(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010768
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】表面処理ゾルゲルシリカ粒子、表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法及び静電荷像現像用トナー外添剤
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20250116BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
G03G9/097 375
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112966
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 和之
【テーマコード(参考)】
2H500
4G072
【Fターム(参考)】
2H500AA09
2H500AA11
2H500BA27
2H500CA34
2H500CB12
2H500CB20
2H500EA02D
2H500EA21D
2H500EA52D
2H500EA55D
2H500EA57D
2H500EA62D
2H500EA64D
4G072AA25
4G072AA28
4G072BB05
4G072CC13
4G072DD05
4G072DD06
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH29
4G072HH30
4G072JJ23
4G072JJ38
4G072KK03
4G072LL06
4G072LL15
4G072MM01
4G072MM03
4G072QQ07
4G072RR05
4G072RR12
4G072TT01
4G072UU07
(57)【要約】
【課題】環境変化時の帯電変化が少なく、トナー外添剤として用いた場合、トナーに良好な印刷特性を与えることが可能な表面処理ゾルゲルシリカ粒子等の提供。
【解決手段】
表面に、R2SiO3/2単位及びR4
3SiO1/2単位(R2及びR4は1価炭化水素基)を有する、(1)~(7)を満たす表面処理ゾルゲルシリカ粒子。
(1)動的光散乱法におけるメジアン径が50nm~300nm
(2)平均円形度が0.80~1.0
(3)屈折率が1.380~1.420
(4)真密度が1.7000g/cm3以上1.9000g/cm3未満
(5)体積抵抗率が1011Ω・cm以上
(6)水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積で表される比が2.00~10.0
(7)30℃/90%RHに2時間曝露した際の吸湿率が、150℃で1日間乾燥した際の乾燥時質量に対して6.0~11質量%
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、R2SiO3/2単位(式中、R2はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の1価炭化水素基である。)及びR4
3SiO1/2単位(式中、R4は、独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~6の1価炭化水素基である。)を有する表面処理ゾルゲルシリカ粒子であって、
(1)動的光散乱法におけるメジアン径が50nm~300nmであり、
(2)平均円形度が0.80~1.0であり、
(3)屈折率が1.380~1.420であり、
(4)真密度が1.7000g/cm3以上1.9000g/cm3未満であり、
(5)体積抵抗率が1011Ω・cm以上であり、
(6)水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積で表される比が2.00~10.0であり、
(7)30℃/90%RHに2時間曝露した際の吸湿率が、150℃で1日間乾燥した際の乾燥時質量に対して6.0~11質量%である
表面処理ゾルゲルシリカ粒子。
【請求項2】
前記R2及びR4がメチル基である請求項1に記載の表面処理ゾルゲルシリカ粒子。
【請求項3】
下記工程(A1)~(A6)を有する請求項1に記載の表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法。
工程(A1):下式(I)で表される4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合物又はこれらの混合物を、塩基性物質の存在下、親水性有機溶媒及び水を含む混合液中で加水分解縮合することによって親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液を得る工程
Si(OR1)4 (I)
(式中、R1は、独立に、炭素原子数1~6の1価炭化水素基を表す。)
工程(A2):工程(A1)で得られた親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液の分散媒中の親水性有機溶媒を水に置換し、親水性ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液を得る工程
工程(A3):工程(A2)で得られた親水性ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液を、水の還流温度で5時間以上還流する工程
工程(A4):工程(A3)後の親水性ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液に、下式(II)で表される3官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合物又はこれらの混合物を、該親水性ゾルゲルシリカ粒子のSi原子1モルに対し0.01~0.5モル添加し、該親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面にR2SiO3/2単位を導入し、予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液を得る工程
R2Si(OR3)3 (II)
(式中、R2はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の1価炭化水素基を表し、R3は、独立に、炭素原子数1~6の1価炭化水素基を表す。)
工程(A5):工程(A4)で得られた予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液の分散媒をケトン系溶媒に置換し、予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子のケトン系溶媒分散液を得る工程
工程(A6):工程(A5)で得られた予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子のケトン系溶媒分散液に、下式(III)で表されるシラザン化合物、下式(IV)で表される1官能性シラン化合物又はこれらの混合物を該予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子のSi原子1モルに対し0.1~0.5モル添加し、該予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子の表面にR4
3SiO1/2単位を導入し、表面処理ゾルゲルシリカ粒子を得る工程
R4
3SiNHSiR4
3 (III)
R4
3SiX (IV)
(式中、R4は、独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~6の1価炭化水素基を表し、Xは水酸基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、又は塩素原子を表す。)
【請求項4】
R2及びR4がメチル基である請求項3に記載の表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の表面処理ゾルゲルシリカ粒子からなる静電荷像現像用トナー外添剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理ゾルゲルシリカ粒子、その製造方法及び電子写真法、静電記録法等における静電荷像を現像するために使用する静電荷像現像用トナー外添剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法等で使用する乾式現像剤は、結着樹脂中に着色剤を分散したトナーそのものを用いる一成分現像剤と、そのトナーにキャリアを混合した二成分現像剤とに大別でき、そしてこれらの現像剤を用いてコピー操作を行う場合、プロセス適合性を有するためには、現像剤が流動性、耐ケーキング性、定着性、帯電性、クリーニング性等に優れていることが必要である。そして特に、流動性、耐ケーキング性、定着性、クリーニング性を高めるために、無機微粒子をトナー外添剤として使用することがしばしば行われている。
【0003】
しかしながら、無機微粒子の分散性がトナー特性に大きな影響を与え、分散性が不均一な場合、流動性、耐ケーキング性、定着性に所望の特性が得られなかったり、クリーニング性が不十分になって、感光体上にトナー固着等が発生し、黒点状の画像欠陥が生じる原因となることがあった。これらの点を改善する目的で、無機微粒子の表面を疎水化処理したものが種々提案されている。
【0004】
また最近では複写機の高速化、低エネルギー消費が求められており、従来のトナーよりもより高い劣化耐性が求められるにようになってきた。トナーの劣化耐性が高くないと、使用開始直後から終了時までトナーの転写効率を高い状態に維持できない。その対策の一つとして、大粒径トナー外添剤のスペーサ効果を利用したトナーの劣化抑制技術が提案されている(特許文献1、2)。
【0005】
またトナー外添剤として、小粒径トナー外添剤と大粒径トナー外添剤を併用することがしばしば行われている。トナー粒子表面に付着した大粒径トナー外添剤の存在により、その近傍のトナー粒子表面上に付着した小粒径トナー外添剤が直接せん断力や衝撃力などの外力を受ける頻度が低下し、その外力による小粒径トナー外添剤のトナー粒子表面への埋没を防止できる(スペーサ効果)ことから、トナーの劣化を抑制することが可能となる。
【0006】
また、大粒径トナー外添剤を外添することで、感光体からトナーが離れ易くなり、感光体上に乗ったトナーが速やかに紙上に転写され、転写効率を高い状態に維持できることから、大粒径トナー外添剤は転写助剤としても機能すると考えられる。
【0007】
スペーサ効果が期待される大粒径トナー外添剤には、従来の燃焼法により製造されたフュームドシリカ粒子が使用されてきた。しかし近年ゾルゲル法によって粒度分布の揃った大粒径の球形シリカ粒子が得られるようになってきたことから、50nm~150nm程度の平均粒径の球形シリカ粒子を外添剤として用いる技術が提案されている(特許文献3)。
【0008】
また、外添剤の埋没を抑制し、初期から経時においても高い現像性、転写性を維持するために、真比重1.9以下の単分散球形の大粒径シリカを用いることが有効であることも開示されている(特許文献4)。この低比重の単分散球形シリカは、転がるためブレードと像担持体との間に介在しやすく効果的な摩擦低減効果を発揮し、クリーニング性の向上にも有効であることが知られている(特許文献4、5)。
【0009】
しかし、球形シリカ粒子の粒径を大きくすると、そのシリカ粒子の単位質量当たりの表面積が減少するため、帯電量が減り、シリカ粒子とトナー粒子との付着力に支配的なクーロン力が弱くなるため、トナー粒子への付着性が低下してトナー粒子から外れやすくなる。シリカ粒子がトナー粒子から外れると、外れたシリカ粒子やトナー粒子によって感光体・帯電ロール・現像ロールの汚染やクリーニングブレードの欠けが発生し、その部材汚染等に起因した画像欠陥を引き起こすことも知られている(特許文献3)。
【0010】
一般的に、トナーやシリカ粒子の帯電量は使用される環境によって変化し、高温高湿では、帯電量が低下してシリカ粒子のトナー粒子への付着性が低下するため、シリカ粒子がよりトナー粒子から外れ易くなる。一方、低温低湿では、帯電量が過剰に高くなり、トナーに帯電していた電荷が他のものに移り、画像劣化が起こり易い。
【0011】
このようにトナー外添剤として用いられるシリカ粒子は、環境変化時に帯電コントロールがしにくいという問題があり、帯電制御が良好なシリカ粒子が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平06-027718号公報
【特許文献2】特開平11-143118号公報
【特許文献3】特開2007-264142号公報
【特許文献4】特開2001-066820号公報
【特許文献5】特開2005-004051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明は、環境変化時の帯電変化が少ない表面処理ゾルゲルシリカ粒子であって、トナー外添剤として用いた場合、トナーに良好な印刷特性を与えることが可能な表面処理ゾルゲルシリカ粒子及びその製造方法、並びに該表面処理ゾルゲルシリカ粒子からなるトナー外添剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、表面に特定のシロキサン単位を有し、特定の粒径、平均円形度、屈折率、真密度、水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積比及び吸湿率を有する表面処理ゾルゲルシリカ粒子が、トナー外添剤として用いた場合、環境変化時の帯電変化が少なく、トナーに良好な印刷特性を与えることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
即ち、本発明は、下記の表面処理ゾルゲルシリカ粒子、表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法及び静電荷像現像用トナー外添剤を提供するものである。
[1]
表面に、R2SiO3/2単位(式中、R2は置換又は非置換の炭素原子数1~20の1価炭化水素基である)及びR4
3SiO1/2単位(式中、R4は同一または異なる置換または非置換の炭素原子数1~6の1価炭化水素基である。)を有する表面処理ゾルゲルシリカ粒子であって、
(1)動的光散乱法におけるメジアン径が50nm~300nmであり、
(2)平均円形度が0.80~1.0であり、
(3)屈折率が1.380~1.420であり、
(4)真密度が1.7000g/cm3以上1.9000g/cm3未満であり、
(5)体積抵抗率が1011Ω・cm以上であり、
(6)水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積で表される比が2.00~10.0であり、
(7)30℃/90%RHに2時間曝露した際の吸湿率が、150℃で1日間乾燥した際の乾燥時質量に対して6.0~11質量%である
表面処理ゾルゲルシリカ粒子。
[2]
前記R2及びR4がメチル基である[1]に記載の表面処理ゾルゲルシリカ粒子。
[3]
下記工程(A1)~(A6)を有する[1]に記載の表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法。
工程(A1):下式(I)で表される4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合物又はこれらの混合物を、塩基性物質の存在下、親水性有機溶媒及び水を含む混合液中で加水分解縮合することによって親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液を得る工程
Si(OR1)4 (I)
(式中、R1は、独立に、炭素原子数1~6の1価炭化水素基を表す。)
工程(A2):工程(A1)で得られた親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液の分散媒中の親水性有機溶媒を水に置換し、親水性ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液を得る工程
工程(A3):工程(A2)で得られた親水性ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液を、水の還流温度で5時間以上還流する工程
工程(A4):工程(A3)後の親水性ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液に、下式(II)で表される3官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合物又はこれらの混合物を、該親水性ゾルゲルシリカ粒子のSi原子1モルに対し0.01~0.5モル添加し、該親水性ゾルゲルシリカ粒子の表面にR2SiO3/2単位を導入し、予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液を得る工程
R2Si(OR3)3 (II)
(式中、R2はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の1価炭化水素基を表し、R3は、独立に、炭素原子数1~6の1価炭化水素基を表す。)
工程(A5):工程(A4)で得られた予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液の分散媒をケトン系溶媒に置換し、予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子のケトン系溶媒分散液を得る工程
工程(A6):工程(A5)で得られた予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子のケトン系溶媒分散液に、下式(III)で表されるシラザン化合物、下式(IV)で表される1官能性シラン化合物又はこれらの混合物を該予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子のSi原子1モルに対し0.1~0.5モル添加し、該予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子の表面にR4
3SiO1/2単位を導入し、表面処理ゾルゲルシリカ粒子を得る工程
R4
3SiNHSiR4
3 (III)
R4
3SiX (IV)
(式中、R4は、独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~6の1価炭化水素基を表し、Xは水酸基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、又は塩素原子を表す。))
[4]
R2及びR4がメチル基である[3]に記載の表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法。
[5]
[1]又は[2]に記載の表面処理ゾルゲルシリカ粒子からなる静電荷像現像用トナー外添剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子は、トナー外添剤として用いた場合、環境変化時の帯電変化が少なく、トナーに良好な印刷特性を与えるため、トナー外添剤として極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
[表面処理ゾルゲルシリカ粒子]
本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子は、表面に、R2SiO3/2単位(式中、R2は置換又は非置換の炭素原子数1~6の1価炭化水素基である。)及びR4
3SiO1/2単位(式中、R4は同一または異なる置換または非置換の炭素原子数1~6の1価炭化水素基である。)を有する表面処理ゾルゲルシリカ粒子であって、以下の(1)~(7)のすべてを満たすものである。
(1)動的光散乱法におけるメジアン径が50nm~300nmであり、
(2)平均円形度が0.8~1.0であり、
(3)屈折率が1.38~1.42であり、
(4)真密度が1.7g/cm3以上1.9g/cm3未満であり、
(5)体積抵抗率が1011Ω・cm以上であり、
(6)水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積で表される比が2~10であり、
(7)30℃/90%RHに2時間曝露した際の吸湿率が、150℃で1日間乾燥した際の乾燥時質量に対して6~11質量%である。
【0018】
R2は、炭素原子数1~20の1価炭化水素基であるが、好ましくは炭素原子数1~8、より好ましくは炭素原子数1~3の1価炭化水素基である。R2で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、n-ブテニル基、n-ヘキセニル基、n-オクテニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基等が挙げられ、特に好ましくは、メチル基である。また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部または全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0019】
R4は、炭素原子数1~6の1価炭化水素基であるが、炭素原子数1~4のアルキル基が好ましく、特に炭素原子数1~2のアルキル基が好ましい。R3で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基であり、特に好ましくは、メチル基及びエチル基である。また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部または全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0020】
本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子は、上記物性(1)~(7)を併せ持つことで、トナー外添剤として用いた場合、環境変化時の帯電変化が少なく、トナーに良好な印刷特性を与える。
【0021】
(1)動的光散乱法におけるメジアン径
本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子の動的光散乱法におけるメジアン径は、50nm~300nmであり、好ましくは、50nm~200nmである。メジアン径が50nm未満であると、トナー外添剤として用いた場合に、充分なスペーサ効果を発揮できない点で好ましくない。また、メジアン径が300nmを超えると、表面積の減少による帯電量の低下やトナー粒子への付着力の低下が起こりやすくなるため好ましくない。
【0022】
メジアン径は、動的光散乱法によって測定される表面処理ゾルゲルシリカ粒子の体積基準の粒度分布から求めた値である。動的光散乱法とは、動的光散乱粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラックベル社製NanotracWave II-Ex150)を用いて、レーザー光をシリカ粒子の分散液に照射し得られた散乱光の散乱強度がシリカ系微粒子の粒径によって変わることを利用して、散乱強度から得られる粒度分布を求める方法である。
【0023】
(2)平均円形度
本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子の円形度は、粒子を二次元に投影した時の、(粒子面積と等しい面積の円の周囲長/粒子周囲長)で定義され、平均円形度は走査型電子顕微鏡で観察した任意のシリカ粒子10個の円形度の平均値である。本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子の平均円形度は0.80~1.0であり、0.92~1.0であることが好ましい。平均円形度が0.80を下回ると不規則形状の粒子の割合が多くなり、トナーの汚染を引き起こしやすくなるため好ましくない。
【0024】
(3)屈折率
屈折率は表面処理ゾルゲルシリカ粒子内部の空隙を示し、屈折率は1.380~1.420である。屈折率が1.380より小さいと、空隙が多く存在しゾルゲルシリカ粒子の架橋構造が脆いことを意味するため好ましくない。また、屈折率が1.420を超えると空隙が少なく比重が大きくなるため、帯電量が低下したり、トナー粒子への付着力が低下する場合があるため好ましくない。
【0025】
本発明において、表面処理ゾルゲルシリカ粒子の屈折率は、トルエン(屈折率1.4962)とメチルイソブチルケトン(屈折率1.3958)との混合溶媒に表面処理ゾルゲルシリカ粒子を添加し分散させ、上記溶媒の配合比率により屈折率を調整し、25℃において分散液の可視光透過率が最も高くなった点(混合溶媒と表面処理シリカ微粒子の屈折率が合致する点)での混合溶媒の屈折率とする。
【0026】
(4)真密度
真密度は、1.7000g/cm3以上1.9000g/cm3未満であり、好ましくは、1.7500g/cm3~1.8500g/cm3である。真密度が1.7000g/cm3未満であると、表面処理ゾルゲルシリカ粒子の強度が低下する場合があるため好ましくない。また、真密度が1.9000/cm3以上であるものは、シリカ粒子1個当たりの質量が大きくなるため、トナー外添剤として用いた場合に、トナー粒子へ与える衝撃が大きくなる点で好ましくない。
【0027】
(5)体積抵抗率
体積抵抗率は、粒子の絶縁性及び導電性の指標であり、体積抵抗率は1011Ω・cm以上である。1011Ω・cm未満では、導電性が発現しトナー帯電特性に悪影響を及ぼす場合があり好ましくない。なお、上限については、トナー外添剤として適切な帯電特性を得る点から、5.0×1014Ω・cm程度以下が好ましい。
【0028】
(6)水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積の比
水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積の比は、吸湿性を示す尺度であり、各気体の吸着比表面積はBET法により求めることができる。水分子(約2Å)の方が窒素分子(約3Å)より小さいため、水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積比が小さいということは、即ち、水分子は通過しにくいが、窒素は通過する程度の空隙があることを示す。
【0029】
水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積の比は2.00~10.0であり、好ましくは5.00~10.0である。この比表面積比が2.00未満であると吸湿性に劣るものとなり、トナーの帯電環境をうまく調整できなくなるため好ましくない。10.0より大きいと吸湿性が高すぎて、トナーの帯電量が湿度の影響を大きく受けるため好ましくない。
【0030】
(7)吸湿率
本発明において、吸湿率は、シリカ粒子を30℃、90RH%の条件に2時間曝露した際の質量(a)と、150℃の条件にて1日間乾燥した際の乾燥時質量(b)とをそれぞれ測定し、吸湿量の乾燥時質量に対する百分率[(a)-(b)]/(b)×100(質量%)として求めた値である。本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子の吸湿率は6.0~11質量%であり、9.0~11質量%が好ましい。吸湿率が6.0質量%未満であると、環境変化による帯電量変化を抑制できず好ましくない。一方、吸湿率が11質量%を超えると、帯電量が低下傾向を示すため好ましくない。
【0031】
[表面処理ゾルゲルシリカ粒子の製造方法]
本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子は、下記工程(A1)~(A6)を有する製造方法により得ることができる。
工程(A1):親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液を得る工程
工程(A2):水への分散媒置換工程
工程(A3):親水性ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液を加熱する工程
工程(A4):3官能性シラン化合物による表面処理工程
工程(A5):ケトン系溶媒への分散媒置換工程
工程(A6):1官能性シラン化合物による再表面処理工程
【0032】
・工程(A1):親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液を得る工程
本工程は、下式(I)で表される4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合物又はこれらの混合物を、塩基性物質の存在下、親水性有機溶媒及び水を含む混合液中で加水分解縮合することによって親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液を得る工程である。
Si(OR1)4 (I)
(式中、R1は、独立に、炭素原子数1~6の1価炭化水素基を表す。)
【0033】
上式(I)中、R1は、炭素原子数1~6の1価炭化水素基であるが、炭素原子数1~4のものが好ましく、特に炭素原子数1~2のものが好ましい。R1で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基であり、特に好ましくは、メチル基及びエチル基である。
上式(I)で表される4官能性シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン及びテトラフェノキシシラン等が挙げられ、好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラブトキシシランであり、特に好ましくは、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランである。また、上式(I)で表される4官能性シラン化合物の加水分解縮合物としては、例えば、メチルシリケート、エチルシリケート等が挙げられる。
【0034】
塩基性物質としては、例えばアンモニア、ジメチルアミン、ジエチルアミン等が挙げられ、好ましくは、アンモニア及びジエチルアミンであり、特に好ましくはアンモニアである。これらの塩基性物質は、所要量を水に溶解したものが使用できる。
【0035】
親水性有機溶媒としては、上式(I)で表される化合物および/またはその部分加水分解縮合物ならびに水を溶解するものであれば特に制限はなく、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類等が挙げられ、アルコール類が好ましい。アルコールの炭素原子数が増すと生成するシリカ粒子の粒子径が大きくなるため、目的とするシリカ粒子の粒径によりアルコールの種類を選択することができる。
【0036】
本工程において使用される水の量は、上式(I)で表される4官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物のヒドロカルビルオキシ基の合計1モルに対して0.5~5モルであることが好ましく、0.6~2モルであることがより好ましく、0.7~1モルであることが特に好ましい。なお、前述の塩基性物質を水に溶解して用いる場合は、該塩基性物質を溶解する水も本工程中の「水」に含まれる。
水に対する親水性有機溶媒の比率は、シリカ粒子と混合溶媒との親和性および製造の容易性の点から、質量比で0.2~10であることが好ましく、0.3~5であることがより好ましい。
塩基性物質の量は、得られるシリカ粒子の大きさの点から、上式(I)で表される4官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合生成物のヒドロカルビルオキシ基の合計1モルに対して0.01~2モルであることが好ましく、0.03~0.5モルであることがより好ましい。
【0037】
4官能性シラン化合物等の加水分解および縮合は、周知の方法、即ち、親水性有機溶媒と水との混合物中に、4官能性シラン化合物及び塩基性物質を添加することにより行うことができる。
【0038】
加水分解および縮合の際の温度は、20~50℃であることが好ましく、温度が高いほど小粒径のシリカ粒子が得られる。
【0039】
この工程(A1)で得られる親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液中の濃度は一般に、3~15質量%であり、好ましくは5~10質量%である。
【0040】
工程(A2):水への分散媒置換工程
本工程は、工程(A1)で得られた親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液中の親水性有機溶媒を水に置換する工程である。工程(A2)で置換される親水性有機溶媒には、工程(A1)で使用した親水性有機溶媒および縮合によって生じたアルコール等の揮発性副生成物が含まれる。
置換方法としては、工程(A1)で得られた表面処理コロイダルシリカを加熱し、加熱による留出分と同量以上の水を加えながら濃縮する加熱濃縮法、フィルターを用いた限外ろ過などの方法により容易にかつ経済的に水系分散液を得ることができる。
【0041】
水の添加量は、水分散表面処理コロイダルシリカの安定性の観点から使用した親水性有機溶媒および生成したアルコール量の合計に対して好ましくは質量比で0.5~2倍量、より好ましくは0.9~1.3倍量である。
【0042】
工程(A3):親水性ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液を加熱する工程
本工程は、工程(A2)で得られた親水性ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液を、水の還流温度で5時間以上、好ましくは7~12時間反応させる工程である。本工程により、ゾルゲルシリカ粒子内部に残存しているアルコキシ基の加水分解(シラノール化)を促進させ、水分子との親和性を高めることによりゾルゲルシリカ粒子の吸湿性を向上させることができると考えられる。水の還流温度は、例えば、工程(A3)を1気圧下でおこなう場合は99~100℃とすることができるが、圧力が異なる場合は前記温度範囲に限られない。
本工程(A3)によって、所望の前記(6)水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積の比及び前記(7)吸湿率を満たす表面処理ゾルゲルシリカ粒子が得られる。
【0043】
工程(A4):3官能性シラン化合物による表面処理工程
本工程は、工程(A3)後の親水性ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液に、下式(II)で表される3官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合物又はこれらの混合物を添加し、ゾルゲルシリカ粒子表面にR2SiO3/2単位を導入し、予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液を得る工程である。
R2Si(OR3)3 (II)
(式中、R2はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の1価炭化水素基を表し、R3は、独立に、炭素原子数1~6の1価炭化水素基を表す。)
【0044】
上式(II)中、R2は、炭素原子数1~20の1価炭化水素基であるが、好ましくは炭素原子数1~10、特に好ましくは炭素原子数1~3の1価炭化水素基である。R2で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル等のアルキル基等が挙げられ、特に好ましくは、メチル基、エチル基及びプロピル基である。また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部または全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0045】
上式(II)中、R3は、炭素原子数1~6の1価炭化水素基であるが、炭素原子数1~4のものが好ましく、特に炭素原子数1~2のものが好ましい。R3で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基であり、特に好ましくは、メチル基及びエチル基である。
【0046】
上式(II)で表される3官能性シラン化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、i-プロピルトリメトキシシラン、i-プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
上式(II)で表される3官能性シラン化合物の使用量は、親水性ゾルゲルシリカ粒子のSi原子1モルに対し0.01~0.5モル、好ましくは0.01~0.1モルである。
【0048】
本工程(A4)における反応条件は限定されないが、反応温度20~60℃、反応時間1~24時間が好ましい。
【0049】
工程(A5):ケトン系溶媒への分散媒置換工程
本工程は、工程(A4)で得られた予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液の水、親水性有機溶媒および縮合によって生じたアルコール等の揮発性副生成物等から構成される分散媒をケトン系溶媒に置換する工程である。
【0050】
ケトン系溶媒の具体例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等が挙げられ、好ましくはメチルイソブチルケトンである。
【0051】
ケトン系溶媒の添加量は、シリカ粒子の凝集抑制、次工程の1官能性シラン化合物による表面処理工程における反応系の濃度の観点から、工程(A4)で得られた予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子に対して好ましくは質量比で0.5~5倍量、より好ましくは1~2倍量用いるのがよい。
【0052】
疎水性球状シリカ粒子分散体中の親水性有機溶媒、水、および縮合によって生じたアルコール等の揮発性副生成物をケトン系溶媒に置換する方法としては、濃縮(大気圧または減圧)、フィルターを用いた限外ろ過などの方法が挙げられる。工程(A4)で得られた予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液に含まれる水および親水性有機溶媒よりも沸点の高いケトン系溶媒を工程(A4)で得られた予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液に添加し、濃縮する方法が好ましい。
【0053】
工程(A6):1官能性シラン化合物による再表面処理工程
本工程は、工程(A5)で得られた予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子のケトン系溶媒分散液に、下式(III)で表されるシラザン化合物、下式(IV)で表される1官能性シラン化合物又はこれらの混合物を該予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子のSi原子1モルに対し0.1~0.5モル添加し、該予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子の表面にR4
3SiO1/2単位を導入し、表面処理ゾルゲルシリカ粒子を得る工程である。
R4
3SiNHSiR4
3 (III)
R4
3SiX (IV)
(式中、R4は、独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~6の1価炭化水素基を表し、Xは水酸基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、または塩素原子を表す。)
【0054】
上式(III)および(IV)中、R4は、好ましくは炭素原子数1~4、特に好ましくは炭素原子数1~2の1価炭化水素基である。R4で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基及びプロピル基であり、特に好ましくは、メチル基及びエチル基である。また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部または全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0055】
Xで表されるアルコキシ基としては、炭素原子数1~4のものが好ましく、特にメトキシ基及びエトキシ基が好ましい。
【0056】
上式(III)で表されるシラザン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン等が挙げられ、好ましくはヘキサメチルジシラザンである。上式(IV)で表される1官能性シラン化合物としては、例えば、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール等のモノシラノール化合物;トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン等のモノクロロシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン等が挙げられ、好ましくは、トリメチルシラノール及びトリメチルメトキシシランである。
【0057】
上式(III)および(IV)で表される化合物の使用量は、上記予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子のSi原子1モルに対して好ましくは0.1~0.5モルであり、より好ましくは0.2~0.4モル、特に好ましくは0.25~0.35モルである。このような範囲であれば、良好な正帯電性、環境帯電特性、流動性が得られる。
【0058】
本工程(A6)における表面処理の反応条件は、反応温度40~130℃、反応時間1~10時間が好ましく、反応温度60~120℃、反応時間2~8時間がより好ましい。
【0059】
反応後は表面処理ゾルゲルシリカ粒子のケトン系溶媒分散液からケトン系溶剤、水およびアルコール等の揮発性副生成物を適宜除去することにより表面処理ゾルゲルシリカ粒子を得ることができる。
【0060】
[静電荷像現像用トナー外添剤]
本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子は、トナー外添剤、特に静電荷像現像用トナー外添剤として好適に用いることができる。本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子を用いたトナー外添剤のトナーに対する配合量は、トナー100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましく、さらに好ましくは0.1~5質量部である。この配合量が、0.01質量部以上であれば、トナーへの付着量が十分で、トナーの流動性が十分得られるため好ましく、20質量部以下であれば、トナーの帯電性に好影響を及ぼし、経済的にも好ましい。
本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子からなる静電荷像現像用トナー外添剤を添加するトナーとしては、結着樹脂と着色剤を主成分として構成される公知のものが使用できる。また、必要に応じて帯電制御剤が添加されていてもよい。トナーは、一成分現像剤として使用できるが、また、トナーをキャリアと混合して二成分現像剤として使用することもできる。二成分現像剤として使用する場合においては、本発明の静電荷像現像用トナー外添剤は予めトナーに添加せず、トナーとキャリアの混合時に添加してトナーの表面被覆を行ってもよい。キャリアとしては、鉄粉等又はそれらの表面に樹脂コーティングされた公知のものが使用される。
【実施例0061】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、下記の実施例は、本発明を何ら制限するものではない。実施例及び比較例で得られたシリカ粒子の粒度分布測定および粒子の形状観察等の各種評価は下記の条件で行い、結果を表1に示した。
【0062】
[(1)動的光散乱法におけるメジアン径]
シリカ粒子が0.5質量%となるようにシリカ粒子分散体をメタノールで希釈し、超音波を10分間照射した際の粒度分布を、動的光散乱法による粒度分布測定装置(マイクロトラックベル社製、Nanotrac Wave II-EX150)により測定し、得られた体積基準の粒度分布を基に、メジアン径を算出した。
【0063】
[(2)平均円形度]
電界放出型走査電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製S-4700型)を用いてシリカ粒子の観察を行い、形状を確認した。粒子を二次元に投影した時の円形度を(粒子面積と等しい円の周囲長)/(粒子周囲長)として求め、シリカ粒子10個の円形度の平均値を平均円形度とした。
【0064】
[(3)屈折率]
トルエン(屈折率1.4962)とメチルイソブチルケトン(屈折率1.3958)との混合溶媒20gに表面処理シリカ微粒子1gを添加し分散させた。上記溶媒の配合比率により屈折率を調整し、分散液の可視光透過率が最も高くなったときの混合溶媒の屈折率の値をシリカ粒子の屈折率とした。なお、混合溶媒の屈折率はデジタル屈折計(アタゴ社RX-9000α)にて測定した25℃における値であり、分散液の可視光透過率は分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス社製U-3900H)を用いて測定した25℃における波長380~780nmの光透過率の平均値を用いた。
【0065】
[(4)真密度]
液相置換法を用いた自動真密度測定装置((株)セイシン企業製オートトゥルーデンサーMAT-7000)を用いて、シリカ粒子の真密度を測定した。
【0066】
[(5)体積抵抗率]
粉体抵抗システム((株)三菱化学アナリテック製MCP-PD51)を用いて、4.0kN荷重におけるシリカ粒子の体積抵抗率を四探針方式の電極ユニットを用いて測定した。
【0067】
[(6)水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積比]
高精度ガス吸着量測定装置(マイクロトラックベル社製BELSORP MAX II)を用いて、BET1点法により水蒸気媒体及び窒素媒体それぞれに対するシリカ粒子の比表面積を測定し、水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積の比を求めた。
【0068】
[(7)吸湿率]
シリカ粒子を30℃、90RH%の条件に2時間曝露した際の質量(a)と、150℃の条件にて1日間乾燥した際の乾燥時質量(b)とをそれぞれ測定し、乾燥時質量に対する吸湿率[(a)-(b)]/(b)×100(質量%)を求めた。
【0069】
[実施例1-1]
・工程(A1):親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液を得る工程
攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた3リットルのガラス製反応器にメタノール623.7g、水41.4g及び28%アンモニア水49.8gを入れて混合した。この溶液を35℃となるように調整し、攪拌しながらテトラメトキシシラン1163.7g(7.66モル)及び5.4%アンモニア水418.1gの滴下を同時に開始し、前者は6時間、そして後者は4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに0.5時間攪拌を継続して加水分解を行うことにより、親水性ゾルゲルシリカ粒子の混合溶媒分散液2,295gを得た。
【0070】
・工程(A2):水への分散媒置換工程
上記工程(A1)後の反応容器にエステルアダプターと冷却管を取付け、60~70℃に加熱しメタノール1132gを留去したところで水1200gを添加し、次いで70~90℃に加熱してメタノール273gを留去し、親水性ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液を得た。
【0071】
・工程(A3):親水性ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液を加熱する工程
上記工程(A2)後、親水性ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液の内温を99~100℃に保ち、還流させながら10時間攪拌を行った。
【0072】
・工程(A4):3官能性シラン化合物による表面処理工程
上記工程(A3)後の反応容器に、25℃でメチルトリメトキシシラン11.6g(シリカ中のSi原子1モルに対して0.1モル相当量)を0.5時間かけて滴下した後、25℃で12時間撹拌し予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子の水系分散液を得た。
【0073】
・工程(A5):ケトン系溶媒への分散媒置換工程
上記工程(A4)後の反応容器に、25℃でメチルイソブチルケトン1440gを添加した。80~110℃に加熱し、10時間かけてメタノール及び水の混合物を留去し、予備表面処理ゾルゲルシリカ粒子のケトン系溶媒分散液を得た。
【0074】
・工程(A6):1官能性シラン化合物による再表面処理工程
上記工程(A5)後の反応容器に、25℃でヘキサメチルジシラザン357.6g(シリカ中のSi原子1モルに対して0.29モル相当量)を添加し、120℃の反応温度で8時間反応させ、シリカ粒子表面のトリメチルシリル化を行った。その後分散媒を減圧下で留去して白色の表面処理ゾルゲルシリカ粒子(i)470gを得た。
【0075】
[実施例1-2]
実施例1-1の工程(A1)において、反応温度を42℃とし、工程(A3)において、還流させながら攪拌する時間を12時間とした以外は実施例1-1と同様にして、表面処理ゾルゲルシリカ粒子(ii)463gを得た。
【0076】
[実施例1-3]
実施例1-1の工程(A1)において、反応温度を45℃とし、工程(A3)において、還流させながら攪拌する時間を11時間とした以外は実施例1-1と同様にして、表面処理ゾルゲルシリカ粒子(iii)471gを得た。
【0077】
[実施例1-4]
実施例1-1の工程(A1)において、反応温度を25℃とし、工程(A3)において、還流させながら攪拌する時間を9時間とした以外は実施例1-1と同様にして、表面処理ゾルゲルシリカ粒子(iv)468gを得た。
【0078】
[比較例1-1]
実施例1-1において、工程(A3)を行わなかった以外は実施例1-1と同様にして、表面処理ゾルゲルシリカ粒子(v)474gを得た。
【0079】
[比較例1-2]
実施例1-1の工程(A3)において、還流させながら攪拌する時間を4時間とした以外は実施例1と同様にして、表面処理ゾルゲルシリカ粒子(vi)472gを得た。
【0080】
【0081】
表1に示されるように、実施例1-1~1-4の表面処理ゾルゲルシリカ粒子は高い吸湿性を示した。一方、比較例1-1、1-2では、水蒸気吸着比表面積/窒素吸着比表面積比が小さく、吸湿性が劣る結果となった。
【0082】
[実施例2-1~2-4、比較例2-1、2-2]
(外添剤混合トナーの製造)
Tg60℃、軟化点110℃のポリエステル樹脂96質量部と色剤としてカーミン6BC(住化カラー(株)製)4質量部とを溶融混練、粉砕、分級後、体積メジアン径7μmのトナーを得た。このトナー10gと実施例1-1~1-4、及び比較例1-1、1-2で得られた各表面処理ゾルゲルシリカ粒子0.2gとをサンプルミルにて混合し、外添剤混合トナーを得た。
【0083】
(二成分現像剤の調製)
上記外添剤混合トナー3質量部と、キャリアであるフェライト(パウダーテック(株)製、EL-35)97質量部とを混合して二成分現像剤を調製した。上記工程により得られた二成分現像剤について、下記の方法(8)~(12)に従って測定を行った結果を表2に示す。
【0084】
(8)トナー帯電量
上記二成分現像剤を高温高湿(30℃、90%RH)及び低温低湿(10℃、15%RH)の各条件下に1日間曝露した後、同一条件下でそれぞれの試料を摩擦帯電した際の帯電量をブローオフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル(株)製、TB-200)を用いて測定した。
【0085】
(9)感光体へのトナー付着
上記二成分現像剤を、有機感光体を備えた現像機に入れ、25℃、50%RH環境下で30,000枚のプリントテストを実施した。このとき、感光体へのトナーの付着は、全ベタ画像での白抜けとして感知できる。ここで、白抜けの程度は、1cm2あたりの白抜け個所の数が10個以上を「多い」、1~9個を「少ない」、0個を「なし」と評価した。
【0086】
(10)感光体摩耗
上記(9)のプリントテストにおいて、画像の乱れとして検出される感光体摩耗について、下記基準で評価した。
A:画像の乱れのないもの
B:大きな画像の乱れのないもの
C:画像の乱れがあるもの
【0087】
(11)画像欠損(白点)評価
上記二成分現像剤を30℃、90%RHの環境に1日間曝露し、その後20cm四方のベタ印刷(画像濃度100%)を、5,000枚連続印刷を行った後、再び上記二成分現像剤を30℃、90%RH環境下で静置した。これを60回繰返し、合計300,000枚の印刷を行った。初日の10枚目の印刷物を印刷物1、最終日の最終印刷物を印刷物2とした。
【0088】
上記で得られた印刷物2の画像観察による画像欠損(白点)の有無を下記基準で評価した。
A:目視で画像欠損なし(白点なし)
B:目視で白点(粒子状に白く抜けた画像)が1個以上4個以下
C:目視で白点が5個以上9個以下
D:目視で白点が10個以上
【0089】
(12)濃度変化(ΔE)評価
上記印刷物1に対する印刷物2の濃度変化について、反射濃度計X-rite938(X-rite社製)を使用し、JIS Z 8781-5に準拠してCIE1976(L*a*b*)色空間における色差(ΔE)を測定し、下記基準により評価した。
A:ΔE差が1未満
B:ΔE差が1以上2.5未満
C:ΔE差が2.5以上3.0未満
D:ΔE差が3.0以上
【0090】
【0091】
表2に示されるように、実施例1-1~1-4で得られた表面処理ゾルゲルシリカ粒子をトナー外添剤として用いた二成分現像剤は、トナー帯電量の環境による変動が小さく、印刷画像欠陥のないものであった。本発明の表面処理ゾルゲルシリカ粒子は適度な吸湿性を有するため、高湿環境においてはトナー粒子表面近傍環境の湿気を吸収することで帯電量の低下を抑制し、また、低湿環境ではシリカ粒子内部に保持されていた水分が放出されることでトナー粒子表面近傍の環境変化を小さくしたと考えられる。
一方、比較例1-1、1-2で得られた表面処理ゾルゲルシリカ粒子をトナー外添剤として用いた二成分現像剤は、トナー帯電量の環境による変動が大きく、印刷特性に劣っていた。