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  • 特開-ヨードフルオロカーボン類の分解方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012641
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ヨードフルオロカーボン類の分解方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/093 20060101AFI20250117BHJP
   C07C 53/18 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C07C51/093
C07C53/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115631
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】柴田 哲男
(72)【発明者】
【氏名】足立 浩明
(72)【発明者】
【氏名】香川 巧
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC26
4H006BA02
4H006BA29
4H006BB22
4H006BB31
4H006BC10
4H006BC33
4H006BC34
4H006BE10
4H006BM10
4H006BM71
4H006BS10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヨードフルオロカーボン類を穏和な条件下でフルオロ酢酸類及び/又は無機フッ化物へと分解する実用的な分解方法、すなわち経済的で安全かつ工業的な分解方法を提供する。
【解決手段】一般式(1);R-I(1)(式中、Rは1つ以上のヨウ素原子を含んでも良い炭素数2~20個の直鎖または分岐したフルオロアルキル基を示す)で表されるヨードフルオロカーボン類の1又は複数を、溶媒中、塩基と反応させることを特徴とするヨードフルオロカーボン類の分解方法を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
-I (1)
(一般式(1)中、Rは1つ以上のヨウ素原子を含んでも良い炭素数2~20個の直鎖または分岐したフルオロアルキル基を示す)
で表されるヨードフルオロカーボン類の1又は複数を、溶媒中、塩基と反応させることを特徴とするヨードフルオロカーボン類の分解方法。
【請求項2】
前記塩基が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド及びカリウムエトキシドからなる群から選択される少なくとも1つであり、式(1)で表されるヨードフルオロカーボン類の1又は複数に含有されるフッ素原子の総モル量に対して、1.0モル当量~100モル当量の塩基と反応させることを特徴とする、請求項1に記載のヨードフルオロカーボン類の分解方法。
【請求項3】
溶媒がジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種類の有機溶媒又はこれら有機溶媒と水からなる混合溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載のヨードフルオロカーボン類の分解方法。
【請求項4】
有機溶媒に対する水の混合比が質量比で100/0~10/90の範囲であることを特徴とする請求項3に記載のヨードフルオロカーボン類の分解方法。
【請求項5】
反応温度が10℃~150℃であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のヨードフルオロカーボン類の分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨードフルオロカーボン類を分解する方法に関する。ヨードフルオロカーボン類は、フルオロポリマー合成の連鎖移動剤、撥水撥油剤、乳化剤などの用途で使用される有用な化合物であるが、近年、環境問題、毒性問題の指摘があり、余剰物や製造時の副生物は、何らかの分解を行い、無害化することが要求されている。ヨードフルオロカーボン類は穏和な条件下でフルオロ酢酸類及び/又は無機フッ化物へと分解される。
【背景技術】
【0002】
一般的な、ヨードフルオロカーボン類の分解方法としては、高温で焼却する方法が知られているが、エネルギー消費が多く、コストがかかるという課題がある。また焼却の際に発生するフッ化水素やヨウ化水素は焼却炉の劣化を早めることも予想される。そのためエネルギー消費が少なく、かつ経済的なヨードフルオロカーボン類の分解方法が望まれる。
【0003】
また、ヨードフルオロカーボン類にエチレンを付加させた後、アルコール存在下でアルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属アルコキシドと反応させてオレフィン化を行い、熱処理することでフッ化水素としてフッ素源を回収し、ヨードフルオロカーボン類を分解処理する方法が報告されている(例えば特許文献1等)。この方法によれば、フッ素源の回収・再利用が可能という利点はあるが、エチレン付加、オレフィン化、熱処理の工程が必要であり、工程数が多いという課題がある。
【0004】
また、ヨードフルオロカーボン類をアルコール溶媒中でアルカリ金属水酸化物と反応させることによりハイドロパーフルオロカーボン類へと変換する方法が報告されている(例えば特許文献2)。この方法では、ヨウ素部位は分解できるが、パーフルオロアルカン部位は分解されずに残ってしまう。パーフルオロアルキル化合物は近年規制の動きが強まっており、ヨウ素部位だけでなくパーフルオロアルカン部位も分解する方法が望まれる。
【0005】
また、ヨードフルオロカーボン類にロンガリット-炭酸水素ナトリウム試薬を作用させることでパーフルオロアルキルカルボン酸へと誘導する方法(例えば非特許文献1)、およびパーフルオロアルキルカルボン酸を塩基存在下、ジメチルスルホキシド溶媒中で分解する方法(例えば非特許文献2)が報告されている。この2つの方法を用いれば、ヨードフルオロカーボン類をパーフルオロアルキルカルボン酸へと誘導した後、パーフルオロアルキルカルボン酸を塩基存在下、ジメチルスルホキシド溶媒中で分解する方法が考えられるが、工程数が多いという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6021720号公報。
【特許文献2】特許第2559312号公報。
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bing-Nan Huangら,J.Fluorine Chem.,1987,36,49-62。
【非特許文献2】Brittany Trangら,Science,2022,377,839-845。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ヨードフルオロカーボン類を、穏和な条件下でフルオロ酢酸類及び/又は無機フッ化物へと分解する実用的な分解方法、すなわち経済的で安全かつ工業的な分解方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ヨードフルオロカーボン類の分解方法について、鋭意検討した結果、ヨードフルオロカーボン類を溶媒及び塩基存在下で反応させることで、穏和な条件でフルオロ酢酸類及び/又は無機フッ化物へと分解する方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の発明に係る。
[1] 下記一般式(1)
-I (1)
(一般式(1)中、Rは1つ以上のヨウ素原子を含んでも良い炭素数2~20個の直鎖または分岐したフルオロアルキル基を示す)
で表されるヨードフルオロカーボン類の1又は複数を、溶媒中、塩基と反応させることを特徴とするヨードフルオロカーボン類の分解方法。
[2] 前記塩基が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド及びカリウムエトキシドからなる群から選択される少なくとも1つであり、式(1)で表されるヨードフルオロカーボン類の1又は複数に含有されるフッ素原子の総モル量に対して、1.0モル当量~100モル当量の塩基と反応させることを特徴とする、項[1]に記載のヨードフルオロカーボン類の分解方法。
[3] 前記溶媒がジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種類の有機溶媒又はこれら有機溶媒と水からなる混合溶媒であることを特徴とする、項[1]に記載のヨードフルオロカーボン類の分解方法。
[4] 有機溶媒に対する水の混合比が質量比で100/0~10/90の範囲であることを特徴とする、項[3]に記載のヨードフルオロカーボン類の分解方法。
[5] 前記の反応温度が10℃~150℃であることを特徴とする、項[1]~[4]に記載のヨードフルオロカーボン類の分解方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ヨードフルオロカーボン類を穏和な条件下でフルオロ酢酸類及び/又は無機フッ化物に分解可能な方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例9において、ヨードフルオロカーボン類が分解する過程であり、19F-NMRスペクトルの経時変化を示す図である。図の4つのスペクトルについて、上から下へ25℃で開始の時点(「0h」と表示)、25℃1h、25℃4h、25℃24hとなる時間経過を示し、横軸は19F-NMRスペクトルの化学シフト(ppm)を示し、縦軸は任意である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に適用可能な一般式(1)で表されるヨードフルオロカーボン類としては、具体的には例えば、1-ヨードペンタフルオロエタン、1-ヨードヘプタフルオロプロパン、1-ヨードノナフルオロブタン、1-ヨードウンデカフルオロペンタン、1-ヨードトリデカフルオロヘキサン、1-ヨードペンタデカフルオロヘプタン、1-ヨードヘプタデカフルオロオクタン、1-ヨードノナデカフルオロノナン、1-ヨードヘンイコサフルオロデカン、1-ヨードトリコサフルオロウンデカン、1-ヨードペンタコサフルオロドデカン、1-ヨードヘプタコサフルオロトリデカン、1-ヨードノナコサフルオロテトラデカン、1-ヨードヘントリアコンタフルオロペンタデカン、1-ヨードトリトリアコンタフルオロヘキサデカン、1-ヨードペンタトリアコンタフルオロヘプタデカン、1-ヨードヘプタトリアコンタフルオロオクタデカン、1-ヨードノナトリアコンタフルオロノナデカン、1-ヨードヘンテトラコンタフルオロイコサン、1,2-ジヨードテトラフルオロエタン、1,3-ジヨードヘキサフルオロプロパン、1,4-ジヨードオクタフルオロブタン、1,5-ジヨードデカフルオロペンタン、1,6-ジヨードドデカフルオロヘキサン、1,7-ジヨードテトラデカフルオロヘプタン、1,8-ジヨードヘキサデカフルオロオクタン、1,9-ジヨードオクタデカフルオロノナン、1,10-ジヨードイコサフルオロデカン、1,11-ジヨードドコサフルオロウンデカン、1,12-ジヨードテトラコサフルオロドデカン、1,13-ジヨードヘキサコサフルオロトリデカン、1,14-ジヨードオクタコサフルオロテトラデカン、1,15-ジヨードトリアコンタフルオロペンタデカン、1,16-ジヨードドトリアコンタフルオロヘキサデカン、1,17-ジヨードテトラトリアコタフルオロヘプタデカン、1,18-ジヨードヘキサトリアコタフルオロオクタデカン、1,19-ジヨードオクタトリアコタフルオロノナデカン、1,20-ジヨードテトラコンタフルオロイコサン、2-ヨードヘプタフルオロプロパン、1-ヨードパーフルオロ(2-メチルプロパン)、1-ヨードパーフルオロ(3-メチルブタン)、1-ヨードパーフルオロ(4-メチルペンタン)、1-ヨードパーフルオロ(5-メチルヘキサン)、1-ヨードパーフルオロ(6-メチルヘプタン)、1-ヨードパーフルオロ(7-メチルオクタン)、1-ヨードパーフルオロ(8-メチルノナン)1-ヨードパーフルオロ(9-メチルデカン)、1-ヨードパーフルオロ(10-メチルウンデカン)、1-ヨードパーフルオロ(11-メチルドデカン)、1-ヨードパーフルオロ(12-メチルトリデカン)、1-ヨードパーフルオロ(13-メチルテトラデカン)、1-ヨードパーフルオロ(14-メチルペンタデカン)、1-ヨードパーフルオロ(15-メチルヘキサデカン)、1-ヨードパーフルオロ(16-メチルヘプタデカン)、1-ヨードパーフルオロ(17-メチルオクタデカン)等が挙げられる。
【0014】
本発明に適用可能な塩基として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドなどを用いることができ、これらの内でも水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いることが好ましい。これらの塩基は単独で用いればよいが、複数を組み合わせて用いることもできる。
【0015】
塩基の使用量としては、式(1)で表されるヨードフルオロカーボン類の1又は複数に含有されるフッ素原子の総モル量に対して、1.0モル当量~100モル当量の塩基と反応させることでよい。すなわち、反応に具するヨードフルオロカーボン類の1又は複数の分子に含有されるフッ素原子の総モル量を対象試料のフッ素分析を算出して塩基の使用量を決定すればよい。ヨードフルオロカーボン類の1又は複数の分子に含有されるフッ素原子の総モル量を測定する方法としては、例えば内部標準物質を用いた19F-NMR分析が挙げられる。
【0016】
本発明に適用可能な溶媒として、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を使用することができる。また必要に応じて上記の有機溶媒と水からなる混合溶媒を使用できる。
その使用量は反応に具するヨードフルオロカーボン類の重量に対して、2重量倍量~200重量倍量使用するとよい。
本発明に適用可能な有機溶媒に対する水の混合比は質量比で100/0~10/90の範囲である。
【0017】
本発明に適用可能な反応温度は、反応に具するヨードフルオロカーボン類の種類、用いる溶剤の種類により異なるが、通常10℃~150℃の温度範囲である。
【実施例0018】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0019】
分析には下記機器を使用した。
19F-NMR(282MHz):バリアン製マーキュリー300(Varian Mercury 300)及びブルカー製アバンス500(Bruker Avance 500)。
イオンクロマトグラフィー装置:東ソー製イオンクロマトグラフIC-8100ST。
【0020】
実施例1
<1-ヨードヘプタデカフルオロオクタンの分解>
【化1】
【0021】
PTFE製の反応容器に1-ヨードヘプタデカフルオロオクタン(109mg、0.20mmol)、水酸化ナトリウム(240mg、6.0mmol、30equiv)を加えた。次にジメチルスルホキシド(2.0mL)、蒸留水(0.25mL)を加え、PTFE製のキャップを付けた。超音波破砕機に約30秒間当てて可能な限り溶解させて、80℃で24時間攪拌した。30分間室温で攪拌させた後にシリンジ(バレル:ポリプロピレン製)で反応溶液0.05mLをガラス製NMRチューブに取り、ジメチルスルホキシド-dを0.6mL加えて19F-NMRを測定したところ、1-ヨードヘプタデカフルオロオクタンのピークは消失していた。NMRチューブ内の測定溶液を反応容器に戻した後に、蒸留水を加えて沈殿を完全に溶解させた。ジエチルエーテルを用いて3回抽出を行った。合わせた有機相からジエチルエーテルを留去した後、ジメチルスルホキシド-dを用いて19F-NMRを測定した。水層を凍結乾燥した後、析出した固体の一部をサンプル管に移し、イオンクロマトグラフィー装置(イオンクロマトグラフIC-8100ST)によるフッ化物イオンの定量を行った。さらに水層から析出した固体の残りをDOで完全に溶解させて、19F-NMRを測定したところ、フッ素アニオンのピーク(-119.2ppm,s)、およびトリフルオロ酢酸ナトリウムのピーク(-72.1ppm,s)が観測された。
【0022】
<イオンクロマトグラフィー測定方法>
実施例1の反応液の水層を凍結乾燥して得られた固体を5.0mg秤量して、ポリプロピレン製50mLメスフラスコに入れ、蒸留水を加えて50mLの試料溶液とした。ピペットマン(GILSON L P1000L)を用いて試料溶液を500μL採取し、ポリプロピレン製10mLメスフラスコに加え、20倍希釈試料溶液を10mL調製した。シリンジ(バレル:ポリプロピレン製)で20倍希釈試料溶液を1.0mL取り、イオンクロマトグラフィー装置(イオンクロマトグラフIC-8100ST)でフッ化物イオンの定量を行った。測定は、カラム(TSKgel(登録商標) SuperIC-Anion HS)、溶離液(TSKgel(登録商標) eluent Conc.IC-A HS-10(75mmol/L、NaHCO+8.0mmol/L NaCO)を蒸留水で10倍希釈)、アニオン用サプレッサーゲル(TSKgel(登録商標) suppress IC-A)を用い、自動交換型ゲルサプレッサー方式、オーブン温度40℃、流量1.5mL/min、ループ容量30μLで測定を行なった。フッ素アニオンの保持時間は約1.75minであり、検量線からフッ素アニオン量を定量した結果、フッ素回収率は77%であった。
【0023】
実施例2~12
<各種ヨードフルオロカーボンの分解>
実施例1と同じ反応装置を用い、1-ヨードヘプタデカフルオロオクタンに替えて、表1中に示したヨードフルオロカーボンを用い、表1中に示す反応温度で24時間反応を実施した。反応液の後処理後、水層を凍結乾燥して得られた固体についてイオンクロマトグラフィーによるフッ化物イオンの定量測定を行い、フッ素回収率を算出した結果を表1に示した。
また、実施例9における19F-NMRスペクトルの経時変化を図1に示す。図1が示すようにヨードフルオロカーボン類が分解し、フルオロ酢酸類へと分解することが分かる。
【0024】
【表1】
【0025】
実施例13~18
<各種ヨードフルオロカーボンの分解>
実施例1と同じ反応装置を用い、1-ヨードヘプタデカフルオロオクタンに替えて、表2中に示したヨードフルオロカーボンを用い、表2中に示す反応温度で24時間反応を実施した。反応液の後処理後、水層を凍結乾燥して得られた固体についてイオンクロマトグラフィーによるフッ化物イオンの定量測定を行い、フッ素回収率を算出した結果を表2に示した。さらに水層から析出した固体の残りをDOで完全に溶解させて、19F-NMRを測定し、フッ素アニオンのピーク(-119.2ppm,s)、およびトリフルオロ酢酸ナトリウムのピーク(-72.1ppm,s)の積分値より、トリフルオロ酢酸ナトリウム由来のフッ素回収率を算出した結果を表2に示した。
【0026】
【表2】
【0027】
実施例19~26
<各種ヨードフルオロカーボンの分解>
実施例1と同じ反応装置を用い、1-ヨードヘプタデカフルオロオクタンに替えて、表2中に示したヨードフルオロカーボンを用い、表3に示す反応温度及び反応時間に変更して実施した。反応液の後処理後、水層を凍結乾燥して得られた固体についてイオンクロマトグラフィーによるフッ化物イオンの定量測定を行い、フッ素回収率を算出した結果を表3に示した。さらに水層から析出した固体の残りをDOで完全に溶解させて、19F-NMRを測定し、フッ素アニオンのピーク(-119.2 ppm,s)、およびトリフルオロ酢酸ナトリウムのピーク(-72.1ppm,s)の積分値より、トリフルオロ酢酸ナトリウム由来のフッ素回収率を算出した結果を表3に示した。
【0028】
【表3】
【0029】
以上の実施例22及び実施例26から、ヨードフルオロカーボン類が分解することにより発生したトリフルオロ酢酸ナトリウムは検出限界以下まで分解できることが分かる。
【0030】
実施例27
<1,4-ジヨードオクタフルオロブタン蒸留残査の分解>
テトラフルオロエチレンとヨウ素を用いたテロメリゼーションで得られた1,4-ジヨードオクタフルオロブタンを主成分とする混合物より蒸留により1,4-ジヨードオクタフルオロブタンを分離した後、釜残として残存する高沸点物を19F-NMRで分析したところ、下記表4に示す組成であった。
【0031】
【表4】
【0032】
マグネット撹拌子を備えた100mLのナス型フラスコに、水酸化ナトリウム(3.58g、89.5mmol)、ジメチルスルホキシド(26.6mL)及び水(3.6mL)を仕込み、室温下、30分攪拌した後、次いでこれに1,4-ジヨードオクタフルオロブタン蒸留残査(1.18g、フッ素原子の総モル量としては24.18mmol)を添加し、油浴上で加熱し、60℃で7日間反応を行った。反応後、室温まで冷却し、水200mLで希釈し、均一溶液とした後、2,2,2-トリフルオロエタノールを内部標準として19F-NMRで定量したところ、ジヨードオパーフルオロアルカン混合物を基準として、フッ化ナトリウム(19.82mmol、回収率82.0%)及びトリフルオロ酢酸(0.60mmol、回収率2.5%)に分解していた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、ヨードフルオロカーボン類を穏和な条件でフルオロ酢酸類及び/又は無機フッ化物へと分解する経済的で安全かつ工業的な分解方法が提供できる。
図1