(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104935
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】陰唇間パッド
(51)【国際特許分類】
A61F 13/472 20060101AFI20250703BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20250703BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20250703BHJP
A61F 13/537 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
A61F13/472 100
A61F13/534 100
A61F13/53 300
A61F13/537 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223132
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 紗恵子
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕一
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA15
3B200BB04
3B200BB05
3B200DA08
3B200DA10
3B200DA12
3B200DA13
3B200DA14
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB12
3B200EA02
3B200EA21
3B200EA24
3B200EA27
(57)【要約】
【課題】良好なフィット性を有しつつ、着用者に不快感を生じさせ難い陰唇間パッドを提供する。
【解決手段】吸収性コア(132)と、非肌側シート(133)と、を有する陰唇間パッド(1)であって、非肌側シート(133)は、幅方向において陰唇間パッド(1)を3等分したときの両側に位置する端部領域(SR)において、複数のスリット(18)を有し、複数のスリット(18)は、第1方向に沿った第1スリット(18a)と、第1方向とは異なる方向に沿った第2スリット(18b)とを有しており、複数のスリット(18a,18b)のうちの何れのスリットも、他のスリットと交差していない。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する前後方向と幅方向と厚さ方向とを有し、
吸収性コアと、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の非肌側に設けられた非肌側シートと、を有する陰唇間パッドであって、
前記非肌側シートは、前記幅方向において前記陰唇間パッドを3等分したときの両側に位置する端部領域において、複数のスリットを有し、
前記複数のスリットは、第1方向に沿った第1スリットと、前記第1方向とは異なる方向に沿った第2スリットとを有しており、
前記複数のスリットのうちの何れのスリットも、他のスリットと交差していない、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項2】
請求項1に記載の陰唇間パッドであって、
前記第1スリットは、前記幅方向に沿ったスリットであり、
前記第2スリットは、前記前後方向に沿ったスリットである、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の陰唇間パッドであって、
前記幅方向において前記陰唇間パッドを3等分したときの中央に位置する中央領域に、前記第1スリットと、前記第1方向とは異なる方向に沿った前記第2スリットとをそれぞれ複数有し、
前記中央領域において、前記第1スリットと前記第2スリットとが交差する部分を有している、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項4】
請求項2に記載の陰唇間パッドであって、
前記第1スリットは、前記幅方向において、前記第2スリットの一方側に隣り合う一方側第1スリットと、前記第2スリットの他方側に隣り合う他方側第1スリットとを有し、
前記厚さ方向に見たときに、前記一方側第1スリットの延長線と、前記他方側第1スリットとの延長線とが重複しており、
前記一方側第1スリットと前記他方側第1スリットとの間隔は、前記一方側第1スリット及び前記他方側第1スリットの少なくとも何れかの長さよりも短い、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項5】
請求項4に記載の陰唇間パッドであって、
前記一方側第1スリットと前記他方側第1スリットとの間隔は、前記一方側第1スリットの長さよりも短く、且つ、前記他方側第1スリットの長さよりも短い、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項6】
請求項4に記載の陰唇間パッドであって、
前記一方側第1スリットと前記他方側第1スリットとの間隔は、前記吸収性コアに含まれる繊維の平均繊維長よりも長い、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項7】
請求項4に記載の陰唇間パッドであって、
前記吸収性コアは、前記幅方向において、前記一方側第1スリットの前記他方側の端と、前記他方側第1スリットの前記一方側の端との間に、前記厚さ方向における肌側に凸となる部分を有する、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項8】
請求項2に記載の陰唇間パッドであって、
前記第2スリットは、前記前後方向において非連続な部分を有する、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項9】
請求項8に記載の陰唇間パッドであって、
前記第2スリットは、前記吸収性コアの前記前後方向における中央位置よりも前側に配置された前側第2スリットと、前記中央位置よりも後側に配置された後側第2スリットとを有し、
前記前側第2スリットの前記前後方向における長さは、前記後側第2スリットの前記前後方向における長さよりも短い、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項10】
請求項9に記載の陰唇間パッドであって、
前記前側第2スリットの前記幅方向の両側に隣り合って配置された前記第1スリットの数よりも、
前記後側第2スリットの前記幅方向の両側に隣り合って配置された前記第1スリットの数の方が多い、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項11】
請求項2に記載の陰唇間パッドであって、
前記幅方向において前記陰唇間パッドを3等分したときの中央に位置する中央領域に設けられた前記第2スリットの前記前後方向における長さは、
前記端部領域に設けられた前記第2スリットの前記前後方向における長さよりも短い、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項12】
請求項2に記載の陰唇間パッドであって、
前記端部領域において、複数の前記第1スリットの少なくとも一部は、前記幅方向に対して所定の角度だけ傾斜して配置されている、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項13】
請求項12に記載の陰唇間パッドであって、
前記吸収性コアの前記前後方向における中央位置よりも前側と後側とで、前記幅方向に対する傾斜角度が逆になるように前記第1スリットが配置されている、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項14】
請求項1または2に記載の陰唇間パッドであって、
着用者の肌に当接可能な表面層と、
前記表面層と前記吸収性コアとの間に副吸収層を有し、
前記吸収性コアの方が、前記副吸収層よりも、平均繊維長が短く、平均繊維径が細い、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項15】
請求項1または2に記載の陰唇間パッドであって、
前記幅方向において前記陰唇間パッドを3等分したときの中央に位置する中央領域における前記吸収性コアの平均の坪量は、
前記端部領域における前記吸収性コアの平均の坪量よりも小さい、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項16】
請求項15に記載の陰唇間パッドであって、
前記吸収性コアのうち平均の坪量が大きい前記端部領域には、互いに交差する前記スリットが設けられておらず、
前記吸収性コアのうち平均の坪量が小さい前記中央領域には、互いに交差する前記スリットが設けられている、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰唇間パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、陰唇に密着させて装着する陰唇間パッド等の吸収性物品が知られている。このような陰唇間パッド(吸収性物品)では、吸収体等の剛性が高い部材に複数のスリットを設けて、着用者の身体の凹凸に沿って3次元的に変形しやすくすることにより、着用時におけるフィット性を高めることができる。例えば、特許文献1には,製品の長手方向や短手方向に沿って複数のスリットが設けられた陰唇間パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような複数のスリットを有する陰唇間パッドにおいて、異なる二つのスリットが互いに交差していた場合、当該交差部分で吸収性コアや吸収性コアと積層されたシート部材が肌側に捲れ上がってしまい、着用者に違和感を生じさせるおそれがある。特に陰唇間パッドでは、捲れ上がった部分が敏感な肌(陰唇)に刺激を与え、不快感を生じさせやすくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、良好なフィット性を有しつつ、着用者に不快感を生じさせ難い陰唇間パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、互いに交差する前後方向と幅方向と厚さ方向とを有し、吸収性コアと、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の非肌側に設けられた非肌側シートと、を有する陰唇間パッドであって、前記非肌側シートは、前記幅方向において前記陰唇間パッドを3等分したときの両側に位置する端部領域において、複数のスリットを有し、前記複数のスリットは、第1方向に沿った第1スリットと、前記第1方向とは異なる方向に沿った第2スリットとを有しており、前記複数のスリットのうちの何れのスリットも、他のスリットと交差していない、ことを特徴とする陰唇間パッドである。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好なフィット性を有しつつ、着用者に不快感を生じさせ難い陰唇間パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】吸収層13の構成について説明する平面図である。
【
図6】広葉樹吸水性繊維(広葉樹パルプ)と針葉樹吸水性繊維(針葉樹パルプ)の繊維長の分布を示す図である。
【
図8】パッド1等の吸収性物品を製造する製造装置500について説明する概略図である。
【
図9】
図9A~
図9Cは、第1スリット18aを形成する際に用いられるカッターロール551の構成について説明する図である。
【
図10】
図10A~
図10Bは、第1スリット18aを形成する際に用いられるアンビルロール552の構成について説明する図である。
【
図11】カッターロール551とアンビルロール552によって第1スリット18aを形成する動作について説明する図である。
【
図12】
図12A~
図12Cは、第2スリット18bを形成する際に用いられるカッターロール561の構成について説明する図である。
【
図13】
図5の領域Sに形成されている複数の第1スリット18a及び複数の第2スリット18bの配置について説明する図である。
【
図14】第1スリット18aと第2スリット18bとが交点を有していた場合について説明する図である。
【
図15】
図15A及び
図15Bは、第1スリット18aを形成する際に繊維長の長さが及ぼす影響について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
互いに交差する前後方向と幅方向と厚さ方向とを有し、吸収性コアと、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の非肌側に設けられた非肌側シートと、を有する陰唇間パッドであって、前記非肌側シートは、前記幅方向において前記陰唇間パッドを3等分したときの両側に位置する端部領域において、複数のスリットを有し、前記複数のスリットは、第1方向に沿った第1スリットと、前記第1方向とは異なる方向に沿った第2スリットとを有しており、前記複数のスリットのうちの何れのスリットも、他のスリットと交差していない、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【0011】
態様1の陰唇間パッドによれば、端部領域において、互いに異なる方向に沿った第1スリット及び第2スリットが複数設けられていることにより、吸収層が3次元変形しやすくなり、フィット性が向上する。加えて、各々のスリットが互いに交差していないことにより、吸収層を構成する非肌側シート等が肌側に捲れ上がって陰唇を刺激してしまうことが抑制され、着用者に不快感や違和感を生じさせ難くすることができる。
【0012】
(態様2)
前記第1スリットは、前記幅方向に沿ったスリットであり、前記第2スリットは、前記前後方向に沿ったスリットである、態様1に記載の陰唇間パッド。
【0013】
態様2の陰唇間パッドによれば、第1スリット及び第2スリットを折れ曲がり起点として、吸収層等が、前後方向及び幅方向に折れ曲がり変形を生じやすくなる。これにより、陰唇間パッドが着用者の股間部の凹凸に応じてより柔軟に変形しやすくなり、フィット性を向上させることができる。
【0014】
(態様3)
前記幅方向において前記陰唇間パッドを3等分したときの中央に位置する中央領域に、前記第1スリットと、前記第1方向とは異なる方向に沿った前記第2スリットとをそれぞれ複数有し、前記中央領域において、前記第1スリットと前記第2スリットとが交差する部分を有している、態様1または2に記載の陰唇間パッド。
【0015】
態様3の陰唇間パッドによれば、中央領域において交差する第1スリット及び第2スリットにより、吸収層が折れ曲がり変形を生じやすくなり、膣口へのフィット性を向上させることができる。また、中央領域は、陰唇間パッドの装着時に着用者の膣口に当接する部分であり、スリットの交点で肌側へ捲れが生じたとしても、当該捲れが陰唇間の溝に挟まれることから、着用者に違和感を生じさせ難い。
【0016】
(態様4)
前記第1スリットは、前記幅方向において、前記第2スリットの一方側に隣り合う一方側第1スリットと、前記第2スリットの他方側に隣り合う他方側第1スリットとを有し、前記厚さ方向に見たときに、前記一方側第1スリットの延長線と、前記他方側第1スリットとの延長線とが重複しており、前記一方側第1スリットと前記他方側第1スリットとの間隔は、前記一方側第1スリット及び前記他方側第1スリットの少なくとも何れかの長さよりも短い、態様1~3の何れかに記載の陰唇間パッド。
【0017】
態様4の陰唇間パッドによれば、一方側第1スリットと他方側第1スリットとの間でスリットが形成されていない部分の幅を各スリットの長さよりも短くすることで、スリットが形成されていない部分の幅が長い場合と比較して、吸収層の折れ曲がり変形が生じやすくなり、陰唇間パッドの端部領域におけるフィット性を向上させることができる。
【0018】
(態様5)
前記一方側第1スリットと前記他方側第1スリットとの間隔は、前記一方側第1スリットの長さよりも短く、且つ、前記他方側第1スリットの長さよりも短い、態様1~4の何れかに記載の陰唇間パッド。
【0019】
態様5の陰唇間パッドによれば、スリットが形成されておらず吸収層が変形を生じ難い領域(一方側第1スリットと他方側第1スリットとの間の領域)の両側に、変形を促進する長いスリットが設けられることにより、端部領域の広い範囲で変形が生じやすくなり、フィット性がより向上する。
【0020】
(態様6)
前記一方側第1スリットと前記他方側第1スリットとの間隔は、前記吸収性コアに含まれる繊維の平均繊維長よりも長い、態様1~5の何れかに記載の陰唇間パッド。
【0021】
態様6の陰唇間パッドによれば、一方側第1スリットと他方側第1スリットとの間隔が繊維の平均繊維長よりも長ければ、当該二つのスリットを形成する際に、スリットが形成される部分にて繊維が切断されてしまう確率が低くなる。したがって、切断部周辺において繊維が高密度化してしまうことが抑制され、吸収性コアの柔軟性が悪化し難い。
【0022】
(態様7)
前記吸収性コアは、前記幅方向において、前記一方側第1スリットの前記他方側の端と、前記他方側第1スリットの前記一方側の端との間に、前記厚さ方向における肌側に凸となる部分を有する、態様1~6の何れかに記載の陰唇間パッド。
【0023】
態様7の陰唇間パッドによれば、吸収性コアを構成している繊維が切断されることなく肌側に凸となる部分を有していることにより、当該部分では吸収性コアが高密度化され難く柔軟性が維持された状態で陰唇に当接する。これにより、良好な装着性を実現しやすくなる。
【0024】
(態様8)
前記第2スリットは、前記前後方向において非連続な部分を有する、態様1~7の何れかに記載の陰唇間パッド。
【0025】
態様8の陰唇間パッドによれば、前後方向に沿った第2スリットに非連続部を設けることにより、吸収層の折れ曲がり変形や、排泄液の拡散等を制御しやすくなり、良好なフィット性と液吸収性とを両立しやすくすることができる。
【0026】
(態様9)
前記第2スリットは、前記吸収性コアの前記前後方向における中央位置よりも前側に配置された前側第2スリットと、前記中央位置よりも後側に配置された後側第2スリットとを有し、前記前側第2スリットの前記前後方向における長さは、前記後側第2スリットの前記前後方向における長さよりも短い、態様1~8の何れかに記載の陰唇間パッド。
【0027】
態様9の陰唇間パッドによれば、装着時において、前後方向の前側領域(着用者の排泄口に近い領域)にて排泄液の吸収量が多くなることから、後側第2スリットを長くして吸収層の後側へ排泄液を拡散させやすくすることで、吸収層の前側で排泄液が滞留してしまうことを抑制し、吸収層の広い範囲で排泄液を保持しやすくすることができる。
【0028】
(態様10)
前記前側第2スリットの前記幅方向の両側に隣り合って配置された前記第1スリットの数よりも、前記後側第2スリットの前記幅方向の両側に隣り合って配置された前記第1スリットの数の方が多い、態様1~9の何れかに記載の陰唇間パッド。
【0029】
態様10の陰唇間パッドによれば、前後方向において中央位置よりも後側の領域に多くのスリットが設けられていることにより、吸収層の後側の領域が3次元変形をより生じやすくなる。したがって、陰唇間パッドの装着時に、身体の後側(背側)において、臀部等の大きな凹凸に応じて吸収層が3次元変形しやすくなり、フィット性を向上させることができる。
【0030】
(態様11)
前記幅方向において前記陰唇間パッドを3等分したときの中央に位置する中央領域に設けられた前記第2スリットの前記前後方向における長さは、前記端部領域に設けられた前記第2スリットの前記前後方向における長さよりも短い、態様1~10の何れかに記載の陰唇間パッド。
【0031】
態様11の陰唇間パッドによれば、着用者の排泄口(膣)に近い中央領域では第2スリットの前後方向の長さを過度に長くしないようにすることで前後方向への液拡散を制限し、端部領域では第2スリットの前後方向の長さ長くすることで前後方向への液拡散を促進することができる。これにより、吸収層の広範囲に排泄液を拡散させやすくすることができる。
【0032】
(態様12)
前記端部領域において、複数の前記第1スリットの少なくとも一部は、前記幅方向に対して所定の角度だけ傾斜して配置されている、態様1~11の何れかに記載の陰唇間パッド。
【0033】
態様12の陰唇間パッドによれば、第1スリットが斜めに傾いて配置されていることにより、陰唇間パッドの装着時に、斜めに配置された第1スリットに沿って折れ曲がり変形を生じやすくなる。これにより、吸収層が3次元的に変形しやすくなり、身体の凹凸によりフィットしやすくなる。
【0034】
(態様13)
前記吸収性コアの前記前後方向における中央位置よりも前側と後側とで、前記幅方向に対する傾斜角度が逆になるように前記第1スリットが配置されている、態様1~12の何れかに記載の陰唇間パッド。
【0035】
態様13の陰唇間パッドによれば、装着時に、着用者の身体の前側(腹側)と後側(背側)とで吸収層の折れ曲がり変形が逆になり、腹側及び背側の両側でそれぞれフィット性を向上させることができる。
【0036】
(態様14)
着用者の肌に当接可能な表面層と、前記表面層と前記吸収性コアとの間に副吸収層を有し、前記吸収性コアの方が、前記副吸収層よりも、平均繊維長が短く、平均繊維径が細い、態様1~13の何れかに記載の陰唇間パッド。
【0037】
態様14の陰唇間パッドによれば、吸収性コアは繊維が密集して密度が高くなりやすく、副吸収層は、吸収性コアと比較して密度が高くなり難い。したがって、陰唇間パッドの装着時に着用者の肌の近くに位置する副吸収層の密度が高くなり難く、肌当たりを柔らかくすることができる。
【0038】
(態様15)
前記幅方向において前記陰唇間パッドを3等分したときの中央に位置する中央領域における前記吸収性コアの平均の坪量は、前記端部領域における前記吸収性コアの平均の坪量よりも小さい、態様1~14の何れかに記載の陰唇間パッド。
【0039】
態様15の陰唇間パッドによれば、吸収性コアが幅方向における中央部で折れ曲がりやすくなり、中央が肌側に凸となる山型形状を維持しやすい。したがって、装着時における膣口へのフィット性を向上させることができる。
【0040】
(態様16)
前記吸収性コアのうち平均の坪量が大きい前記端部領域には、互いに交差する前記スリットが設けられておらず、前記吸収性コアのうち平均の坪量が小さい前記中央領域には、互いに交差する前記スリットが設けられている、態様1~15の何れかに記載の陰唇間パッド。
【0041】
態様16の陰唇間パッドによれば、装着時に着用者の陰唇に当接する端部領域では、スリットが交差しないようにすることで、捲れを生じ難くしている。一方、装着時に着用者の陰唇の間に位置する中央領域では、スリットが交差して捲れが生じたとしても着用者に違和感を生じさせ難く、更に吸収性コアの坪量が小さくなっているため、中央領域がより柔軟に変形しやすくなり、装着時における膣口へのフィット性がより向上する。
【0042】
===実施形態===
以下、本発明に係る吸収性物品として陰唇間パッド1(以下、「パッド1」ともいう。)を例に挙げて実施形態を説明する。陰唇間パッドは、女性の陰唇間に挟み込んで経血等の排泄物(体液)を吸収する生理用品である。
【0043】
<陰唇間パッド1の基本構成>
図1は、展開状態のパッド1の平面図である。
図1はパッド1の肌面側から見た図である。
図2は、
図1のA-A矢視概略断面図である。
図3及び
図4は、パッド1の構成を説明する図である。各図(
図1~
図4)における中央C-Cは、幅方向における中央を示し、中央CLは、パッド1を厚さ方向に見たときの、吸収層13(後述)の前後方向における中央を示す。また、
図1及び
図2は、指挿入シート15(後述)を中央C-Cで切断して、パッド1を平面上に平らに静置した状態(「平面平置き」状態)の図である。
【0044】
パッド1は、互いに直交する前後方向、幅方向、及び厚さ方向を有する。パッド1の前後方向において、着用時に、着用者の腹側に位置する側を「前側」とし、着用者の背側に位置する側を「後側」とする。また、パッド1の厚さ方向において、着用者の肌に当接する側を「肌側」とし、その反対側を「非肌側」とする。
【0045】
図1~
図4に示すように、パッド1は、平面視で、幅方向の長さより前後方向の長さが長い略楕円形状であり、幅方向の中央C―Cに対して対称な形状であり、前後方向における中央CLで幅方向の内側に括れて、幅方向の長さが狭くなった部分を有している。また、パッド1は、平面視で、前後方向の中央に対して非対称な形状であり、具体的には、中央CL(吸収層13の前後方向の中央)が、パッド1の前後方向における中央より後側に位置し、パッド1の前端から吸収層13の前端までの距離が、パッド1の後端から吸収層13の後端までの距離より長い。つまり、パッド1の前後方向において、吸収層13が、後側寄りに配置されている。パッド1は、
図2~
図4に示すように、表面層11、副吸収層12、吸収層13、裏面層14、指挿入シート15を備える。
【0046】
本実施形態のパッド1は、折り線Fで非肌側に折り曲げられた状態の製品として、保管及び流通される。
図3及び
図4は、パッド1を各部材に分解した状態を説明する図である。本実施形態のパッド1は、
図3Aに示すように、幅方向における中央部(中央C-C)の折り線F(折り曲げ線)で非肌側に向かって折り曲げられており、最も非肌側に、指挿入部20を形成するための指挿入シート15がホットメルト接着剤HMA等の接着剤を用いて固定されている。折り線Fは、前後方向に沿った、幅方向の中央部に設けられた折り曲げ部である。折り線Fは、所定の幅を持った部分であり、折り線Fの肌側の頂点(最も肌側に突出する部分)が、幅方向における中央C-Cと略同じ位置である。
図3Bは、指挿入シート15を、裏面層14から分離させた状態であり、
図3Cは、指挿入シート15が取り除かれたパッド1を、折り線Fにおける折り曲げた状態から水平にさせた状態である。そして、
図3Cに示す状態から、
図4に示すように、厚さ方向における肌側から順に、表面層11、副吸収層12、吸収層13、裏面層14が重ねられ、これらのうち少なくとも一部の部材同士が接着剤等によって接合されている(
図2参照)。
【0047】
表面層11は、最も肌側に位置し、着用時に着用者の肌(陰唇間)に当接する部材であるため、肌に刺激を与えにくい柔らかいシートを用いることが好ましい。表面層11は、パッド1の外形をなしており、液透過性のシート部材である。表面層11としては、例えば、メルトブローン、スパンボンド、ポイントボンド、スルーエアー、ニードルパンチ、乾式・湿式スパンレース、フォームフィルム等の製造方法から得られる不織布を単独又はこれらを組み合わせた材料が挙げられ、レーヨン、アセテート、コットン、パルプ又は合成樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート:PET、ポリプロピレン:PP,ポリエチレンPE等)を成分としたものを単独又は芯鞘構造を成すように複合したものを単独又は混合した繊維のシート部材を用いることができる。本実施形態のパッド1は、レーヨンとポリエチレンテレフタレートからなるシート部材を用いている。
【0048】
副吸収層12は、表面層11より非肌側に位置し、吸収層13より肌側に位置する。副吸収層12は、表面層11と吸収層13との間で、着用者の動き、陰唇の挙動変化、衣服からの圧力等の変化に柔軟に追従し、自身の形状を変化させ、着用者に与える違和感を軽減させるクッション層の役割を担う。副吸収層12の形状は、略楕円形で、表面層11より小さく、パッド1の略中央部(正確には、後側寄り)に位置している。また、副吸収層12の前後方向における中央CLで幅方向の内側に括れて、幅方向の長さが狭くなっている。副吸収層12としては、例えば、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットン、合成繊維を単独又は混合して用いることができる。本実施形態では、主にパルプ繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)を混合した繊維を用いている。
【0049】
吸収層13は、副吸収層12より非肌側に位置し、裏面層14より肌側に位置して、排泄物等の体液を吸収する吸収体である。吸収層13は、略楕円形状であり、パッド1の略中央部(正確には、後側寄り)に位置している。吸収層13の詳細については、後で説明する。
【0050】
裏面層14は、吸収層13より非肌側に位置するシート部材である。裏面層14は、パッド1の外形をなしており、平面視で、表面層11と略同じ形状、同じ大きさである。裏面層14としては、液透過性シートや液不透過性シート等のシート部材を用いることができ、例えば、合成樹脂のシート状フィルム、通気フィルム、パルプ、紙、不織布、通気性液遮断シート、又はこれらを組み合わせたシート部材等を使用することができる。本実施形態では、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、パルプを混合したシート状の部材を用いている。
【0051】
指挿入シート15は、指挿入部20を形成するためのシート部材である。指挿入部20は、指挿入シート15と裏面層14との間の空間であり、パッド1を装着する際に、着用者が指を挿入するための空間である。指挿入シート15は、裏面層14より前後方向における長さが短く、裏面層14より幅方向における長さが短い。また、裏面層14より非肌側で、前後方向における後側に設けられている。指挿入シート15の幅方向の両側部は、ホットメルト接着剤等の接着剤によって形成された指挿入シート接合部16によって、裏面層14の非肌側に接合固定されている(
図2参照)。指挿入シート15の前側の端部と指挿入シート15の後側の端部は、指挿入シート15と裏面層14とが接着剤で固定されていない開口部をそれぞれ有する。前側の開口部は、後側の開口部より大きい。着用者は、指挿入部20の前側の開口から指(例えば、中指)を挿入することで、パッド1を支持した状態で、パッド1を陰唇に当接させて、装着させることができる。
【0052】
指挿入シート15としては、表面層11や裏面層14と同様の材料を用いることができる。例えば、PE/PP、PE/PET、PP/PP等の複合合成繊維を原材料とするスパンレース不織布、シュリンクタイプ不織布、伸長性スパンボンド等の不織布や、レーヨン、アセテート、コットン、パルプ又は合成樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート:PET)の繊維のシート部材や、通気フィルム、紙、通気性液遮断シート等のシート部材を用いることができる。また、例えば、合成ゴム、非晶性オレフィン系樹脂を原料としたフィルム、開孔フォームフィルム、ネット、織布又は織布に合成ゴムを原料とした紡糸フィラメントを編み込んだ生地、合成ゴムを主体としたスパンボンド不織布やメルトブローン不織布、発泡フォームシート等の伸縮性を有するシートを用いてもよい。本実施形態では、主にパルプ及びレーヨンからなるシート部材を用いている。
【0053】
なお、本実施形態のパッド1は、未使用状態で、折り線Fで非肌側に折り曲げられた状態としたが、これに限られない。例えば、未使用状態では、折り線Fを有さず、折り曲げられていないもので、装着の際に着用者自身が非肌側に折り曲げて装着するものであってもよい。また、折り線Fを複数本備えるものであってもよい。折り線Fとして、折り曲げられた所謂折り癖を有するものであってもよく、折り癖を有さないものであってもよい。
【0054】
<パッド1の装着について>
パッド1は、幅方向における中央部で前後方向に沿って非肌側に向かって折り曲げた状態で着用者の肌(排泄口)に当接させることで、装着状態となる。本実施形態のパッド1は、生理用品であり、折り線Fで肌方向に凸となるように非肌側に向かって折り曲げて、パッド1の幅方向における中央部を女性の陰唇間に挟み込むことで装着状態とすることができる。パッド1は、生理用ナプキンよりも身体(排泄口)との密着性が高いため、排泄物(経血)の漏れが生じにくく、排泄時の不快感を生じさせにくい。
【0055】
装着の際には、着用者は、折り部Fで折り曲げられたパッド1の前側から指挿入部20に指(人差し指又は中指)を挿し込んだ状態で、腹側からパッド1を陰唇間に当接させ、挟み込ませることで装着状態とすることができる。そして、使用後は、装着状態のパッド1を便器(トイレ)の中に脱落させたり、装着状態のパッド1を手で掴んで便器の中に入れたりして、トイレに流して処理することができる。トイレに流すために、パッド1を構成する各部材及び接着剤は、生分解性素材、水分散性素材、又は水溶性素材で構成されていることが好ましい。トイレに流すことで、パッド1をゴミとして処理をする手間を削減したり、ゴミの量を削減させたりすることができたりする。
【0056】
なお、「生分解性」とは、放線菌等の細菌、その他の微生物の存在下、自然界のプロセスに従って、嫌気性又は好気性条件下で物質が二酸化炭素又はメタン等のガス、水及びバイオマスに分解されることをいい、当該物質の生分解能(生分解速度、生分解度など)が、落ち葉等の自然に生じる材料、もしくは同一環境下で生分解性として一般に認識される合成ポリマーに匹敵することをいう。「水分散性」とは、水解性でもあり、装着時の限定された量の水分(経血)では影響はないものの、多量の水又は水流中では、繊維同士が、少なくとも一般のトイレ配管を詰まらせることがない程度の小断片に容易に分散される性質のことをいう。「水溶性」とは、装着時の限定された量の水分(経血)では影響はないものの、多量の水又は水流中においては溶解する性質をいう。
【0057】
<吸収層13について>
図5は、吸収層13の構成について説明する平面図である。本実施形態の吸収層13は、厚さ方向における肌側から順に、肌側シート131、吸収性コア132、非肌側シート133を備えている。また、
図5に示されるように、パッド1を幅方向に三等分したときの中央に位置する領域を中央領域CRとし、両側に位置する領域を端部領域SRとする。
【0058】
吸収性コア132は、経血等の液体(体液)を吸収して保持する吸水性及び保水性を備えた部位であり、例えば、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットン、合成繊維、セルロース発泡体、合成樹脂の連続発泡体等を単独又は混合して用いることができる。また、粒子状高分子吸収体、繊維状高分子吸収体が混合されていてもよく、シート状高分子吸収体を用いてもよい。さらに、吸収性コアの嵩を維持させて保水性を高めるために、架橋剤により架橋させ捲縮された化学パルプ、アセテート、合成繊維を混合させていてもよい。パッド1では、所定形状に成型されたパルプ繊維(吸水性繊維)が用いられている。
【0059】
肌側シート131は、吸収性コア132を肌側から覆う部材であり、非肌側シート133は、吸収性コア132を非肌側から覆う部材である。肌側シート131及び非肌側シート133としては、例えば、粉砕パルプ、コットン等のセルロース、レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース、熱可塑性疎水性化学繊維に親水化処理を施したもの等が挙げられる。本実施形態において、パッド1の肌側シート131は、パルプとレーヨンのスパンレースからなるシートが用いられ、非肌側シート133は、パルプ100%の湿式抄紙ティッシュ等のパルプからなるシートが用いられる。
【0060】
また、肌側シート131を設けることで、吸収層13に達した排泄物を水平方向に拡散させやすくなり、水平に広げられた排泄物が吸収性コア132に吸収させることができる。これによって、排泄物を素早く吸収性コア132で吸収させやすくなるため、着用者の肌に与える不快感を軽減させやすくなる。
【0061】
また、吸収層13には複数のスリット18,18…と、複数の圧搾部19,19…(
図5では不図示)が設けられている。スリット18は、少なくとも、吸収層13(肌側シート131及び吸収性コア132及び非肌側シート133)を厚さ方向に貫通する切り込みである。但し、スリット18が、吸収層13及び副吸収層12を厚さ方向に貫通していても良い。当該スリット18が設けられていることにより、パッド1の装着時に、吸収層13や副吸収層12が着用者の身体の動きに追従して柔軟に変形しやすくなり、フィット性が向上する。また、吸収した排泄液をスリット18に沿って前後方向及び左右方向に拡散させることにより、吸収性コア132の広い範囲で排泄液を吸収・保持することができる。なお、詳細は後述するが、スリット18は、吸収層13の厚さ方向の非肌側からカッター等によって切り込みを入れることで形成される。したがって、本実施形態のパッド1では、少なくとも非肌側シート133にスリット(切れ目)が形成されている。
【0062】
スリット18は、幅方向に沿った第1スリット18aと、前後方向に沿った第2スリット18bとを有している。ここで、「幅方向に沿ったスリット」とは、そのスリット(若しくはスリットの接線)と幅方向とのなす角度のうち小さい方の角度が45度以下であるスリットを指す。すなわち、第1スリット18aには、幅方向と平行に設けられたスリット、及び、幅方向に対して45度以下の所定角度だけ傾斜して設けられているスリットが含まれるものとする。同様に、「前後方向に沿ったスリット」とは、そのスリット(若しくはスリットの接線)と前後方向とのなす角度のうち小さい方の角度が45度未満であるスリットを指す。すなわち、第2スリット18bには、前後方向と平行に設けられたスリット、及び、前後方向に対して45度未満の所定角度だけ傾斜して設けられているスリットが含まれるものとする。
【0063】
圧搾部19は、吸収層13(肌側シート131及び吸収性コア132及び非肌側シート133)と、副吸収層12とを厚さ方向に圧搾する部位であり、例えば吸収層13と副吸収層12とを厚さ方向に重ねてエンボス加工等を施すことにより形成される(
図4参照)。
当該圧搾部19が設けられていることにより、吸収層13や副吸収層12を構成している複数の繊維同士が圧着され、吸収層13及び副吸収層12がそれぞれ形状を維持しやすくなり、ばらけ難くなる。したがって、パッド1の着用時に、着用者が身体を動かした際に、吸収層13が型崩れしたり撚れたりして、フィット性が悪化したり排泄液が漏れてしまったりすることが抑制される。
【0064】
なお、吸収層13と副吸収層12とは圧搾部19によって圧着されているだけであり、接着剤等を用いて固定されていない。したがって、使用後のパッド1をトイレに流す際に、圧搾部19が水に濡れると、繊維同士の圧着(水素結合)が外れて吸収層13及び副吸収層12を構成している繊維がばらけやすくなる。これにより、水解性(水分散性)が高まり、トイレ配管を詰まらせる等の問題を生じ難くすることができる。
【0065】
また、本実施形態の吸収性コア132には、パルプ繊維(吸水性繊維)として、広葉樹からなる吸水性繊維である広葉樹吸水性繊維(広葉樹パルプ)が含まれている。この広葉樹吸水性繊維は、針葉樹からなる針葉樹吸水性繊維(針葉樹パルプ)と比較して繊維長が短く、また、繊維径が細いという特徴を有する。
【0066】
図6は広葉樹吸水性繊維(広葉樹パルプ)と針葉樹吸水性繊維(針葉樹パルプ)の繊維長の分布を示す図である。横軸は繊維長(mm)を示し、縦軸は頻度(%)を示している。
図6に示すように、針葉樹パルプの平均繊維長は2.5mm程度であり、繊維長の分布幅が広い(3mm以上の繊維が含まれる。標準偏差は1.6)。これに対し、広葉樹吸水性繊維の平均繊維長は0.79mm程度であり、繊維長の分布幅が狭い(標準偏差は0.27)。
【0067】
なお、パルプ繊維の平均繊維長は、中心線繊維長(Cont)による測定で長さ加重平均繊維長L(l)を意味する。長さ加重平均繊維長は、メッツォオートメーション(metso automation)社製のカヤーニファイバーラボファイバープロパティーズ(オフライン)[kajaaniFiberLab fiber properties(off-line)]により、L(l)値として測定される。なお、これはJIS P 8226-2(パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法 非偏光法に準ずる)で推奨されている方法でもある。
【0068】
吸収性コア132は、広葉樹パルプ等の繊維長が短い吸水性繊維(平均繊維長が0.8mm程度の吸水性繊維)によって構成されていることによって、高い保水性を備えている。例えば、繊維長が短い広葉樹パルプによって形成された吸収体と、繊維長が長い針葉樹パルプによって形成された吸収体とを同じ重量で比較した場合、広葉樹パルプの繊維本数密度の方が、針葉樹パルプの繊維本数密度よりも大きくなる。つまり、広葉樹パルプを使用することにより、針葉樹パルプを使用した場合と比べて吸収性コア132を高密度化することが可能である。そして、吸収性コア132を高密度化することによって、毛細管効果を高めることができ、保水性を向上させることができる。なお、繊維本数密度は、単位面積当たりの平均繊維本数に相当し、繊維太さ+平均繊維間距離にて、最密充填構造の場合に単位面積当たりに含まれる繊維の本数を試算した値である。
【0069】
<陰唇間パッド1の製造方法>
次に、陰唇間パッド1の製造方法について説明する。
図7は、本実施形態に係るパッド1の製造工程を表すフロー図である。
図8は、パッド1等の吸収性物品を製造する製造装置500について説明する概略図である。なお、
図7及び
図8は、パッド1の製造に係る代表的な工程について説明するものであり、製造工程の全てを表しているわけではない。
【0070】
図8に示す製造装置500は、
図7に示される各工程(S101~S110)を順次実施することによって、本実施形態に係るパッド1や他の吸収性物品を断続的に製造することができる。製造装置500は、搬送機構510と、吸収性コア積層機構520と、副吸収層積層機構530と、反転機構540と、第1スリット形成機構550と、第2スリット形成機構560と、切断シール機構570と、セーラー機構580と、指挿入シート取り付け機構590と、ほぐし機構595を備える。
【0071】
パッド1の製造工程では、はじめに吸収層13を構成する非肌側シート133の連続体を搬送方向に搬送する搬送工程が行われる(S101)。なお、製造装置500において搬送方向は、パッド1の前後方向に沿った方向である。以下では、搬送方向のことを「MD方向(Machine Direction)」とも呼び、搬送方向と直交する方向(パッド1の幅方向に沿った方向であって、
図8において紙面の奥行き方向)を「CD方向(Cross Direction)」とも呼ぶ。
【0072】
搬送工程では、非肌側シート133がMD方向に連なった状態の非肌側シート連続体133a(基材シート)が、原反ロールから繰り出された後、搬送ローラー等からなる搬送機構510によって、所定の搬送速度でMD方向の上流側から下流側へ搬送される。そして、非肌側シート連続体133aが搬送される間に、S102~S110の各工程が実施されることで、パッド1が製造される。
【0073】
次いで、MD方向に搬送される非肌側シート連続体133a(基材シート)に対して、吸収性コア積層機構520を用いて吸収性コア132を積層させる吸収性コア積層工程が行われる(S102)。吸収性コア積層機構520は、解繊装置521と、材料供給部522と、回転ドラム523とを有している。吸収性コア積層工程では、先ず、吸収性コア132の原料となる粉砕パルプが製造される。粉砕パルプは、原料となるパルプシートPS1を解繊装置521によって粉砕加工することによって製造される。解繊装置521には、円柱状のロールの外周面に複数の刃が設けられた回転体(例えば、ソーミル521m)が設けられている。この回転体(ソーミル521m)が原反ロールから繰り出されるパルプシートPS1を削るようにして回転することにより、パルプシートPS1が細かく粉砕され、粉砕パルプが製造される。なお、ソーミル521mとは異なる回転体を用いてパルプシートPS1を粉砕しても良いし、回転体の代わりにハンマーミルを用いて、パルプシートPS1を叩くようにして粉砕してもよい。また、本実施形態において吸収性コア132の原料となるパルプシートPS1は、上述したように、主に広葉樹パルプを含んだパルプによって構成されているが、針葉樹パルプを含んでいても良いし、パルプ混スパンレースでも良い。
【0074】
解繊装置521によって製造された粉砕パルプは、材料供給部522の内部に集め入れられ、回転ドラム523に供給される。材料供給部522は、回転ドラム523の上部を覆うように配置されており、粉砕パルプに熱可塑性樹脂を混合させるとともに、必要な場合は更に高吸収性ポリマー粒子(SAP)を混合させて、それらの混合物を空気搬送によって回転ドラム523へ供給する。
【0075】
回転ドラム523は、中空円筒形のドラムであり、外周面の外側から内側へ空気を吸引する吸引機構(不図示)を備えている。また、外周面には吸収性コア132の材料を詰める型として、複数の凹部523rが所定のピッチで形成されている。回転ドラム523が回転して凹部523rが材料供給部522へ進入すると、吸引機構の吸引により、材料供給部522から供給された吸収性コア132の材料(粉砕パルプ)が、凹部523rに堆積(集積)する。そして、回転ドラム523が回転して、吸収性コア132の材料を収容した凹部523rがドラムの最下部に到達するタイミングで、吸収性コア132の材料が凹部523rから外れ、搬送される基材シート(非肌側シート連続体133a)上に転写され、次の工程に引き渡される。これにより、吸収性コア132が非肌側シート133の肌側に積層される。
【0076】
次いで、吸収性コア132が積層された基材シートは、吸収性コア積層機構520から搬送方向(MD方向)の下流側に搬送される過程で、肌側シート131の連続体131aを重ねられ(
図8参照)、吸収層13が形成された状態で副吸収層積層機構530に到達する。なお、説明の簡略化のため、肌側シート131は
図8の以下の工程において不図示としている。
【0077】
次いで、副吸収層積層機構530にて吸収層13の厚さ方向の肌側に副吸収層12を積層させる副吸収層積層工程が行われる(S103)。副吸収層積層機構530は、解繊装置531を有している。解繊装置531は、円柱状のロールの周面に複数の刃が設けられた回転体であるソーミル531mを有している。そして、解繊装置521と略同様に、原反ロールから繰り出されるパルプシートPS2を削るようにして回転することにより、パルプシートPS2を粉砕して副吸収層12の原料となる粉砕パルプを製造する。粉砕パルプは、基材シート上に直接散布され、吸収層13の肌側に粉砕パルプの層(副吸収層12)が積層される。
【0078】
副吸収層積層工程で用いられるパルプシートPS2は、針葉樹パルプを含んで構成されており、針葉樹パルプの他に広葉樹パルプが含まれていても良いし、レーヨン混であっても良い。そして、パルプシートPS2における広葉樹パルプの含有率は、パルプシートPS1における広葉樹パルプの含有率よりも小さくなっている。これにより、副吸収層12は、吸収性コア132よりも平均繊維長が長く、また、平均繊維径が太くなる。
【0079】
また、吸収層13に副吸収層12が積層された後で、圧搾部19を形成するエンボス加工が施される。これにより、吸収層13や副吸収層12を構成している複数の繊維同士が圧着されて、両者が積層された状態で簡単に剥離したり型崩れしたりしないようになる。
【0080】
次いで、反転機構540により、基材シート(吸収層13及び副吸収層12)が厚さ方向において反転される反転工程が行われる(S104)。
図8では、紙面の左側から右側へ搬送されていた基材シートが、右側から左側へ搬送方向を反転され、同時に厚さ方向も反転される。したがって、反転工程以降では、副吸収層12の鉛直方向上側に吸収層13が積層された状態でMD方向へ搬送される。
【0081】
次いで、第1スリット形成機構550を用いて、吸収層13に第1スリット18aを形成する第1スリット形成工程が行われる(S105)。第1スリット形成機構550は、カッターロール551とアンビルロール552とを有している。カッターロール551は、円柱状のロールの周面に複数の刃が設けられ、CD方向に沿った回転軸を中心に駆動回転する回転体である。アンビルロール552は、厚さ方向(
図8では鉛直方向)においてカッターロール551と対向して配置され、CD方向に沿った回転軸を中心に駆動回転する回転体である。本実施形態では、
図8に示されるように、製造装置500の上下方向の上側(パッド1の非肌側)にカッターロール551が設けられ、下側(パッド1の肌側)にアンビルロール552が設けられている。そして、カッターロール551とアンビルロール552とによって、基材シート(吸収層13及び副吸収層12)を厚さ方向に挟み込んで押圧することで、第1スリット18aを形成する。カッターロール551及びアンビルロール552の具体的な構成や機能については、後で説明する。
【0082】
次いで、第2スリット形成機構560を用いて、吸収層13に第2スリット18bを形成する第2スリット形成工程が行われる(S106)。第2スリット形成機構560は、カッターロール561とアンビルロール562とを有している。カッターロール561は、円柱状のロールの周面に複数の刃が設けられ、CD方向に沿った回転軸を中心に駆動回転する回転体である。アンビルロール562は、厚さ方向(
図8では鉛直方向)においてカッターロール561と対向して配置され、CD方向に沿った回転軸を中心に駆動回転する回転体である。カッターロール561及びアンビルロール562の具体的な構成や機能については後で説明する。また、第2スリット形成工程において、第2スリット形成機構560は、基材シート(吸収層13及び副吸収層12)を
図1の破線で示されるような略楕円形の形状にカッティングする。
【0083】
第1スリット形成工程(S105)及び第2スリット形成工程(S106)にて吸収層13(及び副吸収層12)にスリット18が形成された後、厚さ方向において、副吸収層12の肌側から表面層11の連続体11aが積層され、吸収層13の非肌側から裏面層14の連続体14aが積層される。
【0084】
次いで、吸収層13及び副吸収層12を厚さ方向に挟み込んだ状態の表面層11の連続体11aと裏面層14の連続体14aとを、切断シール機構570を用いて、所定の形状に切断しつつ両者を接合(シール)する、切断シール工程が行われる(S107)。切断シール工程では、副吸収層12(吸収層13)よりも外側の領域において、表面層11の連続体11aと裏面層14の連続体14aとを熱溶着や超音波溶着等の公知の溶着手段、または、ホットメルト接着剤等の接着剤を用いて接合する。つまり、
図1に示す平面状態のパッド1のうち、副吸収層12を表す破線で囲まれた部分よりも外側の領域で、表面層11と裏面層14とがシール接合される。そして、MD方向に延びる帯状の連続体11a,14aを、パッド1の外縁(輪郭)に沿って切断し、個々のパッド1を切り出す。
【0085】
次いで、セーラー機構580を用いて、個々のパッド1を幅方向(CD方向)の中央部で前後方向(MD方向)に沿って折り曲げるセーラー工程が行われる(S108)。セーラー機構580は、
図3Bで示したように、前後方向(MD方向)に沿った折り線Fにて肌側に凸となる三角形状にパッド1を折り曲げる。
【0086】
次いで、指挿入シート取り付け機構590を用いて、裏面層14の非肌側に指挿入シート15を取り付ける、指挿入シート取り付け工程が行われる(S109)。挿入シート取り付け機構590は。
図3Bで示したように、三角形状に折り曲げられたパッド1の裏面層14の非肌側に指挿入シート15を取り付ける、
【0087】
次いで、ほぐし機構595を用いて、パッド1(吸収性物品)をほぐす、ほぐし工程が行われる(S110)。ほぐし機構595は、折り線Fにて二つ折りに折り曲げられたパッド1を周面に沿わせて搬送する複数のローラーを有し、該ローラーの周面に沿ってパッド1を厚さ方向の一方側及び他方側に湾曲させることで、パッド1に含まれるパルプ繊維の分布や交絡の偏りをほぐして均一化する。これにより、吸収層13が柔軟に変形しやすくなり、パッド1装着時におけるフィット性を向上させることができる。また、パルプ繊維の偏りが是正されるため、液吸収性や液拡散性が向上する。
【0088】
ほぐし工程が行われた後、パッド1は、MD方向の下流側において個包装され、1個ずつまたは複数個ずつパッキングされた陰唇間パッド包装体として出荷され、市場に流通する。
【0089】
<スリット18の形成及び配置について>
続いて、第1スリット18a及び第2スリット18bを形成する方法の詳細について説明する。先ず、第1スリット形成工程(S105)において、第1スリット18aを形成する方法について説明する。
図9A~
図9Cは、第1スリット18aを形成する際に用いられるカッターロール551の構成について説明する図である。
図9Aは、カッターロール551をMD方向から見たときの平面図である。
図9Bは、カッターロール551の周面551fに設けられた複数の刃551cの配置パターンを表す図である。
図9Cは、
図9BのD-D矢視を表す断面図である。また、
図10A~
図10Bは、第1スリット18aを形成する際に用いられるアンビルロール552の構成について説明する図である。
図10Aは、アンビルロール552をMD方向から見たときの平面図である。
図10Bは、
図10Aの領域Eを拡大して表す図である。
【0090】
第1スリット形成機構550のカッターロール551は、
図9Aに示されるように、CD方向に沿った回転軸Ar1を中心に回転する円筒状の回転体であり、円筒の周面551fから半径方向の外側に突出する複数の刃551c,551c…を有している。複数の刃551cは、
図9Bに示されるパターンで配置されており、同
図9Bのパターンが、
図9Aのようにカッターロール551の周面551fにおいて、周方向に沿って所定のピッチで断続的に設けられている。複数の刃551cの各々は、主にCD方向(パッド1の幅方向)に沿ったスリットを形成することが可能なように設けられている。すなわち、カッターロール551の各々の刃551cは、主にCD方向と平行もしくはCD方向に対して45度以下の所定角度だけ傾斜して設けられている。このような刃551cによって、パッド1に複数の第1スリット18aを形成することができる。但し、カッターロール551によって、一部MD方向に沿ったスリット18が形成されても良い。
【0091】
第1スリット形成機構550のアンビルロール552は、
図10Aに示されるように、CD方向に沿った回転軸Ar2を中心に回転する円筒状の回転体であり、パッド1(基材シート)を挟んでカッターロール551と対向するように設けられている(
図8参照)。そして、アンビルロール552及びカッターロール551が回転しながら、アンビルロール552の周面552fとカッターロール551の刃551cの先端とが当接する部分において、両者に挟みこまれた基材シート(本実施形態では吸収層13や副吸収層12等)に刃551cの形状に応じたスリット(切り込み)を形成する。
【0092】
また、アンビルロール552の周面552fの一部には、半径方向の内側に窪んだ溝552dが設けられている。本実施形態において、溝552dは、アンビルロール552のCD方向における中央位置CDCLの両側に一対設けられている。また、溝552dは、アンビルロール552の周方向(MD方向に対応する方向)に沿って連続的に設けられている。
【0093】
図11は、カッターロール551とアンビルロール552によって第1スリット18aを形成する動作について説明する図である。同
図11では、カッターロール551及びアンビルロール552をCD方向における中央位置CDCLで揃えて対向させたときの、カッターロール551の刃551cと、アンビルロール552の溝552dとの位置関係を表している。
【0094】
図11に示されるように、CD方向において、中央位置CDCLの両側で、刃551cと溝552dとが重複する部分を有している。例えば、
図11の領域Fでは、カッターロール551の刃551cのうちCD方向の中央部に位置する第1部分npがアンビルロール552の溝552dと重複している。一方、刃551cのうちCD方向の両端部に位置する第2部分cpは、溝552dと重複していない。つまり、カッターロール551の刃551cの先端とアンビルロール552の周面552fとが当接したときに、当該刃551cの第2部分cpは周面552fと当接するが、第1部分npは周面552fと当接しない。
【0095】
この場合、刃551cのうちCD方向の両端部に位置する第2部分cpは、アンビルロール552の周面552fに向かって基材シート(吸収層13等)を押圧することにより、スリット18を形成する。一方、刃551cのうちCD方向の中央部に位置する第1部分npは、アンビルロール552の溝552dに向かって基材シート(吸収層13等)を押圧するため、スリット18を形成しない。これにより、幅方向に沿った第1スリット18aにおいて、CD方向(幅方向)の中央部が分断されたようなスリット18が形成される(
図5の端部領域SR参照)。
【0096】
なお、アンビルロール552において、周面552fと溝552dとの境界が面取りされていることが好ましい。
図10Bでは、アンビルロール552の周面552fと溝552dとの境界で、黒塗りで表示されている角の部分chが面取りされている。このような面取りされた部分chが設けられることにより、カッターロール551の刃551cのうち、CD方向においてアンビルロール552の周面552fと重複する部分(スリット18を形成する第2部分cp)と、溝552dと重複する部分(スリット18を形成しない第1部分np)との境界で、刃551cによって押圧される際の力の加わり方が緩やかに変化するようになる。したがって、面取り部分chがない場合と比較して、スリット18の端部で基材が刃551cに付着しにくくなる。また、周面552fと溝552dとの境界部における面取りは、
図10Bのように直線的に形成されていても良いし、曲線的に形成されていても良い。つまり、周面552fと溝552dとの境界が曲面形状となっていても良い。
【0097】
続いて、第2スリット形成工程(S106)において、第2スリット18bを形成する方法について説明する。
図12A~
図12Cは、第2スリット18bを形成する際に用いられるカッターロール561の構成について説明する図である。
図12Aは、カッターロール561をMD方向から見たときの平面図である。
図12Bは、カッターロール561の周面561fに設けられた複数の刃561cの配置パターンを表す図である。
図12Cは、
図12BのG-G矢視を表す断面図である。
【0098】
第2スリット形成機構560のカッターロール561は、
図12Aに示されるように、CD方向に沿った回転軸Ar3を中心に回転する円筒状の回転体であり、円筒の周面561fから半径方向の外側に突出する複数の刃561c,561c…を有している。複数の刃561cは、
図12Bに示されるパターンで配置されており、同
図12Bのパターンが、
図12Aのようにカッターロール561の周面561fにおいて、周方向に沿って所定のピッチで断続的に設けられている。複数の刃561cの各々は、主にMD方向(パッド1の前後方向)に沿ったスリットを形成することが可能に設けられている。すなわち、カッターロール561の刃561cは、主にMD方向と平行もしくはMD方向に対して45度未満の所定角度だけ傾斜して設けられている。このような刃561cによって、パッド1に複数の第2スリット18bを形成することができる。但し、カッターロール561によって、一部CD方向に沿ったスリット18が形成されても良い。
【0099】
また、カッターロール561の周面561fには、MD方向に沿った複数の刃561c,561c…を取り囲むように、周状刃561rcが設けられている。周状刃561rcは、副吸収層12の外縁の形状(
図1の破線で示される略楕円形状)に合わせて設けられており、副吸収層積層工程(S103)において積層されたシート状の副吸収層12を所謂型抜きのように切り抜くことで、副吸収層12を略楕円形状に成形する。
【0100】
第2スリット形成機構560のアンビルロール562は、CD方向に沿った回転軸を中心に回転する円筒状の回転体であり、パッド1(基材シート)を挟んでカッターロール561と対向するように設けられている(
図8参照)。なお、アンビルロール562の周面には、アンビルロール552の溝552d(
図10参照)に相当する窪み(溝)は設けられていない。そして、アンビルロール562及びカッターロール561が回転しながら、アンビルロール562の周面とカッターロール561の刃561cの先端とが当接する部分において、両者に挟みこまれた基材シート(本実施形態では吸収層13や副吸収層12等)に刃561cの形状に応じたスリット(切り込み)を形成する。同時に、アンビルロール562の周面とカッターロール561の周状刃561rcの先端とが当接する部分において、両者に挟みこまれた基材シート(吸収層13及び副吸収層12)が周状刃561rcの形状に沿って略楕円形状に切り抜かれる。
【0101】
なお、第2スリット形成機構560のカッターロール561の刃561cの一部は、CD方向において、第1スリット形成機構550のアンビルロール552の溝552dと重複する位置に配置されている(
図12B参照)。そのため、第2スリット形成工程(S106)にて形成される第2スリット18bの一部は、第1スリット形成工程(S105)にて第1スリット18aが形成されていない部分(アンビルロール552の溝552dに対応する部分)に形成される。その結果、パッド1の端部領域SRでは、
図5に示されるように、第1スリット18aと第2スリット18bとが互いに交差する部分を有していない。
【0102】
図13は、
図5の領域Sに形成されている複数の第1スリット18a及び複数の第2スリット18bの配置について説明する図である。
図13の前後方向において、中央位置CLよりも前側には、前後方向に沿った第2スリット18b1(前側第2スリットとする)が設けられ、中央位置CLよりも後側には、第2スリット18b1と離間して、前後方向に沿った第2スリット18b2(後側第2スリットとする)が設けられている。
【0103】
また、幅方向において、第2スリット18b1の両側に隣り合うように、左右方向に沿った第1スリット18a11(一方側第1スリットとする)、及び、第1スリット18a12(他方側第1スリットとする)が設けられている。この第1スリット18a11,18a2は、
図11で説明したように、カッターロール551の或る刃551cによって形成されるスリットである。例えば、
図11の領域Fを表す断面図において、刃551cのうちCD方向の左側(幅方向の一方側)の第2部分cpによって、第1スリット18a11(一方側第1スリット)が形成される。同様に、刃551cのうちCD方向の右側(幅方向の他方側)の第2部分cpによって、第1スリット18a12(他方側第1スリット)が形成される。そして、
図11の刃551cのうちCD方向中央部の第1部分npではアンビルロール552の溝552dを押圧することにより、スリットが形成されない。したがって、
図13において第1スリット18a11(一方側第1スリット)の幅方向他方側端と、第1スリット18a12(他方側第1スリット)の幅方向一方側端との間の領域には第1スリット18aが形成されていない。
【0104】
つまり、第1スリット18a11(一方側第1スリット)及び第1スリット18a12(他方側第1スリット)は、カッターロール551の或る一つの刃551cによって形成される過程で、溝552dの部分で分断されることによって非連続となったスリットである。そして、これら2つのスリットは一つの刃551cによって形成されるため、厚さ方向に見たときに、第1スリット18a11の延長線と第1スリット18a12の延長線とは重複する(
図13参照)。
【0105】
また、第2スリット18b2(後側第2スリット)の幅方向に隣り合うように、左右方向に沿った第1スリット18a31,18a32、18a41,18a42、18a51が設けられている。互いに方向の異なる第1スリット18a及び2スリット18bが複数設けられていることにより、パッド1の着用時において当該スリット18a,18bを折れ曲がり起点として吸収層13等が3次元的に折れ曲がり変形して、着用者の身体の凹凸にピタッとフィットしやすくなる。
【0106】
そして、本実施形態のパッド1では、
図5及び
図13に示されるように、幅方向における両側の端部領域SRにおいて、複数設けられているスリット18,18…のうち、何れのスリット18も他のスリット18と交差していない。具体的には、端部領域SRにおいて、或る方向(
図5では幅方向)に沿った第1スリット18aと、第1スリット18aとは異なる方向(
図5では前後方向)に沿った第2スリット18bとが交点を有していない。これにより、パッド1を装着したときに、着用者に不快感等を生じ難くさせることができる。
【0107】
図14は、第1スリット18aと第2スリット18bとが交点を有していた場合について説明する図である。同
図14では、例えば非肌側シート133等の基材シートに第1スリット18a及び第2スリット18bが設けられており、両者が交点ipにて互いに交差している状態を表している。このような互いに交差するスリットが設けられた吸収性物品(陰唇間パッド)を装着する際に、第1スリット18a及び第2スリット18bの交点ipで基材シートが着用者の肌側に捲れ上がってしまう場合がある。特に、陰唇間パッドのような生理用品において、着用者の陰唇に当接する部分である幅方向両端部(パッド1の端部領域SRに相当する部分)にて
図14のような肌側への捲れ上がりが発生すると、当該捲れ上がった部分が陰唇を刺激して、着用者に不快感や違和感を生じさせるおそれがある。
【0108】
これに対して、本実施形態の陰唇間パッド1では、少なくとも端部領域SRにおいて、それぞれ複数ずつ設けられている第1スリット18a及び第2スリット18bの何れも互いに交差していない。したがって、
図14のように互いに交差するスリット同士が肌側に捲れ上がってしまうことは生じ難い。このように、パッド1では、端部領域SRにおいて、異なる方向に沿った第1スリット18a及び第2スリット18bが複数設けられていることにより、吸収層13等が3次元変形しやすくなり、フィット性が向上する。加えて、各々のスリット18a,18bが互いに交差していないことにより、吸収層13を構成する非肌側シート133等が肌側に捲れ上がってしまうことが抑制され、着用者に不快感や違和感を生じさせ難くすることができる。
【0109】
なお、複数のスリット18,18…のうち、第1スリット18aはパッド1の幅方向に沿って設けられ、第2スリット18bはパッド1の前後方向に沿って設けられている。したがって、当該スリット18a,18bを折れ曲がり起点として、吸収層13等が、前後方向及び幅方向に折れ曲がり変形を生じやすくなる。これにより、パッド1が着用者の股間部の凹凸に応じてより柔軟に変形しやすくなり、フィット性を向上させることができる。
【0110】
一方で、
図5に示されるように、パッド1の幅方向中央部に位置する中央領域CRでは、第1スリット18aと第2スリット18bとが交差する部分を有している。すなわち、中央領域CRでは、第1スリット18aと第2スリット18bとの交点において肌側への捲れが生じる場合がある。しかしながら、中央領域CRは、パッド1の装着時に着用者の膣口に当接する部分であり、肌側へ捲れが生じたとしても、当該捲れが陰唇間の溝に挟まれることから、陰唇に当接する場合と比較して、着用者に違和感を生じさせ難い。逆に、中央領域CRにおいて吸収層13が折れ曲がり変形を生じやすくなることにより、膣口へのフィット性を向上させることができる。
【0111】
また、第2スリット18bを挟んで幅方向の両側に隣り合う一方側第1スリット18aと他方側第1スリット18aとの間隔は、一方側第1スリット18a及び他方側第1スリット18aの少なくとも何れかの長さよりも短くなっている。ここで、一方側第1スリット18aと他方側第1スリット18aとの間隔とは、一方側第1スリット18aの幅方向における他方側の端と、他方側第1スリット18aの幅方向における一方側の端との間の距離のことを言う。例えば、
図13で、後側第2スリット18b2の幅方向一方側に隣り合う一方側第1スリット18a31と後側第2スリット18b2の幅方向他方側に隣り合う他方側第1スリット18a32との間隔l2は、少なくとも一方側第1スリット18a31の長さl1よりも短くなっている(l1>l2)。
【0112】
仮に、一方側第1スリット18a31と他方側第1スリット18a32との間でスリット18が形成されていない部分の幅(l2)が各スリットの長さ(l1,l3)よりも長いと、スリット18が形成されていない部分において、吸収層13の折れ曲がり変形が生じ難くなり、フィット性が悪化するおそれがある。これに対して、本実施形態の様に、スリット18が形成されていない部分の幅(l2)を各スリットの長さ(l1,l3)よりも短くすることで、逆の場合よりも吸収層13の折れ曲がり変形が生じやすくなり、パッド1の端部領域SRにおけるフィット性を向上させることができる
【0113】
さらに、第2スリット18bを挟んで幅方向の両側に隣り合う一方側第1スリット18aと他方側第1スリット18aとの間隔が、一方側第1スリット18aの長さよりも短く、且つ、他方側第1スリット18aの長さよりも短いことが好ましい。言い換えると、一方側第1スリット18aと他方側第1スリット18aとの間隔は、一方側第1スリット18a及び他方側第1スリット18aの両方よりも短いことが好ましい。スリット18が形成されておらず吸収層13等が変形を生じ難い領域の両側に、変形を促進する長いスリット18a,18aが設けられるため、端部領域SRの広い範囲で変形が生じやすくなり、フィット性がより向上する。
【0114】
また、第2スリット18bを挟んで幅方向の両側に隣り合う一方側第1スリット18aと他方側第1スリット18aとの間隔は、吸収性コア132に含まれる繊維の平均繊維長よりも長いことが好ましい。
図15A及び
図15Bは、第1スリット18aを形成する際に繊維長の長さが及ぼす影響について説明する図である。
図15Aは、一方側第1スリット18aと他方側第1スリット18aとの間隔よりも平均繊維長が長い場合について表している。
図15Bは、一方側第1スリット18aと他方側第1スリット18aとの間隔よりも平均繊維長が短い場合について表している。
【0115】
一方側第1スリット18aと他方側第1スリット18aとの間隔よりも平均繊維長が長い場合、第1スリット形成工程(S105)において第1スリット18aを形成する際に、
図15Aのようにアンビルロール552の溝552dの全体を跨ぐように繊維が配置されている可能性がある。この場合、カッターロール551の刃551cのうち、CD方向(幅方向)両端部の第2部分cp,cpがアンビルロール552の周面552fを押圧する際に繊維が切断される。繊維が切断されると、切断部周辺において繊維が高密度化して剛性が高くなり、吸収性コア132の柔軟性が悪化するおそれがある。
【0116】
これに対して、一方側第1スリット18aと他方側第1スリット18aとの間隔よりも平均繊維長が短い場合、
図15Bのようにアンビルロール552の溝552dの間に繊維が配置される可能性がある。この場合、カッターロール551の刃551cのうち、CD方向(幅方向)中央部の第1部分npがアンビルロール552の溝552dを押圧するため繊維は切断され難い。したがって、切断部周辺において繊維が高密度化する部分が少なくなり、吸収性コア132の柔軟性が悪化し難い。このように、一方側第1スリット18aと他方側第1スリット18aとの間隔が繊維の平均繊維長よりも長ければ、カッターロール551cによって繊維が切断される確率が低くなり、吸収性コア132の柔軟性を確保しやすくすることができる。
【0117】
また、第2スリット18bを挟んで幅方向の両側に隣り合う一方側第1スリット18aと他方側第1スリット18aとの間では、吸収性コア132が厚さ方向の肌側に凸となる部分が形成されている。例えば、
図13において、一方側第1スリット18a31と他方側第1スリット18a32との間の領域(溝552dと重複する領域)で、吸収性コア132の一部が肌側に凸となっている。これは、第1スリット形成工程(S105)において、カッターロール551の刃551cによって、吸収性コア132(基材)が非肌側から肌側(アンビルロール552の溝552d)へ向かって押圧されるためである(
図11等参照)。そして、吸収性コア132を構成している繊維が切断されることなく肌側に凸となる部分を有していることによって、当該部分では吸収性コア132が高密度化され難く柔軟性が維持された状態で陰唇に当接しやすくなる。これにより、良好な装着性を実現しやすくなる。
【0118】
また、第2スリット18bは、前後方向において非連続な部分を有している。
図13では、前側第2スリット18b1と後側第2スリット18b2とが前後方向に離間して設けられ、両スリット18b1,18b2の間が非連続となっている。パッド1において、前後方向に沿った第2スリット18bは、吸収層13が幅方向に折れ曲がり変形するのを誘導する機能と、吸収した経血等の排泄液を吸収層13の前後方向に拡散させる機能とを有している。仮に、前側第2スリット18b1と後側第2スリット18b2とが前後方向に連続した一本の長いスリット18であった場合、前後方向に延びる長いスリットによって前後方向に長い折り目が形成されやすくなり、身体形状の複雑な凹凸にフィットし難くなるおそれがある。また、吸収した排泄液の前後方向における拡散を制御し難くなり、前後方向の一方の側にのみ排泄液が集中してしまう等、吸収層13全体としての保水性能を十分に発揮できなくなるおそれがある。これに対して、第2スリット18bに非連続部を設けることにより、吸収層13の折れ曲がり変形や、排泄液の拡散等を制御しやすくなり、良好なフィット性と液吸収性とを両立しやすくすることができる。
【0119】
また、
図13に示されるように、前側第2スリット18b1の前後方向における長さは、後側第2スリット18b2の前後方向における長さよりも短くなっている。上述したように、第2スリット18bは、経血等の排泄液を吸収層13の前後方向に拡散させる機能を有している。パッド1の装着時には、着用者の排泄口(膣)が前後方向の中央位置CLよりも前側に位置しやすいことから、パッド1の前後方向の前側領域にて排泄液の吸収量が多くなる。そこで、後側第2スリット18b2を長くすることにより、吸収層13の前後方向における後側へ排泄液を拡散させやすくすることで、前後方向の前側で排泄液が滞留してしまうことを抑制し、吸収層13の広い範囲で排泄液を保持しやすくすることができる。
【0120】
なお、第2スリット18bが前後方向において非連続となっている場合、その非連続部分に、幅方向に沿った第1リット18aが配置されるようにしても良い。
図13では、前後方向において、前側第2スリット18b1と後側第2スリット18b2との間の非連続部分に、第1スリット18a21,18a22が設けられている。幅方向に沿った第1リット18aが設けられることによって、端部領域SRにおいて前側第2スリット18b1と後側第2スリット18b2との間の非連続部を跨いで排泄液が前後方向に移動(拡散)することを制限しやすくすることができる。これにより、吸収層13における液拡散をコントロールしやすくすることができる。
【0121】
また、
図13で、前側第2スリット18b1と後側第2スリット18b2との間の非連続部分に設けられる第1スリット18a21,18a22は、パッド1を前後方向において3等分したときの中央の領域に配置されている。この前後方向における中央の領域は、パッド1の装着時に着用者の股下に位置する領域であることから、当該領域において、幅方向に沿った第1スリット18a21,18a22が設けられていることにより、パッド1(吸収層13)が中央領域にて前後に折れ曲がりやすくなり、着用者の股下部に沿ってフィットしやすくなる。
【0122】
また、パッド1では、前側第2スリット18b1の幅方向に隣り合って配置されている第1スリット18aの数よりも、後側第2スリット18b2の幅方向に隣り合って配置されている第1スリット18aの数の方が多い。ここで、第2スリット18bの幅方向に隣り合って配置されている第1スリット18aとは、上述した第1スリット形成工程(S105)において、カッターロール551の刃551cとアンビルロール552の溝552dとによって幅方向に分断されるようにして形成された第1スリット18aのうち(
図11参照)、前後方向において少なくとも一部が第2スリット18bと重複する位置に配置されている第1スリット18aを指す。
【0123】
図13では、前側第2スリット18b1に隣り合って、2つの第1スリット18a11,18a12が設けられている。一方、後側第2スリット18b2に隣り合って、5つの第1スリット18a31,18a32,18a41,18a42,18a51が設けられている。前後方向において中央位置CLよりも後側の領域に多くのスリット18(18a)が設けられていることにより、吸収層13の後側の領域がより3次元変形を生じやすくなる。したがって、パッド1の装着時に、身体の後側(背側)において、臀部等の大きな凹凸に応じて吸収層13が3次元変形しやすくなり、フィット性を向上させることができる。
【0124】
また、パッド1の中央領域CRに設けられている各々の第2スリット18bの前後方向における長さは、端部領域SRに設けられている各々の第2スリット18bの前後方向における長さよりも短い(
図5参照)。パッド1の装着時に、中央領域CRは、着用者の排泄口に当接する領域であり、経血等の排泄液の吸収量が多くなる。そのため、中央領域CRにて吸収された排泄液を、中央領域CR内で前後方向に拡散させるよりも、中央領域CRから端部領域SRへ幅方向に拡散させた方が、吸収層13の広い範囲で効率よく排泄液を吸収・保持することができる。したがって、パッド1の中央領域CRでは、第2スリット18bの前後方向の長さを過度に長くしないようにすることで前後方向への液拡散を制限している。一方、端部領域SRでは第2スリット18bの前後方向の長さ長くすることで前後方向への液拡散を促進している。これにより、吸収層13の広範囲に亘って排泄液を拡散させやすくすることができる。
【0125】
また、端部領域SRに配置されている複数の第1スリット18aの少なくとも一部は、幅方向(CD方向)に対して所定の角度だけ傾斜して配置されている。例えば、
図13の前後方向における前側の領域では、第1スリット18a11~18a22が、幅方向の一方側から他方側、且つ、前後方向の後側から前側へ向かうように傾いて配置されている。第1スリット18aが斜めに傾いて配置されていることにより、パッド1の装着時に、斜めに配置された第1スリット18aに沿って折れ曲がり変形を生じやすくなる。これにより、吸収層13が3次元的に変形しやすくなり、身体の凹凸によりフィットしやすくなる。
【0126】
さらに、端部領域SRに配置されている複数の第1スリット18aは、前後方向における中央位置CLよりも前側と後側とで、幅方向に対する傾斜角度が逆になるように配置されている。例えば、
図13において、前後方向の前側に配置されている第1スリット18a11と、前後方向の後側に配置されている第1スリット18a41とでは、幅方向に対する傾きが逆になっている。これにより、パッド1の装着時に、着用者の身体の前側(腹側)と後側(背側)とで吸収層13の折れ曲がり変形が逆になり、腹側と背側とでそれぞれフィット性を向上させることができる。
【0127】
また、上述したように本実施形態のパッド1において、吸収層13の吸収性コア132は主に広葉樹パルプによって形成され、吸収層13の肌側に積層されている副吸収層12は針葉樹パルプを含んで形成されている。したがって、吸収性コア132を構成している繊維の方が、副吸収層12を構成している繊維よりも平均繊維長が短く、平均繊維長が細い。そのため、吸収性コア132は繊維が密集して密度が高くなりやすく、副吸収層12は吸収性コア132と比較して密度が高くなり難い。このような構成であれば、パッド1の装着時に着用者の肌の近くに位置する副吸収層12の密度が高くなり難いため、肌当たりを柔らかくすることができる。
【0128】
また、
図2に示されるように、吸収性コア132は、幅方向の中央部において、両端部よりも厚さが薄く坪量が低くなっている部分を有している。つまり、吸収性コア132の中央領域CRにおける平均の坪量は、端部領域SRにおける平均の坪量よりも小さくなっている。これにより、吸収性コア132は幅方向における中央部(中央C-C)の折り線F(折り曲げ線)で折れ曲がりやすくなり、
図3Aに示されるような中央C-Cが肌側に凸となる山型形状を維持しやすい。したがって、装着時における膣口へのフィット性を向上させることができる。
【0129】
そして、
図5に示されるように、吸収性コア132の坪量が大きい端部領域SRでは複数のスリット18a,18bが互いに交差しておらず、吸収性コア132の坪量が小さい中央領域CRでは複数のスリット18a,18bが互いに交差する部分を有している。上述したように、端部領域SRは、パッド1の装着時に着用者の陰唇に当接する部分であるため、スリット18a,18bが交差しないようにすることで、捲れを生じ難くしている。一方、中央領域CRは、パッド1の装着時に着用者の陰唇の間に位置する部分であることから、スリット18a,18bが交差して捲れが生じたとしても着用者に違和感を生じさせ難い。更に、中央領域CRでは吸収性コア132の坪量が小さくなっているため、スリット18a,18が交差していることと相まって、中央領域CRがより柔軟に変形しやすくなり、装着時における膣口へのフィット性がより向上する。
【0130】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのは言うまでもない。
【0131】
上述の実施形態で、吸収層13の吸収性コア132は、平均繊維長が0.8mm程度の短繊維によって構成されていることについて説明した。従来、パルプを細かく粉砕して繊維長を短くしたい場合には、粉砕前のパルプシートに第四級アンモニウム界面活性剤等の柔軟剤(デボンダー)を添加することによって、パルプを粉砕しやすくすることが一般的に行われている(所謂、トリートメントパルプ)。しかしながら、柔軟剤(デボンダー)を用いると、吸水性が阻害されやすくなるおそれがある。
【0132】
そこで、パッド1の吸収性コア132を構成する吸水性繊維は、柔軟剤(デボンダー)を含まずに構成されることが好ましい。これにより、吸収性コア132の保水性能が低下してしまうことが抑制される。上述の実施形態では、吸収性コア132が広葉樹パルプを用いて形成されているため、柔軟剤(デボンダー)を用いなくても平均繊維長を0.8mm程度とすることが可能であり、吸水性や柔軟性に優れた吸収性コア132を実現することができる。
【0133】
上述の実施形態では、吸収層13が副吸収層12よりも非肌側に配置された構成のパッド1について説明されていたが(
図2等参照)、厚さ方向においてこれらの配置が逆であっても良い。例えば、吸収層13の厚さ方向における非肌側に副吸収層12が配置される構成であっても良い。また、パッド1に副吸収層12が設けられておらず、吸収層13のみを備える構成であっても良い。
【符号の説明】
【0134】
1 陰唇間パッド(パッド、吸収性物品)、
11 表面層、11a 連続体、
12 副吸収層、
13 吸収層、
131 肌側シート、131a 連続体、
132 吸収性コア、
133 非肌側シート、133a 連続体、
14 裏面層、14a 連続体、
15 指挿入シート、15de 指挿入シート非接合部、
16 指挿入シート接合部、
17 裏面層接合部、
18 スリット、
18a 第1スリット、
18a11,18a21,18a31,18a41,18a51 一方側第1スリット、
18a12,18a22,18a32,18a42 他方側第1スリット、
18b 第2スリット、
18b1 前側第2スリット、18b2 後側第2スリット、
19 圧搾部、
20 指挿入部、
500 製造装置、
510 搬送機構、
520 吸収性コア積層機構、
521 解繊装置、522 材料供給部、523 回転ドラム、523r 凹部、
530 副吸収層積層機構、
531 解繊装置、
540 反転機構、
550 第1スリット形成機構、
551 カッターロール、551f 周面、551c 刃、
552 アンビルロール、552f 周面、552d 溝、
560 第2スリット形成機構、
561 カッターロール、561f 周面、561c 刃、561rc 周状刃、
562 アンビルロール、
570 切断シール機構、
580 セーラー機構、
590 指挿入シート取り付け機構、
595 ほぐし機構、
F 折り線(折り曲げ線)、
PS1 パルプシート、PS2 パルプシート、
CR 中央領域、
SR 端部領域