(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025102444
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】医薬品製造用シングルユースバッグ
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20250701BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20250701BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20250701BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250701BHJP
B65D 65/46 20060101ALI20250701BHJP
A61J 1/10 20060101ALN20250701BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B15/08 F
B32B9/00 A
B32B27/00 H
B65D65/46
A61J1/10 331C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219893
(22)【出願日】2023-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クー テンホン
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝浩
【テーマコード(参考)】
3E086
4C047
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA01
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4C047AA11
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4F100AA01B
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4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】生分解性、水蒸気バリア性、及び細胞培養条件下での耐性を有する医薬品製造用シングルユースバッグを提供する。
【解決手段】生分解性ポリマー層と無機層とを有する積層フィルムの袋体を含む、医薬品製造用シングルユースバッグ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリマー層と無機層とを有する積層フィルムの袋体を含む、医薬品製造用シングルユースバッグ。
【請求項2】
前記無機層がアルミニウム層及び窒化ケイ素層からなる群より選択される少なくとも1つの層を含む、請求項1に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
【請求項3】
前記無機層がアルミニウム及び窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1つの蒸着層を含む、請求項1に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
【請求項4】
前記生分解性ポリマー層の生分解性ポリマーが脂肪族ポリエステルを含む、請求項1に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
【請求項5】
前記脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネート及びポリカプロラクトンからなる群より選択される少なくとも1つのポリエステルを含む、請求項4に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
【請求項6】
前記無機層の厚さが0.05μm~1.5μmである、請求項1に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
【請求項7】
前記生分解性ポリマー層の厚さが5μm~200μmである、請求項1に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
【請求項8】
前記無機層の厚さに対する前記生分解性ポリマー層の厚さの比が3~4000である、請求項1に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
【請求項9】
前記積層フィルムが前記生分解性ポリマー層と前記無機層との二層構造を有する、請求項1に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
【請求項10】
前記積層フィルムがアンカー層を有しない、請求項1に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
【請求項11】
前記積層フィルムの水蒸気透過率が25g/m2/24時間以下である、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
【請求項12】
37℃、95%RHの条件下で72時間静置した後の、500mm/分の引張速度で測定される前記積層フィルムの引張強度の低下率が10%以下である、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医薬品製造用シングルユースバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の製造においては、細胞培養用液体培地の容器、精製工程用緩衝液の容器、各種溶液の保管容器、各種溶液のサンプリング用容器等、各種工程で用いられる容器として、クリーニングバリデーションが不要で、コンタミネーションのリスクを低減可能なシングルユースバッグが多数使用されている。医薬品製造に使用されたシングルユースバッグの廃棄は主に埋め立て又は焼却により行われており、環境負荷の問題が顕在化している。そのため、医薬品製造用シングルユースバッグには、環境負荷を低減するための生分解性が求められている。
【0003】
これまでに、生分解性を有する包装材として、各種材料が提案されている。例えば、特許文献1では、脂肪族ポリエステル系樹脂を含有する樹脂組成物を用いた樹脂層の少なくとも一方の表面に無機蒸着膜を有するフィルムが記載されている。特許文献2では、基材フィルムの少なくとも片面にアンカー層及び無機物層が順次積層されてなり、熱機械分析における平均線膨張率が特定範囲である積層フィルムが記載されている。特許文献3では、特定範囲の酸素透過率を有する生分解性樹脂層を含む基材フィルムと無機蒸着膜とが積層された生分解性フィルムが記載されている。特許文献4では、少なくとも3層からなり、2つの最外層のうち少なくとも1層が無機系粒子含有層であって、無機系粒子含有層の厚み、無機系粒子の最大粒径、及び無機系粒子の平均粒径が特定の関係を満たし、静摩擦係数が特定範囲である共押出二軸配向脂肪族ポリエステル系ロール状フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-31161号公報
【特許文献2】特開2021-169163号公報
【特許文献3】特開2006-327003号公報
【特許文献4】特開2007-160943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医薬品製造用シングルユースバッグには、生分解性に加え、内部の薬液の劣化等を防ぐための水蒸気バリア性も求められる。加えて、バイオ医薬品等の製造においては、細胞培養条件下での耐性も求められることがある。しかしながら、これまでに、上記特性を兼ね備える医薬品製造用シングルユースバッグについての知見はない。
上記事情に鑑み、本開示は、生分解性、水蒸気バリア性、及び細胞培養条件下での耐性を有する医薬品製造用シングルユースバッグの提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1> 生分解性ポリマー層と無機層とを有する積層フィルムの袋体を含む、医薬品製造用シングルユースバッグ。
<2> 無機層がアルミニウム層及び窒化ケイ素層からなる群より選択される少なくとも1つの層を含む、<1>に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
<3> 無機層がアルミニウム及び窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1つの蒸着層を含む、<1>又は<2>に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
<4> 生分解性ポリマー層の生分解性ポリマーが脂肪族ポリエステルを含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
<5> 脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネート及びポリカプロラクトンからなる群より選択される少なくとも1つのポリエステルを含む、<4>に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
<6> 無機層の厚さが0.05μm~1.5μmである、<1>~<5>のいずれか1項に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
<7> 生分解性ポリマー層の厚さが5μm~200μmである、<1>~<6>のいずれか1項に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
<8> 無機層の厚さに対する生分解性ポリマー層の厚さの比が3~4000である、<1>~<7>のいずれか1項に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
<9> 積層フィルムが生分解性ポリマー層と無機層との二層構造を有する、<1>~<8>のいずれか1項に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
<10> 積層フィルムがアンカー層を有しない、<1>~<9>のいずれか1項に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
<11> 積層フィルムの水蒸気透過率が25g/m2/24時間以下である、<1>~<10>のいずれか1項に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
<12> 37℃、95%RHの条件下で72時間静置した後の、500mm/分の引張速度で測定される積層フィルムの引張強度の低下率が10%以下である、<1>~<11>のいずれか1項に記載の医薬品製造用シングルユースバッグ。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、生分解性、水蒸気バリア性、及び細胞培養条件下での耐性を有する医薬品製造用シングルユースバッグが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態における医薬品製造用シングルユースバッグに用いられる積層フィルムの概略断面図を示す。
【
図2】一実施形態における医薬品製造用シングルユースバッグの概略平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示の実施形態は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示の実施形態を制限するものではない。
【0010】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0011】
<医薬品製造用シングルユースバッグ>
本開示の医薬品製造用シングルユースバッグ(以下、単に「本開示のシングルユースバッグ」とも記す。)は、生分解性ポリマー層と無機層とを有する積層フィルムの袋体を含む。
【0012】
本開示のシングルユースバッグは、医薬品の任意の製造過程において用いられるシングルユースバッグである。例えば、本バッグは、細胞培養用液体培地の容器、精製工程用緩衝液の容器、各種溶液の保管容器、各種溶液のサンプリング用容器、培養用容器、ミキサー又は液体混合用容器等として用いることができる。
【0013】
「シングルユースバッグ」とは、1回のみの使用を想定したバッグ形状の容器を指し、洗浄を経て繰り返し使用される容器と対比される。シングルユースバッグによれば、洗浄、滅菌、バリデーション等の工程を省略できる。また、コンタミネーションのリスクを低減できる。
【0014】
「生分解性」とは物質が生物活性により分解する性質を意味する。本開示において、生分解性ポリマーは、ISO 16929:2021(JIS K6952:2008に対応)に準拠した崩壊性試験により、最大12週間のコンポスト化を行い、最後に目開き2mmのフルイでフルイ残りが10質量%以下となるポリマーである。本開示の医薬品製造用シングルユースバッグは生分解性ポリマー層を有するため、生分解性に優れる。
崩壊性試験は具体的には以下のように行う。評価サンプルをフレームに固定し、最初の1週間は最高温度75℃未満の温度条件とし、以降は最高温度65℃未満、かつ少なくとも1週間は60℃を超え、少なくとも連続4週間は40℃を超える温度条件として崩壊性試験を行う。
目開き2mmのフルイでフルイ残りが10質量%以下となるまでの期間は、9週間以内であることが好ましく、6週間以内であることがより好ましく、3週間以内であることがさらに好ましい。
【0015】
本開示のシングルユースバッグは、生分解性ポリマー層と無機層とを有する積層フィルムの袋体を含む。医薬品製造用シングルユースバッグにおいて、内容液の蒸発又は外部からの蒸気の浸入による内容液の劣化又は濃度変化を抑制するために、袋体は高い水蒸気バリア性を有することが好ましい。本開示のシングルユースバッグでは、無機層を有する積層フィルムを用いるため、水蒸気バリア性に優れると考えられる。また、抗体、ワクチン等のバイオ医薬品の製造においては、細胞培養のためにシングルユースバッグを用いることがある。本開示のシングルユースバッグは、比較的高温の細胞培養条件下(例えば37℃)でも強度が劣化しにくく、耐性に優れることも見いだされた。
【0016】
[袋体]
本開示のシングルユースバッグに用いられる袋体は、生分解性ポリマー層と無機層とを有する積層フィルムの袋体である。袋体の形状は、袋体(すなわち、柔軟性素材によって構成された袋状の製品)である限り制限されず、用途に応じて適宜選択し得る。袋体の形状としては、例えば、矩形又は他の任意の形状(多角形、円形、楕円形等)の袋状、円柱形、立方体などの多角柱形、ガゼット袋等のいずれでもよい。袋体には、内容物の出口及び/又は入口となる開口部が設けられていてもよい。開口部には、後述の追加部材が連結されていてもよい。
積層フィルムによる袋体の作製方法は特に制限されず、2枚の積層フィルムを外縁で熱圧着等により溶着し袋体を作製してもよい。または、2枚の積層フィルムを外縁で粘着剤を用いて貼り合わせてもよい。
【0017】
(積層フィルム)
積層フィルムは、生分解性ポリマー層と無機層とを有する。
図1に、一実施形態における積層フィルムの概略断面図を示す。
図1に示される積層フィルム10は、生分解性ポリマー層12と、生分解性ポリマー層12上に積層される無機層14を有する。なお、図示される各層の大きさは概念的なものであり、
図1の態様に限定されない。また、
図1には生分解性ポリマー層及び無機層をそれぞれ1層有する積層フィルムの例が示されているが、積層フィルムは
図1の態様に限定されない。
【0018】
積層フィルムは生分解性ポリマー層を1層のみ有しても2層以上有してもよい。また、積層フィルムは無機層を1層のみ有しても2層以上有してもよい。積層フィルムは、生分解性ポリマー層と無機層とがそれぞれ少なくとも1層ずつ積層されていれば、いかなる積層構造を採ってもよい。典型的には、最外層のいずれか少なくとも一方が生分解性ポリマー層であり、袋体を作製したときの内側面となる。
例えば、積層フィルムは、以下の(a)~(g)に示す積層構造を有してもよい。なお、以下の(a)~(g)において、「生分解性ポリマー層1」及び「生分解性ポリマー層2」との記載は、各層の種類を表すものではなく、各ポリマー層が独立したポリマー層であることを意味する。したがって、各ポリマー層の種類は任意であり、同じであっても異なっていてもよい。同様に、「無機層1」及び「無機層2」との記載は、各層の種類を表すものではなく、各無機層が独立した無機層であることを意味する。したがって、各無機層の種類は任意であり、同じであっても異なっていてもよい。
【0019】
(a)生分解性ポリマー層1/無機層1
(b)生分解性ポリマー層1/生分解性ポリマー層2/無機層1
(c)生分解性ポリマー層1/無機層1/無機層2
(d)生分解性ポリマー層1/生分解性ポリマー層2/無機層1/無機層2
(e)生分解性ポリマー層1/無機層1/生分解性ポリマー層1
(f)生分解性ポリマー層1/生分解性ポリマー層2/無機層1/生分解性ポリマー層1
(g)生分解性ポリマー層1/生分解性ポリマー層2/無機層1/生分解性ポリマー層1/生分解性ポリマー層2
【0020】
製造容易性の観点からは、積層フィルムは生分解性ポリマー層と無機層との二層構造を有すること(すなわち、上記(a)のように、各1層の生分解性ポリマー層と無機層とからなること)が好ましい。
【0021】
積層フィルムの各層の間には、アンカー層が介在していてもよく、アンカー層が介在していなくてもよい。アンカー層はアンカーコート剤を含む層である。アンカーコート剤としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート基含有樹脂、アルコキシル基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコーン樹脂等が挙げられる。アンカーコート剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アンカー層の形成には、アンカーコート剤に加え、適切な溶剤を使用し得る。溶剤としては、炭化水素系溶剤(シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等)、アルコール系溶剤(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等)、エステル系溶剤(酢酸エチル等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド等)、グリコール系溶剤等の有機溶媒が挙げられる。溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
医薬品製造用シングルユースバッグとしての使用時にアンカー層の成分が内容物に混入することを防ぐ観点からは、積層フィルムはアンカー層を有しないことが好ましい。積層フィルムがアンカー層を有する場合には、積層フィルムの内層から医薬品において認められない溶出物及び残留溶媒が基準値以内であること(例えば、残留溶媒に関する規制ICH-Q3Cを満たすこと)を必要に応じて検証する。
【0022】
積層フィルムの厚さは特に制限されず、5.05μm以上であることが好ましく、10.05μm以上であることがより好ましく、15.05μm以上であることがさらに好ましい。積層フィルムの厚さは、201.5μm以下であることが好ましく、181.5μm以下であることがより好ましく、151.5μm以下であることがさらに好ましい。かかる観点からは、積層フィルムの厚さは、5.05μm~201.5μmであることが好ましく、10.05μm~181.5μmであることがより好ましく、15.05μm~151.5μmであることがさらに好ましい。
本開示において、積層フィルムの厚さは平均厚さを表し、以下のように測定される。積層フィルムの、他のフィルム又は部材と接着していない箇所(例えば、袋体を作製するための積層フィルム同士の接着部や、積層フィルムが他の部材と連結される箇所以外)において、U字形鋼板マイクロメーター(例えば、株式会社ミツトヨ製、型番:PMU150-25MJ)により測定される5ヶ所の厚さの平均値を求める。
【0023】
-生分解性ポリマー層-
生分解性ポリマー層は、生分解性ポリマーを含む層である。生分解性ポリマーとしては、生分解性ポリエステル、天然高分子、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。生分解性ポリマー層は生分解性ポリマーを1種含んでも2種以上含んでもよい。積層フィルムが2層以上の生分解性ポリマー層を含む場合は、各生分解性ポリマー層に含まれる生分解性ポリマーは互いに同じであっても異なってもよい。
【0024】
生分解性ポリエステルとしては、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、及び脂肪族芳香族ポリエステルが挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)等のサクシネート系ポリマー;ポリ乳酸(PLA)、乳酸と他の共重合成分(例えばヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、ラクトン等)との共重合体等のポリ乳酸系ポリマー;ポリブチレンアジペート;ポリカプロラクトン(PCL);ポリグリコール酸;ポリジオキサノン;ポリヒドロキシプロピオネート、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシバリレート,ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)(PHBV)等のポリヒドロキシアルカノエートなどが挙げられる。なかでも、ポリブチレンサクシネート(PBS)及びポリカプロラクトン(PCL)からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。ポリブチレンサクシネート(PBS)及びポリカプロラクトン(PCL)は、生分解性に特に優れ、細胞培養条件下での耐性、ガンマ線耐性等の点でも優れる傾向にある。
脂肪族芳香族ポリエステルとしては、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)等が挙げられる。
【0025】
天然高分子としては、セルロース、酢酸セルロース(CA)、熱可塑性デンプン(TPS)等が挙げられる。
【0026】
なかでも、生分解性により優れる観点からは、生分解性ポリエステルが好ましく、脂肪族ポリエステルがより好ましい。
【0027】
生分解性ポリマーの融点は、耐熱性の観点からは、37℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。加工の容易性等の観点からは、生分解性ポリマーの融点は、200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。かかる観点から、生分解性ポリマーの融点は、37℃~200℃であることが好ましく、40℃~150℃であることがより好ましく、50℃~130℃であることがさらに好ましい。
【0028】
医薬品製造用シングルユースバッグは、典型的には、滅菌処理を行ってから使用される。滅菌処理は、例えばガンマ線などの放射線の照射により行われる。ポリマーはガンマ線照射を行うと生分解性が変化する場合があるが、生分解性ポリマー層は、例えば50kGyガンマ線を照射した後も生分解性の基準を満たすポリマー層であることが好ましい。
【0029】
生分解性ポリマー層は、生分解性ポリマーのみを含んでもよく、生分解性ポリマーに加えて他の成分を含んでもよい。他の成分としては、無機フィラー及びその他の添加剤が挙げられる。
無機フィラーとしては、タルク、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、雲母、クレー等が挙げられる。
その他の添加剤としては、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等が挙げられる。可塑剤としては、脂肪族多価カルボン酸エステル、脂肪族多価アルコールエステルオキシ酸エステル、エポキシ系可塑剤等が挙げられる。
製造の簡便性、内容物への成分の溶出を低減する観点、及び優れた生分解性を得る観点からは、生分解性ポリマー層中の生分解性ポリマーの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。生分解性ポリマー層は生分解性ポリマーのみを含んでもよい。
【0030】
生分解性ポリマー層の厚さは特に制限されず、強度、ガスバリア性、及び製作の加工性の観点からは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましい。生分解性ポリマー層の厚さは、200μm以下であることが好ましく、180μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。かかる観点からは、生分解性ポリマー層の厚さは、5μm~200μmであることが好ましく、10μm~180μmであることがより好ましく、15μm~150μmであることがさらに好ましい。積層フィルムが生分解性ポリマー層を2層以上有する場合、上記生分解性ポリマー層の厚さは、2層以上の生分解性ポリマー層の合計の厚さを表す。
本開示において、生分解性ポリマー層の厚さは平均厚さを表し、以下のように測定される。積層フィルムの、他のフィルム又は部材と接着していない箇所(例えば、袋体を作製するための積層フィルム同士の接着部や、積層フィルムが他の部材と連結される箇所以外)において、U字形鋼板マイクロメーター(例えば、株式会社ミツトヨ製、型番:PMU150-25MJ)により測定される5ヶ所の厚さの平均値を求める。
【0031】
生分解性ポリマー層としては、入手可能なフィルムをそのまま用いてもよく、ペレット等として入手可能な生分解性ポリマーをフィルム状に成形して用いてもよい。成形方法としては、生分解性ポリマー、又は生分解性ポリマー及び必要に応じて用いられる他の成分を含む組成物を、押出成形、共押出成形、ブロー成形等により成形する方法が挙げられる。
【0032】
-無機層-
無機層は、無機物の層であり、積層フィルムに水蒸気バリア性を付与する。
無機物としては、アルミニウム、ケイ素、銀、インジウム、銅、クロム、ニッケル、チタン等の単体;酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、硫化亜鉛、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化炭化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素等の化合物などが挙げられる。無機物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水蒸気バリア性により優れる観点からは、無機物としては、アルミニウム及び窒化ケイ素が好ましい。積層フィルムの透明性が求められる場合には、窒化ケイ素が特に有用である。
【0033】
無機層の形成方法は特に制限されず、所望の厚さが得られる形成方法を適宜選択できる。所望の厚さの薄膜を形成しやすい観点からは、蒸着が好ましい。蒸着としては、物理蒸着(PVD)及び化学蒸着(CVD)が挙げられる。物理蒸着としては、真空蒸着、スパッタリング、及びイオンプレーティングが挙げられる。異なる形成方法を組み合わせて2層以上の無機層を形成してもよい。密着性の観点からはスパッタリングが好ましい。
【0034】
なかでも、水蒸気バリア性に優れる無機層を簡便に形成できる観点からは、無機層は、アルミニウム及び窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1つの蒸着層であることが好ましく、アルミニウム真空蒸着層及び窒化ケイ素スパッタ層からなる群より選択される少なくとも1つの蒸着層であることがより好ましい。
【0035】
無機層の厚さは特に制限されず、より優れた水蒸気バリア性を得る観点からは、0.05μm以上であることが好ましく、0.08μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。製造容易性及び優れた追従性を得る観点からは、無機層の厚さは、1.5μm以下であることが好ましく、1.3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。かかる観点からは、無機層の厚さは、0.05μm~1.5μmであることが好ましく、0.08μm~1.3μmであることがより好ましく、0.1μm~1μmであることがさらに好ましい。積層フィルムが無機層を2層以上有する場合、無機層の厚さは、2層以上の無機層の合計の厚さを表す。
無機層の厚さは、特段の指定がない場合、積層フィルムの他のフィルム又は部材と接着していない箇所について、触針式表面粗さ計(例えば、Bruker Corporation社製、型番:Dektak)で、モニタピースを用いて測定する。厚さが均等でない場合は、無機層の厚さは、5箇所で測定した厚さの平均とする。無機層の厚さは、マイクロメーターで厚さの変化を測定する方法、SEM断面分析、重量測定などを用いてもよい。
【0036】
無機層が真空蒸着層(例えばアルミニウム真空蒸着層)である場合、無機層の厚さは0.05μm以上であることが好ましく、0.08μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。製造容易性及び優れた追従性を得る観点からは、無機層の厚さは、1μm以下であることが好ましく、0.7μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。かかる観点からは、無機層の厚さは、0.05μm~1μmであることが好ましく、0.08μm~0.7μmであることがより好ましく、0.1μm~0.5μmであることがさらに好ましい。
真空蒸着層の厚さは、積層フィルムの他のフィルム又は部材と接着していない箇所において、光透過率測定により測定する。厚さが均等でない場合は、無機層の厚さは、5箇所で測定した厚さの平均とする。真空蒸着層の厚さは、マイクロメーターで厚さの変化を測定する方法、SEM断面分析、重量測定などを用いてもよい。
【0037】
無機層がスパッタ層(例えば窒化ケイ素スパッタ層)である場合、無機層の厚さは0.5μm以上であることが好ましく、0.8μm以上であることがより好ましく、1.0μm以上であることがさらに好ましい。製造容易性及び優れた追従性を得る観点からは、無機層の厚さは、1.5μm以下であることが好ましく、1.4μm以下であることがより好ましく、1.3μm以下であることがさらに好ましい。かかる観点からは、無機層の厚さは、0.5μm~1.5μmであることが好ましく、0.8μm~1.4μmであることがより好ましく、1.0μm~1.3μmであることがさらに好ましい。
スパッタ層の厚さは、積層フィルムの他のフィルム又は部材と接着していない箇所について、触針式表面粗さ計(例えば、Bruker Corporation社製、型番:Dektak)で、モニタピースを用いて測定する。厚さが均等でない場合は、スパッタ層の厚さは、5箇所で測定した厚さの平均とする。スパッタ層の厚さは、マイクロメーターで厚さの変化を測定する方法、SEM断面分析、重量測定などを用いてもよい。
【0038】
積層フィルムにおいて、無機層の厚さに対する生分解性ポリマー層の厚さの比は、3~4000であることが好ましく、7~2250であることがより好ましい。積層フィルムが生分解性ポリマー層を2層以上有する場合、及び/又は、無機層を2層以上有する場合は、上記比は、無機層の厚さの合計に対する生分解性ポリマー層の厚さの合計の比を表す。
一態様において、無機層が真空蒸着層(例えばアルミニウム真空蒸着層)である場合、上記比は、5~4000であることが好ましく、14~2250であることがより好ましい。
一態様において、無機層がスパッタ層(例えば窒化ケイ素スパッタ層)である場合、上記比は、3~400であることが好ましく、7~225であることがより好ましい。
【0039】
積層フィルムの水蒸気透過率は、低いほど好ましい。例えば、積層フィルムの水蒸気透過率は、25g/m2/24時間以下であることが好ましく、5g/m2/24時間以下であることがより好ましく、1g/m2/24時間以下であることがさらに好ましい。
積層フィルムの水蒸気透過率は、ASTM F1249(JIS K7129-2:2019に対応)に準拠した赤外線センサー法を用いた水蒸気透過率試験により測定される。水蒸気透過率試験では、水蒸気透過率試験機(例えば、Mocon社製、型番:PEMATRAN W3/33)を用いて、23℃、90%RHの水蒸気を積層フィルムに透湿させ、積層フィルムを透過した水蒸気が乾燥窒素により運搬されたものを赤外線センサーで検知し、水蒸気透過率を測定する。
【0040】
積層フィルムの引張強度は、強度の観点からは、10N/15mm以上であることが好ましく、15N/15mm以上であることがより好ましく、23N/15mm以上であることがさらに好ましい。本開示において、引張強度は、JIS Z0238:1998に準拠した引張試験機(例えば、イマダ社製、構成:デジタルフォースゲージ、型番ZTS-1000N、電動計測スタンド、型番:MX2-1000N-L-V750)を使用し、500mm/分の引張スピードで測定する。
【0041】
積層フィルムは、細胞培養条件下での耐性を有することが好ましい。例えば、37℃、95%RHの条件下で72時間静置した後の、500mm/分の引張速度で測定される積層フィルムの引張強度の低下率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、2%以下であることがさらに好ましい。引張強度の低下率は、下式により求められる。
引張強度の低下率(%)=((72時間静置前の引張強度)-(72時間静置後の引張強度))/(72時間静置前の引張強度)×100
【0042】
[追加部材]
本開示のシングルユースバッグは、袋体に加え、他の部材を有していてもよい。例えば、本開示のシングルユースバッグは、チューブ、バルブ、コネクター、キャップ、ポート、クランプ、継手等の部材をさらに有していてもよい。追加部材は、例えば、袋体の開口部に連結されて内容物の移動経路となるか移動を制御するために用い得る。
【0043】
図2に一実施形態におけるシングルユースバッグの概略平面図を示す。シングルユースバッグ20は、生分解性ポリマー層と無機層とを有する積層フィルムの袋体22を含む。袋体22は、2枚の積層フィルムが外周24で溶着されてなる。袋体22には3つのポート26が取り付けられ、各ポートにはチューブ28が挿入されている。チューブ28には、クランプ30、カップリング32等の所望の部材を取り付けることができる。
ただし、本開示のシングルユースバッグは
図2に示される態様に限定されない。
【実施例0044】
次に本開示の実施形態を実施例により具体的に説明するが、本開示の実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
<参照例1>
脂肪族ポリエステル系ペレット(ポリブチレンサクシネート(三菱ケミカル株式会社製、型番:Bio-PBS FD92PM、以下PBS))を使用し、押出温度170℃、引取速度1.5m/分、乾燥温度80℃でダイ押出成形によるフィルム成形を行って、厚さ100μmのフィルムを作製した。フィルムの厚さはU字形鋼板マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製、型番:PMU150-25MJ)により測定される5ヶ所の厚さの平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0046】
<参照例2>
脂肪族ポリエステル系ペレット(ポリカプロラクトン(Ingevity社製、型番:Capa6500、以下PCL))を使用し、押出温度140℃、引取速度1.5m/分、乾燥温度80℃でダイ押出成形によるフィルム成形を行って、厚さ約100μmのフィルムを作製した。フィルムの厚さはU字形鋼板マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製、型番:PMU150-25MJ)により測定される5ヶ所の厚さの平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0047】
<実施例1>
参照例1と同じPBSフィルムに、アルミニウムを真空蒸着して厚さ約0.1μmの蒸着層を形成し、積層フィルムを作製した。積層フィルムの厚さはU字形鋼板マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製、型番:PMU150-25MJ)により測定される5ヶ所の厚さの平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0048】
<実施例2>
参照例1と同じPBSフィルムに、Si3N4をスパッタ処理して約1μmのスパッタ層を形成し、積層フィルムを作製した。積層フィルムの厚さはU字形鋼板マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製、型番:PMU150-25MJ)により測定される5ヶ所の厚さの平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0049】
<実施例3>
参照例2と同じPCLフィルムに、アルミニウムを真空蒸着して厚さ約0.1μmの蒸着層を形成し、積層フィルムを作製した。積層フィルムの厚さはU字形鋼板マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製、型番:PMU150-25MJ)により測定される5ヶ所の厚さの平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0050】
<実施例4>
参照例2と同じPCLフィルムに、Si3N4をスパッタ処理して約1μmのスパッタ層を形成し、積層フィルムを作製した。積層フィルムの厚さはU字形鋼板マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製、型番:PMU150-25MJ)により測定される5ヶ所の厚さの平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0051】
〔水蒸気透過率〕
ASTM F1249(JIS K7129-2:2019に対応)に準拠した赤外線センサー法を用いて、参照例1、2及び実施例1~4のフィルムの水蒸気透過率試験を行った。水蒸気透過率試験では、水蒸気透過率試験機(Mocon社製、型番:PEMATRAN W3/33)を用いて、23℃、90%RHの水蒸気をフィルムに透湿させ、フィルムを透過した水蒸気が乾燥窒素により運搬されたものを赤外線センサーで検知し、水蒸気透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
〔生分解性〕
参照例1及び参照例2のフィルムに、約50kGyのガンマ線を照射した。その後ISO 16929:2021(JIS K6952:2008に対応)に準拠した崩壊性試験を行った。具体的には、評価サンプルをフレームに固定し、最初の1週間は最高温度75℃未満の温度条件とし、以降は最高温度65℃未満、かつ少なくとも1週間は60℃を超え、少なくとも連続4週間は40℃を超える温度条件として崩壊性試験を行った。脂肪族ポリエステル系フィルムが完全に崩壊するまでの時間を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
〔融点〕
参照例1及び参照例2のフィルムに、約50kGyのガンマ線を照射した。その後、高感度示差走査熱分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、型番:X-DSC7000)を使用し、示差走査熱量測定(DSC)でフィルムの融点を評価した。結果を表1に示す。
【0054】
〔引張強度〕
参照例1、2及び実施例1~4のフィルムを、細胞培養条件を想定した37℃、95%RHで72時間加熱処理した。その後、JIS Z0238:1998に準拠した引張試験機(イマダ社製、構成:デジタルフォースゲージ、型番ZTS-1000N、電動計測スタンド、型番:MX2-1000N-L-V750)を使用し、500mm/分の引張スピードでフィルムの引張強度を測定し、フィルム強度の変化を評価した。測定した引張強度を表1に示す。
【0055】
なお、実施例1~4で作製された積層フィルムは、
図1に示される構成、すなわち、各1層の生分解性フィルムと無機層とからなる構成を有する。ただし、
図1の構成は概念的なものであり、図示される各層の厚さ及び比は、各実施例で作製された積層フィルムの厚さを正確に反映したものではない。
【0056】
【0057】
水蒸気透過率の評価の結果、ポリマー層としてPBS及びPCLのいずれのフィルムを用いた場合も、無機層を有しないフィルムに比べて無機層を有する積層フィルムにおいて水蒸気透過率は低かった。したがって、実施例1~4で作製された積層フィルムは水蒸気バリア性に優れることが示された。
【0058】
ガンマ線照射後の生分解性の評価の結果、参照例1のPBSフィルムでは約6週間、参照例2のPCLフィルムでは約3週間経過後、完全な崩壊が確認され、いずれも生分解可能であることが示された。PBSフィルム及びPCLフィルムが生分解可能であり、アルミニウム及びSi3N4は加水分解可能で、土壌の水分によって分解されるため、アルミニウム真空蒸着層又はSi3N4スパッタ層を有する実施例1~4の積層フィルムも同様に生分解可能であると考えられる。
【0059】
ガンマ線照射後の融点の評価の結果、参照例1のPBSフィルム及び参照例2のPCLフィルムは、それぞれ87℃、53℃の融点を有しており、例えば37℃の培養条件のバイオ医薬品製造にも好適に利用可能であることが確認された。このことから、実施例1~4の積層フィルムも同様にバイオ医薬品製造に好適に利用可能であると考えられる。
【0060】
引張強度の評価の結果、参照例1、2及び実施例1~4のいずれの評価サンプルにおいても、引張強度は加熱処理前後で同じ水準であった。したがって、37℃、72時間加熱後もフィルムの劣化が発生せず、実施例1~4の積層フィルムは、バイオ医薬品製造にも好適に利用可能であることが示された。
【0061】
以上の結果より、実施例1~4で作製された積層フィルムは、生分解性、水蒸気バリア性、及び細胞培養条件下での耐性を有し、医薬品製造用シングルユースバッグに適することが示された。
【0062】
<シングルユースバッグの作製>
上記のように得られた積層フィルムを用いて、以下のように
図2の概略図で示すシングルユースバッグを作製できる。まず、1枚の積層フィルムのポートの溶着箇所に穴をあけ、ポートの溶着面を積層フィルムの溶着面と合わせてポートを積層フィルムの穴に挿入し、溶着する。続いて、ポートが溶着された積層フィルムの溶着面ともう1枚の積層フィルムの溶着面を合わせ、外周を溶着する。その後、ポートに適切なサイズのチューブを差し込み、ケーブルタイなどの締結用具で固定する。チューブには、クランプ、コネクター、カップリング、無針バルブ等の所望の部材を取り付ける。