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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025103858
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】工業炉
(51)【国際特許分類】
   F23C 7/02 20060101AFI20250702BHJP
   F23C 1/00 20060101ALI20250702BHJP
   F23C 99/00 20060101ALI20250702BHJP
   F23D 14/22 20060101ALI20250702BHJP
   F23K 5/00 20060101ALI20250702BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20250702BHJP
   F23C 5/08 20060101ALI20250702BHJP
【FI】
F23C7/02 302
F23C1/00 301
F23C99/00 309
F23D14/22 B
F23K5/00 301Z
F27D7/02 A
F23C5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221541
(22)【出願日】2023-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】592017002
【氏名又は名称】三建産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000116105
【氏名又は名称】ロザイ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】523126191
【氏名又は名称】佐藤 順一
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】園田 高久
(72)【発明者】
【氏名】岸村 司
(72)【発明者】
【氏名】三宅 智久
(72)【発明者】
【氏名】竹村 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 武
(72)【発明者】
【氏名】下栗 大右
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 順一
【テーマコード(参考)】
3K019
3K065
3K068
3K091
4K063
【Fターム(参考)】
3K019AA06
3K019BB02
3K065TA01
3K065TA04
3K065TB01
3K065TB02
3K065TD05
3K065TD09
3K068AA01
3K068AB04
3K091AA01
3K091BB07
3K091BB26
3K091CC06
3K091CC22
3K091CC23
3K091DD01
3K091EC02
3K091EC12
3K091FB12
3K091FB29
3K091FB32
3K091FB42
4K063AA08
4K063AA13
4K063BA02
4K063BA03
4K063CA02
4K063DA04
4K063DA08
4K063DA13
4K063DA34
(57)【要約】
【課題】特にコスト高になることなく、窒素酸化物の低減を図りつつアンモニアを効果的に燃焼させる工業炉を提供する。
【解決手段】炉壁101に設けられたバーナ10の中央に配置され燃焼空気を炉内に吐出させるエアノズル11と、アンモニアを炉内に吐出させるアンモニアノズル12が設けられた金属または非鉄金属の工業炉100であって、エアノズル11とアンモニアノズル12を炉の側壁101に、エアノズル11に対してアンモニアノズル12を、エアノズル11の鉛直下側に一定の距離をとって配置し、エアノズル11に対してアンモニアノズル12を前記一定の距離分、水平方向にした設けた場合よりも、窒素酸化物(NOX)の発生を抑えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉壁に設けられたバーナの中央に配置され燃焼空気を炉内に吐出させるエアノズルと、アンモニアを前記炉内に吐出させるアンモニアノズルが設けられた金属または非鉄金属の工業炉であって、
前記エアノズルと前記アンモニアノズルを前記炉の側壁に、前記エアノズルに対して前記アンモニアノズルを、前記エアノズルの鉛直下側に一定の距離をとって配置し、
前記エアノズルに対して前記アンモニアノズルを前記一定の距離分、水平方向にした設けた場合よりも、窒素酸化物(NOX)の発生を抑えたことを特徴とする工業炉。
【請求項2】
前記エアノズルの直径をDとし、前記エアノズルと前記アンモニアノズルの中心間の距離をLとした場合、L/Dの値が、1.50以上となるように前記エアノズルの位置に対して前記アンモニアノズルを配置したことを特徴とする請求項1に記載の工業炉。
【請求項3】
前記エアノズルの直径をDとし、前記エアノズルと前記アンモニアノズルの中心間の距離をLとした場合、L/Dの値が、2.00以上4.00以下となるように前記エアノズルの位置に対して前記アンモニアノズルを配置したことを特徴とする請求項1に記載の工業炉。
【請求項4】
前記アンモニアノズルから、アンモニアだけが吐出されることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の工業炉。
【請求項5】
前記アンモニアノズルから、アンモニアと化石燃料が混合されたものが吐出されることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の工業炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを燃料として燃焼させる工業炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化抑制の観点から、燃焼しても二酸化炭素を発生しないアンモニアが新たな燃料として注目を集めているが、アンモニアを化石燃料と混合したりアンモニアだけで燃焼させると窒素酸化物(NOX)の排出量が増大することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の燃焼装置は、石炭にアンモニアを加えて燃焼する場合の窒素酸化物増大の課題を解決するものである。
【0004】
アンモニアが新たな燃料として注目を集めているものの、これまでアンモニアを燃料として有効に使用する工業炉は存在せず、現状、研究開発段階にある。
それはすなわち、一般に、アンモニアの燃焼速度は天然ガスの25%程度で、燃焼させると窒素酸化物(NOX)の排出量が増大して規制値(180ppm、O2=11%換算)より高くなり、燃料として使えないことに起因する。
アンモニアを燃料とし、これまでの機器で燃焼させると、窒素酸化物(NOX)の排出量が規制値の3倍以上になることもある。また、脱炭素のきっかけとなる温暖化係数が二酸化炭素の250~300倍といわれる一酸化二窒素(N2O)を発生させることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7020759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに対して、本発明者らは、窒素酸化物(NOX)の排出量を少しでも抑えるため、燃焼空気を炉内に吐出させるエアノズルと、アンモニアを炉内に吐出させるアンモニアノズルの配置位置に着目して実験を行ったところ、エアノズルとアンモニアノズルを水平に配置したときより、エアノズルに対してその下側にアンモニアノズルを配置したときの方が、窒素酸化物(NOX)の排出量を抑えることができることがわかった。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、特にコスト高になることなく、簡易な方法で窒素酸化物の排出を抑制しつつアンモニアを効果的に燃焼させる工業炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、炉壁(101)に設けられたバーナ(10)の中央に配置され燃焼空気を炉内に吐出させるエアノズル(11)と、アンモニアを前記炉内に吐出させるアンモニアノズル(12)が設けられた金属または非鉄金属の工業炉(100)であって、
前記エアノズル(11)と前記アンモニアノズル(12)を前記炉の側壁(101)に、前記エアノズル(11)に対して前記アンモニアノズル(12)を、前記エアノズル(11)の鉛直下側に一定の距離をとって配置し、
前記エアノズル(11)に対して前記アンモニアノズル(12)を前記一定の距離分、水平方向にした設けた場合よりも、窒素酸化物(NOX)の発生を抑えたことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記エアノズル(11)の直径をDとし、前記エアノズル(11)と前記アンモニアノズル(12)の中心間の距離をLとした場合、L/Dの値が、1.50以上となるように前記エアノズル(11)の位置に対して前記アンモニアノズル(12)を配置したことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記エアノズル(11)の直径をDとし、前記エアノズル(11)と前記アンモニアノズル(12)の中心間の距離をLとした場合、L/Dの値が、2.00以上4.00以下となるように前記エアノズル(11)の位置に対して前記アンモニアノズル(12)を配置したことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記アンモニアノズル(12)から、アンモニアだけが吐出されることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記アンモニアノズル(12)から、アンモニアと化石燃料が混合されたものが吐出されることを特徴とする。
【0013】
なお、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0014】
本発明の工業炉によれば、エアノズルとアンモニアノズルが設けられた金属または非鉄金属の工業炉で、エアノズルに対してアンモニアノズルを、エアノズルの鉛直下側に一定の距離をとって配置し、エアノズルに対してアンモニアノズルを一定の距離分、水平方向にした設けた場合よりも、窒素酸化物(NOX)の発生を抑えたので、特にコスト高になることなく、簡易な方法で窒素酸化物の排出を抑制しつつアンモニアを効果的に燃焼させることができる。
エアノズルに対してアンモニアノズルを水平方向に設けるより、鉛直下側に設けた方が窒素酸化物(NOX)の発生を抑えることができることは、本発明者らの実験によって明らかになったものであり、アンモニアを吐出するアンモニアノズルについては従来から存するものであったが、窒素酸化物(NOX)の発生を抑えられるエアノズルとアンモニアノズルの配置があることは知られるものではなかった。
【0015】
より具体的には、エアノズルの直径をDとし、エアノズルとアンモニアノズルの中心間の距離をLとした場合、L/Dの値が、1.50以上となるようにエアノズルの位置に対してアンモニアノズルを配置することが求められる。L/Dの値が、1.50未満となると、窒素酸化物(NOX)の濃度が規制値(180ppm、O2=11%換算より)より高くなるからである。
【0016】
よって、L/Dの値が、2.00以上4.00以下となるようにエアノズルの位置に対してアンモニアノズルを配置することが好ましい。
なお、アンモニアノズルから、アンモニアだけが吐出されるものに限らず、アンモニアノズルから、アンモニアと化石燃料が混合されたものが吐出されるものであっても、窒素酸化物(NOX)の濃度を低減できる点において有効であることがわかった。
【0017】
これは、エアノズルから噴射される火炎は、浮力で上昇する流れとなり、火炎の下部ではエアーが大きく縦に渦を巻いた状態になっている。ここに、エアノズルの下側からアンモニアがアンモニアノズルから吐出されると、アンモニアの炉内滞留時間が長くなりその結果、窒素酸化物(NOX)が分解され、濃度が低くなるものであると考えられるからであり、このような着想に基づいてエアノズルに対するアンモニアノズルの配置を考慮するものは従来において一切存在するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る工業炉の要部を断面で示した横断面図である。
図2図1に示すA-A線断面図である。
図3図2に示すエアノズルとアンモニアノズルの位置関係を示す拡大正面図である。
図4】アンモニアノズルの位置を変えて炉内で発生する窒素酸化物(NOX)の濃度を検出するための工業炉を示す模式図である。
図5】エアノズルとアンモニアノズルの距離(L)をエアノズルの径(D)で割った値(L/D)と、炉内で発生する窒素酸化物(NOX)の主成分である一酸化窒素(NO)の濃度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態に係る工業炉100を説明する。ここでは、工業炉100として金属を加熱する金属加熱炉100を例にして説明する。
【0020】
本実施形態に係る金属加熱炉100は、図1に示すように、断面略矩形状(第1側壁101,第2側壁102,第3側壁103,第4側壁104,天井壁105,底壁106で構成されている)で、対向する第1側壁101と第2側壁102のうち、第1側壁101にバーナ10が備え付けられ、火炎Fが噴射される。これにより、炉内は1000℃を超える状態となっている。
【0021】
金属加熱炉100の第1側壁101に設けられたバーナ10の中央には、燃焼空気を炉内に吐出させるエアノズル11が設けられ、そのエアノズル11の鉛直下側となる底壁106側には、アンモニアを炉内に吐出させるアンモニアノズル12が設けられている。
【0022】
なお、本実施形態では、アンモニアノズル12からは100%、すなわちアンモニアだけが吐出されるものであるが、アンモニアに対して化石燃料を混合させた状態で吐出させることもできる。既存の化石燃料としては、天然ガスや、石油系ガス(プロパン/ブタン等)、石炭系ガス(高炉ガス)、都市ガスなどがあげられる。
【0023】
また、金属加熱炉100の第2側壁102の中央には排気ダクト110が設けられている。
【0024】
バーナ10において、燃焼空気は開閉弁(図示しない)を介してエアノズル11に供給され、アンモニアも開閉弁(図示しない)を介してアンモニアノズル13に供給されている。これら開閉弁は電磁弁,調整弁などどのような形態であってもよい。
【0025】
エアノズル11の位置に対するアンモニアノズル12の配置は、図3に示すように、エアノズル11の位置よりもアンモニアノズル12が鉛直方向の下側に位置し、エアノズル11の直径をDとし、エアノズル11とアンモニアノズル12の中心間の距離をLとした場合、L/Dの値が、1.50以上となるようにしている。
具体的には、L/Dの値が、2.00以上4.00以下であることがより好ましく、本実施形態では、L/Dの値を4.00としている。本実施形態では、エアノズル11の直径Dは、70.3mmであるので、L/Dの値が4.00の場合、エアノズル11とアンモニアノズル12の中心間の距離Lは、281.2mmとなる。
【0026】
L/Dの値は、図4に示す工業炉100を使用して実験を重ねることにより得られた、図5に示す、L/Dと炉内で発生する一酸化窒素(NO)の濃度との関係を示すグラフから導いたものである。ここでもエアノズル11の直径Dとして、70.3mmのものを使用した。
【0027】
図5のグラフにおいて、
黒丸●印は、アンモニアノズル12を天井壁105に設けた場合で、都市ガスに30%アンモニア(NH3)を混焼させたときの一酸化窒素(NO)の濃度,
白丸○印は、アンモニアノズル12を天井壁105に設けた場合で、100%アンモニアを専門燃焼させたときの一酸化窒素(NO)の濃度,
黒四角■印は、アンモニアノズル12を第1側壁101に水平に設けた場合で、都市ガスに30%アンモニア(NH3)を混焼させたときの一酸化窒素(NO)の濃度,
白四角□印は、アンモニアノズル12を第1側壁101に水平に設けた場合で、100%アンモニア(NH3)を専門燃焼させたときの一酸化窒素(NO)の濃度,
をそれぞれ示している。
【0028】
また、「under」とは、アンモニアノズル12を、第1側壁101の中央に設けられたエアノズル11の位置よりも下側に配置した場合を示し、「side」とは、アンモニアノズル12を、第1側壁101の中央に設けられたエアノズル11の位置よりも水平方向にずらして配置した場合を示し、「♯a」,「♯b」,「♯c」は、エアノズル11とアンモニアノズル12との距離を変えた場合を示し、L/Dの値は、エアノズル11とアンモニアノズル12の中心間の距離Lをエアノズル11の直径Dで割ったときの値である。また、「♯1」~「♯6」は、アンモニアノズル12を天井壁105に設けた場合で、エアノズル11からの距離を変えた場合を示し、L/Dの値は、エアノズル11の中心と、そのエアノズル11の中心を水平に延ばした線とアンモニアノズル12の中心を下方に延ばした線が交わる点との距離Lをエアノズル11の直径Dで割ったときの値である。
【0029】
(1) 「♯1」に位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=4.27)から、都市ガスに30%アンモニア(NH3)を混焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NO)の濃度は、490ppmであった。
(2) 「♯2」に位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=12.80)から、都市ガスに30%アンモニア(NH3)を混焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NO)の濃度は、245ppmであった。
(3) 「♯5」に位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=38.41)から、都市ガスに30%アンモニア(NH3)を混焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NO)の濃度は、170ppmであった。
(4) 「♯6」に位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=46.94)から、都市ガスに30%アンモニア(NH3)を混焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NO)の濃度は、134ppmであった。
(5) 「♯1」に位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=4.27)から、100%アンモニア(NH3)を専門燃焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NO)の濃度は、473ppmであった。
(6) 「♯6」に位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=46.94)から、100%アンモニア(NH3)を専門燃焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NO)の濃度は、316ppmであった。
【0030】
(7) 「♯a」sideに位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=1.92)から、都市ガスに30%アンモニア(NH3)を混焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NO)の濃度は、369.99ppmであった。
(8) 「♯b」sideに位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=4.02)から、都市ガスに30%アンモニア(NH3)を混焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NO)の濃度は、420.01ppmであった。
(9) 「♯c」sideに位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=5.16)から、都市ガスに30%アンモニア(NH3)を混焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NO)の濃度は、487.36ppmであった。
(10) 「♯b」underに位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=4.00)から、都市ガスに30%アンモニア(NH3)を混焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NO)の濃度は、194.7ppmであった。
(11) 「♯c」underに位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=2.00)から、都市ガスに30%アンモニア(NH3)を混焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NO)の濃度は、219.85ppmであった。
【0031】
(12) 「♯a」sideに位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=1.92)から、100%アンモニア(NH3)を専門燃焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NO)の濃度は、369.99ppmであった。
(13) 「♯b」sideに位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=4.02)から、100%アンモニア(NH3)を専門燃焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NOX)の濃度は、390.34ppmであった。
(14) 「♯c」sideに位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=5.16)から、100%アンモニア(NH3)を専門燃焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NO)の濃度は、543.74ppmであった。
(15) 「♯b」underに位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=4.00)から、100%アンモニア(NH3)を専門燃焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NO)の濃度は、170.84ppmであった。
(16) 「♯c」underに位置するアンモニアノズル12(この場合、L/D=2.00)から、100%アンモニア(NH3)を専門燃焼させたものを吐出した場合、一酸化窒素(NO)の濃度は、168.11ppmであった。
【0032】
これによると、上記(1)~(6)の結果から一酸化窒素(NO)の濃度は、エアノズル11から離れた方が低くなることがわかる。
また、上記(7)~(15)の結果から一酸化窒素(NO)の濃度は、エアノズル11に対してアンモニアノズル12を、side、すなわち横方向、水平に配置するより、エアノズル11に対してアンモニアノズル12を、under、すなわち鉛直下側に配置した方が低くなることがわかる。
特に、図5において、Xで示された領域、すなわち、L/Dの値が、2.00以上4.00以下となる領域では、エアノズル11に対してアンモニアノズル12を水平に配置するより、エアノズル11の鉛直下側に配置した方がかなり低くなることがわかる。これは、アンモニアと都市ガスの混焼であっても、アンモニアの専門燃焼であっても、エアノズル11に対してアンモニアノズル12を鉛直下側に配置することが一酸化窒素(NO)の発生を低減させる点において有効であることがわかった。
【0033】
これは、エアノズル11から噴射される火炎Fは、浮力で上昇する流れとなり、火炎Fの下部ではエアーが大きく縦に渦を巻いた状態、もしくは浮力で上昇する流れの下にできる縦や水平方向に流れる状態になっている。ここに、エアノズル11の下側からアンモニアがアンモニアノズル12もしくは「#5」、「#6」のアンモニアノズルから吐出されると、アンモニアの炉内滞留時間が長くなりその結果、一酸化窒素(NO)が分解され、濃度が低くなるものであると考えられる。また、窒素酸化物(NOx)としても、濃度が低い傾向を確認している。
【0034】
なお、エアノズル11に対してアンモニアノズル12を鉛直下側で、L/Dの値が、1.50未満の位置に配置すると、水平方向に設けた場合よりも、窒素酸化物(NOX)の濃度が低くなるが、規制値(180ppm、O2=11%換算より)より高くなるため、L/Dの値が、1.50以上であることが要求され、さらには、L/Dの値が、2.00以上4.00以下になる場合が好ましい。
【0035】
また、アンモニアノズル12は水平方向に延びるものであるが、その先端側が根本側を中心として上下方向あるいは左右方向に揺動する構成にしてもよい。
【0036】
このように構成された工業炉によれば、エアノズル11とアンモニアノズル12が設けられた金属または非鉄金属の工業炉100で、エアノズル11に対してアンモニアノズル12を、エアノズル11の鉛直下側に一定の距離をとって配置し、エアノズル11に対してアンモニアノズル12を一定の距離分、水平方向にした設けた場合よりも、窒素酸化物(NOX)の発生を抑えたので、特にコスト高になることなく、簡易な方法で窒素酸化物の排出を抑制しつつアンモニアを効果的に燃焼させることができる。
【0037】
本実施形態に係る工業炉100は、断面略矩形状であるが、断面略矩形状の炉に限らず、例えば、ドーム型で、平面視が円形のものであってもよい
また、金属加熱炉100に限らず、アルミニウムなどの非鉄金属を加熱する炉であってもよい。また、加熱炉に限定されるものではなく、熱処理炉,鍛造炉,溶解炉,取鍋予熱装置などの工業炉であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 バーナ
11 エアノズル
12 アンモニアノズル
100 金属加熱炉(工業炉)
101 第1側壁
102 第2側壁
103 第3側壁
104 第4側壁
105 天井壁
106 底壁
110 排気ダクト
F 火炎
図1
図2
図3
図4
図5