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特開2025-122950芳香族ポリエステルおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025122950
(43)【公開日】2025-08-22
(54)【発明の名称】芳香族ポリエステルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/181 20060101AFI20250815BHJP
   C08G 63/82 20060101ALI20250815BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250815BHJP
【FI】
C08G63/181
C08G63/82
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018713
(22)【出願日】2024-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横澤 勉
(72)【発明者】
【氏名】江原 和也
【テーマコード(参考)】
4H039
4J029
【Fターム(参考)】
4H039CA92
4H039CF10
4J029AA03
4J029AB04
4J029AC02
4J029AD01
4J029AE01
4J029AE03
4J029HB01
4J029HB05
4J029JA293
4J029JC091
4J029JC712
4J029JF041
4J029JF321
4J029JF581
4J029KB17
4J029KE09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】両末端を選択的に修飾したポリエステルやブロックコポリマーの合成原料として好適に利用可能であり、汎用有機溶媒に可溶な、片末端にアルケニル基を有する芳香族ポリエステルの製造方法を提供すること。
【解決手段】相間移動触媒の存在下、式(1)で表される化合物をイニシエーターとし、ハロカルボン酸金属塩化合物を重合させる、式(3)で表される芳香族ポリエステルの製造方法(Xは、ハロゲン基)。


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相間移動触媒の存在下、下記式(1)
【化1】
(式中、R1~R5のうちのいずれか1つは炭素数2~6のアルケニル基を表し、R1~R5のうちの他の4つは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、シアノ基、水酸基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~6のアルキニル基、または炭素数1~12の芳香族基を表し、Xは、ハロゲン基を表す。)
で表される化合物をイニシエーターとし、下記式(2)
【化2】
(式中、R7~R9は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、シアノ基、水酸基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、または炭素数1~12の芳香族基を表し、R10は、炭素数3~20のアルキル基を表し、Mは、1価の金属を表し、Xは、ハロゲン基を表す。)
表されるハロカルボン酸金属塩化合物を重合させる、下記式(3)
【化3】
(式中、nは、自然数を表し、R1~R10およびXは、前記と同じ意味を表す。)
で表される芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
前記R5が、ビニル基であり、前記R1~R4が、水素原子である請求項1記載の芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の製造方法で得られた芳香族ポリエステルと、トリアルコキシシランとを、白金触媒の存在下で反応させる、下記式(4)
【化4】
(式中、R7~R10、Xおよびnは、前記と同じ意味を表し、R16は、炭素数1~6のアルキル基を表す。)
で表される芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項4】
下記式(3)で表され、数平均分子量1,000~100,000、かつ、分子量分布1.3以下である芳香族ポリエステル。
【化5】
(式中、R1~R5のうちのいずれか1つは、炭素数2~6のアルケニル基を表し、R1~R5のうちの他の4つは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、シアノ基、水酸基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~6のアルキニル基、または炭素数1~12の芳香族基を表し、R7~R9は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、シアノ基、水酸基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、または炭素数1~12の芳香族基を表し、R10は、炭素数3~20のアルキル基を表し、Xは、ハロゲン基を表し、nは、自然数を表す。)
【請求項5】
下記式(4)で表され、数平均分子量1,000~100,000、かつ、分子量分布1.3以下である芳香族ポリエステル。
【化6】
(式中、R7~R9は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、シアノ基、水酸基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、または炭素数1~12の芳香族基を表し、R10は、炭素数3~20のアルキル基を表し、R16は、炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは、ハロゲン基を表し、nは、自然数を表す。)
【請求項6】
金属酸化物粒子の表面に、請求項5記載の芳香族ポリエステルが付着している表面ポリエステル修飾金属酸化物微粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリエステルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料の耐熱性、力学特性、電気的特性を向上させるために、シリカゲルや酸化チタンなどの無機微粒子を有機高分子と混ぜたハイブリッド材料(ナノコンポジット)がよく研究されている。しかし、有機材料と無機材料はそもそも性質が大きく異なるので、上記ハイブリット材料では、それほど多くの無機微粒子を有機材料中に導入できない、有機材料中にきれいに無機微粒子を分散させるのが難しい、時間が経つと有機材料中で無機微粒子が凝集する、などが問題となっている。
【0003】
そこで、これらの問題を解決するため無機微粒子表面を有機低分子化合物や有機高分子で修飾することが行われてきた。有機高分子で修飾する場合は、(1)無機表面に開始部位を導入してそこからリビング重合を行う、(2)リビングポリマー末端に無機物と結合できる官能基(例えば、-Si(OR)3、-PO3H、-COOH、-SHなど)を導入して無機微粒子表面に反応させる、という2つの方法が主に行われている。例えば、後者の方法で、鎖状および多分岐芳香族ポリアミド末端に-Si(OR)3基を導入して表面修飾したシリカ微粒子を芳香族ポリイミドに加えると、耐熱性が上がり、従来の未修飾シリカを加える場合に比べて透明性が向上することが明らかとなっている(特許文献1~3)。
【0004】
このように、シリカ粒子を有機高分子で修飾することは、ハイブリッド材料を開発する上で重要である。
例えば、特許文献4には、ポリイミド内にシリカ粒子を導入したハイブリッドコート層とポリエステルコート層をそれぞれ作製し、絶縁性を担保しているマグネットワイヤ絶縁システムが開示されているが、生産工程に鑑みると、特許文献4のような多層塗布は生産性の低下につながる。
一方、特許文献5には、一般的に低誘電率低吸水性を有するエステル構造を導入したポリエステルイミドが開示されている。しかし、特許文献5に開示されたポリエステルイミドは構造が限定され、汎用性が乏しい。
【0005】
ポリエステルを導入したシリカ粒子とポリイミド等の高機能プラスチックのハイブリッド材料は、新たな高機能フィルムの開発への活用が期待されることから、ポリイミド内にエステル構造を簡便に導入できる簡便な手法の開発は重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/130905号
【特許文献2】特開2018-123295号公報
【特許文献3】特開2018-127599号公報
【特許文献4】特開2023-165640号公報
【特許文献5】特開2006-013149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、両末端を選択的に修飾したポリエステルやブロックコポリマーの合成原料として好適に利用可能であり、汎用有機溶媒に可溶な、片末端にアルケニル基を有する芳香族ポリエステルの製造方法、それから誘導される、末端にアルコキシシリル基を有する芳香族ポリエステルの製造方法、および精製後も安定的に保存可能な、末端にアルコキシシリル基を有するポリエステルで修飾した金属酸化物粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、2位にアルコキシ基を有し、4位にハロアルキル基を有する安息香酸塩を、アルケニル基を有するハロアルキルベンゼンをイニシエーターとして重合することで、片末端にアルケニル基を有する芳香族ポリエステル(以下、「片末端アルケニル基置換ポリエステル」ともいう。)が効率的に得られることを見出すとともに、この片末端アルケニル基置換芳香族ポリエステルを用いることで、末端修飾ポリエステルやブロックコポリマーを効率的に合成できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
1. 相間移動触媒の存在下、下記式(1)
【化1】
(式中、R1~R5のうちのいずれか1つは炭素数2~6のアルケニル基を表し、R1~R5のうちの他の4つは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、シアノ基、水酸基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~6のアルキニル基、または炭素数1~12の芳香族基を表し、Xは、ハロゲン基を表す。)
で表される化合物をイニシエーターとし、下記式(2)
【化2】
(式中、R7~R9は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、シアノ基、水酸基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、または炭素数1~12の芳香族基を表し、R10は、炭素数3~20のアルキル基を表し、Mは、1価の金属を表し、Xは、ハロゲン基を表す。)
表されるハロカルボン酸金属塩化合物を重合させる、下記式(3)
【化3】
(式中、nは、自然数を表し、R1~R10およびXは、前記と同じ意味を表す。)
で表される芳香族ポリエステルの製造方法、
2. 前記R5が、ビニル基であり、前記R1~R4が、水素原子である1の芳香族ポリエステルの製造方法、
3. 2の製造方法で得られた芳香族ポリエステルと、トリアルコキシシランとを、白金触媒の存在下で反応させる、下記式(4)
【化4】
(式中、R7~R10、Xおよびnは、前記と同じ意味を表し、R16は、炭素数1~6のアルキル基を表す。)
で表される芳香族ポリエステルの製造方法、
4. 下記式(3)で表され、数平均分子量1,000~100,000、かつ、分子量分布1.3以下である芳香族ポリエステル、
【化5】
(式中、R1~R5のうちのいずれか1つは、炭素数2~6のアルケニル基を表し、R1~R5のうちの他の4つは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、シアノ基、水酸基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~6のアルキニル基、または炭素数1~12の芳香族基を表し、R7~R9は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、シアノ基、水酸基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、または炭素数1~12の芳香族基を表し、R10は、炭素数3~20のアルキル基を表し、Xは、ハロゲン基を表し、nは、自然数を表す。)
5. 下記式(4)で表され、数平均分子量1,000~100,000、かつ、分子量分布1.3以下である芳香族ポリエステル、
【化6】
(式中、R7~R9は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、シアノ基、水酸基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、または炭素数1~12の芳香族基を表し、R10は、炭素数3~20のアルキル基を表し、R16は、炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは、ハロゲン基を表し、nは、自然数を表す。)
6. 金属酸化物粒子の表面に、5の芳香族ポリエステルが付着している表面ポリエステル修飾金属酸化物微粒子
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、片末端アルケニル基置換芳香族ポリエステルを効率的に得ることができる。この片末端アルケニル基置換芳香族ポリエステルを用いることで、末端のアルケニル基やハロゲン原子末端をさらに修飾したポリエステルやブロックコポリマーを効率的に製造できるのみならず、無機微粒子の表面修飾材料として有用な末端にシリル基を有するポリエステルに誘導することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
[1]片末端アルケニル基置換芳香族ポリエステルの製造方法
本発明に係る、下記式(3)で示される芳香族ポリエステル(以下、「ポリエステル(3)」という。)の製造方法は、相間移動触媒の存在下、下記式(1)で示されるベンゼン化合物(以下、「化合物(1)」という。)をイニシエーターとして、下記式(2)で示されるハロカルボン酸金属塩化合物(以下、「化合物(2)」という。)を重合させることを特徴とする。
【0012】
【化7】
【0013】
上記各式において、R1~R5のうちのいずれか1つは炭素数2~6のアルケニル基を表し、R1~R5のうちの他の4つは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、シアノ基、水酸基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~6のアルキニル基、または炭素数1~12の芳香族基を表し、Xは、ハロゲン基を表し、R7~R9は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、シアノ基、水酸基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、または炭素数1~12の芳香族基を表し、R10は、炭素数3~20のアルキル基を表し、Mは、1価の金属を表し、nは、自然数、好ましくは2以上の整数を表す。
【0014】
炭素数1~5のアルキル基としては、直鎖、分岐のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル等が挙げられる。
炭素数2~6のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0015】
炭素数2~6のアルキニル基としては、エチニル、プロパルギル基等が挙げられる。
炭素数1~12の芳香族基としては、フェニル、ナフチル、フリル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル基等が挙げられ、芳香環を構成する原子数が5以上のものが好ましい。
10の炭素数3~20のアルキル基としては、直鎖、分岐のいずれでもよく、その具体例としては、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、1-メチル-n-ブチル、2-メチル-n-ブチル、3-メチル-n-ブチル、1,1-ジメチル-n-プロピル、1,2-ジメチル-n-プロピル、2,2-ジメチル-n-プロピル、1-エチル-n-プロピル、n-ヘキシル、1-メチル-n-ペンチル、2-メチル-n-ペンチル、3-メチル-n-ペンチル、4-メチル-n-ペンチル、1,1-ジメチル-n-ブチル、1,2-ジメチル-n-ブチル、1,3-ジメチル-n-ブチル、2,2-ジメチル-n-ブチル、2,3-ジメチル-n-ブチル、3,3-ジメチル-n-ブチル、1-エチル-n-ブチル、2-エチル-n-ブチル、1,1,2-トリメチル-n-プロピル、1,2,2-トリメチル-n-プロピル、1-エチル-1-メチル-n-プロピル、1-エチル-2-メチル-n-プロピル、n-ヘプチル、1-メチル-n-ヘキシル、2-メチル-n-ヘキシル、3-メチル-n-ヘキシル、1,1-ジメチル-n-ペンチル、1,2-ジメチル-n-ペンチル、1,3-ジメチル-n-ペンチル、2,2-ジメチル-n-ペンチル、2,3-ジメチル-n-ペンチル、3,3-ジメチル-n-ペンチル、1-エチル-n-ペンチル、2-エチル-n-ペンチル、3-エチル-n-ペンチル、1-メチル-1-エチル-n-ブチル、1-メチル-2-エチル-n-ブチル、1-エチル-2-メチル-n-ブチル、2-メチル-2-エチル-n-ブチル、2-エチル-3-メチル-n-ブチル、n-オクチル、1-メチル-n-ヘプチル、2-メチル-n-ヘプチル、3-メチル-n-ヘプチル、1,1-ジメチル-n-ヘキシル、1,2-ジメチル-n-ヘキシル、1,3-ジメチル-n-ヘキシル、2,2-ジメチル-n-ヘキシル、2,3-ジメチル-n-ヘキシル、3,3-ジメチル-n-ヘキシル、1-エチル-n-ヘキシル、2-エチル-n-ヘキシル、3-エチル-n-ヘキシル、1-メチル-1-エチル-n-ペンチル、1-メチル-2-エチル-n-ペンチル、1-メチル-3-エチル-n-ペンチル、2-メチル-2-エチル-n-ペンチル、2-メチル-3-エチル-n-ペンチル、3-メチル-3-エチル-n-ペンチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-ノナデシル、n-エイコシル等が挙げられる。
【0016】
Xのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、反応性を考慮すると、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。
Mは、1価の金属であり、その具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられるが、ナトリウム、カリウムが好ましく、カリウムがより好ましい。
【0017】
式(1)において、R1~R5のうち、1つは炭素数2~6のアルケニルであるが、R5がアルケニルであることが好ましく、ビニル基あることがより好ましい。また、R1~R5の残りの4つは水素原子であることが好ましい。
化合物(1)の具体例としては、p-ビニル-α-ブロモトルエン等が挙げられる。
【0018】
式(2)において、R7~R9は、水素原子が好ましく、R10は、炭素数5~20のアルキル基が好ましい。また、式(2)中、ハロメチル基およびR7~R9のベンゼン環上の置換位置は任意であるが、下記(2’)の置換位置が好ましい。
【0019】
【化8】
(式中、R7~R10、XおよびMは、上記と同じ意味を表す。)
【0020】
本発明の製造方法において、化合物(1)の使用量は、特に限定されるものではないが、基質である化合物(2)1モルに対し、0.002~0.2モル倍の範囲が好ましく、その後の重合反応の選択性および反応効率を考慮すると、0.001~0.3モル倍の範囲がより好ましく、0.05~0.2モル倍の範囲がより一層好ましい。
【0021】
重合反応に用いる相間移動触媒としては例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、沃化テトラエチルアンモニウム、沃化テトラブチルアンモニウム、硫酸水素トリブチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩類;15-クラウン-5、18-クラウン-6等のクラウンエーテル類;臭化トリブチルオクチルホスホニウム、臭化トリブチルドデシルホスホニウム等の四級ホスホニウム塩類などが挙げられる。
相間移動触媒は、化合物(2)1モルに対し、通常0.1~5倍モル、好ましくは0.5~1.5倍モル使用される。
【0022】
重合反応の温度は、特に限定されるものではないが、-20~80℃程度が好ましく、-10~70℃程度がより好ましく、-5~60℃程度がより一層好ましい。
反応時間は、通常0.05~100時間、好ましくは0.5~10時間である。
【0023】
重合反応に用いられる溶媒は、反応に悪影響を及ぼさない限り特に限定されるものではなく、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;四塩化炭素、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジグライム、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;N,N’-ジメチルイミダゾリノン等のウレア類;水;並びにこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0024】
重合反応後、塩酸等の酸でクエンチすることで、ポリエステル(3)が得られる。
この場合、酸の濃度は、特に限定されるものではなく、通常、1~12M程度、好ましくは3~10M程度、より好ましくは4~7M程度である。
酸によるクエンチ後は、常法に従って後処理および精製をすることで純粋なポリエステル(3)を得ることができる。
このポリエステル(3)は、数平均分子量1,000~100,000、かつ、分子量分布1.3以下という特徴を有している。なお、数平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算値(以下同様)である。
【0025】
本発明の製造方法において、イニシエーターである化合物(1)、基質である化合物(2)、相間移動触媒、溶媒等の添加順序は任意であるが、下記の手法を用いることが好ましい。
すなわち、化合物(1)と溶媒を混合した混合物Aを調製し、得られた混合物Aと化合物(2)を混合させた混合物Bを調製し、さらに、混合物B内に相間移動触媒に溶媒を混合させた溶液とを混合し、化合物(1)から化合物(2)を重合させる手法である。
この場合、混合物AおよびBの調製法、並びに混合物Bと相間移動触媒の溶液との混合法も任意であるが、化合物(2)は相間移動触媒を混合するまで、溶媒に溶解せず、相間移動触媒を添加後、化合物(2)を重合させる手法が好適である。
【0026】
なお、イニシエーターである化合物(1)は、市販品を用いても、従来公知の方法によって製造したものを用いてもよい。
また、化合物(2)は、実施例で詳述するように、例えば、下記式(2-1)で表される4-メチルサリチル酸誘導体をハロゲン化アルキルと反応させ、得られた化合物(2-2)を加水分解、カルボン酸保護して化合物(2-4)へと導き、これをハロゲン化剤と反応させてメチル基をハロゲン化した後、カルボン酸部分を加水分解し、金属塩とすることにより得ることができる。
【0027】
【化9】
(式中、R7~R10およびXは、上記と同じ意味を表し、Jは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表し、Rは、アルキル基等を表す。)
【0028】
[2]末端にシリル基を有するポリエステルの合成
上記製造方法で得られたポリエステル(3)は、末端アルケニル基を足掛かりに、末端にトリアルコキシシリル基等のシリル基を有するポリチオフェン化合物へと誘導することが可能である。
例えば、R5がビニル基であり、R1~R4が水素原子であるポリエステル(3)を、白金触媒存在下、HSi(OR163(式中、R16は、炭素数1~6のアルキル基を表す。)で示されるトリアルコキシシランとヒドロシリル化反応させて、下記式(4)で示される片末端トリアルコキシシリル基含有ポリエステル(以下、「ポリエステル(4)という。」を得ることができる。この場合、ポリエステル(4)も、数平均分子量1,000~100,000、かつ、分子量分布1.3以下という特徴を有している。
【0029】
【化10】
(式中、R7~R10、R16、Xおよびnは、上記と同じ意味を表す。)
【0030】
上記R16の炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、直鎖、分岐のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル基等が挙げられる。
トリアルコキシシランの具体例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリn-プロポキシシラン、トリi-プロポキシシラン等が挙げられる。
【0031】
白金触媒の具体例としては、塩化白金酸、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体、ヘキサクロロ白金6水和物、テトラキストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビスアセトニトリル白金、ジクロロビスベンゾニトリル白金、ジクロロシクロオクタジエン白金、白金-活性炭等が挙げられる。
【0032】
白金触媒の使用量は、例えば、ポリエステル(3)1モルに対して、0.0001~2モルが好ましく、0.01~1モルがより好ましい。
【0033】
反応温度は特に限定されないが、0~100℃が好ましく、10~50℃がより好ましく、反応時間も特に限定されないが、0.1~10時間が好ましく、0.2~5時間がより好ましい。反応雰囲気は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。
反応後は、蒸留、再沈殿精製等により、目的物を回収することができる。
【0034】
上記反応には溶媒を用いることもできる。溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられ、これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。なお、含有水分は特に規定されないが、副反応の抑制から、脱水処理をされた溶媒が好ましい。
【0035】
[3]表面修飾金属酸化物微粒子
上記製造方法で得られたポリエステル(4)は、その末端トリアルコキシシリル基を利用して金属酸化物の表面処理剤として利用することができ、その結果、表面がポリエステルで修飾された金属酸化物微粒子を得ることができる。
金属酸化物粒子としては、特に限定されるものではなく、SiO2、SnO2、TiO2、WO3、ZnO、ZrO2、In23、Sb25等の従来公知の各種金属酸化物から、その用途等に応じて適宜選択して用いることができる。なお、汎用性と透明性の観点から、SiO2が好ましい。
金属酸化物微粒子の大きさは特に限定されないが、汎用性の観点から、5nm~10μmが好ましく、弾性率の観点から10nm~10μmがより好ましく、透明性の観点から、10~100nmがより一層好ましく、10~50nmがさらに好ましい。
【0036】
金属酸化物粒子表面をポリエステル(4)で修飾する方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、金属酸化物粒子の分散液中に、ポリエステル(4)を添加後、50~80℃に加熱し、1~10時間処理する方法が挙げられる。
【実施例0037】
以下、合成例および実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた各測定装置は以下のとおりである。
[GPC]
装置:Shodex GPC-101(昭和電工(株)製)
カラム:Shodex KF-804L 2本(昭和電工(株)製)
カラム温度:40℃
溶媒:クロロホルム 1mL/分
検出器:UV(254nm)、RI
検量線:標準ポリスチレン
1H-NMR]
装置:JEOL ECA-500 and ECA-600
13C-NMR]
装置:JEOL ECA-500 and ECA-600
[IR]
装置:JASCO FT/IR-410
[TG-DTA]
装置:Seiko Instruments Inc. TG/DTA 6200
[MALDI-TOFF]
装置:AXIMA-CFR plus Shimadzu/Kratos
Reflection ion mode:レーザー(λ=337nm)
Matrix:1,8-dihydroxy-9[10H]-anthracenone
【0038】
[1]相間移動重合用のモノマー合成
[合成例1]中間体化合物(A)の合成
【化11】
【0039】
反応はフィンデンサーを備えた200mLナスフラスコを用いて行った。フラスコに4-メチルサリチル酸10.12g(66.5mmol)、乾燥アセトン150mLを加えて撹拌した。そこへ、1-ブロモオクタン29mL(166.7mmol)、炭酸カリウム27.25g(197mmol)、18-クラウン-61.75g(6.62mmol)を加え、60時間還流後、ろ過した。減圧下で溶媒を除去した後、エーテルで抽出し、水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過し、減圧下で溶媒を留去して白濁液体28.9g(収率117%)の中間体化合物(A)粗生成物を得た。
【0040】
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ7.75(d,J=7.2Hz,1H),6.75(d,J=8.4Hz,1H),6.74(s,1H),4.00(t,J=6.6Hz,2H),2.36(s,3H),1.83(quint,J=7.2Hz,2H),1.47(quint,J=7.4Hz,2H),1.37-1.27(m,8H),0.88(t,J=6.8Hz,3H),0.37(s,3H).
【0041】
[合成例2]中間体化合物(B)の合成
【化12】
【0042】
反応はフィンデンサーを備えた200mLナスフラスコを用いて行った。フラスコに中間体化合物(A)10.03g(26.6mmol)、水酸化カリウム7.84g(140mmol)、エタノール90mLを加え、14.5時間還流後、減圧下で溶媒を除去し、1M塩酸を加え、エーテルで抽出し、水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過し、減圧下で溶媒を留去して得られた粗生成物を60℃/0.4mmHgで蒸留し、オクタノールを除去した。残渣を回収し、茶色粘性液体の中間体化合物(B)4.35g(収率62%)を得た。
【0043】
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ11.0(s,1H),8.06(d,J=8.4Hz,1H),6.93(d,J=8.4Hz,1H),6.84(s,1H),4.23(t,J=6.4Hz,2H),2.41(s,3H),1.91(quint,J=7.1Hz,2H),1.49(quint,J=7.3Hz,2H),1.39-1.26(m,8H),0.89(t,J=6.8Hz,3H).
13C NMR(150MHz,CDCl3) δ165.5,157.5,146.3,133.6,123.0,114.9,113.1,70.1,31.7,29.1,29.1,28.9,25.8,22.6,22.0,14.0.
IR (neat)3282,2927,2856,1738,1612,1574,1501,1405,1252,1173,1134,1088,1020,829,775,736,684cm-1
【0044】
[合成例3]中間体化合物(C)の合成
【化13】
【0045】
反応はビグリュー管を備えた20mLナスフラスコを用いて行った。フラスコに中間体化合物(B)2.05g(7.75mmol)、o-スルホベンズイミド71.2mg(0.39mmol)、クロロホルム7.5mLを加えて撹拌した。そこへ、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン2mL(9.54mmol)を加えてアルゴンで置換して2.5時間還流後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物を150℃/0.4mmHgで蒸留し、無色透明液体である中間体化合物(C)2.03g(収率80%)を得た。
【0046】
1H NMR(400MHz,CDCl-3) δ7.75(d,J=7.2Hz,1H),6.75(d,J=8.4Hz,1H),6.74(s,1H),4.00(t,J=6.6Hz,2H),2.36(s,3H),1.83(quint,J=7.2Hz,2H),1.47(quint,J=7.4Hz,2H),1.37-1.27(m,8H),0.88(t,J=6.8Hz,3H),0.37(s,9H).
13C NMR(150MHz,CDCl3) δ166.4,159.4,144.5,132.7,120.7,118.3,113.9,68.8,31.9,29.4,29.3,29.3,26.1,22.7,21.9,14.1.
IR (neat)2955,2927,2857,1709,1611,1502,1417,1307,1253,1180,1140,1079,851,782cm-1
【0047】
[合成例4]中間体化合物(D)の合成
【化14】
【0048】
反応はビグリュー管を備えた200mLナスフラスコを用いて行った。フラスコに中間体化合物(C)26.8g(79.7mmol)、四塩化炭素110mL、N-ブロモスクシンイミド3.62g(20.3mmol)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.17g(1.04mmol)を加えた。45分間還流後、再びN-ブロモスクシンイミド3.67g(20.6mmol)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.16g(0.99mmol)を加えた。この操作を5回繰り返し、最終的にN-ブロモスクシンイミド14.2g(80mmol)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.64g(3.97mmol)を加えた。8時間還流後、ろ過し、水を加え、エーテルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過し、減圧下で溶媒を留去して淡黄色固体の粗生成物を得た。さらに四塩化炭素、塩化メチレン/ヘキサンで再結晶を5回行い、白色固体の中間化合物(D)5.9g(収率21%)を得た(mp79-80℃)。
【0049】
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ10.9(s,1H),8.16(d,J=8.4Hz,1H),7.14(d,J=7.6Hz,1),7.07(s,1H),4.47(s,2H),4.28(t,J=6.8Hz,2H),1.93(quint,J=7.6Hz,2H),1.50(quint,J=7.6Hz,2H),1.42-1.25(m,8H),0.89(t,J=6.8Hz,3H).
13C NMR(100MHz,CDCl3) δ164.7,157.6,145.0,134.3,122.5,117.5,113.1,70.5,31.8,31.7,29.1,29.0.28.8,25.8,22.6,14.1.
IR (KBr)3074,2953,2913,2871,2853,2637,2560,2362,1710,1678,1609,1572,1503,1471,1450,1425,1409,1309,1260,1210,1184,1144,1090,1055,1014,951,863,794,780,769,743,727,702,662,599,542,430cm-1
【0050】
[合成例5]モノマー(E)の合成
【化15】
【0051】
反応は50mLナスフラスコを用いて行った。フラスコに中間化合物(D)1.61g(4.7mmol)、乾燥メタノール30mL、フェノールフタレイン溶液数滴を加えて撹拌した。30mLナスフラスコに水酸化カリウム0.42g(7.5mmol)、乾燥メタノール60mLを加えて撹拌した。前者の溶液に後者の溶液をpH=7になるまで少しずつ加えた。減圧下で溶媒を留去し、エーテルで洗浄し、固体をろ取した。得られた固体を五酸化二リンの入ったデシケーターで一晩減圧乾燥し、白色固体のモノマー(E)1.09g(収率60%)を得た。
【0052】
IR (KBr)3423,2956,2924,2854,2361,1584,1421,1389,1252,1212,1177,1103,1020,829cm-1
【0053】
[2]芳香族ポリエステルの合成
[実施例1]片末端ビニル基置換ポリエステル(g)の合成
【化16】
【0054】
反応は三方コックを備えた10mLナスフラスコを用いて行った。フラスコにモノマー(E)374.47mg(0.982mmol)を加え、アルゴンで置換した。別途用意した5mLナシフラスコにp-ビニル-α-ブロモトルエン19.28mg(0.0978mmol)を加え、アルゴンで置換し、窒素気流下で乾燥アセトン1.5mLを加え撹拌した。窒素気流下で、シリンジを用い、前者のフラスコに後者の溶液を加えた。別途用意した5mLナシフラスコにヨウ化テトラブチルアンモニウム18.54mg(0.05mmol)を加え、アルゴンで置換し、窒素気流下で乾燥アセトン1.5mLを加えて撹拌した。窒素気流下でシリンジを用い、前者の溶液に後者の溶液を加え、室温で24時間撹拌した。6M塩酸を加え、塩化メチレンで抽出し、水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過し、減圧下で溶媒を留去し、淡黄色粘性液体片末端ビニルポリエステル(g)260.6mg(収率94%)を得た。得られた生成物のGPCとMALDI-TOF MSを測定した(Mn=3980,Mw/Mn=1.17)。
【0055】
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ7.86-7.78(m,1nH),7.40(s,4H),7.07-6.96(m,1nH),7.07-6.96(m,1nH),6.74-6.67(dd,J=10.8 and 18Hz,1H),5.75(d,J=17.6Hz,1H),5.39-5.32(m,2nH),5.39-5.32(m,2H),4.43-4.39(s,2H),5.27(d,J=10.4Hz,1H),4.43(s,2H),4.04(t,J=6.4Hz,2nH),1.79(t,J=8.0Hz,2nH),1.42(m,2nH),1.26-1.18(m,8nH),(t,J=6.8Hz,3nH).
【0056】
[実施例2]片末端トリエチルシリル基置換ポリエステル(h)の合成
【化17】
【0057】
反応は減圧乾燥下、ヒートガンで加熱した三方コックを備えた100mLナスフラスコを用いてグローブボックス内で行った。フラスコにヘサクロロ白金酸六水和物24.7mg(0.047mmol)を加えた。別途用意したバイアルに片末端ビニルポリエステル(g)1.24g(0.283mmol)、乾燥THF47mLを加え、前者のフラスコに後者の溶液、トリエトキシシラン2.9mL(14.1mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。フラスコをグローブボックスから取りだし、55℃で6日間撹拌した。減圧下で溶媒を留去し、沈殿精製(良溶媒/貧溶媒=THF/ヘキサン)し、塩化メチレンで抽出し、水で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過し、減圧下で溶媒を留去し、片末端トリエチルシリル基置換ポリエステル(h)1.10g(収率86%)を得た。
【0058】
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ8.05-7.73(m,nH),7.41-7.20(m,4H),7.14-7.00(m,2nH),5.38-5.30(m,2nH),4.05-3.97(m,2nH),3.86-3.75(m,6H),1.94-1.90(m,2H),1.81-1.74(m,2nH),1.40(m,2nH),1.26-1.16(m,8n+9H),1.04-0.98(m,2H),0.86-0.83(m,3nH).
13C NMR(100MHz,CDCl3) δ165.8,165.4,164.4,159.2,159.1,158.3,142.7,142.5,1355.5,132.2,132.1,132.0,119.5,119.3,119.2,112.5,112.4,112.3,77.2,69.4,69.1,69.0,68.9,65.8,65.7,31.8,29.3,29.2,29.0,25.9,22.6,14.1.
IR (neat)953,2926,2871,2855,2355,2348,1732,1708,1613,1577,1428,1372,1295,1234,1179,1138,1083,778cm-1
【0059】
[3]表面修飾金属酸化物の合成
[実施例3]ポリエステル修飾シリカゾル(i)の合成
MT-ST(日産化学(株)製メタノールシリカゾル)30gに、1,3-ジメチルイミダゾリジノン(以下、DMI)21gを添加し、エバポレータを用いて、メタノールを除去し、30wt%DMIゾル(i)を得た。
次に、実施例2で得られた片末端トリエチルシリル基置換ポリエステル(h)300mgを溶解させたTHF溶液3mLを添加し、エバポレータを用いて、THFを除去した。その後、メチルエチルケトン10mLを添加し、80℃6時間加熱した。その後、メチルエチルケトンをエバポレータで除去し、目的のポリエステル修飾シリカゾル(i)を得た。
【0060】
[4]ポリアミック酸とポリエステル修飾シリカゾル(i)のハイブリッドフィルム作製
[合成例6]ポリアミック酸(P1)の合成
重合溶媒として、N-メチルピロリドン320gとN,N-ジメチルアセトアミド80gを質量比8:2で混合した。その後、この混合溶媒249gを加えたナスフラスコに、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DDE)24.6gを添加後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)26.3gを添加し、50℃の温度で重合し、ポリアミック酸(P1)を得た。P1の物性は、固形分17質量%、E型粘度計を用いた25℃の粘度が13640mPa・s、重量平均分子量が63000であった。
【0061】
[参考例1]ハイブリッドフィルム作製
ポリアミック酸(P1)3.0gとポリエステル修飾シリカゾル(i)1.7gを加えた20mL試料瓶を、真空撹拌脱泡ミキサー(V-mini300、(株)EME製)を用いて1500rpmで10分間撹拌し、ポリアミック酸(P1):ポリエステル修飾シリカゾル(i)=1:1の成分比の透明黄色ワニスを得た。
得られたワニスを10×10cm無アルカリガラス基板(コーニング社製、製品名:イーグルXG)上に、250μmのギャップでバーコートした。その後、窒素中、ホットプレート上にて100℃で30分焼成後、さらに230℃で30分焼成し、純水に浸漬させ、目的の塗布膜を得た。得られた塗布膜はヘイズがみられず自己支持性を示した。