(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011857
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】インフレーションフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20250117BHJP
B29C 48/10 20190101ALI20250117BHJP
B29C 48/21 20190101ALI20250117BHJP
B29C 48/335 20190101ALI20250117BHJP
B29C 48/885 20190101ALI20250117BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20250117BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20250117BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B29C48/10
B29C48/21
B29C48/335
B29C48/885
C08J5/18 CES
B32B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114229
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上妻 智也
(72)【発明者】
【氏名】西尾 省治
(72)【発明者】
【氏名】菊地 元三
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F207
【Fターム(参考)】
4F071AA18
4F071AA82
4F071AA88
4F071AF28
4F071AF30
4F071AG29
4F071AH01
4F071AH03
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB09
4F071BC01
4F100AK06
4F100AK06A
4F100AK06B
4F100AK06C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100EH17
4F100EJ42
4F100EJ50
4F100EJ94
4F100GB41
4F100JA06
4F100JA06A
4F100JA06B
4F100JA06C
4F100JA13
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JA13C
4F100JK16
4F100JN01
4F100JN02
4F207AA07
4F207AG01
4F207AG03
4F207AR08
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA19
4F207KB26
4F207KK12
4F207KK56
4F207KL84
4F207KL88
4F207KM16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヘイズが高く、かつ高速・薄膜成形性に優れたインフレーションフィルムと、その製造方法を提供する。
【解決手段】(A)層、(B)層、(C)層の順に3層から構成された積層体を含み、(A)層及び(C)層が下記要件(a)~(c)を満たす高圧法低密度ポリエチレンからなり、(B)層が下記要件(d)~(e)を満たす高圧法低密度ポリエチレンからなり、かつ、積層体全体に対する(B)層の比率が50質量%以上であり、厚みが10~18μm、かつ、ヘイズが15~25%であるインフレーションフィルム。
(a)190℃、21.18Nの荷重にて測定したメルトフローレート(以下、MFRという)が1.5~4.0g/10分
(b)密度が919~930kg/m
3
(c)235℃で測定したスウェル比が2.0以上
(d)MFRが5.0~10g/10分
(e)密度が919~930kg/m
3
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)層、(B)層、(C)層の順に3層から構成された積層体を含み、(A)層及び(C)層が下記要件(a)~(c)を満たす高圧法低密度ポリエチレンからなり、(B)層が下記要件(d)~(e)を満たす高圧法低密度ポリエチレンからなり、かつ、積層体全体に対する(B)層の比率が50質量%以上であり、厚みが10~18μm、かつ、ヘイズが15~25%であるインフレーションフィルム。
(a)190℃、21.18Nの荷重にて測定したメルトフローレート(以下、MFRという)が1.5~4.0g/10分
(b)密度が919~930kg/m3
(c)235℃で測定したスウェル比が2.0以上
(d)MFRが5.0~10g/10分
(e)密度が919~930kg/m3
【請求項2】
プロテクトフィルム、レジスト層及び基材を含むドライフィルムレジストであって、プロテクトフィルムが請求項1に記載のインフレーションフィルムである、ドライフィルムレジスト。
【請求項3】
高圧法低密度ポリエチレンを環状ダイより溶融押出しして筒状フィルムを形成し、この筒状フィルムを冷却しながらその内方空間に気体を供給して膨張させることからなるインフレーションフィルムの製造方法であって、環状ダイに近接して設けられた溶融樹脂の冷却エア吹き出し口を1カ所有し、ダイ頂部と冷却エア吹き出し口の間の距離(L)が30mm以下となるエアリングを設け、筒状フィルムを外側から冷却エアを吹き付ける、請求項1に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【請求項4】
冷却した筒状フィルムを巻取り装置にて巻き取る工程を含み、フィルムの巻取速度が75m/分以上である請求項3に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンフィルムと、インフレーションフィルムの成形方法、特に光学フィルムやドライフィルムレジストのプロテクトフィルムに好適なポリエチレンフィルムと、その成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インフレーションフィルム成形は、環状ダイの環状吐出口から溶融樹脂を押出してチューブ状のバブルとし、さらにこのバブルを内側に吹き込んだエア(膨張用エア)によって膨張させて、所望の径および厚さを有するチューブ状フィルムを成形する方法であり、ポリエチレンを始めとする様々な樹脂製フィルムを得る方法として広く用いられている。このようなインフレーション成形法を行う成形装置は、膨張過程にある樹脂バブルを外周面側から冷却する外部冷却装置(以下、「エアリング」という)がダイの上方に配設される。
【0003】
エアリングには少なくとも1つ以上の冷却エア吹き出し口が設備されており、その開度およびエアの風量は溶融樹脂の性質や温度、成形速度等により適宜調節することができる。ポリエチレンのインフレーションフィルム成形では、一般にバブルを急冷するほど透明性が良好(ヘイズが低い)となること、高速成形性や薄膜成形性が悪化することが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
ポリエチレンをインフレーションフィルム成形して得られるフィルムとして、近年、ドライフィルムレジストのプロテクトフィルムが注目されている。このフィルムには高いヘイズが求められるが、バブルの徐冷のみでは十分でなく、メルトフラクチャーによる表面荒れを利用して光を散乱させるために、スウェル比の高いポリエチレンが使用されることが多い。
【0005】
しかし、スウェル比の高いポリエチレンは粘度が高く、薄膜成形性時に流動性が悪化するため、高速・薄膜成形性が不十分であり、高へイズと高速・薄膜成形性を満たす方法が求められていた。
【0006】
このような状況下で、高ヘイズと高速・薄膜成形に優れるフィルムを得るためにエアリングを工夫し、ダイ近傍の溶融樹脂の冷却を強化する製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)が、成形可能なフィルム厚みは19μmが限度であり、市場ではさらなるコストダウンや薄膜化が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】金井俊孝著 「フィルム成形」J-Stage出版 1993年、第752-757頁
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ヘイズが高く、かつ高速・薄膜成形性に優れたインフレーションフィルムと、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の溶融特性を示す樹脂の積層フィルムであって、かつ、インフレーションフィルムの製造において、ダイから押出された筒状の溶融樹脂を冷却するエアの吹き出し口の数と位置により上記課題を解決することを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
すなわち、本発明の各態様は、以下の[1]~[4]である。
[1] (A)層、(B)層、(C)層の順に3層から構成された積層体を含み、(A)層及び(C)層が下記要件(a)~(c)を満たす高圧法低密度ポリエチレンからなり、(B)層が下記要件(d)~(e)を満たす高圧法低密度ポリエチレンからなり、かつ、積層体全体に対する(B)層の比率が50質量%以上であり、厚みが10~18μm、かつ、ヘイズが15~25%であるインフレーションフィルム。
(a)190℃、21.18Nの荷重にて測定したメルトフローレート(以下、MFRという)が1.5~4.0g/10分
(b)密度が919~930kg/m3
(c)235℃で測定したスウェル比が2.0以上
(d)MFRが5.0~10g/10分
(e)密度が919~930kg/m3
[2] プロテクトフィルム、レジスト層および基材からなるドライフィルムレジストであって、プロテクトフィルムが[1]に記載のインフレーションフィルムである、ドライフィルムレジスト。
[3] 高圧法低密度ポリエチレンを環状ダイより溶融押出しして筒状フィルムを形成し、この筒状フィルムを冷却しながらその内方空間に気体を供給して膨張させることからなるインフレーションフィルムの製造方法であって、環状ダイに近接して設けられた溶融樹脂の冷却エア吹き出し口を1カ所有し、ダイ頂部と冷却エア吹き出し口の間の距離(L)が30mm以下となるエアリングを設け、筒状フィルムを外側から冷却エアを吹き付ける、[1]に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
[4] 冷却した筒状フィルムを巻取り装置にて巻き取る工程を含み、フィルムの巻取速度が75m/分以上である、[3]に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、これまで両立が困難であったインフレーションフィルムの高ヘイズと高速・薄膜成形性を両立するインフレーションフィルム成形方法を提供することができ、ドライフィルムレジストプロテクトフィルムの生産性を向上させるだけでなく、廃棄物の削減に寄与することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明で用いるインフレーションフィルム成形機の一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明の一態様であるインフレーションフィルムは、(A)層、(B)層、(C)層の順に3層から構成された積層フィルムを含む。
【0016】
(A)層、(B)層及び(C)層を構成する高圧法低密度ポリエチレンは、高圧ラジカル重合により製造されたポリエチレンである。高圧法低密度ポリエチレンの重合反応器には、チューブラー型(管型ともいう)とオートクレーブ型(槽型、ベッセル型ともいう)の2種類があるが、オートクレーブ型反応器で重合された高圧法低密度ポリエチレンはチューブラー型反応器で重合された高圧法低密度ポリエチレンよりも分子量分布が広く、長鎖分岐が多いことが知られている。高圧法低密度ポリエチレンは、市販品の中から便宜選択することができ、例えば東ソー株式会社から商品名ペトロセンとして市販されている。
【0017】
(A)層及び(C)層を構成する高圧法低密度ポリエチレンは、JIS K6922-1で測定したMFRが1.5~4.0g/10分にあるとインフレーションフィルム成形性に優れ、好ましくは3.0~4.0g/10分である。高圧法低密度ポリエチレンのMFRが1.5g/10分より小さい場合は、溶融破断によりフィルムの高速・薄膜成形が困難となる場合があり、4.0g/10分より大きい場合は、フィルムのヘイズが低下する場合がある。
【0018】
また、(A)層及び(C)層を構成する高圧法低密度ポリエチレンは、JIS K6922-1の密度が919~930kg/m3にあるとフィルムの剛性が高く、静摩擦係数に優れ、好ましくは922~927kg/m3である。高圧法低密度ポリエチレンの密度が919kg/m3より小さい場合は、フィルム表面同士の接触面での摩擦力が増加し、移動や変形しにくいためシワが生じやすい場合があり、930kg/m3より大きい場合は、柔軟性不足により変形が制限されシワが生じやすい場合がある。
【0019】
さらに、(A)層及び(C)層を構成する高圧法低密度ポリエチレンは、235℃で測定したスウェル比(SR)が2.0以上である。高圧法低密度ポリエチレンのSRが2.0以上であれば、静摩擦係数が低くなりシワが生じ難い。SRはJIS K6922-1で使用されるメルトインデクサーを用い、オリフィス直下に設置したイソプロパノールを入れたメスシリンダーでストランド状の押出物を採取し、ストランドの径(D)をメルトインデクサーのオリフィス径(D0)で除すことにより得られる。
【0020】
(B)層を構成する高圧法低密度ポリエチレンは、MFRが5.0~10g/10分にあるとインフレーションフィルム成形性に優れるため好ましく、さらに好ましくは8.0~10g/10分である。高圧法低密度ポリエチレンのMFRが5.0g/10分より小さい場合は、溶融破断によりフィルムの高速・薄膜成形が困難となる場合があり、10g/10分より大きい場合は、溶融張力不足により成形立ち上げが困難となる場合がある。
【0021】
また、(B)層を構成する高圧法低密度ポリエチレンは、密度が919~930kg/m3にあるとフィルムの剛性が高く、好ましくは924~927kg/m3である。高圧法低密度ポリエチレンの密度が919kg/m3より小さい場合は、フィルムの剛性不足によりシワが生じやすい場合があり、930kg/m3より大きい場合は、柔軟性不足により変形が制限されシワが生じやすい場合がある。
【0022】
(A)層、(B)層及び(C)層を構成する高圧法低密度ポリエチレンには、他の樹脂が添加されていてもよい。このような樹脂として、エチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体、高密度ポリエチレン、プロピレン重合体、1-ブテン共重合体、4-メチル-1-ペンテンなどのポリオレフィンが挙げられる。
【0023】
また、ポリエチレンに通常使用される酸化防止剤、紫外線防止剤、分散剤、発泡剤、滑剤、顔料、難燃剤など公知の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合してもよい。
【0024】
上記インフレーションフィルムは、ヘイズが15~25%であるとドライフィルムレジストの保護フィルムの外観及びフィルムロールからの剥離性に優れ、好ましくは16~20%である。フィルムのヘイズが15%より小さい場合は、表面が平滑になり摩擦係数が大きくなるため、シワが生じやすい場合があり、25%より大きい場合は、ドライフィルムレジストのプロテクトフィルムとして使用した際にレジスト層との密着性が悪く、剥がれやすい場合がある。
【0025】
フィルムの厚みは経済性や環境保護の観点から10~18μmであり、好ましくは10~17μmである。フィルムの厚みが10μmより小さい場合は、バブルが破断しやすい。
【0026】
本発明の一態様であるインフレーションフィルムの製造方法は、高圧法低密度ポリエチレンを環状ダイより溶融押出しして筒状フィルムを形成し、この筒状フィルムを冷却しながらその内方空間に気体を供給して膨張させることからなるインフレーションフィルムの製造方法であって、環状ダイに近接して設けられた溶融樹脂の冷却エア吹き出し口を1カ所有し、ダイ頂部と冷却エア吹き出し口の間の距離(L)が30mm以下となるエアリングを設け、筒状フィルムを外側から冷却エアを吹き付けることにより、インフレーションフィルムを製造する。
【0027】
インフレーション成形には多層インフレーション成形機を用いる。インフレーション成形機は一般的な装置構成のものを用いることができ、一例として、押出機、ダイ、インフレーション・冷却部、締付けロール、巻取り機を備えたものを挙げることができる。
【0028】
成形機を構成するダイは、環状の金型であり、インフレーションフィルム成形機を構成する押出機から押出される溶融樹脂を環状に賦形し排出する装置である。本発明においては、高圧法低密度ポリエチレンを環状ダイより溶融押出しして筒状フィルムを形成する。
【0029】
インフレーション・冷却部では、ダイに投入した空気により溶融樹脂を膨張させた後、膨張過程にある樹脂バブルを外周面側から冷却する外部冷却装置(エアリング)により冷却する。すなわち、エアリングを設置する部位である。本発明においては、溶融押出された筒状フィルムを冷却しながらその内方空間に気体を供給して膨張させる。
【0030】
冷却エア吹き出し口とは、インフレーションフィルム成形において環状ダイより排出される筒状の溶融樹脂(バブル)の外側から冷却エアを吹き付ける装置(エアリング)のエアが排出される部分のことをいう。インフレーション成形においては、通常、溶融樹脂バブルに対して全周囲からエアを吹き付け冷却する必要があるため、吹き出し口はリング状である。本発明においては、筒状フィルムを外側から冷却エアを吹き付けることにより冷却する。
【0031】
冷却エア吹き出し口の数は通常一つ以上である。冷却エア吹き出し口は、一つであるとヘイズを高める効果が大きく、高速・薄膜成形性に優れるため好ましい。
【0032】
さらに、ダイ頂部と冷却エア吹き出し口の間の距離(L)が30mm以下となるようにダイとエアリングを配置するとヘイズを高める効果が大きく、高速・薄膜成形性に優れるため好ましい。
【0033】
インフレーションフィルムの製造方法には、さらに冷却した筒状フィルムを巻取り装置にて巻き取る工程を含まれる。高速成形性に優れる点から、フィルムの巻取速度は75m/分以上であることが好ましい。
【0034】
上記インフレーションフィルムは、各種包装、建築・土木資材、農業用等の様々な用途に用いられ、特にドライフィルムレジスト等のプロテクトフィルムとして好適である。
【0035】
本発明の一態様であるドライフィルムレジストは、プロテクトフィルム、レジスト層及び基材を含むドライフィルムレジストであって、プロテクトフィルムとして上記インフレーションフィルムが用いられる。
【0036】
レジスト層としては、光開始剤と光架橋剤、アクリル系樹脂を含む組成物が用いられる。
【0037】
基材としては、ポリエステル(PET)フィルムが用いられる。
【実施例0038】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
(1)メルトフローレート(MFR)
ポリエチレン樹脂のMFRは、メルトインデクサー(宝工業製)を用いて、JIS K6922-1:2018に準拠し、190℃、21.18Nの荷重にて測定した。
(2)密度
JIS K6922-1:2018に準拠して測定した。
【0039】
実施例1
住友重機械モダン(株)社製の空冷式多層インフレーション成形機の内層及び外層の押出機に(A)層及び(C)層として、メルトフローレート(MFR)が3.5g/10分、密度が922kg/m3、スウェル(SR)が2.02の、オートクレーブ法により製造された高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ペトロセン17M01E)を、中間層の押出機に(B)層として、MFRが5.0g/10分、密度が924kg/m3のオートクレーブ法により製造された高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ペトロセン14M01A)を供給し、全層165℃の温度で(A層)/(B層)/(C層)=25/50/25(質量%)となるよう押出した。エアリングには吹き出し口が一つ(シングルエアリング)で、ダイ頂部と冷却エア吹き出し口の間の距離(L)が26mmのものを用い、押出された樹脂に15℃のエアを吹き付け冷却しながら成形を行った。インフレーションフィルムの成形条件を表1、2に示す。
【0040】
高速薄膜成形性の評価は巻取速度を上げていき、破断する直前の速度とフィルム厚みを記録することで行った。
【0041】
得られたフィルムのヘイズは日本電色工業(株)製のヘイズメーター(NDH7000)を用いてJIS K7136に準拠して測定した。
【0042】
得られたフィルムの静摩擦係数は(株)エー・アンド・デイ社製の引張試験機(RTE-1210)を用いてJIS K7125に準拠して測定した。
【0043】
シワの有無は目視により判定した。評価結果を表2に示す。尚、表中の「○」はシワが生じなかったことを、「×」はシワが生じたことを示している。
【0044】
実施例2
表1成形条件の比率を(A層)/(B層)/(C層)=20/60/20(質量%)となるよう押出した以外は実施例1と同様に処理を行った。高速薄膜成形、ヘイズ、静摩擦係数、シワの結果は表2に示す通りだった。
【0045】
実施例3
表1成形条件の比率を(A層)/(B層)/(C層)=17/66/17(質量%)となるよう押出した以外は実施例1と同様に処理を行った。高速薄膜成形、ヘイズ、静摩擦係数、シワの結果は表2に示す通りだった。
【0046】
実施例4
表1成形条件の(B)層をMFRが8.0g/10分、密度が924kg/m3のオートクレーブ法により製造された高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ペトロセン23M01A)とした以外は実施例1と同様に処理を行った。高速薄膜成形、ヘイズ、静摩擦係数、シワの結果は表2に示す通りだった。
【0047】
実施例5
表1成形条件の(B)層を実施例4で使用した高圧法低密度ポリエチレンとした以外は実施例2と同様に処理を行った。高速薄膜成形、ヘイズ、静摩擦係数、シワの結果は表2に示す通りだった。
【0048】
実施例6
表1成形条件の(B)層を実施例4で使用した高圧法低密度ポリエチレンとした以外は実施例3と同様に処理を行った。高速薄膜成形、ヘイズ、静摩擦係数、シワの結果は表2に示す通りだった。
【0049】
実施例7
表1成形条件の(B)層をMFRが8.0g/10分、密度が925kg/m3のチューブラー法により製造された高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ペトロセン230)とした以外は実施例1と同様に処理を行った。高速薄膜成形、ヘイズ、静摩擦係数、シワの結果は表2に示す通りだった。
【0050】
比較例1
表1成形条件の比率を(A層)/(B層)/(C層)=33/34/33(質量%)となるよう押出した以外は実施例1と同様に処理を行った。結果は表3に示す通りで、成膜可能なフィルムの下限厚みが厚かった。
【0051】
比較例2
表1成形条件の(A)層及び(C)層をMFRが1.1g/10分、密度が931kg/m3、SRが1.53のオートクレーブ法により製造された高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ペトロセン220K)とした以外は実施例6と同様に処理を行った。結果は表3に示す通りで、成膜可能なフィルムの下限厚みが厚く、得られたフィルムのヘイズは低く、シワが見られた。
【0052】
比較例3
表1成形条件の(B)層に、比較例2の(A)層及び(C)層で使用した高圧法低密度ポリエチレンを用いた以外は実施例3と同様に処理を行った。結果は表3に示す通りで、成膜可能なフィルムの下限厚みは厚く、得られたフィルムにシワが見られた。
【0053】
比較例4
表1成形条件の(B)層をMFRが13g/10分、密度が919kg/m3のオートクレーブ法により製造された高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ペトロセン349)とした以外は実施例3と同様に処理を行った。結果は表3に示す通りで、溶融張力不足によりバブルを引き上げられず、成膜できなかった。
【0054】
比較例5
表1成形条件の(A)層及び(C)層をMFRが8.0g/10分、密度が918kg/m3、SRが1.90のオートクレーブ法により製造された高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ペトロセン213)とした以外は実施例6と同様に処理を行った。結果は表3に示す通りで、得られたフィルムのヘイズは低く、静摩擦係数が高かった。
【0055】
比較例6
表1成形条件の(B)層に、比較例5の(A)層及び(C)層で使用した高圧法低密度ポリエチレンを用いた以外は実施例3と同様に処理を行った。結果は表3に示す通りで、得られたフィルムにシワが見られた。
【0056】
比較例7
表1成形条件の(A)層及び(C)層をMFRが4.0g/10分、密度が922kg/m3、SRが1.47のチューブラー法により製造された高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ペトロセン190)とした以外は実施例6と同様に処理を行った。結果は表3に示す通りで、得られたフィルムのヘイズは低かった。
【0057】
比較例8
表1成形条件の吹き出し口数が2つのダブルエアリングを使用した以外は実施例3と同様に処理を行った。結果は表3に示す通りで、得られたフィルムのヘイズは低かった。
【0058】
比較例9
表1成形条件の吹き出し口数が2つのダブルエアリングを使用した以外は実施例6と同様に処理を行った。結果は表3に示す通りで、得られたフィルムのヘイズは低かった。
【0059】
比較例10
表1成形条件のLが40mmのエアリングを使用した以外は実施例3と同様に処理を行った。結果は表3に示す通りで、得られたフィルムのヘイズは低かった。
【0060】
比較例11
表1成形条件のLが40mmのエアリングを使用した以外は実施例6と同様に処理を行った。結果は表3に示す通りで、得られたフィルムのヘイズは低かった。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】