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特開2025-10500感光性樹脂組成物、感光性樹脂膜、ディスプレイ装置、および感光性樹脂膜の製造方法
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  • 特開-感光性樹脂組成物、感光性樹脂膜、ディスプレイ装置、および感光性樹脂膜の製造方法 図1
  • 特開-感光性樹脂組成物、感光性樹脂膜、ディスプレイ装置、および感光性樹脂膜の製造方法 図2
  • 特開-感光性樹脂組成物、感光性樹脂膜、ディスプレイ装置、および感光性樹脂膜の製造方法 図3
  • 特開-感光性樹脂組成物、感光性樹脂膜、ディスプレイ装置、および感光性樹脂膜の製造方法 図4
  • 特開-感光性樹脂組成物、感光性樹脂膜、ディスプレイ装置、および感光性樹脂膜の製造方法 図5
  • 特開-感光性樹脂組成物、感光性樹脂膜、ディスプレイ装置、および感光性樹脂膜の製造方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010500
(43)【公開日】2025-01-21
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性樹脂膜、ディスプレイ装置、および感光性樹脂膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20250110BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20250110BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20250110BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20250110BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20250110BHJP
   H10K 77/10 20230101ALI20250110BHJP
   H10K 50/125 20230101ALI20250110BHJP
   H10K 59/38 20230101ALI20250110BHJP
   H10K 59/35 20230101ALI20250110BHJP
   H10K 71/12 20230101ALI20250110BHJP
   H10K 71/40 20230101ALI20250110BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20250110BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
G03F7/038 501
G03F7/004 505
G03F7/004 501
G03F7/027
G03F7/004 502
G02B5/20 101
H10K85/10
H10K77/10
H10K50/125
H10K59/38
H10K59/35
H10K71/12
H10K71/40
C08F290/12
G09F9/30 349B
G09F9/30 365
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024103258
(22)【出願日】2024-06-26
(31)【優先権主張番号】10-2023-0088564
(32)【優先日】2023-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2024-0065960
(32)【優先日】2024-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キ,スンボム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジュホ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ベク ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジウン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ドンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジホン
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
3K107
4J127
5C094
【Fターム(参考)】
2H148BC06
2H148BC12
2H148BC56
2H148BC57
2H148BE03
2H148BE09
2H148BE12
2H148BE22
2H148BE23
2H148BE26
2H148BF11
2H148BF12
2H148BF16
2H148BG06
2H148BH11
2H148BH21
2H225AC23
2H225AC35
2H225AC36
2H225AC43
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC49
2H225AC72
2H225AD06
2H225AE12P
2H225AE30P
2H225AN22P
2H225AN39P
2H225BA05P
2H225BA09P
2H225BA16P
2H225BA22P
2H225BA32P
2H225CA17
2H225CA24
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC13
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC09
3K107CC33
3K107CC35
3K107CC45
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3K107FF17
3K107FF18
3K107GG06
3K107GG26
4J127AA03
4J127AA04
4J127BA041
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4J127BB051
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5C094AA08
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5C094BA27
5C094CA19
5C094CA24
5C094ED03
5C094FB01
5C094GB01
5C094JA01
5C094JA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低温でも十分に硬化して耐溶剤性およびコーティング外観特性に優れ、さらに色特性も優れていて、高い信頼性およびパターン性を有する感光性樹脂組成物、これを用いた感光性樹脂膜、ディスプレイ装置および感光性樹脂膜製造方法を提供する。
【解決手段】感光性樹脂組成物は、(A)バインダー樹脂と、(B)着色剤と、(C)重合性単量体と、(D)重合開始剤と、(E)溶媒と、を含み、バインダー樹脂は側鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する特定構造のアクリル系バインダー樹脂を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダー樹脂と、
(B)着色剤と、
(C)重合性単量体と、
(D)重合開始剤と、
(E)溶媒と、
を含み、
前記バインダー樹脂は下記化学式1および化学式2で表される構造単位からなる群より選択された少なくとも一つ以上を含み、下記化学式3~化学式5で表される構造単位からなる群より選択された少なくとも二つ以上を含む、感光性樹脂組成物。
[化学式1]
【化1】

[化学式2]
【化2】

[化学式3]
【化3】

[化学式4]
【化4】

[化学式5]
【化5】

(上記化学式1~化学式5中、
~RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、
およびRはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
~Lはそれぞれ独立して単一結合または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基である。)
【請求項2】
前記バインダー樹脂は、前記化学式1および化学式3~化学式5で表される構造単位を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記化学式1および化学式3~化学式5中、
、R、およびRはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、
、R、およびRはそれぞれ独立して水素原子であり、
~Lはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基である、請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記バインダー樹脂は、5000g/mol~8000g/molの重量平均分子量を有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記バインダー樹脂は、150g/mol~500g/molの二重結合当量を有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記感光性樹脂組成物を構成する固形分は、前記感光性樹脂組成物の総量に対して12重量%~24重量%で含まれる、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記重合性単量体は、3つ以上の官能基を含む化合物を一つ以上含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記重合性単量体は2種の化合物の混合物であり、
前記2種の化合物はそれぞれ独立して3つ以上の官能基を含む化合物である、請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記2種の化合物は3つ~5つの官能基を含む第1重合性単量体および6つ以上の官能基を含む第2重合性単量体であり、前記第1重合性単量体は前記第2重合性単量体より少ない含量で含まれる、請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記感光性樹脂組成物は、前記感光性樹脂組成物の総量に対して、
前記(A)バインダー樹脂5重量%~20重量%と、
前記(B)着色剤70重量%~90重量%と、
前記(C)重合性単量体1重量%~10重量%と、
前記(D)重合開始剤0.1重量%~5重量%と、
残部量の前記(E)溶媒と、
を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記感光性樹脂組成物は、抗酸化剤をさらに含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記抗酸化剤は、前記感光性樹脂組成物の総量に対して0.01重量%~1重量%で含まれる、請求項11に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
前記感光性樹脂組成物は、マロン酸、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、シラン系カップリング剤、レベリング剤、界面活性剤、またはこれらの組み合わせの添加剤をさらに含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物を用いて製造される、感光性樹脂膜。
【請求項15】
請求項14に記載の感光性樹脂膜を含む、ディスプレイ装置。
【請求項16】
前記ディスプレイ装置はシリコンウエハー上に蒸着されたOLED基板および前記OLED基板上に積層され前記OLED基板から発生した白色光を複数のカラー光に変換するカラーフィルタ層を含み、
前記カラーフィルタ層は赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ、および青色カラーフィルタを含む、請求項15に記載のディスプレイ装置。
【請求項17】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物を塗布する段階と、
前記塗布後、100℃以下の温度でプリベークする段階と、
前記プリベーク後、i-lineで露光する段階と、
現像する段階と、
を含む感光性樹脂膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性樹脂組成物、感光性樹脂膜、ディスプレイ装置、および感光性樹脂膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、VR(Virtual Reality)、AR(Augmented Reality)、およびMR(Mixed Reality)機器に適用されるディスプレイパネルとして、自ら光を出す自発光型(Emissive)マイクロOLEDディスプレイパネルに対する関心が高まっている。
【0003】
一般的なOLEDディスプレイパネルに比べてピクセル大きさが10倍程度小さいマイクロOLEDディスプレイパネルの場合、既存のFMM(Fine Metal Mask)技術では赤(R)/緑(G)/青(B)発光層を精巧に形成しにくい。即ち、VR、ARなどの機器に既存の液晶ディスプレイを適用するにはカラーフィルタのパターンサイズが大きくて解像度を高めるのに無理がある。
【0004】
よって、最近になって、4000ppi以上の高い解像度を実現するためにOLEDoS(OLED on Silicon)技術が導入されている。当該技術は、シリコンウェハー(silicon wafer)の上に蒸着されたOLEDをバックライト(back light)にして、その上にカラーフィルタをパターニングする。既存の液晶ディスプレイに用いるカラーフィルタは、ガラスに100μm程度のパターンが形成される露光工程と230℃以上の高温でのポストベーク(post bake)工程を経て硬化される一方で、OLEDoSの上に形成されるカラーフィルタは、OLEDのために高温工程を経ることができなくて低温硬化が可能でなければならず、解像度を高めるために微細パターニングされることも重要である。VR、AR、MR機器の特性上、大きさも小さいために所望の解像度を実現するためには微細パターニングが必須である。
【0005】
しかしながら、低温(100℃以下)でのみ硬化が行われるための既存の材料から作られたカラーフィルタでは耐溶剤性およびコーティング外観特性の改善が難しく、色特性の確保も容易ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2022-0081693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一実施形態は、低温でも十分に硬化して耐溶剤性およびコーティング外観特性に優れ、さらに色特性も優れていて、高い信頼性およびパターン性を有する感光性樹脂組成物を提供する。
【0008】
他の一実施形態は、上記感光性樹脂組成物を用いて製造される感光性樹脂膜を提供する。
【0009】
また、他の一実施形態は、上記感光性樹脂膜を含むディスプレイ装置を提供する。
【0010】
また、他の一実施形態は、上記感光性樹脂膜の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(A)バインダー樹脂と、(B)着色剤と、(C)重合性単量体と、(D)重合開始剤と、(E)溶媒と、を含み、バインダー樹脂は下記化学式1および化学式2で表される構造単位からなる群より選択された少なくとも一つ以上を含み、下記化学式3~化学式5で表される構造単位からなる群より選択された少なくとも二つ以上を含む。
[化学式1]
【化1】

[化学式2]
【化2】

[化学式3]
【化3】

[化学式4]
【化4】

[化学式5]
【化5】

上記化学式1~化学式5中、
~RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、
およびRはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
~Lはそれぞれ独立して単一結合または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基である。
【0012】
バインダー樹脂は、化学式1および化学式3~化学式5で表される構造単位を含むことができる。
【0013】
化学式1および化学式3~化学式5中、R、R、およびRはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、R、R、およびRはそれぞれ独立して水素原子であり、L~Lはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基であってもよい。
【0014】
バインダー樹脂は、5000g/mol~8000g/molの重量平均分子量を有することができる。
【0015】
バインダー樹脂は、150g/mol~500g/molの二重結合当量を有することができる。
【0016】
感光性樹脂組成物を構成する固形分は、感光性樹脂組成物の総量に対して12重量%~24重量%で含まれてもよい。
【0017】
重合性単量体は、3つ以上の官能基を含む化合物を一つ以上含むことができる。
【0018】
重合性単量体は2種の化合物の混合物であり、2種の化合物はそれぞれ独立して3つ以上の官能基を含む化合物であってもよい。
【0019】
2種の化合物は3つ~5つの官能基を含む第1重合性単量体および6つ以上の官能基を含む第2重合性単量体であり、第1重合性単量体は第2重合性単量体より少ない含量で含まれてもよい。
【0020】
感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物の総量に対して、(A)バインダー樹脂5重量%~20重量%と、(B)着色剤70重量%~90重量%と、(C)重合性単量体1重量%~10重量%と、(D)重合開始剤0.1重量%~5重量%と、残部量として(E)溶媒と、を含むことができる。
【0021】
感光性樹脂組成物は、抗酸化剤をさらに含むことができる。
【0022】
抗酸化剤は、感光性樹脂組成物の総量に対して0.01重量%~1重量%で含まれてもよい。
【0023】
感光性樹脂組成物は、マロン酸、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、シラン系カップリング剤、レベリング剤、界面活性剤、またはこれらの組み合わせの添加剤をさらに含むことができる。
【0024】
感光性樹脂組成物は、マイクロOLEDディスプレイ装置用組成物であってもよい。
【0025】
他の一実施形態に係る感光性樹脂膜は、感光性樹脂組成物を用いて製造される。
【0026】
また、他の一実施形態に係るディスプレイ装置は、感光性樹脂膜を含む。
【0027】
ディスプレイ装置は、シリコンウエハー上に蒸着されたOLED基板およびOLED基板上に積層されOLED基板から発生した白色光を複数のカラー光に変換するカラーフィルタ層を含み、カラーフィルタ層は赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ、および青色カラーフィルタを含むディスプレイ装置であってもよい。
【0028】
また、他の一実施形態に係る感光性樹脂膜の製造方法は、感光性樹脂組成物を塗布する段階と、塗布後、100℃以下の温度でプリベークする段階と、プリベーク後、i線(i-line)で露光する段階と、現像する段階と、を含む。
【0029】
その他、本発明の態様の具体的な事項は以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0030】
一実施形態に係る感光性樹脂組成物は100℃以下の低温で硬化が可能であり、微細パターンの実現を通じて高解像度の確保が可能であり、分光特性も優れていて広い色領域の確保も可能である。特に、100℃以下のプリベーク(Pre-bake)時、温度および光硬化(i線露光)のみでも優れた耐溶剤性を有して残渣特性に優れており、コーティング外観特性に優れているという点から、マイクロOLEDディスプレイ装置に適用されることに適する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施例1による感光性樹脂組成物を低温硬化した感光性樹脂膜に対する光学顕微鏡写真である。
図2】比較例1による感光性樹脂組成物を低温硬化した感光性樹脂膜に対する光学顕微鏡写真である。
図3】比較例2による感光性樹脂組成物を低温硬化した感光性樹脂膜に対する光学顕微鏡写真である。
図4】実施例1による感光性樹脂組成物を低温硬化した感光性樹脂膜に対する光学顕微鏡写真である。
図5】比較例1による感光性樹脂組成物を低温硬化した感光性樹脂膜に対する光学顕微鏡写真である。
図6】比較例2による感光性樹脂組成物を低温硬化した感光性樹脂膜に対する光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、これは例示として提示されるもので、これによって本発明が制限されず、本発明は後述の請求の範囲によってのみ定義される。
【0033】
本明細書で特別な言及がない限り、「アルキル基」とは炭素数1~20のアルキル基を意味し、「アルケニル基」とは炭素数2~20のアルケニル基を意味し、「シクロアルケニル基」とは炭素数3~20のシクロアルケニル基を意味し、「ヘテロシクロアルケニル基」とは炭素数3~20のヘテロシクロアルケニル基を意味し、「アリール基」とは炭素数6~20のアリール基を意味し、「アリールアルキル基」とは炭素数6~20のアリールアルキル基を意味し、「アルキレン基」とは炭素数1~20のアルキレン基を意味し、「アリーレン基」とは炭素数6~20のアリーレン基を意味し、「アルキルアリーレン基」とは炭素数6~20のアルキルアリーレン基を意味し、「ヘテロアリーレン基」とは炭素数3~20のヘテロアリーレン基を意味し、「アルコキシシラン基」とは炭素数1~20のアルコキシシラン基を意味する。
【0034】
本明細書で特別な言及がない限り、「置換」とは少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミン基、イミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバモイル基、チオール基、エステル基、エーテル基、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸またはその塩、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキニル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルキル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルケニル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルキニル基、炭素数3~20のヘテロアリール基、またはこれらの組み合わせの置換基に置換されたことを意味する。
【0035】
また、本明細書で特別な言及がない限り、「ヘテロ」とは、化学式内にN、O、S、およびPのうちの少なくとも一つのヘテロ原子が少なくとも一つ含まれたことを意味する。
【0036】
また、本明細書で特別な言及がない限り、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」の両方とも可能であるのを意味し、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」と「メタクリル酸」の両方とも可能であるのを意味する。
【0037】
本明細書で別途の定義がない限り、「組み合わせ」とは混合または共重合を意味する。また、「共重合」とはブロック共重合乃至ランダム共重合を意味し、「共重合体」とはブロック共重合体乃至ランダム共重合体を意味する。
【0038】
本明細書内の化学式で、別途の定義がない限り、化学結合が描かれなければならない位置に化学結合が描かれていない場合は当該位置に水素原子が結合されていることを意味する。
【0039】
本明細書で別途の定義がない限り、「*」は同一または異なる原子または化学式と結合される部分を意味する。
【0040】
一実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(A)バインダー樹脂と、(B)着色剤と、(C)重合性単量体と、(D)重合開始剤と、(E)溶媒と、を含み、バインダー樹脂は下記化学式1および化学式2で表される構造単位からなる群より選択された少なくとも一つ以上を含み、下記化学式3~化学式5で表される構造単位からなる群より選択された少なくとも二つ以上を含む。
[化学式1]
【化6】

[化学式2]
【化7】

[化学式3]
【化8】

[化学式4]
【化9】

[化学式5]
【化10】

上記化学式1~化学式5中、
~RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、
およびRはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
~Lはそれぞれ独立して単一結合または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基である。
【0041】
ディスプレイ装置の一つである液晶ディスプレイ装置は軽量化及び薄型化、低価、低消費電力駆動化および優れた集積回路との接合性の長所を有していて、ノートパソコン、モニターおよびTV画像用にその使用範囲が拡大されている。このような液晶ディスプレイ装置は、光の三原色に該当する赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のサブピクセルが集合された単位ピクセルが反復的に形成されたカラーフィルタを備える。各サブピクセルを隣接するように配置させた状態でそれぞれのサブピクセルに色信号を印加して明るさを制御すると、三原色の合成によって単位ピクセルに特定の色が表示される。カラーフィルタは赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の染料または顔料として製造され、このような色素材料はバックライトユニットの白色光をそれぞれの対応する色に変える役割を果たすことになる。色素材料のスペクトルが要求される吸収波長以外に不必要な波長がなく幅が狭い吸収バンドを有するほど向上する。また、カラーレジストのエッチング過程で露出される紫外線、酸、塩基条件下で退色または変色しない優れた耐熱性、耐光性、および耐化学性を有しなければならない。感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルタは主に染色法、電着法、印刷法、顔料分散法などによって3種以上の色を透明基板上にコーティングして製造することができる。
【0042】
このようなLCDの工程以外にも染料や顔料技術を基盤とした次世代ディスプレイへの感光性樹脂組成物が使用できる。既存のLCD工程は高温工程での耐久性のために設計されているが、次世代ディスプレイの場合、薄膜の材質的特性によって、熱変形損失を最少化するために、低温工程が必要であり、有機発光素子(OLED)用材料も低温工程のみ可能であるため、低温硬化型樹脂組成物に対する要求が増加している。しかし、低温硬化時、十分に硬化されなくて耐熱性および耐化学性がぜい弱であるという問題があり、これを改善するために過度な硬化型材料を使用すると、薄膜形成時に不均一な表面特性およびぜい弱な残渣を発生する。
【0043】
よって、本発明者らはこのような背景下で、低温で硬化度が高くて優れた耐溶剤性および均一なコーティング特性を有する感光性樹脂組成物を開発するために数年間数多くの試行錯誤の果てに、ついに本発明を完成するに至った。具体的には、一実施形態は、低温で硬化が可能であり、優れた耐化学性を有するカラーフィルタの形成のための感光性樹脂組成物、より具体的にはプリベーク100℃と光硬化のみ(i線(365nm)露光)で高い信頼性およびパターン性を有する感光性樹脂組成物に関するものである。
【0044】
一方、従来のカラーフォトレジストは、赤色、緑色、青色のカラーパターンに実現されるネガティブ型感光性液状素材であって、液状素材の組成を少しずつ変形させる方向に技術開発が行われてきた。例えば、カラーパターンを実現する色材である顔料分散液の種類や含量を変えて色純度を改善させようとするか、またはバインダー樹脂や光重合開始剤の組成の変形を通じてパターン性を改善させようとするか、またはレベリング剤などのその他の添加剤の使用を通じてコーティング性や色均一性などを改善させようとするなどの努力が続けられてきた。
【0045】
しかし、一実施形態は、従来のカラーフォトレジストとは異なり、マイクロOLEDディスプレイ装置に使用されるカラーフィルタ工程に適用される感光性樹脂組成物に関するものである。
【0046】
マイクロOLEDとは、WOLED(White OLED)をシリコンウエハー(Silicon Wafer)上に蒸着させたものを意味する。発明者の間では、OLEDoS(Organic Light Emitting Diode on Silicon)と呼ぶこともある。そして、マイクロOLEDディスプレイ装置とはマイクロOLEDが適用されたディスプレイ装置を意味する。
【0047】
4次産業革命時代の到来と共にメタバース市場が急速に成長するにつれて、AR、VR、MR機器の実感性と視認性を高め、めまい症の誘発を最少化するディスプレイ機器開発の必要性が大きくなっている。このためにLCoS(Liquid Crystal on Silicon)、LEDoS(Light Emitting Diode on Silicon)、OLEDoS(Organic Light Emitting Diode on Silicon)などの様々な候補技術が存在する。このうち、コントラスト比が高く、応答速度が速く、自己発光型であるため比較的に単純な光学系で機器の体積および重量を減らすことができるという長所によって、OLEDoS技術開発がいろいろな所で急速に行われている。
【0048】
OLEDoSの場合、高解像度のマイクロディスプレイを実現しなければならないので、既存のディスプレイに比べて非常に小さい数μm単位のピクセルを形成しなければならず、下部OLEDの損傷を与えないための低温工程を通じてカラーフィルタを形成しなければならないので、開発に多くの困難がある。
【0049】
本発明者らは、このような背景下で、低温硬化および微細パターン実現のためにバインダー樹脂の種類を限定し、追加的にバインダー樹脂の分子量および感光性樹脂組成物を構成する固形分の含量を制御することによって、100℃以下の低温でも硬化することが可能なだけでなく、耐溶剤性に優れて残渣発生がほとんどなく、均一な外観コーティングが可能な感光性樹脂組成物を完成し、このような特性のため、一実施形態に係る感光性樹脂組成物は次世代ディスプレイであるVR(Virtual Reality)、AR(Augmented Reality)およびMR(Mixed Reality)用ディスプレイ装置、例えばマイクロOLEDディスプレイ装置への適用が可能である。
【0050】
以下、各成分について具体的に説明する。
【0051】
(A)バインダー樹脂
バインダー樹脂は、アクリル系バインダー樹脂であってもよい。
【0052】
例えば、アクリル系バインダー樹脂は、エポキシ基を含まない、エポキシ基フリー(Free)アクリル系バインダー樹脂であってもよい。
【0053】
アクリル系バインダー樹脂は化学式1および化学式2で表される構造単位からなる群より選択された少なくとも一つ以上を含み、化学式3~化学式5で表される構造単位からなる群より選択された少なくとも二つ以上を含む。アクリル系バインダー樹脂がこのような構造を有するため、一実施形態に係る感光性樹脂組成物は従来の感光性樹脂組成物に比べて耐溶剤性およびコーティング外観特性が優れる。
【0054】
例えば、バインダー樹脂は、化学式1および化学式3~化学式5で表される構造単位を含むことができる。この時、R、RおよびRはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子であり、L~Lはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基であってもよい。この場合、一実施形態に係る感光性樹脂組成物は低温硬化およびi線露光のみでもさらに高い信頼性およびパターン性を有することができる。
【0055】
バインダー樹脂がカルド系バインダー樹脂、エポキシ系バインダー樹脂、シルセスキオキサン系バインダー樹脂および/またはエポキシアクリル系バインダー樹脂を含む場合、100℃以下の低温で硬化がよく行われずに、信頼性およびパターン性の改善が難しく、残渣特性およびコーティング均一性も低下する場合がある。
【0056】
即ち、一実施形態に係る感光性樹脂組成物が100℃以下の低温およびi線露光のみでも残渣特性およびコーティング均一性に優れ、さらに色特性も改善が可能であることは、バインダー樹脂、具体的にアクリル系バインダー樹脂内の構造を上述のように制御したためである。
【0057】
さらに、上述のように構造が制御されたアクリル系バインダー樹脂の重量平均分子量および二重結合当量をさらに制御する場合、残渣特性、コーティング均一性、および色特性改善効果はさらに優れる。
【0058】
例えば、バインダー樹脂は5000g/mol~8000g/molの重量平均分子量を有することができる。
【0059】
例えば、バインダー樹脂は150g/mol~500g/molの二重結合当量を有することができる。
【0060】
アクリル系バインダー樹脂の重量平均分子量および/または二重結合当量が上述のように制御される場合、100℃以下の低温およびi線露光のみでも前述の改善効果はさらに増加させることができる。
【0061】
一方、一実施形態に係る感光性樹脂組成物は、組成物を構成する固形分の含量を制御する場合にも前述の効果を増加させることができる。具体的に、感光性樹脂組成物を構成する固形分は、感光性樹脂組成物の総量に対して12重量%~24重量%で含まれてもよい。
【0062】
従来のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物の場合、固形分が上述の範囲より多く含まれることが一般的であったが、一実施形態に係る感光性樹脂組成物はガラス基板やポリイミドでないシリコンウエハー上に蒸着されたWOLEDを光源として含むマイクロOLEDディスプレイ装置に適用されるものであるため、低温硬化が必須的であり、したがって固形分の含量が上述のように制御される場合がパターン性向上においてより有利である。具体的には、固形分含量が感光性樹脂組成物の総量に対して12重量%~24重量%を満足させる場合、低温パターン形成工程での露光時に後述の光重合開始剤と共に十分な重合を起こして、100℃以下の低温工程下でも耐熱性、耐光性、および耐化学性に優れたパターンを形成することができる。既存の液晶ディスプレイ(LCD)用カラーフィルタはレジストを用いて100μm程度のパターンを形成したが、マイクロOLEDディスプレイ装置用として使用するにはパターンが過度に大きいため、本発明者らはバインダー樹脂の種類、重量平均分子量、二重結合当量以外に、感光性樹脂組成物を構成する固形分の含量を上述のように制御することによって、微細パターンを実現し低温硬化可能なようにした。
【0063】
バインダー樹脂は、感光性樹脂組成物の総量に対して5重量%~20重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば7重量%~12重量%で含まれてもよい。バインダー樹脂が上記範囲内に含まれる場合、優れた感度、現像性、解像度、およびパターンの直進性を得ることができる。
【0064】
(B)着色剤
一実施形態に係る感光性樹脂組成物は着色剤を含み、着色剤は緑色顔料、青色顔料、赤色顔料、紫色顔料、黄色顔料などを使用することができる。
【0065】
赤色顔料はカラーインデックス(Color Index)内でC.I.赤色顔料254、C.I.赤色顔料255、C.I.赤色顔料264、C.I.赤色顔料270、C.I.赤色顔料272、C.I.赤色顔料177、C.I.赤色顔料89などを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができるが、これに必ずしも限定されない。
【0066】
紫色顔料はカラーインデックス(Color Index)内でC.I.バイオレット顔料23(V.23)、C.I.バイオレット顔料29、ジオキサジンバイオレット、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、インダントレンブリリアントバイオレットなどを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができるが、これに必ずしも限定されない。
【0067】
緑色顔料はカラーインデックス(Color Index)内でC.I.緑色顔料7、C.I.緑色顔料36、C.I.緑色顔料58、C.I.緑色顔料59などを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができるが、これに必ずしも限定されない。
【0068】
青色顔料はカラーインデックス(Color Index)内でC.I.青色顔料15:6、C.I.青色顔料15、C.I.青色顔料15:1、C.I.青色顔料15:2、C.I.青色顔料15:3、C.I.青色顔料15:4、C.I.青色顔料15:5、C.I.青色顔料15:6、C.I.青色顔料16などのような銅フタロシアニン顔料を使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができるが、これに必ずしも限定されない。
【0069】
黄色顔料はカラーインデックス(Color Index)内でC.I.黄色顔料185、C.I.黄色顔料139などのようなイソインドリン系顔料、C.I.黄色顔料138などのようなキノフタロン系顔料、C.I.黄色顔料150などのようなニッケルコンプレックス顔料などを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができるが、これに必ずしも限定されない。
【0070】
顔料は、これらを単独でまたは二つ以上混合して使用することができる。
【0071】
顔料は、水溶性無機塩および湿潤剤を用いて前処理して使用することもできる。顔料を前処理して使用する場合、顔料の平均粒径を微細化することができる。
【0072】
前処理は、顔料を水溶性無機塩および湿潤剤と共にニーディング(kneading)する段階、そしてニーディング段階で得られた顔料をろ過および水洗する段階を経て行うことができる。
【0073】
ニーディングは40℃~100℃の温度で行うことができ、ろ過および水洗は水などを使用して無機塩を水洗した後にろ過して行うことができる。
【0074】
水溶性無機塩の例としては塩化ナトリウム、塩化カリウムなどが挙げられるが、これに限定されない。湿潤剤は顔料および水溶性無機塩が均一に混ざって顔料が容易に粉砕される媒介体役割を果たし、その例としてはエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのようなアルキレングリコールモノアルキルエーテル;エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンポリエチレングリコールなどのようなアルコールなどが挙げられ、これらを単独または二つ以上混合して使用することができる。
【0075】
ニーディング段階を経た顔料は5nm~200nm、例えば5nm~150nmの平均粒径を有することができる。顔料の平均粒径が上記範囲内である場合、顔料ミルベース(顔料分散液)での安定性に優れており、ピクセルの解像性低下の恐れがない。
【0076】
顔料は、分散剤および溶媒と共に顔料分散液の形態、例えばミルベースとして使用できる。
【0077】
分散剤は顔料が分散液内に均一に分散するように助け、非イオン性、陰イオン性または陽イオン性の分散剤それぞれ使用することができる。具体的には、ポリアルキレングリコールまたはそのエステル、ポリオキシアルキレン、多価アルコールエステルアルキレンオキシド付加物、アルコールアルキレンオキシド付加物、スルホン酸エステル、スルホン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アルキルアミドアルキレンオキシド付加物、アルキルアミンなどを使用することができ、これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0078】
分散剤の市販される製品を例として挙げれば、BYK社のDISPERBYK-101、DISPERBYK-130、DISPERBYK-140、DISPERBYK-160、DISPERBYK-161、DISPERBYK-162、DISPERBYK-163、DISPERBYK-164、DISPERBYK-165、DISPERBYK-166、DISPERBYK-170、DISPERBYK-171、DISPERBYK-182、DISPERBYK-2000、DISPERBYK-2001など;EFKAケミカル社のEFKA-47、EFKA-47EA、EFKA-48、EFKA-49、EFKA-100、EFKA-400、EFKA-450など;Zeneka社のSolsperse 5000、Solsperse 12000、Solsperse 13240、Solsperse 13940、Solsperse 17000、Solsperse 20000、Solsperse 24000GR、Solsperse 27000、もしくはSolsperse 28000など、またはAjinomoto社のPB711もしくはPB821などがある。
【0079】
分散剤は、感光性樹脂組成物の総量に対して0.1重量%~15重量%で含まれてもよい。分散剤が上述の範囲内に含まれる場合、組成物の分散性に優れることによって感光性樹脂膜の製造時の安定性、現像性、およびパターン性に優れる。
【0080】
顔料分散液は、顔料、分散剤、および(分散)溶媒以外にも、分散補助剤、分散樹脂などをさらに含むことができる。固形分の顔料は顔料分散液の総量に対して5重量%~20重量%、例えば8重量%~15重量%で含まれてもよい。
【0081】
顔料分散液の(分散)溶媒としては、エチレングリコールアセテート、エチルセロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチルラクテート、ポリエチレングリコール、シクロヘキサノン、またはプロピレングリコールメチルエーテルなどを使用することができ、これらのうち、好ましくはプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを使用することができる。
【0082】
分散樹脂はカルボキシ基を含むアクリル系樹脂を使用することができ、これは顔料分散液の安定性を向上させることができるだけでなく、ピクセルのパターン性も改善させることができる。
【0083】
着色剤は顔料を含みながら、染料をさらに含むことができ、この時、一実施形態に係る感光性樹脂組成物はハイブリッド型組成物になり得る。また、染料は特に限定しないが、金属錯体染料を含むことができる。
【0084】
金属錯体染料は200nm~650nm波長領域で最大吸光度を有する化合物を使用することができ、色素の組み合わせに色座標を合わせるために当該範囲の吸光度を有する化合物であれば有機溶媒に溶ける全てのカラーの金属錯体染料を使用することができる。
【0085】
具体的には、金属錯体染料は、530nm~680nm波長領域で最大吸光度を有する緑色染料、200nm~400nm波長領域で最大吸光度を有する黄色染料、300nm~500nm波長領域で最大吸光度を有するオレンジ染料、500nm~650nm波長領域で最大吸光度を有する赤色染料、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0086】
金属錯体染料は、直接染料、酸性染料、塩基性染料、酸性媒染染料、硫化染料、還元染料、アゾイック染料、分散染料、反応性染料、酸化染料、油溶染料、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、カルボニウムイオン染料、フタロシアニン染料、ニトロ染料、キノリン染料、シアニン染料、ポリメチン染料、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0087】
金属錯体染料は、Mg、Ni、Cu、Co、Zn、Cr、Pt、Pd、およびFeからなる群より選択された少なくとも一つの金属イオンを含むことができる。
【0088】
金属錯体染料は、C.I.ソルベントグリーン1、3、4、5、7、28、29、32、33、34、35などのC.I.ソルベント染料、C.I.アシッドグリーン1、3、5、6、7、8、9、11、13、14、15、16、22、25、27、28、41、50、50:1、58、63、65、80、104、105、106、109などのC.I.アシッド染料、C.I.ダイレクトグリーン25、27、31、32、34、37、63、65、66、67、68、69、72、77、79、82などのC.I.ダイレクト染料、C.I.ベーシックグリーン1などのC.I.ベーシック染料、C.I.モーデントグリーン1、3、4、5、10、13、15、19、21、23、26、29、31、33、34、35、41、43、53などのC.I.モーデント染料、C.I.ピグメントグリーン7、36、58などの緑色顔料、ソルベントイエロー19、ソルベントイエロー21、ソルベントイエロー25、ソルベントイエロー79、ソルベントイエロー82、ソルベントイエロー88、ソルベントオレンジ45、ソルベントオレンジ54、ソルベントオレンジ62、ソルベントオレンジ99、ソルベントレッド8、ソルベントレッド32、ソルベントレッド109、ソルベントレッド112、ソルベントレッド119、ソルベントレッド124、ソルベントレッド160、ソルベントレッド132、およびソルベントレッド218からなる群より選択された少なくとも一つと金属イオンの複合体を使用することができる。
【0089】
金属錯体を含む染料は一実施形態に係る感光性樹脂組成物に使用される溶媒、即ち、後述の溶媒に対する溶解度が5以上であってもよく、具体的には5~10であってもよい。溶解度は溶媒100gに溶ける染料の量(g)で得ることができる。金属錯体を含む染料の溶解度が上述の範囲内である場合、一実施形態に係る感光性樹脂組成物を成す他の成分との相溶性および着色力を確保することができ、染料の析出が防止できる。
【0090】
溶媒は、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(propylene glycol monomethyl ether acetate、PGMEA)、エチルラクテート(ethyl lactate、EL)、エチレングリコールエチルアセテート(ethylene glycol ethyl acetate、EGA)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、3-メトキシ-1-ブタノール(3-methoxy-1-butanol)、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0091】
金属錯体を含む染料は、感光性樹脂組成物の総量に対して0.01重量%~1重量%、例えば0.01重量%~0.5重量%で含まれてもよい。金属錯体を含む染料を上述の範囲で使用する場合、所望の色座標で高い輝度およびコントラスト比を発現することができる。
【0092】
染料および顔料を混合して使用する場合、0.1:99.9~99.9:0.1の重量比、具体的には1:9~9:1の重量比で混合して使用することができる。上述の重量比範囲で混合する場合、耐化学性、最大吸収波長を適切な範囲に制御し、所望の色座標で高い輝度およびコントラスト比を発現することができる。
【0093】
着色剤は、感光性樹脂組成物の総量に対して70重量%~90重量%、例えば70重量%~85重量%、例えば75重量%~80重量%で含まれてもよい。着色剤が前記のように非常に高含量で含まれる場合、マイクロOLEDディスプレイ装置内で着色効果および現像性に優れていて、高い色再現率および視野角特性の確保が容易になり得る。
【0094】
(C)重合性単量体
一実施形態に係る感光性樹脂組成物内重合性単量体は、3つ以上の官能基を含む化合物を一つ以上含むことができる。この時、官能基は(メタ)アクリレート基、エポキシ基などであってもよいが、必ずしもこれに限定されない。
【0095】
一実施形態に係る感光性樹脂組成物はマイクロOLEDディスプレイ装置に適用される用途として開発されたものであって、低温硬化工程が必須であり、低温硬化パターン工程の場合、熱硬化の寄与度は減り、光硬化の影響がさらに大きくなる。よって、光硬化効率を増加させることが低温硬化下で優れたパターン性を確保するのに有利であり、一実施形態によれば、単量体内の官能基が少なくとも3つ以上である化合物を重合性単量体として使用することによって、光硬化効率を増加させることができる。具体的には、光硬化効率は重合性単量体の重量平均分子量および官能基の数から大きな影響を受け、重合性単量体の重量平均分子量が小さいほど、そして重合性単量体内の官能基数が多いほど光硬化効率が高まることが一般的である。例えば、単量体内の官能基が少なくとも3つである化合物は重量平均分子量が小さく、官能基数が多いため、光硬化効率を増加させるのに有利である。
【0096】
例えば、重合性単量体は2種の化合物の混合物であり、2種の化合物はそれぞれ独立して3つ以上の官能基を含む化合物であってもよい。例えば、重合性単量体は3つ~5つの官能基を含む第1重合性単量体および6つ以上の官能基を含む第2重合性単量体の混合物であってもよい。重合性単量体が上述のような混合組成を有する場合、前述の色特性をそのまま維持しながら光硬化効率を極大化させて低温硬化パターン形成に容易なのであり得る。
【0097】
例えば、第1重合性単量体は、第2重合性単量体より少ない含量で含まれてもよい。2種の化合物が上述のような重量比で混合される場合、低温硬化パターン性が最も優れる。
【0098】
例えば、3つまたは4つの官能基を含む重合性化合物は下記化学式1で表すことができるが、必ずしもこれに限定されない。
[化学式1]
【化11】

上記化学式1中、
~Lはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のオキシアルキレン基またはこれらの組み合わせであり、
~Rはそれぞれ独立して水素原子、ヒドロキシ基、エポキシ基、または置換もしくは非置換の(メタ)アクリレート基であり、但し、前記R~Rのうちの少なくとも三つ以上は必ずエポキシ基または置換もしくは非置換の(メタ)アクリレート基である。
【0099】
例えば、5つ~6つの官能基を含む化合物はペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせであってもよいが、必ずしもこれに限定されない。
【0100】
重合性単量体は、より優れた現像性を付与するために酸無水物で処理して使用することもできる。
【0101】
重合性単量体は感光性樹脂組成物の総量に対して1重量%~10重量%、例えば1重量%~5重量%で含まれてもよい。重合性単量体が上述の範囲内に含まれる場合、低温パターン形成工程で露光時硬化が十分に起こって信頼性に優れており、パターンの耐熱性、耐光性、および耐化学性に優れており、解像度および密着性も優れている。
【0102】
(D)重合開始剤
一実施形態に係る感光性樹脂組成物は重合開始剤を含む。この時、重合開始剤は感光性樹脂組成物の総量に対して0.1重量%~5重量%、例えば1重量%~3重量%に制御され、重合開始剤の含量がこのように制御される場合、前述の重合性単量体、バインダー樹脂、および着色剤の組成と共に低温硬化工程で最適のパターンを形成することができる。上述の含量範囲を逸脱する重合開始剤を前述の重合性単量体、バインダー樹脂、および着色剤の組成と共に使用する場合には低温硬化工程時パターン性が大きく低下するため好ましくない場合がある。
【0103】
重合開始剤は、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、ベンゾイン系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物、またはこれらの組み合わせなどを使用することができる。
【0104】
アセトフェノン系化合物の例としては、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2,2’-ジブトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、p-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、4-クロロアセトフェノン、2,2’-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オンなどが挙げられる。
【0105】
ベンゾフェノン系化合物の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-2-メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0106】
チオキサントン系化合物の例としては、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどが挙げられる。
【0107】
ベンゾイン系化合物の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
【0108】
トリアジン系化合物の例としては、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ビフェニル4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-s-トリアジン、2-4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-s-トリアジンなどが挙げられる。
【0109】
オキシム系化合物の例としては、O-アシルオキシム系化合物、2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン、O-エトキシカルボニル-α-オキシアミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどを使用することができる。O-アシルオキシム系化合物の具体的な例としては、1,2-オクタンジオン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾエート、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-オクタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾエート、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテート、および1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-ブタン-1-オンオキシム-O-アセテートなどが挙げられるが、必ずしもこれに限定されない。
【0110】
光重合開始剤は、上述の化合物以外にも、例えばカルバゾール系化合物、ジケトン類化合物、スルホニウムボレート系化合物、ジアゾ系化合物、イミダゾール系化合物、ビイミダゾール系化合物などと共に使用することもできる。
【0111】
(E)溶媒
溶媒は、着色剤を含む顔料分散液、バインダー樹脂、重合性単量体および重合開始剤との相溶性を有するが反応しない物質が使用できる。
【0112】
溶媒の例としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ジクロロエチルエーテル、n-ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート類、メチルエチルカルビトール、ジエチルカルビトール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのカルビトール類、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチルなどの乳酸エステル類、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチルなどのオキシ酢酸アルキルエステル類、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチルなどのアルコキシ酢酸アルキルエステル類、3-オキシプロピオン酸メチル、3-オキシプロピオン酸エチルなどの3-オキシプロピオン酸アルキルエステル類、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチルなどの3-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類、2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピルなどの2-オキシプロピオン酸アルキルエステル類、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸メチルなどの2-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類、2-オキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-オキシ-2-メチルプロピオン酸エチルなどの2-オキシ-2-メチルプロピオン酸エステル類、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチルなどの2-アルコキシ-2-メチルプロピオン酸アルキル類のモノオキシモノカルボン酸アルキルエステル類、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチルなどのエステル類、ピルビン酸エチルなどのケトン酸エステル類などがあり、また、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセチルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどの高沸点溶媒が挙げられる。
【0113】
これらのうち、好ましくは相溶性および反応性を考慮して、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、2-ヒドロキシプロピオン酸エチルなどのエステル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのカルビトール類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類が使用できる。
【0114】
溶媒は、感光性樹脂組成物の総量に対して残部量、例えば0.1重量%~20重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば3重量%~18重量%で含まれてもよい。溶媒が上述の範囲内に含まれる場合、感光性樹脂組成物が適切な粘度を有することによって感光性樹脂膜の製造時工程性に優れる。
【0115】
(F)その他添加剤
一方、感光性樹脂組成物は、マロン酸、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、シラン系カップリング剤、レベリング剤、界面活性剤、抗酸化剤、またはこれらの組み合わせの添加剤をさらに含むことができる。
【0116】
シラン系カップリング剤は、基板との密着性などを改善するためにビニル基、カルボキシル基、メタクリルオキシ基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性置換基を有することができる。
【0117】
シラン系カップリング剤の例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β―(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらを単独または2種以上混合して使用することができる
【0118】
シラン系カップリング剤は、感光性樹脂組成物100重量部に対して0.01重量部~10重量部で含まれてもよい。シラン系カップリング剤が上述の範囲内に含まれる場合、密着性、保存性などに優れる。
【0119】
また、感光性樹脂組成物は必要によってコーティング性向上および欠点生成防止効果のために界面活性剤、例えばフッ素系界面活性剤および/またはシリコン系界面活性剤をさらに含むことができる。
【0120】
フッ素系界面活性剤としては、BM Chemie社のBM-1000、BM-1100など、大日本インキ化学工業株式会社のメガファック(登録商標)F 142D、同F 172、同F 173、同F 183、同F 554、同F 556など、住友スリーエム株式会社のフロラードFC-135、同FC-170C、同FC-430、同FC-431)など、旭硝子株式会社のサーフロン(登録商標)S-112、同S-113、同S-131、同S-141、同S-145など、東レシリコン株式会社のSH-28PA、同-190、同-193、SZ-6032、SF-8428などの名称で市販されているものを使用することができる。
【0121】
シリコン系界面活性剤としては、BYK Chem社のBYK-307、BYK-333、BYK-361N、BYK-051、BYK-052、BYK-053、BYK-067A、BYK-077、BYK-301、BYK-322、BYK-325などの名称で市販されているものを使用することができる。
【0122】
界面活性剤は、感光性樹脂組成物100重量部に対して0.001重量部~5重量部で使用することができる。界面活性剤が上述の範囲内に含まれる場合、コーティング均一性が確保され、ムラが発生せず、IZO基板またはガラス基板に対する湿潤性(wetting)に優れる。
【0123】
抗酸化剤はヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物、またはこれらの組み合わせを含むことができるが、必ずしもこれに限定されない。一実施形態に係る感光性樹脂組成物がヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物、またはこれらの組み合わせをさらに含むことによって、感光性樹脂組成物をコーティング後、露光する間に常温架橋を防止することができる。
【0124】
例えば、ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物、またはこれらの組み合わせはヒドロキノン、メチルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ビス(1,1-ジメチルブチル)ヒドロキノン、2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ヒドロキノン、カテコール、t-ブチルカテコール、4-メトキシフェノール、ピロガロール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-ナフトール、トリス(N-ヒドロキシ-N-ニトロソフェニルアミナト-O,O’)アルミニウム(Tris(N-hydroxy-N-nitrosophenylaminato-O,O’)aluminium)、またはこれらの組み合わせを含むことができるが、必ずしもこれに限定されない。
【0125】
ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物、またはこれらの組み合わせは分散液の形態で使用することができ、分散液形態の抗酸化剤は感光性樹脂組成物の総量に対して0.001重量%~3重量%、例えば0.01重量%~1重量%で含まれてもよい。抗酸化剤が上述の範囲内に含まれる場合、常温経時の問題を解決すると同時に、感度低下および表面剥離現象を防止することができる。
【0126】
また、感光性樹脂組成物は、物性を阻害しない範囲内で安定剤などのその他の添加剤が一定量添加されてもよい。
【0127】
一実施形態に係る感光性樹脂組成物はポジティブ型であってもよく、ネガティブ型であってもよいが、遮光性を有する組成物の露光および現像後パターンが露出される領域の残基(residue)をより完ぺきに除去するためにはネガティブ型であることがより好ましい。
【0128】
他の一実施形態は、前述の感光性樹脂組成物を低温硬化、露光、および現像して製造される感光性樹脂膜を提供する。従来のLCD工程と比較して、後硬化(ポストベーキング)工程が不要であるという点に差がある。
【0129】
感光性樹脂膜の製造方法は次の通りである。
【0130】
(1)塗布および塗膜形成段階(低温硬化)
感光性樹脂組成物を所定の前処理を行ったガラス基板またはITO基板などの基板上にスピンまたはスリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケータ法などの方法を使用して所望の厚さで塗布した後、100℃以下、例えば85℃で1分~10分間加熱して溶剤を除去することによって感光性樹脂膜を形成する。この段階を通じて画質ムラ改善などが可能である。
【0131】
(2)露光段階
得られた感光性樹脂膜に必要なパターン形成のためにマスクを介した後、i線の活性線を照射する。照射に使用される光源としては低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、金属ハロゲン化物ランプ、アルゴンガスレーザなどを使用することができ、場合によってX線、電子線なども用いることができる。
【0132】
露光量は組成物の各成分の種類、配合量、および乾燥膜の厚さによって異なるが、高圧水銀灯を使用する場合には500mJ/cm(365nmセンサーによる)以下である。但し、場合によって露光量は500mJ/cm(365nmセンサーによる)を超過する場合もある。この段階を通じてピクセルサイズの微細調整が可能で高解像度実現を実現させることができる。
【0133】
(3)現像段階
現像方法としては、露光段階に続き、アルカリ性水溶液を現像液として用いて不必要な部分を溶解、除去することによって露光部分のみを残存させてパターンを形成させる。この段階を通じてプロファイルを形成して高解像度を実現させることができ、色均一特性を確保して鮮明度を改善させることができる。
【0134】
また、他の一実施形態は、感光性樹脂膜を含むディスプレイ装置を提供する。
【0135】
ディスプレイ装置は、マイクロ有機発光素子(OLED)ディスプレイ装置であってもよい。
【0136】
マイクロ有機発光素子(OLED)ディスプレイ装置はシリコンウエハー上に蒸着されたOLED基板およびOLED基板上に積層され前記OLED基板から発生した白色光を複数のカラー光に変換するカラーフィルタ層を含み、カラーフィルタ層は赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ、および青色カラーフィルタを含むことができる。
【0137】
例えば、マイクロ有機発光素子(OLED)ディスプレイ装置はシリコンウエハー上に蒸着されたOLED基板、OLED基板上に積層される無機層、無機層上に積層される保護接着層、および保護接着層上に積層され前記OLED基板から発生した白色光を複数のカラー光に変換するカラーフィルタ層を含み、カラーフィルタ層は赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ、および青色カラーフィルタを含むことができる。
【0138】
例えば、一実施形態に係る感光性樹脂組成物は緑色感光性樹脂組成物であって、マイクロOLEDディスプレイ装置内の緑色カラーフィルタは緑色感光性樹脂組成物の低温硬化膜であってもよい。
【0139】
従来はガラス基板やポリイミド基板にOLEDが蒸着されたOLED基板を使用したが、一実施形態に係るマイクロOLEDディスプレイ装置はシリコンウエハー上にOLEDが蒸着されていてマイクロディスプレイの実現においてより有利である。このようなマイクロディスプレイは次世代ディスプレイとして脚光を浴びており、マイクロディスプレイはMRなどの機器に適用される予定である。実際に、アップル社、メタ社、LGディスプレイ社などは全て次世代MR機器市場にすでに参入したか、または参入を予定した状態である。例えば、マイクロOLEDディスプレイ装置はマイクロレンズアレイをさらに含むことができる。マイクロレンズアレイは保護接着層上に配置されてもよく、カラーフィルタ層を取り囲むことができる。
【0140】
上述のような構造のマイクロOLEDディスプレイ装置は高集積シリコンウエハー上にWOLEDが蒸着されてピクセル単位で駆動でき、3μm以下の解像度でパターニングされたカラーフィルタ層を通じて透過波長制御が容易であるため、高色再現および高解像度の確保に有利である。
【0141】
例えば、保護接着層の厚さは1μm以下であってもよい。この場合、前述の効果をより増加することができる。
【0142】
例えば、カラーフィルタ層の厚さは1.1μm~1.6μmであってもよい。
【0143】
カラーフィルタ層の厚さが上述のように制御される場合、マイクロOLEDディスプレイ装置の実現においてより有利である。
【0144】
例えば、無機層の厚さは2μm以下であってもよい。WOLEDであるとしても光が常にOLED基板と垂直な方向にのみ拡散するのではないため、赤色、緑色、および青色の混色が必然的に起こるしかなく、よって、従来はこのような混色防止のためにOLED基板上に無機層を蒸着した。しかし、無機層の蒸着によっても混色が完全に防止されるのではないので、一実施形態では無機層を薄膜化、例えば無機層の厚さを2μm以下に制御することによって、微細な光漏れ現象を防止することができる。
【0145】
結局、一実施形態に係る感光性樹脂組成物は上述のようにプリベーク時の低温(100℃)硬化およびi線の光硬化のみでも硬化膜の製造が可能であるため、従来のディスプレイ装置とは実現可能な解像度において非常に大きな差がある。
【0146】
以下、本発明の好ましい実施例を記載する。但し、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例にすぎず、本発明は下記の実施例に限定されない。
【実施例0147】
(感光性樹脂組成物製造)
(実施例1~実施例10、比較例1および比較例2)
下記表1および表2に記載された組成で、溶媒に重合開始剤を溶解させた後、2時間常温で攪拌した。ここに、バインダー樹脂、重合性単量体を添加し、1時間常温で攪拌した。ここに、その他の添加剤および着色剤を添加した後、1時間常温で攪拌した後、溶液全体を2時間攪拌した。溶液に対して3回にわたるろ過を行って不純物を除去して感光性樹脂組成物を製造した。
【0148】
【表1】
【0149】
(A)バインダー樹脂
(A-1)化学式Aで表される構造単位を含有するアクリル系バインダー樹脂(showa denko社)(8000g/mol)
[化学式A]
【化12】

(A-2)化学式Aで表される構造単位を含有するアクリル系バインダー樹脂(showa denko社)(5000g/mol)
(A-3)化学式Bで表される構造単位を含有するアクリル系バインダー樹脂(showa denko社)(5000g/mol)
[化学式B]
【化13】

(A-4)化学式Aで表される構造単位を含有するアクリル系バインダー樹脂(showa denko社)(4000g/mol)
(A-5)化学式Aで表される構造単位を含有するアクリル系バインダー樹脂(showa denko社)(9000g/mol)
(A-6)エポキシ系バインダー樹脂(EHPE3150、ダイセル化学工業社)
(A-7)シルセスキオキサン系バインダー樹脂(EHPE3150、ダイセル化学工業社)
(B)着色剤
顔料分散液(Sanyo社、BA6136)
(C)重合性単量体
(C-1)ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート(DPHA、日本化薬社)
(C-2)pentaerythritol triacrylate(PE-3A、共栄社)
(D)重合開始剤
オキシム系開始剤(SPI-03、三養社)
(E)溶媒
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、Daicel社)
(F)その他の添加剤
(F-1)レベリング剤(F-554、DIC社)
(F-2)シラン系カップリング剤(KBM503、ShinEtsu社)
(F-3)抗酸化剤(2-Methylhydroquinone、JHChem社)
【0150】
(評価)
K-spin8(SEMES社)(Track)装備を使用してサンプルごとに一定の厚さ(1.5μm)に到達できるrpmで実施例1~実施例10、比較例1および比較例2による感光性組成物を8インチのシリコンウエハーにコーティングを行った。その後、Track装備のホットプレート内で100℃で3分間ベークを行い、Nikon社のi線ステッパーで露光量を調節して(露光条件=Dose:800ms/Focus:-0.3)パターンの露光を行った。露光工程でKLA_Tenscorを用いて厚さを測定した後、パターンを表すための現像を行った。現像液は、EHD-100S溶解液(TMAH)を使用した。現像が完了したパターン基板のパターンはHitachi社のCD-SEMを用いて96μm陰刻パターンを確認し、パターンの感度およびパターン周辺残渣を確認し、Olympus社の光学顕微鏡を用いて大面積コーティング均一性(Coating Uniformity)を確認した。コーティング均一性の場合、肉眼で確認し、優れている場合は○と、不良の場合は△と表記し、非常に不良であって製品化が難しいと判断される場合はXと表記した。
【0151】
また、パターンが形成された基板をBASF社のTMAH(2.38%)現像液に浸漬して(5min)追加色変化を確認した。色測定の場合は微細パターン色度測定器(LCF)を用いて測定した。
【0152】
評価結果を下記表2および図1図6に示す。
【0153】
【表2】
【0154】
表2および図1図6を通じて、一実施形態に係る感光性樹脂組成物は低温硬化を行ったにもかかわらず微細パターンの実現が可能であり、残渣特性、コーティング均一性および色特性が優れていて、マイクロOLEDディスプレイ装置用として使用するのに適することが分かる。
【0155】
本発明は実施例に限定されることなく、互いに異なる多様な形態によって製造でき、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態によっても実施できることを理解することができる。したがって、上述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6