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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104508
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/535 20060101AFI20250703BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20250703BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20250703BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20250703BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20250703BHJP
   A61F 13/536 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
A61F13/535 100
A61F13/53 300
A61F13/511 200
A61F13/53 100
A61F13/539
A61F13/56 110
A61F13/536
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222358
(22)【出願日】2023-12-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 遥菜
(72)【発明者】
【氏名】石川 青
(72)【発明者】
【氏名】宇田 匡志
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA02
3B200BA04
3B200BB01
3B200DA06
3B200DA11
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB14
3B200DB20
3B200DC02
3B200DE02
3B200DE03
3B200DE06
3B200DE09
3B200DF08
(57)【要約】
【課題】吸収性物品の長手方向又は幅方向の一方側部における排泄物の拡散を抑制し、吸収性物品の長手方向又は幅方向の一方側の端より外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させる吸収性物品を提供する。
【解決手段】互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、粉砕された繊維を有する吸収性コア(11)を備えた吸収性物品(1)であって、粉砕された繊維には、広葉樹からなる広葉樹繊維が含まれており、吸収性コア(11)には、排泄物の拡散を促す油剤(Y)が設けられており、長手方向又は幅方向のいずれかの方向において、吸収性コア(11)を3等分したときに、一方側から順に一方側部、中央部、他方側部を有し、中央部に設けられた油剤(Y)の坪量が、一方側部に設けられた油剤の坪量より高い、ことを特徴とする吸収性物品である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、
粉砕された繊維を有する吸収性コアを備えた吸収性物品であって、
前記粉砕された繊維には、広葉樹からなる広葉樹繊維が含まれており、
前記吸収性コアには、排泄物の拡散を促す油剤が設けられており、
前記長手方向又は前記幅方向のいずれかの方向において、
前記吸収性コアを3等分したときに、一方側から順に一方側部、中央部、他方側部を有し、
前記中央部に設けられた前記油剤の坪量が、前記一方側部に設けられた前記油剤の坪量より高い、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記粉砕された繊維には、針葉樹からなる針葉樹繊維も含まれており、
前記広葉樹繊維の総重量が、前記針葉樹繊維の総重量より多いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
着用者の肌に当接可能な表面シートを有し、
前記表面シートにも、前記油剤が設けられており、
前記厚さ方向に見て、前記表面シートのうち、前記中央部と重なる部分に設けられた前記油剤の坪量が、前記一方側部と重なる部分に設けられた前記油剤の坪量より高いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記油剤は、両親媒性の物質であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアより肌側にコアラップシートを有し、
前記吸収性コアの肌側面と前記コアラップシートの非肌側面との間に接着剤が設けられていないことを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアより非肌側にコアラップシートを有し、
前記吸収性コアの非肌側面と前記コアラップシートの肌側面との間に接着剤が設けられていないことを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性物品の非肌側面に、後処理タブ又は後処理テープを有し、
前記厚さ方向に見て、前記油剤が、前記後処理タブ又は後処理テープと重ならないことを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性物品の最も非肌側に、非肌側シートを有し、
前記非肌側シートの非肌側面には、粘着部を備え、
前記厚さ方向に見て、前記油剤が設けられた部分と前記粘着部とが重なる重なり領域と、前記油剤が設けられていない部分と前記粘着部とが重なる非重なり領域とを有し、
前記重なり領域における前記粘着部の粘着強度が、前記非重なり領域における前記粘着部の粘着強度よりも低いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、前記吸収性コアの肌側にコアラップシートを有し、
前記コアラップシートの繊維の平均繊維長が、前記吸収性コアの前記粉砕された繊維の平均繊維長以上であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記長手方向及び前記幅方向において、前記中央部に設けられた前記油剤の坪量が前記一方側部に設けられた前記油剤の坪量より高いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項10に記載の吸収性物品であって、
前記一方側部の外端部には、前記油剤が設けられていないことを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
着用者の肌に当接可能な表面シートを有し、
前記表面シートにも、前記油剤が設けられており、
前記表面シートの前記幅方向の長さは、前記吸収性コアの前記幅方向の長さより長く、
前記吸収性コアは、前記油剤が設けられたコア油剤存在領域と、前記油剤が設けられていないコア油剤非存在領域を有し、
前記表面シートは、前記油剤が設けられた表面油剤存在領域と、前記油剤が設けられていない表面油剤非存在領域と有し、
前記厚さ方向において、
前記コア油剤存在領域と前記表面油剤存在領域とが重なる第1領域と、
前記コア油剤非存在領域と前記表面油剤存在領域とが重なる第2領域と、
前記表面油剤非存在領域と前記吸収性コアとが重ならない第3領域と、を有し、
前記第1領域、前記第2領域、及び前記第3領域は、前記幅方向の内側から外側に、前記第1領域、前記第2領域、前記第3領域の順に設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項13】
請求項12に記載の吸収性物品であって、
前記コア油剤存在領域は、前記第1領域に、周囲よりも前記油剤の坪量が高いコア油剤濃領域を有し、
前記表面油剤存在領域は、前記第1領域に、周囲よりも前記油剤の坪量が低い表面油剤薄領域を有し、
前記厚さ方向に見て、前記第1領域の前記幅方向の中央部且つ前記長手方向の中央部に、前記コア油剤濃領域と前記表面油剤薄領域とが重なる部分を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
着用者の肌に当接可能な表面シートを有し、
前記表面シートにも、前記油剤が設けられており、
前記表面シートの前記幅方向の長さは、前記吸収性コアの前記幅方向の長さより長く、
前記吸収性コアより前記幅方向の外側に、前記油剤が設けられていないことを特徴とする吸収性物品。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアを厚さ方向に圧搾した圧搾部を有し、
前記圧搾部は、前記吸収性物品の前記長手方向の中央より後側に後側圧搾部を備え、
前記油剤の後端が、前記後側圧搾部の前端より前側に設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項16】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアの前記厚さ方向における中央より肌側に設けられた前記油剤の単位体積当たりの重量が、前記吸収性コアの前記厚さ方向における中央より非肌側に設けられた前記油剤の単位体積当たりの重量より重いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項17】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記幅方向に沿った折り部を有し、
前記長手方向において、前記油剤が前記折り部を跨いで設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
排泄物を吸収する生理用ナプキン等の吸収性物品が知られている。着用時において、経血等の排泄物が排出された場合に、吸収性物品が素早く排泄物を吸収することが好ましい。例えば、特許文献1には、着用者の肌に当接するトップシートと、トップシートより非肌側に吸収体を備えた生理用ナプキンであり、着用時における粘度の高い経血等の排泄物の吸収を促すために、トップシートに血液滑性付与剤を設けることで、排泄された排泄物をトップシートから吸収体に移行させやすくして、トップシートの肌側面のべたつき感を感じにくくさせる生理用ナプキンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2013-179982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の生理用ナプキンは、排泄物の吸収を促す一方で、生理用ナプキンにおいて過度に排泄物の拡散を促してしまい、生理用ナプキンから排泄物が漏れてしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、吸収性物品の長手方向又は幅方向の一方側部における排泄物の拡散を抑制し、吸収性物品の長手方向又は幅方向の一方側の端より外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させた吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、粉砕された繊維を有する吸収性コアを備えた吸収性物品であって、前記粉砕された繊維には、広葉樹からなる広葉樹繊維が含まれており、前記吸収性コアには、排泄物の拡散を促す油剤が設けられており、前記長手方向又は前記幅方向のいずれかの方向において、前記吸収性コアを3等分したときに、一方側から順に一方側部、中央部、他方側部を有し、前記中央部に設けられた前記油剤の坪量が、前記一方側部に設けられた前記油剤の坪量より高い、ことを特徴とする吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸収性物品の長手方向又は幅方向の一方側部における排泄物の拡散を抑制し、吸収性物品の長手方向又は幅方向の一方側の端より外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ナプキン1を肌側から見た平面図である。
図2】ナプキン1を非肌側から見た平面図である。
図3図1中のA―A矢視概略断面図である。
図4図4Aは、吸収性コア11の平面図である。図4Bは、図4A中のJ―J矢視概略断面図である。
図5図4A中のK―K矢視断面の拡大模式図である。
図6図3中の吸収体10の拡大図である。
図7】吸収体10を肌側から見た平面図である。
図8】油剤Yを設けた領域を説明する平面模式図である。
図9】油剤Yを設けた領域を説明する断面模式図である。
図10】ナプキン100を非肌側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、粉砕された繊維を有する吸収性コアを備えた吸収性物品であって、前記粉砕された繊維には、広葉樹からなる広葉樹繊維が含まれており、前記吸収性コアには、排泄物の拡散を促す油剤が設けられており、前記長手方向又は前記幅方向のいずれかの方向において、前記吸収性コアを3等分したときに、一方側から順に一方側部、中央部、他方側部を有し、前記中央部に設けられた前記油剤の坪量が、前記一方側部に設けられた前記油剤の坪量より高い、ことを特徴とする吸収性物品である。
【0010】
態様1によれば、長手方向又は幅方向のいずれかの方向において、中央部に設ける油剤の坪量を一方側部に設ける油剤の坪量より高くすることで、油剤により吸収性コアの中央部における拡散を促しやすくなる。一方、吸収性コアの一方側部においては、吸収性コアが広葉樹繊維を含みつつ、吸収性コアにおける一方側部に設ける油剤の坪量を中央部に設ける油剤の坪量より低くすることで、吸収性コア及び吸収性物品の長手方向又は幅方向の一方側部における排泄物の拡散を抑制し、吸収性物品の長手方向又は幅方向の一方側の端より外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。また、着用時において、着用者が、吸収性コアの中央部で排泄物が拡散しやすく、長手方向又は幅方向の一方側部における拡散しづらい様子を視認することで、吸収性物品から排泄物が漏れるかもしれないという着用者の懸念を軽減させやすくなる。
【0011】
(態様2)
前記粉砕された繊維には、針葉樹からなる針葉樹繊維も含まれており、前記広葉樹繊維の総重量が、前記針葉樹繊維の総重量より多いことを特徴とする態様1の吸収性物品である。
【0012】
態様2によれば、吸収性コアが、平均繊維長が短い広葉樹繊維を多く含むことで、油剤により吸収性コアの中央部における吸収を促しやすくしつつ、吸収性コアの長手方向又は幅方向の一方側部における排泄物の拡散を抑制しやすくする。
【0013】
(態様3)
着用者の肌に当接可能な表面シートを有し、前記表面シートにも、前記油剤が設けられており、前記厚さ方向に見て、前記表面シートのうち、前記中央部と重なる部分に設けられた前記油剤の坪量が、前記一方側部と重なる部分に設けられた前記油剤の坪量より高いことを特徴とする態様1又は2の吸収性物品である。
【0014】
態様3によれば、油剤により吸収性コアの中央部における吸収を促しやすくしつつ、吸収性コアの長手方向又は幅方向の一方側部における排泄物の拡散を抑制しやすくする。
【0015】
(態様4)
前記油剤は、両親媒性の物質であることを特徴とする態様1から3のいずれかの吸収性物品である。
【0016】
態様4によれば、排泄物の表面張力を変化させやすく、吸収性コアにおける排泄物の拡散を促しやすくなる。
【0017】
(態様5)
前記吸収性コアより肌側にコアラップシートを有し、前記吸収性コアの肌側面と前記コアラップシートの非肌側面との間に接着剤が設けられていないことを特徴とする態様1から4のいずれかの吸収性物品である。
【0018】
態様5によれば、吸収性コアの肌側面において、油剤と接着剤とが馴染むことによりコアラップシートの肌側面で拡散し、その排泄物がコアラップシートから吸収性コアに吸収されて、吸収性コアで過度に拡散してしまう恐れを軽減させることで、吸収性物品の外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0019】
(態様6)
前記吸収性コアより非肌側にコアラップシートを有し、前記吸収性コアの非肌側面と前記コアラップシートの肌側面との間に接着剤が設けられていないことを特徴とする態様1から5のいずれかの吸収性物品である。
【0020】
態様6によれば、吸収性コアの非肌側面において、油剤と接着剤とが馴染むことによりコアラップシートの肌側面で拡散し、その排泄物がコアラップシートから吸収性コアに吸収されて、吸収性コアで過度に拡散してしまう恐れを軽減させることで、吸収性物品の外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0021】
(態様7)
前記吸収性物品の非肌側面に、後処理タブ又は後処理テープを有し、前記厚さ方向に見て、前記油剤が、前記後処理タブ又は後処理テープと重ならないことを特徴とする態様1から6のいずれかの吸収性物品である。
【0022】
態様7によれば、油剤によって排泄物が拡散した吸収性コアは形状が崩れやすくなるため、厚さ方向に見て油剤と重ならない位置に後処理タブ又は後処理テープを設けることで、厚さ方向に見て油剤と重ならない位置は吸収性コアの形状が崩れにくい部分であるため、使用後に吸収性物品を丸めて廃棄する際に、吸収性コアの形状の崩れを防いだ状態で吸収性コアを丸めやすくなる。
【0023】
(態様8)
前記吸収性物品の最も非肌側に、非肌側シートを有し、前記非肌側シートの非肌側面には、粘着部を備え、前記厚さ方向に見て、前記油剤が設けられた部分と前記粘着部とが重なる重なり領域と、前記油剤が設けられていない部分と前記粘着部とが重なる非重なり領域とを有し、前記重なり領域における前記粘着部の粘着強度が、前記非重なり領域における前記粘着部の粘着強度よりも低いことを特徴とする態様1から7のいずれかの吸収性物品である。
【0024】
吸収性物品の非肌側に設けられた粘着部は着用時に着用者の着衣に固定するために設けられている。態様8によれば、粘着部の粘着強度が過度に強くなる恐れを軽減させ、使用後に体液を多く含んでよれやすくなった重なり領域を着衣から吸収性物品を取り除く際に、小さな力で行うことができるため、重なり領域における吸収性コアの形状を崩れにくくして、捨てやすくすることができる。
【0025】
(態様9)
前記吸収性コアは、前記吸収性コアの肌側にコアラップシートを有し、前記コアラップシートの繊維の平均繊維長が、前記吸収性コアの前記粉砕された繊維の平均繊維長以上であることを特徴とする態様1から8のいずれかの吸収性物品である。
【0026】
態様9によれば、着用時において、コアラップシートにおける排泄物の吸収及び拡散を促すことで、非肌側に位置する吸収性コアにおける排泄物の浸透を促しやすくなる。
【0027】
(態様10)
前記長手方向及び前記幅方向において、前記中央部に設けられた前記油剤の坪量が前記一方側部に設けられた前記油剤の坪量より高いことを特徴とする態様1から9のいずれかの吸収性物品である。
【0028】
態様10によれば、吸収性コアの長手方向及び幅方向における中央部の排泄物の拡散を促しつつ、吸収性物品の長手方向及び幅方向の一方側の外側から排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0029】
(態様11)
前記一方側部の外端部には、前記油剤が設けられていないことを特徴とする態様10の吸収性物品である。
【0030】
態様11によれば、吸収性コアの長手方向及び幅方向の一方側部の外端部における拡散を抑制しやすくなり、吸収性物品の長手方向及び幅方向の一方側の外側から排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0031】
(態様12)
着用者の肌に当接可能な表面シートを有し、前記表面シートにも、前記油剤が設けられており、前記表面シートの前記幅方向の長さは、前記吸収性コアの前記幅方向の長さより長く、前記吸収性コアは、前記油剤が設けられたコア油剤存在領域と、前記油剤が設けられていないコア油剤非存在領域を有し、前記表面シートは、前記油剤が設けられた表面油剤存在領域と、前記油剤が設けられていない表面油剤非存在領域と有し、前記厚さ方向において、前記コア油剤存在領域と前記表面油剤存在領域とが重なる第1領域と、前記コア油剤非存在領域と前記表面油剤存在領域とが重なる第2領域と、前記表面油剤非存在領域と前記吸収性コアとが重ならない第3領域と、を有し、前記第1領域、前記第2領域、及び前記第3領域は、前記幅方向の内側から外側に、前記第1領域、前記第2領域、前記第3領域の順に設けられていることを特徴とする態様1から11のいずれかの吸収性物品である。
【0032】
態様12によれば、吸収性物品のうち、第1領域での拡散を促しつつ、第2領域及び第3領域での拡散を抑制しやすくして、吸収性物品より外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0033】
(態様13)
前記コア油剤存在領域は、前記第1領域に、周囲よりも前記油剤の坪量が高いコア油剤濃領域を有し、前記表面油剤存在領域は、前記第1領域に、周囲よりも前記油剤の坪量が低い表面油剤薄領域を有し、前記厚さ方向に見て、前記第1領域の前記幅方向の中央部且つ前記長手方向の中央部に、前記コア油剤濃領域と前記表面油剤薄領域とが重なる部分を有することを特徴とする態様12の吸収性物品である。
【0034】
態様13によれば、着用時において、表面油剤薄領域によって着用者の排泄口に対して油剤が悪影響を及ぼしてしまう恐れを軽減させつつ、第1領域における表面油剤存在領域で表面シート内での排泄物の浸透を促しやすくなる。また、厚さ方向に見て、表面油剤薄領域と重なるコア油剤濃領域を有することで、厚さ方向に見て、コア油剤濃領域と表面油剤薄領域とが重なる部分は、排泄物を表面シートから吸収性コアに移動させやすくなり、吸収性物品の肌側表面上で排泄物が拡散して漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0035】
(態様14)
着用者の肌に当接可能な表面シートを有し、前記表面シートにも、前記油剤が設けられており、前記表面シートの前記幅方向の長さは、前記吸収性コアの前記幅方向の長さより長く、前記吸収性コアより前記幅方向の外側に、前記油剤が設けられていないことを特徴とする態様1から13のいずれかの吸収性物品である。
【0036】
態様14によれば、吸収性コアの幅方向の端部における拡散を抑制しやすくして、吸収性物品より外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0037】
(態様15)
前記吸収性コアを厚さ方向に圧搾した圧搾部を有し、前記圧搾部は、前記吸収性物品の前記長手方向の中央より後側に後側圧搾部を備え、前記油剤の後端が、前記後側圧搾部の前端より前側に設けられていることを特徴とする態様1から14のいずれかの吸収性物品である。
【0038】
態様15によれば、繊維密度が高い後側圧搾部が毛細管現象により拡散を促しやすいことから、後側圧搾部の前端より前側に油剤を設けることで、吸収性コアの後方における拡散を抑制しやすくして、吸収性物品より外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0039】
(態様16)
前記吸収性コアの前記厚さ方向における中央より肌側に設けられた前記油剤の単位体積当たりの重量が、前記吸収性コアの前記厚さ方向における中央より非肌側に設けられた前記油剤の単位体積当たりの重量より重いことを特徴とする態様1から15のいずれかの吸収性物品である。
【0040】
態様16によれば、肌側から吸収した排泄物を非肌側に向かって吸収しやすくなる。
【0041】
(態様17)
前記幅方向に沿った折り部を有し、前記長手方向において、前記油剤が前記折り部を跨いで設けられていることを特徴とする態様1から16のいずれかの吸収性物品である。
【0042】
態様17によれば、折り部は吸収性コアの密度が高くなりやすく、幅方向への拡散を促しやすいが、長手方向において油剤が折り部を跨ぐことで、長手方向への拡散を促しやすくなり、吸収性物品の幅方向の外側に排泄物が漏れる恐れを軽減させやすくなる。
【0043】
===本実施形態===
以下、本実施形態に係る吸収性物品の一例として、生理用ナプキンを例に挙げて説明する。ただし、生理用吸収性物品は生理用ナプキンに限定されず、ショーツ型のナプキン、パンツ型使い捨ておむつ、テープ型の使い捨ておむつ等、吸収性パッド等であってもよい。
【0044】
<<<本実施形態のナプキン1の構成>>>
図1は、ナプキン1を肌側から見た平面図である。図2は、ナプキン1を非肌側から見た平面図である。図3は、図1中のA―A矢視概略断面図である。ナプキン1は、長手方向と幅方向と厚さ方向を有する。長手方向において、着用者の下腹部に当接する側を前側とし、着用者の臀部に当接する側を後側とする。厚さ方向において着用者の肌に当接する側が肌側であり、その反対側が非肌側である。図1等に示す中心線C-Cは、幅方向におけるナプキン1の中心を示し、中心線CLは、長手方向におけるナプキン1の中心を示す。図3等の断面図は、ナプキン1を模式的に示しており、必ずしも寸法は正確ではない。
【0045】
ナプキン1は、吸収体10、トップシート21、一対のサイドシート23、バックシート31を有する。吸収体10より肌側で、トップシート21より非肌側に、シート状のセカンドシート22を有してもよい。厚さ方向に互いに隣接する各資材はホットメルト等の接着剤で接合されている。
【0046】
ナプキン1は、長手方向の中央部に、幅方向の両外側に延出した一対のウイング部1Wを有する。ウイング部1Wは、主にサイドシート23とバックシート31によって形成されている。なお、必ずしもウイング部1Wを備えない構成であってもよい。
【0047】
トップシート21は、吸収体10より肌側に位置する液透過性のシートである。トップシート21は、吸収体10より肌側に位置する、着用者の肌に当接可能な表面シートである。トップシート21としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の合成繊維からなる不織布(例えばエアスルー不織布やスパンボンド不織布等)や、貫通孔を有する合成樹脂フィルム、綿からなる不織布シート等の柔軟なシートを例示することができる。本実施形態のトップシート21は、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン(PE)、若しくは、コットンやレーヨン等の保水性繊維を含んだエアスルー不織布やスパンレース不織布の液透過性のシートで形成されている。
【0048】
一対のサイドシート23は、トップシート21及びセカンドシート22より非肌側で、吸収体10より肌側に設けられており、トップシート21等の幅方向の両側部からそれぞれ外側に延出したシートである。サイドシート23としては、トップシート21と同じ柔軟な液透過性の不織布や、疎水性の不織布等を例示することができる。また、トップシート21、セカンドシート22、及び吸収体10より幅方向の外側で、サイドシート23とバックシート31との厚さ方向の間には、サイドシート23の強度を補強するための補強シート24が設けられている。補強シート24としては、例えば、バックシート31と同様のシート部材、紙やSMS等のシート部材を用いることができる。
【0049】
バックシート(非肌側シート)31は、吸収体10より非肌側に位置し、ナプキン1の最も非肌側に設けられたシートである。バックシート31としては、ポリエチレン(PE)の樹脂フィルム等の液不透過性のシートを例示することができる。バックシート31の形状は、ナプキン1の外形とほぼ同一である。
【0050】
バックシート31の非肌側面に複数の本体粘着部(粘着部)32を備える。本実施形態の本体粘着部32は、長手方向に沿った複数の帯状のホットメルト接着剤が塗布された領域である。ナプキン1の着用時には、本体粘着部32を下着(着衣)の股下部(クロッチ部)の内側に貼付することで、着用者の身体に対してナプキン1の位置がずれないようにすることができる。
【0051】
ウイング部1Wは、バックシート31の非肌面側に、ウイング粘着部33を備える。本実施形態のウイング粘着部33は、矩形形状のホットメルト接着剤が塗布された領域である。ナプキン1の着用時には、ウイング部1Wを下着の非肌側面に折り返し、ウイング粘着部33を下着の股下部における非肌側面に貼付することで、ナプキン1を下着に固定することができる。
【0052】
長手方向においてウイング粘着部33と重なる位置(図1参照)は、股下領域CAである。股下領域CAは、着用状態において長手方向における着用者の股下と当接する領域であり、着用者の排泄物が排出される排血口と当接する領域である。
【0053】
吸収体10は、吸収性コア11と、コアラップシート12を有する。吸収性コア11は、液体吸収性繊維を所定の形状に成形したものであり、液体吸収性繊維として、粉砕された繊維を有している。粉砕された繊維には、広葉樹からなる広葉樹繊維が含まれている。本実施形態の吸収性コア11は、粉砕された繊維(パルプ繊維)を含んでおり、粉砕された繊維としては広葉樹繊維のみ(広葉樹繊維100%)で形成されている。なお、吸収性コア11は、広葉樹繊維からなる粉砕された繊維のみに限られず、粉砕された繊維が、広葉樹繊維に加えて、針葉樹からなる針葉樹繊維等のパルプ繊維を備えてもよく、吸収性コア11が、セルロース系吸収性繊維等や、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル、アクリレート等からなる合成繊維などの液体吸収性繊維や、高吸収性ポリマー(SAP)を備えてもよい。図4Aは、吸収性コア11の平面図である。図4Bは、図4A中のJ―J矢視概略断面図である。図5は、図4A中のK―K矢視断面の拡大模式図である。図6は、図3中の吸収体10の拡大図である。なお、図4A図4B及び図5において、圧搾部EL等の圧搾部による凹凸を省略して示している。
【0054】
吸収性コア11は、周囲よりも液体吸収性繊維の坪量が高い中高部11dを有する。中高部11dは、周囲よりも吸収性コア11の厚みが厚い(厚さ方向の長さが長い)部分である。本実施形態の中高部11dは、厚さ方向において肌側に突出した部分であり、平面視で略楕円形状の領域である。中高部11dを吸収性コア11の幅方向における中央部で、且つ平面視で股下領域CAと重なる位置に設けることで、着用状態において、着用者の排泄口に当接させやすくなり、ナプキン1を着用者の身体にフィットさせやすくしつつ、排泄物を素早く吸収させやすくなる。また、液体吸収性繊維の坪量が高い中高部11dを平面視で股下領域CAと重なる位置に備えることで、着用状態において着用者の排泄口から排出された排泄物を吸収性コア11内で保持しやすくなる。
【0055】
コアラップシート12は、液透過性のシート部材である。本実施形態のコアラップシート12は、セルロース繊維を有したティッシュである。コアラップシート12は、吸収性コア11を覆うことで、吸収性コア11の形状を維持したり、吸収性コア11への液体の拡散を促したりする。
【0056】
図6に示すように、コアラップシート12は、吸収性コア11より肌側に位置する肌側部12aと、吸収性コア11より非肌側に位置する非肌側部12bを有する。本実施形態では、図6等に示すように、コアラップシート12の両側端部を吸収性コア11の肌側に折り返すことで、吸収性コア11の肌側面及び非肌側面をコアラップシート12で覆っている。具体的には、コアラップシート12の長手方向に沿った先端12eaを外側、もう一方側の長手方向に沿った先端12ebを内側として、吸収性コア11の幅方向の側端を覆うようにコアラップシート12で吸収性コア11を包んでいる。但し、コアラップシート12の形状及び形態は、これに限られない。例えば、コアラップシート12を2枚のシート部材として、吸収性コア11の肌側と非肌側にそれぞれ配置する構成であってもよい。なお、本実施形態のコアラップシート12の内側には接着剤が設けられていない。つまり、吸収性コア11とコアラップシート12との間には接着剤で固定されておらず、吸収性コア11はコアラップシート12で包まれることでその形状が維持されている。
【0057】
図7は、吸収体10を肌側から見た平面図である。図7において、吸収性コア11における中高部11dを省略して示している。図7に示すように、吸収体10は、中央圧搾部14と複数の吸収体圧搾部15を有する。中央圧搾部14及び吸収体圧搾部15は、それぞれ、吸収性コア11とコアラップシート12とを厚さ方向に圧搾した部分である。
【0058】
中央圧搾部14及び吸収体圧搾部15は、例えば、複数の凸部を有する凸ローラーと、表面が平らなアンビルローラーとの間のロール間隙に製造過程の吸収体10を通して、圧搾することで形成される。本実施形態の中央圧搾部14及び吸収体圧搾部15は、それぞれ、吸収体10の非肌側面に凸ローラー、肌側面にアンビルローラーが当接する状態で、ロール間隙に吸収体10を通すことで、吸収体10の非肌側から肌側に向かって押圧した部分である。
【0059】
中央圧搾部14は、長手方向に沿い、且つ幅方向の中央部に設けられた直線状の圧搾部である。中央圧搾部14は、吸収体10の前端から後端まで、肌側又は非肌側から厚さ方向に凹んだ部分である。中央圧搾部14は、中央圧搾部14を起点として吸収体10を厚さ方向の肌側に折れ曲がるように誘導する誘導部である。また、中央圧搾部14は、圧搾されていない部分よりも繊維密度が高い部分であるため、毛細管現象により排泄物を長手方向に誘導する誘導部でもある。
【0060】
吸収体圧搾部15は、吸収体10の全域に亘って、略千鳥状に配置された圧搾部である。本実施形態の吸収体圧搾部15は、楕円形状の圧搾部が複数設けられている。吸収体圧搾部15も中央圧搾部14と同様に、肌側又は非肌側から厚さ方向に凹んだ部分である。吸収体圧搾部15を設けることで、吸収体10の形状を保持しやすくしている。また、吸収体圧搾部15は、圧搾されていない部分よりも繊維密度が高い部分であるため、毛細管現象により吸収性コア11のうちの排泄物を吸収しやすい部分となる。吸収体圧搾部15と、圧搾されていない部分との密度の差によって、後述の吸収性コア11中の油剤Yの拡散を抑制しやすくなる。
【0061】
また、図1等に示すように、ナプキン1は、線状圧搾部EL及び円形圧搾部eeを有する。
線状圧搾部ELは、トップシート21、セカンドシート22、吸収体10の少なくとも一部を厚さ方向に圧搾した部分である。本実施形態のナプキン1の線状圧搾部ELは、長手方向の中央線CLより前側に設けられた前側圧搾部ELaと、中央線CLより後側に設けられた後側圧搾部ELbと、前側圧搾部ELaと後側圧搾部ELbとの間に設けられた中央圧搾部ELcとを有する。線状圧搾部ELを備えることで、各部材の厚さ方向の接合を強固にし、繊維の密度を高くして、液体の吸液性を向上させることができる。線状圧搾部ELは、平面視で長手方向に沿った線状の圧搾部であり、幅方向に所定の間隔を空けた状態で一対設けられている。
幅方向における中央部、且つ、長手方向における股下領域CAと重なる位置に、複数の円形圧搾部eeを備える。円形圧搾部eeは、平面視で円形状の圧搾部であり、トップシート21、セカンドシート22、吸収体10の少なくとも一部を厚さ方向に圧搾した部分である。
【0062】
線状圧搾部EL及び円形圧搾部eeは、厚さ方向に重ねられた部材を押しつぶされた部分であるため、各圧搾部における各部材の繊維密度は、圧搾部が設けられていない部分の繊維密度よりも高い。線状圧搾部EL及び円形圧搾部eeは、例えば、複数の凸部を有する凸ローラーと、表面が平らなアンビルローラーとの間のロール間隙に製造過程のナプキン1を通して、圧搾することで形成される。
【0063】
<<<ナプキン1における排泄物の拡散について>>>
ナプキン1等の吸収性物品の着用時には、着用者の膣口から排泄された経血等の排泄物を、吸収性物品が素早く排泄物を吸収し、吸収性物品中の広い範囲に拡散させることで、吸収性物品の肌側面に排泄物が留まりにくくして、着用者の肌への悪影響や不快感を軽減させることが好ましい。特に、生理用ナプキンでは、粘度の高い経血等の排泄物を吸収するため、排泄物の吸収性及び拡散性が求められている。そのため、従来より吸収性物品に排泄物の拡散を促す物質等を設ける手段が知られている。しかしながら、排泄物の拡散を促す物質等を用いることで吸収性物品中で過度に排泄物の拡散が促されて排泄物が吸収性物品から漏れてしまう恐れがあった。
【0064】
本発明のナプキン1は、吸収性コア11に排泄物の拡散を促す油剤Yが設けられている。また、ナプキン1の吸収性コア11は、広葉樹からなる広葉樹繊維を含む粉砕された繊維を有している。そして、長手方向又は幅方向のいずれかの方向において、吸収性コア11を3等分したときに、一方側から順に、一方側部、中央部、他方側部を有し、中央部に設けられた油剤Yの坪量が、一方側部に設けられた油剤Yの坪量より高い。
【0065】
本実施形態のナプキン1は、トップシート21の肌側面から図1の領域Y11に油剤Yを塗布している。図8は、油剤Yを設けた領域を説明する平面模式図である。図9は、油剤Yを設けた領域を説明する断面模式図である。なお、図8及び図9は模式図であり、便宜上、部材を省略したり、簡略化したりして示している。図8等において、ナプキン1に油剤Yが設けられた領域を示しており、領域Y11は吸収性コア11における油剤Yが設けられた領域(以下、領域Y11を「コア油剤存在領域Y11」ともいう。)であり、領域Y21はトップシート21における油剤Yが設けられた領域(以下、領域21を「表面油剤存在領域Y21」ともいう。)である。また、図9では、油剤Yが設けられた領域を左斜め下がりの斜線部で示しているが、図9では、平面的な油剤Yの配置を説明しているものであり、必ずしも各部材における厚さ方向の全域に油剤Yが設けられているとは限らず、例えば、吸収性コア11の肌側部分のみに油剤Yが設けられ、吸収性コア11の非肌側部分に油剤Yが設けられていないものであってもよい。
【0066】
図8に示すように、ナプキン1の長手方向において、吸収性コア11を3等分したときに、長手方向の前側(一方側)から順に前側部(一方側部)Ta、中央部Tb、後側部(他方側部)Tcを有している。そして、中央部Tbに設けられた油剤Yの坪量(単位面積当たりの油剤Yの重量)が、前側部Taに設けられた油剤の坪量より高いという特徴を有する。
または、吸収性コア11が広葉樹繊維と油剤Yを備えたナプキン1は、図8に示すように、ナプキン1の幅方向において、吸収性コア11を3等分したときに、一方側から順に左側部(一方側部)Wa、中央部Wb、右側部(他方側部)Wcを有している。そして、中央部Wbに設けられた油剤Yの坪量が、左側部Waに設けられた油剤の坪量より高いという特徴を有する。なお、ナプキン1の左側部Waは、着用時における着用者の左側に相当し、図8における左側である。
【0067】
なお、図8では、長手方向における前側部Taを一方側部、後側部Tcを他方側部としたが、これに限られない。前側部Taと他方側部とし、後側部Tcを一方側部としてもよい。同様に、幅方向における左側部Waを一方側部、右側部Wcを他方側部としたが、これに限られない。左側部Waを他方側部とし、右側部Wcを一方側部としてもよい。
【0068】
本実施形態のナプキン1の吸収性コア11の油剤Yが設けられた領域Y11は、ナプキン1の略中央部に設けられている。
具体的には、長手方向において、領域Y11の大部分は長手方向における中央部Tbに設けられ、油剤Yの一部は長手方向の前側部Taに設けられている。長手方向における後側部Tcには、油剤Yが設けられていない。長手方向において、中央部Tbに設けられた油剤Yの坪量(中央部Tbにおける油剤Yの重量/中央部Tbの面積)が、前側部Taに設けられた油剤Yの坪量(前側部Taにおける油剤Yの重量/前側部Taの面積)より大きい。また、長手方向において、中央部Tbに設けられた油剤Yの坪量(中央部Tbにおける油剤Yの重量/中央部Tbの面積)が、後側部Tcに設けられた油剤Yの坪量(後側部Tcにおける油剤Yの重量/後側部Tcの面積)より大きい。
幅方向において、領域Y11の大部分は幅方向における中央部Wbに設けられ、油剤Yの一部は幅方向の左側部Waに設けられ、油剤Yの一部は幅方向の右側部Wcに設けられている。幅方向において、中央部Wbに設けられた油剤Yの坪量(中央部Wbにおける油剤Yの重量/中央部Wbの面積)が、左側部Waに設けられた油剤Yの坪量(左側部Waにおける油剤Yの重量/左側部Waの面積)より大きい。また、幅方向において、中央部Wbに設けられた油剤Yの坪量(中央部Wbにおける油剤Yの重量/中央部Wbの面積)が、右側部Wcに設けられた油剤Yの坪量(右側部Wcにおける油剤Yの重量/右側部Wcの面積)より大きい。
【0069】
ナプキン1は、吸収性コア11の長手方向又は幅方向のいずれかの方向における中央部の油剤の坪量を一方側部の油剤Yの坪量より高くすることで、吸収性コア11において一方側部よりも中央部の排泄物の拡散を促しやすくなる。また、長手方向又は幅方向のいずれかの方向における一方側部の油剤Yの坪量を中央部の油剤Yの坪量より低くすることで、吸収性コア11において中央部よりも一方側部の排泄物の拡散を抑制しやすくなる。また、一般的に、広葉樹からなる繊維は針葉樹繊維よりも繊維長が短いという特徴を有している。吸収性コア11内において、繊維長が長いほど拡散を促しやすい。そのため、吸収性コア11の粉砕された繊維として広葉樹繊維を含むことで、油剤Yの坪量が低い一方側部における排泄物の拡散を抑制しやすくなる。そして、吸収性コア11が粉砕された繊維として広葉樹繊維を含む場合であっても、長手方向又は幅方向のいずれかの方向における中央部の油剤の坪量を一方側部の油剤Yの坪量より高いことで、吸収性コア11の中央部における排泄物の拡散を促しやすくなるため、着用時に吸収性物品の表面に排泄物が留まり続ける恐れを軽減させることができる。
これにより、ナプキン1の吸収性コア11の中央部の排泄物の拡散を促すことで、吸収性コア11の肌側面に排泄物が留まりにくくして、着用者の肌への悪影響や不快感を軽減させつつ、ナプキン1の長手方向又は幅方向の一方側の端から外側に排泄物が折れる恐れを軽減させることができる。また、着用時において、着用者自身が、吸収性コア11の中央部で排泄物が拡散しやすい様子を視認すること、長手方向又は幅方向の一方側部において排泄物が拡散しづらい様子を視認することで、ナプキン1から排泄物が漏れるかもしれないと感じる着用者の懸念を軽減させやすくなる。
【0070】
粉砕された繊維としては、パルプ、例えば、針葉樹(例えば、サザンイエローパイン)又は広葉樹(例えば、ユーカリ)を原料として得られる木材パルプ、バガス、ケナフ、竹、麻、綿(例えば、コットンリンター)等の非木材パルプ;レーヨン繊維等の再生セルロース繊維;アセテート繊維等の半合成繊維等が挙げられる。吸収性物品には、比較的、繊維長が長い針葉樹繊維(針葉樹パルプ)が用いられることが多い。
【0071】
針葉樹繊維(針葉樹パルプ)の平均繊維長は2.5mmであり、広葉樹繊維(広葉樹パルプ)の平均繊維長は0.79mmである。つまり、広葉樹繊維の平均繊維長は、針葉樹繊維の平均繊維長より短い。吸収性コア11中に粉砕された繊維として用いられた広葉樹繊維は、針葉樹繊維よりも排泄物(液体)の拡散を促しにくい。そのため、広葉樹繊維を含む吸収性コア11の長手方向又は幅方向の中央部に油剤Yを設けて拡散を促しつつ、油剤Yの坪量が低い長手方向又は幅方向の一方側部では、排泄物の拡散を抑制しやすくなり、排泄物の漏れを軽減させることができる。
【0072】
本実施形態の吸収性コア11の粉砕された繊維は、広葉樹繊維(広葉樹パルプ)のみで構成されている。つまり、吸収性コア11中の粉砕された繊維は、全て広葉樹繊維である(広葉樹繊維100%)。これにより、吸収性コア11の長手方向の中央部又は幅方向の中央部は油剤Yによって排泄物の拡散を促しつつ、長手方向の一方側部又は幅方向の一方側部は、坪量の低い油剤Yの領域であり、且つ平均繊維長さが短い広葉樹繊維によって、長手方向の一方側部又は幅方向の一方側部の排泄物の拡散を抑制しやすくなる。
【0073】
なお、吸収性コア11の粉砕された繊維には、広葉樹パルプに加えて、針葉樹からなる針葉樹繊維(針葉樹パルプ)を含んでいてもよい。吸収性コア11に針葉樹繊維を含む場合には、広葉樹繊維の総重量が、針葉樹繊維の総重量より多いことが好ましい。吸収性コア11中に、平均繊維長が短い広葉樹繊維を多く含むことで、油剤Yにより吸収性コア11の長手方向又は幅方向の中央部における排泄物の吸収を促しやすくしつつ、吸収性コア11の長手方向又は幅方向の一方側部における排泄物の拡散を抑制しやすくなる。
【0074】
吸収性コア11の粉砕された繊維中に広葉樹繊維を含むことは、周知の方法で確認することができる。
例えば、下記の方法で行うことができる。
まず、ナプキン1の吸収性コア11の粉砕された繊維を所定重量(0.04g)取り出してサンプルとし、粉砕された繊維を水(蒸留水)で水解する。
次に、サンプルをビーカーに移し、繊維長分布測定装置(「Valmet FS5」バルメット株式会社 製)を用いて画像を撮影し、繊維長を測定する。なお、当該装置において、サンプルの濃度が15~23mmg/Lに自動調整される。得られた繊維長と広葉樹繊維の平均繊維長との比較により、サンプル中の広葉樹繊維の存在を確認することができる。
【0075】
吸収性コア11中の粉砕された繊維の長さ加重平均で50%以上が、繊維長1mm以下で構成されていることが好ましい。吸収性コア11が、繊維長が短い繊維を多く含むことで、吸収性コア11内の繊維を伝った、平面的な排泄物の拡散を生じにくくさせることができる。これにより、吸収性コア11の肌側から非肌側への垂直的な排泄物の移行を促しやすくなるため、ナプキン1の外側に排泄物が漏れる恐れを軽減させやすくなる。
【0076】
油剤Yは排泄物(液体)の拡散を促す物質であり、油剤Yは、両親媒性の物質であることが好ましい。油剤Yが両親媒性の物質で、親水基と疎水基の両方を備えることで、着用時に、油剤Yと排泄物が接触することで、排泄物の表面張力を変化させ、油剤Yを塗布した領域において、排泄物(液体)の拡散を促しやすくなる。
【0077】
油剤Yとしては、例えば、下記のものを用いることができる。
[鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
・ユニスター H-408BRS,日油株式会社製
テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリトール,重量平均分子量:約640
・ユニスター H-2408BRS-22,日油株式会社製
テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリトールと、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールとの混合物(58:42、重量比),重量平均分子量:約520
【0078】
[鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
・トリC2L油脂肪酸グリセリド,日油株式会社製
C8の脂肪酸:C10の脂肪酸:C12の脂肪酸がおおよそ37:7:56の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約570
・トリCL油脂肪酸グリセリド,日油株式会社製
C8の脂肪酸:C12の脂肪酸がおおよそ44:56の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約570
・パナセート810s,日油株式会社製
C8の脂肪酸:C10の脂肪酸がおおよそ85:15の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約480
・パナセート800,日油株式会社製
脂肪酸が全てオクタン酸(C8)である、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約470
・パナセート800B,日油株式会社製
脂肪酸が全て2-エチルヘキサン酸(C8)である、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約470
・NA36,日油株式会社製
C16の脂肪酸:C18の脂肪酸:C20の脂肪酸(飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の両方を含む)がおおよそ5:92:3の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約880
・トリヤシ油脂肪酸グリセリド,日油株式会社製
C8の脂肪酸:C10の脂肪酸:C12の脂肪酸:C14の脂肪酸:C16の脂肪酸(飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の両方を含む)がおおよそ4:8:60:25:3の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:670
・カプリル酸ジグリセリド,日油株式会社製
脂肪酸がオクタン酸である、グリセリンと脂肪酸とのジエステル,重量平均分子量:340
【0079】
[鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
・ユニスター H-208BRS,日油株式会社製
ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール,重量平均分子量:約360
・コムポールBL,日油株式会社製
ブチレングリコールのドデカン酸(C12)モノエステル,重量平均分子量:約270
・コムポールBS,日油株式会社製
ブチレングリコールのオクタデカン酸(C18)モノエステル,重量平均分子量:約350
【0080】
[鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2~4個のヒドロキシル基とを有する化合物]
【0081】
[鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル]
【0082】
[鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2~4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸]
【0083】
[3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル]
・O-アセチルクエン酸トリブチル,東京化成工業株式会社製
重量平均分子量:約400
・クエン酸トリブチル,東京化成工業株式会社製
重量平均分子量:約360
【0084】
[2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル]
・アジピン酸ジオクチル,和光純薬工業製
重量平均分子量:約380
【0085】
[鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、エーテル結合(-O-)、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、及びカーボネート結合(-OCOO-)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物]
【0086】
[脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル]
・エレクトールWE20,日油株式会社製
ドデカン酸(C12)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル,重量平均分子量:約360
・エレクトールWE40,日油株式会社製
テトラデカン酸(C14)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル,重量平均分子量:約390
【0087】
[ポリオキシC3~C6アルキレングリコール、又はそのアルキルエステル若しくはアルキルエーテル]
【0088】
[ポリオキシC3~C6アルキレングリコール]
・ユニオールPB500,日油株式会社製
ポリブチレングリコール,重量平均分子量:約500
・ユニオールPB700,日油株式会社製
ポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール,重量平均分子量:約700
【0089】
[鎖状炭化水素]
・パールリーム6,日油株式会社製
流動イソパラフィン、イソブテン及びn-ブテンを共重合し、次いで水素を付加することにより生成された分岐鎖炭化水素、重合度:約5~約10,重量平均分子量:約330
【0090】
[その他]
・NA50,日油株式会社製
NA36に水素を付加し、原料である不飽和脂肪酸に由来する二重結合の比率を下げたグリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約880
・(カプリル酸/カプリン酸)モノグリセリド,日油株式会社製
オクタン酸(C8)及びデカン酸(C10)がおおよそ85:15の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのモノエステル,重量平均分子量:約220
・Monomuls 90-L2ラウリン酸モノグリセリド,コグニスジャパン株式会社製
・クエン酸イソプロピル,東京化成工業株式会社製
重量平均分子量:約230
・リンゴ酸ジイソステアリル
重量平均分子量:約640
・ユニオールPB1000R,日油株式会社製
ポリブチレングリコール,重量平均分子量:約1,000
・ユニオールD-250,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約250
・ユニオールD-400,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約400
・ユニオールD-700,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約700
・ユニオールD-1000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約1,000
・ユニオールD-1200,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約1,160
・ユニオールD-2000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約2,030
・ユニオールD-3000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約3,000
・ユニオールD-4000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約4,000
・PEG1500,日油株式会社製
ポリエチレングリコール,重量平均分子量:約1,500~約1,600
・ウィルブライトcp9,日油株式会社製
ポリブチレングリコールの両末端のOH基が、ヘキサデカン酸(C16)によりエステル化された化合物,重量平均分子量:約1,150
・ユニルーブMS-70K,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのステアリルエーテル,約15の繰返し単位,重量平均分子量:約1,140
・ノニオンS-6,日油株式会社製
ポリオキシエチレンモノステアレート、約7の繰返し単位、重量平均分子量:約880
・ユニルーブ5TP-300KB
ペンタエリトリトール1モルに、エチレンオキシド5モルと、プロピレンオキシド65モルとを付加させることにより生成した、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテル,重量平均分子量:4,130
・ウィルブライトs753,日油株式会社製
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシブチレングリセリン,重量平均分子量:約960
・ユニオール TG-330,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約6の繰返し単位,重量平均分子量:約330
・ユニオール TG-1000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約16の繰返し単位,重量平均分子量:約1,000
・ユニオール TG-3000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約16の繰返し単位,重量平均分子量:約3,000
・ユニオール TG-4000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約16の繰返し単位,重量平均分子量:約4,000
・ユニルーブ DGP-700,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのジグリセリルエーテル,約9の繰返し単位,重量平均分子量:約700
・ユニオックスHC60,日油株式会社製
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油,重量平均分子量:約3,570
・ワセリン,コグニスジャパン株式会社製
石油に由来する炭化水素、半固形
【0091】
油剤Yの坪量の比較は、周知の方法で行うことができる。例えば、用いる油剤Yに対応する試薬を塗布して、色の変化や濃淡で比較してもよい。
本実施形態のナプキン1は、油剤Yとして、パナセート 810S(トリグリセリド、日油株式会社製)を用いている。この油剤Yは、不飽和脂肪酸を含む油剤であり、この油剤は、排泄物を促したり、着用者の肌に対して不飽和脂肪酸を付与して肌触りを向上したり、着用者の肌を保護したりすることができる。
この油剤Yに対して、油漏れ発色検査剤「モレミールOiL(株式会社タセト 製)」を用いて油剤Yの存在及び坪量の比較を行うことができる。
具体的には、ナプキン1から吸収性コア11を取り出し、吸収性コア11の全域に上述の油漏れ発色検査剤を噴射する。当該油漏れ発色検査剤が塗布されると、油(油剤Y)が存在する部分は、赤色に呈色する。赤色に呈色しなかった領域は、油剤Yが塗布されておらず、油剤Yの坪量が0(零)である。一方、赤色に呈色した領域において、赤色の濃淡を比較することで、各部分の油剤Yの坪量の比較を行うことができる。
【0092】
本実施形態のナプキン1は、長手方向及び幅方向において、中央部に設けられた油剤Yの坪量が一方側部に設けられた油剤Yの坪量より高い。つまり、中央部Tbに設けられた油剤Yの坪量が前側部Taに設けられた油剤の坪量より高く、且つ、中央部Wbに設けられた油剤Yの坪量が、左側部Waに設けられた油剤の坪量より高い。これにより、吸収性コア11の長手方向及び幅方向における中央部(中央部Tbであり、且つ中央部Wbである部分)は、着用時において、着用者の膣口等の排泄口に当接しやすい部分である。そのため、この吸収性コア11の長手方向及び幅方向における中央部の油剤Yの坪量が高いことで、着用時に排泄された排泄物を素早く吸収すること、排泄物を拡散することを促しやすくなる。一方、吸収性コア11の長手方向及び幅方向のそれぞれ一方側部Ta、Waの拡散を抑制しやすくなることで、ナプキン1の長手方向の前側(一方側)の外側、及び幅方向の左側(一方側)の外側から排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0093】
さらに、吸収性コア11の長手方向の前側部(一方側部)Taの外端部、及び幅方向の左側部(一方側部)Waの外端部には、油剤Yが設けられていないことが好ましい。これにより、吸収性コア11の長手方向の前側部(一方側部)Taの外端部、及び幅方向の左側部(一方側部)Waの外端部における排泄物の拡散を抑制しやすくなり、ナプキン1の長手方向の前側(一方側)の外側から、幅方向の左側(一方側)の外側から排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。なお、吸収性コア11の長手方向の前側部(一方側部)Taの外端部とは、吸収性コア11の長手方向における前端から長さ10mmの部分であり、より好ましくは前端から長さ5mmの部分である。吸収性コア11の幅方向の左側部(一方側部)Waの外端部は、吸収性コア11の幅方向における左端から長さ10mmの部分であり、より好ましくは左端から長さ5mmの部分である。
【0094】
また、ナプキン1が、吸収性コア11を厚さ方向に圧搾した線状圧搾部(圧搾部)ELを有することが好ましい。上述のように、ナプキン1の線状圧搾部ELは、長手方向の中央線CLより後側に後側圧搾部ELbを備えている(図1)。このような場合に、油剤Yが設けられた領域(領域Y11)の後端が、後側圧搾部ELbの前端より前側に設けられていることが好ましい。線状圧搾部ELや後側圧搾部ELbは、周囲よりも繊維密度が高い部分であり、毛細管現象により、排泄物の拡散を促しやすい部分である。そのため、後側圧搾部ELbの前端よりも前側に油剤Yを設けることで、吸収性コア11の後方における拡散を抑制しやすくして、ナプキン1の後側の外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0095】
上述のとおり、吸収性コア11を覆うコアラップシート12を有する。コアラップシート12のうち、吸収性コア11より肌側に位置する肌側部12a(コアラップシート)の繊維の平均繊維長は、吸収性コア11の粉砕された繊維の平均繊維長以上であることが好ましい。これによって、肌側部12aの繊維の平均繊維長を吸収性コア11の粉砕された繊維の平均繊維長より短くした場合よりも、着用時において、肌側部12aにおける排泄物の吸収及び拡散を促しやすくなる。そのため、肌側部12aで排泄物を平面的に拡散させた状態で、肌側部12aより非肌側に位置する吸収性コア11に排泄物を垂直的に移行させることで、吸収性コア11内における排泄物の浸透を促しやすくなる。なお、吸収性コア11の粉砕された繊維の平均繊維長及び肌側部12aの繊維の平均繊維長は、周知の方法で測定することができ、例えば、上述の繊維長分布測定装置(「Valmet FS5」バルメット株式会社 製)を用いて画像を撮影して、繊維長を測定することで得られる。
【0096】
肌側部12a(コアラップシート)の繊維は、例えば、下記の方法で取り出すことができる。
まず、ナプキン1を、トルエンを用いて分解して、コアラップシート12を取り出す。
取り出したコアラップシートを乾燥させる。
そして、コアラップシート15gと約1.5Lの水(コアラップシートの重さに対して、1%の濃度となるように水を調整する。)をプラスチック容器(内径:120mm、高さ:220mm)に入れて、撹拌機(EYELA MAZELA Z 東京理化器械株式会社 製)を用いて約24時間、室温で攪拌する。このとき、繊維がきれないようにゆっくりと攪拌する。
その後、水の中に分散している繊維を水と一緒にスポイト(穴径:2~3mm)で吸い取る。
取り出した繊維を吸引ろ過で集めて、乾燥させる。
取り出した繊維について、電子顕微鏡を用いて繊維長を測定し、測定した繊維長から平均繊維長を算出する。
【0097】
コアラップシート12のうち吸収性コア11より肌側に位置する肌側部(コアラップシート)12aについて(図6)、吸収性コア11の肌側面と肌側部12aの非肌側面との間に接着剤が設けられていないことが好ましい。つまり、吸収性コア11の肌側面と肌側部12aとは、接着剤で接着されていないことが好ましい。排泄物を促す油剤Yは、排泄物だけでなく、接着剤とも馴染む可能性が高い。仮に、吸収性コア11の肌側面と肌側部12aの非肌側面との間に接着剤を設けると、ナプキン1を着用する前(排泄物を吸収する前)の状態で、肌側部12aにおいて油剤Yが接着剤と馴染んで、肌側部12aにおける意図しない範囲に油剤Yが拡散してしまう。そうすると、ナプキン1の着用時には、排泄物を吸収すると、その肌側部12aで平面的に拡散した排泄物が非肌側に向かって吸収性コア11に移動して、吸収性コア11内で広い範囲に過度に拡散が進んでしまい、ナプキン1から排泄物が漏れてしまう恐れがある。これに対し、吸収性コア11の肌側面と肌側部12aの非肌側面との間に接着剤を設けないことで、肌側部12aで油剤Yが接着剤とが馴染むことによる油剤Yの拡散を防いで、着用時における吸収性コア11での排泄物の過度な拡散の恐れを軽減させて、ナプキン1の外側に排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0098】
吸収性コア11とコアラップシート12について、吸収性コア11の非肌側面と、吸収性コア11より非肌側に位置する非肌側部(コアラップシート)12bとの間に接着剤が設けられていないことが好ましい。つまり、吸収性コア11の非肌側面と非肌側部12bとは、接着剤で接着されていないことが好ましい。吸収性コア11の非肌側面においても肌側面(肌側部12a)と同様に、油剤Yと接着剤とが馴染んで非肌側部12bで油剤Yが過度に拡散する恐れを防ぐことで、非肌側部12bで平面的に拡散した排泄物が吸収性コア11に移動して、吸収性コア11内で広い範囲に過度に拡散が進む恐れを軽減させることができる。これにより、ナプキン1の外側に排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0099】
図2等に示すように、ナプキン1は、最も非肌側に設けられたバックシート31の非肌側面に、本体粘着部32を有している。本体粘着部32は、着用時に着用者の着衣にナプキン1を固定するために設けられている。このナプキン1を厚さ方向に見たときに、吸収性コア11に油剤Yが設けられた部分と本体粘着部32とが重なる重なり領域y32と、吸収性コア11に油剤Yが設けられていない部分と本体粘着部32とが重なる非重なり領域n32とが設けられている。本実施形態のナプキン1は、図2に示すように、矩形形状の領域Y11が吸収性コア11に油剤Yが設けられた領域であり、領域Y11の内側に設けられた本体粘着部32が重なり領域y32である。そして、領域Y11の外側に設けられた本体粘着部32が非重なり領域n32である。このような場合に、重なり領域y32における本体粘着部32の粘着強度が、非重なり領域n32における本体粘着部32の粘着強度よりも低いことが好ましい。なお、粘着強度とは、ナプキン1と着衣とを固定するための力の強さであり、ナプキン1に固定されたナプキン1を剥離するための力の強さでもある。なお、ナプキン1の本体粘着部32は、左右方向の両側にそれぞれ5つの直線状の接着剤塗布領域(図2中の右斜め下がりの斜線部)が幅方向に間欠に配置されているが、実質的に接着剤塗布領域同士の間は接着剤の含浸等により粘着部として機能する。そのため、ナプキン1の本体粘着部32は、左右方向の両側に設けられた、それぞれ接着剤塗布領域の外端で囲まれた矩形領域である。
【0100】
ナプキン1のうち重なり領域y32は、本体粘着部32の接着剤が油剤Yと馴染みやすい部分であり、接着剤と油剤Yとが混ざることで、粘着強度が低下しやすい。特に、バックシート31として、液体は不透過だが、気体の通気を可能とする通気フィルムを用いた場合には、吸収性コア11に設けられた油剤Yがバックシート31を通過して本体粘着部32と混ざりやすい。そのため、ナプキン1の本体粘着部32が、部分的に粘着強度が高い部分と部分的に粘着強度が低い部分を備えることで、着衣への固定強度を確保しつつ、粘着強度が過度に強くなる恐れを軽減させることができる。使用後のナプキン1の吸収性コア11のうち、特に油剤Yが設けられた部分は、体液を多く含んでよれやすく、崩れやすい。この吸収性コア11を備えたナプキン1を着衣から取り除く際には、粘着強度が低い重なり領域y32を備えることで、ナプキン1を着衣から小さな力で取り除くことができるため、重なり領域y32における吸収性コア11の形状を崩れにくくして、取り除いたナプキン1を丸める作業等を行いやすくなり、捨てやすくなる。
【0101】
各領域(重なり領域y32、非重なり領域n32)における本体粘着部32の粘着強度は、周知の方法で測定可能である。
例えば、ピール試験(JIS Z0237)により、本体粘着部32の引きはがし時に必要な力を測定することで粘着強度を比較することができる。
具体的には、まず、ナプキン1の重なり領域y32及び非重なり領域n32を、それぞれ所定の大きさ(10mm×10mm)でカットし、サンプル片とする。
そして、各サンプル片を、試験板に貼り付け、サンプル片の端部を掴み引き剥がす。その際の引き剥がすための荷重をロードセルで測定する。この測定を、各サンプルについて、複数回行う。
得られた引き剥がすための荷重[N]の平均値をサンプル片の幅(10mm)で除し、10倍することで、本体粘着力32の粘着強度[N/10mm]を算出することができる。
粘着強度[N/10mm]=(荷重[N]×10)/(サンプル片の幅)
算出した各サンプル片の粘着強度[N/10mm]によって、粘着強度を比較することができる。
なお、試験板は、JIS Z0237で規定されたSUS304鋼鈑や、その他使用時を想定して、綿100%のシート部材やポリエステル100%のシート部材を水平な板に固定したものであってもよい。
【0102】
ナプキン1は、1又は複数の折り部Fで折り畳まれた状態で流通、販売、保管等がなされる。折り部Fは、幅方向に沿った折り畳み線であり、ナプキン1では、長手方向の中央線CLより前側に前側折り部F1と、中央線CLより後側に後側折り部F2を備える。ナプキン1は、折り部F1、F2でそれぞれ肌側面を内側にして折り畳まれる。図1等に示すナプキン1は、全ての折り部Fを展開した展開状態を示している。この展開状態のナプキン1において、長手方向において、油剤Yが折り部Fを跨いで設けられていることが好ましい。具体的には、図1に示すように、吸収性コア11に油剤Yが設けられた領域Y11は、前側折り部F1を跨いで設けられている。つまり、平面視において、領域Y11に重なる位置に前側折り部F1が設けられている。前側折り部F1(折り部F)は、吸収性コア11の繊維の密度が高くなりやすく、前側折り部F1が幅方向に沿うことから、着用時に前側折り部F1に到達した排泄物が前側折り部F1に沿って幅方向の外側に拡散しやすい。そのため、吸収性コア11に油剤Yが設けられた領域である領域Y11が前側折り部F1を跨ぐように設けることで、着用時に、排泄物が前側折り部F1に到達した場合でも領域Y11の油剤Yによって排泄物を長手方向に向かって拡散を促しやすくなる。これにより、ナプキン1の幅方向の外側に排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0103】
また、吸収性コア11の厚さ方向における中央11cより肌側の部分tuに設けられた油剤Yの単位体積当たりの重量が、吸収性コア11の厚さ方向における中央11cより非肌側の部分tbに設けられた油剤Yの単位体積当たりの重量より重いことが好ましい。つまり、吸収性コア11の厚さ方向において、非肌側より肌側の方が、油剤Yが多く設けられている。これにより、着用時において、ナプキン1の肌側面から吸収した排泄物を、吸収性コア11の肌側から非肌側に向かって吸収させ、移動させやすくなる。
【0104】
上述のとおり、ナプキン1のトップシート21は、着用者の肌に当接可能なシートである。このトップシート21にも油剤Yが設けられ、トップシート21に油剤Yが設けられた領域Y21を有することが好ましい。そして、厚さ方向に見て、トップシート21のうち、長手方向又は幅方向の中央部Tb、Wbと重なる部分に設けられた油剤Yの坪量が、長手方向又は幅方向の一方側部Ta、Waと重なる部分に設けられた坪量より高いことが好ましい。本実施形態のナプキン1は、ナプキン1の製造過程において、トップシート21と吸収体10とを重ねた状態で、トップシート21の肌側面から油剤Yを塗布している。そして、トップシート21から含浸した油剤Yが吸収性コア11で留まり、保持した状態となっている。吸収性コア11に加えて、トップシート21にも油剤Yが設けられ、トップシート21のうち、長手方向又は幅方向の中央部Tb、Wbと重なる部分に設けられた油剤Yの坪量が、長手方向又は幅方向の一方側部Ta、Waと重なる部分に設けられた坪量より高いことで、トップシート21における長手方向又は幅方向の中央部Tb、Wbと重なる部分の排泄物の拡散を促しやすくなる。これにより、厚さ方向に見て、トップシート21のうちの長手方向又は幅方向の中央部Tb、Wbと重なる部分で、ある程度排泄物を拡散させた後に、排泄物を非肌側に移動させ、吸収性コア11の長手方向又は幅方向の中央部Tb、Wbの広い範囲で排泄物を吸収しやすくなるため、ナプキン1としての排泄物の吸収を速めやすくなる。そして、油剤Yにより吸収性コア11の中央部Tb、Wbにおける排泄物の吸収を促しやすくしつつ、吸収性コア11の長手方向又は幅方向の一方側部Ta、Waにおける排泄物の拡散を抑制しやすくする。
【0105】
また、ナプキン1のトップシート21に油剤Yが設けられている場合において、図9に示すように、トップシート21の幅方向の長さW21が、吸収性コア11の幅方向の長さW11より長く(W21>W11)、吸収性コア11より幅方向の外側に油剤Yが設けられていないことが好ましい。これによって、吸収性コア11の幅方向の端部における排泄物の拡散を抑制しやすくし、ナプキン1の幅方向の外側から排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0106】
ナプキン1のトップシート21に油剤Yが設けられている場合において、図9に示すように、トップシート21の幅方向の長さW21が、吸収性コア11の幅方向の長さW11より長い(W21>W11)ことが好ましい。そして、吸収性コア11は、油剤Yが設けられたコア油剤存在領域Y11と、油剤Yが設けられていないコア油剤非存在領域N11を有する。表面シート21は、油剤Yが設けられた表面油剤存在領域Y21と、油剤Yが設けられていない表面油剤非存在領域N21を有する。このナプキン1の厚さ方向において、コア油剤存在領域Y11と表面油剤存在領域Y21とが重なる第1領域R1と、コア油剤非存在領域N11と表面油剤存在領域Y21とが重なる第2領域R2と、表面油剤非存在領域と吸収性コアとが重ならない第3領域R3を有することが好ましい。そして、図9に示すように、第1領域R1と第2領域R2と第3領域R3が、幅方向の内側から外側に、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3の順に設けられていることが好ましい。これにより、着用時には、まず、ナプキン1のうちの第1領域R1で排泄物の拡散を促しつつ、第2領域R2、第3領域R3での排泄物の拡散を抑制しやすくする。そのため、ナプキン1の幅方向の外側に排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0107】
さらに、コア油剤存在領域Y11が、第1領域R1に、周囲よりも油剤Yの坪量が高いコア油剤濃領域Y11kを有し、表面油剤存在領域Y21が、第1領域R1に、周囲よりも油剤Yの坪量が低い表面油剤薄領域Y21uを有することが好ましい。このような場合に、ナプキン1を厚さ方向に見て、第1領域R1の幅方向の中央部且つ長手方向の中央部に、コア油剤濃領域Y11kと表面油剤薄領域Y21uとが重なる部分を有することがより好ましい。
【0108】
着用者の肌に当接可能なトップシート21のうちの第1領域R1は、着用時に膣口等の排泄口に当接しやすい部分である。膣口等の排泄口は特に敏感な部分であり、油剤Yが直接触れると刺激を与えたり、悪影響を与えたりする恐れがある。特に、本実施形態の吸収性コア11は、長手方向及び幅方向の中央部に、肌側に突出した中高部11dを有しているため、より着用者の膣口等の排泄口に当接しやすい。
一方で、トップシート21は油剤Yを備えることが好ましく、特に厚さ方向に見てコア油剤存在領域Y11と重なる第1領域R1での、トップシート21内における排泄物の浸透・拡散を促して、トップシート21の表面(肌側面上)で排泄物が流れてナプキン1から排泄物が漏れてしまうことを防ぐことが好ましい。そのため、トップシート21が、第1領域R1に表面油剤薄領域Y21uを有することで、着用者の排泄口に直接触れる可能性のある部分に設ける油剤Yの量を少なくすることで、トップシート21内での排泄物の浸透・拡散を促し、着用者の排泄口に対して油剤Yが排泄口に対して刺激や悪影響を与える恐れを軽減させることができる。
また、厚さ方向に見て、第1領域R1に、コア油剤濃領域Y11kと表面油剤薄領域Y21uを有し、厚さ方向に見てコア油剤濃領域Y11kと表面油剤薄領域Y21uとが重なる部分を有することで、トップシート21内での拡散よりもトップシート21から非肌側へ移行させやすく、周囲よりも油剤Yの坪量が高いコア油剤濃領域Y11kを備えた吸収性コア11での排泄物の吸収や排泄物の拡散を促しやすい。そのため、吸収性コア11内に排泄物を引き込みやすくなり、ナプキン1の表面上で排泄物が拡散して漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0109】
ナプキン等の吸収性物品が、後処理タブ又は後処理テープを有する構成であってもよい。例えば、図10に示すように、ナプキン100が夜用の生理用ナプキンであって、ナプキン100が後処理タブ50を備えていてもよい。図10は、ナプキン100を非肌側から見た平面図である。ナプキン100について、上述のナプキン1と構成が同じものについては、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0110】
ナプキン100は、ナプキン100の非肌側面、つまりバックシート31の非肌側面に、後処理タブ50を有する。後処理タブ50は、ナプキン100の使用後に用いる部材である。後処理タブ50は、接着剤等でバックシート31に固定された固定部と、バックシート31に固定されていない自由部とを備えた帯状のフィルム部材である。ナプキン100の使用後に、長手方向に丸めた状態のナプキン100を、長手方向に伸ばした状態の後処理タブ50で巻いて、後処理タブ50をナプキン100の本体粘着部32に付けることで、ナプキン100の丸めた状態を維持しやすくなる。
【0111】
この後処理タブ50について、ナプキン100を厚さ方向に見て、油剤Y(領域Y11)が、後処理タブ50と重ならないことが好ましい。使用後のナプキン100の吸収性コア11は油剤Yによって排泄物が拡散することによって、吸収性コア11の形状が崩れやすくなる。一方、吸収性コア11のうち、厚さ方向に見て、油剤Y(領域Y11)と重ならない部分は、油剤Y(領域Y11)と重なる部分よりも、油剤Yによる排泄物の拡散が比較的少ないため、吸収性コア11の形状が崩れにくい。そのため、厚さ方向に見て、油剤Y(領域Y11)と重ならない部分に後処理タブ50を設けることで、使用後にナプキン100を丸めて廃棄する際に、吸収性コア11の形状の崩れを防いだ状態で吸収性コア11を丸めやすくなる。
【0112】
なお、ナプキン100は後処理タブ50を備えたが、これに限られない。例えば、吸収性物品が使い捨ておむつやショーツ型ナプキンの場合には、使用後の吸収性物品を丸めた状態で維持するための後処理テープを備えてもよい。後処理テープは、テープの長手方向の一方側の端部が吸収性物品に固定され、長手方向の他方側の端部に粘着部を備えたフィルム部材であり、使用後に丸めた状態の吸収性物品を後処理テープで巻いて、後処理テープの他方側の端部の粘着部で止めることで、吸収性物品の丸めた状態を維持しやすくなる。このような後処理テープを備えた吸収性物品についても後処理タブ50と同様に、厚さ方向に見て、吸収性コア11に設けた油剤Yと重ならない位置に後処理テープを設けることが好ましい。
【0113】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0114】
1 ナプキン(吸収性物品)、
1W ウイング部、
10 吸収体、
11 吸収性コア、11d 中高部、
12 コアラップシート、
12a 肌側部(コアラップシート)、12b 非肌側部(コアラップシート)、
14 中央圧搾部、15 吸収体圧搾部、
21 トップシート(表面シート)、
22 セカンドシート、
23 サイドシート、24 補強シート、
31 バックシート(非肌側シート)、
32 本体粘着部(粘着部)、33 ウイング粘着部、
CA 股下領域、
ee 円形圧搾部、EL 線状圧搾部、
Ta 前側部(一方側部)、Tb 中央部、Tc 後側部(他方側部)、
Wa 左側部(一方側部)、Wb 中央部、Wc 右側部(他方側部)、
Y 油剤、
Y11 領域(コア油剤存在領域)、Y11k コア油剤濃領域、
N11 コア油剤非存在領域、
Y21 領域(表面油剤存在領域)、Y21u 表面油剤薄領域、
N21 表面油剤非存在領域、
R1 第1領域、R2 第2領域、R3 第3領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10