(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001142
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】発電計画生成装置及び発電計画生成方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
H02J3/00 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100573
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】水谷 遼太
(72)【発明者】
【氏名】原 亮一
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066AE09
(57)【要約】 (修正有)
【解決手段】発電計画生成装置1は、火力側発電計画生成部2と水力側発電計画生成部3を備える。火力側発電計画生成部2は、最適化問題を解き、最適解から導かれるシステムλ
tを算出する第1の火力側最適化問題計算部22と、水力側発電計画生成部3が算出した水力側最適解を加味して、最適化問題を解き、火力側最適解を算出する第2の火力側最適化問題計算部23と、を有する。水力側発電計画生成部3は、システムλ
tを加味して、火力発電所の発電コストの削減が最大となるように水力発電側の最適化問題を解き、水力側最適解を算出する水力側最適化問題計算部32を有する。
【効果】火力発電と水力発電のシステムが疎結合されている場合において、計算時間を短縮できる発電計画生成装置及び発電計画生成方法を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火力発電所の発電計画を生成する火力側発電計画生成部と、
水力発電所の発電計画を生成する水力側発電計画生成部と、
を備え、
前記火力側発電計画生成部は、
目的関数及び制約式からなる最適化問題を解き、電力需要予測に応じた火力発電において発電すべき発電量の最適解から導かれるシステムλtを算出する第1の火力側最適化問題計算部と、
前記水力側発電計画生成部が算出した水力側最適解を加味して、前記最適化問題を解き、火力側最適解を算出する第2の火力側最適化問題計算部と、
を有し、
前記水力側発電計画生成部は、前記システムλtを加味して、前記火力発電所の発電コストの削減が最大となるように水力発電側の前記最適化問題を解き、水力側最適解を算出する水力側最適化問題計算部を有する発電計画生成装置。
【請求項2】
前記第1の火力側最適化問題計算部は、前記最適化問題を前記目的関数及び前記制約式の少なくとも一部の条件を緩和して前記システムλtを算出する請求項1に記載の発電計画生成装置。
【請求項3】
火力発電所の発電計画を生成する火力側発電計画生成部と、水力発電所の発電計画を生成する水力側発電計画生成部と、を備えた発電計画生成方法であって、
目的関数及び制約式からなる最適化問題を解き、電力需要予測に応じた火力発電において発電すべき発電量の最適解から導かれるシステムλtを算出する第1の火力側最適化問題計算ステップと、
前記システムλtを加味して、水力発電側の最適化問題を解き、水力側最適解を算出する水力側最適化問題計算ステップと、
前記水力側最適解を加味して、前記最適化問題を解き、火力側最適解を算出する第2の火力側最適化問題計算ステップと、
を含む発電計画生成方法。
【請求項4】
前記第1の火力側最適化問題計算ステップでは、前記最適化問題を前記目的関数及び前記制約式の少なくとも一部の条件を緩和して前記システムλtを算出する請求項3に記載の発電計画生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発電計画生成装置及び発電計画生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所の運用を最適化するにあたっては、いわゆる発電機起動停止計画(Unit Commitment)問題(以下、「UC問題」という。)を解くことが行われている。UC問題は、発電所内の各発電機をどのように起動または停止すれば最も経済的に系統需要を満たし、また供給予備力を確保できるかについて検討する最適化問題である。
【0003】
2021年の日本国内において、国内発電構成比は、火力発電が60%を超えている。もっとも、火力発電の燃料費コストを抑制するために水力発電も併用されている。そして、火力発電の発電計画作成及び水力発電の発電計画作成ともに、それぞれ単独で最適化問題を解くことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
火力発電の計画作成及び水力発電の計画作成をそれぞれ別個の最適化問題として解くのではなく、火力発電及び水力発電全体で1つの最適化問題として、最適解を導くことが望ましい。しかし、多くの電力会社では、火力発電と水力発電は別個の業務フローとして運用されている。そのため、火力発電及び水力発電全体で1つの最適解を導くためには、周辺業務やシステムを大幅に見直さなければならず、現実的ではない。また、火力発電と水力発電を1つの最適化問題として解く場合、両者が組み合わさることによる組合せ爆発つまり計算量が膨大となり、計算時間が増加する。
【0006】
そこで、火力発電と水力発電のシステムを疎結合させ、相互に必要となるデータを伝送し合う形態が考えられる。即ち、火力発電と水力発電は、相手方から伝送されるデータを加味して、それぞれが最適化問題を解く形態である。しかし、水力発電は、貯水量や天候といった制約があるため、まず、水力発電の出力量を算出し、水力発電分を需要から差し引いてから火力発電計画を作成するという流れで発電計画がなされているのが実情である。そのため、火力発電の状態を加味することなく水力発電の出力量を算出しているので、効率の良い発電計画になっていない虞がある。これは従来の需給運用では不可避であるとして改善が及んでいなかった領域であるが、近年の自由化・収益向上の観点から注目があつまってきている。
【0007】
本発明の実施形態は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、火力発電と水力発電のシステムが疎結合されている場合において、効率の良い発電計画を作成することができる発電計画生成装置及び発電計画生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の発電計画生成装置は、火力発電所の発電計画を生成する火力側発電計画生成部と、水力発電所の発電計画を生成する水力側発電計画生成部と、を備え、前記火力側発電計画生成部は、目的関数及び制約式からなる最適化問題を解き、需要予測に応じた火力発電において発電すべき発電量の最適解から導かれるシステムλtを算出する第1の火力側最適化問題計算部と、前記第1の火力側最適化問題計算部が算出した前記システムλtを前記水力側発電計画生成部に送信する第1の送信部と、前記水力側発電計画生成部が算出した水力側最適解を加味して、前記最適化問題を解き、火力側最適解を算出する第2の火力側最適化問題計算部と、を有し、前記水力側発電計画生成部は、前記システムλtを加味して、前記火力発電所の発電コストの削減が最大となるように水力発電側の前記最適化問題を解き、水力側最適解を算出する水力側最適化問題計算部と、前記水力側最適解を前記火力側発電計画生成部に送信する第2の送信部と、を有する。
【0009】
また、本実施形態の発電計画生成方法は、火力発電所の発電計画を生成する火力側発電計画生成部と、水力発電所の発電計画を生成する水力側発電計画生成部と、を備えた発電計画生成方法であって、目的関数及び制約式からなる最適化問題を解き、需要予測に応じた火力発電所において発電すべき発電量の最適解から導かれるシステムλtを算出する第1の火力側最適化問題計算ステップと、前記第1の火力側最適化問題計算ステップにおいて算出した前記システムλtを前記水力側発電計画生成部に送信する第1の送信ステップと、前記第1の送信ステップにおいて送信された前記システムλtを加味して、水力発電側の最適化問題を解き、水力側最適解を算出する水力側最適化問題計算ステップと、前記水力側最適化問題計算ステップにおいて算出された前記水力側最適解を前記火力側発電計画生成部に送信する第2の送信ステップと、前記第2の送信ステップにおいて送信された前記水力側最適解を加味して、前記最適化問題を解き、火力側最適解を算出する第2の火力側最適化問題計算ステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態における発電計画生成装置1の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態におけるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
実施形態に係る発電計画生成装置について図面を参照しつつ説明する。
図1は、発電計画生成装置1の全体構成を示すブロック図である。発電計画生成装置1は、火力発電所及び水力発電所の発電計画を生成する。発電計画生成装置1は、CPUなどの演算装置やストレージを含み構成される。
【0012】
図1に示すように、発電計画生成装置1は、火力側発電計画生成部2及び水力側発電計画生成部3を備える。火力側発電計画生成部2及び水力側発電計画生成部3は、疎結合しており、独立したシステムとなっている。即ち、火力側発電計画生成部2は、火力発電所の発電計画を生成する。水力側発電計画生成部3は、水力発電所の発電計画を生成する。
【0013】
発電計画生成装置1は、まず、火力発電及び水力発電において生成すべき電力需要予測を算出する。火力側発電計画生成部2は、電力需要予測に基づいて、火力発電において生成すべき発電量の最適解となるシステムλtを算出する。水力側発電計画生成部3は、火力側発電計画生成部2によって算出されたシステムλtを加味して、水力発電における水力側最適解を算出し、水力発電所の運転計画を生成する。そして、火力側発電計画生成部2は、水力側最適解を加味して、再度最適化問題を解き、火力側最適解を算出し、この火力側最適解に基づいて火力発電所の運転計画を生成する。
【0014】
火力側発電計画生成部2は、記憶部21、第1の火力側最適化問題計算部22、第2の火力側最適化問題計算部23、火力側運転計画生成部24、送信部25及び受信部26を有する。
【0015】
記憶部21は、後述する各種関数や各種データを記憶する。各種データとは、電力需要に関するデータ、各火力発電所の起動停止状況や発電量など各火力発電所に関するデータや石炭、天然ガス等の燃料のコストに関するデータ等を含む。
【0016】
第1の火力側最適化問題計算部22は、電力の需要予測を満たすように最適化問題を解き、火力発電における最適解から導かれるシステムλtを算出する。この際、第1の火力側最適化問題計算部22は、水力側の発電量や運転計画は一切考慮せず、最適化問題を解く。即ち、第1の火力側最適化問題計算部22が算出する最適解は暫定的な最適解であり、この暫定的な最適解から導かれるシステムλtに基づいて最終的な火力発電側の運転計画を作成するものではない。
【0017】
第1の火力側最適化問題計算部22は、定式化された以下の目的関数及び制約式を用いて、最適化問題を解き、システムλtを算出する。システムλtは各火力発電機の燃料費関数の1次微分値であり、最適化問題を解いた最適解から導くことができる。このシステムλtの値が大きいほど、出力量が大きくなり、高コストの時間帯となる。目的関数は、燃料費と起動費からなる総運運転コストを最小化させるものであり、下記式(1)により算出される。
【0018】
【数1】
第1の火力側最適化問題計算部22は、各制約条件を満たすように最適解を解き、システムλ
tを算出する。制約条件としては、需給バランス、利用可能な火力発電の出力範囲、バイナリ変数の整合性、最小起動停止時間、発電率の限度及び待機している火力発電に関するものが挙げられ、以下の制約式である。
【0019】
需給バランスに関する制約式は、下記式(2)により与えられる。
【数2】
【0020】
各火力発電機の出力範囲に関する制約式は、下記式(3)により与えられる。
【数3】
【0021】
バイナリ変数で表される起動状態・停止状態と起動タイミング・停止タイミングフラグの整合性に関する制約式は、下記式(4)及び式(5)により与えられる。
【数4】
【数5】
【0022】
最小起動・停止時間に関する制約式は、下記式(6)及び式(7)により与えられる。
【数6】
【数7】
【0023】
各発電機の出力変化率の上下限に関する制約式は、下記式(8)により与えられる。
【数8】
【0024】
各火力発電機の上げ+下げ予備力に関する制約式は、それぞれ下記式(9)及び式(10)により与えられる。
【数9】
【数10】
【0025】
上記各式において、iは火力発電機の番号を、tは時間帯番号を、Tは時間帯番号の集合を、N
thは、火力発電機の番号の集合を、c、b、aは燃料コスト関数における二次の項[$/(MW)
2h]、一次の項[$/MWh]、定数の項[$/h]の各係数を、Δtは離散時間幅[h]を、r
iは各火力発電機の変化率の発電(最大・最小)の限度[%/min]を、
【数11】
は発電電力量を、
【数12】
は起動・停止を表すバイナリ変数を、
【数13】
は起動コスト[$]を、
【数14】
は起動・停止のタイミングを表すバイナリ変数を、
【数15】
は予想需要電力量[MW]を、
【数16】
は発電所の最大又は最小の発電量[MW]を、
【数17】
は最小起動・停止時間を、
【数18】
は予備発電量[MW]を示す。
【0026】
第2の火力側最適化問題計算部23は、電力の需要予測を満たすように最適化問題を解き、火力側最適解を算出する。第2の火力側最適化問題計算部23は、上記式(1)の目的関数及び式(2)~(10)の制約式を用いて火力側最適解を算出する。
【0027】
第2の火力側最適化問題計算部23は、後述する水力側の水力側最適解を加味して、火力側最適解を算出する。例えば、水力発電によって出力される発電量を電力需要予測から控除して、火力発電における運転計画となる火力側最適解を算出する。つまり、第2の火力側最適化問題計算部23は、水力側最適解を加味して最適化問題を解いている点が第1の火力側最適化問題計算部22と異なる。
【0028】
火力側運転計画生成部24は、第2の火力側最適化問題計算部23によって算出された火力側最適解に基づいて、各火力発電所の運転計画を生成する。火力発電所の運転計画とは、コストが最小になるように、発電システム内の火力発電所の起動又は停止期間、各火力発電所の時間毎における発電量などである。
【0029】
送信部25は、火力側運転計画生成部24によって生成された運転計画を各火力発電所に送信する。また、送信部25は、第1の火力側最適化問題計算部22によって算出されたシステムλtを水力側発電計画生成部3に送信する。
【0030】
受信部26は、水力側発電計画生成部3が算出した水力側最適解を水力側発電計画生成部3から受信する。また、受信部26は、各火力発電所に関するデータを受信する。受信部26が受信したデータ等は、記憶部21に記憶される。
【0031】
水力側発電計画生成部3は、システムλtを加味しつつ、水力発電における運転計画を生成する。水力側発電計画生成部3は、記憶部31、水力側最適化問題計算部32、水力側運転計画生成部33、送信部34及び受信部35を有する。
【0032】
記憶部31は、最低化問題を解くための目的関数や制約式、各水力発電所に関するデータを記憶する。各水力発電所に関するデータとは、河川に関するデータ、水力発電所に位置関係に関するデータ、上流の発電所からの放水が下流の発電所に流れ込むまでの時間するデータ、発電所で計測された貯水量に関するデータなどが含まれる。
【0033】
水力側最適化問題計算部32は、火力発電におけるコスト削減が最大化となるように、第1の火力側最適化問題計算部23によって算出されたシステムλtを加味して、水力発電における最適化問題を解く。具体的には、水力側最適化問題計算部32は、下記式(11)に示す目的関数を用いて、水力側最適解を算出する。
【0034】
【数19】
上記式において、Nhyは水力発電所の集合を、
【数20】
は水力発電所の発電量[MW]を示す。
【0035】
水力側最適化問題計算部32は、貯水量の境界条件、最大・最小発電量、最大・最小貯水量、下流側の流量、水力発電所の放水量、連接貯水池からの着水遅れといった制約条件を考慮する。これらの制約条件は一般的に用いられる制約式として与えられており、記憶部31に記憶されている。
【0036】
水力側運転計画生成部33は、水力側最適化問題計算部32によって算出された水力側最適解に基づいて、各水力発電所における運転計画を生成する。この運転計画に基づいて各水力発電所における発電量が調整される。
【0037】
送信部34は、水力側運転計画生成部33によって生成された運転計画を各水力発電所に送信する。送信部34は、火力側発電計画生成部2の送受信部25に水力側最適化問題計算部32が算出した最適化又は水力側運転計画生成部33が生成した運転計画を送信する。
【0038】
受信部35は、火力側発電計画生成部2によって算出されたシステムλtを受信する。また、受信部35は、水力発電所の各種データを受信する。受信部35が受信したデータ等は記憶部31に記憶される。
【0039】
(作用)
本実施形態の作用について、図面を参照しつつ説明する。
図2は、本実施形態におけるフローチャートである。まず、発電計画生成装置1は、電力需要の予想を行い、30分や1時間など時間単位毎における電力需要の予測値を算出する(ステップS01)。なお、この予測値は、発電計画生成装置1によって算出したものではなく、外部装置が算出したものを受信してもよい。
【0040】
火力側発電計画生成部2の第1の火力側最適化問題計算部22は、電力需要の予測値に基づいて、最適化問題を解き、最適解からシステムλtを算出する(ステップS02)。第1の火力側最適化問題計算部22におけるシステムλtの算出では、水力発電における発電量は考慮していない。
【0041】
火力側発電計画生成部2の送信部25は、システムλtを水力側発電計画生成部3に送信し(ステップS03)、受信部35はシステムλtを受信する(ステップS04)。水力側最適化問題計算部32は、受信部35が受信したシステムλtを考慮して、水力発電における水力側最適解を算出する(ステップS05)。水力側最適化問題計算部32は、火力発電におけるコスト削減が最大となるように最適化問題を解き、水力側最適解を算出する。水力側運転計画生成部33は、この水力側最適解に基づいて水力発電における運転計画を生成する。送信部34は、運転計画を各水力発電所に送信して、各水力発電所は、受信した運転計画に基づいて発電を行う。
【0042】
また、送信部34は、水力側最適化問題計算部32が算出した水力側最適解を火力側発電計画生成部2に送信し(ステップS06)、受信部26は水力側最適解を受信する(ステップS07)。第2の火力側最適化問題計算部23は、水力側最適解を考慮して火力発電における火力側最適解を算出する(ステップS08)。即ち、第2の火力側最適化問題計算部23が、水力発電における発電量を考慮して、火力発電及び水力発電によって電力需要予測を満たしつつ、火力発電のコストが最小化となる最適解を算出する。
【0043】
そして、火力側運転計画生成部24は、算出された火力側最適解に基づいて、火力側の運転計画を生成し、送信部25は各火力発電所に運転計画を送信する。各火力発電所は、受信した運転計画に基づいて発電を行う。
【0044】
(効果)
以上のとおり、本実施形態の発電計画生成装置1は、まず、第1の火力側最適化問題計算部22において、システムλtを算出する。そして、水力側最適化問題計算部32は、システムλtを加味して火力発電におけるコスト削減が最大となるように最適化問題を解き、水力側最適解を算出する。第2の火力側最適化問題計算部23は、水力側最適解を考慮して火力発電における火力側最適解を算出する。
【0045】
水力発電は、降水量など天候の影響を受け、発電制約が大きい。そのため、従来では、火力発電の発電量等火力発電に関するデータを加味することなく、水力発電における発電量を算出し、後段の発電計画では水力発電分を需要から差し引いて火力発電が計画されていた。
【0046】
しかし、本実施形態では、水力側発電計画生成部3は、火力側発電計画生成部2によって算出されたシステムλtを加味して、火力発電のコストが最小化となる最適解を算出する。即ち、水力側発電計画生成部3は、火力発電におけるコストの高い時間帯と低い時間帯を把握しているので、どの時間帯において水力発電で需要電力を賄えば、効率が良いかを知ることができる。そのため、効率良くコスト削減を図ることができる。
【0047】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の発電計画生成装置1について説明する。なお、同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分のみ説明する。第1の実施形態では、上記式(1)に示すように、第1の火力側最適化問題計算部22は、非線形の最適化問題として最適解となるシステムλtを算出した。第2の実施形態では、第1の火力側最適化問題計算部22の問題を相対的に簡易な問題に変更する。
【0048】
具体的には、上記式(1)の目的関数を下記式(12)に置き換え、線形近似の目的関数として最適化問題を解く。
【数21】
【0049】
上記式(12)において、f
iは線形近似燃料費関数の線形係数[$/MWh]を、g
iは線形近似燃料費関数の定数項を示す。f
i及びg
iは、以下の連立方程式(13)(14)を解くことで導かれる。
【数22】
【0050】
このように、本実施形態では、第1の火力側最適化問題計算部22は、混合整数線形計画問題(MILP(mixed-integer linear programming problem)として最低化問題を解き、システムλtを算出する。これにより、第1の実施形態の場合に比べて、第1の火力側最適化問題計算部22による非線形性が除去されるので、計算時間を短縮化させた発電計画を作成することができる。
【0051】
(変形例)
上記第2の実施形態では、式(1)の目的関数を下記式(12)に置き換えて、混合整数線形計画問題として最適化問題を解いて、第1の火力側最適化問題計算部22による計算量を緩和させた。変形例では、
【数23】
の全てのバイナリ変数を0と1の間の任意の値を取ることができる連続変数に緩和して、システムλ
tを算出する。そのため、第1の火力側最適化問題計算部22は、整数性を回避した制約条件において、システムλ
tを算出する。つまり、第1の火力側最適化問題計算部22は、線形計画問題(Linear Programming problem)として最適化問題を解き、システムλ
tを算出する。
【0052】
このように、変形例の発電計画生成装置1は、整数性つまり組み合わせ爆発を回避した計算ができる。よって、第1の火力側最適化問題計算部22の計算量は削減されるので、計算時間を短縮化させたうえで、効率良い発電計画を作成することができる。
【0053】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0054】
上記実施形態では、送受信部34は、水力側最適化問題計算部32が算出した水力側の最適解を火力側発電計画生成部2に送信していたが、これに限定されない。例えば、最適解ではなく、水力発電における発電量の総量を送信してもよい。また、不確実性情報を含めてもよい。不確実性情報とは、例えば、ダムに流入する自然流など天候に左右される情報など、正確な事前予測が困難な情報(予測が外れる可能性がある情報)である。
【0055】
上記実施形態では、システムλtは一次微分値とし、これを水力発電に送信していたが、これに限定されず、水力発電に送信するデータは、火力発電側の発電計画に関する情報であれば足りる。即ち、システムλtには、最適解に基づいて算出された火力発電における具体的な発電量や発電計画などが含まれる。
【0056】
上記実施形態では、火力側発電計画生成部2は送信部25、受信部26を有し、水力側発電計画生成部3は送信部34、受信部35を有し、火力側発電計画生成部2と水力側発電計画生成部3の間で、システムλtや水力側最適解を送受信していたが、これに限定されない。つまり、火力側発電計画生成部2は送信部25及び受信部26を、水力側発電計画生成部3は送信部34及び受信部35を有していなくてもよい。この場合、発電計画生成装置1は1つのコンピュータ内で、まず、システムλtを算出、記憶しておき、その後、システムλtを加味して、水力側最適解を算出、記憶し、最後に、水力側最適解を加味して火力側最適解を算出して、火力発電及び水力発電それぞれの発電計画を生成すればよい。
【符号の説明】
【0057】
1 発電計画生成装置
2 火力側発電計画生成部
21 記憶部
22 第1の火力側最適化問題計算部
23 第2の火力側最適化問題計算部
24 火力側運転計画生成部
25 送信部
26 受信部
3 水力側発電計画生成部
31 記憶部
32 水力側最適化問題計算部
33 水力側運転計画生成部
34 送信部
35 受信部