(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105685
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】直流配電システム、制御装置、動作状態判定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20250703BHJP
G08C 23/06 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
H02J1/00 301D
G08C23/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025068661
(22)【出願日】2025-04-18
(62)【分割の表示】P 2023514285の分割
【原出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】NTT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】花岡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】中村 尚倫
(72)【発明者】
【氏名】樋口 裕二
(57)【要約】
【課題】直流配電システムにおいて発生した事故を迅速に精度良く検出する。
【解決手段】電源装置から負荷装置に対して配電網を介して電力を配電する直流配電システムであって、前記配電網に備えられた計測器であって、電気信号の計測値を、光ファイバで送信するための光信号に変換するナノ光変調器を備える計測器と、前記計測器により計測された電圧値及び電流値を、前記光ファイバを通じて、光信号を電気信号に変換するナノ受光器を用いて取得し、電圧値と電流値に関する所定の情報に基づいて、前記直流配電システムにおける動作状態を判定する判定部を備える制御装置と、を備え、前記判定部は、前記動作状態として、突入電流、負荷接続、負荷ON・負荷OFF、及び負荷変動のうちのいずれかの状態が発生していることを判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置から負荷装置に対して配電網を介して電力を配電する直流配電システムであって、
前記配電網に備えられた計測器であって、電気信号の計測値を、光ファイバで送信するための光信号に変換するナノ光変調器を備える計測器と、
前記計測器により計測された電圧値及び電流値を、前記光ファイバを通じて、光信号を電気信号に変換するナノ受光器を用いて取得し、電圧値と電流値に関する所定の情報に基づいて、前記直流配電システムにおける動作状態を判定する判定部を備える制御装置と、を備え、
前記判定部は、前記動作状態として、突入電流、負荷接続、負荷ON・負荷OFF、及び負荷変動のうちのいずれかの状態が発生していることを判定する
直流配電システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記判定部により前記配電網において事故が発生したと判定された場合に、ゲートブロック又は遮断器を、光ファイバを通じて動作させることにより、前記電源装置からの配電を停止させる制御部を備える
請求項1に記載の直流配電システム。
【請求項3】
光ファイバを通じて送信される情報の種類毎に、異なる周波数を使用する
請求項1又は2に記載の直流配電システム。
【請求項4】
電源装置から負荷装置に対して配電網を介して電力を配電する直流配電システムにおける動作状態判定方法であって、
前記配電網に備えられた計測器であって、電気信号の計測値を、光ファイバで送信するための光信号に変換するナノ光変調器を備える計測器が電圧値及び電流値を計測するステップと、
前記計測器により計測された電圧値及び電流値を、前記光ファイバを通じて、光信号を電気信号に変換するナノ受光器を用いて取得し、電圧値と電流値に関する所定の情報に基づいて、前記直流配電システムにおける動作状態を判定する判定ステップと、を備え、
前記判定ステップにおいて、前記動作状態として、突入電流、負荷接続、負荷ON・負荷OFF、及び負荷変動のうちのいずれかの状態が発生していることを判定する
動作状態判定方法。
【請求項5】
電源装置から負荷装置に対して配電網を介して電力を配電する直流配電システムにおいて使用される制御装置であって、
前記配電網に備えられた計測器であって、電気信号の計測値を、光ファイバで送信するための光信号に変換するナノ光変調器を備える計測器により計測された電圧値及び電流値を、前記光ファイバを通じて、光信号を電気信号に変換するナノ受光器を用いて取得し、電圧値と電流値に関する所定の情報に基づいて、前記直流配電システムにおける動作状態を判定する判定部を備え、
前記判定部は、前記動作状態として、突入電流、負荷接続、負荷ON・負荷OFF、及び負荷変動のうちのいずれかの状態が発生していることを判定する
制御装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項5に記載の制御装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電システムにおいて発生した地絡や短絡等の事故を検出する技術に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
配電システムにおいては、地絡や短絡等の事故を検出した場合に、電源装置からの配電を停止する等の対応をとることが必要である。
【0003】
地絡や短絡等の事故を検出するための装置の一例として、交流の変電所の送電端等において、距離継電器(例:非特許文献1に記載のモーリレー)が使用されている。距離継電器は、電圧及び電流を入力量とし、電圧と電流の比の関数が所定値以下となったときに動作する。この比は、継電器の見るインピーダンスと呼ばれる。
【0004】
ところで、通信ビルやデータセンタ等では、システム全体の電力損失を低減して、省エネルギー化を図るために、高電圧直流配電システムが導入されている。高電圧直流配電システムでは、例えば380Vといった高電圧により配電が行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】用語解説(第22回テーマ:モーリレー), 電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌)132巻(2012)8号、https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejpes/132/8/132_NL8_6/_pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高電圧直流配電システムにおいて使用される直流にはリアクタンス分が無いため、非特許文献1に記載のモーリレーのような距離継電器は使用できない。また、380Vといった高電圧の直流配電用の距離継電器は市場に存在しない。
【0007】
直流配電システムにおいて発生した地絡や短絡等の事故を検出する従来技術は存在するが、事故でない事象を事故であると誤検出をしたりする等、検出の精度が十分ではなかった。
【0008】
また、従来技術では、信号の伝送にはメタル線が使用されており、ノイズの影響で誤検出が発生する可能性がある。また、従来技術では、メタル線やフォトカプラ等を使用した機器の監視制御における遅延時間が大きい。そのため、例えば、数km離れた拠点間で事故検出システムを適用することが難しかった。
【0009】
本発明は、直流配電システムにおいて発生した事故を迅速に精度良く検出することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示の技術によれば、電源装置から負荷装置に対して配電網を介して電力を配電する直流配電システムであって、
前記配電網に備えられた計測器であって、電気信号の計測値を、光ファイバで送信するための光信号に変換するナノ光変調器を備える計測器と、
前記計測器により計測された電圧値及び電流値を、前記光ファイバを通じて、光信号を電気信号に変換するナノ受光器を用いて取得し、電圧値と電流値に関する所定の情報に基づいて、前記直流配電システムにおける動作状態を判定する判定部を備える制御装置と、を備え、
前記判定部は、前記動作状態として、突入電流、負荷接続、負荷ON・負荷OFF、及び負荷変動のうちのいずれかの状態が発生していることを判定する
直流配電システムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
開示の技術によれば、直流配電システムにおいて発生した事故を迅速に精度良く検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態における直流事故検出システムの構成例1を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における直流事故検出システムの構成例2を示す図である。
【
図9】制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図10】制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0014】
本実施の形態における直流配電システムは、380Vの直流で配電を行う高電圧直流配電システム(以降、直流配電システムと呼ぶ)であることを想定している。ただし、「380V」は一例である。また、本発明は、高電圧直流配電システムに限らずに、直流配電システム全般に適用可能である。
【0015】
(システム構成例1)
図1に、本実施の形態における直流配電システムの構成例1を示す。構成例1は、拠点Aから拠点Bへ直流で電力の配電を行うシステムである。また、拠点Bから拠点Aへの配電も可能である。つまり、双方向の配電が可能である。拠点A、拠点Bは例えば通信ビル等の建物であるが、建物に限定されない。拠点Aと拠点Bとの間の距離については特に限定はないが、本実施の形態では、数km以上離れていてもよい。
【0016】
構成例1では、拠点AにコンバータA20が備えられ、拠点BにコンバータB30が備えられている。各コンバータはDC/DCコンバータであり、直流の電圧の大きさを変換する装置である。コンバータA20についてはAC/DCコンバータであってもよい。図示のとおり、各コンバータは、電圧変換部を有するとともに、絶縁機能、及びゲートブロック機能を有している。
【0017】
拠点AのコンバータA20と拠点BのコンバータB30との間は配電網(正側配電線と負側配電線)で接続されており、拠点AのコンバータA20から拠点BのコンバータB30に対して380Vの直流電流が配電される。なお、コンバータB30は、配電された電力を受電する負荷装置の例である。また、拠点Bにおいて、コンバータB30の配下には1以上の負荷装置(サーバ等)が接続されている。「負荷装置」は、コンバータB30、及びコンバータB30から給電されるサーバ等の装置を含む。また、「直流配電システム」は、コンバータA20、配電網、及び負荷装置を含む。
【0018】
また、
図1に示す例では、拠点Aの屋外に半導体遮断器90が備えられており、事故検出時には、半導体遮断器90により拠点Aと拠点Bとの間の回路を遮断することができる。半導体遮断器90と制御装置100Aの間では光ファイバにより通信を行う。
【0019】
コンバータA20は、配電網(電力供給を受ける負荷装置内の電力網を含む)において、事故(例:地絡、短絡、部分短絡等)が発生した際に、事故点に十分な電流を供給できる電源装置の例である。
【0020】
また、拠点Aには制御装置100Aが備えられ、拠点Bには制御装置100Bが備えられている。制御装置100Aと制御装置100Bとの間は光ネットワーク(光ファイバ)で接続されている。本実施の形態において装置間の接続に使用する光ネットワークは、特定の光ネットワークに限定されないが、例えば、IOWNのフォトニックネットワークのような省電力、低遅延、高速な光ネットワークである。
【0021】
制御装置100Aは、コンバータA20内部の装置であってもよいし、コンバータA20外部の装置であってもよい。また、制御装置100Aは、拠点Aの外部に備えられていてもよい。制御装置100Bは、コンバータB30内部の装置であってもよいし、コンバータB30外部の装置であってもよい。また、制御装置100Bは、拠点Bの外部に備えられていてもよい。また、拠点毎に制御装置を備えることに代えて、複数拠点に対して1つの制御装置を備えることとしてもよい。
【0022】
図1に示すとおり、学習装置200が備えられている。学習装置200はどこに設置してもよく、例えば、クラウド上の仮想マシンを学習装置200として使用してもよい。学習装置200は、制御装置100A及び制御装置100Bと光ネットワーク(光ファイバ)を介して接続されている。なお、制御装置100A又は制御装置100Bが学習装置200として機能してもよい。
【0023】
本実施の形態における直流配電システムでは、拠点Aにおいて、高抵抗を用いた中性点接地の構成が用いられている。具体的には、
図1に示すように、コンバータA20の出力部分と配電端(拠点Aの内部と外部の境界部分)との間において、正側配電線と負側配電線との間に抵抗1と抵抗2が備えられ、その間の中性点が大地(アース)に接地されている。抵抗1と抵抗2はいずれも例えば数MΩ程度の高抵抗である。なお、高抵抗を用いた中性点接地の構成は、コンバータA20の内部に備えられてもよい。
【0024】
図1に示すとおり、拠点Aにおいて、正側配電線(+)と中性点との間に電圧計3が備えられ、負側配電線(-)と中性点との間に電圧計4が備えられ、中性点と接地点との間に電流計5が備えられている。
【0025】
また、負側配電線及び正側配電線に電流計6、7が備えられる。また、零相変流器8(ZCT:Zero-phase Current Transformer)が備えられている。零相変流器8は、正側配電線と負側配電線における往復電流にアンバランスが生じた場合に、アンバランスに伴って生じる電流値を計測し、出力する。
【0026】
また、拠点Bにおいて、受電端(拠点Bの外部と内部の境界部分)とコンバータB30との間において、正側配電線と負側配電線との間に電圧計9が備えられ、正側配電線に電流計10が備えられている。
【0027】
図1に示す電流計、電圧計等の計測器の配備方法は一例である。
図1に示す配備方法よりもより多くの計測器を配備してもよいし、より少ない計測器を配備してもよい。例えば、拠点B側には計測器を配備しないこととしてもよい。
【0028】
(光ファイバを用いた接続構成について)
図1に示す拠点Aにおいて、制御装置100Aと電圧変換部20との間、制御装置100Aと各電圧計との間、制御装置100Aと各電流計との間、制御装置100Aと半導体遮断器90との間はいずれも光ファイバで接続されている。他の拠点についても同様である。
【0029】
また、光ファイバを用いた情報送信において、送信する情報の種類毎に異なる波長(周波数)を割り当てることで、光ファイバが1本でも様々な情報を瞬時に送受信することを可能としている。例えば、電圧と電流とで異なる周波数を割り当てたり、特徴的な波形毎に異なる周波数を割り当てたりすることが可能である。制御装置100Aは、光ファイバを介して取得した情報から判定した結果に基づいて、光ファイバを介して速やかにゲートブロックや半導体遮断器90を制御することで、事故の拡大を防ぐことを可能としている。
【0030】
図2に、より具体的な接続構成例を示す。なお、
図2には、後述する
図5に記載された制御装置100内の機能部の例として、制御部140、監視部110が示されている。
図2は一例であり、例えば、
図2における監視部を判定部に置き換えてもよいし、制御部を判定部に置き換えてもよい。
【0031】
図2の(a)は、電圧変換部20(絶縁機能、ゲートブロック機能等を含む)と制御部140が光ファイバで接続された構成を示す。当該光ファイバ上での光信号の通信に関して、例えば、状態監視用の周波数と、制御信号用の周波数とで異なる周波数が割り当てられる。
【0032】
図2の(b)は、電圧計と監視部110が光ファイバで接続された構成を示す。電圧計により得られた電圧を監視部110が監視する。この通信には、電圧用の周波数が使用される。
【0033】
また、電圧計には、E-O変換のためのナノ光変調器が備えられ、監視部110側にはO-E変換のためのナノ受光器が備えられる。電圧計における電圧プローブの計測信号(電気信号)が直接又は間接的にナノ光変調器にて光信号に変換され、監視部110に送信される。なお、電圧プローブを介さずにナノ光変調器を使用してもよい。
【0034】
ナノ光変調器とナノ受光器はいずれも、高速高効率に動作し、省エネルギー・高速動作を実現している。そのため、電圧計と監視部110が遠隔にあっても低遅延で迅速な監視制御を実現できる。
【0035】
図2の(c)は、電流計と監視部110が光ファイバで接続された構成を示す。電流計により得られた電流を監視部110が監視する。この通信には、電流用の周波数が使用される。
【0036】
また、電流計には、E-O変換のためのナノ光変調器が備えられ、監視部110側にはO-E変換のためのナノ受光器が備えられる。電流計における電流プローブの計測信号(電気信号)は直接又は間接的にナノ光変調器にて光信号に変換され、監視部110に送信される。なお、電流プローブを介さずにナノ光変調器を使用してもよい。ナノ光変調器とナノ受光器はいずれも、高速高効率に動作し、省エネルギー・高速動作を実現している。そのため、電流計と監視部110が遠隔にあっても低遅延で迅速な監視制御を実現できる。
【0037】
なお、電圧計からの光信号と電流計からの光信号を合波することで、一本の光ファイバで、電圧値(電圧用の周波数を使用)と電流値(電流用の周波数を使用)を監視部に送信してもよい。
【0038】
また、前述したとおり、制御装置100と学習装置200との間も光ファイバで接続されている。例えば、制御装置100から学習装置200への光ファイバを介した情報通信において、状態監視の情報、制御信号の情報、電圧の情報、及び電流の情報においてそれぞれ異なる周波数を使用することで、1本の光ファイバで効率的な情報伝送を実現することができる。
【0039】
(動作概要)
次に、
図1に示した直流配電システムの全体の動作概要を説明する。拠点Aにおいて、各計測器は、短時間間隔(例えば数us~数ms単位)で計測を行い、制御装置100Aは、各計測器で得られた計測結果を取得する。同様に、拠点Bにおいて、各計測器は、短時間間隔(例えば、数us~数ms単位の計測)で計測を行い、制御装置100Bは、各計測器で得られた計測結果を取得する。
【0040】
制御装置100Aと制御装置100Bはいずれも直流配電システムにおける動作状態(事故や、負荷変動等の事故以外の事象)の判定を行うことが可能であるが、本実施の形態では、制御装置100Aで判定を行うものとする。
【0041】
制御装置100Aで動作状態の判定を行う場合において、制御装置100Bは、拠点Bにおける各計測器で得られた計測結果を、光ネットワーク(光ファイバ)を介して制御装置100Aに送信する。また、制御装置100Bは、負荷装置の状態についても短時間間隔(例えば、数us~数ms単位の計測)で監視しており、監視により取得した負荷装置の状態の情報(機器情報)を、光ネットワーク(光ファイバ)を介して制御装置100Aに送信する。光ネットワークを用いることで、低遅延、高信頼の伝送が可能となり、拠点間の距離が大きくても(例えば数km)でも、本システムの事故検出及び遮断等の処理を高速に行うことができる。
【0042】
制御装置100Aは、拠点A及び拠点Bにおいて取得された各計測結果と機器情報に基づいて、地絡(+側)、地絡(-側)、短絡、部分短絡、突入電流、負荷接続、負荷ON・負荷OFF、負荷変動等の動作状態を、電圧値、電流値、電圧値の変化を示す波形、電流値の変化を示す波形、及び機器情報等のうちのいずれか1つ、又は、いずれか複数(全部を含む)から判定する。
【0043】
なお、短絡とは、正側配電線と負側配電線が小さな抵抗で接続されることであり、部分短絡とは、正側配電線と負側配電線が大きな抵抗で接続されることである。
【0044】
制御装置100Aは、判定結果を表示する。制御装置100Aが制御装置100Bに判定結果を送信することで、制御装置Bも判定結果を表示することができる。
【0045】
また、制御装置100Aは、地絡や短絡等の事故を検出した場合には、コンバータA20に異常信号を、光ファイバを介して送信することで、コンバータA20におけるゲートブロックを動作させ、配電を停止させることができる。また、制御装置100Aは、光ファイバで接続された半導体遮断器90に異常信号を送信することで、拠点Aと拠点Bとの間の回路を遮断することもできる。また、制御装置100Aは、地絡や短絡等の事故を検出した場合には、制御装置100Bに判定結果又は異常信号を送信することで、制御信号100Bが、拠点Bにおけるゲートブロック等を動作させることができる。
【0046】
また、制御装置100Aは、電流値又は電圧値の変化を示す波形から、事故ではない突入電流や負荷接続等の事象を判別できるので、誤って配電を停止してしまう等の誤動作を防止できる。
【0047】
また、本実施の形態では、光ネットワーク(光ファイバ)を介して各種信号を送受信するので、メタル線で生じていたノイズの影響を受けることなく、誤検出を削減できる。
【0048】
<判定結果の例>
図3に、計測器による検出値と判定結果の例を示す。
図3におけるV1は、中性点と正側配電線との間の電圧計3の検出値を表し、V2は、中性点と負側配電線との間の電圧計4の検出値を表す。Aは、例えば、電流計7又は電流計6の検出値(電流値)である。「peak」は、最大値(短時間で変動する値の中での最大値)を意味する。
【0049】
dV1/dtは、V1の時間tによる微分でありV1の時間変化を表す。dV2/dt、dA/dtも同様である。∫(dA/dt)dtはAの変化量の積分を示す。
【0050】
(V1+V2)/IにおけるIは、例えば、電流計7又は電流計6の検出値(電流値)である。(V1+V2)/IによりインピーダンスZ(直流のみを考慮する場合、「抵抗」と称してもよい)が得られる。
【0051】
例えば、拠点Aと拠点Bとの間の配電網で短絡等の事故が発生した場合、制御装置100Aは、(V1+V2)/Iにより、拠点A(具体的には計測器)と事故点との間の配電線のインピーダンスを算出し、拠点Aと事故点との間の距離を算出することができる。つまり、拠点Aと事故点との間の配電線の単位長さあたりのインピーダンスで、(V1+V2)/Iにより得られたインピーダンスを割ることで距離を算出できる。
【0052】
なお、配電線の単位長さあたりのインピーダンスは、配電線の太さ(断面積)により決まる。また、一般に、配電線の太さ(つまり、配電線の単位長さあたりのインピーダンス)は、配電網のスケール(拠点間配電、拠点内配電等)により決まるため、制御装置100Aは、予め、配電網のスケール毎に配電線の単位長さあたりのインピーダンスを記憶部に保持しておき、制御対象の配電網のスケールに適合した単位長さあたりのインピーダンスを用いて、距離を計算する。また、制御装置100Aは、電流又は電圧の過渡的な現象を捉えられた場合はjX(リアクタンス)の成分を含むインピーダンス導出を行うこととしてもよい。
【0053】
図3において、例えば、V1が急に0になり、V2が急に380Vになるような電圧波形に該当する計測結果が得られた場合に、正側配電線における地絡が発生したと判定できることが示されている。他の事象についても
図3に示すとおりである。より具体的な判定ロジック(フロー)については後述する。
【0054】
制御装置100Aと制御装置100Bはそれぞれ、取得した計測結果等を学習装置200に送信し、学習装置200は、電圧値の波形及び電流値の波形のうちのいずれか又は両方から、波形と事象との関係を学習してもよい。
【0055】
学習の手法は特定の方法に限られないが、例えば、ニューラルネットワークのモデルを用いてもよい。一例として突入電流についての学習の例を説明する。まず、配電網で突入電流が生じた際の電流計の計測結果から得られた波形を学習データとして多数取得する。
【0056】
学習装置200は、学習データの波形をモデルに入力し、その波形の分類が「突入電流」になるようにモデルのパラメータを学習する。そして、学習済みのモデルを制御装置100Aに格納する。制御装置100Aはそのモデルを用いることで、計測結果の波形が突入電流に該当するか否かを判別できる。
【0057】
同様にして、地絡(+側)、地絡(-側)、短絡、部分短絡、負荷接続、負荷ON(負荷投入)・負荷OFF、負荷変動等の事象のそれぞれを、モデルを用いて判別することができる。
【0058】
上記のようにニューラルネットワークのモデルを用いて事象(動作状態)の判別を行うことは一例である。
【0059】
例えば、事象毎に、その事象が発生した際に観測される代表的な波形を代表波形として準備しておき、制御装置100Aの記憶部に格納しておく。制御装置100Aは、検知した波形と、各事象の代表波形とを比較し、検知した波形に近い代表波形の事象が発生したと判断することができる。検知した波形と、各事象の代表波形との比較においては、例えば、複数の特徴量(例:傾き、変化の開始から変化の終了までの時間長、変化の大きさ(変化前の値と変化後の値との差分)のうちのいずれか1つ又はいずれか複数(全部を含む)を、観測した波形と代表波形とで比較し、各特徴量における差分が閾値よりも小さいか否かで、検知した波形と代表波形とが近いか否かを判断してもよい。
【0060】
(システム構成例2)
図4に、本実施の形態における直流配電システムの構成例2を示す。構成例2は、拠点Cの内部で、整流装置60等の電源装置から負荷装置80への配電(給電)を行うシステムである。拠点Cは例えば通信ビル等の建物であるが、建物に限定されない。
【0061】
構成例2は、構成例1とスケールが違うだけで、基本的な構成は構成例1と構成例2とで同じである。また、構成例2でも構成例1と同様に、制御装置間、制御装置と学習装置との間、制御装置と電流計/電圧計との間は光ファイバで接続されている。また、電流計/電圧計にはナノ光変調器が使用され、電流計/電圧計の信号を監視する監視部側にはナノ受光器が使用されている。
【0062】
整流装置60は、商用電源からの交流を直流に変換し、直流の電力を出力する。構成例1のコンバータA20と同様に、整流装置60は、電圧変換部を有するとともに、絶縁機能、及びゲートブロック機能を有している。負荷装置80は、例えばサーバ等の装置であり、コンバータ70は負荷装置内部に存在する。コンバータ70は、電圧変換部を有するとともに、絶縁機能、及びゲートブロック機能を有している。また、整流装置60において、構成例1と同様に、高抵抗中性点接地の構成を有しており、電圧計、電流計、零相変流器等の計測器が備えられている。
【0063】
また、構成例1における制御装置100A、制御装置100B、学習装置200と同様に、制御装置100C-1、制御装置100C-2、学習装置200が備えられている。なお、ここでは、制御装置100C-2は、負荷装置80内部の機能部である。構成例2における動作は、構成例1における動作と同様である。
【0064】
(制御装置100の構成例)
一例として、
図1に示した直流配電システムにおける制御装置100Aと制御装置100Bの構成例を説明する。ここでは、一例として、制御装置100Aが判定処理を行い、制御装置100Bは判定処理を行わないものとする。
【0065】
図5に、制御装置100Aの構成例を示す。
図5に示すとおり、制御装置100Aは、監視部110、判定部120、通信部130、制御部140、記憶部150、表示部160を有する。各部は図示するように接続されている。接続線は、例えば光ファイバである。
【0066】
監視部110は、拠点A内の計測器(電圧計、電流計等)により得られた計測結果を、光ファイバを介して取得し、取得した計測結果を判定部120に入力する。なお、判定部120が拠点A内の計測器(電圧計、電流計等)により得られた計測結果を、光ファイバを介して取得してもよい。また、監視部110は、拠点A内の機器情報(例:コンバータA20の情報)を、光ファイバを介して取得することもできる。
【0067】
通信部130は、他の制御装置100や学習装置200との間で光ファイバを介して通信を行う。より具体的には、通信部130は、拠点Bの制御装置100Bから計測結果及び機器情報を受信し、これらを判定部120に入力する。
【0068】
判定部120は、監視部110から入力された計測結果と、通信部130から入力された情報とに基づいて、地絡(+側)、地絡(-側)、短絡、部分短絡、突入電流、負荷接続、負荷ON・負荷OFF、負荷変動等の動作状態を判定する。
【0069】
記憶部150には、例えば、判定に必要な閾値等が格納される。また、前述したモデルを用いて判定を行う場合において、記憶部150には、当該モデル(具体的には学習済みのパラメータ)が格納され、判定部120は記憶部150からモデルを読み出して判定に使用する。
【0070】
また、判定部120は、地絡(+側)、地絡(-側)、短絡、部分短絡、突入電流、負荷接続、負荷ON・負荷OFF、負荷変動等の動作状態の判定結果と、その判定結果に対応する電圧値の波形、電流値の波形、又は、電圧値の波形と電流値の波形の両方を記憶部150に格納してもよい。格納されたデータ(判定結果と波形の組のデータ)は、学習装置200における学習データとして使用することができる。なお、学習装置200を備えずに、制御装置100Aが学習機能を備えることとしてもよい。
【0071】
制御部140は、判定結果が地絡や短絡等の事故である場合に、ゲートブロックを動作させる異常信号を、光ファイバを介してコンバータA20に送信する。また、異常信号を、光ファイバを介して半導体遮断器90に送信してもうよい。表示部160は、判定結果等を表示する。
【0072】
なお、
図5に示す110~160の各部に判定機能を備え、その判定機能のみで事故等を判定可能な場合には、当該判定の結果を優先して利用することとしてもよい。
【0073】
図6は、拠点Bの制御装置100Bの構成例を示す図である。
図6に示すように、制御装置100Bは、監視部110、通信部130、制御部140、表示部160を有する。
【0074】
監視部110は、拠点Bにおける各計測器で計測された計測結果を、光ファイバを介して取得するとともに、拠点Bにおける負荷装置の機器情報を、光ファイバを介して取得する。通信部130は、監視部110により取得された計測結果と機器情報を拠点Aの制御装置100Aに光ファイバを介して送信する。
【0075】
制御装置100Aにおいて、判定処理が実行され、判定結果が拠点Bの制御装置100Bに光ファイバを介して送信される。例えば判定結果が事故の発生を示す場合、制御部140は拠点Bのゲートブロックを動作させる異常信号を出力する。また、表示部160は、事故が発生したことを示す情報を出力する。あるいは、制御装置100Aから異常信号が拠点Bの制御装置100Bに送信されることとしてもよい。
【0076】
図7は、学習装置200の構成例を示す図である。
図7に示すように、学習装置200は、学習部210、記憶部220、通信部230を有する。通信部230は、制御装置100A、100B等から学習データ(例:事象と波形の組のデータ)を、光ファイバを介して受信し、当該学習データを記憶部220に格納する。学習部210は、学習データを用いて学習を行う。例えば、前述したように、ニューラルネットワークのモデルの学習を行う。通信部230は、学習済みのモデルを制御装置100A等に送信する。
【0077】
<ハードウェア構成例>
制御装置100A、100B、100C-1、100C-2、学習装置200はいずれも、各構成部が独立の装置であり、構成部間が光ファイバで接続される構成であってもよいし、コンピュータにプログラムを実行させることにより構成される装置であってもよい。このコンピュータは、物理的なコンピュータであってもよいし、仮想マシンであってもよい。
【0078】
すなわち、当該装置(制御装置100A、100B、100C-1、100C-2、学習装置200)は、コンピュータに内蔵されるCPUやメモリ等のハードウェア資源を用いて、当該装置で実施される処理に対応するプログラムを実行することによって実現することが可能である。上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(可搬メモリ等)に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0079】
図8は、上記コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図8のコンピュータは、それぞれバスBSで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、インタフェース装置1005、表示装置1006、入力装置1007、出力装置1008等を有する。
【0080】
当該コンピュータでの処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体1001によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置1002は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0081】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って、当該装置に係る機能を実現する。インタフェース装置1005は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられ、送信部及び受信部として機能する。表示装置1006はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置1007はキーボード及びマウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。出力装置1008は演算結果を出力する。
【0082】
(動作フロー)
次に、
図9、
図10のフローチャートを参照して、制御装置100Aの詳細動作例を説明する。
図9、
図10のフローチャートに示す動作は、制御装置100Aの判定部120により実行される動作である。また、
図9、
図10のフローチャートにおいて想定している監視対象は、正側配電線と中性点(アース)との間の電圧であるV1、負側配電線と中性点(アース)との間の電圧であるV2、正側配電線と負側配電線との間の電圧であるV1+V2=V、及び、配電線を流れる電流(例えば
図1に示す電流計7で測定される電流)である。
【0083】
S101において、判定部120は、V1、V2、V、及び電流のいずれにも変動を検知していないため、直流配電システムは通常状態にある。
【0084】
S102において、判定部120は、電圧(V1、V2、又はV)の変動を検出したか否かを判定し、検出した場合はS103に進み、検出しない場合はS112に進む。なお、「電圧の変動を検出する」とは、例えば、時刻t+Δtの電圧の値が時刻tにおける電圧の値と比べて閾値以上に変化したことを検出することである。「電流の変動を検出する」ことも同様である。
【0085】
電圧の変動を検出した場合(S102のYes)、S103において、判定部120は、コンバータA20の状態の情報に基づいて、制御電圧を変更中であるか否かを判定する。なお、対象とする直流配電システムに浮動充電の蓄電池が接続されている場合、S103での判定では、「(制御電圧を変更中)かつ(蓄電池放電中でない)」か否かを判定する。S103の判定がYesであればS101に戻り、NoであればS104に進む。
【0086】
S104において、検出した電圧の変動がV(=V1+V2)の変動である場合、S110に進み、検出した電圧の変動がV(=V1+V2)の変動でない場合、S105に進む。
【0087】
S105において、判定部120は、「V1<V2」であるか否かを判定し、「V1<V2」であればS106に進み、「V1<V2」でなければS108に進む。
【0088】
「V1<V2」である場合のS106において、検出部120は。正側配電線において地絡が発生したと判定する。正側配電線において地絡が発生した場合、正側配電線が地絡抵抗(低抵抗)を介して接地されるので、正側の抵抗1の両端の電圧が下がり、負側の抵抗2の両端の電圧が上がり、「V1<V2」となる。S107において、判定部120から地絡検出の通知を受けた制御部140は、異常信号を送出する。
【0089】
S105の判定がNoの場合、つまり、「V1<V2」ではない場合、S108において、検出部120は、負側配電線において地絡が発生したと判定する。負側配電線において地絡が発生した場合、負側配電線が地絡抵抗(低抵抗)を介して接地されるので、負側の抵抗2の両端の電圧が下がり、正側の抵抗1の両端の電圧が上がり、「V1>V2」となる。S109において、判定部120から地絡検出の通知を受けた制御部140は、異常信号を送出する。
【0090】
S104での判定がYesの場合、つまり、Vの変動を検出した場合、S110において、判定部120は、短絡が発生したと判定する。S111において、判定部120から地絡検出の通知を受けた制御部140は、異常信号を送出する。
【0091】
S102での判定がNoの場合(つまり、電圧の変動を検出しない場合)、判定部120は、S112において、電流の変動の有無を判断し、電流の変動があった場合にはS113に進む。
【0092】
S113において、判定部120は、電流の変動が生じてから予め定めた時間の経過後に電流の値が変動前の値に戻ったか否かを判定する。判定結果がNoの場合、S116に進む。判定結果がYesの場合、S114に進み、判定部120は、突入電流が発生したと判定する。S115において、判定部120から突入電流検出の通知を受けた制御部140は、異常信号を送出する。なお、突入電流は通常状態であるとみなして、異常信号を送出しないこととしてもよい。
【0093】
S113での判定がNoである場合、つまり、一定時間経過後に電流が元に戻っていない場合、
図10のS116に進む。
【0094】
S116において、判定部120は、電流の立ち上がり時間が閾値以下であるか否かを判定する。判定部120は、電流の立ち上がり時間が閾値以下であると判定した場合、S117に進む。
【0095】
S117において、判定部120は、拠点Bから受信した機器情報に基づいて、電流立ち上がりの時刻において負荷接続中又は負荷投入中であるか否かを判定する。
【0096】
S117での判定結果がNoである場合、S118において、判定部120は、部分短絡が発生したと判定する。S119において、判定部120から部分短絡検出の通知を受けた制御部140は、異常信号を送出する。
【0097】
S117での判定がYesの場合、つまり、負荷接続中又は負荷投入中である場合、S120に進み、判定部120は、負荷接続又は負荷投入があったと判定し、S101に戻る。
【0098】
S116での判定がNoの場合、つまり、電流の立ち上がり時間が閾値以下ではない場合、S121に進み、判定部120は、負荷変動があったと判定し、S101に戻る。
【0099】
(波形による判定について)
図9、
図10に示した各事象の判定において、より詳細には、判定部120は、事象に対応する波形に基づいて判定を行う。なお、判定において使用する「波形」とは、波形そのもの(つまり、時刻毎の値)であってもよいし、傾き(微分)、変化時間長等の特徴量を「波形」として使用してもよい。
【0100】
図11は、
図9のフローにおいてS102でYesとなる場合(電圧の変動がある場合)における、地絡(+)、地絡(-)、及び短絡のそれぞれに対応する波形のイメージを示す図である。
【0101】
図11に示すとおり、正側配電線とアースとの間において、正側配電線の電位が急に減少して0Vに近づく波形を検出したときに、地絡(+)が発生したと判定できる。また、負側配電線とアースとの間において、負側配電線の電位が急に増加して0Vに近づく波形を検出したときに、地絡(‐)が発生したと判定できる。
図9のS105における判定は、電圧の変化がこのような特徴を持つ波形に該当するかどうかを判定することであってもよい。
【0102】
また、正側配電線と負側配電線との間の電圧が急に減少する波形を検出したときに、短絡が発生したと判定できる。
【0103】
図11には、各事象が発生したときの負荷装置からの信号が示されている。「地絡(+)」、「地絡(-)」において、負荷装置が正常動作をしていることがわかれば、電圧の変動が地絡により生じたことをより精度良く判定することができる。
【0104】
図12は、
図9のフローにおいてS102でNoとなる場合(電圧の変動がない場合)において、電流の変動がある場合における、突入電流、負荷変動、部分短絡、負荷接続・負荷投入のそれぞれに対応する波形のイメージを示す図である。
【0105】
図12に示すとおり、突入電流が発生した場合の電流の波形は、電流の値が上昇し、すぐに元に戻るような波形となる。
図9のS113は、計測された電流の値の変化がこのような特徴を持つ波形に該当するかどうかを判定していることに相当する。
【0106】
負荷変動が発生した場合の電流の波形は、電流の値が徐々に上昇し、すぐには元に戻らないような波形である。
図10のS116は、計測された電流の値の変化がこのような特徴を持つ波形に該当するかどうかを判定していることに相当する。
【0107】
部分短絡と負荷接続・投入における波形は類似しており、急に電流が増加するような波形となる。ただし、部分短絡の場合には、負荷装置から特別な信号(スイッチON等)は得られておらず、負荷接続・投入の場合には、負荷装置からスイッチON等の信号が得られている。すなわち、部分短絡と負荷接続・投入は、波形と機器情報により識別することが可能である。
図10のS116とS117は、波形と機器情報による判定に相当する。
【0108】
(実施の形態の効果)
以上、説明したとおり、本実施の形態に係る技術により、負荷変動等の事象を誤って事故であると判定することを回避して、直流配電システムにおいて発生した事故を精度良く検出することが可能となる。
【0109】
また、光ファイバを介して信号の送受信を行うので、メタル線で生じていたノイズの影響を受けず、誤検出を低減できる。また、電圧計/電流計におけるE-O変換にナノ光変調器を用い、情報取得側ではO-E変換にナノ受光器を使用するので、高速動作(低遅延動作)、省電力、及び低ロスの監視制御を実現できる。また、数km以上離れた遠隔の拠点間でも低遅延の監視制御を実現できる。
【0110】
(実施の形態のまとめ)
本明細書には、少なくとも下記各項の直流配電システム、制御装置、動作状態判定方法、及びプログラムが開示されている。
(第1項)
電源装置から負荷装置に対して配電網を介して電力を配電する直流配電システムであって、
前記配電網に備えられた計測器と、
前記計測器により計測された電圧値及び電流値を、光ファイバを通じて取得し、電圧値の変化を示す波形と電流値の変化を示す波形とに基づいて、前記直流配電システムにおける動作状態を判定する判定部を備える制御装置と
を備える直流配電システム。
(第2項)
前記制御装置は、
前記判定部により前記配電網において事故が発生したと判定された場合に、ゲートブロック又は遮断器を、光ファイバを通じて動作させることにより、前記電源装置からの配電を停止させる制御部を備える
第1項に記載の直流配電システム。
(第3項)
前記計測器は、電気信号の計測値を、光ファイバで送信するための光信号に変換するナノ光変調器を備える
第1項又は第2項に記載の直流配電システム。
(第4項)
光ファイバを通じて送信される情報の種類毎に、異なる周波数を使用する
第1項ないし第3項のうちいずれか1項に記載の直流配電システム。
(第5項)
電源装置から負荷装置に対して配電網を介して電力を配電する直流配電システムにおける動作状態判定方法であって、
前記配電網に備えられた計測器が電圧値及び電流値を計測するステップと。
前記計測器により計測された電圧値及び電流値を、光ファイバを通じて取得し、電圧値の変化を示す波形と電流値の変化を示す波形とに基づいて、前記直流配電システムにおける動作状態を判定するステップと
を備える動作状態判定方法。
(第6項)
電源装置から負荷装置に対して配電網を介して電力を配電する直流配電システムにおいて使用される制御装置であって、
前記配電網に備えられた計測器により計測された電圧値及び電流値を、光ファイバを通じて取得し、電圧値の変化を示す波形と電流値の変化を示す波形とに基づいて、前記直流配電システムにおける動作状態を判定する判定部を備える
制御装置。
(第7項)
コンピュータを、第6項に記載の制御装置として機能させるためのプログラム。
【0111】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0112】
1、2、1、42 抵抗
3、4、9、43、44、49 電圧計
6、7、8、10、46、47、48、50 電流計
20、30、70 コンバータ
80 負荷装置
90 半導体遮断器
100 制御装置
110 監視部
120 判定部
130 通信部
140 制御部
150 記憶部
160 表示部
200 学習装置
210 学習部
220 記憶部
230 通信部
80 負荷装置
1000 ドライブ装置
1001 記録媒体
1002 補助記憶装置
1003 メモリ装置
1004 CPU
1005 インタフェース装置
1006 表示装置
1007 入力装置