(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025102513
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物からリサイクル繊維を製造する方法
(51)【国際特許分類】
D21C 5/02 20060101AFI20250701BHJP
D21B 1/32 20060101ALI20250701BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20250701BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20250701BHJP
B09B 101/67 20220101ALN20250701BHJP
B09B 101/75 20220101ALN20250701BHJP
B09B 101/85 20220101ALN20250701BHJP
【FI】
D21C5/02 ZAB
D21B1/32
B09B3/70
B09B5/00 Z
B09B5/00 Q
B09B101:67
B09B101:75
B09B101:85
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220007
(22)【出願日】2023-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】栗田 範朋
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝義
【テーマコード(参考)】
4D004
4L055
【Fターム(参考)】
4D004AA06
4D004AA12
4D004BA09
4D004CA13
4D004CA36
4D004CA46
4D004CA48
4D004CB05
4D004CC11
4L055AA11
4L055AC09
4L055AD08
4L055AG71
4L055BB18
4L055FA22
(57)【要約】
【課題】高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物からリサイクル繊維を製造する方法において、オゾン処理における処理速度とエネルギー効率とを両立させることが可能な方法を提供する。
【解決手段】高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物からリサイクル繊維を製造する方法は、第1処理工程S6と、第2処理工程S9と、を備える。第1処理工程は、第1処理槽31-1内の第1処理液52-1にオゾンを供給しつつ、第1処理液中で、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物を、オゾンにより処理して、高吸水性ポリマーの少なくとも一部を除去する。第2処理工程は、第2処理槽31-2内の第2処理液52-2に、第1処理槽内で第1処理液から放出されたオゾンを供給しつつ、第2処理液中で、パルプ繊維を、オゾンにより処理する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物からリサイクル繊維を製造する方法であって、
第1処理槽内の第1処理液にオゾンを供給しつつ、前記第1処理液中で、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物を、前記オゾンにより処理して、前記高吸水性ポリマーの少なくとも一部を除去する第1処理工程と、
第2処理槽内の第2処理液に、前記第1処理槽内で前記第1処理液から放出された前記オゾンを供給しつつ、前記第2処理液中で、パルプ繊維を、前記オゾンにより処理する第2処理工程と、
を備える、
方法。
【請求項2】
前記第1処理工程は、前記パルプ繊維及び前記第1処理液を、前記第1処理槽内に連続的に供給しつつ、前記パルプ繊維を前記オゾンにより処理しながら、前記オゾンにより処理された前記パルプ繊維を含有する前記第1処理液を、前記第1処理槽の外へ連続的に送出する連続処理工程を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1処理工程は、
前記第1処理槽に前記パルプ繊維を含有する前記第1処理液を準備する準備工程と、
前記準備工程後、前記パルプ繊維を前記オゾンにより処理するバッチ処理工程と、
前記バッチ処理工程後、前記オゾンにより処理された前記パルプ繊維を含有する前記第1処理液を、前記第1処理槽の外へ送出する送出工程と、
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1処理工程で処理された前記パルプ繊維を、前記第1処理液から分離する分離工程を更に備え、
前記分離された前記パルプ繊維が、前記第2処理槽へ供給される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1処理工程で処理された前記パルプ繊維を、前記第1処理液から分離する分離工程と、
前記分離された前記パルプ繊維で、前記第2処理液の固形分率を調整する調整工程と、
を更に備え、
前記固形分率を調整された、前記パルプ繊維を含む前記第2処理液が、前記第2処理槽へ供給される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2処理工程は、前記第2処理槽内の前記第2処理液中で、前記第1処理工程で処理された前記パルプ繊維を前記オゾンにより処理して、脱臭、漂白及び殺菌の少なくとも一つを実施する工程を含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2処理工程は、前記第2処理槽内の前記第2処理液中で、前記第1処理工程で処理された前記パルプ繊維を前記オゾンにより処理して、前記高吸水性ポリマーの少なくとも一部を除去する工程を含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1処理工程で用いる前記高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物として、使用済み吸収性物品から取り出された前記高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物を準備する工程を更に備える、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物からリサイクル繊維を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物を製造する方法が知られている。例えば特許文献1に、繊維及び高吸水性ポリマーの混合物からリサイクル繊維を製造する方法が開示されている。この方法は、高吸水性ポリマーを含む繊維と水とを含有する混合液を、高吸水性ポリマーを溶解可能な処理液を有する処理槽の中に、第1の流量で連続的に供給しつつ、上記高吸水性ポリマーが溶解され、除去された上記繊維を含有する上記処理液を、上記処理槽の外に、第2の流量で連続的に排出する連続処理工程、を備える。上記高吸水性ポリマーを溶解可能な処理液は、上記高吸水性ポリマーを溶解可能に分解するガス状物質を含有する水溶液であってもよく、上記ガス状物質は、オゾンを含んでもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、高吸水性ポリマーは、高濃度にオゾンが溶存した水溶液を処理液として用いる方が分解され易い。しかし、水溶液に高濃度にオゾンを溶存させようとして、水溶液に高濃度かつ高流量でオゾンを注入すると、実際に水溶液に溶け込むオゾンだけでなく、溶け込まずに通り抜けてしまうオゾンも多く生じ易い。このように、オゾンが水溶液を通り抜けて、水溶液から放出されると、高吸水性ポリマーの分解に寄与しないオゾンが多くなり、オゾンの生成に費やされたエネルギーが無駄になるおそれがある。そうなると、オゾン処理のエネルギー効率が低下するおそれがある。
【0005】
その一方で、オゾン処理のエネルギー効率を優先して、水溶液に注入するオゾンの濃度及び流量の少なくとも一方を下げると、水溶液を通り抜けるオゾンの比率は下げられ、オゾン処理のエネルギー効率は良くなる。しかし、オゾン処理の処理時間を短縮したい、すなわち処理速度を上げたい場合、結局、前述したように、水溶液に高濃度かつ高流量でオゾンを注入する方法を取らざるを得ない。
【0006】
本発明の目的は、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物からリサイクル繊維を製造する方法において、オゾン処理における処理速度とエネルギー効率とを両立させることが可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物からリサイクル繊維を製造する方法であって、第1処理槽内の第1処理液にオゾンを供給しつつ、前記第1処理液中で、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物を、前記オゾンにより処理して、前記高吸水性ポリマーの少なくとも一部を除去する第1処理工程と、第2処理槽内の第2処理液に、前記第1処理槽内で前記第1処理液から放出された前記オゾンを供給しつつ、前記第2処理液中で、パルプ繊維を、前記オゾンにより処理する第2処理工程と、を備える、方法、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物からリサイクル繊維を製造する方法において、オゾン処理における処理速度とエネルギー効率とを両立させることが可能な方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物からリサイクル繊維を製造する方法の一例を示すフロー図である。
【
図2】実施形態に係る
図1の第1処理工程~第2処理工程を実施する装置の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態は、以下の態様に関する。
[態様1]
高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物からリサイクル繊維を製造する方法であって、第1処理槽内の第1処理液にオゾンを供給しつつ、前記第1処理液中で、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物を、前記オゾンにより処理して、前記高吸水性ポリマーの少なくとも一部を除去する第1処理工程と、第2処理槽内の第2処理液に、前記第1処理槽内で前記第1処理液から放出された前記オゾンを供給しつつ、前記第2処理液中で、パルプ繊維を、前記オゾンにより処理する第2処理工程と、を備える、方法。
【0011】
本方法では、第1処理工程におけるパルプ繊維のオゾン処理のために第1処理槽内の第1処理液に供給され、第1処理液から放出された(第1処理液を通り抜けた)オゾンを、第2処理槽内の第2処理液へ供給し、第2処理工程のパルプ繊維のオゾン処理に利用する。すなわち、本方法では、オゾン処理の処理速度を高めるべく、第1処理液に高濃度かつ高流量でオゾンを供給することで、第1処理液に溶け込まずに放出される(通り抜ける)オゾンが多く生じたとしても、放出されたオゾンを第2処理工程で利用できる。このように、第1処理工程のオゾン処理用に供給したオゾンを、第2処理工程のオゾン処理でも利用することにより、オゾンを有効利用できる。したがって、第1処理工程でのオゾン処理における処理速度を高めることができると共に、オゾン処理のエネルギー効率を高めることができる。よって、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物からリサイクル繊維を製造する方法において、オゾン処理における処理速度とエネルギー効率とを両立させることができる。
【0012】
[態様2]
前記第1処理工程は、前記パルプ繊維及び前記第1処理液を、前記第1処理槽内に連続的に供給しつつ、前記パルプ繊維を前記オゾンにより処理しながら、前記オゾンにより処理された前記パルプ繊維を含有する前記第1処理液を、前記第1処理槽の外へ連続的に送出する連続処理工程を含む、態様1に記載の方法。
【0013】
本方法では、パルプ繊維及び第1処理液を第1処理槽内に連続的に供給しつつ、パルプ繊維をオゾン処理しながら(高吸水性ポリマーが酸化分解され、溶解され、除去されながら)、オゾン処理されたパルプ繊維を含有する第1処理液を、第1処理槽の外へ連続的に送出する。すなわち、パルプ繊維を連続的に処理している。それゆえ、第1処理槽において、第1処理液の供給口から第1処理液の送出口へ向かって連続的かつ安定的な第1処理液の流れを発生させることができる。それにより、第1処理液に溶存するオゾンや第1処理液を通るオゾンとパルプ繊維とをその流れに引き込んで互いに接触し易くすることができる。すなわち、パルプ繊維をオゾンに連続的に接触させることが可能となる。したがって、高吸水性ポリマーの分解に寄与するオゾンを多くすることができ、オゾン処理における処理速度やエネルギー効率を高めることができる。
【0014】
[態様3]
前記第1処理工程は、前記第1処理槽に前記パルプ繊維を含有する前記第1処理液を準備する準備工程と、前記準備工程後、前記パルプ繊維を前記オゾンにより処理するバッチ処理工程と、前記バッチ処理工程後、前記オゾンにより処理された前記パルプ繊維を含有する前記第1処理液を、前記第1処理槽の外へ送出する送出工程と、を含む、態様1に記載の方法。
【0015】
本方法では、まず、第1処理槽にパルプ繊維を含有する第1処理液を準備し、次いで、パルプ繊維をオゾン処理し(高吸水性ポリマーが酸化分解され、溶解され、除去されて)、その後、オゾン処理されたパルプ繊維を含有する第1処理液を、第1処理槽の外へ送出する。すなわち、パルプ繊維をバッチ処理している。それゆえ、第1処理槽において、第1処理液内に留まるパルプ繊維を、第1処理液に溶存するオゾンや第1処理液を通るオゾンと継続的に接触し易くすることができる。それにより、パルプ繊維を継続的にオゾンにより処理することが可能となる。したがって、高吸水性ポリマーの分解に寄与するオゾンを多くすることができ、オゾン処理における処理速度やエネルギー効率を高めることができる。
【0016】
[態様4]
前記第1処理工程で処理された前記パルプ繊維を、前記第1処理液から分離する分離工程を更に備え、前記分離された前記パルプ繊維が、前記第2処理槽へ供給される、態様1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【0017】
第1処理工程後の第1処理液は、高吸水性ポリマーの少なくとも一部が除去されたパルプ繊維の他に、高吸収性ポリマーが酸化分解されて生成した低分子量の有機物を含有している。したがって、パルプ繊維を第1処理液と共に第2処理工程へ供給すると、第2処理工程の第2処理液に、パルプ繊維だけでなく、低分子量の有機物が含まれることになる。そうなると、第2処理液中のオゾンが、パルプ繊維だけでなく、低分子量の有機物にも供給されることになり、オゾンをパルプ繊維の処理に有効に利用できなくなるおそれがある。そこで、本方法では、第1処理工程で処理されたパルプ繊維を第1処理液から分離し、分離されたパルプ繊維を第2処理槽へ供給している。すなわち、パルプ繊維を、低分子量の有機物と分離してから第2処理槽へ供給するので、第2処理工程の第2処理液に低分子量の有機物が含まれることを抑制できる。それにより、第2処理液中のオゾンが、概ねパルプ繊維だけに供給されることになり、オゾンをパルプ繊維の処理に有効に利用することができる。したがって、第2処理工程におけるオゾン処理の処理速度やエネルギー効率を高めることができる。
【0018】
[態様5]
前記第1処理工程で処理された前記パルプ繊維を、前記第1処理液から分離する分離工程と、前記分離された前記パルプ繊維で、前記第2処理液の固形分率を調整する調整工程と、を更に備え、前記固形分率を調整された、前記パルプ繊維を含む前記第2処理液が、前記第2処理槽へ供給される、態様1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【0019】
本方法では、第1処理工程で処理されたパルプ繊維を第1処理液から分離し、分離されたパルプ繊維で固形分率を調整された第2処理液を第2処理槽へ供給している。すなわち、パルプ繊維を、低分子量の有機物と分離し、かつ、新たな第2処理液と混合し適正な固形分率にして第2処理槽へ供給する。そのため、第2処理工程の第2処理液に低分子量の有機物が含まれることを抑制できると共に、オゾン処理中のオゾンとパルプ繊維との比率を適正にすることができる。それにより、第2処理液中のオゾンが、概ねパルプ繊維だけに供給され、かつ、パルプの濃度が適正であることになり、オゾンをパルプ繊維の処理により有効に利用することができる。したがって、第2処理工程におけるオゾン処理の処理速度やエネルギー効率を高めることができる。
【0020】
[態様6]
前記第2処理工程は、前記第2処理槽内の処理液中で、前記第1処理工程で処理された前記パルプ繊維を前記オゾンにより処理して、脱臭、漂白及び殺菌の少なくとも一つを実施する工程を含む、態様1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【0021】
本方法では、第2処理工程は、第2処理槽内の処理液中で、第1処理工程で処理されたパルプ繊維をオゾンにより処理して、脱臭、漂白及び殺菌の少なくとも一つを実施する工程を含んでいる。このように、第1処理工程のオゾン処理用に供給したオゾンを、第2処理工程における脱臭、漂白及び殺菌の少なくとも一つを実施するオゾン処理で利用することにより、オゾンを有効利用できる。そして、本方法では、第1処理工程から更に脱臭、漂白及び殺菌が進んだパルプ繊維を製造することができる。
【0022】
[態様7]
前記第2処理工程は、前記第2処理槽内の処理液中で、前記第1処理工程で処理された前記パルプ繊維を前記オゾンにより処理して、前記高吸水性ポリマーの少なくとも一部を除去する工程を含む、態様1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【0023】
本方法では、第2処理工程は、第2処理槽内の処理液中で、第1処理工程で処理されたパルプ繊維をオゾンにより処理して、高吸水性ポリマーの少なくとも一部を除去する工程を含んでいる。このように、第1処理工程のオゾン処理用に供給したオゾンを、第2処理工程における高吸水性ポリマーの少なくとも一部を除去するオゾン処理で利用することにより、オゾンを有効利用できる。そして、本方法では、第1処理工程から更に高吸水性ポリマーの除去が進んだパルプ繊維を製造することができる。
【0024】
[態様8]
前記第1処理工程で用いる前記高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物として、使用済み吸収性物品から取り出された前記高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物を準備する工程を更に備える、態様1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【0025】
本方法では、第1処理工程において、使用済み吸収性物品から取り出された高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物を用いている。したがって、廃棄される量の多い使用済み吸収性物品について、その構成材料をリサイクルすることができる。それにより、環境負荷の低減を図ることができる。
【0026】
以下、本実施形態に係る高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物からリサイクル繊維を製造する方法について説明する。
【0027】
ここで、製造されるリサイクル繊維の原料となる、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物については、パルプ繊維と高吸水性ポリマーとが混合されたものであれば特に制限はない。混合物の由来としては、例えば、何らかの液体を吸収する吸収体に含まれるパルプ繊維と高吸水性ポリマーとの混合物が挙げられる。吸収体としては、例えば、体液(例示:排泄物、血)を吸収し得る吸収性物品のような衛生用品が備える吸収体が挙げられる。混合物の状態としては、例えば、単にパルプ繊維と高吸水性ポリマーとが混合されたもの、パルプ繊維の集合体に高吸水性ポリマーが含有されたもの、パルプ繊維の表面の一部又は全部に高吸水性ポリマーが付着したもの(そのようなパルプ繊維の集合体)、が挙げられる。
【0028】
本実施形態では、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物が、使用済み吸収性物品から得られる高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維である例について説明する。ただし、本発明は本実施形態に限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜変更等が可能である。ただし、使用済み吸収性物品とは、譲渡等(例えば販売)された吸収性物品であって、使用されて排泄物(例示:尿、便、経血)を吸収したもの、使用されたが排泄物を吸収していないもの、及び、未使用のもの、並びに、生産ロス等により譲渡等されなかった吸収性物品を含む。吸収性物品としては、例えば、使い捨ておむつ、尿取りパッド、失禁パッド、生理用ナプキン、使い捨てショーツ、ベッド用シート及びペット用シートが挙げられる。
【0029】
まず、吸収性物品の構成例について説明する。吸収性物品は、表面シートと、裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置された吸収体とを備える。吸収性物品の大きさとしては、例えば、長さ約15~100cm、幅5~100cmが挙げられるが、この例に限定されるものではない。なお、吸収性物品は、一般的な吸収性物品が備える他の部材、例えば、拡散シート、防漏壁、サイドシート、外装シート、防漏壁や外装シートに配置される糸状又はシート状の弾性部材などを更に含んでもよい。
【0030】
表面シートの構成部材としては、例えば、液透過性の不織布、液透過孔を有する合成樹脂フィルム、これらの複合シート等が挙げられる。裏面シートの構成部材としては、例えば、液不透過性の不織布、液不透過性の合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。拡散シートの構成部材としては、例えば、液透過性の不織布が挙げられる。防漏壁やサイドシートの構成部材としては、例えば、撥水性の不織布が挙げられる。外装シートの構成部材としては、例えば、液不透過性かつ通気性の不織布、液不透過性かつ通気性の合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。弾性部材の構成部材としては、例えば、ゴム系の合成樹脂が挙げられる。不織布の種類としては、特に制限はなく、例えば、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布などが挙げられる。合成樹脂フィルムの種類としては、特に制限はなく、公知のフィルム材料を用いることができる。不織布や合成樹脂フィルムの材料としては、吸収性物品用として使用可能であれば特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレタレート等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。不織布の材料として、例えば、セルロース系繊維が更に挙げられる。通気性を付与するために、合成樹脂フィルムは炭酸カルシウムのような無機粒子を含んでもよい。ゴム系の合成樹脂の材料としては、吸収性物品用として使用可能であれば特に制限はないが、例えば、スチレンブタジエンゴム、ウレタンゴムが挙げられる。これらの不織布や合成樹脂フィルムや弾性部材などの材料は、合成樹脂であり、プラスチック材料ということができる。
【0031】
吸収体の構成部材としては吸収体材料、例えば、繊維状物であるパルプ繊維及び粒子状物である高吸水性ポリマーが挙げられる。繊維状物であるパルプ繊維としては、例えば、セルロース系繊維が挙げられる。セルロース系繊維としては、例えば、木材パルプ繊維、架橋パルプ繊維、非木材パルプ繊維、再生セルロース繊維、半合成セルロース繊維が挙げられる。パルプ繊維の大きさとしては、繊維の平均長径が、例えば、数十μmが挙げられ、20~40μmが好ましく、平均繊維長が、例えば、数mmが挙げられ、2~5mmが好ましい。粒子状物である高吸水性ポリマー(SuperAbsorbent Polymer:SAP)としては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系の吸水性ポリマーが挙げられる。高吸水性ポリマーの大きさ(乾燥時)としては、平均粒径が、例えば、数百μmが挙げられ、200~500μmが好ましい。吸収体は液透過性シートで形成されたコアラップを含んでもよい。
【0032】
吸収体の一方の面及び他方の面は、それぞれ表面シート及び裏面シートに接着剤を介して接合されている。平面視で、表面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)は、裏面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)と接着剤を介して接合されている。したがって、吸収体は表面シートと裏面シートとの接合体の内部に包み込まれている。接着剤としては、特に制限はないが、例えば、ホットメルト型接着剤が挙げられる。ホットメルト型接着剤としては、例えば、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン、ポリウレタン等のゴム系主体、又はポリエチレン等のオレフィン系主体の感圧型接着剤又は感熱型接着剤が挙げられる。
【0033】
次に、実施形態に係る高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物からリサイクル繊維を製造する方法について説明する。本実施形態において、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物は、上記のように、使用済み吸収性物品由来である。
【0034】
図1は、実施形態に係る高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物からリサイクル繊維を製造する方法の一例を示すフロー図である。以下、詳細に説明する。
【0035】
図1に示すように、本方法は、第1処理工程S6と、第2処理工程S9と、を備える。本方法は、更に、第4分離工程S7と、供給工程S8と、第5分離工程S10と、を備えてもよい。本方法は、更に、破砕工程S1と、第1分離工程S2と、除塵工程S3と、第2分離工程S4と、第3分離工程S5と、を備えてもよい。このうち、破砕工程S1~第3分離工程S5は、本方法で製造されるリサイクル繊維の原料となる、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維(高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物)を準備する工程ということもできる。また、破砕工程S1~第5分離工程S10は、使用済み吸収性物品を用いてリサイクルのプラスチック材料、高吸水性ポリマー(SAP)、及びパルプ繊維の各々を製造する方法ということもできる。以下、具体的に説明する。
【0036】
本実施形態では、使用済み吸収性物品を、再利用(リサイクル)のために外部から回収して用いる。その際、複数の使用済み吸収性物品を収集袋に封入することで、排泄物や菌類や臭気が外部に漏れることを抑制している。収集袋内の個々の使用済み吸収性物品は、例えば、排泄物や菌類が表側に露出せず、臭気が周囲に拡散しないように、排泄物が排泄される表面シートを内側に、丸められた状態や折り畳まれた状態で回収される。なお、使用済み吸収性物品は、収集袋に封入されなくてもよいし、丸められなくてもよい。
【0037】
破砕工程S1は、使用済み吸収性物品を、高吸水性ポリマーを不活化する不活化剤を含む不活化水溶液と共に破砕する工程である。破砕工程S1は、二軸破砕機のような破砕装置により実施される。不活化水溶液と共に破砕するとは、不活化水溶液と共に使用済み吸収性物品を破砕装置に供給しつつ破砕する場合、破砕装置に貯留された不活化水溶液の中に使用済み吸収性物品を入れて破砕する場合、及び、それらの組み合わせを含む。本実施形態では不活化水溶液と共に使用済み吸収性物品を破砕装置に供給しつつ使用済み吸収性物品を破砕する。なお、本方法において、第1分離工程S2以降で不活化水溶液を用いる場合、不活化水溶液が不足したときには、適宜補充する。
【0038】
本実施形態では、使用済み吸収性物品を封入した収集袋が、受入装置に供給され、受入装置の下方に連通した破砕装置へ移動する。それと共に、不活化水溶液(例示:酸性水溶液)が受入装置を介して破砕装置へ供給される。その際、不活化水溶液は、使用済み吸収性物品の上方から使用済み吸収性物品に降り掛かるように供給されてよい。破砕のとき、破砕物(菌や臭気物質のような排泄物由来の物質を含む)の飛散を抑制する観点である。収集袋は、破砕装置により、不活化水溶液と共に破砕される。それにより、収集袋内の使用済み吸収性物品が、収集袋ごと不活化水溶液中で破砕されて、例えば1~150mmの大きさの破砕物が生成される。その際、不活化水溶液で高吸水性ポリマーが不活化し、脱水して、小粒径になる。破砕物は、不活化水溶液と共に、第1分離工程S2へ送られる。
【0039】
不活化水溶液としては、無機酸及び有機酸の水溶液、すなわち酸性水溶液を用いることが好ましい。酸性水溶液を用いると、石灰や塩化カルシウムのような水溶液を用いる場合と比較して、プラスチック材料や高吸水性ポリマーやパルプ繊維などに灰分や塩素を残留し難くでき、不活化の程度(粒径や比重の大きさ)をpHで調整し易くできる。有機酸としては、キレート効果や洗浄効果を有するクエン酸が好ましく、無機酸としては、塩素を含まず、低コストな硫酸が好ましい。なお、不活化水溶液として、公知の多価金属イオンを供給可能な多価金属イオン供給源を含む水溶液で不活化してもよい。
【0040】
酸性水溶液のpHとしては1.0~4.0が好ましい。pHを1.0以上にすると、設備が腐食し難く、排水処理時の中和処理に必要なアルカリ薬品も低減でき、pHを4.0以下にすると、高吸水性ポリマーを十分に小さくでき、殺菌能力も高められる。pHは水温により変化するため、本発明におけるpHは、水溶液温度20℃で測定したpHをいうものとする。酸性水溶液の濃度は、特に限定されないが、クエン酸の場合には0.5~4質量%が好ましく、硫酸の場合には0.1~2.0質量%が好ましい。
【0041】
破砕工程S1の際、破砕時に生じる熱及び/又は酸性水溶液の熱などにより、各構成部材同士の接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)の接合力を低下させて、各構成部材を互いに容易に離解させることも可能である。あるいは、酸性水溶液を加熱すること(温度:70~95℃)で、使用済み吸収性物品の構成部材間の接合に使用されている接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)を軟化させ、接着剤の接合力を低下できる。それにより、自然に又は小さな衝撃で構成部材同士を容易に離解させることができる。使用済み吸収性物品をより殺菌(消毒)することも可能となる。
【0042】
次いで、第1分離工程S2は、破砕工程S1から供給されたプラスチック材料、不活化された高吸水性ポリマー、パルプ繊維、排泄物及び不活化水溶液の混合液を、プラスチック材料を含む第1画分と、不活化された高吸水性ポリマー、パルプ繊維、排泄物及び不活化水溶液を含む第2画分と、に分離する工程である。第1分離工程S2は、スクリーン分離機、パルパー分離機又はそれらの組み合わせのような分離装置により実施される。
【0043】
本実施形態では、パルパー分離機において、破砕工程S1で生成された破砕物を含む酸性水溶液が貯留されつつ、攪拌され、破砕物が構成材料に離解される。そして、破砕物(離解された構成材料)を含む酸性水溶液がスクリーンで分離されて、不活化された高吸水性ポリマー、パルプ繊維、排泄物及び酸性水溶液を含む第2画分がアクセプトとなり、除塵工程S3へ送出される。一方、収集袋、フィルム、不織布などの第1画分がリジェクトとなり、取り出される。取り出された収集袋、フィルム、不織布などは、必要に応じて殺菌、洗浄、乾燥等をされて、プラスチック材料として回収される。なお、第1分離工程S2には、酸性水溶液として、破砕工程S1で使用されていない別の酸性水溶液を供給してもよい。このとき、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、及び排泄物の一部はスクリーンを通過せず、第1画分と共にスクリーン上に残存し得る。一方、収集袋、フィルム、不織布分の一部は、第2画分と共にスクリーンを通過し得る。
【0044】
なお、本実施形態のように、第1分離工程S2よりも前に(破砕工程S1等で)、高吸水性ポリマーを予め不活化し、粒状にして、吸水能力を抑えている場合には、第1分離工程S2以降では、不活化水溶液(酸性水溶液)を用いず、不活化水溶液を概ね除いてから、不活化剤を含まない水(水溶液)を用いてもよい。その場合、第1分離工程S2以降の任意の工程から、不活化剤を含まない水(水溶液)を用いるようにしてもよい。それにより、不活化水溶液(及び不活化剤)の使用量を削減でき、廃水処理の負担を低減できる。
【0045】
本実施形態では、第1分離工程S2において、酸性水溶液のpHが所定の範囲内に維持されるように調整されてもよい。pHの所定の範囲とは、pHの変動が±1.0以内の範囲とする。それにより、高吸水性ポリマーの比重さ及び大きさと、パルプ繊維の比重及び大きさとの相違が、所定の範囲内になるようにできる。この場合、相違が所定の範囲内とは、例えば一方が他方の0.2~5倍の範囲内とする。それにより、パルプ繊維と高吸水性ポリマーとの相違は、比重が所定の範囲内であり、かつ、大きさが所定の範囲内である。その結果、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを、使用済み吸収性物品の資材のうちのパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを除いた他の資材(主にプラスチック材料)と、大きさや比重の相違を利用して容易に分離できる。pHの調整は、分離装置に設置されたpHセンサで測定されるpHの値に基づいて、分離装置に設置されたpH調節装置からの酸性の水溶液やアルカリ性の水溶液を用いて行うことができる。なお、後述される除塵工程S3、第2分離工程S4及び第3分離工程S5の少なくとも一つにおいても同様にpHが調整されてもよい。
【0046】
次いで、除塵工程S3は、第1分離工程S2で分離されたパルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液から異物を取り除く(除塵する)工程である。除塵工程S3は、除塵装置(例示:スクリーン分離機、サイクロン分離機、それらの組み合わせ)で実施される。
【0047】
本実施形態では、除塵装置により、第1分離工程S2から供給された混合液から、分離し切れなかった他の資材(収集袋、フィルム、不織布、弾性部材など)などの異物が分離される。除塵装置として、例えば、スクリーン分離機(目開きが相対的に大)、スクリーン分離機(目開きが相対的に小)及びサイクロン分離機がこの順に配置され、混合液から異物が順次分離される。それにより、異物の少ないパルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液が得られる。混合液は、第2分離工程S4へ供給される。なお、混合液中の異物を分離する必要が無い場合(例示:含まれる異物が少ない、後の他の工程で異物を分離する)には、除塵工程S3を省略できる。
【0048】
次いで、第2分離工程S4は、除塵工程S3(又は第1分離工程S2)から供給された、異物の少ないパルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液から、高吸水性ポリマーを分離する工程である。第2分離工程S4は、スクリーン分離機、ドラムスクリーン分離機又はそれらの組み合わせのような分離装置により実施される。
【0049】
本実施形態では、ドラムスクリーン分離機により、除塵工程S3(又は工程S2)から供給された混合液から、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液と、高吸水性ポリマーが表面などに残存したパルプ繊維、排泄物及び酸性水溶液と、が分離される。なお、高吸水性ポリマーが表面などに残存したパルプ繊維は、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維((高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物))ということができる。それにより、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液と、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液と、が得られる。そして、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液は、排泄物及び酸性水溶液を除かれ、必要に応じて殺菌、洗浄、乾燥等をされて、高吸水性ポリマーとして回収される。このようにして分離、回収された高吸水性ポリマーは、必要に応じて再活性化され、いわゆるリサイクル高吸水性ポリマーとなる(
図1中のSAP)。一方、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液は第3分離工程S5へ供給される。
【0050】
次いで、第3分離工程S5は、第2分離工程S4から供給された高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液から、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維を分離する工程である。第3分離工程S5は、スクリーン分離機、ドラムスクリーン分離機、スクリュープレス分離機、又はそれらの組み合わせのような分離装置により実施される。
【0051】
本実施形態では、スクリーン分離機及び/又はドラムスクリーン装置により、第2分離工程S4から供給された混合液から、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維と、排泄物及び酸性水溶液と、が分離される。それにより、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維と、排泄物及び酸性水溶液と、がそれぞれ取り出される。高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維は、例えば、第1処理工程S6で使用される第1処理液と混合されて第1処理工程S6に供給される。
【0052】
このように、破砕工程S1~第3分離工程S5は、使用済み吸収性物品を用いて、本方法で製造されるリサイクル繊維の原料となる、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維(高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物)を準備する工程ということができる。
【0053】
次に、実施形態に係る第1処理工程S6~第2処理工程S9について説明する。まず、第1処理工程S6~第2処理工程S9を実行する装置について説明する。
【0054】
図2は、第1処理工程S6~第2処理工程S9を実施する装置2の構成例を示す概略図である。図中、白抜き矢印はパルプ繊維の移動を示し、太矢印はオゾンの移動を示し、細矢印は処理液の移動を示す。
【0055】
装置2は、第3分離工程S5で分離されたパルプ繊維を第1処理液52-1中でオゾン処理する第1処理装置4-1と、第1処理装置4-1でオゾン処理されたパルプ繊維を第2処理液52-2中でオゾン処理する第2処理装置4-2と、を備える。装置2は、第3分離工程S5で分離されたパルプ繊維を一時的に貯蔵する貯蔵部3と、第1処理液52-1中でオゾン処理されたパルプ繊維を、第1処理液52-1から分離する分離装置14と、分離されたパルプ繊維で、第2処理液52-2の固形分率を調整する調整装置15と、を更に備えてもよい。
【0056】
貯蔵部3は、混合液タンク12と攪拌機13とを含む。混合液タンク12は、配管61を介して供給された、第1処理液中にパルプ繊維を一定の割合で含む混合液51を貯蔵する。攪拌機13は、混合液51中のパルプ繊維が混合液51の下方へ沈まないように、混合液タンク12中の混合液51を撹拌する。
【0057】
第1処理装置4-1は、供給ポンプP1と、第1処理槽31-1と、オゾン発生装置42及びノズル43を有するオゾン供給装置41と、オゾン送出装置44-1と、を含む。供給ポンプP1は、混合液タンク12と第1処理槽31-1とをつなぐ配管62の途中に設けられ、混合液タンク12の混合液51を第1処理槽31-1の中に供給する。第1処理槽31-1は、第1処理液52-1を有する。第1処理液52-1としては、オゾン処理に影響しなければ特に制限はなく、例えば、水、酸性水溶液(例示:硫酸水溶液、クエン酸水溶液)、有機溶剤(例示:メタノール、アセトン)が挙げられる。
【0058】
オゾン供給装置41は第1処理槽31-1にガス状物質であるオゾン含有ガス53を供給する。オゾン供給装置41のオゾン発生装置42としては、例えばエコデザイン株式会社製オゾン水曝露試験機ED-OWX-2、三菱電機株式会社製オゾン発生装置OS-25Vなどが挙げられる。オゾン含有ガス53は、オゾンを含んだ他の種類ガスであり、例えばオゾンを含んだ酸素ガスが挙げられる。オゾン含有ガス53は、オゾン発生装置42と第1処理槽31-1とをつなぐ配管71を介して第1処理槽31-1に供給される。オゾン含有ガス53を第1処理槽31-1内に送出するノズル43は、第1処理槽31-1の下部(好ましくは底部)に配置される。ノズル43は、オゾン含有ガス53を複数の細かい気泡として第1処理液52-1中に第1処理槽31-1の下部から上部へ向かって供給する。
【0059】
オゾン送出装置44-1は、第1処理槽31-1の上部と第2処理装置4-2(のノズル43:後述)とをつなぐ配管72の途中に設けられる。オゾン送出装置44-1は、第1処理液52-1に供給され、第1処理液52-1を通過して、第1処理液52-1から放出されたオゾン含有ガス53を、必要に応じて流量を調整しつつ(不要な分は例えば他の用途に分岐(図示されず))、配管72経由で第2処理装置4-2へ供給する。
【0060】
なお、第1処理槽31-1内の第1処理液52-1は、第1処理工程S6の開始前には第1処理液52-1のみであり、開始後は第1処理液52-1と混合液51とが混合された液となる。通常、それら第1処理液52-1と混合液51とは同じ処理液が用いられる。本実施形態では第1処理液52-1と混合液51とが混合された液も含めて、第1処理槽31-1内の液を第1処理液52-1とする。
【0061】
分離装置14は、第1処理槽31-1の下部と第2処理装置4-2(の第2処理槽31-2の上部:後述)とをつなぐ配管63の途中に設けられる。分離装置14は、第1処理槽31-1の第1処理液52-1でオゾン処理されたパルプ繊維を、第1処理液52-1から分離する。第1処理液52-1が不要な物質であるSAPの分解物を含むからである。分離されたパルプ繊維は、配管63を介して調整装置15へ供給される。又は、分離されたパルプ繊維は、配管63を介して(調整装置15を通らずに)直接、第2処理装置4-2へ供給される。分離された第1処理液52-1は配管81を介して第1処理槽31-1へ又は外部(例示:排液処理装置)へ排出される。分離装置14としては、スクリーン分離機、ドラムスクリーン分離機、スクリュープレス分離機、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0062】
調整装置15は、配管63の途中における分離装置14よりも第2処理装置4-2(の第2処理槽31-2)に近い位置に設けられる。調整装置15は、分離されたパルプ繊維を用い、配管82を介して供給される第2処理液の固形分率を調整する。固形分率を調整された、パルプ繊維を含む第2処理液は、供給ポンプP2(後述)により、配管63を介して第2処理装置4-2(の第2処理槽31-2)へ供給される。
【0063】
なお、第3分離工程S5で分離されたパルプ繊維をそのまま第1処理装置4-1へ供給してもよい。その場合、貯蔵部3を省略できる。また、第1処理装置4-1でオゾン処理されたパルプ繊維を第1処理液52-1と分離せずにそのまま第2処理装置4-2へ供給してもよい。その場合、分離装置14及び調整装置15を省略できる。
【0064】
第2処理装置4-2は、供給ポンプP2と、第2処理槽31-2と、オゾン供給用のノズル43と、オゾン送出装置44-2と、を含む。供給ポンプP2は、配管63の途中に設けられ、パルプ繊維を含む第1処理液52-1又は調整装置15で固形分率を調整されたパルプ繊維を含む第2処理液を、第2処理槽31-2の中に供給する。第2処理槽31-2は、第2処理液52-2を有する。第2処理液52-2としては、オゾン処理に影響しなければ特に制限はなく、例えば、水、酸性水溶液、有機溶剤が挙げられる。また、通常、第2処理液52-2は第1処理液52-1と同じであるが、必ずしも、第1処理液52-1と同じでなくてもよい。
【0065】
オゾン供給用のノズル43は、第2処理槽31-2の下部(好ましくは底部)に配置され、配管72を介してオゾン送出装置44-1とつながっている。したがって、ノズル43は、オゾン送出装置44-1から供給されるオゾン含有ガス53を複数の細かい気泡として第2処理液52-2中に第2処理槽31-2の下部から上部へ向かって供給する。なお、第2処理装置4-2は、オゾン送出装置44-1から供給されるオゾン含有ガス53の補助用に、更にオゾン供給装置41を有してもよい。
【0066】
オゾン送出装置44-2は、第2処理槽31-2の上部と他のオゾン含有ガスを供給されるべき装置(図示されず)とをつなぐ配管73の途中に設けられる。オゾン送出装置44-2は、第2処理液52-2を通過して、第2処理液52-2から放出されたオゾン含有ガス53を、配管73経由で他のオゾン含有ガスを供給されるべき装置へ供給する。
【0067】
なお、第2処理槽31-2内の第2処理液52-2は、第2処理工程S9の開始前には第2処理液52-2のみであり、開始後は、第1処理槽31-1からの第1処理液52-1と第2処理液52-2との混合液、又は、調整装置15の第2処理液52-2と第2処理槽31-2の第2処理液52-2との混合液となる。通常、それら第1処理液52-1と第2処理液52-2とは同じ処理液が用いられる。本実施形態ではそれらも含めて、第2処理槽31-2内の液を第2処理液52-2とする。また、第1処理液52-1と第2処理液52-2とは同じでもよい。
【0068】
次に、第1処理工程S6~第2処理工程S9について説明する。
【0069】
第1処理工程S6は、第1処理槽31-1内の第1処理液52-1にオゾンを供給しつつ、第1処理液52-1中で、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維をそのオゾンにより処理して、高吸水性ポリマーの少なくとも一部を除去する工程である。この工程では、オゾン処理として、パルプに含まれる高吸水性ポリマーを、第1処理液52-1中のオゾンにより酸化分解し、低分子量化して、高吸水性ポリマーの分解物にする処理を実施する。その分解物は、第1処理液52-1に可溶な低分子量の有機物であるので、第1処理液52-1に溶け込むことで、パルプ繊維から除去される。それにより、パルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマー等の不純物を除去し、純度の高いパルプ繊維を生成できる。第1処理工程S6で、オゾン処理により、パルプ繊維の殺菌および漂白、消臭を行うこともできる。
【0070】
本実施形態では、まず、第3分離工程S5にて分離されたパルプ繊維(主に表面に高吸水性ポリマーが残存)は、予め設定された濃度になるように酸性水溶液と混合されて混合液51となる。混合液51のパルプ繊維の濃度は、第1処理槽31-1に投入され、第1処理液52-1と混合された状態で、予め設定された濃度になるように設定される。混合液51は、配管61を介して混合液タンク12に供給され、貯蔵される。パルプ繊維の比重は1より大きいので、パルプ繊維と水とが分離しないように、混合液51は混合液タンク12内で攪拌機13により撹拌される。
【0071】
そして、混合液タンク12内の混合液51は、配管62のバルブV1の開閉制御及び供給ポンプP1の流量制御に応じて第1処理槽31-1へ連続的又は断続的に供給される。それにより、パルプ繊維は、第1処理槽31-1の上部に設けられた第1供給口32-1から第1処理液52-1中に供給される。第1処理液52-1は酸性水溶液であり、比重としては概ね1である。したがって、パルプ繊維は、第1処理液52-1の上部から下部へ向かって沈降する。
【0072】
一方、オゾン発生装置42で生成されたオゾン含有ガス53は、配管71を介して第1処理槽31-1に供給され、第1処理槽31-1のノズル43から第1処理液52-1内に細かい気泡の状態(例示:マイクロバブル又はナノバブル)で放出される。オゾン含有ガス53は、第1処理液52-1の下部から上部へ向かって上昇する。
【0073】
そして、第1処理液52-1内を、上部から下部へ向かって沈降するパルプ繊維と、下部から上部へ向かって上昇するオゾン含有ガス53とが、対向して進みつつ衝突し合う。そして、オゾン含有ガス53は、パルプ繊維の表面に、パルプ繊維を包み込むように付着する。そのとき、オゾン含有ガス53中のオゾンが、パルプ繊維中の高吸水性ポリマーと反応して、高吸水性ポリマーを酸化分解して、低分子量化して、第1処理液52-1に溶解させる。それにより、パルプ繊維上の高吸水性ポリマーがパルプ繊維から除去される。そして、パルプ繊維は第1処理槽31-1の底部へ沈降し、オゾン含有ガス53は第1処理槽31-1の上部の空間へ抜ける。
【0074】
その後、第1処理槽31-1の底部の第1処理液52-1(パルプ繊維を含む)は、第1処理槽31-1の第1送出口33-1から開状態のバルブV2を通り配管63を介して分離装置14へ供給される。
【0075】
次いで、第4分離工程(分離工程)S7は、第1処理工程S6で処理されたパルプ繊維を、第1処理液52-1から分離する工程である。分離されたパルプ繊維は、調整装置15へ供給されるか、又は、第2処理装置4-2へ供給される。パルプ繊維を第1処理液52-1から分離する分離する方法としては、特に限定されないが、例えばパルプ繊維を含む第1処理液52-1を、例えば目開き0.15~2mmのスクリーンメッシュを通過させる方法が挙げられる。パルプ繊維を含む第1処理液52-1を目開き0.15~2mmのスクリーンメッシュを通過させると、高吸水性ポリマーの酸化分解による生成物を含む排水はスクリーンを通過するが、パルプ繊維は通過せずにスクリーンメッシュ上に残る。
【0076】
本実施形態では、配管63のバルブV2の開閉制御により、分離装置14(スクリーン分離機)に、配管63を介して第1処理槽31-1の第1送出口33-1から、オゾン処理されたパルプ繊維を含む第1処理液52-1が供給される。分離装置14では、パルプ繊維を含む第1処理液52-1からパルプ繊維が分離される。第1処理液52-1から分離されたパルプ繊維は配管63を介して調整装置15へ供給される。パルプ繊維が分離された残余の第1処理液52-1は、例えば配管81を介して第1処理槽31-1等へ送出され再利用されるか、又は外部(例示:排液処理装置)へ排出される。
【0077】
次いで、調整工程S8は、分離されたパルプ繊維で、第2処理液の固形分率を調整する工程である。固形分率を調整された、パルプ繊維を含む第2処理液が、第2処理槽31-2へ供給される。ただし、固形分率を調整するために使用される第2処理液は、第2処理槽31-2に貯留されている第2処理液52-2とは別の処理液である。
【0078】
本実施形態では、調整装置15に、配管63を介して分離装置14から、分離されたパルプ繊維が供給される。調整装置15では、配管82を介して供給される第2処理液の固形分率が所望の値にあるように、分離されたパルプ繊維で調整する。固形分率を調整された、パルプ繊維を含む第2処理液は、供給ポンプP2(後述)により、配管63を介して第2処理装置4-2(の第2処理槽31-2)へ供給される。
【0079】
第2処理液52-2の固形分率は、第2処理液中のパルプ繊維の含有率であり、例えば、0.5~20質量%が挙げられ、1~15質量%が好ましい。固形分率が小さ過ぎると供給やオゾン処理の効率が低下し過ぎ、大き過ぎると供給が困難となり、オゾン処理が行き渡り難くなるおそれがある。
【0080】
なお、第4分離工程S7(分離装置14)や調整工程S8(調整装置15)は、第1処理工程S6後の第1処理液52-1中の高吸水性ポリマーの分解物が少ないなどの場合には実施しなくてもよい。その場合、処理効率が高まり、コストが抑制され得る。
【0081】
次いで、第2処理工程S9は、第2処理槽31-2内の第2処理液52-2に、第1処理槽31-1内で第1処理液52-1から放出されたオゾンを供給しつつ、その第2処理液52-2中で、パルプ繊維をオゾンにより処理する工程である。ただし、オゾンは、第1処理槽31-1内で第1処理液52-1から放出されたオゾンの少なくとも一部を用いればよく、できるだけ多く用いることが好ましい。なお、第1処理槽31-1内で第1処理液52-1から放出されたオゾンに残りがあれば、そのオゾンを他の用途に利用してもよい。また、第2処理工程S9において必要があれば、別のオゾンを加えてもよい。第2処理工程S9で行うオゾン処理としては、特に制限はないが、例えば、次の少なくとも一の処理工程が挙げられる。
【0082】
すなわち、第2処理工程S9としては、第2処理槽31-2内の第2処理液52-2中で、第1処理工程S6で処理されたパルプ繊維を、オゾンにより処理して、脱臭、漂白及び殺菌の少なくとも一つを実施する工程があり得る。これは、例えば、第1処理工程S6において、パルプ繊維の高吸水性ポリマーが十分に除去されている場合に実施し得る。この場合、オゾンの濃度(質量ppm)、処理槽内の処理時間(分)、又は、それらの積(以下「CT値(ppm・分)」ともいう。)は、第1処理工程S6の場合と比較して、非常に小さくなり得る。したがって、第1処理液52-1に高濃度かつ高流量でオゾンを注入している場合はもちろん、そうでない場合でも、第1処理槽31-1内で第1処理液52-1から放出されたオゾンで十分に賄い得る。
【0083】
あるいは、第2処理工程S9としては、第2処理槽31-2内の第2処理液52-2中で、第1処理工程S6で処理されたパルプ繊維を、オゾンにより処理して、高吸水性ポリマーの少なくとも一部を除去する工程があり得る。これは、例えば、第1処理工程S6において、パルプ繊維の高吸水性ポリマーが十分に除去されていない場合に実施し得る。この場合、オゾンの濃度(質量ppm)、処理槽内の処理時間(分)、又は、CT値(ppm・分)は、第1処理工程S6の場合と比較して、同程度又は少し小さい程度になり得る。したがって、第1処理液52-1に高濃度かつ高流量でオゾンを注入している場合には、第1処理槽31-1内で第1処理液52-1から放出されたオゾンで十分に賄い得る。
【0084】
本実施形態では、まず、第1処理工程S6で処理されたパルプ繊維を含む第1処理液52-1、第4分離工程S7で分離されたパルプ繊維、又は、調整工程S8でパルプ繊維の固形分率を調整された第2処理液が、配管63のバルブV2及び/又はV3の開閉制御及び供給ポンプP2の流量制御に応じて第2処理槽31-2へ連続的又は断続的に供給される。それにより、パルプ繊維は、第2処理槽31-2の上部に設けられた第2供給口32-2から第2処理液52-2中に供給される。第2処理液52-2は酸性水溶液であり、比重としては概ね1である。したがって、パルプ繊維は、第2処理液52-2の上部から下部へ向かって沈降する。
【0085】
一方、第1処理槽31-1内で第1処理液52-1から放出されたオゾン含有ガス53は、配管72を介して第2処理槽31-2に供給され、第2処理槽31-2のノズル43から第2処理液52-2内に細かい気泡の状態(例示:マイクロバブル又はナノバブル)で放出される。オゾン含有ガス53は、第2処理液52-2の下部から上部へ向かって上昇する。
【0086】
そして、第2処理液52-2内を、上部から下部へ向かって沈降するパルプ繊維と、下部から上部へ向かって上昇するオゾン含有ガス53とが、対向して進みつつ衝突し合う。そして、オゾン含有ガス53は、パルプ繊維の表面に、パルプ繊維を包み込むように付着する。そのとき、オゾン含有ガス53中のオゾンが、パルプ繊維中の高吸水性ポリマーと反応して、高吸水性ポリマーを酸化分解して、低分子量化して、第2処理液52-2に溶解させる。それにより、パルプ繊維上の高吸水性ポリマーがパルプ繊維から除去される。そして、パルプ繊維は第2処理槽31-2の底部へ沈降し、オゾン含有ガス53は第2処理槽31-2の上部の空間へ抜ける。
【0087】
その後、第2処理槽31-2の底部の第2処理液52-2(パルプ繊維を含む)は、第2処理槽31-2の第2送出口33-2から開状態のバルブV4を通り配管64を介して第5分離工程S10へ供給される。
【0088】
次いで、第5分離工程S10は、第2処理工程S9で処理されたパルプ繊維を、第2処理液52-2から分離する工程である。分離されたパルプ繊維は、リサイクルのパルプ繊維として取り出される。パルプ繊維を第2処理液52-2から分離する分離する方法としては、特に限定されないが、例えばパルプ繊維を含む第2処理液52-2を、例えば目開き0.15~2mmのスクリーンメッシュを通過させる方法が挙げられる。それにより、高吸水性ポリマーの酸化分解による生成物を含む排水はスクリーンを通過する。一方、パルプ繊維はスクリーンの上に残り、上質なパルプ繊維(リサイクルパルプ繊維)として取り出される。
【0089】
本実施形態では、分離装置(スクリーン分離機:図示されず)に、第2処理工程S9で処理されたパルプ繊維が、配管64のバルブV4の開閉制御及び供給ポンプP3の流量制御に応じて、第2処理槽31-2の第2送出口33-2から供給される。分離装置では、パルプ繊維を含む第2処理液52-2からパルプ繊維が分離され、取り出される。パルプ繊維が分離された残余の第2処理液52-2は、例えば配管を介して第2処理槽31-2等へ送出され再利用されるか、又は外部へ排出される。なお、取り出されたパルプ繊維は、必要に応じて殺菌、洗浄、乾燥等をされて、パルプ繊維として回収される。このようにして分離、回収されたパルプ繊維は、いわゆるリサイクルパルプ繊維となる。
【0090】
なお、上記実施形態では、第2処理工程として、第1処理工程S6でオゾン処理されたパルプ繊維を更にオゾン処理している。しかし、第2処理工程は、その例に限定されるものではない。例えば、第2処理工程としては、第2処理槽31-2内の第2処理液52-2中で、第1処理工程S6でオゾン処理されたパルプ繊維とは別の新たに供給された、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維をオゾン処理して、高吸水性ポリマーの少なくとも一部を除去する工程があり得る。これは、例えば、第1処理工程S6で処理されたパルプ繊維とは別のパルプ繊維の高吸水性ポリマー除去したい場合に実施し得る。
【0091】
あるいは、第2処理工程として、第2処理槽31-2内の第2処理液52-2中で、第1処理工程S6でオゾン処理されたパルプ繊維とは別の新たに供給されたパルプ繊維をオゾン処理して、脱臭、漂白及び殺菌の少なくとも一つを実施する工程があり得る。これは、例えば、第1処理工程S6で処理されたパルプ繊維とは別のパルプ繊維について脱臭、漂白及び殺菌の少なくとも一つが必要な場合に実施し得る。
【0092】
あるいは、上記実施形態では、第2処理工程として、第2処理装置4-2を用いたパルプ繊維に対するオゾン処理工程を挙げている。しかし、第2処理工程は、その例に限定されるものではない。第2処理工程として、他の第2処理槽内の他の第2処理液中で、第1処理工程S6のパルプ繊維とは別の構成部材、例えば、プラスチック材料や高吸水性ポリマーをオゾン処理して、脱臭、漂白及び殺菌の少なくとも一つを実施する工程があり得る。これは、例えば、第1処理工程S6で処理されたパルプ繊維とは別の構成部材について脱臭、漂白及び殺菌の少なくとも一つが必要な場合に実施し得る。例えば、第1分離工程において回収されたプラスチック材料や、第2分離工程S4において回収された高吸水性ポリマーについて、脱臭、漂白及び殺菌の少なくとも一つを実施する処理が挙げられる。その場合、本方法は、プラスチック材料又は高吸水性ポリマーの処理方法ともいえる。
【0093】
第1処理工程S6及び第2処理工程S9における高吸水性ポリマーを酸化分解するオゾン処理において、処理液中でのオゾン濃度は、高吸水性ポリマーを分解することができる濃度であれば、特に限定されない。処理液中でのオゾン濃度としては、例えば10~50質量ppmが挙げられる。濃度が低過ぎないことで、高吸水性ポリマーを完全に可溶化でき、濃度が高過ぎないことで、パルプ繊維に損傷を与えることはない。処理液中での処理時間は、高吸水性ポリマーを分解することができる時間であれば、特に限定されないが、処理液のオゾン濃度が高ければ短く、オゾン濃度が低ければ長くする。その接触時間は、典型的には5~300分である。処理液のオゾン濃度(ppm)と処理工程の処理時間(分)の積であるCT値(ppm・分)は、例えば、100~15000ppm・分が挙げられる。CT値が小さすぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化できずパルプ繊維に高吸水性ポリマーが残留するおそれがあり、CT値が大きすぎると、パルプ繊維に損傷を与えるおそれがある。
【0094】
第2処理工程S9における構成部材(例示:パルプ繊維、高吸水性ポリマー、プラスチック材料)の脱臭、漂白及び殺菌の少なくとも一つを実施するオゾン処理において、処理液中でのオゾン濃度は、構成部材の脱臭、漂白及び殺菌の少なくとも一つを実施することができる濃度であれば、特に限定されない。処理液中でのオゾン濃度としては、例えば、0.3~2質量ppmが挙げられる。濃度が低過ぎると、菌等の除去が難しくなり、濃度が高過ぎると、構成部材に悪影響が出始めるおそれがある。オゾン水と構成部材との接触時間は、構成部材の表面に付着している菌や他の有機物などを除去することができる時間であれば、特に限定されないが、処理液中のオゾン濃度が高ければ短く、オゾン濃度が低ければ長くする。その接触時間は、典型的には0.3秒~15分である。処理液中のオゾン濃度(ppm)と接触時間(分)の積であるCT値(ppm・分)は、例えば、0.05~20ppm・分が挙げられる。CT値が小さ過ぎると、除菌等が難しくなり、CT値が大き過ぎると、構成部材に悪影響が出始めるおそれがある。
【0095】
上記のように、本方法では、第1処理工程S6におけるパルプ繊維のオゾン処理のために第1処理槽31-1内の第1処理液52-1に供給され、第1処理液52-1から放出された(第1処理液52-1を通り抜けた)オゾンを、第2処理槽31-2内の第2処理液52-2へ供給し、第2処理工程S9のパルプ繊維のオゾン処理に利用する。すなわち、本方法では、オゾン処理の処理速度を高めるべく、第1処理液52-1に高濃度かつ高流量でオゾンを供給することで、第1処理液52-1に溶け込まずに放出される(通り抜ける)オゾンが多く生じたとしても、放出されたオゾンを第2処理工程S9で利用できる。このように、第1処理工程S6のオゾン処理用に供給したオゾンを、第2処理工程S9のオゾン処理でも利用することにより、オゾンを有効利用できる。したがって、第1処理工程S6でのオゾン処理における処理速度を高めることができると共に、オゾン処理のエネルギー効率を高めることができる。よって、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維からリサイクル繊維を製造する方法において、オゾン処理における処理速度とエネルギー効率とを両立させることができる。
【0096】
本方法の好ましい態様では、第1処理工程S6は、パルプ繊維及び第1処理液52-1を、第1処理槽31-1内に連続的に供給しつつ、パルプ繊維をオゾンにより処理しながら、オゾンにより処理されたパルプ繊維を含有する第1処理液52-1を、第1処理槽31-1の外へ連続的に送出する連続処理工程を含んでいてもよい。言い換えると、この第1処理工程S6は、第1処理工程S6を、途切れなく連続的に実行する連続処理である。それに伴い、第2処理工程S9についても、同様の連続処理を含んでいてもよい。
【0097】
例えば、第1処理装置4-1にて、バルブV1及びV2を開とし、供給ポンプP1及びP2で、第1処理液(混合液51)が第1処理槽31-1へ連続的に供給され、第1処理液52-1が第1処理槽31-1から連続的に送出されるよう、その流量を制御することで連続処理を実現できる。第1処理槽31-1へ供給される第1処理液の流量と第1処理槽31-1から送出される第1処理液52-1の流量とは等しいことが好ましい。それに伴い、第2処理装置4-2において、バルブV3及びV4を開とし、供給ポンプP2及びP3で第2処理槽31-2へ供給される第1処理液52-1又は第2処理液52-2の流量及び第2処理槽31-2から送出される第2処理液52-2の流量を同様に制御することで、同様に連続処理を実現できる。ただし、この場合、第1処理液52-1はそのまま第2処理液52-2である。
【0098】
このように、本方法の好ましい態様では、パルプ繊維及び第1処理液(混合液51)を第1処理槽31-1内に連続的に供給しつつ、パルプ繊維をオゾン処理しながら(高吸水性ポリマーが酸化分解され、溶解され、除去されながら)、オゾン処理されたパルプ繊維を含有する第1処理液52-1を、第1処理槽31-1の外へ連続的に送出する。すなわち、パルプ繊維を連続的に処理している。それゆえ、第1処理槽31-1において、第1供給口32-1から第1送出口33-1へ向かって連続的かつ安定的な第1処理液52-1の流れを発生させることができる。それにより、第1処理液52-1に溶存するオゾンや第1処理液52-1を通るオゾンとパルプ繊維とをその流れに引き込んで互いに接触し易くすることができる。すなわち、パルプ繊維をオゾンに連続的に接触させることが可能となる。したがって、高吸水性ポリマーの分解に寄与するオゾンを多くすることができ、オゾン処理における処理速度やエネルギー効率を高めることができる。
【0099】
本方法の好ましい態様では、第1処理工程S6は、準備工程と、バッチ処理工程と、送出工程と、を含んでもよい。ただし、準備工程は、第1処理槽31-1にパルプ繊維を含有する第1処理液52-1を準備する工程である。バッチ処理工程は、準備工程後、パルプ繊維をオゾンにより処理する工程である。送出工程は、バッチ処理工程後、オゾンにより処理されたパルプ繊維を含有する第1処理液52-1を、第1処理槽31-1の外へ送出する工程である。言い換えると、この第1処理工程S6は、パルプ繊維や第1処理液52-1を第1処理槽31-1に投入後、閉じた状態で第1処理工程S6を実施するバッチ処理である。それに伴い、第2処理工程S9についても、同様のバッチ処理を含んでいてもよい。
【0100】
例えば、第1処理装置4-1にて、バルブV1を開、バルブV2を閉とし、供給ポンプP1で、第1処理液(混合液51)が、第1処理槽31-1へ所定量供給されるよう、その流量を制御する。その後、供給ポンプP1を停止し、バルブV1を閉として、所定量の第1処理液52-1(混合液51を含有)を含む第1処理槽31-1でパルプ繊維のオゾン処理を実行することで、バッチ処理が実現できる。その後、それに伴い、第2処理装置4-2において、バルブV2及びV3を開、バルブV4を閉とし、供給ポンプP2で、第1処理液52-1が、第2処理槽31-2へ所定量供給されるよう、その流量を制御する。その後、供給ポンプP2を停止し、バルブV2及びV3を閉として、所定量の第1処理液52-1を含む第2処理槽31-2でパルプ繊維のオゾン処理を実行することで、同様にバッチ処理が実現できる。ただし、この場合、第1処理液52-1はそのまま第2処理液52-2である。
【0101】
このように、本方法の好ましい態様では、まず、第1処理槽31-1にパルプ繊維を含有する第1処理液52-1を準備し、次いで、パルプ繊維をオゾン処理し(高吸水性ポリマーが酸化分解され、溶解され、除去されて)、その後、オゾン処理されたパルプ繊維を含有する第1処理液52-1を、第1処理槽31-1の外へ送出する。すなわち、パルプ繊維をバッチ処理している。それゆえ、第1処理槽31-1において、第1処理液52-1内に留まるパルプ繊維を、第1処理液52-1に溶存するオゾンや第1処理液52-1を通るオゾンと継続的に接触し易くすることができる。それにより、パルプ繊維を継続的にオゾンにより処理することが可能となる。したがって、高吸水性ポリマーの分解に寄与するオゾンを多くすることができ、オゾン処理における処理速度やエネルギー効率を高めることができる。
【0102】
本方法の好ましい態様では、第1処理工程S1で処理されたパルプ繊維を、第1処理液52-1から分離する分離工程(第4分離工程S7)を更に備えている。そして、分離されたパルプ繊維が、第2処理槽31-2へ供給される。
【0103】
第1処理工程S6後の第1処理液52-1は、高吸水性ポリマーの少なくとも一部が除去されたパルプ繊維の他に、高吸収性ポリマーが酸化分解されて生成した低分子量の有機物を含有している。したがって、パルプ繊維を第1処理液52-1と共に第2処理工程S9へ供給すると、第2処理工程S9の第2処理液52-2に、パルプ繊維だけでなく、低分子量の有機物が含まれることになる。そうなると、第2処理液52-2中のオゾンが、パルプ繊維だけでなく、低分子量の有機物にも供給されることになり、オゾンをパルプ繊維の処理に有効に利用できなくなるおそれがある。
【0104】
そこで、本方法では、第1処理工程S6で処理されたパルプ繊維を第1処理液52-1から分離し(第4分離工程S7)、分離されたパルプ繊維を第2処理槽31-2へ供給している。すなわち、パルプ繊維を、低分子量の有機物と分離してから第2処理槽31-2へ供給するので、第2処理工程S9の第2処理液52-2に低分子量の有機物が含まれることを抑制できる。それにより、第2処理液52-2中のオゾンが、概ねパルプ繊維だけに供給されることになり、オゾンをパルプ繊維の処理に有効に利用することができる。したがって、第2処理工程S9におけるオゾン処理の処理速度やエネルギー効率を高めることができる。
【0105】
本方法の好ましい態様では、第1処理工程S6で処理されたパルプ繊維を、第1処理液52-1から分離する分離工程(第4分離工程S7)と、分離された前記パルプ繊維で、第2処理液52-2の固形分率を調整する調整工程S8と、を更に備える。固形分率を調整された、パルプ繊維を含む第2処理液52-2が、第2処理槽31-2へ供給される。
【0106】
このように、本方法の好ましい態様では、第1処理工程S6で処理されたパルプ繊維を第1処理液52-1から分離し(第4分離工程S7)、分離されたパルプ繊維で固形分率を調整された第2処理液52-2を第2処理槽31-2へ供給している(調整工程S8)。すなわち、パルプ繊維を、低分子量の有機物と分離し、かつ、新たな第2処理液52-2と混合し適正な固形分率にして第2処理槽31-2へ供給する。そのため、第2処理工程S9の第2処理液52-2に低分子量の有機物が含まれることを抑制できると共に、オゾン処理中のオゾンとパルプ繊維との比率を適正にすることができる。それにより、第2処理液52-2中のオゾンが、概ねパルプ繊維だけに供給され、かつ、パルプの濃度が適正であることになり、オゾンをパルプ繊維の処理により有効に利用することができる。したがって、第2処理工程S9におけるオゾン処理の処理速度やエネルギー効率を高めることができる。
【0107】
本方法の好ましい態様では、第2処理工程S9は、第2処理槽31-2内の第2処理液52-2中で、第1処理工程S6で処理されたパルプ繊維をオゾンにより処理して、脱臭、漂白及び殺菌の少なくとも一つを実施する工程を含んでいる。このように、第1処理工程S6のオゾン処理用に供給したオゾンを、第2処理工程S9における脱臭、漂白及び殺菌の少なくとも一つを実施するオゾン処理で利用することにより、オゾンを有効利用できる。そして、本方法では、第1処理工程S6から更に脱臭、漂白及び殺菌が進んだパルプ繊維を製造することができる。
【0108】
本方法の好ましい態様では、第2処理工程S9は、第2処理槽31-2内の第2処理液52-2中で、第1処理工程S6で処理されたパルプ繊維をオゾンにより処理して、高吸水性ポリマーの少なくとも一部を除去する工程を含んでいる。このように、第1処理工程S6のオゾン処理用に供給したオゾンを、第2処理工程S9における高吸水性ポリマーの少なくとも一部を除去するオゾン処理で利用することにより、オゾンを有効利用できる。そして、本方法では、第1処理工程S6から更に高吸水性ポリマーの除去が進んだパルプ繊維を製造することができる。
【0109】
本実施形態では、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維(高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物)を、第1処理工程S6のオゾンを用いて二段階(第1処理工程S6及び第2処理工程S9)で処理しているが、そのオゾンを用いて三段階又はそれ以上で処理してもよい。
【0110】
本実施形態では、第1処理工程S6におけるパルプ繊維のオゾン処理のために第1処理液52-1に供給され、第1処理液52-1を通り抜けた(放出された)オゾンを、第2処理工程S9のパルプ繊維のオゾン処理のような別の工程で再利用している。このように、本方法は、利用されずに放出され(通り抜け)、廃棄されるオゾンを再利用する方法であるから、廃オゾンを再利用する方法(オゾンのリサイクル方法)ということもできる。また、第1処理工程S6~第2処理工程S9は、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維(高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物)から高吸水性ポリマーを除去する方法ともいえる。
【0111】
本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。
【符号の説明】
【0112】
S6 第1処理工程
S9 第2処理工程
31-1 第1処理槽
31-2 第2処理槽
52-1 第1処理液
52-2 第2処理液