(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025100195
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】放射線撮影システム、放射線撮影方法、及び放射線撮影プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20250626BHJP
【FI】
A61B6/00 520M
A61B6/00 520Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217393
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北野 浩一
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA03
4C093AA13
4C093CA15
4C093CA34
4C093EA02
4C093EA14
4C093FA13
4C093FA14
4C093FA15
4C093FA16
4C093FA18
4C093FA32
4C093FA42
4C093FA44
4C093FA53
4C093FA54
4C093FA59
4C093FB08
4C093FB09
4C093FD09
(57)【要約】
【課題】放射線の透視撮影と一般撮影とを切り替えて実行可能な放射線撮影システムにおいて、一般撮影の適切な撮影条件を導出することができる放射線撮影システム、放射線撮影方法、及び放射線撮影プログラムを得る。
【解決手段】放射線撮影システムは、透視撮影における放射線源から放射線検出器に対して照射される放射線の線量制御に用いられる情報と、予め登録された一般撮影における撮影条件を含む撮影オーダーとに基づいて、透視撮影後に行われる一般撮影における撮影条件を導出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプロセッサを備え、かつ所定のフレームレートで複数枚の放射線画像を連続的に撮影する透視撮影と、1枚の放射線画像を記録する一般撮影とを切り替えて実行可能な放射線撮影システムであって、
前記プロセッサは、
透視撮影における放射線源から放射線検出器に対して照射される放射線の線量制御に用いられる情報と、予め登録された一般撮影における撮影条件を含む撮影オーダーとに基づいて、透視撮影後に行われる一般撮影における撮影条件を導出する
放射線撮影システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
導出した撮影条件を表示する制御を行う
請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項3】
前記撮影オーダーは、被検体の年齢を含み、
前記プロセッサは、
前記被検体の年齢が第1の閾値以下であるか、又は第2の閾値以上である場合、導出した撮影条件よりも放射線の線量が低くなる撮影条件を更に導出する
請求項1又は請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項4】
前記撮影オーダーは、被検体の年齢及び体格に関する情報の少なくとも一方を含み、
前記プロセッサは、
前記被検体の年齢及び体格に関する情報の少なくとも一方に応じた複数の前記撮影条件を導出する
請求項1又は請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、
透視撮影により得られた放射線画像のコントラストを表す指標値に基づいて、透視撮影後に行われる一般撮影における撮影条件としての管電圧を導出する
請求項1又は請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項6】
前記プロセッサは、
放射線検出器の検出面における放射線の照射面積が前記放射線検出器における放射線を検出可能な最大面積以下となる条件を満たす場合に、撮影モードを透視撮影モードに設定する
請求項1又は請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項7】
前記条件は、放射線源から前記検出面までの距離が設定値以下であるという条件である
請求項6に記載の放射線撮影システム。
【請求項8】
少なくとも一つのプロセッサを備え、かつ所定のフレームレートで複数枚の放射線画像を連続的に撮影する透視撮影と、1枚の放射線画像を記録する一般撮影とを切り替えて実行可能な放射線撮影システムの前記プロセッサが、
透視撮影における放射線源から放射線検出器に対して照射される放射線の線量制御に用いられる情報と、予め登録された一般撮影における撮影条件を含む撮影オーダーとに基づいて、透視撮影後に行われる一般撮影における撮影条件を導出する
処理を実行する放射線撮影方法。
【請求項9】
少なくとも一つのプロセッサを備え、かつ所定のフレームレートで複数枚の放射線画像を連続的に撮影する透視撮影と、1枚の放射線画像を記録する一般撮影とを切り替えて実行可能な放射線撮影システムの前記プロセッサに、
透視撮影における放射線源から放射線検出器に対して照射される放射線の線量制御に用いられる情報と、予め登録された一般撮影における撮影条件を含む撮影オーダーとに基づいて、透視撮影後に行われる一般撮影における撮影条件を導出する
処理を実行させるための放射線撮影プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線撮影システム、放射線撮影方法、及び放射線撮影プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、X線透視撮影装置において、被検体の体厚と管電圧との関係を示すデータに基づいて、透視撮影における管電圧及びmAs値を設定する技術が開示されている。なお、mAs値とは、管電流[mA]と照射時間[sec]とを乗算して得られる数値を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療分野において、例えば、胃バリウム検査及び膀胱造影等の検査、もしくは整形整復術等の治療の補助を目的として放射線透視撮影が行われる。また、検査又は治療の補助を目的とした場合でも、透視撮影に加えて一般撮影が行われることによって、1枚の放射線画像を記録用に残すことが行われる場合がある。この場合、1つのシステムによって、放射線の透視撮影と一般撮影とを切り替えて実行できると、撮影効率を向上させることができ、好ましい。更に、この場合、一般撮影において、被検体及び撮影対象部位等に応じて、適切な撮影条件を導出できることが好ましい。特許文献1に記載の技術では、一般撮影における撮影条件については考慮されていない。なお、透視撮影とは、所定のフレームレートで複数枚の放射線画像を連続的に撮影すること(すなわち、動画像撮影)を意味する。また、一般撮影とは、放射線技師等のユーザによる撮影指示に応じて1枚の放射線画像を記録すること(すなわち、静止画像撮影)を意味する。
【0005】
本開示は、以上の事情を鑑みてなされたものであり、放射線の透視撮影と一般撮影とを切り替えて実行可能な放射線撮影システムにおいて、一般撮影の適切な撮影条件を導出することができる放射線撮影システム、放射線撮影方法、及び放射線撮影プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の放射線撮影システムは、少なくとも一つのプロセッサを備え、かつ所定のフレームレートで複数枚の放射線画像を連続的に撮影する透視撮影と、1枚の放射線画像を記録する一般撮影とを切り替えて実行可能な放射線撮影システムであって、プロセッサは、透視撮影における放射線源から放射線検出器に対して照射される放射線の線量制御に用いられる情報と、予め登録された一般撮影における撮影条件を含む撮影オーダーとに基づいて、透視撮影後に行われる一般撮影における撮影条件を導出する。
【0007】
第2の態様の放射線撮影システムは、第1の態様の放射線撮影システムにおいて、プロセッサは、導出した撮影条件を表示する制御を行う。
【0008】
第3の態様の放射線撮影システムは、第1の態様又は第2の態様の放射線撮影システムにおいて、撮影オーダーは、被検体の年齢を含み、プロセッサは、被検体の年齢が第1の閾値以下であるか、又は第2の閾値以上である場合、導出した撮影条件よりも放射線の線量が低くなる撮影条件を更に導出する。
【0009】
第4の態様の放射線撮影システムは、第1の態様又は第2の態様の放射線撮影システムにおいて、撮影オーダーは、被検体の年齢及び体格に関する情報の少なくとも一方を含み、プロセッサは、被検体の年齢及び体格に関する情報の少なくとも一方に応じた複数の撮影条件を導出する。
【0010】
第5の態様の放射線撮影システムは、第1の態様から第4の態様の何れか1態様の放射線撮影システムにおいて、プロセッサは、透視撮影により得られた放射線画像のコントラストを表す指標値に基づいて、透視撮影後に行われる一般撮影における撮影条件としての管電圧を導出する。
【0011】
第6の態様の放射線撮影システムは、第1の態様から第5の態様の何れか1態様の放射線撮影システムにおいて、プロセッサは、放射線検出器の検出面における放射線の照射面積が放射線検出器における放射線を検出可能な最大面積以下となる条件を満たす場合に、撮影モードを透視撮影モードに設定する。
【0012】
第7の態様の放射線撮影システムは、第6の態様の放射線撮影システムにおいて、上記条件は、放射線源から検出面までの距離が設定値以下であるという条件である。
【0013】
第8の態様の放射線撮影方法は、少なくとも一つのプロセッサを備え、かつ所定のフレームレートで複数枚の放射線画像を連続的に撮影する透視撮影と、1枚の放射線画像を記録する一般撮影とを切り替えて実行可能な放射線撮影システムのプロセッサが、透視撮影における放射線源から放射線検出器に対して照射される放射線の線量制御に用いられる情報と、予め登録された一般撮影における撮影条件を含む撮影オーダーとに基づいて、透視撮影後に行われる一般撮影における撮影条件を導出する処理を実行する。
【0014】
第9の態様の放射線撮影プログラムは、少なくとも一つのプロセッサを備え、かつ所定のフレームレートで複数枚の放射線画像を連続的に撮影する透視撮影と、1枚の放射線画像を記録する一般撮影とを切り替えて実行可能な放射線撮影システムのプロセッサに、透視撮影における放射線源から放射線検出器に対して照射される放射線の線量制御に用いられる情報と、予め登録された一般撮影における撮影条件を含む撮影オーダーとに基づいて、透視撮影後に行われる一般撮影における撮影条件を導出する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、放射線の透視撮影と一般撮影とを切り替えて実行可能な放射線撮影システムにおいて、一般撮影の適切な撮影条件を導出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】放射線撮影システムを構成する各装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】コンソールの機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】放射線源を制御する制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】放射線検出器を制御する制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】第1画像処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】第2画像処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】放射線画像撮影処理の一例を示すシーケンス図である。
【
図11】放射線画像撮影処理の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0018】
まず、
図1を参照して、放射線撮影システム2の構成を説明する。
図1に示すように、放射線撮影システム2は、被検体の一例としての患者PにX線又はγ線等の放射線Rを照射して患者Pの放射線画像を撮影するシステムであり、放射線技師等の操作者によって操作される。放射線撮影システム2は、所定のフレームレートで複数枚の放射線画像を連続的に撮影する透視撮影と、1枚の放射線画像を記録する一般撮影とを切り替えて実行可能である。放射線撮影システム2は、放射線源10、放射線検出器11、電圧発生器12、制御装置13、コンソール14、立位撮影台15S、臥位撮影台15L、画像処理装置16、及びディスプレイ17を含む。放射線源10、放射線検出器11、電圧発生器12、制御装置13、立位撮影台15S、臥位撮影台15L、及びディスプレイ17は、例えば医療施設の放射線撮影室に設置される。一方、コンソール14及び画像処理装置16は、例えば放射線撮影室の隣室の制御室に設置される。放射線源10及び放射線検出器11はそれぞれ1台ずつ用意されており、立位撮影台15S及び臥位撮影台15Lで兼用される。
【0019】
放射線源10は、放射線Rを出射する放射線管20と、放射線Rの照射野を限定する照射野限定器(コリメータともいう)21とを含む。放射線管20には、例えば、フィラメント、ターゲット、及びグリッド電極等が設けられる。陰極であるフィラメントと陽極であるターゲットの間には、電圧発生器12から電圧が印加される。このフィラメントとターゲットの間に印加される電圧は、管電圧と呼ばれる。フィラメントは、印加された管電圧に応じた熱電子をターゲットに向けて放出する。ターゲットは、フィラメントから放出された熱電子の衝突によって放射線Rを放射する。グリッド電極は、フィラメントとターゲットの間に配置される。グリッド電極は、電圧発生器12から印加される電圧に応じて、フィラメントからターゲットに向かう熱電子の流量を変更する。このフィラメントからターゲットに向かう熱電子の流量は、管電流と呼ばれる。
【0020】
照射野限定器21には、放射線管20からの放射線Rが入射する入射開口と、放射線Rが出射する出射開口とが形成される。出射開口の近傍には、4枚の遮蔽板が設けられている。遮蔽板は、例えば鉛等の放射線Rを遮蔽する材料で形成される。遮蔽板は、四角形の各辺上に配置、換言すれば井桁状(checkered pattern)に組まれており、放射線Rを透過させる四角形の照射開口を形成する。照射野限定器21は、各遮蔽板の位置を変更することで照射開口の大きさを変化させ、これにより放射線Rの照射野を変更する。
【0021】
放射線源10は、支柱22によって放射線撮影室の天井から吊り下げられる。支柱22は、天井に巡らされたレールに車輪を介して取り付けられている。支柱22、ひいては放射線源10は、レール及び車輪によって、放射線撮影室内において水平方向に移動可能である。また、支柱22は高さ方向に伸縮可能であり、これにより放射線源10は高さ方向に移動可能である。さらに、放射線源10は、紙面と直交する軸を回転軸として、支柱22に対して回転可能である。
【0022】
また、放射線源10は、放射線源10の位置を検出する位置センサを含む。例えば、位置センサは、可変抵抗を備えており、放射線源10の位置に応じて変化する可変抵抗の抵抗値に基づいて、放射線源10の位置を検出する。放射線源10の位置は、例えば、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸の3軸によって構成される直交座標系で表される。位置センサにより検出された放射線源10の位置は、制御装置13に対して送信される。
【0023】
放射線検出器11は、可搬型であり、患者Pを透過した放射線Rを検出して、患者Pの放射線画像を出力する。放射線検出器11は、放射線画像を画像処理装置16に送信する。放射線検出器11は、立位撮影台15S又は臥位撮影台15Lに収容されて用いられる。この他、放射線検出器11は、放射線撮影室において立位撮影台15S又は臥位撮影台15Lから取り外して患者Pに持たせた状態で用いられたり、病室のベッドに仰臥する患者Pの下に置かれた状態で用いられたりする。なお、
図1では、立位撮影台15Sの前にポジショニングされた患者Pの胸部の放射線画像を撮影する様子を例示している。
【0024】
電圧発生器12は、放射線管20に印加する管電圧を発生する。電圧発生器12と放射線管20とは、電圧ケーブルで接続される。この電圧ケーブルを通じて、電圧発生器12において発生した管電圧が放射線管20に供給される。
【0025】
制御装置13は、放射線Rの照射条件に応じて電圧発生器12を介して放射線源10の動作を制御する。照射条件は、放射線管20に印加する管電圧、管電流、及び放射線Rの照射時間を含む。なお、管電流と照射時間の代わりに、管電流と照射時間の積、いわゆるmAs値を照射条件としてもよい。制御装置13は、透視撮影では、前のフレームの放射線画像から導出される放射線検出器11へ到達した放射線Rの線量に基づいて、次のフレームにおける照射条件を決定する。これにより、制御装置13は、透視撮影では、放射線Rの照射中における各フレームでの放射線Rの線量制御を行う。
【0026】
制御装置13には、照射スイッチ(図示省略)を通じて、操作者により放射線撮影の開始指示が入力される。照射スイッチは制御室及び撮影室の少なくとも一方に設置される。照射スイッチは、手で操作するスイッチでもよいし、足で操作するスイッチでもよい。開始指示が入力された場合、制御装置13は、照射条件に応じて電圧発生器12を動作させ、放射線管20から放射線Rを出射させる。
【0027】
また、制御装置13は、放射線源10から、立位用ホルダ27S又は臥位用ホルダ27Lに収容された放射線検出器11の検出面までの距離(以下、「SID(Source to Image receptor Distance)」という)を導出する。前述したように、制御装置13は、位置センサから送信された放射線源10の位置を取得する。また、立位用ホルダ27S及び臥位用ホルダ27Lの位置は既知である。従って、制御装置13は、放射線源10の位置と、立位用ホルダ27Sの位置とに基づいて、放射線検出器11が立位用ホルダ27Sに収容された場合のSIDを導出することができる。また、制御装置13は、放射線源10の位置と、臥位用ホルダ27Lの位置とに基づいて、放射線検出器11が臥位用ホルダ27Lに収容された場合のSIDを導出することができる。以下では、放射線源10が移動されるたびに制御装置13がSIDを導出することによって、SIDが既知であるものとする。
【0028】
コンソール14は、例えばパーソナルコンピュータである。コンソール14には、後述する撮影オーダー66が予め登録される。
【0029】
立位撮影台15Sは、スタンド25、接続部26、及び立位用ホルダ27S等を有する。スタンド25は、撮影室の床面に設置される台座28と、台座28から高さ方向に延びる支柱29とで構成される。接続部26は、立位用ホルダ27Sをスタンド25に接続する。接続部26、ひいては立位用ホルダ27Sは、支柱29に対して高さ方向に移動可能であり、患者Pの身長、あるいは撮影部位に応じた高さ調節が可能となっている。
【0030】
立位用ホルダ27Sは箱状であり、内部に放射線検出器11を収容する。立位用ホルダ27Sは、大部分がアルミ、ステンレスといった電磁波遮蔽性を有する導電性材料によって形成される。また、立位用ホルダ27Sは、放射線源10と対向する前面がカーボン等の放射線Rを透過する材料によって形成されている。
【0031】
臥位撮影台15Lは、撮影室の床面に設置される台座30、接続部31、天板32、及び臥位用ホルダ27L等を有する。接続部31は、天板32を台座30に接続する。台座30は昇降式であり、これにより天板32及び臥位用ホルダ27Lは高さ調節が可能となっている。天板32は、患者Pが仰臥することができる長さ及び幅を有する矩形板状であり、カーボン等の放射線Rを透過する材料によって形成されている。
【0032】
臥位用ホルダ27Lは、接続部31によって形成された台座30と天板32との間のスペースに配されている。臥位用ホルダ27Lは、天板32によって上部が覆われた箱状であり、内部に放射線検出器11を収容する。臥位用ホルダ27Lは、アルミ、ステンレスといった電磁波遮蔽性を有する導電性材料によって形成される。臥位用ホルダ27Lは、スライド機構によって、天板32の長辺方向に沿う方向にスライド移動可能である。
【0033】
画像処理装置16は、第1画像処理装置16A及び第2画像処理装置16Bを含む。第1画像処理装置16Aは、パーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータであり、一般撮影により得られた放射線画像に対して画像処理を行う。第2画像処理装置16Bは、透視撮影専用のコンピュータであり、透視撮影により得られた放射線画像に対して画像処理を行う。
【0034】
ディスプレイ17は、液晶ディスプレイ又はEL(Electro Luminescence)ディスプレイである。ディスプレイ17は、キャスター付きのディスプレイカートに設置され、放射線撮影室内を移動可能とされる。ディスプレイ17は、画像処理装置16に接続される。
【0035】
図2に示すように、放射線検出器11は、筐体40と検出パネル41とを有する。筐体40は、平面形状が矩形の偏平な略直方体形状をしており、内部に検出パネル41を収納する。筐体40は、前面の大部分がカーボン等の放射線Rを透過する材料によって形成されている。放射線検出器11は、この筐体40の前面が放射線源10に対向する姿勢で立位用ホルダ27S又は臥位用ホルダ27Lにセットされる。
【0036】
検出パネル41は、放射線R、又はシンチレータによって放射線Rから変換された可視光に感応して信号電荷を発生する画素が複数配列された構成である。筐体40には、検出パネル41の他にも、後述する制御装置18が内蔵される。また、筐体40には、通信部、及び各部に電力を供給するバッテリー等も内蔵される。なお、放射線検出器11としては、検出パネル41の代わりにイメージングプレートが内蔵された、いわゆるCR(Computed Radiography)カセッテでもよい。
【0037】
筐体40の放射線Rが照射される面が放射線検出器11の検出面に相当する。本実施形態では、検出パネル41における全ての画素により構成される検出面の面積が、放射線検出器11における放射線Rを検出可能な最大面積である。
【0038】
次に、
図3を参照して、制御装置13、コンソール14、第1画像処理装置16A、第2画像処理装置16B、及び制御装置18のハードウェア構成を説明する。
図3に示すように、制御装置13は、CPU(Central Processing Unit)50、一時記憶領域としてのメモリ51、及び不揮発性の記憶部52を含む。CPU50は、プロセッサの一例である。
【0039】
記憶部52は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はフラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部52には、制御プログラム53が記憶される。CPU50は、記憶部52から制御プログラム53を読み出してからメモリ51に展開し、展開した制御プログラム53を実行する。
【0040】
コンソール14は、CPU60、一時記憶領域としてのメモリ61、不揮発性の記憶部62、キーボードとマウス等の入力装置64、及び液晶ディスプレイ又はELディスプレイ等のディスプレイ65を含む。CPU60は、プロセッサの一例である。
【0041】
記憶部62は、HDD、SSD、又はフラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部62には、情報処理プログラム63が記憶される。CPU60は、記憶部62から情報処理プログラム63を読み出してからメモリ61に展開し、展開した情報処理プログラム63を実行する。
【0042】
また、記憶部62には、予め登録された撮影オーダー66が記憶される。撮影オーダー66は、一般撮影における放射線画像の撮影条件の一例としての放射線Rの照射条件と、透視撮影における放射線画像の撮影条件の一例としての放射線Rの照射条件と、を含む。また、撮影オーダー66は、患者Pの年齢、患者Pの体格に関する情報、及び撮影部位等の患者情報を含む。
【0043】
第1画像処理装置16Aは、CPU70、一時記憶領域としてのメモリ71、及び不揮発性の記憶部72を含む。CPU70は、プロセッサの一例である。記憶部72は、HDD、SSD、又はフラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部72には、画像処理プログラム73が記憶される。CPU70は、記憶部72から画像処理プログラム73を読み出してからメモリ71に展開し、展開した画像処理プログラム73を実行する。
【0044】
第2画像処理装置16Bは、FPGA(Field Programmable Gate Array)80、一時記憶領域としてのメモリ81、及び不揮発性の記憶部82を含む。FPGA80は、プロセッサの一例である。記憶部82は、HDD、SSD、又はフラッシュメモリ等によって実現される。FPGA80は、放射線画像に対して行う画像処理のロジックが予めプログラムされた論理回路を含む。
【0045】
制御装置18は、CPU90、一時記憶領域としてのメモリ91、不揮発性の記憶部92、及び画像メモリ94を含む。CPU90は、プロセッサの一例である。記憶部92は、HDD、SSD、又はフラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部92には、制御プログラム93が記憶される。CPU90は、記憶部92から制御プログラム93を読み出してからメモリ91に展開し、展開した制御プログラム93を実行する。画像メモリ94は、所定の枚数分の放射線画像を記憶可能な記憶容量を有する。
【0046】
次に、
図4を参照して、コンソール14の機能的な構成について説明する。
図4に示すように、コンソール14は、取得部100、第1送信部102、受信部104、導出部105、表示制御部106、受付部107、及び第2送信部108を含む。CPU60が情報処理プログラム63を実行することにより、取得部100、第1送信部102、受信部104、導出部105、表示制御部106、受付部107、及び第2送信部108として機能する。
【0047】
取得部100は、記憶部62から撮影オーダー66を取得する。第1送信部102は、取得部100により取得された撮影オーダー66に応じた透視撮影における照射条件を制御装置13に送信する。
【0048】
受信部104は、第1画像処理装置16Aから送信された一般撮影により得られた放射線画像を受信する。また、受信部104は、第2画像処理装置16Bから送信された透視撮影により得られた放射線画像を受信する。以下では、一般撮影により得られた放射線画像と透視撮影により得られた放射線画像とを区別する場合は、一般撮影により得られた放射線画像を「第1放射線画像」といい、透視撮影により得られた放射線画像を「第2放射線画像」という。
【0049】
また、受信部104は、第2画像処理装置16Bから送信された、透視撮影において放射線源10から照射され、かつ放射線検出器11の検出面に対して到達した放射線Rの線量(以下、「到達線量」)を表す情報(以下、「到達線量情報」という)を受信する。
【0050】
導出部105は、受信部104により受信された到達線量情報と、撮影オーダー66とに基づいて、透視撮影後に行われる一般撮影における照射条件を導出する。以下、導出部105による照射条件の導出処理の具体的な一例を説明する。
【0051】
撮影オーダー66に含まれる一般撮影における照射条件及び透視撮影における照射条件は、患者P固有の条件ではなく、検査種別及び撮影部位等に応じた一般的な条件である。これに対し、後述する第2画像処理装置16Bにより導出される到達線量情報は、透視撮影により得られた第2放射線画像に基づくものであるので、撮影部位の大きさ及び患者Pの体厚等の影響を受けることによって患者P毎に異なる可能性がある。そこで、導出部105は、撮影オーダー66に含まれる透視撮影における照射条件から推定される到達線量が、受信部104により受信された到達線量情報が示す到達線量に一致するように、照射条件として、管電流及び放射線Rの照射時間の少なくとも一方を導出する。例えば、導出部105は、透視撮影における照射条件から推定される到達線量が、受信部104により受信された到達線量情報が示す到達線量よりも少ない場合、透視撮影における照射条件に応じた放射線量が多くなるように管電流及び放射線Rの照射時間を導出する。
【0052】
そして、導出部105は、導出した管電流を撮影オーダー66に含まれる透視撮影における管電流で除算して得られる比率を、撮影オーダー66に含まれる一般撮影における管電流に対して乗算する。また、導出部105は、導出した照射時間を撮影オーダー66に含まれる透視撮影における照射時間で除算して得られる比率を、撮影オーダー66に含まれる一般撮影における照射時間に対して乗算する。これにより、導出部105は、透視撮影後に行われる一般撮影における照射条件として、患者Pに応じた管電流及び照射時間を導出する。なお、導出部105は、到達線量情報と、撮影オーダー66とに基づいて、透視撮影後に行われる一般撮影における複数の照射条件を導出してもよい。
【0053】
また、導出部105は、撮影オーダー66に含まれる患者Pの年齢が第1の閾値以下であるか、又は第2の閾値以上である場合、導出した照射条件よりも放射線Rの線量が低くなる照射条件を更に導出する。第1の閾値としては、例えば、小児等の低年齢の子供の年齢範囲の上限値として定められた値が挙げられる。第2の閾値としては、例えば、高齢者の年齢範囲の下限値として定められた値が挙げられる。すなわち、導出部105は、患者Pの年齢に応じた複数の照射条件を導出する。
【0054】
なお、導出部105は、撮影オーダー66に含まれる患者Pの体格に関する情報に応じた複数の照射条件を導出してもよい。例えば、導出部105は、患者Pの体厚が平均的な体厚よりも厚い場合は、導出した照射条件よりも放射線Rの線量が高くなる照射条件を更に導出してもよい。また、導出部105は、患者Pの年齢及び患者Pの体格に関する情報の両方に応じて複数の照射条件を導出してもよい。
【0055】
また、導出部105は、透視撮影により得られた放射線画像のコントラストを表す指標値に基づいて、透視撮影後に行われる一般撮影における撮影条件としての管電圧を導出してもよい。コントラストを表す指標値としては、コントラスト比が挙げられる。例えば、導出部105は、透視撮影の終了後に、最後のフレームの第2放射線画像のコントラスト比を導出する。そして、導出部105は、導出したコントラスト比が、コントラスト比の目標値に一致するように、撮影オーダー66に含まれる一般撮影における管電圧を変更した管電圧を導出する。この場合、導出部105は、最後の複数フレームの第2放射線画像の平均画像に基づいて、コントラスト比を導出してもよい。
【0056】
表示制御部106は、受信部104により受信された第1放射線画像をディスプレイ65に表示する制御を行う。また、表示制御部106は、受信部104により連続的に受信された複数枚の第2放射線画像を、フレームレートに従ってディスプレイ65に表示する制御を行う。
【0057】
また、表示制御部106は、導出部105により導出された照射条件をディスプレイ65に表示する制御を行う。
図5に、この制御によりディスプレイ65に表示される照射条件表示画面の一例を示す。
図5では、患者Pの年齢が第1の閾値以下である場合の照射条件表示画面の例を示している。
図5に示すように、この例では、撮影オーダー66に含まれる照射条件、導出部105により導出された透視撮影の結果に基づく照射条件、及び患者Pの年齢が第1の閾値以下であることを考慮した低線量の照射条件が表示される。なお、表示制御部106は、導出部105により導出された複数の照射条件をディスプレイ65に表示する制御を行ってもよい。
【0058】
操作者は、照射条件表示画面に基づいて、一般撮影における照射条件を入力する。操作者は、照射条件表示画面に表示された照射条件の何れかを選択することによって照射条件を入力してもよい。また、操作者は、照射条件表示画面に表示された照射条件を参考に、照射条件を表す数値を入力することによって照射条件を入力してもよい。受付部107は、操作者により入力された一般撮影における照射条件を受け付ける。第2送信部108は、受付部107により受け付けられた照射条件を制御装置13に送信する。
【0059】
次に、
図6を参照して、制御装置13の機能的な構成について説明する。
図6に示すように、制御装置13は、判定部110、設定部112、報知部114、受信部116、受付部118、及び照射制御部120を含む。CPU50が制御プログラム53を実行することにより、判定部110、設定部112、報知部114、受信部116、受付部118、及び照射制御部120として機能する。
【0060】
判定部110は、放射線検出器11の検出面における放射線Rの照射面積が放射線検出器11における放射線Rを検出可能な最大面積以下となる条件を満たすか否かを判定する。放射線Rの照射面積は、SIDと照射野限定器21の照射開口の面積とに応じて定まる。本実施形態では、判定部110は、SIDが第1の設定値以下であり、かつ照射開口の面積が第2の設定値以下であるか否かを判定することによって、上記条件を満たすか否かを判定する。第1の設定値及び第2の設定値は、透視撮影に用いられる放射線検出器11の検出面の広さを表す数値(例えば、19インチ等)に応じて規格により定められる。例えば、判定部110は、放射線源10の位置が変更された場合、又は照射野限定器21の4枚の遮蔽板の位置が変更された場合に、上記判定を行う。
【0061】
なお、判定部110は、照射野限定器21の4枚の遮蔽板の位置が固定的である場合、すなわち、照射開口の面積が固定値である場合、第1の設定値及び第2の設定値のうち第1の設定値のみを用いてもよい。この場合、判定部110は、SIDが第1の設定値以下であるか否かを判定することによって、上記条件を満たすか否かを判定する。また、判定部110は、所定の時間間隔で上記判定を行ってもよい。
【0062】
また、第1の設定値及び第2の設定値は、例えば、操作者により指定可能であってもよい。この場合、CPU50は、操作者による第1の設定値及び第2の設定値の指定を受け付ける。
【0063】
設定部112は、判定部110により条件を満たすと判定された場合に、撮影モードを透視撮影モードに設定する。この場合、設定部112は、撮影モードを透視撮影モードに設定する指示を制御装置18に送信し、制御装置18のCPU90は、撮影モードを透視撮影モードに設定する。
【0064】
また、設定部112は、判定部110により条件を満たさないと判定された場合に、撮影モードを一般撮影モードに設定する。この場合、設定部112は、撮影モードを一般撮影モードに設定する指示を制御装置18に送信し、制御装置18のCPU90は、撮影モードを一般撮影モードに設定する。本実施形態では、システムの起動時の初期の撮影モード、すなわち、デフォルトの撮影モードとして一般撮影モードが設定される。
【0065】
この撮影モードを一般撮影モード及び透視撮影モードの何れかに設定する処理は、例えば、各装置の記憶部に格納された撮影モードを表す値を一般撮影モード及び透視撮影モードの何れかを表す値に設定することによって行われる。なお、撮影モードを表す値は、各装置からアクセス可能な共有の記憶部に格納されてもよい。また、物理的なスイッチによって撮影モードが設定可能であってもよい。
【0066】
報知部114は、判定部110により条件を満たすと判定された場合に、当該条件を満たしたことを報知する。例えば、報知部114は、放射線源10に設けられたディスプレイを点滅させることによって、当該条件を満たしたことを報知する。なお、報知部114は、スピーカーを介した音声出力によって当該条件を満たしたことを報知してもよい。また、報知部114は、放射線源10の移動機構をロックする等、放射線源10を移動できないようにすることによって当該条件を満たしたことを報知してもよい。
【0067】
また、報知部114は、報知の指示を表す指示情報を第1画像処理装置16Aに出力してもよい。この場合、第1画像処理装置16AのCPU70は、当該条件を満たしたことを示すメッセージをディスプレイ17に表示する制御を行うことによって、当該条件を満たしたことを報知してもよい。また、報知部114は、報知の指示を表す指示情報をコンソール14に出力してもよい。この場合、コンソール14のCPU60は、当該条件を満たしたことを示すメッセージをディスプレイ65に表示する制御を行うことによって、当該条件を満たしたことを報知してもよい。
【0068】
受信部116は、コンソール14から送信された一般撮影における照射条件及び透視撮影における照射条件を受信する。また、受信部116は、第2画像処理装置16Bから送信された到達線量情報を受信する。受付部118は、照射スイッチを介した放射線撮影の開始指示を受け付ける。
【0069】
照射制御部120は、放射線源10の動作を制御する。具体的には、照射制御部120は、受付部118により放射線撮影の開始指示が受け付けられ、かつ撮影モードが一般撮影モードである場合、受信部116により受信された一般撮影における照射条件に応じて電圧発生器12を動作させ、放射線管20から放射線Rを出射させる。また、照射制御部120は、受付部118により放射線撮影の開始指示が受け付けられ、かつ撮影モードが透視撮影モードである場合、受信部116により受信された透視撮影における照射条件に応じて電圧発生器12を動作させ、放射線管20から放射線Rを出射させる。
【0070】
また、照射制御部120は、放射線Rの照射開始を通知する照射開始信号、及び放射線Rの照射終了を通知する照射終了信号を制御装置18に出力する。
【0071】
また、照射制御部120は、透視撮影における各フレームの第2放射線画像に基づいて導出された到達線量情報を用いて、次のフレームの放射線Rの線量を制御する。以下、照射制御部120による線量制御の具体的な一例を説明する。
【0072】
前述したように、撮影オーダー66に含まれる透視撮影における照射条件は、患者P固有の条件ではなく、一般的な条件である。これに対し、後述する第2画像処理装置16Bにより導出される到達線量情報は、透視撮影により得られた第2放射線画像に基づくものであるので、撮影部位の大きさ及び患者Pの体厚等の影響を受けることによって患者P毎に異なる可能性がある。そこで、照射制御部120は、線量制御として、直前のフレームの照射条件から推定される到達線量が、到達線量情報が示す到達線量に一致するように、次のフレームの管電流及び放射線Rの照射時間の少なくとも一方を制御する。
【0073】
次に、
図7を参照して、制御装置18の機能的な構成について説明する。
図7に示すように、制御装置18は、受信部130、検出器制御部132、及び送信部134を含む。CPU90が制御プログラム93を実行することにより、受信部130、検出器制御部132、及び送信部134として機能する。
【0074】
受信部130は、制御装置13から送信された照射開始信号及び照射終了信号を受信する。検出器制御部132は、放射線検出器11の動作を制御する。具体的には、検出器制御部132は、撮影モードが透視撮影モードである場合、放射線Rの照射開始の指示を受け付けたか否かにかかわらずに所定のフレームレートで画像を連続的に取得する処理を放射線検出器11に開始させる。
【0075】
すなわち、検出器制御部132は、放射線検出器11の撮影モードが透視撮影モードに設定されると、フレームレートに従って検出パネル41に対して電荷の蓄積動作及び電荷の読み出し操作を繰り返し行わせることによって画像を連続的に取得する処理を放射線検出器11に開始させる。従って、撮影モードが透視撮影モードである場合、放射線Rの照射開始前においても画像の取得が開始される。この取得された画像はオフセット補正用画像として用いることができる。また、放射線Rの照射開始前においても画像の取得が開始されることによって、検出パネル41の温度上昇の飽和を促すことができる。
【0076】
また、検出器制御部132は、撮影モードが一般撮影モードである場合、受信部130により照射開始信号が受信されると、検出パネル41に対して電荷の蓄積動作を行わせる。また、検出器制御部132は、撮影モードが一般撮影モードである場合、受信部130により照射終了信号が受信されると、検出パネル41に対して電荷の読み出し動作を行わせる。これにより、一般撮影モードでは、1枚の放射線画像が取得される。
【0077】
送信部134は、撮影モードが一般撮影モードである場合、検出器制御部132による制御によって得られた第1放射線画像を第1画像処理装置16Aに送信する。また、送信部134は、撮影モードが透視撮影モードである場合、検出器制御部132による制御によって所定のフレームレートで得られた第2放射線画像を順次第2画像処理装置16Bに送信する。
【0078】
次に、
図8を参照して、第1画像処理装置16Aの機能的な構成について説明する。
図8に示すように、第1画像処理装置16Aは、受信部140、画像処理部142、及び送信部144を含む。CPU70が画像処理プログラム73を実行することにより、受信部140、画像処理部142、及び送信部144として機能する。
【0079】
受信部140は、放射線検出器11から送信された第1放射線画像を受信する。画像処理部142は、受信部140により受信された第1放射線画像に対して、オフセット補正処理、感度補正処理、及び欠陥画素補正処理等の各種画像処理を行う。
【0080】
オフセット補正処理は、放射線Rが照射されていない状態で取得されたオフセット補正用画像を、放射線画像から画素単位で差し引く処理である。感度補正処理は、感度補正データに基づき、放射線検出器11の検出パネル41の各画素の感度のばらつき、及び信号電荷を読み出す回路の出力特性のばらつき等を補正する処理である。欠陥画素補正処理は、出荷時や定期点検時に生成される、画素値が異常な欠陥画素の情報に基づき、欠陥画素の画素値を周囲の正常な画素の画素値で線形補間する処理である。
【0081】
送信部144は、画像処理部142による画像処理を経た第1放射線画像をコンソール14に送信する。
【0082】
次に、
図9を参照して、第2画像処理装置16Bの機能的な構成について説明する。
図9に示すように、第2画像処理装置16Bは、受信部150、画像処理部152、導出部153、及び送信部154を含む。FPGA80が予めプログラムされたロジックを実行することにより、受信部150、画像処理部152、導出部153、及び送信部154として機能する。
【0083】
受信部150は、放射線検出器11から送信された第2放射線画像を受信する。画像処理部152は、受信部150により受信された第2放射線画像に対して、オフセット補正処理、感度補正処理、及び欠陥画素補正処理等の各種画像処理を行う。
【0084】
導出部153は、画像処理部152による画像処理を経た第2放射線画像に基づいて、透視撮影における到達線量情報を導出する。なお、導出部153は、画像処理部152による画像処理を経る前の第2放射線画像に基づいて、透視撮影における到達線量情報を導出してもよい。第2放射線画像は、開示の技術に係る透視撮影における放射線源10から放射線検出器11に対して照射される放射線Rの線量制御に用いられる情報の一例である。以下、導出部153による照射条件の導出処理の具体的な一例を説明する。
【0085】
患者Pの撮影部位の大きさ及び体厚等に応じて到達線量は異なる。具体的には、撮影部位が大きいほど、到達線量は少なくなる。また、体厚が厚いほど、到達線量は少なくなる。また、到達線量が多くなるほど、第2放射線画像の濃度が高くなる。そこで、本実施形態に係る導出部153は、第2放射線画像の濃度ヒストグラムを導出し、導出した濃度ヒストグラムを用いて到達線量情報を導出する。濃度ヒストグラムと到達線量との関係は、例えば、過去の放射線画像の撮影データの統計値等に基づいて予め得られる。導出部153は、透視撮影における放射線Rの照射中に、各フレームの第2放射線画像に基づいて、到達線量情報を導出する。また、導出部153は、透視撮影の終了後に、最後のフレームの第2放射線画像に基づいて、到達線量情報を導出する。なお、導出部153は、透視撮影の終了後に、複数枚の第2放射線画像に基づいて、到達線量情報を導出してもよい。この場合、導出部153は、最後の複数フレームの第2放射線画像の平均画像に基づいて、到達線量情報を導出してもよい。
【0086】
送信部154は、画像処理部152による画像処理を経た第2放射線画像をコンソール14に送信する。また、送信部154は、透視撮影における放射線Rの照射中に導出部153により導出された到達線量情報を制御装置13に送信する。また、送信部154は、透視撮影の終了後に導出部153により導出された到達線量情報をコンソール14に送信する。
【0087】
以上のように、撮影モードが一般撮影モードである場合に得られた第1放射線画像に対して画像処理を行う第1のプロセッサであるCPU70と、撮影モードが透視撮影モードである場合に得られた第2放射線画像に対して画像処理を行う第2のプロセッサであるFPGA80とは、異なるプロセッサである。第2放射線画像に対しては、予めロジックがプログラムされた透視撮影専用のプロセッサであるFPGA80によって高速に画像処理が行われるため、高フレームレートを実現することができる。
【0088】
次に、
図10及び
図11を参照して、放射線撮影システム2の作用を説明する。
図10及び
図11は、放射線撮影システム2によって実行される放射線画像撮影処理の一例を示すシーケンス図である。ここでは、一例として、透視撮影の後に一般撮影が行われる場合の処理の流れを説明する。
【0089】
撮影オーダー66が登録されると、ステップS10で、取得部100は、記憶部62から撮影オーダー66を取得する。そして、第1送信部102は、取得部100により取得された撮影オーダー66に応じた透視撮影における照射条件を制御装置13に送信する。受信部116は、ステップS10でコンソール14から送信された透視撮影における照射条件を受信する。
【0090】
操作者は、撮影オーダー66に応じて、立位撮影台15Sの前に患者Pを立たせるか、又は臥位撮影台15Lの天板32に患者Pを仰臥させる。そして、操作者は、放射線源10の位置を調整する。操作者による放射線源10の位置を調整に応じて、判定部110により放射線検出器11の検出面における放射線Rの照射面積が放射線検出器11における放射線Rを検出可能な最大面積以下となる条件を満たすか否かの判定が行われる。判定部110により当該条件を満たすと判定されると、ステップS12で、設定部112は、前述したように、撮影モードを透視撮影モードに設定する。次に、ステップS14で、報知部114は、前述したように、当該条件を満たしたことを報知する。
【0091】
撮影モードが透視撮影モードに設定されると、ステップS16で、検出器制御部132は、前述したように、所定のフレームレートで画像を連続的に取得する処理を放射線検出器11に開始させる。
【0092】
操作者は、ステップS14による報知を受け、照射スイッチを介して、放射線撮影の開始指示を入力する。受付部118は、照射スイッチを介した放射線撮影の開始指示を受け付ける。受付部118により開始指示が受け付けられると、ステップS18で、照射制御部120は、受信部116により受信された透視撮影における照射条件に応じて電圧発生器12を動作させ、放射線管20から放射線Rを出射させる。これにより、放射線Rの照射が開始される。
【0093】
ステップS20で、送信部134は、検出器制御部132による制御によって所定のフレームレートで得られた第2放射線画像を順次第2画像処理装置16Bに送信する。受信部150は、ステップS20で放射線検出器11から送信された第2放射線画像を受信する。
【0094】
ステップS22で、画像処理部152は、前述したように、受信部150により受信された第2放射線画像に対して各種画像処理を行う。ステップS24で、送信部154は、ステップS22による画像処理を経た第2放射線画像をコンソール14に送信する。受信部104は、ステップS24で第2画像処理装置16Bから送信された第2放射線画像を受信する。ステップS26で、表示制御部106は、受信部104により連続的に受信された複数枚の第2放射線画像を、フレームレートに従ってディスプレイ65に表示する制御を行う。
【0095】
ステップS28で、導出部153は、前述したように、ステップS24による画像処理を経た第2放射線画像に基づいて、透視撮影における到達線量情報を導出する。そして、送信部154は、導出部153により導出された到達線量情報を制御装置13に送信する。受信部116は、ステップS28で第2画像処理装置16Bから送信された到達線量情報を受信する。ステップS30で、照射制御部120は、前述したように、受信部116により受信された到達線量情報を用いて、次のフレームの放射線Rの線量を制御する。ステップS20からステップS30までの処理が、透視撮影のフレームレートに従って繰り返し実行されることによって、コンソール14のディスプレイ65に透視撮影により得られた動画像が表示される。更に、各フレームにおける放射線Rの線量が、直前のフレームの到達線量に応じて適切に制御される。
【0096】
操作者は、放射線Rの照射を終了させることによって、透視撮影を終了させる。ステップS32で、送信部154は、透視撮影における最後のフレームの第2放射線画像に基づいて導出部153により導出された到達線量情報をコンソール14に送信する。受信部104は、ステップS32で第2画像処理装置16Bから送信された到達線量情報を受信する。
【0097】
また、操作者は、透視撮影が終了すると、一般撮影に合わせて放射線源10の位置を調整する。操作者による放射線源10の位置を調整に応じて、判定部110により放射線検出器11の検出面における放射線Rの照射面積が放射線検出器11における放射線Rを検出可能な最大面積以下となる条件を満たすか否かの判定が行われる。判定部110により当該条件を満たさないと判定されると、ステップS34で、設定部112は、前述したように、撮影モードを一般撮影モードに設定する。
【0098】
ステップS36で、導出部105は、前述したように、受信部104により受信された到達線量情報と、撮影オーダー66とに基づいて、透視撮影後に行われる一般撮影における照射条件を導出する。この際、導出部105は、前述したように、撮影オーダー66に含まれる患者Pの年齢が第1の閾値以下であるか、又は第2の閾値以上である場合、導出した照射条件よりも放射線Rの線量が低くなる照射条件を更に導出する。
【0099】
ステップS38で、表示制御部106は、ステップS36で導出された照射条件をディスプレイ65に表示する制御を行う。操作者は、この制御により表示された照射条件表示画面に基づいて、一般撮影における照射条件を入力する。受付部107は、操作者により入力された一般撮影における照射条件を受け付ける。ステップS40で、第2送信部108は、受付部107により受け付けられた照射条件を制御装置13に送信する。受信部116は、ステップS40でコンソール14から送信された一般撮影における照射条件を受信する。
【0100】
次に、操作者は、照射スイッチを介して、放射線撮影の開始指示を入力する。受付部118は、照射スイッチを介した放射線撮影の開始指示を受け付ける。受付部118により開始指示が受け付けられると、ステップS42で、照射制御部120は、受信部116により受信された一般撮影における照射条件に応じて電圧発生器12を動作させ、放射線管20から放射線Rを出射させる。これにより、放射線Rの照射が開始される。そして、照射制御部120は、放射線Rの照射開始を通知する照射開始信号を制御装置18に出力する。受信部130は、ステップS42で制御装置13から送信された照射開始信号を受信する。
【0101】
受信部130により照射開始信号が受信されると、ステップS44で、検出器制御部132は、検出パネル41に対して電荷の蓄積動作を行わせる。ステップS42で開始された放射線Rの照射時間が経過すると、ステップS46で、照射制御部120は、放射線管20からの放射線Rの照射を終了させる。そして、照射制御部120は、放射線Rの照射終了を通知する照射終了信号を制御装置18に出力する。受信部130は、ステップS46で制御装置13から送信された照射終了信号を受信する。
【0102】
受信部130により照射終了信号が受信されると、ステップS48で、検出器制御部132は、検出パネル41に対して電荷の読み出し動作を行わせる。そして、送信部134は、この読み出し動作により得られた第1放射線画像を第1画像処理装置16Aに送信する。受信部140は、ステップS48で放射線検出器11から送信された第1放射線画像を受信する。
【0103】
ステップS50で、画像処理部142は、前述したように、受信部140により受信された第1放射線画像に対して各種画像処理を行う。ステップS52で、送信部144は、ステップS50による画像処理を経た第1放射線画像をコンソール14に送信する。受信部104は、ステップS52で第1画像処理装置16Aから送信された第1放射線画像を受信する。ステップS54で、表示制御部106は、受信部104により受信された第1放射線画像をディスプレイ65に表示する制御を行う。
【0104】
以上説明したように、本実施形態によれば、放射線の透視撮影と一般撮影とを切り替えて実行可能な放射線撮影システムにおいて、撮影効率を向上させることができる。
【0105】
なお、上記実施形態において、透視撮影モードにおいて、操作者が静止画像の撮影指示を入力可能であってもよい。この場合、コンソール14のCPU60は、撮影モードが透視撮影モードである場合で、かつ静止画像の撮影指示を受け付けた場合、透視撮影により得られた1枚以上の第1放射線画像を用いて、単独の放射線静止画像を生成してもよい。例えば、CPU60は、透視撮影により得られた複数枚の第1放射線画像の平均画像を生成することによって1枚の放射線静止画像を生成してもよい。また、この放射線静止画像の生成処理は、例えば、第2画像処理装置16BのFPGA80等のコンソール14以外の装置のプロセッサが実行してもよい。
【0106】
また、上記実施形態における各機能部は、上記実施形態において機能部が設けられた装置とは異なる装置に設けられてもよい。また、上記実施形態における各機能部が、1台のコンピュータで実現されてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、コンソール14のCPU60が、導出した一般撮影における照射条件をディスプレイ65に表示する制御を行う場合について説明したが、開示の技術はこの態様に限定されない。例えば、CPU60は、導出した一般撮影における照射条件を制御装置13に送信してもよい。この場合、制御装置13のCPU50は、放射線撮影の開始指示を受け付け、かつ撮影モードが一般撮影モードである場合、コンソール14から送信された一般撮影における照射条件に応じて電圧発生器12を動作させ、放射線管20から放射線Rを出射させてもよい。
【0108】
また、上記実施形態において、例えば、各装置の各機能部のように各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0109】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0110】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System on Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0111】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0112】
また、上記実施形態では、各種プログラムが記憶部に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。各種プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、各種プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0113】
2 放射線撮影システム
10 放射線源
11 放射線検出器
12 電圧発生器
13、18 制御装置
14 コンソール
15L 臥位撮影台
15S 立位撮影台
16 画像処理装置
16A 第1画像処理装置
16B 第2画像処理装置
17、65 ディスプレイ
20 放射線管
21 照射野限定器
22、29 支柱
25 スタンド
26、31 接続部
27L 臥位用ホルダ
27S 立位用ホルダ
28、30 台座
32 天板
40 筐体
41 検出パネル
50、60、70、90 CPU
51、61、71、81、91 メモリ
52、62、72、82、92 記憶部
53、93 制御プログラム
63 情報処理プログラム
64 入力装置
66 撮影オーダー
73 画像処理プログラム
80 FPGA
94 画像メモリ
100 取得部
102 第1送信部
104、116、130、140、150 受信部
105、153 導出部
106 表示制御部
107、118 受付部
108 第2送信部
110 判定部
112 設定部
114 報知部
120 照射制御部
132 検出器制御部
134、144、154 送信部
142、152 画像処理部
P 患者
R 放射線