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特開2025-10916光フィルタ、光フィルタの製造方法、設計方法、設計装置および設計プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010916
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】光フィルタ、光フィルタの製造方法、設計方法、設計装置および設計プログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20250116BHJP
   G02B 6/126 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
G02B6/12 341
G02B6/126
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113225
(22)【出願日】2023-07-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 集会名 電子情報通信学会 総合大会 開催日 令和5年3月10日 開催場所 芝浦工業大学会場
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行日 令和5年2月28日 刊行物名 電子情報通信学会 総合大会予稿集 発行者名 電子情報通信学会予稿集編集委員会
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 務
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 晋聖
【テーマコード(参考)】
2H147
【Fターム(参考)】
2H147AB21
2H147AB28
2H147BA05
2H147BB02
2H147BD16
2H147BE03
2H147BE15
2H147CA23
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147FC01
2H147FD20
2H147GA01
2H147GA10
(57)【要約】
【課題】温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することが可能な光フィルタ、光フィルタの製造方法、設計方法、設計装置および設計プログラムを提供する。
【解決手段】3つ以上の導波路と、前記3つ以上の導波路のそれぞれに設けられた区間と、を具備し、前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なる光フィルタ。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つ以上の導波路と、
前記3つ以上の導波路のそれぞれに設けられた区間と、を具備し、
前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なる光フィルタ。
【請求項2】
前記3つ以上の導波路のうち少なくとも1つは偏波回転子を有する請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項3】
前記導波路は導波路コアを含み、
前記偏波回転子は、前記導波路コアと、前記導波路コアから突出するリブ部を含む請求項2に記載の光フィルタ。
【請求項4】
前記3つ以上の導波路は、第1導波路、第2導波路、第3導波路および第4導波路を含み、
前記区間は第1区間、第2区間、第3区間および第4区間を含み、
前記偏波回転子は第1偏波回転子および第2偏波回転子を含み、
前記第1導波路は、第1結合部において前記第2導波路と光学的に結合し、前記第1結合部より後段の第2結合部において、前記第3導波路と光学的に結合し、前記第1結合部と前記第2結合部との間に前記第1区間を有し、
前記第2導波路は、前記第1結合部より後段の第3結合部において前記第4導波路と光学的に結合し、前記第1結合部と前記第3結合部との間に前記第2区間を有し、
前記第3導波路は、前記第2結合部より後段の第4結合部において、前記第4導波路のうち前記第3結合部より前段の部分と光学的に結合し、前記第2結合部と前記第4結合部との間に前記第3区間を有し、
前記第3導波路は前記第1偏波回転子および前記第2偏波回転子を有し、
前記第1偏波回転子は前記第2結合部と前記第4結合部との間に位置し、
前記第2偏波回転子は前記第1偏波回転子と前記第4結合部との間に位置し、
前記第3区間は前記第1偏波回転子と前記第2偏波回転子との間に位置し、
前記第4導波路は、前記第3結合部と前記第4結合部との間に前記第4区間を有し、
前記第1区間および前記第4区間を伝搬する光のモード、前記第2区間を伝搬する光のモード、および前記第3区間を伝搬する光のモードは、互いに異なる請求項2または請求項3に記載の光フィルタ。
【請求項5】
前記第1区間および前記第4区間にTE0モードが伝搬し、
前記第2区間にTE1モードが伝搬し、
前記第3区間にTM0モードが伝搬する請求項4に記載の光フィルタ。
【請求項6】
光フィルタの製造方法であって、
前記光フィルタは、3つ以上の導波路を具備し、
前記3つ以上の導波路のそれぞれは区間を有し、
前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なり、
前記区間は、前記区間における伝搬定数、および前記導波路における光の位相の変化量に応じた長さを有し、
前記製造方法は、前記区間を有する前記3つ以上の導波路を形成する光フィルタの製造方法。
【請求項7】
前記製造方法は、前記区間の長さを設計する工程と、
前記区間の長さに基づいて前記3つ以上の導波路を形成する工程と、を有し、
前記区間の長さを設計する工程は、数1に基づいて前記区間の長さを設計する工程を含む請求項6に記載の光フィルタの製造方法。
【数1】
L1からLn:区間の長さ
β1からβn:区間ごとの伝搬定数
T:温度
λ:波長
k:波数
FSR:スペクトルのピークの間隔
φ:位相の変化量
【請求項8】
前記区間の長さを設計する工程は、前記区間の幅を定めることで前記数1の行列の各項を計算する工程を含む請求項7に記載の光フィルタの製造方法。
【請求項9】
前記3つ以上の導波路は、第1導波路、第2導波路、第3導波路および第4導波路を含み、
前記区間は第1区間、第2区間、第3区間および第4区間を含み、
前記第1導波路は前記第1区間を有し、
前記第2導波路は前記第2区間を有し、
前記第3導波路は前記第3区間を有し、
前記第4導波路は前記第4区間を有し、
前記第1区間および前記第4区間を伝搬する光のモード、前記第2区間を伝搬する光のモード、および前記第3区間を伝搬する光のモードは、互いに異なり、
前記区間の長さを設計する工程は、前記第1区間と前記第4区間とを合わせた長さ、前記第2区間の長さ、および前記第3区間の長さを設計する工程である請求項7または請求項8に記載の光フィルタの製造方法。
【請求項10】
光フィルタの設計方法であって、
前記光フィルタは、3つ以上の導波路を具備し、
前記3つ以上の導波路のそれぞれは区間を有し、
前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なり、
前記区間における伝搬定数、および前記導波路における光の位相の変化量に基づいて、前記区間の長さを設計する光フィルタの設計方法。
【請求項11】
光フィルタの設計装置であって、
前記光フィルタは、3つ以上の導波路を具備し、
前記3つ以上の導波路のそれぞれは区間を有し、
前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なり、
前記設計装置は、
前記区間における伝搬定数を計算する第1計算部と、
前記導波路における光の位相の変化量を計算する第2計算部と、
前記伝搬定数、および前記位相の変化量に基づいて、前記区間の長さを計算する第3計算部と、を具備する光フィルタの設計装置。
【請求項12】
光フィルタの設計プログラムであって、
前記光フィルタは、3つ以上の導波路を具備し、
前記3つ以上の導波路のそれぞれは区間を有し、
前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なり、
コンピュータを、
前記区間における伝搬定数を計算する第1計算部と、
前記導波路における光の位相の変化量を計算する第2計算部と、
前記伝搬定数、および前記位相の変化量に基づいて、前記区間の長さを計算する第3計算部として機能させる、光フィルタの設計プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は光フィルタ、光フィルタの製造方法、設計方法、設計装置および設計プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンに光学素子を形成するシリコンフォトニクスが注目されている。例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板のシリコン層に、マッハツェンダ干渉器を形成することがある。マッハツェンダ干渉器の複数の導波路に、TE0モードとTE1モードを分けて伝搬させる。モードに応じて、導波路の長さおよび幅などを調整することで、スペクトルの温度依存性を小さくする(非特許文献1)。シリコン導波路に偏波回転分離子を設け、光のモードを変換する(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“Broadband CMOS-compatible SOI temperature insensitive Mach-Zehnder interferometer” Peng Xing and Jaime Viegas OPTICS EXPRESS Vol.23,No.19 pp.24098-24107(2015)
【非特許文献2】“Polarizatio rotator-splitters in standard active silicon photonics platforms” Wesley D.Sacher et al. OPTICS EXPRESS Vol.22, No.4 pp.3777-3786(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1の(9)式により、温度依存性が小さくなるように、導波路の長さを設計することができる。光フィルタの小型化のためには、導波路は短い方がよい。導波路の長さは、導波路の幅、およびFSR(スペクトルのピークの間隔)に依存する。幅が大きいと、導波路長は増加する。FSR(スペクトルのピークの間隔)と、導波路の長さは互いに反比例の関係にある。FSRを小さくすると、導波路が長くなる。すなわち、温度依存性を低減しても、導波路が長くなることがある。導波路が長くなると、装置が大型化し、かつ導波路における伝搬損失が増加することがある。そこで、温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することが可能な光フィルタ、光フィルタの製造方法、設計方法、設計装置および設計プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る光フィルタは、3つ以上の導波路と、前記3つ以上の導波路のそれぞれに設けられた区間と、を具備し、前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なる。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することが可能な光フィルタ、光フィルタの製造方法、設計方法、設計装置および設計プログラムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は実施形態に係る光フィルタを例示する平面図である。
図2A図2Aは導波路を例示する平面図である。
図2B図2Bは導波路を例示する平面図である。
図2C図2Cは導波路を例示する平面図である。
図2D図2Dは導波路を例示する平面図である。
図3A図3Aは導波路を例示する断面図である。
図3B図3Bは偏波回転子を例示する断面図である。
図4A図4Aは光フィルタの透過スペクトルを例示する図である。
図4B図4Bはシフト量を例示する図である。
図5A図5Aは光フィルタの設計装置を例示するブロック図である。
図5B図5Bは制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6A図6Aは光フィルタの製造方法を例示するフローチャートである。
図6B図6Bは光フィルタの製造方法を例示するフローチャートである。
図7A図7Aは光フィルタの製造方法を例示する断面図である。
図7B図7Bは光フィルタの製造方法を例示する断面図である。
図8図8は比較例に係る光フィルタを例示する平面図である。
図9図9は区間長の計算結果を例示する図である。
図10図10は区間長の計算結果を例示する図である。
図11図11は区間長の計算結果を例示する図である。
図12図12は区間長の計算結果を例示する図である。
図13A図13Aは近似曲線の例である。
図13B図13Bは近似曲線の例である。
図14A図14Aは区間長の差を例示する図である。
図14B図14Bは区間長の比を例示する図である。
図15図15は波長ロッカを例示する図である。
図16図16は透過率を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0009】
本開示の一形態は、(1)3つ以上の導波路と、前記3つ以上の導波路のそれぞれに設けられた区間と、を具備し、前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なる光フィルタである。3つ以上の異なるモードを伝搬させることで、温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することが可能である。
(2)上記(1)において、前記3つ以上の導波路のうち少なくとも1つは偏波回転子を有してもよい。偏波回転子により光のモードを変換させる。3つ以上の異なるモードを伝搬させることで、温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することが可能である。
(3)上記(2)において、前記導波路は導波路コアを含み、前記偏波回転子は、前記導波路コアと、前記導波路コアから突出するリブ部を含んでもよい。偏波回転子において光の位相が変化する。位相の変化量を考慮して、区間の長さを設計する。温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することが可能である。
(4)上記(2)または(3)において、前記3つ以上の導波路は、第1導波路、第2導波路、第3導波路および第4導波路を含み、前記区間は第1区間、第2区間、第3区間および第4区間を含み、前記偏波回転子は第1偏波回転子および第2偏波回転子を含み、前記第1導波路は、第1結合部において前記第2導波路と光学的に結合し、前記第1結合部より後段の第2結合部において、前記第3導波路と光学的に結合し、前記第1結合部と前記第2結合部との間に前記第1区間を有し、前記第2導波路は、前記第1結合部より後段の第3結合部において前記第4導波路と光学的に結合し、前記第1結合部と前記第3結合部との間に前記第2区間を有し、前記第3導波路は、前記第2結合部より後段の第4結合部において、前記第4導波路のうち前記第3結合部より前段の部分と光学的に結合し、前記第2結合部と前記第4合部との間に前記第3区間を有し、前記第3導波路は前記第1偏波回転子および前記第2偏波回転子を有し、前記第1偏波回転子は前記第2結合部と前記第4結合部との間に位置し、前記第2偏波回転子は前記第1偏波回転子と前記第4結合部との間に位置し、前記第3区間は前記第1偏波回転子と前記第2偏波回転子との間に位置し、前記第4導波路は、前記第3結合部と前記第4結合部との間に前記第4区間を有し、前記第1区間および前記第4区間を伝搬する光のモード、前記第2区間を伝搬する光のモード、および前記第3区間を伝搬する光のモードは、互いに異なってもよい。3つのモードが光フィルタを伝搬する。温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することが可能である。
(5)上記(4)において、前記第1区間および前記第4区間にTE0モードが伝搬し、前記第2区間にTE1モードが伝搬し、前記第3区間にTM0モードが伝搬してもよい。3つのモードが光フィルタを伝搬する。温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することが可能である。
(6)光フィルタの製造方法であって、前記光フィルタは、3つ以上の導波路を具備し、前記3つ以上の導波路のそれぞれは区間を有し、前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なり、前記区間は、前記区間における伝搬定数、および前記導波路における光の位相の変化量に応じた長さを有し、前記製造方法は、前記区間を有する前記3つ以上の導波路を形成する光フィルタの製造方法である。温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することが可能である。
(7)上記(6)において、前記製造方法は、前記区間の長さを設計する工程と、前記区間の長さに基づいて前記3つ以上の導波路を形成する工程と、を有し、前記区間の長さを設計する工程は、数1に基づいて前記区間の長さを設計する工程を含んでもよい。温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することが可能である。
【数1】
L1からLn:区間の長さ
β1からβn:区間ごとの伝搬定数
T:温度
λ:波長
k:波数
FSR:スペクトルのピークの間隔
φ:位相の変化量
(8)上記(7)において、前記区間の長さを設計する工程は、前記区間の幅を定めることで前記数1の行列の各項を計算する工程を含んでもよい。幅を適切な大きさに定める。幅に応じた区間の長さを計算することができる。温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することが可能である。
(9)上記(7)または(8)において、前記3つ以上の導波路は、第1導波路、第2導波路、第3導波路および第4導波路を含み、前記区間は第1区間、第2区間、第3区間および第4区間を含み、前記第1導波路は前記第1区間を有し、前記第2導波路は前記第2区間を有し、前記第3導波路は前記第3区間を有し、前記第4導波路は前記第4区間を有し、前記第1区間および前記第4区間を伝搬する光のモード、前記第2区間を伝搬する光のモード、および前記第3区間を伝搬する光のモードは、互いに異なり、前記区間の長さを設計する工程は、前記第1区間と前記第4区間とを合わせた長さ、前記第2区間の長さ、および前記第3区間の長さを設計する工程でもよい。第1区間、第2区間、第3区間および第4区間の長さを設計することで、温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することが可能である。
(10)光フィルタの設計方法であって、前記光フィルタは、3つ以上の導波路を具備し、前記3つ以上の導波路のそれぞれは区間を有し、前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なり、前記設計方法は、伝搬定数、および前記導波路における光の位相の変化量に基づいて、前記区間の長さを設計する光フィルタの設計方法である。温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することが可能である。
(11)光フィルタの設計装置であって、前記光フィルタは、3つ以上の導波路を具備し、前記3つ以上の導波路のそれぞれは区間を有し、前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なり、前記設計装置は、前記区間における伝搬定数を計算する第1計算部と、前記導波路における光の位相の変化量を計算する第2計算部と、前記伝搬定数、および前記位相の変化量に基づいて、前記区間の長さを計算する第3計算部と、を具備する光フィルタの設計装置である。温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することが可能である。
(12)光フィルタの設計プログラムであって、前記光フィルタは、3つ以上の導波路を具備し、前記3つ以上の導波路のそれぞれは区間を有し、前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なり、コンピュータを、前記区間における伝搬定数を計算する第1計算部と、前記導波路における光の位相の変化量を計算する第2計算部と、前記伝搬定数、および前記位相の変化量に基づいて、前記区間の長さを計算する第3計算部として機能させる、光フィルタの設計プログラムである。温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することが可能である。
【0010】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光フィルタ、光フィルタの製造方法、設計方法、設計装置および設計プログラムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
(光フィルタ)
図1は実施形態に係る光フィルタ100を例示する平面図である。光フィルタ100はマッハツェンダ干渉計フィルタであり、基板10に形成されている。基板10は、例えばSOI(Silicon on Insulator)基板である。基板10の2つの辺は、X軸方向に平行である。別の2つの辺は、Y軸方向に平行である。基板10の上面は、XY平面に平行である。Z軸方向は、基板10の法線方向である。X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向は互いに直交する。
【0012】
光フィルタ100は、導波路20(第1導波路)、導波路22(第2導波路)、導波路24(第3導波路)、および導波路26(第4導波路)を有する。導波路20は区間21(第1区間)を有する。導波路22は区間23(第2区間)を有する。導波路24は区間25(第3区間)を有する。導波路26は区間27(第4区間)を有する。図中で、区間は点線で囲まれた部分である。
【0013】
導波路20は入射ポート1を有する。導波路26は出射ポート2を有する。入射ポート1は、基板10の1つの端部に位置する。出射ポート2は、基板10の別の端部に位置する。図1中の矢印は、光フィルタ100を伝搬する光を表す。入射ポート1に入射した光は、複数の導波路に分波され、伝搬し、合波して、出射ポート2から出射される。導波路のうち前段とは入射ポート1に近い方であり、後段とは前段より出射ポート2に近い方である。
【0014】
導波路22および導波路24はX軸方向に平行である。Y軸方向において、導波路22と導波路24とが並ぶ。導波路22と導波路24との間に、導波路20および導波路26が位置する。
【0015】
導波路20と導波路22とは方向性結合器28(第1結合部)を形成する。方向性結合器28において、導波路20と導波路22とは光学的に結合する。導波路20の方向性結合器28より後段の部分と、導波路24とは、方向性結合器30(第2結合部)を形成する。方向性結合器30において、導波路20と導波路24とは光学的に結合する。
【0016】
導波路22のうち方向性結合器28より後段の部分と、導波路26とは、方向性結合器34(第3結合部)を形成する。方向性結合器34において、導波路22と導波路26とは光学的に結合する。導波路24のうち方向性結合器30より後段の部分と、導波路26のうち方向性結合器34より前段の部分とは、方向性結合器32(第4結合部)を形成する。方向性結合器32において、導波路24と導波路26とは光学的に結合する。2つの導波路が光学的に結合すればよく、方向性結合器以外のカプラを用いてもよい。
【0017】
方向性結合器30および方向性結合器32の結合長は、方向性結合器28および方向性結合器34の結合長より大きく、例えば方向性結合器28および方向性結合器34の結合長の2倍以上である。結合長が長いほど結合係数は高くなり、乗り移る光の強度が増加する。結合長が短いほど、乗り移る光の強度は低下する。方向性結合器30および方向性結合器32の結合係数は、方向性結合器28および方向性結合器34の結合係数より高い。
【0018】
導波路24は、偏波回転子36(第1偏波回転子)および偏波回転子38(第2偏波回転子)を有する。偏波回転子36は、方向性結合器30と方向性結合器32との間に位置する。偏波回転子38は、偏波回転子36と方向性結合器32との間に位置する。区間25は偏波回転子36と偏波回転子38との間に位置する。
【0019】
図2Aから図2Dは導波路を例示する平面図である。図2Aは導波路20および導波路26の平面図である。導波路20および導波路26は湾曲している。導波路20および導波路26の幅W1は、一定であり、例えば400nmである。
【0020】
導波路20の区間21は、方向性結合器28と方向性結合器30との間の部分である。導波路26の区間27は、方向性結合器32と方向性結合器34との間の部分である。区間21の長さをL1aとする。区間27の長さをL1bとする。区間21と区間27を合わせた長さをL1とする。
【0021】
図3Aは導波路26を例示する断面図であり、図2Aの線A-Aに沿った断面を図示している。基板10は、基板12、ボックス層14、および導波路コア16を有する。基板12および導波路コア16はシリコン(Si)で形成されている。ボックス層14は酸化シリコン(SiO)などの絶縁体で形成されている。基板12の1つの面にボックス層14が積層されている。導波路コア16はボックス層14の中に埋め込まれており、導波路として機能する。導波路コア16はシリコン層の一部である。シリコン層は、不図示のテラスを含む。導波路コア16は、テラスから離間している。導波路コア16の厚さT1は例えば220nmである。基板12から導波路コア16までの距離T0は例えば2μmである。
【0022】
図2Bは導波路22の平面図である。導波路22は、区間23、区間40、区間41、区間42および区間43を有する。X軸方向に沿って、区間40、区間41、区間23、区間42、および区間43が、この順番に並ぶ。導波路22の断面は図3Aと同様である。
【0023】
区間40に、図1に示した方向性結合器28が形成される。区間43に方向性結合器34が形成される。区間40および区間43の幅W2は、導波路20および導波路26の幅W1より大きく、例えば831nmである。区間40および区間43の幅は一定である。
【0024】
区間41および区間42はテーパ形状を有する。区間41の幅は、区間40から区間23に向けて小さくなる。区間42の幅は、区間23から区間43に向けて大きくなる。区間41および区間42の幅は、例えば831nmから660nmまで変化する。
【0025】
区間23は図2B中に点線で囲まれた部分であり、区間41と区間42との間に位置する。区間23の幅W3は、導波路20および導波路26の幅W1より大きく、区間40および区間43の幅W2より小さく、例えば660nmである。区間23の幅W3は一定である。区間23の長さをL2とする。
【0026】
図2Cは導波路24の平面図である。導波路24は、区間44、偏波回転子36、区間45、区間25、区間46、偏波回転子38、および区間47を有する。Y軸方向において、区間44、偏波回転子36、区間45、区間25、区間46、偏波回転子38、および区間47は、この順番に並ぶ。
【0027】
区間44および区間47の幅W4は、導波路20および導波路26の幅W1より大きく、例えば831nmである。区間44の幅は、偏波回転子36付近で例えば880nmとなる。区間47の幅は、偏波回転子38付近で例えば880nmとなる。
【0028】
区間45および区間46はテーパ形状を有する。区間45の幅は、偏波回転子36から区間25に向けて大きくなる。区間46の幅は、区間25から偏波回転子38に向けて小さくなる。区間45および区間46の幅は、例えば500nmから1200nmまで変化する。
【0029】
区間25は、図2C中に点線で囲まれた部分である。区間25の幅W5は一定であり、区間44および区間47の幅W4、導波路20および導波路26の幅W1より大きく、例えば1200nmである。区間25の長さをL3とする。導波路24のうち区間44、45、25、46および47の断面は図3Aと同様である。
【0030】
図2Dは偏波回転子36を例示する平面図である。図3Bは偏波回転子36を例示する断面図であり、図2Dの線B-Bに沿った断面を図示している。偏波回転子38は偏波回転子36と同じ構成を有する。
【0031】
偏波回転子36の平面形状はテーパ形状である。偏波回転子36は、導波路コア16と2つのリブ部17とを含む。導波路コア16は中央に位置する。リブ部17は、導波路コア16からY軸方向の両側に突出する。
【0032】
導波路コア16の1つの端部における幅W6は例えば880nmである。中央部における幅W7は例えば700nmである。もう1つの端部における幅W8は例えば500nmである。リブ部17の中央部における幅W9は例えば500nmである。図2Dの線B-Bはリブ部17のX軸方向の中央に位置する。リブ部17のX軸方向の長さは例えば100μmである。
【0033】
図3Bに示すように、導波路コア16およびリブ部17はシリコン層で形成されている。リブ部17の厚さT2は、導波路コア16の厚さT1より小さく、例えば60nmである。
【0034】
図1に示すように、入射ポート1に光が入射される。入射光のモードはTE0モードである。入射光は導波路20を伝搬する。方向性結合器28において、光の一部は導波路22に乗り移る。例えば、光のうち50%は導波路22に乗り移り、50%は導波路20のうち方向性結合器28より後段の部分を伝搬する。すなわち、導波路20を伝搬し続ける光と、導波路22に乗り移る光との強度の比は例えば1:1である。
【0035】
方向性結合器28において、光の遷移とともにモード変換が行われる。光のモードは、TE0モードからTE1モードに変化する。TE1モードの光が導波路22の区間23を伝搬する。
【0036】
TE0モードの光は、導波路20の区間21を伝搬し、方向性結合器30において導波路24に乗り移る。例えば、光のうち95%以上が導波路24に乗り移り、100%が導波路24に乗り移ってもよい。方向性結合器30において、光のモードはTE0モードからTE1モードに変換される。
【0037】
偏波回転子36においてモード変換が行われ、モードはTE1モードからTM0モードに変換される。TM0モードの光が導波路24の区間25を伝搬し、偏波回転子38に入力する。偏波回転子38においてモード変換が行われ、モードはTM0モードからTE1モードに変換される。
【0038】
TE1モードの光は、方向性結合器32において導波路26に乗り移る。例えば、光のうち95%以上が導波路26に乗り移り、100%が導波路26に乗り移ってもよい。方向性結合器32において、光のモードはTE1モードからTE0モードに変換される。TE0モードの光が導波路26の区間27を伝搬する。
【0039】
導波路22の区間23を伝搬した光は、方向性結合器34において導波路26に乗り移る。例えば、光のうち50%が導波路26に乗り移る。方向性結合器34において、光のモードはTE1モードからTE0モードに変換される。TE0モードの光は、導波路26を伝搬し、出射ポート2から出射される。
【0040】
上記のように、光フィルタ100は、1つのモード(例えばTE0モード)の入射光を、複数の導波路に分岐し、異なるモード(TE0モード、TE1モード、TM0モード)で伝搬させ、1つのモード(例えばTE0モード)の出射光を出射させる。
【0041】
図4Aは光フィルタ100の透過スペクトルを例示する図である。横軸は光の波長を表す。縦軸は光フィルタ100の透過率を表す。光フィルタ100の温度を20℃、40℃、60℃として、スペクトルを計算している。実線は20℃におけるスペクトルを表す。破線は40℃におけるスペクトルを表す。点線は60℃におけるスペクトルを表すFSRは0.8nmとしている。幅W1からW9は上記の値である。後述の設計方法により、区間の長さを最適な大きさとしている。
【0042】
図4Aに示すように、スペクトルは周期的にピークを示す。図4Aの挿入図に示すように、各温度におけるスペクトルのピークは重なる。言い換えれば、ピークのシフトが抑制されている。
【0043】
図4Bはシフト量を例示する図である。横軸は波長を表す。縦軸は、温度を20℃から60℃まで変化させた際の、スペクトルの共振ピークのシフト量を表す。シフト量は±1pm以内である。温度変化に対して、ピーク位置の変化量が小さい。実施形態によれば、スペクトルの温度依存性が低く抑制されている。
【0044】
上記のように温度依存性を抑制するためには、区間長を適切な大きさとすればよい。光フィルタ100の設計について説明する。
【0045】
(設計装置)
図5Aは光フィルタ100の設計装置110を例示するブロック図である。設計装置110は、光フィルタ100の区間の長さを設計する。
【0046】
設計装置110は制御部50を有する。制御部50はコンピュータなどであり、第1計算部52、第2計算部54および第3計算部56として機能する。制御部50の各部の機能は後述する。
【0047】
図5Bは制御部50のハードウェア構成を示すブロック図である。図5Bに示すように、制御部50は、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)60、RAM(Random Access Memory)62、ROM(Read Only Memory)63、記憶装置64、インターフェース66を備える。CPU60、RAM62、ROM63,記憶装置64およびインターフェース66は互いにバスなどで接続されている。RAM62はプログラムおよびデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。記憶装置64はフラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD:Solid State Drive)、ハードディスクドライブ(HHD:Hard Disc Drive)などである。記憶装置64はプログラムなどを記憶する。
【0048】
CPU60がRAM62に記憶されるプログラムを実行することにより、制御部50に第1計算部52、第2計算部54、第3計算部56が実現される。制御部50の各部は、回路などのハードウェアでもよい。
【0049】
(区間長の計算)
設計装置110は、以下の数2に基づいて光フィルタ100の区間の長さを設計する。数2中の左辺の行列を行列Aと記載することがある。左辺の列ベクトルをLと記載することがある。右辺第1項をBと記載し、第2項をCと記載することがある。
【0050】
【数2】
【0051】
数2において、β1からβnは区間の伝搬定数である。L1からLnは区間の長さである。βおよびLにおける添え字1からnは、区間に対応する番号である。例えばβ1は、導波路20の区間21および導波路26の区間27における伝搬定数である。L1は導波路20の区間21および導波路26の区間27の長さの合計である。Tは光フィルタ100の温度を表す。λは、光フィルタ100を伝搬する光の波長である。kは波数である。FSRは、光フィルタ100の透過スペクトルにおける、隣り合うピークの間隔である。φは光の位相の変化量の和である。
【0052】
左辺の行列Aについて説明する。行列Aの第1行の各成分は、伝搬定数の温度Tに関する偏微分である。第2行の各成分は、伝搬定数の温度Tおよび波長λに関する偏微分である。第3行の各成分は、伝搬定数の波数kに関する偏微分である。左辺の列ベクトルLの成分は、区間の長さである。
【0053】
右辺第1項は列ベクトルBである。列ベクトルBの第3行の分子は、波長λの2乗である。分母はFSRである。
【0054】
右辺第2項は列ベクトルCである。列ベクトルCの第1行は、位相変化量φの温度Tに関する偏微分である。第2行は、位相変化量φの温度Tおよび波長λに関する偏微分である。第3行は、位相変化量φの波数kに関する偏微分である。
【0055】
伝搬定数は、区間の屈折率に比例し、区間の幅に依存する。区間の幅を定めることで、伝搬定数が決まり、行列Aの行列要素が定まる。光フィルタ100を伝搬する光の波長λ、FSRの大きさによって、列ベクトルBの要素が定まる。位相変化量φは、導波路の形状、特に偏波回転子の形状、区間41などテーパ部分の形状に依存する。導波路の形状が決まることで、位相変化量φが定まり、列ベクトルCの成分も定まる。
【0056】
図1に示すように、光フィルタ100は区間21、区間23、区間25および区間27を有する。TE0モードは区間21および区間27を伝搬する。TE1モードは区間23を伝搬する。TM0モードは区間25を伝搬する。光フィルタ100においては、3つのモードに対応する区間の長さを計算すればよい。すなわち、区間21と区間27とを合わせた長さL1、区間23の長さL2、区間25の長さL3を計算する。数2においてn=3とすることで、数3が得られる。数3において、行列Aは3×3の行列である。ベクトルL、BおよびCはそれぞれ3行の列ベクトルである。
【0057】
【数3】
【0058】
計算の一例を以下に示す。区間21および区間27の幅W1を400nmとする。区間23の幅W3を660nmとする。区間25の幅W5を1200nmとする。この場合、行列Aは数4となる。
【数4】
【0059】
数4中、1行目の要素は、1列目から順に7.95×10-4rad/μm/K、8.03×10-4rad/μm/K、5.57×10-4rad/μm/Kである。2行目の要素は、-7.95×10-4rad/μm/K、-1.63×10-3rad/μm/K、-1.41×10-3rad/μm/Kである。3行目の要素は4.25、4.51、3.92である。
【0060】
波長λは1550nm、FSRは0.8nmとする。数5に示すように、列ベクトルBの要素λ/FSRは3003μmである。
【数5】
【0061】
数3において、ベクトルC(右辺第2項)をゼロとして、数4および数5の値を用いて区間の長さ(区間長)を計算する。Lの計算結果を数6に示す。
【数6】
【0062】
長さL1は1.39mm、L2は-4.24mm、L3は4.12mmである。計算において、符号は、導波路の配置に応じて決まり、正にも負にもなり得る。実際の設計および製造では、符号を正とする。
【0063】
数7は、補正項であるベクトルCの例である。
【数7】
【0064】
1行目の要素から順に、-7.3×10-2rad/K、0.1×10-1rad/μm/K、-402μmである。
【0065】
数7の列ベクトルCも含めて数3を解くことで、より正確な区間の長さが得られる。Lの計算結果を数8に示す。
【数8】
【0066】
長さL1は1.33mm、L2は-4.26mm、L3は4.12mmである。数6と数8との間で、区間長に数十μm程度の違いが生じる。補正項Cの効果により、区間の長さを精度よく定め、温度依存性を小さくすることができる。
【0067】
(製造方法)
図6Aおよび図6Bは光フィルタ100の製造方法を例示するフローチャートである。図6Aに示すように、設計の工程を行い、導波路の長さおよび幅を設計する(ステップS1)。ウェハに加工を行い、設計に基づいて導波路を形成する(ステップS2)。
【0068】
図7Aおよび図7Bは光フィルタ100の製造方法を例示する断面図である。図7Aに示すように、基板12の1つの面に、ボックス層14aとシリコン層16aとを順番に積層する。シリコン層16aに不図示のレジストパターンを設ける。図7Bに示すように、シリコン層16aをエッチングすることで、シリコン層16aから導波路コア16を形成する。ボックス層14aの上に、さらにボックス層を積層し、ボックス層14を形成する。ウェハを切断することで、光フィルタ100を形成する。
【0069】
上記のように、シリコン層16aをエッチングすることで、導波路コア16が製造される。導波路コア16が細いほど、エッチングが困難になる。導波路コア16が太いほど、エッチングは容易であり、導波路コア16を製造しやすい。サイズおよび温度依存性とともに、こうした生産性も考慮し、設計を行う。
【0070】
図6Bは設計の工程を例示するフローチャートであり、図6AのステップS1に対応する。制御部50の第1計算部52は、行列Aおよび列ベクトルBを計算する(ステップS10)。第1計算部52は、区間の幅を掃引し、各幅に応じた行列Aの行列要素を計算する。第1計算部52は、光の波長およびFSRに基づいて、列ベクトルBのλ/FSRを計算する。
【0071】
第3計算部56は、ステップS10で得られた行列Aおよび列ベクトルBを用いて、列ベクトルL中のL1、L2およびL3を計算する(ステップS12)。ステップS12の時点では、補正項(列ベクトルC)を考慮せずに、計算が行われ、掃引された幅に応じた区間の長さL1、L2およびL3が算出される。
【0072】
第2計算部54は補正項を計算する(ステップS14)。第3計算部56は、補正項も考慮して区間の長さを計算する(ステップS16)。詳細には、ステップS12で得られた幅および区間長のうちから、適切な値を選択する。幅が大きいと、導波路を製造しやすい。導波路の区間が短いほど、光フィルタ100のサイズを抑制することができる。生産性と小型化とを両立するためには、幅は大きく、かつ区間は短いことが有効である。第3計算部56は、こうした要求に適した幅および区間長を選択し、選択された区間長に列ベクトルCを加える。すなわち、数2を用いて区間長が計算される(ステップS16)。以上で図6Bの処理は終了する。
【0073】
(比較例)
図8は比較例に係る光フィルタ101を例示する平面図である。光フィルタ101は導波路70と導波路74とを有する。導波路70は区間71と区間72とを有する。2つの区間71のうち1つは入射ポート1を有する。2つの区間71のうちもう1つは出射ポート2を有する。2つの区間71の間に区間72が設けられている。区間72の幅は区間71より大きい。導波路70のうち区間71と区間72との間の部分は、テーパ形状を有している。
【0074】
導波路70の1つの区間71と、導波路74とは方向性結合器75を形成する。もう1つの区間71と、導波路74とは方向性結合器76を形成する。
【0075】
入射ポート1からTE0モードの光が入射し、導波路70を伝搬する。方向性結合器75において、光の一部は導波路70から導波路74に乗り移る。乗り移る光のモードは、TE0モードからTE1モードに変化する。TE1モードの光は導波路74を伝搬する。TE0モードの光は導波路70の区間72を伝搬する。方向性結合器76において、導波路74から導波路70に光が乗り移る。光のモードは、TE1モードからTE0モードに変化する。TE0モードの光は導波路70を伝搬し、出射ポート2から出射される。
【0076】
比較例に係る光フィルタ101は2つのモードを伝搬させる。実施形態に係る光フィルタ100は3つのモードを伝搬させる。光フィルタ100と光フィルタ101において、特性の温度依存性を同程度にした場合、光フィルタ100の区間長を光フィルタ101の区間長よりも短くすることができる。すなわち、実施形態によれば、温度依存性の抑制と、小型化を両立することができる。以下では、区間長の計算結果の例を示す。
【0077】
(区間長)
図9から図12は区間長の計算結果を例示する図である。導波路の幅が小さいほど実効屈折率は低くなる。幅が大きいほど実効屈折率は高くなる。図9から図11の例においては、幅を掃引させ、数3を用いて区間の長さを算出している。実効屈折率ごとに区間の長さL1、L2およびL3が計算される。図9から図11の横軸は、複数の区間の実効屈折率のうち最小値を表す。縦軸は、複数の区間の長さL1、L2およびL3のうち最大値を表す。
【0078】
図9の例では、幅を150nmから1200nmまで、20nm間隔で掃引させ、数3を用いて区間の長さを算出している。屈折率ごとに求められた区間の長さL1、L2およびL3のうち最大値を、図9にプロットしている。FSRは0.8nm、波長λは1550nmである。
【0079】
実施形態を点線および黒丸で示している。比較例を実線および四角で示している。屈折率が高いほど、区間長は長くなる。実施形態の区間長は、比較例の区間長に比べて短い。例えば屈折率が約1.85においては、実施形態の区間長は比較例の区間長の約半分である。
【0080】
図10の例では、幅を150nmから1600nmまで、約10nm間隔で掃引し、屈折率ごとの区間長を算出している。黒丸は比較例を表す。白丸は実施形態を表す。実施形態の区間長は、比較例の区間長より短い。
【0081】
図11の例では、図10の例で用いられた導波路の幅の組を、1nm間隔で±10nmの範囲で掃引させている。黒丸は比較例を表す。白丸は実施形態を表す。実施形態における区間長の大部分は、比較例の区間長より短い。図12には、図11の実効屈折率ごとの区間長のうち最小値のみをプロットしている。実施形態の区間長が比較例の区間長より短い。
【0082】
図13Aおよび図13Bは近似曲線の例である。図13A図12のうち比較例の近似曲線を図示している。図13B図12のうち実施形態の近似曲線を図示している。図13Aおよび図13Bにおいて、実線は計算結果を表す。破線は近似曲線を表す。
【0083】
図13Aにおける近似曲線は以下の式(1)で表される。
y=-2000.8x+16725x-55699x+92423x-76428x+25202 (1)
図13Bにおける近似曲線は以下の式(2)で表される。
y=-2192.6x+18972x-65282x+111720x-95112x+32235 (2)
【0084】
図14Aは区間長の差を例示する図である。横軸は実効屈折率を表す。縦軸は、図12の比較例における区間長と実施形態における区間長との差を表す。実施形態の区間長が比較例の区間長より短いため、差は正の値となる。実効屈折率が1.8から1.9の範囲で、差が大きくなり、2.5mm以上である。
【0085】
図14Bは区間長の比を例示する図である。横軸は実効屈折率を表す。縦軸は、図12の比較例における区間長と実施形態における区間長との比を表す。実効屈折率が約1.45から1.5程度の範囲では比が1である。実効屈折率が1.5より大きい範囲では、実施形態の区間長が比較例の区間長より短いため、比が1未満である。実効屈折率が1.8付近で比は最低になり、約0.6である。すなわち、実施形態の区間長は、比較例の60%程度まで低減されている。
【0086】
(波長ロッカ)
光フィルタ100の応用例として、波長ロッカ120について説明する。図15は波長ロッカ120を例示する図である。波長ロッカ120は、光フィルタ100、波長可変レーザ素子80、制御部82、モニタ部83および84を有する。
【0087】
波長可変レーザ素子80は光源であり、レーザ光を出射する。制御部82は、波長可変レーザ素子80の出射光の波長を制御する。波長可変レーザ素子80の出射光は、ビームスプリッタ81において分岐する。分岐した光のうち1つはモニタ部83に入射する。モニタ部83は入射光の強度を検出する。
【0088】
分岐した光のうちもう1つは、光フィルタ100の入射ポート1に入射する。光フィルタ100の出射ポート2から出射される光は、モニタ部84に入射する。モニタ部84は光の強度を検出する。制御部82は、モニタ部83が検出する光の強度、およびモニタ部84が検出する光の強度を取得する。制御部82は、強度に基づいて、光フィルタ100の透過率を算出する。
【0089】
図16は透過率を例示する図である。横軸は光の周波数である。縦軸は光フィルタ100の透過率である。光フィルタ100の出射光の強度が変化すると、透過率も変化する。光フィルタ100の特性は温度変化に対して安定である。一方、波長可変レーザ素子80の出射光の波長は、温度変化などにより変化することがある。波長可変レーザ素子80の出射光の波長が変化することで、光フィルタ100の出射光の強度が変化し、透過率も変わる。
【0090】
例えば、透過率の目標値を0.5とする。透過率0.5に対応する周波数は、193.4THzである。周波数が193.4THzより高い場合、透過率は0.5より高くなる。周波数が193.4THzより低い場合、透過率は0.5より低くなる。制御部82は、透過率が0.5となるように、波長可変レーザ素子80の発振波長を変化させる。発振波長が所望の値に維持される。
【0091】
本実施形態によれば、光フィルタ100は、3つ以上の区間に、互いに異なるモードを伝搬させる。図4Aおよび図4Bに示すように、導波路長を適切な大きさとすることで、スペクトルの温度依存性を小さくすることができる。図14Aおよび図14Bに示すように、2つのモードを伝搬させる比較例に比べ、実施形態における区間長は短くなる。区間長が縮小されるため、導波路長も低減することができる。温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することができる。光フィルタ100が小型化可能であり、かつ温度に対するスペクトルの変化を小さくすることができる。
【0092】
図1に示すように、光フィルタ100は、導波路20、22、24および26、方向性結合器28、30、32および34を有する。導波路20は区間21を有する。導波路22は区間23を有する。導波路24は区間25を有する。導波路26は区間27を有する。方向性結合器28および方向性結合器30において、光の遷移、およびモード変換が行われる。TE0モードは、導波路20の区間21および導波路26の区間27を伝搬する。TE1モードは、導波路22の区間23を伝搬する。TM0モードは導波路24の区間25を伝搬する。3つのモードが光フィルタ100を伝搬する。図14Aおよび図14Bに示すように、比較例に比べ、実施形態によれば区間長を短くすることができる。温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することができる。
【0093】
図6Aおよび図6Bに示すように、光フィルタ100の製造工程において、区間の長さを設計する。区間長の設計は、区間における伝搬定数、および光の位相の変化量に基づいて行われる。最適な区間長を設計し、当該区間長を有する導波路を製造する。3つ以上の区間に、互いに異なるモードを伝搬させることで、スペクトルの温度依存性を小さくすることができる。比較例に比べ区間長が短くなるため、導波路長を抑制することができる。
【0094】
数2に基づいて区間長を設計する。数2中、左辺の行列Aは伝搬定数を含む。左辺の列ベクトルは区間長L1からLnを含む。右辺第1項は波長λおよびFSRを含む。右辺第2項は位相変化量φを含む。数2を用いることで、区間長L1からLnを計算することができる。温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することができる。
【0095】
区間の幅を定めることで、伝搬定数βnが決まり、行列A中の各項が計算される。数2を用いて、幅に応じた区間長L1からLnが算出される。図7Aおよび図7Bに示すように、導波路はシリコン層16aのエッチングにより製造される。幅が小さいと、導波路の製造が困難である。幅が大きい方が、製造は容易である。例えば、幅を掃引し、幅ごとの区間長を計算する。幅のうち製造が容易な値を選択し、当該幅に対応した区間長を採用する。シリコン層16aをエッチングすることで、当該幅および区間長を有する導波路を製造する。光フィルタの製造が容易で、導波路長および温度依存性の抑制も可能である。
【0096】
幅を掃引し、適切な区間長を探索する際、掃引される幅のすべてに対して補正項(数2中の右辺第2項)を計算してもよい。計算量を低減するために、掃引される幅のすべてに対して補正項を計算せず、一部の補正項だけを計算してもよい。掃引される幅に対して、補正項を考慮しない区間長を計算する。算出された区間長のうち、例えば小さい値の組を区間長の候補とする。区間長の候補に応じた補正項を計算し、補正項と候補とで区間長を計算する(図6B)。
【0097】
想定される幅の候補に応じた行列Aをあらかじめ計算し、制御部50に記憶させてもよい。光フィルタ100を伝搬する光の波長、およびスペクトルのFSRを定め、列ベクトルBをあらかじめ計算し、制御部50に記憶させてもよい。
区間長は波長λの2乗に比例し、FSRに反比例する。FSRは例えば1nm以下でもよい。スペクトルは図4Aの例のように、周期的なピークを有する。区間長を適切に設計することで、区間長および温度依存性を抑制することができる。
【0098】
複数の導波路のうち少なくとも1つは偏波回転子を有する。偏波回転子により光のモードを変換し、当該モードを導波路に伝搬させる。図1および図2Cに示すように、導波路24は偏波回転子36および偏波回転子38を有する。偏波回転子36において、光のモードはTE1モードからTM0モードに変換される。偏波回転子38において、光のモードはTM0モードからTE1モードに変換される。1つの導波路24内でモード変換を行い、TM0モードを区間25に伝搬させることができる。3つのモードが光フィルタ100を伝搬するため、温度依存性の抑制と、導波路長の抑制とを両立することができる。
【0099】
図3Aに示すように、導波路は導波路コア16を含む。図2Dおよび図3Bに示すように、偏波回転子36および38はテーパ形状であり、導波路コア16とリブ部17とを含む。Si層をエッチングなどで加工することで、導波路および偏波回転子を製造することができる。
【0100】
図2Dおよび図3Bに示すように、偏波回転子は導波路コア16およびリブ部17を含む。平面形状はテーパ形状である。図2Bに示すように、導波路22の区間41および区間42はテーパ形状を有する。これらの部分で位相が変化しやすい。数6および数8の例のように、補正項Cを計算に含めた区間長と、含めない区間長との間で数%程度の差が生じる。位相変化量φを含む補正項Cを考慮することで、区間長を精度よく計算することができる。
【0101】
光フィルタ100は3つのモードを伝搬させる。数2中のnは区間の個数に応じて定める。光フィルタ100においては、3つの区間長L1、L2およびL3を設計する。数2においてn=3とし、数3に基づいた設計を行えばよい。モードの数は4つ以上でもよく、モードの数に応じて区間の個数を変える。計算すべき区間長の個数が4つ以上である場合、数2においてnが4以上である。数2の左から行列Aの一般逆行列A-1をかけることで、区間長を計算することができる。
【0102】
光フィルタ100はSOI基板に形成されてもよいし、SOI基板以外の部品に形成されてもよい。導波路は、Siの導波路コア16を含んでもよいし、他の材料で形成されてもよい。偏波回転子は図2D以外の構成を有してもよい。
【0103】
上記の機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、処理装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体(ただし、搬送波は除く)に記録しておくことができる。
【0104】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記憶媒体の形態で販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0105】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記憶媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記憶媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0106】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0107】
実施形態の説明に加え、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
3つ以上の導波路と、
前記3つ以上の導波路のそれぞれに設けられた区間と、を具備し、
前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なる光フィルタ。
(付記2)
前記3つ以上の導波路のうち少なくとも1つは偏波回転子を有する付記1に記載の光フィルタ。
(付記3)
前記導波路は導波路コアを含み、
前記偏波回転子は、前記導波路コアと、前記導波路コアから突出するリブ部を含む付記2に記載の光フィルタ。
(付記4)
前記3つ以上の導波路は、第1導波路、第2導波路、第3導波路および第4導波路を含み、
前記区間は第1区間、第2区間、第3区間および第4区間を含み、
前記偏波回転子は第1偏波回転子および第2偏波回転子を含み、
前記第1導波路は、第1結合部において前記第2導波路と光学的に結合し、前記第1結合部より後段の第2結合部において、前記第3導波路と光学的に結合し、前記第1結合部と前記第2結合部との間に前記第1区間を有し、
前記第2導波路は、前記第1結合部より後段の第3結合部において前記第4導波路と光学的に結合し、前記第1結合部と前記第3結合部との間に前記第2区間を有し、
前記第3導波路は、前記第2結合部より後段の第4結合部において、前記第4導波路のうち前記第3結合部より前段の部分と光学的に結合し、前記第2結合部と前記第4結合部との間に前記第3区間を有し、
前記第3導波路は前記第1偏波回転子および前記第2偏波回転子を有し、
前記第1偏波回転子は前記第2結合部と前記第4結合部との間に位置し、
前記第2偏波回転子は前記第1偏波回転子と前記第4結合部との間に位置し、
前記第3区間は前記第1偏波回転子と前記第2偏波回転子との間に位置し、
前記第4導波路は、前記第3結合部と前記第4結合部との間に前記第4区間を有し、
前記第1区間および前記第4区間を伝搬する光のモード、前記第2区間を伝搬する光のモード、および前記第3区間を伝搬する光のモードは、互いに異なる付記2または付記3に記載の光フィルタ。
(付記5)
前記第1区間および前記第4区間にTE0モードが伝搬し、
前記第2区間にTE1モードが伝搬し、
前記第3区間にTM0モードが伝搬する付記4に記載の光フィルタ。
(付記6)
光フィルタの製造方法であって、
前記光フィルタは、3つ以上の導波路を具備し、
前記3つ以上の導波路のそれぞれは区間を有し、
前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なり、
前記区間は、前記区間における伝搬定数、および前記導波路における光の位相の変化量に応じた長さを有し、
前記製造方法は、前記区間を有する前記3つ以上の導波路を形成する光フィルタの製造方法。
(付記7)
前記製造方法は、前記区間の長さを設計する工程と、
前記区間の長さに基づいて前記3つ以上の導波路を形成する工程と、を有し、
前記区間の長さを設計する工程は、数1に基づいて前記区間の長さを設計する工程を含む付記6に記載の製造方法。
(付記8)
前記区間の長さを設計する工程は、前記区間の幅を定めることで前記数1の行列の各項を計算する工程を含む付記7に記載の光フィルタの製造方法。
(付記9)
前記3つ以上の導波路は、第1導波路、第2導波路、第3導波路および第4導波路を含み、
前記区間は第1区間、第2区間、第3区間および第4区間を含み、
前記第1導波路は前記第1区間を有し、
前記第2導波路は前記第2区間を有し、
前記第3導波路は前記第3区間を有し、
前記第4導波路は前記第4区間を有し、
前記第1区間および前記第4区間を伝搬する光のモード、前記第2区間を伝搬する光のモード、および前記第3区間を伝搬する光のモードは、互いに異なり、
前記区間の長さを設計する工程は、前記第1区間と前記第4区間とを合わせた長さ、前記第2区間の長さ、および前記第3区間の長さを設計する工程である付記7または付記8に記載の光フィルタの製造方法。
(付記10)
光フィルタの設計方法であって、
前記光フィルタは、3つ以上の導波路を具備し、
前記3つ以上の導波路のそれぞれは区間を有し、
前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なり、
前記設計方法は、伝搬定数、および前記導波路における光の位相の変化量に基づいて、前記区間の長さを設計する光フィルタの設計方法。
(付記11)
数1に基づいて前記区間の長さを設計する付記10に記載の設計方法。
(付記12)
前記区間の幅を定めることで前記数1の行列の各項を計算する工程と、
前記数1に基づいて前記区間の長さを設計する工程と、を有する付記11に記載の光フィルタの設計方法。
(付記13)
前記3つ以上の導波路は、第1導波路、第2導波路、第3導波路および第4導波路を含み、
前記区間は第1区間、第2区間、第3区間および第4区間を含み、
前記第1導波路は前記第1区間を有し、
前記第2導波路は前記第2区間を有し、
前記第3導波路は前記第3区間を有し、
前記第4導波路は前記第4区間を有し、
前記第1区間および前記第4区間を伝搬する光のモード、前記第2区間を伝搬する光のモード、および前記第3区間を伝搬する光のモードは、互いに異なり、
前記第1区間と前記第4区間とを合わせた長さ、前記第2区間の長さ、および前記第3区間の長さを設計する付記10から付記12のいずれかに記載の光フィルタの設計方法。
(付記14)
光フィルタの設計装置であって、
前記光フィルタは、3つ以上の導波路を具備し、
前記3つ以上の導波路のそれぞれは区間を有し、
前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なり、
前記設計装置は、
前記区間における伝搬定数を計算する第1計算部と、
前記導波路における光の位相の変化量を計算する第2計算部と、
前記伝搬定数、および前記位相の変化量に基づいて、前記区間の長さを計算する第3計算部と、を具備する光フィルタの設計装置。
(付記15)
前記第3計算部は数1に基づいて前記区間の長さを計算する付記14に記載の設計装置。
(付記16)
前記第1計算部は、前記区間の幅に基づいて前記数1の行列の各項を計算する付記15に記載の光フィルタの設計装置。
(付記17)
前記3つ以上の導波路は、第1導波路、第2導波路、第3導波路および第4導波路を含み、
前記区間は第1区間、第2区間、第3区間および第4区間を含み、
前記第1導波路は前記第1区間を有し、
前記第2導波路は前記第2区間を有し、
前記第3導波路は前記第3区間を有し、
前記第4導波路は前記第4区間を有し、
前記第1区間および前記第4区間を伝搬する光のモード、前記第2区間を伝搬する光のモード、および前記第3区間を伝搬する光のモードは、互いに異なり、
前記第3計算部は、前記第1区間と前記第4区間とを合わせた長さ、前記第2区間の長さ、および前記第3区間の長さを計算する付記14から付記16のいずれかに記載の光フィルタの設計装置。
(付記18)
光フィルタの設計プログラムであって、
前記光フィルタは、3つ以上の導波路を具備し、
前記3つ以上の導波路のそれぞれは区間を有し、
前記3つ以上の導波路の前記区間を伝搬する光のモードは互いに異なり、
コンピュータを、
前記区間における伝搬定数を計算する第1計算部と、
前記導波路における光の位相の変化量を計算する第2計算部と、
前記伝搬定数、および前記位相の変化量に基づいて、前記区間の長さを計算する第3計算部として機能させる、光フィルタの設計プログラム。
(付記19)
前記第3計算部は数1に基づいて前記区間の長さを計算する付記18に記載の設計装置。
(付記20)
前記第1計算部は、前記区間の幅に基づいて前記数1の行列の各項を計算する付記19に記載の光フィルタの設計装置。
(付記21)
前記3つ以上の導波路は、第1導波路、第2導波路、第3導波路および第4導波路を含み、
前記区間は第1区間、第2区間、第3区間および第4区間を含み、
前記第1導波路は前記第1区間を有し、
前記第2導波路は前記第2区間を有し、
前記第3導波路は前記第3区間を有し、
前記第4導波路は前記第4区間を有し、
前記第1区間および前記第4区間を伝搬する光のモード、前記第2区間を伝搬する光のモード、および前記第3区間を伝搬する光のモードは、互いに異なり、
前記第3計算部は、前記第1区間と前記第4区間とを合わせた長さ、前記第2区間の長さ、および前記第3区間の長さを計算する付記18から付記20のいずれかに記載の光フィルタの設計装置。
【符号の説明】
【0108】
1 入射ポート
2 出射ポート
10、12 基板
14、14a ボックス層
16 導波路コア
16a シリコン層
17 リブ部
20、22、24、26、70、74 導波路
21、23、25、27、40、41、42、43、44、45、46、47、71、72 区間
28、30、32、34 方向性結合器
36、38 偏波回転子
50、80 制御部
52 第1計算部
54 第2計算部
56 第3計算部
60 CPU
62 RAM
63 ROM
64 記憶装置
66 インターフェース
80 波長可変レーザ素子
81 ビームスプリッタ
83、84 モニタ部
100、101 光フィルタ
110 設計装置
120 波長ロッカ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
【非特許文献1】“Broadband CMOS-compatible SOI temperature insensitive Mach-Zehnder interferometer” Peng Xing and Jaime Viegas OPTICS EXPRESS Vol.23,No.19 pp.24098-24107(2015)
【非特許文献2】“Polarization rotator-splitters in standard active silicon photonics platforms” Wesley D.Sacher et al. OPTICS EXPRESS Vol.22, No.4 pp.3777-3786(2014)
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
図2Cは導波路24の平面図である。導波路24は、区間44、偏波回転子36、区間45、区間25、区間46、偏波回転子38、および区間47を有する。軸方向において、区間44、偏波回転子36、区間45、区間25、区間46、偏波回転子38、および区間47は、この順番に並ぶ。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
図4Aは光フィルタ100の透過スペクトルを例示する図である。横軸は光の波長を表す。縦軸は光フィルタ100の透過率を表す。光フィルタ100の温度を20℃、40℃、60℃として、スペクトルを計算している。実線は20℃におけるスペクトルを表す。破線は40℃におけるスペクトルを表す。点線は60℃におけるスペクトルを表す。FSRは0.8nmとしている。幅W1からW9は上記の値である。後述の設計方法により、区間の長さを最適な大きさとしている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
図1に示すように、光フィルタ100は区間21、区間23、区間25および区間27を有する。TE0モードは区間21および区間27を伝搬する。TE1モードは区間23を伝搬する。TM0モードは区間25を伝搬する。光フィルタ100においては、3つのモードに対応する区間の長さを計算すればよい。すなわち、区間21と区間27とを合わせた長さL1、区間23の長さL2、区間25の長さL3を計算する。数2においてn=3とすることで、数3が得られる。数3において、行列Aは3×3の行列である。ベクトルL、BおよびCはそれぞれ3行の列ベクトルである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
数3において、ベクトルC(右辺第2項)をゼロとして、数4および数5の値を用いて区間の長さ(区間長)を計算する。Lの計算結果を数6に示す。
【数6】
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図15
【補正方法】変更
【補正の内容】
図15