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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011851
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】構造体、及び海洋生物の付着防止方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 1/00 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
E02B1/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114217
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】神園 喬
(72)【発明者】
【氏名】藤本 隆史
(57)【要約】
【課題】水中構造物への海洋生物の付着防止効果に優れる構造体、及び当該構造体を用いる海洋生物の付着防止方法を提供する。
【解決手段】素材の表面にホール凹凸構造を有する、水中構造物への海洋生物の付着を防止するために用いられる構造体であって、
前記素材のヤング率が3.0GPa未満であり、
前記ホール凹凸構造が、30μm以上100μm以下のホール径と、10μm以上100μm以下のホール間距離と、40μm以上のホール深さとを備える、構造体を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材の表面にホール凹凸構造を有する、水中構造物への海洋生物の付着を防止するために用いられる構造体であって、
前記素材のヤング率が3.0GPa未満であり、
前記ホール凹凸構造が、30μm以上100μm以下のホール径と、10μm以上100μm以下のホール間距離と、40μm以上のホール深さとを備える、構造体。
【請求項2】
前記素材の表面自由エネルギーが、40mJ/m以上80mJ/m以下である、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記構造体がシートである、請求項1又は2に記載の構造体。
【請求項4】
水中構造物の表面に、請求項1又は2に記載の構造体を設けることを含む、水中構造物への海洋生物の付着防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋生物の付着を防止するために用いられる構造体、及び当該構造体を用いる海洋生物の付着防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水中構造物への海洋生物の付着防止のため、亜酸化銅を中心とした金属タイプの防汚剤を水中構造物に塗布し、防汚成分を放出する防汚塗料が知られている。しかし、このような従来の防汚塗料を使用した場合、環境への影響が懸念されるため、より安全性の高い方法が求められている。こうした背景から比較的低毒性なシリコーン系の防汚塗料又はシートも知られている。しかし、塗膜中の防汚成分が無くなった場合、シリコーン系塗膜の上から新たなシリコーン系塗膜を上塗りすることが難しいという問題もある。このため、長期間効果を発揮し、また塗膜更新(古い塗料の撤去と再塗布)も簡便な方法が求められている。
【0003】
一方、防汚塗料を用いる従来の方法とは異なり、水中構造物の表面に小径の凹凸形状を形成することにより、海洋生物の付着を防止する方法も知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-261385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された方法によれば、海洋生物の付着防止効果にある程度優れることが示されているものの、その効果は十分ではない。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、水中構造物への海洋生物の付着防止効果に優れる構造体、及び当該構造体を用いる海洋生物の付着防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のヤング率を有する素材の表面に、特定のホール凹凸構造を有する構造体を用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明の第1の態様は、素材の表面にホール凹凸構造を有する、水中構造物への海洋生物の付着を防止するために用いられる構造体であって、
前記素材のヤング率が3.0GPa未満であり、
前記ホール凹凸構造が、30μm以上100μm以下のホール径と、10μm以上100μm以下のホール間距離と、40μm以上のホール深さとを備える、構造体である。
【0009】
本発明の第2の態様は、水中構造物の表面に、第1の態様にかかる構造体を設けることを含む、水中構造物への海洋生物の付着防止方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水中構造物への海洋生物の付着防止効果に優れる構造体、及び当該構造体を用いる海洋生物の付着防止方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪構造体≫
構造体は、素材の表面にホール凹凸構造を有する。
構造体は、水中構造物への海洋生物の付着を防止するために用いられる。
素材のヤング率は3.0GPa未満である。
ホール凹凸構造が、30μm以上100μm以下のホール径と、10μm以上100μm以下のホール間距離と、40μm以上のホール深さとを備える。
【0012】
構造体の素材が特定のヤング率を有し、該素材の表面が特定のホール凹凸構造を有することにより、上記構造体は水中構造物への海洋生物の付着防止効果に優れる。
【0013】
以下、構造体が有する、必須、又は任意の態様について説明する。
【0014】
<構造体の素材物性>
構造体を形成する素材のヤング率は、海洋生物の付着防止効果に優れる観点から、3.0GPa未満であり、2.5GPa未満であることが好ましく、2.0GPa未満であることがより好ましい。素材のヤング率の下限は特に限定されず、0.002GPa以上であることが好ましく、0.004GPa以上であることがより好ましい。なお、本明細書において、ヤング率は、ISO14577に準拠して測定される。
【0015】
上記ヤング率を有する素材としては、樹脂、光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物であればよく、特に限定されない。
【0016】
樹脂としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリエステル、ポリエステルウレタン、環状シクロオレフィンコポリマー、熱可塑性ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリスチレン等が挙げられる。
【0017】
<構造体のその他の素材物性>
構造体の素材物性は、前述のヤング率以外に、後述する他の物性を有していてもよい。他の物性としては、例えば、表面自由エネルギー等が挙げられる。
【0018】
構造体を形成する素材の表面自由エネルギーは、海洋生物の付着防止効果に優れる観点から、40mJ/m以上80mJ/m以下であることが好ましく、40mJ/m以上70mJ/m以下であることがより好ましく、40mJ/m以上60mJ/m以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、表面自由エネルギーは、上記構造体の表面における各種液滴の接触角を測定して求められる。
【0019】
具体的には、接触角計を用いて、温度25℃、相対湿度50%の条件にて、構造体の表面に純水、ヨウ化メチレンの液滴を滴下し、液滴が表面に付着してから1秒後の接触角を測定し、得られたそれぞれの接触角からOwens-Wendtの方法に従って算出することにより求められる。
【0020】
<ホール凹凸構造>
ホール凹凸構造とは、素材の表面に、2個以上の孤立ホールが形成されたパターン構造を意味する。
孤立ホールの形状は、特に限定されず、例えば、平面視で、円形;楕円形;三角形、四角形(正方形、長方形)等の多角形;不定形等が挙げられる。これらの中では、円形、正方形が好ましく、円形がより好ましい。
【0021】
ホール凹凸構造は、海洋生物の付着防止効果に優れる観点から、30μm以上100μm以下のホール径と、10μm以上100μm以下のホール間距離と、40μm以上のホール深さとを備える。
ホール径は、ホールが円形の場合、直径を意味する。また、ホール径は、ホールが楕円形の場合、長径を意味し、ホールが正方形の場合、その一辺の長さを意味し、ホールが長方形の場合、長辺の長さを意味する。
ホール間距離は、1つのホールの中心と、それに隣接するホールの中心とを結ぶ距離を意味する。
ホール深さは、ホール凹凸構造の表面におけるホールの中心からホール最深部までの、鉛直方向下向きの距離を意味する。
【0022】
ホール径は、30μm以上80μm以下であることが好ましく、30μm以上60μm以下であることがより好ましい。
ホール間距離は、10μm以上80μm以下であることが好ましく、10μm以上60μm以下であることがより好ましい。
ホール深さは、50μm以上であることが好ましく、60μm以上であることがより好ましく、70μm以上であることがさらに好ましく、80μm以上であることがよりさらに好ましく、85μm以上であることが特に好ましい。また、ホール深さの上限は、100μm以下であることが好ましい。
【0023】
<構造体の形態>
構造体の形態は、特に限定されず、例えば、シートであることが好ましい。シートの厚さは、特に限定されず、海水中に長期間浸漬しても変質又は劣化しない観点から、50μm以上3000μm以下であることが好ましく、100μm以上2000μm以下であることがより好ましく、200μm以上1500μm以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、フィルムは、シートの一態様として包含される。
【0024】
<用途>
構造体は、水中構造物への海洋生物の付着を防止するために用いられる。
水中構造物とは、海水中に存在する構造物を意味する。水中構造物としては、例えば、船舶、各種魚網、港湾施設、オイルフェンス、配管、橋梁、海底基地、海底住宅等が挙げられる。
海洋生物とは、上記水中構造物に付着し得る海洋に生息する生物、特には、大型海洋生物を意味する。大型海洋生物とは、個体が目視観察することができる大きさに成長する海洋生物であり、例えば、フジツボ、イガイ、カキ、ヒドロ虫、コケムシ、ホヤ、セルプラ等の動物;アオサ、シオミドロ等の植物を挙げることができる。
【0025】
≪海洋生物の付着防止方法≫
水中構造物への海洋生物の付着防止方法は、特に限定されず、例えば、上記水中構造物の表面に、上記構造体を設けることを含む。具体的には、水中構造物の浸水部分に、上記構造体を被覆することが好ましい。上記構造体を被覆する方法は、特に限定されず、例えば、上記構造体の裏面及び/又は水中構造物の表面に、接着剤又は塗料を塗布し、上記構造体を水中構造物に貼着する方法等が挙げられる。
また、両面に接着剤層が形成されている両面接着シート介して、水中構造物の表面に、上記構造体を貼り付けてもよい。
また、水中構造物が、水中に設置される前であれば、水中構造物の表面に後述するインプリント法や、印刷法等の方法によって、構造体を形成することもできる。
【0026】
≪構造体の製造方法≫
構造体の製造方法は、特に限定されない。構造体は、例えば、モールドに形成されたピラー凹凸構造を、前述した素材に転写するインプリント法を用いて製造することができる。
ピラー凹凸構造とは、2個以上の孤立ピラーが形成されたパターン構造であって、転写パターンを意味する。ピラー凹凸構造には、転写後に、前述のホール凹凸構造が形成されるように、上記ホール凹凸構造に対応する微細構造が形成されている。上記微細構造は、好ましくは、ホール凹凸構造に対応するピラー径、ピラー間距離、及びピラー高さとを備える。
【0027】
インプリント法としては、公知の方法を適宜使用することができ、例えば、下記方法1~3を用いることができる。
方法1:モールドに形成されたピラー凹凸構造の転写パターンを、上記素材から形成される成形体(例えば、シート等)に押圧して、上記成形体に上記転写パターンを転写することと、転写後の上記成形体から上記モールドを離型することとを含む方法。
方法2:モールドに形成されたピラー凹凸構造の転写パターンに、上記素材を流し込むことと、上記素材を硬化させて、上記素材に上記転写パターンを転写することと、転写後の上記素材からなる成形体から上記モールドを離型することとを含む方法。
方法3:基材の表面に素材としての感光性樹脂組成物を塗布することと、得られた塗膜に、モールドに形成されたピラー凹凸構造の転写パターンを押圧することと、上記塗膜を光硬化させて、上記塗膜に上記転写パターンを転写することと、転写後の硬化膜から上記モールドを離型することとを含む方法。
【0028】
方法1において、上記成形体は、例えば、離形フィルムの上に、上記素材をバーコート製膜し、次いでラミネート積層することにより得られる。
【0029】
≪構造体の製造方法の他の例≫
ホールパターン形成用のフォトマスクと、感光性樹脂組成物とを用いるフォトリソグラフィー法によっても、構造体を製造できる。感光性樹脂組成物としては、ネガ型の樹脂組成物、及びポジ型の樹脂組成物のいずれも用いることができる。具体的には、基材上に、感光性樹脂組成物層を形成した後、感光性樹脂組成物層に対して、露光、及び現像を行うことにより、構造体を形成できる。この場合、感光性組成物層の厚さが、ホールの深さに相当する。
また、インクジェット法のような印刷法によっても、構造体を製造することができる。例えば、インクジェット法では、所定の深さのホールが形成されるように、インク液滴を吐出することで構造体のホール以外の部位が形成される。
さらに、構造体は、前述の所定のサイズのホールが形成されるように織られた、織布であってもよい。織布において、繊維間の隙間がホールに相当する。この場合、ホール間距離が前述の所定のホール間距離であり、且つホール深さが前述の所定の深さであるように、織布を構成する繊維の繊維径が選定される。織布の織り方としては、平織、及び綾織のいずれでもよい。
【実施例0030】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されない。
【0031】
<実施例1~13、比較例1~4>
実施例及び比較例において、構造体の素材として、下記素材1~6を用いた。
素材1:SYLGARD184(ポリジメチルシロキサン、ダウ・ケミカル社製)
素材2:G-7(ポリエステル、200μm厚、倉敷紡績社製)
素材3:バイロンUR-8300(ポリエステルウレタン、東洋紡社製)
素材4:APL6509T(環状シクロオレフィンコポリマー、三井化学社製)
素材5:樹脂ペレット(TPU(熱可塑性ポリウレタン)、商品管理番号:RPELLET0029、スタンダードテストピース公式オンラインショップ)
素材6:TMMR S2000(感光性樹脂組成物、2000cP、東京応化工業社製)
【0032】
実施例及び比較例において、ラミネート積層する際のラミネート機、熱プレスする際の小型プレス機、及びバーコート製膜する際のバーコーターとして下記装置を用いた。
ラミネート機:FA-570(大成ラミネータ社製)
プレス機:H300-05(アズワン社製)
バーコーター:No.75(アズワン社製)
【0033】
(実施例1)
素材6をシリコンウェハ上にスピンコート製膜し、ホールパターンを有するPETフィルムマスクを介して、得られた上記膜を露光及び現像し、ピラー径が40μm、ピラー間距離が25μm、ピラー高さが90μmのピラーパターンを得た。得られたピラーパターンを鋳型として素材1を流し込み、150℃で熱硬化し、その後硬化した素材1から上記鋳型を離型し、表1に示すホールパターンを有する厚さ1000μmのシートを得た。
【0034】
(実施例2)
上記ラミネート機を用いて、離形PETフィルムの上に、素材2を5枚ラミネート積層することで、900μm厚のシートを得た。Niモールドのピラーパターン面を、得られたシートに接触させ、0.5トンの加重にて100℃で熱プレスして5分間保持した。室温に冷却後、素材2から上記モールドを離型し、表1に示すホールパターンを有する厚さ700μmのシートを得た。
なお、上記モールドとしては、ピラー径が40μm、ピラー間距離が25μm、ピラー高さが90μmのピラーパターン面を有するものを使用した。
【0035】
(実施例3)
離形PETフィルムの上に、素材3をバーコート製膜し、次いでラミネート積層することで、1200μm厚のシートを得た。Niモールドのピラーパターン面を、得られたシートに接触させ、1トンの加重にて80℃で熱プレスして5分間保持した。室温に冷却後、素材3から上記モールドを離型し、表1に示すホールパターンを有する厚さ500μmのシートを得た。
なお、上記モールドとしては、実施例2と同じものを使用した。
【0036】
(実施例4)
素材4のペレットを1.5トンの加重にて130℃で熱プレスして3分間保持し、室温に冷却して、300μm厚のシートを得た。このシートを3枚重ねて、Niモールドのピラーパターン面を、得られたシートに接触させ、1トンの加重にて130℃で熱プレスして5分間保持した。室温に冷却後、素材4から上記モールドを離型し、表1に示すホールパターンを有する厚さ600μmのシートを得た。
なお、上記モールドとしては、実施例2と同じものを使用した。
【0037】
(実施例5)
素材5のペレットを1トンの加重にて200℃で熱プレスして1分間保持し、室温に冷却して、600μm厚のシートを得た。Niモールドのピラーパターン面を、得られたシートに接触させ、1トンの加重にて200℃で熱プレスして5分間保持した。室温に冷却後、素材5から上記モールドを離型し、表1に示すホールパターンを有する厚さ300μmのシートを得た。
なお、上記モールドとしては、実施例2と同じものを使用した。
【0038】
(実施例6~13)
実施例1のピラーパターンの代わりに、下記ピラーパターンを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、表1に示すホールパターンを有する厚さ1000μmのシートを得た。
実施例6:ピラー径が40μm、ピラー間距離が15μm、ピラー高さが90μmのピラーパターン
実施例7:ピラー径が40μm、ピラー間距離が45μm、ピラー高さが90μmのピラーパターン
実施例8:ピラー径が40μm、ピラー間距離が60μm、ピラー高さが90μmのピラーパターン
実施例9:ピラー径が30μm、ピラー間距離が15μm、ピラー高さが90μmのピラーパターン
実施例10:ピラー径が60μm、ピラー間距離が15μm、ピラー高さが90μmのピラーパターン
実施例11:ピラー径が100μm、ピラー間距離が15μm、ピラー高さが90μmのピラーパターン
実施例12:ピラー径が40μm、ピラー間距離が15μm、ピラー高さが125μmのピラーパターン
実施例13:ピラー径が40μm、ピラー間距離が15μm、ピラー高さが45μmのピラーパターン
【0039】
(比較例1)
素材6をシリコンウェハ上にスピンコート製膜し、ドットパターンを有するPETフィルムマスクを介して、得られた上記膜を露光及び現像し、表1に示すホールパターンを有する厚さ90μmのレジスト膜を得た。
【0040】
(比較例2~3)
実施例1のピラーパターンの代わりに、下記ピラーパターンを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、表1に示すホールパターンを有する厚さ1000μmのシートを得た。
比較例2:ピラー径が20μm、ピラー間距離が15μm、ピラー高さが90μmのピラーパターン
比較例3:ピラー径が40μm、ピラー間距離が15μm、ピラー高さが90μmのピラーパターン
【0041】
(比較例4)
素材1を150℃で熱硬化し、厚さ1000μmのシートを得た。
【0042】
<評価>
(幼生付着率)
各ポリプロピレン容器(111mm×81mm×46mm)の底面に前述の実施例及び比較例で得られた各シートを試験サンプルとして静置した。各試験サンプルを海水中に沈めるために、各試験サンプルの裏面と上記各容器とを、グルーガンを使用して固定した。
上記各容器に、孔径0.45μmのフィルターでろ過された天然海水と、タテジマフジツボのキプリス幼生を約100個体投入した。試験中の水温等の条件は、室温25℃前後で、昼間は明下(実験室照明)、夜間は暗下とした。
試験開始より14日後に、各試験サンプル面へ付着したキプリス幼生数をカウントし、投入幼生数を分母として幼生付着率を算出した。表1に結果を示す。なお、表1において幼生付着率が10%未満の場合、上記キプリス幼生の付着防止効果に優れると評価される。
【0043】
(表面自由エネルギー)
接触角計(協和界面科学社製、「Dropmaster700」)を用いて、温度25℃、相対湿度50%の条件にて、実施例及び比較例で作製した各シートの表面に純水、ヨウ化メチレンの液滴を滴下し、液滴が表面に付着してから1秒後の接触角を測定し、得られたそれぞれの接触角からOwens-Wendtの方法に従って表面自由エネルギーを算出した。表1に結果を示す。なお、表1の「SFE」は、表面自由エネルギーを示す。
【0044】
(ヤング率)
ISO14577に準拠して、実施例及び比較例で作製した各シートのヤング率を測定した。表1に結果を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1の結果から、ヤング率が3.0GPa未満であり、ホール凹凸構造が、30μm以上のホール径と、10μm以上のホール間距離と、40μm以上のホール深さとを備えるシートであれば、上記キプリス幼生の付着防止効果に優れることが分かる。