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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099962
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】測定システムおよび測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20240719BHJP
   G01B 5/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G01B21/00 Z
G01B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003619
(22)【出願日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 和彦
【テーマコード(参考)】
2F062
2F069
【Fターム(参考)】
2F062AA04
2F062AA51
2F062BB09
2F062CC27
2F062DD23
2F062EE66
2F062FF02
2F062HH01
2F069AA04
2F069AA61
2F069AA66
2F069CC08
2F069DD15
2F069FF07
2F069GG65
2F069HH01
2F069JJ04
(57)【要約】
【課題】プローブ可換式の測定機を用いても測定作業を迅速に行える測定システムおよび測定方法を提供する。
【解決手段】測定システム1は、測定機10と、測定機10に装着可能な複数の候補プローブ131~133と、候補プローブ131~133から選択されて測定機10に装着された選択プローブ130と、測定機10を制御してワークの測定動作を実行させる制御装置20と、を有し、制御装置20は、候補プローブ131~133の各々の測定機10に対する校正値を記録する校正値記録部231と、校正値記録部231から選択プローブ130に対応する校正値を取得する校正値処理部223と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定機と、前記測定機に装着可能な複数の候補プローブと、前記候補プローブから選択されて前記測定機に装着された選択プローブと、前記測定機を制御してワークの測定動作を実行させる制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記候補プローブの各々の前記測定機に対する校正値を記録する校正値記録部と、前記校正値記録部から前記選択プローブに対応する前記校正値を取得する校正値処理部と、を有する測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の測定システムにおいて、
前記校正値記録部は、前記制御装置の内部の記憶装置、または前記制御装置と通信可能に接続された外部の記憶装置に配置され、複数の前記候補プローブに対応する複数の前記校正値が記録されている測定システム。
【請求項3】
請求項1に記載の測定システムにおいて、
前記校正値記録部は、前記候補プローブの各々に配置され、前記候補プローブごとの前記校正値が記録されている測定システム。
【請求項4】
請求項1に記載の測定システムにおいて、
前記校正値は、前記測定機に設置された基準球を用いて取得する測定システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の測定システムにおいて、
前記校正値は、複数の前記測定機の各々に設定された測定機校正値と、複数の前記候補プローブの各々に設定されたプローブ校正値と、から演算される値であり、
前記測定機校正値は、所定の基準測定機に対して前記測定機の各々を校正する値であり、前記プローブ校正値は、前記基準測定機に対して前記候補プローブの各々を校正する値である測定システム。
【請求項6】
複数の候補プローブから選択プローブを選択して測定機に装着し、前記測定機を制御してワークの測定動作を実行させる測定方法であって、
前記測定動作の前に、前記候補プローブの校正値をそれぞれ記録しておき、
前記測定動作の際に、前記候補プローブの校正値のうち前記選択プローブに対応するものを前記選択プローブの校正値として取得する測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプローブ可換式の測定機を用いる測定システムおよび測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
位置測定や形状測定などの測定分野では、プローブ可換式の測定機を用いた測定システムおよび測定方法が多用されている。例えば、ワークの形状寸法の測定には三次元測定機が多用され、三次元測定機に装着される接触式プローブとしては、ワークの形状や測定内容に応じて好適なものが選択される。
測定機に装着されたプローブに対して、測定に先立って校正動作が行われる。例えば、三次元測定機のテーブルに基準球(マスターボール)を設置しておき、三次元測定機を動作させてプローブを基準球の複数点に当接させ、これにより測定機に対するプローブごとの微小な誤差を測定し、校正値として記録しておく。測定時には、校正値を参照することで、誤差が補正された測定値を得ることができる(特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-85162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような校正動作は、測定機にプローブを装着するつど行う必要がある。つまり、プローブを交換した際には、測定機を動作させて基準球に対する当接を複数回繰り返す必要があり、作業時間が必要になり、作業効率の向上に支障があった。
【0005】
本発明の目的は、プローブ可換式の測定機を用いても測定作業を迅速に行える測定システムおよび測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の測定システムは、測定機と、前記測定機に装着可能な複数の候補プローブと、前記候補プローブから選択されて前記測定機に装着された選択プローブと、前記測定機を制御してワークの測定動作を実行させる制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記候補プローブの各々の前記測定機に対する校正値を記録する校正値記録部と、前記校正値記録部から前記選択プローブに対応する前記校正値を取得する校正値処理部と、を有する。
【0007】
このような本発明では、測定動作に先立って、複数の候補プローブのそれぞれについて、測定機に装着した際の校正値を測定し、校正値記録部に記録しておく。測定動作の際には、複数の候補プローブからワークの測定に適したものを選択プローブとして選択し、測定機に装着する。制御装置においては、校正値処理部により、選択プローブに対応する校正値が校正値記録部から読み出され、測定動作における選択プローブの校正値として用いられる。
このように、本発明においては、予め複数の候補プローブの校正値を測定して記録しておくことで、測定動作の際に選択プローブに対応した校正値を取得でき、測定動作のつど校正動作を行う必要がなく、プローブ可換式の測定機を用いても測定作業を迅速に行うことができる。
【0008】
本発明の測定システムにおいて、前記校正値記録部は、前記制御装置の内部の記憶装置、または前記制御装置と通信可能に接続された外部の記憶装置に配置され、複数の前記候補プローブに対応する複数の前記校正値が記録されてもよい。
【0009】
このような本発明では、制御装置の内部の記憶装置または制御装置と通信可能な外部の記憶装置を確保することで校正値記録部を設置できる。そして、候補プローブおよび測定機には何ら加工などが必要ない。さらに、複数の候補プローブの校正値を校正値記録部に一括して記録でき、データのバックアップなどの保守作業が容易である。とくに、制御装置と通信可能な外部の記憶装置に校正値記録部を設置する場合、制御装置が変更された場合でも、外部の記録領域上の校正値記録部をそのまま利用できる。
【0010】
本発明の測定システムにおいて、前記校正値記録部は、前記候補プローブの各々に配置され、前記候補プローブごとの前記校正値が記録されてもよい。
【0011】
このような本発明では、測定機またはその周辺に有線式または無線通信式の読取手段を設置しておくことで、選択プローブとして選択された候補プローブの校正値を読み出し、制御装置に取り込んで利用できる。さらに、校正値が候補プローブに付随することになるので、校正値と候補プローブとの対応を確実にできる。また、後述のように基準測定機に対する校正値を記録する場合、別の測定機で校正値を測定しておくこともできる。
【0012】
本発明の測定システムにおいて、前記校正値は、前記測定機に設置された基準球を用いて取得することができる。
このような本発明では、測定機で一般的な基準球を利用して複数の候補プローブの校正値を容易かつ十分な校正精度で取得することができる。
【0013】
本発明の測定システムにおいて、前記校正値は、複数の前記測定機の各々に設定された測定機校正値と、複数の前記候補プローブの各々に設定されたプローブ校正値と、から演算される値であり、前記測定機校正値は、所定の基準測定機に対して前記測定機の各々を校正する値であり、前記プローブ校正値は、前記基準測定機に対して前記候補プローブの各々を校正する値であるとしてもよい。
【0014】
本発明において、測定機校正値およびプローブ校正値は、1箇所の記憶装置にまとめて記録されてもよいし、測定機校正値を各測定機に記録し、プローブ校正値を各プローブに記録してもよい。
このような本発明では、校正値が測定機校正値とプローブ校正値とに分離されることで、測定機の変更などがあった際には、測定機校正値による校正値の差し替えを行うことで、測定機側の校正値を一定に保つことができる。従って、測定機が変更された場合でも、候補プローブごとのプローブ校正値はそのまま利用できる。また、例えば製造工場の測定機で候補プローブごとのプローブ校正値を測定しておき、ユーザの測定現場に候補プローブとその校正値を搬送し、測定現場の測定機で使用することもでき、測定作業の一層の迅速化が図れる。
【0015】
本発明の測定方法は、複数の候補プローブから選択プローブを選択して測定機に装着し、前記測定機を制御してワークの測定動作を実行させる測定方法であって、前記測定動作の前に、前記候補プローブの校正値をそれぞれ記録しておき、前記測定動作の際に、前記候補プローブの校正値のうち前記選択プローブに対応するものを前記選択プローブの校正値として取得する。
このような本発明においては、前述した本発明の測定システムで説明した通りの作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、予め複数の候補プローブの校正値を測定して記録しておくことで、測定動作の際に選択プローブに対応した校正値を取得でき、測定動作のつど校正動作を行う必要がなく、プローブ可換式の測定機を用いても測定作業を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態を示す模式図。
図2】第1実施形態の要部を示すブロック図。
図3】第1実施形態での校正動作を示すフローチャート。
図4】第1実施形態での校正値テーブルを示す模式図。
図5】第1実施形態での測定動作を示すフローチャート。
図6】本発明の第2実施形態を示すブロック図。
図7】第2実施形態での校正値テーブルを示す模式図。
図8】本発明の第3実施形態を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
図1から図5の各図には本発明の第1実施形態が示されている。
図1には本発明に基づく測定システム1が示されている。
測定システム1は、測定機10およびこれを制御する制御装置20で構成される。
【0019】
測定機10は、本実施形態では既存の三次元測定機であり、テーブル11には測定対象のワーク12が載置されている。測定機10は、門型のフレームを含む移動機構14を有し、移動機構14には接触式のプローブ13が装着されている。測定機10は、制御装置20の制御のもとで移動機構14に装着されたプローブ13を3軸移動させ、ワーク12の表面に接触させることで当該表面の三次元位置を測定可能である。
測定機10は、テーブル11上に基準球15を有し、プローブ13の校正動作に利用することができる。
【0020】
測定機10は、プローブ13を交換可能な可換式である。測定機10の一部または外部にはプローブストッカ16が設置されている。プローブストッカ16には、測定機10に装着可能な複数のプローブ(例えば候補プローブ131,132,133)が格納されている。候補プローブ131~133は、いずれかが選択されて測定機10に装着される(選択プローブ130)。
選択プローブ130の取り出しおよび測定機10への装着を自動化するために、プローブストッカ16はオートプローブチェンジャ機能を備えてもよく、オートプローブチェンジャ機能は制御装置20で制御されてもよい。
【0021】
制御装置20は、動作制御装置21と制御用コンピュータ22とを有する。
動作制御装置21は、測定機10の基本的な動作制御を行うものである。
制御用コンピュータ22は、オペレータの操作を受け付けて動作制御装置21を介して測定機10に測定動作などを実行させるとともに、測定結果あるいは測定機10の状態などを表示あるいは出力することができる。
制御用コンピュータ22は、通信回線を介してネットワーク24に接続され、ネットワーク24上に設置された外部の記憶装置23(いわゆるクラウド上のストレージ)とデータ入出力が可能である。
【0022】
図2には測定システム1の詳細が示されている。
前述した通り、測定機10には、候補プローブ131~133から選択された1つが選択プローブ130として装着される。
候補プローブ131,132,133には、それぞれ個体識別用のプローブID「P1」「P2」「P3」が設定されている。測定機10には、個体識別用の測定機ID「M1」が設定されている。
制御用コンピュータ22には、測定制御部221、測定値処理部222、および校正値処理部223が設置される。これらは、制御用コンピュータ22上で実行されるソフトウェアおよび制御用コンピュータ22の入出力回路により実現される。
【0023】
測定制御部221は、オペレータが指定した動作プログラムに従って動作制御装置21を制御し、後述する校正動作および測定動作を含む各種動作を測定機10に実行させる。
測定値処理部222は、測定機10で測定動作が実行された際に、得られた測定値を処理して表示あるいは出力する。
校正値処理部223は、後述する校正動作で得られたプローブ13の校正値を外部の校正値記録部231に記録するとともに、測定動作に際して装着されたプローブ13の校正値を校正値記録部231から読み出して測定制御部221に設定する。
本実施形態では、校正値記録部231は制御装置20の外部の記憶装置23に設定され、記憶装置23は前述の通りネットワーク24上に設置されている。
【0024】
本実施形態の測定システム1では、測定機10で使用する複数の候補プローブ131~133について、予め校正動作(図3参照)を実行して校正値テーブル(図4参照)を作成して記録しておく。
そして、測定動作(図5参照)では、測定機10に選択プローブ130を交換する際に、校正値テーブルから対応する校正値を読み出し、選択プローブ130の交換ごとの校正動作は省略する。
【0025】
図3には測定システム1における校正動作が示されている。
校正動作では、測定機10で使用する複数の候補プローブ131~133を準備し(手順S11)、測定機10に装着した際の各々の校正値を測定する(手順S12~S15)。すなわち、候補プローブ131~133のいずれかを選択して測定機10に装着し(手順S12)、選択プローブ130で校正動作を行って校正値セットを取得し(手順S13)、得られた校正値セットを選択プローブ130のプローブIDとともに記録する(手順S14)。これらの手順S12~S14を繰り返すことで、全ての候補プローブ131~133の校正動作を終了する。
これらの校正動作は、制御装置20の校正値処理部223により制御される。
【0026】
図4には図3の校正動作で得られる校正値テーブルの一例が示されている。
校正値テーブル2311は、横方向に測定機ID、プローブID、校正値セットである校正値V1~V4が配置され、縦方向に校正したプローブ毎のデータが順次配置される。
測定機IDには、校正動作を行った測定機10の測定機ID「M1」が記録される。
プローブIDには、校正したプローブのプローブID「P1」「P2」「P3」がそれぞれ記録される。
校正値V1~V4には、校正したプローブの校正値がそれぞれ記録される。校正値セットは4項目に限らず、3以下または5以上であってもよい。
校正値V1~V4としては、例えば測定機10に設置された基準球15に対して、その表面の頂点および赤道上の3点の測定値から取得することができる。
【0027】
校正値テーブル2311は、測定機10ごとに校正動作を行って作成される。校正値記録部231には、測定機10が異なる複数の校正値テーブル2312,2313を記録してもよい。例えば、異なる測定機10において同様な校正動作を行い、校正値テーブル2312,2313を作成してもよい。校正値テーブル2312,2313には、それぞれ校正動作を実行した測定機10を示す測定機ID「M2」「M3」が記録される。
これらの校正値テーブル2311~2313は、それぞれ校正値処理部223により作成され、一括して校正値記録部231に記録される。
【0028】
図5には測定システム1における測定動作が示されている。
測定動作では、ワーク12に対する測定内容を指定した動作プログラムを制御装置20に設定し、測定制御部221の制御のもとで測定機10を動作させる。
測定制御部221は、動作プログラムから測定項目を取得し(手順S21)、選択プローブ130の交換要否を判定する(手順S22)。
測定項目で指定される選択プローブ130が、現状で測定機10に装着されている選択プローブ130である場合、測定の実行(手順S25)へ移行する。
測定項目で指定される選択プローブ130が、現状で測定機10に装着されている選択プローブ130と異なる場合、選択プローブ130の交換を行う。
【0029】
選択プローブ130の交換の際には、測定制御部221の制御により、測定機10から現状の選択プローブ130を取り外したのち、複数の候補プローブ131~133から測定項目で指定されるものを選択し、新たな選択プローブ130として測定機10に装着する(手順S23)。
さらに、測定制御部221は新たな選択プローブ130のプローブIDを取得し、校正値処理部223を経由して校正値記録部231から選択プローブ130の校正値セットを取得する(手順S24)。
具体的には、測定機10の測定機IDから校正値テーブル2311~2313(図4参照)のいずれかを選択し、選択プローブ130のプローブID(P1~P3)に対応する校正値V1~V4を読み出す。
読み出された校正値V1~V4は、測定制御部221に返され、現在の選択プローブ130の校正値として測定機10の動作制御に反映される。
【0030】
選択プローブ130の交換(手順S23~S24)ののち、測定制御部221の制御のもとで測定機10により測定項目に応じた測定が実行される(手順S25)。
測定制御部221は、動作プログラムを判定し(手順S26)、未処理の測定項目があれば手順S21~S25を繰返し、全ての測定項目が処理済であれば動作プログラムに基づく測定動作を終了する。
【0031】
以上述べた通り、測定システム1は、測定機10と、測定機10に装着可能な複数の候補プローブ131,132,133と、候補プローブ131,132,133から選択されて測定機10に装着された選択プローブ130と、測定機10を制御してワークの測定動作を実行させる制御装置20と、を有する。
そして、制御装置20は、候補プローブ131,132,133の各々の測定機10に対する校正値を記録する校正値記録部231と、校正値記録部231から選択プローブ130に対応する校正値を取得する校正値処理部223と、を有する。
【0032】
そして、本実施形態においては、測定方法として、複数の候補プローブ131~133から選択プローブ130を選択して測定機10に装着し、測定機10を制御してワーク12の測定動作を実行させるとともに、測定動作の前に、候補プローブ131~133の校正値をそれぞれ記録しておき、測定動作の際に、候補プローブ131~133の校正値のうち選択プローブ130に対応するものを選択プローブ130の校正値として取得している。
【0033】
このような本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態では、測定動作に先立って、複数の候補プローブ131~133のそれぞれについて校正動作(図3参照)を行い、測定機10に装着した際の校正値を測定し、校正値記録部231に記録しておく(図4参照)。測定動作(図5参照)の際には、複数の候補プローブ131~133からワーク12の測定に適したものを選択プローブ130として選択し、測定機10に装着する。制御装置20においては、校正値処理部223により、選択プローブ130に対応する校正値が校正値記録部231から読み出され、測定動作における選択プローブ130の校正値として用いられる。
このように、本実施形態においては、予め複数の候補プローブ131~133の校正値を測定して記録しておくことで、測定動作の際に選択プローブ130に対応した校正値を取得でき、測定動作のつど校正動作を行う必要がなく、プローブ可換式の測定機10を用いても測定作業を迅速に行うことができる。
【0034】
本実施形態では、制御装置20と通信可能な外部の記憶装置23に校正値記録部231を設置しており、候補プローブ131~133および測定機10には何ら加工などが必要ない。さらに、複数の候補プローブ131~133の校正値を校正値記録部231に一括して記録でき、データのバックアップなどの保守作業が容易である。とくに、制御装置20の外部の記憶装置23に校正値記録部231を設置したので、制御装置20が変更された場合でも、外部の記録領域上の校正値記録部231をそのまま利用できる。
【0035】
〔第2実施形態〕
図6および図7には本発明の第2実施形態が示されている。
図6において、本実施形態の測定システム1Aは、基本構成が前述した第1実施形態と同様である。このため、共通の構成については同じ符号を付して重複する説明を省略し、以下には相違点について説明する。
【0036】
前述した第1実施形態では、制御装置20の外部の記憶装置23に校正値記録部231が設置され、校正値記録部231には測定機10ごとの校正値テーブル2311~2313が記録されていた。そして、校正値テーブル2311~2313の各々には、複数の測定機10の各々に対して、複数の候補プローブ131~133を校正して得られた校正値が記録されていた。
これに対し、本実施形態では、制御装置20の外部の記憶装置23Aに、測定機校正値記録部232およびプローブ校正値記録部233という2つの校正値記録部が設置されている。
【0037】
図7において、記憶装置23Aには測定機校正値記録部232およびプローブ校正値記録部233が設置されている。
測定機校正値記録部232には測定機校正値テーブル2321が記録されており、プローブ校正値記録部233にはプローブ校正値テーブル2331が記録されている。
測定機校正値テーブル2321には、測定機IDごとの校正値U1~U4が記録されている。測定機IDごとの校正値U1~U4は、測定機10のいずれか1つ(例えば測定機「M1」)を基準測定機として、この基準測定機に対する他の測定機10(例えば測定機「M2」「M3」)を校正した校正値である。従って、例えば測定機「M2」の動作制御を行う際に、測定機ID「M2」の校正値U1~U4を参照することで、模擬的に測定機「M1」の動作制御が実現できる。
校正値U1~U4は4項目に限らず、3以下または5以上であってもよい。基準測定機は測定機「M1」などの実際の測定機10に限らず、仮想的な測定機を設定して基準測定機としてもよい。
【0038】
プローブ校正値テーブル2331には、プローブIDごとの校正値V1~V4が記録されている。測定機IDごとの校正値V1~V4は、前述した測定機校正値テーブル2321の作成の際に基準とした基準測定機(例えば測定機「M1」)において、複数の候補プローブ131~133の校正動作(図3参照)を行うことで作成される。従って、プローブ校正値テーブル2331は、前述した第1実施形態の校正値テーブル2311~2313のうち測定機IDの項目を除いたものと同様である。
プローブ校正値テーブル2331には、校正の対象とした基準測定機を示す測定機IDを記録してもよく、測定機校正値テーブル2321での校正値U1~U4の選択の際に参照することができる。
これらの測定機校正値テーブル2321およびプローブ校正値テーブル2331は、それぞれ校正値処理部223により作成され、測定機校正値記録部232およびプローブ校正値記録部233に記録される。
【0039】
このような本実施形態においては、例えば測定機10が測定機「M2」であれば、制御装置20には測定機校正値記録部232から、測定機校正値テーブル2321における測定機ID「M2」に該当する校正値U1~U4が読み込まれる。そして、測定動作に選択プローブ130として「P1」を用いる場合、制御装置20にはプローブ校正値記録部233から、プローブ校正値テーブル2331におけるプローブID「P1」に該当する校正値V1~V4が読み込まれる。
その結果、制御装置20においては、測定機ID「M2」に該当する校正値U1~U4により測定機10が「M2」であっても基準測定機「M1」が模擬的に実現され、基準測定機「M1」に対する校正値であるプローブID「P1」に該当する校正値V1~V4によって、適切に校正された測定動作が実行される。
このように、基準測定機に対する個々の測定機10の測定機校正値U1~U4と、基準測定機に対する各候補プローブ131~133のプローブ校正値V1~V4とを併せることにより、個々の測定機10に対する各候補プローブ131~133の校正値とすることができる。
【0040】
このような本実施形態では、校正値が測定機校正値(測定機校正値テーブル2321に記録された校正値U1~U4)とプローブ校正値(プローブ校正値テーブル2331に記録された校正値V1~V4)とに分離されることで、測定機10の変更などがあった際には、測定機校正値による校正値の差し替えを行うことで、測定機側の校正値を一定に保つことができる。
従って、測定機10が変更された場合でも、候補プローブ131~133ごとのプローブ校正値(校正値V1~V4)はそのまま利用できる。
また、例えば製造工場の測定機10で候補プローブ131~133ごとのプローブ校正値を測定しておき、ユーザの測定現場に候補プローブ131~133とその校正値(プローブ校正値テーブル2331)を搬送し、測定現場の測定機10で使用することもでき、測定作業の一層の迅速化が図れる。
【0041】
〔第3実施形態〕
図8には本発明の第3実施形態が示されている。
図8において、本実施形態の測定システム1Bは、基本構成が前述した第1実施形態と同様である。このため、共通の構成については同じ符号を付して重複する説明を省略し、以下には相違点について説明する。
【0042】
前述した第1実施形態では、制御装置20の外部の記憶装置23に校正値記録部231が設置され、校正値記録部231には測定機10ごとの校正値テーブル2311~2313が記録されていた。そして、校正値テーブル2311~2313の各々には、複数の測定機10の各々に対して、複数の候補プローブ131~133を校正して得られた校正値が記録されていた。
一方、前述した第2実施形態では、第1実施形態の記憶装置23に代えて、制御装置20の外部の記憶装置23Aに、測定機校正値記録部232およびプローブ校正値記録部233という2つの校正値記録部が設置されていた。そして、測定機校正値記録部232には測定機校正値テーブル2321が記録されており、プローブ校正値記録部233にはプローブ校正値テーブル2331が記録されていた。
【0043】
このような第1実施形態および第2実施形態に対し、本実施形態では記憶装置23,23Aが省略されている。そして、第2実施形態で述べた測定機IDごとの校正値U1~U4が測定機10に記録され、プローブIDごとの校正値V1~V4が候補プローブ131~133にそれぞれ記録されている。
【0044】
測定機10には、装置内の記憶領域に測定機校正値記録部320が設置されている。
測定機校正値記録部320には、所定の基準測定機に対する当該測定機10の校正値U1~U4が記録されている。これらの校正値U1~U4は、第2実施形態の測定機校正値テーブル2321における、いずれかの測定機IDの校正値U1~U4(例えば測定機ID「M2」の校正値U1~U4)に該当する。
【0045】
候補プローブ131~133には、機器内の記憶領域にプローブ校正値記録部311,312,313が設置されている。
プローブ校正値記録部311,312,313には、それぞれ所定の基準測定機に対する当該候補プローブ131~133の校正値V1~V4が記録されている。これらの校正値V1~V4は、第2実施形態のプローブ校正値テーブル2331における、いずれかのプローブIDの校正値V1~V4(例えばプローブID「P1」の校正値V1~V4)に該当する。
【0046】
制御装置20は、動作制御装置21を介して測定機10と通信を行い、測定機校正値記録部320に記録された校正値U1~U4を取得可能である。
また、制御装置20は、候補プローブ131~133のいずれかが選択プローブ130として測定機10に装着された際に、選択プローブ130のプローブ校正値記録部310(候補プローブ131~133のプローブ校正値記録部311~313のいずれかに相当)に記録された校正値V1~V4を取得可能である。
選択プローブ130のプローブ校正値記録部310を読み出す手段として、測定機10に有線式または無線式の通信機能を設置することができる。
【0047】
このような本実施形態では、基準測定機に対する測定機10の校正値U1~U4と、基準測定機に対する各候補プローブ131~133の校正値V1~V4とを取得することにより、これらを併せて測定機10に対する各候補プローブ131~133の校正値とすることができる。これにより第2実施形態と同様な効果を得ることができる。
さらに、選択プローブ130の校正値V1~V4が、選択プローブ130として選択される候補プローブ131~133に付随することになるので、校正値V1~V4と候補プローブ131~133との対応を確実にできる。
また、選択プローブ130の校正値V1~V4は基準測定機に対する校正値を記録したものであり、測定機10に付随された測定機10の校正値U1~U4により測定機10ごとの校正が得られるため、選択プローブ130の校正値V1~V4は別の測定機10で校正を行ったものを利用することができる。
【0048】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態においては、候補プローブ131~133の3つを例示したが、候補プローブの数は2つまたは4以上であってもよい。また、校正値セットとして校正値V1~V4あるいは校正値U1~U4の4項目を例示したが、3以下または5以上の項目であってもよい。
前記実施形態では、校正値記録部の配置として、制御装置20の外部の記憶装置23,23A、測定機10の記憶領域(測定機校正値記録部320)、および選択プローブ130あるいは候補プローブ131~133の記録領域(プローブ校正値記録部310,311~313)を用いていた。これに対し、制御装置20の内部の記録領域、例えば制御用コンピュータ22の記憶領域や動作制御装置21の記録領域を用いてもよい。さらに、校正値処理部223は、制御用コンピュータ22にソフトウェアで構成されるものに限らず、動作制御装置21に組み込まれるものとしてもよい。
前記実施形態では、校正動作に測定機10の基準球15を用いたが、選択プローブ130の校正値V1~V4などが取得できる他の手段を用いてもよい。また、プローブの校正値セットは、4つの校正値V1~V4に限らず、測定システム1,1A,1Bにおいて必要な数を準備すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明はプローブ可換式の測定機を用いる測定システムおよび測定方法に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1,1A,1B…測定システム、10…測定機、11…テーブル、12…ワーク、13…プローブ、130…選択プローブ、131…候補プローブ、14…移動機構、15…基準球、16…プローブストッカ、20…制御装置、21…動作制御装置、22…制御用コンピュータ、221…測定制御部、222…測定値処理部、223…校正値処理部、23,23A…記憶装置、231…校正値記録部、2311、2312,2313…校正値テーブル、232…測定機校正値記録部、2321…測定機校正値テーブル、233…プローブ校正値記録部、2331…プローブ校正値テーブル、24…ネットワーク、310…プローブ校正値記録部、311,312,313…プローブ校正値記録部、320…測定機校正値記録部、M1,M2,M3…測定機ID、P1,P2,P3…プローブID、S11~S26…手順、U1,U2,U3,U4…校正値、V1,V2,V3,V4…校正値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8