(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010724
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】変性ブロックポリイソシアネート、塗料組成物、塗膜及び塗膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/80 20060101AFI20250116BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20250116BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20250116BHJP
【FI】
C08G18/80 061
C09D201/00
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112863
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】野口 周人
(72)【発明者】
【氏名】安田 斉弘
(72)【発明者】
【氏名】中島 雄次
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034HD07
4J034HD12
4J034QB12
4J034QB14
4J034RA07
4J038DG051
4J038DG061
4J038DG101
4J038DG191
4J038DG272
4J038DG302
4J038JB02
4J038JB22
4J038JB32
4J038KA06
4J038PA04
4J038PA06
4J038PA07
4J038PA19
4J038PB06
4J038PB07
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】硬化性に優れる新規な塗料組成物及び該塗料組成物に用いられる変性ブロックポリイソシアネートを提供することを目的とする。
【解決手段】下記式(I)で表される環状アミノアルコールで変性されたブロックポリイソシアネートである、変性ブロックポリイソシアネート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される環状アミノアルコールで変性されたブロックポリイソシアネートである、変性ブロックポリイソシアネート。
【化1】
[式(I)中、R
1~R
5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、a及びbは、それぞれ独立して、0又は1であり、a+bは1である。]
【請求項2】
炭素数4~6の脂肪族ポリイソシアネート又はその誘導体に由来する構造を含む、請求項1に記載の変性ブロックポリイソシアネート。
【請求項3】
オキシム系ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基、ピラゾール系ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基及びイミダゾール系ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する、請求項1に記載の変性ブロックポリイソシアネート。
【請求項4】
主剤と、硬化剤とを含む塗料組成物であって、
前記硬化剤が、請求項1~3のいずれか一項に記載の変性ブロックポリイソシアネートを含む、塗料組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の塗料組成物から形成される、塗膜。
【請求項6】
請求項4に記載の塗料組成物を被塗物に塗布し、120~140℃で加熱して硬化させる工程を含む、塗膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、変性ブロックポリイソシアネート、塗料組成物、塗膜及び塗膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料等に使用される硬化剤として、ポリイソシアネートが知られている。例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを組み合わせたポリウレタン樹脂塗料は、非常に優れた耐摩耗性、耐薬品性、耐汚染性を有することが知られている。
【0003】
ポリイソシアネートを硬化剤とする塗料は、一般的には二液型の組成物であり、主剤(例えばポリオール)とポリイソシアネートとを別々に貯蔵し塗装時に混合して使用される。しかしながら、一旦混合した塗料は短時間で硬化してしまうため、可使時間が短く、塗装時の作業性の点に課題があった。また、ポリイソシアネートと水とが容易に反応するため、上記塗料を電着塗料のような水性塗料に使用することは不可能であった。
【0004】
これらの課題への対処法として、ポリイソシアネートをブロック剤と反応させて不活性化する方法が知られている。この方法で得られるブロックポリイソシアネートは、常温では主剤(ポリオール等)と反応しないが、加熱されることでブロック剤が解離してイソシアネート基を再生し、主剤と反応して架橋を形成するものである。このため、上記方法によれば、可使時間が制限されることがなく、予め主剤と硬化剤とを混合して塗料化しておくことが可能となり、ポリイソシアネートの水性塗料への適用も可能となる。
【0005】
ブロックポリイソシアネートを硬化剤とする塗料には、ブロック剤の解離に必要な熱エネルギーを低減するために、第四級アンモニウム塩等の触媒(ブロック剤解離触媒)が用いられることもある(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、塗料の焼付けは150℃以上の高温で行われていたが、近年では、焼付け塗装時におけるコスト削減や二酸化炭素排出量削減、被塗物の熱による劣化の抑制等を目的として、従来よりも低温で(例えば140℃以下の温度で)塗膜を硬化させることも求められている。そのため、塗料組成物が良好な硬化性を有すること、すなわち、従来よりも低温で焼付け処理を行った場合に、硬度及びゲル分率が良好な塗膜を形成できることも重要である。この点、上記第四級アンモニウム塩によれば、ブロックポリイソシアネートを含む塗料組成物の硬化性を向上させ、140℃以下の温度であっても塗膜を硬化させることが可能となる。一方で、第四級アンモニウム塩のようなブロック剤解離触媒を添加することなく優れた硬化性を有する塗料組成物を得る方法はあまり知られていない。
【0008】
本開示のいくつかの側面は、硬化性に優れる新規な塗料組成物及び該塗料組成物に用いられる変性ブロックポリイソシアネートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の発明者らの検討の結果、特定の構造を有する環状アミノアルコールで変性されたブロックポリイソシアネート(変性ブロックポリイソシアネート)を用いることで、ブロック剤解離触媒を添加せずとも優れた硬化性を有する塗料組成物が得られることが明らかになった。本開示は、上記発明者らの知見に基づきなされたものである。
【0010】
本開示は、少なくとも下記[1]~[6]を提供する。
【0011】
[1]
下記式(I)で表される環状アミノアルコールで変性されたブロックポリイソシアネートである、変性ブロックポリイソシアネート。
【化1】
[式(I)中、R
1~R
5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、a及びbは、それぞれ独立して、0又は1であり、a+bは1である。]
【0012】
[2]
炭素数4~6の脂肪族ポリイソシアネート又はその誘導体に由来する構造を含む、[1]に記載の変性ブロックポリイソシアネート。
【0013】
[3]
オキシム系ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基、ピラゾール系ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基及びイミダゾール系ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する、[1]又は[2]に記載の変性ブロックポリイソシアネート。
【0014】
[4]
主剤と、硬化剤とを含む塗料組成物であって、
前記硬化剤が、[1]~[3]のいずれかに記載の変性ブロックポリイソシアネートを含む、塗料組成物。
【0015】
[5]
[4]に記載の塗料組成物から形成される、塗膜。
【0016】
[6]
[4]に記載の塗料組成物を被塗物に塗布し、120~140℃で加熱して硬化させる工程を含む、塗膜の形成方法。
【発明の効果】
【0017】
本開示のいくつかの側面によれば、硬化性に優れる新規な塗料組成物及び該塗料組成物に用いられる変性ブロックポリイソシアネートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の例示的な実施形態について説明する。ただし、本開示は下記実施形態に何ら限定されるものではない。なお、本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、具体的に明示する場合を除き、「~」の前後に記載される数値の単位は同じである。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0019】
<変性ブロックポリイソシアネート>
本開示の一実施形態に係る変性ブロックポリイソシアネートは、下記式(I)で表される環状アミノアルコール(以下、「環状アミノアルコール(I)」ともいう。)で変性されたブロックポリイソシアネートである。
【化2】
【0020】
式(I)中、R1~R5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、a及びbは、それぞれ独立して、0又は1であり、a+bは1である。R1~R5は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
上記変性ブロックポリイソシアネートによれば、硬化性に優れる新規な塗料組成物を得ることができる。すなわち、上記変性ブロックポリイソシアネートによれば、140℃以下の温度(例えば120~140℃)で焼付け処理を行った場合でも硬度及びゲル分率が良好な塗膜を形成できる塗料組成物が得られる。また、上記変性ブロックポリイソシアネートは、それ自体がブロック剤解離触媒として機能し得ることから、ブロック剤解離触媒の非存在化であっても加熱によりブロック剤を解離してイソシアネート基(遊離イソシアネート基)を生成することができる。そのため、上記変性ブロックポリイソシアネートによれば、第四級アンモニウム塩等のブロック剤解離触媒に起因する塗膜の着色を起こし難い塗料組成物を得ることもできる。
【0022】
変性ブロックポリイソシアネートは、例えば、未ブロック化ポリイソシアネートに由来する構造と、ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基(以下、「ブロックイソシアネート基」ともいう。)と、環状アミノアルコール(I)で変性されたイソシアネート基(以下、「変性イソシアネート基」ともいう。)と、を有する。
【0023】
(未ブロック化ポリイソシアネート)
未ブロック化ポリイソシアネートは、上記ブロックイソシアネート基を有しないポリイソシアネートである。未ブロック化ポリイソシアネートは、イソシアネート基(遊離イソシアネート基)を複数有する。未ブロック化ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート及びそれらのポリイソシアネート誘導体が挙げられる。誘導体としては、例えば、イソシアヌレート体、アロファネート体、ビウレット体等が挙げられる。
【0024】
未ブロック化ポリイソシアネートは、硬化塗膜の黄変耐性を向上させる観点では、芳香環を有しないこと、すなわち、非芳香族ポリイソシアネートであることが好ましい。非芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジントリイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート、及び、これらの誘導体などが挙げられる。
【0025】
未ブロック化ポリイソシアネートは、硬化性により優れる塗料組成物が得られやすい観点では、炭素数4~6の脂肪族ポリイソシアネート又はその誘導体を含むことが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート又はその誘導体を含むことがより好ましい。換言すれば、変性ブロックポリイソシアネートは、炭素数4~6の脂肪族ポリイソシアネート又はその誘導体に由来する構造を有することが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート又はその誘導体に由来する構造を有することがより好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体としては、イソシアヌレート体、アロファネート体及びビウレット体からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、イソシアヌレート体がより好ましい。未ブロック化ポリイソシアネートがイソシアヌレート体を含む場合、塗膜硬度をさらに向上させる観点から、未ブロック化ポリイソシアネート全質量を基準とするイソシアヌレート3量体の含有量(イソシアヌレート3量体含有量)が50質量%以上となることが好ましく、未ブロック化ポリイソシアネート中のイソシアヌレート基及びアロファネート基の合計(100モル%)に対するイソシアヌレート基の含有率(イソシアヌレート基含有率)が80モル%超となることが好ましい。上記イソシアヌレート3量体含有量の上限値は80質量%であってよく、上記イソシアヌレート基含有率の上限値は99モル%であってよい。
【0026】
(ブロックイソシアネート基)
ブロックイソシアネート基は、ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基であり、該ブロック剤由来の構造を有する。ブロックイソシアネート基は、ブロック剤とイソシアネート基との反応により形成される基と言い換えることもできる。
【0027】
ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-エチルヘキサノール、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール等のアルコール系ブロック剤、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、2-ヒドロキシピリジン等のフェノール系ブロック剤、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム系ブロック剤、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系ブロック剤、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、4-メチル-2-プロピルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、5-フェニルイミダゾール、2-メチル-4-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、ピラゾール等のピラゾール系ブロック剤、ジフェニルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等のアミン系ブロック剤、トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、3,5-ジメチルー1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール系ブロック剤などが挙げられる。貯蔵安定性の観点では、オキシム系ブロック剤が好ましく、メチルエチルケトオキシムがより好ましい。硬化性の観点では、ピラゾール系ブロック剤が好ましく、3,5-ジメチルピラゾールがより好ましい。塗膜の着色を抑制する観点では、オキシム系ブロック剤及びピラゾール系ブロック剤が好ましい。硬化性により優れる塗料組成物を得る観点では、ピラゾール系ブロック剤及びイミダゾール系ブロック剤が好ましく、3,5-ジメチルピラゾール、2-フェニルイミダゾール及び2-エチル-4-メチルイミダゾールがより好ましい。
【0028】
上記観点から、一実施形態では、変性ブロックポリイソシアネートが、オキシム系ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基、ピラゾール系ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基及びイミダゾール系ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有することが好ましい。
【0029】
(変性イソシアネート基)
変性イソシアネート基は、環状アミノアルコール(I)で変性されたイソシアネート基である。変性イソシアネート基は、環状アミノアルコール(I)とイソシアネート基との反応により形成される基と言い換えることもできる。変性イソシアネート基は、例えば、下記式(Ia)で表される構造を有する。
【化3】
【0030】
式(Ia)中のR1~R5、並びに、a及びbは、式(I)中のR1~R5、並びに、a及びbと同義であり、*は結合手を表す。
【0031】
R1~R5で表される炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基及びt-ブチル基が挙げられる。また、R1~R5で表される炭素数1~4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基及びt-ブトキシ基が挙げられる。
【0032】
硬化性をさらに向上させる観点では、R1が、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、R2~R4が、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であり、R5が水素原子であることが好ましく、R1~R4が、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であり、R5が水素原子であることがより好ましく、R1~R5が全て水素原子であることがさらに好ましい。
【0033】
環状アミノアルコール(I)の好適な具体例としては、下記式1~24で表される化合物が挙げられる。
【化4】
【0034】
変性イソシアネート基の含有量は、変性ブロックポリイソシアネートからブロック剤を解離することで得られる化合物の全質量を基準として、0.1~30質量%であってよく、0.5~20質量%又は1~10質量%であってもよい。
【0035】
変性ブロックポリイソシアネートは、遊離イソシアネート基を有していてもよいが、貯蔵安定性の観点では、遊離イソシアネート基を有しないことが好ましい。例えば、変性ブロックポリイソシアネート中の有効イソシアネート基の全てがブロックイソシアネート基であってよい。ここで、有効イソシアネート基とは、遊離イソシアネート基及びブロックイソシアネート基の両方を意味する。
【0036】
変性ブロックポリイソシアネートの有効イソシアネート基含有率(以下、「有効NCO含有率」という。)は、塗料の硬化性をより高める観点から、4~28質量%であってよく、5~25質量%又は6~22質量%であってよい。ここで、有効NCO含有率とは、変性ブロックポリイソシアネート中に存在する架橋反応に関与しうるイソシアネート基を質量%で表したものである。有効NCO含有率は、変性ブロックポリイソシアネートからブロック剤を解離することで得られる化合物中の遊離イソシアネート基の、変性ブロックポリイソシアネート全質量に対する含有率(遊離NCO含有率)と言い換えることができる。該遊離NCO含有率は、測定試料(変性ブロックポリイソシアネートからブロック剤を解離することで得られる化合物)中のイソシアネート基を過剰の2級アミンと反応させた後、未反応の2級アミンを塩酸で逆滴定することで求めることができる。
【0037】
変性ブロックポリイソシアネートの重量平均分子量は、例えば、600~4000であってよい。変性ブロックポリイソシアネートの重量平均分子量がこのような範囲内であると、硬化性が更に向上する傾向がある。同様の観点から、変性ブロックポリイソシアネートの重量平均分子量は、700以上又は800以上であってもよく、3500以下又は3000以下であってもよい。なお、本明細書中の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算値である。
【0038】
変性ブロックポリイソシアネートは、例えば、未ブロック化ポリイソシアネート等の遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネートと、ブロック剤と、環状アミノアルコール(I)と、を反応させることにより得ることができる。すなわち、変性ブロックポリイソシアネートは、遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネートとブロック剤と環状アミノアルコール(I)との反応生成物であり得る。遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネート、ブロック剤及び環状アミノアルコール(I)は、それぞれ一種を単独で用いてよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、硬化塗膜の黄変耐性を向上させる観点では、遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネートとして芳香族ポリイソシアネートを用いないことが好ましい。
【0039】
遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネートと、ブロック剤と、環状アミノアルコール(I)と、を反応させる順序は、特に限定されないが、遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネートと、環状アミノアルコール(I)と、を反応させてイソシアネート基末端前駆体を得た後、得られたイソシアネート基末端前駆体とブロック剤とを反応させることが好ましい。
【0040】
遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネートと環状アミノアルコール(I)との反応は、例えば、溶媒の存在下で行ってよい。溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒などを用いることができる。反応温度は、20~200℃であってよい。反応時間は、例えば、1~10時間であってよい。上記反応は、無触媒でも反応が進行するが、公知のウレタン化反応触媒を使用し、反応を促進させることもできる。
【0041】
イソシアネート基末端前駆体とブロック剤との反応は、通常のブロック化反応の反応条件に従って行うことができる。イソシアネート基末端前駆体とブロック剤との反応は、室温で行ってよく、加熱しながら行ってもよい。加熱の有無によらず、反応液の温度は、例えば、20~200℃であってよい。
【0042】
ポリイソシアネート、ブロック剤及び環状アミノアルコール(I)の使用量は、変性イソシアネート基の含有量が上記範囲となるように調整してよい。例えば、上記方法では、ブロック化前のポリイソシアネート中の遊離イソシアネート基の総モル数に対し、0.1~60mol%の量の環状アミノアルコール(I)を使用してよい。環状アミノアルコールによる変性の前にポリイソシアネートとブロック剤とを反応させる場合には、ブロック化前のポリイソシアネート中の遊離イソシアネート基の総モル数に対し、40~99mol%の量のブロック剤を使用し、得られたブロックポリイソシアネート中の遊離イソシアネート基の総モル数に対し、0.1~60mol%の量の環状アミノアルコール(I)を使用してよい。
【0043】
変性ブロックポリイソシアネートは、遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネートとブロック剤と環状アミノアルコール(I)との反応生成物から誘導される化合物であってもよい。変性ブロックポリイソシアネートは、例えば、遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネートとブロック剤と環状アミノアルコール(I)との反応生成物と、該反応生成物中の遊離イソシアネート基と反応し得る化合物(例えば活性水素基含有化合物等)とを反応させることにより得られる化合物であってもよい。
【0044】
以上説明した変性ブロックポリイソシアネートは、塗料組成物の硬化剤として好適に用いられる。すなわち、本開示の他の一実施形態は、上記変性ブロックポリイソシアネートを含む、塗料用の硬化剤である。該塗料用の硬化剤は、ブロック剤解離触媒を含んでいてもよいが、塗膜の着色を抑制する観点では、第四級アンモニウム塩を含まないことが好ましい。
【0045】
<塗料組成物>
本開示の他の一実施形態に係る塗料組成物は、主剤と、硬化剤とを含み、該硬化剤が上記実施形態の変性ブロックポリイソシアネートを含む。
【0046】
上記塗料組成物は上記実施形態の変性ブロックポリイソシアネートを含むことから、硬化性に優れる。そのため、上記塗料組成物によれば、従来よりも低温で(例えば140℃以下の温度で)焼付け処理を行った場合でも硬度及びゲル分率が良好な塗膜を形成できる。また、上記塗料組成物によれば、第四級アンモニウム塩の配合量を調整すること等によって、着色が抑制された塗膜を容易に形成することができる。
【0047】
(主剤)
主剤は、例えば、活性水素基含有化合物を含む。活性水素基としては、ヒドロキシ基、アミノ基等が挙げられる。活性水素基含有化合物の平均官能基数(活性水素基の平均数)は、2以上であり、好ましくは2~50である。このような平均官能基数を有する活性水素含有化合物としては、例えば、ポリオール、ポリアミン、アミノアルコール等が挙げられる。中でも、主剤が活性水素基含有化合物としてポリオールを含む場合、より優れた硬化性が得られやすく、また、より着色の少ない塗膜が得られやすい。
【0048】
活性水素基含有化合物の数平均分子量は、例えば500~20000であり、500~10000であることが好ましい。このような数平均分子量を有する活性水素基含有化合物としては、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸で変性したアルキド樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂等が挙げられる(ただし、いずれも活性水素基を有する樹脂である。)。さらには、光沢、肉持感、硬度、耐久性、柔軟性、乾燥性等の塗膜性能やコストを考慮すると、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸で変性したアルキド樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
【0049】
活性水素基含有化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(硬化剤)
硬化剤は、上記実施形態の変性ブロックポリイソシアネートを含む。該変性ブロックポリイソシアネートは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、異なる種類の未ブロック化ポリイソシアネートから誘導される二種以上の変性ブロックポリイソシアネートを組み合わせて用いてもよい。硬化剤は、上記実施形態の変性ブロックポリイソシアネート以外のイソシアネート化合物(イソシアネート基を有する化合物)をさらに含んでいてもよい。該イソシアネート化合物の含有量は、硬化剤中のイソシアネート化合物の全質量を基準として、0~40質量%であってよく、0~20質量%又は0~10質量%であってもよい。
【0051】
塗料組成物における主剤と硬化剤との配合比率は、主剤中の活性水素基の総量に対する、硬化剤中の有効イソシアネート基の総量の比を基準として調整されてよい。主剤中の活性水素基の総量に対する、硬化剤中の有効イソシアネート基の総量の比は、モル比で、1/9~9/1であることが好ましく、2/8~8/2であることがより好ましい。上記モル比が上記範囲内であると、より良好な硬化性が得られる。
【0052】
塗料組成物は、その他の成分として、顔料、分散安定剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性向上剤、無機及び有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、触媒等の添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの成分は、主剤に含有されても硬化剤に含有されてもよい。
【0053】
塗料組成物は、その他の成分として溶媒を含有していてもよい。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1、4-ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。溶媒の含有量は、塗料組成物の全質量を基準として、0~95質量%であってよく、5~90質量%又は10~80質量%であってもよい。
【0054】
塗料組成物は、未ブロック化ポリイソシアネート(例えば、未反応物として残留したポリイソシアネート)を含んでいてもよく、ブロック剤(例えば、未反応物として残留したブロック剤)を含んでいてもよい。塗料組成物に含まれる未ブロック化ポリイソシアネートの含有量は、塗料組成物の固形分全量を基準として、5質量%以下であってよく、0質量%であってもよい。塗料組成物に含まれるブロック剤の含有量は、塗料組成物の固形分全量を基準として、5質量%以下であってよく、0質量%であってもよい。
【0055】
塗料組成物は、構成成分の全てが一液中に含まれる一液型の組成物であってよく、構成成分が複数の液中に分かれて存在する多液型の組成物であってもよい。多液型の塗料組成物は、主剤を含む第一液と、硬化剤を含む第二液と、を備えてよい。
【0056】
塗料組成物は、自動車の上中塗り塗料、耐チッピング塗料、電着塗料、自動車部品用塗料、自動車補修用塗料、家電・事務機器等の金属製品等のプレコートメタル・防錆鋼板、建築資材用塗料、プラスチック用塗料、接着剤、接着性付与剤、シーリング剤等として使用することができる。
【0057】
<塗膜及び塗膜の形成方法>
本開示の他の一実施形態は、上記実施形態の塗料組成物から形成される塗膜である。また、本開示の他の一実施形態は、上記実施形態の塗料組成物を被塗物に塗布し、塗料組成物からなる塗膜(未硬化の塗膜)を硬化させる工程を含む、塗膜の形成方法である。
【0058】
塗膜は、上記実施形態の塗料組成物からなる未硬化の塗膜であってよく、該未硬化の塗膜を硬化させることにより形成される塗膜(硬化塗膜)であってもよい。塗膜の厚さは、例えば、5~40μmである。塗膜は、厚さ20μm未満の薄膜であってもよい。
【0059】
塗料組成物の塗布は、例えば、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、静電塗装、ベル塗装、電着塗装等の公知の手法で行ってよい。塗料組成物の塗布量、塗膜の厚み等は、被塗装面の材質等に応じて適宜なものとすればよい。
【0060】
塗料組成物からなる塗膜(未硬化の塗膜)の硬化は、該塗膜を加熱することにより行ってよい。加熱温度(焼付け温度)は、例えば、200℃以下であってよく、加熱時間(焼付け時間)は、例えば、10~180分であってよい。従来、塗料組成物の焼付けは150℃以上の高温で行われていたが、本実施形態の塗料組成物によれば、140℃以下(例えば、120~140℃)で焼付けを行った場合でも、良好な硬化塗膜が得られる。
【0061】
被塗布物としては、例えば、ステンレス、リン酸処理鋼、亜鉛鋼、鉄、銅、アルミニウム、真鍮、ガラス、アクリルポリオール、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート-ABS樹脂、6-ナイロン樹脂、6,6-ナイロン樹脂、MXD6ナイロン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリアセタール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、NBR樹脂、クロロプレン樹脂、SBR樹脂、SEBS樹脂等の素材で成形された成形体及び該成形体の表面処理物などが挙げられる。表面処理物は、コロナ放電処理等の表面処理を施されたポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン樹脂の成形体(表面処理成形体)であってもよい。
【実施例0062】
以下、本開示の内容を実施例、比較例及び参考例を用いてより詳細に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
<合成例1:ポリイソシアネートA-1の合成>
撹拌機、温度計、加熱装置、窒素シール管、冷却管を組んだ4ツ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIという)を995gと、1,3-ブタンジオール(東京化成工業社製)を5.0g、フェノール(東京化成工業社製)0.3g仕込み、窒素気流下、80℃でウレタン化反応を2時間行った。その後、イソシアヌレート化触媒である2-エチルヘキサン酸カリウム(東京化成工業社製)を0.04g添加し、70℃でイソシアヌレート化反応を2時間行った。NCO含有量が40.0質量%に達した後、JP-508(城北化学工業社製)を0.15g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却した。この反応液を温度130℃、圧力0.04kPaで薄膜蒸留することで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネートA-1を得た。ポリイソシアネートA-1のNCO含量は21.8質量%であり、25℃における粘度は約2,500mPa・sであった。
【0064】
(1H-NMR:イソシアヌレート基含有率の測定)
ポリイソシアネートA-1の1H-NMR測定を行い、イソシアヌレート基含有率(イソシアヌレート基とアロファネート基の合計(100モル%)に対するイソシアヌレート基の含有率)を求めた。具体的には、3.7ppm付近のイソシアヌレート基の窒素原子に隣接したメチレン基の水素原子のシグナルと、8.5ppm付近のアロファネート基の窒素原子に接合した水素原子のシグナルの面積からイソシアヌレート基含有率を算出した。イソシアヌレート基含有率は89モル%であった。なお、1H-NMR測定は以下の測定条件で行った。
[測定条件]
(1)測定装置:ECX400M(日本電子社製、1H-NMR)
(2)測定温度:23℃
(3)試料濃度:0.1g/1ml
(4)積算回数:16
(5)緩和時間:5秒
(6)溶剤:重水素ジメチルスルホキシド
(7)化学シフト基準:重水素ジメチルスルホキシド中のメチル基の水素原子シグナル(2.5ppm)
【0065】
<実施例1>
(変性ブロックポリイソシアネート組成物の調製)
撹拌機、温度計、加熱装置、窒素シール管、冷却管を組んだ4ツ口フラスコに、ポリイソシアネートA-1を510g、RZETA(東ソー社製、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール、「RZETA」は登録商標(以下同じ))を27g仕込み、フラスコ内を窒素置換して、撹拌しながら反応温度80℃に加温し、同温度で2時間反応させた。得られた反応液に酢酸ブチル(キシダ化学社製)を250g仕込んで30分間撹拌した後、メチルエチルケトオキシム(宇部興産社製、表中の「MEKO」)213gを、温度が80℃を超えないよう3回に分割して仕込んだ。その後、70℃で2時間反応させ、赤外吸収スペクトル(IR測定)にて、NCO基のピーク(2270cm-1付近)が消失したところで室温まで冷却することで、変性ブロックポリイソシアネートを含む組成物(以下、「変性ブロックポリイソシアネート組成物(1)」という。)を得た。組成物の固形分濃度(変性ブロックポリイソシアネートの含有量)は75質量%であり、変性ブロックポリイソシアネートの重量平均分子量は1537g/molであった。なお、本実施例における重量平均分子量は標準ポリスチレン換算値に対する重量平均分子量であり、下記条件でのGPC測定により求めた。
[測定条件]
(1)測定装置:HLC-8420(東ソー社製)
(2)カラム:TSKgel(東ソー社製)
G3000H-XL、G2000H-XL、G1000H-XL、各1本を直列に連結
(3)キャリアー:テトラヒドロフラン
(4)検出方法:示差屈折率検出器
【0066】
(塗料組成物の調製)
アクリディックA-801(商品名、DIC社製、アクリルポリオール、固形分濃度:50質量%、水酸基価:50mgKOH/g)52gと、変性ブロックポリイソシアネート組成物(1)19gと、酢酸ブチル29gとを混合することにより、実施例1の塗料組成物を調製した。
【0067】
(硬化性評価)
[マルテンス硬度測定]
上記で調製した塗料組成物を、乾燥前の厚さが100μmになるようにカラー鋼板(白)に塗布した。得られた塗膜を室温で60分静置後、130℃の恒温槽にて20分間加熱することで焼付けた。焼付け後の塗膜(硬化塗膜)の押込み強度を、ISO 14577に準じて下記の条件で測定した。結果を表1に示す。
〔条件〕
・試験装置:フィッシャースコープHM2000(フィッシャー・インストルメンツ社製)
・圧子:ビッカースダイヤモンド
・試験荷重:5mN
・試験温度:25℃
【0068】
[ゲル分率測定]
上記で調製した塗料組成物を、乾燥前の厚さが200μmになるように離型紙に塗布した。得られた塗膜を室温で60分静置後、130℃の恒温槽にて20分間加熱することで焼付けた。焼付け後の塗膜(硬化塗膜)を室温下で24時間メチルエチルケトンに浸漬し、ゲル分率を求めた。ゲル分率は、下記の式より算出した。結果を表1に示す。
ゲル分率(単位:質量%)=浸漬後の塗膜の質量(未溶解部の質量)/浸漬前の塗膜の質量×100
【0069】
(塗膜の着色度評価)
上記で調製した塗料組成物を、乾燥前の厚さが100μmになるようにカラー鋼板(白)に塗布した。得られた塗膜を室温で60分静置後、160℃の恒温槽にて60分間加熱することで焼付けた。焼付け後の塗膜(硬化塗膜)のCIE Lab基準のb*値をBYK-GARDNER社製色彩測色計(製品名:SPECTRO2GUIDE)で測定し、該塗膜の着色度を評価した。結果を表1に示す。
【0070】
<実施例2>
(変性ブロックポリイソシアネート組成物の調製)
撹拌機、温度計、加熱装置、窒素シール管、冷却管を組んだ4ツ口フラスコに、ポリイソシアネートA-1を494g、RZETAを26g仕込み、フラスコ内を窒素置換して、撹拌しながら反応温度80℃に加温し、同温度で2時間反応させた。得られた反応液に酢酸ブチルを250g仕込んで30分間撹拌した後、3,5-ジメチルピラゾール(東京化成工業社製、表中の「DMP」)230gを、温度が80℃を超えないよう3回に分割して仕込んだ。その後、70℃で2時間反応させ、赤外吸収スペクトル(IR測定)にて、NCO基のピーク(2270cm-1付近)が消失したところで室温まで冷却することで、変性ブロックポリイソシアネートを含む組成物(以下、「変性ブロックポリイソシアネート組成物(2)」という。)を得た。組成物の固形分濃度(変性ブロックポリイソシアネートの含有量)は75質量%であり、変性ブロックポリイソシアネートの重量平均分子量は1622g/molであった。
【0071】
(塗料組成物の調製)
アクリディックA-801 51gと、変性ブロックポリイソシアネート組成物(2)19gと、酢酸ブチル30gとを混合することにより、実施例2の塗料組成物を調製した。
【0072】
(評価)
上記で調製した塗料組成物の硬化性及び該塗料組成物からなる塗膜の着色度を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0073】
<実施例3>
(変性ブロックポリイソシアネート組成物の調製)
撹拌機、温度計、加熱装置、窒素シール管、冷却管を組んだ4ツ口フラスコに、ポリイソシアネートA-1を429g、RZETAを23g仕込み、フラスコ内を窒素置換して、撹拌しながら反応温度80℃に加温し、同温度で2時間反応させた。得られた反応液に酢酸ブチルを250g仕込んで30分間撹拌した後、2-フェニルイミダゾール(東京化成工業社製、表中の「2-PI」)300gを、温度が80℃を超えないよう3回に分割して仕込んだ。その後、70℃で2時間反応させ、赤外吸収スペクトル(IR測定)にて、NCO基のピーク(2270cm-1付近)が消失したところで室温まで冷却することで、変性ブロックポリイソシアネートを含む組成物(以下、「変性ブロックポリイソシアネート組成物(3)」という。)を得た。組成物の固形分濃度(変性ブロックポリイソシアネートの含有量)は75質量%であり、変性ブロックポリイソシアネートの重量平均分子量は2075g/molであった。
【0074】
(塗料組成物の調製)
アクリディックA-801 49gと、変性ブロックポリイソシアネート組成物(3)21gと、酢酸ブチル30gとを混合することにより、実施例3の塗料組成物を調製した。
【0075】
(評価)
上記で調製した塗料組成物の硬化性及び該塗料組成物からなる塗膜の着色度を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0076】
<実施例4>
(変性ブロックポリイソシアネート組成物の調製)
撹拌機、温度計、加熱装置、窒素シール管、冷却管を組んだ4ツ口フラスコに、ポリイソシアネートA-1を473g、RZETAを25g仕込み、フラスコ内を窒素置換して、撹拌しながら反応温度80℃に加温し、同温度で2時間反応させた。得られた反応液に酢酸ブチルを250g仕込んで30分間撹拌した後、2-エチル4-メチルイミダゾール(東京化成工業社製、表中の「2E4MZ」)252gを、温度が80℃を超えないよう3回に分割して仕込んだ。その後、70℃で2時間反応させ、赤外吸収スペクトル(IR測定)にて、NCO基のピーク(2270cm-1付近)が消失したところで室温まで冷却することで、変性ブロックポリイソシアネートを含む組成物(以下、「変性ブロックポリイソシアネート組成物(4)」という。)を得た。組成物の固形分濃度(変性ブロックポリイソシアネートの含有量)は75質量%であり、変性ブロックポリイソシアネートの重量平均分子量は1754g/molであった。
【0077】
(塗料組成物の調製)
アクリディックA-801 50gと、変性ブロックポリイソシアネート組成物(4)20gと、酢酸ブチル30gとを混合することにより、実施例4の塗料組成物を調製した。
【0078】
(評価)
上記で調製した塗料組成物の硬化性及び該塗料組成物からなる塗膜の着色度を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0079】
<比較例1>
RZETAを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、非変性ブロックポリイソシアネートを含む組成物(以下、「非変性ブロックポリイソシアネート組成物(1)という。)を得た。組成物の固形分濃度(非変性ブロックポリイソシアネートの含有量)は75質量%であり、非変性ブロックポリイソシアネートの重量平均分子量は1401g/molであった。次いで、変性ブロックポリイソシアネート組成物(1)に代えて非変性ブロックポリイソシアネート(1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塗料組成物を調製した。次いで、得られた塗料組成物の硬化性及び該塗料組成物からなる塗膜の着色度を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0080】
<比較例2>
RZETAに代えてカオーライザーNo.25(花王社製、6-(ジメチルアミノ)-1-ヘキサノール、「カオーライザー」は登録商標)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、変性ブロックポリイソシアネートを含む組成物(以下、「変性ブロックポリイソシアネート組成物(5)」という。)を得た。組成物の固形分濃度(変性ブロックポリイソシアネートの含有量)は75質量%であり、変性ブロックポリイソシアネートの重量平均分子量は1540g/molであった。次いで、変性ブロックポリイソシアネート組成物(1)に代えて変性ブロックポリイソシアネート組成物(5)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塗料組成物を調製した。次いで、得られた塗料組成物の硬化性及び該塗料組成物からなる塗膜の着色度を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0081】
<比較例3>
変性ブロックポリイソシアネート組成物(1)に代えて比較例1で作製した非変性ブロックポリイソシアネート組成物(1)を用いたこと、及び、ポリイソシアネートA-1 100gに対して5gとなるように、ブロック剤解離触媒としてRZETAを添加したこと以外は、実施例1と同様にして塗料組成物を調製した。次いで、得られた塗料組成物の硬化性及び該塗料組成物からなる塗膜の着色度を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0082】
<参考例1>
変性ブロックポリイソシアネート組成物(1)に代えて比較例1で作製した非変性ブロックポリイソシアネート組成物(1)を用いたこと、及び、ポリイソシアネートA-1 100gに対して5gとなるように、ブロック剤解離触媒としてトリメチルオクチルアンモニウムメチル炭酸塩(東ソー社製)を添加したこと以外は、実施例1と同様にして塗料組成物を調製した。次いで、得られた塗料組成物の硬化性及び該塗料組成物からなる塗膜の着色度を実施例1と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0083】
【0084】
【0085】