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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025102987
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20250701BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20250701BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/04 D
G02B7/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025063065
(22)【出願日】2025-04-07
(62)【分割の表示】P 2023554462の分割
【原出願日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2021168009
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】堺 崇弘
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ボイスコイルモータに電流が供給されていない状態において、ボイスコイルモータにより駆動される部材が他の部材と衝突することを防止する。
【解決手段】レンズ鏡筒は、レンズを保持し光軸方向に移動可能な第1筒10と、前記第1筒とは異なる第2筒20と、前記第1筒に備えられる少なくとも一つの第1マグネット11a、11bと、前記第2筒に備えられる少なくとも一つの第2マグネット21a、21bと、を備え、前記第1マグネットと前記第2マグネットとの間に反発力が発生する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持し光軸方向に移動可能な第1筒と、
前記第1筒とは異なる第2筒と、
前記第1筒に備えられる少なくとも一つの第1マグネットと、
前記第2筒に備えられる少なくとも一つの第2マグネットと、を備え、
前記第1マグネットと前記第2マグネットとの間に反発力が発生するレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記第2筒は、前記第1筒と接触する位置に緩衝材を備える、
請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記光軸方向における前記第1筒の端部と前記緩衝材との距離は、前記光軸方向における前記第1マグネットと前記第2マグネットとの距離よりも小さい、請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記第1筒を前記光軸方向に案内するガイドバーをさらに備え、
前記第1マグネットは、光軸と直交する平面において、前記ガイドバーと前記光軸とを結んだ第1直線と垂直に交差し、前記光軸を通る第2直線よりも前記ガイドバー側に配置される請求項1から請求項3の何れか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記ガイドバーは、前記第2筒に固定される、請求項4に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記第2筒は、前記第1筒の外側に配置される、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記第1マグネットは、複数備えられ、
複数の前記第1マグネットは、光軸と直交する平面において、前記光軸をはさんで対向して配置される、請求項1から請求項6の何れか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記第1マグネットは、前記光軸方向における前記第1筒の一端に配置される、請求項1から請求項7の何れか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記第1マグネットは、複数設けられ、
複数の前記第1マグネットは、前記光軸方向において前記第1筒の両端部に配置され、
前記第2マグネットは、複数の前記第1マグネットとそれぞれ対向するように複数設けられる、
請求項1から請求項7の何れか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記第1マグネットは、前記光軸方向における前記第1筒の両端部以外の位置に配置される、請求項1から請求項7の何れか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
前記第1マグネットの中心と前記第2マグネットの中心とは、光軸に平行な同一直線上に配置される、請求項1から請求項10の何れか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項12】
前記第1筒を前記光軸方向へ移動させる駆動部をさらに備え、
前記駆動部は、コイルと、マグネットと、ヨーク部材と、を有し、
光軸を中心とする円の周方向において、前記ヨーク部材は、前記第1マグネットと前記コイルとの間に位置する、
請求項1から請求項11の何れか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項13】
請求項1から請求項12の何れか一項に記載のレンズ鏡筒を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レンズ鏡筒および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズの駆動装置として、ボイスコイルモータを採用したレンズ鏡筒が提案されている(例えば、特許文献1)。ボイスコイルモータに電流が供給されていない状態では、ボイスコイルモータにより駆動される部材が、他の部材と衝突するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-49334号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、レンズ鏡筒は、レンズを保持し光軸方向に移動可能な第1筒と、第1筒とは異なる第2筒と、第1筒に備えられる少なくとも一つの第1マグネットと、第2筒に備えられる少なくとも一つの第2マグネットと、を備え、前記第1マグネットと前記第2マグネットの間に反発力が発生する。
【0005】
第2の態様によれば、撮像装置は、上記レンズ鏡筒を備える。
【0006】
なお、後述の実施形態の構成を適宜改良しても良く、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係るレンズ鏡筒と、カメラ本体と、を備えるカメラを示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係るフォーカスユニットの断面図である。
図3図3(a)は、ボイスコイルモータの構成を示す斜視図であり、図3(b)は、ボイスコイルモータを図3(a)の矢印AR11の方向から見た図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、第1筒の斜視図である。
図5図5は、第2筒の斜視図である。
図6図6は、第1実施形態に係るフォーカスユニットを物体側から見た平面図である。
図7図7は、第2実施形態に係るフォーカスユニットの断面図である。
図8図8は、第3実施形態に係るフォーカスユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
《第1実施形態》
以下、第1実施形態に係るレンズ鏡筒100について、図面を参照し、詳細に説明する。なお、実施形態に示す各部の形状や、長さ、厚みなどの縮尺は必ずしも実物と一致するものではなく、また、各図において、理解を容易にするため、一部の要素の図示を省略している場合がある。また、断面図において、一部の要素のハッチングを省略している。
【0009】
なお、以下の説明では、特に言及しない限り、撮影光学系の光軸OAと平行な方向を「前後方向」と称する場合がある。また、被写体側を「物体側」、光軸OA方向において被写体と反対側(カメラ本体側)を「像側」とそれぞれ称する。
【0010】
図1は、第1実施形態に係るレンズ鏡筒100と、カメラ本体101と、を備えるカメラ1を示す図である。なお、本実施形態において、レンズ鏡筒100は、カメラ本体101に対して着脱可能であるが、これに限定されず、レンズ鏡筒100とカメラ本体101とは一体であってもよい。
【0011】
カメラ本体101は、内部に撮像素子111および制御部112等を備えている。撮像素子111は、たとえばCCD(Charge Coupled Device)等の光電変換素子によって構成され、結像光学系(カメラ本体101に装着されたレンズ鏡筒100)によって結像された被写体像を電気信号に変換する。
【0012】
制御部112は、CPU(Central Processing Unit)等を備え、カメラ本体101および装着されたレンズ鏡筒100における合焦駆動を含む撮影に係る当該カメラ1全体の動作を統括制御する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るレンズ鏡筒100は、固定筒115を備える。本実施形態において、固定筒115は複数の部品から構成されているが、1つの部品により構成されてもよい。図1に示すように、固定筒115には、レンズ鏡筒100をカメラ本体101に着脱可能とするレンズマウントLMが固定されている。
【0014】
レンズ鏡筒100は、共通の光軸OAに沿って順次配列された複数のレンズ群L1~L9を備える。レンズ群L4は第1筒10に保持され、レンズ群L6はレンズ保持枠F6に保持され、レンズ群L8はレンズ保持枠F8に保持されている。その他のレンズ群は、固定筒115に保持されている。なお、レンズ群L1~L9はそれぞれ、1枚のレンズで構成されていてもよいし、複数のレンズで構成されていてもよい。なお、第1筒10はレンズ保持枠であってもよい。
【0015】
レンズ群L4は、フォーカスレンズであり、フォーカスユニット102に設けられている。図2は、フォーカスユニット102の断面図である。
【0016】
図2に示すように、本実施形態に係るフォーカスユニット102は、第1筒10と、第1筒10よりも外周側に配置される第2筒20と、を備える。本実施形態において、第1筒10は一つの部品から構成されているが、複数の部品により構成されてもよい。また本実施形態において、第2筒20は固定筒115にビスで固定されている。なお、本実施形態において、第2筒20は、複数の部品から構成されているが、一つの部品から構成されていてもよい。
【0017】
本実施形態において、レンズ群L4は、光軸OA方向に移動することにより、焦点調節を行う。レンズ群L4は、フォーカスユニット102が備えるボイスコイルモータ50によって光軸OA方向(前後方向)に駆動される。
【0018】
図3(a)は、ボイスコイルモータ50の構成を示す斜視図であり、図3(b)は、ボイスコイルモータ50を図3(a)の矢印AR11の方向から見た図である。
【0019】
ボイスコイルモータ50は、光軸方向に長さを有する第1サイドヨーク51aおよび第2サイドヨーク51bと、光軸方向に長さを有し、第1サイドヨーク51aおよび第2サイドヨーク51bの間に配置されるセンターヨーク52と、を備える。また、ボイスコイルモータ50は、第1サイドヨーク51a、第2サイドヨーク51b、およびセンターヨーク52の光軸方向における一端を接続する上ヨーク56aと、第1サイドヨーク51a、第2サイドヨーク51b、およびセンターヨーク52の光軸方向における他端を接続する下ヨーク56bとを備える。これにより、閉磁路が形成される。
【0020】
第1サイドヨーク51aのセンターヨーク52側の側面には第1磁石53aが配置され、第2サイドヨーク51bのセンターヨーク52側の側面には第2磁石53bが配置されている。
【0021】
第1磁石53aは、例えば、センターヨーク52側がN極となるように配置されており、第2磁石53bも、センターヨーク52側がN極となるように配置されている。これにより、磁束が、第1磁石53aおよび第2磁石53bのN極からセンターヨーク52に入り、上ヨーク56aおよび下ヨーク56b並びに第1サイドヨーク51aおよび第2サイドヨーク51bを経て、第1磁石53aおよび第2磁石53bのS極にそれぞれ戻る磁路を形成している。
【0022】
また、ボイスコイルモータ50は、センターヨーク52に貫通されるコイル55を備える。コイル55には、レンズ鏡筒100内に設けられたドライバ(不図示)から駆動信号(電流)が入力される。コイル55に電流が流れると、第1磁石53aおよび第2磁石53bの磁力によりコイル55は光軸方向に移動する。より詳細には、電流が流れるコイル55と第1磁石53aおよび第2磁石53bとの間の電磁相互作用によりコイル55は光軸方向に移動する。コイル55に流す電流の向きを変更することで、コイル55の移動方向を被写体側とカメラ本体101側との間で切り替えることができる。また、コイル55に流す電流値を変更することで、コイル55の駆動力や移動速度を変更することができる。
【0023】
図4(a)および図4(b)は、第1筒10の斜視図であり、図5は、第2筒20の斜視図である。また、図6は、第1実施形態に係るフォーカスユニット102を物体側から見た平面図である。なお、図6では、第2筒20に取り付けられ緩衝材40を保持する部材の図示を省略し、緩衝材40を図示している。
【0024】
図4(a)および図4(b)に示すように、ボイスコイルモータ50が備えるコイル55には、第1筒10が連結されている。これにより、コイル55が光軸OA方向に直進移動すると、第1筒10が光軸OA方向に直進駆動され、レンズ群L4の光軸OA方向における位置が変化する。図4(a)に示すように、第1筒10には、光学式エンコーダや磁気エンコーダ等を備える位置検出基板113が取り付けられている。位置検出基板113はカメラ本体101の制御部112による制御下で、レンズ群L4の光軸方向の位置を検出する。ドライバ(不図示)は、位置検出基板113によって検出されたレンズ群L4の位置と、カメラ本体101の制御部112から入力されたレンズ群L4の目標位置情報とに基づいて、コイル55の駆動信号を生成し、フレキシブルプリント基板(FPC)114を介してコイル55に出力する。
【0025】
一方、図5に示すように、第1サイドヨーク51a、第2サイドヨーク51b、センターヨーク52、上ヨーク56a、下ヨーク56b、第1磁石53a、および第2磁石53bは、第2筒20に設けられている。
【0026】
図6に示すように、本実施形態では、フォーカスユニット102は、複数(2つ)のボイスコイルモータ50を備える。この場合、2つのボイスコイルモータ50は、駆動力が光軸OA方向(前後方向)に最大限伝わるように、光軸OAに垂直な平面において、光軸OAをはさんで互いに対向する位置に設けられていることが望ましい。なお、複数のボイスコイルモータ50は、他の位置に設けられていてもよい。また、ボイスコイルモータ50の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0027】
また、図5および図6に示すように、第2筒20には、ガイドバー33と、ガイドバー固定部材35と、副ガイドバー34と、副ガイドバー固定部材36と、が配置されている。ガイドバー33と副ガイドバー34とは、ボイスコイルモータ50により駆動された第1筒10を光軸OA方向に案内する。
【0028】
ガイドバー33と、副ガイドバー34と、が、第1筒10の移動方向を光軸OA方向に規制するため、ガイドバー33と、副ガイドバー34と、は、光軸OAと垂直な平面において、光軸OAをはさんで対向する位置に設置することが望ましい。なお、ガイドバー33と、副ガイドバー34と、は、他の位置に設けられていてもよい。また、副ガイドバー34を省略してもよい。また、副ガイドバー34を複数設けてもよい。
【0029】
上記のようにカメラ本体101と、フォーカスユニット102を備えるレンズ鏡筒100と、により構成されたカメラ1は、図示しないシャッターボタンが押圧操作(合焦操作)されると、カメラ本体101における制御部112が、ボイスコイルモータ50を介してフォーカスユニット102の合焦駆動等の制御を行う。また、レンズ鏡筒100によって結像された被写体像光を撮像素子111が電気信号に変換し、その画像データをカメラ本体101が備えるメモリ(不図示)に記録(すなわち撮影)する。
【0030】
ボイスコイルモータ50の駆動信号がOFFになっている場合、すなわち、ボイスコイルモータ50に電流が供給されていない場合、ボイスコイルモータ50のコイル55はその位置を保つ保持力を有さない。そのため、ボイスコイルモータ50に電流が供給されていない状態では、コイル55と連結されている第1筒10は光軸OA方向に沿って自由に移動可能となっている。そのため、レンズ鏡筒100の被写体側を地面又は空に向けて傾けた場合、レンズ群L4の自重などにより第1筒10が移動して第2筒20に衝突し、衝突音が発生するおそれがある。また、第1筒10と第2筒20との衝突により、第1筒10および第2筒20が破損したり、各部材が摩耗するおそれがある。
【0031】
そこで、本実施形態に係るレンズ鏡筒100では、第2筒20に緩衝材40を取り付けている。緩衝材40は、光軸OA方向において第1筒10と第2筒20とが接触する位置に設けられている。なお、本実施形態では、緩衝材40を第2筒20に設けているが、緩衝材40は、第1筒10に設けてもよいし、第1筒10と第2筒20との両方に設けてもよい。これにより、第1筒10と第2筒20とが衝突するときの衝撃を低減し、衝突音を低減することができる。また、第1筒10と第2筒20とが破損することを抑制できる。
【0032】
本実施形態では、第1筒10と第2筒20との衝突を防止する、あるいは、第1筒10と第2筒20との衝突時の衝撃を低減するため、レンズ鏡筒100は、さらに、第1マグネット11aおよび11b(図2参照)と、第2マグネット21aおよび21b(図2参照)と、を備える。なお、以下の説明において、特に区別する必要がない場合には、第1マグネット11aおよび11bを第1マグネット11と記載し、第2マグネット21aおよび21bを第2マグネット21と記載する。
【0033】
第1マグネット11aおよび11bは、例えば、直方体形状又は立方体形状を有する。図2に示すように、第1マグネット11aは、第1筒10の像側の端部に設けられ、第1マグネット11bは、第1筒10の物体側の端部に設けられている。また、第2マグネット21aおよび21bは、例えば、直方体形状又は立方体形状を有する。図2に示すように、第2マグネット21aは、第2筒20の像側の端部において、光軸OA方向において第1マグネット11aと対向する位置に設けられている。また、第2マグネット21bは、第2筒20の物体側の端部において、光軸OA方向において第1マグネット11bと対向する位置に設けられている。
【0034】
第1マグネット11aと第2マグネット21aとは、第1マグネット11aと第2マグネット21aとの間に反発力が発生するよう、第1筒10および第2筒20にそれぞれ取り付けられている。第1マグネット11bと第2マグネット21bとは、第1マグネット11bと第2マグネット21bとの間に反発力が発生するよう、第1筒10および第2筒20にそれぞれ取り付けられている。例えば、第1マグネット11aと第2マグネット21aとを、光軸OA方向において向かいあう面が同じ極になるように配置し、第1マグネット11bと第2マグネット21bとを、光軸OA方向において向かいあう面が同じ極になるように配置する。より具体的には、例えば、第1マグネット11aを、第2マグネット21a側がS極となるよう配置した場合、第2マグネット21aを第1マグネット11a側がS極となるように配置する。同様に、第1マグネット11bを、第2マグネット21b側がS極となるように配置した場合、第2マグネット21bを、第1マグネット11b側がS極となるよう配置する。このように配置することで、第1マグネット11aと第2マグネット21aとの間、第1マグネット11bと第2マグネット21bとの間で反発力が発生する。
【0035】
このため、ボイスコイルモータ50に電流が供給されていない状態において、レンズ鏡筒100を上向き又は下向きに傾けた場合、第1筒10が第2筒20に向かって移動するが、第1マグネット11aと第2マグネット21aとの間の反発力、又は、第1マグネット11bと第2マグネット21bとの間の反発力により、第1筒10が第2筒20に衝突するときの速度を低減させることができる。これにより、緩衝材40のみを設ける場合と比較して、衝突音の発生や部材の破損・摩耗を更に抑制することができる。
【0036】
また、第1筒10が第2筒20に衝突するときの速度を低減させる方法として、ボイスコイルモータ50に電流が供給されていない状態において、コイル55をショートさせて、第1筒10の移動速度を低減する方法(ショートブレーキ)が考えられる。ショートさせたコイル55が、第1磁石53aおよび第2磁石53bによる磁場内を移動すると、コイル55に電流が流れ、コイル55による磁場が発生する。これにより、コイル55の移動方向と逆方向に力が発生し、コイル55と連結された第1筒10の移動速度が遅くなる。しかしながら、ショートブレーキでは、第1筒10の終端速度を低減することはできても、第1筒10と第2筒20との衝突を防止することはできない。一方、本実施形態では、第1マグネット11と第2マグネット21との間の反発力を適切に設定することによって、第1筒10が第2筒20に衝突することを防止することができる。このため、衝突音の発生や部材の破損を防止することができる。
【0037】
光軸OA方向において、第1筒10の像側の端部と緩衝材40の物体側の面との距離D1は、第1マグネット11aの像側の面と第2マグネット21aの物体側の面との距離D2よりも小さくなるように(D1<D2)、第1マグネット11aと第2マグネット21aとは配置されている。これにより、第1マグネット11aと第2マグネット21bとが接触する前に、第1筒10の端部が緩衝材40に接触するため、第1マグネット11aと第2マグネット21bとの衝突による衝突音の発生を抑制し、また、第1マグネット11a及び第2マグネット21bが破損することを抑制することができる。
【0038】
なお、第1マグネット11aと第2マグネット21bとの衝突による衝突音の発生を抑制し、また、第1マグネット11a及び第2マグネット21bが破損することを抑制するため、第1マグネット11と第2マグネット21とは、直接接触しないように配置されるのが望ましい。
【0039】
例えば、図2及び図4(b)に示すように、第1筒10の外周面に形成されたマグネット保持枠12内に第1マグネット11aを配置したり、図2に示すように、第1マグネット11aと第2マグネット21aとの間に、第2筒20の内周面から内側に向かって突出する突部22を設けたりすることにより、第1マグネット11aと第2マグネット21aとが直接接触しない構成にすることができる。
【0040】
なお、第1マグネット11と第2マグネット21との間の反発力が大きすぎると、第1筒10の端部が第2筒20に近づいた場合に、当該反発力によってボイスコイルモータ50による第1筒10の駆動が妨げられる可能性がある。そのため、第1マグネット11および第2マグネット21の大きさ、マグネットの種類、および設置位置は第1マグネット11と第2マグネット21との間の反発力がボイスコイルモータ50による第1筒10の駆動を大きく妨げないように設計される。
【0041】
第1マグネット11と第2マグネット21との具体的な配置例についてさらに記載する。互いの反発力が光軸OA方向において最大になるようにするため、反発力を有する第1マグネット11と第2マグネット21とは、光軸OAに平行な直線に沿って配置されるのが望ましい。例えば、図2において、第1マグネット11aの中心と第2マグネット21aの中心とは、光軸OAに平行な同一直線上に配置されており、第1マグネット11bの中心と第2マグネット21bと中心は、光軸OAに平行な同一直線上に配置されている。なお、他の部材との配置バランスを踏まえ、第1マグネット11と第2マグネット21との配置は、上記以外の配置であっても構わない。
【0042】
また、第1筒10の第1マグネット11および第2筒20の第2マグネット21は、その磁力がボイスコイルモータ50の駆動に影響を与えない位置に配置されることが望ましい。例えば、図6において、第1マグネット11または第2マグネット21を、ハッチングで示す領域R1に配置してしまうと、コイル55と第1マグネット11との間またはコイル55と第2マグネット21との間にヨーク(第1サイドヨーク51a及び第2サイドヨーク51b等)が存在しないため、第1マグネット11または第2マグネット21の磁力がボイスコイルモータ50の駆動に影響を与えるおそれがある。このため、領域R1に第1マグネット11および第2マグネット21を配置することは避けることが好ましい。したがって、例えば、図3(a)及び図3(b)に示す構造を有するボイスコイルモータ50を利用する場合、第1マグネット11および第2マグネット21は、光軸OAを中心とする円の周方向において、第1サイドヨーク51aおよび第2サイドヨーク51bの外側(センターヨーク52を含み、第1サイドヨーク51aと第2サイドヨーク51bとにより挟まれた領域の外側)に配置することが望ましい。言い換えると、光軸OAを中心とする円の周方向において、第1マグネット11および第2マグネット21は、第1マグネット11とコイル55との間および第2マグネット21とコイル55との間に、第1サイドヨーク51aおよび第2サイドヨーク51bのいずれか一方が位置するように配置されることが望ましい。
【0043】
以上、詳細に説明したように、本実施形態において、レンズ鏡筒100は、レンズ群L4を保持し光軸OA方向に移動可能な第1筒10と、第1筒10を光軸OA方向に駆動するボイスコイルモータ50と、第1筒10の外側に配置される第2筒20と、第1筒10に備えられる第1マグネット11aおよび11bと、第2筒20に備えられる第2マグネット21aおよび21bと、を備え、第1マグネット11aおよび11bと第2マグネット21aおよび21bとの間に反発力が発生する。これにより、ボイスコイルモータ50に電流が供給されていない状態において、レンズ鏡筒100を上向き又は下向きに傾けることによって第1筒10が第2筒20に向かって移動した場合でも、第1マグネット11aと第2マグネット21aとの間の反発力、又は、第1マグネット11bと第2マグネット21bとの間の反発力により、第1筒10が第2筒20に衝突するときの速度を低減させることができる。これにより、第1筒10が第2筒20に衝突するときの衝撃を低減し、衝突音を低減し、第1筒10及び第2筒20が破損することを抑制することができる。さらに、反発力を適切に設定することによって、第1筒10が第2筒20に衝突することを防止することができる。
【0044】
また、本実施形態において、第2筒20は、光軸OA方向において第1筒10が接触する位置に緩衝材40を備える。これにより、ボイスコイルモータ50に電流が供給されていない状態において、レンズ鏡筒100を上向き又は下向きに傾けることによって第1筒10が第2筒20に向かって移動した場合でも、緩衝材40によって、さらに衝撃を低減することができる。
【0045】
また、本実施形態において、第1マグネット11aおよび11bと第2マグネット21aおよび21bとは、それぞれ光軸OAに沿って配置される。これにより、第1マグネット11aと第2マグネット21aとの間の反発力、及び第1マグネット11bとの第2マグネット21bとの間の反発力を光軸OA方向において最大にすることができる。
【0046】
また、本実施形態において、第1筒10の端部と緩衝材40との光軸OA方向における距離は、第1マグネット11a(11b)と第2マグネット21a(21b)との光軸OA方向における距離よりも小さい。これにより、第1マグネット11a(11b)と第2マグネット21a(21b)とが接触するよりも前に、第1筒10が緩衝材40に接触するので、第1マグネット11a(11b)と第2マグネット21a(21b)とが接触し、反発力が無限大となることを抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態において、ボイスコイルモータ50は、コイル55と、第1磁石53aおよび第2磁石53bと、第1サイドヨーク51aおよび第2サイドヨーク51bと、を有し、光軸OAに直交する平面において、第1サイドヨーク51aおよび第2サイドヨーク51bは、第1マグネット11aおよび11bとコイル55との間に位置する。これにより、第1マグネット11aおよび11bが、ボイスコイルモータ50の駆動に与える影響を低減することができる。
【0048】
《第2実施形態》
第1実施形態では、第1筒10の両端部に第1マグネット11aおよび11bを設けたが、第2実施形態では、第1筒10に1つの第1マグネット11を設ける。図7は、第2実施形態に係るフォーカスユニット102Aの断面図である。
【0049】
図7に示すように、第2実施形態では、第1マグネット11bは設けられておらず、第1筒10の像側の端部に第1マグネット11aが設けられている。一方、第2マグネット21aは、第1実施形態と同様に第2筒20の像側の端部に設けられているが、第2マグネット21bは、第2筒20の中央部に設けられたマグネット保持部23に設けられている。
【0050】
第2実施形態では、第1マグネット11aと第2マグネット21aとの間に反発力が生じ、第1マグネット11aと第2マグネット21bとの間で反発力が生じるように、第1マグネット11a、第2マグネット21a、および第2マグネット21bが配置されている。具体的には、例えば、第2マグネット21aが第1マグネット11a側がN極であるように設けられていた場合、第1マグネット11aは第2マグネット21a側がN極となるように配置される。この場合、第1マグネット11aの第2マグネット21b側はS極となるため、第2マグネット21bは第1マグネット11a側がS極となるように配置される。これにより、第1実施形態と同様に、第1マグネット11aと第2マグネット21aとの間の反発力、又は、第1マグネット11aと第2マグネット21bとの間の反発力により、第1筒10が第2筒20に衝突するときの速度を低減させることができるので、衝突音の発生や部材の破損・摩耗をより低減することができる。その他の構成は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0051】
なお、第1マグネット11aを設けず、第1筒10の物体側の端部に第1マグネット11bを設けてもよい。この場合、第2マグネット21bを、第1実施形態と同様に、第2筒20の物体側の端部に設け、第2マグネット21aを、第2筒20の中央部に設けられたマグネット保持部23に設けるようにすればよい。
【0052】
《第3実施形態》
第2実施形態では、第1筒10の像側の端部に第1マグネット11aを設けたが、例えば、第1筒10の中央部に第1マグネット11cを設けてもよい。図8は、第3実施形態に係るフォーカスユニット102Bの断面図である。
【0053】
図8に示すように、第1筒10の光軸OA方向における中央部に第1マグネット11cが設けられている。一方、第2マグネット21aは、光軸OA方向において第2筒20の中央よりも像側に設けられたマグネット保持部23aに設けられ、第2マグネット21bは、第2筒20の中央よりも被写体側に設けられたマグネット保持部23bに設けられている。
【0054】
第3実施形態では、第1マグネット11cと第2マグネット21aとの間に反発力が生じ、第1マグネット11cと第2マグネット21bとの間で反発力が生じるように、第1マグネット11c、第2マグネット21a、および第2マグネット21bが配置されている。具体的には、例えば、第2マグネット21aが第1マグネット11c側がN極であるように配置されている場合、第1マグネット11cは、第2マグネット21a側がN極となるよう配置される。この場合、第1マグネット11cの第2マグネット21b側はS極となるため、第2マグネット21bは、第1マグネット11c側がS極となるように配置される。これにより、第1実施形態と同様に、第1マグネット11cと第2マグネット21aとの間の反発力、又は、第1マグネット11cと第2マグネット21bとの間の反発力により、第1筒10が第2筒20に衝突するときの速度を低減させることができるので、衝突音の発生や部材の破損・摩耗をより低減することができる。その他の構成は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0055】
なお、上記第3実施形態では、第1マグネット11cを第1筒10の中央部に設けたが、これに限定されるものではない。第1マグネット11cを設ける位置は、第1筒の両端部以外であればよい。
【0056】
以上に示した第1実施形態~第3実施形態に加えて、第1実施形態~第3実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0057】
なお、上記実施形態において、第1マグネット11は、光軸OAを中心とする円の周方向において1か所に設けられていたが、第1マグネット11を、光軸OAを中心とする円の周方向において複数設けてもよい。この場合、複数の第1マグネット11を、光軸OAを中心とする円の周方向において略均等の間隔で配置することが好ましい。これは複数の第1マグネット11によって光軸OA方向(前後方向)以外にかかる力を相殺するためである。例えば、光軸OAを中心とする円の周方向において、2つの第1マグネット11を配置する場合、2つの第1マグネット11は、光軸OAに直交する平面において光軸OAをはさんで対向するように配置されることが望ましい。また、3つの第1マグネット11を配置する場合、3つの第1マグネット11は、光軸OAに直交する平面において、3つの第1マグネット11の重心を結んだ三角形の重心が、レンズ群L4の中心(光軸OA)と重なるように配置することが望ましい。
【0058】
また、上記実施形態において、例えば、光軸OAを含む平面において、光軸OAよりも下側では、第1マグネット11aおよび11bを配置し、光軸OAよりも上側では、第1マグネット11aおよび11bのいずれか一方を配置するようにしてもよい。すなわち、光軸OAを中心とする円の周方向の異なる位置に第1マグネット11を設ける場合、各位置における第1マグネット11の数は異なっていてもよい。
【0059】
また、上記実施形態において、第1マグネット11や第2マグネット21の形状は、直方体や立方体に限られるものではなく、円形や球形など他の形状であってもよい。また、第1マグネット11の形状は、第1筒10の物体側面や像側面の一部または全部に張り付けられるシート状であってもよい。第2マグネット21についても同様である。さらに、第1マグネット11と第2マグネット21の形状は異なっていてもよい。例えば、第1マグネット11がシート状で第2マグネット21が直方体であってもよく、その逆であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、ボイスコイルモータ50が駆動するレンズ群L4がフォーカスレンズである場合について説明したが、ボイスコイルモータ50が駆動するレンズ群は、例えば、ズーミングレンズ等、他のレンズであってもよい。
【0061】
また、上記実施形態において、レンズ群L4はガイドバー33及び副ガイドバー34に案内されて移動するが、これに限られるものではなくレンズ群L4は、ガイドバー33および副ガイドバー34以外の構成によって案内されてもよい。
【0062】
また、上記実施形態において、第1筒10に設けられる第1マグネット11aおよび11bは、第2マグネット21aおよび21bとの間の反発力によりガイドバー33および副ガイドバー34にガタを発生させないように配置することが望ましい。具体的には、光軸OAに垂直な平面において、ガイドバー33の中心軸と光軸OAとを結んだ直線Aと、光軸OAを通り直線Aに直交する直線Bと、を図6に示すように定義した場合、直線Bよりもガイドバー33側に第1マグネット11aおよび11bを設けることが好ましい。なお、第1マグネット11aおよび11bは、副ガイドバー34の近傍に設置されていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、緩衝材40を設けていたが、緩衝材40を省略してもよい。
【0064】
また、上記実施形態において、第2筒20は、光軸OA方向に移動しないものとしたが、第2筒20は光軸OA方向に移動してもよい。
【0065】
上述した実施形態は好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能であり、任意の構成要件を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 第1筒
11,11a,11b,11c 第1マグネット
20 第2筒
21,21a,21b 第2マグネット
33 ガイドバー
40 緩衝材
50 ボイスコイルモータ
53a 第1磁石
53b 第2磁石
55 コイル
51a 第1サイドヨーク
51b 第2サイドヨーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8