(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012696
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】基板固定装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20250117BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20250117BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20250117BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
C23C14/50 A
C23C16/458
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115734
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】寺島 悠真
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 駿
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 渓太
(72)【発明者】
【氏名】山田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】内藤 悠太
【テーマコード(参考)】
4K029
4K030
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
4K029AA06
4K029AA09
4K029AA25
4K029BD01
4K029DA08
4K029JA01
4K029JA06
4K030CA04
4K030CA06
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4K030CA17
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4K030KA23
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4K030LA15
4K030LA18
5F004BB22
5F004BB25
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5F131AA02
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5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
5F131EB87
(57)【要約】
【課題】接着層が劣化しにくく、かつベースプレート側に熱が逃げにくい構造の基板固定装置を提供する。
【解決手段】本基板固定装置は、ベースプレートと、前記ベースプレート上に設けられた接着層と、前記接着層上に設けられた断熱層と、前記断熱層上に設けられた静電チャックと、を有し前記静電チャックは、基体と、前記基体に内蔵された静電電極と、を備え、前記断熱層は、前記基体及び前記接着層より熱伝導率が低い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレート上に設けられた接着層と、
前記接着層上に設けられた断熱層と、
前記断熱層上に設けられた静電チャックと、を有し
前記静電チャックは、基体と、前記基体に内蔵された静電電極と、を備え、
前記断熱層は、前記基体及び前記接着層より熱伝導率が低い、基板固定装置。
【請求項2】
前記接着層の厚さは、前記断熱層の厚さ以上である、請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項3】
前記基体に内蔵された発熱体を有する、請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項4】
前記基体と前記断熱層との間に設けられた絶縁樹脂層と、
前記絶縁樹脂層に内蔵された発熱体と、を有し、
前記断熱層は、前記絶縁樹脂層より熱伝導率が低い、請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項5】
前記接着層は、第1接着層上に第2接着層が積層された積層構造である、請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項6】
前記接着層及び前記断熱層は、前記ベースプレートの外周部を環状に露出するように配置され、
前記ベースプレートの外周部の環状に露出する領域上には、前記接着層及び前記断熱層の外周面を被覆するシール材が配置されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSI等の半導体装置を製造する際に使用される成膜装置(例えば、CVD装置やPVD装置等)やプラズマエッチング装置は、ウェハを真空の処理室内に精度良く保持するためのステージを有する。
【0003】
このようなステージとして、例えば、ベースプレートに接着層を介して搭載された静電チャックにより、吸着対象物であるウェハを吸着保持する基板固定装置が提案されている。基板固定装置の一例として、ウェハの温度調節をするための発熱体を設けた構造のものが挙げられる。基板固定装置において、ベースプレート上に断熱層が設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構造の基板固定装置において、接着層が劣化しないようにすると共に、ベースプレート側に熱が逃げにくくすることが要求されている。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、接着層が劣化しにくく、かつベースプレート側に熱が逃げにくい構造の基板固定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本基板固定装置は、ベースプレートと、前記ベースプレート上に設けられた接着層と、前記接着層上に設けられた断熱層と、前記断熱層上に設けられた静電チャックと、を有し前記静電チャックは、基体と、前記基体に内蔵された静電電極と、を備え、前記断熱層は、前記基体及び前記接着層より熱伝導率が低い。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、接着層が劣化しにくく、かつベースプレート側に熱が逃げにくい構造の基板固定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
【
図2】第1実施形態の変形例1に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
【
図3】第2実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〈第1実施形態〉
[基板固定装置の構造]
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
図1を参照すると、基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、接着層20と、断熱層30と、静電チャック50とを有している。
【0012】
ベースプレート10は、静電チャック50を搭載するための部材である。ベースプレート10の厚さは、例えば、20mm以上50mm以下程度とすることができる。ベースプレート10は、例えば、アルミニウム、銅、チタン等の金属から形成することができる。これらの中でも、安価で加工しやすいアルミニウムを用いることが好ましい。
【0013】
ベースプレート10は、プラズマを制御するための電極等として利用することもできる。ベースプレート10に所定の高周波電力を給電することで、発生したプラズマ状態にあるイオン等を静電チャック50上に吸着されたウェハに衝突させるためのエネルギーを制御し、エッチング処理を効果的に行うことができる。
【0014】
ベースプレート10の内部に、流路15が設けられてもよい。流路15は、一端に冷却媒体導入部15aを備え、他端に冷却媒体排出部15bを備えている。流路15は、基板固定装置1の外部に設けられた冷却媒体制御装置(図示せず)に接続される。冷却媒体制御装置(図示せず)は、冷却媒体導入部15aから流路15に冷却媒体を導入し、冷却媒体排出部15bから冷却媒体を排出する。流路15に冷却媒体を循環させベースプレート10を冷却することで、静電チャック50上に吸着されたウェハを冷却することができる。冷却媒体としては、例えば、水やガルデンを用いることができる。ベースプレート10には、流路15の他に、静電チャック50上に吸着されたウェハを冷却する不活性ガスを導入するガス路等を設けてもよい。
【0015】
静電チャック50は、接着層20及び断熱層30を介して、ベースプレート10上に搭載されている。接着層20及び断熱層30は、ベースプレート10上に設けられ、静電チャック50は断熱層30上に設けられている。接着層20及び断熱層30については、後述する。
【0016】
静電チャック50は、吸着対象物であるウェハを吸着保持する部分である。静電チャック50の平面形状は、例えば、円形とすることができる。静電チャック50の吸着対象物であるウェハの直径は、例えば、8、12、又は18インチ程度とすることができる。静電チャック50は、少なくとも、基体51と、静電電極52とを有している。
図1の例では、静電チャック50は、さらに発熱体53を有している。静電チャック50は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。但し、静電チャック50は、クーロン力型静電チャックであってもよい。
【0017】
基体51は誘電体であり、基体51としては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスを用いることができる。基体51の厚さは、例えば、1~10mm程度、基体51の比誘電率(1kHz)は、例えば、9~10程度とすることができる。
【0018】
静電電極52は、薄膜電極であり、基体51に内蔵されている。静電電極52は、基板固定装置1の外部に設けられた電源に接続され、電源から所定の電圧が印加されると、ウェハとの間に静電気による吸着力を発生させる。これにより、静電チャック50の基体51の載置面51a上にウェハを吸着保持することができる。吸着保持力は、静電電極52に印加される電圧が高いほど強くなる。静電電極52は、単極形状でも、双極形状でも構わない。静電電極52の材料としては、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等を用いることができる。
【0019】
発熱体53は、基体51において、静電電極52よりもベースプレート10に近い側に内蔵されている。発熱体53は、基板固定装置1の外部から電圧を印加することで発熱し、基体51の載置面51aが所定の温度となるように加熱する。発熱体53は、例えば、基体51の載置面51aの温度を250℃以上400℃以下程度まで加熱することができる。発熱体53の材料としては、例えば、タングステン、モリブデン等を用いることができる。発熱体53は、例えば、同心円状のパターンとすることができる。
【0020】
接着層20は、ベースプレート10上に設けられている。接着層20は、例えば、単層構造である。接着層20の熱伝導率は、2W/mK以上とすることが好ましい。接着層20の材料としては、例えば、シリコーン系接着剤を用いることができる。接着層20の厚さは、断熱層30の厚さ以上であることが好ましい。接着層20の厚さは、例えば、0.1mm以上3.0mm以下とすることができる。
【0021】
接着層20は、積層構造であってもよい。
図1の例では、接着層20は、第1接着層21上に第2接着層22が積層された積層構造である。例えば、第2接着層22を熱伝導率が高い接着剤で構成し、第1接着層21を弾性率が低い接着剤で構成することで、金属製のベースプレート10とセラミックス製の基体51の熱膨張差から生じるストレスを低減させる効果が得られる。第1接着層21の材料としては、例えば、シリコーン系接着剤やエポキシ系接着剤を用いることができる。第2接着層22の材料としては、例えば、シリコーン系接着剤やエポキシ系接着剤を用いることができる。
【0022】
断熱層30は、接着層20上に設けられている。断熱層30は、静電チャック50を構成する基体51及び接着層20より熱伝導率が低い。断熱層30の厚さは、例えば、0.1mm以上2.0mm以下とすることができる。接着層20よりも静電チャック50側に断熱層30を設けることにより、発熱体53の発した熱が接着層20に伝わることを抑制できる。これにより、接着層20の劣化や分解による接着層20の重量減少が起こりにくくなり、基体51がベースプレート10から剥がれることを抑制できる。
【0023】
断熱層30の厚さと断熱層30の熱伝導率は、断熱層30の熱抵抗の増加を考慮して決定することができる。詳細は、後述のシミュレーションにより示すが、例えば、基体51の載置面51a付近の温度が250℃のときに、接着層20にかかる温度を180℃以下に抑えたい場合、断熱層30の厚さが1mmであれば、熱伝導率は1W/mK以下とすることができる。また、断熱層30の厚さが0.1mmであれば、熱伝導率は0.1W/mK以下とすることができる。
【0024】
なお、仮に断熱層30を設けないとすると、基体51の載置面51a付近の温度が250℃以上400℃以下程度の高温になると、接着層20も同程度の高温になる。そのため、接着層20の重量減少が起こり、接着層20が破壊されて基体51がベースプレート10から剥がれるそれが高くなる。
【0025】
接着層20は、TGDTA測定から得られる重量減少率が250℃で0以上0.1%以下となることが好ましい。言い換えれば、断熱層30の材料、厚さ、及び熱伝導率は、接着層20のTGDTA測定から得られる重量減少率が250℃で0以上0.1%以下となるように選定することが好ましい。接着層20が破壊されにくくなるため、基体51がベースプレート10から剥がれることを抑制できる。TGDTA測定とは、熱重量と示差熱を同時に分析する手法であり、試料の温度を変化させ、それに伴う重量変化と吸熱発熱反応を同時に測定することができる。
【0026】
断熱層30の材料としては、例えば、フィラーを含有したシリコーン系やエポキシ系等の絶縁性樹脂を用いることができる。材料の組成やフィラーの種類や含有量を調整することで、上記のような熱伝導率を実現することができる。
【0027】
また、断熱層30を設けることにより、発熱体53の発した熱がベースプレート10側に逃げることを抑制できる。また、接着層20を厚くすることにより、発熱体53の発した熱がベースプレート10側に逃げることを一層抑制できる。
【0028】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、シール材を備えた基板固定装置の例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部分についての説明は省略する場合がある。
【0029】
図2は、第1実施形態の変形例1に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
図2に示すように、基板固定装置1Aは、シール材60を有している点が、基板固定装置1と相違する。
【0030】
基板固定装置1Aにおいて、接着層20及び断熱層30は、ベースプレート10の外周部を環状に露出するように配置されている。そして、ベースプレート10の外周部の環状に露出する領域上には、接着層20及び断熱層30の外周面を被覆するシール材60が配置されている。シール材60の上面は基体51の下面と密着し、シール材60の下面はベースプレート10の上面と密着する。シール材60としては、例えば、Oリング等を用いることができる。シール材60として、接着層20及び断熱層30よりもプラズマ耐性の高い樹脂を用いてもよい。
【0031】
このように、接着層20及び断熱層30が基板固定装置1Aの外部に露出しないようにシール材60を配置することにより、プラズマエッチング等の際に、接着層20及び断熱層30をプラズマから気密に隔離することができる。そのため、接着層20及び断熱層30の劣化を抑制できる。
【0032】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、発熱体を静電チャックの下側に配置した基板固定装置の例を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部分についての説明は省略する場合がある。
【0033】
図3は、第2実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
図3に示すように、基板固定装置2は、発熱部40を有している点が、基板固定装置1と主に相違する。
【0034】
基板固定装置2において、静電チャック50Aは、静電チャック50と異なり、発熱体を内蔵していない。また、基板固定装置2において、静電チャック50Aの下側に発熱部40が配置されている。
【0035】
発熱部40は、静電チャック50Aの基体51と断熱層30との間に設けられた絶縁樹脂層41と、絶縁樹脂層41に内蔵された発熱体42とを有している。発熱部40において、発熱体42の周囲は、絶縁樹脂層41に被覆され、外部から保護されている。
【0036】
絶縁樹脂層41としては、例えば、高熱伝導率及び高耐熱性を有するエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等を用いることができる。絶縁樹脂層41の熱伝導率は3W/mK以上とすることが好ましい。絶縁樹脂層41にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、絶縁樹脂層41の熱伝導率を向上させることができる。又、絶縁樹脂層41のガラス転移温度(Tg)は250℃以上とすることが好ましい。又、絶縁樹脂層41の厚さは100~150μm程度とすることが好ましく、絶縁樹脂層41の厚さばらつきは±10%以下とすることが好ましい。
【0037】
発熱体42は、基板固定装置2の外部から電圧を印加することで発熱し、基体51の載置面51aが所定の温度となるように加熱する。発熱体42は、例えば、基体51の載置面51aの温度を250℃以上400℃以下程度まで加熱することができる。発熱体42の材料としては、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、コンスタンタン(Cu/Ni/Mn/Feの合金)、ゼラニン(Cu/Mn/Snの合金)、マンガニン(Cu/Mn/Niの合金)等を用いることができる。発熱体42は、例えば、同心円状のパターンとすることができる。
【0038】
なお、発熱体42と絶縁樹脂層41との高温下での密着性を向上するため、発熱体42の少なくとも一つの面(上下面の一方又は双方)が粗化されていることが好ましい。もちろん、発熱体42の上下面の両方が粗化されていてもよい。この場合、発熱体42の上面と下面で異なる粗化方法を用いてもよい。粗化の方法は特に限定されないが、エッチングによる方法、カップリング剤系の表面改質技術を用いる方法、波長355nm以下のUV-YAGレーザによるドット加工を用いる方法等を例示することができる。
【0039】
断熱層30は、基体51、接着層20、及び絶縁樹脂層41より熱伝導率が低い。これにより、第1実施形態と同様に、発熱体42の発した熱が接着層20に伝わることを抑制できる。また、発熱体42の発した熱がベースプレート10側に逃げることを抑制できる。また、接着層20を厚くすることにより、発熱体42の発した熱がベースプレート10側に逃げることを一層抑制できる。
【0040】
〈シミュレーション〉
基体51の載置面51aの温度が250℃、流路15内の冷却媒体の冷却温度が70℃となるように基板固定装置1を動作させた際に、接着層20の上部の最高温度が180℃以下になるようにするための、断熱層30の条件についてシミュレーションを行った。
【0041】
具体的には、断熱層30を設けない場合と、断熱層30の厚さを1.0mmとし、断熱層30の熱伝導率を2W/mK、1W/mK、0.5W/mKとした場合について、シミュレーションを行った。シミュレーションでは、接着層20の最高温度、及び断熱層30の熱抵抗の増加を算出した。また、参考のため、基体51の載置面51aの温度を250℃とする際に必要な出力を求めた。
【0042】
【表1】
結果を
図4及び表1に示す。なお、
図4は、断熱層の条件を変えたときの、静電チャックの断面温度、断熱層の温度分布、及び接着層の温度分布を示している。
図4及び表1に示すように、シミュレーションにより、断熱層30がない場合、接着層20の上部の最高温度が230℃となることが分かった。また、断熱層30の厚さが1.0mmで熱伝導率が1W/mKのときに、接着層20の上部の最高温度が180℃となり、断熱層30がない場合よりも50℃低くなることがわかった。また、このとき、断熱層30の熱抵抗の増加は、0.001m
2K/Wであった。
【0043】
なお、ここでは、断熱層30の厚さが1.0mmの場合についてシミュレーションを行ったが、算出された断熱層30の熱抵抗の増加(0.001m2K/W)を用いることで、断熱層30の厚さが1.0mm以外の場合についても、接着層20の上部の最高温度を180℃とするのに必要な熱伝導率を求めることができる。例えば、断熱層30の厚さが0.1mmであれば、0.1[mm]/0.001[m2K/W]=0.1[W/mK]となり、断熱層30の熱伝導率が0.1[W/mK]のときに接着層20の上部の最高温度が180℃となる。
【0044】
このように、断熱層30の厚さと断熱層30の熱伝導率は、断熱層30の熱抵抗の増加が0.001m2K/W以下となるように決定することができる。これにより、基体51の載置面51a付近の温度が250℃になっても、接着層20にかかる温度を180℃以下に抑えることができる。これにより、接着層20の劣化や分解による接着層20の重量減少が起こりにくくなり、基体51がベースプレート10から剥がれることを抑制できる。
【0045】
また、基体51の載置面51a付近の温度を400℃等とする場合にも、上記と同様な方法により、断熱層30に必要な厚さと熱伝導率を求めることができる。
【0046】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0047】
例えば、本発明に係る基板固定装置の吸着対象物としては、半導体ウェハ(シリコンウエハ等)以外に、液晶パネル等の製造工程で使用されるガラス基板等を例示することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,1A,2 基板固定装置
10 ベースプレート
15 流路
15a 冷却媒体導入部
15b 冷却媒体排出部
20 接着層
21 第1接着層
22 第2接着層
30 断熱層
40 発熱部
41 絶縁樹脂層
42,53 発熱体
50,50A 静電チャック
51 基体
51a 載置面
52 静電電極
60 シール材