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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010068
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法および処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20250109BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20250109BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20250109BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20250109BHJP
   B24B 49/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
H01L21/304 622W
H01L21/304 631
H01L21/02 B
B23K26/53
B24B7/04 A
B24B49/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106292
(22)【出願日】2024-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2023111697
(32)【優先日】2023-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 彬
(72)【発明者】
【氏名】一宮 佑希
(72)【発明者】
【氏名】江山 剛史
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
4E168
5F057
【Fターム(参考)】
3C034CA22
3C043BA03
3C043BA09
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
4E168AE01
4E168CA06
4E168CA15
4E168CB07
4E168DA43
4E168JA12
4E168JA13
5F057AA05
5F057BA19
5F057BA21
5F057BB03
5F057BB07
5F057BB09
5F057BB12
5F057CA14
5F057CA16
5F057DA11
5F057DA22
5F057DA31
5F057GB02
5F057GB12
5F057GB20
(57)【要約】
【課題】貼り合わせウエーハの研削工程において、ウエーハの破損を抑制しつつ外周領域を除去することができるウエーハの加工方法および処理装置を提供すること。
【解決手段】ウエーハの加工方法は、第一のウエーハを第二のウエーハと接合して貼り合わせウエーハを形成する貼り合わせウエーハ形成ステップ101と、レーザービームを外周縁よりも所定距離内側の位置に沿って環状に照射し、第一のウエーハの内部に環状の改質層と改質層から表面側に伸展するクラックとを形成することで、外周領域に反りを生じさせる改質層形成ステップ102と、外周領域の反り量を検出する検出ステップ103と、外周領域の反り量に基づいて、第一のウエーハと第二のウエーハとの接合が解除されているか否かを判断し、研削ステップ105を実施するか否かを決定する判断ステップ104と、第一のウエーハを裏面側から研削する研削ステップ105と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハの加工方法であって、
外周縁が面取りされている第一のウエーハの表面側を第二のウエーハと接合して貼り合わせウエーハを形成する貼り合わせウエーハ形成ステップと、
該第一のウエーハを透過する波長のレーザービームを該外周縁よりも所定距離内側の位置に沿って環状に照射し、該第一のウエーハの内部に環状の改質層と該改質層から伸展して該第二のウエーハとの接合面側に伸展するクラックとを形成することで、該改質層および該クラックより該外周縁側の外周領域に反りを生じさせる改質層形成ステップと、
該改質層形成ステップを実施した後、該第一のウエーハの該外周領域の反り量を検出する検出ステップと、
該貼り合わせウエーハの該第一のウエーハを該第二のウエーハとの接合面と反対側の面側から研削して仕上げ厚さまで薄化する研削ステップと、
を備え、
該検出ステップで検出された該外周領域の反り量に基づいて、該外周領域における該第一のウエーハと該第二のウエーハとの接合が解除されているか否かを判断し、該研削ステップを実施するか否かを決定する判断ステップを更に備える
ことを特徴とする、ウエーハの加工方法。
【請求項2】
該判断ステップにおいて、
該外周領域の反り量が所定値以上と判断した場合、該研削ステップを実施し、
該外周領域の反り量が所定値未満と判断した場合、該改質層形成ステップを再度実施する
ことを特徴とする、請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該改質層形成ステップを実施する前に、該外周領域の反り量を予め検知しておく事前検出ステップと、
該事前検出ステップで検出した反り量と、該検出ステップで検出した反り量と、を比較する比較ステップと、
を更に備え、
該判断ステップでは、該比較ステップにおける比較結果に基づいて、該外周領域における該第一のウエーハと該第二のウエーハとの接合が解除されているか否かを判断し、該研削ステップを実施するか否かを決定する
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
該検出ステップでは、該外周領域の高さを測定し、該外周領域の高さの測定値に基づいて該外周領域の反り量を検出する
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項5】
該検出ステップでは、該外周領域に光を照射するとともに干渉縞を取得し、該外周領域に生じた該干渉縞に基づいて該外周領域の反り量を検出する
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項6】
請求項1に記載のウエーハの加工方法において、少なくとも該検出ステップを実施する処理装置であって、
該第一のウエーハの外周領域の反り量を検出する反り量検出ユニットと、
該反り量検出ユニットが検出した反り量に基づいて該第一のウエーハと該第二のウエーハとの接合が解除されているか否かを判断するとともに該研削ステップを実施するか否かを決定する制御ユニットと、
を備える
ことを特徴とする、処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの加工方法および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデバイスチップの低背化や高集積化に伴い、3次元積層された半導体ウエーハの開発が進んでいる。例えばTSV(Through-Silicon Via)ウエーハは、貫通電極によって2つのチップ同士の貼り合わせによる両チップの電極の接続を可能にしている。
【0003】
こうしたウエーハは、基台となる支持ウエーハ(シリコンやガラス、セラミックス等)に貼り合わされた状態で研削して薄化される。通常、ウエーハは、外周縁が面取りされているため、極薄に研削されると外周縁が所謂ナイフエッジとなり、研削中にエッジの欠けが発生しやすい。これにより、デバイスにまで欠けが延長してデバイスの破損に繋がる可能性がある。
【0004】
ナイフエッジの対策として、ウエーハを貼り合わせてから、デバイスの外周縁に沿ってレーザービームを照射して環状の改質層を形成することで、その研削中に発生するウエーハのエッジ欠けがデバイスに伸展することを抑制するエッジトリミング方法が考案された(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-057709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、改質層が接合領域よりも径方向内側に形成されている場合に、外周領域の端材が剥離せずに残存してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、貼り合わせウエーハの研削工程において、ウエーハの破損を抑制しつつ外周領域を除去することができるウエーハの加工方法および処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウエーハの加工方法は、外周縁が面取りされている第一のウエーハの表面側を第二のウエーハと接合して貼り合わせウエーハを形成する貼り合わせウエーハ形成ステップと、該第一のウエーハを透過する波長のレーザービームを該外周縁よりも所定距離内側の位置に沿って環状に照射し、該第一のウエーハの内部に環状の改質層と該改質層から伸展して該第二のウエーハとの接合面側に伸展するクラックとを形成することで、該改質層および該クラックより該外周縁側の外周領域に反りを生じさせる改質層形成ステップと、該改質層形成ステップを実施した後、該第一のウエーハの該外周領域の反り量を検出する検出ステップと、該貼り合わせウエーハの該第一のウエーハを該第二のウエーハとの接合面と反対側の面側から研削して仕上げ厚さまで薄化する研削ステップと、を備え、該検出ステップで検出された該外周領域の反り量に基づいて、該外周領域における該第一のウエーハと該第二のウエーハとの接合が解除されているか否かを判断し、該研削ステップを実施するか否かを決定する判断ステップを更に備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のウエーハの加工方法は、該判断ステップにおいて、該外周領域の反り量が所定値以上と判断した場合、該研削ステップを実施し、該外周領域の反り量が所定値未満と判断した場合、該改質層形成ステップを再度実施してもよい。
【0010】
また、本発明のウエーハの加工方法は、該改質層形成ステップを実施する前に、該外周領域の反り量を予め検知しておく事前検出ステップと、該事前検出ステップで検出した反り量と、該検出ステップで検出した反り量と、を比較する比較ステップと、を更に備え、該判断ステップでは、該比較ステップにおける比較結果に基づいて、該外周領域における該第一のウエーハと該第二のウエーハとの接合が解除されているか否かを判断し、該研削ステップを実施するか否かを決定してもよい。
【0011】
また、本発明のウエーハの加工方法において、該検出ステップでは、該外周領域の高さを測定し、該外周領域の高さの測定値に基づいて該外周領域の反り量を検出してもよい。
【0012】
また、本発明のウエーハの加工方法において、該検出ステップでは、該外周領域に光を照射するとともに干渉縞を取得し、該外周領域に生じた干渉縞に基づいて該外周領域の反り量を検出してもよい。
【0013】
また、本発明の処理装置は、ウエーハの加工方法において、少なくとも該検出ステップを実施する処理装置であって、該第一のウエーハの外周領域の反り量を測定する反り量検出ユニットと、該反り量検出ユニットが検出した反り量に基づいて該第一のウエーハと該第二のウエーハとの接合が解除されているか否かを判断するとともに該研削ステップを実施するか否かを決定する制御ユニットと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、貼り合わせウエーハの研削工程において、ウエーハの破損を抑制しつつ外周領域を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係るウエーハの加工方法の加工対象のウエーハの一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すII-II線に沿う断面図である。
図3図3は、実施形態に係るウエーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、図3に示す貼り合わせウエーハ形成ステップの一状態を示す斜視図である。
図5図5は、図3に示す改質層形成ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
図6図6は、図3に示す改質層形成ステップ後の貼り合わせウエーハの一部を拡大して示す断面図である。
図7図7は、図3に示す改質層形成ステップ後の貼り合わせウエーハの一部を拡大して示す断面図である。
図8図8は、図3に示す検出ステップの一例を示す模式図である。
図9図9は、図3に示す検出ステップにおける反り量の測定結果の一例を示す図である。
図10図10は、図3に示す薄化ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
図11図11は、変形例に係るウエーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0017】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るウエーハ10の加工方法および処理装置30を図面に基づいて説明する。まず、加工対象のウエーハ10について説明する。図1は、実施形態に係るウエーハ10の加工方法の加工対象のウエーハ10の一例を示す斜視図である。図2は、図1に示すII-II線に沿う断面図である。
【0018】
図1および図2に示すウエーハ10は、シリコン(Si)、サファイア(Al)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板11とする円板状の半導体ウエーハ、光デバイスウエーハ等のウエーハであり、実施形態において、シリコンウエーハである。また、実施形態のウエーハ10は、直径が300mmであり、厚みが775μmである。ウエーハ10は、図2に示すように、厚さ方向の中央が最も外周側に突出して、基板11の表面13から裏面14に亘って断面円弧状になるように、外周縁12が面取りされている。
【0019】
ウエーハ10は、図1に示すように、基板11の表面13側に中央領域15と、中央領域15を囲繞する外周領域16と、を含むデバイス層を有する。中央領域15は、基板11の表面13に格子状に設定された複数の分割予定ライン17と、分割予定ライン17によって区画された各領域に形成されたデバイス18と、を有している。外周領域16は、全周に亘って中央領域15を囲繞し、かつデバイス18が形成されていない領域である。
【0020】
デバイス18は、実施形態において、3DNANDフラッシュメモリを構成し、電極パッドと、電極パッドに接続した貫通電極とを備える。貫通電極は、基板11が薄化されてデバイス18がウエーハ10から個々に分割された際に、基板11の裏面14側に貫通する。すなわち、実施形態のウエーハ10は、個々に分割されたデバイス18が貫通電極を有する所謂TSVウエーハである。なお、本発明のウエーハ10は、実施形態のような貫通電極を有するTSVウエーハに限定されず、貫通電極のないデバイスウエーハであってもよい。
【0021】
次に、ウエーハ10の加工方法の流れについて説明する。図3は、実施形態に係るウエーハ10の加工方法の流れを示すフローチャートである。図3に示すように、実施形態のウエーハ10の加工方法は、貼り合わせウエーハ形成ステップ101と、改質層形成ステップ102と、検出ステップ103と、判断ステップ104と、研削ステップ105と、を備える。実施形態のウエーハ10の加工方法は、一方のウエーハ10(第一のウエーハ10-1)の表面13側を他方のウエーハ10(第二のウエーハ10-2)と接合して貼り合わせ、外周領域16を除去するための分割起点を形成した後、一方のウエーハ10(第一のウエーハ10-1)を所定の仕上げ厚さ19まで薄化する方法である。
【0022】
なお、以降の説明において、一対のウエーハ10のウエーハ10同士を区別する際には、一方のウエーハ10を第一のウエーハ10-1と記し、他方のウエーハ10を第二のウエーハ10-2(図4参照)と記し、区別しない場合には、単にウエーハ10と記す。薄化しない他方の第二のウエーハ10-2は、実施形態では第一のウエーハ10-1と同様のTSVウエーハであるものとして説明するが、本発明ではパターンの無い単なるサブストレートウエーハでもよい。
【0023】
(貼り合わせウエーハ形成ステップ101)
図4は、図3に示す貼り合わせウエーハ形成ステップ101の一状態を示す斜視図である。貼り合わせウエーハ形成ステップ101は、第一のウエーハ10-1の表面13側を第二のウエーハ10-2と接合して貼り合わせウエーハ20を形成するステップである。
【0024】
貼り合わせウエーハ形成ステップ101では、まず、図4に示すように、第一のウエーハ10-1の表面13と、第二のウエーハ10-2の表面13とを、間隔をあけて対向させる。次に、第一のウエーハ10-1の表面13と第二のウエーハ10-2の表面13とを、貼り合わせる。これにより、貼り合わせウエーハ20を形成する。
【0025】
この際、第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との間に接合層を設ける場合は、第一のウエーハ10-1の表面13と第二のウエーハ10-2の表面13とのうちの一方に接合層を積層してから、第一のウエーハ10-1の表面13と第二のウエーハ10-2の表面13とを、接合層を介して貼り合わせる。なお、接合層は、基材層の表裏面に粘着材層が積層された両面テープであってもよいし、酸化膜でもよいし、樹脂等を含む接着剤が塗布されることにより形成されるものでもよい。
【0026】
また、接合層を用いず、第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2とを直接接合してもよい。この場合、例えば、第一のウエーハ10-1の表面13および第二のウエーハ10-2の表面13のうち少なくともいずれかにプラズマ処理を施すことにより活性化させた状態で貼り合わせて仮接合し、その後、アニール処理を施すことで接合強度を上げる方法であってもよい。プラズマ処理では、真空下のチャンバ内において、アルゴン(Ar)、窒素(N)または酸素(O)等のプロセスガスを供給した状態で、高周波電力を供給することによって、プラズマ処理を施す面にプラズマ状のガスを供給する。
【0027】
また、アニール処理する方法としては、例えば、チャンバ内部で1枚ずつ急速加熱する枚葉式RTAや、石英製の炉心管に配置した複数枚の貼り合わせウエーハ20を外側からヒーターで加熱し、同時に熱処理するバッチ式であってもよいし、赤外線による加熱に限定されず、ホットプレートで加熱する方法であってもよい。なお、アニール処理は、後述の研削ステップ105を実施する前であれば、改質層形成ステップ102や検出ステップ103より後に実施してもよい。
【0028】
なお、実施形態では、第一のウエーハ10-1の表面13側と第二のウエーハ10-2の表面13側とを貼り合わせるが、第二のウエーハ10-2がサブストレートウエーハである場合、第二のウエーハ10-2のいずれの面に貼り合わせてもよい。
【0029】
(改質層形成ステップ102)
図5は、図3に示す改質層形成ステップ102の一状態を一部断面で示す側面図である。図6および図7は、図3に示す改質層形成ステップ102後の貼り合わせウエーハ20の一部を拡大して示す断面図である。改質層形成ステップ102は、第一のウエーハ10-1の外周縁12よりも所定距離内側の位置に沿って環状の改質層21と改質層21から伸展するクラック22とを形成するステップである。
【0030】
改質層形成ステップ102では、レーザー加工装置40によるステルスダイシングによって、第一のウエーハ10-1の内部に改質層21およびクラック22を形成する。レーザー加工装置40は、保持テーブル41と、レーザービーム照射ユニット42と、を備える。保持テーブル41は、ウエーハ10を保持面に保持し、垂直な軸心回りに回動可能である。レーザービーム照射ユニット42は、保持テーブル41に保持されたウエーハ10(第一のウエーハ10-1)に対してレーザービーム43を照射する。レーザー加工装置40は、更に、保持テーブル41とレーザービーム照射ユニット42とを相対的に移動させる不図示の移動ユニット、および保持テーブル41に保持されたウエーハ10を撮像する不図示の撮像ユニット等を備える。
【0031】
改質層形成ステップ102では、第一のウエーハ10-1の裏面14側から、第一のウエーハ10-1の外周縁12より所定距離内側の位置に沿ってレーザービーム43を照射することで、第一のウエーハ10-1の内部に環状の改質層21を形成する。外周縁12より所定距離内側の位置とは、具体的には、中央領域15と外周領域16との境界である。レーザービーム43は、第一のウエーハ10-1を透過する波長のレーザービームであり、例えば、赤外線(Infrared Rays;IR)である。
【0032】
改質層21とは、レーザービーム43が照射されることによって、密度、屈折率、機械的強度またはその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味する。改質層21は、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、およびこれらの領域が混在した領域等である。改質層21は、第一のウエーハ10-1の他の部分よりも機械的な強度等が低い。
【0033】
改質層形成ステップ102では、まず、第二のウエーハ10-2の裏面14側を保持テーブル41の保持面(上面)に吸引保持する。次に、第一のウエーハ10-1とレーザービーム照射ユニット42の集光器との位置合わせを行う。具体的には、不図示の移動ユニットによって、保持テーブル41をレーザービーム照射ユニット42の下方の照射領域まで移動させる。次に、不図示の撮像ユニットで第一のウエーハ10-1を撮影しアライメントすることで、レーザービーム照射ユニット42の照射部を第一のウエーハ10-1の外周縁12より所定距離内側の位置に向けて鉛直方向に対向させた後、レーザービーム43の集光点44を、第一のウエーハ10-1の内部に設定する。
【0034】
改質層形成ステップ102では、次に、保持テーブル41を垂直な軸心回りに回転させながら、レーザービーム照射ユニット42からパルス状のレーザービーム43を、第一のウエーハ10-1の裏面14側から照射する。すなわち、レーザービーム43を第一のウエーハ10-1の外周縁12より所定距離内側の位置に沿って環状に照射する。
【0035】
これにより、第一のウエーハ10-1において、外周縁12より所定距離内側の位置に沿う環状の改質層21が形成され、改質層21からはクラック22が伸展する。図6に示すように、改質層形成ステップ102では、改質層21から伸展するクラック22が、第一のウエーハ10-1の表面13(第二のウエーハ10-2との接合面)側に表出するように、レーザービーム43の照射による改質層21を形成することが好ましい。なお、図7に示すように、クラック22が、第一のウエーハ10-1の表面13側のみならず、裏面14側に表出してもよい。
【0036】
また、改質層形成ステップ102では、レーザービーム43の集光点44の高さを変更して複数回レーザービーム43を照射する、または、第一のウエーハ10-1の厚さ方向に離れた複数の集光点44を有するレーザービーム43を照射することで、第一のウエーハ10-1の表面13に対して垂直な方向に沿う複数の改質層21を形成してもよい。また、レーザービーム43の進行方向に分岐されたレーザービーム43を用いてもよいし、進行方向と直交する方向に分岐されたレーザービーム43を用いてもよいし、進行方向が長軸かつ進行方向と直交する方向に短軸を有する楕円形状のレーザービーム43を用いてもよい。
【0037】
なお、複数回レーザービーム43を第一のウエーハ10-1の裏面14側から照射する場合は、表面13側から裏面14側に向かって順に改質層21を形成する。また、第一のウエーハ10-1の表面13に対して垂直とは、伸展したクラック22全体を平面に近似した近似平面の垂直面に対する傾きが、±5度以内、好ましくは±2度以内であることを示す。
【0038】
図6および図7に示すように、第一のウエーハ10-1は、改質層21およびクラック22が形成されることによって、改質層21およびクラック22より外周縁12側の外周領域16において、表面13側が凸状となる反りを生じさせる。第一のウエーハ10-1に改質層21およびクラック22を第一のウエーハ10-1の全周に沿って環状に形成すると、改質層形成ステップ102を終了する。
【0039】
本発明では、改質層形成ステップ102において、外周領域16の反りを促進させるために、改質層21およびクラック22に加え、補助改質層と当該補助改質層から伸展する補助クラックとを外周領域16に形成してもよい。補助改質層は、例えば、改質層21と同心の1つまたは複数の環状に形成してもよいし、表面13に平行な一方向に沿う複数の直線状(縞状)や、表面13に平行な二方向に沿う複数の直線状(格子状)に形成してもよい。
【0040】
(検出ステップ103)
図8は、図3に示す検出ステップ103の一例を示す模式図である。検出ステップ103は、改質層形成ステップ102を実施した後に実施される。検出ステップ103は、第一のウエーハ10-1の外周領域16の反り量を検出するステップである。
【0041】
実施形態の検出ステップ103では、図8に示す処理装置30の反り量検出ユニット31によって、第一のウエーハ10-1の外周領域16の反り量を検出する。処理装置30は、反り量検出ユニット31と、制御ユニット32と、を備える。反り量検出ユニット31は、外周領域16の反り量を検出し、検出結果を制御ユニット32に出力する。制御ユニット32は、演算処理装置と、記憶装置と、入出力インターフェースと、を備え、記憶装置に記憶されたプログラムに基づいて、各種の演算処理を実行する。
【0042】
実施形態の反り量検出ユニット31は、外周領域16の高さを測定することで外周領域16の反り量を検出する高さ測定器を含む。高さ測定器は、接触式および非接触式のいずれでもよく、レーザー測長器、ラインスキャナや三次元スキャナ等を含む。高さ測定器では、水平姿勢に保持された貼り合わせウエーハ20において、第一のウエーハ10-1の外周領域16における裏面14における所定の測定点の高さを測定する。
【0043】
高さ測定器によって、例えば、中央領域15、改質層21を形成した位置、外周領域16と、第一のウエーハ10-1の径方向に沿って複数の測定点の測定値を取得することで、中央領域15における高さを基準とした各測定点における相対的な高さである反り量を検出できる。
【0044】
本発明では、高さ測定器に変えて、IRカメラを用いて外周領域16の高さを測定してもよい。IRカメラでは、外周領域16に光を照射し、貼り合わせウエーハ20を平面視野内で撮像する。第一のウエーハ10-1の表面13側から反射される反射光と第二のウエーハ10-2の表面13側から反射される反射光とが干渉することによって干渉縞が形成される。IRカメラは、取得した撮像画像上の干渉縞の明暗およびその位置情報に基づいて、各領域の高さを特定する。これにより、中央領域15における高さを基準とした各領域における相対的な高さである反り量を検出できる。
【0045】
本発明では、高さ測定器に変えて、干渉計を用いて外周領域16の反り量を検出してもよい。干渉計は、白色干渉計等を含む。干渉計では、貼り合わせウエーハ20を径方向外側から、第一のウエーハ10-1の反りによってできた第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との外周領域16における間隙に、IR照明光やレーザー光等の光を照射して反射光を受光する。干渉計によって、測定面(外周領域16)の反射光と参照面(干渉計のミラー)の反射光とを収束(再合成)することによって形成される干渉縞を取得し、干渉縞の本数に基づいて、間隙の大きさである反り量を検出できる。
【0046】
処理装置30は、改質層形成ステップ102を実施する図5に示すレーザー加工装置40の一部であってもよい。この場合、反り量検出ユニット31は、保持テーブル41に対して相対的に移動可能に設けられる。また、制御ユニット32は、レーザー加工装置40の制御装置に含まれてもよい。
【0047】
図9は、図3に示す検出ステップ103における反り量の測定結果の一例を示す図である。図9は、第一のウエーハ10-1の周方向の所定の位置から、0度、22.5度、45度の位置における、改質層21を形成した位置から径方向外側への距離[μm]と、反り量[μm]との関係を示したグラフである。
【0048】
図9に示す例では、いずれの測定位置でも、改質層21を形成した位置から概ね200μmの位置で反り量が0.5μmに達していることがわかる。なお、図9に示す例では、改質層21を形成した位置から800μmまでの位置の反り量を検出しているが、本発明の検出ステップ103では、改質層21を形成した位置の内外±100μm等、狭い領域のみを検出してもよい。
【0049】
(判断ステップ104)
判断ステップ104は、検出ステップ103で検出された第一のウエーハ10-1の外周領域16の反り量に基づいて、外周領域16における第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との接合が解除されているか否かを判断し、研削ステップ105を実施するか否かを決定するステップである。
【0050】
実施形態の判断ステップ104は、図8に示す処理装置30の制御ユニット32が実施する。判断ステップ104では、例えば、改質層21を形成した位置から所定距離径方向外側の位置において、反り量が所定値未満である場合、第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との接合が解除されていないと判断し、研削ステップ105を実施しないと決定する。
【0051】
例えば、実施形態では、改質層21を形成した位置から250μm径方向外側の位置における反り量が0.5μm未満である場合、第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との接合が解除されていないと判断される。検出ステップ103において、第一のウエーハ10-1の周方向における複数箇所で外周領域16の反り量を検出している場合、例えば、平均値や、中央値、下限値等を反り量の測定値としてもよい。例えば、図9に示す例では、改質層21を形成した位置から250μm径方向外側の位置における反り量が0.5μm以上であるため、第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との接合が解除されていると判断される。
【0052】
実施形態のウエーハ10の加工方法では、判断ステップ104において、外周領域16の反り量が所定値以上と判断した場合(判断ステップ104;Yes)、研削ステップ105を実施する。また、実施形態のウエーハ10の加工方法では、判断ステップ104において、外周領域16の反り量が所定値以未満と判断した場合(判断ステップ104;No)、改質層形成ステップ102を実施する。
【0053】
実施形態のウエーハ10の加工方法では、判断ステップ104において外周領域16の反り量が所定値以上と判断される(判断ステップ104;Yes)まで、改質層形成ステップ102、検出ステップ103、および判断ステップ104を繰り返し実施する。本発明では、例えば、改質層形成ステップ102を再度実施した後、外周領域16における第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との接合が解除されたとみなし、研削ステップ105を実施してもよい。
【0054】
例えば、最初の改質層形成ステップ102において、図6に示すように、第一のウエーハ10-1の表面13側にクラック22が表出するように改質層21を形成し、2度目に実施する改質層形成ステップ102において、図7に示すように、第一のウエーハ10-1の裏面14側にクラック22が表出するように改質層21を形成してもよい。更に、3度目に実施する改質層形成ステップ102において、外周領域16に上述した補助改質層および補助クラックを形成してもよい。
【0055】
(研削ステップ105)
図10は、図3に示す研削ステップ105の一状態を一部断面で示す側面図である。研削ステップ105は、判断ステップ104の判断結果に基づいて実施される。実施形態の研削ステップ105は、判断ステップ104において、第一のウエーハ10-1の外周領域16の反り量が所定値以上と判断された場合、実施される。研削ステップ105は、貼り合わせウエーハ20の第一のウエーハ10-1を裏面14側から研削して仕上げ厚さ19まで薄化するステップである。
【0056】
実施形態の研削ステップ105では、研削装置50によって、第一のウエーハ10-1の裏面14(第二のウエーハ10-2との接合面と反対側の面)側を研削して所定の仕上げ厚さ19まで薄化する。研削装置50は、保持テーブル51と、回転軸部材であるスピンドル52と、スピンドル52の下端に取り付けられた研削ホイール53と、研削ホイール53の下面に装着される研削砥石54と、不図示の研削液供給ユニットと、を備える。研削ホイール53は、保持テーブル51の軸心と平行な回転軸で回転する。
【0057】
研削ステップ105では、まず、保持テーブル51の保持面に、第二のウエーハ10-2の裏面14側を吸引保持する。次に、保持テーブル51を軸心回りに回転させた状態で、研削ホイール53を軸心回りに回転させる。不図示の研削液供給ユニットによって研削液を加工点に供給するとともに、研削ホイール53の研削砥石54を保持テーブル51に所定の送り速度で近付けることによって、研削砥石54で第一のウエーハ10-1の裏面14を研削し、所定の仕上げ厚さ19まで薄化する。
【0058】
この際、研削砥石54が第一のウエーハ10-1の研削面を押圧する外力によって、改質層21を起点として、改質層21およびクラック22を界面として、第一のウエーハ10-1の外周領域16の端材が除去される。
【0059】
〔変形例〕
本発明の変形例に係るウエーハ10の加工方法を図面に基づいて説明する。図11は、変形例に係るウエーハ10の加工方法の流れを示すフローチャートである。図11に示すように、変形例のウエーハ10の加工方法は、貼り合わせウエーハ形成ステップ201と、事前検出ステップ202と、改質層形成ステップ203と、検出ステップ204と、比較ステップ205と、判断ステップ206と、研削ステップ207と、を備える。
【0060】
なお、変形例の貼り合わせウエーハ形成ステップ201、改質層形成ステップ203、および研削ステップ207は、実施形態の貼り合わせウエーハ形成ステップ101、改質層形成ステップ102、および研削ステップ105と同様の手順であるため、説明を省略する。
【0061】
(事前検出ステップ202)
事前検出ステップ202は、改質層形成ステップ203を実施する前に、実施される。事前検出ステップ202は、第一のウエーハ10-1の外周領域16の反り量を予め検知しておくステップである。事前検出ステップ202は、検出ステップ103、204と同様の機器および条件において、同様の手順で実行される。事前検出ステップ202において検出した外周領域16の反り量の測定値は、制御ユニット32に出力され、制御ユニット32の記憶装置に記憶される。
【0062】
(比較ステップ205および判断ステップ206)
比較ステップ205は、事前検出ステップ202で検出した第一のウエーハ10-1の外周領域16の反り量と、検出ステップ204で検出した第一のウエーハ10-1の外周領域16の反り量と、を比較するステップである。そして、変形例の判断ステップ206では、比較ステップ205における比較結果に基づいて、外周領域16における第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との接合が解除されているか否かを判断し、研削ステップ207を実施するか否かを決定する。
【0063】
実施形態では、第一のウエーハ10-1の外周領域16は、改質層形成ステップ102を実施する前には沿っておらず、改質層形成ステップ102を実施する前の外周領域16の高さは、検出ステップ103で検知した中央領域15の高さと同一であるとみなしていた。これに対し、変形例では、事前検出ステップ202で検出した実測値を基準値として用いる。
【0064】
以上説明したように、実施形態および変形例に係るウエーハ10の加工方法および処理装置30は、第一のウエーハ10-1の外周縁12に沿って環状の改質層21を形成した後、改質層21より外周縁12側の外周領域16において第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との接合が解除されているか否かを確認する。これにより、後に続く研削ステップ105、207を実施する前に、加工不良の検出や追加工が可能となるため、研削加工において端材が剥離せずに残存したり、ウエーハ10の割れやデバイス18の損傷等の加工不良が起こったりすることを抑制でき、歩留まりが向上するという効果を奏する。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態および変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0066】
例えば、事前検出ステップ202および検出ステップ103、204では、第一のウエーハ10-1の外周領域16のみならず、全面の高さ測定を実施してもよい。これにより、改質層形成ステップ203の前後の高さの差から、第一のウエーハ10-1の裏面14に付着したデブリや、保持テーブル41(図5参照)の凹凸等のノイズを低減させることができる。
【0067】
また、研削ステップ105を実施する前に、外力を付与することによって、外周領域16を予め除去してもよい。具体的には、例えば、外周領域16を上方から押圧してせん断方向への外力を付与する方法や、外周領域16を持ち上げてせん断方向への外力を付与する方法でもよいし、ローラによって破砕するものであってもよい。また、機械的な外力に限定されず、超音波による振動や、第一のウエーハ10-1の裏面14にエキスパンドテープを貼り付け、エキスパンドテープを拡張することによる放射方向への外力であってもよい。
【0068】
また、本発明において、第一のウエーハ10-1は、デバイス18が形成されていない単なるサブストレートウエーハであってもよい。すなわち、デバイス層を有さないウエーハ10に対して改質層21を形成する場合でも、本発明は適用可能である。なお、この場合、第二のウエーハ10-2は、デバイス18が形成されているものに限定される。
【符号の説明】
【0069】
10 ウエーハ
10-1 第一のウエーハ
10-2 第二のウエーハ
11 基板
12 外周縁
13 表面
14 裏面
15 中央領域
16 外周領域
17 分割予定ライン
18 デバイス
19 仕上げ厚さ
20 貼り合わせウエーハ
21 改質層
22 クラック
30 処理装置
31 反り量検出ユニット
32 制御ユニット
43 レーザービーム
44 集光点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11