(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010937
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】有機エレクトロニクス材料、有機層、有機エレクトロニクス素子、表示素子、照明装置、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
C08G 73/02 20060101AFI20250116BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20250116BHJP
H10K 59/90 20230101ALI20250116BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20250116BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20250116BHJP
【FI】
C08G73/02
H10K85/10
H10K59/90
H10K50/15
H10K59/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113253
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】福島 伊織
(72)【発明者】
【氏名】加茂 和幸
(72)【発明者】
【氏名】宮 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】神原 貴樹
(72)【発明者】
【氏名】桑原 純平
(72)【発明者】
【氏名】江 しん
【テーマコード(参考)】
3K107
4J043
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC12
3K107CC45
3K107DD71
3K107DD79
3K107DD87
3K107EE65
4J043QB15
4J043QB51
4J043RA02
4J043SA05
4J043SA47
4J043SB01
4J043TA46
4J043TA71
4J043TB01
4J043UA142
4J043UB212
4J043VA032
4J043VA042
4J043ZB47
(57)【要約】
【課題】 導電性を向上できる有機層を形成可能であり、かつ安価な材料を使用して簡便な方法で得られる電荷輸送性ポリマーを含む有機エレクトロニクス材料を提供する。
【解決手段】
下記式(a)で表される3価の構造単位と、下記式(b)で表される2価の構造単位とを含み、かつ、前記3価の構造単位における少なくとも1つの結合手と、前記2価の構造単位における少なくとも1つの結合手とが直接結合した下記式(I)で表される構造を少なくとも有し、重量平均分子量が900~500,000である電荷輸送性ポリマーを含む、有機エレクトロニクス材料。
【化1】
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(a)で表される3価の構造単位と、下記式(b)で表される2価の構造単位とを含み、かつ、前記3価の構造単位における少なくとも1つの結合手と、前記2価の構造単位における少なくとも1つの結合手とが直接結合した下記式(I)で表される構造を少なくとも有し、重量平均分子量が900~500,000である電荷輸送性ポリマーを含む、有機エレクトロニクス材料。
【化1】
【化2】
[式中、Arは置換又は非置換のアリール基を表し、*は他の構造との結合手を表す。]
【請求項2】
前記式(I)で表される構造において、Arは下記一般式で表される基である、請求項1に記載の有機エレクトロニクス材料。
【化3】
[式中、R
1は炭素数1~8のアルキル基であり、aは0又は1~5の整数である。]
【請求項3】
前記式(I)で表される構造が、下記式(I-2)又は下記式(I-3)で表される構造を含む、請求項1又は2に記載の有機エレクトロニクス材料。
【化4】
[式中、Arは、それぞれ独立して、置換又は非置換のアリール基を表し、*は他の構造との結合手を表す。]
【請求項4】
前記電荷輸送性ポリマーが、下記式(IA)で表される構造を含む、請求項1又は2に記載の有機エレクトロニクス材料。
【化5】
[式中、Arは、置換又は非置換のアリール基を表し、nは2以上の整数である。]
【請求項5】
前記電荷輸送性ポリマーが、下記式(c)で表される1価の構造単位をさらに有する、請求項1又は2に記載の有機エレクトロニクス材料。
【化6】
[式中、R
2は炭素数1~8のアルキル基であり、bは0又は1~5の整数である。]
【請求項6】
さらに溶剤を含む、請求項1又は2に記載の有機エレクトロニクス材料。
【請求項7】
請求項6に記載の有機エレクトロニクス材料を用いて形成された有機層。
【請求項8】
請求項7に記載の有機層を含む有機エレクトロニクス素子。
【請求項9】
請求項7に記載の有機層を含む有機エレクトロルミネセンス素子。
【請求項10】
請求項9に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を備えた表示素子。
【請求項11】
請求項9に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を備えた照明装置。
【請求項12】
請求項11に記載の照明装置と、表示手段として液晶素子とを備えた表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、有機エレクトロニクス材料、有機層、有機エレクトロニクス素子、表示素子、照明装置、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロニクス素子は、有機材料を用いて電気的な動作を行う素子であり、省エネルギー、低価格、柔軟性といった特長を発揮できると期待され、従来のシリコンを主体とした無機半導体に替わる技術として注目されている。
【0003】
有機エレクトロニクス素子の一例として、有機エレクトロルミネセンス素子(以下、有機EL素子という)、有機光電変換素子、有機トランジスタが挙げられる。有機エレクトロニクス素子の中でも、有機EL素子は、例えば、白熱ランプ、ガス充填ランプ等の代替えとして、大面積ソリッドステート光源用途として注目されている。また、フラットパネルディスプレイ(FPD)分野における液晶ディスプレイ(LCD)に置き換わる最有力の自発光ディスプレイとしても注目されており、製品化が進んでいる。
【0004】
有機EL素子は、素子を構成する有機材料から、低分子型有機EL素子と高分子型有機EL素子とに大別される。低分子型有機EL素子では、低分子化合物が使用され、真空下で成膜を行う乾式プロセスが必要となる。これに対し、高分子型有機EL素子では、高分子化合物が使用され、凸版印刷、凹版印刷等の有版印刷、及びインクジェット等の無版印刷といった湿式プロセスによる簡易成膜が可能である。
【0005】
そのため、簡易成膜が可能な高分子型有機EL素子は、今後の大画面有機ELディスプレイの実現には不可欠な素子として期待されている。このようなことから、近年、高分子型有機EL素子を構成する高分子化合物として、様々な電荷輸送性ポリマーの開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電荷輸送性ポリマーの一例として、アリールアミンポリマーが広く知られており、ポリマーの分子設計によって、有機EL素子の各種特性の向上を図ることが検討されている。例えば、特許文献1は、トリフェニルアミン構造を含むアリールアミンポリマーを開示している。
しかし、近年、有機EL素子などの有機エレクトロニクスの分野では、導電性といった各種特性のさらなる向上が求められており、従来のアリールアミンポリマーには改善の余地がある。また、アリールアミンポリマーに特定の構造を導入するためには、ポリマーの製造において、高価な材料が必要となるか、多段階の工程が必要となる場合が多い。そのため、有機EL素子の各種特性を向上できる有機層を形成可能であり、かつ安価な材料を使用して簡便な方法で得られる電荷輸送性ポリマーに対する要望がある。
【0008】
したがって、本発明の一実施形態は、導電性を向上できる有機層を形成可能であり、かつ安価な材料を使用して簡便な方法で得られる電荷輸送性ポリマーを含む有機エレクトロニクス材料を提供する。また、本発明の他の実施形態は、導電性に優れる有機エレクトロニクス素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、アリールアミン構造を有する電荷輸送性ポリマーについて鋭意検討を行い、特定のアリールアミン構造を有するポリマーが有機エレクトロニクス材料として好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の実施形態は以下に関するが、本発明は以下の実施形態に制限されず、様々な実施形態を含む。
【0011】
[1]下記式(a)で表される3価の構造単位と、下記式(b)で表される2価の構造単位とを含み、かつ、前記3価の構造単位における少なくとも1つの結合手と、前記2価の構造単位における少なくとも1つの結合手とが直接結合した下記式(I)で表される構造を少なくとも有し、重量平均分子量が900~500,000である電荷輸送性ポリマーを含む、有機エレクトロニクス材料。
【化1】
【化2】
式中、Arは置換又は非置換のアリール基を表し、*は他の構造との結合手を表す。
【0012】
[2]上記式(I)で表される構造において、Arは下記式で表される基である、上記[1]に記載の有機エレクトロニクス材料。
【化3】
式中、R
1は炭素数1~8のアルキル基であり、aは0又は1~5の整数である。
【0013】
[3]上記式(I)で表される構造が、下記式(I-2)又は下記式(I-3)で表される構造を含む、上記[1]又は[2]に記載の有機エレクトロニクス材料。
【化4】
式中、Arは、それぞれ独立して、置換又は非置換のアリール基を表し、*は他の構造との結合手を表す。
【0014】
[4]上記電荷輸送性ポリマーが、下記式(IA)で表される構造を含む、上記[1]又は[2]に記載の有機エレクトロニクス材料。
【化5】
式中、Arは、置換又は非置換のアリール基を表し、nは2以上の整数である。
【0015】
[5]上記電荷輸送性ポリマーが、下記式(c)で表される1価の構造単位をさらに有する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の有機エレクトロニクス材料。
【化6】
式中、R
2は炭素数1~8のアルキル基であり、bは0又は1~5の整数である。
【0016】
[6]さらに溶剤を含む、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の有機エレクトロニクス材料。
【0017】
[7]上記[6]に記載の有機エレクトロニクス材料を用いて形成された有機層。
【0018】
[8]上記[7]に記載の有機層を含む有機エレクトロニクス素子。
【0019】
[9]上記[7]に記載の有機層を含む有機エレクトロルミネセンス素子。
【0020】
[10]上記[9]に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を備えた表示素子。
【0021】
上記[9]に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を備えた照明装置。
【0022】
上記[11]に記載の照明装置と、表示手段として液晶素子とを備えた表示装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施形態によれば、導電性を向上できる有機層を形成可能であり、かつ安価な材料を使用して簡便な方法で得られる電荷輸送性ポリマーを含む有機エレクトロニクス材料を提供することができる。また、本発明の他の実施形態によれば、導電性に優れる有機エレクトロニクス素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態である有機EL素子の一例を示す断面模式図である。
【
図2】
図2は、実施例で作製したホールオンリーデバイスの構造を示す断面模式図である。
【
図3】
図3は、実施例5、比較例1で作製した各ホールオンリーデバイスに電圧を印加した時の電圧-電流密度曲線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下に記載する実施形態に限定されるものではない。
<1>有機エレクトロニクス材料
(電荷輸送性ポリマー)
本発明の一実施形態は、有機エレクトロニクス材料に関する。本実施形態の有機エレクトロニクス材料は、電荷輸送性を有する3価の構造単位と、電荷輸送性を有する2価の構造単位とを含み、かつ下記式(I)で表される構造を有し、重量平均分子量が900~500,000である電荷輸送性ポリマーを含む。
【0026】
【化7】
式中、Arは置換又は非置換のアリール基を表し、*は他の構造との結合手を表す。
【0027】
上記式(I)で表されるように、電荷輸送性ポリマーは、トリフェニルアミン構造を含み、かつ分子内にN-Ph-N結合を有することを特徴としている。電荷輸送性ポリマーが上記式(I)で表される構造を有することによって、ドーピング及び共役が容易となる。そのため、上記式(I)で表される構造を有する電荷輸送性ポリマーを使用することによって、導電性の向上が可能な有機層を容易に形成できると考えられる。
【0028】
上記電荷輸送性ポリマーにおいて、N-Ph-N結合は、例えば、アミノ基を有する芳香族化合物と、アミノ基と反応可能な官能基を有する芳香族化合物との反応によって形成することができる。このような観点から、一実施形態において、上記電荷輸送性ポリマーは、下記式(a)で表される3価の構造単位と、下記式(b)で表される2価の構造単位とを含み、かつ、前記3価の構造単位における少なくとも1つの結合手と、前記2価の構造単位における少なくとも1つの結合手とが直接結合した上記式(I)で表される構造(I)を少なくとも有することが好ましい。
【0029】
【0030】
式中、Arは置換又は非置換のアリール基を表し、*は他の構造との結合手を表す。
【0031】
上記式(a)において、トリフェニルアミンのベンゼン環における水素原子の少なくとも1つは置換基Rで置換されていてもよい。置換基Rは、それぞれ独立に、-R1、-OR2、-SR3、-OCOR4、-COOR5、-SiR6R7R8からなる群から選択される。R1~R8は、それぞれ独立に、水素原子(R1の場合を除く);炭素数1~22個の直鎖状、環状又は分岐状アルキル基;又は、炭素数2~30個のアリール基又はヘテロアリール基を表す。アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団である。ヘテロアリール基は、芳香族複素環から水素原子1個を除いた原子団である。アルキル基は、更に、炭素数2~20個のアリール基又はヘテロアリール基により置換されていてもよく、アリール基又はヘテロアリール基は、更に、炭素数1~22個の直鎖状、環状又は分岐状アルキル基により置換されていてもよい。置換基Rは、好ましくは、アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基であってよい。
【0032】
上記式(b)において、Arとして表される置換又は非置換のアリール基は、炭素数6~24の芳香族化合物に由来する基であってよい。上記芳香族化合物は、例えば、芳香族炭化水素の具体例として、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、フェナントレン、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニルベンゼン等が挙げられる。芳香族化合物における芳香環は1以上の置換基を有してもよい。置換基は、アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基であってよい。アルキル基は、炭素数1~22個の直鎖状、環状、又は分岐状のアルキル基であってよい。アリール基は、炭素数6~20であってよい。アルキル置換アリール基のアルキルは、上記アルキル基と同様である。
【0033】
一実施形態において、上記Arは、下記式(b-1)で表される基であってよい。
【化9】
上記式(b-1)中のR
1は、炭素数1~8のアルキル基であり、aは0又は1~5の整数である。
【0034】
一実施形態において、上記式(b-1)中のR1は、炭素数1~8の直鎖、分岐、又は環状のアルキル基であってよい。R1は好ましくは炭素数1~8の直鎖又は分岐のアルキル基であってよく、より好ましくは炭素数2~8の直鎖又は分岐のアルキル基であってよく、さらに好ましくは炭素数4~8の直鎖又は分岐のアルキル基であってよい。一実施形態において、aは、好ましくは0又は1~4であってよく、より好ましく1~3であってよく、さらに好ましくは1又は2であってよい。
【0035】
(電荷輸送性ポリマーの製造方法)
上記式(I)で表される構造を有する電荷輸送性ポリマーは、2種以上の芳香族化合物をモノマーとして使用し、2種以上のモノマー間の反応によって下記式(i)で表される結合部位を形成できる公知の方法によって製造することができる。
【0036】
【0037】
上記電荷輸送性ポリマーを製造するために、例えば、反応性官能基Xを有する芳香族化合物と、反応性官能基Xと反応可能な反応性官能基Yを有する芳香族化合物とを使用し、これら化合物のカップリング反応を適用することができる。一実施形態において、上記電荷輸送性ポリマーの製造方法として、バックワルド・ハートウィッグ(Bucnwald-Hartwig)反応を適用することができる。バックワルド・ハートウィッグ反応の場合、反応性官能基Xと反応性官能基Yとの組合せは、ハロゲノ基とアミノ基であってよい。アミノ基は、第1級アミノ基であることが好ましい。
【0038】
上記実施形態において、上記電荷輸送性ポリマーは、バックワルド・ハートウィッグ反応を用いる公知の方法にしたがって、芳香環に直接結合するハロゲン原子を有する芳香族化合物と、第1級アミノ基を有する芳香族化合物とを反応させることによって得ることができる。ここで、ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であってよい。他の実施形態において、ハロゲン原子の代わりにトリフラート基を有する芳香族化合物を使用することもできる。
【0039】
上記バックワルド・ハートウィッグ反応では、芳香環に直接結合するハロゲン原子又はトリフラート基を2つ以上有する芳香族化合物(1)と、第1級アミノ基を有する芳香族化合物(2)を使用することによって、上記芳香族化合物(1)及び上記芳香族化合物(2)に由来する構造単位をそれぞれ1以上有するアリールアミンポリマーを製造することができる。このような観点から、原料モノマーとして使用する芳香族化合物を選択することによって、下記式(IA)で表されるように所望とする式(I)で表される構造(以下、構造(I)ともいう)を2以上有する電荷輸送性ポリマーを容易に得ることができる。
【0040】
【化11】
式中、Arは置換又は非置換のアリール基を表し、nは2以上の整数である。nは、好ましくは3以上であってよく、より好ましくは5以上であってよく、さらに好ましくは10以上であってよい。例えば、nは、電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量(Mw)が900以上500,000以下、2,000以上500,000以下、3,000以上500,000以下、又は5,000以上300,000以下の範囲となるように適宜設定される整数であってよい。
【0041】
一実施形態において、電荷輸送性ポリマーを製造するための原料モノマーとして、ハロゲン原子を有するトリフェニルアミンと、アリールアミンとを少なくとも使用することができる。このような実施形態において、電荷輸送性ポリマーにおける構造(I)は、下記式(I-2)又は下記式(I-3)で表される構造を含むことが好ましい。
【0042】
【化12】
式中、Arは置換又は非置換のアリール基を表し、*は他の構造との結合手を表す。
【0043】
上記式(I-1)又は上記式(I-2)で表される構造を有する電荷輸送性ポリマーを得る観点から、一実施形態において、少なくとも原料モノマーとして、芳香環に直接結合するハロゲン原子を3つ有するトリフェニルアミンと、アリールアミンとを好適に使用することができる。より具体的には、上記式(a)で表される3価の構造単位の3つの結合部にそれぞれハロゲン原子が直接結合した化合物と、上記式(b)で表される2価の構造単位の2つの結合部に水素原子が結合した化合物とを好適に使用できる。
【0044】
一実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、下記式(c)で表される1価の構造単位をさらに有してもよい。
【0045】
【化13】
式中、R
2は炭素数1~8のアルキル基であり、bは0又は1~5の整数である。
【0046】
一実施形態において、R2は、炭素数1~8の直鎖、分岐、又は環状のアルキル基であってよい。R2は、好ましくは炭素数1~8の直鎖のアルキル基であってよく、より好ましくは炭素数2~8の直鎖のアルキル基であってよく、さらに好ましくは炭素数3~8の直鎖のアルキル基であってよい。一実施形態において、bは、好ましくは0又は1~4であってよく、より好ましく1~3であってよく、さらに好ましくは1又は2であってよい。
【0047】
一実施形態において、電荷輸送性ポリマーに上記構造単位(c)を導入するために、原料モノマーとして、上記構造単位(c)における結合手にハロゲン原子が直接結合した化合物を使用することができる。
【0048】
一実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、上記構造単位(a)、(b)、(c)に加えて、さらに他の構造単位を含んでもよい。この場合、追加する構造単位を誘導可能な、ハロゲン原子又はアミノ基を有する芳香族化合物を使用することで、所望とする構造を有する電荷輸送性ポリマーを容易に得ることができる。
【0049】
電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、900以上であってよい。成膜性の観点から、上記Mwは2,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上が更に好ましく、10,000以上が特に好ましい。また、上記Mwは、500,000以下が好ましく、300,000以下がより好ましく、150,000以下が更に好ましい。上記ポリマーが上記範囲のMwを有する場合、優れた電荷輸送性を有するため、有機エレクトロニクス材料として好適に使用することができる。また、塗布液を調製するために使用する溶剤への溶解性に優れ、かつ優れた成膜性が得られる点でも好ましい。
【0050】
バックワルド・ハートウィッグ反応は、当業者に周知の条件及び方法に従い実施することができる。例えば、反応は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で、触媒として、パラジウム等の重金属を含む化合物を使用して実施することができる。反応時には、触媒と塩基とを併用することが好ましい。
【0051】
上記バックワルド・ハートウィッグ反応では、触媒として、代表的に、パラジウム含有触媒を好適に使用することができる。本明細書において、「パラジウム含有触媒」とは、パラジウムと配位子とを含む触媒を意味し、パラジウムと配位子とを含む錯体化合物又は塩、あるいはパラジウム含有触媒の前駆体と配位子又は配位子前駆体との組合せの形態を含む。
【0052】
上記配位子は、嵩高い構造を有するものが好ましく、具体例として、ホスフィン配位子、Buchwald配位子が挙げられる。配位子として、N-ヘテロサイクリックカルベン(NHC)を使用することもできる。なかでも、トリ-t-ブチルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン配位子がより好ましい。
【0053】
パラジウム含有触媒は、パラジウム(0)錯体であっても、パラジウム(II)塩であってもよい。パラジウム含有触媒の具体例として、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリ-o-トリルホスフィン)パラジウム(II)、ビス[ジ-t-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]ジクロロパラジウム(II)、[1,1’-ビス(ジ-t-ブチルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、ジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)、及びジクロロ[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム(II)、NHC配位子を有するUmicore CX31、CX32が挙げられる。これら化合物は、上記配位子又は配位子前駆体と組合せて使用することもできる。
【0054】
また、パラジウム含有触媒の前駆体を使用し、反応系に存在する有機金属試薬、ホスフィン、アミンなどの成分によって、系中で上記前駆体から活性パラジウムを発生させることもできる。上記前駆体として、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、ジ-μ-クロロビス[(η-アリル)パラジウム(II)]、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)等が挙げられる。
【0055】
上述のパラジウム含有触媒の前駆体を使用する場合、トリホスホニウム塩等の配位子(リガンド)の前駆体を併用することが好ましい。トリホスホニウム塩の具体例として、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートが挙げられる。この化合物は、系中でトリ-t-ブチルホスフィンを生じ、パラジウムに対する配位子として機能する。
特に限定するものではないが、一実施形態において、パラジウム含有触媒として、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(0)と、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートとを組合せて使用することが好ましい。
【0056】
一実施形態において、触媒として、少なくとも下記式(1)で表される構造を有するパラジウム含有触媒を好適に使用することができる。
PdArBrP(t-Bu)3 (1)
【0057】
式中、Arは置換又は非置換の炭素数6~30のアリール基である。Arは、例えば、置換又は非置換のフェニル基であってよい。アリール基の芳香環において少なくとも1つの水素原子は炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよい。
【0058】
上記構造を有するパラジウム含有触媒の具体例として、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。この化合物は、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)とo-ブロモトルエンとトリ-tert-ブチルホスフィンとを反応させて製造することができる。
【化14】
【0059】
他の実施形態において、触媒として、少なくとも、下記式で表される構造を有するパラジウム含有触媒を好適に使用することができる。
【化15】
【0060】
式中、Rは、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。Lは、配位子を表す。Zは、脱離基を表す。脱離基は、ハロゲン原子、メチルスルホニルオキシ基(-OSO2CH3)、トシル基(-OSO2C6H5CH3)、及びトリフルオロメチルスルホニルオキシ基(-OSO2CH3)からなる群から選択される1種であってよい。
【0061】
上記式(3)で表される構造を有する触媒の具体例として、以下が挙げられる。
【化16】
【0062】
一実施形態において、好適に使用できるパラジウム含有触媒は、周知の方法にしたがって製造することが可能であるが、市販品として入手することも可能である。例えば、アルドリッチ株式会社製のXphosPdシリーズを使用することができ、なかでも上記式(3-1)~(3-4)で表される触媒は、XphosPd G1、XphosPd G2、XphosPd G3、及びXphosPd G4として入手することができる。一実施形態において、上記式(3-2)及び(3-4)で表される触媒をより好ましく使用することができ、これらは順にXphosPd G2、及びXphosPd G4として入手することができる。
【0063】
触媒の使用量は、特に限定されないが、原料モノマーとして使用するアミノ基を有する芳香族化合物に対して、代表的に、0.1モル%以上、20モル%以下の範囲であってよい。触媒の使用量を上記範囲内に調整することによって、反応を効率良く進行させ、かつ副生成物の生成を抑制することが容易となる。一実施形態において、触媒の使用量は、原料モノマーとして使用するアミノ基を有する芳香族化合物に対して、好ましくは0.1モル%~10モル%であってよく、より好ましくは0.1モル%~5モル%であってよく、さらに好ましくは0.1モル%~2モル%であってよい。本実施形態の製造方法によれば、触媒の使用量を少なくした場合でも、効率よく反応を進行させることが可能である。そのため、反応によって得られるポリマーにおいて、触媒に由来する不純物の量を減少することが容易となる。
【0064】
一実施形態において、パラジウム含有触媒は、さらに添加剤を含んでもよい。添加剤は、パラジウム金属に対して配位子として機能する化合物が好ましい。添加剤として使用できる化合物の具体例として、例えば、P(t-Bu)3・HBF3、PCy3・HBF3、Xphos(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル)等を使用することができる。なかでも、P(t-Bu)3・HBF3が好ましい。このような添加剤を使用した場合、パラジウム触媒の反応性がさらに向上する傾向がある。
【0065】
塩基は、特に限定されず、無機塩基及び有機塩基のいずれであってもよい。特に限定されないが、一実施形態において、有機塩基が好ましく、t-ブトキシナトリウム、n-ブチルリチウム等の有機アルカリ金属化合物を好適に使用することができる。塩基の使用量は、特に限定されないが、原料モノマーとして使用するアミノ基を有する芳香族化合物のモル数に対して、代表的に、1.0モル当量以上、4モル当量以下の範囲であってよい。塩基の使用量を上記範囲内に調整することによって、反応を効率良く進行させ、かつ副生成物の生成を抑制することが容易となる。
【0066】
反応は、有機溶剤の存在下で実施することが好ましい。有機溶剤(反応溶剤)の一例として、例えば、ベンゼン、及びトルエン等の芳香族炭化水素、ジオキサン、テトラヒドロフラン、及びジメトキシエタン等の脂肪族エーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、ジメチルスルホキシドが挙げられる。なかでも、一実施形態において、反応は、芳香族炭化水素の存在下で実施することが好ましく、トルエンの存在下で実施することがより好ましい。
【0067】
反応温度は、特に限定されない。例えば、反応温度は0~200℃の範囲であってよい。一実施形態において、反応温度は、80~180℃の範囲であることが好ましい。
【0068】
原料モノマーの混合物において、アミノ基を有する芳香族化合物と、ハロゲン原子を有する芳香族化合物との配合比は、特に限定されない。しかし、反応系内に未反応の原料モノマーが過剰に残存すると、望ましくない副反応が生じることがあるため、配合比は適切に調整することが好ましい。配合比は、原料モノマーとして使用する芳香族化合物の構造、及び所望とする電荷輸送性ポリマーの構造を考慮して、適切に調整することができる。
【0069】
一実施形態の電荷輸送性ポリマーにおいて、原料モノマーとして、例えば、トリハロゲン化芳香族化合物と、第1級モノアミンとを用いることができ、より具体的には、トリ(ハロゲノフェニル)アミンと、アニリンとを用いることができる。トリ(ハロゲノフェニル)アミンとしては、トリ(4-クロロフェニル)アミン、トリ(4-ブロモフェニル)アミン、トリ(4-ヨードフェニル)アミン等であってよい。
より詳しくは、以下の化合物を好適に使用することができる。すなわち、原料モノマーは、下記式(A)で表される芳香族化合物を含むトリハロゲン化芳香族化合物と、下記式(B)で表される芳香族化合物を含むアリールアミンとのモノマー混合物であってよい。下記式(B)で表される芳香族化合物は置換基R1を有してよい。下記式(B)で表される構造において、置換基R1、aは先に上記式(b-1)で説明したとおりである。
【0070】
【0071】
一実施形態において、上記モノマー混合物は、芳香環の水素原子の1個がハロゲン原子で置換されたモノハロゲン化芳香族化合物をさらに含んでもよい。例えば、モノハロゲノベンゼンをさらに含んでもよい。モノハロゲノベンゼンとしては、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン等が挙げられる。モノハロゲノベンゼンとして下記式(C)で表される芳香族化合物を含むことが好ましい。下記式(C)で表される芳香族化合物は芳香環に少なくとも1つの置換基を有してよい。置換基については先に上記式(c)におけるR2として説明したとおりである。
【0072】
【0073】
一実施形態において、上記原料モノマーとして、上記式(A)で表される芳香族化合物(A)と、上記式(B)で表される芳香族化合物(B)とを使用することが好ましい。原料モノマーの配合比(A):(B)は、上記芳香族化合物(B)のアミノ基を基準とする反応点の数の比として、好ましくは0.5~1.5:1.0であってよく、より好ましくは0.6~1.4:1.0であってよい。
【0074】
一実施形態において、原料モノマーとして、上記芳香族化合物(A)及び芳香族化合物(B)に加えて、上記式(C)で表される芳香族化合物(C)を使用してもよい。原料モノマーの配合比(A):(B):(C)は、上記芳香族化合物(B)のアミノ基を基準とする反応点の数の比として、好ましくは0.2~0.9:1.0:0.0~1.0であってよく、より好ましくは0.3~0.7:1.0:0.1~0.9であってよく、さらに好ましくは0.4~0.6:1.0:0.2~0.8であってよい。
【0075】
一実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、上記芳香族化合物(A)、(B)、及び(C)に由来する構造単位に加えて、さらに他の構造単位を含んでもよい。例えば、芳香族化合物(B)に由来する2価の構造単位L1とは異なる構造を有する2価の構造単位L2をさらに含んでもよい。構造単位L2は、例えば、下記式で表される化合物を使用して導入することができる。
Q-L2―Q (B1-1)
Ar1-NH-L2-NH-Ar1 (B1-2)
式中、Qは、ハロゲン原子を表し、例えば、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であってよい。
L2は、炭素数2~30の芳香族炭化水素又は芳香族複素環、あるいはトリアリールアミンに由来する2価の有機基を表す。一実施形態において、L2はトリアリールアミンに由来する2価の有機基であることが好ましく、トリフェニルアミンに由来する2価の有機基であることがより好ましい。
Ar1は、炭素数6~24の芳香族化合物に由来する1価の有機基であってよく、例えば、先に説明した上記式(b-1)で表される構造を有することが好ましい。
【0076】
特に限定するものではないが、好ましい電荷輸送性ポリマーを容易に製造できる観点から、原料モノマーは、上記芳香族化合物(A)、上記芳香族化合物(B)、及び上記芳香族化合物(C)を含むことが好ましい。一実施形態において、原料モノマーは、上記芳香族化合物(A)、上記芳香族化合物(B)、及び上記芳香族化合物(C)のみから構成される混合物であることが好ましい。このような混合物を原料モノマーとして使用した場合、分子内に-Ph-Ph-の結合を形成することなく、-(NAr-Ph)n-(nは2以上の整数)の構造を有するポリマーを容易に形成することが可能となる。
【0077】
上記のように、-(NAr-Ph)n-の構造を有する電荷輸送性ポリマーは、バックワルド・ハートウィッグ反応に従って容易に合成することができる。その一方で、上記反応によって得られるポリマーには、反応時に使用した触媒及び原料モノマーなどの成分に由来する不純物が残存しやすい。そのため、上記反応後にポリマーの分離精製を行うことが好ましい。ポリマーの分離精製は、当技術分野で周知の方法を適用して行うことができる。例えば、反応後の反応液に水を加えて混合し、この混合液を有機相と水相とに分液し、有機相からポリマーを回収する方法を適用できる。
【0078】
一実施形態において、上記混合時に重金属捕捉剤を加えることによって、触媒等に由来する不純物をより効果的に除去することができる。重金属捕捉剤は、触媒として使用したパラジウム等の重金属をキレート化して捕捉することが可能な化合物、又は重金属と特異的に結合して吸着することが可能な化合物であればよい。例えば、ジチオカルバミン酸塩を使用できる。なかでも、炭素数1~6のアルキル基を有するアルキルジチオカルバミン酸塩の水溶液を好適に使用することができる。また、分離精製時に使用する有機溶剤を適切に選択することによって、上記製造方法で得られるポリマー中に残存する不純物量を容易に低減できる。例えば、反応液と、水との混合時にメタノール等の水溶性有機溶剤を好適に使用することができる。
【0079】
電荷輸送性ポリマーを含む有機エレクトロニクス材料を構成する場合、電荷輸送性ポリマーは製造過程などで混入する不純物を含んでもよい。しかし、不純物は有機エレクトロニクス材料を用いて形成される有機エレクトロニクス素子の特性低下の一因となるため、不純物の量はできるだけ少ないことが望ましい。一実施形態において、有機エレクトロニクス材料として好適に使用できる電荷輸送性ポリマーを提供する観点から、ポリマー中のパラジウム含有量は、100ppm以下が好ましく、80ppm以下がより好ましく、50ppm以下がさらに好ましい。また、ポリマー中のハロゲン原子の含有量(合計量)は、300ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましく、60ppm以下がさらに好ましい。上記のようにカップリング反応後に必要に応じて分離精製を行うことによって、所望とする純度を有する電荷輸送性ポリマーを容易に得ることができる。
【0080】
本発明の一実施形態である有機エレクトロニクス材料は、上記構造(I)を有する電荷輸送性ポリマーを含む少なくとも1種の電荷輸送性ポリマーを含む。有機エレクトロニクス材料における電荷輸送性ポリマーの含有量は、有機エレクトロニクス材料の全質量を基準として、好ましくは50質量%以上であってよく、より好ましくは70質量%以上であってよく、さらに好ましくは80質量%以上であってよい。電荷輸送性ポリマーの含有量を上記範囲内に調整した場合、優れた電荷輸送性を容易に得ることができる。一実施形態において、電荷輸送性ポリマーの含有量は100質量%であってもよい。
【0081】
<その他の成分>
有機エレクトロニクス材料は、任意の添加剤を含むことができ、例えばドーパントを更に含有してよい。ドーパントなどの添加剤を使用する場合は、有機エレクトロニクス材料の全質量を基準とする、電荷輸送性ポリマーの含有量は95%以下であってよく、90質量%以下であってもよい。
【0082】
(ドーパント)
ドーパントは、有機エレクトロニクス材料に添加することでドーピング効果を発現させ、電荷の輸送性を向上させ得るものであればよく、特に制限はない。ドーピングには、p型ドーピングとn型ドーピングがあり、p型ドーピングではドーパントとして電子受容体として働く物質が用いられ、n型ドーピングではドーパントとして電子供与体として働く物質が用いられる。正孔輸送性の向上にはp型ドーピング、電子輸送性の向上にはn型ドーピングを行うことが好ましい。電荷輸送性材料に用いられるドーパントは、p型ドーピング又はn型ドーピングのいずれの効果を発現させるドーパントであってもよい。また、1種のドーパントを単独で添加しても、複数種のドーパントを混合して添加してもよい。
【0083】
p型ドーピングに用いられるドーパントは、電子受容性の化合物であり、例えば、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属化合物、イオン性化合物、ハロゲン化合物、π共役系化合物等が挙げられる。具体的には、ルイス酸としては、FeCl3、PF5、AsF5、SbF5、BF5、BCl3、BBr3等;プロトン酸としては、HF、HCl、HBr、HNO3、H2SO4、HClO4等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、1-ブタンスルホン酸、ビニルフェニルスルホン酸、カンファスルホン酸等の有機酸;遷移金属化合物としては、FeOCl、TiCl4、ZrCl4、HfCl4、NbF5、AlCl3、NbCl5、TaCl5、MoF5;イオン性化合物としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、AsF6
-(ヘキサフルオロ砒酸イオン)、BF4
-(テトラフルオロホウ酸イオン)、PF6
-(ヘキサフルオロリン酸イオン)等のパーフルオロアニオンを有する塩、アニオンとして前記プロトン酸の共役塩基を有する塩など;ハロゲン化合物としては、Cl2、Br2、I2、ICL、ICL3、IBR、IF等;π共役系化合物としては、TCNE(テトラシアノエチレン)、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)等が挙げられる。前記以外の公知の電子受容性化合物を用いることも可能である。好ましくは、ルイス酸、イオン性化合物、π共役系化合物等である。イオン性化合物は、重合開始剤としても機能する。
【0084】
n型ドーピングに用いられるドーパントは、電子供与性の化合物であり、例えば、Li、Cs等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属、LiF、Cs2CO3等のアルカリ金属、及び/又はアルカリ土類金属の塩、金属錯体、電子供与性有機化合物などが挙げられる。
【0085】
ドーパントの含有量は、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。一方、成膜性を良好に保つ観点から、ドーパントの含有量は、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0086】
他の実施形態において、有機エレクトロニクス材料は、インク組成物として有機層を形成する時の作業性の向上、及び有機層の機能をより向上させる観点などから、任意にその他添加剤をさらに含有してもよい。その他添加剤としては、例えば、重合禁止剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、難燃剤、酸化防止剤、還元防止剤、酸化剤、還元剤、表面改質剤、乳化剤、消泡剤、分散剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0087】
(溶剤)
有機エレクトロニクス材料は、成膜方法として湿式プロセスを適用する観点から、さらに溶剤を含有することが好ましい。使用する溶剤は、電荷輸送性ポリマーを溶解できればよい。電荷輸送性ポリマーを溶剤に溶解させたインク組成物を使用することによって、湿式プロセスといった簡便な方法によって有機層を容易に形成することができる。
【0088】
溶剤としては、水、有機溶剤、又はこれらの混合溶剤など、任意の溶剤媒を使用できる。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ペンタン、ヘキサン、オクタン等のアルカン;シクロヘキサン等の環状アルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン等の芳香族炭化水素;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート等の脂肪族エーテル;1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、3-フェノキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。好ましくは、芳香族炭化水素、脂肪族エステル、芳香族エステル、脂肪族エーテル、及び芳香族エーテルであり、より好ましくは芳香族炭化水素である。
【0089】
有機エレクトロニクス材料(インク組成物)における溶剤の含有量は、種々の塗布方法へ適用することを考慮して定めることができる。例えば、溶剤の含有量は、溶剤に対し電荷輸送性ポリマーの割合が、0.1質量%以上となる量が好ましく、0.2質量%以上となる量がより好ましく、0.5質量%以上となる量が更に好ましい。また、溶剤の含有量は、溶剤に対し電荷輸送性ポリマーの割合が、20質量%以下となる量が好ましく、15質量%以下となる量がより好ましく、10質量%以下となる量が更に好ましい。
【0090】
<2>有機層
本発明の一実施形態は、上記有機エレクトロニクス材料又はインク組成物を用いて形成された有機層に関する。有機層は、良好な電荷輸送性を示す。インク組成物を用いることによって、塗布法により有機層を良好かつ簡便に形成できる。塗布方法としては、例えば、スピンコーティング法;キャスト法;浸漬法;凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、平版印刷、凸版反転オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等の有版印刷法;インクジェット法等の無版印刷法などの公知の方法が挙げられる。塗布法によって有機層を形成する場合、塗布後に得られた塗布層を加熱処理にて乾燥させ、溶剤を除去してもよい。
【0091】
加熱処理は、大気雰囲気下、又は、不活性ガス雰囲気下で実施することができる。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、及びこれらの混合ガスが挙げられる。「不活性ガス雰囲気」は、不活性ガスの濃度が、体積比で、99.5%以上の雰囲気であることが好ましく、99.9%以上の雰囲気であることがより好ましく、99.99%以上の雰囲気であることが更に好ましい。
【0092】
加熱処理は、例えば、ホットプレート、オーブン等の加熱器を用いて実施することができる。不活性ガス雰囲気下での加熱処理を実施するために、例えば、不活性ガス雰囲気下でホットプレートを使用するか、又は、オーブン内を不活性ガス雰囲気下にする。
【0093】
加熱処理は、溶剤を効率良く除去する観点から、溶剤の沸点以上の温度で実施することが好ましい。また、電荷輸送性ポリマーの重合反応を進行させる場合には、重合反応が効率良く進行する温度が好ましい。一実施形態において、加熱処理の温度は、好ましくは140℃以上、より好ましくは180℃以上、更に好ましくは190℃以上である。一方、加熱処理による劣化を抑制する観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、更に好ましくは250℃以下である。
【0094】
乾燥後の有機層の厚さは、電荷輸送の効率を向上させる観点から、好ましくは0.1nm以上であり、より好ましくは1nm以上であり、更に好ましくは3nm以上である。また、有機層の厚さは、電気抵抗を小さくする観点から、好ましくは300nm以下であり、より好ましくは200nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。
【0095】
<3>有機エレクトロニクス素子
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの前記有機層を有する有機エレクトロニクス素子に関する。有機エレクトロニクス素子として、例えば、有機EL素子、有機光電変換素子、有機トランジスタ等が挙げられる。有機エレクトロニクス素子は、好ましくは、少なくとも一対の電極の間に有機層が配置された構造を有する。有機エレクトロニクス素子は、前記有機エレクトロニクス材料、又は前記インク組成物を用いて有機層を形成することを含む製造方法により製造することができる。
【0096】
<4>有機EL素子
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの前記有機層を有する有機EL素子に関する。有機EL素子は、通常、発光層、陽極、陰極、及び基板を備えており、必要に応じて、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層等の他の機能層を備えている。各層は、蒸着法により形成してもよく、塗布法により形成してもよい。有機EL素子は、好ましくは、前記有機層を発光層又は他の機能層として有し、より好ましくは他の機能層として有し、更に好ましくは正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方として有する。
【0097】
図1は、有機EL素子の一実施形態を示す断面模式図である。
図1の有機EL素子は、多層構造の素子であり、基板8、陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層6、発光層1、電子輸送層7、電子注入層5、及び陰極4をこの順に有している。
【0098】
(発光層)
発光層に用いる材料として、低分子化合物、ポリマー、デンドリマー等の発光材料を使用できる。ポリマーは、溶剤への溶解性が高く、塗布法に適しているため好ましい。発光材料としては、蛍光材料、燐光材料、熱活性化遅延蛍光材料(TADF)等が挙げられる。
【0099】
蛍光材料として、ペリレン、クマリン、ルブレン、キナクリドン、スチルベン、色素レーザー用色素、アルミニウム錯体、これらの誘導体等の低分子化合物;ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾール、フルオレンーベンゾチアジアゾール共重合体、フルオレン-トリフェニルアミン共重合体、これらの誘導体等のポリマー;これらの混合物等が挙げられる。
【0100】
燐光材料として、Ir、Pt等の金属を含む金属錯体などを使用できる。Ir錯体としては、例えば、青色発光を行うFIr(pic)(イリジウム(III)ビス[(4,6-ジフルオロフェニル)-ピリジネート-N,C2]ピコリネート)、緑色発光を行うIr(ppy)3(ファク トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム)、赤色発光を行う(btp)2Ir(acac)(ビス〔2-(2’-ベンゾ[4,5-α]チエニル)ピリジナート-N,C3〕イリジウム(アセチル-アセトネート))、Ir(piq)3(トリス(1-フェニルイソキノリン)イリジウム)等が挙げられる。Pt錯体としては、例えば、赤色発光を行うPtOEP(2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-フォルフィンプラチナ)等が挙げられる。
【0101】
発光層が燐光材料を含む場合、燐光材料の他に、更にホスト材料を含むことが好ましい。ホスト材料としては、低分子化合物、ポリマー、又はデンドリマーを使用できる。低分子化合物としては、例えば、CBP(4,4’-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、mCP(1,3-ビス(9-カルバゾリル)ベンゼン)、CDBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)-2,2’-ジメチルビフェニル)、これらの誘導体等が、ポリマーとしては、前記有機エレクトロニクス材料、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレン、ポリフルオレン、これらの誘導体等が挙げられる。
【0102】
熱活性遅延蛍光材料としては、例えば、PIC-TRZ(2-biphenyl-4,6-bis(12-phenylindolo[2,3-a]carbazol-11-yl)-1,3,5-triazine)、Spiro-CN(2',7'-bis(di-P-tolylamino)-9,9'-spirobifluorene-s,7-dicarbonitrile)、CC2TA(2,4-bis{3-(9H-carbazol-9-yl)-9H-carbazol-9-yl}-6-phenyl-1,3,5-triazine)、CZ-PS(9,9'-(4,4'-sulfonylbis(4,1-phenylene))bis(3,6-di-tert-butyl-9H-carbazole))、4CzPN(3,4,5,6-tetra(9H-carbazol-9-yl)phthalonitrile)、HAP-3TPA(4,4',4''-(1,3,3a1,4,6,7,9-heptaazaphenalene-2,5,8-triyl)tris(N,N-bis(4-(tert-butyl)phenyl)aniline))、4CzIPN(1,2,3,5-tetrakis(carbazol-9-yl)-4,6-dicyanobenzene)等の化合物が挙げられる。
【0103】
(正孔注入層、正孔輸送層)
前記有機層を、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方として使用することが好ましい。上述のとおり、有機エレクトロニクス材料と溶剤を含むインク組成物を用いることにより、これらの層を容易に形成することができる。
【0104】
有機EL素子が、前記有機層を正孔注入層として有し、更に正孔輸送層を有する場合、正孔輸送層には公知の材料を使用できる。また、有機EL素子が、前記有機層を正孔輸送層として有し、更に正孔注入層を有する場合、正孔注入層には公知の材料を使用できる。正孔注入層と正孔輸送層の両方が前記有機層であってもよい。公知の材料として、例えば、芳香族アミン系化合物(例えば、N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン(α-NPD)等の芳香族ジアミン)、フタロシアニン系化合物、チオフェン系化合物(例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4-スチレンスルホン酸塩)(PEDOT:PSS)等のチオフェン系導電性ポリマー)などが挙げられる。
【0105】
正孔輸送層が溶解度を変化させた有機層である場合、その上層に湿式プロセスによって発光層を容易に形成することが可能である。この場合、重合開始剤は、正孔輸送層である有機層に含有させても、又は、正孔輸送層の下層にある有機層に含有させてもよい。
【0106】
(電子輸送層、電子注入層)
電子輸送層及び電子注入層に用いる材料としては、例えば、フェナントロリン誘導体、ビピリジン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレン、ペリレンなどの縮合環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、アルミニウム錯体等が挙げられる。また、前記有機エレクトロニクス材料も使用できる。
【0107】
(陰極)
陰極材料としては、例えば、Li、Ca、Mg、Al、In、Cs、Ba、Mg/Ag、LiF、CsF等の金属又は金属合金が用いられる。
【0108】
(陽極)
陽極材料としては、例えば、金属(例えば、Au)又は導電性を有する他の材料が用いられる。他の材料として、例えば、酸化物(例えば、ITO:酸化インジウム/酸化錫)、導電性高分子(例えば、ポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸混合物(PEDOT:PSS))が挙げられる。
【0109】
(基板)
基板として、ガラス、プラスチック等を使用できる。基板は、透明であることが好ましく、また、フレキシブル性を有することが好ましい。石英ガラス、樹脂フィルム等が好ましく用いられる。
【0110】
樹脂フィルムとしては、光透過性樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等を主成分とするフィルムが挙げられる。
【0111】
樹脂フィルムを用いる場合、水蒸気、酸素等の透過を抑制するために、樹脂フィルムに対して酸化珪素、窒化珪素等の無機物をコーティングして用いてもよい。
【0112】
(封止)
有機EL素子は、外気の影響を低減させて長寿命化させるため、封止されていてもよい。封止に用いる材料としては、ガラス、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルム、又は、酸化珪素、窒化ケイ素等の無機物を用いることができるが、これらに限定されることはない。封止の方法も、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。
【0113】
(発光色)
有機EL素子の発光色は特に限定されるものではない。白色の有機EL素子は、家庭用照明、車内照明、時計又は液晶のバックライト等の各種照明器具に用いることができるため好ましい。
【0114】
白色の有機EL素子を形成する方法としては、複数の発光材料を用いて複数の発光色を同時に発光させて混色させる方法を用いることができる。複数の発光色の組み合わせとしては、特に限定されないが、青色、緑色及び赤色の3つの発光極大波長を含有する組み合わせ、青色と黄色、黄緑色と橙色等の2つの発光極大波長を含有する組み合わせなどが挙げられる。発光色の制御は、発光材料の種類と量の調整により行うことができる。
【0115】
<5>表示素子、照明装置、表示装置
本発明の一実施形態は、前記有機EL素子を備える表示素子に関する。例えば、赤、緑及び青(RGB)の各画素に対応する素子として、有機EL素子を用いることで、カラーの表示素子が得られる。画像の形成方法には、マトリックス状に配置した電極でパネルに配列された個々の有機EL素子を直接駆動する単純マトリックス型と、各素子に薄膜トランジスタを配置して駆動するアクティブマトリックス型とがある。
【0116】
また、本発明の一実施形態は、前記有機EL素子を備える照明装置に関する。更に、本発明の一実施形態は、照明装置と、表示手段として液晶素子とを備える表示装置に関する。例えば、表示装置は、バックライトとして前記照明装置を用い、表示手段として公知の液晶素子を用いた表示装置、すなわち液晶表示装置とすることができる。
【実施例0117】
以下、本発明について実施例によってより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の形態に限定されるものではなく、様々な形態を含む。
【0118】
<1>電荷輸送性ポリマー
以下の実施例及び比較例で電荷輸送性ポリマーを合成するために使用した原料モノマーを以下に示す。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
(実施例1)
(1)電荷輸送性ポリマーの合成
ジムロート冷却管、及び撹拌機能を備えた反応容器を準備し、さらに当該反応容器に対して相対的に進退自在にオイルバスを配置した。窒素置換した反応容器に、窒素を注入しながら以下の成分をそれぞれ投入し、ジムロート冷却管の先端に窒素ガス供給装置を接続し、窒素雰囲気の反応環境にした。
原料モノマー:モノマーA1(1285mg、2.67ミリモル)、モノマーB1(1027mg、5.00ミリモル)、モノマーC1(370mg、2.00ミリモル)
有機溶剤(トルエン):窒素雰囲気下で保存した脱水トルエン、富士フイルム和光純薬株式会社製、31.0mL
塩基:t-ブトキシナトリウム、東京化成工業株式会社製、1442mg(アミノ基を有するモノマーB1を基準として3.0当量の量)
触媒:Pd[P(t-Bu)3]2、富士フイルム和光純薬株式会社製、102mg(アミノ基を有するモノマーB1を基準として4.0モル%の量)
添加剤:P(t-Bu)3・HBF4、富士フイルム和光純薬株式会社製、58mg(アミノ基を有するモノマーB1を基準として4.0モル%の量)
【0123】
次いで、反応容器内の有機溶剤が還流する温度までオイルバス(バス温度120℃)で加熱し、撹拌しながら2時間にわたって反応を実施した。
上記反応後、反応容器内の反応混合物の温度を室温まで下げ、得られた有機層を水洗いし、メタノール-水(9:1)を用いた再沈殿を行い、生じた沈殿物を吸引ろ過した。得られた沈殿物に酢酸エチルを加え、オイルバスにて60℃加温をしながら、15分間の撹拌を行い、沈殿物の酢酸エチルによる洗浄を行った。洗浄後、吸引ろ過により、洗浄した沈殿物を回収した。この洗浄した沈殿物を用いて、上記と同様の酢酸エチルによる洗浄を更に1回実施し、沈殿物中の残存モノマー及び酢酸エチルに可溶な反応物を取り除いた。次いで、酢酸エチルにて洗浄した沈殿物の減圧下乾燥を行い、電荷輸送性ポリマー(淡黄色の粉体)を得た。
電荷輸送性ポリマー(以下、ポリマーと称す)のプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを測定することによって、ポリマーはモノマーA1とモノマーB1とモノマーC1の重縮合によって得られる下記式(IA-1)で表される構造を有することを確認した。
【0124】
【0125】
ポリマーの収率は70%であり、重量平均分子量(Mw)は35,400、数平均分子量(Mn)は9,800であり、分子量分布Mw/Mnは3.6であった。
なお、1H-NMRスペクトルの測定は、Bruker社のAVANCE-600NMRスペクトロメータを使用して実施した。また、Mw及びMnの測定は、島津製作所社製のProminence GPCシステムを使用して実施した。Mw及びMnの測定では、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法にしたがい、スチレンゲルのカラムを使用し、40℃にて標準ポリスチレンで更正した後に、溶離液としてテトラヒドロフランを使用した。測定条件は以下のとおりである。後述する実施例においても同様である。
【0126】
送液ポンプ:L-6050 株式会社日立ハイテクノロジーズ
UV-Vis検出器:L-3000 株式会社日立ハイテクノロジーズ
カラム:Gelpack(登録商標) GL-A160S/GL-A150S 株式会社レゾナック
溶離液:THF(HPLC用、安定剤を含まない) 和光純薬工業株式会社
流速:1ml/min
カラム温度:室温
分子量標準物質:標準ポリスチレン
【0127】
ポリマーにおける不純物量を以下の方法にしたがって測定した。結果を表2に示す。
(不純物量の分析方法)
各ポリマー中のパラジウム(Pd)、Br及びClの含有量について、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(以下、EDX)を用いて測定した。測定条件は以下のとおりである。
装置:島津製作所、EDX-7000
X線管:Rhターゲット
雰囲気:大気
測定時間(秒):Pd:600、 Br:100、 Cl:1000
分析範囲(keV):Pd:20.72~21.52、 Br:11.66~12.16、 Cl:2.42~2.82
【0128】
(実施例2)
表1に示すように原料モノマー、配合量をそれぞれ変更したことを除き、全て実施例1と同様にしてポリマーを調製した。それぞれ得られたポリマーについて実施例1と同様にして各種測定を行った。結果を表2に示す。
【0129】
(実施例3)
ジムロート冷却管、及び撹拌機能を備えた反応容器を準備し、さらに当該反応容器に対して相対的に進退自在にオイルバスを配置した。窒素置換した反応容器に、窒素を注入しながら以下の成分をそれぞれ投入し、ジムロート冷却管の先端に窒素ガス供給装置を接続し、窒素雰囲気の反応環境にした。
原料モノマー:モノマーA1(1285mg、2.67ミリモル)、モノマーB3(886mg、5.00ミリモル)、モノマーC1(370mg、2.00ミリモル)
有機溶剤(トルエン):窒素雰囲気下で保存した脱水トルエン、富士フイルム和光純薬株式会社製、27.8mL
塩基:t-ブトキシナトリウム、東京化成工業株式会社製、1442mg(アミノ基を有するモノマーB3を基準として3.0当量の量)
触媒:Pd[P(t-Bu)3]2、富士フイルム和光純薬株式会社製、102mg(アミノ基を有するモノマーB3を基準として4.0モル%の量)
添加剤:P(t-Bu)3・HBF4、富士フイルム和光純薬株式会社製、58mg(アミノ基を有するモノマーB3を基準として4.0モル%の量)
【0130】
次いで、反応容器内の有機溶剤が還流する温度までオイルバス(バス温度120℃)で加熱し、撹拌しながら2時間にわたって反応を実施した。
上記反応後、反応容器内の反応混合物の温度を室温まで下げ、0.1mol/Lに調整したN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム・三水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)水溶液を10mL加えて撹拌した。得られた懸濁した溶液は、メタノール-水(9:1)を用いた再沈殿を行い、生じた沈殿物を吸引ろ過した。得られた沈殿物に酢酸エチルを加え、オイルバスにて60℃加温をしながら、15分間の撹拌を行い、沈殿物の酢酸エチルによる洗浄を行った。洗浄後、吸引ろ過により、洗浄した沈殿物を回収した。
【0131】
上記洗浄した沈殿物を用いて、上述した同様の方法により酢酸エチルによる洗浄を更に1回実施し、沈殿物中の残存モノマー及び酢酸エチルに可溶な反応物を取り除いた。次いで、酢酸エチルにて洗浄した沈殿物の減圧下乾燥を行い、ポリマー(淡黄色の粉体)を得た。
ポリマーの収率は72%であり、重量平均分子量(Mw)は37,100、数平均分子量(Mn)は12,500であり、分子量分布Mw/Mnは3.0であった。ポリマーにおける不純物量を実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0132】
(実施例4~12)
表1に示すように原料モノマー、配合量、及び触媒などの合成条件をそれぞれ変更したことを除き、全て実施例3と同様にしてポリマーを調製した。なお、実施例8、10、及び11では、再沈殿において、油状の沈殿物が生じたため、酢酸エチルによる洗浄は実施していない。そのため、これらの収率は算出していない。それぞれ得られたポリマーについて実施例1と同様にして各種測定を行った。結果を表2に示す。
【0133】
(比較例1)
比較例1では、鈴木-宮浦クロスカップリング法にしたがって電荷輸送性ポリマーを調製した。具体的には以下のようにしてポリマーを調製した。
(Pd触媒溶液の調製)
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、室温下、サンプル容器にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.183g、0.200mmol)を秤取り、トルエン(40.00mL)を加え、10分間撹拌した。同様に、異なるサンプル容器にトリス(tert-ブチル)ホスフィン(0.324g、1.600mmol)を秤取り、トルエン(10.00ml)を加え、10分間撹拌した。これらの溶液を混合し、室温で10分間撹拌し、Pd触媒溶液を得た。なお、Pd触媒溶液の調製における全ての溶剤は、窒素雰囲気下での窒素1L/分の窒素バブルによる脱気を30分間以上実施し、酸素濃度0.5%O2以下になっている溶剤を使用した。
【0134】
(ポリマーの調製および精製)
ジムロート冷却管、及び撹拌機能を備えた反応容器を準備し、さらに当該反応容器に対して相対的に進退自在にオイルバスを配置した。窒素置換した反応容器に、窒素を注入しながら以下の原料モノマー、塩基、添加剤成分をそれぞれ投入し、ジムロート冷却管の先端に窒素ガス供給装置を接続し、60℃にて、材料を溶解させた。次いで、反応容器内に、以下の触媒を投入し、有機溶剤が還流する温度までオイルバス(バス温度120℃)で加熱し、撹拌しながら2時間にわたって反応を実施した。
原料モノマー:モノマーA1(964mg、2.00ミリモル)、モノマーB4(2767mg、5.00ミリモル)、モノマーC1(740mg、4.00ミリモル)
有機溶剤(トルエン):窒素雰囲気下で保存した脱水トルエン、富士フイルム和光純薬株式会社製、45.6mL
塩基:3.0モル%水酸化カリウム水溶液(7.79mL)
触媒:上記で調製したPd触媒溶液(1.01mL)
添加剤:メチルトリ-n-オクチルアンモニウムクロリド(0.034g、Aliquat336/Alfa Aesar製)
【0135】
次いで、反応容器内の有機溶剤が還流する温度までオイルバス(バス温度120℃)で加熱し、撹拌しながら2時間にわたって反応を実施した。
上記反応後、反応容器内の反応混合物の温度を室温まで下げ、0.1mol/Lに調整したN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム・三水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)水溶液を10mL加えて撹拌した。分離した有機相は、メタノール-水(9:1)を用いた再沈殿を行い、生じた沈殿物を吸引ろ過した。得られた沈殿物に酢酸エチルを加え、オイルバスにて60℃加温をしながら、15分間の撹拌を行い、沈殿物の酢酸エチルによる洗浄を行った。洗浄後、吸引ろ過により、洗浄した沈殿物を回収した。この洗浄した沈殿物を用いて、上記と同様の酢酸エチルによる洗浄を更に1回実施し、沈殿物中の残存モノマー及び酢酸エチルに可溶な反応物を取り除いた。次いで、酢酸エチルにて洗浄した沈殿物の減圧下乾燥を行い、ポリマー(淡黄色の粉体)を得た。
ポリマーのプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを測定することによって、ポリマーはモノマーA1とモノマーB4とモノマーC1の重縮合によって得られる構造(後述する下記式(II)で表される構造)を有することを確認した。
【0136】
ポリマーの収率は50%であり、重量平均分子量(Mw)は43,400、数平均分子量(Mn)は13,300であり、分子量分布Mw/Mnは3.3であった。ポリマーにおける不純物量を実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。表2において「N.D.」はNot Detected(不検出)であることを表し、検出限界以下であることを意味する。
【0137】
【0138】
表1において記載した触媒の詳細は以下のとおりである。
Pd[P(t-Bu)
3]
2:ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)、富士フイルム和光純薬株式会社製
XphosPd G2:アルドリッチ株式会社製の製品名。クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)[2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム
PdCl
2(dtbpf):[1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、アルドリッチ株式会社製。
PdCl
2(amphos)
2:ビス(ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II)、アルドリッチ株式会社製。
Umicore CX-31:[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン]クロロ[3-フェニルアリル]パラジウム(II)、アルドリッチ株式会社製。
Umicore CX-32:[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン]クロロ[3-フェニルアリル]パラジウム(II)、アルドリッチ株式会社製。
PdArBrP(t-Bu)
3:下記式(2)で表される化合物(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(東京化成工業製)と、o-ブロモトルエン(東京化成工業製)と、トリ-tert-ブチルホスフィン(東京化成工業製)とを反応させて調製した)。
【化23】
【0139】
【0140】
<2>有機エレクトロニクス材料
実施例5及び比較例1で合成して得たポリマーを使用し、以下のようにして、それぞれ有機エレクトロニクス材料としてインク組成物を調製した。なお、実施例5で合成して得たポリマーは下記式(IA-2)で表される構造を有し、比較例1で合成して得たポリマーは下記式(II)で表される構造を有する。
【0141】
【0142】
【0143】
9mLスクリュー管に、実施例5及び比較例1で得たポリマー(50.0mg)、以下に示すイオン性化合物(0.5mg)を量り採り、トルエン(2449.5mg)を加えて溶解させ、インク組成物をそれぞれ調製した。
【0144】
【0145】
<3>HODの作製及び評価
(1)ホールオンリーデバイス(HOD)の作製
先に調製した実施例5及び比較例1の有機エレクトロニクス材料(インク組成物)を使用し、以下のようにしてHODを作製し評価した。
PTFEフィルター(孔径0.2μm)を用いて、各インク組成物をろ過した。ITOを1.6mm幅にパターニングした石英基板(縦22mm×横29mm×厚0.7mm、以下ITO基板という)上に、ろ過後のインク組成物を使用して、スピンコーターによって成膜した。続いて、230℃、30分間、窒素雰囲気下で加熱し、ITO基板上に膜厚60nmの有機層を形成した。
上記のようにして準備した、それぞれ有機層を有するITO基板を、真空蒸着機中に移し、上記有機層の上に蒸着法を用いてアルミニウム(Al)を100nm蒸着させた。さらに、封止処理を行って、導電性評価用のホールオンリーデバイス(以下、HODと称す)を作製した。
図2は、HODの構造を示す断面模式図である。
図2に示すように、HODは、基板11の上に、陽極12、有機層(正孔注入層)13、及び陰極14をこの順に有する積層体であり、この積層体を取り囲むように封止処理(不図示)が施されている。
【0146】
(2)HODの評価
(2-1)導電性の評価
先に作製した実施例5及び比較例1の導電性評価用のHODに電圧を印加し、電圧印加時の導電性(正孔注入機能)を確認した。さらに、実施例5及び比較例1のHODに対して印加電圧を変化させて測定を行った。実施例5及び比較例1で作製した各HODに電圧を印加した時の、電圧-電流密度曲線のグラフを
図3に示す。
これらの結果を表3に纏めて示す。
【0147】
【0148】
表3において、項目(1)~(3)の詳細は以下のとおりである。
(1)導電性の確認
A:導電性あり
B:導電性なし
(2)導電性評価1
印加電圧を変化させ、電流密度0.1mA/cm2時の電圧を測定した。
(3)導電性評価2
印加電圧を変化させ、電流密度20mA/cm2時の電圧を測定した。
【0149】
(2-2)正孔密度の評価
上記で作製した実施例5及び比較例1の導電性評価用のHODを用い、以下に記載する方法によって正孔密度を評価した。
(評価方法)
正孔密度の情報は、インピーダンス分光法(以下IS法)によって得ることが可能である。具体的には、以下の条件にしたがい、実施例5及び比較例1のHODのITO及びAl電極をLCRメータに接続した。次いで、HODのインピーダンスの周波数依存性を測定及び解析し、正孔密度を算出した。
【0150】
<測定条件>
測定装置: LCRメータ(NF回路ブロック製、ZM2376)
周波数範囲: 0.1Hz~5.5MHz
交流振幅圧: 100mV
【0151】
<正孔密度の算出方法>
有機層は、電気抵抗「R」と静電容量「C」を有すると仮定し、並列回路モデルで近似すると、以下に示すように回路モデルの複素インピーダンス「Z1(式1)」及び「Z2(式2)」が得られる。
【0152】
【0153】
また、インピーダンスの周波数依存性の解析では、以下に示すようにモジュラス「M1(式3)」、「M2(式4)」を用いた。
【0154】
【0155】
観測された「M1」、「M2」のピーク及び高さに対して、以下のように(式6)、(式7)の関係式が成り立つことにより、各有機層の抵抗及び静電容量が得られる。
【0156】
【0157】
イオン性化合物(重合開始剤)によって、正孔がドープされたHODでは、金属との界面でHOMOレベルと金属の仕事関数が一致するように正孔が移動し、これが厚み「d」の空乏層を形成する。このとき、空乏層の静電容量「C」及び厚み「d」は、以下に示すように(式7)で与えられる。
【0158】
【0159】
さらに、空乏層の厚み「d」は、空乏層内の空間電荷密度(アニオン密度)「N」とすると、バイアス電圧を印加しない場合は、以下に示すように(式8)で表される。ここで、アニオン密度「N」と正孔密度は等しいため、(式8)を用いて、正孔密度を算出できる。
【0160】
【0161】
(正孔密度の評価結果)
上記の方法に従い、実施例5と比較例1の有機エレクトロニクス材料(インク組成物)を用いて作製したHODの正孔密度をそれぞれ算出した。比較例1のインク組成物で得られる正孔密度を基準(100)として、実施例5のインク組成物で得られる正孔密度を表4に示す。
【0162】
【0163】
以上のことから、本発明による電荷輸送性ポリマーを含む有機エレクトロニクス材料(インク組成物)は、導電性及び正孔密度を向上できる有機層を容易に形成することができることが分かる。