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特開2025-104936陰唇間パッド製造方法、及び、陰唇間パッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104936
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】陰唇間パッド製造方法、及び、陰唇間パッド
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/472 20060101AFI20250703BHJP
   A61F 13/20 20060101ALI20250703BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
A61F13/472 100
A61F13/20 225
A61F13/15 353
A61F13/15 110
A61F13/15 350
A61F13/15 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223133
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕一
(72)【発明者】
【氏名】松井 紗恵子
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴史
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA03
3B200BA18
3B200BB05
3B200CA19
(57)【要約】
【課題】良好な水解性及び形状安定性を有する吸収性コアを備えた陰唇間パッドを提供する。
【解決手段】広葉樹パルプを含んだパルプシートを解繊して粉砕パルプにする解繊工程(S201)と、粉砕パルプを集積させて吸収性コア(132)を形成する吸収性コア形成工程(S202)と、を有し、粉砕パルプについて、25.4mm間の目数が異なる複数種類の篩を通過させるパルプ粉砕状態評価試験を行った場合に、評価対象とする粉砕パルプの全体の重量に対して、14メッシュ以上の篩(312~314)を通過しない繊維の重量の割合が10%以下となり、且つ、60メッシュの篩(315)を通過する繊維の重量の割合が20%以下となる、ように、解繊工程においてパルプシートを解繊する。
【選択図】図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性コアを備えた陰唇間パッドを製造する方法であって、
広葉樹パルプを含んだパルプシートを解繊して粉砕パルプにする解繊工程と、
前記粉砕パルプを集積させて前記吸収性コアを形成する吸収性コア形成工程と、
を有し、
前記粉砕パルプについて、それぞれ25.4mm間の目数が異なる複数種類の篩を通過させるパルプ粉砕状態評価試験を行った場合に、
評価対象とする前記粉砕パルプの全体の重量に対して、14メッシュ以上の篩を通過しない繊維の重量の割合が10%以下となり、且つ、
評価対象とする前記粉砕パルプの全体の重量に対して、60メッシュの篩を通過する繊維の重量の割合が20%以下となる、
ように、前記解繊工程において前記パルプシートを解繊する、ことを特徴とする陰唇間パッド製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の陰唇間パッド製造方法であって、
前記解繊工程において、前記パルプシートの単位幅当たりの解繊量は7.5~60.0kg/mhである、ことを特徴とする陰唇間パッド製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の陰唇間パッド製造方法であって、
前記解繊工程において、回転ロールの周方向に沿って鋸刃が巻き付けられたガーネットシリンダを用いて、前記パルプシートの解繊が行われる、ことを特徴とする陰唇間パッド製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の陰唇間パッド製造方法であって、
前記粉砕パルプには、前記パルプ粉砕状態評価試験を行った場合に14メッシュ以上の前記篩を通過しない繊維、が含まれていない、ことを特徴とする陰唇間パッド製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の陰唇間パッド製造方法であって、
前記吸収性コアを搬送方向に搬送する搬送工程と、
搬送される前記吸収性コアにスリットを形成するスリット形成工程と、
前記吸収性コアを構成している前記粉砕パルプをほぐすほぐし工程と、
を有する、ことを特徴とする陰唇間パッド製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の陰唇間パッド製造方法であって、
前記ほぐし工程は、前記スリット形成工程の後で行われる、ことを特徴とする陰唇間パッド製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の陰唇間パッド製造方法であって、
前記ほぐし工程は、前記搬送方向と直交する方向に沿った回転軸周りに回転する第1ローラーと、前記第1ローラーの搬送方向の下流側に隣り合って設けられ、前記搬送方向と直交する方向に沿った回転軸周りに回転する第2ローラーとの間に、前記陰唇間パッドを挟み込みながら前記搬送方向に沿って搬送することによって行われ、
上下方向において、前記第1ローラーの周面が前記陰唇間パッドと当接する部分のうち最も一方側の位置が、前記第2ローラーの周面が前記陰唇間パッドと当接する部分のうち最も他方側の位置よりも一方側に位置している、ことを特徴とする陰唇間パッド製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の陰唇間パッド製造方法であって、
前記吸収性コアは、前後方向と幅方向とを有し、
前記吸収性コアの前記前後方向における長さは、前記幅方向における長さよりも長く、
前記ほぐし工程において、前記吸収性コアは、前記前後方向を前記搬送方向に沿わせた状態で搬送される、ことを特徴とする陰唇間パッド製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の陰唇間パッド製造方法であって、
前記吸収性コアの前記前後方向における長さは、
前記第1ローラーの直径の2倍の長さよりも長い、ことを特徴とする陰唇間パッド製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の陰唇間パッド製造方法であって、
前記吸収性コアを前記前後方向に沿った折り線にて二つ折りにするセーラー工程を更に有し、
前記ほぐし工程は、前記セーラー工程の後で行われる、ことを特徴とする陰唇間パッド製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載の陰唇間パッド製造方法であって、
前記スリット形成工程において、前記幅方向に沿った複数の第1スリットと、前記前後方向に沿った複数の第2スリットとが形成され、
複数の前記第1スリットの合計の長さは、複数の前記第2スリットの合計の長さよりも長い、ことを特徴とする陰唇間パッド製造方法。
【請求項12】
広葉樹パルプを含んだパルプシートを解繊してなる粉砕パルプを有する吸収性コアを備えた陰唇間パッドであって、
前記粉砕パルプについて、それぞれ25.4mm間の目数が異なる複数種類の篩を通過させるパルプ粉砕状態評価試験を行った場合に、
評価対象とする前記粉砕パルプの全体の重量に対して、14メッシュ以上の篩を通過しない繊維の重量の割合が10%以下であり、且つ、
評価対象とする前記粉砕パルプの全体の重量に対して、60メッシュの篩を通過する繊維の重量の割合が20%以下である、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰唇間パッド製造方法、及び、陰唇間パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、陰唇に密着させて装着する陰唇間パッド等の吸収性物品が知られている。このような陰唇間パッド(吸収性物品)では、吸収体等の剛性が高い部材に複数のスリットを設けて、着用者の身体の凹凸に沿って3次元的に変形しやすくすることにより、着用時におけるフィット性を高めることができる。例えば、特許文献1には,製品の長手方向や短手方向に沿って複数のスリットが設けられた陰唇間パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-97693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、このような陰唇間パッドにおいて、繊維長が短い広葉樹パルプを含んだパルプを用いて吸収性コアを形成することで、該吸収性コアの水解性を高め、使用後にトイレ等に流したときに、水に溶けて簡単にばらけるようにする技術が着目されている。しかしながら、従来の製造方法では、広葉樹パルプを含むパルプを解繊する際に、大きな繊維塊(ノッツ)や、細かすぎる繊維(ファイン)が多く含まれてしまい、良好な水解性と形状安定性とを両立した吸収性コアを製造することが難しかった。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、良好な水解性及び形状安定性を有する吸収性コアを備えた陰唇間パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、吸収性コアを備えた陰唇間パッドを製造する方法であって、広葉樹パルプを含んだパルプシートを解繊して粉砕パルプにする解繊工程と、前記粉砕パルプを集積させて前記吸収性コアを形成する吸収性コア形成工程と、を有し、前記粉砕パルプについて、それぞれ25.4mm間の目数が異なる複数種類の篩を通過させるパルプ粉砕状態評価試験を行った場合に、評価対象とする前記粉砕パルプの全体の重量に対して、14メッシュ以上の篩を通過しない繊維の重量の割合が10%以下となり、且つ、評価対象とする前記粉砕パルプの全体の重量に対して、60メッシュの篩を通過する繊維の重量の割合が20%以下となる、ように、前記解繊工程において前記パルプシートを解繊する、ことを特徴とする陰唇間パッド製造方法。
である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好な水解性及び形状安定性を有する吸収性コアを備えた陰唇間パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】展開状態のパッド1の平面図である。
図2図1のA-A矢視概略断面図である。
図3】パッド1の構成を説明する図である。
図4】パッド1の構成を説明する図である。
図5】吸収層13の構成について説明する平面図である。
図6】広葉樹吸水性繊維(広葉樹パルプ)と針葉樹吸水性繊維(針葉樹パルプ)の繊維長の分布を示す図である。
図7】パッド1の製造工程を表すフロー図である。
図8】パッド1等の吸収性物品を製造する製造装置500について説明する概略図である。
図9】吸収性コア積層工程(S102)にて具体的に実施される動作(工程)を表すフロー図である。
図10図10A~10Cは、ガーネットシリンダ521mの構成について説明する図である。
図11図10A~10Cは、ガーネットシリンダ521mを用いてパルプシートPS1を解繊する方法について説明する図である。
図12図12A図12Cは、第1スリット18aを形成する際に用いられるカッターロール551の構成について説明する図である。
図13図13A図13Bは、第1スリット18aを形成する際に用いられるアンビルロール552の構成について説明する図である。
図14】カッターロール551とアンビルロール552によって第1スリット18aを形成する動作について説明する図である。
図15図15A図15Cは、第2スリット18bを形成する際に用いられるカッターロール561の構成について説明する図である。
図16】ほぐし機構595の構成及び動作について説明する図である。
図17】ほぐし機構595の変形例について説明する図である。
図18】製造装置500によって形成された吸収性コア132と、従来の製造方法によって形成された吸収性コアとで、NOTS(ノッツ)、FINE(ファイン)、ACCEPT(アクセプツ)の含有割合を比較したデータを表す図である。
図19】吸収性コア(粉砕パルプ)に含まれる、NOTS(ノッツ)、FINE(ファイン)、ACCEPT(アクセプツ)の含有割合を求める方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
吸収性コアを備えた陰唇間パッドを製造する方法であって、広葉樹パルプを含んだパルプシートを解繊して粉砕パルプにする解繊工程と、前記粉砕パルプを集積させて前記吸収性コアを形成する吸収性コア形成工程と、を有し、前記粉砕パルプについて、それぞれ25.4mm間の目数が異なる複数種類の篩を通過させるパルプ粉砕状態評価試験を行った場合に、評価対象とする前記粉砕パルプの全体の重量に対して、14メッシュ以上の篩を通過しない繊維の重量の割合が10%以下となり、且つ、評価対象とする前記粉砕パルプの全体の重量に対して、60メッシュの篩を通過する繊維の重量の割合が20%以下となる、ように、前記解繊工程において前記パルプシートを解繊する、ことを特徴とする陰唇間パッド製造方法。
【0011】
態様1の陰唇間パッド製造方法によれば、14メッシュ以上の篩を通過しない大きな繊維塊(NOTS)の割合が10%以下と低いため、逆の場合と比較して、繊維塊が水に解れずに残ってしまうことが抑制されやすい。また、60メッシュの篩を通過する細かい繊維(FINE)の割合が20%以下と低いため、逆の場合と比較して、繊維同士が互いに絡み合いやすく、吸収性コアの形状が安定して維持されやすい。したがって、装着時に形状が安定し、使用後にトイレ等に捨てる際には水解性が高く解れやすい吸収性コア備えた陰唇間パッドを製造することができる。
(態様2)
前記解繊工程において、前記パルプシートの単位幅当たりの解繊量は7.5~60.0kg/mhである、態様1に記載の陰唇間パッド製造方法。
【0012】
態様2の陰唇間パッド製造方法によれば、解繊工程において単位時間当たりの解繊量を増やすとNOTSの割合が増加し、単位時間当たりの解繊量を減らすとFINEの割合が増加するおそれがあるところ、パルプ繊維の解繊量が7.5~60kg/mhの条件を満たすように解繊を行うことで、吸収性コアの形状を維持したまま基材シートに転写しやすくすることができる。
(態様3)
前記解繊工程において、回転ロールの周方向に沿って鋸刃が巻き付けられたガーネットシリンダを用いて、前記パルプシートの解繊が行われる、態様1~2の何れかに記載の陰唇間パッド製造方法。
【0013】
態様3の陰唇間パッド製造方法によれば、多数の細かい刃を有する鋸刃によってパルプシートを粉砕することで、従来のソーミルやハンマーミルを用いて解繊を行う場合と比較して、より微細な粉砕パルプを形成しやすい。特に、粉砕パルプにおいて、NOTSの割合を少なくすることが可能であるため、水解性の高い吸収性コアを製造するのに好適である。
(態様4)
前記粉砕パルプには、前記パルプ粉砕状態評価試験を行った場合に14メッシュ以上の前記篩を通過しない繊維、が含まれていない、態様1~3の何れかに記載の陰唇間パッド製造方法。
【0014】
態様4の陰唇間パッド製造方法によれば、吸収性コアにNOTSが含まれないため、繊維の密度が局所的に高くなる部分が生じ難く、吸水性や保水性が均一になりやすい。また、水解性が向上し、トイレに流す際に吸収性コアが分解されやすくなる。したがって、良好な吸水性・保水性や水解性を備えた吸収性コアを製造することができる。
(態様5)
前記吸収性コアを搬送方向に搬送する搬送工程と、搬送される前記吸収性コアにスリットを形成するスリット形成工程と、前記吸収性コアを構成している前記粉砕パルプをほぐすほぐし工程と、を有する、態様1~4の何れかに記載の陰唇間パッド製造方法。
【0015】
態様5の陰唇間パッド製造方法によれば、スリット形成工程により、吸収性コアにスリットが形成される。これにより、使用後の陰唇間パッドをトイレ等に流す際に、スリットを介して吸収性コアの内部に水が引き込まれやすくなり、パルプ繊維が水と接触しやすくなる。また、ほぐし工程により、パルプ繊維がほぐされるため、吸収性コアの全体に亘って水が均一に染み渡りやすくなる。したがって、良好な水解性を有する吸収性コアを製造することができる。
(態様6)
前記ほぐし工程は、前記スリット形成工程の後で行われる、態様1~5の何れかに記載の陰唇間パッド製造方法。
【0016】
態様6の陰唇間パッド製造方法によれば、スリット形成工程において吸収性コアに形成された複数のスリットの各々が、ほぐし工程において広がりやすくなる。これにより、使用後の陰唇間パッドをトイレ等に流す際に、切れ目から水が浸入しやすくなり、吸収性コアの内側に水が到達しやすくなる。したがって、吸収性コアを構成しているパルプ繊維と水が接触しやすくなり、水解性をより高めることができる。
(態様7)
前記ほぐし工程は、前記搬送方向と直交する方向に沿った回転軸周りに回転する第1ローラーと、前記第1ローラーの搬送方向の下流側に隣り合って設けられ、前記搬送方向と直交する方向に沿った回転軸周りに回転する第2ローラーとの間に、前記陰唇間パッドを挟み込みながら前記搬送方向に沿って搬送することによって行われ、上下方向において、前記第1ローラーの周面が前記陰唇間パッドと当接する部分のうち最も一方側の位置が、前記第2ローラーの周面が前記陰唇間パッドと当接する部分のうち最も他方側の位置よりも一方側に位置している、態様1~6の何れかに記載の陰唇間パッド製造方法。
【0017】
態様7の陰唇間パッド製造方法によれば、ほぐし工程において、陰唇間パッドが搬送方向(MD方向)に搬送されながら第1ローラーや第2ローラー等の各ローラーの周面に巻き付くようにして厚さ方向の一方側及び他方側に湾曲することにより、吸収性コアに設けられたスリットが広げられたり縮められたりする。これにより、複数のスリットの各々が開きやすくなり、使用後の陰唇間パッドをトイレ等に捨てた際に、開いたスリットから水が引き込まれやすくなり、吸収性コアの水解性がより高められる。
(態様8)
前記吸収性コアは、前後方向と幅方向とを有し、前記吸収性コアの前記前後方向における長さは、前記幅方向における長さよりも長く、前記ほぐし工程において、前記吸収性コアは、前記前後方向を前記搬送方向に沿わせた状態で搬送される、態様1~7の何れかに記載の陰唇間パッド製造方法。
【0018】
態様8の陰唇間パッド製造方法によれば、MD方向における長さが長くなる状態で搬送されることにより、吸収性コアがローラーの周方向における広い範囲に亘って巻き付きやすくなる。すなわち、ローラーの周面に吸収性コアをなるべく長く巻き付けることにより吸収性コアを湾曲させやすくなる。これにより、スリットを開きやすくすることができる。
(態様9)
前記吸収性コアの前記前後方向における長さは、前記第1ローラーの直径の2倍の長さよりも長い、態様1~8の何れかに記載の陰唇間パッド製造方法。
【0019】
態様9の陰唇間パッド製造方法によれば、吸収性コアがローラーの周方向における半分近くの範囲に巻き付きやすくなる。したがって、各ローラーの周面に沿って吸収性コアがより湾曲しやすくなる。これにより、スリットが開きやすくなり、水解性をより向上させることができる。
(態様10)
前記吸収性コアを前記前後方向に沿った折り線にて二つ折りにするセーラー工程を更に有し、前記ほぐし工程は、前記セーラー工程の後で行われる、態様1~9の何れかに記載の陰唇間パッド製造方法。
【0020】
態様10の陰唇間パッド製造方法によれば、セーラー工程で2つ折りにされて厚さが厚くなった吸収性コアを、ほぐし工程でほぐすことにより、スリットがより開きやすくなり、水解性をより向上させることができる。
【0021】
(態様11)
前記スリット形成工程において、前記幅方向に沿った複数の第1スリットと、前記前後方向に沿った複数の第2スリットとが形成され、複数の前記第1スリットの合計の長さは、複数の前記第2スリットの合計の長さよりも長い、態様1~10の何れかに記載の陰唇間パッド製造方法。
【0022】
態様11の陰唇間パッド製造方法によれば、MD方向に沿って搬送される吸収性コアを厚さ方向に湾曲させることによって、CD方向に沿った第1スリットの方が、MD方向に沿った第2スリットよりも大きく開きやすくなる。したがって、第1スリットの合計の長さが、第2スリットの合計の長さよりも長ければ、全体としてスリットが開きやすくなる長さが長くなる。これにより、吸収性コアの水解性を向上させることができる。
【0023】
(態様12)
広葉樹パルプを含んだパルプシートを解繊してなる粉砕パルプを有する吸収性コアを備えた陰唇間パッドであって、前記粉砕パルプについて、それぞれ25.4mm間の目数が異なる複数種類の篩を通過させるパルプ粉砕状態評価試験を行った場合に、評価対象とする前記粉砕パルプの全体の重量に対して、14メッシュ以上の篩を通過しない繊維の重量の割合が10%以下であり、且つ、評価対象とする前記粉砕パルプの全体の重量に対して、60メッシュの篩を通過する繊維の重量の割合が20%以下である、ことを特徴とする陰唇間パッド。
【0024】
(態様12)
態様12の陰唇間パッドによれば、14メッシュ以上の篩を通過しない大きな繊維塊(NOTS)の割合が10%以下と低いため、逆の場合と比較して、繊維塊が水に解れずに残ってしまうことが抑制されやすい。また、60メッシュの篩を通過する細かい繊維(FINE)の割合が20%以下と低いため、逆の場合と比較して、繊維同士が互いに絡み合いやすく、吸収性コアの形状が安定して維持されやすい。したがって、装着時に形状が安定し、使用後にトイレ等に捨てる際には水解性が高く解れやすい吸収性コア備えた陰唇間パッドを実現することができる。
===実施形態===
以下、本発明に係る吸収性物品として陰唇間パッド1(以下、「パッド1」ともいう。)を例に挙げて実施形態を説明する。陰唇間パッドは、女性の陰唇間に挟み込んで経血等の排泄物(体液)を吸収する生理用品である。
【0025】
<陰唇間パッド1の基本構成>
図1は、展開状態のパッド1の平面図である。図1はパッド1の肌面側から見た図である。図2は、図1のA-A矢視概略断面図である。図3及び図4は、パッド1の構成を説明する図である。各図(図1図4)における中央C-Cは、幅方向における中央を示し、中央CLは、パッド1を厚さ方向に見たときの、吸収層13(後述)の前後方向における中央を示す。また、図1及び図2は、指挿入シート15(後述)を中央C-Cで切断して、パッド1を平面上に平らに静置した状態(「平面平置き」状態)の図である。
【0026】
パッド1は、互いに直交する前後方向、幅方向、及び厚さ方向を有する。パッド1の前後方向において、着用時に、着用者の腹側に位置する側を「前側」とし、着用者の背側に位置する側を「後側」とする。また、パッド1の厚さ方向において、着用者の肌に当接する側を「肌側」とし、その反対側を「非肌側」とする。
【0027】
図1図4に示すように、パッド1は、平面視で、幅方向の長さより前後方向の長さが長い略楕円形状であり、幅方向の中央C―Cに対して対称な形状であり、前後方向における中央CLで幅方向の内側に括れて、幅方向の長さが狭くなった部分を有している。また、パッド1は、平面視で、前後方向の中央に対して非対称な形状であり、具体的には、中央CL(吸収層13の前後方向の中央)が、パッド1の前後方向における中央より後側に位置し、パッド1の前端から吸収層13の前端までの距離が、パッド1の後端から吸収層13の後端までの距離より長い。つまり、パッド1の前後方向において、吸収層13が、後側寄りに配置されている。パッド1は、図2図4に示すように、表面層11、副吸収層12、吸収層13、裏面層14、指挿入シート15を備える。
【0028】
本実施形態のパッド1は、折り線Fで非肌側に折り曲げられた状態の製品として、保管及び流通される。図3及び図4は、パッド1を各部材に分解した状態を説明する図である。本実施形態のパッド1は、図3Aに示すように、幅方向における中央部(中央C-C)の折り線F(折り曲げ線)で非肌側に向かって折り曲げられており、最も非肌側に、指挿入部20を形成するための指挿入シート15がホットメルト接着剤HMA等の接着剤を用いて固定されている。折り線Fは、前後方向に沿った、幅方向の中央部に設けられた折り曲げ部である。折り線Fは、所定の幅を持った部分であり、折り線Fの肌側の頂点(最も肌側に突出する部分)が、幅方向における中央C-Cと略同じ位置である。図3Bは、指挿入シート15を、裏面層14から分離させた状態であり、図3Cは、指挿入シート15が取り除かれたパッド1を、折り線Fにおける折り曲げた状態から水平にさせた状態である。そして、図3Cに示す状態から、図4に示すように、厚さ方向における肌側から順に、表面層11、副吸収層12、吸収層13、裏面層14が重ねられ、これらのうち少なくとも一部の部材同士が接着剤等によって接合されている(図2参照)。
【0029】
表面層11は、最も肌側に位置し、着用時に着用者の肌(陰唇間)に当接する部材であるため、肌に刺激を与えにくい柔らかいシートを用いることが好ましい。表面層11は、パッド1の外形をなしており、液透過性のシート部材である。表面層11としては、例えば、メルトブローン、スパンボンド、ポイントボンド、スルーエアー、ニードルパンチ、乾式・湿式スパンレース、フォームフィルム等の製造方法から得られる不織布を単独又はこれらを組み合わせた材料が挙げられ、レーヨン、アセテート、コットン、パルプ又は合成樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート:PET、ポリプロピレン:PP,ポリエチレンPE等)を成分としたものを単独又は芯鞘構造を成すように複合したものを単独又は混合した繊維のシート部材を用いることができる。本実施形態のパッド1は、レーヨンとポリエチレンテレフタレートからなるシート部材を用いている。
【0030】
副吸収層12は、表面層11より非肌側に位置し、吸収層13より肌側に位置する。副吸収層12は、表面層11と吸収層13との間で、着用者の動き、陰唇の挙動変化、衣服からの圧力等の変化に柔軟に追従し、自身の形状を変化させ、着用者に与える違和感を軽減させるクッション層の役割を担う。副吸収層12の形状は、略楕円形で、表面層11より小さく、パッド1の略中央部(正確には、後側寄り)に位置している。また、副吸収層12の前後方向における中央CLで幅方向の内側に括れて、幅方向の長さが狭くなっている。副吸収層12としては、例えば、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットン、合成繊維を単独又は混合して用いることができる。本実施形態では、主にパルプ繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)を混合した繊維を用いている。
【0031】
吸収層13は、副吸収層12より非肌側に位置し、裏面層14より肌側に位置して、排泄物等の体液を吸収する吸収体である。吸収層13は、略楕円形状であり、パッド1の略中央部(正確には、後側寄り)に位置している。吸収層13の詳細については、後で説明する。
【0032】
裏面層14は、吸収層13より非肌側に位置するシート部材である。裏面層14は、パッド1の外形をなしており、平面視で、表面層11と略同じ形状、同じ大きさである。裏面層14としては、液透過性シートや液不透過性シート等のシート部材を用いることができ、例えば、合成樹脂のシート状フィルム、通気フィルム、パルプ、紙、不織布、通気性液遮断シート、又はこれらを組み合わせたシート部材等を使用することができる。本実施形態では、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、パルプを混合したシート状の部材を用いている。
【0033】
指挿入シート15は、指挿入部20を形成するためのシート部材である。指挿入部20は、指挿入シート15と裏面層14との間の空間であり、パッド1を装着する際に、着用者が指を挿入するための空間である。指挿入シート15は、裏面層14より前後方向における長さが短く、裏面層14より幅方向における長さが短い。また、裏面層14より非肌側で、前後方向における後側に設けられている。指挿入シート15の幅方向の両側部は、ホットメルト接着剤等の接着剤によって形成された指挿入シート接合部16によって、裏面層14の非肌側に接合固定されている(図2参照)。指挿入シート15の前側の端部と指挿入シート15の後側の端部は、指挿入シート15と裏面層14とが接着剤で固定されていない開口部をそれぞれ有する。前側の開口部は、後側の開口部より大きい。着用者は、指挿入部20の前側の開口から指(例えば、中指)を挿入することで、パッド1を支持した状態で、パッド1を陰唇に当接させて、装着させることができる。
【0034】
指挿入シート15としては、表面層11や裏面層14と同様の材料を用いることができる。例えば、PE/PP、PE/PET、PP/PP等の複合合成繊維を原材料とするスパンレース不織布、シュリンクタイプ不織布、伸長性スパンボンド等の不織布や、レーヨン、アセテート、コットン、パルプ又は合成樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート:PET)の繊維のシート部材や、通気フィルム、紙、通気性液遮断シート等のシート部材を用いることができる。また、例えば、合成ゴム、非晶性オレフィン系樹脂を原料としたフィルム、開孔フォームフィルム、ネット、織布又は織布に合成ゴムを原料とした紡糸フィラメントを編み込んだ生地、合成ゴムを主体としたスパンボンド不織布やメルトブローン不織布、発泡フォームシート等の伸縮性を有するシートを用いてもよい。本実施形態では、主にパルプ及びレーヨンからなるシート部材を用いている。
【0035】
なお、本実施形態のパッド1は、未使用状態で、折り線Fで非肌側に折り曲げられた状態としたが、これに限られない。例えば、未使用状態では、折り線Fを有さず、折り曲げられていないもので、装着の際に着用者自身が非肌側に折り曲げて装着するものであってもよい。また、折り線Fを複数本備えるものであってもよい。折り線Fとして、折り曲げられた所謂折り癖を有するものであってもよく、折り癖を有さないものであってもよい。
【0036】
<パッド1の装着について>
パッド1は、幅方向における中央部で前後方向に沿って非肌側に向かって折り曲げた状態で着用者の肌(排泄口)に当接させることで、装着状態となる。本実施形態のパッド1は、生理用品であり、折り線Fで肌方向に凸となるように非肌側に向かって折り曲げて、パッド1の幅方向における中央部を女性の陰唇間に挟み込むことで装着状態とすることができる。パッド1は、生理用ナプキンよりも身体(排泄口)との密着性が高いため、排泄物(経血)の漏れが生じにくく、排泄時の不快感を生じさせにくい。
【0037】
装着の際には、着用者は、折り部Fで折り曲げられたパッド1の前側から指挿入部20に指(人差し指又は中指)を挿し込んだ状態で、腹側からパッド1を陰唇間に当接させ、挟み込ませることで装着状態とすることができる。そして、使用後は、装着状態のパッド1を便器(トイレ)の中に脱落させたり、装着状態のパッド1を手で掴んで便器の中に入れたりして、トイレに流して処理することができる。トイレに流すために、パッド1を構成する各部材及び接着剤は、生分解性素材、水分散性素材、又は水溶性素材で構成されていることが好ましい。トイレに流すことで、パッド1をゴミとして処理をする手間を削減したり、ゴミの量を削減させたりすることができたりする。
【0038】
なお、「生分解性」とは、放線菌等の細菌、その他の微生物の存在下、自然界のプロセスに従って、嫌気性又は好気性条件下で物質が二酸化炭素又はメタン等のガス、水及びバイオマスに分解されることをいい、当該物質の生分解能(生分解速度、生分解度など)が、落ち葉等の自然に生じる材料、もしくは同一環境下で生分解性として一般に認識される合成ポリマーに匹敵することをいう。「水分散性」とは、「水解性」でもあり、装着時の限定された量の水分(経血)では影響はないものの、多量の水又は水流中では、繊維同士が、少なくとも一般のトイレ配管を詰まらせることがない程度の小断片に容易に分散される性質のことをいう。「水溶性」とは、装着時の限定された量の水分(経血)では影響はないものの、多量の水又は水流中においては溶解する性質をいう。
【0039】
<吸収層13について>
図5は、吸収層13の構成について説明する平面図である。本実施形態の吸収層13は、厚さ方向における肌側から順に、肌側シート131、吸収性コア132、非肌側シート133を備えている。また、図5に示されるように、パッド1を幅方向に三等分したときの中央に位置する領域を中央領域CRとし、両側に位置する領域を端部領域SRとする。
【0040】
吸収性コア132は、経血等の液体(体液)を吸収して保持する吸水性及び保水性を備えた部位であり、例えば、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットン、合成繊維、セルロース発泡体、合成樹脂の連続発泡体等を単独又は混合して用いることができる。また、粒子状高分子吸収体、繊維状高分子吸収体が混合されていてもよく、シート状高分子吸収体を用いてもよい。さらに、吸収性コアの嵩を維持させて保水性を高めるために、架橋剤により架橋させ捲縮された化学パルプ、アセテート、合成繊維を混合させていてもよい。パッド1では、所定形状に成型されたパルプ繊維(吸水性繊維)が用いられている。
【0041】
肌側シート131は、吸収性コア132を肌側から覆う部材であり、非肌側シート133は、吸収性コア132を非肌側から覆う部材である。肌側シート131及び非肌側シート133としては、例えば、粉砕パルプ、コットン等のセルロース、レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース、熱可塑性疎水性化学繊維に親水化処理を施したもの等が挙げられる。本実施形態において、パッド1の肌側シート131は、パルプとレーヨンのスパンレースからなるシートが用いられ、非肌側シート133は、パルプ100%の湿式抄紙ティッシュ等のパルプからなるシートが用いられる。
【0042】
また、肌側シート131を設けることで、吸収層13に達した排泄物を水平方向に拡散させやすくなり、水平に広げられた排泄物が吸収性コア132に吸収させることができる。これによって、排泄物を素早く吸収性コア132で吸収させやすくなるため、着用者の肌に与える不快感を軽減させやすくなる。
【0043】
また、吸収層13には複数のスリット18,18…と、複数の圧搾部19,19…(図5では不図示)が設けられている。スリット18は、少なくとも、吸収層13(肌側シート131及び吸収性コア132及び非肌側シート133)を厚さ方向に貫通する切り込みである。但し、スリット18が、吸収層13及び副吸収層12を厚さ方向に貫通していても良い。当該スリット18が設けられていることにより、パッド1の装着時に、吸収層13や副吸収層12が着用者の身体の動きに追従して柔軟に変形しやすくなり、フィット性が向上する。また、吸収した排泄液をスリット18に沿って前後方向及び左右方向に拡散させることにより、吸収性コア132の広い範囲で排泄液を吸収・保持することができる。なお、詳細は後述するが、スリット18は、吸収層13の厚さ方向の非肌側からカッター等によって切り込みを入れることで形成される。したがって、本実施形態のパッド1では、少なくとも非肌側シート133にスリット(切れ目)が形成されている。
【0044】
スリット18は、幅方向に沿った第1スリット18aと、前後方向に沿った第2スリット18bとを有している。ここで、「幅方向に沿ったスリット」とは、そのスリット(若しくはスリットの接線)と幅方向とのなす角度のうち小さい方の角度が45度以下であるスリットを指す。すなわち、第1スリット18aには、幅方向と平行に設けられたスリット、及び、幅方向に対して45度以下の所定角度だけ傾斜して設けられているスリットが含まれるものとする。同様に、「前後方向に沿ったスリット」とは、そのスリット(若しくはスリットの接線)と前後方向とのなす角度のうち小さい方の角度が45度未満であるスリットを指す。すなわち、第2スリット18bには、前後方向と平行に設けられたスリット、及び、前後方向に対して45度未満の所定角度だけ傾斜して設けられているスリットが含まれるものとする。
【0045】
圧搾部19は、吸収層13(肌側シート131及び吸収性コア132及び非肌側シート133)と、副吸収層12とを厚さ方向に圧搾する部位であり、例えば吸収層13と副吸収層12とを厚さ方向に重ねてエンボス加工等を施すことにより形成される(図4参照)。当該圧搾部19が設けられていることにより、吸収層13や副吸収層12を構成している複数の繊維同士が圧着され、吸収層13及び副吸収層12がそれぞれ形状を維持しやすくなり、ばらけ難くなる。したがって、パッド1の着用時に、着用者が身体を動かした際に、吸収層13が型崩れしたり撚れたりして、フィット性が悪化したり排泄液が漏れてしまったりすることが抑制される。
【0046】
なお、吸収層13と副吸収層12とは圧搾部19によって圧着されているだけであり、接着剤等を用いて固定されていない。したがって、使用後のパッド1をトイレに流す際に、圧搾部19が水に濡れると、繊維同士の圧着(水素結合)が外れて吸収層13及び副吸収層12を構成している繊維がばらけやすくなる。これにより、水解性(水分散性)が高まり、トイレ配管を詰まらせる等の問題を生じ難くすることができる。
【0047】
また、本実施形態の吸収性コア132には、パルプ繊維(吸水性繊維)として、広葉樹からなる吸水性繊維である広葉樹吸水性繊維(広葉樹パルプ)が含まれている。この広葉樹吸水性繊維は、針葉樹からなる針葉樹吸水性繊維(針葉樹パルプ)と比較して繊維長が短く、また、繊維径が細いという特徴を有する。
【0048】
図6は広葉樹吸水性繊維(広葉樹パルプ)と針葉樹吸水性繊維(針葉樹パルプ)の繊維長の分布を示す図である。横軸は繊維長(mm)を示し、縦軸は頻度(%)を示している。図6に示すように、針葉樹パルプの平均繊維長は2.5mm程度であり、繊維長の分布幅が広い(3mm以上の繊維が含まれる。標準偏差は1.6)。これに対し、広葉樹吸水性繊維の平均繊維長は0.79mm程度であり、繊維長の分布幅が狭い(標準偏差は0.27)。
【0049】
なお、パルプ繊維の平均繊維長は、中心線繊維長(Cont)による測定で長さ加重平均繊維長L(l)を意味する。長さ加重平均繊維長は、メッツォオートメーション(metso automation)社製のカヤーニファイバーラボファイバープロパティーズ(オフライン)[kajaaniFiberLab fiber properties(off-line)]により、L(l)値として測定される。なお、これはJIS P 8226-2(パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法 非偏光法に準ずる)で推奨されている方法でもある。
【0050】
吸収性コア132は、広葉樹パルプ等の繊維長が短い吸水性繊維(平均繊維長が0.8mm程度の吸水性繊維)によって構成されていることによって、高い保水性を備えている。例えば、繊維長が短い広葉樹パルプによって形成された吸収体と、繊維長が長い針葉樹パルプによって形成された吸収体とを同じ重量で比較した場合、広葉樹パルプの繊維本数密度の方が、針葉樹パルプの繊維本数密度よりも大きくなる。つまり、広葉樹パルプを使用することにより、針葉樹パルプを使用した場合と比べて吸収性コア132を高密度化することが可能である。そして、吸収性コア132を高密度化することによって、毛細管効果を高めることができ、保水性を向上させることができる。なお、繊維本数密度は、単位面積当たりの平均繊維本数に相当し、繊維太さ+平均繊維間距離にて、最密充填構造の場合に単位面積当たりに含まれる繊維の本数を試算した値である。
【0051】
<陰唇間パッド1の製造方法>
次に、陰唇間パッド1の製造方法について説明する。図7は、本実施形態に係るパッド1の製造工程を表すフロー図である。図8は、パッド1等の吸収性物品を製造する製造装置500について説明する概略図である。なお、図7及び図8は、パッド1の製造に係る代表的な工程について説明するものであり、製造工程の全てを表しているわけではない。
【0052】
図8に示す製造装置500は、図7に示される各工程(S101~S110)を順次実施することによって、本実施形態に係るパッド1や他の吸収性物品を断続的に製造することができる。製造装置500は、搬送機構510と、吸収性コア積層機構520と、副吸収層積層機構530と、反転機構540と、第1スリット形成機構550と、第2スリット形成機構560と、切断シール機構570と、セーラー機構580と、指挿入シート取り付け機構590と、ほぐし機構595を備える。
【0053】
パッド1の製造工程では、はじめに吸収層13を構成する非肌側シート133の連続体を搬送方向に搬送する搬送工程が行われる(S101)。なお、製造装置500において搬送方向は、パッド1の前後方向に沿った方向である。以下では、搬送方向のことを「MD方向(Machine Direction)」とも呼び、搬送方向と直交する方向(パッド1の幅方向に沿った方向であって、図8において紙面の奥行き方向)を「CD方向(Cross Direction)」とも呼ぶ。
【0054】
搬送工程では、非肌側シート133がMD方向に連なった状態の非肌側シート連続体133a(基材シート)が、原反ロールから繰り出された後、搬送ローラー等からなる搬送機構510によって、所定の搬送速度でMD方向の上流側から下流側へ搬送される。そして、非肌側シート連続体133aが搬送される間に、S102~S110の各工程が実施されることで、パッド1が製造される。
【0055】
次いで、MD方向に搬送される非肌側シート連続体133a(基材シート)に対して、吸収性コア積層機構520を用いて吸収性コア132を積層させる吸収性コア積層工程が行われる(S102)。吸収性コア積層機構520は、解繊装置521と、材料供給部522と、回転ドラム523とを有している。
【0056】
図9は、吸収性コア積層工程(S102)にて具体的に実施される動作(工程)を表すフロー図である。吸収性コア積層工程では、先ず、パルプシートを解繊して、吸収性コア132の原料となる粉砕パルプにする解繊工程が行われる(S201)。粉砕パルプは、パルプシートPS1を解繊装置521によって粉砕加工することによって製造される。解繊装置521には、ガーネットシリンダ521mが設けられている。なお、本実施形態において吸収性コア132を形成するための原料となるパルプシートPS1は、上述したように、主に広葉樹パルプを含んだパルプによって構成されているが、針葉樹パルプを含んでいても良いし、パルプ混スパンレースでも良い。
【0057】
図10A~10Cは、ガーネットシリンダ521mの構成について説明する図である。図11は、ガーネットシリンダ521mを用いてパルプシートPS1を解繊する方法について説明する図である。ガーネットシリンダ521mは、回転軸521Arを中心に回転可能な円柱状の回転体である。図10Aでは、回転軸521ArがCD方向に沿って配置されており、ガーネットシリンダ521mは回転軸521Arを中心に反時計回り方向に回転する。ガーネットシリンダ521mの周面521mfには、複数の鋸刃525,525…が設けられている。鋸刃525は、図9Bに示されるように、細かい刃が所定の方向(図10BではMD方向)に沿って並んだ帯状の切断工具であり、ガーネットシリンダ521mでは、周面521mfの周方向にらせん状に巻き付けるようして設けられている。本実施形態では、鋸刃525が、図10Cのように、周面521mfのCD方向に沿って5mm程度のピッチとなるように配置されている。
【0058】
例えば、本実施形態の鋸刃525では、厚さ0.8mm、高さ7mmの刃がMD方向に12.7mm程度のピッチで複数設けられており(図10B参照)、当該鋸刃525がガーネットシリンダ521mの周面521mfのCD方向に沿って5mm程度のピッチで取り付けられている(図10C参照)。そして、鋸刃525が取り付けられた状態で、ガーネットシリンダ521mの外径(鋸刃525の刃先まで含めたガーネットシリンダ521mの直径)は450mm~500mm程度である。但し、上記の寸法は一例であり、解繊装置521の構成や配置スペース等の条件に応じて適宜変更可能である。
【0059】
解繊を行う際は、原反ロールから繰り出されるパルプシートPS1の表面を鋸刃525で削るようにガーネットシリンダ521mを回転させることにより、パルプシートPS1が細かく粉砕され、粉砕パルプが製造される。本実施形態では、図11のようにMD方向においてガーネットシリンダ521mと対向するように配置されたフィードロール526を用いて解繊が行われる。フィードロール526は、例えば、不図示のニップ機構等によってパルプシートPS1を周面に支持した状態で回転可能な回転体である。
【0060】
図11では、フィードロール526の周面と、ガーネットシリンダ521mに設けられた鋸刃525の刃先との間のクリアランス(MD方向における間隔)が、例えば0.5mm程度となるように調整されている。そしてパルプシートPS1を支持した状態でフィードロール526を回転させて、ガーネットシリンダ521m側にパルプシートPS1を送りながら、ガーネットシリンダ521mをフィードロール526とは反対方向に所定速度で回転させる。すると、フィードロール526の周面と、ガーネットシリンダ521m(鋸刃525)の刃先とが最も近接する箇所でパルプシートPS1が解繊され、粉砕パルプが製造される。
【0061】
本実施形態のガーネットシリンダ521mを用いて、単位幅のパルプシートPS1が単位時間あたりに粉砕される量は、7.5~60kg/hr、望ましくは、9.0~55kg/hrである。例えば、単位時間あたりの最大の粉砕量を60kg/hr、ガーネットシリンダ521mの鋸刃525の刃先まで含めた直径dを470mm、回転数を2000rpm、パルプシートP1(CD方向の幅525mm)のMD方向へのフィード量を2.66m/minとして、ガーネットシリンダ521mが1回転(=3.14d)したときに、らせん状に巻きつけられた鋸刃525が軸方向に進む距離(リード)が20mmである場合、上述の鋸刃525の各々の刃が1回の切り込みでMD方向(パルプシートP1のフィード方向)に0.0114mmずつパルプシートP1を削ることになる。このようにパルプシートP1を細かく粉砕することで、後述する繊維塊(NOTS)が含まれない適度な大きさの粉砕パルプを製造することが可能となる。
【0062】
次いで、図9に戻って、粉砕されたパルプを材料として吸収性コア132を形成する吸収コア形成工程(S202)、及び、形成された吸収性コア132を、MD方向に搬送される基材シート(ここでは非肌側シート連続体133a)に転写する転写工程(S203)が行われる。本実施形態において、吸収コア形成工程(S202)及び転写工程(S203)は、回転ドラム523を用いて実施される。
【0063】
ガーネットシリンダ521mによって粉砕されたパルプは、解繊装置521の下側に配置されている材料供給部522の内部に集め入れられ、回転ドラム523に供給される。材料供給部522は、回転ドラム523の上部を覆うように配置されており、粉砕パルプに熱可塑性樹脂を混合させるとともに、必要な場合は更に高吸収性ポリマー粒子(SAP)を混合させて、それらの混合物を空気搬送によって回転ドラム523へ供給する。
【0064】
回転ドラム523は、中空円筒形のドラムであり、外周面の外側から内側へ空気を吸引する吸引機構(不図示)を備えている。また、外周面には吸収性コア132の材料を詰める型として、複数の凹部523rが所定のピッチで形成されている。回転ドラム523が回転して凹部523rが材料供給部522へ進入すると、吸引機構の吸引により、材料供給部522から供給された吸収性コア132の材料(粉砕パルプ)が、凹部523rに堆積(集積)する。これにより、吸収性コア132が形成される(S202)。
【0065】
そして、回転ドラム523が回転して、吸収性コア132の材料を収容した凹部523rがドラムの最下部に到達するタイミングで、吸収性コア132の材料が凹部523rから外れ、搬送される基材シート(非肌側シート連続体133a)上に転写され(S203)、次の工程に引き渡される。これにより、吸収性コア132が非肌側シート133の肌側に積層される(S103))。
【0066】
次いで、図7に戻って、吸収性コア132が積層された基材シートは、吸収性コア積層機構520から搬送方向(MD方向)の下流側に搬送される過程で、肌側シート131の連続体131aを重ねられ(図8参照)、吸収層13が形成された状態で副吸収層積層機構530に到達する。なお、説明の簡略化のため、肌側シート131は図8の以下の工程において不図示としている。
【0067】
次いで、副吸収層積層機構530にて吸収層13の厚さ方向の肌側に副吸収層12を積層させる副吸収層積層工程が行われる(S103)。副吸収層積層機構530は、解繊装置531を有している。解繊装置531は、図10等で説明したガーネットシリンダ521mと同様に、円柱状のロールの周面に薄い鋸刃が螺旋状に巻き付けられた回転体であるガーネットシリンダ531mを有している。そして、解繊装置521と略同様に、原反ロールから繰り出されるパルプシートPS2を削るようにして回転することにより、パルプシートPS2を粉砕して副吸収層12の原料となる粉砕パルプを製造する。粉砕パルプは、基材シート上に直接散布され、吸収層13の肌側に粉砕パルプの層(副吸収層12)が積層される。
【0068】
副吸収層積層工程で用いられるパルプシートPS2は、針葉樹パルプを含んで構成されており、他に広葉樹パルプが含まれていても良いし、レーヨン混であっても良い。そして、パルプシートPS2における広葉樹パルプの含有率は、パルプシートPS1における広葉樹パルプの含有率よりも小さくなっている。これにより、副吸収層12は、吸収性コア132よりも平均繊維長が長く、また、平均繊維径が太くなる。
【0069】
また、吸収層13に副吸収層12が積層された後で、圧搾部19を形成するエンボス加工が施される。これにより、吸収層13や副吸収層12を構成している複数の繊維同士が圧着されて、両者が積層された状態で簡単に剥離したり型崩れしたりしないようになる。
【0070】
次いで、反転機構540により、基材シート(吸収層13及び副吸収層12)が厚さ方向において反転される反転工程が行われる(S104)。図8では、紙面の左側から右側へ搬送されていた基材シートが、右側から左側へ搬送方向を反転され、同時に厚さ方向も反転される。したがって、反転工程以降では、副吸収層12の鉛直方向上側に吸収層13が積層された状態でMD方向へ搬送される。
【0071】
次いで、第1スリット形成機構550を用いて、吸収層13に第1スリット18aを形成する第1スリット形成工程が行われる(S105)。第1スリット形成機構550は、カッターロール551とアンビルロール552とを有している。カッターロール551は、円柱状のロールの周面に複数の刃が設けられ、CD方向に沿った回転軸を中心に駆動回転する回転体である。アンビルロール552は、厚さ方向(図8では鉛直方向)においてカッターロール551と対向して配置され、CD方向に沿った回転軸を中心に駆動回転する回転体である。本実施形態では、図8に示されるように、製造装置500の上下方向の上側(パッド1の非肌側)にカッターロール551が設けられ、下側(パッド1の肌側)にアンビルロール552が設けられている。そして、カッターロール551とアンビルロール552とによって、基材シート(吸収層13及び副吸収層12)を厚さ方向に挟み込んで押圧することで、第1スリット18aを形成する。
【0072】
図12A図12Cは、第1スリット18aを形成する際に用いられるカッターロール551の構成について説明する図である。図12Aは、カッターロール551をMD方向から見たときの平面図である。図12Bは、カッターロール551の周面551fに設けられた複数の刃551cの配置パターンを表す図である。図12Cは、図12BのD-D矢視を表す断面図である。また、図13A図13Bは、第1スリット18aを形成する際に用いられるアンビルロール552の構成について説明する図である。図13Aは、アンビルロール552をMD方向から見たときの平面図である。図13Bは、図13Aの領域Eを拡大して表す図である。
【0073】
第1スリット形成機構550のカッターロール551は、図12Aに示されるように、CD方向に沿った回転軸Ar1を中心に回転する円筒状の回転体であり、円筒の周面551fから半径方向の外側に突出する複数の刃551c,551c…を有している。複数の刃551cは、図12Bに示されるパターンで配置されており、同図12Bのパターンが、図12Aのようにカッターロール551の周面551fにおいて、周方向に沿って所定のピッチで断続的に設けられている。複数の刃551cの各々は、主にCD方向(パッド1の幅方向)に沿ったスリットを形成することが可能なように設けられている。すなわち、カッターロール551の各々の刃551cは、主にCD方向と平行もしくはCD方向に対して45度以下の所定角度だけ傾斜して設けられている。このような刃551cによって、パッド1に複数の第1スリット18aを形成することができる。但し、カッターロール551によって、一部MD方向に沿ったスリット18が形成されても良い。
【0074】
第1スリット形成機構550のアンビルロール552は、図13Aに示されるように、CD方向に沿った回転軸Ar2を中心に回転する円筒状の回転体であり、パッド1(基材シート)を挟んでカッターロール551と対向するように設けられている(図8参照)。そして、アンビルロール552及びカッターロール551が回転しながら、アンビルロール552の周面552fとカッターロール551の刃551cの先端とが当接する部分において、両者に挟みこまれた基材シート(本実施形態では吸収層13や副吸収層12等)に刃551cの形状に応じたスリット(切り込み)を形成する。
【0075】
また、アンビルロール552の周面552fの一部には、半径方向の内側に窪んだ溝552dが設けられている。本実施形態において、溝552dは、アンビルロール552のCD方向における中央位置CDCLの両側に一対設けられている。また、溝552dは、アンビルロール552の周方向(MD方向に対応する方向)に沿って連続的に設けられている。
【0076】
図14は、カッターロール551とアンビルロール552によって第1スリット18aを形成する動作について説明する図である。同図14では、カッターロール551及びアンビルロール552をCD方向における中央位置CDCLで揃えて対向させたときの、カッターロール551の刃551cと、アンビルロール552の溝552dとの位置関係を表している。
【0077】
図14に示されるように、CD方向において、中央位置CDCLの両側で、刃551cと溝552dとが重複する部分を有している。例えば、図14の領域Fでは、カッターロール551の刃551cのうちCD方向の中央部に位置する第1部分npがアンビルロール552の溝552dと重複している。一方、刃551cのうちCD方向の両端部に位置する第2部分cpは、溝552dと重複していない。つまり、カッターロール551の刃551cの先端とアンビルロール552の周面552fとが当接したときに、当該刃551cの第2部分cpは周面552fと当接するが、第1部分npは周面552fと当接しない。
【0078】
この場合、刃551cのうちCD方向の両端部に位置する第2部分cpは、アンビルロール552の周面552fに向かって基材シート(吸収層13等)を押圧することにより、スリット18を形成する。一方、刃551cのうちCD方向の中央部に位置する第1部分npは、アンビルロール552の溝552dに向かって基材シート(吸収層13等)を押圧するため、スリット18を形成しない。これにより、幅方向に沿った第1スリット18aにおいて、CD方向(幅方向)の中央部が分断されたようなスリット18が形成される(図5の端部領域SR参照)。
【0079】
なお、アンビルロール552において、周面552fと溝552dとの境界が面取りされていることが好ましい。図13Bでは、アンビルロール552の周面552fと溝552dとの境界で、黒塗りで表示されている角の部分chが面取りされている。このような面取りされた部分chが設けられることにより、カッターロール551の刃551cのうち、CD方向においてアンビルロール552の周面552fと重複する部分(スリット18を形成する第2部分cp)と、溝552dと重複する部分(スリット18を形成しない第1部分np)との境界で、刃551cによって押圧される際の力の加わり方が緩やかに変化するようになる。したがって、面取り部分chがない場合と比較して、スリット18の端部で基材が刃551cに付着しにくくなる。また、周面552fと溝552dとの境界部における面取りは、図13Bのように直線的に形成されていても良いし、曲線的に形成されていても良い。つまり、周面552fと溝552dとの境界が曲面形状となっていても良い。
【0080】
次いで、第2スリット形成機構560を用いて、吸収層13に第2スリット18bを形成する第2スリット形成工程が行われる(S106)。第2スリット形成機構560は、カッターロール561とアンビルロール562とを有している。カッターロール561は、円柱状のロールの周面に複数の刃が設けられ、CD方向に沿った回転軸を中心に駆動回転する回転体である。アンビルロール562は、厚さ方向(図8では鉛直方向)においてカッターロール561と対向して配置され、CD方向に沿った回転軸を中心に駆動回転する回転体である。また、第2スリット形成工程において、第2スリット形成機構560は、基材シート(吸収層13及び副吸収層12)を図1の破線で示されるような略楕円形の形状にカッティングする。
【0081】
図15A図15Cは、第2スリット18bを形成する際に用いられるカッターロール561の構成について説明する図である。図15Aは、カッターロール561をMD方向から見たときの平面図である。図15Bは、カッターロール561の周面561fに設けられた複数の刃561cの配置パターンを表す図である。図15Cは、図15BのG-G矢視を表す断面図である。
【0082】
第2スリット形成機構560のカッターロール561は、図15Aに示されるように、CD方向に沿った回転軸Ar3を中心に回転する円筒状の回転体であり、円筒の周面561fから半径方向の外側に突出する複数の刃561c,561c…を有している。複数の刃561cは、図15Bに示されるパターンで配置されており、同図15Bのパターンが、図15Aのようにカッターロール561の周面561fにおいて、周方向に沿って所定のピッチで断続的に設けられている。複数の刃561cの各々は、主にMD方向(パッド1の前後方向)に沿ったスリットを形成することが可能に設けられている。すなわち、カッターロール561の刃561cは、主にMD方向と平行もしくはMD方向に対して45度未満の所定角度だけ傾斜して設けられている。このような刃561cによって、パッド1に複数の第2スリット18bを形成することができる。但し、カッターロール561によって、一部CD方向に沿ったスリット18が形成されても良い。
【0083】
また、カッターロール561の周面561fには、MD方向に沿った複数の刃561c,561c…を取り囲むように、周状刃561rcが設けられている。周状刃561rcは、副吸収層12の外縁の形状(図1の破線で示される略楕円形状)に合わせて設けられており、副吸収層積層工程(S103)において積層されたシート状の副吸収層12を所謂型抜きのように切り抜くことで、副吸収層12を略楕円形状に成形する。
【0084】
第2スリット形成機構560のアンビルロール562は、CD方向に沿った回転軸を中心に回転する円筒状の回転体であり、パッド1(基材シート)を挟んでカッターロール561と対向するように設けられている(図8参照)。なお、アンビルロール562の周面には、アンビルロール552の溝552d(図13参照)に相当する窪み(溝)は設けられていない。そして、アンビルロール562及びカッターロール561が回転しながら、アンビルロール562の周面とカッターロール561の刃561cの先端とが当接する部分において、両者に挟みこまれた基材シート(本実施形態では吸収層13や副吸収層12等)に刃561cの形状に応じたスリット(切り込み)を形成する。同時に、アンビルロール562の周面とカッターロール561の周状刃561rcの先端とが当接する部分において、両者に挟みこまれた基材シート(吸収層13及び副吸収層12)が周状刃561rcの形状に沿って略楕円形状に切り抜かれる。
【0085】
なお、第2スリット形成機構560のカッターロール561の刃561cの一部は、CD方向において、第1スリット形成機構550のアンビルロール552の溝552dと重複する位置に配置されている(図15B参照)。そのため、第2スリット形成工程(S106)にて形成される第2スリット18bの一部は、第1スリット形成工程(S105)にて第1スリット18aが形成されていない部分(アンビルロール552の溝552dに対応する部分)に形成される。
【0086】
第1スリット形成工程(S105)及び第2スリット形成工程(S106)にて吸収層13(及び副吸収層12)にスリット18が形成された後、厚さ方向において、副吸収層12の肌側から表面層11の連続体11aが積層され、吸収層13の非肌側から裏面層14の連続体14aが積層される。
【0087】
次いで、吸収層13及び副吸収層12を厚さ方向に挟み込んだ状態の表面層11の連続体11aと裏面層14の連続体14aとを、切断シール機構570を用いて、所定の形状に切断しつつ両者を接合(シール)する、切断シール工程が行われる(S107)。切断シール工程では、副吸収層12(吸収層13)よりも外側の領域において、表面層11の連続体11aと裏面層14の連続体14aとを熱溶着や超音波溶着等の公知の溶着手段、または、ホットメルト接着剤等の接着剤を用いて接合する。つまり、図1に示す平面状態のパッド1のうち、副吸収層12を表す破線で囲まれた部分よりも外側の領域で、表面層11と裏面層14とがシール接合される。そして、MD方向に延びる帯状の連続体11a,14aを、パッド1の外縁(輪郭)に沿って切断し、個々のパッド1を切り出す。
【0088】
次いで、セーラー機構580を用いて、個々のパッド1を幅方向(CD方向)の中央部で前後方向(MD方向)に沿って折り曲げるセーラー工程が行われる(S108)。セーラー機構580は、図3Bで示したように、前後方向(MD方向)に沿った折り線Fにて肌側に凸となる三角形状にパッド1を折り曲げる。
【0089】
次いで、指挿入シート取り付け機構590を用いて、裏面層14の非肌側に指挿入シート15を取り付ける、指挿入シート取り付け工程が行われる(S109)。指挿入シート取り付け機構590は。図3Bで示したように、三角形状に折り曲げられたパッド1の裏面層14の非肌側に指挿入シート15を取り付ける、
【0090】
次いで、ほぐし機構595を用いて、パッド1(吸収性物品)をほぐす、ほぐし工程が行われる(S110)。図16は、ほぐし機構595の構成及び動作について説明する図である。ほぐし機構595は、複数のローラー595a~595eと、パッド1を上下に挟み込んだ状態でMD方向に搬送する2本のベルト595B1,595B2とを有する。図16では、MD方向の上流側から下流側へ向かって第1ローラー595a,第2ローラー595b,第3ローラー595c,第4ローラー595d,第5ローラー595eの5つのローラーが設けられている。そして、各ローラーにベルト595B1,595B2が掛け回されている。これらのローラー595a~595eの間でパッド1を搬送方向に通過させつつ、ローラーの周面に沿わせて厚さ方向の一方側及び他方側に湾曲させることで、吸収層13を構成しているパルプ繊維の分布や交絡の偏りをほぐして均一化する。なお、ほぐし機構595に設けられるローラーの数や構成は、図15に示される限りでは無く、パッド1の製品仕様や製造装置500の構成等に応じて適宜変更可能である。
【0091】
ほぐし機構595において、MD方向に隣り合って配置された二つのローラーはそれぞれ上下方向においてズレた位置に配置されている。より具体的には、図16のように、第1ローラー595aの周面がパッド1と当接する部分のうち上下方向における最も一方側の位置(図16において第1ローラー595aの下側の点Pの位置)が、第2ローラー595bの周面がパッド1と当接する部分のうち上下方向における最も他方側の位置(図16において第2ローラー595bの上側の点Qの位置)よりも、上下方向の一方側(下側)に位置するように各ローラーが配置されている。
【0092】
このような構成により、MD方向に搬送されるパッド1は、各ローラーを通過する過程で、ローラーの周面に巻き付くことによって厚さ方向の一方側及び他方側に湾曲するようになる。例えば、図16において、パッド1が第1ローラー595aの周面に巻き付いたときには、下側(厚さ方向の一方側)に凸となるように大きく湾曲し、パッド1が第2ローラー595bの周面に巻き付いたときには、上側(厚さ方向の他方側)に凸となるように大きく湾曲する。これにより、吸収層13や副吸収層12が柔軟に変形しやすくなり、パッド1装着時におけるフィット性を向上させることができる。また、パルプ繊維の偏りが是正されるため液吸収性や液拡散性が向上すると共に、吸収層13等が厚さ方向に湾曲することによって、該吸収層13に設けられたスリット18が開きやすくなる。
【0093】
なお、ほぐし機構595は以下の様に変形しても良い。図17は、ほぐし機構595の変形例について説明する図である。図17に示されるほぐし機構595では、図16の場合と比較してMD方向に隣り合うローラー595a~595eの鉛直方向における間隔が狭く、隣り合うローラーとローラーとの間に挟みこまれるようにしてパッド1が搬送される。図17では、第1ローラー595aの下側の周面と、第2ローラー595bの上側の周面との間に挟まれることによって、パッド1が厚さ方向の一方側及び他方側に湾曲している。そして、上述した点P,Qの位置関係を満たすことで、効率よくパッド1をほぐすことができる。
【0094】
ほぐし工程が行われた後、パッド1は、MD方向の下流側において個包装され、1個ずつまたは複数個ずつパッキングされた陰唇間パッド包装体として出荷され、市場に流通する。
【0095】
<吸収性コア132を構成するパルプについて>
上述したように、パッド1の吸収性コア132は、解繊工程(S201)において広葉樹パルプを含んだパルプシートPS1を解繊して得られる粉砕パルプによって形成されている。すなわち、吸収性コア132を構成しているパルプ繊維の形状や大きさは、解繊工程におけるパルプシートPS1の解繊度合いによって大きく影響を受ける。そして、本実施形態では、図10に示されるガーネットシリンダ521mを用いて解繊を行うことで、良好な水解性及び形状安定性を備えた吸収性コア132(パルプ繊維)を製造することができる。
【0096】
本実施形態の吸収性コア132は、前後方向における長さが50~120mmであって、平均の坪量が50~120gsmとなるように形成されている。これにより、パッド1を装着した際に着用者の膣口にしっかりとフィットさせつつ、良好な肌触りや液吸収性を実現することができる。そして、本実施形態の吸収性コア132には、長さや形状の異なる複数種類の粉砕パルプ(パルプ繊維)が含まれている。
【0097】
従来、吸収性コアを形成する粉砕パルプ(パルプ繊維)は、解繊の過程で製造される3種類の形態に分類することができる。すなわち、比較的長いパルプ繊維が毛玉状に集合した繊維塊(以下、「NOTS(ノッツ)」とも呼ぶ)と、他の繊維と交絡しない程度に短い繊維(以下、「FINE(ファイン)」とも呼ぶ)と、FINEよりも長くNOTSよりも短い繊維(以下、「ACCEPT(アクセプツ)」とも呼ぶ)と、の3種類の繊維である。
【0098】
吸収性コアにおいて、このような3種類の繊維のうちNOTS(ノッツ)の含有率が高いと、着用時に肌触りが悪化したり、また、使用後にトイレ等に捨てる際に水に解れにくくなったりするおそれがある。また、FINE(ファイン)の含有率が高いと、繊維同士の交絡が弱くなり、吸収性コアが安定して形状を維持し難くなったり、使用時に繊維がばらけて保水性が悪化したりするおそれがある。したがって、吸収性コアの形状安定性や保水性、水解性を高めるためには、吸収性コアを構成する繊維においてACCEPT(アクセプツ)の含有率をなるべく高めることが好ましい。
【0099】
しかしながら、従来の吸収性物品に設けられる吸収性コアは、パルプシートを解繊する過程でNOTS(ノッツ)や、FINE(ファイン)の含有率が高くなってしまい、良好な水解性と形状安定性とを両立することが難しかった。
【0100】
これに対して、本実施形態の製造装置500を用いて製造された吸収性コア132では、NOTS(ノッツ)及びFINE(ファイン)の含有率を従来よりも低くすることができる。図18は、本実施形態の製造装置500によって形成された吸収性コア132と、従来の製造方法によって形成された吸収性コアとで、NOTS(ノッツ)、FINE(ファイン)、ACCEPT(アクセプツ)の含有割合を比較したデータを表す図である。図19は、吸収性コア(粉砕パルプ)に含まれる、NOTS(ノッツ)、FINE(ファイン)、ACCEPT(アクセプツ)の含有割合を求める方法について説明する図である。
【0101】
粉砕パルプ中に含まれる、NOTS(ノッツ)、FINE(ファイン)、ACCEPT(アクセプツ)の含有割合は、JIS K 0069-1992に規定される「化学製品のふるい分け試験方法」に準拠した粉砕パルプの評価試験を行うことで求められる。本実施形態における評価試験は、図19に示されるような粉砕評価試験器300(例えば、株式会社日進機械製:パルプ粉砕評価試験機)を用いて行われる。粉砕評価試験器300は、第1篩311~第5篩315と、バイブレーション装置320とを有する。第1篩311~第5篩315は、それぞれ25.4mm間の目数(メッシュ)が異なる金網(例えば、JIS Z 8801に規定される金属製ふるい網)を備えた篩である。粉砕評価試験器300では、鉛直方向の上側から、第1篩として42メッシュ、第2篩として4.7メッシュ、第3篩として7.5メッシュ、第4篩として14メッシュ、第5篩として60メッシュの各種メッシュを順番に配置する。バイブレーション装置320は、篩311~315に振動を与える装置である。
【0102】
粉砕パルプの評価試験は、本実施形態の製造装置500で製造された吸収性コア132、及び、比較例として従来の製造方法によって製造された吸収性コア1~3について行った。比較例1~3は、解繊装置として従来型のソーミルを用いてパルプの解繊を行ったものである。比較例1は本実施形態と同程度の粉砕量(kg/hm)で解繊を行った。また、比較例2は比較例1の2倍の粉砕量、比較例3は比較例1の3倍の粉砕量で解繊を行った。
【0103】
粉砕パルプの評価試験を行う際には、先ず、バイブレーション装置320を設定してから(強弱設定ダイヤル:70、時間設定:5分間、バイブレーション:連続)、評価対象とする粉砕パルプをほぐして第2篩312に入れる。評価対象とする粉砕パルプは約5mgとし、予め正確な重量を測定しておく。次いで、第1篩311を乗せてクランプユニットで固定して、バイブレーション装置320を作動させる。次いで、5分間作動させた後、クランプユニットを緩めて、第1篩311を取り除く。
【0104】
このとき、第2篩312~第4篩314に残った粉砕パルプをNOTS(ノッツ)とする。すなわち、14メッシュ以上の篩を通過しない繊維をNOTS(ノッツ)として重量を測定する。また、何れの篩312~315にも残らなかった粉砕パルプをFINE(ファイン)とする。すなわち、60メッシュの篩を通過した繊維をFINE(ファイン)として重量を測定する。また、それ以外の粉砕パルプをACCEPT(アクセプツ)とする。すなわち、第2篩312~第4篩314を通過し、且つ、第5篩315を通過しなかった繊維をACCEPT(アクセプツ)とする。この試験を複数回(例えば2回以上)繰り返えして、NOTS(ノッツ)、FINE(ファイン)、FINE(ファイン)のそれぞれについて平均の重量を算出する。そして、評価対象とする粉砕パルプの全体の重量(5mg)に対する重量の割合から各繊維の含有割合を求める。
【0105】
このような粉砕パルプ評価試験の結果、比較例1~3では、何れも14%以上のNOTS(ノッツ)が含まれていた。そして、単位時間当たりの解繊量が増えるほど、NOTS(ノッツ)の含有量が増加していた。また、比較例1~3では、11%~12%のFINE(ファイン)が含まれていた(図18参照)。これに対して、本実施形態の吸収性コア132を構成している粉砕パルプには、NOTS(ノッツ)が含まれていないことが明らかとなった。また、FINE(ファイン)が19%であり、ACCEPT(アクセプツ)が81%であった(図18参照)。
【0106】
本実施形態の吸収性コア132は、NOTS(ノッツ)の含有割合が小さいため、大きな繊維塊が水に解れずに残ってしまうことが抑制され、トイレ等に捨てた場合に吸収性コア132を構成している繊維が細かくばらけやすい。少なくとも、全体の重量に対するNOTS(ノッツ)の重量の割合が10%以下であり、NOTS(ノッツ)の重量の割合が10%よりも大きい場合と比較して、水解性が高くなる。また、本実施形態の吸収性コア132は、FINE(ファイン)の含有割合が全体の2割以下であり、吸収性コア132を構成しているパルプ繊維(粉砕パルプ)の8割以上は互いに交絡しやすくなっている。すなわち、全体の重量に対するFINE(ファイン)の重量の割合が20%以下であり、重量の割合が20%よりも大きい場合と比較して、パルプ繊維同士が互いに絡み合いやすく、吸収性コア132の形状が安定して維持されやすい。したがって、装着時(使用時)に形状が安定し、使用後にトイレ等に捨てる際には水解性が高く解れやすい吸収性コア132を製造することができる。
【0107】
また、本実施形態の解繊工程(S201)において、単位幅当たりの解繊量が7.5~60kg/mhとなるように、パルプシートP1の解繊が行われる。繊維長の短い広葉樹パルプを使用する場合、回転ドラム523の凹部523rに粉砕パルプを堆積(集積)したときに、吸収性コアが締まって基材シートに転写し難くなる場合があるが、上記の条件であれば、吸収性コア132の形状を維持したまま基材シート(非肌側シートの連続体133a)に転写しやすい。なお、解繊工程において単位時間当たりの解繊量を増やす(ガーネットシリンダ521mの回転数を上げる)とNOTS(ノッツ)の割合が増加し、逆に単位時間当たりの解繊量を減らす(ガーネットシリンダ521mの回転数を下げる)とFINE(ファイン)の割合が増加するおそれがある。そのため、上記の解繊量の範囲内で吸収性コア132の製造を行うことが好ましい。
【0108】
また、本実施形態の解繊工程(S201)では、回転ロールの周方向に沿って鋸刃525が巻き付けられたガーネットシリンダ521mを用いて、広葉樹パルプを含んだパルプシートP1の解繊が行われる。多数の細かい刃を有する鋸刃525によってパルプシートP1を粉砕することで、従来のソーミルやハンマーミルを用いて解繊を行う場合と比較して、より微細な粉砕パルプを形成しやすい。特に、NOTS(ノッツ)含有割合を少なくし、適度なサイズのACCEPT(アクセプツ)の割合を多くすることが可能であるため、水解性の高い吸収性コア132を製造するのに好適である。
【0109】
また、本実施形態の吸収性コア132には、NOTS(ノッツ)が含まれていない。上述したように、NOTS(ノッツ)が含まれていると、水解性が悪化しやすく、トイレに流す際に吸収性コア132が分解され難くなるおそれがある。また、NOTS(ノッツ)が含まれていると、繊維の密度が局所的に高くなる部分が生じるため、吸水性や保水性が均一になり難く、排泄漏れ等の原因になるおそれがある。これに対して。本実施形態の吸収性コア132にはNOTS(ノッツ)が含まれないため、良好な吸水性・保水性や水解性を備えた吸収性コア132を実現することができる。
【0110】
また、吸収性コア132の水解性の観点から、パッド1の使用後にトイレ等に流す際に、吸収性コア132を構成している多数のパルプ繊維(粉砕パルプ)が各々水と接触しやすく、繊維同士が交絡した状態からばらけやすくなっていることが望ましい。本実施形態の製造方法では、スリット形成工程(S105、S106)により、吸収性コア132(吸収層13)に複数のスリット18が形成されている。これにより、パッド1をトイレに流す際に、スリット18を介して吸収性コア132の内部に水が引き込まれやすくなり、パルプ繊維が水と接触しやすくなる。また、ほぐし工程(S110)によりパルプ繊維がほぐされていることにより、吸収性コア132の全体に亘って水が均一に染み渡りやすくなる。したがって、良好な水解性を有する吸収性コア132を製造することができる。
【0111】
また、ほぐし工程(S110)は、スリット形成工程(S105、S106)の後で実施される。この順番で実施することで、スリット形成工程において吸収性コア132に形成された複数のスリット18,18…の各々が、ほぐし工程において広がりやすくなる。(切れ目が開きやすくなる)。これにより、パッド1をトイレに流す際に、スリット18(切れ目)から水がより浸入しやすくなり、吸収性コア132の内側に水が到達しやすくなる。したがって、吸収性コア132を構成しているパルプ繊維と水が接触しやすくなり、水解性をより高めることができる。
【0112】
また、ほぐし工程において、パッド1は、ほぐし機構595に設けられる複数のローラーの周面にそれぞれ巻き付くようにして湾曲しながら搬送される。例えば、図16において、パッド1は、ベルト595B1と595B2との間に支持された状態で、先ず、CD方向に沿った回転軸周りに回転する第1ローラー595aの下側の周面に巻き付くようにして下側に凸となるように大きく湾曲する。その後、第2ローラー595bまで搬送され、595bの上側の周面に巻き付くことにより上側に凸となるように大きく湾曲する。つまり、上下方向において、第1ローラー595aの周面がパッド1と当接する部分の最も低い位置(図16の点P)が、第2ローラー595bの周面がパッド1と当接する部分の最も高い位置(図16の点Q)よりも低いことにより、これらのローラーの周面に沿ってパッド1が上下に(厚さ方向に)大きく湾曲する。
【0113】
図5で説明したように、吸収性コア132には、幅方向(CD方向)に沿った第1スリット18aと、前後方向(MD方向)に沿った第2スリット18bがそれぞれ複数ずつ設けられている。そして、ほぐし工程においてパッド1(吸収性コア132)がMD方向に搬送されながら厚さ方向に湾曲することにより、CD方向に(幅方向)に沿った第1スリット18aがローラーの周面(MD方向に相当)に沿って広げられたり縮められたりする。また、MD方向に(前後方向)に沿った第2スリット18bは、吸収性コア132の厚さやローラー周面を通過する際の内外周速差に基づいて広げられたり縮められたりする。これにより、複数のスリット18,18…の各々が開きやすくなり、使用後のパッド1をトイレ等に捨てた際に、開いたスリット18から水が引き込まれることにより、吸収性コア132の水解性がより高められる。
【0114】
また、ほぐし工程において、パッド1は、前後方向をMD方向に沿わせた状態で搬送される。図1図5に示されるように、パッド1は着用者の股間にフィットするよう、幅方向よりも前後方向が長い略楕円形状に形成されている。つまり、パッド1は、MD方向における長さが長くなる状態で搬送される。これにより、ほぐし機構595に設けられる複数のローラー595a~595eにおいて、パッド1が大きく湾曲しやすくなる。例えば、図16では、パッド1が第2ローラー595bの周方向おいて上側半分の広い範囲で周面に沿って巻き付くことにより、180度近くまで湾曲した状態となっている。これに対して、仮にパッド1のMD方向における長さが短い場合、第2ローラー595bの周方向においてパッド1が巻き付く範囲が狭くなるため、上述の場合よりも湾曲の度合いが小さくなる。このように本実施形態では、MD方向における長さが長くなるように、前後方向をMD方向に沿わせた状態でパッド1を搬送することにより、ほぐし工程において、パッド1(吸収性コア132)を効率よく湾曲させることができる。
【0115】
このとき、吸収性コア132の前後方向(MD方向)における長さL13は、各ローラーの直径(例えば第1ローラー595aの直径d595a等)の2倍の長さよりも長いことが好ましい。上述したように、ほぐし工程において吸収性コア132(パッド1)を効率よく湾曲させるためには、吸収性コア132がローラーの周方向においてなるべく広い範囲に巻き付いた状態となることが望ましい。ここで、ローラーの周方向における長さは、ローラーの直径の約3.14倍であることから、吸収性コア132の前後方向(MD方向)における長さL13がローラーの直径の1.57倍であれば、吸収性コア132は、理論上ローラーの周方向において1/2の範囲に巻き付くことになる。そこで、吸収性コア132の前後方向(MD方向)における長さL13をローラーの直径の2倍よりも長くすることで、ベルト595B1,595B2による搬送時の誤差等を考慮したとしても、図16のように、パッド1がローラーの周面にしっかりと巻き付きやすくなる。これにより、パッド1を大きく湾曲させやすくなり、スリット18がより開きやすくなる。したがって、水解性をより向上させることができる。
【0116】
また、ほぐし工程(S110)は、セーラー工程(S108)の後で実施される。セーラー工程では、吸収性コア132(パッド1)が幅方向(CD方向)の中央部で前後方向(MD方向)に沿った折り曲げ線にて2つ折りに折り曲げられる。すなわち、吸収性コア132の幅方向(CD方向)の中央部よりも一方側の領域と他方側の領域とが厚さ方向に折り重ねられ、厚さが厚くなった状態でMD方向に搬送される。そして、MD方向の下流側において、吸収性コア132が、ほぐし機構595のローラー595a~595dの周面に沿って湾曲する際に、厚さが厚いほど、半径方向においてローラーの回転中心からの距離が長くなり、ローラーの周方向(MD方向)に引っ張られやすくなる。例えば、図16で、第2ローラー595bの周面に沿ったパッド1は、当該周面と当接している点Qよりも、周面から離れた点Rにおいて周方向に強く引っ張られやすくなる。この場合、厚さ方向において点Qの近くに設けられたスリット18よりも、点Rの近くに設けられたスリット18の方が開きやすくなる。したがって、セーラー工程で2つ折りにされて厚さが厚くなった吸収性コア132を、ほぐし工程でほぐすことにより、スリット18がより開きやすくなり、水解性をより向上させることができる。
【0117】
また、吸収性コア132に設けられる複数の第1スリット18a,18a…の合計の長さが、複数の第2スリット18b,18b…の合計の長さよりも長いことが好ましい。ほぐし工程ではMD方向に沿って搬送される吸収性コア132を厚さ方向に湾曲させることによってスリット18を開きやすくすることを説明したが、このとき、CD方向に沿った第1スリット18aの方が、MD方向に沿った第2スリット18bよりも大きく開きやすい。したがって、第1スリット18aの合計の長さが、第2スリット18bの合計の長さよりも長ければ、全体としてスリット18が開きやすくなる長さが長くなる。すなわち、より多くのスリット18を効率よく開かせることができる。これにより、吸収性コア132の水解性を向上させることができる。
【0118】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのは言うまでもない。
【0119】
上述の実施形態で、吸収層13の吸収性コア132は、平均繊維長が0.8mm程度の短繊維によって構成されていることについて説明した。従来、パルプを細かく粉砕して繊維長を短くしたい場合には、粉砕前のパルプシートに第四級アンモニウム界面活性剤等の柔軟剤(デボンダー)を添加することによって、パルプを粉砕しやすくすることが一般的に行われている(所謂、トリートメントパルプ)。しかしながら、柔軟剤(デボンダー)を用いると、吸水性が阻害されやすくなるおそれがある。
【0120】
そこで、パッド1の吸収性コア132を構成する吸水性繊維は、柔軟剤(デボンダー)を含まずに構成されることが好ましい。これにより、吸収性コア132の保水性能が低下してしまうことが抑制される。上述の実施形態では、吸収性コア132が広葉樹パルプを用いて形成されているため、柔軟剤(デボンダー)を用いなくても平均繊維長を0.8mm程度とすることが可能であり、吸水性や柔軟性に優れた吸収性コア132を実現することができる。
【0121】
上述の実施形態では、吸収層13が副吸収層12よりも非肌側に配置された構成のパッド1について説明されていたが(図2等参照)、厚さ方向においてこれらの配置が逆であっても良い。例えば、吸収層13の厚さ方向における非肌側に副吸収層12が配置される構成であっても良い。また、パッド1に副吸収層12が設けられておらず、吸収層13のみを備える構成であっても良い。
【符号の説明】
【0122】
1 陰唇間パッド(パッド、吸収性物品)、
11 表面層、11a 連続体、
12 副吸収層、
13 吸収層、
131 肌側シート、131a 連続体、
132 吸収性コア、
133 非肌側シート、133a 連続体、
14 裏面層、14a 連続体、
15 指挿入シート、15de 指挿入シート非接合部、
16 指挿入シート接合部、
17 裏面層接合部、
18 スリット、
18a 第1スリット、18b 第2スリット、
19 圧搾部、
20 指挿入部、
300 粉砕評価試験器、
311 第1篩、312 第2篩、313 第3篩、314 第4篩、315 第5篩、
320 バイブレーション装置、
500 製造装置、
510 搬送機構、
520 吸収性コア積層機構、
521 解繊装置、
521m ガーネットシリンダ、521mf 周面、521Ar 回転軸、
522 材料供給部、523 回転ドラム、523r 凹部、
525 鋸刃、526 フィードロール、
530 副吸収層積層機構、
531 解繊装置、531m ガーネットシリンダ、
540 反転機構、
550 第1スリット形成機構、
551 カッターロール、551f 周面、551c 刃、
552 アンビルロール、552f 周面、552d 溝、
560 第2スリット形成機構、
561 カッターロール、561f 周面、561c 刃、561rc 周状刃、
562 アンビルロール、
570 切断シール機構、
580 セーラー機構、
590 指挿入シート取り付け機構、
595 ほぐし機構、
595a 第1ローラー、595b 第2ローラー、595c 第3ローラー、
595d 第4ローラー、
F 折り線(折り曲げ線)、
PS1 パルプシート、PS2 パルプシート、
CR 中央領域、
SR 端部領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2025-01-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
図1】展開状態のパッド1の平面図である。
図2図1のA-A矢視概略断面図である。
図3】パッド1の構成を説明する図である。
図4】パッド1の構成を説明する図である。
図5】吸収層13の構成について説明する平面図である。
図6】広葉樹吸水性繊維(広葉樹パルプ)と針葉樹吸水性繊維(針葉樹パルプ)の繊維長の分布を示す図である。
図7】パッド1の製造工程を表すフロー図である。
図8】パッド1等の吸収性物品を製造する製造装置500について説明する概略図である。
図9】吸収性コア積層工程(S102)にて具体的に実施される動作(工程)を表すフロー図である。
図10図10A~10Cは、ガーネットシリンダ521mの構成について説明する図である。
図11ーネットシリンダ521mを用いてパルプシートPS1を解繊する方法について説明する図である。
図12図12A図12Cは、第1スリット18aを形成する際に用いられるカッターロール551の構成について説明する図である。
図13図13A図13Bは、第1スリット18aを形成する際に用いられるアンビルロール552の構成について説明する図である。
図14】カッターロール551とアンビルロール552によって第1スリット18aを形成する動作について説明する図である。
図15図15A図15Cは、第2スリット18bを形成する際に用いられるカッターロール561の構成について説明する図である。
図16】ほぐし機構595の構成及び動作について説明する図である。
図17】ほぐし機構595の変形例について説明する図である。
図18】製造装置500によって形成された吸収性コア132と、従来の製造方法によって形成された吸収性コアとで、NOTS(ノッツ)、FINE(ファイン)、ACCEPT(アクセプツ)の含有割合を比較したデータを表す図である。
図19】吸収性コア(粉砕パルプ)に含まれる、NOTS(ノッツ)、FINE(ファイン)、ACCEPT(アクセプツ)の含有割合を求める方法について説明する図である。