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特開2025-124513ポリエチレン樹脂組成物、およびそれよりなるフィルムおよび医療容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025124513
(43)【公開日】2025-08-26
(54)【発明の名称】ポリエチレン樹脂組成物、およびそれよりなるフィルムおよび医療容器
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20250819BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20250819BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20250819BHJP
【FI】
C08L23/04
B32B27/32 E
B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020619
(22)【出願日】2024-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】冨田 奈恵
(72)【発明者】
【氏名】中尾 英誉
(72)【発明者】
【氏名】山野 直樹
【テーマコード(参考)】
3E064
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E064BA27
3E064BA30
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC18
3E064EA30
3E064FA04
3E064HT07
4F100AK05A
4F100AK05B
4F100AK05C
4F100AK63A
4F100AL05A
4F100AL05J
4F100AT00
4F100BA03
4F100GB16
4F100GB66
4F100JA06A
4F100JA07A
4F100JA13
4F100JL12
4F100JL14
4F100YY00A
4J002BB031
4J002BB052
4J002GG01
4J002GJ02
(57)【要約】
【課題】 121℃での滅菌処理後も内面融着せず、弱シール強度の安定性に優れるポリエチレン樹脂組成物およびそれよりなるフィルム、本フィルムを用いた医療容器を提供する。
【解決手段】 下記特性(a)~(d)を満足する高密度ポリエチレン(A)60~95重量%および下記特性(e)~(g)を満足する直鎖状低密度ポリエチレン(B)5~40重量%を含む、ポリエチレン樹脂組成物。
(a)密度が955~970kg/m
(b)190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(MFR)が0.1~30g/10分
(c)炭素数がヘキシル基以上の長鎖分岐数が炭素数1000個当り0.5個未満
(d)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0以下
(e)密度が870~930kg/m
(f)MFRが0.1~20.0g/10分
(g)Mw/Mnが3.0以下
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記特性(a)~(d)を満足する高密度ポリエチレン(A)60~95重量%および下記特性(e)~(g)を満足する直鎖状低密度ポリエチレン(B)5~40重量%((A)および(B)の合計は100重量%)を含む、ポリエチレン樹脂組成物。
(a)密度が955~970kg/m
(b)190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(以下、MFRという)が0.1~30g/10分である。
(c)13C-NMRスペクトルの測定から求められる炭素数がヘキシル基以上の長鎖分岐数(LCB)が炭素数1000個当り0.5個未満である。
(d)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる分子量測定において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0以下である。
(e)密度が870~930kg/mである。
(f)MFRが0.1~20.0g/10分である。
(g)ゲル・パーミエ―ション・クロマトグラフィーによる分子量測定において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0以下である。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項3】
前記フィルム同士を熱融着(ヒートシール)してなるシール部(易剥離シール部)を有するフィルムを121℃での滅菌処理後、易剥離シール部のシール強度が1~4N/15mmを示すシール温度幅が5℃以上あり、かつ純水中、波長450nmで測定した光線透過率が60%以上である、請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
請求項2に記載のフィルムからなる弱ヒートシール層及び他の樹脂層を有する積層フィルム。
【請求項5】
他の樹脂層として、弱ヒートシール層に隣接する中間層及び該中間層に隣接する耐熱層を有し、中間層が密度870~920kg/mであるポリエチレン系樹脂からなり、耐熱層が密度930~970kg/mであるポリエチレン系樹脂からなる、請求項4に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記積層フィルムの弱ヒートシール層同士を熱融着(ヒートシール)してなるシール部(易剥離シール部)を有する積層フィルムを121℃での滅菌処理後、易剥離シール部のシール強度が1~4N/15mmを示すシール温度幅が5℃以上あり、かつ純水中、波長450nmで測定した光線透過率が60%以上である、請求項4に記載の積層フィルム。
【請求項7】
薬液を収容する収容部を備えた医療容器であって、請求項2又は3に記載のフィルムまたは請求項4~6のいずれかに記載の積層フィルムの弱ヒートシール層を内層とする袋状にした収容部を有する医療容器。
【請求項8】
前記収容部が、フィルムまたは積層フィルム同士を熱融着してなるシール部によって2以上に区画されている、請求項7に記載の医療容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン樹脂組成物およびそれよりなるフィルム、本フィルムを用いた医療容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、複数の薬剤成分を混合した状態で生体内に投与することは、ごく一般的に行われているが、混合する薬液成分の組み合わせによっては保存中に化学反応等が生じて変質する場合があるため、1つのプラスチック製容器内に隔離手段を設けて各薬剤成分を別々の収容室保存しておき、投与する直前に混合することが多い。この場合、各収容室間を接着部により仕切り、使用直前に手または器具などで接着部を加圧剥離して、連通させることで薬剤を混合する易剥離性複室容器が、操作が簡便でかつ無菌的に行えるため注目されている。これらは輸液剤等の互いに反応する部分を隔離することで、混合する薬品の種類や量を誤らないこと、混合時の汚染を防止できること等の利点がある。
【0003】
このような医療容器を構成するフィルム(積層フィルム)は、輸送時や保管時には収容室間の接着部が安定で剥離し難く、使用時(混合時)には比較的容易に剥離できる必要がある。従って、輸液バッグの周縁部は薬剤が漏れないほどの十分なヒートシール強度(強シール性)、各収容室間の隔離部は手などで容易に開通させることができるヒートシール強度(易剥離性、弱シール性)が要求され、シール強度のコントロールが技術上の重要なポイントになっている。
【0004】
近年、特定形状の凹凸を付けた金型を用いて、ヒートシール部に強融着部と弱融着部を特定の面積比率で付与して、シール強度をコントロールする方法が提案されている(例えば、特許文献1~3参照。)。しかしながら、これらの方法においても、強融着部と弱融着部を特定の位置関係に保持しないとシール強度のバランスが取り難いという煩雑さがある。また、加熱滅菌処理をした場合、強融着部、弱融着部の強度が変化して、シール強度のコントロールができなくなる問題があり、改良が望まれていた。
【0005】
また、相溶性に乏しく、かつ融点に比較的大きな差を有する樹脂同士(例えば、ポリエチレン系樹脂組成物とポリプロピレン系樹脂)のブレンド物を用いて、シーラント層に相分離構造を形成させ、低融点樹脂相のみが融解する温度でヒートシールすることで、シール界面における融着領域を制御してシール強度をコントロールする方法が提案されている(例えば、特許文献4~7参照。)。しかしながら、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂の混合物をシーラント層にしたフィルムは、ポリエチレン系樹脂のみからなるフィルムはポリエチレン系樹脂のみからなるフィルムに比べて薬液中への微粒子の溶出等、クリーン性が悪化する問題がある。また、ポリエチレン系樹脂のみからなるフィルムに比べて、材料コストが高くなるという不具合がある。
【0006】
また、特定の物性を有するポリエチレン系樹脂を含む材料により構成された樹脂を内層(シーラント層)に用いることで、121℃滅菌処理後も透明性、弱シール強度の安定性に優れた容器を得る方法が提案されている(例えば、特許文献8参照。)。この方法によれば、121℃滅菌処理後も弱シール強度の安定性を有するが、シール部以外の容器の接触する部分(容器の内層同士等)が融着することが判明したため、改良が必要である。
【0007】
上記のいずれの方法においても、加熱滅菌処理後にフィルムの内層同士が融着(内面融着)せず、高い透明性および弱シール強度の安定性(弱シール性)をバランスよく備えたものは提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8-24314号公報
【特許文献2】特開2004-476号公報
【特許文献3】特許第4689416号公報
【特許文献4】特許第2675075号公報
【特許文献5】特許第3076862号公報
【特許文献6】特開平8-229099号公報
【特許文献7】特許第5144573号公報
【特許文献8】特開2017-018290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、これら従来の欠点を解消したものであり、滅菌処理後も内面融着せず、弱シール強度の安定性に優れるポリエチレン樹脂組成物、それよりなるフィルム、およびこのフィルムを用いた医療容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、特定の物性を有するポリエチレン系樹脂を特定量配合したポリエチレンを弱ヒートシール層とし、弱ヒートシール層を含む積層フィルムを医療容器とすることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の[1]~[6]に存する。
[1]下記特性(a)~(d)を満足する高密度ポリエチレン(A)60~95重量%および下記特性(e)~(g)を満足する直鎖状低密度ポリエチレン(B)5~40重量%((A)および(B)の合計は100重量%)を含む、ポリエチレン樹脂組成物。
(a)密度が955~970kg/m
(b)190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(以下、MFRという)が0.1~30g/10分である。
(c)13C-NMRスペクトルの測定から求められる炭素数がヘキシル基以上の長鎖分岐数(LCB)が炭素数1000個当り0.5個未満である。
(d)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる分子量測定において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0以下である。
(e)密度が870~930kg/mである。
(f)MFRが0.1~20.0g/10分である。
(g)ゲル・パーミエ―ション・クロマトグラフィーによる分子量測定において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0以下である。
[2]上記[1]に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
[3]前記フィルム同士を熱融着(ヒートシール)してなるシール部(易剥離シール部)を有するフィルムを121℃での滅菌処理後、易剥離シール部のシール強度が1~4N/15mmを示すシール温度幅が5℃以上あり、かつ純水中、波長450nmで測定した光線透過率が60%以上である、[2]に記載のフィルム。
[4][2]又は[3]に記載のフィルムからなる弱ヒートシール層及び他の樹脂層を有する積層フィルム。
[5]他の樹脂層として、弱ヒートシール層に隣接する中間層及び該中間層に隣接する耐熱層を有し、中間層が密度870~920kg/mであるポリエチレン系樹脂からなり、耐熱層が密度930~970kg/mであるポリエチレン系樹脂からなる、[4]に記載の積層フィルム。
[6]前記積層フィルムの弱ヒートシール層同士を熱融着(ヒートシール)してなるシール部(易剥離シール部)を有する積層フィルムを121℃での滅菌処理後、易剥離シール部のシール強度が1~4N/15mmを示すシール温度幅が5℃以上あり、かつ純水中、波長450nmで測定した光線透過率が60%以上である、[4]又は[5]に記載の積層フィルム。
[7]薬液を収容する収容部を備えた医療容器であって、[2]又は[3]に記載のフィルムまたは[4]~[6]のいずれかに記載の積層フィルムの弱ヒートシール層を内層とする袋状にした収容部を有する医療容器。
[8]前記収容部が、フィルムまたは積層フィルム同士を熱融着してなるシール部によって2以上に区画されている、[7]に記載の医療容器。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂組成物からなるフィルムは、水冷インフレーション成形時の成形安定性に優れ、さらに121℃滅菌処理後も弱シール強度の安定性を維持し、かつ内面融着しないため、医療用輸液バッグのような医療容器に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に関わるポリエチレン樹脂、樹脂組成物およびそれよりなるフィルム、本フィルムを用いた医療容器について説明する。
[1]高密度ポリエチレン(A)
本発明に用いる高密度ポリエチレン(A)はエチレン単独重合体、またはエチレンとα-オレフィンの共重合体である。
【0014】
高密度ポリエチレン(A)は、JIS K6922-1に準拠した密度が955~970kg/m、好ましくは955~960kg/mである。密度が955kg/m未満の場合、フィルムとした際に121℃での滅菌処理により容器の内壁(弱ヒートシール層)が融着する等の耐熱性が不足するため好ましくない。密度が970kg/mを超える場合、フィルムとした際の透明性が低下するため好ましくない。
【0015】
高密度ポリエチレン(A)は、JIS K6922-1に準拠し、190℃、荷重21.18Nで測定したMFRが0.1~30g/10分、好ましくは1.0~20g/10分、更に好ましくは1.0~10g/10分である。MFRが0.1g/10分未満の場合、成形加工時に押出機の負荷が大きくなると共に、成形時に表面荒れおよび幅方向に厚みムラが生じるため好ましくない。また、MFRが30g/10分を超える場合、フィルムとした際の透明性が低下するため好ましくない。
【0016】
高密度ポリエチレン(A)は、13C-NMRスペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りのヘキシル基以上の分岐数(LCB)が、0.5個未満である。LCBが0.5個以上の場合、フィルムとしたい際に変形が生じる等、耐熱性が不足するため好ましくない。
【0017】
高密度ポリエチレン(A)は、ゲル・パーミエ―ション・クロマトグラフィーによる分子量測定分子量測定において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0以下である。Mw/Mnが3.0超の場合、フィルムとした際の透明性が低下するため好ましくない。
【0018】
高密度ポリエチレン(A)は、例えばスラリー法、溶液法、気相法等の製造法により製造することが可能である。該高密度ポリエチレン(A)を製造する際には、一般的にシクロペンタジエニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物と、これと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および/又は有機金属化合物からなるメタロセン触媒、バナジウム系触媒等を用いることができ、該触媒によりエチレンを単独重合またはエチレンとα-オレフィンを共重合することにより製造することが可能である。 α-オレフィンとしては、一般にα-オレフィンと称されているものでよく、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数3~12のα-オレフィンであることが好ましい。エチレンとα-オレフィンの共重合体としては、例えばエチレン・ヘキセン-1共重合体、エチレン・ブテン-1共重合体、エチレン・オクテン-1共重合体等が挙げられる。
【0019】
高密度ポリエチレン(A)は、例えば特許3319051号等に記載の方法により得ることができる。
[2]直鎖状低密度ポリエチレン(B)
本発明に用いる直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、エチレンとα-オレフィンの共重合体のことをいい、直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、JIS K6922-1に準拠した密度が870~930kg/m、好ましくは875~920kg/m、さらに好ましくは875~910kg/mである。密度が870kg/m未満の場合、耐熱性が不足し、フィルムとした際に121℃での滅菌処理によりシール面(弱ヒートシール層)が融着して収容室間の接着部の剥離が困難になるため好ましくない。密度が930kg/mを超える場合、フィルムとした際の透明性や弱シール強度の安定性が低下するため好ましくない。
【0020】
直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、JIS K6922-1に準拠し、190℃、荷重21.18Nで測定したMFRが0.1~20g/10分、好ましくは0.5~10g/10分、さらに好ましくは1.0~5g/10分である。MFRが0.1g/10分未満の場合、成形加工時に押出機の負荷が大きくなると共に、成形時に表面荒れおよびフィルム成形時には幅方向に厚みムラが生じるため好ましくない。また、MFRが20g/10分を超える場合、溶融張力が小さくなり、成形安定性が低下するため好ましくない。
【0021】
直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、ゲル・パーミエ―ション・クロマトグラフィーによる分子量測定分子量測定において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0以下である。Mw/Mnが3.0超の場合、弱シール強度の安定性が低下するため好ましくない。
【0022】
直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、例えば高圧法、溶液法、気相法等の製造法により製造することが可能であり、とりわけ高圧法により製造することが好ましい。該直鎖状低密度ポリエチレン(B)を製造する際には、一般的にシクロペンタジエニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物と、これと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および/又は有機金属化合物からなるメタロセン触媒、バナジウム系触媒等を用いることができ、該触媒によりエチレンとα-オレフィンを共重合することにより製造することが可能である。
【0023】
α-オレフィンとしては、一般にα-オレフィンと称されているものでよく、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数3~12のα-オレフィンであることが好ましい。エチレンとα-オレフィンの共重合体としては、例えばエチレン・ヘキセン-1共重合体、エチレン・ブテン-1共重合体、エチレン・オクテン-1共重合体等が挙げられる。
【0024】
直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、例えば特開2009-275059号公報、特開2013-81494号公報等に記載の方法により得ることができる。
[3]ポリエチレン樹脂組成物
本発明の一態様であるポリエチレン樹脂組成物は、前述の高密度ポリエチレン(A)および直鎖状低密度ポリエチレン(B)を、従来公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、V-ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合する方法、あるいはこのような方法で得られた混合物をさらに一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練した後、造粒することによって得ることができる。
【0025】
高密度ポリエチレン(A)および直鎖状低密度ポリエチレン(B)の配合割合は、高密度ポリエチレン(A)が60~95重量%、直鎖状低密度ポリエチレン(B)が5~40重量%であり、得られるフィルムは弱シール強度の安定性に優れ、好ましくは、高密度ポリエチレン(A)は65~90重量%であり、直鎖状低密度ポリエチレン(B)は10~35重量%であり、さらに好ましくは高密度ポリエチレン(A)が65~78重量%、直鎖状低密度ポリエチレン(B)が22~35重量%である。高密度ポリエチレン(A)が60重量%未満の場合、フィルムとした際の耐熱性が不足して内面融着が生じ、弱シール強度の安定性が低下するため好ましくない。95重量%を超える場合、フィルムとした際の透明性が低下し、弱シール強度の安定性が低下するため好ましくない。直鎖状低密度ポリエチレン(B)が5重量%未満の場合、フィルムとした際の透明性が低下し、弱シール強度の安定性が低下するため好ましくない。40重量%を超える場合、フィルムとした際の耐熱性が不足して内面融着が生じ、弱シール強度の安定性が低下するため好ましくない。なお、上記ポリエチレン樹脂組成物は、高密度ポリエチレン(A)および直鎖状低密度ポリエチレン(B)が100重量%となる比率で含むものである。
【0026】
上記ポリエチレン樹脂組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、通常用いられる公知の添加剤、例えば酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、有機系あるいは無機系の顔料、紫外線吸収剤、分散剤等を適宜必要に応じて配合することができる。本発明に関わる樹脂組成物に前記の添加剤を配合する方法は特に制限されるものではないが、例えば、重合後のペレット造粒工程で直接添加する方法、また、予め高濃度のマスターバッチを作製し、これを成形時にドライブレンドする方法等が挙げられる。
【0027】
また、上記ポリエチレン樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない程度の範囲内で、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、ポリ-1-ブテン等の他の熱可塑性樹脂を配合して用いることもできる。
[4]フィルム
本発明の一態様であるフィルムは、下記特性(a)~(d)を満足する高密度ポリエチレン(A)60~95重量%および下記特性(e)~(g)を満足する直鎖状低密度ポリエチレン(B)5~40重量%((A)および(B)の合計は100重量%)を含むポリエチレン樹脂組成物からなるフィルムである。
(a)密度が955~970kg/m
(b)190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(以下、MFRという)が0.1~30g/10分である。
(c)13C-NMRスペクトルの測定から求められる炭素数がヘキシル基以上の長鎖分岐数(LCB)が炭素数1000個当り0.5個未満である。
(d)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる分子量測定において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0以下である。
(e)密度が870~930kg/mである。
(f)MFRが0.1~20.0g/10分である。
(g)ゲル・パーミエ―ション・クロマトグラフィーによる分子量測定において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0以下である。
【0028】
上記フィルムの厚みは特に限定されず必要に応じて適宜決定することができるが、好ましくは0.01~1mm、より好ましくは0.1~0.5mmである。
【0029】
上記フィルムは、フィルム同士を熱融着してなるシール部(易剥離シール部)を有するフィルムであって、本易剥離シール部のシール強度が1~4N/15mmを示すシール温度幅が5℃以上あることが弱シール強度の安定性の観点から好ましく、かつ滅菌後の光線透過率が60%以上であることが透明性の観点から好ましい。
【0030】
この易剥離シール部とは、フィルム同士を熱融着した際に、通常の条件下で保持する場合はその接着状態が維持され、かつ、易剥離シール部を手または器具などで加圧し剥離させた場合は、易剥離シール部が容易に剥離する部位のことである。易剥離シール部のシール強度は、袋状容器とした際の袋の形状や用途によっても異なるが、通常0.5~10N/15mmの範囲で設定されることが好ましい。
【0031】
易剥離シール部のシール強度は、シール温度(ヒートシールバーの加熱温度)、シール圧力およびシール時間により調整されるが、通常、シール圧力、シール時間を固定してシール温度を所望のシール強度が得られるように調整する。ここで、シール圧力、シール時間に特に制限はないが、通常、シール圧力は1~6kg/cm、シート時間は0.5~10秒の範囲で設定される。
[5]積層フィルム
本発明の一態様である積層フィルムは、前記フィルムを弱ヒートシール層及び他の樹脂層を有するものである。
【0032】
前記樹脂配合物からなる弱ヒートシール層を有するフィルムであれば、単層フィルムであっても構わないが、耐熱性、透明性、ガスバリア性等の各種性能を備えたフィルムもしくは医療容器とするには、他の樹脂層を有する積層フィルム(多層フィルム)であってもよい。
【0033】
積層フィルムの層構成は特に限定されない。例えば、弱ヒートシール層(A層)から順に、A層/C層(2層構造)、A層/B層/C層(3層構造)、さらにA層/B層/C層におけるB層の中にさらに層を構成させたA層/B層/中心層/B層/C層という層構成や、B層とC層、またはA層とB層の間に、必要に応じて適宜他の層を設けることができる。そのような他の層としては、接着層、ガスバリア層、耐衝撃層等が挙げられる。例えば、A層/接着層/B層/ガスバリア層/C層といった五層構造をとることもできる。また、C層のさらに外側に新たな層を設けることもできる。なお、層の間の記号/は、隣接する層であることを表している。
【0034】
弱ヒートシール層(A層)以外の層を構成する樹脂に特に制限はなく、一般的に使用されている樹脂であればよく、例えば、ポリエチレン、エチレン・α-オレフィンコポリマー、ポリプロピレン、プロピレン・α-オレフィンランダムコポリマー、プロピレン・α-オレフィンブロックコポリマー、ポリブテン、ポリ4-メチルペンテン、環状ポリオレフィン、スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、軟質塩化ビニル樹脂およびこれら樹脂の混合物を使用することができる。
【0035】
尚、接着層を構成する接着剤としては、ポリウレタン系接着剤、酢酸ビニル接着剤、ホットメルト接着剤、あるいは無水マレイン酸変性ポリオレフィン、アイオノマー樹脂等の接着性樹脂が挙げられる。層構成に接着層を含める場合は、A層、B層、C層等の必須構成層を、これらの接着剤とともに共押出することにより積層することができる。
【0036】
ガスバリア層としては、ポリオレフィン系樹脂とエチレン-ビニルアルコール共重合体のブレンド物、ポリオレフィン系樹脂にモンモリロナイト、マイカ等の層状珪酸塩を配合した組成物等を用いることができる。
【0037】
積層フィルム全体の厚みは特に限定されず、必要に応じて適宜決定することができるが、好ましくは0.01~1mm、より好ましくは0.1~0.5mmである。
【0038】
各層の厚み比は特に限定されないが、例えば、3層構造のフィルムの場合、一般的には滅菌処理等による変形や融着を防ぐためC層は耐熱性に優れた樹脂を用いて厚みを薄くし、B層は透明性に優れた樹脂を用いて厚みを厚くする方が、透明性と耐熱性のバランスが良くなるため好ましい。各層の厚み比としては、A層:B層:C層=1~30:40~98:1~30程度(但し、全体の合計を100とする)がよい。B層にポリエチレン系樹脂を用いる場合は、密度が920kg/m以下を選定すると透明性が良好となり好ましい。C層にポリエチレン系樹脂を用いる場合は、耐熱性の観点から、密度が930kg/m以上を選定すると好ましく、密度が945kg/m以上であるとさらに好ましい。
【0039】
積層フィルムは、121℃での滅菌処理後もフィルムの弱ヒートシール層同士を熱融着してなるシール部(易剥離シール部)のシール強度が1~4N/15mmを示すシール温度幅が5℃以上あることが弱シール強度の安定性の観点から好ましく、かつ滅菌後の光線透過率が60%以上であることが透明性の観点から好ましい。
【0040】
積層フィルムの製造方法は特に限定されないが、水冷式または空冷式共押出多層インフレーション法、共押出多層Tダイ法、ドライラミネーション法、押出ラミネーション法等により多層フィルムまたはシートとする方法が挙げられる。これらの中で、水冷式共押出多層インフレーション法または共押出多層Tダイ法を用いるのが好ましい。特に、水冷式共押出多層インフレーション法を用いた場合、透明性、衛生性等の点で多くの利点を有する。
[6]医療容器
本発明の一態様である医療容器は、薬液を収容する収容部を備えた医療容器であって、前記フィルムまたは積層フィルムを袋状にした収容部を有するものであり、弱ヒートシール層(A層)を内層とするものである。また、本発明の一態様である医療容器は、前記収容部が、フィルムまたは積層フィルムの弱ヒートシール層同士を熱融着してなるシール部によって2以上に区画されているものである。
【0041】
医療容器は、121℃での滅菌処理後もフィルム同士を熱融着してなるシール部(易剥離シール部)のシール強度が1~4N/15mmを示すシール温度幅が5℃以上あることが弱シール強度の安定性の観点から好ましく、かつ滅菌後の光線透過率が60%以上であることが透明性の観点から好ましい。
【0042】
医療容器において、易剥離シール部のシール強度は、医療容器を通常の条件下で保存する場合はその接着状態が維持され、かつ医療容器の何れかの収容室を手または器具などで加圧した場合は、易剥離シール部が剥離して隣接する収容室が連通するように調整される。易剥離シール部のシール強度は、医療容器の形状や用途によっても異なるが、通常0.5~10N/15mmの範囲で設定される。
【0043】
易剥離シール部のシール強度は、シール温度(ヒートシールバーの加熱温度)、シール圧力およびシール時間により調整されるが、通常、シール圧力、シール時間を固定してシール温度を所望のシール強度が得られるように調整する。ここで、シール圧力、シール時間に特に制限はないが、通常、シール圧力は1~6kg/cm、シート時間は0.5~10秒の範囲で設定される。
【0044】
本発明の医療容器では、シール温度を適宜変化させることで、易剥離シール部に所望のシール強度を付与することができる。ここで、易剥離シール部のシール強度の変動を防止するには、シール強度の温度依存性(ヒートシールカーブ)ができるだけ緩やかな方がよい。具体的には、1~4N/15mmのシール強度を得るための温度幅が5℃以上あることが好ましい。ヒートシールカーブの特性は弱ヒートシール層に使用するポリエチレン樹脂組成物の特性に依存し、一般に配合する直鎖状低密度ポリエチレン(B)の密度が低く、配合比率が高いほど、ヒートシールカーブが緩やかになる傾向がある。
【0045】
本発明の医療容器の周縁部は、常法に従って成形すればよく、例えば、共押出多層Tダイ法、ドライラミネーション法、押出ラミネーション法等により成形したフィルムを材料として使用した場合は弱ヒートシール層同士が対向するように重ね合わせた後、これを一対のヒートシールバーで挟んで、一様に加熱、加圧して熱融着させればよい。また、水冷式または空冷式共押出多層インフレーション法により成形した円筒状のフィルムを材料として使用した場合は、フィルムの両端のみをヒートシールすればよく、必ずしも容器の全周に亘ってヒートシールが施されていなくてもよい。この際、薬液の注出入口となるポート部は、前記収容部の成形時に同時にヒートシールして形成させてもよいし、収容部の形成とポート部の形成を別工程で行なうことも可能である。また、ポート部の形成は、収容部との一体成形用金型を使用する方法、ポート部を収容部にヒートシールする方法等が挙げられる。
【0046】
本発明の医療容器の周縁部のヒートシール強度は、容器の形状や用途によって異なるが、20~60N/15mmの強度範囲で設定することが好ましい。
【0047】
本発明の一態様である医療容器の用途としては、医療関係全般に用いることができ、例えばアミノ酸輸液とブドウ糖輸液等の液/液混合用バッグ、抗生物質とその溶解液等の固(粉体)/液混合用バッグ等が挙げられる。
【実施例0048】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
A.樹脂
実施例、比較例に用いた樹脂の諸性質は下記の方法により評価した。
【0049】
<密度>
密度は、JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した。
【0050】
<MFR>
MFR(メルトフローレート)は、JIS K6922-1に準拠して測定を行った。
【0051】
<分子量、分子量分布>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、GPCによって測定した。GPC装置(東ソー(株)製(商品名)HLC(登録商標)-8121GPC/HT)およびカラム(東ソー(株)製(商品名)TSKgel(登録商標) GMHhr-H(20)HT)を用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4-トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正した。なお、MwおよびMnは直鎖状ポリエチレン換算の値として求めた。
【0052】
<長鎖分岐>
炭素原子1000個当りの長鎖分岐数は、Bruker社製 AVANCE600核磁気共鳴装置を用いたカーボン核磁気共鳴(13C-NMR)法によって、重合体のカーボン核磁気共鳴(13C-NMR)スペクトルを測定し、下記算出方法より、重合体中の炭素原子数1000個当りの長鎖分岐の数を求めた。測定温度は130℃に設定し、溶媒は1,2-ジクロロベンゼン/1,2-ジクロロベンゼン-d4=75/25(容積比)の混合液を用いた。
【0053】
<長鎖分岐(LCB))の数の算出方法>
窓関数をガウシャンで処理したNMRスペクトルにおいて、5~50ppmにピークトップを有するすべてのピークのピーク面積の総和を1000として、炭素原子数7以上の分岐が結合したメチン炭素に由来するピークのピーク面積から長鎖分岐の数(炭素原子数7以上の分岐の数)を求めた。本測定条件においては、38.22~38.27ppm付近にピークトップを有するピークのピーク面積から長鎖分岐の数(炭素原子数7以上の分岐の数)を求めた。当該ピークのピーク面積は、高磁場側で隣接するピークとの谷のケミカルシフトから、低磁場側で隣接するピークとの谷のケミカルシフトまでの範囲でのシグナルの面積とした。なお、本測定条件においては、エチレン-1-オクテン共重合体の測定において、ヘキシル分岐が結合したメチン炭素に由来するピークのピークトップの位置が38.21ppmであった。
【0054】
実施例、比較例では、下記の方法により製造した樹脂および市販品を用いた。
(1)高密度ポリエチレン
A-1
[有機変性粘土の調製]
1リットルのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製、(商品名)エキネン(登録商標)F-3)300ml及び蒸留水300mlを入れ、濃塩酸15.0g及びジオレイルメチルアミン((C1835(CH)N、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、(商品名)リポミン(登録商標)M2O)63.7g(120mmol)を添加し、45℃に加熱した後、合成ヘクトライト(BYK社製、(商品名)ラポナイトRD)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mlで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより130gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
[重合触媒の調製]
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に[有機変性粘土の調製]で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド0.392g(1ミリモル)及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。室温まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、220mLのヘキサンにて2回洗浄後、ヘキサンを220ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.0wt%)。
[A-1の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を200mg(固形分24mg相当)加え、85℃に昇温後、分圧が0.90MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:300ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで190gのポリマーを得た。このポリマーのMFRは3.0g/10分であり、密度は945kg/mであった。A-1の基本特性評価結果を表1に示す。
【0055】
A-2
[有機変性粘土の調製]
A-1と同様の方法により有機変性粘土化合物を調製した。
[重合触媒の調製]
A-1と同様の方法により重合触媒を調製した。
[A-2の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を200mg(固形分24mg相当)加え、85℃に昇温後、分圧が0.90MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:450ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで205gのポリマーを得た。このポリマーのMFRは1.0g/10分であり、密度は952kg/mであった。A-2の基本特性評価結果を表1に示す。
【0056】
A-3
[有機変性粘土の調製]
A-1と同様の方法により有機変性粘土化合物を調製した。
[重合触媒の調製]
A-1と同様の方法により重合触媒を調製した。
[A-3の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を200mg(固形分24mg相当)加え、85℃に昇温後、分圧が0.90MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:800ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで205gのポリマーを得た。このポリマーのMFRは6.2g/10分であり、密度は956kg/mであった。A-3の基本特性評価結果を表1に示す。
【0057】
A-4
[有機変性粘土の調製]
A-1と同様の方法により有機変性粘土化合物を調製した。
[重合触媒の調製]
A-1と同様の方法により重合触媒を調製した。
[A-4の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を200mg(固形分24mg相当)加え、85℃に昇温後、分圧が0.90MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:1000ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで180gのポリマーを得た。このポリマーのMFRは5.5g/10分であり、密度は959kg/mであった。A-4の基本特性評価結果を表1に示す。
【0058】
A-5:下記市販品を用いた。
【0059】
東ソー(株)製、(商品名)ニポロンハード(登録商標) 1000(MFR=20g/10分、密度=964kg/m)A-5の基本特性評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
(2)直鎖状低密度ポリエチレン
B-1
[有機変性粘土の調製]
水1,500mlに37%塩酸30mlおよびN,N-ジメチル-ベヘニルアミンを106g加え、N,N-ジメチル-ベヘニルアンモニウム塩酸塩水溶液を調製した。平均粒径7.8μmのモンモリロナイト300g(クニミネ工業製、商品名クニピア(登録商標)Fをジェット粉砕機で粉砕することによって調整した)を上記塩酸塩水溶液に加え、6時間反応させた。反応終了後、反応溶液を濾過し、得られたケーキを6時間減圧乾燥し、変性粘土化合物370gを得た。
[重合触媒の調製]
窒素雰囲気化の20Lステンレス容器にヘプタン3.3L、トリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(20重量%希釈品)をアルミニウム原子当たり1.13mоl(0.9L)および上記で得られた変性粘土化合物50gを加えて1時間攪拌した。そこへジフェニルメチレン(4-フェニル-インデニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライドをジルコニウム原子当たり1.25mmоl加えて12時間攪拌した。得られた懸濁液に脂肪族系飽和炭化水素溶媒(出光石油化学製、商品名IPソルベント2835)5.8Lを加えることにより、触媒を調製した。(ジルコニウム濃度0.125mmоl/L)
[B-1の製造]
高温高圧重合用に装備された槽型反応器を用い、エチレン、1-ヘキセンおよび水素を連続的に反応器に圧入して、全圧を90MPa、エチレン濃度を53.9mоl%、1-ヘキセン濃度を46.0mоl%、水素濃度を0.12mоl%になるように設定した。そして反応器を1,500rpmで攪拌し、上記により得られた重合触媒を反応器の供給口より連続的に供給し、平均温度を200℃に保ち重合反応を行った。その結果得られたポリマーのMFRは3.0g/10分であり、密度は880kg/mであった。B-1の基本特性評価結果を表2に示す。
【0062】
B-2
[有機変性粘土の調製]
B-1と同様の方法により有機変性粘土化合物を調製した。
[重合触媒の調製]
B-1と同様の方法により重合触媒を調製した。
[B-2の製造]
高温高圧重合用に装備された槽型反応器を用い、エチレン、1-ヘキセンおよび水素を連続的に反応器に圧入して、全圧を90MPa、エチレン濃度を66.7mоl%、1-ヘキセン濃度を33.2mоl%、水素濃度を0.12mоl%になるように設定した。そして反応器を1,500rpmで攪拌し、上記により得られた重合触媒を反応器の供給口より連続的に供給し、平均温度を220℃に保ち重合反応を行った。その結果得られたポリマーのMFRは1.0g/10分であり、密度は900kg/mであった。B-2の基本特性評価結果を表2に示す。
【0063】
B-3
[有機変性粘土の調製]
B-1と同様の方法により有機変性粘土化合物を調製した。
[重合触媒の調製]
B-1と同様の方法により重合触媒を調製した。
[B-3の製造]
高温高圧重合用に装備された槽型反応器を用い、エチレン、1-ヘキセンおよび水素を連続的に反応器に圧入して、全圧を90MPa、エチレン濃度を82.6mоl%、1-ヘキセン濃度を17.2mоl%、水素濃度を0.23mоl%になるように設定した。そして反応器を1,500rpmで攪拌し、上記により得られた重合触媒を反応器の供給口より連続的に供給し、平均温度を220℃に保ち重合反応を行った。その結果得られたポリマーのMFRは2.0g/10分であり、密度は920kg/mであった。B-3の基本特性評価結果を表2に示す。
【0064】
B-4:下記市販品を用いた。
【0065】
東ソー(株)製、(商品名)ニポロン(登録商標)-Z ZF230(MFR=2.0g/10分、密度=920kg/m)B-4の基本特性評価結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
(S)-1:下記市販品を用いた。
【0068】
東ソー(株)製、(商品名)ペトロセン(登録商標) 173(MFR=0.3/10分、密度=924kg/m)(S)-1の基本特性評価結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
<樹脂組成物>
上記の高密度ポリエチレン(A)、直鎖状低密度ポリエチレン(B)および市販品樹脂(S)を実施例、比較例に記載の比率でドライブレンドを行った。
B.熱可塑性フィルムおよび医療容器
実施例、比較例に用いたフィルムおよび医療容器は下記の方法により製造し、滅菌処理を行った。
<熱可塑性フィルムおよび医療容器の製造>
三層水冷インフレーション成形機(プラコー製)を用いて、シリンダ温度180~230℃、水槽温度15℃、引取速度6m/分でフィルム幅135mm、フィルム厚み250μmの三層フィルムを成形した。中間層には東ソー(株)製ポリエチレン(商品名)二ポロン(登録商標)-P FY12(MFR=1.7g/10分、密度=916kg/m)を使用した。耐熱層には東ソー(株)製ポリエチレン(商品名)二ポロン-P FY13(MFR=1.0g/10分、密度=950kg/m)を使用した。各層の厚みは耐熱層層および弱ヒートシール層が20μm、中間層が210μmとなるように成形した。次いで、前記三層フィルムから長さ180mmのサンプルを切出し、中央部をヒートシールして易剥離シール部を形成した後、片方の室に超純水を75ml充填し、ヘッドスペースを20ml設けてヒートシールした。次に、もう一方の室にも超純水を75ml充填し、ヘッドスペースを20ml設けてヒートシールすることで、収容室2室を有する医療容器を作製した。
<滅菌処理>
前記医療容器を、蒸気滅菌装置((株)日阪製作所製)を用いて、温度121℃で20分間滅菌処理を行った。
【0071】
実施例、比較例に用いた樹脂組成物および積層フィルム、医療容器の諸性質は下記の方法により評価した。
<透明性>
滅菌処理後の医療容器から、幅10mm×長さ50mmの試験片を切出し、紫外可視分光光度計(型式V-730、日本分光(株)製)を用いて、純粋中で波長450nmにおける光線透過率を測定した。滅菌処理後に65%以上の光線透過率が維持される場合を透明性が良好な医療容器の目安とした。
<内面融着性(耐熱性)>
滅菌処理後の医療容器の密着部分から、幅15mm×長さ100mmの試験片を切出し、引張試験機(型式RTE-1210、(株)オリエンテック製)を用いて、剥離強度を測定した。滅菌処理後に3N/15mm未満の剥離強度が維持される場合を内面融着しない良好な医療容器の目安とした。
【0072】
○:滅菌処理後の密着部分の剥離強度が3N/15mm未満
×:滅菌処理後の密着部分の剥離強度が3N/15mm以上
<滅菌後のシール強度>
滅菌処理後の易剥離シール部を、シール方向に垂直に幅15mmの短冊形状に切り取り、100mm/分の速度で180°剥離を行い、剥離時に得られる最大値を剥離強度とした。(試験はn=5で行い、平均値を算出した。)
<シール温度幅>
シーラント層同士が対向した前記インフレーションフィルム(円筒状)を、シール圧力を2kg/cm2、シール時間を2秒とし、シール温度を1~5℃刻みで変化させてヒートシールしたサンプルを作製した。次いで、各サンプルを121℃で20分間滅菌処理した後、前記<シール強度>の項に記載した方法でシール強度を測定し、シール強度とシール温度の関係を示した。シール強度が1~4N/15mmのとなるシール温度幅を算出し、シール温度幅が5℃以上である場合を易剥離シール部のシール強度の変動が少なく、安定した弱シール強度が得られる目安とした。
【0073】
実施例1
表1および表2に示す樹脂を用いて、水冷インフレーション成形機により三層フィルムを成形し、成形安定性を評価した。尚、フィルムの厚みは250μmとした。次いで、得られたフィルムをヒートシールし、超純水を充填した医療容器を作製して、121℃で高圧蒸気滅菌を行い、滅菌後のフィルムの透明性、内面融着および前記<シール温度幅>の項に記載した方法でシール温度幅を算出した。結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
実施例2~5、比較例1~7
弱ヒートシール層に用いる樹脂を表1~表3に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして三層フィルムおよび医療容器を作製し、評価を行った。結果を表5に示す。
【0076】
【表5】