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特開2025-12178免疫グロブリン結合性タンパク質の製造方法
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  • 特開-免疫グロブリン結合性タンパク質の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012178
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】免疫グロブリン結合性タンパク質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20250117BHJP
   C07K 14/195 20060101ALN20250117BHJP
   C07K 1/22 20060101ALN20250117BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
C12P21/02 C ZNA
C07K14/195
C07K1/22
C12N15/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114820
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】湯本 達弥
(72)【発明者】
【氏名】大江 正剛
【テーマコード(参考)】
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC03
4B064CC06
4B064CC12
4B064CC24
4B064CD02
4B064CD09
4B064CD20
4B064CD21
4B064DA20
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA11
4H045EA60
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】 Finegoldia属細菌由来Protein Lを発現可能な遺伝子組換え大腸菌を用いて、当該Protein Lを効率的に製造する方法を提供すること。
【解決手段】 前記遺伝子組換え大腸菌をマグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩のうちいずれか一つ以上およびペプトンを少なくとも含み、かつグルコースを含まない、または3.8g/L以下含む培地で培養し前記Protein Lを発現させる工程と、発現した前記Protein Lを回収する工程とを含む、方法で製造することで、前記課題を解決する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子組換え大腸菌を培養し前記タンパク質を発現させる工程と、
発現した前記タンパク質を回収する工程と
を含む、免疫グロブリン結合性タンパク質の製造方法であって、
免疫グロブリン結合性タンパク質が、FpLの免疫グロブリン結合ドメインを少なくとも含むポリペプチドであり、
遺伝子組換え大腸菌の培養に用いる培地が、ペプトンを少なくとも含み、
かつグルコースを含まない、または3.8g/L以下のグルコースを含む培地である、前記製造方法。
【請求項2】
遺伝子組換え大腸菌の培養に用いる培地が酵母エキスをさらに含む培地である、請求項1のいずれかに記載の方法。
【請求項3】
遺伝子組換え大腸菌の培養に用いる培地が、マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩のうちいずれか一つ以上を含む、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
遺伝子組換え大腸菌の培養に用いる培地が、マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩を全て含む、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子工学的手法により得られた、免疫グロブリン結合性タンパク質を発現可能な遺伝子組換え大腸菌を用いて、前記タンパク質を効率的に製造する方法に関する。特に本発明は、前記大腸菌の培養条件、および前記タンパク質の発現条件を最適化することで、前記大腸菌から前記タンパク質を効率的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体医薬は生体内の免疫機能を担う分子である抗体(免疫グロブリン)を利用した医薬である。抗体医薬は抗体が有する可変領域の多様性により標的分子に対し高い特異性と親和性をもって結合する。そのため抗体医薬は副作用が少なく、また、近年では適応疾患が広がってきていることもあり市場が急速に拡大している。
【0003】
抗体医薬の製造は培養工程と精製工程を含み、培養工程では生産性を向上させるために抗体産生細胞の改質や培養条件の最適化が図られている。また、精製工程では粗精製としてアフィニティークロマトグラフィーが採用され、その後の中間精製、最終精製、およびウイルス除去を経て製剤化される。
【0004】
精製工程では抗体分子を特異的に認識するアフィニティー担体が用いられる。前記担体で用いられるリガンドタンパク質として、抗体(免疫グロブリン)に結合する性質を有した、ブドウ球菌(Staphylococcus)属細菌由来Protein Aが多く用いられている(特許文献1)。しかしながら、Protein Aは抗体のFc領域に特異的に結合するタンパク質であるため、シングルチェーンFv(scFv)、Fab、F(ab’)、IgAおよび二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体といったFc領域を有しない抗体の精製には適用できなかった。一方、Finegoldia属細菌由来Protein L(以下、「FpL」とも表記する)は、免疫グロブリンのκ軽鎖に結合するタンパク質であり、FpLをリガンドタンパク質とすることで、前述したProtein Aでは精製できない、Fc領域を有しない抗体の精製も可能となる(特許文献2)。
【0005】
FpLを安価に製造することを目的に、FpLを発現可能な遺伝子組換え体を利用した製造方法についてこれまで検討されており、例えば、組換え大腸菌を用いたFpLの製造方法が報告されているが(特許文献3および4)、さらなる発現量の向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010-504754号公報
【特許文献2】WO2017/191748号
【特許文献3】WO2016/121701号
【特許文献4】WO2017/069158号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、Finegoldia属細菌由来Protein Lを発現可能な遺伝子組換え大腸菌を用いて、当該Protein Lを効率的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題に対し、Finegoldia属細菌由来Protein L(以下、「FpL」とも表記)を発現可能な遺伝子組換え大腸菌の培養条件、および当該FpLの発現条件を鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を包含する:
[1]免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子組換え大腸菌を培養し前記タンパク質を発現させる工程と、
発現した前記タンパク質を回収する工程と
を含む、免疫グロブリン結合性タンパク質の製造方法であって、
免疫グロブリン結合性タンパク質が、FpLの免疫グロブリン結合ドメインを少なくとも含むポリペプチドであり、
遺伝子組換え大腸菌の培養に用いる培地が、ペプトンを少なくとも含み、
かつグルコースを含まない、または3.8g/L以下のグルコースを含む培地である、前記製造方法。
【0010】
[2]遺伝子組換え大腸菌の培養に用いる培地が酵母エキスをさらに含む培地である、[1]に記載の方法。
【0011】
[3]遺伝子組換え大腸菌の培養に用いる培地が、マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩のうちいずれか一つ以上を含む、[1]または[2]のいずれかに記載の方法。
【0012】
[4]遺伝子組換え大腸菌の培養に用いる培地が、マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩を全て含む、[1]または[2]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、Finegoldia属細菌由来Protein Lの免疫グロブリン結合ドメインを少なくとも含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子組換え大腸菌を用いて当該ポリペプチドを製造する際、前記遺伝子組換え大腸菌を、マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩のうちいずれか一つ以上およびペプトンを少なくとも含み、かつグルコースを含まない、または3.8g/L以下含む培地で培養することを特徴としている。本発明の製造方法は、従来の免疫グロブリン結合性タンパク質の製造方法と比較し、発現量が大幅に向上しているため、前記タンパク質を、より低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】免疫グロブリン結合性タンパク質(FpL_C3KX 9a)を発現可能な遺伝子組換え大腸菌(以下、(FpL_C3KX 9a)発現大腸菌とも表記)の培養に用いる培地に含まれるグルコース濃度の違いによる、(FpL_C3KX 9a)の発現を評価した結果を示す図である。一番右のレーンは精製した(FpL_C3KX 9a)を評価した標準品のバンドである。
図2】(FpL_C3KX 9a)発現大腸菌の培養に用いる培地に含まれる酵母エキス濃度の違いによる、(FpL_C3KX 9a)の発現を評価した結果を示す図である。
図3】(FpL_C3KX 9a)発現大腸菌の培養に用いる培地に添加する金属塩の違いによる、(FpL_C3KX 9a)の発現を評価した結果を示す図である。レーン12は金属塩が無添加の培地での培養結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明で製造する免疫グロブリン結合性タンパク質である、FpLの免疫グロブリン結合ドメインの一例として、Finegoldia magna由来Protein Lの免疫グロブリン結合ドメインがあげられる。具体的には、
ドメインB1(GenBank No.AAA25612の104番目から173番目までのアミノ酸残基)、
ドメインB2(GenBank No.AAA25612の176番目から245番目までのアミノ酸残基)、
ドメインB3(GenBank No.AAA25612の248番目から317番目までのアミノ酸残基)、
ドメインB4(GenBank No.AAA25612の320番目から389番目までのアミノ酸残基)、
ドメインB5(GenBank No.AAA25612の393番目から462番目までのアミノ酸残基)、
ドメインC1(配列番号1(GenBank No.AAA67503)の249番目から317番目までのアミノ酸残基)、
ドメインC2(配列番号1の320番目から389番目までのアミノ酸残基)、
ドメインC3(配列番号1の394番目から463番目までのアミノ酸残基:配列番号2)、および
ドメインC4(配列番号1の468番目から537番目までのアミノ酸残基)が挙げられる。
【0017】
FpLの免疫グロブリン結合ドメインが、前記ドメインC3(配列番号2)である場合の一例として、以下の(I)から(III)のいずれかに示すポリペプチドがあげられる:
(I)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含むポリペプチド、
(II)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において、1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド、
(III)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して70%以上の相同性を有し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド。
【0018】
前記(II)における、「1もしくは数個」とは、抗体の立体構造におけるアミノ酸置換の位置やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、一例として、1個以上20個以下、1個以上10個以下、1個以上9個以下、1個以上8個以下、1個以上7個以下、1個以上6個以下、1個以上5個以下、1個以上4個以下、1個以上3個以下、1個以上2個以下、1個のいずれかを意味する。
【0019】
なお前記(II)における「1もしくは数個のアミノ酸残基の置換」には、前述した特定位置におけるアミノ酸置換の他に、物理的性質および/または化学的性質が類似したアミノ酸間で置換が生じる保守的置換が生じてもよい。保守的置換は、一般に、置換が生じているものと置換が生じていないものとの間でタンパク質の機能が維持されることが当業者において知られている。保守的置換の一例としては、グリシンとアラニン間、セリンとプロリン間、またはグルタミン酸とアラニン間での置換があげられる(タンパク質の構造と機能、メディカル・サイエンス・インターナショナル社、9、2005)。また前記(II)における「1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加」には、抗体の由来の違いや、種の違いなどに基づく、天然にも存在する変異(mutantまたはvariant)も含まれる。
【0020】
前記(II)の一例として、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において、少なくとも以下の(1)から(53)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有し、かつ免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質があげられる:
(1)配列番号2の50番目のアスパラギンがチロシンに置換
(2)配列番号2の1番目のグルタミン酸がグリシンまたはバリンに置換
(3)配列番号2の3番目のプロリンがセリンに置換
(4)配列番号2の4番目のグルタミン酸がリジンまたはグリシンに置換
(5)配列番号2の5番目のグルタミン酸がバリンに置換
(6)配列番号2の7番目のリジンがアラニンに置換
(7)配列番号2の8番目のグルタミン酸がグリシンに置換
(8)配列番号2の9番目のグルタミン酸がバリンに置換
(9)配列番号2の17番目のイソロイシンがフェニルアラニンに置換
(10)配列番号2の21番目のグリシンがアルギニンに置換
(11)配列番号2の27番目のグルタミン酸がグリシンまたはアルギニンに置換
(12)配列番号2の29番目のリジンがプロリンに置換
(13)配列番号2の31番目のスレオニンがロイシンに置換
(14)配列番号2の36番目のスレオニンがアラニンに置換
(15)配列番号2の41番目のアラニンがスレオニンに置換
(16)配列番号2の44番目のアスパラギンがセリンまたはグリシンに置換
(17)配列番号2の49番目のグルタミン酸がスレオニンまたはイソロイシンに置換
(18)配列番号2の50番目のアスパラギンがセリン、リジンおよびアスパラギン酸のいずれかに置換
(19)配列番号2の51番目のグリシンがバリンに置換
(20)配列番号2の52番目のグルタミン酸がバリン、グリシンおよびアスパラギン酸のいずれかに置換
(21)配列番号2の53番目のチロシンがフェニルアラニンに置換
(22)配列番号2の54番目のスレオニンがイソロイシンまたはメチオニンに置換
(23)配列番号2の62番目のアスパラギンがヒスチジン、アルギニン、ロイシン、メチオニンおよびトリプトファンのいずれかに置換
(24)配列番号2の65番目のアスパラギンがチロシンに置換
(25)配列番号2の69番目のアラニンがスレオニンに置換
(26)配列番号2の2番目のスレオニンがセリンまたはプロリンに置換
(27)配列番号2の3番目のプロリンがアルギニンに置換
(28)配列番号2の5番目のグルタミン酸がリジンまたはアルギニンに置換
(29)配列番号2の27番目のグルタミン酸がバリン、リジンおよびイソロイシンのいずれかに置換
(30)配列番号2の32番目のフェニルアラニンがロイシンに置換
(31)配列番号2の38番目のリジンがアラニンに置換
(32)配列番号2の44番目のアスパラギンがイソロイシンに置換、
(33)配列番号2の47番目のアラニンがスレオニンまたはアルギニンに置換
(34)配列番号2の52番目のグルタミン酸がアスパラギンに置換
(35)配列番号2の2番目のスレオニンがアラニンに置換
(36)配列番号2の5番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換
(37)配列番号2の6番目のプロリンがロイシンまたはスレオニンに置換
(38)配列番号2の7番目のリジンがプロリンに置換
(39)配列番号2の14番目のバリンがアラニンに置換
(40)配列番号2の23番目のイソロイシンがアルギニンまたはバリンに置換
(41)配列番号2の29番目のリジンがフェニルアラニンに置換
(42)配列番号2の31番目のスレオニンがメチオニンに置換
(43)配列番号2の33番目のグルタミン酸がアスパラギン酸、グリシンおよびバリンのいずれかに置換
(44)配列番号2の35番目のアラニンがスレオニンに置換
(45)配列番号2の36番目のスレオニンがセリンに置換
(46)配列番号2の37番目のアラニンがスレオニンに置換
(47)配列番号2の41番目のアラニンがイソロイシンまたはチロシンに置換
(48)配列番号2の44番目のアスパラギンがヒスチジンまたはアルギニンに置換
(49)配列番号2の52番目のグルタミン酸がロイシンまたはチロシンに置換
(50)配列番号2の60番目のグリシンがアルギニンに置換
(51)配列番号2の64番目のイソロイシンがロイシンに置換
(52)配列番号2の66番目のイソロイシンがバリンに置換
(53)配列番号2の69番目のアラニンがロイシンまたはバリンに置換。
【0021】
前記(III)におけるアミノ酸配列の相同性は70%以上あればよく、それ以上の相同性(例えば、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上)を有してもよい。なお本明細書において「相同性」とは、類似性(similarity)または同一性(identity)を意味してよく、特に同一性を意味してもよい。「アミノ酸配列の相同性」とは、アミノ酸配列全体に対する相同性を意味する。アミノ酸配列間の「同一性」とは、それらアミノ酸配列における種類が同一であるアミノ酸残基の比率を意味する(実験医学、31(3)、羊土社)。アミノ酸配列間の「類似性」とは、それらアミノ酸配列における種類が同一であるアミノ酸残基の比率と側鎖の性質が類似したアミノ酸残基の比率の合計を意味する(実験医学、31(3)、羊土社)。アミノ酸配列の相同性は、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)やFASTA等のアラインメントプログラム(alignment program)を利用して決定できる。
【0022】
本発明で製造する免疫グロブリン結合性タンパク質は、そのN末端側またはC末端側に、夾雑物質が存在する溶液からの分析・精製の迅速化やタンパク質の安定化等に有用なオリゴペプチドをさらに付加してもよい。前記オリゴペプチドとしては、ポリヒスチジン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、C-mycタグ等があげられる。
【0023】
さらに本発明で製造する免疫グロブリン結合性タンパク質のN末端側には、宿主での効率的な発現を促すためのシグナルペプチドを付加してもよく、PelB、OmpA,DsbA、DsbC、MalE、TorTなどといったペリプラズムにタンパク質を分泌させるシグナルペプチドを例示できる(特開2011-097898号公報)。
【0024】
本発明では、前述した免疫グロブリン結合性タンパク質を、当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子組換え大腸菌を培養することで、前記タンパク質を発現させ、製造する。
【0025】
本発明において大腸菌(学名:Escherichia coli)株の限定は特になく、大腸菌JM109株、大腸菌W3110株、大腸菌HB101株、大腸菌MG1655株、大腸菌BL21株、および大腸菌BL21(DE3)株が代表的な例として挙げられる。また遺伝子組換え大腸菌は、少なくとも免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドが発現可能に保持された状態で含んでいればよく、ゲノムDNA外で自律複製する発現ベクター上に前記ポリヌクレオチドが存在してもよい。当該発現ベクターは、大腸菌で異種タンパク質を発現可能なベクターであれば良く、一例としてpUCプラスミドベクター、pCDFプラスミドベクター、pTrcプラスミドベクター、およびpETプラスミドベクターが挙げられる。
【0026】
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドは例えば、
(α)免疫グロブリン結合性タンパク質のアミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換し、当該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを人工的に合成する方法や、
(β)免疫グロブリン結合性タンパク質の全体または部分配列を含むポリヌクレオチドを直接人工的に、または免疫グロブリン結合性タンパク質のcDNA等からPCR法といったDNA増幅法を用いて調製し、調製した当該ポリヌクレオチドを適当な方法で連結する方法、
で作製できる。
【0027】
前記(α)の方法において、アミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換する際、形質転換させる大腸菌におけるコドンの使用頻度を考慮して変換するのが好ましい。具体的には、アルギニン(Arg)ではAGA/AGG/CGG/CGAが、イソロイシン(Ile)ではATAが、ロイシン(Leu)ではCTAが、グリシン(Gly)ではGGAが、プロリン(Pro)ではCCCが、それぞれ使用頻度が少ないため(いわゆるレアコドンであるため)、それらのコドンを避けるように変換すればよい。
【0028】
本発明は、免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子組換え大腸菌の培養に用いる培地が、
マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩のうち、いずれか一つ以上、および
ペプトンを少なくとも含み、かつ
グルコースを含まない、または3.8g/L以下含む、ことを特徴としている。
【0029】
培地に含ませるマグネシウム塩の一例として、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、硫化マグネシウム、硫酸水素マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、チオ硫酸マグネシウム、亜硝酸マグネシウム、ヒ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、メタケイ酸マグネシウム、四ホウ酸マグネシウム、過マンガン酸マグネシウムがあげられる。
【0030】
培地に含ませるカルシウム塩の一例として、水素化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、過塩素酸カルシウム、塩素酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、硫化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸水素カルシウム、チオ硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、セレン化カルシウム、セレン酸カルシウム、亜セレン酸カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、メタケイ酸カルシウム、シアン化カルシウム、四ホウ酸カルシウム、過マンガン酸カルシウム、クロム酸カルシウム、二クロム酸カルシウム、酢酸カルシウムがあげられる。
【0031】
培地に含ませるマンガン塩の一例として、塩化マンガン、硫化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸マンガン、炭酸マンガン、メタケイ酸マンガン、酢酸マンガン、臭化マンガン、シュウ酸マンガン、フッ化マンガン、ヨウ化マンガンがあげられる。
【0032】
なお本発明において、マグネシウム塩、カルシウム塩、およびマンガン塩は少なくとも一つ以上、培地に含んでいればよく、
前述した塩類より一種類、すなわちマグネシウム塩のみ、カルシウム塩のみ、またはマンガン塩のみを含んでもよく、
前述した塩類より二種類、すなわちマグネシウム塩およびカルシウム塩、マグネシウム塩およびマンガン塩、またはカルシウム塩およびマンガン塩を含んでもよく、
前述した三種類の塩類すべて、すなわちマグネシウム塩、カルシウム塩およびマンガン塩をすべて含んでもよい。
【0033】
中でもマグネシウム塩を少なくとも含む培地は、免疫グロブリン結合性タンパク質を良好に発現できる点で好ましい。
【0034】
また前記遺伝子組換え大腸菌の培養に用いる培地に酵母エキスをさらに含ませると、免疫グロブリン結合性タンパク質の発現量が向上する点で好ましい。
【0035】
本発明において、遺伝子組換え大腸菌の培養方法に特に限定はなく、回分培養、半回分培養(流加培養ともいう)、および潅流培養のいずれかで培養してもよく、それらを組み合せて培養してもよい。ただし培養開始時に炭素源や窒素源といった栄養源を一度に培地に投入すると、大腸菌の増殖および前記大腸菌による免疫グロブリン結合性タンパク質の発現が阻害され、かつ有機酸などの副生成物も生産されるため、前記タンパク質の発現効率および得られた前記タンパク質の品質に悪影響を与える可能性がある。そのため、培養開始時に投入する栄養源は最小限とし、培養中に栄養源を適宜供給(流加)しながら培養する流加培養で遺伝子組換え大腸菌を培養すると好ましい。
【0036】
本発明における、遺伝子組換え大腸菌の培養条件は、大腸菌が増殖し、かつ免疫グロブリン結合性タンパク質を発現し得るものであれば特に限定は無いが、培養温度は15℃以上50℃以下が好ましく、特に好ましい温度は20℃以上33℃以下である。pHは6以上8以下が好ましい。培養時間は任意に設定できるが、通常は数時間以上100時間以下に設定される。
【0037】
なお遺伝子組換え大腸菌が誘導性プロモーターを含んでおり、当該プロモーターの制御下で免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する場合は、当該タンパク質が良好に発現できるように誘導をかけると好ましい。誘導性プロモーターの一例として、大腸菌で機能するプロモーターである、trpプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーター、recAプロモーター、lppプロモーターがあげられる。発現誘導には、例えば、プロモーターの種類に応じた誘導剤を用いることができる。誘導剤としては、IPTG(Isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)を例示できる。具体的には培養液の濁度(600nmにおける吸光度)が0.03以上2以下となったときに適当量のIPTGを添加し、引き続き培養することで、本発明のタンパク質の発現を誘導できる。IPTGの添加濃度は、例えば、最終濃度で0.005mM以上1.0mM以下、好ましくは0.01mM以上0.5mM以下である。なおIPTG添加時における培養液の600nmでの吸光度が0.03以上2以下、好ましくは0.05以上1以下とすると、免疫グロブリン結合性タンパク質を良好に発現できる点で好ましい。
【0038】
前述した方法で発現した免疫グロブリン結合性タンパク質を回収するには、遺伝子組換え大腸菌における前記タンパク質の発現形態に適した方法で、当該培養物から分離/精製して前記タンパク質を回収すればよい。例えば、培養上清に発現する場合は菌体を遠心分離操作によって分離し、得られる培養上清から免疫グロブリン結合性タンパク質を精製すればよい。また、細胞内(ペリプラズムを含む)に発現する場合には、遠心分離操作により菌体を集めた後、酵素処理剤や界面活性剤等を添加することで菌体を破砕し、免疫グロブリン結合性タンパク質を抽出後、精製すればよい。
【0039】
回収した免疫グロブリン結合性タンパク質を精製するには、当該技術分野において公知の方法を用いればよく、一例として液体クロマトグラフィーを用いた分離/精製があげられる。液体クロマトグラフィーには、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等があり、これらのクロマトグラフィーを組み合わせて精製操作を行なうことにより、前記タンパク質を高純度に調製できる。
【0040】
得られた免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体に対する結合活性を測定する方法としては、例えば一般的なSDS-PAGE(Sodium Dodecyl Sulfate-PolyAcrylamide Gel Electrophoresis)を用いて免疫グロブリン結合性タンパク質を分離後、色素や免疫学的方法で染色し比色定量する方法があげられる。また別の例として、抗体に対する結合活性をEnzyme-Linked ImmunoSorbent Assay法(以下、ELISA法と表記)や表面プラズモン共鳴法などを用いて測定すればよい。ELISA法による活性定量で求めてもよいが、後者の方法が簡便で好ましい。ELISA法における免疫グロブリン結合性タンパク質と反応させる抗体の組み合わせは前記タンパク質が定量できる方法であれば特に限定されない。ELISAの検出法についても特に限定はなく、例えば、市販されている、標識に用いた酵素の特異的発色試薬、蛍光試薬または化学発光試薬を用いて検出すればよい。具体的には、標識に用いた酵素として西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用いた場合は、TMB(3,3’,5,5’-TetraMethylBenzidine)などの発色基質をHRPおよび過酸化水素で酸化反応後、比色定量する方法がある。なお結合活性の測定に使用する抗体は、免疫グロブリン結合性タンパク質と結合性を有する抗体であれば限定はない。
【実施例0041】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1 培地に含まれるグルコース濃度の検討
(1)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる免疫グロブリン結合性タンパク質(FpL_C3KX 9a)をコードするポリヌクレオチド(配列番号5)および誘導性のプロモーターを含む発現ベクターで大腸菌W3110株を形質転換し得られた、前記タンパク質を発現可能な遺伝子組換え大腸菌(以下、(FpL_C3KX 9a)発現大腸菌とも表記する)を、SOB培地(トリプトン(Tryptone):20g/L、酵母エキス(Yeast extract):5g/L、硫酸マグネシウム(MgSO)・七水和物:2.4g/L、塩化ナトリウム(NaCl):0.5g/L、塩化カリウム(KCl):0.186g/L、カナマイシン硫酸塩:50mg/L)に植菌し、30℃、16時間、130rpmで前培養を行なった。なお(FpL_C3KX 9a)は、Finegoldia属細菌由来Protein Lの免疫グロブリン結合ドメインC(GenBank No.AAA67503(配列番号1)の394番目から463番目までのアミノ酸残基、配列番号2)に対して、以下の(i)から(xvi)に示すアミノ酸置換が生じたポリペプチドFpL_C3KX 9a(配列番号3)を5つ直結した5量体(配列番号4の2番目のグルタミン酸から351番目のグリシンまでのアミノ酸残基)を含むポリペプチドである。
(i)配列番号2の4番目(配列番号1では397番目)のグルタミン酸がグリシンに置換
(ii)配列番号2の6番目(配列番号1では399番目)のプロリンがセリンに置換
(iii)配列番号2の7番目(配列番号1では400番目)のリジンがアラニンに置換
(iv)配列番号2の13番目(配列番号1では406番目)のリジンがアルギニンに置換
(v)配列番号2の22番目(配列番号1では415番目)のリジンがアルギニンに置換
(vi)配列番号2の23番目(配列番号1では416番目)のイソロイシンがアルギニンに置換
(vii)配列番号2の29番目(配列番号1では422番目)のリジンがイソロイシンに置換
(viii)配列番号2の38番目(配列番号1では431番目)のリジンがグルタミン酸に置換
(ix)配列番号2の44番目(配列番号1では437番目)のアスパラギンがアルギニンに置換
(x)配列番号2の48番目(配列番号1では441番目)のリジンがアルギニンに置換
(xi)配列番号2の49番目(配列番号1では442番目)のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換
(xii)配列番号2の50番目(配列番号1では443番目)のアスパラギンがチロシンに置換
(xiii)配列番号2の53番目(配列番号1では446番目)のチロシンがフェニルアラニンに置換
(xiv)配列番号2の62番目(配列番号1では455番目)のアスパラギンがチロシンに置換
(xv)配列番号2の67番目(配列番号1では460番目)のリジンがアルギニンに置換
(xvi)配列番号2の69番目(配列番号1では462番目)のアラニンがバリンに置換
(2)SOB培地に、最終濃度0g/L(添加なし)、0.5g/L、1g/L、2g/L、4g/L、10g/L、20g/L、および30g/Lのいずれかとなるようグルコース(Glucose)を添加後、(1)の前培養液を最終OD600nmが0.02となるように添加した。
【0043】
(3)30℃、130rpmの条件で4時間培養後、IPTG(Isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)を最終濃度0.1mMとなるように添加し、25℃、130rpmの条件でさらに24時間培養した。培養終了後、培養液2mL分の菌体を遠心分離により集菌し、ペレットを得た。
【0044】
(4)(3)で得られた菌体ペレットにBugBuster Protein Extraction Reagent(メルク社製)1mLを添加し20分間ボルテックスした後、15000rpmで20分間遠心分離し、上清を菌体抽出液として回収した。
【0045】
(5)菌体抽出液10μLと2×サンプルバッファー10μLとを混合後、98℃で3分間加熱することで、電気泳動用サンプルを調製した。
【0046】
(6)(5)で調製したサンプル10μLをアクリルアミドゲルに供試し、20mAで90分間通電した。通電終了後、ゲル染色装置(eStain、ジェンスクリプト社製)を用いてゲルを染色した。
【0047】
(FpL_C3KX 9a)に相当するバンド部分を切り取った電気泳動結果を図1に示す。また図1における一番右のレーンの精製した(FpL_C3KX 9a)に相当するバンドに基づき、(FpL_C3KX 9a)の発現の有無を評価した結果を表1に示す。グルコースを最終濃度で4g/L以上添加した培地で培養すると、免疫グロブリン結合性タンパク質である(FpL_C3KX 9a)が発現しなくなることがわかる。レーン5から8までのサンプルは、(FpL_C3KX 9a)に相当するバンドよりも高い位置にバンドが出ており、これらは大腸菌由来の夾雑タンパク質に相当するバンドであると考えられる。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例2 培地に添加する酵母エキスの検討
(1)(1)(FpL_C3KX 9a)発現大腸菌を、2×YT培地(ファイトンペプトン:16g/L、酵母エキス:10g/L、NaCl:5g/L、カナマイシン硫酸塩:50mg/L)に植菌し、30℃、130rpmの条件で16時間前培養を行なった。
【0050】
(2)表2に示す、いずれかの組成からなる培地に、(1)の前培養液を最終OD600nmが0.02となるように添加した。
【0051】
【表2】
【0052】
(3)30℃、130rpmの条件で4時間培養後、IPTGを最終濃度0.1mMとなるように添加し、25℃、130rpmの条件でさらに24時間培養した。培養終了後、培養液2mL分の菌体を遠心分離により集菌し、ペレットを得た。
【0053】
(4)(3)で得られた菌体ペレットから実施例1(4)に記載の方法で菌体抽出液を回収し、実施例1(5)から(6)に記載の方法で電気泳動を行なった。
【0054】
(FpL_C3KX 9a)に相当するバンド部分を切り取った電気泳動結果を図2に示す。培地に添加する酵母エキス量を増加させるほど、(FpL_C3KX 9a)の発現が増加することが分かる。よって、ペプトンの他にさらに酵母エキスを培地に添加することで、FpLの発現量を向上させられる。
【0055】
実施例3 金属塩の検討
(1)実施例2(1)と同様な方法で、(FpL_C3KX 9a)発現大腸菌を前培養した。
【0056】
(2)以下の<D1>から<D12>のいずれかに記載の培地に、(1)の前培養液を最終OD600nmが0.02となるように添加した。
<D1>20g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、1.2g/L塩化ナトリウム
<D2>20g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、2.8g/L硫酸ナトリウム(NaSO
<D3>20g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、4.1g/L塩化マグネシウム(MgCl
<D4>20g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、1.1g/L塩化アンモニウム(NHCl)
<D5>20g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、2.6g/L硫酸アンモニウム((NHSO
<D6>20g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、2.9g/L塩化カルシウム(CaCl
<D7>20g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、5.5g/L硫酸鉄(II)(FeSO
<D8>20g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、5.4g/L塩化鉄(III)(FeCl
<D9>20g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、5.7g/L硫酸亜鉛(ZnSO
<D10>20g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、3.9g/L塩化マンガン(MnCl
<D11>20g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス、2.4g/L硫酸マグネシウム
<D12>20g/Lトリプトン、5g/L酵母エキス(塩添加なし)
(3)30℃、130rpmの条件で4時間培養後、IPTGを最終濃度0.1mMとなるように添加し、25℃、130rpmの条件でさらに24時間培養した。培養終了後、培養液2mL分の菌体を遠心分離により集菌し、ペレットを得た。
【0057】
(4)(3)で得られた菌体ペレットから実施例1(4)に記載の方法で菌体抽出液を回収し、実施例1(5)から(6)に記載の方法で電気泳動を行なった。
【0058】
(FpL_C3KX 9a)に相当するバンド部分を切り取った電気泳動結果を図3に示す。また(FpL_C3KX 9a)の発現の有無を評価した結果を表3に示す。硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マンガンを添加した場合は、塩を何も添加しない場合と比べて、(FpL_C3KX 9a)の発現量が向上することが確認できた。一方で、ナトリウム塩、アンモニウム塩、鉄塩、亜鉛塩のいずれかを培地に添加しても、塩を何も添加しない条件よりも(FpL_C3KX 9a)の発現量が同等以下となり、これらの金属塩は(FpL_C3KX 9a)の発現量向上に寄与しないことが確認された。以上の結果から、マグネシウム塩、カルシウム塩またはマンガン塩のいずれか少なくとも一つまたは全てを培地に添加すると、免疫グロブリン結合性タンパク質は効率的に発現できることがわかる。
【0059】
【表3】
図1
図2
図3
【配列表】
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