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特開2025-10729基板保持装置、基板処理装置、基板処理方法、および記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010729
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】基板保持装置、基板処理装置、基板処理方法、および記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/30 20120101AFI20250116BHJP
   B24B 37/32 20120101ALI20250116BHJP
   B24B 37/12 20120101ALI20250116BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20250116BHJP
   B24B 37/005 20120101ALI20250116BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
B24B37/30 E
B24B37/32 Z
B24B37/12 D
B24B37/10
B24B37/005 A
H01L21/304 621D
H01L21/304 622K
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112875
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】並木 計介
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AA14
3C158AB04
3C158AC02
3C158BA01
3C158BC01
3C158CB01
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
5F057AA02
5F057BA11
5F057DA03
5F057FA01
5F057FA19
5F057FA20
5F057GA11
5F057GB02
5F057GB03
5F057GB13
(57)【要約】
【課題】基板の膜厚のばらつきを解消することができる基板保持装置が提供される。
【解決手段】基板保持装置10は、リテーナリング70に対してキャリア71をオフセットさせるオフセット機構80を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を押圧するための少なくとも1つの圧力室を形成する弾性膜と、
前記弾性膜に連結されたキャリアと、
前記キャリアを取り囲むリテーナリングと、
前記リテーナリングに対して前記キャリアをオフセットさせるオフセット機構と、を備える、基板保持装置。
【請求項2】
前記基板保持装置は、前記リテーナリングを傾動させる傾動構造体を備えている、請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記傾動構造体は、前記キャリアの収容凹部に配置され、かつ前記リテーナリングの軸部に装着された球面軸受を備えている、請求項2に記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記傾動構造体は、前記リテーナリングおよびヘッドシャフトを連結するボールジョイントを備えている、請求項2に記載の基板保持装置。
【請求項5】
前記オフセット機構は、前記キャリアに支持された複数の押付アクチュエータを備えており、
前記複数の押付アクチュエータのそれぞれは、押付力を前記キャリアに作用させる、請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項6】
前記オフセット機構は、前記キャリアに押付力を付与する、前記リテーナリングに支持された複数の押付アクチュエータを備えている、請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項7】
前記基板保持装置は、前記リテーナリングに作用する回転トルクを前記キャリアに伝達する回転トルク伝達機構を備えている、請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項8】
請求項1に記載の基板保持装置と、
前記基板保持装置に保持された基板を押し付ける研磨面を有する研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
前記基板保持装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記基板の研磨中に測定された前記基板の膜厚分布に基づいて、前記キャリアの偏心方向および偏心量を決定し、
決定された偏心方向および偏心量に基づいて、前記オフセット機構を動作させて、前記キャリアをオフセットさせる、基板処理装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記基板の膜厚分布の測定時における、前記基板の、前記基板保持装置に対する相対角度が変化しているか否かを判断し、
前記相対角度が変化している場合、前記相対角度の変化量に基づいて、前記相対角度を補正して、前記キャリアの偏心方向および偏心量を決定する、請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記制御装置は、
前記基板の研磨開始後、前記基板の円周方向における現在の膜厚分布が所定の第1目標膜厚分布の範囲内か否かを判断し、
前記現在の膜厚分布が前記第1目標膜厚分布の範囲内である場合、前記オフセット機構を動作させて、前記キャリアを初期位置に戻し、
前記現在の膜厚分布が前記第1目標膜厚分布の範囲内でない場合、前記キャリアの偏心方向および偏心量が前記基板の膜厚分布に対応しているか確認する、請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記制御装置は、
前記基板の研磨開始後、前記基板の半径方向における現在の膜厚分布が所定の第2目標膜厚分布の範囲内か否かを判断し、
前記現在の膜厚分布が前記第2目標膜厚分布の範囲内である場合、前記基板の円周方向における現在の膜厚分布が所定の第1目標膜厚分布の範囲内か否かを判断し、
前記現在の膜厚分布が前記第2目標膜厚分布の範囲内でない場合、圧力調整装置を動作させて、前記圧力室に供給する流体の圧力を変更する、請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項12】
基板保持装置に保持された基板を研磨パッドの研磨面に押し付けて、前記基板を研磨し、
前記基板の研磨中に測定された前記基板の膜厚分布に基づいて、前記基板を押圧するための少なくとも1つの圧力室を形成する弾性膜に連結されたキャリアの偏心方向および偏心量を決定し、
決定された偏心方向および偏心量に基づいて、前記キャリアをオフセットさせるオフセット機構を動作させて、前記キャリアをオフセットさせる、基板処理方法。
【請求項13】
前記基板の膜厚分布の測定時における、前記基板の、前記基板保持装置に対する相対角度が変化しているか否かを判断し、
前記相対角度が変化している場合、前記相対角度の変化量に基づいて、前記相対角度を補正して、前記キャリアの偏心方向および偏心量を決定する、請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記基板の研磨開始後、前記基板の円周方向における現在の膜厚分布が所定の第1目標膜厚分布の範囲内か否かを判断し、
前記現在の膜厚分布が前記第1目標膜厚分布の範囲内である場合、前記オフセット機構を動作させて、前記キャリアを初期位置に戻し、
前記現在の膜厚分布が前記第1目標膜厚分布の範囲内でない場合、前記キャリアの偏心方向および偏心量が前記基板の膜厚分布に対応しているか確認する、請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記基板の研磨開始後、前記基板の半径方向における現在の膜厚分布が所定の第2目標膜厚分布の範囲内か否かを判断し、
前記現在の膜厚分布が前記第2目標膜厚分布の範囲内である場合、前記基板の円周方向における現在の膜厚分布が所定の第1目標膜厚分布の範囲内か否かを判断し、
前記現在の膜厚分布が前記第2目標膜厚分布の範囲内でない場合、圧力調整装置を動作させて、前記圧力室に供給する流体の圧力を変更する、請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項16】
基板を研磨パッドの研磨面に押し付けて、前記基板を研磨する動作を基板保持装置に実行させるステップと、
前記基板の研磨中に測定された前記基板の膜厚分布に基づいて、前記基板を押圧するための少なくとも1つの圧力室を形成する弾性膜に連結されたキャリアの偏心方向および偏心量を決定するステップと、
決定された偏心方向および偏心量に基づいて、前記キャリアをオフセットさせる動作をオフセット機構に実行させるステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項17】
前記基板の膜厚分布の測定時における、前記基板の、前記基板保持装置に対する相対角度が変化しているか否かを判断するステップと、
前記相対角度が変化している場合、前記相対角度の変化量に基づいて、前記相対角度を補正して、前記キャリアの偏心方向および偏心量を決定するステップと、をコンピュータに実行させる、請求項16に記載の記録媒体。
【請求項18】
前記基板の研磨開始後、前記基板の円周方向における現在の膜厚分布が所定の第1目標膜厚分布の範囲内か否かを判断するステップと、
前記現在の膜厚分布が前記第1目標膜厚分布の範囲内である場合、前記キャリアを初期位置に戻す動作を前記オフセット機構に実行させるステップと、
前記現在の膜厚分布が前記第1目標膜厚分布の範囲内でない場合、前記キャリアの偏心方向および偏心量が前記基板の膜厚分布に対応しているか確認するステップと、をコンピュータに実行させる、請求項16に記載の記録媒体。
【請求項19】
前記基板の研磨開始後、前記基板の半径方向における現在の膜厚分布が所定の第2目標膜厚分布の範囲内か否かを判断するステップと、
前記現在の膜厚分布が前記第2目標膜厚分布の範囲内である場合、前記基板の円周方向における現在の膜厚分布が所定の第1目標膜厚分布の範囲内か否かを判断するステップと、
前記現在の膜厚分布が前記第2目標膜厚分布の範囲内でない場合、前記圧力室に供給する流体の圧力を変更する動作を圧力調整装置に実行させるステップと、をコンピュータに実行させる、請求項16に記載の記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板保持装置、基板処理装置、基板処理方法、および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造では、基板の一例であるウェーハ上に様々な種類の膜が形成される。成膜工程の後には、膜の不要な部分や表面凹凸を除去するために、ウェーハが研磨される。化学機械研磨(CMP)は、ウェーハ研磨の代表的な技術である。
【0003】
CMPは、研磨面上にスラリーを供給しながら、ウェーハを研磨面に摺接させることにより行われる。ウェーハに形成された膜は、スラリーに含まれる砥粒による機械的作用と、スラリーの化学成分による化学的作用との複合効果により研磨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6585445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウェーハに膜を形成する工程は、めっき、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)などの種々の成膜技術を用いて行われる。これらの成膜技術では、ウェーハの全面に亘って膜が均一に形成されないことがある。例えば、ウェーハの円周方向に沿って膜厚のばらつきがあることがある。
【0006】
しかしながら、従来のCMP技術では、このようなウェーハの膜厚のばらつき(例えば、円周方向に沿った膜厚のばらつき)を解消することは困難である。したがって、ウェーハの膜が研磨によって均一に研磨されると、ウェーハに膜厚のばらつきが残ってしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、基板の膜厚のばらつきを解消することができる基板保持装置、基板処理装置、基板処理方法、および記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、基板を押圧するための少なくとも1つの圧力室を形成する弾性膜と、前記弾性膜に連結されたキャリアと、前記キャリアを取り囲むリテーナリングと、前記リテーナリングに対して前記キャリアをオフセットさせるオフセット機構と、を備える、基板保持装置が提供される。
【0009】
一態様では、前記基板保持装置は、前記リテーナリングを傾動させる傾動構造体を備えている。
一態様では、前記傾動構造体は、前記キャリアの収容凹部に配置され、かつ前記リテーナリングの軸部に装着された球面軸受を備えている。
一態様では、前記傾動構造体は、前記リテーナリングおよびヘッドシャフトを連結するボールジョイントを備えている。
【0010】
一態様では、前記オフセット機構は、前記キャリアに支持された複数の押付アクチュエータを備えており、前記複数の押付アクチュエータのそれぞれは、押付力を前記キャリアに作用させる。
一態様では、前記オフセット機構は、前記キャリアに押付力を付与する、前記リテーナリングに支持された複数の押付アクチュエータを備えている。
一態様では、前記基板保持装置は、前記リテーナリングに作用する回転トルクを前記キャリアに伝達する回転トルク伝達機構を備えている。
【0011】
一態様では、上記基板保持装置と、前記基板保持装置に保持された基板を押し付ける研磨面を有する研磨パッドを支持する研磨テーブルと、前記基板保持装置の動作を制御する制御装置と、を備える基板処理装置が提供される。前記制御装置は、前記基板の研磨中に測定された前記基板の膜厚分布に基づいて、前記キャリアの偏心方向および偏心量を決定し、決定された偏心方向および偏心量に基づいて、前記オフセット機構を動作させて、前記キャリアをオフセットさせる。
【0012】
一態様では、前記制御装置は、前記基板の膜厚分布の測定時における、前記基板の、前記基板保持装置に対する相対角度が変化しているか否かを判断し、前記相対角度が変化している場合、前記相対角度の変化量に基づいて、前記相対角度を補正して、前記キャリアの偏心方向および偏心量を決定する。
一態様では、前記制御装置は、前記基板の研磨開始後、前記基板の円周方向における現在の膜厚分布が所定の第1目標膜厚分布の範囲内か否かを判断し、前記現在の膜厚分布が前記第1目標膜厚分布の範囲内である場合、前記オフセット機構を動作させて、前記キャリアを初期位置に戻し、前記現在の膜厚分布が前記第1目標膜厚分布の範囲内でない場合、前記キャリアの偏心方向および偏心量が前記基板の膜厚分布に対応しているか確認する。
一態様では、前記制御装置は、前記基板の研磨開始後、前記基板の半径方向における現在の膜厚分布が所定の第2目標膜厚分布の範囲内か否かを判断し、前記現在の膜厚分布が前記第2目標膜厚分布の範囲内である場合、前記基板の円周方向における現在の膜厚分布が所定の第1目標膜厚分布の範囲内か否かを判断し、前記現在の膜厚分布が前記第2目標膜厚分布の範囲内でない場合、圧力調整装置を動作させて、前記圧力室に供給する流体の圧力を変更する。
【0013】
一態様では、基板保持装置に保持された基板を研磨パッドの研磨面に押し付けて、前記基板を研磨し、前記基板の研磨中に測定された前記基板の膜厚分布に基づいて、前記基板を押圧するための少なくとも1つの圧力室を形成する弾性膜に連結されたキャリアの偏心方向および偏心量を決定し、決定された偏心方向および偏心量に基づいて、前記キャリアをオフセットさせるオフセット機構を動作させて、前記キャリアをオフセットさせる、基板処理方法が提供される。
【0014】
一態様では、前記基板の膜厚分布の測定時における、前記基板の、前記基板保持装置に対する相対角度が変化しているか否かを判断し、前記相対角度が変化している場合、前記相対角度の変化量に基づいて、前記相対角度を補正して、前記キャリアの偏心方向および偏心量を決定する。
一態様では、前記基板の研磨開始後、前記基板の円周方向における現在の膜厚分布が所定の第1目標膜厚分布の範囲内か否かを判断し、前記現在の膜厚分布が前記第1目標膜厚分布の範囲内である場合、前記オフセット機構を動作させて、前記キャリアを初期位置に戻し、前記現在の膜厚分布が前記第1目標膜厚分布の範囲内でない場合、前記キャリアの偏心方向および偏心量が前記基板の膜厚分布に対応しているか確認する。
一態様では、前記基板の研磨開始後、前記基板の半径方向における現在の膜厚分布が所定の第2目標膜厚分布の範囲内か否かを判断し、前記現在の膜厚分布が前記第2目標膜厚分布の範囲内である場合、前記基板の円周方向における現在の膜厚分布が所定の第1目標膜厚分布の範囲内か否かを判断し、前記現在の膜厚分布が前記第2目標膜厚分布の範囲内でない場合、圧力調整装置を動作させて、前記圧力室に供給する流体の圧力を変更する。
【0015】
一態様では、基板を研磨パッドの研磨面に押し付けて、前記基板を研磨する動作を基板保持装置に実行させるステップと、前記基板の研磨中に測定された前記基板の膜厚分布に基づいて、前記基板を押圧するための少なくとも1つの圧力室を形成する弾性膜に連結されたキャリアの偏心方向および偏心量を決定するステップと、決定された偏心方向および偏心量に基づいて、前記キャリアをオフセットさせる動作をオフセット機構に実行させるステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0016】
一態様では、前記基板の膜厚分布の測定時における、前記基板の、前記基板保持装置に対する相対角度が変化しているか否かを判断するステップと、前記相対角度が変化している場合、前記相対角度の変化量に基づいて、前記相対角度を補正して、前記キャリアの偏心方向および偏心量を決定するステップと、をコンピュータに実行させる。
一態様では、前記基板の研磨開始後、前記基板の円周方向における現在の膜厚分布が所定の第1目標膜厚分布の範囲内か否かを判断するステップと、前記現在の膜厚分布が前記第1目標膜厚分布の範囲内である場合、前記キャリアを初期位置に戻す動作を前記オフセット機構に実行させるステップと、前記現在の膜厚分布が前記第1目標膜厚分布の範囲内でない場合、前記キャリアの偏心方向および偏心量が前記基板の膜厚分布に対応しているか確認するステップと、をコンピュータに実行させる。
一態様では、前記基板の研磨開始後、前記基板の半径方向における現在の膜厚分布が所定の第2目標膜厚分布の範囲内か否かを判断するステップと、前記現在の膜厚分布が前記第2目標膜厚分布の範囲内である場合、前記基板の円周方向における現在の膜厚分布が所定の第1目標膜厚分布の範囲内か否かを判断するステップと、前記現在の膜厚分布が前記第2目標膜厚分布の範囲内でない場合、前記圧力室に供給する流体の圧力を変更する動作を圧力調整装置に実行させるステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0017】
基板保持装置は、弾性膜に連結されたキャリアをオフセットさせるオフセット機構を動作させることにより、基板の膜厚のばらつきを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】基板処理装置の一実施形態を示す図である。
図2図2(a)は研磨ヘッドの水平断面図(C-C線断面図)であり、図2(b)は研磨ヘッドの垂直断面図(A-A線断面図)であり、図2(c)は研磨ヘッドの垂直断面図(B-B線断面図)である。
図3図3(a)はリテーナリングおよびスペーサを示す平面図であり、図3(b)は図3(a)のX-X線断面図であり、図3(c)は図3(a)のY-Y線断面図である。
図4】圧力室を形成する弾性膜と、弾性膜に連結されたキャリアと、を示す図である。
図5】回転トルク伝達機構を示す図である。
図6】傾動構造体を示す図である。
図7】オフセット機構の平面図である。
図8図8(a)は偏心していない状態のキャリアを示す図であり、図8(b)は偏心している状態のキャリアを示す図であり、図8(c)はキャリアの偏心量を示す図である。
図9図9(a)および図9(b)は、ウェーハの周縁部に作用する押圧力の違いを示す図である。
図10図10(a)はリテーナリングとキャリアとの間に形成された均一な隙間を示す図であり、図10(b)はリテーナリングとキャリアとの間に形成された不均一な隙間を示す図である。
図11】オフセット機構の動作を組み込んだウェーハの研磨フローの一実施形態を示す図である。
図12】キャリアの偏心方向および偏心量を決定するときに、ウェーハの膜厚分布に関連付けられる情報の一例を示す図である。
図13】ウェーハの研磨フローの他の実施形態を示す図である。
図14】ウェーハの研磨フローの他の実施形態を示す図である。
図15】ウェーハの周方向の角度の基準位置を示す図である。
図16図16(a)~図16(c)は、オフセット機構の他の実施形態を示す図である。
図17図17(a)は偏心していない状態のキャリアを示す図であり、図17(b)は偏心している状態のキャリアを示す図であり、図17(c)はキャリアの偏心量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する図面において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。以下で説明する複数の実施形態において、特に説明しない一実施形態の構成は、他の実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、基板処理装置の一実施形態を示す図である。図1に示すように、基板処理装置(より具体的には、研磨装置)1は、基板の一例であるウェーハWを保持して回転させる基板保持装置(研磨ヘッド)10と、研磨パッド5を支持する研磨テーブル2と、研磨パッド5上に研磨液(スラリー)を供給する研磨液供給ノズル19と、を備えている。
【0021】
研磨ヘッド10は、その下面にウェーハWを真空吸引により保持するように構成されている。研磨ヘッド10および研磨テーブル2は、同一方向に回転し、この状態で、研磨ヘッド10は、ウェーハWを研磨パッド5の研磨面5aに押し付ける。研磨液供給ノズル19は、研磨液を研磨パッド5上に供給する。ウェーハWは、研磨液の存在下で研磨パッド5と摺接し、研磨液の化学成分による化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒の機械的作用との複合効果により研磨される。
【0022】
基板処理装置1は、研磨ヘッド10に連結されたヘッドシャフト12と、ヘッドシャフト12に連結されたヘッドアーム13と、ヘッドアーム13を揺動自在に支持するアームシャフト14と、を備えている。
【0023】
ヘッドシャフト12は、上下動機構(図示しない)によってヘッドアーム13に対して上下動するように構成されている。ヘッドアーム13は、旋回機構(図示しない)によってアームシャフト14を中心として旋回するように構成されている。ウェーハWを保持した研磨ヘッド10は、ヘッドアーム13の旋回によって、ウェーハWの受け渡し位置(研磨テーブル2の外側の位置)と、研磨テーブル2の上方位置と、の間を移動する。
【0024】
基板処理装置1は、ヘッドシャフト12を回転させるヘッドモータ15を備えている。ヘッドモータ15は、ヘッドアーム13に内蔵されている。ヘッドモータ15が駆動すると、研磨ヘッド10は、ヘッドシャフト12とともに回転する。基板処理装置1は、ヘッドモータ15に連結された回転角度測定器50Aを備えている。回転角度測定器50Aは、研磨ヘッド10の回転角度を測定するように構成されている。回転角度測定器50Aの一例として、ロータリーエンコーダを挙げることができる。
【0025】
研磨テーブル2は、テーブル軸3に支持されている。テーブル軸3は、テーブルモータ4に連結されている。テーブルモータ4が駆動すると、研磨テーブル2(および研磨パッド5)は、テーブル軸3とともに回転する。基板処理装置1は、テーブルモータ4に連結された回転角度測定器50Bを備えている。回転角度測定器50Bは、研磨テーブル2の回転角度を測定するように構成されている。回転角度測定器50Bの一例として、ロータリーエンコーダを挙げることができる。
【0026】
図2(a)は研磨ヘッドの水平断面図(C-C線断面図)であり、図2(b)は研磨ヘッドの垂直断面図(A-A線断面図)であり、図2(c)は研磨ヘッドの垂直断面図(B-B線断面図)である。
【0027】
図2(a)~図2(c)に示すように、研磨ヘッド10は、ヘッド本体20を備えている。ヘッド本体20は、ヘッドシャフト12に接続された円形のハウジング(またはフランジ)21と、ハウジング21の下面に取り付けられたスペーサ75と、スペーサ75の下方に配置されたキャリア71と、キャリア71の側方に配置されたリテーナリング70と、を備えている。
【0028】
図3(a)はリテーナリングおよびスペーサを示す平面図であり、図3(b)は図3(a)のX-X線断面図であり、図3(c)は図3(a)のY-Y線断面図である。図3(b)および図3(c)において、ハウジング21およびキャリア71の図示は省略されている。
【0029】
リテーナリング70は、研磨パッド5の研磨面5aに接触するリング部70aと、リング部70aの上部に固定されたドライブリング70bと、を備えている。リング部70aは、ウェーハWの周縁部を取り囲んでおり、ウェーハWの研磨中に、ウェーハWが研磨ヘッド10から飛び出さないように、ウェーハWを保持している。
【0030】
リテーナリング70のドライブリング70bは、その中央部分に配置された軸部70c(後述する)から放射状に延びる複数(図3に示す実施形態では、6つ)のスポーク70dを有している。スペーサ75は、複数のスポーク70dが収容される複数の放射状の溝75aを有している。
【0031】
スペーサ75の溝75aとドライブリング70bのスポーク70dとの間には、僅かな隙間が形成されている。したがって、リテーナリング70は、スペーサ75に対して、相対的に上下動および傾動する。ハウジング21(およびヘッドシャフト12)がヘッドモータ15の駆動によって回転すると、ハウジング21に作用する回転トルクは、スペーサ75を介してリテーナリング70に伝達される。
【0032】
図4は、圧力室を形成する弾性膜と、弾性膜に連結されたキャリアと、を示す図である。図4に示すように、研磨ヘッド10は、ウェーハWを押圧するための少なくとも1つ(本実施形態では、8つ)の圧力室77a,77b,77c,77d,77e,77f,77g,77hを形成する弾性膜72を備えている。弾性膜72は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度および耐久性に優れた柔軟なゴム材によって形成されている。
【0033】
弾性膜72は、複数(本実施形態では、8つ)の環状の周壁78a,78b,78c,78d,78e,78f,78g,78hを有している。これら周壁78a~78hは、同心状に配置されており、キャリア71に連結されている。
【0034】
キャリア71の下面と、周壁78a~78hと、は、キャリア71の下方に配置された圧力室77a~77hを形成している。圧力室77a~77gは環状形状を有しており、圧力室77hは、円形状を有している。圧力室77a~77hは、同心状に配置されている。
【0035】
弾性膜72は、キャリア71の側方に配置された側壁72aを有している。側壁72aは、周壁78a~78hと同心状に配置されている。側壁72aの一端はリテーナリング70に連結されており、他端はキャリア71に連結されている。
【0036】
図4に示すように、基板処理装置1は、圧力室77a~77hのそれぞれに連結された流体ライン79aを備えている。流体ライン79aは、ロータリージョイント(図示しない)を経由して、圧力調整装置16に連結されている。より具体的には、流体ライン79aは、スペーサ75に形成された貫通穴74(図3(a)および図3(c)参照)と、ハウジング21およびヘッドシャフト12のそれぞれに形成された連通穴と、を通過して、圧力調整装置16に連結されている。
【0037】
圧力調整装置16は、圧力室77a~77hのそれぞれの内部の圧力を独立して調整するように構成されている。圧力調整装置16の一例として、電空レギュレータを挙げることができる。図示しないが、圧力室77a~77hのそれぞれは、その内部に正圧または負圧を形成するように構成されている。さらに、圧力室77a~77hを大気開放することもできる。
【0038】
研磨ヘッド10は、ハウジング21とドライブリング70bとの間に配置された環状のローリングダイヤフラム86を備えている(図2(b)および図2(c)参照)。基板処理装置1は、ローリングダイヤフラム86に連結された流体ライン79bを備えている。流体ライン79bは、流体ライン79aと同様に、ロータリージョイントを経由して、圧力調整装置16に連結されている。圧力調整装置16は、ローリングダイヤフラム86の内部の圧力を独立して調整するように構成されている。
【0039】
図5は、回転トルク伝達機構を示す図である。図5(および図2(a)、図2(c))に示すように、研磨ヘッド10は、リテーナリング70に作用する回転トルクをキャリア71に伝達する回転トルク伝達機構85を備えている。
【0040】
ヘッドモータ15が駆動すると、リテーナリング70は、ハウジング21とともに回転する。回転トルク伝達機構85は、リテーナリング70に作用する回転トルクをキャリア71に伝達するように構成されている。回転トルク伝達機構85は、リテーナリング70のドライブリング70bからキャリア71に向かって延びる複数の突起85aと、複数の突起85aのそれぞれが緩やかに嵌まり込む嵌合部85bと、を備えている。
【0041】
複数の突起85aは、キャリア71の半径方向外側に配置されたドライブリング70bの内周面に固定されている。複数の嵌合部85bは、ドライブリング70bの半径方向内側に配置されたキャリア71の外周面に形成されている。
【0042】
嵌合部85bは、突起85aよりも大きなサイズを有しているため、突起85aは、嵌合部85bに緩やかに嵌合する。図2(a)に示す実施形態では、3つの突起85aがドライブリング70bの円周方向に沿って等間隔に配置されているが、突起85aの数は、本実施形態には限定されない。
【0043】
各突起85aの、各嵌合部85bへの嵌まり込みにより、回転トルク伝達機構85はリテーナリング70に作用する回転トルクをキャリア71に伝達し、キャリア71はリテーナリング70とともに回転する。
【0044】
回転トルク伝達機構85は、リテーナリング70に作用する回転トルクをキャリア71に伝達する役割のみならず、キャリア71をリテーナリング70に保持する役割をも果たしている。したがって、研磨ヘッド10がヘッドシャフト12とともに上昇して、キャリア71に重力が作用しても、リテーナリング70から脱落しない。このように、回転トルク伝達機構85は、キャリア71に回転力を付与しつつ、キャリア71のリテーナリング70からの脱落を防止する。
【0045】
図6は、傾動構造体を示す図である。図6に示すように、研磨ヘッド10は、リテーナリング70を傾動させる傾動構造体76を備えている。傾動構造体76は、キャリア71の中心部分に形成された収容凹部71aに配置されている。
【0046】
キャリア71を取り囲むリテーナリング70は、ドライブリング70bの下面からキャリア71の収容凹部71aに向かって延びる軸部70cを有している。軸部70cは、ドライブリング70bの中心に形成されており、ヘッドシャフト12の中心軸線CL1に沿って延びている。軸部70cは、収容凹部71aの内部まで延びている。
【0047】
図6に示す実施形態では、傾動構造体76は、リテーナリング70の軸部70cに装着された球面軸受を備えている。球面軸受としての傾動構造体76は、環状の内輪76aと、内輪76aの外周面を摺動自在に支持する外輪76bと、を備えている。
【0048】
スペーサ75は、収容凹部71aに向かって延びる環状突起73を有している。環状突起73は、リテーナリング70の軸部70cの半径方向外側に配置されており、傾動構造体76は、軸部70cと環状突起73との間に配置されている。
【0049】
外輪76bは、環状突起73の内周面に固定されており、内輪76aを摺動自在に支持している。したがって、内輪76aは、外輪76bに対して全方向(360度)に傾動可能である。軸部70cは、内輪76aに挿入されている。したがって、軸部70cを含むリテーナリング70は、内輪76aに対して鉛直方向にのみ移動可能である一方で、リテーナリング70の水平方向の移動は、傾動構造体76によって制限されている。このような構成により、リテーナリング70は、ヘッド本体20とは独立して上下動可能および傾動可能に構成されている。
【0050】
図7は、オフセット機構の平面図である。図6および図7に示すように、研磨ヘッド10は、リテーナリング70に対してキャリア71をオフセットさせるオフセット機構80を備えている。本実施形態では、オフセット機構80は、キャリア71の収容凹部71aに配置されている。オフセット機構80は、リテーナリング70の円周方向に沿って等間隔で配置された複数の押付アクチュエータ81を備えている。
【0051】
複数の押付アクチュエータ81は、同一の構造を有している。押付アクチュエータ81は、スポーク70dに対して、スポーク70dの延びる方向(すなわち、中心軸線CL1と垂直な方向)と平行な方向に押付力を付与するように構成されている。
【0052】
押付アクチュエータ81の一例として、モータおよびボールねじを備えるボールねじ機構、またはエアシリンダを挙げることができる。一実施形態では、押付アクチュエータ81は、ボールねじ機構と、エアシリンダと、の組み合わせであってもよい。
【0053】
複数の押付アクチュエータ81は、環状突起73の円周方向に沿って、等間隔に配置されている。本実施形態では、3つの押付アクチュエータ81が配置されているが、押付アクチュエータ81の数は本実施形態には限定されない。
【0054】
押付アクチュエータ81は、ヘッド本体20(より具体的には、スペーサ75の環状突起73)に押付力を付与する押付部材81aと、押付部材81aを保持する保持部材81bと、を備えている。保持部材81bは、キャリア71の収容凹部71aの内周面に埋め込まれている。押付部材81aは、保持部材81bから環状突起73に向かって延びており、伸縮自在に構成されている。
【0055】
各押付アクチュエータ81は、その駆動により、押付部材81aを伸縮させる。押付部材81aが伸張すると、環状突起73に押付力を付与する。環状突起73を含むスペーサ75は、ハウジング21を介してヘッドシャフト12に固定されている。したがって、環状突起73に付与された押付力は、押付アクチュエータ81が取り付けられたキャリア71に作用する。
【0056】
回転トルク伝達機構85の突起85aは、嵌合部85bに緩やかに嵌まり込んでいるため、キャリア71は、リテーナリング70に対して相対的に移動可能である。したがって、各押付アクチュエータ81は、環状突起73に付与された押付力をキャリア71に作用させる。言い換えれば、各押付アクチュエータ81は、間接的に、押付力をキャリア71に付与する。
【0057】
図8(a)は偏心していない状態のキャリアを示す図であり、図8(b)は偏心している状態のキャリアを示す図であり、図8(c)はキャリアの偏心量を示す図である。キャリア71は、環状突起73に付与された押付力の大きさと、環状突起73への押付方向と、に応じて、リテーナリング70に対して、相対的に移動する。
【0058】
図8(a)では、リテーナリング70(すなわち、ヘッド本体20)の中心軸線CL1と、キャリア71の中心軸線CL2は、互いに一致している。このように、中心軸線CL1,CL2が互いに一致する位置は、キャリア71の初期位置である。言い換えれば、キャリア71の初期位置は、すべての押付アクチュエータ81の変位量が初期値であるときの位置である。
【0059】
各押付アクチュエータ81を動作させることにより、キャリア71(すなわち、中心軸線CL2)は、リテーナリング70の中心軸線CL1に対して偏心する。キャリア71の偏心方向および偏心量は、各押付アクチュエータ81の押付方向および押付力の大きさに依存する。図8(b)および図8(c)では、3つの押付アクチュエータ81のうち、1つの押付アクチュエータ81を伸張させ、2つの押付アクチュエータ81を収縮させることにより、キャリア71の中心軸線CL2は、偏心量(変位量)dだけ、中心軸線CL1から変位している。
【0060】
図9(a)および図9(b)は、ウェーハの周縁部に作用する押圧力の違いを示す図である。図9(a)に示すように、キャリア71とリテーナリング70との間に十分な隙間が形成されている場合(すなわち、隙間が大きい場合)、圧力室77aを形成する弾性膜72は、リテーナリング70のリング部70aに接触しない。
【0061】
図9(a)に示す実施形態では、キャリア71は、初期位置に配置されており、ウェーハWの円周方向におけるリテーナリング70と弾性膜72との間には、均一な隙間が形成されている。この場合、弾性膜72の膨張力は、側壁72a側に作用する力と、ウェーハW側に作用する力と、に分散される。したがって、弾性膜72によるウェーハWの、研磨面5aに対する押圧力は小さく、結果として、ウェーハWの周縁部における研磨レートは、ウェーハWの周縁部よりも内側における研磨レートとほとんど同じである(または、やや小さい)。
【0062】
その一方で、図9(b)に示すように、キャリア71とリテーナリング70との間に十分な隙間が形成されていない場合(すなわち、隙間が小さい場合)、圧力室77aを形成する弾性膜72は、リテーナリング70のリング部70aに接触する。なお、弾性膜72がリング部70aに接触する領域は、接触領域72bと呼ばれる。
【0063】
この場合、弾性膜72の膨張力は、ウェーハW側に大きく作用する。したがって、弾性膜72によるウェーハWの、研磨面5aに対する押圧力は大きく、結果として、ウェーハWの周縁部における研磨レートは、ウェーハWの周縁部よりも内側における研磨レートよりも大きくなる。
【0064】
オフセット機構80は、キャリア71をオフセット(偏心または移動)させて、ウェーハWの円周方向におけるリテーナリング70と弾性膜72との間に不均一な隙間を形成するように構成されている。したがって、ウェーハWの円周方向に沿った膜厚のばらつきが生じたとしても、オフセット機構80は、キャリア71をオフセットさせることによって、ウェーハWの周縁部における複数の領域ごとの研磨レートを制御して、ウェーハWの円周方向において、ウェーハWを不均一に研磨することができる。このようにして、オフセット機構80は、ウェーハWの周縁部における膜厚のばらつきを解消することができる。
【0065】
一実施形態では、オフセット機構80がキャリア71をオフセットさせたとき、弾性膜72がウェーハW上をスムーズに移動するように、弾性膜72は、その表面に塗布された滑り性のよいコーティング材SR1を有してもよい(図9(a)および図9(b)参照)。コーティング材SR1は、ウェーハWの裏面に対向している。コーティング材SR1の一例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コーティングを挙げることができる。
【0066】
キャリア71は、スペーサ75に対向する対向面を有している。一実施形態では、キャリア71は、その対向面に塗布された滑り性のよいコーティング材SR2を有してもよい(図6参照)。コーティング材SR2の一例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コーティングを挙げることができる。
【0067】
図10(a)はリテーナリングとキャリアとの間に形成された均一な隙間を示す図であり、図10(b)はリテーナリングとキャリアとの間に形成された不均一な隙間を示す図である。図10(a)および図10(b)では、ウェーハWの周縁部における領域ARの膜厚は大きい。図10(a)において、オフセット機構80によってキャリア71をオフセット(偏心または移動)させない場合、リテーナリング70とキャリア71との間の隙間は、均一である(すなわち、隙間A=隙間B)。
【0068】
図9(b)を参照して説明したように、オフセット機構80は、キャリア71をオフセットさせることにより、ウェーハWの円周方向における特定の領域の研磨レートを高くすることができる。図10(b)に示すように、ウェーハWの領域ARは、研磨ヘッド角度0度の位置に対応している。なお、図10(b)における太い黒色点線で示した領域は、弾性膜72の、リテーナリング70との接触領域72bを表している。
【0069】
したがって、領域ARの膜厚が大きい場合、オフセット機構80は、研磨ヘッド角度0度の位置にキャリア71をオフセット(偏心または移動)させる(すなわち、隙間A>隙間B)。ウェーハWの研磨レートは、キャリア71の偏心量に依存している。したがって、領域ARの膜厚の大きさに応じて、適宜、キャリア71の偏心量を決定する。結果として、領域ARにおける研磨レートは他の領域における研磨レートよりも高くなり、領域ARは、積極的に研磨される。このようにして、領域ARの膜厚を小さくすることができる。
【0070】
オフセット機構80は、ウェーハWの研磨中において、測定されたウェーハWの膜厚に基づいて、キャリア71をオフセットさせるように構成されている。より具体的には、図1に示すように、基板処理装置1は、ウェーハWの膜厚に従って変化する膜厚信号を検出する膜厚センサ30と、膜厚センサ30によって検出された膜厚信号に基づいて、ウェーハWの膜厚を測定する制御装置60と、を備えている。
【0071】
膜厚センサ30は、研磨テーブル2の内部に配置されている。膜厚センサ30は、研磨テーブル2が1回転するたびに、ウェーハWの中心部を含む複数の領域での膜厚信号を検出(生成)する。膜厚センサ30の一例として、光学式センサまたは渦電流センサを挙げることができる。
【0072】
制御装置60は、基板処理装置1の構成要素(例えば、膜厚センサ30、回転角度測定器50A,50Bなど)に電気的に接続されている。制御装置60は、膜厚センサ30によって検出された膜厚信号、回転角度測定器50Aによって測定された研磨ヘッド10の回転角度、回転角度測定器50Bによって測定された研磨テーブル2の回転角度などの情報を取得する。
【0073】
制御装置60は、オフセット機構80の動作を含む基板処理装置1の動作(例えば、研磨ヘッド10の動作、研磨テーブル2の動作、研磨液供給ノズル19の動作など)を制御するように構成されている。本実施形態では、制御装置60は、コンピュータから構成される。
【0074】
図1に示すように、制御装置60は、プログラムやデータなどが格納される記憶部60Dと、膜厚センサ30から取得した膜厚信号に基づいてウェーハWの膜厚を測定する測定部60Cと、記憶部60Dに格納されているプログラムに従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などの演算部60Bと、演算部60Bによって演算された結果に基づいて、基板処理装置1の動作を制御する制御部60Aと、を備えている。
【0075】
図11は、オフセット機構の動作を組み込んだウェーハの研磨フローの一実施形態を示す図である。制御装置60は、図11を参照して説明する各ステップを実行するように構成されている。ウェーハWの研磨が開始されると、膜厚センサ30は、研磨テーブル2とともに回転し、ウェーハWの表面を横切りながら、膜厚信号を検出する。膜厚信号は、膜厚を直接または間接に示す指標値であり、ウェーハWの膜厚の減少に従って変化する。
【0076】
ウェーハWの研磨中において、膜厚センサ30は、ウェーハWの表面を複数回横切り、複数の膜厚信号を検出する。図11のステップS101に示すように、測定部60Cは、膜厚センサ30によって検出された複数の膜厚信号に基づいて、ウェーハW上の膜厚分布を測定する。
【0077】
記憶部60Dは、測定部60Cによって測定されたウェーハWの膜厚分布を記憶している。その後、演算部60Bは、ウェーハWの研磨中に測定されたウェーハWの膜厚分布に基づいて、キャリア71の偏心方向および偏心量を決定し、決定された偏心方向および偏心量に基づいて、3つの押付アクチュエータ81の変位量を算出する(ステップS102)。
【0078】
図12は、キャリアの偏心方向および偏心量を決定するときに、ウェーハの膜厚分布に関連付けられる情報の一例を示す図である。演算部60Bは、ウェーハWの膜厚分布に関する情報を以下の情報(1)~(5)に関連付けて、キャリア71の偏心方向および偏心量を決定する。
(1)研磨ヘッド10の中心軸線CL1の、研磨テーブル2の回転中心CL3からの距離R1
(2)研磨テーブル2における研磨ヘッド10の中心軸線CL1が配置されている位置の回転角度RA1
(3)研磨テーブル2における膜厚センサ30が配置されている位置の回転角度RA1
(4)研磨ヘッド10の回転角度RA2
(5)膜厚センサ30の、回転中心CL3からの距離R2
なお、ウェーハWの研磨中に、研磨ヘッド10を揺動させる場合には、演算部60Bは、研磨ヘッド10の揺動角度に関する情報をウェーハWの膜厚分布に関する情報に関連付けてもよい。
【0079】
回転角度RA1はテーブルモータ4に連結された回転角度測定器50B(図1参照)に基づいて測定された研磨テーブル2の回転角度を示しており、回転角度RA2はヘッドモータ15に連結された回転角度測定器50A(図1参照)に基づいて測定された研磨ヘッド10の回転角度を示している。
【0080】
膜厚センサ30の初期位置の回転角度(図12に示す実施形態では、約190度)をRA1’で表現したとき、回転角度RA1’は、回転角度測定器50Bの回転位相の起点(すなわち、ゼロ度)と膜厚センサ30の位置との回転位相のずれを表している。ウェーハWの研磨中において、膜厚センサ30の現在の回転角度は、研磨テーブル2の回転とともに変化する。したがって、膜厚センサ30の現在の回転角度を測定するときの回転角度RA1は、膜厚センサ30の初期位置の回転角度RA1’を加算した回転角度として算出される。
【0081】
研磨ヘッド10の初期位置の回転角度(図12に示す実施形態では、約260度)をRA1’’で表現したとき、回転角度RA1’’は、回転角度測定器50Bの回転位相の起点(すなわち、ゼロ度)と研磨ヘッド10の位置との回転位相のずれを表している。ウェーハWの研磨中において、研磨ヘッド10の回転角度は、研磨テーブル2の回転とともに変化しない。したがって、研磨ヘッド10の現在の回転角度を測定するときの回転角度RA1は、回転角度RA1’’に相当する。
【0082】
上述した情報(1)~(5)は、記憶部60Dに記憶されている。ウェーハWの膜厚分布に関連付けられる情報の一例であり、必ずしも情報(1)~(5)のすべてをウェーハWの膜厚分布に関連付ける必要はない。情報(1)~(5)の少なくとも1つの情報をウェーハWの膜厚分布に関連付けてもよい。
【0083】
ステップS102の後、制御部60Aは、演算部60Bからの指令を受けて、3つの押付アクチュエータ81のうちの少なくとも1つを動作させて、キャリア71をオフセットさせる(ステップS103参照)。このようにして、オフセット機構80は、ウェーハWの円周方向におけるリテーナリング70と弾性膜72との間に不均一な隙間を形成する。
【0084】
その後、ウェーハWを所定時間、研磨し(ステップS104参照)、再び、測定部60Cは、膜厚センサ30によって検出された複数の膜厚信号に基づいて、ウェーハW上の膜厚分布を測定する(ステップS105参照)。
【0085】
演算部60Bは、ステップS105で測定したウェーハWの膜厚分布に基づいて、ウェーハWの全体(すなわち、円周方向および半径方向)における現在の平均膜厚が所定の目標値以下であるか否かを判断する(ステップS106参照)。現在の平均膜厚が目標値以下である場合(ステップS106の「YES」参照)、演算部60Bは、ウェーハWの研磨終点を決定し、ウェーハWの研磨を終了する。
【0086】
その一方で、現在の平均膜厚が目標値以下でない場合(ステップS106の「NO」参照)、演算部60Bは、ウェーハWの円周方向における現在の膜厚分布が所定の目標膜厚分布(第1目標膜厚分布)の範囲内か否かを判断する(ステップS107参照)。
【0087】
現在の膜厚分布が第1目標膜厚分布の範囲内である場合(ステップS107の「YES」参照)、制御部60Aは、すべての押付アクチュエータ81の変位量を初期値(すなわち、初期位置)に戻す(ステップS108参照)。より具体的には、制御部60Aは、リテーナリング70の中心軸線CL1とキャリア71の中心軸線CL2とが一致するように、すべての押付アクチュエータ81を動作させる。
【0088】
このようにして、研磨ヘッド10は、ウェーハWの円周方向におけるリテーナリング70と弾性膜72との間に均一な隙間を形成して、ウェーハWを均一に研磨する。ステップS108の後、制御装置60は、ステップS104と同一のステップを実行する。
【0089】
現在の膜厚分布が第1目標膜厚分布の範囲内でない場合(ステップS107の「NO」参照)、演算部60Bは、キャリア71の偏心方向および偏心量がウェーハWの膜厚分布に一致(対応)しているか確認する動作を実行する(ステップS109参照)。キャリア71の偏心方向および偏心量がウェーハWの膜厚分布に一致している場合(ステップS109の「YES」参照)、制御装置60は、ステップS104と同一のステップを実行する。
【0090】
その一方で、キャリア71の偏心方向および偏心量がウェーハWの膜厚分布に一致していない場合(ステップS109の「NO」参照)、制御装置60は、ステップS102と同一のステップを実行する。より具体的には、演算部60Bは、再び、キャリア71の偏心方向および偏心量を決定し、決定された偏心方向および偏心量に基づいて、3つの押付アクチュエータ81の変位量を算出する。
【0091】
図11に示すフローチャートでは、演算部60Bは、ウェーハWの円周方向における現在の膜厚分布が第1目標膜厚分布の範囲内か否かを判断するが(ステップS107参照)、一実施形態では、演算部60Bは、ウェーハWの半径方向における現在の膜厚分布が所定の目標膜厚分布(第2目標膜厚分布)の範囲内か否かを判断してもよい。
【0092】
図13は、ウェーハの研磨フローの他の実施形態を示す図である。図13に示すように、制御装置60は、図11のステップS101~S106に相当するステップS201~S206を実行する。ステップS206の後、演算部60Bは、ウェーハWの半径方向における現在の膜厚分布が第2目標膜厚分布の範囲内か否かを判断する(ステップS207参照)。
【0093】
現在の膜厚分布が第2目標膜厚分布の範囲内である場合(ステップS207の「YES」参照)、演算部60Bは、ステップS107に相当するステップS210を実行する。その後、制御装置60は、ステップS210の結果に基づいて、ステップS108に相当するステップS211、またはステップS109に相当するステップS212を実行する。
【0094】
現在の膜厚分布が第2目標膜厚分布の範囲内でない場合(ステップS207の「NO」参照)、演算部60Bは、各圧力室77a~77hに供給される流体の圧力変化量を算出する(ステップS208参照)。より具体的には、演算部60Bは、ウェーハWの半径方向における現在の膜厚分布が第2目標膜厚分布の範囲内になるように、特定の膜厚に対応する圧力室を決定し、決定された圧力室に供給される流体の圧力変化量を算出する。
【0095】
ステップS208の後、演算部60Bは、決定された圧力変化量に基づいて、制御部60Aに指令を出す。制御部60Aは、演算部60Bからの指令を受けて、圧力調整装置16(より具体的には、各電空レギュレータ)の出力値を変更し、圧力調整装置16を動作させる(ステップS209参照)。その後、演算部60Bは、ステップS107に相当するステップS210を実行する。
【0096】
図14は、ウェーハの研磨フローの他の実施形態を示す図である。図15は、ウェーハの周方向の角度の基準位置を示す図である。ウェーハWの研磨中において、ウェーハWは、ウェーハWと研磨パッド5との間に作用する摩擦力によって、研磨ヘッド10に対して、研磨ヘッド10の回転方向にずれるおそれがある。
【0097】
ウェーハWが研磨ヘッド10の回転方向にずれると、ウェーハWの膜厚分布と、演算部60Bによって算出された押付アクチュエータ81の変位量と、が一致しない。結果として、制御部60Aは、ウェーハWの膜厚のばらつきを精度よく解消することができないおそれがある。
【0098】
そこで、基板処理装置1は、ウェーハWの研磨中において、ウェーハWの周方向の角度の基準位置を検出する基準位置検出装置40を備えている(図1参照)。本実施形態では、ウェーハWの周方向の角度の基準位置は、ウェーハWの周縁部に形成されたノッチNtの位置である(図15参照)。
【0099】
図1に示すように、基準位置検出装置40は、研磨ヘッド10に隣接して配置されている。基準位置検出装置40の一例として、ファイバースコープを挙げることができる。基準位置検出装置40は、ウェーハWの研磨中において、常時、ウェーハWのノッチNtの位置を監視する。
【0100】
制御装置60(より具体的には、演算部60B)は、基準位置検出装置40に電気的に接続されており、ウェーハWの研磨中におけるノッチNtの位置を基準位置検出装置40から取得するように構成されている。
【0101】
制御装置60は、回転角度測定器50Aから取得した研磨ヘッド10の回転角度に関する第1信号(第1データ)と、基準位置検出装置40から取得したノッチNtの位置に関する第2信号(第2データ)と、に基づいて、ノッチNtの位置の、研磨ヘッド10に対する相対角度を算出する。
【0102】
制御装置60は、回転角度測定器50Aから取得した研磨ヘッド10の回転角度に基づいて、ウェーハWの研磨開始前におけるノッチNtの位置と研磨ヘッド10との相対角度を決定する。ウェーハWの研磨開始後、測定部60Cは、膜厚センサ30によって検出された複数の膜厚信号に基づいて、ウェーハW上の膜厚分布を測定する(ステップS301参照)。
【0103】
このとき、制御装置60(より具体的には、演算部60B)は、ウェーハWの研磨を開始し、ウェーハWの研磨中における基準位置検出装置40から取得したデータに基づいて、ノッチNtの位置を特定する。
【0104】
演算部60Bは、ウェーハWの研磨開始前における相対角度に対して、ウェーハWの膜厚分布の測定時におけるウェーハWの円周方向と研磨ヘッド10の円周方向との位置関係(すなわち、現在の相対角度)が変化していないか確認する(ステップS302参照)。現在の相対角度が変化していない場合(ステップS303の「NO」参照)、制御装置60は、ステップS102~S109に相当するステップS305~S312を実行する。
【0105】
その一方で、現在の相対角度が変化している場合(ステップS303の「YES」参照)、演算部60Bは、現在の相対角度の変化量を算出し、算出された相対角度の変化量に基づいて、ウェーハWの膜厚分布を補正する(ステップS304参照)。
【0106】
より具体的には、演算部60Bは、相対角度を補正して、ウェーハWの膜厚分布の位置関係と、押付アクチュエータ81の偏心方向および偏心量と、を同期させる。その後、制御装置60は、ステップS305~S312を実行する。本実施形態によれば、仮に、ウェーハWが研磨ヘッド10の回転方向にずれても、制御部60Aは、ウェーハWの膜厚のばらつきを解消することができる。
【0107】
制御装置60は、記憶部60Dに格納されたプログラムに含まれる命令に従って上述した各ステップを実行する。上述した各ステップを制御装置60に実行させるためのプログラムは、非一時的な有形物であるコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、記録媒体を介して制御装置60に提供される。または、プログラムは、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークを介して制御装置60に入力されてもよい。
【0108】
図16(a)~図16(c)は、オフセット機構の他の実施形態を示す図である。図16(a)~図16(c)に示す実施形態において、特に説明しない構成は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0109】
図16(a)は研磨ヘッドの水平断面図(C-C線断面図)であり、図16(b)は研磨ヘッドの垂直断面図(A-A線断面図)であり、図16(c)は研磨ヘッドの垂直断面図(B-B線断面図)である。
【0110】
図16(a)~図16(c)に示す実施形態では、ヘッド本体20は、スペーサ75を備えておらず、ドライブリング70bと、ハウジング21と、は一体的に構成されている。言い換えれば、ドライブリング70bおよびハウジング21は、同一の構造物である。
【0111】
ヘッドシャフト12は、傾動構造体96を介してドライブリング70b(すなわち、ハウジング21)に連結されている。本実施形態では、傾動構造体96は、ボールジョイントである。ドライブリング70b(すなわち、ハウジング21)は、傾動構造体96により、ヘッドシャフト12に対して傾動可能である。
【0112】
キャリア71は、ドライブリング70bの下方に配置されている。本実施形態においても、キャリア71は、ドライブリング70bに対向する対向面に塗布されたコーティング材SR2を有してもよい(図6参照)。同様に、弾性膜72は、その表面に塗布された滑り性のよいコーティング材SR1を有してもよい(図9(a)および図9(b)参照)。
【0113】
図16(a)~図16(c)に示すように、研磨ヘッド10は、オフセット機構80の代わりにオフセット機構90を備えてもよい。オフセット機構90は、直接的に、押付力をキャリア71に付与する複数の押付アクチュエータ91を備えている。
【0114】
複数の押付アクチュエータ91は、同一の構造を有している。各押付アクチュエータ91は、キャリア71に対して、中心軸線CL1と垂直な方向に押付力を付与するように構成されている。押付アクチュエータ91の一例として、モータおよびボールねじを備えるボールねじ機構、またはエアシリンダを挙げることができる。一実施形態では、押付アクチュエータ91は、ボールねじ機構と、エアシリンダと、の組み合わせであってもよい。
【0115】
複数の押付アクチュエータ91は、リテーナリング70の円周方向に沿って、等間隔に配置されており、リテーナリング70に支持されている。より具体的には、リテーナリング70は、その円周方向に沿って、等間隔に配置された複数の収容挿入部95を有している。
【0116】
複数の押付アクチュエータ91のそれぞれは、複数の収容挿入部95のそれぞれに収容されている。本実施形態では、3つの押付アクチュエータ91が配置されているが、押付アクチュエータ91の数は本実施形態には限定されない。
【0117】
押付アクチュエータ91は、キャリア71に押付力を付与する押付部材91aと、押付部材91aを保持する保持部材91bと、を備えている。収容挿入部95は、リテーナリング70の半径方向に延びる挿入孔95aと、挿入孔95aに接続された窪み部95bと、を有している。押付部材91aは挿入孔95aに挿入されており、保持部材91bは窪み部95bに載置されている。
【0118】
押付部材91aは、保持部材91bからキャリア71に向かって延びており、伸縮自在に構成されている。各押付アクチュエータ91は、その駆動により、押付部材91aを伸縮させる。押付部材91aが伸張すると、キャリア71に押付力を付与する。
【0119】
図17(a)は偏心していない状態のキャリアを示す図であり、図17(b)は偏心している状態のキャリアを示す図であり、図17(c)はキャリアの偏心量を示す図である。キャリア71は、押付アクチュエータ91によって付与された押付力の大きさと、押付方向と、に応じて、リテーナリング70に対して、相対的に移動する。
【0120】
図17(a)では、リテーナリング70(すなわち、ヘッド本体20)の中心軸線CL1と、キャリア71の中心軸線CL2は、互いに一致している。その一方で、各押付アクチュエータ91を動作させることにより、キャリア71の中心軸線CL2は、リテーナリング70の中心軸線CL1に対して偏心する。
【0121】
キャリア71の偏心方向および偏心量は、各押付アクチュエータ91の押付方向および押付力の大きさに依存する。図17(b)および図17(c)では、3つの押付アクチュエータ91のうち、2つの押付アクチュエータ91を伸張させ、1つの押付アクチュエータ91を収縮させることにより、キャリア71の中心軸線CL2は、偏心量(変位量)dだけ、中心軸線CL1から変位している。
【0122】
本実施形態においても、オフセット機構90は、キャリア71をオフセット(偏心または移動)させて、ウェーハWの円周方向におけるリテーナリング70と弾性膜72との間に不均一な隙間を形成するように構成されている。したがって、ウェーハの円周方向に沿った膜厚のばらつきが生じたとしても、オフセット機構90は、ウェーハWの周縁部における膜厚のばらつきを解消することができる。
【0123】
一実施形態では、図1図15に示す実施形態と、図16に示す実施形態と、を組み合わせてもよい。より具体的には、研磨ヘッド10は、オフセット機構80と、オフセット機構90と、の組み合わせを備えてもよい。
【0124】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0125】
1 基板処理装置
2 研磨テーブル
3 テーブル軸
4 テーブルモータ
5 研磨パッド
5a 研磨面
10 研磨ヘッド(基板保持装置)
12 ヘッドシャフト
13 ヘッドアーム
14 アームシャフト
15 ヘッドモータ
16 圧力調整装置
20 ヘッド本体
21 ハウジング
30 膜厚センサ
40 基準位置検出装置
50A 回転角度測定器
50B 回転角度測定器
60 制御装置
60A 制御部
60B 演算部
60C 測定部
60D 記憶部
70 リテーナリング
70a リング部
70b ドライブリング
70c 軸部
70d スポーク
71 キャリア
71a 収容凹部
72 弾性膜
72a 側壁
72b 接触領域
73 環状突起
74 貫通穴
75 スペーサ
75a 溝
76 傾動構造体
76a 内輪
76b 外輪
77a~77h 圧力室
78a~78h 周壁
79a 流体ライン
79b 流体ライン
80 オフセット機構
81 押付アクチュエータ
81a 押付部材
81b 保持部材
85 回転トルク伝達機構
85a 突起
85b 嵌合部
86 ローリングダイヤフラム
90 オフセット機構
91 押付アクチュエータ
91a 押付部材
91b 保持部材
95 収容挿入部
95a 挿入孔
95b 窪み部
96 傾動構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17