(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025103017
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】基地局及び端末
(51)【国際特許分類】
H04W 72/0457 20230101AFI20250701BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20250701BHJP
H04W 76/15 20180101ALI20250701BHJP
【FI】
H04W72/0457 110
H04W84/12
H04W76/15
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025064324
(22)【出願日】2025-04-09
(62)【分割の表示】P 2024079703の分割
【原出願日】2020-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 保彦
(72)【発明者】
【氏名】永田 健悟
(72)【発明者】
【氏名】岸田 朗
(72)【発明者】
【氏名】淺井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マルチリンクの通信品質を向上させる基地局及び端末を提供する。
【解決手段】無線システムにおいて、基地局10は、第1、第2の無線信号処理部及びリンクマネジメント部を含む。第1、第2の無線信号処理部は、夫々第1、第2のチャネルを用いて無線信号を送受信する。リンクマネジメント部は、第1、第2の無線信号処理部(リンク#1、#2)を用いて端末20とのマルチリンクを確立し、マルチリンクの動作に関する制御情報の送受信に使用するアンカーリンクを設定し、アンカーリンクに設定された第1の無線信号処理部を用いて、アンカーリンクの変更を要求する第1の無線フレームを端末に送信し、第1の無線フレームを送信した後に、第1、第2の無線信号処理部の何れかが端末からの肯定応答を受信すると、アンカーリンクを第1の無線信号処理部から第2の無線信号処理部に変更する。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第1の無線信号処理部と、
前記第1のチャネルと異なる第2のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第2の無線信号処理部と、
前記第1の無線信号処理部と前記第2の無線信号処理部とを用いて端末とのマルチリンクを確立し、マルチリンクの動作に関する制御情報の送受信に使用するアンカーリンクを設定するリンクマネジメント部と、を備え、
前記リンクマネジメント部は、
アンカーリンクに設定された前記第1の無線信号処理部を用いて、アンカーリンクの変更を要求する第1の無線フレームを前記端末に送信し、
前記第1の無線フレームが送信された後に、前記第1の無線信号処理部と前記第2の無線信号処理部とのいずれかが前記端末からの肯定応答を受信すると、アンカーリンクを前記第1の無線信号処理部から前記第2の無線信号処理部に変更する、基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、基地局及び端末に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局と端末との間を無線で接続する無線システムとして、無線LAN(Local Area Network)が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】IEEE Std 802.11-2016,“9.3.3.3 Beacon frame format”and“11.1 Synchronization”, 7 December 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
課題は、マルチリンクの通信品質を向上させること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の基地局は、第1の無線信号処理部と、第2の無線信号処理部と、リンクマネジメント部とを含む。第1の無線信号処理部は、第1のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成される。第2の無線信号処理部は、第1のチャネルと異なる第2のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成される。リンクマネジメント部は、第1の無線信号処理部と第2の無線信号処理部とを用いて端末とのマルチリンクを確立し、マルチリンクの動作に関する制御情報の送受信に使用するアンカーリンクを設定する。リンクマネジメント部は、アンカーリンクに設定された第1の無線信号処理部を用いて、アンカーリンクの変更を要求する第1の無線フレームを端末に送信し、第1の無線フレームが送信された後に、第1の無線信号処理部と第2の無線信号処理部とのいずれかが端末からの肯定応答を受信すると、アンカーリンクを第1の無線信号処理部から第2の無線信号処理部に変更する。
【発明の効果】
【0006】
実施形態の基地局は、マルチリンクの通信品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る無線システムの全体構成の一例を示す概念図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る無線システムにおける無線通信に使用される周波数帯の一例を示す概念図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る無線システムにおける無線フレームのフォーマットの一例を示す概念図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る無線システムの備える基地局の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る無線システムの備える基地局の機能の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る無線システムの備える端末の構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る無線システムの備える端末の機能の一例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る無線システムの備える基地局のリンクマネジメント部の詳細な機能の一例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る無線システムにおけるリンク管理情報の一例を示すテーブルである。
【
図10】
図10は、実施形態に係る無線システムにおけるマルチリンク処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態に係る無線システムの備える基地局におけるビーコン信号の出力方法の一例を示す概念図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る無線システムにおけるマルチリンクケイパビリティ情報を含むビーコン信号の一例を示す概念図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る無線システムにおけるマルチリンク時のデータ送信方法の一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、実施形態に係る無線システムにおけるアンカーリンク変更処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、実施形態に係る無線システムにおけるアンカーリンク変更処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、実施形態に係る無線システムのアンカーリンク変更処理で使用される無線フレームの具体例を示す概念図である。
【
図17】
図17は、実施形態に係る無線システムのアンカーリンク変更処理で使用される無線フレームの具体例を示す概念図である。
【
図18】
図18は、実施形態に係る無線システムの備える基地局による通信品質測定結果の取得方法の一例を示す概念図である。
【
図19】
図19は、実施形態に係る無線システムの備える基地局による通信品質測定結果の取得方法の一例を示す概念図である。
【
図20】
図20は、実施形態に係る無線システムの備える基地局による通信品質測定結果の取得方法の一例を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、実施形態に係る無線システムの備える端末による通信品質測定結果の通知方法の一例を示す概念図である。
【
図22】
図22は、実施形態に係る無線システムの備える端末による通信品質測定結果の通知方法の一例を示す概念図である。
【
図23】
図23は、実施形態に係る無線システムの備える端末による通信品質測定結果の通知方法の一例を示すフローチャートである。
【
図24】
図24は、実施形態の変形例に係る無線システムの全体構成の一例を示す概念図である。
【
図25】
図25は、実施形態の変形例に係る無線システムで使用されるマルチリンクのリンクセットとアンカーリンクの設定との組み合わせを示すテーブルである。
【
図26】
図26は、実施形態の第1変形例に係る無線システムにおけるリンク管理情報の一例を示すテーブルである。
【
図27】
図27は、実施形態の第1変形例に係る無線システムにおけるアンカーリンク変更処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図28】
図28は、実施形態の第2変形例に係る無線システムにおけるリンク管理情報の一例を示すテーブルである。
【
図29】
図29は、実施形態の第2変形例に係る無線システムにおけるマルチリンク処理の第1の例を示すフローチャートである。
【
図30】
図30は、実施形態の第2変形例に係る無線システムにおけるマルチリンク処理の第2の例を示すフローチャートである。
【
図31】
図31は、実施形態の第3変形例に係る無線システムにおけるリンク管理情報の一例を示すテーブルである。
【
図32】
図32は、実施形態の第3変形例に係る無線システムの備える基地局におけるビーコン信号の出力方法の一例を示す概念図である。
【
図33】
図33は、実施形態の第4変形例に係る無線システムにおけるリンク管理情報の一例を示すテーブルである。
【
図34】
図34は、実施形態の第4変形例に係る無線システムにおけるアンカーリンク変更処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、実施形態に係る無線システム1について、図面を参照して説明する。実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は模式的又は、概念的なものである。各図面の寸法及び比率等は、必ずしも現実のものと同一とは限らない。本発明の技術的思想は、構成要素の形状、構造、配置等によって特定されるものではない。また、以下の説明では、略同一の機能及び構成を有する構成要素に、同一の符号が付されている。
【0009】
<1>無線システム1の構成
<1-1>無線システム1の全体構成
図1は、実施形態に係る無線システム1の構成の一例を示している。
図1に示すように、無線システム1は、例えば基地局10、端末20、及びサーバ30を備えている。
【0010】
基地局10は、ネットワークNWに接続され、無線LANのアクセスポイントとして使用される。例えば、基地局10は、ネットワークNWから受信したデータを、無線で端末20に配信することができる。また、基地局10は、一種類の帯域又は複数種類の帯域を用いて、端末20に接続され得る。本明細書では、基地局10と端末20との間における複数種類の帯域を用いた無線接続のことを、“マルチリンク”と呼ぶ。基地局10と端末20との間の通信は、例えばIEEE802.11規格に基づいている。
【0011】
端末20は、例えばスマートフォンやタブレットPC等の無線端末である。端末20は、無線で接続された基地局10を介して、ネットワークNW上のサーバ30との間でデータを送受信することができる。尚、端末20は、デスクトップコンピュータやラップトップコンピュータ等、その他の電子機器であってもよい。端末20は、少なくとも基地局10と通信可能であり、且つ後述する動作を実行可能な機器であればよい。
【0012】
サーバ30は、様々な情報を保持することが可能であり、例えば端末20を対象としたコンテンツのデータを保持している。サーバ30は、例えばネットワークNWに有線で接続され、ネットワークNWを介して基地局10と通信可能に構成される。尚、サーバ30は、少なくとも基地局10と通信可能であればよい。つまり、基地局10とサーバ30との間の通信は、有線であっても無線であってもよい。
【0013】
実施形態に係る無線システム1において、基地局10及び端末20間のデータ通信は、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルに基づいている。OSI参照モデルでは、通信機能が7階層(第1層:物理層、第2層:データリンク層、第3層:ネットワーク層、第4層:トランスポート層、第5層:セッション層、第6層:プレゼンテーション層、第7層:アプリケーション層)に分割される。
【0014】
データリンク層は、例えばLLC(Logical Link Control)層と、MAC(Media Access Control)層とを含んでいる。LLC層は、例えば上位のアプリケーションから入力されたデータに、DSAP(Destination Service Access Point)ヘッダやSSAP(Source Service Access Point)ヘッダ等を付加し、LLCパケットを形成する。MAC層は、例えばLLCパケットにMACヘッダを付加し、MACフレームを形成する。
【0015】
(無線通信に使用される周波数帯について)
図2は、実施形態に係る無線システム1における無線通信に使用される周波数帯の一例を示している。
図2に示すように、無線通信では、例えば2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯が使用される。そして、各周波数帯は、それぞれ複数のチャネルを含んでいる。本例では、2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯のそれぞれが、少なくとも3つのチャネルCH1、CH2及びCH3を含んでいる。各チャネルCHを用いた通信は、後述されるSTA機能によって実現される。
【0016】
尚、無線システム1は、2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯以外の周波数帯を無線通信に使用してもよい。各周波数帯には、少なくとも1つのチャネルCHが設定されていればよい。マルチリンクには、同じ周波数帯のチャネルCHが使用されてもよいし、異なる周波数帯のチャネルCHが使用されてもよい。
【0017】
(無線フレームのフォーマットについて)
図3は、実施形態に係る無線システム1において、基地局10及び端末20間の通信で使用される無線フレームのフォーマットの具体例を示している。
図3に示すように、無線フレームに含まれるフィールドとして、例えばFrame Controlフィールド、Durationフィールド、Address1フィールド、Address2フィールド、Address3フィールド、Sequence Controlフィールド、その他の制御情報フィールド、Frame Bodyフィールド、及びFCS(Frame Check Sequence)フィールドがある。これらのフィールドは、無線フレームの種類により含まれるものと含まれないものがある。
【0018】
Frame Controlフィールド~その他の制御情報フィールドは、例えばMACフレームに含まれたMACヘッダに対応している。Frame Bodyフィールドは、例えばMACフレームに含まれたMACペイロードに対応している。FCSフィールドは、MACヘッダとFrame Bodyフィールドとの誤り検出符号を格納し、当該無線フレームにおけるエラーの有無の判定に使用される。
【0019】
Frame Controlフィールドは、様々な制御情報を示し、例えばType値、Subtype値、To DS(To Distribution System)値、及びFrom DS値を含んでいる。Type値は、当該無線フレームのフレームタイプを示している。例えば、Type値“00”は、当該無線フレームがマネージメントフレームであることを示している。Type値“01”は、当該無線フレームが制御フレームであることを示している。Type値“10”は、当該無線フレームがデータフレームであることを示している。
【0020】
無線フレームの内容は、Type値及びSubtype値の組み合わせによって変化する。例えば、“00/1000(Type値/Subtype値)”は、当該無線フレームがビーコン信号であることを示している。To DS値及びFrom DS値の意味は、その組み合わせにより異なっている。例えば、“00(To DS/From DS)”は、同じIBSS(Independent Basic Service Set)内の端末間におけるデータであることを示している。“10”は、データフレームが外部から当該DS(Distribution System)に向けられたものであることを示している。“01”は、データフレームが当該DSの外へ向かうことを示している。“11”は、メッシュネットワークを構成する場合に使用される。
【0021】
Durationフィールドは、無線回線を使用する予定期間を示している。複数のAddressフィールドは、BSSID、送信元アドレス、あて先アドレス、送信者端末のアドレス、受信者端末のアドレス等を示している。Sequence Controlフィールドは、MACフレームのシーケンス番号と、フラグメントのためのフラグメント番号とを示している。その他の制御情報フィールドは、例えばトラヒック種別(TID)情報を含んでいる。TID情報は、無線フレーム内のその他の位置に挿入されてもよい。Frame Bodyフィールドは、フレームの種類に応じた情報を含んでいる。例えば、Frame Bodyフィールドは、データフレームに対応する場合に、データを格納する。
【0022】
<1-2>基地局10の構成
図4は、実施形態に係る無線システム1の備える基地局10の構成の一例を示している。
図4に示すように、基地局10は、例えばCPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、無線通信モジュール14、及び有線通信モジュール15を備えている。
【0023】
CPU11は、様々なプログラムを実行することが可能な回路であり、基地局10の全体の動作を制御する。ROM12は、不揮発性の半導体メモリであり、基地局10を制御するためのプログラムや制御データ等を保持している。RAM13は、例えば揮発性の半導体メモリであり、CPU11の作業領域として使用される。無線通信モジュール14は、無線信号によるデータの送受信に使用される回路であり、アンテナに接続される。また、無線通信モジュール14は、例えば複数の周波数帯にそれぞれ対応する複数の通信モジュールを含んでいる。有線通信モジュール15は、有線信号によるデータの送受信に使用される回路であり、ネットワークNWに接続される。
【0024】
図5は、実施形態に係る無線システム1の備える基地局10の機能構成の一例を示している。
図5に示すように、基地局10は、例えばデータ処理部100、MACフレーム処理部110、マネジメント部120、並びに無線信号処理部130、140及び150を備える。データ処理部100、MACフレーム処理部110、マネジメント部120、並びに無線信号処理部130、140及び150の処理は、例えばCPU11及び無線通信モジュール14によって実現される。
【0025】
データ処理部100は、入力されたデータに対して、LLC層の処理と上位層の処理とを実行し得る。例えば、データ処理部100は、ネットワークNWを介してサーバ30から入力されたデータを、MACフレーム処理部110に出力する。また、データ処理部100は、MACフレーム処理部110から入力されたデータを、ネットワークNWを介してサーバ30に送信する。
【0026】
MACフレーム処理部110は、入力されたデータに対して、例えばMAC層の処理の一部を実行する。例えば、MACフレーム処理部110は、データ処理部100から入力されたデータから、MACフレームを生成する。また、MACフレーム生成部110は、無線信号処理部130、140及び150のそれぞれから入力されたMACフレームから、データを復元する。データからMACフレームの生成する処理と、及びMACフレームからデータの復元する処理とは、例えばIEEE802.11規格に基づいている。
【0027】
マネジメント部120は、無線信号処理部130、140及び150からMACフレーム処理部110を介して受信した通知に基づいて、端末20とのリンクを管理する。マネジメント部120は、リンク管理情報121を含んでいる。リンク管理情報121は、例えばRAM13に格納され、当該基地局10に無線接続されている端末20の情報を含んでいる。また、マネジメント部120は、アソシエーション処理部122、認証処理部123、及び品質測定部124を含んでいる。アソシエーション処理部122は、無線信号処理部130、140及び150のいずれかを介して端末20の接続要求を受信した場合に、アソシエーションに関するプロトコルを実行する。認証処理部123は、接続要求に続いて、認証に関するプロトコルを実行する。品質測定部124は、各チャネルの通信品質を定期的に測定及び評価する。また、品質測定部124は、端末20に対して通信品質の測定及び報告を定期的に要求する。以下では、データ処理部100、MACフレーム処理部110、及びマネジメント部120の組のことを、基地局10のリンクマネジメント部LM1と呼ぶ。
【0028】
無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、無線通信を用いて基地局10と端末20との間のデータの送受信を行う。例えば、無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、MACフレーム処理部110から入力されたデータにプリアンブルやPHYヘッダ等を付加して、無線フレームを作成する。そして、無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、当該無線フレームを無線信号に変換して、基地局10のアンテナを介して当該無線信号を配信する。また、無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、基地局10のアンテナを介して受信した無線信号を無線フレームに変換する。そして、無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、当該無線フレームに含まれたデータ(例えばMACフレーム)を、MACフレーム処理部110に出力する。
【0029】
このように、無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、入力されたデータ又は無線信号に対して、例えばMAC層の処理の一部と第1層の処理とを実行し得る。例えば、無線信号処理部130は、2.4GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部140は、5GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部150は、6GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部130、140及び150は、基地局10のアンテナを共有していてもよいし、共有していなくてもよい。
【0030】
<1-3>端末20の構成
図6は、実施形態に係る無線システム1の備える端末20の構成の一例を示している。
図6に示すように、端末20は、例えばCPU21、ROM22、RAM23、無線通信モジュール24、ディスプレイ25、及びストレージ26を備えている。
【0031】
CPU21は、様々なプログラムを実行することが可能な回路であり、端末20の全体の動作を制御する。ROM22は、不揮発性の半導体メモリであり、端末20を制御するためのプログラムや制御データ等を保持している。RAM23は、例えば揮発性の半導体メモリであり、CPU21の作業領域として使用される。無線通信モジュール24は、無線信号によるデータの送受信に使用される回路であり、アンテナに接続される。また、無線通信モジュール24は、例えば複数の周波数帯にそれぞれ対応する複数の通信モジュールを含んでいる。ディスプレイ25は、例えばアプリケーションソフトに対応するGUI(Graphical User Interface)等を表示する。ディスプレイ25は、端末20の入力インタフェースとしての機能を有していてもよい。ストレージ26は、不揮発性の記憶装置であり、例えば端末20のシステムソフトウェア等を保持する。尚、端末20は、ディスプレイを備えていなくてもよい。例えば、IoT端末では、ディスプレイ25が省略され得る。
【0032】
図7は、実施形態に係る無線システム1の備える端末20の機能構成の一例を示している。
図7に示すように、端末20は、例えばデータ処理部200、MACフレーム処理部210、マネジメント部220、無線信号処理部230、240及び250、並びにアプリケーション実行部260を備える。データ処理部200、MACフレーム処理部210、マネジメント部220、並びに無線信号処理部230、240及び250の処理は、例えばCPU21及び無線通信モジュール24によって実現される。アプリケーション実行部260の処理は、例えばCPU21によって実現される。
【0033】
データ処理部200は、入力されたデータに対して、LLC層の処理と上位層(第3層~第7層)の処理とを実行し得る。例えば、データ処理部200は、アプリケーション実行部260から入力されたデータを、MACフレーム処理部210に出力する。また、データ処理部200は、MACフレーム処理部210から入力されたデータを、アプリケーション実行部260に出力する。
【0034】
MACフレーム処理部210は、入力されたデータに対して、例えばMAC層の処理の一部を実行する。例えば、MACフレーム処理部210は、データ処理部200から入力されたデータから、MACフレームを生成する。また、MACフレーム処理部210は、無線信号処理部230、240及び250のそれぞれから入力されたMACフレームから、データを復元する。データからMACフレームの生成する処理と、及びMACフレームからデータの復元する処理とは、例えばIEEE802.11規格に基づいている。
【0035】
マネジメント部220は、無線信号処理部230、240及び250からMACフレーム処理部210を介して受信した通知に基づいて、基地局10とのリンクを管理する。マネジメント部220は、リンク管理情報221を含んでいる。リンク管理情報221は、例えばRAM23に格納され、当該端末20に無線接続されている基地局10の情報を含んでいる。また、マネジメント部220は、アソシエーション処理部222、認証処理部223、及び品質測定部224を含んでいる。アソシエーション処理部222は、無線信号処理部230、240及び250のいずれかを介して基地局10の接続応答を受信した場合に、アソシエーションに関するプロトコルを実行する。認証処理部223は、接続応答に続いて、認証に関するプロトコルを実行する。品質測定部224は、各チャネルの通信品質を定期的に測定及び評価する。また、品質測定部224は、基地局10から受信した通信品質の測定及び通知の要求に応答して、各STA機能で通信品質を測定し、測定結果を基地局10に通知する。以下では、データ処理部200、MACフレーム処理部210、及びマネジメント部220の組のことを、端末20のリンクマネジメント部LM2と呼ぶ。
【0036】
無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、無線通信を用いて基地局10と端末20との間のデータの送受信を行う。例えば、無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、MACフレーム処理部210から入力されたデータにプリアンブルやPHYヘッダ等を付加して、無線フレームを作成する。そして、無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、当該無線フレームを無線信号に変換して、端末20のアンテナを介して当該無線信号を配信する。また、無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、端末20のアンテナを介して受信した無線信号を無線フレームに変換する。そして、無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、当該無線フレームに含まれたデータ(例えばMACフレーム)を、MACフレーム処理部210に出力する。
【0037】
このように、無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、入力されたデータ又は無線信号に対して、例えばMAC層の処理の一部と第1層の処理とを実行し得る。例えば、無線信号処理部230は、2.4GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部240は、5GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部250は、6GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部230、240及び250は、端末20のアンテナを共有していてもよいし、共有していなくてもよい。
【0038】
アプリケーション実行部260は、データ処理部210から入力されたデータを利用することが可能なアプリケーションを実行する。例えば、アプリケーション実行部260は、アプリケーションの情報をディスプレイ25に表示することができる。また、アプリケーション実行部260は、入力インタフェースの操作に基づいて動作し得る。
【0039】
以上で説明された実施形態に係る無線システム1では、基地局10の無線信号処理部130、140及び150が、それぞれ端末20の無線信号処理部230、240及び250と接続可能に構成される。つまり、無線信号処理部130及び230間は、2.4GHz帯を用いて無線接続され得る。無線信号処理部140及び240間は、5GHz帯を用いて無線接続され得る。無線信号処理部150及び250間は、6GHz帯を用いて無線接続され得る。本明細書において、各無線信号処理部は、“STA機能”と呼ばれてもよい。すなわち、実施形態に係る無線システム1は、複数のSTA機能を備えている。
【0040】
<1-4>リンクマネジメント部LM1について
図8は、実施形態に係る無線システム1の備える基地局10のリンクマネジメント部LM1におけるチャネルアクセス機能の詳細を示している。尚、端末20のリンクマネジメント部LM2の機能は、例えば基地局10のリンクマネジメント部LM1と同様のため、説明を省略する。
図8に示すように、リンクマネジメント部LM1は、例えばデータカテゴライズ部125、送信キュー126A、126B、126C、126D及び126E、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)実行部127A、127B、127C、127D及び127E、及びデータ衝突管理部128を含んでいる。
【0041】
データカテゴライズ部125は、データ処理部100から入力されたデータをカテゴライズする。データのカテゴリとしては、例えば“LL(Low Latency)”、“VO(Voice)”、“VI(Video)”、“BE(Best Effort)”、及び“BK(Background)”が設定される。LLは、低遅延が求められるデータに適用される。このため、LLのデータは、VO、VI、BE及びBKのいずれのデータよりも優先して処理されることが好ましい。
【0042】
そして、データカテゴライズ部125は、カテゴライズしたデータを、送信キュー126A、126B、126C、126D及び126Eのいずれかに入力する。具体的には、LLのデータが、送信キュー126Aに入力される。VOのデータが、送信キュー126Bに入力される。VIのデータが、送信キュー126Cに入力される。BEのデータが、送信キュー126Dに入力される。BKのデータが、送信キュー126Eに入力される。そして、入力された各カテゴリのデータは、対応する送信キュー126A~Eのいずれかに蓄積される。
【0043】
CSMA/CA実行部127A、127B、127C、127D及び127Eのそれぞれは、CSMA/CAにおいて、キャリアセンスにより他の端末等による無線信号の送信がないことを確認しつつ、予め設定されたアクセスパラメータにより規定された時間だけ送信を待つ。そして、CSMA/CA実行部127A、127B、127C、127D及び127Eは、それぞれ送信キュー126A、126B、126C、126D及び126Eからデータを取り出し、取り出したデータをデータ衝突管理部128を介して無線信号処理部130、140及び150の少なくともいずれかに出力する。すると、当該データを含む無線信号が、CSMA/CAによって送信権が獲得された無線信号処理部(STA機能)によって送信される。
【0044】
CSMA/CA実行部127Aは、送信キュー126Aに保持されたLLのデータに対するCSMA/CAを実行する。CSMA/CA実行部127Bは、送信キュー126Bに保持されたVOのデータに対するCSMA/CAを実行する。CSMA/CA実行部127Cは、送信キュー126Cに保持されたVIのデータに対するCSMA/CAを実行する。CSMA/CA実行部127Dは、送信キュー126Dに保持されたBEのデータに対するCSMA/CAを実行する。CSMA/CA実行部127Eは、送信キュー126Eに保持されたBKのデータに対するCSMA/CAを実行する。
【0045】
尚、アクセスパラメータは、例えばLL、VO、VI、BE、BKの順に無線信号の送信が優先されるように割り当てられる。アクセスパラメータは、例えばCWmin、CWmax、AIFS、TXOPLimitを含んでいる。CWmin及びCWmaxは、衝突回避のための送信待ちの時間であるコンテンションウインドウ(Contention Window)の最小値及び最大値をそれぞれ示している。AIFS(Arbitration Inter Frame Space)は、優先制御機能を備える衝突回避制御のためにアクセスカテゴリごとに設定された固定の送信待ちの時間を示している。TXOPLimitは、チャネルの占有時間に対応するTXOP(Transmission Opportunity)の上限値を示している。例えば、送信キュー126は、CWmin及びCWmaxが短いほど、送信権を得やすくなる。送信キュー126の優先度は、AIFSが小さいほど高くなる。一度の送信権で送信されるデータの量は、TXOPLimitの値が大きいほど多くなる。
【0046】
データ衝突管理部128は、複数のCSMA/CA実行部127が同一のSTA機能で送信権を獲得した場合に、データの衝突を防止する。具体的には、データ衝突管理部128は、カテゴリが異なり且つ同一のSTA機能で送信権が獲得されたデータの送信タイミングを調整し、優先度の高いカテゴリのデータからSTA機能に送信する。例えば、LLの送信キュー126AのCSMA/CAによって送信権を獲得したSTA機能が、その他の送信キュー126B~126EのいずれかのCSMA/CAによって送信権を獲得したSTA機能と同時に送信権を獲得する場合がある。この場合、データ衝突管理部128は、送信キュー126Aに格納されたデータを優先してSTA機能に送信する。その他の送信キュー126の組み合わせにおいても同様に、カテゴリに設定された優先度に基づいた順番でデータが送信される。これにより、同一のSTA機能に送信が割り当てられたデータ同士の衝突が防止される。
【0047】
実施形態では、リンクマネジメント部LM1及びLM2がチャネルアクセス機能を実装する形態について記載しているが、各STA機能がチャネルアクセス機能を実装してもよい。リンクマネジメント部LM1及びLM2がチャネルアクセス機能を実装する場合、各STA機能が、対応するリンクにおける無線チャネルの状態(アイドル/ビジー)を検出して、リンクマネジメント部LM1及びLM2が、データの送信可否を判断する(どのリンクを使って送信する等)。一方で、各STA機能がチャネルアクセス機能を実装する場合、各STA機能が独立してキャリアセンスを実行して、データを送信すればよい。このとき、複数のリンクが同時に使用された場合のチャネルアクセスは、複数のSTA機能間のやりとりによってアクセスパラメータが共通化されることによって実行されてもよく、リンクマネジメント部LM1及びLM2によってアクセスパラメータが共通化されることによって実行されてもよい。基地局10及び端末20は、データを複数のSTA機能間で共通のアクセスパラメータに基づいて送信することによって、複数のリンクを同時に使うことができる。
【0048】
<1-5>リンク管理情報121について
図9は、実施形態に係る無線システム1におけるリンク管理情報121の一例を示している。尚、端末20のリンク管理情報221は、基地局10のリンク管理情報121と類似した情報を有するため、説明を省略する。
図9に示すように、リンク管理情報121は、例えばSTA機能、周波数帯、チャネルID、リンク先ID、マルチリンク、TIDのそれぞれの情報を含んでいる。
【0049】
本例において“STA1”は、6GHzの周波数帯を使用するSTA機能、すなわち無線信号処理部150又は250に対応している。“STA2”は、5GHzの周波数帯を使用するSTA機能、すなわち無線信号処理部140又は240に対応している。“STA3”は、2.4GHzの周波数帯を使用するSTA機能、すなわち無線信号処理部130又は230に対応している。以下では、STA1、STA2及びSTA3を、それぞれリンク#1、リンク#2及びリンク#3とも呼ぶ。
【0050】
チャネルIDは、設定された周波数帯で使用しているチャネルの識別子に対応している。リンク先IDは、リンク管理情報121では端末20の識別子に対応し、リンク管理情報221では基地局10の識別子に対応している。本例では、STA1、STA2及びSTA3を用いたマルチリンクが確立されている。マルチリンクが確立されている場合、リンクマネジメント部LM1及びLM2のそれぞれは、上位層から入力されたデータを、マルチリンクに関連付けられた少なくとも1つのSTA機能のリンクを用いて送信する。
【0051】
基地局10は、複数のSTA機能のうち一つのSTA機能をアンカーリンクとして設定する。本例では、STA1がアンカーリンクに設定されている。アンカーリンクは、基地局10のリンクマネジメント部LM1によって設定される。アンカーリンクは、割り当てられたデータの送受信の他に、マルチリンクの動作に関連する制御情報を送受信する。尚、各々が基地局10とマルチリンクを確立している複数の端末20間では、マルチリンクを構成するリンクの組み合わせが異なっていてもよい。
【0052】
リンク管理情報121内の“TID”は、STA機能とTID情報との関連付けを示している。各STA機能は、割り当てられたTID情報に対応するデータを送受信する。例えば、TID#1~4のそれぞれは、LL、VO、VI、BE、BKのいずれかに対応している。1つのトラヒック、すなわち1つのTID情報に対して、1つのSTA機能が関連付けられてもよいし、複数のSTA機能が関連付けられてもよい。本例では、TID#1が、STA1及びSTA2の両方に割り当てられている。TID#2が、STA1に割り当てられている。TID#3が、STA2に割り当てられている。TID#4が、STA3に割り当てられている。
【0053】
このようなトラヒックとSTA機能との関連付けに対応するトラヒックフローは、基地局10と端末20との間のマルチリンクのセットアップ時に予め設定される。例えば、端末20のリンクマネジメント部LM2が、トラヒックとSTA機能との対応付けを決定し、基地局10のリンクマネジメント部LM1にリクエストする。そして、基地局10が、当該リクエストに対してレスポンスすることによって、トラヒックとSTA機能との対応付けが確定する。
【0054】
尚、トラヒックは、例えばマルチリンクを構成する複数のリンク間で均等になるように設定される。これに限定されず、互いに類似する種類(優先/非優先等)のトラヒックが、マルチリンクを構成する一方のリンクに集められてもよい。また、STA機能とトラヒックとの関連付けとしては、例えば音声が2.4GHzの周波数帯に関連付けられ、映像が5Gに関連付けられる。このように、取り扱う情報の種類やデータ容量に応じて、送受信に使用される周波数が割り当てられることが好ましい。
【0055】
<2>無線システム1の動作
以下に、実施形態に係る無線システム1のマルチリンクに関連する様々な動作の一例について説明する。以下の説明では、説明を簡潔にするために、基地局10のSTA1、STA2及びSTA3のことを“アクセスポイントAP”とも呼ぶ。端末20のSTA1、STA2及びSTA3がアクセスポイントAPに無線信号を送信することは、それぞれ基地局10のSTA1、STA2及びSTA3に無線信号を送信することに対応している。STA1、STA2及びSTA3がそれぞれ単独で記載された場合に、これらは端末20のSTA機能のことを示している。
【0056】
<2-1>マルチリンク処理
図10は、実施形態に係る無線システム1におけるマルチリンク処理の流れの一例を示している。
図10に示すように、マルチリンク処理では、例えばステップS10~S16の処理が順に実行される。以下に、ステップS10~S16の処理について、3つのSTA機能を用いたマルチリンクが形成される場合を例に説明する。
【0057】
ステップS10の処理において、端末20は、基地局10にプローブリクエストを送信する。プローブリクエストは、端末20の周辺に基地局10が存在するか否かを確認する信号である。プローブリクエストのFrame Controlフィールドは、例えば“00/0100(Type値/Subtype値)”を含んでいる。基地局10は、プローブリクエストを受信すると、ステップS11の処理を実行する。
【0058】
ステップS11の処理において、基地局10は、端末20にプローブレスポンスを送信する。プローブレスポンスは、基地局10が端末20からのプローブリクエストに対する応答に使用する信号である。プローブレスポンスのFrame Controlフィールドは、例えば“00/0101(Type値/Subtype値)”を含んでいる。端末20は、プローブレスポンスを受信すると、ステップS12の処理を実行する。
【0059】
ステップS12の処理において、端末20は、少なくとも1つのSTA機能を介して、基地局10にマルチリンクアソシエーションリクエストを送信する。マルチリンクアソシエーションリクエストは、基地局10にマルチリンクの確立を要求するための信号である。例えば、マルチリンクアソシエーションリクエストは、端末20のリンクマネジメント部LM2によって生成される。マルチリンクアソシエーションリクエストのFrame Controlフィールドは、例えば“00/xxxx(Type値/Subtype値(xxxxは所定の数値))”を含んでいる。基地局10のリンクマネジメント部LM1は、マルチリンクアソシエーションリクエストを受信すると、ステップS13の処理を実行する。
【0060】
ステップS13の処理において、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、1つのSTA機能を使用したマルチリンクアソシエーション処理を実行する。具体的には、まず基地局10は、端末20との間で、1つ目のSTA機能のアソシエーション処理を実行する。そして、1つ目のSTA機能において無線接続(リンク)が確立されると、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、リンクが確立されている1つ目のSTA機能を用いて、2つ目のSTA機能のアソシエーション処理と3つ目のSTA機能のアソシエーション処理とを実行する。つまり、リンクが確立されていないSTA機能のアソシエーション処理に、リンクが確立されているSTA機能が使用される。少なくとも2つのSTA機能のアソシエーション処理が完了すると、基地局10は、マルチリンクを確立し、ステップS14の処理を実行する。
【0061】
ステップS14の処理において、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、リンク管理情報121を更新する。尚、本例では2つのリンクが確立された後にステップS14の処理が実行されているが、リンク管理情報121は、リンク状態が更新する度に更新されてもよいし、マルチリンクが確立された際に更新されてもよい。マルチリンクが確立され、リンク管理情報が更新されると、基地局10は、ステップS15の処理を実行する。
【0062】
ステップS15の処理において、基地局10は、端末20にマルチリンク確立レスポンスを送信する。マルチリンク確立レスポンスは、基地局10が端末20からのマルチリンクリクエストに対する応答に使用する信号である。マルチリンクアソシエーションリクエストのFrame Controlフィールドは、例えば“00/0001(Type値/Subtype値)”を含んでいる。端末20のリンクマネジメント部LM2は、マルチリンク確立レスポンスを受信したことに基づいて、基地局10との間のマルチリンクが確立されたことを認識する。端末20は、マルチリンク確立レスポンスを受信すると、ステップS16の処理を実行する。
【0063】
ステップS16の処理において、端末20のリンクマネジメント部LM2は、リンク管理情報221を更新する。つまり、端末20は、基地局10とのマルチリンクが確立されたことを、リンク管理情報221に記録する。これにより、実施形態に係る無線システム1におけるマルチリンク処理が完了し、マルチリンクを用いたデータ通信が、基地局10と端末20との間において可能となる。
【0064】
尚、実施形態に係る無線システム1は、1つ目のSTA機能においてリンクを確立する際に、マルチリンクを確立してもよい。この場合、端末20が、ステップS12のマルチリンクアソシエーションリクエストの前に、マルチリンクに関するビーコン信号を基地局10から受信する。以下に、本動作について、
図11及び
図12を用いて説明する。
【0065】
図11は、実施形態に係る無線システム1の備える基地局10におけるビーコン信号の出力方法の一例を示している。本例では、リンク#1~#3のうちリンク#1がアンカーリンクに設定されている。
図11に示すように、基地局10は、アンカーリンクに設定されているリンク#1を用いて、ビーコン信号を間欠的に送信する。一方で、アンカーリンクに設定されていないリンク#2及び#3によるビーコン信号の送信が、省略されている。ビーコン信号は、アンカーリンクに設定されていないリンクを用いて送信されてもよく、少なくともアンカーリンクを用いて送信されていればよい。
【0066】
図12は、実施形態に係る無線システム1におけるマルチリンクケイパビリティ情報を含むビーコン信号の具体例を示している。
図12に示すように、ビーコン信号は、例えば、マルチリンクケイパビリティ情報と、リンク#1の運用情報と、リンク#2の運用情報と、リンク#3の運用情報とを含んでいる。これらの情報は、基地局10のリンクマネジメント部LM1によって生成される。
【0067】
マルチリンクケイパビリティ情報は、基地局10がマルチリンク可能であるかどうかを示している。例えば、マルチリンクケイパビリティ情報が“0”である場合、マルチリンクが不可能であることを示している。マルチリンクケイパビリティ情報が“1”である場合、マルチリンクが可能であることを示している。リンクの運用情報(オペレーショナルパラメータ)は、マルチリンクで使用され得るリンクにおけるデータ伝送等を行うためのパラメータを示している。例えば、リンク#1の運用情報は、当該リンクにおける送信制御を行うためのEDCA(Enhanced Distributed Channel Access)のアクセスパラメータ等を示している。
【0068】
端末20は、
図12を用いて説明されたビーコン信号を受信すると、当該ビーコン信号から、マルチリンクケイパビリティ情報や、マルチリンクの対象となる各リンクの運用情報を確認する。そして、端末20のリンクマネジメント部LM2が、マルチリンクアソシエーションリクエストの際に、マルチリンクの対象とするリンク等の情報を、基地局10のリンクマネジメント部LM1に通知する。これにより、基地局10のリンクマネジメント部LM1が、端末20のリンクマネジメント部LM2により指定された複数のリンクのアソシエーションを一括で実行し、端末20とのマルチリンクを確立することができる。
【0069】
尚、上述されたビーコン信号がアンカーリンクのみで送信される場合には、ビーコン信号がアンカーリンクを示すフィールドを有していなくてもよい。一方で、ビーコン信号がアンカーリンク及びその他のリンクで送信される場合には、ビーコン信号がアンカーリンクを示すフィールドや、その他のリンクを示すフィールドを有し得る。また、基地局10は、上述されたビーコン信号に含まれた情報を、プローブレスポンスに付加してもよい。この場合、端末20のリンクマネジメント部LM2は、ビーコン信号を受信することなく、使用するリンクを指定したマルチリンクアソシエーションリクエストを基地局10に送信することができる。また、基地局10及び端末20は、マルチリンクの確立の際に、認証プロセスを実行してもよい。
【0070】
<2-2>マルチリンク時のデータ転送
図13は、実施形態に係る無線システム1の備える基地局10におけるマルチリンク時のデータの送信方法の一例を示している。
図13に示すように、基地局10は、上位層からデータを取得すると、ステップS20~S22の処理を順に実行する。以下に、ステップS20~S22の処理について説明する。
【0071】
ステップS20の処理において、リンクマネジメント部LM1が、当該データに対応するTID情報を取得する。言い換えると、リンクマネジメント部LM1が、例えば、上位層から取得したデータに付加されたヘッダ等の制御情報を参照して、当該データとTIDとを対応づける。
【0072】
ステップS21の処理において、リンクマネジメント部LM1が、確認されたTID情報に対応するSTA機能を取得する。この際に、リンクマネジメント部LM1は、リンク管理情報121を参照することによって、TID情報とSTA機能との関連付けを確認する。尚、ステップS21の処理において、リンクマネジメント部LM1により取得されるSTA機能の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0073】
ステップS22の処理において、リンクマネジメント部LM1が、取得したSTA機能にデータを出力する。出力されるデータ(トラヒック)に1つのSTA機能が関連付けられている場合、当該データは1つのSTA機能を用いてシリアルに送信される。一方で、トラヒックに複数のSTA機能が関連付けられている場合、当該データは複数のSTA機能を用いてパラレルに送信される。
【0074】
尚、1つのトラヒックがパラレルに送信される場合、基地局10のリンクマネジメント部LM1と端末20のリンクマネジメント部LM2との間で、データの振り分けと並び替えが実行される。データの振り分けは、送信側のリンクマネジメント部LMによって実行され、データの並び替えは、受信側のリンクマネジメント部LMによって実行される。例えば、送信側のリンクマネジメント部LMは、無線フレームにマルチリンクであることを示すフラグと識別番号とを付加する。受信側のリンクマネジメント部LMは、付加されたフラグと識別番号とに基づいて、データの並び替えを実行する。
【0075】
また、実施形態に係る無線システム1において、リンクマネジメント部LMは、上位層から複数のデータを受信した場合に、受信した複数のデータを結合することによりアグリゲーションを実行してもよい。マルチリンクにおけるアグリゲーションは、ユーザによって実行の有無が選択可能なオプション機能として使用されてもよい。
【0076】
<2-3>アンカーリンク変更処理について
実施形態に係る無線システム1は、マルチリンク時に、所定の条件に基づいてアンカーリンクを変更することができる。以下では、無線システム1がアンカーリンクを変更させる処理のことを、“アンカーリンク変更処理”と呼ぶ。
【0077】
(アンカーリンク変更処理の実行条件について)
まず、アンカーリンク変更処理の実行条件の一例について説明する。
図14は、実施形態に係る無線システム1におけるアンカーリンク変更処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。基地局10のリンクマネジメント部LM1は、マルチリンク時に、
図14に示された処理を定期的に実行する。
【0078】
具体的には、基地局10の品質測定部124が、端末20の品質測定部224から、マルチリンクを確立している各リンクの通信品質測定結果を取得する(ステップS30)。そして、基地局10の品質測定部124が、受信した通信品質測定結果に基づいて、各リンクの通信品質を評価する(ステップS31)。それから、基地局10のリンクマネジメント部LM1が、アンカーリンクの通信品質が所定の条件を満たしているか否かを確認する(ステップS32)。
【0079】
アンカーリンクの通信品質が所定の条件を満たしている場合(ステップS32、YES)、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、アンカーリンクを変更することなく、当該処理を終了する。一方で、アンカーリンクの通信品質が所定の条件を満たしていない場合(ステップS32、NO)、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、その他のリンクの通信品質が所定の条件を満たしているか否かを確認する(ステップS33)。
【0080】
その他のリンクの通信品質が所定の条件を満たしていない場合(ステップS33、NO)、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、アンカーリンクを変更することなく、当該処理を終了する。一方で、その他のリンクの通信品質が所定の条件を満たしている場合(ステップS33、YES)、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、アンカーリンク変更処理を実行する(ステップS34)。基地局10のリンクマネジメント部LM1は、アンカーリンク変更処理によって、アンカーリンクをその他のリンクのいずれかに変更して、当該処理を完了する。
【0081】
各リンクの通信品質の評価基準としては、様々なパラメータが使用され得る。また、通信品質の測定方法としては、様々な方法が使用され得る。例えば、ステップS32及びS33の所定の条件としては、チャネル使用率や、ビーコン信号の受信成功率や、OBSS(Overlapping BSS)の干渉状況が使用される。ステップS32における所定の条件と、ステップS33における所定の条件とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0082】
所定の条件としてチャネル使用率が使用される場合、端末20のSTA機能が、キャリアセンス(IEEE802.11規格のCCA(Clear Channel Assessment))によって、各チャネルのビジー時間率を測定する。ビジー時間率は、受信電力がある閾値を超えている時間の割合に対応している。各チャネルのビジー時間率の測定結果は、品質測定部224に送信される。そして、基地局10の品質測定部124は、端末20に対して通信品質の測定及び通知を要求し、端末20の品質測定部224により測定されたビジー時間率を取得する。それから、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、アンカーリンクのチャネルのビジー時間率が所定の閾値を超えている場合に、アンカーリンク変更処理を実行する。当該アンカーリンク変更処理では、例えば、マルチリンクを確立している複数のチャネルのうち最もビジー時間率が小さいチャネルがアンカーリンクとして決定される。
【0083】
所定の条件としてビーコン信号の受信成功率が使用される場合、基地局10が、端末20に対して通信品質の測定及び通知を要求して、所定の期間において、マルチリンクを確立している複数のチャネルを用いてビーコン信号を送信する。そして、端末20の品質測定部224が、当該所定の期間で受信に成功したビーコン信号の数をチャネル毎に測定して、測定結果を基地局10に報告する。それから、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、送信したビーコン信号の数と端末20が受信に成功したビーコン信号の数との割合がある閾値を下回った場合に、アンカーリンク変更処理を実行する。当該アンカーリンク変更処理では、例えば、マルチリンクを確立している複数のチャネルのうち最もビーコン信号を多く受信したチャネルがアンカーリンクとして決定される。尚、ビーコン信号がアンカーリンクのみで送信される場合には、他のチャネルに通信品質測定用の信号が送信されてもよく、予め送信周期や送信数がわかっている既存の信号が利用されてもよい。
【0084】
所定の条件としてOBSSの干渉状況が使用される場合、基地局10の品質測定部124が、アンカーリンクにおけるOBSSの干渉が、その他のリンクにおけるOBSSの干渉よりも大きいか否かを確認する。言い換えると、品質測定部124が、アンカーリンクに対するOBSSのチャネル占有時間が、その他のリンクに対するOBSSのチャネル占有時間よりも大きいか否かを確認する。尚、干渉の評価には、チャネル占有時間以外が使用されてもよく、自らのBSSの信号のやりとり以外の期間においてチャネルをビジー状態とする要因が、少なくとも使用されていればよい。例えば、干渉の評価には、干渉電力の大小や、他の通信システムからの干渉や、雑音電力の存在等が使用されてもよい。
【0085】
尚、以上の説明では、所定の条件として一つのパラメータが使用される場合について例示したが、所定の条件として、複数のパラメータが使用されても良い。例えば、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、チャネル使用率と、ビーコン信号の受信成功率との両方を用いて、各リンクの通信品質を評価してもよい。例えば、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、ビーコン信号の受信成功率が所定の閾値を下回り、且つ他のリンクのOBSSのチャネル占有時間率の最大値が所定の閾値を下回った場合に、アンカーリンクを他のリンクのいずれかに変更するアンカーリンク変更処理を実行してもよい。
【0086】
(アンカーリンク変更処理の具体例について)
次に、アンカーリンク変更処理の具体例について、
図15を参照して説明する。
図15は、実施形態に係る無線システム1におけるアンカーリンク変更処理の具体例を示すフローチャートである。尚、本例のマルチリンクの初期状態は、
図9に示された状態に設定されている。“アンカー”は、アンカーリンクに設定されていることを示している。“ノーマル”は、アンカーリンクに設定されていないリンクであることを示している。以下では、アンカーリンクに設定されていないリンクのことを“ノーマルリンク”と呼ぶ。
【0087】
図15に示すように、リンク#1がアンカーリンクである場合、アクセスポイントAPは、リンク#1を用いてビーコン信号を送信し、端末20が、リンク#1に割り当てられたSTA機能を用いてビーコン信号を受信する。基地局10のリンクマネジメント部LM1は、定期的にマルチリンクの通信品質を確認するために、通信品質測定指示を端末20に送信する。通信品質測定指示は、例えばアンカーリンク(リンク#1)を用いて送信される。すると、端末20の品質測定部224は、通信品質測定指示を受信したことに基づいて、マルチリンクを構成する各リンクの通信品質を測定し、通信品質測定結果をアクセスポイントAPに送信する。
【0088】
アクセスポイントAPが通信品質測定結果を受信すると、本例では、基地局10のリンクマネジメント部LM1が、(1)アンカーリンクの品質が所定の条件を満たしていないことと、(2)その他のリンクの品質が所定の条件を満たしていることと、(3)リンクの品質がリンク#2>リンク#3であることを確認する。すると、基地局10のリンクマネジメント部LM1が、アンカーリンク変更指示を、アンカーリンク(リンク#1)を用いて端末20に送信する。
【0089】
端末20がアンカーリンク変更指示を受信すると、端末20のリンクマネジメント部LM2が、アンカーリンクの変更を許可できる場合に、アンカーリンクを介して肯定応答(“OK”)を端末20に送信する。一方で、端末20のリンクマネジメント部LM2は、アンカーリンクの変更を許可できない場合に、アンカーリンクを介して否定応答(“NG”)を基地局10に送信する(図示せず)。端末20のリンクマネジメント部LM2は、肯定応答をアクセスポイントAPに送信すると、当該マルチリンクのアンカーリンクをリンク#2に変更し、リンク#1をノーマルリンクに変更する。アクセスポイントAPは、アンカーリンク変更指示に対する肯定応答を端末20から受信すると、変更されたアンカーリンク(リンク#2)を用いてビーコン信号を送信する。
【0090】
尚、以上で説明されたアンカーリンク変更処理は、あくまで一例である。基地局10のリンクマネジメント部LM1は、マルチリンクを構成する各リンクの通信品質に基づいてアンカーリンク変更処理を実行し、現在のアンカーリンクよりも高い通信品質を有するリンクを、次のアンカーリンクとして設定していればよい。また、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、アンカーリンクの通信品質の状態に依らずに、アンカーリンクの通信品質が他のリンクの通信品質を下回ったことに基づいて、アンカーリンクを当該他のリンクに変更してもよい。“肯定応答”及び“否定応答”は、アンカーリンク以外のリンクを用いて送信されてもよい。
【0091】
(アンカーリンク変更処理で使用される無線フレームについて)
図16及び
図17は、実施形態に係る無線システム1のアンカーリンク変更処理において使用される無線フレームの具体例を示している。
図16は、アクセスポイントAPがアンカーリンクの変更を端末20に要求する場合に送信する無線フレームに対応している。
図17は、端末20がアンカーリンクの変更の要求に応答してアクセスポイントAPに返送する無線フレームに対応している。
【0092】
図16に示すように、アンカーリンクの変更を要求する無線フレームのFrame Bodyは、例えば端末識別子AID(Association Identifier)と、アンカーリンク変更リクエストと、アンカーリンクの変更先となる対象のリンクの識別子とを含んでいる。当該AIDに対応する端末20のリンクマネジメント部LM2は、“アンカーリンク変更リクエスト”に基づいて、“対象のリンクの識別子”を参照し、アンカーリンクの変更が可能であるか否かを判定する。
【0093】
アンカーリンクの変更が可能である場合に、アンカーリンク変更リクエストに対する肯定応答に対応する無線フレームのFrame Bodyは、
図17(a)に示すように“OK”を含んでいる。“OK”は、アンカーリンクの変更が可能であることを通知するビットに対応している。一方で、アンカーリンクの変更が不可能である場合に、アンカーリンク変更リクエストに対する否定応答に対応する無線フレームのFrame Bodyは、
図17(b)に示すように“NO”及び“Reason”を含んでいる。“NO”は、アンカーリンクの変更が不可能であることを通知するビットに対応している。“Reason”は、アンカーリンクの変更が不可能である理由を通知するビットに対応している。尚、アンカーリンク変更リクエストへの応答に対応する無線フレームにおける“Reason”は、省略されてもよい。
【0094】
<2-4>通信品質の取得方法について
次に、第1実施形態に係る無線システム1における通信品質測定結果の取得方法について説明する。マルチリンクを構成する各リンクの通信品質測定結果を基地局10が取得する動作としては、基地局10の主導で実行される場合と、端末20の主導で実行される場合との2種類が考えられる。この2種類の動作は、それぞれ定期的に実行されてもよいし、イベントドリブン型で実行されてもよい。以下に、通信品質測定結果の取得方法について、マルチリンクが
図9に示された状態に設定されている場合を例に説明する。
【0095】
(基地局10の主導で実行される場合)
図18及び
図19は、実施形態に係る無線システム1の備える基地局10による通信品質測定結果の取得方法の一例を示し、通信品質測定結果の取得が基地局10の主導で定期的に実行される場合に対応している。
【0096】
図18に示すように、基地局10は、リンク#1(アンカーリンク)、リンク#2、及びリンク#3を用いて、それぞれリンク#1の測定要求、リンク#2の測定要求、及びリンク#3の測定要求を端末20に送信する。すると、端末20が、各測定要求を受信したことに基づいて、各STA機能と品質測定部224とを用いて各リンクの通信品質を測定し、測定結果を基地局10に送信する。
【0097】
このように、本例では、基地局10が、端末20に対して通信品質の測定要求を、マルチリンクを構成する各リンクを用いて送信することによって、通信品質測定結果を取得している。これにより、基地局10は、リンク#1、リンク#2、及びリンク#3を介して、それぞれリンク#1の測定結果、リンク#2の測定結果、及びリンク#3の測定結果を端末20から受信することができる。
【0098】
尚、基地局10は、
図19に示すように、アンカーリンクのみを用いて、各リンクの通信品質の測定要求をまとめて端末20に送信してもよいし、各リンクの通信品質測定結果をまとめて端末20から受信してもよい。この場合、基地局10が、アンカーリンク(リンク#1)を用いて、リンク#1、リンク#2、及びリンク#3のそれぞれの測定要求を端末20に送信する。そして、端末20が、アンカーリンクを用いて、リンク#1、リンク#2、及びリンク#3のそれぞれの通信品質測定結果を基地局10に送信する。
【0099】
図20は、実施形態に係る無線システム1の備える基地局10による通信品質の取得方法の一例を示し、通信品質の取得が基地局10の主導且つイベントドリブン型で実行される場合に対応している。基地局10のリンクマネジメント部LM1は、マルチリンク時に、
図20に示された動作を逐次実行する。
【0100】
具体的には、基地局10の品質測定部124が、マルチリンクを構成する各リンクの通信品質を測定する(ステップS40)。そして、基地局10のリンクマネジメント部LM1が、各リンクの通信品質が所定の条件を満たしているか否かを確認する(ステップS41)。各リンクの通信品質が所定の条件を満たしている場合(ステップS41、YES)、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、当該動作を終了する。一方で、各リンクの通信品質が所定の条件を満たしていない場合(ステップS41、NO)、基地局10が端末20に対して通信品質の測定を要求する(ステップS42)。
【0101】
このように、基地局10は、自局が使用する各チャネルの品質を測定し、通信品質を評価するパラメータが所定の条件を満たした場合に、端末20に対して測定要求を送信してもよい。通信品質を評価するためのパラメータとしては、様々なパラメータが使用可能であり、例えばチャネル使用率が使用される。この場合、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、例えばアンカーリンクのチャネル使用率が所定の閾値を下回ったことに基づいて、端末20に対して測定要求を送信する。
【0102】
(端末20の主導で実行される場合)
図21及び
図22は、実施形態に係る無線システム1の備える端末20による通信品質の通知方法の一例を示し、通信品質の通知が端末20の主導で定期的に実行される場合に対応している。
【0103】
図21に示すように、端末20は、リンク#1(アンカーリンク)、リンク#2、及びリンク#3を用いて、それぞれリンク#1の通信品質、リンク#2の通信品質、及びリンク#3の通信品質測定結果を基地局10に通知する。すると、基地局10が、受信した各通信品質測定結果に基づいて、アンカーリンク変更処理を実行するか否かを判定する。
【0104】
このように、本例では、端末20が、各チャネルにおける通信品質を定期的に測定して、測定結果をマルチリンクを構成する各リンクを用いて基地局10に対して自発的に送信している。これにより、基地局10は、リンク#1、リンク#2、及びリンク#3を介して、それぞれリンク#1の測定結果、リンク#2の測定結果、及びリンク#3の測定結果を端末20から受信することができる。
【0105】
尚、端末20は、
図22に示すように、アンカーリンクのみを用いて、各リンクの通信品質の測定結果をまとめて基地局10に送信してもよい。この場合、端末20は、アンカーリンク(リンク#1)を用いて、リンク#1、リンク#2、及びリンク#3のそれぞれの通信品質測定結果を基地局10に送信する。
【0106】
図23は、実施形態に係る無線システム1の備える端末20による通信品質の通知方法の一例を示し、通信品質の通知が端末20の主導且つイベントドリブン型で実行される場合に対応している。端末20のリンクマネジメント部LM2は、マルチリンク時に、
図23に示された動作を逐次実行する。
【0107】
具体的には、端末20の品質測定部224が、マルチリンクを構成する各リンクの通信品質を測定する(ステップS50)。そして、端末20のリンクマネジメント部LM2が、各リンクの通信品質が所定の条件を満たしているか否かを確認する(ステップS51)。各リンクの通信品質が所定の条件を満たしている場合(ステップS51、YES)、端末20のリンクマネジメント部LM1は、当該動作を終了する。一方で、各リンクの通信品質が所定の条件を満たしていない場合(ステップS51、NO)、端末20が基地局10に対して通信品質測定結果を通知する(ステップS52)。
【0108】
このように、端末20は、マルチリンクを構成する各チャネルの通信品質を測定して、通信品質を評価するパラメータが所定の閾値を満たした場合に、通信品質測定結果を基地局10に通知してもよい。通信品質を評価するためのパラメータとしては、様々なパラメータが使用可能であり、例えばチャネル使用率が使用される。この場合、端末20のリンクマネジメント部LM2は、例えばアンカーリンクのチャネル使用率が所定の閾値を下回ったことに基づいて、基地局10に対して通信品質測定結果を通知する。
【0109】
<3>実施形態の効果
以上で説明された実施形態に係る無線システム1に依れば、マルチリンク時の通信安定性を向上させることができる。以下に、実施形態に係る無線システム1の効果の詳細について説明する。
【0110】
無線LANを使用する基地局及び端末は、例えば2.4GHz、5GHz、6GHzのように、使用する帯域毎に設けられた複数のSTA機能を備える場合がある。このような無線システムでは、例えば複数のSTA機能のうち一つのSTA機能を選択することにより無線接続が確立され、基地局及び端末間のデータ通信が行われる。このとき、無線システムでは、選択されていないSTA機能が、当該STA機能の帯域に対応する基地局が存在したとしても、使用されない状態になる。
【0111】
これに対して、実施形態に係る無線システム1は、基地局10及び端末20の各々が備える複数のSTA機能を活用して、基地局10及び端末20間のマルチリンクを確立する。マルチリンクによるデータ通信は、複数の帯域を併用することができ、無線LAN装置の備える機能を十分に活用することができる。その結果、実施形態に係る無線システム1は、効率的な通信を実現することができ、通信速度を向上させることができる。
【0112】
また、マルチリンクの運用方法としては、当該マルチリンクの制御に関連する情報を送受信に使用するアンカーリンクを設定することが考えられる。無線システム1は、アンカーリンクを設定することによって、基地局10のリンクマネジメント部LM1と端末20のリンクマネジメント部LM2とのコミュニケーションを簡便にすることができる。
【0113】
一方で、マルチリンクでは、マルチリンクを構成するリンク毎に通信安定性が異なる場合がある。例えば、OBSSによる干渉状況や、電波の強度は、使用している周波数帯に応じて変わり得る。このため、マルチリンクにアンカーリンクが設定された場合に、アンカーリンクの通信品質がその他のリンクの通信品質よりも低い場合が発生し得る。アンカーリンクは、マルチリンク全体の制御に使用されるため、その他のリンクよりも高い通信品質を有することが好ましい。
【0114】
そこで、実施形態に係る無線システム1は、マルチリンクで使用される各リンクの通信品質に応じて、アンカーリンクの設定を変更する。具体的には、端末20の品質測定部224が、マルチリンクを構成する各リンクの通信品質を測定し、測定結果を基地局10に通知する。そして、基地局10の品質測定部124が、受信した通信品質測定結果に基づいて、マルチリンクを構成する各リンクの通信品質を定期的に評価する。
【0115】
それから、品質測定部124が、例えば“アンカーリンクにおけるチャネル使用率>その他のリンクにおけるチャネル使用率”であることを検知すると、リンクマネジメント部LM1が、その他のリンクのうちアンカーリンクよりもチャネル利用率の低いリンクをアンカーリンクに設定する。このようにアンカーリンクの設定が変更されると、アンカーリンクにおけるチャネル利用率が低くなり、アンカーリンクの通信品質が向上する。
【0116】
以上のように、実施形態に係る無線システム1では、所定の条件に基づいてアンカーリンクが適宜変更されることによって、アンカーリンクの通信品質が高い状態に維持される。その結果、実施形態に係る無線システム1は、通信品質が低いリンクで制御情報が送信されることによるマルチリンク全体の通信品質の低下を抑制することが出来、マルチリンク時の通信安定性を向上させることができる。尚、アンカーリンクの役割は、上述したマルチリンクの制御に関連する情報の送受信に限定されない。アンカーリンクは、マルチリンク内の他のリンクとは異なる役割を担っていればよい。例えば、アンカーリンクが、各リンクにおけるトラヒック情報(アクセスポイントに蓄積されたデータの情報)の通知に使用されてもよい。アンカーリンクが、低遅延が要求されるトラヒックの送信に使用されてもよい。アンカーリンクが特定の通信装置と通信を行う場合に、アンカーリンクと他のリンクとの間でトラヒック量の重み付けが変更されてもよい。
【0117】
<4>実施形態の変形例
実施形態では、基地局10が1つの端末20とマルチリンクを確立している場合について例示したが、基地局10は複数の端末20とマルチリンクを確立してもよい。以下に、実施形態の変形例として、基地局10と複数の端末20とがマルチリンクを確立した場合の動作のバリエーションについて説明する。
【0118】
図24は、実施形態の変形例に係る無線システム1の全体構成の一例を示している。
図24に示すように、実施形態の変形例では、基地局10に、3つの端末20A、20B及び20Cが接続されている。そして、基地局10と端末20A、20B及び20Cのそれぞれとの間は、マルチリンクが確立されている。尚、基地局10に接続可能な端末20の数は、基地局10の性能に応じて設定され得る。基地局10に複数の端末20が接続される場合、基地局10は、マルチリンクとシングルリンクとを併用してもよい。
【0119】
図25は、実施形態の変形例に係る無線システム1で使用されるマルチリンクのリンクセットとアンカーリンクの設定との組み合わせを示している。“リンクセット”は、マルチリンクを構成している複数のリンクの組に対応している。基地局10と複数の端末20とのマルチリンクが確立される場合、マルチリンクのリンクセットとアンカーリンクの設定との組み合わせとしては、
図25に示された4種類の組み合わせが考えられる。
【0120】
第1の組み合わせは、マルチリンクのリンクセットとアンカーリンクの設定とが全ての端末20で共通である場合に対応している。第2の組み合わせは、マルチリンクのリンクセットが複数の端末20間で異なることが許容され、且つアンカーリンクの設定が全ての端末20で共通である場合に対応している。第3の組み合わせは、マルチリンクのリンクセットが全ての端末20で共通であり、且つアンカーリンクの設定が複数の端末20間で異なることが許容された場合に対応している。第4の組み合わせは、各端末20でマルチリンクのリンクセットが複数の端末20間で異なることと、アンカーリンクの設定が複数の端末20間で異なることとが許容された場合に対応している。
【0121】
以下では、第1~第4の組み合わせのことを、それぞれ実施形態の第1~第4変形例と呼ぶ。また、以下では、説明を簡略化するために、基地局10に対して2つの端末20A及び20Bが接続されている場合を例に説明する。
【0122】
<4-1>第1変形例
図26は、実施形態の第1変形例に係る無線システム1におけるリンク管理情報121の一例を示している。
図26に示すように、第1変形例における端末20A及び20Bのそれぞれのリンクセットは、
図9に示されたリンクセットと同様である。すなわち、端末20Aのリンクセットと端末20Bのリンクセットとの間は、マルチリンクを構成する複数のリンクの周波数帯及びチャネルの組み合わせが共通であり、且つアンカーリンクとして使用する周波数帯及びチャネルが共通である。尚、以下では、端末20AのSTA1、STA2及びSTA3に係るリンクのことを、それぞれ“リンク#1”、“リンク#2”及び“リンク#3”と呼ぶ。端末20BのSTA1、STA2及びSTA3に係るリンクのことを、それぞれ“リンク#4”、“リンク#5”、及び“リンク#6”と呼ぶ。本明細書では、端末20毎に同じTIDが使用される場合について例示しているが、端末20毎に異なるTIDが使用されてもよい。つまり、トラヒックとTIDとの対応付けは、端末20毎に任意に設定され得る。
【0123】
図27は、実施形態の第1変形例に係る無線システムにおけるアンカーリンク変更処理の具体例を示している。尚、
図27では、端末20Aのリンク#3と端末20Bのリンク#6との図示が省略されている。
図27に示すように、第1変形例において基地局10は、アンカーリンク(例えば端末20Aのリンク#1と端末20Bのリンク#4)のみを用いて、BSS(Basic Service Set)の制御情報を含むビーコン信号を送信する。
【0124】
例えば、端末20A及び20Bのそれぞれでアンカーリンク変更処理の実行条件が満たされた場合、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、アンカーリンク変更処理を端末20A及び20Bのそれぞれに対して順に実行する。具体的には、まず、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、アンカーリンク変更指示を端末20Aに送信して、端末20Aからの肯定応答に基づいてアンカーリンクをリンク#2に設定する。次に、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、アンカーリンク変更指示を端末20Bに送信して、端末20Bからの肯定応答に基づいてアンカーリンクをリンク#5に設定する。
【0125】
本例において、端末20Aのリンク#2と端末20Bのリンク#5とは、同じ周波数帯及びチャネルに設定されている。このように、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、各端末20に対するアンカーリンク変更処理によって、各端末20でアンカーリンクの周波数帯及びチャネルが共通になるように、アンカーリンクを変更する。マルチリンクが確立されている全ての端末20に対するアンカーリンク変更処理が完了すると、基地局10は、更新されたアンカーリンクのみを用いて、ビーコン信号を送信する。
【0126】
以上のように、実施形態の第1変形例に係る無線システム1は、アンカーリンクの通信品質に基づいて複数の端末20に対するアンカーリンク変更処理を実行する。これにより、実施形態の第1変形例に係る無線システム1は、実施形態と同様に、各端末20とのマルチリンクの通信安定性を向上させることができる。
【0127】
尚、基地局10に複数の端末20が接続されている場合、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、各端末20から取得したビジー時間率の平均値や最大値を用いて評価してもよい。この場合、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、例えば各端末20から取得したビジー時間率の平均値が所定の閾値を上回ったことに基づいて、アンカーリンク変更処理を実行する。また、基地局10がマルチリンクを確立している複数の端末20に対するアンカーリンク変更処理を並行して実行してもよい。
【0128】
<4-2>第2変形例
図28は、実施形態の第2変形例に係る無線システム1におけるリンク管理情報121の一例を示している。
図28に示すように、第2変形例において、端末20Aのリンクセットと端末20Bのリンクセットとの間は、アンカーリンクとして使用する周波数帯及びチャネルが共通であり、且つマルチリンクを構成する複数のリンクの組み合わせが異なっている。具体的には、端末20Aのリンクセットでは、STA2が5GHzのチャネルCH2に割り当てられ、STA3が2.4GHzのチャネルCH2に割り当てられている。一方で、端末20Bのリンクセットでは、STA2が5GHzのチャネルCH3に割り当てられ、STA3が2.4GHzのチャネルCH3に割り当てられている。端末20A及び20Bのそれぞれのリンクセットのその他の構成は、
図9に示されたリンクセットと同様である。
【0129】
実施形態の第1変形例に係る無線システム1では、例えば、基地局10のリンクマネジメント部LM1が、マルチリンクで使用されるアンカーリンクの周波数帯及びチャネルを固定する。本例を実施形態の第2変形例におけるマルチリンク処理の第1の例として、
図29を用いて説明する。
図29は、実施形態の第2変形例に係る無線システム1におけるマルチリンク処理の第1の例を示し、基地局10と端末20との間でマルチリンクを確立する前の動作に対応している。
【0130】
図29に示すように、端末20が、基地局10からアンカーリンクの設定を受信する(ステップS60)。そして、端末20のリンクマネジメント部LM2は、アンカーリンクとして指定されたチャネルが使用可能であるか否かを確認する(ステップS61)。アンカーリンクとして指定されたチャネルが使用可能でない場合(ステップS61、NO)、端末20のリンクマネジメント部LM2は、基地局10とのマルチリンクの確立を断念する。一方で、アンカーリンクとして指定されたチャネルが使用可能である場合(ステップS61、YES)、端末20のリンクマネジメント部LM2は、基地局10に対してマルチリンクの確立を要求する(ステップS62)。尚、ステップS62の処理は、例えば
図10のステップS12の処理に対応している。
【0131】
このように、実施形態の第2変形例におけるマルチリンク処理の第1の例では、端末20が指定された周波数帯及びチャネルが使用可能であるか否かによって、マルチリンクが使用できるか否かが決定される。これにより、実施形態の第2変形例におけるマルチリンク処理の第1の例は、マルチリンクの最低品質を保証することができる。
【0132】
一方で、実施形態の第2変形例に係る無線システム1は、複数の端末20間で最も通信品質が高いチャネルを最初のアンカーリンクに設定してもよい。本例を実施形態の第2変形例におけるマルチリンク処理の第2の例として、
図30を用いて説明する。
図30は、実施形態の第2変形例に係る無線システムにおけるマルチリンク処理の第2の例を示し、基地局10と複数の端末20との間でマルチリンクを確立する前の動作に対応している。
【0133】
図30に示すように、基地局10が、複数の端末20の通信品質を取得する(ステップS70)。そして、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、複数の端末20でマルチリンクに使用可能なチャネルが所定の通信品質を有しているか否かを確認する(ステップS71)。複数の端末20でマルチリンクに使用可能なチャネルが所定の通信品質を有していない場合(ステップS71、NO)、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、例えばプリセットされたアンカーリンクを最初のアンカーリンクとして設定する。一方で、複数の端末20でマルチリンクに使用可能なチャネルが所定の通信品質を有している場合(ステップS71、YES)、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、当該共通のチャネルをアンカーリンクとして設定する(ステップS72)。
【0134】
このように、実施形態の第2変形例におけるマルチリンク処理の第2の例では、基地局10が複数の端末20間で最適なアンカーリンクを設定する。これにより、実施形態の第2変形例におけるマルチリンク処理の第2の例は、BSS内の複数の端末20のそれぞれのマルチリンクの通信品質を向上させることができる。
【0135】
以上で説明された実施形態の第2変形例におけるマルチリンク処理の第1の例と第2の例とのいずれにおいても、アンカーリンクを除くその他のリンクの設定が端末20毎に異なっていてもよい。つまり、実施形態の第2変形例では、マルチリンクで使用される周波数帯及びチャネルの自由度が実施形態よりも高いため、端末20毎に最適なリンクセットが構成され得る。その結果、実施形態の第2変形例に係る無線システム1は、端末20毎のマルチリンクの通信品質を向上させることができる。
【0136】
<4-3>第3変形例
図31は、実施形態の第3変形例に係る無線システム1におけるリンク管理情報121の一例を示している。
図31に示すように、第3変形例において、端末20Aのリンクセットと、端末20Bのリンクセットとの間は、共通のリンクセットが使用され、且つアンカーリンクの設定が異なっている。具体的には、端末20Aのリンクセットでは、アンカーリンクが6GHzのチャネルCH1に割り当てられている。端末20Bのリンクセットでは、アンカーリンクが5GHzのチャネルCH2に割り当てられている。端末20A及び20Bのそれぞれのリンクセットのその他の構成は、
図9に示されたリンクセットと同様である。
【0137】
図32は、実施形態の第3変形例に係る無線システム1の備える基地局10におけるビーコン信号の出力方法の一例を示している。
図32に示すように、実施形態の第3変形例に係る無線システム1において、基地局10は、マルチリンクで使用している全てのSTA機能を用いて、ビーコン信号を送信する。これにより、基地局10とのマルチリンクを確立している各端末20が、アンカーリンクの周波数帯及びチャネルが端末20毎に異なっていたとしても、ビーコン信号を受信することができる。
【0138】
尚、実施形態の第3変形例において、基地局10は、少なくともアンカーリンクに設定されている周波数帯及びチャネルを用いてビーコン信号を送信していればよい。ビーコン信号は、アンカーリンク以外のリンクを用いて送信されてもよいし、送信されなくてもよい。例えば、
図32に示された一例では、基地局10のSTA3によるビーコン信号の送信が省略されても良い。実施形態の第3変形例における基地局10は、アンカーリンクとして使用されていないSTA機能を用いたビーコン信号の送信を省略することによって、消費電力を抑制することができる。
【0139】
<4-4>第4変形例
図33は、実施形態の第4変形例に係る無線システム1におけるリンク管理情報121の一例を示している。
図33に示すように、第4変形例において、端末20Aのリンクセットと、端末20Bのリンクセットとの間は、異なるリンクセットが使用され、且つアンカーリンクの設定が異なっている。具体的には、端末20Aのリンクセットでは、STA1が6GHzのチャネルCH1に割り当てられ、STA2が5GHzのチャネルCH2に割り当てられ、STA3が2.4GHzのチャネルCH2に割り当てられ、アンカーリンクがSTA1に設定されている。端末20Bのリンクセットでは、STA1が6GHzのチャネルCH2に割り当てられ、STA2が5GHzのチャネルCH3に割り当てられ、STA3が2.4GHzのチャネルCH3に割り当てられ、アンカーリンクがSTA1に設定されている。端末20A及び20Bのそれぞれのリンクセットのその他の構成は、
図9に示されたリンクセットと同様である。
【0140】
図34は、実施形態の第4変形例に係る無線システム1におけるアンカーリンク変更処理の一例を示している。
図34に示すように、基地局10が、各チャネルのチャネル使用率を測定する(ステップS80)。そして、基地局10のリンクマネジメント部LM1が、アンカーリンクのチャネル使用率が他のリンクのチャネル使用率よりも高いか否かを確認する(ステップS81)。アンカーリンクのチャネル使用率が他のリンクのチャネル使用率よりも低い場合(ステップS81、NO)、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、アンカーリンクの設定を維持する。一方で、アンカーリンクのチャネル使用率が他のリンクのチャネル使用率よりも高い場合(ステップS81、YES)、基地局10のリンクマネジメント部LM1は、当該他のリンクをアンカーリンクとして設定する(ステップS82)。
【0141】
以上のように、アンカーリンクは、基地局10による各リンクの通信品質の測定結果に基づいて変更されてもよい。また、実施形態の第4変形例に係る無線システム1では、例えば、アンカーリンクが通信のメインリンクとして使用され、他のリンクが補助リンクとして使用される。この場合、基地局10は、例えばチャネル使用率の低いチャネルをアンカーリンクとして、通常のデータのやりとりに使用する。そして、基地局10は、例えばトラヒックが増加してきた場合に、他のリンクを補助リンクとして使用し、アンカーリンクと補助リンクとを併用する。その結果、実施形態の第4変形例に係る無線システム1は、マルチリンクの通信効率を向上させることができる。
【0142】
<5>その他
上記実施形態において、各STA機能は、端末20の移動等によってリンクの維持ができない場合に、対応するリンクマネジメント部LMに通知してもよい。また、端末20のリンクマネジメント部LM2は、STA機能からの通知に基づいて、基地局10のリンクマネジメント部LM1との間でマルチリンクの状態を変更してもよい。具体的には、例えば端末20のリンクマネジメント部LM2と基地局10のリンクマネジメント部LM1は、マルチリンクで使用するSTA機能を適宜変更してもよい。マルチリンクの状態が変更された場合、リンクマネジメント部LM1及びLM2は、リンク管理情報121及び221をそれぞれ更新する。また、リンクマネジメント部LM1及びLM2は、リンク数の増減に応じて、トラヒックとSTA機能との関連付けを更新してもよい。
【0143】
実施形態に係る無線システム1の構成はあくまで一例であり、その他の構成であってもよい。例えば、基地局10及び端末20のそれぞれが3つのSTA機能(無線信号処理部)を備える場合について例示したが、これに限定されない。基地局10は、少なくとも2つの無線信号処理部を備えていればよい。同様に、端末20は、少なくとも2つの無線信号処理部を備えていればよい。また、各STA機能が処理することが可能なチャネルの数は、使用される周波数帯に応じて適宜設定され得る。無線通信モジュール14及び24のそれぞれは、複数の通信モジュールによって複数の周波数帯の無線通信に対応してもよいし、1つの通信モジュールによって複数の周波数帯の無線通信に対応してもよい。
【0144】
また、実施形態に係る無線システム1における基地局10及び端末20の機能構成は、あくまで一例である。基地局10及び端末20の機能構成は、各実施形態で説明された動作を実行することが可能であれば、その他の名称及びグループ分けであってもよい。
【0145】
また、実施形態に係る無線システム1において、基地局10及び端末20のそれぞれに含まれたCPUは、その他の回路であってもよい。例えば、CPUの替わりに、MPU(Micro Processing Unit)等が使用されてもよい。また、各実施形態において説明された処理のそれぞれは、専用のハードウェアによって実現されてもよい。各実施形態に係る無線システム1は、ソフトウェアにより実行される処理と、ハードウェアによって実行される処理とが混在していてもよいし、どちらか一方のみであってもよい。
【0146】
各実施形態において、動作の説明に用いたフローチャートは、あくまで一例である。実施形態で説明された各動作は、処理の順番が可能な範囲で入れ替えられてもよいし、その他の処理が追加されてもよい。また、上記実施形態で説明された無線フレームのフォーマットは、あくまで一例である。無線システム1は、各実施形態で説明された動作を実行することが可能であれば、その他の無線フレームのフォーマットを使用してもよい。
【0147】
なお、上記各実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下に限られるものではない。
【0148】
[付記1]
第1のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第1の無線信号処理部と、
上記第1のチャネルと異なる第2のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第2の無線信号処理部と、
上記第1の無線信号処理部と上記第2の無線信号処理部とを用いて端末とのマルチリンクを確立し、マルチリンクの動作に関する制御情報の送受信に使用するアンカーリンクを設定するリンクマネジメント部と、を備え、
上記リンクマネジメント部は、
アンカーリンクに設定された上記第1の無線信号処理部を用いて、アンカーリンクの変更を要求する第1の無線フレームを上記端末に送信し、
上記第1の無線フレームが送信された後に、上記第1の無線信号処理部と上記第2の無線信号処理部とのいずれかが上記端末からの肯定応答を受信すると、アンカーリンクを上記第1の無線信号処理部から上記第2の無線信号処理部に変更する、基地局。
【0149】
[付記2]
上記リンクマネジメント部は、上記端末から上記第1の無線信号処理部及び上記第2の無線信号処理部のそれぞれの通信品質測定結果を受信すると、
アンカーリンクに設定された上記第1の無線信号処理部の通信品質が第1の条件を満たし、且つ上記第2の無線信号処理部の通信品質が上記第1の無線信号処理部よりも高い場合に、上記第1の無線フレームを上記端末に送信する、
付記1に記載の基地局。
【0150】
[付記3]
上記第1の条件は、チャネル使用率が第1の閾値を下回ること、又は上記第1の無線信号処理部を介したビーコン信号の上記端末による受信成功率が第2の閾値を下回ることである、
付記2に記載の基地局。
【0151】
[付記4]
上記リンクマネジメント部は、上記第1の無線信号処理部と上記第2の無線信号処理部との少なくとも一つを用いて、上記第1の無線信号処理部及び上記第2の無線信号処理部のそれぞれの通信品質の測定及び通知を上記端末に定期的に指示する、
付記1乃至付記3の何れか一項に記載の基地局。
【0152】
[付記5]
上記リンクマネジメント部は、上記第1の無線信号処理部の通信品質が第2の条件を満たした場合に、上記第1の無線信号処理部と上記第2の無線信号処理部との少なくとも一つを用いて、上記第1の無線信号処理部及び上記第2の無線信号処理部のそれぞれの通信品質の測定及び通知を上記端末に指示する、
付記1乃至付記3の何れか一項に記載の基地局。
【0153】
[付記6]
上記第2の条件は、上記第1の無線信号処理部のチャネル使用率が第3の閾値を下回ることである、
付記5に記載の基地局。
【0154】
[付記7]
第1のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第1の無線信号処理部と、
上記第1のチャネルと異なる第2のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第2の無線信号処理部と、
上記第1の無線信号処理部と上記第2の無線信号処理部とを用いて基地局とのマルチリンクを確立し、マルチリンクの動作に関する制御情報の送受信に使用するアンカーリンクを設定するリンクマネジメント部と、を備え、
アンカーリンクに設定された上記第1の無線信号処理部が、上記基地局からアンカーリンクの変更を要求する第1の無線フレームを受信すると、上記リンクマネジメント部が、上記第1の無線信号処理部及び上記第2の無線信号処理部のいずれかを用いてアンカーリンクの変更の可否を上記基地局に通知し、上記通知が肯定応答である場合に、アンカーリンクを上記第1の無線信号処理部から上記第2の無線信号処理部に変更する、端末。
【0155】
[付記8]
上記リンクマネジメント部は、上記基地局から上記第1の無線信号処理部及び上記第2の無線信号処理部のそれぞれの通信品質の測定及び通知の要求を受信すると、上記第1の無線信号処理部と上記第2の無線信号処理部とのそれぞれの通信品質を測定し、上記第1の無線信号処理部及び上記第2の無線信号処理部のそれぞれの通信品質の測定結果を上記基地局に送信する、
付記7に記載の端末。
【0156】
[付記9]
上記リンクマネジメント部は、上記第1の無線信号処理部と上記第2の無線信号処理部とのそれぞれの通信品質を定期的に測定し、上記第1の無線信号処理部及び上記第2の無線信号処理部のそれぞれの通信品質の測定結果を上記基地局に定期的に送信する、
付記7に記載の端末。
【0157】
[付記10]
上記リンクマネジメント部は、上記第1の無線信号処理部と上記第2の無線信号処理部とのそれぞれの通信品質を測定し、上記第1の無線信号処理部の通信品質が第1の条件を満たした場合に、上記第1の無線信号処理部と上記第2の無線信号処理部との少なくともいずれかを用いて、上記第1の無線信号処理部及び上記第2の無線信号処理部のそれぞれの通信品質の測定結果を上記基地局に送信する、
付記7に記載の端末。
【0158】
[付記11]
上記第1の条件は、上記第1の無線信号処理部のチャネル使用率が第1の閾値を下回ることである、
請求項10に記載の端末。
【0159】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は、適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0160】
1…無線システム
10…基地局
20…端末
30…サーバ
11,21…CPU
12,22…ROM
13,23…RAM
14,24…無線通信モジュール
15…有線通信モジュール
25…ディスプレイ
26…ストレージ
LM1,LM2…リンクマネジメント部
100,200…データ処理部
110,210…MACフレーム処理部
120,220…マネジメント部
121,221…リンク管理情報
122,222…アソシエーション処理部
123,223…認証処理部
124,224…品質測定部
125…データカテゴライズ部
126…送信キュー
127…CSMA/CA実行部
128…データ衝突管理部
130,140,150,230,240,250…無線信号処理部