線の酸化度の評価方法。
【0063】
[2]前記評価工程において、前記マッピング測定により得られたマッピング像の各ピクセルに含まれる前記ピークの強度の値を横軸、前記値の出現頻度を縦軸とするヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムから求められる前記ピークの強度の平均値を用いて、前記導線の表面の酸化度を評価する、上記[1]に記載の導線の酸化度の評価方法。
【0064】
[3]前記評価工程において、前記マッピング測定により得られたマッピング像の各ピクセルに含まれる前記ピークの強度の値に前記酸化物の存在を判定するための閾値を設けて、前記マッピング像を二値化し、前記二値化されたマッピング像から求められる前記酸化物の占有面積比を用いて、前記導線の表面の酸化度を評価する、上記[1]に記載の導線の酸化度の評価方法。
【0065】
[4]前記評価工程において、Cu2Oの振動モード2Euの格子振動に帰属されるピークの強度とCuOの振動モードAgの格子振動に帰属されるピークの強度の少なくともいずれか一方に基づいて、前記表層の主成分が銅である前記導線の表面の酸化度を評価する、上記[1]に記載の導線の酸化度の評価方法。
【0066】
[5]前記評価工程において、前記ラマンスペクトルにおいて190cm-1以上、250cm-1以下の範囲内で最大強度をとるピークの強度と前記ラマンスペクトルにおいて250cm-1以上、310cm-1以下の範囲内で最大強度をとるピークの強度の少なくともいずれか一方に基づいて、前記表層の主成分が銅である前記導線の表面の酸化度を評価する、上記[1]に記載の導線の酸化度の評価方法。
【0067】
[6]前記評価工程において、SnOの振動モードA1gの格子振動に帰属されるピークの強度とSnO2の振動モードA1gの格子振動に帰属されるピークの強度の少なくともいずれか一方に基づいて、前記表層の主成分が錫である前記導線の表面の酸化度を評価する、上記[1]に記載の導線の酸化度の評価方法。
【0068】
[7]前記評価工程において、前記ラマンスペクトルにおいて180cm-1以上、240cm-1以下の範囲内で最大強度をとるピークの強度と前記ラマンスペクトルにおいて605cm-1以上、665cm-1以下の範囲内で最大強度をとるピークの強度の少なくともいずれか一方に基づいて、前記表層の主成分が錫である前記導線の表面の酸化度を評価する、上記[1]に記載の導線の酸化度の評価方法。
【0069】
[8]銅線を含む巻線の品質管理方法であって、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の導線の酸化度の評価方法を用いて前記銅線の酸化状態を管理する、巻線の品質管理方法。
【0070】
[9]電動モータの製造に、上記[8]に記載の巻線の品質管理方法を用いて品質管理された巻線を用いる、電動モータの品質管理方法。
【0071】
[10]上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の導線(70)の酸化度の評価方法における前記測定工程を実行することのできるラマン測定装置(58)と、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の導線の酸化度の評価方法における前記評価工程を実行することのできる評価装置と、を備えた、検査システム(50)。
【0072】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0073】
50 検査システム
58 ラマン測定装置
70 導線