(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010395
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】建設資材製造方法、および、地盤固化方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20250109BHJP
C09K 17/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E02D3/12 102
C09K17/18 P
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024193179
(22)【出願日】2024-11-01
(62)【分割の表示】P 2020009404の分割
【原出願日】2020-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】程塚 保行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】渕山 美怜
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓
(57)【要約】
【課題】より強度を向上させた生物分解性の建設資材製造方法、および、地盤固化方法を提供する。
【解決手段】
生分解プラスチックPのペレットを粉末化し(S1)、粉末化した生分解プラスチックを、所定のメッシュ値のフィルタでフィルタリングし(S2)、混合対象土と、フィルタリングされた生分解プラスチックと、を混合した生分解プラスチック混合土を生成し(S3)、生分解プラスチックが融解する温度以上、生分解プラスチックが熱分解しない温度で、生分解プラスチック混合土を、フィルタのメッシュ値に応じた所定時間加熱し(S5)、加熱した生分解プラスチック混合土を、生分解プラスチックのガラス転移点以下まで冷却して固化する(S6)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解プラスチックのペレットを粉末化する粉末化ステップと、
前記粉末化した生分解プラスチックを、所定のメッシュ値のフィルタでフィルタリングするフィルタリングステップと、
混合対象土と、前記フィルタリングされた生分解プラスチックと、を混合した生分解プラスチック混合土を生成する混合ステップと、
前記生分解プラスチックが融解する温度以上、前記生分解プラスチックが熱分解しない温度で、前記生分解プラスチック混合土を、前記フィルタのメッシュ値に応じた所定時間加熱する加熱ステップと、
前記加熱した生分解プラスチック混合土を、前記生分解プラスチックのガラス転移点以下まで冷却して固化する固化ステップと、
を含むことを特徴とする建設資材製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の建設資材製造方法において、
前記フィルタリングステップは、前記粉末化した生分解プラスチックを、メッシュ値が異なる2種類のフィルタで所定の範囲の粒径に収まるようにフィルタリングすることを特徴とする建設資材製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建設資材製造方法において、
前記生分解プラスチックの割合が、前記混合対象土より少ないことを特徴とする建設資材製造方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の建設資材製造方法において、
前記生分解プラスチックが、ポリ乳酸であることを特徴とする建設資材製造方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の建設資材製造方法において、
前記生分解プラスチックが、天然物利用系の高分子であることを特徴とする建設資材製造方法。
【請求項6】
生分解プラスチックのペレットを粉末化する粉末化ステップと、
前記粉末化した生分解プラスチックを、所定のメッシュ値のフィルタでフィルタリングするフィルタリングステップと、
混合対象土と、前記フィルタリングされた生分解プラスチックと、を混合した生分解プラスチック混合土を、地盤に敷設する敷設ステップと、
前記生分解プラスチックが融解する温度以上、前記生分解プラスチックが熱分解しない温度で、前記敷設された生分解プラスチック混合土を、前記フィルタのメッシュ値に応じた所定時間加熱する加熱ステップと、
前記加熱した生分解プラスチック混合土を、前記生分解プラスチックのガラス転移点以下まで冷却して固化する固化ステップと、
を含むことを特徴とする地盤固化方法。
【請求項7】
請求項6に記載の地盤固化方法において、
前記生分解プラスチック混合土が敷設された後に、振動により圧縮する圧縮ステップを更に含むことを特徴とする地盤固化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物分解性の建設資材製造方法、および、地盤固化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷軽減のため生分解性の材料が注目され、建設関連においても生分解性の材料の適用の研究がされている。例えば、特許文献1には、ポリビニルアルコール等の生分解性ポリマーと生分解性ポリマーの硬化剤とを対象地盤に注入する生分解性地盤改良材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、液体のポリビニルアルコールを硬化剤と共に注入しているため、地盤として十分な強度を得ることが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題点等に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、より強度を向上させた生物分解性の建設資材製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、生分解プラスチックのペレットを粉末化する粉末化ステップと、前記粉末化した生分解プラスチックを、所定のメッシュ値のフィルタでフィルタリングするフィルタリングステップと、混合対象土と、前記フィルタリングされた生分解プラスチックと、を混合した生分解プラスチック混合土を生成する混合ステップと、前記生分解プラスチックが融解する温度以上、前記生分解プラスチックが熱分解しない温度で、前記生分解プラスチック混合土を、前記フィルタのメッシュ値に応じた所定時間加熱する加熱ステップと、前記加熱した生分解プラスチック混合土を、前記生分解プラスチックのガラス転移点以下まで冷却して固化する固化ステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の建設資材製造方法において、前記フィルタリングステップは、前記粉末化した生分解プラスチックを、メッシュ値が異なる2種類のフィルタで所定の範囲の粒径に収まるようにフィルタリングすることを特徴とする建設資材製造方法。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の建設資材製造方法において、前記生分解プラスチックの割合が、前記混合対象土より少ないことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の建設資材製造方法において、前記生分解プラスチックが、ポリ乳酸であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の建設資材製造方法において、前記生分解プラスチックが、天然物利用系の高分子であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、生分解プラスチックのペレットを粉末化する粉末化ステップと、前記粉末化した生分解プラスチックを、所定のメッシュ値のフィルタでフィルタリングするフィルタリングステップと、混合対象土と、前記フィルタリングされた生分解プラスチックと、を混合した生分解プラスチック混合土を、地盤に敷設する敷設ステップと、前記生分解プラスチックが融解する温度以上、前記生分解プラスチックが熱分解しない温度で、前記敷設された生分解プラスチック混合土を、前記フィルタのメッシュ値に応じた所定時間加熱する加熱ステップと、前記加熱した生分解プラスチック混合土を、前記生分解プラスチックのガラス転移点以下まで冷却して固化する固化ステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の地盤固化方法において、前記生分解プラスチック混合土が敷設された後に、振動により圧縮する圧縮ステップを更に含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生分解プラスチックのペレットを粉末化し、粉末化した生分解プラスチックを、所定のメッシュ値のフィルタでフィルタリングし、、混合対象土と、フィルタリングされた生分解プラスチックと、を混合した生分解プラスチック混合土を生成し、生分解プラスチックが融解する温度以上、生分解プラスチックが熱分解しない温度で、生分解プラスチック混合土を、フィルタのメッシュ値に応じた所定時間加熱し、加熱した生分解プラスチック混合土を、生分解プラスチックのガラス転移点以下まで冷却して固化することにより、強度をより向上させた建設資材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る建設資材製造システムを模式的に示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る建設資材製造の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態に係る生分解プラスチックの粒径の一例を示すグラフである。
【
図4】実施形態に係る建設資材の強度と生分解プラスチックの粒径との関係の一例を示すグラフである。
【
図5】実施形態に係る建設資材の強度と生分解プラスチックの割合との関係の一例を示すグラフである。
【
図6】実施形態に係る建設資材の密度と生分解プラスチックの割合との関係の一例を示すグラフである。
【
図7】実施形態に係る建設資材の強度と加熱時間との関係の一例を示すグラフである。
【
図8】実施形態に係る建設資材の固化土を拡大した様子の一例を示す模式図である。
【
図9】実施形態に係る建設資材を適用した施工例の一例を示す模式図である。
【
図10】実施形態に係る建設資材を適用した施工例の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、建設資材等に対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0016】
[1.建設資材製造システムの構成および機能概要]
【0017】
まず、本発明の一実施形態に係る建設資材製造システムの構成および概要機能について、
図1を用いて説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る建設資材製造システムを模式的に示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る建設資材製造システム10は、生分解プラスチックのペレットを粉砕する粉砕機11と、所定の範囲の粒径の生分解プラスチックをフィルタリングする篩機12と、粉末化した生分解プラスチックと、砂や建設現場の土等の混合対象土とを混合して、生分解プラスチック混合土を作る混合機13と、生分解プラスチック混合土を加熱する加熱機14と、を備える。
【0020】
ここで、生分解プラスチックとして、例えば、化学合成系高分子であるポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等が挙げられる。また、生分解プラスチックとして、例えば、微生物産生系高分子であるポリエステル、セルロース、ポリアミノ酸等が挙げられる。また、生分解プラスチックとして、例えば、天然物(植物・動物)利用系高分子であるセルロース、デンプン、キチン・キトサン、コラーゲン等が挙げられる。
【0021】
さらに、生分解プラスチックとして、ガラス移転点が常温以上である物質が好ましい。例えば、融点170℃、ガラス転移点60℃程であるポリ乳酸(PLA :polylactic acid
)、融点166.3℃、ガラス転移点60℃程である結晶性ポリ乳酸(CPLA)、融点180℃、ガラス転移点60℃程であるポリ-L-乳酸(PLLA :poly-L-lactic acid)、融点2
30℃、ガラス転移点56~62℃であるステレオコンプレックス型ポリ乳酸(SC-PLA)、融点230℃程、ガラス転移点35~40℃であるポリグリコール酸等が挙げられる。なお、生分解プラスチックとして、融点が200℃以下で、ガラス転移点50℃以上のプラスチックがより好ましい。
【0022】
混合対象土は、川砂、海砂、山砂、再生砂、シルト、粘土、礫、山土、建設現場の土や、粒度分布が規格された珪砂等の砂でもよい。珪砂は、例えば、珪砂は、粒度分布の代表値(例えば、中央値、最頻値、平均値)が、850μmの珪砂、425μmの珪砂、300μmの公称目開きのふるいを用いて粒度区分された珪砂である。粒度分布の代表値として、最大粒径および最少粒径による範囲でもよい。
【0023】
粉砕機11は、例えば、ローラミル、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、回転ミル等である。粉砕機11は、ロールクラッシャー、カッターミル、コーンクラッシャー等でもよい。粉砕機11は、ペレット状の生分解プラスチックを、混ぜ合わせる土の最大粒径の大きさと同じかそれ以下の粒径にできる粉砕機ならばよい。
【0024】
篩機12は、例えば、振動篩機、ジャイロシフタ、スクエアシフタ等である。篩機12は、粉砕機11により粉砕された生分解プラスチックから、2種類のメッシュのフィルタにより所定の範囲の粒度分布を有する生分解プラスチックをフィルタリングできればよい。また、篩機12は、1種類のメッシュのフィルタにより所定のメッシュ値以下の粒度分布を有する生分解プラスチックを生成してもよい。
【0025】
混合機13は、例えば、V型混合機、W型混合機、リボン型混合機、縦型混合機等である。混合機13は、土と生分解性プラスチックが均一になるよう混ぜ合わせる。なお、混合機13は、スタビライザのように、所定の深さまで混合攪拌する機械でもよい。このような混合機13が、法面等に散布された生分解プラスチックと土とをかき混ぜてもよい。
【0026】
加熱機14は、例えば、ガス炉、電気炉等の炉である。加熱機14は、型枠に入れられた生分解プラスチック混合土を、炉等で加熱して、ブロック、スレート等の建設資材を製造する。加熱機14は、生分解プラスチックが融解する温度以上、生分解プラスチック混合土を所定時間、加熱する。
【0027】
また、加熱機14は、バーナーやロードヒータでもよい。加熱機14は、直接加熱の他に、マイクロ波加熱や高周波加熱などの誘電加熱、誘導加熱等の間接加熱でもよい。加熱機14により加熱しながら、ロードローラ、アスファルトフィニッシャ等の敷設機で、地ならししてもよい。
【0028】
[2.建設資材製造システムの動作例]
次に、建設資材製造システムの動作例について、図を用いて説明する。
【0029】
図2は、実施形態に係る建設資材製造の動作の一例を示すフローチャートである。
図3は、実施形態に係る生分解プラスチックの粒径の一例を示すグラフである。
【0030】
図2に示すように、建設資材製造システム10は、生分解性プラスチックを粉末化する(ステップS1)。具体的には、粉砕機11は、投入された生分解プラスチックを粉砕して、粉末化した生分解性プラスチックを生成する。粉砕機11は、混合対象土の粒径に対応した粒度分布を有する生分解性プラスチックの割合が多くなるまで、粉末化する。投入される生分解プラスチックは、ペレット状の生分解プラスチックでも、欠片状の再生品の生分解プラスチックでも、これらの混合物でもよい。
【0031】
図3に示すように、例えば、最大粒径が850μmで、最小粒径が100μmの粉砕された生分解性プラスチックが得られる。なお、
図3は、850μm、450μm、250μm、100μm、75μmのメッシュのフィルタにより、粉砕された生分解性プラスチックが通過した割合である。更に細かくするためには、粉砕機11の粉砕時間を長くしたり、粉砕機11の刃のピッチを変えたりする。
【0032】
なお、混合対象土の粒径に対応した粒度分布を有するとは、粒度分布の代表値が互いに近い場合でもよい。また、混合対象土の粒径に対応した粒度分布を有するとは、混合対象土の最大粒径の大きさと同じ、または、それ以下の粒径を有するでもよい。
【0033】
次に、建設資材製造システムは、粉末化された生分解性プラスチックをフィルタリングする(ステップS2)。具体的には、混合対象土が、平均粒径500μm程度の砂の場合は、最大粒径450μmになるように篩機12がフィルタリングを行う。なお、粒径を所定の範囲に収めたい場合、篩機12が、メッシュ値が異なる2種類のフィルタで所定範囲の粒径に収まる粉末化された生分解性プラスチックを生成する。
【0034】
なお、フィルタリング工程は、省略してもよい。例えば、粉末化工程の粉砕機11の性能や粉砕時間を調節して、混合対象土の粒径に対応した粒度分布が得られるようにすれば、フィルタリング工程は、省略してもよい。また、混合対象土の粒径に対応した粒度分布である所定の粒度分布を有する生分解性プラスチックを購入する場合、ステップS1およびステップS2の工程を省略してもよい。
【0035】
次に、建設資材製造システム10は、生分解性プラスチックと混合対象土との生分解プラスチック混合土の作製する(ステップS3)。具体的には、混合機13が、粉末化された生分解性プラスチックと混合対象土とをできるだけ均質になるようにかき混ぜる。なお、生分解性プラスチックの割合は、混合対象土の性質や状態、または、用途によって変える。なお、コストを下げるためには、生分解プラスチックの割合が、混合対象土より少ないことが好ましい。
【0036】
次に、建設資材製造システム10は、生分解プラスチック混合土を型枠に入れる、または、生分解プラスチック混合土を敷設する(ステップS4)。具体的には、建設資材であるブロックやスレートの形状の型枠に生分解プラスチック混合土が入れられて、ある程度、押して圧力を加え、空気を抜くことで、ある程度、密にされる。
【0037】
建設現場において、仮設道路、仮設クレーンの基礎、斜面の法面等の工事の場合、生分解プラスチック混合土が対象の場所に敷設される。振動ローラ圧縮機や、振動板圧縮機等により、空気を抜くことで、ある程度、密にされる。
【0038】
次に、建設資材製造システム10は、加熱処理を行う(ステップS5)。具体的には、加熱機14が、土に混合された生分解プラスチックの融点(溶解温度)以上に生分解プラスチック混合土を加熱する。生分解プラスチック混合土を炉である加熱機14に入れて、ヒータのスイッチを入れる。バーナー等である加熱機14により、敷設された生分解プラスチック混合土が炙られる。
【0039】
型枠の中心付近、または、敷設された生分解プラスチック混合土の奥まで、温度が上がるように、かつ、加熱機14側の表面の温度が、融点よりも高すぎないように、生分解プラスチックの融点より高く、生分解プラスチックが熱分解しない温度で、所定時間加熱する。
【0040】
次に、建設資材製造システム10は、冷却により、固化させる(ステップS6)。具体的には、加熱されて生分解プラスチックが溶解した生分解プラスチック混合土が、常温まで自然冷却で冷まされて、固化する。生分解プラスチック混合土が固化土に変わる。加熱した生分解プラスチック混合土が、生分解プラスチックのガラス転移点以下まで冷えて固化する。
【0041】
上記の工程により、円柱、立方体、直方体のようなブロックの建設資材、スレートの形状の建設資材等が製造される。生分解プラスチック混合土が敷設されて、加熱して冷却・固化により、法面、路面、敷地面等が補強される。
【0042】
(実験例)
次に、実験例について、図を用いて説明する。なお、実験用の混合対象土は、粒度分布の代表値が425~150μmの6号珪砂を用いて実験を行った。
【0043】
図4は、実施形態に係る建設資材の強度と生分解プラスチックの粒径との関係の一例を示すグラフである。
【0044】
図4に示すように、生分解プラスチックの最大粒径が、425μmおよび850μmに対して、混合割合、加熱温度および加熱時間は同じ条件で、それぞれ3回行った。ここで、横軸が、生分解プラスチックの最大粒径[mm]で、縦軸が、一軸圧縮強さ(qu)[MPa]である。また、型枠は円柱形である。
【0045】
図4に示すように、混合対象土の粒度分布の代表値が425μmに近い、最大粒径が425μmである生分解プラスチックを混合した方が、一軸圧縮強さが20MPa程の強度の強い建設資材が得られた。最大粒径が850μmである生分解プラスチックの場合でも、地盤改良で通常必要とされる強度の数MPaより高い、一軸圧縮強さが10~15MPa程の強度の建設資材が得られた。最大粒径が425μmである生分解プラスチックを混合した方が、最大粒径が850μmである生分解プラスチックに比べて、強度のばらつきが少なかった。
【0046】
図5は、実施形態に係る建設資材の強度と生分解プラスチックの割合との関係の一例を示すグラフである。
図6は、実施形態に係る建設資材の密度と生分解プラスチックの割合との関係の一例を示すグラフである。
【0047】
図5に示すように、生分解プラスチック(最大粒径が425μm)の添加率(生分解プラスチック混合土に対する生分解プラスチックの割合)が、10%、20%、30%に対して、加熱温度および加熱時間は同じ条件で、それぞれ3回行った。ここで、横軸が、生分解プラスチックの添加率で、縦軸が、一軸圧縮強さ(qu)[MPa]である。また、型枠は円柱形である。
【0048】
図5に示すように、生分解プラスチックの添加率に比例して、強度の強い建設資材が得られた。
【0049】
また、
図6に示すように、生分解プラスチックの添加率を変えても、ほぼ一定の密度の建設資材が得られた。密度が1.4g/cm
3軽量の建設資材が得られた。ここで、横軸が、生分解プラスチックの添加率で、縦軸が、密度[g/cm
3]である。
【0050】
図7は、実施形態に係る建設資材の強度と加熱時間との関係の一例を示すグラフである。
【0051】
図7に示すように、生分解プラスチック混合土の加熱時間に対して、生分解プラスチックの添加率、生分解プラスチックの最大粒径(例えば、850μm)および加熱温度は同じ条件で、それぞれ3回行った。ここで、横軸が、加熱時間で、縦軸が、一軸圧縮強さ(qu)[MPa]である。また、型枠は円柱形である。また、炉のスイッチを入れてからt0ほどで炉内温度が安定し、その後、t1、t2、t3の3パターンで加熱時間の比較を行った。その結果、
図7に示すように、t3のように加熱時間が長いと、強度が低下する傾向が得られた。
【0052】
以上説明したように、実施形態に係る建設資材製造方法によれば、混合対象土と、当該混合対象土の粒径に対応した粒度分布を有する生分解プラスチックと、を混合した生分解プラスチック混合土を、生分解プラスチックが融解する温度以上、生分解プラスチック混合土を所定時間加熱して、生分解プラスチックのガラス転移点以下まで冷却して固化することにより、強度をより向上させた建設資材を製造することができる。
【0053】
また、
図8に示すように、砂粒S同士が、ガラス化した生分解プラスチックPにより、互いに接着している。生分解プラスチックPが微生物により分解されることにより、砂粒S同士が離れ、建設資材が土に戻る。また、
図8に示すように、間隙があるため、透水性の建設資材になる。ガラス化した生分解プラスチックPにより、編み目状に砂粒S同士が結合しているため、軽い割に、強度がある建設資材となる。なお、
図8は、顕微鏡写真から模式的に作成した図である。
【0054】
また、従来の地盤に注入する地盤改良では強度が十分でないこと固結強度のばらつきが大きいことから仮設クレーンの基礎などの強度を要する仮設地盤への適用は困難であったが、本件の地盤改良技術は、生分解プラスチックを粉末して融解して固化することによりコンクリートと同程度の強度で且つその強度のばらつきが小さい地盤を製作できるため、強度が求められる仮設地盤に適用できる。
【0055】
従来のセメントなどで改良した仮設材よりも軽く且つ同等の強度を有するとともに、施工後の撤去が不要であるためコスト削減になり、六価クロムなどの有害物質を拡散させることもない環境負荷の小さい仮設材として利用できる。
【0056】
生分解プラスチック混合土全体を生分解性プラスチックの溶解温度で、比較的短時間、加熱することで、高強度で軽量な分解性プラスチック固化土が製作できる。
【0057】
また、生分解プラスチックの割合が、混合対象土より少ない場合、生分解プラスチックが少ない量で済むので、コストが安くなる。
【0058】
また、生分解プラスチックの融点が200℃以下で、ガラス転移点50℃以上の生分解プラスチックである場合、ガラス転移点が室温(25℃)以上であるので、ガラス転移点が-15℃~-37℃であるアスファルトに比べて、室温において、強度を保つことができる。特に、ガラス転移点50℃以上の生分解プラスチックの場合、40℃の夏の気温でも、軟化点が47℃~55℃のアスファルトと比べても、十分強度を保持することができる。また、融点が200℃以下である生分解プラスチックの場合、加熱機14の温度を、200℃より高温にしなくても、融解させることができるので、製造や施工しやすくなる。
【0059】
また、混合対象土の粒度分布の代表値と、生分解プラスチックの粒度分布の代表値とが対応している場合、粒度分布の代表値が近い混合対象土と生分解性プラスチックとであると、混合がしやすくなる。混合対象土の最大粒径以下に生分解性プラスチックを粉末化することで均一に混ぜ合わせやすくなる。
【0060】
また、固化土は、加熱時間や生分解性プラスチックの粒径により強度が変わるため、それらを調整することで必要な強度の固化土を製作できる。また、地盤改良で通常必要とされる強度が数MPaであるのに対し、生分解性プラスチックを用いて20MPaの高強度であり、且つ1.4g/cm3の軽量な建設資材、仮設地盤、仮設土構造物として利用できる。
【0061】
また、加熱ステップ前に、生分解プラスチック混合土を型枠に入れて圧縮する場合、より強度な建設資材、仮設地盤、仮設土構造物等が得られる。
【0062】
混合対象土と、当該混合対象土の粒径に対応した粒度分布を有する生分解プラスチックと、を混合した生分解プラスチック混合土であって、生分解プラスチックの割合が、混合対象土より少ない生分解プラスチック混合土を使用して、容易に路面、法面や地盤等に敷設して、加熱処理をして冷やし固めることで、生分解を有し、強度をより向上させた路面、法面、地盤等の補強の施工ができる。この生分解プラスチック混合土を型枠に入れて、加熱処理をして冷やし固めることで、生分解を有し、強度をより向上させた建設資材を製造することができる。また、生分解プラスチックが少ない量で済むので、コストが安くなる。
【0063】
実施形態に係る地盤固化方法によれば、混合対象土と、当該混合対象土の粒径に対応した粒度分布を有する生分解プラスチックと、を混合した生分解プラスチック混合土を、地盤に敷設し、生分解プラスチックが融解する温度以上、敷設された生分解プラスチック混合土を所定時間加熱し、加熱した生分解プラスチック混合土を、生分解プラスチックのガラス転移点以下まで冷却して固化することにより、強度をより向上させて地盤を固化することができる。特に、傾斜がある法面でも、生分解を有し、強度をより向上させた法面の保護の施工ができる。
【0064】
[3.建設資材の施工例]
次に、建設資材の施工例について図を用いて説明する。
【0065】
図9および
図10は、実施形態に係る建設資材を適用した施工例の一例を示す模式図である。
【0066】
図9に示すように、法面の保護工材として適用してもよい。盛土eに、生分解性プラスチック混合土を敷設して、加熱して冷却することにより、斜面や法面の保護材sとなる。生分解プラスチックが徐々に分解することにより、法面植栽工や緑化基礎工の際に使用することもできる。
【0067】
図10に示すように、プレキャスト部材Bからなる土構造物として利用してもよい。ブロック状に成型した生分解性プラスチック混合土から製造されたプレキャスト部材Bを積み上げて、土構造物を作製する。強度に応じて盛土や土留め壁及びインターロッキングブロック(透水性舗装材)などに用いてもよい。
【0068】
また、生分解プラスチック混合土を粒状に成型にして、加熱融解して、冷却固化させてもよい。粒状に成型した生分解性プラスチック固化土を、泥や多量の水を含んだ軟弱地盤に単に敷くことで、地盤のぬかるみを軽減させる軟弱地盤覆工材として、砂利材の代わりに用いてもよい。この場合、粒状の生分解性プラスチック固化土が時間経過による生分解性され、砂利が残らず土に戻すことができる。
【0069】
また、生分解性プラスチック固化土が、土工事の仮設地盤として用いてられてもよい。アスファルトフィニッシャ等の敷設機を用いて生分解プラスチック混合土を敷設し、加熱機14により加熱融解して、冷却固化することで、生分解性プラスチック固化土の仮設地盤が形成される。工事進入道路、仮設用道路、軟弱地盤覆工、作業場養生などで使用される敷鉄板や透水性舗装材の代わりに用いることができる。また、スレート状の生分解性プラスチック固化土を仮設地盤として敷いてもよい。
【0070】
さらに、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。上記各実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0071】
10:建設資材製造システム
P:生分解プラスチック
S:砂粒(混合対象土)
s:保護材
B:プレキャスト部材(建設資材)