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特開2025-11319反応装置、及び、ビニル系重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011319
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】反応装置、及び、ビニル系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/18 20060101AFI20250116BHJP
   B01F 35/53 20220101ALI20250116BHJP
   B01F 35/93 20220101ALI20250116BHJP
   B01F 35/90 20220101ALI20250116BHJP
   B01F 27/112 20220101ALI20250116BHJP
   B01F 27/86 20220101ALI20250116BHJP
   B01F 27/90 20220101ALI20250116BHJP
   B01F 27/191 20220101ALI20250116BHJP
   C08F 2/01 20060101ALI20250116BHJP
   C08F 2/18 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
B01J19/18
B01F35/53
B01F35/93
B01F35/90
B01F27/112
B01F27/86
B01F27/90
B01F27/191
C08F2/01
C08F2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024186138
(22)【出願日】2024-10-22
(62)【分割の表示】P 2023530389の分割
【原出願日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2021100495
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井田 徹
(72)【発明者】
【氏名】濱口 保典
【テーマコード(参考)】
4G037
4G075
4G078
4J011
【Fターム(参考)】
4G037CA03
4G037CA04
4G037CA18
4G037DA30
4G037EA04
4G075AA02
4G075AA32
4G075AA62
4G075BA10
4G075BB05
4G075CA03
4G075DA02
4G075DA18
4G075EA01
4G075EA07
4G075EB01
4G075EC09
4G075EC11
4G075EC23
4G075ED02
4G075ED08
4G078AA22
4G078AB06
4G078AB11
4G078BA05
4G078BA09
4G078CA03
4G078CA05
4G078DA01
4G078EA03
4J011DA03
4J011DB12
4J011DB23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】反応容器を大型化しつつ反応時間を短縮するため、除熱効率を増大させた反応装置を提供する。
【解決手段】反応装置が、筒状の形状を有する反応器110と、反応器の内部に配され、冷媒を流通させるための複数の第1冷却配管140,150とを備える。複数の第1冷却配管のそれぞれは、繰り返し屈曲しながら延伸する蛇行部を有する。蛇行部は、直線状に延伸する又は湾曲して延伸する複数の延伸部と、複数の延伸部のうち、隣接する2つの延伸部の端部を連結する複数の屈曲部とを含む。複数の第1冷却配管の少なくとも2つは、反応器の内壁面からの距離が異なる。少なくとも2つの第1冷却配管のうち、反応器の内壁面からの距離が最も小さな第1冷却配管に含まれる複数の延伸部の少なくとも一部の長さは、内壁面の周の長さの2/3よりも小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の形状を有する反応器と、
前記反応器の内部に配され、冷媒を流通させるための複数の第1冷却配管と、
攪拌軸と攪拌翼とを有する攪拌機と、
を備え、
前記複数の第1冷却配管のそれぞれは、繰り返し屈曲しながら延伸する蛇行部を有し、
前記蛇行部は、
直線状に延伸する又は湾曲して延伸する複数の延伸部と、
前記複数の延伸部のうち、隣接する2つの延伸部の端部を連結する複数の屈曲部と
を含み、
前記複数の第1冷却配管の少なくとも2つは、前記反応器の内壁面からの距離が異なり、
前記少なくとも2つの第1冷却配管のうち、前記反応器の内壁面からの距離が最も小さな第1冷却配管に含まれる前記複数の延伸部の少なくとも一部の長さは、前記内壁面の周の長さの2/3よりも小さく、
前記攪拌翼は、多段に設置される
反応装置。
【請求項2】
筒状の形状を有する反応器と、
前記反応器の内部に配され、冷媒を流通させるための複数の第1冷却配管と、
攪拌軸と攪拌翼とを有する攪拌機と、
を備え、
前記複数の第1冷却配管のそれぞれは、繰り返し屈曲しながら延伸する蛇行部を有し、
前記蛇行部は、
直線状に延伸する又は湾曲して延伸する複数の延伸部と、
前記複数の延伸部のうち、隣接する2つの延伸部の端部を連結する複数の屈曲部と
を含み、
前記複数の第1冷却配管の少なくとも2つは、前記反応器の内壁面からの距離が異なり、
前記少なくとも2つの第1冷却配管のうち、前記反応器の内壁面からの距離が最も小さな第1冷却配管に含まれる前記複数の延伸部の少なくとも一部の長さは、前記内壁面の周の長さの2/3よりも小さく、
前記攪拌翼の形状は、ファウドラー翼、ブルーマージン翼、パドル翼、傾斜パドル翼、タービン翼、プロペラ翼、およびこれらの組み合わせである
反応装置。
【請求項3】
筒状の形状を有する反応器と、
前記反応器の内部に配され、冷媒を流通させるための複数の第1冷却配管と、
偶数個のバッフルと、
を備え、
前記複数の第1冷却配管のそれぞれは、繰り返し屈曲しながら延伸する蛇行部を有し、
前記蛇行部は、
直線状に延伸する又は湾曲して延伸する複数の延伸部と、
前記複数の延伸部のうち、隣接する2つの延伸部の端部を連結する複数の屈曲部と
を含み、
前記複数の第1冷却配管の少なくとも2つは、前記反応器の内壁面からの距離が異なり、
前記少なくとも2つの第1冷却配管のうち、前記反応器の内壁面からの距離が最も小さな第1冷却配管に含まれる前記複数の延伸部の少なくとも一部の長さは、前記内壁面の周の長さの2/3よりも小さく、
前記偶数個のバッフルは、前記反応器の延伸軸の周りに略対称的に配置される
反応装置。
【請求項4】
筒状の形状を有する反応器と、
前記反応器の内部に配され、冷媒を流通させるための複数の第1冷却配管と、
1または複数のバッフルと、
を備え、
前記複数の第1冷却配管のそれぞれは、繰り返し屈曲しながら延伸する蛇行部を有し、
前記蛇行部は、
直線状に延伸する又は湾曲して延伸する複数の延伸部と、
前記複数の延伸部のうち、隣接する2つの延伸部の端部を連結する複数の屈曲部と
を含み、
前記複数の第1冷却配管の少なくとも2つは、前記反応器の内壁面からの距離が異なり、
前記少なくとも2つの第1冷却配管のうち、前記反応器の内壁面からの距離が最も小さな第1冷却配管に含まれる前記複数の延伸部の少なくとも一部の長さは、前記内壁面の周の長さの2/3よりも小さく、
前記バッフルは、前記反応器の延伸方向に略平行に延伸する板状または筒状の形状を有する
反応装置。
【請求項5】
前記反応器の内壁面からの距離が最も小さな第1冷却配管に含まれる前記複数の延伸部のうち、1/2を超える個数の延伸部の長さは、前記内壁面の周の長さの2/3よりも小さい、
請求項1から4のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項6】
前記反応器の内容量に対する前記蛇行部の表面積の比は、0.1~0.9[m/m]である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項7】
前記反応器の前記内容量に対する前記蛇行部の表面積の比は、0.5~0.7[m/m]である、
請求項6に記載の反応装置。
【請求項8】
前記反応器の内容量は、40~300mである、
請求項1から4のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項9】
前記反応器の延伸方向に略平行に延伸する複数のバッフルをさらに備え、
前記複数のバッフルのそれぞれは、少なくとも一部が前記反応器の前記内壁面に接して配され、
前記複数の第1冷却配管の一部は、前記複数のバッフルに含まれる2つのバッフルの間の位置であって、前記反応器の前記内壁面から離れた位置に配される、
請求項1または2に記載の反応装置。
【請求項10】
前記複数のバッフルの少なくとも1つは、冷媒を流通させるための第2冷却配管を有する、
請求項9に記載の反応装置。
【請求項11】
前記バッフルの少なくとも1つは、冷媒を流通させるための第2冷却配管を有する、
請求項3または4に記載の反応装置。
【請求項12】
還流コンデンサ及びジャケットをさらに備え、
前記還流コンデンサ及び前記ジャケットのそれぞれは、冷媒を流通させるための第3冷却配管を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項13】
前記反応装置は、懸濁重合の用途に用いられる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項14】
請求項1から4のいずれか一項に記載の反応装置を用いてビニル系単量体を重合させて、ビニル系重合体を生産する段階、
を有する、ビニル系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応装置、及び、ビニル系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部に冷媒を流通させることのできるバッフル及び蛇行配管を備えた重合装置が開示されている。特許文献2には、内部に冷媒を流通させることのできるバッフル及びコイル状冷却管を備えた重合装置が開示されている。特許文献3には、内部に熱媒体を流通させることのできるバッフルと、ヘリカルリボン翼及びアンカー翼を有する攪拌手段とを備えた樹脂合成装置が開示されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開平7-233202号公報
[特許文献2]特開平7-233206号公報
[特許文献3]特開2013-151621号公報
[一般的開示]
【0003】
本発明の第1の態様においては、反応装置が提供される。上記の反応装置は、例えば、筒状の形状を有する反応器を備える。上記の反応装置は、例えば、冷媒を流通させるための複数の第1冷却配管を備える。上記の反応装置において、複数の第1冷却配管は、例えば、反応器の内部に配される。上記の反応装置において、複数の第1冷却配管のそれぞれは、例えば、繰り返し屈曲しながら延伸する蛇行部を有する。上記の反応装置において、蛇行部は、例えば、直線状に延伸する又は湾曲して延伸する複数の延伸部を含む。上記の反応装置において、蛇行部は、例えば、複数の延伸部のうち、隣接する2つの延伸部の端部を連結する複数の屈曲部を含む。上記の反応装置において、複数の第1冷却配管の少なくとも2つは、例えば、反応器の内壁面からの距離が異なる。上記の反応装置において、少なくとも2つの第1冷却配管のうち、反応器の内壁面からの距離が最も小さな第1冷却配管に含まれる複数の延伸部の少なくとも一部の長さは、例えば、内壁面の周の長さの2/3よりも小さい。
【0004】
上記の何れかの反応装置において、反応器の内壁面からの距離が最も小さな第1冷却配管に含まれる複数の延伸部のうち、1/2を超える個数の延伸部の長さは、内壁面の周の長さの2/3よりも小さくてよい。上記の何れかの反応装置において、反応器の内容量に対する蛇行部の表面積の比は、0.1~0.9[m/m]であってよい。上記の何れかの反応装置において、反応器の内容量に対する蛇行部の表面積の比は、0.5~0.7[m/m]であってよい。上記の反応装置において、反応容器の内容量は、40~300mであってよい。
【0005】
上記の何れかの反応装置は、反応器の延伸方向に略平行に延伸する複数のバッフルを備えてよい。上記の何れかの反応装置において、複数のバッフルのそれぞれは、少なくとも一部が反応器の内壁面に接して配されてよい。上記の何れかの反応装置において、複数の第1冷却配管の一部は、複数のバッフルに含まれる2つのバッフルの間の位置であって、反応器の内壁面から離れた位置に配されてよい。上記の何れかの反応装置において、複数のバッフルの少なくとも1つは、冷媒を流通させるための第2冷却配管を有してよい。
【0006】
上記の何れかの反応装置は、還流コンデンサを備えてよい。上記の何れかの反応装置において、還流コンデンサは、冷媒を流通させるための第3冷却配管を有してよい。上記の何れかの反応装置は、ジャケットを備えてよい。上記の何れかの反応装置において、ジャケットは、冷媒を流通させるための第3冷却配管を有してよい。上記の何れかの反応装置は、懸濁重合の用途に用いられてよい。
【0007】
本発明の第2の態様においては、ビニル系重合体の製造方法が提供される。上記の製造方法は、例えば、第1の態様に係る反応装置を用いてビニル系単量体を重合させて、ビニル系重合体を生産する段階を有する。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】重合装置100の一例の概略断面図を示す。
図2】反応容器110の内部に配される内部構造物の一例を概略的に示す。
図3】反応容器110の一例の概略断面図を示す。
図4】反応容器110の一例の概略平面図を示す。
図5】バッフル232の内部構造の一例を概略的に示す。
図6】蛇行冷却管252の構造の一例を概略的に示す。
図7】蛇行冷却管252の構造の他の例を概略的に示す。
図8】蛇行冷却管252の構造の他の例を概略的に示す。
図9】重合装置900の要部の一例を概略的に示す。
図10】重合装置1000の要部の一例を概略的に示す。
図11】重合装置1100の要部の一例を概略的に示す。
図12】重合装置1200の要部の一例を概略的に示す。
図13】重合装置1300の要部の一例を概略的に示す。
図14】重合装置1400の要部の一例を概略的に示す。
図15】重合装置1500の要部の一例を概略的に示す。
図16】重合装置1600の要部の一例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。本明細書において、数値範囲が「A~B」と表記される場合、当該表記はA以上B以下を意味する。
【0011】
(重合装置100の概要)
図1図2図3及び図4を用いて、重合装置100の一例の詳細が説明される。重合装置100は、例えば、重合体の製造に用いられる。重合装置100は、懸濁重合の用途に用いられてよい。
【0012】
より具体的には、重合装置100は、ビニル系重合体の製造に用いられる。ビニル系重合体の製造方法としては、重合装置100を用いてビニル系単量体を重合させてビニル系重合体を生産する段階を有する方法が例示される。上記のビニル系重合体の製造方法は、例えば、重合装置100に配された反応器に、ビニル系単量体を含む原材料を貯留する段階を有する。上記のビニル系重合体の製造方法は、例えば、上記のビニル系単量体の重合反応を開始させてビニル系重合体を生産する段階を有する。
【0013】
図1は、重合装置100の一例の概略断面図を示す。本実施形態において、重合装置100は、反応容器110と、攪拌機120と、1又は複数の(単に、1以上と称される場合がある。)バッフル130と、1以上の蛇行冷却管140と、1以上の蛇行冷却管150と、ジャケット170と、還流コンデンサ180とを備える。本実施形態において、攪拌機120は、攪拌軸122と、攪拌翼124と、動力機構126とを有する。本実施形態において、バッフル130は、本体132と、1以上のサポート134とを有する。本実施形態において、ジャケット170は、熱媒体の流路172を有する。本実施形態において、還流コンデンサ180は、熱媒体の流路182を有する。
【0014】
本実施形態において、攪拌軸122及び攪拌翼124は、反応容器110の内部に配される。本実施形態において、1以上のバッフル130のそれぞれは、反応容器110の内部に配される。本実施形態において、1以上の蛇行冷却管140のそれぞれは、反応容器110の内部に配される。本実施形態において、1以上の蛇行冷却管150のそれぞれは、反応容器110の内部に配される。
【0015】
本実施形態において、動力機構126は、反応容器110の外部に配される。本実施形態において、ジャケット170は、反応容器110の外部に配される。本実施形態において、還流コンデンサ180は、反応容器110の外部に配される。
【0016】
本実施形態において、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150は、反応容器110の内面からの距離が異なるように配される。具体的には、蛇行冷却管150は、蛇行冷却管140よりも反応容器110の側面に近い位置に配される。この場合、蛇行冷却管140と、反応容器110の側面との距離L2は、蛇行冷却管150と、反応容器110の側面との距離L1よりも大きい。
【0017】
蛇行冷却管140と、反応容器110の側面との距離L2は、蛇行冷却管140の断面の中心と、反応容器110の側面との距離の最小値であってよい。蛇行冷却管150と、反応容器110の側面との距離L1は、蛇行冷却管150の断面の中心と、反応容器110の側面との距離の最小値であってよい。例えば、蛇行冷却管140又は蛇行冷却管150が円管である場合、蛇行冷却管140又は蛇行冷却管150の断面は円形であり、蛇行冷却管140又は蛇行冷却管150の断面の中心は、当該円の中心である。
【0018】
これにより、本実施形態によれば、反応容器110の内部の熱が効率よく除去され得る。例えば、重合装置100が重合体の製造に用いられる場合、重合装置100は、重合反応において発生する反応熱を効率よく除去することができる。
【0019】
ところで、特に、塩化ビニル系の単量体、又は、塩化ビニル系の化合物を主体とする単量体混合物(両者をあわせて、塩化ビニル系単量体と称される場合がある。)の懸濁重合においては、反応容器110の内部に冷却コイル、ドラフトチューブ等の内部構造物が配されると、攪拌機120の所要動力が増加する。また、上記の内部構造物の形状、大きさ及び設置位置は、重合装置100の混合性能に影響を与える。そのため、内部構造物によっては、反応容器110の内部に、流動の緩慢な部分が発生し得る。反応容器110の内部に流動の緩慢な部分が発生すると、反応容器110の内部の温度が不均一になる。その結果、生産される重合体の粒子サイズ及び/又は重合度が不均一になったり、反応容器110の内壁又は内部構造物の表面に重合体のスケールが付着しやすくなったりする。上記のスケールは、重合体を用いた成形製品の品質を損なうフィッシュアイの原因となり得る。
【0020】
また、除熱効率が同一の条件においては、反応容器110の大型化と、反応時間の短縮とは、トレードオフの関係にある。そのため、反応容器110を大型化しつつ、反応時間を短縮するためには、重合装置100の除熱効率を増大させることが望ましい。
【0021】
重合装置100の除熱効率を増大させる方法としては、冷媒の温度を低下させることが考えられる。しかしながら、冷媒の温度を低下させると、重合体の製造コストが増加する。重合装置100の除熱効率を増大させる他の方法としては、ジャケット170又は還流コンデンサ180による除熱量を増加させることが考えられる。特に、40m以上の大型重合器となると、ジャケット170による除熱だけでは除熱量が不足するので、還流コンデンサ180による除熱量を大きく増加させることが考えられる。しかしながら、還流コンデンサ180の除熱負荷を増加させると、反応容器110の内部における重合体スラリーの発泡量が増加し得る。重合体スラリーの発泡量が増加すると、還流コンデンサ180の除熱能力が低下したり、還流コンデンサ180の内部に重合体のスケールが付着したりする場合がある。
【0022】
また、例えば、特許文献1に記載された重合装置を用いて重合器の容量を大型化する場合、蛇行配管の伝熱面積が不足すると、製品の品質を維持しつつ反応時間を短縮することが困難となる可能性がある。一方、特許文献2に記載された重合装置においては、比較的簡単な構造物により、伝熱面積を増加させることができる。しかしながら、装置の構造上、バッフルと、コイル状冷却管とを略同一円周上に配置することができない。そのため、装置の容量に対するコイル状冷却管を設置可能な領域の割合が比較的小さい。特許文献2に記載された重合装置を用いて重合器の容量を大型化する場合、伝熱面積を増加させるためにコイル状冷却管同士の距離を小さくすると、重合装置の混合性能が低下する可能性がある。加えて、外乱などによりコイル状冷却管の表面にスケール又は塊状の反応物が生じた場合、缶内作業が煩雑となるので、上記のスケールなどを十分に除去することが難しい。
【0023】
これに対して、本実施形態に係る重合装置100によれば、反応容器110の内面からの距離が異なるように、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150が配される。これにより、重合装置100の混合性能に対する影響の小さな比較的簡単な構造物を用いて、伝熱面積を増加させることができる。また、本実施形態に係る重合装置100によれば、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150の設置位置に関する自由度が大きい。例えば、1以上の蛇行冷却管140及び1以上の蛇行冷却管150の少なくも1つと、バッフル130とが、略同一円周上に配置され得る。これにより、蛇行冷却管150が重合装置100の混合性能に与える影響をより小さくしつつ、装置全体の伝熱面積を増加させることができる。
【0024】
(重合装置100の各部の概要)
本実施形態において、反応容器110は、合成反応の原料を貯留する。重合装置100が重合体の製造に用いられる場合、例えば、反応容器110の内部に、重合性の単量体、重合開始剤、水性媒体、分散助剤等が仕込まれた後、重合が開始される。分散助剤としては、例えば、任意の界面活性剤が使用され得る。
【0025】
反応容器110は、例えば、筒状の形状を有する。反応容器110は、円筒状の形状を有してもよく、角筒状の形状を有してもよい。反応容器110は、例えば、反応容器110の延伸方向(図中、z方向である。)が鉛直方向となるように設置される。
【0026】
反応容器110を、反応容器110の延伸方向に垂直な面(図中、xy平面である。)で切断した断面(横断面と称される場合がある。)の形状としては、円形、楕円形、多角形などが例示される。なお、反応容器110の横断面の形状は、実質的に、円形、楕円形、多角形とみなすことのできる形状であってもよい。
【0027】
反応容器110の内容量は特に限定されるものではないが、反応容器110の内容量は、例えば、1~300mである。反応容器110の内容量の下限値は、40mであってもよく、80mであってもよく、100mであってもよく、120mであってもよく、130mであってもよく、150mであってもよく、200mであってもよく、250mであってもよい。反応容器110の内容量の上限値は、300m以上であってもよい。反応容器110の内容量の上限値は、350mであってもよく、400mであってもよい。反応容器110の内容量が大きいほど、本実施形態による冷却能力の向上が有利に作用し得る。
【0028】
反応容器110の内容量は、反応容器110が、反応容器110の予め定められた上限位置まで液体を貯留した場合における容量として定められる。反応容器110の内容量は、例えば、反応容器110の内部に撹拌軸、翼、バッフル、コイル等の内部構造物が配されていない場合における、反応容器110の内部の体積である。
【0029】
上述されたとおり、反応容器110の大型化と、反応時間の短縮とは、トレードオフの関係にある。反応容器110の内容量が40m以上になると、重合装置100の除熱効率が不足しやすくなり、反応容器110を大型化しつつ、反応時間を短縮することが難しい。特に、反応容器110の内容量が80m以上の場合、本実施形態に係る重合装置100の効果がより顕著に表れる。反応容器110の詳細は後述される。
【0030】
本実施形態において、攪拌機120は、反応容器110の内部に貯留された液体を攪拌する。本実施形態において、攪拌軸122は、攪拌翼124を保持し、攪拌翼124を回転させる。本実施形態において、攪拌翼124は、攪拌軸122に取り付けられ、反応容器110の内部に貯留された液体を攪拌する。
【0031】
攪拌翼124の形状は特に限定されるものではないが、攪拌翼124の形状としては、ファウドラー翼、ブルーマージン翼、パドル翼、傾斜パドル翼、タービン翼、プロペラ翼、及び、これらの組み合わせが例示される。これにより、攪拌軸122が回転することにより、攪拌軸122から放射状に外周へ向う吐出流が発生する。攪拌翼124が有する翼の枚数は特に限定されるものではないが、上記の翼の枚数としては、2~6枚が例示される。攪拌翼124の設置位置及び設置数量は特に限定されるものではないが、攪拌翼124は、多段に設置されることが好ましい。攪拌翼124の段数としては、2~6段が例示される。
【0032】
本実施形態において、動力機構126は、攪拌軸122を回転させる。動力機構126は、例えば、動力を発生させる動力部(図示されていない。)と、動力部が発生させた動力を攪拌軸122に伝達する動力伝達部(図示されていない。)動力部としては、電動機が例示される。動力伝達部としては、減速機が例示される。
【0033】
攪拌軸122の回転数、並びに、攪拌翼124の形状、大きさ、翼の枚数、設置位置、設置数量及び設置間隔Piは、重合装置100の用途に応じて、適宜決定される。攪拌軸122の回転数、並びに、攪拌翼124の形状、大きさ、翼の枚数、設置位置、設置数量及び設置間隔Piは、例えば、反応容器110の内容量、反応容器110の形状、反応容器110の内部に配された内部構造物、除熱手段の構成、除熱能力、及び、重合のために仕込まれる原材料の組成を考慮して決定される。
【0034】
例えば、重合装置100が懸濁重合の用途に用いられる場合、内容物(この場合、水性懸濁混合物である。)に加えられる撹拌エネルギーが、80~200kgf・m/s・mとなるように、攪拌軸122の回転数が決定される。ここで、内容物に加えられる「撹拌エネルギー」は、重合装置100の運転中に、動力機構126に配された撹拌機用駆動モーターに負荷されるエネルギーAから、モーター効率及び伝導ロス、メカニカルロス等の各種のエネルギーロスBを差し引いた、内容物の単位量(単位内容量と称される場合がある。)当りの撹拌に要する正味のエネルギーとして定められる。上記の単位量としては、単位質量、単位体積などが例示される。例えば、内容物の体積をCとすると、撹拌エネルギーは下記の数式(1)により算出される。
(数式1)
(A-B)/C [kgf・m/s・m
【0035】
撹拌機用駆動モーターに負荷されるエネルギーは、例えば、ワットメーターなどの計測機器を用いて電気的に計測することとができる。また、撹拌エネルギーは、攪拌軸122の回転数を変更することにより容易に調節することができる。
【0036】
重合装置100における攪拌軸122の回転数は、例えば、事前に実施されたパイロットプラントにおける重合試験に基づいて決定される。一般的に、パイロットプラントから重合装置100へのスケールアップは、重合装置100の攪拌状態と、パイロットプラントの攪拌状態とが略一致するように実施される。例えば、パイロットプラント及び重合装置100において、反応容器110の形状及び大きさと、攪拌翼124、バッフル130、蛇行冷却管140、蛇行冷却管150などの内部構造物の形状及び大きさ並びに配置とが相似するように、各内部構造物の形状及び大きさ並び配置が決定される。
【0037】
そこで、一実施形態によれば、重合装置100における撹拌エネルギーと、パイロットプラントにおける撹拌エネルギーとが略同一となるように、重合装置100における攪拌軸122の回転数が決定され得る。上述されたとおり、撹拌エネルギーは、例えば「(A-B)/C」として算出される。攪拌エネルギーに基づいて攪拌軸122の回転数を決定する手法としては、任意の公知の手法が採用され得る。
【0038】
パイロットプラントにおける攪拌軸122の回転数は、例えば、下記の手順により決定される。例えば、パイロットプラントを用いた重合試験により、パイロットプラントにおける攪拌軸122の回転数と、重合体の品質との関係が得られる。これにより、目的とする品質の重合体が得られるような攪拌軸122の回転数が決定される。上記の品質は、特に限定されるものではないが、上記の品質としては、例えば、粒子サイズが例示される。
【0039】
具体的には、パイロットプラントを用いた重合試験において、目的とする重合体の還元粘度(K値と称される場合がある。)に応じて、重合温度が設定される。ここで、重合温度と、重合体の平均重合度とは相関関係を有しており、重合体のK値は、重合体の平均重合度を表す指標として広く用いられている。
【0040】
また、パイロットプラントを用いた重合試験において、パイロットプラントの除熱能力に応じて、重合時間が決定される。例えば、(i)出発原料となる単量体の仕込量、(ii)重合開始剤の投入量、及び、(iii)パイロットプラントの除熱能力に応じて、反応による発熱量がパイロットプラントの除熱能力を超えないように、重合時間が決定される。
【0041】
このように、パイロットプラントが十分な除熱能力を有するように重合時間が設定された場合、K値の目標値に応じて重合温度を設定することで、目的とする平均重合度を有する重合体が生成され得る。そこで、例えば、重合温度及び重合時間が同一で、攪拌軸122の回転数が異なる複数の条件のそれぞれについて重合試験が実施される。
【0042】
攪拌軸122の回転数が異なる複数の試験結果に基づいて、パイロットプラントにおける攪拌軸122の回転数と、重合体の品質との関係が得られる。これにより、重合体の品質の目標値が決定されれば、目的とする品質の重合体が得られるような攪拌軸122の回転数が決定され得る。
【0043】
パイロットプラントが十分な除熱能力を有するように重合時間が設定された場合、K値の目標値に応じて重合温度を設定することで、目的とする平均重合度を有する重合体が生成され得る。一方、設定された重合時間に対してパイロットプラントの除熱能力が不十分である場合、重合反応による発熱により重合温度が上昇する。上述されたとおり、重合温度と、生成された重合体の平均重合度との間には相関関係が存在する。そのため、重合温度が上昇すると、生成された重合体のK値と、K値の目標値との誤差が大きくなる。また、重合温度の上昇具合によっては、反応の制御が不可能となり得る。
【0044】
このように、生成された重合体のK値は、重合装置100の除熱能力に関する指標として採用され得る。例えば、重合装置100を用いて重合体を生成した場合において、設定された重合時間に対して目的としたK値が得られたとき、重合装置100は十分な除熱能力を有すると判定され得る。
【0045】
上述されたとおり、パイロットプラントから重合装置100へのスケールアップは、重合装置100の攪拌状態と、パイロットプラントの攪拌状態とが略一致するように実施され得る。例えば、目的とする重合装置100における反応容器110の内径及び/又は直胴部高さに対する、反応容器110の内部に配される各内部構造物の大きさの比率と、パイロットプラントの反応容器の内径及び/又は直胴部高さに対する、パイロットプラントにおける各内部構造物の大きさの比率とが略一致する場合において、重合装置100における攪拌エネルギーと、パイロットプラントにおける攪拌エネルギーとが略同一であるとき、スケールアップされた重合装置100の攪拌状態と、パイロットプラントの攪拌状態とが略一致する。
【0046】
例えば、パイロットプラントと、目的とする重合装置100との間で、反応容器110の直胴部の高さに対する、バッフル130の延伸方向(図中、上下方向である。)の長さの比が略同一となるように、目的とする重合装置100におけるバッフル130の大きさが決定される。パイロットプラントと、目的とする重合装置100との間で、反応容器110の内部の直径(内径と称される場合がある。)に対する、バッフル130の延伸方向に略垂直な方向(図中、左右方向である)の長さの比が略同一となるように、目的とする重合装置100におけるバッフル130の大きさが決定される。パイロットプラントと、目的とする重合装置100との間で、バッフル130の個数及び配置が略同一となるように、目的とする重合装置100におけるバッフル130の個数及び配置が決定される。他の構造物(例えば、攪拌翼124、蛇行冷却管140、蛇行冷却管150などである。)についても同様である。
【0047】
また、上述されたとおり、スケールアップされた重合装置100における重合体の品質の目標値が決定されれば、上述されたパイロットプラントにおける攪拌軸122の回転数と、重合体の品質との関係に基づいて、スケールアップされた重合装置100における攪拌軸122の回転数が決定され得る。具体的には、まず、(i)重合装置100における重合体の品質の目標値、及び、(ii)パイロットプラントにおける攪拌軸122の回転数と、重合体の品質との関係に基づいて、パイロットプラントにおける攪拌軸122の回転数が決定される。次に、重合装置100における攪拌エネルギーと、パイロットプラントにおける攪拌エネルギーとが略同一となるように、重合装置100における攪拌軸122の回転数が決定される。
【0048】
これにより、目的とする重合装置100の(i)攪拌翼124の形状、大きさ、翼の枚数、設置位置、設置数量及び設置間隔Pi、並びに、(ii)反応容器110の内容量、反応容器110の形状及び反応容器110の内部に配された内部構造物などを考慮して、上記の単位内容量当たりの撹拌エネルギー[kgf・m/s・m]を厳密に計測することなく、目的とする重合装置100の攪拌軸122の回転数が決定され得る。なお、目的とする重合装置100における攪拌軸122の回転数は、重合試験のシミュレーション結果に基づいて決定されてもよい。
【0049】
本実施形態において、バッフル130は、重合装置100の混合性能を向上させる。例えば、バッフル130は、反応容器110の内部における上下方向の混合性能を向上させる。バッフル130の設置位置は特に限定されるものではないが、例えば、バッフル130は、反応容器110の内壁の近傍に配される。バッフル130は、反応容器110の側壁により支持されてよい。他の実施形態において、バッフル130は、反応容器110の天板又は底板により支持され、攪拌翼124の近傍に配される。バッフル130は、重合装置100が重合体の製造に用いられる場合に、バッフル130の上端が液相に没するように配されてもよく、バッフル130の上端が液相に没しないように配されてもよい。
【0050】
バッフル130の個数は、1~12本程度であることが好ましく、2~8本程度であることが好ましく、3~6本程度であることがより好ましく、4~6本程度であることがさらに好ましい。偶数個のバッフル130が、反応容器110の延伸軸(中心軸と称される場合がある。)の周りに略対称的に配置されることが好ましい。これにより、重合装置100の混合性能がさらに向上し、液体の滞留が抑制される。その結果、スケールの発生が抑制され得る。
【0051】
本実施形態において、バッフル130の本体132は、重合装置100の混合性能を向上させる。本体132の形状は特に限定されるものではないが、本体132は、例えば、反応容器110の延伸方向に略平行に延伸する板状又は筒状の形状を有する。本体132が円筒状の形状を有する場合、本体132の直径は、40~500mmであってよい。本体132の延伸方向(図中、z方向である。)の長さBh(高さBhと称される場合がある。)は、特に限定されない。
【0052】
本体132の延伸方向に略垂直な方向(図中、x又はy方向である。)の長さBw(幅Bwと称される場合がある。)は、特に限定されない。反応容器110の内径に対する、本体132の幅Bwの割合は、1~10%であってよく、2.5~7.5%であってよく、3~7%であってよい。
【0053】
本体132が筒状の形状を有する場合、反応容器110の直胴部の横断面の面積に対する、それぞれが筒状の形状を有する1以上の本体132の横断面の面積の合計値の割合は、0.4~3%であってよい。上記の割合が0.4%未満である場合、邪魔板としての機能が不足し、反応容器110の内部における上下方向の混合が不十分になる可能性がある。例えば、重合装置100が単一のバッフル130を備える場合、上記の割合が0.4%未満になり得る。例えば、塩化ビニル系単量体の懸濁重合において、反応容器110の内部における上下方向の混合が不十分となった場合、生産された重合体の粒度分布がブロードとなり得る。その結果、生産された重合体をシート状に成形した場合に、例えば、フィッシュアイが増加して、成形製品の品質が低下する可能性がある。
【0054】
一方、上記の割合が3%を超えた場合、攪拌機120の所要動力が過度に増加する。また、バッフル130と、反応容器110の内壁面との間における液体の流動性が低下し得る。その結果、反応容器110又は反応容器110の内部の構造物にスケールが付着しやすくなる可能性がある。例えば、重合装置100が8本を超えるバッフル130を備える場合、重合装置100の設計によっては上記の割合が3%を超え得る。
【0055】
少なくとも1つのバッフル130の本体132は、熱媒体を流通させるための流路を有してよい。上記の流路は、本体132の内部に形成されてもよく、本体132の外部に配されてもよい。上記の流路は、一重管であってもよく、二重管構造を有してもよい。
【0056】
熱媒体は、公知の冷媒であってよい。冷媒としては、水、ブライン、フレオン、その他の液化ガスなどが例示される。冷媒として液化ガスが用いられる場合、当該液化ガスは、蛇行冷却管140の内部で蒸発することで、冷媒として機能してよい。冷媒の線速は、0.1~6.0m/s程度であってよい。
【0057】
本体132は、例えば、サポート134を介して、反応容器110の内壁面に接続される。本体132と、重合装置100の内壁面との距離は、40mm以上であることが好ましい。上記の距離が40mm未満の場合、反応容器110の内部の気液界面付近において、反応容器110の内壁面と、バッフル130との間に重合体のスケールが付着しやすくなる場合がある。本体132の詳細は後述される。
【0058】
本実施形態において、サポート134は、本体132を保持する。例えば、サポート134の一端は、反応容器110の内壁面に接し、サポート134の他端は、本体132に接する。上述されたとおり、サポート134は、本体132と、重合装置100の内壁面との距離が40mm以上となるように、本体132を保持してよい。
【0059】
本実施形態において、蛇行冷却管140は、その内部に熱媒体を流通させるための流路が形成される。蛇行冷却管140は、一重管であってよい。蛇行冷却管140は、蛇行冷却管150よりも、反応容器110の中心軸に近い位置に配される。蛇行冷却管140の個数は、1~12本程度であることが好ましく、2~8本程度であることが好ましく、3~6本程度であることがより好ましく、4~6本程度であることがさらに好ましい。偶数個の蛇行冷却管140が、反応容器110の中心軸の周りに略対称的に配置されることが好ましい。
【0060】
熱媒体は、公知の冷媒であってよい。冷媒としては、水、ブライン、フレオン、その他の液化ガスなどが例示される。冷媒として液化ガスが用いられる場合、当該液化ガスは、蛇行冷却管140の内部で蒸発することで、冷媒として機能してよい。冷媒の線速は、0.1~6.0m/s程度であってよい。
【0061】
本実施形態において、蛇行冷却管140の少なくとも一部は、繰り返し屈曲しながら延伸する。蛇行冷却管140のうち、繰り返し屈曲しながら延伸する部分の延伸方向の長さPhは、バッフル130の本体132の延伸方向(図中、z方向である。)の長さBhより小さくてもよく、当該Bhと略同一であってもよく、当該Bhより大きくてもよい。これにより、設置面積当たりの伝熱面積が大きくなる。
【0062】
図1に示された例においては、蛇行冷却管140は、繰り返し屈曲しながら、反応容器110の延伸方向と略平行に延伸する。図1に示された例においては、蛇行冷却管140の全体が、繰り返し屈曲しながら延伸する。蛇行冷却管140の延伸方向の全長Pt(図示されていない。)に対する、蛇行冷却管140のうち、繰り返し屈曲しながら延伸する部分の延伸方向の長さPhの割合は、0.25以上であってよく、0.5以上であってもよく、0.75以上であってもよく、0.8以上であってもよく、0.9以上であってもよい。
【0063】
蛇行冷却管140は、重合装置100が重合体の製造に用いられる場合に、蛇行冷却管140の上端が液相に没するように配されてよい。蛇行冷却管140の上部が気相に露出すると伝熱効率が低下したり、重合体のスケールが蛇行冷却管140に付着しやすくなるからである。重合末期においては液収縮により気液界面が低下する。そのため、蛇行冷却管140は、重合終了時においても、蛇行冷却管140の上端と、気液界面とが十分な距離を有する位置に配されることが好ましい。蛇行冷却管140の詳細は後述される。
【0064】
本実施形態において、蛇行冷却管150は、その内部に熱媒体を流通させるための流路が形成される。蛇行冷却管150は、一重管であってよい。蛇行冷却管150は、蛇行冷却管140よりも、反応容器110の側壁に近い位置に配される。蛇行冷却管150の個数は、1~12本程度であることが好ましく、2~8本程度であることが好ましく、3~6本程度であることがより好ましく、4~6本程度であることがさらに好ましい。蛇行冷却管150の個数は、蛇行冷却管140の個数と同一であってもよく、異なってもよい。偶数個の蛇行冷却管150が、反応容器110の中心軸の周りに略対称的に配置されることが好ましい。
【0065】
熱媒体は、公知の冷媒であってよい。冷媒としては、水、ブライン、フレオン、その他の液化ガスなどが例示される。冷媒として液化ガスが用いられる場合、当該液化ガスは、蛇行冷却管140の内部で蒸発することで、冷媒として機能してよい。冷媒の線速は、0.1~6.0m/s程度であってよい。
【0066】
本実施形態において、蛇行冷却管150の少なくとも一部は、繰り返し屈曲しながら延伸する。蛇行冷却管150のうち、繰り返し屈曲しながら延伸する部分の延伸方向の長さPhは、バッフル130の本体132の延伸方向(図中、z方向である。)の長さBhより小さくてもよく、当該Bhと略同一であってもよく、当該Bhより大きくてもよい。これにより、設置面積当たりの伝熱面積が大きくなる。
【0067】
図1に示された例においては、蛇行冷却管150は、繰り返し屈曲しながら、反応容器110の延伸方向と略平行に延伸する。図1に示された例においては、蛇行冷却管150の全体が、繰り返し屈曲しながら延伸する。蛇行冷却管150の延伸方向の全長Pt(図示されていない。)に対する、蛇行冷却管150のうち、繰り返し屈曲しながら延伸する部分の延伸方向の長さPhの割合は、0.25以上であってよく、0.5以上であってもよく、0.75以上であってもよく、0.8以上であってもよく、0.9以上であってもよい。
【0068】
蛇行冷却管150は、重合装置100が重合体の製造に用いられる場合に、蛇行冷却管150の上端が液相に没するように配されてよい。蛇行冷却管150の上部が気相に露出すると伝熱効率が低下したり、重合体のスケールが蛇行冷却管150に付着しやすくなるからである。重合末期においては液収縮により気液界面が低下する。そのため、蛇行冷却管150は、重合終了時においても、蛇行冷却管150の上端と、気液界面とが十分な距離を有する位置に配されることが好ましい。
【0069】
一実施形態において、蛇行冷却管150における冷媒の流通方向は、反応容器110の下方から反応容器110の上方に向かって冷媒が流れるように設定される。他の実施形態において、蛇行冷却管150における冷媒の流通方向は、反応容器110の上方から反応容器110の下方に向かって冷媒が流れるように設定される。
【0070】
例えば、還流コンデンサ180から返送されてきた液体は、反応容器110の内部の液体よりも低温であり密度が大きい。そのため、還流コンデンサ180から返送されてきた液体の流入口の近傍においては、反応容器110の内部で液体が上方から下方に向かって流れる傾向がみられる。そこで、例えば、還流コンデンサ180から返送されてきた液体の流入口の近傍に配されている蛇行冷却管150は、反応容器110の下方から反応容器110の上方に向かって冷媒が流通するように構成され得る。蛇行冷却管150の詳細は後述される。
【0071】
本実施形態において、ジャケット170は、反応容器110の外部から、反応容器110を加熱したり、冷却したりする。上述されたとおり、ジャケット170は、熱媒体が流通可能に構成された流路172を有する。ジャケット170は、流路172を流れる熱媒体の温度及び流量の少なくとも一方を制御することで、反応容器110の加熱量及び除熱量を調整する。
【0072】
熱媒体は、公知の冷媒であってよい。冷媒としては、水、ブライン、フレオン、各種の液化ガスなどが例示される。冷媒として、液状の冷媒が用いられることが好ましい。冷媒として液化ガスが用いられる場合、当該液化ガスは、蛇行冷却管140の内部で蒸発することで、冷媒として機能してよい。冷媒の線速は、0.1~6.0m/s程度であってよい。
【0073】
本実施形態において、還流コンデンサ180は、反応容器110の除熱に用いられる。例えば、還流コンデンサ180には、反応容器110からの蒸気が供給される。還流コンデンサ180は、上記の蒸気を冷却して液化する。還流コンデンサ180は、上記の冷却により生じた液体を反応容器110に返送する。上述されたとおり、還流コンデンサ180は、熱媒体が流通可能に構成された流路182を有する。還流コンデンサ180は、流路182を流通する熱媒体と、反応容器110からの蒸気との間の熱交換により、反応容器110からの蒸気を冷却する。流路182を流れる熱媒体の温度及び流量の少なくとも一方を制御することで、反応容器110の除熱量が調整され得る。
【0074】
(除熱手段の関係)
上述されたとおり、本実施形態において、反応容器110は、除熱手段として、バッフル130、蛇行冷却管140、蛇行冷却管150、ジャケット170及び還流コンデンサ180を有する。各除熱装置を用いて除熱される除熱量の、総発熱量に対する割合は、特に限定されない。上記の割合は、例えば、生産される重合体の品質、製造コストなどを考慮して決定される。例えば、総発熱量に対する、バッフル130の除熱量の割合は、10~30%であることが好ましい。総発熱量に対する、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150の除熱量の合計の割合は、10~50%であることが好ましい。総発熱量に対する、ジャケット170の除熱量の割合は、20~40%であることが好ましい。総発熱量に対する、還流コンデンサ180の除熱量の割合は、10~50%であることが好ましい。
【0075】
また、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150は、反応容器110の内容量に対する、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150の表面積の合計値の比が、0.1~0.9[m/m]となるように設計されることが好ましい。上記の比は、0.5~0.7[m/m]であることがより好ましい。これにより、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150の除熱量の合計の総発熱量に対する割合を、10~50%にすることができる。
【0076】
(重合装置100の各部の材質)
重合装置100の各部の材質は、機械的強度、耐食性、伝熱生などを考慮して適宜決定される。例えば、攪拌軸122、攪拌翼124、バッフル130、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150に用いられる材料としては、高クロム高純度フェライト系ステンレス鋼、2相ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼等のステンレス鋼が好ましい。これらの材料は、伝熱性及び耐食性に優れる。また、反応容器110の内壁面の材料としては、ステンレスを含むクラッド鋼が例示される。上記のクラッド鋼の外層の材料は炭素鋼であることが好ましく、当該クラッド鋼の内層の材料はステンレス鋼であることが好ましい。
【0077】
(重合装置100の用途)
上述されたとおり、重合装置100は、重合体の製造に用いられる。重合方式は、懸濁重合であってもよく、乳化重合であってもよい。より具体的には、重合装置100は、各種のビニル系単量体、例えば、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸もしくはフマル酸の金属塩もしくはエステル類、スチレン等の芳香族ビニル類、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン等のジエン系単量体、アクリロニトリル等を重合して重合体を生産する用途に用いられる。重合装置100は、塩化ビニル又はこれを主体とする単量体混合物を重合して重合体を生産する用途に、特に好適に用いられる。
【0078】
重合装置100を用いて重合体が生産される場合、各原料を重合装置の供給口(図示せず)より供給し、反応容器110の内部に仕込まれた反応化合物の温度が予め定められた温度に到達した時点で、バッフル130、蛇行冷却管140、蛇行冷却管150、及び、ジャケット170のそれぞれに冷媒を流通させて、当該反応化合物の除熱が開始される。一方、還流コンデンサ180による除熱を開始する時期は、重合転化率が4%に達した以後であることが好ましく、重合転化率が4~20%の時点であることがより好ましい。
【0079】
重合装置100を用いて重合体が生産される場合であっても、各種の重合条件は、公知の重合条件と同様であってよい。上記の重合条件としては、原料などの仕込み割合、原料などの仕込み方法、重合温度などが例示される。
【0080】
例えば、重合装置100を用いて、懸濁重合により塩化ビニル系重合体が生産される場合、水性媒体、塩化ビニル単量体、場合によっては他のコモノマー、分散助剤、重合開始剤等の仕込みは、公知の塩化ビニル系重合体の製造方法と同様にして実行される。また、重合条件も、公知の塩化ビニル系重合体の製造方法と同様であってよい。
【0081】
重合される単量体としては、塩化ビニル単独のほか、塩化ビニルを主体とする単量体混合物(塩化ビニル50質量%以上)を用いることができる。塩化ビニルと共重合されるコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン;無水マレイン酸;アクリロニトリル;スチレン;塩化ビニリデン;その他塩化ビニル共重合可能な単量体が例示される。
【0082】
上記の分散助剤としては、塩化ビニルの水性媒体中での重合の際に通常使用される化合物が用いられる。上記の分散助剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性セルロースエーテル;部分ケン化ポリビニルアルコール、アクリル酸重合体;ゼラチン等の水溶性ポリマーなどが例示される。上記の分散助剤は、単独で使用されてもよく、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。分散助剤は、例えば、仕込まれる単量体100質量部あたり0.01~5質量部で添加される。
【0083】
また、用いられる重合開始剤については、従来塩化ビニル系の重合に使用されているものでよい。上記の重合開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;α-クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、ヘキシルパーオキシネオデカネート、オクチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテート等の過酸化物;アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物などが例示される。上記の重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。重合開始剤は、例えば、単量体100質量部あたり0.01~3質量部で添加されてもよく、単量体100質量部あたり0.05~3質量部添加されることが好ましい。
【0084】
さらに必要に応じて、塩化ビニルの重合に適宜使用される重合調整剤、連鎖移動剤、pH調整剤、緩衝剤、ゲル化改良剤、帯電防止剤、スケール防止剤等を添加することできる。なお、本発明で得られる塩化ビニル重合体の還元粘度(K値)については、本発明の装置を使用することで、所望の範囲の重合体を得ることができるが、好ましくは40~90の範囲になる重合体を得ることができる。
【0085】
pH調整剤又は緩衝剤としては、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、フタル酸水素カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウムなどが例示される。上記のpH調整剤又は緩衝剤は、単独で使用されてもよく、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。
【0086】
重合装置100は、反応装置の一例であってよい。反応容器110は、反応器の一例であってよい。反応容器110の内面は、反応器の内壁面の一例であってよい。反応容器110の側面は、反応器の内壁面の一例であってよい。バッフル130の本体132に配される熱媒体の流路は、第2冷却配管の一例であってよい。バッフル130のサポート134は、バッフルの少なくとも一部の一例であってよい。蛇行冷却管140は、第1冷却配管の一例であってよい。蛇行冷却管150は、第1冷却配管の一例であってよい。蛇行冷却管140の1つと、蛇行冷却管150の1つとは、複数の第1冷却配管の少なくとも2つの一例であってよい。流路172は、第3冷却配管の一例であってよい。流路182は、第3冷却配管の一例であってよい。
【0087】
図2は、反応容器110の内部に配される内部構造物の一例を概略的に示す。図2においては、説明を簡単にすることを目的として、攪拌機120の描写が省略されている。図2に示されるとおり、重合装置100は、1以上のバッフル130として、バッフル232と、バッフル234と、バッフル236と、バッフル238とを備える。また、重合装置100は、1以上の蛇行冷却管140として、蛇行冷却管242と、蛇行冷却管244と、蛇行冷却管246と、蛇行冷却管248とを備える。同様に、重合装置100は、1以上の蛇行冷却管150として、蛇行冷却管252と、蛇行冷却管254と、蛇行冷却管256と、蛇行冷却管258とを備える。
【0088】
図3は、反応容器110の一例の概略断面図を示す。図3においては、説明を簡単にすることを目的として、蛇行冷却管140の描写が省略されている。また、説明を簡単にすることを目的として、バッフル232、バッフル234、バッフル236及びバッフル238の設置位置がデフォルメされている。
【0089】
図3に示されるとおり、本実施形態において、反応容器110は、直胴部312と、第1鏡板314と、第2鏡板316と、台座318とを備える。本実施形態において、直胴部312は、円筒状の形状を有する。直胴部312の延伸方向(図中、z方向である。)の長さをHbとし、直胴部312の内径をDbとしたとき、直胴部312は、例えば、Hb/Dbの値が1.0~3.0となるように設計される。直胴部312は、Hb/Dbの値が1.5~2.5となるように設計されてよい。
【0090】
本実施形態において、第1鏡板314は、直胴部312の一方の端部に結合され、反応容器110の底板を構成する。本実施形態において、第2鏡板316は、直胴部312の他方の端部に結合され、反応容器110の天板を構成する。本実施形態において、台座318は、動力機構126を保持する。
【0091】
また、図3に示されるとおり、重合装置100の周囲には、冷媒の供給源から反応容器110に冷媒を供給するための冷媒供給配管332と、反応容器110から冷媒の供給源に、熱交換後の冷媒を返送するための冷媒返送配管334とが配される。また、図3に示された実施形態によれば、バッフル232及びバッフル234が連結部342により連結され、バッフル232から流出した冷媒が、バッフル234に流入可能に構成される。また、バッフル234及びバッフル236が連結部344により連結され、バッフル234から流出した冷媒が、バッフル236に流入可能に構成される。同様に、バッフル236及びバッフル238が連結部346により連結され、バッフル236から流出した冷媒が、バッフル238に流入可能に構成される。各バッフルの詳細は後述される。
【0092】
本実施形態によれば、冷媒供給配管332から反応容器110に供給された冷媒は、バッフル232に流入し、バッフル234、バッフル236及びバッフル238を通過して、冷媒返送配管334に排出される。なお、冷媒の流通方式は、本実施形態に限定されない。
【0093】
例えば、他の実施形態において、冷媒供給配管332から反応容器110に供給された冷媒は、バッフル232に流入し、バッフル234を通過して、冷媒返送配管334に排出される。また、冷媒供給配管332から反応容器110に供給された冷媒は、バッフル238に流入し、バッフル236を通過して、冷媒返送配管334に排出される。さらに他の実施形態において、バッフル232、バッフル234、バッフル236及びバッフル238のそれぞれは、各バッフルに供給される冷媒の流量を独立して制御可能に構成される。
【0094】
図4は、反応容器110の一例の概略平面図を示す。本実施形態において、(i)バッフル232、バッフル234、バッフル236及びバッフル238と、(ii)蛇行冷却管242、蛇行冷却管244、蛇行冷却管246及び蛇行冷却管248と、(iii)蛇行冷却管252、蛇行冷却管254、蛇行冷却管256及び蛇行冷却管258とが、同心円状に配される。
【0095】
本実施形態において、蛇行冷却管242と、蛇行冷却管244と、蛇行冷却管246と、蛇行冷却管248とが、略同一円周上に配される。また、本実施形態において、(i)バッフル232、バッフル234、バッフル236及びバッフル238と、(ii)蛇行冷却管252、蛇行冷却管254、蛇行冷却管256及び蛇行冷却管258は、略同一円周上に配される。
【0096】
つまり、直胴部312の特定の位置における横断面において、バッフル232、バッフル234、バッフル236及びバッフル238の横断面の中心と、蛇行冷却管252、蛇行冷却管254、蛇行冷却管256及び蛇行冷却管258の横断面の中心とが、略同一円周上に配される。直胴部312の特定の位置における横断面は、直胴部312の延伸方向(図中、z方向である。)に垂直な面(図中、xy平面である。)であって、蛇行冷却管252、蛇行冷却管254、蛇行冷却管256及び蛇行冷却管258の中心を通る平面で、反応容器110を切断した断面であってよい。この場合、横断面における各配管の幅は、各配管の直径に一致する。
【0097】
本実施形態において、バッフル232、バッフル234、バッフル236及びバッフル238は、反応容器110の中心軸の周りに略対称的な位置に配置される。蛇行冷却管242、蛇行冷却管244、蛇行冷却管246及び蛇行冷却管248は、反応容器110の中心軸の周りに略対称的な位置に配置される。蛇行冷却管252、蛇行冷却管254、蛇行冷却管256及び蛇行冷却管258は、反応容器110の中心軸の周りに略対称的な位置に配置される。
【0098】
図4に示されるとおり、蛇行冷却管252は、バッフル232と、バッフル234との間の位置に配される。蛇行冷却管254は、バッフル234と、バッフル236との間の位置に配される。蛇行冷却管256は、バッフル236と、バッフル238との間の位置に配される。蛇行冷却管258は、バッフル238と、バッフル232との間の位置に配される。蛇行冷却管252、蛇行冷却管254、蛇行冷却管256及び蛇行冷却管258の外周の直径は、バッフル232、バッフル234、バッフル236及びバッフル238の幅Bwより小さくてもよい。
【0099】
本実施形態において、蛇行冷却管242、蛇行冷却管244、蛇行冷却管246及び蛇行冷却管248が配される円の直径は、蛇行冷却管252、蛇行冷却管254、蛇行冷却管256及び蛇行冷却管258が配される円の直径よりも小さい。本実施形態によれば、反応容器110の直胴部312の直径方向において、蛇行冷却管が多段に配され得る。これにより、例えば、反応容器110の内部にリング状又は螺旋状の大きな配管が配置される場合と比較して、内部構造物の配置の自由度が向上する。その結果、冷却効率に優れた重合装置100が作製され得る。
【0100】
蛇行冷却管242、蛇行冷却管244、蛇行冷却管246及び蛇行冷却管248の外周が配される仮想的な円の直径D1の大きさは、特に限定されるものではないが、攪拌翼124の回転領域の直径D2より大きいことが好ましい。D1/D2は、1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。
【0101】
本実施形態において、蛇行冷却管252、蛇行冷却管254、蛇行冷却管256及び蛇行冷却管258のそれぞれと、直胴部312の内面との距離は、全てL1である。同様に、蛇行冷却管242、蛇行冷却管244、蛇行冷却管246及び蛇行冷却管248のそれぞれと、直胴部312の内面との距離は、全てL2である。図4に示されるとおり、本実施形態において、L2>L1である。
【0102】
上記のL1及びL2の大きさは特に限定されるものではないが、L1は、各蛇行冷却管の外周と、直胴部312の内面との距離が40mm以上となるように設定されることが好ましい。なお、L1が40mm以上となるように設定されてもよい。上記の距離又はL1が40mm未満の場合、反応容器110の内部の気液界面付近において、反応容器110の内壁面と、蛇行冷却管150との間に重合体のスケールが付着しやすくなる場合がある。
【0103】
同様に、蛇行冷却管242と、蛇行冷却管252との距離Pcは、40mm以上であることが好ましい。距離Pcは、例えば、上記の横断面において、蛇行冷却管242の外周と、蛇行冷却管252の外周との距離の最小値を算出することで決定される。Pcが40mm未満の場合、重合体のスケールが付着しやすくなる場合がある。
【0104】
特定の蛇行冷却管と、直胴部312の内面との距離は、直胴部312の延伸方向に垂直、且つ、当該特定の蛇行冷却管の中心を通る断面における、両者の最短距離として決定されてよい。各蛇行冷却管と、直胴部312の内面との距離は、例えば、上記の横断面において、各蛇行冷却管の延伸方向に沿った中心線と、直胴部312の内面との距離の最小値を算出することで決定される。なお、本実施形態において、上記の各蛇行冷却管の延伸方向に沿った中心線は、円弧状に湾曲している。上記の距離の詳細は後述される。
【0105】
図4に示されるとおり、直胴部312の特定の位置における横断面において、蛇行冷却管242、蛇行冷却管244、蛇行冷却管246及び蛇行冷却管254の横断面は、円弧状の形状を有する。同様に、蛇行冷却管252、蛇行冷却管254、蛇行冷却管256及び蛇行冷却管258の横断面は、円弧状の形状を有する。蛇行冷却管242、蛇行冷却管244、蛇行冷却管246及び蛇行冷却管254の横断面の形状と、蛇行冷却管252、蛇行冷却管254、蛇行冷却管256及び蛇行冷却管258の横断面の形状とは、相似形であってよい。例えば、蛇行冷却管242及び蛇行冷却管252の横断面が円弧状の形状を有する場合、蛇行冷却管242の円弧の中心角と、蛇行冷却管252の円弧の中心角とが略同一であってよい。蛇行冷却管244及び蛇行冷却管254、蛇行冷却管246及び蛇行冷却管256、並びに、蛇行冷却管248及び蛇行冷却管258についても同様であってよい。
【0106】
上記の蛇行冷却管の形状が円弧上である場合、円弧の中心角の大きさは270度以下であってよい。円弧の中心角の大きさは240度以下であってもよく、210度以下であってもよく、180度以下であってもよく、150度以下であってもよく、120度以下であってもよく、90度以下であってもよく、60度以下であってもよい。
【0107】
また、本実施形態において、蛇行冷却管252、蛇行冷却管254、蛇行冷却管256及び蛇行冷却管258の少なくとも1つの延伸方向の長さ(図中の円弧の長さである。)は、直胴部312の内周の長さの2/3よりも小さい。上記の延伸方向の長さ(図中の円弧の長さである。)は、直胴部312の内周の長さの1/2以下であってもよく、直胴部312の内周の長さの1/2より小さくてもよく、直胴部312の内周の長さの1/3以下であってもよく、直胴部312の内周の長さの1/3より小さくてもよく、直胴部312の内周の長さの1/4以下であってもよく、直胴部312の内周の長さの1/4より小さくてもよく、直胴部312の内周の長さの1/6以下であってもよく、直胴部312の内周の長さの1/6より小さくてもよい。
【0108】
上述されたとおり、特開平7-233206号公報に記載されたコイル状冷却管は、略円形の形状を有する。つまり、冷却管の円弧の中心角は、ほぼ360度である。そのため、バッフルと、コイル状冷却管とを略同一円周上に配置することができない。これに対して、本実施形態によれば、蛇行冷却管140よりも直胴部312の内側に近い位置に配される1以上の蛇行冷却管150のうちの少なくとも1つが、上記のような構成を有することにより、2つのバッフル130の間に配され得る。これにより、蛇行冷却管150が重合装置100の混合性能に与える影響をより小さくしつつ、装置全体の伝熱面積を増加させることができる。
【0109】
直胴部312の内面は、反応器の内壁面の一例であってよい。蛇行冷却管252は、反応器の内壁面からの距離が最も小さな第1冷却配管の一例であってよい。蛇行冷却管254は、反応器の内壁面からの距離が最も小さな第1冷却配管の一例であってよい。蛇行冷却管256は、反応器の内壁面からの距離が最も小さな第1冷却配管の一例であってよい。蛇行冷却管258は、反応器の内壁面からの距離が最も小さな第1冷却配管の一例であってよい。
【0110】
(別実施形態の一例)
本実施形態においては、直胴部312の中心から外側に向かって、蛇行冷却管が2重に多重化されている場合を例として、重合装置100の一例が説明された。しかしながら、重合装置100は、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、直胴部312の中心から外側に向かって、蛇行冷却管が3重以上に多重化されていてもよい。直胴部312の中心から外側に向かって、蛇行冷却管が2~5重に多重化されていることが好ましい。
【0111】
図5は、バッフル232の内部構造の一例を概略的に示す。なお、バッフル234、バッフル236及びバッフル238も、バッフル232と同様の内部構造を有してよい。本実施形態において、バッフル232は、内管510と、外管520とを含む二重管構造を有する。バッフル232は、内管510の内部に冷媒を流入させる流入口512と、外管520の内部から冷媒を流出させる流出口522とを有する。
【0112】
本実施形態において、バッフル232の流入口512は、配管532及び流量調整弁542を介して、冷媒供給配管332に接続される。これにより、流量調整弁542の開度が調整されることで、バッフル232に流入する冷媒の流量が調整される。同様に、バッフル234の流入口512は、配管534及び流量調整弁544を介して、冷媒供給配管332に接続される。
【0113】
本実施形態において、バッフル232の流出口522は、連結部342を介して、冷媒返送配管334及びバッフル234に接続される。図5に示されるとおり、本実施形態において、連結部342は、配管552と、流量調整弁554と、配管556と、流量調整弁558とを有する。
【0114】
配管552は、流出口522と冷媒返送配管334とを接続する。流量調整弁554は、配管552の途中に配され、配管552を流れる冷媒の流量を調整する。配管556は、流出口522とバッフル234とを接続する。より具体的には、配管556は、配管552上の位置であって、流量調整弁554及びバッフル232の流出口522の間の位置と、配管534上の位置であって、流量調整弁544及びバッフル234の流入口512の間の位置とを接続する。流量調整弁558は、配管556の途中に配され、配管556を流れる冷媒の流量を調整する。
【0115】
(別実施形態の一例)
本実施形態においては、バッフル232が二重管構造を有し、バッフル232の下方から流入した冷媒がバッフル232の下方から流出し、バッフル234の下方からバッフル234に流入する場合を例として、重合装置100の一例が説明された。しかしながら、重合装置100は本実施形態に限定されない。
【0116】
他の実施形態において、バッフル232の下方から流入した冷媒がバッフル232の上方から流出し、バッフル234の上方からバッフル234に流入するように、配管が構成されてよい。さらに他の実施形態において、バッフル232は、一重管であってもよい。
【0117】
図6は、蛇行冷却管252の構造の一例を概略的に示す。なお、他の蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150も、蛇行冷却管252と同様の構造を有してよい。図6に示されるとおり、蛇行冷却管252は、繰り返し屈曲しながらz方向に延伸する。本実施形態において、蛇行冷却管252は、蛇行部610を有する。蛇行部610は、複数の延伸部612と、1以上の屈曲部614とを有する。
【0118】
図6に関連して説明される蛇行冷却管252において、蛇行部610は、15個の延伸部612と、14個の屈曲部614とを有する。単一の蛇行部610における延伸部612の個数は、段数と称される場合がある。図2に示されるとおり、本実施形態においては、蛇行冷却管252が、延伸部612においてxy平面上で延伸し、屈曲部614においてz方向に屈曲する。
【0119】
本実施形態において、複数の延伸部612のそれぞれは、略同一の平面上で延伸する。例えば、延伸部612が同一平面上で延伸するように設計されている場合であっても、製作に伴う誤差、据え付けに伴う誤差などにより、延伸部612が完全に同一の平面上で延伸していないこともあり得る。このような場合、延伸部612は、略同一の平面上で延伸していると見做してよい。なお、延伸部612が略同一の平面上で延伸する場合は、上記の例に限定されないことに留意されたい。
【0120】
この点で、蛇行冷却管252は、螺旋状の冷却配管と相違する。蛇行冷却管252が蛇行して延伸することにより、冷却配管が螺旋状に延伸する場合と比較して、設置面積あたりの表面積が大きくなり得る。
【0121】
図4に関連して説明されたとおり、本実施形態において、複数の延伸部612のそれぞれは、xy平面上で湾曲しながら延伸する。複数の延伸部612のそれぞれの延伸方向の長さPLは同一であってもよく、少なくとも2つの延伸部612の延伸方向の長さが異なってもよい。本実施形態において、PLは、延伸部612のxy平面上での長さである。PLは、延伸部612の延伸方向に略垂直な面(この場合、z方向に略平行な面である。)により延伸部612を切断した場合における延伸部612の断面の中心をとおるxy平面における、延伸部612の長さであってよい。
【0122】
上述されたとおり、PLは、直胴部312の内周の長さの2/3よりも小さくてよい。この点で、蛇行冷却管252は、特開平7-233206号公報に記載されたコイル状冷却管と相違する。
【0123】
単一の蛇行部610において、複数の延伸部612のうち、1/2を超える個数の延伸部612のPLが、直胴部312の内周の長さの2/3よりも小さくてよい。上記のPLは、直胴部312の内周の長さの1/2以下であってもよく、直胴部312の内周の長さの1/2より小さくてもよく、直胴部312の内周の長さの1/3以下であってもよく、直胴部312の内周の長さの1/3より小さくてもよく、直胴部312の内周の長さの1/4以下であってもよく、直胴部312の内周の長さの1/4より小さくてもよく、直胴部312の内周の長さの1/6以下であってもよく、直胴部312の内周の長さの1/6より小さくてもよい。
【0124】
複数の延伸部612のうち、2/3を超える個数の延伸部612のPLが、直胴部312の内周の長さの2/3よりも小さくてよい。上記のPLは、直胴部312の内周の長さの1/2以下であってもよく、直胴部312の内周の長さの1/2より小さくてもよく、直胴部312の内周の長さの1/3以下であってもよく、直胴部312の内周の長さの1/3より小さくてもよく、直胴部312の内周の長さの1/4以下であってもよく、直胴部312の内周の長さの1/4より小さくてもよく、直胴部312の内周の長さの1/6以下であってもよく、直胴部312の内周の長さの1/6より小さくてもよい。
【0125】
一実施形態において、複数の延伸部612の少なくとも1つは、略同一の平面上で湾曲して延伸する。例えば、複数の延伸部612の少なくとも1つは、xy平面上に仮想的に配された円弧又は楕円弧に沿って延伸する。他の実施形態において、複数の延伸部612の少なくとも1つは、略同一の平面上で直線状に延伸する。
【0126】
本実施形態において、複数の延伸部612の2つが、略平行な2つの平面上で延伸する。例えば、隣接する2つの延伸部612が、略平行な2つの平面上で延伸する。これにより、梯子状に延伸する蛇行部610が得られる。他の実施形態において、複数の延伸部612の2つが、平行でない2つの平面上で延伸してよい。例えば、隣接する2つの延伸部612が、交差する2つの平面上で延伸する。これにより、ジグザグ状に延伸する蛇行部610が得られる。
【0127】
本実施形態において、1以上の屈曲部614のそれぞれは、隣接する2つの延伸部612の端部を連結する。図6に示された実施形態において、1以上の屈曲部614のそれぞれは、z方向に屈曲する部分を含む。これにより、蛇行部610は、屈曲しながらz方向に延伸する。屈曲部614の形状は、特に限定されない。屈曲部614を蛇行冷却管252の延伸方向に平行な面であって、屈曲部614の中心を通る面で切断した断面(縦断面と称される場合がある。)の形状は、連続的に屈曲する形状を有してもよく、複数の直線により構成される形状を有してもよい。連続的に屈曲する形状としては、円弧状又は楕円弧状が例示される。屈曲部614は、連続的に屈曲する形状を有する部分と、1以上の直線により構成される形状を有する部分とにより構成されていてもよい。
【0128】
蛇行冷却管252の流路の直径は特に限定されるものではないが、上記の直径は、10~200mmであることが好ましい。単一の蛇行冷却管252に含まれる延伸部612の個数(段数と称される場合がある。)は特に限定されるものではないが、上記の段数は、2~70であることが好ましい。隣接する2つの延伸部612の距離(ピッチと称される場合がある。)Ppの大きさは特に限定されるものではないが、上記のPpは60mm以上であることが好ましい。Ppが60mm未満の場合、重合体のスケールが付着しやすくなる場合がある。
【0129】
(別実施形態の一例)
【0130】
本実施形態においては、蛇行冷却管252が屈曲しながらz方向に延伸する場合を例として、蛇行冷却管252の一例が説明された。しかしながら、蛇行冷却管252は、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、蛇行冷却管252は、屈曲しながらx方向又はy方向に延伸してもよい。
【0131】
本実施形態においては、延伸部612がxy平面上で延伸し、屈曲部614がz方向に屈曲する場合を例として、蛇行冷却管252の一例が説明された。しかしながら、蛇行冷却管252は、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、屈曲部614は、xy平面上で屈曲する第1屈曲部材と、z方向に屈曲する第2屈曲部材とを有してもよい。
【0132】
図7は、蛇行冷却管252の構造の他の例を概略的に示す。本実施形態において、蛇行冷却管252は、ジグザグ状に屈曲しながら、z方向に延伸する。本実施形態において、蛇行冷却管252は、供給配管702と、流出配管704と、蛇行部710とを備える。本実施形態において、蛇行部710は、複数の延伸部712と、1以上の屈曲部714とを有する。
【0133】
供給配管702は、蛇行部710に供給される冷媒を流通させる。流出配管704は、蛇行部710から流出された冷媒を流通させる。蛇行部710は、繰り返し屈曲しながらz方向に延伸する。
【0134】
図7に関連して説明される蛇行冷却管252は、複数の延伸部712が略平行に配されていない点で、図6に関連して説明された蛇行冷却管252と相違する。上記の相違点以外の特徴について、図7に関連して説明される蛇行冷却管252は、図6に関連して説明された蛇行冷却管252と同様の構成を有してよい。
【0135】
図8は、蛇行冷却管252の構造の他の例を概略的に示す。本実施形態において、蛇行冷却管252は、供給配管702と、流出配管704と、蛇行部810とを備える。本実施形態において、蛇行部810は、蛇行部812と、連結部822と、蛇行部814と、連結部824と、蛇行部816とを有する。
【0136】
本実施形態において、蛇行部810は、繰り返し屈曲しながらz方向に延伸する。本実施形態において、蛇行部812は、繰り返し屈曲しながらx方向に延伸する。蛇行部812は、例えば、x方向の正の向きに延伸する。本実施形態において、連結部822は、蛇行部812と、蛇行部814とを連結する。本実施形態において、蛇行部814は、繰り返し屈曲しながらx方向に延伸する。蛇行部814は、例えば、x方向の負の向きに延伸する。本実施形態において、連結部824は、蛇行部814と、蛇行部816とを連結する。本実施形態において、蛇行部816は、繰り返し屈曲しながらx方向に延伸する。蛇行部814は、例えば、x方向の正の向きに延伸する。
【0137】
蛇行部812、蛇行部814及び蛇行部816のそれぞれは、蛇行部610と同様の構成を有してよい。例えば、蛇行部812、蛇行部814及び蛇行部816の少なくとも1つは、複数の延伸部と、1以上の屈曲部とを有する。この場合、複数の延伸部のそれぞれは、xy平面上で延伸してもよく、xz平面上で延伸してもよく、yz平面上で延伸してもよい。
【0138】
図9は、重合装置900の要部の一例を概略的に示す。重合装置900は、蛇行冷却管140のピッチPpと、蛇行冷却管150のピッチPpとが異なる点で、重合装置100と相違する。上記の相違点以外の特徴について、重合装置900は、重合装置100と同様の構成を有してよい。
【0139】
蛇行冷却管140のピッチPpは、蛇行冷却管150のピッチPpより大きくてもよい。例えば、反応容器110の内部で流動するスラリーの粘度が比較的大きい場合、当該スラリーの流動が緩慢になる。スラリーの流動が緩慢になると、蛇行冷却管140、蛇行冷却管150、直胴部312などの表面にスケールが付着しやすくなる。スラリーの粘度が比較的大きい場合としては、塩化ビニルの懸濁重合が例示される。このような場合であっても、蛇行冷却管140が比較的大きなピッチPpを有することで、攪拌翼124が発生させた吐出流が、十分な勢いを有したまま、蛇行冷却管150及び直胴部312に到達する。これにより、蛇行冷却管140、蛇行冷却管150、直胴部312などの近傍の流動状態が改善され、スケールの付着が防止される。
【0140】
(別実施形態の一例)
他の実施形態において、蛇行冷却管140のピッチPpは、蛇行冷却管150のピッチPpよりも小さくてもよい。
【0141】
図10は、重合装置1000の要部の一例を概略的に示す。重合装置1000は、蛇行冷却管140の段数と、蛇行冷却管150の段数とが異なる点で、重合装置100と相違する。上記の相違点以外の特徴について、重合装置1000は、重合装置100と同様の構成を有してよい。また、技術的に矛盾しない範囲において、重合装置1000は、他の実施形態に係る各種の重合装置の特徴を有してよい。
【0142】
一実施形態において、蛇行冷却管140の上端の位置が、蛇行冷却管150の上端の位置よりも下になるように、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150の段数が調整される。例えば、反応容器110の内部で流動するスラリーの粘度が比較的大きい場合、気液の界面においてスケールが付着したり、発泡しやすくなったりする。スラリーの粘度が比較的大きい場合としては、塩化ビニルの懸濁重合が例示される。気液界面における発泡が激しくなると、還流コンデンサ180による除熱が制限される。このような場合であっても、攪拌翼124により近い位置に配される蛇行冷却管140の上端の高さが抑制されることで、気液界面の流動が活発となり、スラリーの付着及び発泡が抑制され得る。蛇行冷却管140の上端の位置が、最上段に配された攪拌翼124よりも下になるように、蛇行冷却管140の段数が調整されることが好ましい。
【0143】
(別実施形態の一例)
他の実施形態において、蛇行冷却管140の下端の位置が、蛇行冷却管150の下端の位置よりも上になるように、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150の段数が調整されてもよい。さらに他の実施形態において、蛇行冷却管140が攪拌翼124の回転の邪魔にならないように、蛇行冷却管140の段数が調整される。
【0144】
図11は、重合装置1100の要部の一例を概略的に示す。重合装置1100は、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150の間に蛇行冷却管1160を備える点で、重合装置100と相違する。上記の相違点以外の特徴について、重合装置1100は、重合装置100と同様の構成を有してよい。また、技術的に矛盾しない範囲において、重合装置1100は、他の実施形態に係る各種の重合装置の特徴を有してよい。
【0145】
図12は、重合装置1200の要部の一例を概略的に示す。重合装置1200は、蛇行冷却管252、蛇行冷却管256及び蛇行冷却管258の代わりに、半円上の横断面を有する蛇行冷却管1252を備える点で、重合装置100と相違する。上記の相違点以外の特徴について、重合装置1200は、重合装置100と同様の構成を有してよい。また、技術的に矛盾しない範囲において、重合装置1200は、他の実施形態に係る各種の重合装置の特徴を有してよい。
【0146】
図13は、重合装置1300の要部の一例を概略的に示す。重合装置1300は、湾曲して延伸する延伸部612を含む蛇行冷却管252、蛇行冷却管254、蛇行冷却管256及び蛇行冷却管258の代わりに、直線状に延伸する延伸部612を含む蛇行冷却管1351、蛇行冷却管1352、蛇行冷却管1353、蛇行冷却管1354、蛇行冷却管1355及び蛇行冷却管1356を備える点で、重合装置100と相違する。また、重合装置1200は、バッフル1331と、バッフル1332と、バッフル1333と、バッフル1334と、バッフル1335と、バッフル1336とを備える点で、重合装置100と相違する。上記の相違点以外の特徴について、重合装置1300は、重合装置100と同様の構成を有してよい。また、技術的に矛盾しない範囲において、重合装置1300は、他の実施形態に係る各種の重合装置の特徴を有してよい。
【0147】
本実施形態において、蛇行冷却管1351、蛇行冷却管1352、蛇行冷却管1353、蛇行冷却管1354、蛇行冷却管1355及び蛇行冷却管1355は、仮想的な正六角形の辺上において、反応容器110の中心軸の周りに略対称的な位置に配置される。また、バッフル1331、バッフル1332、バッフル1333、バッフル1334、バッフル1335及びバッフル1336は、上記の仮想的な正六角形の頂点に配される。
【0148】
本実施形態によれば、蛇行冷却管140の個数と、蛇行冷却管150の個数とが異なる。例えば、蛇行冷却管140の個数が、蛇行冷却管150の個数よりも小さい。本実施形態によれば、蛇行冷却管140の形状と、蛇行冷却管150の形状とが相似でない。例えば、蛇行冷却管140の延伸部612が湾曲して延伸し、蛇行冷却管150の延伸部612が直線状に延伸する。
【0149】
(別実施形態の一例)
本実施形態においては、バッフル1331、バッフル1332、バッフル1333、バッフル1334、バッフル1335及びバッフル1336が、仮想的な正六角形の頂点に配され場合を例として、重合装置1300の一例が説明された。しかしながら、重合装置1300は、本実施形態に限定されない。
【0150】
他の実施形態において、バッフル1331、バッフル1332、バッフル1333、バッフル1334、バッフル1335及びバッフル1336の少なくとも1つは、上記の正六角形と、直胴部312との間に配されてよい。さらに他の実施形態において、バッフル1331、バッフル1332、バッフル1333、バッフル1334、バッフル1335及びバッフル1336の少なくとも1つは、上記の正六角形と、蛇行冷却管242、蛇行冷却管244、蛇行冷却管246及び蛇行冷却管248が配された仮想的な円との間に配されてよい。
【0151】
本実施形態よれば、蛇行冷却管140の個数が、蛇行冷却管150の個数よりも小さい場合を例として、重合装置1300の一例が説明された。しかしながら、重合装置1300は、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、蛇行冷却管140の個数が、蛇行冷却管150の個数よりも大きくてよい。
【0152】
本実施形態よれば、蛇行冷却管140の延伸部612が湾曲して延伸し、蛇行冷却管150の延伸部612が直線状に延伸する場合を例として、重合装置1300の一例が説明された。しかしながら、重合装置1300は、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、蛇行冷却管140の延伸部612が直線状に延伸し、蛇行冷却管150の延伸部612が湾曲して延伸してよい。
【0153】
(別実施形態の一例)
本実施形態においては、仮想円1403の直径が、仮想円1404の直径よりも大きく、仮想円1405の直径よりも小さい場合を例として、重合装置1300の一例が説明された。しかしながら、重合装置1300は、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、仮想円1403の直径は、仮想円1404の直径より小さくてもよい。さらに他の実施形態において、仮想円1403の直径は、仮想円1405の直径より大きくてもよい。
【0154】
図14は、重合装置1400の要部の一例を概略的に示す。重合装置1400は、バッフル232、バッフル234、バッフル236及びバッフル238が配される仮想円1403が、蛇行冷却管242、蛇行冷却管244、蛇行冷却管246及び蛇行冷却管248が配される仮想円1404と、蛇行冷却管252、蛇行冷却管254、蛇行冷却管256及び蛇行冷却管258が配される仮想円1405との間に配される点で、重合装置100と相違する。上記の相違点以外の特徴について、重合装置1400は、重合装置100と同様の構成を有してよい。また、技術的に矛盾しない範囲において、重合装置1400は、他の実施形態に係る各種の重合装置の特徴を有してよい。
【0155】
図15は、重合装置1500の要部の一例を概略的に示す。重合装置1500は、バッフル232が蛇行冷却管242及び蛇行冷却管252の間に配され、バッフル234が蛇行冷却管244及び蛇行冷却管254の間に配され、バッフル236が蛇行冷却管246及び蛇行冷却管256の間に配され、バッフル238が蛇行冷却管248及び蛇行冷却管258の間に配される点で、重合装置1400と相違する。上記の相違点以外の特徴について、重合装置1500は、重合装置1400と同様の構成を有してよい。また、技術的に矛盾しない範囲において、重合装置1500は、他の実施形態に係る各種の重合装置の特徴を有してよい。
【0156】
図16は、重合装置1600の要部の一例を概略的に示す。重合装置1600は、蛇行冷却管244及び蛇行冷却管248を備えない点で、重合装置100と相違する。上記の相違点以外の特徴について、重合装置1600は、重合装置100と同様の構成を有してよい。また、技術的に矛盾しない範囲において、重合装置1600は、他の実施形態に係る各種の重合装置の特徴を有してよい。
【0157】
例えば、反応容器110の内部で流動するスラリーの粘度が比較的大きい場合、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150が直胴部312の径方向に多段に配置されると、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150の間の領域にスラリーが滞留する可能性がある。スラリーの粘度が比較的大きい場合としては、塩化ビニルの懸濁重合が例示される。このような場合であっても、直胴部312の周方向に沿って、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150の径方向の段数が変化することで、スラリーの滞留が抑制される。その結果、スラリーの混合が促進される。
【実施例0158】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0159】
(重合装置及び重合条件)
実施例1~6、8及び9においては、図2に示される重合装置100と、脱イオン水、塩化ビニル単量体及び市販の試薬とを用いて、重合装置100の大きさ、並びに、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150の構造を変化させて、塩化ビニル重合体を生産した。実施例7及び10においては、図11に示される重合装置1100と、脱イオン水、塩化ビニル単量体及び市販の試薬とを用いて、重合装置1100の大きさ、並びに、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150の構造を変化させて、塩化ビニル重合体を生産した。また、比較例1として、特開平7-233206号公報に記載された構造を有する重合装置と、市販の試薬とを用いて塩化ビニル重合体を生産した。実施例1~10及び比較例1のそれぞれに用いられた重合装置100又は重合装置1100の仕様の詳細を、表1、表2又は表3に示す。
【0160】
実施例1~10及び比較例1において、冷媒の供給温度は同一とした。実施例1~10及び比較例1のそれぞれにおいて、各例と同様の内部構造物を備えたパイロットプラントにおける攪拌軸122の回転数と品質の関係に基づいて、重合装置100又は重合装置1100の攪拌軸122の回転数を設定した。重合装置100又は重合装置1100の攪拌軸122の回転数は、パイロットプラントにおける攪拌エネルギーの計画値と、重合装置100又は重合装置1100における攪拌エネルギーの計画値とが略一致するように設定した。
【0161】
実施例1~10及び比較例1のそれぞれにおいて、重合体のK値の目標値に基づいて、重合温度を設定した。なお、実施例1~10及び比較例1のそれぞれにおける重合温度は、各例と同様の内部構造物を備えたパイロットプラントにおける重合温度と同一であった。実施例1~10及び比較例1のそれぞれにおける重合条件の詳細を、表4、表5又は表6に示す。
【0162】
実施例1~10及び比較例1において、バッフル130、蛇行冷却管140、蛇行冷却管150及びジャケット170の入口側における冷媒の流量及び温度は同一とした。表1~表3に示されるとおり、実施例1~10及び比較例1のそれぞれにおいて、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150の表面積の合計値を変えて重合試験を実施した。その結果、実施例1~10及び比較例1のそれぞれにおいて、総発熱量に対する、バッフル130による除熱量の割合は、約12~17%であった。総発熱量に対する、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150による除熱量の割合は、約22~44%であった。総発熱量に対する、ジャケット170による除熱量の割合は、約25~34%であった。総発熱量に対する、還流コンデンサ180による除熱量の割合は、約19~27%であった。
【0163】
(評価)
実施例1~10及び比較例1のそれぞれにおいて、重合を開始してから重合を終了するまでの時間(つまり、重合時間である。)を測定した。また、実施例1~10及び比較例1のそれぞれにおいて、生成された塩化ビニル重合体のK値を測定した。
【0164】
実施例1~10及び比較例1のそれぞれにおいて、測定された重合時間が計画値どおりであるか否かを判定した。また、測定された塩化ビニル重合体のK値が目標値どおりであるか否かを判定した。重合時間が計画値どおりであり、且つ、目標としているK値が得られていた場合、重合装置が十分な冷却能力を有すると判定した。
【0165】
(スケールに関する評価)
また、実施例1~10及び比較例1のそれぞれにおいて、重合試験を繰り返した。予め定められた回数の重合試験が終了した後、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150の表面を目視で観察し、スケールの付着の有無を確認した。スケールの付着が確認されなかった場合、応容容器110内に配された内部構造物が、繰り返しの重合試験を行ってもスケール付着の原因とならなかったことが示される。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
【表3】
【0169】
【表4】
【0170】
【表5】
【0171】
【表6】
【0172】
(実施例1)
(重合装置100の仕様)
実施例1に用いられた重合装置100の仕様の詳細を表1に示す。実施例1においては、まず、内容量が80mの反応容器110を準備した。反応容器110の直胴部312の直径は3600mmであり、直胴部312の高さは6800mmであった。
【0173】
反応容器110の内部に、外径90mmのオーステナイト系ステンレス鋼製円筒状パイプからなる、4本の蛇行冷却管140を配置した。4本の蛇行冷却管140のそれぞれの中心と反応容器110の中心軸との距離は、1360mmであった。また、4本の蛇行冷却管140は、反応容器110の中心軸を中心として対称的な位置に配置された。4本の蛇行冷却管140のそれぞれの段数は、12段であった。つまり、4本の蛇行冷却管140のそれぞれは、12個の延伸部612を有した。4本の蛇行冷却管140のそれぞれにおいて、隣接する延伸部612の間の距離(ピッチPpと称される場合がある。)は、400mmであった。
【0174】
同様に、反応容器110の内部に、外径90mmのオーステナイト系ステンレス鋼製円筒状パイプからなる、4本の蛇行冷却管150を設置した。4本の蛇行冷却管150のそれぞれの中心と反応容器110の中心軸との距離は、1610mmであった。また、4本の蛇行冷却管150は、反応容器110の中心軸を中心として対称的な位置に配置された。4本の蛇行冷却管150のそれぞれの段数は、12段であった。また、4本の蛇行冷却管150のそれぞれにおいて、ピッチPpは400mmであった。実施例1において、反応容器110の内容量に対する、蛇行冷却管140及び蛇行冷却管150の表面積の合計値の割合は、0.645[m/m]であった。
【0175】
次に、パイロットプラントを用いて得られた実験結果を考慮して、攪拌軸122の回転数を決定した。攪拌軸122の回転数は、パイロットプラントによる実験結果等を考慮して、上述された撹拌エネルギーが、80~200kgf・m/s・mとなるように決定した。具体的には、生産された塩化ビニル樹脂のK値が65.1となる重合温度において目標とする品質を得られるように、攪拌軸122の回転数を決定した。パイロットプラントを用いた実験において、塩化ビニル樹脂の還元粘度(K値)は、JIS K 7367-2に準拠して測定した。
【0176】
なお、攪拌翼124の形状及び翼数、並びに、攪拌翼124の設置位置、設置数量及び設置間隔Piは、パイロットプラントにおいて使用された攪拌翼124と同様にして、スケールアップを実施した。攪拌翼124の寸法は、パイロットプラントにおいて使用された反応容器110の寸法に対する攪拌翼124の寸法の比率が一定となるように、スケールアップを実施した。同様にして、バッフル232、バッフル234、バッフル236及びバッフル238の大きさ及び配置を決定した。
【0177】
(重合方法)
下記の手順にしたがって、塩化ビニル重合体を合成した。反応条件の詳細を表4に示す。
【0178】
まず、脱イオン水34,700kg、ケン化度80.0モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール10.3kg、メトキシ置換度28.5質量%及びヒドロキシプロピル置換度8.9%のヒドロキシプロピルメチルセルロース4.4kgを水溶液にして、反応容器110の内部に投入した。次に、反応容器110の内部に塩化ビニル単量体31,200kgを仕込んだ。その後、攪拌機120により混合溶液を攪拌しながら、反応容器110の内部に、重合開始剤A、重合開始剤B及び重合開始剤Cをポンプで圧入した。
【0179】
重合開始剤Aとして、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネートを含んだイソパラフィン溶液を用いた。ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネートの添加量は34.4kgであった。重合開始剤Bとして、t-ブチルパーオキシネオデカネートを含んだイソパラフィン溶液とを用いた。t-ブチルパーオキシネオデカネートの添加量は3.3kgであった。重合開始剤Cとして、クミルパーオキシネオデカネートを含んだイソパラフィン溶液を用いた。クミルパーオキシネオデカネートの添加量は7.7kgであった。
【0180】
次に、ジャケット170に熱水を通水し、反応容器110の内部の混合溶液の温度を57℃に昇温することで、重合を開始させた。また、反応容器110の内部の混合溶液の温度が57℃に到達した時点で、バッフル130、蛇行冷却管140、蛇行冷却管150及びジャケット170への冷却水の通水を開始した。その後、重合転化率が20%に到達した時点で、還流コンデンサ180を作動させた。
【0181】
反応容器110の内部の混合溶液の温度を57℃に維持する条件の下、反応容器110の内部の圧力が、重合開始後の平均圧力と比較して0.09MPa低下した時点で、全ての冷却を停止した。全ての冷却を停止してから18分後に、重合反応を停止させるのに十分な量のトリエチレングリコール・ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕水性分散液(濃度:40質量%)を、反応容器110の内部に投入した。これにより、重合反応が終了し、塩化ビニル重合体が得られた。
【0182】
また、スケールの付着状況を確認するため、上記の重合試験を1バッチとして、上記の重合試験を繰り返し行った。
【0183】
実施例1において、重合開始剤を投入した後、重合反応を終了させるまでの時間を測定した。また、重合反応が終了した後、合成された塩化ビニル樹脂の還元粘度(K値)を測定した。K値及び重合時間の測定結果を表4に示す。また、予め定められた回数の重合試験が終了した後、反応容器110の内部のスケールの付着状況を目視にて確認した。スケールの付着状況の確認結果を表4に示す。
【0184】
(実施例2~4)
表1に示される仕様を有する重合装置100を用いて、実施例1と同様の手順により、塩化ビニル重合体を合成した。実施例2~4において、K値の目標値は65.1であった。各実施例における反応条件の詳細を表4に示す。また、K値及び重合時間の測定結果、並びに、スケールの付着状況の確認結果を表4に示す。
【0185】
(実施例5~8)
表2に示される仕様を有する重合装置100又は重合装置1100を用いて、実施例1と同様の手順により、塩化ビニル重合体を合成した。実施例5~7において、K値の目標値は65.1であった。実施例8において、K値の目標値は58.6であった。各実施例における反応条件の詳細を表5に示す。また、K値及び重合時間の測定結果、並びに、スケールの付着状況の確認結果を表5に示す。
【0186】
(実施例9~10)
表3に示される仕様を有する重合装置100又は重合装置1100を用いて、実施例1と同様の手順により、塩化ビニル重合体を合成した。実施例9~10において、K値の目標値は65.1であった。各実施例における反応条件の詳細を表6に示す。また、K値及び重合時間の測定結果、並びに、スケールの付着状況の確認結果を表6に示す。
【0187】
(比較例1)
特許文献2に示された重合装置を用いて、実施例1と同様の手順により、塩化ビニル重合体を合成した。比較例1において、K値の目標値は65.1であった。
【0188】
比較例1の重合装置においては、蛇行冷却管140の代わりに、コイル状の冷却配管を用いた。冷却配管として、外径60mmのオーステナイト系ステンレス鋼製円筒状パイプを用いた。コイル状の冷却配管の中心と反応容器110の中心との距離は、1100mmであった。コイルの段数は12段であり、コイルのピッチは400mmであった。
【0189】
同様に、蛇行冷却管150の代わりに、コイル状の冷却配管を用いた。冷却配管として、外径60mmのオーステナイト系ステンレス鋼製円筒状パイプを用いた。コイル状の冷却配管の中心と反応容器110の中心との距離は、1350mmであった。コイルの段数は12段であり、コイルのピッチは400mmであった。
【0190】
比較例における反応条件の詳細を表6に示す。また、K値及び重合時間の測定結果、並びに、スケールの付着状況の確認結果を表6に示す。
【0191】
表4~表6に示されるとおり、実施例1~7及び9~10において、K値が65.1の塩化ビニル重合体が得られた。また、重合時間は2~3時間であり、計画値と同程度であった。実施例8においては、K値が58.6の塩化ビニル重合体が得られた。また、重合時間は150分であり、計画値と同程度であった。実施例1~10においては、重合試験が繰り返し実行された後であっても、スケールの付着を確認することはできなかった。各実施例により、重合装置が十分な冷却能力を有することが示される。また、各実施例により、反応容器の大型化と、重合時間の短縮とが両立可能であることが示される。
【0192】
なお、比較例1においても、K値が65.1の塩化ビニル重合体が得られた。また、重合時間も2時間10分であり、計画値と同程度であった。比較例1の重合装置を用いた場合であっても、80m程度の容量であれば、目的とするK値の塩化ビニル重合体を、比較的短時間で合成することができた。しかしながら、重合試験が繰り返し実行された後、ごくわずかではあるが、スケールの付着が確認された。
【0193】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0194】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
以下、本発明の実施形態の例を項目として示す。
[項目1]
筒状の形状を有する反応器と、
前記反応器の内部に配され、冷媒を流通させるための複数の第1冷却配管と、
を備え、
前記複数の第1冷却配管のそれぞれは、繰り返し屈曲しながら延伸する蛇行部を有し、
前記蛇行部は、
直線状に延伸する又は湾曲して延伸する複数の延伸部と、
前記複数の延伸部のうち、隣接する2つの延伸部の端部を連結する複数の屈曲部と
を含み、
前記複数の第1冷却配管の少なくとも2つは、前記反応器の内壁面からの距離が異なり、
前記少なくとも2つの第1冷却配管のうち、前記反応器の内壁面からの距離が最も小さな第1冷却配管に含まれる前記複数の延伸部の少なくとも一部の長さは、前記内壁面の周の長さの2/3よりも小さい、
反応装置。
[項目2]
前記反応器の内壁面からの距離が最も小さな第1冷却配管に含まれる前記複数の延伸部のうち、1/2を超える個数の延伸部の長さは、前記内壁面の周の長さの2/3よりも小さい、
項目1に記載の反応装置。
[項目3]
前記反応器の内容量に対する前記蛇行部の表面積の比は、0.1~0.9[m/m]である、
項目1に記載の反応装置。
[項目4]
前記反応器の前記内容量に対する前記蛇行部の表面積の比は、0.5~0.7[m/m]である、
項目3に記載の反応装置。
[項目5]
前記反応器の内容量は、40~300mである、
項目1に記載の反応装置。
[項目6]
前記反応器の延伸方向に略平行に延伸する複数のバッフルをさらに備え、
前記複数のバッフルのそれぞれは、少なくとも一部が前記反応器の前記内壁面に接して配され、
前記複数の第1冷却配管の一部は、前記複数のバッフルに含まれる2つのバッフルの間の位置であって、前記反応器の前記内壁面から離れた位置に配される、
項目1に記載の反応装置。
[項目7]
前記複数のバッフルの少なくとも1つは、冷媒を流通させるための第2冷却配管を有する、
項目6に記載の反応装置。
[項目8]
還流コンデンサ及びジャケットをさらに備え、
前記還流コンデンサ及び前記ジャケットのそれぞれは、冷媒を流通させるための第3冷却配管を有する、
項目1に記載の反応装置。
[項目9]
前記反応装置は、懸濁重合の用途に用いられる、
項目1に記載の反応装置。
[項目10]
項目1から項目8までの何れか一項に記載の反応装置を用いてビニル系単量体を重合させて、ビニル系重合体を生産する段階、
を有する、ビニル系重合体の製造方法。
【符号の説明】
【0195】
100 重合装置、110 反応容器、120 攪拌機、122 攪拌軸、124 攪拌翼、126 動力機構、130 バッフル、132 本体、134 サポート、140 蛇行冷却管、150 蛇行冷却管、170 ジャケット、172 流路、180 還流コンデンサ、182 流路、232 バッフル、234 バッフル、236 バッフル、238 バッフル、242 蛇行冷却管、244 蛇行冷却管、246 蛇行冷却管、248 蛇行冷却管、252 蛇行冷却管、254 蛇行冷却管、256 蛇行冷却管、258 蛇行冷却管、312 直胴部、314 第1鏡板、316 第2鏡板、318 台座、332 冷媒供給配管、334 冷媒返送配管、342 連結部、344 連結部、346 連結部、510 内管、512 流入口、520 外管、522 流出口、532 配管、534 配管、542 流量調整弁、544 流量調整弁、552 配管、554 流量調整弁、556 配管、558 流量調整弁、610 蛇行部、612 延伸部、614 屈曲部、702 供給配管、704 流出配管、710 蛇行部、712 延伸部、714 屈曲部、810 蛇行部、812 蛇行部、814 蛇行部、816 蛇行部、822 連結部、824 連結部、900 重合装置、1000 重合装置、1100 重合装置、1160 蛇行冷却管、1200 重合装置、1252 蛇行冷却管、1300 重合装置、1331 バッフル、1332 バッフル、1333 バッフル、1334 バッフル、1335 バッフル、1336 バッフル、1351 蛇行冷却管、1352 蛇行冷却管、1353 蛇行冷却管、1354 蛇行冷却管、1355 蛇行冷却管、1356 蛇行冷却管、1400 重合装置、1403 仮想円、1404 仮想円、1405 仮想円、1500 重合装置、1600 重合装置
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