(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105097
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20250703BHJP
C10L 5/46 20060101ALI20250703BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20250703BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20250703BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20250703BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20250703BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
C08L101/00
C10L5/46 ZAB
C08L23/00
C08L67/00
C08L67/02
C08L75/04
C08L53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223400
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝義
(72)【発明者】
【氏名】川端 訓功
【テーマコード(参考)】
4H015
4J002
【Fターム(参考)】
4H015AA17
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4H015BA09
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4J002GL00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物において、成形性及び加工性、燃焼性、並びに、衛生面や安全性が改善された、マテリアルリサイクル及びサーマルリサイクルに適した種々の用途に使用可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物は、溶解成分と、不溶解成分と、を含む。溶解成分の割合は80~90質量%である。不溶解成分の割合は10~19質量%である。樹脂組成物に含まれる窒素原子の割合は0.5質量%未満である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物であって、
溶解成分と、不溶解成分と、を含み、
前記溶解成分の割合は80~90質量%であり、
前記不溶解成分の割合は10~19質量%であり、
前記樹脂組成物に含まれる窒素原子の割合は0.5質量%未満である、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記溶解成分は、主成分としてポリオレフィン系樹脂を含む、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記溶解成分は、ポリエステル系樹脂を更に含む、
請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを含む、
請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記溶解成分は、ポリウレタン及びスチレン含有ポリマーの少なくとも一方を更に含む、
請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記不溶解成分は、セルロース系繊維、高吸水性ポリマー、及び無機化合物の少なくとも一つを含む、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物に含まれる灰分の割合は4質量%未満である、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂組成物に含まれる塩素原子の割合は0.1質量%未満である、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂組成物に含まれる大腸菌は、検出限界以下である、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記樹脂組成物に含まれる硫黄原子の割合は0.1質量%未満である、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含む、
吸音材。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含み、
かさ比重が0.3~0.5である、
固形燃料。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含む、
容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生用品をリサイクルした樹脂組成物又はそれを用いた樹脂成形品が知られている。例えば、特許文献1には、パルプ含有樹脂成型品が開示されている。その樹脂成型品は、パルプ繊維を19.8~50.5重量%、高吸収性ポリマーを0.2~0.5重量%、及びこの高吸収性ポリマーとは異なる熱可塑性樹脂を49~80重量%混合含有する。その樹脂成型品に含有されるパルプ繊維及び高吸収性ポリマーは、吸収性物品の吸収体から回収されたものを使用し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の樹脂成型品は、パルプ繊維を19.8~50.5重量%、高吸収性ポリマーを0.2~0.5重量%、及びこの高吸収性ポリマーとは異なる熱可塑性樹脂を49~80重量%混合した混合物又はそのペレット(以下、「樹脂組成物」ともいう。)を用いて形成される。その樹脂組成物は、熱で溶解しない成分及び/又は熱で溶解し難い成分(以下、「不溶解成分」ともいう。)であるパルプ繊維及び高吸収性ポリマーを合わせて20.0重量%以上も含んでいる。そのため、その樹脂組成物を用いて樹脂成型品を形成しようとすると、不溶解成分が多く含まれることにより、その成形や加工がし難くなるおそれがある。
【0005】
また、不溶解成分は燃焼に寄与しないか、又は、発熱量が低い傾向にある。そのため、その樹脂組成物を用いて固形燃料のような熱源を形成しようとすると、不溶解成分が多く含まれることにより、その燃焼性が低くなるおそれがある。
【0006】
また、特許文献1の樹脂成型品では、吸収性物品のパルプ繊維及び高吸収性ポリマーを利用する場合、生産ロスで生じた吸収性物品から取り出している。したがって、吸収性物品は未使用であり、排泄物を含んでいない。そのため、パルプ繊維及び高吸収性ポリマーを含む樹脂組成物では、排泄物由来の不純物(大腸菌等を含む)について何ら考慮されていない。
【0007】
しかし、実態として、生産ロスで生じる吸収性物品の量は、使用されて排泄物を含む使用済み吸収性物品の量と比較して極めて少ない。それゆえ、環境負荷低減の観点から、排泄物を含む使用済み吸収性物品由来の資材をリサイクルすることは重要である。その場合、排泄物を含む使用済み吸収性物品由来の樹脂組成物をより衛生的で、安心・安全な材料にするために、排泄物由来の不純物の含有量を低く抑える必要がある。
【0008】
このように、排泄物を含む使用済み衛生用品(吸収性物品を含む)由来の樹脂組成物には、少なくとも成形性及び加工性、燃焼性、並びに、衛生面や安全性の点で改善の余地がある。
【0009】
本発明の目的は、排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物において、成形性及び加工性、燃焼性、並びに、衛生面や安全性が改善された、マテリアルリサイクル及びサーマルリサイクルに適した種々の用途に使用可能な樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物であって、溶解成分と、不溶解成分と、を含み、前記溶解成分の割合は80~90質量%であり、前記不溶解成分の割合は10~19質量%であり、前記樹脂組成物に含まれる窒素原子の割合は0.5質量%未満である、樹脂組成物、である。
【0011】
本発明の他の態様は、上記一態様に記載の樹脂組成物を含む、吸音材、である。
【0012】
本発明の更に他の態様は、上記一態様に記載の樹脂組成物を含み、かさ比重が0.3~0.5である、固形燃料、である。
【0013】
本発明の更に他の態様は、上記一態様に記載の樹脂組成物を含む、容器、である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物において、成形性及び加工性、燃焼性、並びに、衛生面や安全性が改善された、マテリアルリサイクル及びサーマルリサイクルに適した種々の用途に使用可能な樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物を製造する方法を示すフローチャートである。
【
図2】実施形態に係る排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物を用いた吸音材の一特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態は、以下の態様に関する。
[態様1]
排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物であって、溶解成分と、不溶解成分と、を含み、前記溶解成分の割合は80~90質量%であり、前記不溶解成分の割合は10~19質量%であり、前記樹脂組成物に含まれる窒素原子の割合は0.5質量%未満である、樹脂組成物。
【0017】
本樹脂組成物では、発熱量が大きく溶解し易い、したがって、成形性や加工性や燃焼性が高い溶解成分の割合は80質量%以上であり、発熱量が小さく溶解し難い、したがって、成形性や加工性や燃焼性が低い不溶解成分の割合は19質量%以下である。そのため、本樹脂組成物は、成形性、加工性、及び燃焼性に優れている。また、本樹脂組成物では、成形性や加工性が低い不溶解成分の割合が10質量%以上であり、少ないが存在する。それにより、本樹脂組成物を成形や加工した後の製品形状の安定性を高めることができ、安全性が高まる。更に、本樹脂組成物では、排泄物由来の窒素原子の割合はわずか0.5質量%未満であるため、排泄物由来の不純物は極め少ない。そのため、本樹脂組成物は、衛生面や安全性に優れた材料である。このように、本樹脂組成物は、成形性、加工性、及び燃焼性に優れ、かつ、衛生面及び安全性に優れた材料であり、したがって、マテリアルリサイクル及びサーマルリサイクルに適している。
【0018】
[態様2]
前記溶解成分は、主成分としてポリオレフィンを含む、態様1に記載の樹脂組成物。
本樹脂組成物は、溶解成分の主成分として、発熱量が大きく融点の低いポリオレフィンを含んでいる。そのため、本樹脂組成物は、より成形性や加工性や燃焼性に優れている。ただし、「主成分」とは、溶解成分のうちの50質量%以上を占めることをいう。
【0019】
[態様3]
前記溶解成分はポリエステル系樹脂を更に含む、態様2に記載の樹脂組成物。
本樹脂組成物は、溶解成分として、ポリオレフィンと混ざり難いポリエステル系樹脂を更に含んでいる。そのため、本樹脂組成物では、ポリオレフィンとの間に空気の層が形成され易い。それにより、本樹脂組成物は、より燃焼性に優れているほか、他の用途として、断熱性や遮音性に優れている。なお、ポリエステル系樹脂は、例えば、衛生用品の吸収性物品における表面シートの繊維として用いられる。
【0020】
[態様4]
前記ポリエステル系樹脂はポリエチレンテレフタレートを含む、態様3に記載の樹脂組成物。
本樹脂組成物は、溶解成分として、ポリオレフィンと混ざり難いポリエチレンテレフタレートを更に含んでいる。そのため、本樹脂組成物では、ポリオレフィンとの間に空気の層が形成され易い。それにより、本樹脂組成物は、より燃焼性に優れているほか、他の用途として、断熱性や遮音性に優れている。
【0021】
[態様5]
前記溶解成分は、ポリウレタン及びスチレン含有ポリマーの少なくとも一方を更に含む、態様2に記載の樹脂組成物。
本樹脂組成物では、溶解成分として、ポリオレフィンと混ざり難いポリウレタン及びスチレン含有ポリマーの少なくとも一方を更に含んでいる。そのため、本樹脂組成物では、ポリウレタン及びスチレン含有ポリマーの少なくとも一方とポリオレフィンとの間に空気の層が形成され易い。それにより、本樹脂組成物は、より燃焼性に優れているほか、他の用途として、断熱性や遮音性に優れている。なお、ポリウレタン及びスチレン含有ポリマーは、例えば、衛生用品の吸収性物品における弾性部材や接着剤として用いられる。
【0022】
[態様6]
前記不溶解成分は、セルロース系繊維、高吸水性ポリマー、及び無機化合物の少なくとも一つを含む、態様1又は2に記載の樹脂組成物。
本樹脂組成物では、不溶解成分として、溶解成分と混ざり難いパルプ繊維、高吸水性ポリマー、及び無機化合物の少なくとも一つを含んでいる。そのため、本樹脂組成物では、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、及び無機化合物の少なくとも一つと溶解成分との間に空気の層が形成され易い。それにより、本樹脂組成物は、より燃焼性に優れているほか、他の用途として、断熱性や遮音性に優れている。
【0023】
[態様7]
前記樹脂組成物に含まれる灰分の割合は4質量%未満である、態様1又は2に記載の樹脂組成物。
本樹脂組成物では、発熱に寄与せず成形性や加工性や燃焼性の低い灰分の割合がわずか4質量%未満である。そのため、本樹脂組成物は、成形性、加工性、及び燃焼性に優れている。
【0024】
[態様8]
前記樹脂組成物に含まれる塩素原子の割合は0.1質量%未満である、態様1又は2に記載の樹脂組成物。
本樹脂組成物では、加工するときや再利用されるときに安全面で問題となる塩素原子の割合がわずか0.1質量%未満である。そのため、本樹脂組成物は、安心・安全性に優れている。
【0025】
[態様9]
前記樹脂組成物に含まれる大腸菌は、検出限界以下である、態様1又は2に記載の樹脂組成物。
本樹脂組成物では、加工するときや再利用されるときに衛生面で問題となる排泄物由来の大腸菌が検出限界以下である。すなわち、排泄物由来の不純物が極めて少ないため、本樹脂組成物は、より衛生面及び安全性に優れている。
【0026】
[態様10]
前記樹脂組成物に含まれる硫黄原子の割合は0.1質量%未満である、態様1又は2に記載の樹脂組成物。
本樹脂組成物では、加工するときや再利用されるときに衛生面で問題となる排泄物由来の硫黄原子の割合がわずか0.1質量%未満である。すなわち、排泄物由来の不純物が極めて少ないため、本樹脂組成物は、より衛生面及び安全性に優れている。
【0027】
[態様11]
態様1又は2に記載の樹脂組成物を含む、吸音材。
本吸音材は、成形性や加工性が高い溶解成分を80~90質量%含み、成形性や加工性が低く溶解成分と混ざり難い不溶解成分を10~19質量%含む樹脂組成物を用いて形成されている。それゆえ、本吸音材は、溶解成分と不溶解成分との間に空気の層が形成され易い。そのため、本吸音材は、所望の形態に形成されつつ、断熱性や遮音性に優れている。更に、本吸音材に含まれる樹脂組成物では、排泄物由来の窒素の割合は0.5質量%未満であるため、排泄物由来の不純物は極め少ない。そのため、本吸音材は、衛生的で、安心・安全性に優れている。
【0028】
[態様12]
態様1又は2に記載の樹脂組成物を含み、かさ比重が0.3~0.5である、固形燃料。
本固形燃料では、発熱量が大きく燃焼性の高い溶解成分を80質量%以上含み、発熱量が小さく燃焼性の低い不溶解成分を19質量%以下しか含んでいない樹脂組成物を用いて形成され、かさ比重が0.3~0.5である。そのため、本固形燃料は、発熱量や燃焼性に非常に優れている。
【0029】
[態様13]
態様1又は2に記載の樹脂組成物を含む、容器。
本容器は、成形性や加工性が高い溶解成分を80質量%以上含み、成形性や加工性が低い不溶解成分を19質量%以下しか含んでいない、成形性及び加工性に優れた脂組成物を用いて形成されている。それゆえ、本容器は、所望の形状に形成され易い。更に、本容器は、排泄物由来の窒素の割合が0.5質量%未満で、排泄物由来の不純物が極め少ない樹脂組成物を用いて形成されている。そのため、本容器は、衛生的で、安心・安全性に優れている。なお、容器としては、ビニール袋、ごみ箱、パレット、バケツ、簡易トイレなどの樹脂組成物を用いて成形された成形品が挙げられる。
【0030】
以下、本実施形態に係る排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物について説明する。
【0031】
排泄物を含む使用済み衛生用品とは、使用されて排泄物(例示:尿、便、血液)を吸収した衛生用品である。ただし、排泄物を含む使用済み衛生用品が、廃棄される場合などで、排泄物を含まない使用済み衛生用品と一緒にされ、全体として排泄物を含む使用済み衛生用品として扱われる場合、排泄物を含む使用済み衛生用品は排泄物を含まない使用済み衛生用品を含んでもよい。ここで、排泄物を含まない使用済み衛生用品とは、使用されたが排泄物を吸収していない衛生用品、及び、未使用の衛生用品、並びに、生産ロス等の衛生用品を含む。衛生用品としては、例えば、使い捨ておむつ、尿取りパッド、失禁パッド、生理用ナプキン、使い捨てショーツ、ベッド用シート及びペット用シートが挙げられる。
【0032】
本樹脂組成物は、排泄物を含む使用済み衛生用品由来の物質で構成される樹脂組成物であり、溶解成分と、不溶解成分と、を含んでいる。溶解成分は、熱で溶解する成分及び/又は熱で溶解し易い成分である。一方、不溶解成分は、熱で溶解しない成分及び/又は熱で溶解し難い成分である。ここでは、熱で溶解する/しない及び熱で溶解し易い/し難いとは、加熱により溶解する/しない及び溶解し易い/し難いという意味であり、その加熱温度については280℃とする。言い換えると、融点が280℃以下の成分を溶解成分とし、融点が280℃を超える成分、又は融解せず熱分解する成分を不溶解成分とする。なお、それらの成分としては金属を除くものとする。
【0033】
溶解成分としては、衛生用品の構成部材として通常用いられているものであって、上記溶解成分の条件を満たすものであれば、特に制限はない。溶解成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレタレート等のポリエステル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ウレタンゴム等のポリウレタン系樹脂、スチレン-ブタジエン、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン等のスチレン含有ポリマー、が挙げられる。
【0034】
不溶解成分としては、衛生用品の構成部材として通常用いられているものであって、上記溶解成分の条件を満たすものであれば、特に制限はない。不溶解成分としては、例えば、セルロース系繊維、高吸水性ポリマー、無機物が挙げられる。
【0035】
セルロース系繊維としては、例えば、天然セルロース繊維、レーヨンのような再生セルロース繊維、リヨセルのような精製セルロース繊維、及びアセテート繊維のような半合成セルロース繊維が挙げられる。天然セルロース繊維としては、例えば、木材パルプ繊維及び非木材パルプ繊維のようなパルプ繊維、コットン繊維が挙げられる。木材パルプ繊維としては、例えば、針葉樹パルプ繊維及び広葉樹パルプ繊維が挙げられる。非木材パルプ繊維としては、例えば、ワラパルプ繊維、バガスパルプ繊維、ヨシパルプ繊維、ケナフパルプ繊維、クワパルプ繊維、竹パルプ繊維、麻パルプ繊維、綿パルプ繊維が挙げられる。コットン繊維としては、ヒルスツム種コットン繊維、バルバデンセ種コットン繊維、アルボレウム種コットン繊維及びヘルバケウム種コットン繊維が挙げられる。コットン繊維は、オーガニックコットン繊維、プレオーガニックコットン(商標)繊維でもよい。オーガニックコットン繊維は、GOTS(Global Organic Textile Standard)による認証を受けたコットンを意味する。
【0036】
高吸水性ポリマーとしては、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系の高分子吸収剤が挙げられる。デンプン系又はセルロース系の高吸水性ポリマーとしては、例えば、デンプン-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物が挙げられる。合成ポリマー系の高吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系などが挙げられる。
【0037】
無機物としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、タルク、シリカ、クレー、カオリン、アルミナ、マイカが挙げられる。
【0038】
本樹脂組成物では、溶解成分の割合は80~90質量%である。このように、本樹脂組成物では、発熱量が大きく溶解し易い、すなわち成形性や加工性や燃焼性が高い溶解成分の割合が80質量%以上であり、非常に高い。それにより、本樹脂組成物の成形性や加工性や燃焼性を高めることができる。したがって、本樹脂組成物は、大きな発熱量を要求される用途や、成形性や加工性を要求される用途に好適に利用することができる。上限の90質量%は、他の成分、例えば不溶解成分の割合との関係で決まる。
【0039】
一方、不溶解成分の割合は10~19質量%である。このように、本樹脂組成物では、発熱量が小さく溶解し難い、すなわち成形性や加工性や燃焼性が低い不溶解成分の割合が10質量%以上であり、少ないが存在する。それにより、本樹脂組成物を成形や加工した後の製品の形状安定性を高めることができ、使用の際の安全性も高まる。上限の90質量%は、不溶解成分の割合との関係で決まる。上限の19質量%は、他の成分、例えば溶解成分の割合との関係で決まる。
【0040】
本樹脂組成物は、排泄物を含む使用済み衛生用品由来の物質で構成されるため、排泄物中に存在し、窒素原子を有する有機物(窒素化合物)を含み得る。しかし、本樹脂組成物では、窒素原子の割合は0.5質量%未満に抑制されている。このように、本樹脂組成物では、排泄物中の有機物由来の窒素原子の割合を極めて少なく抑えることができるので、本樹脂組成物の衛生面や安全性を高めることができる。
【0041】
このように、本樹脂組成物は、成形性、加工性、及び燃焼性に優れ、かつ、衛生面及び安全性に優れた材料であり、したがって、マテリアルリサイクル及びサーマルリサイクルに適している。
【0042】
次に、衛生用品(吸収性物品)の構成例について説明する。衛生用品は、表面シートと、裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置された吸収体とを備える。衛生用品の大きさとしては、例えば、長さ約15~100cm、幅5~100cmが挙げられるが、この例に限定されるものではない。なお、衛生用品は、一般的な衛生用品が備える他の部材、例えば拡散シート、防漏壁、サイドシート、外装シート、防漏壁や外装シートに配置される糸状又はシート状の弾性部材などを更に含んでもよい。
【0043】
表面シートの構成部材としては、例えば、液透過性の不織布、液透過孔を有する合成樹脂フィルム、これらの複合シート等が挙げられる。裏面シートの構成部材としては、例えば、液不透過性の不織布、液不透過性の合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。拡散シートの構成部材としては、例えば、液透過性の不織布が挙げられる。防漏壁やサイドシートの構成部材としては、例えば、撥水性の不織布が挙げられる。外装シートの構成部材としては、例えば、液不透過性かつ通気性の不織布、液不透過性かつ通気性の合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。弾性部材の構成部材としては、例えば、ゴム系の合成樹脂が挙げられる。不織布の種類としては、特に制限はなく、例えば、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布などが挙げられる。合成樹脂フィルムの種類としては、特に制限はなく、公知のフィルム材料を用いることができる。不織布や合成樹脂フィルムの材料としては、衛生用品用として使用可能であれば特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレタレート等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。不織布の材料として、セルロース系繊維を用いてもよい。通気性を付与するために、合成樹脂フィルムは炭酸カルシウムのような無機粒子を含んでもよい。ゴム系の合成樹脂の材料としては、衛生用品用として使用可能であれば特に制限はないが、例えば、スチレンブタジエンゴム、ウレタンゴムが挙げられる。これらの不織布や合成樹脂フィルムの材料は、合成樹脂であり、プラスチック材料ということができる。
【0044】
吸収体の構成部材としては吸収体材料、例えば、セルロース系繊維及び高吸水性ポリマーの少なくとも一方が挙げられる。セルロース系繊維としては、例えば、木材パルプ繊維や架橋パルプ繊維、非木材パルプ繊維などのパルプ繊維のような天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、半合成セルロース繊維が挙げられる。パルプ繊維の場合、その大きさとしては、繊維の平均長径が例えば数十μmが挙げられ、20~40μmが好ましく、平均繊維長が例えば数mmが挙げられ、2~5mmが好ましい。高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer:SAP)としては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系の吸水性ポリマーが挙げられる。高吸水性ポリマーの大きさ(乾燥時)としては、平均粒径が例えば数百μmが挙げられ、200~500μmが好ましい。吸収体は液透過性シートで形成されたコアラップを含んでもよい。
【0045】
吸収体の一方の面及び他方の面は、それぞれ表面シート及び裏面シートに接着剤を介して接合されている。平面視で、表面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)は、裏面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)と接着剤を介して接合されている。したがって、吸収体は表面シートと裏面シートとの接合体の内部に包み込まれている。接着剤としては、特に制限はないが、例えば、ホットメルト型接着剤が挙げられる。ホットメルト型接着剤としては、例えばスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン、ポリウレタン等のゴム系主体、又はポリエチレン等のポリオレフィン系主体の感圧型接着剤又は感熱型接着剤が挙げられる。
【0046】
本実施形態では好ましい態様として、溶解成分は、主成分としてポリオレフィン系樹脂を含んでいる。ただし、主成分とは、溶解成分中の割合が、50質量%以上であることをいう。ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等)、ジオレフィン(例えば、ブタジエン、イソプレン等)等を構成要素として含むポリマーを意味する。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。このように、本樹脂組成物では、発熱量が大きく融点の低いポリオレフィン系樹脂が溶解成分に多く含まれる。それにより、本樹脂組成物は、より成形性や加工性や燃焼性に優れている。
【0047】
溶解成分中のポリオレフィン系樹脂の割合は、下限としては、成形性や加工性や燃焼性の観点から、好ましくは60質量%、より好ましくは70質量%である。上限としては、特に制限はない。ただし、本樹脂組成物の用途(例えば、断熱用の部材や遮音用の部材)により、他の樹脂を含むことが好ましい場合には、例えば、85質量%が挙げられる。
【0048】
本実施形態では好ましい態様として、溶解成分は、ポリエステル系樹脂を更に含んでいる。ただし、ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレタレートが挙げられる。このように、本樹脂組成物では、ポリオレフィン系樹脂と混ざり難いポリエステル系樹脂が溶解成分に更に含まれるので、ポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂との間に空気の層が形成され易い。それにより、本樹脂組成物は、より燃焼性に優れているほか、他の用途として、断熱性や遮音性に優れている。
【0049】
溶解成分中のポリエステル系樹脂の割合は、下限としては、断熱性や遮音性の観点から、好ましくは3質量%、より好ましくは6質量%である。上限としては、成形性や加工性の観点から、好ましくは15質量%、より好ましくは12質量%である。
【0050】
本実施形態では好ましい態様として、溶解成分は、ポリウレタン系樹脂及びスチレン含有ポリマーの少なくとも一方を更に含んでいる。ただし、ポリウレタン系樹脂としては、例えば、ポリウレタンが挙げられ、スチレン含有ポリマーとしては、例えば、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレンが挙げられる。このように、本樹脂組成物では、ポリオレフィン系樹脂と混ざり難いポリウレタン系樹脂及びスチレン含有ポリマーの少なくとも一方が溶解成分に更に含まれるので、ポリウレタン系樹脂及びスチレン含有ポリマーの少なくとも一方とポリオレフィン系樹脂との間に空気の層が形成され易い。それにより、本樹脂組成物は、より燃焼性に優れているほか、他の用途として、断熱性や遮音性に優れている。
【0051】
溶解成分中のポリウレタン系樹脂及びスチレン含有ポリマーの少なくとも一方の割合は、下限としては、断熱性や遮音性の観点から、好ましくは3質量%、より好ましくは6質量%である。上限としては、成形性や加工性の観点から、好ましくは15質量%、より好ましくは12質量%である。
【0052】
本実施形態では好ましい態様として、不溶解成分は、セルロース系繊維、高吸水性ポリマー、及び無機化合物の少なくとも一つを含んでいる。ただし、セルロース系繊維としては、例えば、パルプ繊維が挙げられる。高吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系の吸水性ポリマーが挙げられる。無機化合物としては、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナが挙げられる。このように、本樹脂組成物では、溶解成分と混ざり難いパルプ繊維、高吸水性ポリマー、及び無機化合物の少なくとも一つが不溶解成分に含まれるので、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、及び無機化合物の少なくとも一つと溶解成分との間に空気の層が形成され易い。それにより、本樹脂組成物は、より燃焼性に優れているほか、他の用途として、断熱性や遮音性に優れている。
【0053】
不溶解成分中のパルプ繊維、高吸水性ポリマー、及び無機化合物の少なくとも一つの割合は、下限としては、断熱性や遮音性の観点から、好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%である。上限としては、特に制限はない。
【0054】
本実施形態では好ましい態様として、樹脂組成物に含まれる灰分の割合は4質量%未満である。このように、本樹脂組成物では、発熱に寄与せず成形性や加工性や燃焼性の低い灰分の割合がわずか4質量%未満であるため、本樹脂組成物は、成形性、加工性、及び燃焼性に優れている。
【0055】
本実施形態では好ましい態様として、樹脂組成物に含まれる塩素原子の割合は0.1質量%未満である。このように、本樹脂組成物では、加工するときや再利用されるときに安全面で問題となる塩素原子の割合がわずか0.1質量%未満である。そのため、本樹脂組成物は、安心・安全性に優れている。
【0056】
本樹脂組成物は、排泄物を含む使用済み衛生用品由来の物質で構成されるため、排泄物中に存在する大腸菌を含み得る。しかし、本実施形態の好ましい態様では、樹脂組成物に含まれる大腸菌は、検出限界以下である。このように、本樹脂組成物では、加工するときや再利用するときに衛生面で問題となる排泄物由来の大腸菌が検出限界以下である。すなわち、排泄物由来の不純物が極めて少ないため、本樹脂組成物は、より衛生面及び安全性に優れている。
【0057】
本樹脂組成物は、排泄物を含む使用済み衛生用品由来の物質で構成されるため、排泄物中に存在し、硫黄原子を有する有機物(硫黄化合物)を含み得る。しかし、本実施形態の好ましい態様では、本樹脂組成物の硫黄原子の割合はわずか0.1質量%未満に抑制されている。このように、本樹脂組成物では、加工するときや再利用するときに衛生面で問題となる排泄物由来の硫黄原子の割合を極めて少なくできるので、本樹脂組成物の衛生面や安全性を高めることができる。
【0058】
次に、本実施形態に係る樹脂組成物を含む吸音材について説明する。本吸音材は、上述された樹脂組成物そのものを用いることができる。ただし、使用するときには、樹脂組成物を所定の領域に保持させて、全体として所望の形状とする。例えば、樹脂組成物を、樹脂製の容器に詰め込む、すなわち容器内の領域に保持させて、板状の吸音材とする。必要に応じて、樹脂組成物を詰め込んだ複数の容器(吸音部材)を必要な数だけ並べたり積層させたりして使用できる。樹脂組成物を詰め込んだ容器としては、例えば、(400~600mm)×(400~600mm)×(20~100mm)の大きさのポリオレフィン系樹脂の袋が挙げられる。その袋に1~5kgの樹脂組成物を詰め込むことで、所定の板状の吸音材とすることができる。あるいは、例えば、樹脂組成物を、二枚の壁の間に詰め込む、すなわち、二枚の壁の間の領域に保持させて、壁状の吸音材とする。
【0059】
本吸音材は、成形性や加工性が高い溶解成分を80~90質量%含み、成形性や加工性が低く溶解成分と混ざり難い不溶解成分を10~19質量%含む樹脂組成物を用いて形成されている。それゆえ、本吸音材は、溶解成分と不溶解成分との間に空気の層が形成され易い。そのため、本吸音材は、所望の形態に形成されつつ、断熱性や遮音性に優れている。更に、本吸音材に含まれる樹脂組成物では、排泄物由来の窒素の割合は0.5質量%未満であるため、排泄物由来の不純物は極め少ない。そのため、本吸音材は、衛生的で、安心・安全性に優れている。
【0060】
上記吸音材は、遮音性だけでなく断熱性に優もれているので、断熱材としても用いることができる。その断熱材としても構成も、上記の吸音材としての構成と同様とすることができる。それにより、本断熱材は、断熱性や遮音性に優れ、かつ、衛生的で、安心・安全性に優れている。
【0061】
次に、本実施形態に係る樹脂組成物を含む固形燃料について説明する。本固形燃料は、上述された樹脂組成物を用いて押出成形により形成される。押出成形の圧力や温度は、固形燃料が形成できれば特に制限はない。圧力としては、例えば、5~50kg/cm2が挙げられ、温度としては、例えば、100~200℃が挙げられる。そして、固形燃料のかさ比重は0.3~0.5であることが好ましい。かさ比重が小さ過ぎると、発熱量が低下し過ぎるおそれがあり、かさ比重が大き過ぎると火力が強くなり過ぎるおそれがある。
【0062】
本固形燃料では、発熱量が大きく燃焼性の高い溶解成分を80質量%以上含み、発熱量が小さく燃焼性の低い不溶解成分を19質量%以下しか含んでいない樹脂組成物を用いて形成され、かさ比重が0.3~0.5である。そのため、本固形燃料は、発熱量や燃焼性に非常に優れている。
【0063】
次に、本実施形態に係る樹脂組成物を含む容器について説明する。本容器としては、例えば、ビニール袋、ごみ箱、パレット、バケツ、簡易トイレなどの樹脂組成物を用いて成形された成形品が挙げられる。ビニール袋は、例えば、上述された樹脂組成物を用いてインフレーション法やダイ法により形成される。それ以外の成形品は、例えば、上述された樹脂組成物を用いて押出成形により形成される。
【0064】
本容器は、成形性や加工性が高い溶解成分を80質量%以上含み、成形性や加工性が低い不溶解成分を19質量%以下しか含んでいない、成形性及び加工性に優れた脂組成物を用いて形成されている。それゆえ、本容器は、所望の形状に形成され易い。更に、本容器は、排泄物由来の窒素の割合が0.5質量%未満で、排泄物由来の不純物が極め少ない樹脂組成物を用いて形成されている。そのため、本容器は、衛生的で、安心・安全性に優れている。
【0065】
次に、本実施形態に係る排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物を製造する方法について、具体的に説明する。本実施形態では、衛生用品の例として、使い捨ておむつを取り上げて説明する。
【0066】
図1は、本実施形態に係る排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物を製造する方法を示すフローチャートである。本方法は、第1分離工程S2と、第2分離工程S3と、洗浄工程S5と、を備えている。その結果として製造されるプラスチック材料を、樹脂組成物として用いることができる。本実施形態では、本方法は、更に、破砕工程S1と、空気搬送工程S4と、圧搾脱水乾燥工程S6と、を備えている。それにより、製造されるプラスチック材料の不純物をより少なくできる。本実施形態では、本方法は、更に、除塵工程S7と、SAP分離工程S8、酸化剤処理工程S9、パルプ繊維分離工程S10と、混合工程S11と、を備えている。それにより、SAP分離工程S8及びパルプ繊維分離工程S10にて分離されたパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを、混合工程S11で上記のプラスチック材料に追加することで、不溶解成分の割合を更に調整した樹脂組成物を形成できる。以下、具体的に説明する。
【0067】
本実施形態では、使用済み衛生用品を、再利用(リサイクル)のために外部から回収して用いる。その際、複数の使用済み衛生用品を収集袋に封入することで、排泄物や菌類や臭気が外部に漏れることを抑制している。収集袋内の個々の使用済み衛生用品は、例えば、排泄物や菌類が表側に露出せず、臭気が周囲に拡散しないように、排泄物が排泄される表面シートを内側に、丸められた状態や折り畳まれた状態で回収される。なお、使用済み衛生用品は、収集袋に封入されなくてもよいし、丸められなくてもよい。
【0068】
破砕工程S1は、使用済み吸収性物品を、高吸水性ポリマーを不活化する不活化剤を含む不活化水溶液と共に破砕する工程である。破砕工程S1は、二軸破砕機のような破砕装置により実施される。不活化水溶液と共に破砕するとは、不活化水溶液と共に使用済み吸収性物品を破砕装置に供給しつつ破砕する場合、破砕装置に貯留された不活化水溶液の中に使用済み吸収性物品を入れて破砕する場合、及び、それらの組み合わせを含む。本実施形態では不活化水溶液と共に使用済み吸収性物品を破砕装置に供給しつつ使用済み吸収性物品を破砕する。なお、本方法において、第1分離工程S2以降で不活化水溶液を用いる場合、不活化水溶液が不足したときには、適宜補充する。
【0069】
本実施形態では、使用済み吸収性物品を封入した収集袋が、受入装置に供給され、受入装置の下方に連通した破砕装置へ移動する。それと共に、不活化水溶液(例示:酸性水溶液)が受入装置を介して破砕装置へ供給される。その際、不活化水溶液は、使用済み吸収性物品の上方から使用済み吸収性物品に降り掛かるように供給されてよい。破砕のとき、破砕物(菌や臭気物質のような排泄物由来の物質を含む)の飛散を抑制する観点である。収集袋は、破砕装置により、不活化水溶液と共に破砕される。それにより、収集袋内の使用済み吸収性物品が、収集袋ごと不活化水溶液中で破砕されて、例えば1~150mmの大きさの破砕物が生成される。その際、不活化水溶液で高吸水性ポリマーが不活化し、脱水して、小粒径になる。破砕物は、不活化水溶液と共に、第1分離工程S2へ送られる。
【0070】
不活化水溶液としては、無機酸及び有機酸の水溶液、すなわち酸性水溶液を用いることが好ましい。酸性水溶液を用いると、石灰や塩化カルシウムのような水溶液を用いる場合と比較して、プラスチック材料や高吸水性ポリマーやパルプ繊維などに灰分や塩素を残留し難くでき、不活化の程度(粒径や比重の大きさ)をpHで調整し易くできる。有機酸としては、キレート効果や洗浄効果を有するクエン酸が好ましく、無機酸としては、塩素を含まず、低コストな硫酸が好ましい。なお、不活化水溶液として、公知の多価金属イオンを供給可能な多価金属イオン供給源を含む水溶液で不活化してもよい。
【0071】
酸性水溶液のpHとしては1.0~4.0が好ましい。pHを1.0以上にすると、設備が腐食し難く、排水処理時の中和処理に必要なアルカリ薬品も低減でき、pHを4.0以下にすると、高吸水性ポリマーを十分に小さくでき、殺菌能力も高められる。pHは水温により変化するため、本発明におけるpHは、水溶液温度20℃で測定したpHをいうものとする。酸性水溶液の濃度は、特に限定されないが、クエン酸の場合には0.5~4質量%が好ましく、硫酸の場合には0.1~2.0質量%が好ましい。
【0072】
破砕工程S1の際、破砕時に生じる熱及び/又は酸性水溶液の熱などにより、各構成部材同士の接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)の接合力を低下させて、各構成部材を互いに容易に離解させることも可能である。あるいは、酸性水溶液を加熱すること(温度:70~95℃)で、使用済み吸収性物品の構成部材間の接合に使用されている接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)を軟化させ、接着剤の接合力を低下できる。それにより、自然に又は小さな衝撃で構成部材同士を容易に離解させることができる。使用済み吸収性物品をより殺菌(消毒)することも可能となる。
【0073】
次いで、第1分離工程S2は、破砕工程S1から供給されたプラスチック材料、不活化された高吸水性ポリマー、パルプ繊維、排泄物及び不活化水溶液の混合液を、プラスチック材料を含む第1画分と、不活化された高吸水性ポリマー、パルプ繊維、排泄物及び不活化水溶液を含む第2画分と、に分離する工程である。第1分離工程S2は、スクリーン分離機、パルパー分離機又はそれらの組み合わせのような分離装置により実施される。
【0074】
本実施形態では、パルパー分離機において、破砕工程S1で生成された破砕物を含む酸性水溶液が貯留されつつ、攪拌され、破砕物が構成材料に離解される。そして、破砕物(離解された構成材料)を含む酸性水溶液がスクリーンで分離されて、不活化された高吸水性ポリマー、パルプ繊維、排泄物及び酸性水溶液を含む第2画分がアクセプトとなり、除塵工程S3へ送出される。一方、収集袋、フィルム、不織布などの第1画分がリジェクトとなり、第2分離工程S4へ送出される。分離された収集袋、フィルム、不織布などは、プラスチック材料ということができる。なお、第1分離工程S2には、酸性水溶液として、破砕工程S1で使用されていない別の酸性水溶液を供給してもよい。このとき、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、及び排泄物の一部はスクリーンを通過せず、第1画分と共にスクリーン上に残存し得る。一方、収集袋、フィルム、不織布の一部は、第2画分と共にスクリーンを通過し得る。
【0075】
なお、本実施形態のように、第1分離工程S2よりも前に(破砕工程S1等で)、高吸水性ポリマーを予め不活化し、粒状にして、吸水能力を抑えている場合には、第1分離工程S2以降では、不活化水溶液(酸性水溶液)を用いず、不活化水溶液を概ね除いてから、不活化剤を含まない水(水溶液)を用いてもよい。その場合、第1分離工程S2以降の任意の工程から、不活化剤を含まない水(水溶液)を用いるようにしてもよい。それにより、不活化水溶液(及び不活化剤)の使用量を削減でき、廃水処理の負担を低減できる。
【0076】
本実施形態では、第1分離工程S2において、酸性水溶液のpHが所定の範囲内に維持されるように調整されてもよい。pHの所定の範囲とは、pHの変動が±1.0以内の範囲とする。それにより、高吸水性ポリマーの比重さ及び大きさと、パルプ繊維の比重及び大きさとの相違が、所定の範囲内になるようにできる。この場合、相違が所定の範囲内とは、例えば一方が他方の0.2~5倍の範囲内とする。それにより、パルプ繊維と高吸水性ポリマーとの相違は、比重が所定の範囲内であり、かつ、大きさが所定の範囲内である。その結果、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを、使用済み吸収性物品の資材のうちのパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを除いた他の資材(主にプラスチック材料)と、大きさや比重の相違を利用して容易に分離できる。pHの調整は、分離装置に設置されたpHセンサで測定されるpHの値に基づいて、分離装置に設置されたpH調節装置からの酸性の水溶液やアルカリ性の水溶液を用いて行うことができる。なお、後述される除塵工程S3、第2分離工程S4及び第3分離工程S5の少なくとも一つにおいても同様にpHが調整されてもよい。
【0077】
第2分離工程S3は、第1画分を、物理的衝撃を加えて、プラスチック材料と、第1分離工程S2で分離しきれずに第1画分に残存していたパルプ繊維、高吸水性ポリマー、及び排泄物と、に分離する工程である。すなわち、第2分離工程S3では、プラスチック材料、並びに、残存していたパルプ繊維、高吸水性ポリマー、及び排泄物の混合物から、プラスチック材料と、残存していたパルプ繊維、高吸水性ポリマー、及び排泄物と、が分離される。それにより、プラスチック材料が回収される。
【0078】
本実施形態では、第2分離工程S3は、第1画分を酸性水溶液で処理しつつ、第1画分に物理的衝撃を加えて、分離を行う。具体的には、まず、第2分離工程S3において、第1分離工程S2でパルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を分離された混合物(プラスチック材料及び残存物)が、分離装置に供給される。その分離装置は、横倒しに設置された円筒部と、円筒部内に設けられた複数の羽根車と、横倒しの円筒部の上側の外周面に設けられた複数の酸性水溶液供給部と、円筒部の下側の外周面に設けられたスクリーン(ふるい)と、を備える。円筒部の一端側に混合物の供給口があり、他端側に排出口がある。複数の羽根車は、それらの回転軸と円筒部の中心軸とが重なるように、円筒部の中心軸方向に沿って間隔を空けて並んでいる。複数の羽根車は、円筒部の中心軸を中心として回転しつつ、円筒部の一端側から他端側へ空気の流れを生じさせるように、羽の向きを調整されている。複数の酸性水溶液供給部は、中心軸方向に沿って間隔を空けて並んでいて、新たな酸性水溶液を円筒部の下方へ向かって噴射する。酸性水溶液供給部は、その酸性水溶液をスプレー状に噴射することが好ましい。スクリーン(ふるい)の個々の開口の大きさは、パルプ繊維及び高吸水性ポリマー(、排泄物、酸性水溶液)が通過可能、かつ、プラスチック材料が通過困難な大きさである。
【0079】
混合物は、分離装置の円筒部内の空気中で、複数の酸性水溶液供給部の各々から酸性水溶液を噴射され、回転する羽根車の羽で攪拌され、羽根車の羽の衝突により物理的衝撃を加えられつつ、円筒部の一端側から他端側へ移動(流動)する。その間、混合物は、噴射される酸性水溶液により、汚れが洗い流され、及び/又は、殺菌や漂白を施される。それと共に、混合物中のパルプ繊維などは、物理的衝撃などにより、混合物中の高吸水性ポリマーは、酸性水溶液による不活化の更なる進行や物理的衝撃などにより、それぞれ混合物中のプラスチック材料から取り除かれる。取り除かれたパルプ繊維や高吸水性ポリマーは、円筒部の下側のスクリーンを通過して酸性水溶液と共に分離(除去)される。
【0080】
一方、パルプ繊維や高吸水性ポリマーなどを除去された混合物中のプラスチック材料は、スクリーンを通過せずに、円筒部の他端側の排出口から排出される。すなわち、第1分離工程S2で分離されずに残存していた高吸水性ポリマー及びパルプ繊維が除去されて、不純物の抑制されたプラスチック材料が生成されて、回収される。ただし、プラスチック材料には、量は必ずしも多くないが、第2分離工程S3で除去しきれなかった、排泄物由来の硫黄化合物や窒素化合物などが残存し得る。なお、分離された酸性水溶液を第1分離工程S2や破砕工程S1で再利用してもよい。なお、酸性水溶液については、既述のとおりである。
【0081】
酸性水溶液の供給量としては、所望の機能を実現できる供給量であれば特に限定されないが、例えば、プラスチック材料の重量に対する酸性水溶液の重量が、5~100倍が挙げられ、10~50倍が好ましい。酸性水溶液の供給速度としては、所望の機能を実現できる供給速度であれば特に限定されないが、例えば、50~500cm3/分が挙げられ、80~200cm3/分が好ましい。供給量や供給速度が小さいと所望の効果を得難く、大きいと機器や材料などを損傷するおそれがある。
【0082】
第2分離工程S3では、好ましい態様として、酸性水溶液が混合物へ噴射される。噴射の勢いにより、プラスチック材料に付着している残存していた高吸水性ポリマー及びパルプ繊維などを洗い落とすことができる。また、噴射で酸性水溶液が細かくなるので、プラスチック材料の細部に残存している高吸水性ポリマーにまで酸性水溶液を到達し易くすることができる。また、酸性水溶液にプラスチック材料を浸漬する場合と比較して、プラスチック材料の表面へ常にフレッシュな酸性水溶液を供給でき、酸性水溶液の効果のバラツキを抑制することができる。
【0083】
第2分離工程S3では、第1画分を酸性水溶液で処理せずに、第1画分に物理的衝撃を加えて、分離を行ってもよい。混合物は、分離装置の円筒部内の空気中で、回転する羽根車の羽で攪拌され、羽根車の羽の衝突により物理的衝撃を加えられつつ、円筒部の一端側から他端側へ移動(流動)する。その間、混合物は、物理的衝撃により、汚れが叩き落とされる。例えば、混合物中のパルプ繊維や高吸水性ポリマーは、物理的衝撃により、混合物中のプラスチック材料から取り除かれる。取り除かれたパルプ繊維や高吸水性ポリマーは、円筒部の下側のスクリーンを通過して分離(除去)される。
【0084】
あるいは、第2分離工程S3では、酸性水溶液の代わりに、水や、不活化剤を含まない水溶液(以下、単に「水」ともいう。)を第1画分に噴射してもよい。混合物は、分離装置の円筒部内の空気中で、水を供給する複数の水供給部の各々から水を噴射され、回転する羽根車の羽で攪拌され、羽根車の羽の衝突により物理的衝撃を加えられつつ、円筒部の一端側から他端側へ移動(流動)する。その間、混合物は、噴射される水により汚れが洗い流され、かつ、物理的衝撃により汚れが叩き落とされる。例えば、混合物中のパルプ繊維及び高吸水性ポリマーは、水による流れや物理的衝撃などにより、それぞれ混合物中のプラスチック材料から取り除かれる。取り除かれたパルプ繊維や高吸水性ポリマーは、円筒部の下側のスクリーンを通過して水と共に分離(除去)される。
【0085】
空気搬送工程S4(搬送工程)は、第2分離工程S3で分離されたプラスチック材料を、洗浄工程S5へ、空気で搬送する工程である。すなわち、空気搬送工程S4では、分離されたプラスチック材料が、空気の流れの中で乾燥しつつ、次の工程へ搬送される。
【0086】
本実施形態では、空気搬送工程S4において、第2分離工程S3の分離装置と洗浄工程S5の洗浄装置(後述)とをつなぐ配管において、ブロアにより配管内を流れる空気で、分離されたプラスチック材料を、分離装置から洗浄装置まで搬送する。その際、プラスチック材料に含まれる水分は、空気中に蒸散、又は吹き飛ばされるので、プラスチック材料の含水率が減少する。含水率は、例えば、95%程度から80%程度まで減少する。また、空気の流れで、複数のプラスチック材料同士をバラバラに分離できる。それにより、例えば、次の洗浄工程S5において、洗浄液を使用する場合には、各プラスチック材料の全面に概ね均一に洗浄液を供給できる。なお、空気搬送工程S4を用いなくてもよく、公知の他の搬送手段により、分離されたプラスチック材料を搬送してもよい。
【0087】
洗浄工程S5は、第2分離工程S3で分離されたプラスチック材料に、洗浄液を噴射する工程である。すなわち、洗浄工程S5では、第2分離工程S3で除去しきれず、プラスチック材料に残存する排泄物由来の硫黄化合物や窒素化合物などが、洗浄液により除去される。更に、微量に残存する可能性のあるパルプ繊維や高吸水性ポリマーのような他の不純物も浄液により除去され得る。
【0088】
本実施形態では、洗浄工程S5において、(空気搬送工程S4を介して)第2分離工程S3で分離されたプラスチック材料が、洗浄装置に供給される。その洗浄装置は、プラスチック材料を搬送するコンベア(本実施形態では、スクリューコンベア)と、コンベアの上側に設けられ、搬送中のプラスチック材料に洗浄液を噴射する複数の洗浄液供給部と、を備える。コンベアは、搬送方向に沿って上方に向うように傾斜しており(例えば、30°)、それにより、噴射され、プラスチック材料から零れ落ちた洗浄液を下方の排水口へ運ぶ。複数の洗浄液供給部は、コンベアの搬送方向に沿って間隔を空けて並んでいる。洗浄液供給部は、洗浄液をスプレー状に噴射することが好ましい。
【0089】
プラスチック材料は、複数の洗浄液供給部の各々から洗浄液を噴射されつつ、コンベアでその一方の端から他方の端まで搬送される。その間、プラスチック材料は、スクリュー搬送により物理的な攪拌をされつつ洗浄液を噴射される。噴射される洗浄液により、プラスチック材料に残存していた排泄物由来の硫黄化合物や窒素化合物などが洗浄され、洗い流されて、洗浄液に混ざり込む。すなわち、プラスチック材料に残存していた硫黄化合物や窒素化合物が除去される。また、洗浄液に殺菌作用がある場合には、それよりプラスチック材料の殺菌が行われ得る。洗浄液が酸化剤の場合には、硫黄化合物や窒素化合物などが酸化され、無臭の他の物質(例えば、硫黄(S)や窒素(N2))に変換され、洗浄液に混ざり込む、及び/又は、気体として放出される。すなわち、プラスチック材料に残存していた硫黄化合物や窒素化合物が除去される。また、洗浄液によりプラスチック材料の殺菌が行われる。
【0090】
洗浄工程S5では、洗浄液がプラスチック材料に噴射される。噴射の勢いにより、プラスチック材料の表面に付着している硫黄化合物や窒素化合物や他の不純物などを洗い落とすことができる。また、噴射で洗浄液が細かくなるので、プラスチック材料の細部に残存している硫黄化合物や窒素化合物にまで洗浄液を到達し易くすることができる。また、洗浄液にプラスチック材料を浸漬する場合と比較して、プラスチック材料の表面へ常にフレッシュな洗浄液を供給でき、洗浄液の効果(例えば、洗浄及び殺菌の効果)のバラツキを抑制することができる。
【0091】
ここで、洗浄液は、例えば、酸化剤を含む水溶液である酸化剤水溶液、水が挙げられる。酸化剤としては、オゾン及び過酸化水素のうちの少なくとも一つを含んでいる。水としては、プラスチック材料の不純物の量にも依るが、例えば、常温常圧の水、高温及び/又は高圧の水又は水蒸気、過熱水蒸気が挙げられる。殺菌剤を含んでもよい。本実施形態では、酸化剤水溶液を用い、酸化力や殺菌力や漂白力の観点から酸化剤としてオゾンを用いている。具体的には、酸化剤水溶液として、純水や上水のような水(又は水溶液)に、オゾンガスを混入させたオゾン水を用いている。なお、酸化剤水溶液は、オゾンの失活を抑制する観点から酸性としてもよい。更に、破砕工程S1、第1分離工程S2及び第2分離工程S3のうちの少なくとも第2分離工程S3において、不活化水溶液として(希)硫酸水溶液のような酸性水溶液を用いる場合、各工程の連続性や、水溶液の有効利用の観点からも、酸性としてもよい。その場合、酸性水溶液(例えば、希硫酸水溶液)にオゾンガスを混入させたものを用いる。酸性水溶液としては、他工程で利用した酸性水溶液を再利用してもよい。
【0092】
酸化剤水溶液中のオゾン濃度としては、所望の機能、すなわち硫黄化合物(酸性水溶液の硫酸を含む)や窒素化合物などに対する酸化力や殺菌力や漂白力を実現できる濃度であれば特に限定されない。その濃度としては、例えば0.2~10ppmが挙げられ、0.5~5ppmが好ましい。濃度が低過ぎないことで、所望の機能を発揮でき、濃度が高過ぎないことで、機器の腐食を抑えられる。酸化剤水溶液での処理時間は、所望の機能を発揮できる時間であれば、特に限定されないが、酸化剤水溶液中のオゾン濃度が高ければ短く、オゾン濃度が低ければ長くし、典型的には1~30分である。酸化剤水溶液中のオゾン濃度(ppm)と処理工程の処理時間(分)の積(以下、「CT値」ともいう。)としては、例えば0.5~200ppm・分が挙げられ、5~100ppm・分が好ましい。CT値が小さ過ぎないことで、所望の機能を発揮でき、CT値が大き過ぎないことで、機器の腐食を抑えられる。なお、酸化剤水溶液としては、後述される酸化剤処理工程S9で使用された酸化剤水溶液を、濃度を下げて本工程で再利用してもよい。
【0093】
また、酸化剤水溶液の供給量としては、所望の機能を実現できる供給量であれば特に限定されないが、例えば、プラスチック材料の重量に対する酸化剤水溶液の重量が5~100倍が挙げられ、10~50倍が好ましい。酸化剤水溶液の供給速度としては、所望の機能を実現できる供給速度であれば特に限定されないが、例えば、50~500cm3/分が挙げられ、80~200cm3/分が好ましい。供給量や供給速度が小さいと所望の効果を得難く、大きいと機器や材料などを損傷するおそれがある。
【0094】
殺菌又は除菌に関し、例えば、使用済み紙おむつには10億個/ml以上の一般細菌が存在しているが、第2分離工程S3までの酸性水溶液では、殺菌しきれるとはいえない。そのため、第2分離工程S3で分離されたプラスチック材料(パルプ繊維や高吸水性ポリマーが少量付着)には、ある程度の一般細菌が存在する(例示:一般細菌3,400個/ml)。そうなると、作業者の安全性への悪影響や取り出したプラスチック材料の腐敗・カビの発生などへの懸念が生じ得る。また、一般細菌が原因と思われる強い排泄物臭も存在する。しかし、酸化剤水溶液を用いた洗浄工程S5を実行することにより、プラスチック材料の一般細菌を、大腸菌同様に、検出限界以下に取り除くことができ、硫黄化合物や窒素化合物を分解して排泄物臭も殆どわからない程度まで低減できる。
【0095】
なお、本実施形態では、洗浄液として酸化剤水溶液を、プラスチック材料に噴射して、プラスチック材料に残存する排泄物由来の硫黄化合物や窒素化合物などを除去しているが、本実施形態はそれに限定されるものではない。例えば、洗浄液として、加熱された液体(例示:高温の水又は水蒸気、過熱水蒸気)をプラスチック材料に噴射して、プラスチック材料に残存する排泄物由来の硫黄化合物や窒素化合物、一般細菌、大腸菌などの不純物を除去してもよい。
【0096】
あるいは、例えば、洗浄液の替わりに洗浄ガスとして、加熱された気体(例示:高温(高圧)の空気)をプラスチック材料に噴射してもよい。そのとき、装置や噴射の方法としては、例えば、洗浄工程S5の装置において、洗浄液の替わりに洗浄ガスを用いる方法や、洗浄ガスの雰囲気中にプラスチック材料を暴露する方法が挙げられる。
【0097】
これらの場合にも、プラスチック材料の硫黄化合物や窒素化合物、一般細菌、大腸菌などの不純物を、分解し及び/又は引き剥がして、プラスチック材料から除去することができる。これらの場合、酸化剤水溶液を用いないため、安全・衛生的であるほか、酸化剤水溶液などの排水の処理がなく処理コストを抑制できる。
【0098】
あるいは、例えば、プラスチック材料の不純物の量にも依るが、上記の洗浄工程S5のような処理を行わなくてもよい。その場合、例えば、単に水洗いをする程度、又は、何もせずに、後述される圧搾脱水乾燥工程S6の加熱及び加圧による処理で、プラスチック材料に残存する排泄物由来の硫黄化合物や窒素化合物、一般細菌、大腸菌などの不純物を除去してもよい。
【0099】
圧搾脱水乾燥工程S6は、洗浄工程S5で処理されたプラスチック材料を、圧搾・脱水・乾燥する工程である。すなわち、圧搾脱水乾燥工程S6では、処理された複数のプラスチック材料が、まとめられ、全体として圧搾されて脱水されつつ、加熱されて乾燥される工程である。
【0100】
本実施形態では、圧搾脱水乾燥工程S6において、洗浄工程S5で処理されたプラスチック材料が圧搾脱水乾燥装置に供給される。圧搾脱水乾燥装置は、加熱しつつ、複数のプラスチック材料を、まとめて圧搾し、水分を絞り出して、脱水・乾燥する装置である。加熱温度としては、80~160℃が挙げられる。温度が高いとプラスチック材料に含まれる可能性のあるパルプ繊維が炭化するおそれがあり、温度が低いと乾燥の効果を得難くなる。加熱時間は、加熱温度にもよるが、例えば5秒~5分が挙げられ、10秒~3分が好ましい。時間が長いと乾燥の効果が飽和し、時間が短いと乾燥の効果が得られ難くなる。圧搾する圧力としては、加熱温度・加熱時間にもよるが、例えば、0.2~4MPaが挙げられ、0.4~2MPaが好ましい。圧力が低いと脱水の効果が得られ難く、圧力が高いと脱水の効果が飽和する。圧搾脱水乾燥装置は、プラスチック材料を軟化させ(及び/又は溶融させ)、多数の孔部(例えば、開孔径:5~15mm)から外部へ押し出す。それにより、プラスチック材料をフレーク状又はペレット状の形に成形でき、梱包し易くすることができる。
【0101】
この圧搾脱水乾燥工程S6によっても、プラスチック材料の硫黄化合物や窒素化合物、一般細菌、大腸菌などの不純物を、分解し及び/又は引き剥がして、プラスチック材料から除去することができる。この工程では、酸化剤水溶液など排水の処理のような追加の工程を行わないため、安全・衛生的であり、処理コストを抑制できる。
【0102】
複数のプラスチック材料が、圧搾脱水乾燥装置により、まとめられて、加熱されつつ、圧搾され、送出される。それにより、水分が絞り出され、かつ、水分が蒸発した、よって脱水され、乾燥したプラスチック材料が生成される。こうして、再利用が可能なプラスチック材料が生成される。このとき、プラスチック材料の水分率は、5質量%以下であり、好ましくは3%以下である。なお、圧搾脱水と乾燥とは別の装置で行ってもよい。
【0103】
なお、プラスチック材料の脱水及び乾燥は、上記の圧搾脱水乾燥工程S6に限定されるものではなく、プラスチック材料の形状を変更しない場合などでは、一般的な脱水・乾燥工程を行ってもよい。その脱水・乾燥工程としては、例えば、恒温槽における高温の雰囲気又は熱風などでプラスチック材料を乾燥する工程が挙げられる。乾燥温度としては、例えば80~120℃が挙げられる。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、例えば10~120分が挙げられる。
【0104】
このようにして、再生(リサイクル)されたプラスチック材料が、本実施形態に係る樹脂組成物の一態様として製造される。
【0105】
なお、プラスチック材料(樹脂組成物)における不溶解成分の割合は、例えば、第2分離工程S3及び洗浄工程S5によりを調整することができる。第2分離工程S3おいては、例えば、パルプ繊維や高吸水性ポリマーのような不溶解成分の分離の程度を抑制すれば、プラスチック材料における不溶解成分の割合を増やし得る。洗浄工程S5においては、例えば、洗浄液による洗い流しの程度を抑制すれば、プラスチック材料における不溶解成分の割合を増やし得る。
【0106】
一方、本実施形態では、第1分離工程S2で分離されたパルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液は、除塵工程S7~パルプ繊維分離工程S10で処理される。そして、再生(リサイクル)されたパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを、樹脂組成物の組成の調整に用いることができる。以下、具体的に説明する。
【0107】
除塵工程S7は、分離機(例示:スクリーン分離機、サイクロン分離機)により、第1分離工程S2(及び第2分離工程S3)から供給された混合液から、分離しきれなかった他の資材(収集袋、フィルム、不織布、弾性部材など)などの異物を分離する。本実施形態では、除塵工程S7において、スクリーン分離機(目開きが相対的に大)、スクリーン分離機(目開きが相対的に小)及びサイクロン分離機がこの順に配置され、混合液から異物が順次分離される。それにより、異物の少ないパルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液が得られる。混合液は、SAP分離工程S8へ供給される。なお、混合液中の異物を分離する必要が無い場合(例示:含まれる異物が少ない、後の他の工程で異物を分離する)には、除塵工程S7を省略できる。
【0108】
SAP分離工程S8は、分離機(例示:ドラムスクリーン分離機)により、除塵工程S7から供給された、異物の少ないパルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液から、高吸水性ポリマーを分離する。本実施形態では、SAP分離工程S8において、ドラムスクリーン分離機により、混合液から高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液が分離される。それにより、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液が得られる。吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液は、他の分離機(例示:傾斜スクリーン分離機)により、排泄物及び酸性水溶液を除かれ、必要に応じて殺菌、洗浄、乾燥等をされて、高吸水性ポリマーとして回収される。一方、パルプ繊維(ただし少量の高吸水性ポリマーを含む)は、酸化剤処理工程S9へ供給される。
【0109】
酸化剤処理工程S9は、酸化剤水溶液により、SAP分離工程S8から供給された異物の少ないパルプ繊維(ただし、少量の高吸水性ポリマーを含む)中の高吸水性ポリマーを酸化分解し、可溶化して、パルプ繊維から除去する。本実施形態では、酸化剤処理工程S9において、酸化剤としてオゾンを含む酸化剤水溶液を貯留する処理槽に、パルプ繊維が投入され、パルプ繊維中の高吸水性ポリマーが酸化分解され、可溶化されて、不純物のきわめて少ないパルプ繊維が得られる。不純物(高吸水性ポリマーを含む)の少ないパルプ繊維は、酸化剤水溶液と共にパルプ繊維分離工程S10へ供給される。
【0110】
酸化剤処理工程S9における酸化剤の種類については、洗浄工程S5の酸化剤と同様である。本実施形態では、酸化力や殺菌力や漂白力の観点から酸化剤としてオゾンを用いている。酸化剤水溶液中のオゾン濃度は、高吸水性ポリマーを分解することができる濃度であれば、特に限定されないが、例えば10~50質量ppmが挙げられる。濃度が低過ぎないことで、高吸水性ポリマーを完全に可溶化でき、濃度が高過ぎないことで、パルプ繊維に損傷を与えることはない。酸化剤水溶液での処理時間は、高吸水性ポリマーを分解することができる時間であれば、特に限定されないが、酸化剤水溶液中のオゾン濃度が高ければ短く、オゾン濃度が低ければ長くし、典型的には5~300分である。酸化剤水溶液中のオゾン濃度(ppm)と処理工程の処理時間(分)の積(以下「CT値」ともいう。)は、好ましくは100~15000ppm・分である。CT値が小さすぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化できずパルプ繊維に高吸水性ポリマーが残留するおそれがあり、CT値が大きすぎると、パルプ繊維に損傷を与えるおそれがある
【0111】
パルプ繊維分離工程S10は、分離機(例示:スクリーン分離機)により、酸化剤処理工程S9から供給されたパルプ繊維及び酸化剤水溶液から、パルプ繊維を分離する。このようにして分離、回収されたパルプ繊維は、いわゆるリサイクルパルプ繊維となる。リサイクルパルプ繊維は洗浄水で洗浄されて取り出される。
【0112】
混合工程S11は、SAP分離工程S8で取り出された高吸水性ポリマー及びパルプ繊維分離工程S10で取り出されたパルプ繊維の少なくとも一方を、必要に応じて、圧搾脱水乾燥工程S6を経たプラスチック材料に添加することにより、所望の溶解成分及び不溶解成分の割合を有する樹脂組成物を製造する。本実施形態では、まず、後述される<溶解成分及び不溶解成分の測定方法>によりプラスチック材料中の不溶解成分、すなわちパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの含有量(質量%)を測定する。そして、不溶解成分の割合が所望の割合よりも不足する場合には、不溶解成分であるパルプ繊維又は高吸水性ポリマーをプラスチック材料に添加する。溶解成分及び不溶解成分の割合に過不足がない場合には、プラスチック材料をそのまま樹脂組成物とする。なお、不溶解成分の割合が所望の割合よりも多い場合には、別途取り出しておいた別のプラスチック材料を、圧搾脱水乾燥工程S6を経たプラスチック材料に添加してもよい。
【0113】
このようにして、再生(リサイクル)されたパルプ繊維及び高吸水性ポリマー(又は別のプラスチック材料)を用いて組成を調整された、再生(リサイクル)されたプラスチック材料が、本実施形態に係る樹脂組成物の他の一態様として製造される。
【0114】
本実施形態に係る排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物を製造する方法では、第1分離工程S2で第1画分を分離する。このとき、尿などを吸収していた高吸水性ポリマーは不活化されているので、ナトリウムや窒素化合物を水分と共に外部へ放出(脱水)して粒状となっている。そのため、第2分離工程で、第1画分の高吸水性ポリマーを、物理的衝撃で、プラスチック材料から容易に分離できる。それに加えて、もしプラスチック材料から分離しきれない高吸水性ポリマーが存在したとしても、その高吸水性ポリマーのナトリウムや窒素化合物の含有量を低減できる。また、他の排泄物やパルプ繊維も、物理的衝撃で、プラスチック材料から容易に分離できる。
【0115】
その後、第2分離工程S3で分離されたプラスチック材料に洗浄工程S5(酸化剤処理工程)を実施する。このとき、第2分離工程S3で分離しきれずにプラスチック材料に残存していた排泄物由来の硫黄化合物や窒素化合物などが酸化されて、無臭の他の物質(例えば、硫黄(S)や窒素(N2))に変換され、その物質の一部又は全部が、酸化剤水溶液に混ざり込む、及び/又は、気体として放出される。すなわち、プラスチック材料に残存していた硫黄化合物や窒素化合物の大部分は除去される。このように、臭気を発する硫黄化合物や窒素化合物が無臭の他の物質に変換されて概ね除去されるので、プラスチック材料が悪臭を生じ難くすることができる。また、酸化剤によりプラスチック材料の殺菌も行うことができる。その際、酸化剤水溶液を噴射によりプラスチック材料へ供給することにより、噴射の勢いでプラスチック材料の表面に付着している硫黄化合物や窒素化合物などを洗い落とすことができる。また、酸化剤水溶液を噴射で細かくして、プラスチック材料へ供給することによりプラスチック材料の細部にまで酸化剤水溶液を入り易くすることができる。また、酸化剤水溶液にプラスチック材料を浸漬する場合と比較して、プラスチック材料の表面へ常にフレッシュな酸化剤水溶液を供給でき、洗浄及び殺菌の効果のバラツキを少なくすることができる。
【0116】
このように、本方法により製造されたプラスチック材料では、ナトリウム、硫黄及び窒素を含む不純物が分離・除去されるので、そのプラスチック材料の不純物を抑制することができる。また、同時に殺菌も行うことができる。そして、そのプラスチック材料をマテリアルリサイクル又はケミカルリサイクルに適用してリサイクル製品を製造するとき、そのプラスチック材料の不純物が抑制されているため、製造工程に用いる触媒への影響を低減でき、好ましくない臭気を生じさせ難くすることができる。
【0117】
本樹脂組成物を製造する方法では、好ましい態様として、第2分離工程S3は、第1画分に、酸性水溶液を噴射しつつ、物理的衝撃を加えて、排泄物、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維と、プラスチック材料と、に互いに分離する工程を含んでいる。このように、本方法では、第2分離工程S3で、第1画分に、酸性水溶液を噴射する。それゆえ、プラスチック材料に残存している高吸水性ポリマーは、酸性水溶液で更に不活化されて、更にナトリウムや窒素化合物を外部へ放出(脱水)し、より細かい粒状となる。そのため、高吸水性ポリマーを、物理的衝撃又は酸性水溶液の流れで、プラスチック材料からより容易に分離できる。それに加えて、もしプラスチック材料から分離しきれない高吸水性ポリマーが存在していたとしても、その高吸水性ポリマーのナトリウムや窒素化合物の含有量をさらに低減できる。また、他の排泄物やパルプ繊維も、物理的衝撃又は酸性水溶液の流れで、プラスチック材料からより容易に分離できる。
【0118】
本樹脂組成物を製造する方法では、好ましい態様として、洗浄工程S5で処理されたプラスチック材料を、圧搾脱水乾燥する圧搾脱水乾燥工程S6を更に備えている。すなわち、洗浄工程S5で処理されたプラスチック材料を、圧搾して脱水させつつ乾燥するので、プラスチック材料中の水分を、より低減することができる。それにより、洗浄工程S5などで、水分(水溶液)に混ざり込んだ不純物(例えば、悪臭を生じさせない硫黄や窒素を含む物質)を水分と共にプラスチック材料から排出することができる。
【0119】
<溶解成分及び不溶解成分の測定方法>
樹脂組成物中の溶解成分及び不溶解成分について、以下のように測定する。
(1)まず、樹脂組成物中の溶解成分及び不溶解成分の各々に関し、種々の溶媒への成分の溶解性の違いを利用して成分分離を行う。具体的には以下のとおりである。
まず、測定対象の樹脂組成物の試料をテトラヒドロフラン(THF)で溶解分散し、ろ過分離(5μmフィルタ)して、溶剤可溶成分と溶剤不溶成分とに分ける。THFの溶剤可溶成分を遠心分離(12,000rpm×0.5h)して、溶剤不溶成分(F11)と溶剤可溶成分とに分ける。遠心分離後の溶剤可溶成分をメタノールで溶解分散し、ろ過分離(3μmフィルタ)して溶剤不溶成分(F12)と溶剤可溶成分(F13)とに分ける。
THFの溶剤不溶成分をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)で溶解分散し、ろ過分離(5μmフィルタ)して、溶剤可溶成分と溶剤不溶成分とに分ける。HFIPの溶剤可溶成分をメタノールで溶解分散し、ろ過分離(3μmフィルタ)して溶剤不溶成分(F21)と溶剤可溶成分(F22)とに分ける。
HFIPの溶剤不溶成分を加熱したキシレンで溶解分散し、ろ過分離(200メッシュ)して溶剤可溶成分と溶剤不溶成分(F31)とに分ける。キシレンの溶剤可溶成分をメタノールで溶解分散し、ろ過分離(3μmフィルタ)して溶剤不溶成分(F32)と溶剤可溶成分(F33)とに分ける。
(2)次に、分離後の各画分(F11~F13、F21~F22、F31~F33、F41~F43)について、IR分析を行う。
(3)画分F12と画分F13との混合物について、溶液1H NMRを行う。
(4)画分F32について、高温13C NMRを行う。
(5)画分F31について、電気炉で炭化(570℃、2h)し、残留物を灰分とし、減量分をパルプ繊維とする。
(6)上記(2)~(5)の結果に基づいて、溶解成分及び不溶解成分の比率及び定性結果を求める。
【0120】
<吸音性の測定方法>
樹脂組成物を用いた吸音材の吸音性の測定方法は以下のとおりである。
(1)測定条件は以下のとおりである。
測定対象周波数:100~5000Hz(1/3オクターブバンド)
音源 :100~5000Hz帯域の広帯域雑音(ピンクノイズ)
受音位置 :三点(マイク高さ:床上1.2m、1.35m、1.5m高さ)
(試験体及び壁面から直線距離で1m以上隔離)
測定回数 :各受音点で3回
試験体配置
i)試験体(約3kg/袋)の長辺を、試験体敷き詰めエリアの長辺に対して平行の向きとし、エリア内北側に寄せて配置
試験体数:35袋(9.42m2)、試験時温湿度:10℃、71%
ii)試験体(約4kg/袋)の長辺を、試験体敷き詰めエリアの長辺に対して平行の向きとし、エリア内南側に寄せて配置
試験体数:35袋(9.42m2)、試験時温湿度:10℃、72%
iii)試験体(約4kg/袋)の長辺を、試験体敷き詰めエリアの長辺に対して直角の向きとし、エリア内北側に寄せて配置
試験体数:36袋(9.515m2)、試験時温湿度:10℃、71%
なお、本測定方法は、JIS-A-1409(残響室法吸音率の測定方法)に準拠しており、残響室は略語角形の床面形状を有し、試験体敷き詰めエリアは残響室の中央の各壁面から離間した矩形領域であり、スピーカーは試験体敷き詰めエリアの東側に位置している。
(2)試験体配置(i)~(iii)について測定を行い、その平均を最終的な測定値とする。
【0121】
<硫黄、窒素、アルミニウム、塩素の含有量の測定方法>
樹脂組成物及び固形燃料の硫黄、窒素、アルミニウム、塩素の含有量(質量%)の測定方法は以下のとおりである。
(1)エネルギー分散型X線分析装置(EDX:島津製作所製EDX-7200)を準備する。
(2)測定対象の樹脂組成物又は固形燃料を乾燥(120℃×60分)し、乾燥された樹脂組成物又は固形燃料から分析装置の試料台に載置可能かつ測定に十分な量の試料を採取し、試料台に固定する。
(3)分析装置により、試料中の硫黄、窒素、アルミニウム、塩素の含有量を測定する。
(4)5つの試料の測定結果を平均して、最終的な樹脂組成物中の硫黄、窒素、ナトリウム、塩素の含有量とする。
【0122】
<高位発熱量、並びに、水分及び灰分の質量分率の測定方法>
測定対象の樹脂組成物及び固形燃料の高位発熱量(MJ/kg)は、JIS Z 7302-2に準拠した方法より求める。測定対象の樹脂組成物及び固形燃料の水分の質量分率(%)は、JIS Z 7302-3に準拠した方法より求める。測定対象の樹脂組成物及び固形燃料の灰分の質量分率(%)は、JIS Z 7302-4に準拠した方法より求める。
【0123】
<かさ比重の測定方法>
樹脂組成物及び固形燃料のかさ比重は、以下のようにして求める。まず、一定容積(例えば、1L)の容器内に、測定対象の樹脂組成物又は固形燃料を一杯に入れたときの樹脂組成物又は固形燃料の全質量を測定する。そして、測定された質量を容器の容積と同じ水の質量で除算することにより、測定対象の樹脂組成物又は固形燃料のかさ比重を求める。
【0124】
<大腸菌の測定方法>
樹脂組成物及び固形燃料の大腸菌の測定方法は以下のとおりである。
(1)1リットルのビーカーに、検査対象の樹脂組成物又は固形燃料の固形分濃度が5.0質量%の水分散液500gを準備する。
・上記樹脂組成物又は固形燃料が乾燥状態で存在する場合
上記水分散液は、上記樹脂組成物又は固形燃料(固形分として25.0g)と、脱イオン水(総量が500.0gとなる量)とを混合することにより形成することができる。
・上記樹脂組成物又は固形燃料が水溶液で存在する場合(例えば、樹脂組成物又は固形燃料の製造方法において、樹脂組成物又は固形燃料を水溶液として回収した場合)であって、樹脂組成物又は固形燃料の固形分濃度が5.0質量%以上である場合
当該水溶液に、脱イオン水を添加すること等により、樹脂組成物又は固形燃料の固形分濃度が5.0質量%の水分散液を準備できる。
・上記樹脂組成物又は固形燃料が水溶液で存在する場合であって、樹脂組成物又は固形燃料の固形分濃度が5.0質量%未満である場合
濾過により、樹脂組成物又は固形燃料の固形分濃度を5.0質量%に調整するか、又は上記水溶液そのものを、水分散液として用い、後述する段階希釈サンプルの接種量を増やす(例えば、樹脂組成物又は固形燃料の固形分濃度が2.5質量%である場合には、接種量を2倍にする)ことができる。
(2)上記水分散液を、オーバーヘッドスターラーを用いて300rpmの回転速度で、15分間撹拌する。
(3)オーバーヘッドスターラーを用いて撹拌した水分散液50mLをフィルタ付き滅菌袋(LMS社製、ホモジナイザー用フィルタ付き滅菌袋)に入れ、5分間攪拌する。
(4)フィルタ付き滅菌袋で濾過した濾過後の水分散液を、滅菌した試験管に分注し、10-9まで10倍段階希釈し、滅菌した試験管に分注し、段階希釈サンプルを準備する。
(5)大腸菌数は、混釈培養法により測定する。
具体的には、シャーレに、段階希釈サンプル1mLと、標準寒天培地(塩谷エムエス株式会社製,大腸菌検査用399-02201EMB寒天培地「ダイゴ」,15~20g)と入れて、35℃で48時間混釈培養する。
(6)大腸菌数としては、培養後、発育したコロニー数をカウントする。
なお、10-9まで10倍段階希釈した全ての段階希釈サンプルにおいて、コロニー数がゼロである場合に、対象となる細菌が「検出されない」、すなわち混釈培養法により検出される一般生菌数が検出限界以下であると判定する。言い換えると、一般生菌数が0cfu/gである。
(7)培養後、腸内細菌又は一般生菌のコロニーが形成された場合には、細菌の種類を同定することができる。同定は、生化学的性状検査法により行うことができる。
【実施例0125】
以下、実施例に基づき、本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0126】
(1)試料
実施例1:排泄物を含む使用済みの使い捨ておむつを原料とし、本実施形態に係る排泄物を含む使用済み衛生用品由来の樹脂組成物を製造する方法の破砕工程S1~圧搾脱水乾燥工程S6を実行して、実施例1の樹脂組成物を得た。ただし、第2分離工程S3における酸性水溶液は0.1質量%硫酸水溶液であり、洗浄工程S5の洗浄液は水とした。
実施例2:実施例1の樹脂組成物を用いて、実施例2の吸音材を形成した。ただし、吸音材は、4kgの樹脂組成物を、570mm×440mm×50mmのポリエチレン樹脂製の袋に詰め込んで作成した。そのような吸音材を36袋作成した。
実施例3:実施例1の樹脂組成物を用いて押出成形により実施例3の固形燃料を形成した(10kg/cm2、150℃、10分)。
【0127】
(2)評価方法
(a)樹脂組成物の組成
実施例1の樹脂組成物について、上述の<溶解成分及び不溶解成分の測定方法>により、溶解成分及び不溶解成分を測定した。
(b)吸音材の吸音性
以下の吸音材について、上述の<吸音性の測定方法>により、吸音性を測定した。
・実施例2の吸音材
・市販品のグラスウール24K(1m2あたり24kgの密度を持つ高性能グラスウール)-厚さ50mmの吸音材(比較例1)
・市販品のグラスウール24K-厚さ25mmの吸音材(比較例2)
・市販品の岩綿吸音板-厚さ12mm(比較例3)
(c)固形燃料の組成等
実施例1の樹脂組成物及び実施例3の固形燃料について、上述の<高位発熱量、並びに、水分及び灰分の質量分率の測定方法>、<硫黄、窒素、アルミニウム、塩素の含有量の測定方法>、<かさ比重の測定方法>、<大腸菌の測定方法>により、それぞれの高位発熱量、水分及び灰分の質量分率、硫黄、塩素、窒素及びアルミニウムの含有量、かさ比重組成、並びに、大腸菌について測定した。
【0128】
(3)評価結果
(a)樹脂組成物の組成
実施例1の樹脂組成物の組成についての測定の結果を下記の表1に示す。実施例1の樹脂組成物では、溶解成分であるポリオレフィン系樹脂のポリプロピレン及びポリエチレンがそれぞれ46.2質量%及び17.0質量%であった。溶解成分であるポリエステル系樹脂のポリエチレンテレフタレートが9.1質量%であった。溶解成分であるスチレン含有ポリマー(スチレン)が1.9質量%であった。溶解成分であるポリウレタンを含むと考え得る炭化水素が8.2質量%であった。その他、溶解成分であるブタジエン、並びにオリゴマー及び添加物がそれぞれ0.9質量%及び0.3質量%であった。一方、不溶解成分であるパルプ繊維(セルロース)及び無機化合物(炭酸カルシウム)がそれぞれ14.7質量%及び1.7質量%であった。
したがって、溶解成分が83.6質量%であり、不溶解成分が16.4質量%であった。また、溶解成分におけるポリオレフィン系樹脂の割合は75.6質量%であった。また、不溶解成分におけるパルプ繊維(セルロース)及び無機化合物(炭酸カルシウム)の割合は、ほぼ100質量%であった。
また、後述されるように、実施例1の樹脂組成物では、硫黄、塩素、窒素、アルミニウムの含有量が極めて低く、大腸菌も検出されなかった。
【0129】
【0130】
(b)吸音材の吸音性
実施例2の吸音材の吸音性の測定結果を
図2に示す。図のグラフにおいて、縦軸は残響室法吸音率を示し、横軸は1/3オクターブバンド中心周波数(Hz)を示す。ただし、丸印は実施例2の結果を示し、バツ印は比較例1(グラスウール24K-厚さ50mm)の結果を示し、菱形印は比較例2(グラスウール24K-厚さ25mm)の結果を示し、三角印は比較例3(岩綿板-厚さ12mm)の結果を示す。
グラフから、実施例2の吸音材は、比較例3の岩綿板よりも良好な高い吸音率を示し、1000Hzより高い周波数では、比較例1や比較例2のグラスウールと同等以上の特性を示した。
【0131】
(c)固形燃料の組成等
実施例1の樹脂組成物及び実施例3の固形燃料の組成等についての測定の結果を下記の表2に示す。実施例1の樹脂組成物は、高位発熱量は39.1MJ/kgと極めて高く、水分、灰分、硫黄、塩素、窒素、アルミニウムの含有量がそれぞれ0.7質量%、2.68質量%、0.022質量%、0.020質量%、0.30質量%未満、0.10質量%未満と極めて低く、大腸菌も検出されなかった。かさ比重はやや低めの0.199であった。したがって、かさ比重を除けば、RPF(Refuse derived paper and plastics densified Fuel)の品質基準(JIS Z7311:2010「廃棄物由来の紙, プラスチックなど固形化燃料(RPF)」)における品種RPFの等級Aだけでなく、品種RPF-cokeにも適合する特性を有していた。
実施例3の固形燃料は、高位発熱量は36.5MJ/kgと極めて高く、水分、灰分、硫黄、塩素、窒素、アルミニウムの含有量がそれぞれ0.7質量%、2.08質量%、0.015質量%、0.039質量%、0.30質量%未満、0.10質量%未満と極めて低く、大腸菌も検出されなかった。かさ比重は0.392であった。したがって、RPFの品質基準における品種RPFの等級Aだけでなく、品種RPF-cokeにも適合する特性を有していた。
【0132】
【0133】
本発明の樹脂組成物及びそれを用いた製品は、上述した実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。