(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105903
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】洗眼用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4166 20060101AFI20250703BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20250703BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250703BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20250703BHJP
【FI】
A61K31/4166
A61P27/04
A61K9/08
A61K47/14
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025075737
(22)【出願日】2025-04-30
(62)【分割の表示】P 2020213411の分割
【原出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 貴史
(57)【要約】
【課題】防腐性に優れた洗眼用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】アラントイン及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有し、第4級アンモニウム塩系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール及びソルビン酸類から選択される防腐剤を含有しない、洗眼用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラントイン及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有し、第4級アンモニウム塩系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール及びソルビン酸類から選択される防腐剤を含有しない、洗眼用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
洗眼用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗眼用カップ(アイカップ)を用いた洗眼方法や点眼による洗眼方法が知られている。洗眼用カップを用いた洗眼方法の一例として、洗眼用カップに洗眼液を適量(例えば5mL程)注ぎ、次いで、該カップを片側の眼周辺に押し当てて該カップ内の洗眼液と眼とを接触させ、数回まばたきを行うことにより洗眼する方法が挙げられる。点眼による洗眼方法の一例として、洗眼液を眼に直接点眼して洗眼する方法が挙げられる(例えば、特許文献1)。
【0003】
洗眼用カップを用いた洗眼方法では、点眼による洗眼方法と比較して、多くの洗眼液を要するため、該洗眼液は比較的容量の大きい容器に収容、保存されることが多い。しかし、容器の開閉や洗眼用カップへの洗浄液の注入等に伴い、洗眼液が微生物汚染に曝されるリスクも高く、従って、洗浄液において微生物の増殖を抑制できることが望ましい。また、点眼による洗眼方法は、洗眼用カップが不要であり携帯性に優れている、外出先でも使用しやすいといった利点がある。点眼による洗眼方法はこのように使い勝手が良いが、直接点眼して使用され、また、外出先で使用する場面も多く、洗眼液が微生物汚染に曝されるリスクが高い。
【0004】
このような汚染リスクを低減するために、塩化ベンザルコニウム等の防腐剤を洗眼液に配合することが知られている。しかし、角膜への影響やコンタクトレンズへの吸着等の点から、このような防腐剤の配合は好ましくない傾向がある。このため、塩化ベンザルコニウム等の防腐剤を配合しなくても、防腐性に優れた洗眼用組成物が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本開示は、防腐性に優れた洗眼用組成物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者は、前記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、洗眼用組成物においてアラントインとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とを併用することにより、防腐剤を配合していないにもかかわらず、洗眼用組成物において所望の防腐性を付与できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成されたものである。すなわち、本開示は、次に掲げる発明を包含する。
項1.アラントイン及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有し、第4級アンモニウム塩系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール及びソルビン酸類から選択される防腐剤を含有しない、洗眼用組成物。
項2.更に、クロルフェニラミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、項1に記載の洗眼用組成物。
項3.pHが5~7である、項1または2に記載の洗眼用組成物。
項4.洗眼カップを用いた洗眼に用いるための、または点眼による洗眼に用いるための、項1~3のいずれかに記載の洗眼用組成物。
【発明の効果】
【0008】
第4級アンモニウム塩系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール及びソルビン酸類から選択される防腐剤を含有しない洗眼用組成物に、アラントイン及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合することにより、該洗眼用組成物に防腐作用を付与することができる。このようにして防腐作用が付与された、アラントイン及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有し、該防腐剤を含有しない、洗眼用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に包含される実施形態について更に詳細に説明する。
【0010】
本開示に包含される洗眼用組成物は、アラントイン及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有し、第4級アンモニウム塩系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール及びソルビン酸類から選択される防腐剤を含有しない。
【0011】
アラントインは、化学式C4H6N4O3で表される公知の化合物である。該洗眼用組成物中、アラントインの含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該組成物の防腐性を向上させる観点から、好ましくは0.003~0.05w/v%、より好ましくは0.005~0.04w/v%、更に好ましくは0.008~0.03w/v%、特に好ましくは0.015~0.03w/v%が例示される。
【0012】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、点眼、洗眼分野において使用可能である限り制限されない。ポリオキシエチレン(POE)硬化ヒマシ油として、POE(60)硬化ヒマシ油、POE(50)硬化ヒマシ油、POE(40)硬化ヒマシ油、POE(10)硬化ヒマシ油、POE(80)硬化ヒマシ油等が例示される。ここで括弧内の数字は酸化エチレンの平均付加モル数を意味する。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。該組成物中、POE硬化ヒマシ油の含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該組成物の防腐性を向上させる観点から、好ましくは0.003~2w/v%、より好ましくは0.05~1.5w/v%、更に好ましくは0.08~1w/v%、特に好ましくは0.1~1w/v%が例示される。また、POE硬化ヒマシ油の含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該組成物中、アラントイン1質量部あたり、好ましくは0.01~65質量部、より好ましくは0.03~35質量部、更に好ましくは2~20質量部が例示される。
【0013】
該洗眼用組成物は、第4級アンモニウム塩系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール及びソルビン酸類から選択される防腐剤を含有しない。該防腐剤は、点眼、洗眼分野で従来公知の防腐剤である。第4級アンモニウム系防腐剤として、ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物等が例示される。パラオキシ安息香酸エステル類として、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル、パラオキシ安息香酸エステルの塩(ナトリウム塩等のアルカリ金属塩等)等が例示される。ソルビン酸類として、ソルビン酸、ソルビン酸の塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属等)等が例示される。
【0014】
該洗眼用組成物は、更に、クロルフェニラミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有してもよい。クロルフェニラミンやその塩は、抗ヒスタミン剤として知られており、クロルフェニラミンの塩は制限されないが、該塩として、マレイン酸クロルフェニラミン等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。クロルフェニラミン及びその塩を含有する場合、その含有量は制限されないが、該組成物の防腐性を向上させる観点から、該組成物中、クロルフェニラミ
ン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の合計量で、好ましくは0.0002~0.005w/v%、より好ましくは0.0003~0.004w/v%、更に好ましくは0.0005~0.003w/v%、特に好ましくは0.001~0.003w
/v%が例示される。また、クロルフェニラミン及びその塩からなる群より選択される1種の含有量は、本開示の効果が得られる限り制限されないが、該洗眼用組成物中、アラントインの含有量1質量部あたり、好ましくは0.01~50質量部、より好ましくは0.05~35質量部、更に好ましくは0.1~35質量部が例示される。
【0015】
該洗眼用組成物は、点眼や洗眼における使用に許容可能な任意の他の成分を更に含有してもよい。該他の成分として、本開示を制限するものではないが、緩衝剤、安定剤、等張化剤、溶剤、pH調整剤、増粘剤、薬効成分、清涼化剤等が例示される。該他の成分は、本開示の効果を妨げないことを限度として目的等に応じて適宜選択すればよく、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、その配合量も適宜決定すればよい。
【0016】
該他の成分の一例として緩衝剤を挙げると、緩衝剤としてホウ酸、ホウ砂等が例示される。緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、該組成物がホウ酸を含有する場合、ホウ酸の含有量は、該組成物中、好ましくは0.03~2.5w/v%が例示され、より好ましくは0.08~1w/v%が例示される。該組成物がホウ砂を含有する場合も該含有量は適宜決定すればよい。また、該組成物は、例えば、ホウ酸、ホウ砂の両方を含有してもよく、これらの一方のみを含有してもよい。また、該組成物は、ホウ酸やホウ砂以外の緩衝剤を含有してもよく、含有しなくてもよい。
【0017】
該他の成分の一例として安定剤を挙げると、安定剤としてポリソルベート(ポリソルベート80、ポリソルベート65、ポリソルベート60等)、エデト酸ナトリウム(水和物を含む)等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。該組成物が安定剤を含有する場合、安定剤の含有量は、該組成物中、好ましくは0.001~0.5w/v%が例示され、より好ましくは0.01~0.15w/v%が例示される。該組成物が安定剤を含有する場合、例えばポリソルベート及びエデト酸ナトリウムから選択される1種のみを含有してもよく、これらを含有せず洗眼用組成物をしてもよい。なお、前述のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は安定剤としても公知であるが、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、本開示では安定剤の説明には包含されず、従って、安定剤の該含有量にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量は含まれない。
【0018】
該他の成分の一例として薬効成分を挙げると、薬効成分として、アミノ酸類、抗炎症剤(消炎剤)、角膜表層保護剤、ビタミン類等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本開示を制限するものではないが、例えばアミノ酸類として、グルタミン酸及びその塩(グルタミン酸ナトリウム等)、アスパラギン酸及びその塩(アスパラギン酸カリウム等)等のアミノ酸及びその塩;タウリンなどのアミノ酸類似物等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。ここでいうアミノ酸とは、アミノ基とカルボキシ基の両方の官能基を持つ蛋白質の構成ユニットとなりえるアミノ酸を意味する。
【0020】
本開示を制限するものではないが、例えば抗炎症剤として、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、イプシロン-アミノカプロン酸、グリチルリチン酸及びその塩(グリチルリチン酸二カリウム等)等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本開示を制限するものではないが、本開示の洗眼用組成物は好ましくは硫酸
亜鉛及び/または乳酸亜鉛を含有しない。
【0021】
本開示を制限するものではないが、例えば角膜表層保護剤として、コンドロイチン硫酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩等が例示され、塩として好ましくはナトリウム塩等のアルカリ金属塩等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本開示の洗眼用組成物がコンドロイチン硫酸及び/またはその塩を含有する場合、該組成物はヒアルロン酸及びその塩を配合せず調製することもできる。また、本開示を制限するものではないが、コンドロイチン硫酸やその塩の分子量として、好ましくは重量平均分子量が0.5万~4.5万程度、より好ましくは1.5万~3万程度が例示される。後述の実施例で使用した重量平均分子量はゲルろ過クロマトグラフィーにより測定される。
【0022】
本開示の洗眼用組成物が薬効成分を含有する場合、本開示の効果を妨げない限り、薬効成分の含有量は制限されず、該組成物中、薬効成分の含有量は好ましくは0.01~1w/v%、より好ましくは0.025~0.8w/v%、更に好ましくは0.05~0.3w/v%が例示される。なお、前述のアラントイン、クロルフェニラミンやその塩は薬効成分としても公知であるが、これらの成分は本開示では薬効成分の説明には包含されず、従って、薬効成分の該含有量にアラントイン、クロルフェニラミン及びその塩の含有量は含まれない。
【0023】
本開示の洗眼用組成物が清涼化剤を含有する場合、清涼化剤としてメントール、カンフル、ボルネオール等が例示される。清涼化剤においてd体、l体、dl体が存在する場合、その別は問わない。清涼化剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。清涼化剤の含有量は、本開示の効果を妨げない限り制限されず、該組成物中、好ましくは0.0001~0.05w/v%、より好ましくは0.002~0.01w/v%が例示される。
【0024】
本開示の洗眼用組成物は、アラントイン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、必要に応じてクロルフェニラミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種、他の成分を混合することにより製造することができる。また、該組成物は、第4級アンモニウム塩系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール及びソルビン酸類から選択される防腐剤を含有しない。
【0025】
このことから、本開示の洗眼用組成物の一実施態様として、(1)アラントイン、(2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有し、必要に応じて(3)クロルフェニラミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、必要に応じて(4)緩衝剤、安定剤、等張化剤、溶剤、pH調整剤、増粘剤、薬効成分及び清涼化剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、(5)第4級アンモニウム塩系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール及びソルビン酸類から選択される防腐剤を含有しない組成物が例示される。また、該一実施態様として、前記成分(1)、前記成分(2)、ならびに、前記成分(3)及び(4)からなる群より選択される少なくとも1種からなる組成物が例示される。また、後述の実施例に示すように、該一実施態様として、点眼、洗眼分野において一般的に防腐剤として使用されている成分を含有しない組成物が例示される。
【0026】
本開示の洗眼用組成物のpHは、点眼剤や洗眼剤として使用可能な範囲であれば制限されないが、室温(24℃)でpH5~8、該組成物の防腐性を向上させる観点から、好ましくはpH5.5~7、より好ましくはpH5.5~6.5、更に好ましくはpH5.5~6、特に好ましくはpH5.5~5.8、特により好ましくはpH5.5~5.7が例示される。pHは、卓上型pHメーターF-52(株式会社堀場製作所製)で測定される
。
【0027】
本開示の洗眼用組成物の形態は、室温で液状である。また、本開示の洗眼用組成物は、従来公知の方法と同様に眼を洗浄できる限りその使用方法は制限されず、通常、洗眼カップ(アイカップ)を用いた洗眼に使用されるか、点眼による洗眼に使用される。このため、本開示の洗眼用組成物は容器に収容され、該組成物を該容器から洗眼カップに注いで使用されるか、該容器からそのまま点眼される。該組成物の粘度や浸透圧(浸透圧比)はこのようにして使用できる限り制限されない。
【0028】
本開示の洗眼用組成物は、コンタクトレンズを装着した状態で使用してもよく、装着していない状態で使用してもよい。コンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズの別を問わない。
【0029】
本開示の洗眼用組成物は、前述のようにして使用できる限り制限されないが、洗眼カップを用いて使用される場合、通常、後述の実施例に述べるような従来公知の一般的な容器(例えば、容器本体、キャップを含む)に収容される。該容器は、容器本体とキャップとが独立しているタイプ、一体型になっているタイプを問わず、また、中栓(中蓋)があってもよく、中栓には洗眼用組成物を洗眼カップに注ぐための穴が開いていてもよい。該容器の容量も制限されないが、使い勝手が良い等の観点から、容量は好ましくは350~550mL、より好ましくは400~550mL、更に好ましくは450~550mLが例示される。
【0030】
洗眼カップを用いる洗眼は、通常の手順に従えばよく、例えば、洗眼カップに本開示の洗眼用組成物を前記容器から適量、例えば1眼あたり1回に4~6mLを注ぎ、次いで、該カップを片側の眼周辺に押し当てて該カップ内の洗眼用組成物と眼とを接触させ、数回まばたきを行うことにより使用される。該組成物の1日あたりの使用回数も制限されず、例えば、1眼あたり1日1~6回、2~6回、3~6回等のいずれであってもよい。このようにして、本開示の洗眼用組成物によれば眼を洗浄することができる。
【0031】
また、本開示の洗眼用組成物が点眼による洗眼に使用される場合、使い勝手が良い等の観点から、該組成物は、通常、点眼容器に収容して使用される。点眼容器としては、該組成物を収容して点眼できる限り制限されず、例えば、従来公知の点眼剤や点眼型洗眼剤等に使用されている点眼容器(例えば、容器本体、中栓(ノズル)、キャップを含む)が例示される。点眼容器は、容器本体、中栓(ノズル)及びキャップのそれぞれが独立しているタイプ、容器本体、中栓(ノズル)及びキャップの少なくとも2つが一体型となっているタイプ、中栓(ノズル)に穴が設けられているタイプ、中栓(ノズル)に穴が無く、使用時にキャップを巻き締めることによって中栓(ノズル)に穴を開けて使用するタイプ等のいずれであってもよい。
【0032】
点眼容器の容量は制限されないが、使い勝手が良い等の観点から、容量は8~20mLが例示され、好ましくは10~15mL、より好ましくは12~14mLが例示される。容量は、マルチドーズ型、ユニットドーズ型の別を考慮して適宜決定すればよい。
【0033】
点眼による洗眼は、本開示の洗眼用組成物を、1眼あたり1回に3~8滴点眼することにより使用される。この限りにおいて制限されないが、該組成物は、1眼あたり1回に、好ましくは4~8滴、より効率良く洗眼する観点から、より好ましくは4~6滴が点眼される。1滴あたりの滴下量も制限されないが、1滴あたり、30~50μLが例示され、好ましくは35~40μL、より好ましくは35~37μLが例示される。また、該組成物の1日あたりの使用回数も特に制限されず、例えば、1眼あたり1日1~12回、2~8回、3~6回等のいずれであってもよい。このようにして、本開示の洗眼用組成物によ
れば眼を洗浄することができる。
【0034】
このように、本開示の洗眼用組成物においては、第4級アンモニウム塩系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール及びソルビン酸類から選択される防腐剤を配合していないにもかかわらず、アラントイン及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合することにより、洗眼用組成物に防腐作用を付与することができる。また、該組成物が前述の薬効成分等を更に含有している場合は、該薬効成分等に基づく有用作用も提供することができる。
【実施例0035】
以下、例を示して本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されない。
【0036】
試験例1
1.洗眼用組成物の調製及び防腐作用評価
次の表1に示す配合割合に従い各成分を混合し、各組成物を調製した(実施例1~6、比較例1~4及び参考例)。得られた組成物10mLを一般的な洗眼剤用容器(容量15mL、ポリエチレンテレフタレート樹脂製、伸晃化学株式会社製)に注ぎ入れた。次いで、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を滅菌した生理食塩水で懸濁した液(菌液)を各容器に1×107cfu/mLとなるように接種し、30℃、暗所で21日間保存した。保存後、緑膿菌を接種した各組成物0.1mLを容器から取り出し、これを市販のSCDLP寒天培地(SCDLP寒天培地「ダイゴ」、富士フイルム和光純薬株式会社製)にコンラージ棒で塗布し、30℃で48時間培養後、コロニー数を目視でカウントし、カウントした値に100を乗じた値を、保存から21日後の各組成物の菌数とした。接種時の菌数を100%として、21日間保存後の各組成物における菌数の割合(生存率)を算出した。算出した値から次の基準に従って洗眼用組成物の防腐力を評価した。
[評価基準]
◎:生存率が接種量の0.1%以下に減少
○:生存率が接種量の3%以下に減少
△:生存率が接種量の5%以下に減少
×:前記△の基準を満たさない
【0037】
また、調製直後の各組成物のpHを測定した。pHは、室温(24℃)で、卓上型pHメーターF-52(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。
【0038】
2.結果
結果を表1に示す。
【0039】
【0040】
代表的な防腐剤である塩化ベンザルコニウムを添加した参考例は、本試験例におけるポジティブコントロールを意味し、表1に示す通り、その評価結果は◎であり、防腐力に優れていた。なお、参考例において保存後の組成物中の緑膿菌生存率は0.001%であった。一方、塩化ベンザルコニウムを添加せず、代わりにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アラントイン、マレイン酸クロルフェニラミンのいずれかを添加した比較例2~4では、評価結果が×であり、所望の防腐力は得られなかった。
【0041】
これに対して、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とアラントインとを併用した実施例1では評価結果が○であり、所望の防腐力が得られた。実施例1において生存率は1.901%であった。また、実施例1においてアラントインの含有量を増加させた実施例2では評価結果が◎であり、より高い防腐力が得られた。また、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アラントインと共にマレイン酸クロルフェニラミンを併用した実施例3~6でも評価結果は◎であり、高い防腐力が得られた。実施例2~6における保存後の生存率はそれぞれ0.012%、0.006%、0.003%、0.001%、0.001%であった。実施例3の組成物においてpHを下げた実施例4~6では更に防腐性が向上した。また、実施例1の組成物においてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を0.5w/v%に変更した組成物においても同様にして評価したところ、評価結果は◎(生存率0.001%)であり、高い防腐力が得られた。このことから、防腐剤を含有していない洗眼用組成物にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とアラントインとを配合することにより、または、更にマレイン酸クロルフェニラミンを併用することにより、洗眼用組成物に所望の防腐作用を付与ないし高められることが確認された。
【0042】
試験例2
1.洗眼用組成物の調製及び防腐作用評価
次の表2に示す配合割合に従い各成分を混合し、各組成物を調製した(実施例7及び8、比較例5)。表中、コンドロイチン硫酸ナトリウムは、局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム(生化学工業株式会社製、重量平均分子量20000)を使用した。調製直後の各組成物のpHを前述と同様にして測定した。
【0043】
得られた各組成物500mLを、滅菌フィルターに通したのち、滅菌した洗眼剤用容器(アイボンAL d、小林製薬株式会社製)にそれぞれ入れた。このようにして得た組成
物入り容器から洗眼用カップ(アイカップ)(アイボンAL d、小林製薬株式会社製)
に組成物5mLを注ぎ、該アイカップを用いて洗眼を行い、容器内に残存した組成物について一般細菌試験を行った。具体的には、パネラー10名に対し、1回片目5mLずつアイカップに注ぎいれた組成物で両眼を洗眼し、1日3回、1週間使用し、容器内に残った組成物について一般細菌数試験を行った。これを以下にアイカップ式と記載することがある。
【0044】
また、別途、得られた各組成物10mLを、滅菌フィルターに通したのち、滅菌した一般的な点眼型洗眼剤用容器(容量13mL、ポリエチレンテレフタレート樹脂製、マルチドーズ型、伸晃化学株式会社製)にそれぞれ入れた。パネラー10名に対し、1回片眼4滴を両眼に1日3回、5日間点眼により両眼を洗眼し、容器内に残った組成物について一般細菌数試験を行った。これを以下に点眼型と記載することがある。
【0045】
一般細菌数試験は次の手順に従い行った。前述のカップ式において容器内に残った組成物から1mLを回収した。10本分から回収した各組成物1mLを全て混合し10mLの混合液を得た。得られた混合液から1mLを回収し、これを滅菌水で10倍希釈し、全量を標準寒天培地(標準寒天培地(顆粒)「ニッスイ」、日水製薬株式会社製)に塗布し、35℃で48時間培養した。培養後、コロニー数を目視でカウントし、カウントした数に
10を乗じ一般細菌数(cfu/mL)とした。前述の点眼型においても容器内に残った組成物(10本分)を用いて同様にして一般細菌数を測定、算出した。(検出限界値はいずれも10cfu/mL。)
【0046】
2.結果
結果を表2に示す。
【0047】
【0048】
表2に示す通り、アラントイン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、マレイン酸クロルフェニラミンを含有していない比較例5の一般細菌数は、アイカップ式では130cfu/mL、点眼型では170cfu/mLであった。これに対して、アラントイン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びマレイン酸クロルフェニラミンを添加した実施例7及び8では、混入した細菌を不検出(検出限界未満)に抑制できた。また、比較例5に示す通り、アイカップ式と比べて点眼型では細菌数が多く、これは、アイカップ式よりも点眼型においてまつげの接触頻度が高いなど容器内の組成物に細菌が混入しやすいことが考えられた。しかし、このように、まつげや皮膚等に接触しやすく、また、外出先での使用頻度がアイカップ式よりも高い傾向にある点眼型においても細菌数の増加を抑制できた。このことからも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アラントイン、マレイン酸クロルフェニラミンを併用することにより、防腐剤を含有していない洗眼用組成物に所望の防腐作用(防腐力)を付与ないし高められることが確認された。
【0049】
処方例
表3に本発明の洗眼用組成物の処方例を示す。表3に示す処方例も試験例1及び2と同様にして防腐力を評価したところ、処方例1~8のいずれの組成物においても防腐保存性に優れていることが確認された。
【0050】