(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099983
(43)【公開日】2024-07-26
(54)【発明の名称】スクアレン誘導体、陽イオン輸送剤、及び抗炎症剤
(51)【国際特許分類】
C07D 323/00 20060101AFI20240719BHJP
A61K 31/357 20060101ALI20240719BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 39/04 20060101ALI20240719BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240719BHJP
【FI】
C07D323/00 CSP
A61K31/357
A61P29/00
A61P39/04
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003655
(22)【出願日】2023-01-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 共創の場形成支援プログラム本格型「Well-being社会を支える革新的食薬資源工学技術に関する国立研究開発法人産業技術総合研究所による研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】礒田 博子
(72)【発明者】
【氏名】トラン・ゴック・リン
(72)【発明者】
【氏名】有村 隆志
(72)【発明者】
【氏名】富永 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一憲
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD07
4B018ME14
4B018MF10
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA16
4C086DA50
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086NA14
4C086ZB11
4C086ZC41
(57)【要約】
【課題】新規なスクアレン誘導体、陽イオン輸送剤、及び抗炎症剤の提供。
【解決手段】下記式(I)で表されるスクアレン誘導体。但し、式(I)においてnは1以上5以下の整数である。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるスクアレン誘導体。
【化1】
但し、式(I)においてnは1以上5以下の整数である。
【請求項2】
前記式(I)におけるnが2又は3である、請求項1に記載のスクアレン誘導体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスクアレン誘導体を有効成分として含む陽イオン輸送剤。
【請求項4】
陽イオンの膜分離系に用いられる、請求項3に記載の陽イオン輸送剤。
【請求項5】
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、鉄族金属イオン、白金族金属イオン、及びアクチノイド系金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンを輸送するための、請求項3に記載の陽イオン輸送剤。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のスクアレン誘導体を有効成分として含む抗炎症剤。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のスクアレン誘導体を含む飲食品。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のスクアレン誘導体を含む医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクアレン誘導体、陽イオン輸送剤、及び抗炎症剤に関する。
【背景技術】
【0002】
スクアレンは、サメの肝油や藻類などから得られるトリテルペンの一種であり、抗酸化作用、ガンマ線照射による保護作用、抗腫瘍効果など様々な生理活性が知られている。
【0003】
特許文献1には、スクアレンが低コレステロール血症の患者に対して血中総コレスレロール上昇作用を有することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、ビタミンA及びその誘導体の制がん剤としての効果と、スクアレン及びその誘導体のがん転移防止剤としての効果の両方を有する、スクアレン-ω-アルコールとビタミンAアシドのエステルの制がん及びがんの転移抑制作用について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-266306号公報
【特許文献2】特公昭60-38370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規なスクアレン誘導体、陽イオン輸送剤、及び抗炎症剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を含む。
[1] 下記式(I)で表されるスクアレン誘導体。
【化1】
但し、式(I)においてnは1以上5以下の整数である。
[2] 前記式(I)におけるnが2又は3である、[1]に記載のスクアレン誘導体。
[3] [1]又は[2]に記載のスクアレン誘導体を有効成分として含む陽イオン輸送剤。
[4] 陽イオンの膜分離系に用いられる、[3]に記載の陽イオン輸送剤。
[5] アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、鉄族金属イオン、白金族金属イオン、及びアクチノイド系金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンを輸送するための、[3]又は[4]に記載の陽イオン輸送剤。
[6] [1]又は[2]に記載のスクアレン誘導体を有効成分として含む抗炎症剤。
[7] [1]又は[2]に記載のスクアレン誘導体を含む飲食品。
[8] [1]又は[2]に記載のスクアレン誘導体を含む医薬。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規なスクアレン誘導体、陽イオン輸送剤、及び抗炎症剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】実験例5の添加濃度毎のGFP発現細胞数を表すグラフである。
【
図4】実験例5の添加濃度毎のGFP発現面積を表すグラフである。
【
図5】実験例5の添加濃度毎のGFP発現強度を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は後述する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変形が可能である。
明細書及び特許請求の範囲において、数値範囲を「~」を用いて表す場合、その数値範囲は「~」の両側の数値を含むものとする。
【0011】
[スクアレン誘導体]
本発明のスクアレン誘導体は、下記式(I)で表される化合物である。
【0012】
【0013】
式(I)中、nは1~5の整数であり、nに応じて選択的に保持するイオンの種類を変えることができる。リチウムイオンを保持する場合はn=1、ナトリウムイオンを保持する場合はn=2、カリウムイオンを保持する場合はn=3、アンモニウムイオンを保持する場合はn=4、バリウムイオンを保持する場合はn=5であることが好ましい。本発明のスクアレン誘導体は優れた抗炎症作用を有する。
【0014】
本発明のスクアレン誘導体は、スクアレン〔下記式(1)で表される化合物〕を出発原料として、2,3-オキシドスクアレン〔下記式(2)で表される化合物;2,3-エポキシスクアレンともいう。〕を合成し、さらに2,3-オキシドスクアレンの2位を12-クラウン-4-エーテル(n=1の場合)、15-クラウン-5-エーテル(n=2の場合)、18-クラウン-6-エーテル(n=3の場合)、21-クラウン-7-エーテル(n=4の場合)、又は24-クラウン-8-エーテル(n=5の場合)(以下、これらのクラウンエーテルを(3×m)-クラウン-m-エーテルと総称する。m=n+3である。)で置換することにより合成できる。
【0015】
【0016】
まず、スクアレンを原料として2,3-オキシドスクアレンを合成する方法について説明する。スクアレンの末端をエポキシ化して2,3-オキシドスクアレンを合成する方法は、例えば、E. E. van Tamelen, T. J. Curphey, “The selective in vivo oxidation of the terminal double bonds in squalene”, Tetrahedron Letters, 3, 1962, 121 -124.に開示されている。後述する方法は一例であり、スクアレンから2,3-オキシドスクアレンを合成する方法として従来公知の方法を用いることができる。
スクアレンは、例えば市販製品を用いることができる。
スクアレンに対して2当量のN-ブロモコハク酸イミドを、エチレングリコールジメチルエーテル水溶液に溶かし、室温(23℃)で1時間撹拌する。反応溶液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー法を用いて精製して、2,3-ブロモヒドリンスクアレンを得る。得られた2,3-ブロモヒドリンスクアレンを塩基性エタノール溶液中で、室温下1時間撹拌する。反応溶液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー法を用いて、5%の酢酸エチルを含むヘキサン留分で精製して、2,3-オキシドスクアレンが得られる。
【0017】
次に、合成した2,3-オキシドスクアレンの2位に、以下の方法により2-ヒドロキシメチル-12-クラウン-4-エーテル又は2-ヒドロキシメチル-15-クラウン-5-エーテル等の求核試薬と反応させて下記式(I)で表される新規スクアレン誘導体を得る。式(I)において、nは1以上5以下の整数である。
【0018】
【0019】
本発明のスクアレン誘導体の製造方法は、2,3-オキシドスクアレンを、例えば2-プロパノール等のアルコールに溶解させて、2-ヒドロキシメチル-12-クラウン-4-エーテル又は2-ヒドロキシメチル-15-クラウン-5-エーテル等の2-ヒドロキシメチル-(3×(n+3))-クラウン-(n+3)-クラウンエーテル(nは1~5の整数)を加えて80℃程度で加熱して反応させることで行われる。放冷後、水を加えて酢酸エチルで抽出してからカラムクロマトグラフィーで精製することにより、本発明のスクアレン誘導体を単離できる。
【0020】
2,3-オキシドスクアレンを溶解させる溶媒は、例えばアセトン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、tert-ブチルアルコール、ジメチルホルムアミド、クロロホルム等を使用することができる。また、添加する2-ヒドロキシメチル-(3×(n+3))-クラウン-(n+3)-エーテルの量は、2,3-オキシドスクアレンに対して、50~500当量の範囲内であることが好ましい。反応温度は50~90℃の範囲内であることが好ましく、反応時間は4~9時間の範囲内であることが好ましい。
【0021】
本発明のスクアレン誘導体は、後述するように陽イオン輸送剤として有用である。また、後述するように抗炎症剤の有効成分としても有用である。
【0022】
[陽イオン輸送剤]
金属イオン等の陽イオンの分離には、現在主として抽出剤による方法が用いられているが、この方法では、処理する陽イオン量と同等以上の抽出剤が必要となる。したがって、処理する陽イオンの量が少ないときは効果的に用いられるものの、例えば、放射性陽イオンの分離除去などを想定した場合、その処理量が多いことから、多量の抽出剤の合成が必要となり非効率となる。実際に数多くの陽イオン抽出剤が開発され、陽イオンの分離、濃縮、除去などに供されているが、これらの抽出剤は陽イオン量に対して同当量以上を必要とする。そのため、多量の抽出剤の合成を行う必要があり、多量の資源、及びその合成のために多くのエネルギーを消費するという問題がある。陽イオン抽出剤を用いた処理方法に代わる方法として、吸着剤による処理も検討されているが、この方法では再生が毎回必要になるため連続的な定常操作ができない点で問題があり、特に放射性廃液の処理に用いた場合その再生は難しく実用的とはいえない。そこで、このような抽出剤や吸着剤による陽イオンの分離方法に代わる、大量の陽イオンの処理を、連続的に、しかも少量の資源又はエネルギーで行う新たな技術の開発が期待されており重要である。
【0023】
本発明者らは、上述した式(I)で表されるスクアレン誘導体と陽イオンとがモル比で1:1の会合特性を示し、かつ、6ヶ月以上の長期にわたり安定的に保持することを見出し、本発明の陽イオン輸送剤を発明するに至った。
【0024】
本発明の陽イオン輸送剤は、式(I)で表されるスクアレン誘導体を有効成分として含む。
ここで「有効成分として」とは、陽イオン輸送剤としての機能、すなわち陽イオンを吸着及び脱離する機能を主として担うという意味である。
【0025】
式(I)で表されるスクアレン誘導体としては、n=2又は3であるものが好ましい。
【0026】
前記陽イオンは、特に限定されないが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、鉄族金属イオン、白金族金属イオン、及びアクチノイド系金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンが好ましく、アルカリ金属イオンがより好ましく、ナトリウムイオン又はカリウムイオンがさらに好ましい。
前記アルカリ金属イオンとしては、例えばリチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、ルビジウムイオン(Rb+)、セシウムイオン(Cs+)、及びフランシウムイオン(Fr+)が挙げられる。
前記アルカリ土類金属イオンとしては、例えばカルシウムイオン(Ca2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)、バリウムイオン(Ba2+)、ラジウムイオン(Ra2+)、ベリリウムイオン(Be2+)、及びマグネシウムイオン(Mg2+)が挙げられる。
前記鉄族金属イオンとしては、例えば鉄(II)イオン(Fe2+)、鉄(III)イオン(Fe3+)、コバルト(II)イオン(Co2+)、コバルト(III)イオン(Co3+)、ニッケル(II)イオン(Ni2+)、及びニッケル(III)イオン(Ni3+)が挙げられる。また、鉄、コバルト、又はニッケルの錯イオンも前記鉄族金属イオンに含める。
【0027】
式(I)で表されるスクアレン誘導体の陽イオン輸送剤としての機能は、式(I)中のクラウンエーテル部位に由来すると考えられる。そのため、クラウンエーテル部位が12-クラウン-4-エーテルに由来する場合(n=1)はリチウムイオンに対する選択性が高く、15-クラウン-5-エーテルに由来する場合(n=2)はナトリウムイオンに対する選択性が高く、18-クラウン-6-エーテルに由来する場合(n=3)はカリウムイオンに対する選択性が高くなるものと考えられる。
【0028】
本発明の陽イオン輸送剤は、膜分離系に用いることができる。
上述した膜分離系では、本発明の陽イオン輸送剤を含有する分離膜、すなわち陽イオン分離膜を用いる。
【0029】
前記陽イオン分離膜の膜材は、陽イオン輸送剤となる化合物、すなわち式(I)で表されるスクアレン誘導体及びこれを溶解する膜液を十分に保持し、膜透過条件下で機械的強度を有するものが好ましい。このような性質をもつ材料であれば特に制約はないが、高分子材料、例えば、酢酸セルロースが好ましく、三酢酸セルロースがより好ましい。
膜液は、使用する陽イオン輸送剤となる化合物によって適宜選定されるが、陽イオン輸送剤となる化合物を安定して溶かし込み、膜外から水中への溶解が少ないものが好ましく用いられる。例えば、2-ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)が好ましい。
溶媒は、陽イオン輸送剤となる化合物、膜液、及び膜材を安定して溶解でき、キャスト後に容易に除去できる溶媒であればよく、例えば、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、又はクロロホルムが好ましく、クロロホルムがより好ましい。
さらに詳細な膜の製造方法は、例えば、J.Membr.Sci.,T.Shinbo,T.Yamaguchi,H.Yanagishita,K.Sakaki,D.Kitamoto,M.Sugiura,84,241-248(1993)、又は繊維学会誌,新保外志夫,金森敏幸,小笠原啓一,山崎章弘,岩坪隆,増岡登志夫,山口智彦,52,105-109(1996)などに記載されている。
【0030】
膜材を溶解する溶媒の量は、膜材が溶解後の溶液の1~3質量%になる量が好ましい。また、膜液は膜材に対して可能な限り多量に加えるのが好ましいが、膜液含有量が増加すると出来上がる膜の機械的強度が低下するため、現実的には膜材に対して重量比で0.1~10倍程度となり、さらに一般的には1~5倍程度となる。式(I)で表されるスクアレン誘導体の膜材への溶解量は、膜材、膜溶媒及び前記スクアレン誘導体によって適宜設定されるものであるが、膜材に可能な限り高い割合で溶解することが好ましい。溶かし込める現実的な限界を考慮すると、0.1~15質量%が好ましく、3~10質量%がより好ましい。上記の混合溶液をできる限り長時間攪拌し均一な溶液とすることが好ましい。一般的には1時間以上が好ましく、可能ならば24時間以上攪拌することがより好ましい。
上記の溶液を、ガラス板などの適当な平滑な平板の上に一定の厚みで展開して乾燥させ、出来上がった膜を静かに剥がし陽イオン分離膜を得ることができる。分離膜の厚さは可能な限り薄いことが好ましいが、薄くなる程できあがる膜の機械的強度が減少するため、25~200μmが好ましく、25~100μm以下がより好ましい。
【0031】
本発明の陽イオン分離膜の使用方法、すなわち陽イオンの分離方法において、好ましく分離される陽イオンとして、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、鉄族金属イオン、白金族金属イオン、及びアクチノイド系金属イオンが挙げられる。より好ましくは、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンであり、アルカリ金属イオンが特に好ましい。上記の好ましく分離される陽イオン(以下、「目的陽イオン」ともいう。)は、分離溶液中に一種のみが溶解していても、複数の種類が同時に溶解していてもよい。また、分離を目的としない他の陽イオンとともに溶解していてもよく、この場合は選択的に上記の目的陽イオンのみを分離することができる。分離溶液に用いられる溶媒は、目的陽イオンを溶解できる溶媒であればよいが、酸性水溶液が好ましく、硝酸水溶液がより好ましい。分離温度は、特に限定されないが、5~50℃が好ましく、35~45℃がより好ましい。分離溶液に含まれる、目的陽イオンの初期濃度は、特に限定されないが、1~10,000ppmが好ましく、10~1,000ppmがより好ましい。
【0032】
[抗炎症剤]
本発明者らは、上述した式(I)で表されるスクアレン誘導体が優れた抗炎症作用を有することを知得し、本発明の抗炎症剤を発明するに至った。
【0033】
本発明の抗炎症剤は、式(I)で表されるスクアレン誘導体を有効成分として含む。
式(I)で表されるスクアレン誘導体としては、n=2又は3であるものが好ましい。
【0034】
本発明の抗炎症剤の抗炎症作用は、例えば後述する実験例のように、M2型マクロファージのマーカーであるMafB(MAF bZIP転写因子B)の遺伝子座の翻訳領域をGFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子に置換したMafB領域GFPノックインマウスから回収したマクロファージを本発明の抗炎症剤で処理し、GFPの緑色蛍光を測定することで、評価することができる。
また、本発明の抗炎症剤の抗炎症作用は、例えばマクロファージ様RAW細胞を用いた細胞毒性評価試験により確認することができる。細胞毒性試験であるMTT試験とは、生細胞でMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾール-3-イウムブロミド、イエローテトラゾール)を可視化する試験であり、MTTは、生細胞においては紫色のホルマザン色素へ還元され、死細胞では還元されない。ジメチルスルホキシドや、酸性エタノール溶液、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の希塩酸溶液を、不溶性のホルマザン色素を可溶化させるために添加し、得られた着色溶液を500~600nmの波長の間の吸光度を分光光度計で測定することで、生細胞の定量化を行う。吸収極大波長は使用する溶媒に依存する。また、リポポリサッカライド(LPS)が誘導する炎症性化学物質である一酸化窒素(NO)産生量の抑制効果を確認するために、NO産生測定試験を行う。RAW細胞は、LPSの添加によりNOを産生し、このNOは単独又はスーパーオキサイドと反応して、DNA障害性を有するペルオキシ亜硝酸を産生し、細胞や組織に障害を与え炎症症状を増悪することが知られている。
【0035】
本発明の抗炎症剤において、有効成分である式(I)で表されるスクアレン誘導体は、1種を単独で、又は2種以上を熊言わせて、用いることができる。
【0036】
本発明の抗炎症剤は、有効成分である式(I)で表されるスクアレン誘導体とそれ以外の成分を含む抗炎症用組成物の形態であってもよい。
【0037】
一態様において、本発明の抗炎症用組成物は、上記式(I)で表されるスクアレン誘導体及び薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。前記薬学的に許容される担体としては、特に制限されず、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、乳化剤、増粘剤、湿潤剤、注射剤用溶剤等が挙げられる。
また、本発明の抗炎症用組成物は添加剤を更に含んでいてもよい。前記添加剤としては、特に制限されず、例えば防腐剤、pH調整剤、安定剤紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、香料等が挙げられる。
前記薬学的に許容される担体及び前記薬学的に許容される添加剤としては、例えば、第十六改正日本薬局方等に記載されている一般的な原料を使用することができる。
【0038】
抗炎症用組成物の剤型としては、例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の経口的に投与する剤型、あるいは、注射剤、坐剤、皮膚外用剤等の非経口的に投与する剤型等が挙げられる。
【0039】
皮膚外用剤としては、例えば、クリーム、ローション、化粧水、乳液、ファンデーション、パック剤、フォーム剤、硬膏剤、軟膏剤、パップ剤、エアゾール剤等の剤型が挙げられる。
【0040】
抗炎症用組成物は、脱毛症の治療薬であってもよいし、化粧料であってもよいし、サプリメント等の食品であってもよい。
【0041】
抗炎症用組成物中の上記式(I)で表されるスクアレン誘導体の含有量は、例えば、0.01~50質量%、0.01~30質量%、0.01~10質量%、0.01~5質量%、0.01~1質量%の範囲が挙げられる。
【0042】
抗炎症剤又は抗炎症用組成物の投与方法は特に制限されず、投与対象者の症状、体重、年齢、性別等に応じて適宜決定すればよい。例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等は経口投与される。また、注射剤は、単独で、又はブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与され、更に必要に応じて、動脈内、筋肉内、皮内、皮下又は腹腔内投与される。坐剤は直腸内投与される。皮膚外用剤は、患部に塗布、貼付又はスプレーされる。
【0043】
抗炎症剤又は抗炎症用組成物の投与量は、投与対象者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、経口投与の場合には、例えば1日あたり0.01~500mg/kg体重の有効成分(上記式(I)で表されるスクアレン誘導体)を投与すればよい。また、注射剤の場合には、例えば1日あたり0.01~100mgの有効成分を投与すればよい。また、坐剤の場合には、例えば1日あたり0.01~100mgの有効成分を投与すればよい。また、皮膚外用剤の場合には、例えば1日あたり0.01~500mgの有効成分を投与すればよい。
【0044】
本発明の抗炎症剤には、医薬や栄養補助食品として、錠剤やカプセとして経口投与する態様のものと、特定保健用食品や機能性表示食品を含む飲食品としての態様のものがある。本発明の抗炎症剤は、炎症の予防、治療に有用である。マクロファージ活性抑制効果を有するため、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎及びアトピー性皮膚炎等の炎症症状、遅延型アレルギー、胃炎及び潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患、関節リウマチ及び変性性骨関節炎等の関節炎等の炎症の他にも、動脈硬化、子宮内膜症、急性呼吸急迫症候群、気管支炎、腎臓移植による障害、急性心筋梗塞、糖尿病、全身性エリテマトーデス、クローン病、腎炎、肝炎、肺炎、IgA腎症、エンドトキシンショック、及び感染症による敗血症等の炎症性疾患を対象とする。
【0045】
本発明の抗炎症剤を医薬や栄養補助食品として用いる場合、その形状は特に限定されず、コーティング錠、糖衣錠、硬ゼラチンカプセル剤、軟ゼラチンカプセル剤、液剤、粉粒状剤、乳剤又は懸濁剤等のいずれの形状でも製剤化できる。製剤化用担体としては特に制限はなく、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、界面活性剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤、発色剤、矯味剤、着香剤、酸化防止剤、防腐剤、呈味剤、酸味剤、甘味剤、強化剤、ビタミン剤、膨張剤、増粘剤、流動性促進剤などの中から、製剤に必要な諸特性を損なわないもので、最終製品の剤形に応じたものを1種又は2種以上選択することができる。
【0046】
前記賦形剤としては、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等が挙げられる。
前記崩壊剤としては、例えばデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
前記結合剤としては、例えばデンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴールが挙げられる。
前記界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート80が挙げられる。
前記滑沢剤としては、例えばタルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコールが挙げられる。
前記流動性促進剤としては、例えば軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。
【0047】
上記医薬や栄養補助食品は、ヒト又はヒト以外の哺乳動物用として用いることができる。経口剤としての服用量、摂取量は、それを使用する対象者の症状、性別、年齢に応じて適宜設定することができる。例えば、成人一人あたり一日に、有効成分である式(I)で表されるスクアレン誘導体を、0.1mg~5g程度摂取できるよう服用することができる。
【0048】
本発明の抗炎症剤を飲食品として用いる場合、特定保健用食品、機能性表示食品として機能を表示して用いるだけでなく、一般飲食品として用いることもできる。
前記飲食品としては、例えば、飲料(清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、粉末飲料、果実飲料、乳飲料、ゼリー飲料など)、菓子類(クッキー、ケーキ、ガム、キャンディー、タブレット、グミ、饅頭、羊羹、プリン、ゼリー、アイスクリーム、シャーベットなど)、水産加工品(魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、はんぺんなど)、畜産加工品(ハンバーグ、ハム、ソーセージ、ウィンナー、チーズ、バター、ヨーグルト、生クリーム、チーズ、マーガリン、発酵乳など)、スープ(粉末状スープ、液状スープなど)、主食類(ご飯類、麺類、パン、シリアルなど)、調味料(マヨネーズ、ショートニング、ドレッシング、ソース、たれ、しょうゆなど)などが挙げられる。
本発明の飲食品には、例えば、成人一人あたり一日に、有効成分である式(I)で表されるスクアレン誘導体を、0.1mg~5g程度摂取できるような量で添加すればよい。
【実施例0049】
以下では実験例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は後述する実験例に限定されるものではない。
【0050】
[実験例1:新規スクアレン誘導体の合成(1)]
式(1)のスクアレンから上述した方法により式(2)の2,3-オキシドスクアレンを合成し、これを原料にして、式(I)のn=2であるクラウンエーテル付加スクアレン(1,2)を合成した。
【0051】
【0052】
<15-クラウン-5-エーテル付加スクアレン(1,2)の合成>
2,3-エポキシスクアレン(式(2)の化合物)100mg(0.23mmol)を2-プロパノール8mLに溶解し、2-ヒドロキシメチル-15-クラウン-5-エーテル2.8g(11.2mmol)を加え、80℃で12時間加熱し、放冷した。水を加えて酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧濃縮後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC-300)を用いて、ヘキサン・酢酸エチル混合溶媒で精製し、15-クラウン-5-エーテル付加スクアレン(2,2)62mg(40%)を無色油状物として得た。この精製物のIRスペクトル、1H-NMRスペクトル、、13C-NMRスペクトル、及びHRMS(高分解能マススペクトル)を以下に示す。
【0053】
15-クラウン-5-エーテル付加スクアレン(1,2)のスペクトルデータ
IR(neat):3469,2913,2858,1731,1665,1445,1378,1357,1294,1247,1125,1090,984,934,840,738cm-1.
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ5.23-5.04(m,5H),3.88-3.56(m,19H),3.52-3.38(m,3H),2.38-2.23(m,1H),2.16-1.90(m,18H),1.68(s,3H),1.66-1.54(brs,15H),1.49-1.35(m,2H),1.14-1.10(d,3H),1.09(s,3H)ppm.
13C-NMR(100MHz,CDCl3)δ135.1(2C),135.0,134.9,131.2,124.5,124.4,124.2(3C),79.0,77.7,75.4,71.1,70.8(3C),70.6(4C),70.2,61.1,39.7(3C),37.0,29.8,28.2(2C),26.7(2C),26.6,25.7,21.5,19.8,17.6,16.0(3C),16.0ppm.
HRMS(ESI,m/z,M+)m/z 676,5292,error 2.1ppm(calcd.for C41H72NaO7 676.5278).
【0054】
【0055】
[実験例2:新規スクアレン誘導体の合成(2)]
式(1)のスクアレンから上述した方法により式(2)の2,3-オキシドスクアレンを合成し、これを原料にして、式(I)のn=3であるクラウンエーテル付加スクアレン(1,3)を合成した。
【0056】
<18-クラウン-6-エーテル付加スクアレン(1,3)の合成>
2,3-オキシドスクアレン(式(2)の化合物)100mg(0.23mmol)を2-プロパノール8mLに溶解し、2-ヒドロキシメチル18-クラウン-6-エーテル3.4g(11.5mmol)を加え、80℃で6時間加熱し、放冷した。水を加えて酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧濃縮後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC-300)を用いて、ヘキサン・酢酸エチル混合溶媒で精製し、18-クラウン-6-エーテル付加スクアレン(2,2)72mg(47%)を無色油状物として得た。この精製物のIRスペクトル、1H-NMRスペクトル、13C-NMRスペクトル、及びHRMS(高分解能マススペクトル)を以下に示す。
【0057】
18-クラウン-6-エーテル付加スクアレン(1,3)のスペクトルデータ
IR(neat)3480,2915,2861,1732,1664,1446,1378,1354,1295,1247,1112,988,943,842,737cm-1.
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ5.21-5.05(m,5H),3.88-3.59(m,23H),3.52-3.41(m,3H),2.24-2.35(m,1H),2.15-1.91(m,18H),1.68(s,3H),1.66-1.55(brs,15H),1.48-1.36(m,2H),1.14-1.10(d,3H),1.09(s,3H)ppm.
13C-NMR(100MHz,CDCl3)δ135.1(2C),135.0,134.9,131.2,124.5,124.4,124.3(3C),78.7,77.7,75.2,71.3,70.8(4C),70.6(5C),69.9,61.1,39.7(3C),37.0,29.8,28.2(2C),26.7(2C),26.6,25.7,21.5,19.8,17.6,16.0(3C),16.0ppm.
HRMS(ESI,m/z,M+)m/z 720.5541,error 0.1ppm(calcd,for C34H60NaO4 720.5540).
【0058】
[実験例3:陽イオン保持機能の評価(1)]
クラウンエーテル付加スクアレン(1,2)のアルカリ金属イオンに対する会合定数を、P. Thordarson, “Determining association constants from titration experiments in supramolecular chemistry”, Chem. Soc. Rev., 40(3), 2011, 1305-1323に記載の方法で求めた。
【0059】
クラウンエーテル付加スクアレン(1,2)のアルカリ金属イオンに対する会合定数(Ka)(対アニオン:SCN-;溶媒:CH3CN)を表1に示す。
【0060】
【0061】
クラウンエーテル付加スクアレン(1,2)とアルカリ金属イオンは、1:1の会合特性を示した。
クラウンエーテル付加スクアレン(1,2)は、ナトリウムイオンに対して選択性を示し、最も大きな会合定数を有していた。
【0062】
クラウンエーテル付加スクアレン(1,2)の3.5ppm付近のクラウンエーテル部位の化学シフトは、アルカリ金属イオンと会合することで低磁場にシフトした。この会合状態は、6か月以上、安定に存在した。
例として、クラウンエーテル付加スクアレン(1,2)単独の場合(上段)と、クラウンエーテル付加スクアレン(1,2)とナトリウムイオンとの会合状態の場合(下段)の
1H-NMRスペクトルを
図1に示す[溶媒:CD
3CN,クラウンエーテル付加スクアレン(1,2)の濃度=1.0×10
-3M,Na
+濃度=1.0×10
-2M]。
【0063】
[実験例4:陽イオン保持機能の評価(2)]
クラウンエーテル付加スクアレン(1,3)のアルカリ金属イオンに対する会合定数を実験例3と同様にして求めた。
【0064】
クラウンエーテル付加スクアレン(1,3)のアルカリ金属イオンに対する会合定数(Ka)(対アニオン:SCN-;溶媒:CH3CN)を表2に示す。
【0065】
【0066】
クラウンエーテル付加スクアレン(1,3)とアルカリ金属イオンは、1:1の会合特性を示した。
クラウンエーテル付加スクアレン(1,3)は、カリウムイオンに対して選択性を示し、最も大きな会合定数を有していた。
【0067】
クラウンエーテル付加スクアレン(1,3)の3.5ppm付近のクラウンエーテル部位の化学シフトは、アルカリ金属イオンと会合することで低磁場にシフトした。この会合状態は、6か月以上、安定に存在した。
例として、クラウンエーテル付加スクアレン(1,3)単独の場合(上段)と、クラウンエーテル付加スクアレン(1,3)とカリウムイオンとの会合状態の場合の
1H-NMRスペクトルを
図2に示す[溶媒:CD
3CN,クラウンエーテル付加スクアレン(1,3)の濃度=1.0×10
-3M,K
+濃度=1.0×10
-2M]。
【0068】
[実験例5:抗炎症作用の評価]
式(I)で表されるスクアレン誘導体の抗炎症作用は、M2型マクロファージのマーカーであるMafB(MAF bZIP転写因子B)の遺伝子座の翻訳領域をGFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子に置換したMafB領域GFPノックインマウスから回収したマクロファージを本発明の抗炎症剤で処理し、GFPの緑色蛍光を測定することで、評価した。
【0069】
<実験手順>
(1)MafB領域GFPノックインマウス(筑波大動物資源センターから入手)の腹腔内にチオグリコレート培地(5%,2mL)を注射し、炎症を誘導した。
(2)チオグリコレート培地投与3日後に、マウス腹腔内からマクロファージを含む腹腔液を回収した。
(3)回収した腹腔液を1000×g、3分間の遠心処理し、マクロファージを回収した。
(4)回収したマクロファージを、培地を入れたマイクロプレートに1×10
5cells/mLとなるように播種した。培地構成は、300mL DMEM(高グルコース)、50mL FBS(ウシ胎児血清)、5mL PS(ペニシリンストレプトマイシン)とした。
(5)24時間の培養後、実験例1で合成したクラウンエーテル付加スクアレン(1,2)を、終濃度0μg/mL(コントロール),10μg/mL,25μg/mL,50μg/mL,75μg/mL,100μg/mLとなるようにマイクロプレートの各ウェルに添加した。
(6)24時間の培養後、GFP発現の解析を行った。GFP発現の解析は、画像解析を行い、GFP発現細胞の数、GFP発現面積、GFP発現の強度を計測した。
GFP発現の解析結果を、
図3(GFP発現細胞の数)、
図4(GFP発現面積)、及び
図5(GFP発現の強度)に示す。
【0070】
マクロファージを本発明の新規スクアレン誘導体で処理したことにより、GFP発現細胞数の有意な増加、GFP発現面積の有意な増加、及びGFP発現強度の有意な増加が認められ、本発明の新規スクアレン誘導体は抗炎症作用を有することが示唆された。
本発明の陽イオン輸送剤は、膜中のわずかな輸送剤が供給側の水相に接して陽イオンを膜中に取り込み、可溶化して膜中を移動し、反対の受容側の水相との界面で陽イオンを放出するというシステムの中で、少量の輸送剤により多量の陽イオンを連続的に分離し、濃縮することができるため、特に膜分離系に用いると有用である。また、生体内の炎症反応は、生体への異物の浸入、感染、外傷、火傷あるいはアレルゲンなどの有害刺激が作用したときに起こる生体防御反応であるだけでなく、多くの疾患の病態基盤に炎症が存在すると考えられている。本発明の新規スクアレン誘導体は、より低濃度で抗炎症効果を発揮することから、無理なく摂取可能な抗炎症剤として、炎症予防や症状改善効果が期待される。