(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012722
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】支持基体分離方法、及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
H01L21/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115783
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋文
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 和英
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴史
(72)【発明者】
【氏名】中村 有希
(57)【要約】
【課題】基板に支持基体を貼り合わせた積層体を使用し、光の照射により支持基体を積層体から分離可能であり、かつ、支持基体と基板との密着性を高められる支持基体分離方法を提供する。
【解決手段】本発明は、光を透過する支持基体11、分離層12、接着層14及び基板16がこの順に積み重ねられた積層体10から、支持基体11を分離する支持基体分離方法であって、支持基体11側から層周縁部12Bに光を照射することで、層周縁部12Bを変質させることにより、積層体10から支持基体11を分離する工程を含む。分離層12の少なくとも一方の面は、平面視で、接着力が異なる層中央部12Aと層周縁部12Bとからなる。層周縁部12Bは、層中央部12Aに比べて接着力が高く、かつ、光の照射により変質する領域である。支持基体11と接着層14とは、層周縁部12Bを介して貼り合わされている。
【選択図】
図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する支持基体、分離層、接着層及び基板がこの順に積み重ねられた積層体から、前記支持基体を分離する支持基体分離方法であって、
前記分離層の少なくとも一方の面は、平面視で、前記支持基体又は前記接着層に対する接着力が異なる、層中央部と層周縁部とからなり、
前記層周縁部は、前記層中央部に比べて前記接着力が高く、かつ、光の照射により変質する領域であり、
前記支持基体と前記接着層とは、前記層周縁部を介して貼り合わされており、
前記支持基体側から前記層周縁部に光を照射することで、前記層周縁部を変質させることにより、前記積層体から前記支持基体を分離する工程を含む、支持基体分離方法。
【請求項2】
前記分離層において、前記層周縁部が、前記層中央部の外周に面一に配置されている、請求項1に記載の支持基体分離方法。
【請求項3】
下記[接着強度の測定方法(i)]により測定される、前記層中央部と前記接着層との界面のピール強度が2.5N以下である、請求項2に記載の支持基体分離方法。
[接着強度の測定方法(i)]
(1)サイズ10cm×10cmのガラス基板上に、前記層中央部を形成する組成物を用いて製膜する。
(2)製膜した膜上に、接着層形成用組成物を、膜厚50μmになるように塗布し、90℃,160℃,220℃の温度で各4分間加熱することにより接着層を形成する。
(3)前記接着層を、10mm幅の帯状にカットする。
(4)ガラス基板と帯状接着層との間に挟まれた角度(ピール角度)を、常に90度に維持しつつ、ガラス基板に対して帯状接着層を、200mm/秒の速度で垂直方向に引っ張ることにより、ガラス基板から帯状接着層を剥離する。このときの接着強度(N)を測定し、前記層中央部と前記接着層との界面のピール強度とする。
【請求項4】
前記分離層は、第1分離層と第2分離層とが積層し、かつ、前記第2分離層が前記第1分離層の側面を覆う層であり、
前記第1分離層が、前記層中央部を構成し、
前記第1分離層の側面を覆う前記第2分離層部分が、前記層周縁部を構成し、
前記第2分離層は、前記第1分離層に比べて前記接着力が高く、かつ、光の照射により変質する層であり、
前記第1分離層は、前記第2分離層と前記支持基体との間に配置されており、
前記支持基体と前記接着層とは、前記第1分離層の側面を覆う前記第2分離層部分を介して貼り合わされている、請求項1に記載の支持基体分離方法。
【請求項5】
下記[接着強度の測定方法(ii)]により測定される、前記第1分離層と前記支持基体との界面のピール強度が2.5N以下である、請求項4に記載の支持基体分離方法。
[接着強度の測定方法(ii)]
(1)サイズ10cm×10cmの前記支持基体上に、前記第1分離層を形成する組成物を用いて製膜し、前記第1分離層を形成する。
(2)前記第1分離層上に、接着層形成用組成物を、膜厚50μmになるように塗布し、90℃,160℃,220℃の温度で各4分間加熱することにより接着層を形成する。
(3)前記接着層を、10mm幅の帯状にカットする。
(4)支持基体と帯状接着層との間に挟まれた角度(ピール角度)を、常に90度に維持しつつ、ガラス基板に対して帯状接着層を、200mm/秒の速度で垂直方向に引っ張ることにより、前記支持基体から前記第1分離層が剥離する。このときの接着強度(N)を測定し、前記支持基体と前記第1分離層との界面のピール強度とする。
【請求項6】
前記分離層は、第3分離層と第4分離層とが、平面視で前記第4分離層の外周に前記第3分離層が露出するように積層した層であり、
前記第4分離層が、前記層中央部を構成し、
平面視で前記第4分離層の外周に露出した前記第3分離層部分が、前記層周縁部を構成し、
前記第3分離層は、前記第4分離層に比べて前記接着力が高く、かつ、光の照射により変質する層であり、
前記第4分離層は、前記第3分離層と前記接着層との間に配置されており、
前記支持基体と前記接着層とは、平面視で前記第4分離層の外周に露出した前記第3分離層部分を介して貼り合わされている、請求項1に記載の支持基体分離方法。
【請求項7】
下記[接着強度の測定方法(iii)]により測定される、前記第4分離層と前記接着層との界面のピール強度が2.5N以下である、請求項6に記載の支持基体分離方法。
[接着強度の測定方法(iii)]
(1)サイズ10cm×10cmのガラス基板上に、前記第4分離層を形成する組成物を用いて製膜する。
(2)製膜した膜上に、接着層形成用組成物を、膜厚50μmになるように塗布し、90℃,160℃,220℃の温度で各4分間加熱することにより接着層を形成する。
(3)前記接着層を、10mm幅の帯状にカットする。
(4)ガラス基板と帯状接着層との間に挟まれた角度(ピール角度)を、常に90度に維持しつつ、ガラス基板に対して帯状接着層を、200mm/秒の速度で垂直方向に引っ張ることにより、ガラス基板から帯状接着層を剥離する。このときの接着強度(N)を測定し、前記層中央部と前記接着層との界面のピール強度とする。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の支持基体分離方法を使用することにより、前記積層体から前記支持基体を分離する分離工程と、
前記分離工程の後、前記基板に付着する前記接着層を除去する除去工程と、
を有する、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持基体分離方法、及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子を含む半導体パッケージ(電子部品)においては、よりいっそうの高集積化、薄型化及び小型化等が要求されている。
半導体パッケージの小型化を図るためには、組み込まれる素子における基板の厚さを薄くすることが重要となる。しかしながら、基板の厚さを薄くすると、その強度が低下し、半導体パッケージ製造の際に基板の破損を生じやすくなる。
【0003】
これに対し、基板に支持基体を貼り合わせた積層体が採用されている。最終的には、この積層体から支持基体を分離して、電子部品が製造される。
例えば、従来、基板と、光を透過する支持基体とを、光を照射することにより変質する分離層を少なくとも介して積層してなる積層体から、前記支持基体を分離する方法が提案されている。
【0004】
図5Aから
図5Cは、積層体の製造方法の一例を示す図である。
図5Dは、積層体から支持基体を分離する操作を説明する図である。
まず、光を透過する支持基体51上に、光を照射することにより変質する性質を有する分離層52を一様に形成する(
図5A)。
次いで、分離層52上に、接着層54及び基板56をこの順に積層して、支持基体51と基板56とを、分離層52及び接着層54を介して貼り合わせる(
図5B)。
次いで、基板56を加工処理して積層体50を得る。ここでは、基板56全体を覆うように封止材層58が設けられている(
図5C)。
次いで、
図5Cに示す状態の積層体50を、上下反転させて、支持基体51側から分離層52の全面に放射光(矢印)を照射する(
図5D)。これにより、分離層52が変質して分解するため、加工処理後の基板56と支持基体51とが分離する。
【0005】
例えば、特許文献1には、積層体から支持基体を分離するときに、基板及び支持基体を破損することなく短時間で首尾よく分離する方法等が開示されている。
この特許文献1に記載された方法等は、一様に形成された前記分離層における周縁部分の少なくとも一部の領域に、前記支持体を介して光を照射することで、光が照射された領域の分離層を変質させる光照射工程と、前記支持体における前記分離層が変質した領域に対向する面の裏面から、当該支持体を保持して持ち上げることで、変質した分離層を介して積層されている前記基板と前記支持体との間に隙間を形成し、当該隙間から前記積層体の内部に向かって流体を噴射することで、前記積層体から前記支持体を分離する分離工程と、を包含していることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された方法等においては、基板と支持体との密着が悪く、加工の途中で基板から支持体が剥離しやすいという問題がある。
一方で、前記問題に対し、分離層を形成する材料を選択して、基板と支持体との密着性を高めようとすると、分離工程で、積層体から支持体が分離しにくくなってしまう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基板に支持基体を貼り合わせた積層体を使用し、光の照射により支持基体を積層体から分離可能であり、かつ、支持基体と基板との密着性を高められる支持基体分離方法、及びこの方法を使用した電子部品の製造方法を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0010】
本発明の第1の態様は、光を透過する支持基体、分離層、接着層及び基板がこの順に積み重ねられた積層体から、前記支持基体を分離する支持基体分離方法であって、前記分離層の少なくとも一方の面は、平面視で、前記支持基体又は前記接着層に対する接着力が異なる、層中央部と層周縁部とからなり、前記層周縁部は、前記層中央部に比べて前記接着力が高く、かつ、光の照射により変質する領域であり、前記支持基体と前記接着層とは、前記層周縁部を介して貼り合わされており、前記支持基体側から前記層周縁部に光を照射することで、前記層周縁部を変質させることにより、前記積層体から前記支持基体を分離する工程を含む、支持基体分離方法である。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る支持基体分離方法を使用することにより、前記積層体から前記支持基体を分離する分離工程と、前記分離工程の後、前記基板に付着する前記接着層を除去する除去工程と、を有する、電子部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板に支持基体を貼り合わせた積層体を使用し、光の照射により支持基体を積層体から分離可能であり、かつ、支持基体と基板との密着性を高められる支持基体分離方法、及びこの方法を使用した電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1C】第1実施形態で準備される積層体の一例を示す図である。
【
図1D】積層体から支持基体を分離する操作を説明する図である。
【
図2C】支持基体側から見た、分離層の平面図である。
【
図2D】第2実施形態で準備される積層体の一例を示す図である。
【
図2E】積層体から支持基体を分離する操作を説明する図である。
【
図3B】分離層側の支持基体の上方から見た、分離層の平面図である。
【
図3C】第3実施形態で準備される積層体の一例を示す図である。
【
図3D】積層体から支持基体を分離する操作を説明する図である。
【
図4A】半導体パッケージ(電子部品)の製造方法の一例を示し、分離工程を説明する図である。
【
図4B】半導体パッケージ(電子部品)の製造方法の一例を示し、除去工程を説明する図である。
【
図5D】積層体から支持基体を分離する操作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、積層体において支持基体と接着層との間に配置される分離層に特徴があり、当該分離層以外の構成については公知の技術を適用できる。
【0015】
(第1の態様:支持基体分離方法)
本発明の第1の態様に係る支持基体分離方法は、光を透過する支持基体、分離層、接着層及び基板がこの順に積み重ねられた積層体から、前記支持基体を分離する方法である。
前記分離層の少なくとも一方の面は、平面視で、前記支持基体又は前記接着層に対する接着力が異なる、層中央部と層周縁部とからなる。前記層周縁部は、前記層中央部に比べて前記接着力が高く、かつ、光の照射により変質する領域である。
前記支持基体と前記接着層とは、前記層周縁部を介して貼り合わされている。
本態様に係る支持基体分離方法は、前記支持基体側から前記層周縁部に光を照射することで、前記層周縁部を変質させることにより、前記積層体から前記支持基体を分離する工程を含む。
【0016】
・積層体について
本態様に係る支持基体分離方法において、積層体は、支持基体、分離層、接着層及び基板がこの順に積み重ねられたものである。
前記支持基体と前記接着層とは、前記分離層における前記層周縁部を介して貼り合わされている。
【0017】
・・支持基体
支持基体は、光を透過する特性を有する。支持基体は、基板を支持する部材であり、分離層を介して基板に貼り合わされる。そのため、支持基体としては、封止体の薄化、基板の搬送、基板への実装等の際に、基板の破損又は変形を防ぐために必要な強度を有していることが好ましい。また、支持基体は、分離層を変質させることができる波長の光を透過するものが好ましい。
支持基体の材料としては、例えば、ガラス、シリコン、アクリル系樹脂等が用いられる。支持基体の形状としては、例えば矩形、円形等が挙げられるが、これに限定されない。
また、支持基体としては、さらなる高密度集積化や生産効率の向上のために、円形である支持基体のサイズを大型化したもの、上面視における形状が四角形である大型パネルを用いることもできる。
【0018】
・・分離層
分離層の少なくとも一方の面は、平面視で、層中央部と層周縁部とからなる。
層中央部と層周縁部とは、互いに、前記支持基体又は前記接着層に対する接着力が異なる。前記層周縁部は、前記層中央部に比べて前記接着力が高く、かつ、光の照射により変質する領域である。
【0019】
ここでいう「層周縁部」とは、分離層の外周端部から、分離層の中央に向かって、0.5mm以上、8mm以下の範囲である領域、好ましくは1mm以上、5mm以下の範囲である領域をいう。
【0020】
分離層は、支持基体を透過して照射される光を吸収することによって好適に変質する。
なお、分離層は、本質的な特性を損なわない範囲で、光を吸収する構造を有していない材料が配合された層であってもよいが、光反応性、分離性の観点から、光を吸収する材料のみから形成されていることが好ましい。
分離層が「変質する」とは、分離層が外力を受けて破壊され得る状態、又は分離層と接する層との接着力が低下した状態になる現象をいう。分離層は、光を吸収することによって脆くなり、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。分離層の変質は、吸収した光のエネルギーによる分解、立体配置の変化又は官能基の解離等を生じることで起こる。
【0021】
分離層の厚さは、例えば、0.05μm以上、50μm以下の範囲内であることが好ましく、0.3μm以上、10μm以下の範囲内であることがより好ましい。
分離層の厚さが0.05μm以上、50μm以下の範囲内であれば、短時間の光の照射及び低エネルギーの光の照射によって、分離層に所望の変質を生じさせることができる。また、分離層の厚さは、生産性の観点から1μm以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0022】
分離層の具体的な形態については後述する。
【0023】
・・接着層
接着層は、支持基体と基板とを貼り合わせるための層であり、接着層形成用組成物を用いて形成することができる。
前記接着層形成用組成物は、例えば熱可塑性樹脂、希釈剤、及び、添加剤等のその他成分を含有しているものが挙げられる。この熱可塑性樹脂としては、接着力を発現するものであればよく、炭化水素樹脂(好ましくはシクロオレフィンポリマー等)、アクリル-スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー樹脂、ポリサルホン系樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。希釈剤としては、有機溶剤成分が挙げられる。その他成分としては、接着層の性能を改良するための付加的樹脂、硬化性モノマー、光重合開始剤、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤、熱重合禁止剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0024】
接着層厚さは、例えば、0.1μm以上、100μm以下の範囲内であることが好ましく、1μm以上、50μm以下の範囲内であることがより好ましい。
接着層の厚さが0.1μm以上、100μm以下の範囲内であれば、支持基体と基板とをより良好に貼り合わせることができる。また、接着層の厚さが1μm以上であることにより、基板を支持基体上に充分に固定することができ、接着層の厚さが50μm以下であることにより、後工程において接着層を容易に除去することができる。
【0025】
・・基板
基板は、支持基体に支持された状態で、薄化、実装等のプロセスに供される。基板には、例えば集積回路や金属バンプ等の構造物が実装される。
基板としては、典型的には、シリコンウェーハ基板が用いられるが、これに限定されず、セラミックス基板、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等を用いてもよい。
【0026】
・・その他層
本態様に係る支持基体分離方法において、積層体は、支持基体、分離層、接着層及び基板に加え、これら以外の層(その他層)をさらに備えていてもよい。
【0027】
積層体は、支持基体と分離層との間に、他の層がさらに形成されていてもよい。この場合、他の層は、光を透過する材料から構成されていればよい。これによれば、分離層への光の入射を妨げることなく、積層体に好ましい性質等を付与する層を適宜追加できる。分離層を構成している材料の種類によって、用い得る光の波長が異なる。よって、他の層を構成する材料は、全ての波長の光を透過させる必要はなく、分離層を構成する材料を変質させ得る波長の光(例えば、532nm)を透過する材料から適宜選択し得る。
【0028】
また、積層体は、分離層及び接着層を介して支持基体に貼り合わされた基板を、封止材層により封止した封止体でもよい。封止材層は、例えば、エポキシ系樹脂又はシリコーン系樹脂を含有する組成物を用いて形成することができる。ここでの封止体は、個々の基板が封止されているものではなく、接着層上の基板全部が覆うように封止されているものが好ましい。
【0029】
また、積層体は、前記封止材層による封止の後、封止材層を、基板の一部が露出するように研削したことにより露出した基板上に、再配線層が形成されたものでもよい。再配線層は、例えば、誘電体(酸化シリコン(SiOx)、感光性エポキシ等の感光性樹脂など)に、導電体(アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、金、銀等の金属及び銀-錫合金等の合金)によって配線が形成されたものであり得るが、これに限定されない。
このような支持基体と、分離層と、接着層と、基板と、基板を覆う封止材層と、再配線層と、がこの順に積層されてなる積層体は、基板に設けられた端子がチップエリア外に広がる再配線層に実装される、ファンアウト型技術に基づく過程において作製される積層体である。
【0030】
第1の態様に係る支持基体分離方法について、以下に示す第1~3実施形態が好適に挙げられる。各実施形態を、図面を参照しながら説明する。
なお、図面では、各構成要素を見やすくするため、構成要素を模式的に示している場合があり、構成要素によっては寸法の縮尺を異ならせて示すこともある。
【0031】
<第1実施形態>
第1実施形態の支持基体分離方法は、積層体を準備する工程(1-1)と、積層体から支持基体を分離する工程(1-2)と、を含む方法である。
図1Aは、分離層の形成方法を説明する図である。
図1Bは、分離層の平面図である。
図1Cは、第1実施形態で準備される積層体の一例を示す図である。
図1Dは、積層体から支持基体を分離する操作を説明する図である。
第1実施形態では、積層体を構成する分離層を、層周縁部が層中央部の外周に面一に配置されている形態としている。
【0032】
[積層体を準備する工程(1-1)]
積層体は、一例として、分離層を形成した支持基体と、基板とを、分離層及び接着層を介して積層することにより得ることができる。
【0033】
図1A及び
図1Bでは、支持基体11上に、層中央部12Aと層周縁部12Bとからなる分離層12が形成されている。層周縁部12Bは、層中央部12Aの外周に配置されており、層中央部12Aと層周縁部12Bとは面一に形成されている。
層周縁部12Bは、分離層12の外周端部から、分離層12の中央に向かって、長さ(L1)までの範囲である領域となる。この長さ(L1)は、0.5mm以上、8mm以下であり、好ましくは1mm以上、5mm以下である。
【0034】
層中央部12Aと層周縁部12Bとは、支持基体11又は接着層14に対する接着力が異なる。層周縁部12Bは、層中央部12Aに比べて前記接着力が高く、かつ、光の照射により変質する領域である。
分離層12は、接着力が異なる材料を用いる方法、硬化条件を変える方法などを使用することにより形成できる。
例えば、分離層12は、層中央部形成用組成物を塗布して、層中央部12Aを形成した後、層中央部12Aの外周に、層周縁部形成用組成物を塗布して硬化させることにより形成することができる。分離層を構成する材料(組成物)については後述する。
あるいは、分離層12は、同一の組成物を用いて、層中央部12Aを形成する際の硬化温度を相対的に高く設定し、層周縁部12Bを形成する際の硬化温度を相対的に低く設定することにより形成することができる。
【0035】
次いで、支持基体11上に形成した分離層12上に、接着層形成用組成物を塗布して加熱することにより接着層14を形成し、その後、支持基体11と基板16とを貼り合わせる。支持基体11と基板16とを貼り合わせる方法は、例えば、接着層14上の所定位置に基板16を配置し、真空下で加熱しつつ、ダイボンダー等によって圧着することにより行う。
図1Cでは、分離層12が形成された支持基体11と、基板16とが、分離層12及び接着層14とを介して積層され、支持基体11、分離層12、接着層14、基板16の順に積み重なった積層体10が得られている。支持基体11と接着層14とは、層周縁部12Bを介して貼り合わされている。
さらに、積層体10においては、接着層14上の基板16を覆うように封止材層18が設けられている。
【0036】
[積層体から支持基体を分離する工程(1-2)]
工程(1-2)では、支持基体側から前記層周縁部に光を照射することで、前記層周縁部を変質させることにより、前記積層体から前記支持基体を分離する。
【0037】
図1Dに示すように、本工程(1-2)では、支持基体11を介して、分離層12の層周縁部12Bに光(矢印)を照射することで、層周縁部12Bのみを変質させる。
【0038】
層周縁部12Bを変質させ得る波長としては、例えば600nm以下の範囲(例えば、532nm)が挙げられる。
照射する光の種類及び波長は、支持基体11の透過性、及び層周縁部12Bの材料に応じて適宜選択すればよく、例えば、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVO4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He-Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、非レーザ光を用いることができる。
【0039】
レーザ光を照射する場合、レーザ光照射条件の一例として、以下の条件を挙げることができる。
レーザ光の平均出力値は、1.0W以上、5.0W以下が好ましく、3.0W以上、4.0W以下がより好ましい。レーザ光の繰り返し周波数は、20kHz以上、60kHz以下が好ましく、30kHz以上、50kHz以下がより好ましい。レーザ光の走査速度は、100mm/s以上、10000mm/s以下が好ましい。
【0040】
次いで、層周縁部12Bに光(矢印)を照射して層周縁部12Bを変質させた後、積層体10から支持基体11を分離する。
積層体10から支持基体11を分離する操作は、支持基体11と基板16とが互いに離れる方向に力を加える方法等が挙げられる。例えば、支持基体11側又は基板16側の一方をステージに固定した状態で、他方をベローズパッド等の吸着パッドを備えた分離プレートにより真空吸着保持しつつ持ち上げることにより、支持基体11と基板16とを分離することができる。その際、支持基体11と基板16との間に形成される隙間に、流体を噴射して、その噴射された流体の圧力により、支持基体11と基板16とを分離するようにしてもよい。
【0041】
噴射する流体としては、例えば、気体、液体、及び、気体と液体とを含む混合流体が挙げられ、気体を用いることが好ましい。気体には、例えば、空気、ドライエアー、窒素及びアルゴンからなる群より選択される少なくとも1つが挙げられる。
【0042】
以上説明した第1実施形態の支持基体分離方法によれば、分離層12において、層周縁部12Bが層中央部12Aに比べて接着力が高くされているため、支持基体11と基板16との密着性を、層中央部12Aのみからなる分離層を備える場合よりも高められる。
【0043】
第1実施形態で使用される積層体10において、層中央部12Aと接着層14との界面のピール強度は、3.0N以下であることが好ましく、2.5N以下であることがより好ましい。界面のピール強度が、前記の好ましい範囲であれば、光照射による積層体10からの支持基体11の分離性がより良好となる。
【0044】
層中央部12Aと接着層14との界面のピール強度は、下記[接着強度の測定方法(i)]により測定される。
【0045】
[接着強度の測定方法(i)]
(1)サイズ10cm×10cmのガラス基板上に、層中央部12Aを形成する組成物を用いて製膜する。
(2)製膜した膜上に、接着層形成用組成物(*)を、膜厚50μmになるように塗布し、90℃,160℃,220℃の温度で各4分間加熱することにより接着層を形成する。
(*)ここでの接着層形成用組成物としては、スチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物を含むエラストマー接着剤を使用する。
(3)前記接着層を、10mm幅の帯状にカットする。
(4)ガラス基板と帯状接着層との間に挟まれた角度(ピール角度)を、常に90度に維持しつつ、ガラス基板に対して帯状接着層を、200mm/秒の速度で垂直方向に引っ張ることにより、ガラス基板から帯状接着層を剥離する。このときの接着強度(N)を測定し、層中央部12Aと接着層14との界面のピール強度とする。
【0046】
また、第1実施形態の支持基体分離方法によれば、分離層12において、層周縁部12Bは、光の照射により変質する領域であるため、光の照射により支持基体11を積層体10から容易に分離可能である。
さらに、第1実施形態の支持基体分離方法においては、光を照射する範囲が、分離層12の外周の領域(層周縁部12B)のみであることから、光を照射する範囲が分離層12全面の場合に比べて、基板16及び支持基体11を破損することなく、支持基体11を積層体10から短時間で首尾よく分離することができる。
【0047】
<第2実施形態>
第2実施形態の支持基体分離方法は、積層体を準備する工程(2-1)と、積層体から支持基体を分離する工程(2-2)と、を含む方法である。
図2Aは、分離層の形成方法を説明する図である。
図2Bは、分離層の形成方法を説明する図である。
図2Cは、支持基体側から見た、分離層の平面図である。
図2Dは、第2実施形態で準備される積層体の一例を示す図である。
図2Eは、積層体から支持基体を分離する操作を説明する図である。
第2実施形態では、積層体を構成する分離層を、第1分離層と第2分離層とが積層し、かつ、前記第2分離層が前記第1分離層の側面を覆う層とされている形態としている。
【0048】
[積層体を準備する工程(2-1)]
積層体は、一例として、分離層を形成した支持基体と、基板とを、分離層及び接着層を介して積層することにより得ることができる。
【0049】
図2Aでは、支持基体21上に、層中央部22Aを構成する第1分離層22aが形成されている。
図2Bでは、支持基体21上に、第1分離層22aと第2分離層22bとが積層した分離層22が形成されている。第1分離層22aは、第2分離層22bと支持基体21との間に配置されている。
第2分離層22bは、第1分離層22aの全体を覆うように形成されており、第1分離層22aの上面及び側面が、第2分離層22bにより覆われている。
支持基体21側から見た平面視で、第1分離層22aが、層中央部22Aを構成し、第1分離層22aの側面を覆う第2分離層部分22b1が、層周縁部22Bを構成している。
層周縁部22B(第2分離層部分22b1)は、分離層22の外周端部から、分離層22の中央に向かって、長さ(L2)までの範囲である領域となる。この長さ(L2)は、0.5mm以上、8mm以下であり、好ましくは1mm以上、5mm以下である。
【0050】
層中央部22Aと層周縁部22Bとは、支持基体21又は接着層24に対する接着力が異なる。層周縁部22Bは、層中央部22Aに比べて前記接着力が高く、かつ、光の照射により変質する領域である。
第1分離層22a及び第2分離層22bは、互いに接着力が異なる材料を用いる方法、硬化条件を変える方法などを使用することにより形成できる。
例えば、分離層22は、第1分離層形成用組成物を塗布して、第1分離層22a(層中央部22A)を形成した後、第1分離層22aの全体を覆うように、第2分離層形成用組成物を塗布して硬化させることにより形成することができる。各分離層を構成する材料(組成物)については後述する。
あるいは、分離層22は、同一の組成物を用いて、第1分離層22a(層中央部22A)を形成する際の硬化温度を相対的に低く設定し、第2分離層22bを形成する際の硬化温度を相対的に高く設定することにより形成することができる。
【0051】
次いで、支持基体21上に形成した分離層22上に、接着層形成用組成物を塗布して加熱することにより接着層24を形成し、その後、支持基体21と基板26とを貼り合わせる。支持基体21と基板26とを貼り合わせる方法は、例えば、接着層24上の所定位置に基板26を配置し、真空下で加熱しつつ、ダイボンダー等によって圧着することにより行う。
図2Dでは、分離層22が形成された支持基体21と、基板26とが、分離層22及び接着層24とを介して積層され、支持基体21、分離層22、接着層24、基板26の順に積み重なった積層体20が得られている。支持基体21と接着層24とは、層周縁部22B(第2分離層部分22b1)を介して貼り合わされている。
さらに、積層体20においては、接着層24上の基板26を覆うように封止材層28が設けられている。
【0052】
[積層体から支持基体を分離する工程(2-2)]
工程(2-2)では、支持基体側から前記層周縁部に光を照射することで、前記層周縁部を変質させることにより、前記積層体から前記支持基体を分離する。
【0053】
図2Eに示すように、本工程(2-2)では、支持基体21を介して、分離層22の層周縁部22B(第2分離層部分22b1)に光(矢印)を照射することで、層周縁部22Bのみを変質させる。
【0054】
層周縁部22Bを変質させ得る波長としては、例えば600nm以下の範囲(例えば、532nm)が挙げられる。
照射する光の種類及び波長、レーザ光照射条件についての説明は、第1実施形態の支持基体分離方法の中での説明と同様である。
【0055】
次いで、層周縁部22Bに光(矢印)を照射して層周縁部22Bを変質させた後、積層体20から支持基体21を分離する。
積層体20から支持基体21を分離する操作についての説明は、第1実施形態の支持基体分離方法の中での説明(積層体10から支持基体11を分離する操作)と同様である。
【0056】
以上説明した第2実施形態の支持基体分離方法によれば、分離層22において、層周縁部22B(第2分離層部分22b1)が層中央部22A(第1分離層22a)に比べて接着力が高くされているため、支持基体21と基板26との密着性を、層中央部22Aのみからなる分離層を備える場合よりも高められる。
【0057】
第2実施形態で使用される積層体20において、第1分離層22aと支持基体21との界面のピール強度は、2.5N以下であることが好ましく、1.0N以下であることがより好ましい。界面のピール強度が、前記の好ましい範囲であれば、光照射による積層体20からの支持基体21の分離性がより良好となる。
【0058】
第1分離層22aと支持基体21との界面のピール強度は、下記[接着強度の測定方法(ii)]により測定される。
【0059】
[接着強度の測定方法(ii)]
(1)サイズ10cm×10cmの支持基体21上に、第1分離層22aを形成する組成物を用いて製膜する。
(2)製膜した膜上に、接着層形成用組成物(*)を、膜厚50μmになるように塗布し、90℃,160℃,220℃の温度で各4分間加熱することにより接着層を形成する。
(*)ここでの接着層形成用組成物としては、スチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物を含むエラストマー接着剤を使用する。
(3)前記接着層を、10mm幅の帯状にカットする。
(4)支持基体21と帯状接着層との間に挟まれた角度(ピール角度)を、常に90度に維持しつつ、支持基体21に対して帯状接着層を、200mm/秒の速度で垂直方向に引っ張ることにより、支持基体21から第1分離層22aが剥離する。このときの接着強度(N)を測定し、支持基体21と第1分離層22aとの界面のピール強度とする。
【0060】
また、第2実施形態の支持基体分離方法によれば、分離層22において、層周縁部22B(第2分離層部分22b1)は、光の照射により変質する領域であるため、光の照射により支持基体21を積層体20から容易に分離可能である。
さらに、第2実施形態の支持基体分離方法においては、光を照射する範囲が、分離層22の外周の領域(層周縁部22B)のみであることから、光を照射する範囲が分離層22全面の場合に比べて、基板26及び支持基体21を破損することなく、支持基体21を積層体20から短時間で首尾よく分離することができる。
【0061】
また、第2実施形態の支持基体分離方法において、分離層22は、第1分離層22aの全体を覆うように、第1分離層22aと第2分離層22bとが積層している。このような分離層22を形成する際、第1分離層形成用組成物と第2分離層形成用組成物とを重ねて塗布すればよく、第2実施形態によれば、接着力が異なる層中央部22Aと層周縁部22Bとからなる分離層22を容易に形成することができる。
【0062】
<第3実施形態>
第3実施形態の支持基体分離方法は、積層体を準備する工程(3-1)と、積層体から支持基体を分離する工程(3-2)と、を含む方法である。
図3Aは、分離層の形成方法を説明する図である。
図3Bは、分離層側の支持基体の上方から見た、分離層の平面図である。
図3Cは、第3実施形態で準備される積層体の一例を示す図である。
図3Dは、積層体から支持基体を分離する操作を説明する図である。
第3実施形態では、積層体を構成する分離層を、第3分離層と第4分離層とが、平面視で前記第4分離層の外周に前記第3分離層が露出するように積層した層である形態としている。
【0063】
[積層体を準備する工程(3-1)]
積層体は、一例として、分離層を形成した支持基体と、基板とを、分離層及び接着層を介して積層することにより得ることができる。
【0064】
図3A及び
図3Bでは、支持基体31上に、第3分離層32aと第4分離層32bとがこの順に積層した分離層32が形成されている。
第3分離層32aと第4分離層32bとは、支持基体31の上方から見た平面視で、第4分離層32bの外周に第3分離層32aが露出するように積層している。
分離層32においては、第4分離層32bが、層中央部32Aを構成し、第4分離層32bの外周に露出する第3分離層部分32a1が、層周縁部32Bを構成している。
層周縁部32B(第3分離層部分32a1)は、分離層32の外周端部から、分離層32の中央に向かって、長さ(L3)までの範囲である領域となる。この長さ(L3)は、0.5mm以上、8mm以下であり、好ましくは1mm以上、5mm以下である。
【0065】
層中央部32Aと層周縁部32Bとは、支持基体31又は接着層34に対する接着力が異なる。層周縁部32B(第3分離層部分32a1)は、層中央部32A(第4分離層32b)に比べて前記接着力が高く、かつ、光の照射により変質する領域である。
第3分離層32a及び第4分離層32bは、互いに接着力が異なる材料を用いる方法、硬化条件を変える方法などを使用することにより形成できる。
例えば、分離層32は、第3分離層形成用組成物を塗布して、第3分離層32aを形成した後、第3分離層32a上に、第4分離層形成用組成物を塗布して第4分離層32bを形成し、第4分離層32bの外周に第3分離層32aが露出するように積層させることにより形成することができる。各分離層を構成する材料(組成物)については後述する。
あるいは、分離層32は、同一の組成物を用いて、第3分離層32aを形成する際の硬化温度を相対的に低く設定し、第4分離層32bを形成する際の硬化温度を相対的に高く設定することにより形成することができる。
【0066】
次いで、支持基体31上に形成した分離層32上に、接着層形成用組成物を塗布して加熱することにより接着層34を形成し、その後、支持基体31と基板36とを貼り合わせる。支持基体31と基板36とを貼り合わせる方法は、例えば、接着層34上の所定位置に基板36を配置し、真空下で加熱しつつ、ダイボンダー等によって圧着することにより行う。
図3Cでは、分離層32が形成された支持基体31と、基板36とが、分離層32及び接着層34とを介して積層され、支持基体31、分離層32、接着層34、基板36の順に積み重なった積層体30が得られている。第4分離層32b(層中央部32A)は、第3分離層32aと接着層34との間に配置されている。支持基体31と接着層34とは、層周縁部32B(第3分離層部分32a1)を介して貼り合わされている。
さらに、積層体30においては、接着層34上の基板36を覆うように封止材層38が設けられている。
【0067】
[積層体から支持基体を分離する工程(3-2)]
工程(3-2)では、支持基体側から前記層周縁部に光を照射することで、前記層周縁部を変質させることにより、前記積層体から前記支持基体を分離する。
【0068】
図3Dに示すように、本工程(3-2)では、支持基体31を介して、分離層32の層周縁部32B(第3分離層部分32a1)に光(矢印)を照射することで、層周縁部32Bのみを変質させる。
【0069】
層周縁部32Bを変質させ得る波長としては、例えば600nm以下の範囲(例えば、532nm)が挙げられる。
照射する光の種類及び波長、レーザ光照射条件についての説明は、第1実施形態の支持基体分離方法の中での説明と同様である。
【0070】
次いで、層周縁部32Bに光(矢印)を照射して層周縁部32Bを変質させた後、積層体30から支持基体31を分離する。
積層体30から支持基体31を分離する操作についての説明は、第1実施形態の支持基体分離方法の中での説明(積層体10から支持基体11を分離する操作)と同様である。
【0071】
以上説明した第3実施形態の支持基体分離方法によれば、分離層32において、層周縁部32B(第3分離層部分32a1)が層中央部32A(第4分離層32b)に比べて接着力が高くされているため、支持基体31と基板36との密着性を、層中央部32Aのみからなる分離層を備える場合よりも高められる。
【0072】
第3実施形態で使用される積層体30において、第4分離層32bと接着層34との界面のピール強度は、2.5N以下であることが好ましく、1.0N以下であることがより好ましい。界面のピール強度が、前記の好ましい範囲であれば、光照射による積層体30からの支持基体31の分離性がより良好となる。
【0073】
第4分離層32bと接着層34との界面のピール強度は、下記[接着強度の測定方法(iii)]により測定される。
【0074】
[接着強度の測定方法(iii)]
(1)サイズ10cm×10cmのガラス基板上に、第4分離層32bを形成する組成物を用いて製膜する。
(2)製膜した膜上に、接着層形成用組成物(*)を、膜厚50μmになるように塗布し、90℃,160℃,220℃の温度で各4分間加熱することにより接着層を形成する。
(*)ここでの接着層形成用組成物としては、スチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物を含むエラストマー接着剤を使用する。
(3)前記接着層を、10mm幅の帯状にカットする。
(4)ガラス基板と帯状接着層との間に挟まれた角度(ピール角度)を、常に90度に維持しつつ、ガラス基板に対して帯状接着層を、200mm/秒の速度で垂直方向に引っ張ることにより、ガラス基板から帯状接着層を剥離する。このときの接着強度(N)を測定し、第4分離層32bと接着層34との界面のピール強度とする。
【0075】
また、第3実施形態の支持基体分離方法によれば、分離層32において、層周縁部32B(第3分離層部分32a1)は、光の照射により変質する領域であるため、光の照射により支持基体31を積層体30から容易に分離可能である。
さらに、第3実施形態の支持基体分離方法においては、光を照射する範囲が、分離層32の外周の領域(層周縁部32B)のみであることから、光を照射する範囲が分離層32全面の場合に比べて、基板36及び支持基体31を破損することなく、支持基体31を積層体30から短時間で首尾よく分離することができる。
【0076】
また、第3実施形態の支持基体分離方法において、分離層32は、第3分離層32a上に第4分離層32bが積層している。このような分離層32を形成する際、第4分離層32bの外周に第3分離層が露出するように、第3分離層32aと第4分離層32bとを積層すればよく、第3実施形態によれば、接着力が異なる層中央部32Aと層周縁部32Bとからなる分離層32を容易に形成することができる。
【0077】
<その他実施形態>
本態様に係る支持基体分離方法は、上述した第1~3実施形態に限定されず、その他実施形態でもよい。例えば、第3実施形態における第4分離層32bを、離型層に置き換えた積層体を使用する実施形態としてもよい。
第3実施形態で、第4分離層32bを離型層に置き換えた場合、この離型層が、分離層32における層中央部32Aを構成する。
【0078】
離型層を形成する材料としては、シリコーン系樹脂を使用した離型剤、フッ素系樹脂を使用した離型剤、アクリル系樹脂を使用した離型剤、高級脂肪酸を使用した離型剤を含み、その他の成分として熱硬化性樹脂、架橋剤、硬化剤等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、従来から公知の硬化架橋できる被膜形成性樹脂を用いることができ、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂等であって、水酸基、カルボキシ基、アルコキシシリル基等の架橋性官能基を有している熱硬化性樹脂が挙げられる。
架橋剤としては、加熱により前記熱硬化性樹脂の架橋性官能基と反応して架橋硬化を生じるものであれば特に制限なく使用することができる。このような架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、金属キレート化合物、エポキシ樹脂等を挙げることができ、なかでもメラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、金属キレート化合物、ベンゾグアナミン樹脂が好適に用いられる。
硬化剤としては、例えば、架橋剤がポリイソシアネート化合物の場合、ウレタン硬化触媒として公知のもの(有機錫化合物、アミン化合物、有機酸など)が挙げられる。
【0079】
以上説明したその他実施形態の支持基体分離方法によれば、分離層において、層周縁部が層中央部(離型層)に比べて接着力が高くされているため、支持基体と基板との密着性を、層中央部(離型層)のみからなる分離層を備える場合よりも高められる。
加えて、第3実施形態における第4分離層32bを、離型層に置き換えることにより、離型剤の添加量を調整することにより、支持基体と基板との密着性を容易にコントロールできる。
【0080】
第3実施形態における第4分離層32bを、離型層に置き換えた積層体において、離型層と接着層34との界面のピール強度は、2.5N以下であることが好ましく、1.0N以下であることがより好ましい。界面のピール強度が、前記の好ましい範囲であれば、光照射による積層体からの支持基体31の分離性がより良好となる。
【0081】
離型層と接着層34との界面のピール強度は、下記[接着強度の測定方法(iv)]により測定される。
【0082】
[接着強度の測定方法(iv)]
(1)12インチのガラス基板上に、第3分離層32aを形成する組成物を用いて製膜する。次いで、第3分離層32a上に、離型層を形成する組成物を用いて膜厚2μmとなるように製膜する。
(2)製膜した膜上に、接着層形成用組成物(*)を、膜厚50μmになるように塗布し、90℃,160℃,220℃の温度で各4分間加熱することにより接着層を形成する。
(*)ここでの接着層形成用組成物としては、スチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物を含むエラストマー接着剤を使用する。
(3)前記接着層を、10mm幅の帯状にカットする。
(4)ガラス基板と帯状接着層との間に挟まれた角度(ピール角度)を、常に90度に維持しつつ、ガラス基板に対して帯状接着層を、200mm/秒の速度で垂直方向に引っ張ることにより、ガラス基板から帯状接着層を剥離する。このときの接着強度(N)を測定し、離型層と接着層34との界面のピール強度とする。
【0083】
≪分離層を構成する材料(組成物)≫
分離層を構成する材料(組成物)は、光を透過する支持基体と、基板との間に、分離層を備えた積層体において、前記支持基体側からの光の照射により変質して、前記積層体から前記支持基体を分離可能とする前記分離層を形成するためのものである。
分離層を構成する材料(組成物)の一実施形態は、樹脂成分(P)を含有する。
以下、分離層を構成する材料(組成物)を、「分離層形成用組成物」ともいうことがある。
【0084】
・樹脂成分(P)
樹脂成分(P)(以下「(P)成分」ともいう。)は、分離層形成用組成物の樹脂成分として、従来公知のものを特に制限なく用いることができる。(P)成分としては、焼成により、光吸収性を有する構造に変化するものが好ましい。(P)成分は、例えば、本実施形態の分離層形成用組成物を焼成(例えば、200~300℃)したときに、波長532nmの光に対して吸収性を有する構造に変化するものが好ましい。
【0085】
・・(P1)成分
(P)成分としては、下記一般式(p1)で表される繰り返し単位を有する樹脂成分(以下、「(P1)成分」ともいう)が挙げられる。
【0086】
【化1】
[式中、L
P1は、2価の連結基を表す。R
P1は有機基を表す。]
【0087】
前記式(p1)中、LP1における2価の連結基は、芳香環を含んでいてもよく、複数種類の芳香環を含んでいてもよいし、芳香環と脂肪環とが縮合した環構造を含んでいてもよい。
LP1における2価の連結基が芳香環を含む場合、この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は、5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
2価の連結基が含む芳香環は、1つでもよいし、2つ以上でもよく、光反応性により優れることから、2つ以上が好ましい。
【0088】
あるいは、前記式(p1)中、LP1における2価の連結基は、ヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましい。Lp1としては、所望の特性を付与するため、種々の骨格を導入した連結基が挙げられる。
前記「種々の骨格を導入した連結基」における骨格としては、例えば、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、キサンテン骨格、フルオレン骨格、ビスフェノールA骨格などが挙げられる。
【0089】
Lp1としては、例えば、ビスフェノール類のエーテル結合基、ジオール類のエーテル結合基、ジカルボン酸類のエステル結合基、Si-O結合基又はこれら結合基の繰り返し構造などが挙げられる。
【0090】
当該ビスフェノール類としては、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビフェノール又はこれらの重合体などが挙げられる。
当該ジオール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ナフタレンジオール(ジヒドロキシナフタレン)、アントラセンジオール(ジヒドロキシアントラセン)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン又はこれらの重合体などが挙げられる。
当該ジカルボン酸類としては、マレイン酸、フタル酸、水添型フタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。
【0091】
Lp1として、ビスフェノール類のエーテル結合基を選択した場合、(P)成分製フィルムの屈曲性を高められやすくなる。
Lp1として、ジオール類のエーテル結合基を選択した場合、(P)成分のアルカリ溶解性を容易に調整できる。ジオール類のエーテル結合基としては、グリコール骨格を導入した連結基が好ましい。グリコール骨格としては、例えば、プロピレングリコール骨格が挙げられる。
Lp1として、Si-O結合基を選択した場合、(P)成分成形体の低誘電化を図りやすくなる。
【0092】
以下に、前記式(p1)中のLP1(2価の連結基)についての好適な具体例を示す。
以下の式中、*は、メチレン基(CH2)と結合する結合手であることを示す。化学式(LP1-9)のnは、オキシプロピレン基の繰り返し数を表す。
【0093】
【0094】
前記式(p1)中、RP1における有機基は、特に限定されず、例えば、置換基を有していてもよい炭化水素基が挙げられる。
RP1における炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、鎖状もしくは環状のアルケニル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
【0095】
RP1における、直鎖状のアルキル基は、炭素原子数が1~5であることが好ましい。RP1として具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。
RP1における、分岐鎖状のアルキル基は、炭素原子数が3~10であることが好ましく、3~5がより好ましい。RP1として具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0096】
RP1における、鎖状もしくは環状のアルケニル基は、炭素原子数2~10のアルケニル基が好ましい。
【0097】
RP1における、環状の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよいし、芳香族炭化水素基でもよいし、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0098】
RP1における芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。該芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2つ以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、炭素原子数1~2であることがより好ましく、炭素原子数1であることが特に好ましい。
【0099】
RP1における芳香族炭化水素基は、縮合多環芳香族基でもよい。縮合多環芳香族基は、縮合多環芳香族環から水素原子1個を除いた基である。この縮合多環芳香族環は、複数の芳香環が縮合した環構造でもよいし、芳香環と脂肪環とが縮合した環構造でもよい。芳香環と脂肪環とが縮合した環構造においては、芳香環の個数が複数でもよいし、脂肪環の個数が複数でもよいし、芳香環と脂肪環とが1つずつでもよい。
この縮合多環芳香族環を構成する環数は、好ましくは2~5個、より好ましくは2~3個、さらに好ましくは3個である。
【0100】
RP1における縮合多環芳香族基としては、例えば、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、ペリレン環、アントラキノン環、又はナフトキノン環から水素原子1個を除いた基が挙げられる。
これらの中でも、アントラキノン環又はナフトキノン環から水素原子1個を除いた基が好ましく、アントラキノン環から水素原子1個を除いた基がより好ましい。
【0101】
上記のRP1で表される炭化水素基が置換されている場合、その置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
RP1で表される炭化水素基は、その炭化水素鎖の途中にエーテル結合を有していてもよい。
【0102】
以下に、一般式(p1)で表される繰り返し単位についての具体例を示すが、これらに限定されない。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
(P1)成分は、膜形成能を有し、好ましくは分子量が1000以上である。(P1)成分の分子量が1000以上であることにより、膜形成能が向上する。(P1)成分の分子量は、1000~30000がより好ましく、1500~25000がさらに好ましく、1500~20000が特に好ましく、2000~15000が最も好ましい。
(P1)成分の分子量が、前記の好ましい範囲の上限値以下であることにより、分離層形成用組成物の溶媒に対する溶解性が高められる。
尚、樹脂成分の分子量としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を用いるものとする。
【0108】
(P1)成分としては、例えば、商品名がGSP-01、GSP-02、GSP-03、GSP-106、GSP-112、GSP-113、GSP-117、GSP-119のGSPシリーズ(群栄化学工業株式会社製)等を用いることができる。
【0109】
また、(P1)成分として、アミノフェノール類、アミノナフトール類又はアニリン類と、1分子中にエポキシ基を2つ有する化合物と、を反応させて生成する樹脂を用いることもできる。
アミノフェノール類としては、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、4-アミノ-3-メチルフェノール、2-アミノ-4-メチルフェノール、3-アミノ-2-メチルフェノール、5-アミノ-2-メチルフェノール等が挙げられる。アミノナフトール類としては、1-アミノ-2-ナフトール、3-アミノ-2-ナフトール、5-アミノ-1-ナフトール等が挙げられる。
1分子中にエポキシ基を2つ有する化合物としては、例えば商品名がEPICLON850、EPICLON830(DIC株式会社製)、jERYX-4000(三菱化学株式会社製)などのビスフェノール型エポキシ樹脂;DENACOL EX-211、DENACOL EX-212、DENACOL EX-810、DENACOL EX-830、DENACOL EX-911、DENACOL EX-920、DENACOL EX-930(ナガセケムテックス株式会社製)などのジオール型エポキシ樹脂;DENACOL EX-711、DENACOL EX-721(ナガセケムテックス株式会社製)、jER191P(三菱化学株式会社製)などのジカルボン酸エステル型エポキシ樹脂; X-22-163、KF-105(信越化学工業株式会社製)などのシリコーン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
かかる反応の際の加熱処理温度は、60℃以上250℃以下とすることが好ましく、80℃以上180℃以下とすることがより好ましい。
【0110】
(P1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0111】
・・(P2)成分
(P)成分は、上記(P1)成分以外の樹脂成分(以下、「(P2)成分」ともいう)でもよい。(P2)成分としては、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール誘導体、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ヒドロキシフェニルシルセスキオキサン樹脂、ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン樹脂、フェノール骨格含有アクリル樹脂等が挙げられる。
【0112】
ベンゾオキサジン樹脂:
ベンゾオキサジン樹脂は、ベンゾオキサジン骨格を含む樹脂である。ベンゾオキサジン樹脂としては、下記一般式(p2-1)で表される樹脂が挙げられる。
【0113】
【化7】
[式中、Lb
1は炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表し;Rb
1及びRb
2は、それぞれ独立に、炭素原子数12~24の炭化水素基を表し;Rb
3~Rb
6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。]
【0114】
前記一般式(p2-1)中、Lb1は、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表す。Lb1における脂肪族炭化水素基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよく、環状構造を有してもよい。Lb1における脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基でもよく、不飽和脂肪族炭化水素基でもよいが、飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0115】
直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数1~8が好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1、2、又は3が特に好ましい。直鎖状の脂肪族炭化水素基は、直鎖状のアルキレン基が好ましい。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数2~8が好ましく、炭素原子数2~6がより好ましく、炭素原子数2~4がさらに好ましく、炭素原子数2又は3が特に好ましい。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0116】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。構造中に環を含む脂肪族炭化水素基における直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、上述の直鎖状の脂肪族炭化水素基または前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数が3~10が好ましく、炭素原子数3~8がより好ましく、炭素原子数3~6がさらに好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式でもよく、単環式でもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素原子数3~6が好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素原子数7~10が好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン等が挙げられる。
【0117】
Lb1としては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~8が好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1、2又は3が特に好ましい。
【0118】
一般式(p2-1)中、Rb1及びRb2は、それぞれ独立に、炭素原子数12~24の炭化水素基を表す。Rb1及びRb2における炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよく、芳香族炭化水素基でもよい。
【0119】
Rb1及びRb2における脂肪族炭化水素基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよく、環状構造を有してもよい。Rb1及びRb2における脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基でもよく、不飽和脂肪族炭化水素基でもよい。Rb1及びRb2における脂肪族炭化水素基は、炭素原子数12~20が好ましく、炭素原子数12~18がより好ましく、炭素原子数14~16がさらに好ましい。
【0120】
Rb1及びRb2における構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
【0121】
Rb1及びRb2における芳香族炭化水素基は、単環式でもよく、多環式でもよい。前記芳香族炭化水素基が含む芳香環は、炭素原子数5~20が好ましく、炭素原子数6~15がより好ましく、炭素原子数6~12がさらに好ましい。芳香環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環が挙げられる。芳香族炭化水素基の具体例としては、前記芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2つ以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環に結合するアルキレン基は、炭素原子数1~12が好ましく、炭素原子数1~10がより好ましい。
【0122】
Rb1及びRb2は、直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基がより好ましい。Rb1及びRb2が不飽和脂肪族炭化水素基である場合、不飽和結合の数は、特に限定されないが、例えば、1~5個、1~4個、1~3個、又は1個若しくは2個が挙げられる。中でも、Rb1及びRb2は、直鎖状のアルキル基、直鎖状のアルケニル基、直鎖状のアルカジエン基、又は直鎖状のアルカトリエン基が好ましい。
【0123】
Rb1及びRb2の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0124】
【0125】
前記式(p2-1)中、Rb3~Rb6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Rb3~Rb6における置換基は、特に限定されない。Rb3~Rb6における置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、ニトロ基、及びアミノ基、並びこれらの基を置換基として有してもよいアルキル基等が挙げられる。
Rb3~Rb6におけるアルキル基としては、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数1~4がより好ましく、炭素原子数1~3がさらに好ましく、炭素原子数1又は2が特に好ましい。アルキル基は、置換基を有してもよく、有しなくてもよいが、有しないことが好ましい。
Rb3~Rb6におけるアルコキシ基としては、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数1~4がより好ましく、炭素原子数1~3がさらに好ましく、炭素原子数1又は2が特に好ましい。
Rb3~Rb6におけるアルキル基又はアルコキシ基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよいが、直鎖状が好ましい。
【0126】
Rb3~Rb6は、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0127】
ベンゾオキサジン樹脂の具体例を以下に示すが、これに限定されない。
【0128】
【化9】
[式中、Rは、前記式(Rb1-1)~(Rb1-4)のいずれかで表される基を表す。複数のRは、相互に同じでもよく、異なってもよい]
【0129】
ベンゾオキサジン樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ベンゾオキサジン樹脂は、前記式(p2-1-1)中のRが互いに異なる化合物の混合物であってもよい。
【0130】
ベンゾオキサジン樹脂以外の(P2)成分の具体例を以下に示すが、これに限定されない。
【0131】
【0132】
(P)成分は、芳香環を含む樹脂が好ましい。前記芳香環は、芳香族炭化水素環でもよく、芳香族複素環でもよい。前記芳香環は、単環でもよく、多環でもよい。前記芳香環は、芳香環と脂肪族環との縮合環でもよい。芳香環と縮合環を形成する脂肪族環は、脂肪族炭化水素環でもよく、脂肪族複素環でもよい。(P)成分としては、(P1)成分、ベンゾオキサジン樹脂、又は前記式(p2-2)で表される樹脂が好ましい。
【0133】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する(P)成分は、1種でもよく2種以上でもよい。
本実施形態の分離層形成用組成物中の(P)成分の含有量は、形成しようとする分離層の厚さ等に応じて調整すればよい。分離層形成用組成物中の(P)成分の含有量は、例えば、当該組成物(100質量%)に対して、1~100質量%が挙げられる。(P)成分の含有量は、1~70質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましく、10~50質量%がさらに好ましく、10~30質量%が特に好ましい。
(P)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、分離層の光反応性をより高められやすくなる。加えて、密着性も高められやすくなる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、他の成分とのバランスが取りやすくなる。
【0134】
・その他成分
本実施形態の分離層形成用組成物は、上述した(P)成分に加えて、他の成分(任意成分)を含有してもよい。
かかる任意成分としては、フルオロカーボン、熱酸発生剤成分、光酸発生剤成分、感光剤成分、有機溶剤成分、界面活性剤、増感剤などが挙げられる。
【0135】
本実施形態における、分離層を構成する材料(組成物)は、フルオロカーボンを含有してもよい。フルオロカーボンは、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。フルオロカーボンが吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、フルオロカーボンを好適に変質させ得る。
分離層を構成するフルオロカーボンは、プラズマCVD(化学気相堆積)法によって好適に成膜することができる。
【0136】
・・熱酸発生剤
本実施形態の分離層形成用組成物は、熱酸発生剤(以下「(T)成分」ともいう。)を含有してもよい。
【0137】
(T)成分には、公知のものから適宜選択して用いることができる。(T)成分は、酸を発生させるための温度が、分離層形成用組成物を塗布した支持基体をプリベークする際の温度以上であるものが好ましく、110℃以上であるものがより好ましく、130℃以上であるものがさらに好ましい。
かかる(T)成分としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸塩、六フッ化リン酸塩、パーフルオロブタンスルホン酸塩、三フッ化ホウ素塩、三フッ化ホウ素エーテル錯化合物等が挙げられる。好ましい(T)成分として、以下に示すカチオン部とアニオン部とからなる化合物が挙げられる。
【0138】
【化11】
[式(T-ca-1)中、R
h01~R
h04は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基及びアリール基からなる群より選択される基であり、R
h01~R
h04のうちの少なくとも1つは、アリール基である。前記のアルキル基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。式(T-ca-2)中、R
h05~R
h07は、それぞれ独立して、炭素原子数1~20のアルキル基及びアリール基からなる群より選択される基であり、R
h05~R
h07のうちの少なくとも1つは、アリール基である。前記のアルキル基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。]
【0139】
・・・(T)成分のカチオン部について
前記式(T-ca-1)中、Rh01~Rh04におけるアルキル基は、炭素原子数が1~20であり、炭素原子数1~10が好ましく、炭素原子数1~5がより好ましく、炭素原子数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
【0140】
Rh01~Rh04におけるアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、環式基等が挙げられる。
【0141】
アルキル基の置換基としてのアルコキシ基は、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましい。
アルキル基の置換基としてのハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
アルキル基の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、炭素原子数1~5のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の水素原子の一部又は全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
アルキル基の置換基としてのカルボニル基は、アルキル基を構成するメチレン基(-CH2-)を置換する基(>C=O)である。
アルキル基の置換基としての環式基は、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基(多環式であってもよく、単環式であってもよい)が挙げられる。ここでの芳香族炭化水素基は、後述のRh01~Rh04におけるアリール基と同様のものが挙げられる。ここでの脂環式炭化水素基において、単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。また、多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~30のものが好ましい。中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
【0142】
前記式(T-ca-1)中、Rh01~Rh04におけるアリール基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
Rh01~Rh04におけるアリール基として具体的には、前記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基;2つ以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。これらの中でも、前記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基、前記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基がより好ましく、前記芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基、前記芳香族炭化水素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基がさらに好ましい。
【0143】
Rh01~Rh04におけるアリール基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、環式基、アルキルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0144】
アリール基の置換基としてのアルキル基は、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることが好ましい。
アリール基の置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、環式基についての説明は、上述したアルキル基の置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、環式基についての説明と同様である。
アリール基の置換基としてのアルキルカルボニルオキシ基において、アルキル部分の炭素原子数は1~5が好ましく、アルキル部分はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0145】
但し、前記式(T-ca-1)中、Rh01~Rh04のうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよいアリール基である。
以下に、前記式(T-ca-1)で表されるカチオンの具体例を示す。
【0146】
【0147】
前記式(T-ca-2)中、Rh05~Rh07におけるアルキル基、アリール基についての説明は、それぞれ、上述したRh01~Rh04におけるアルキル基、アリール基についての説明と同様である。
【0148】
但し、前記式(T-ca-2)中、Rh05~Rh07のうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよいアリール基である。
以下に、前記式(T-ca-2)で表されるカチオンの具体例を示す。
【0149】
【0150】
・・・(T)成分のアニオン部について
(T)成分のアニオン部としては、例えば、6フッ化リン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、パーフルオロブタンスルホン酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン等が挙げられる。
これらの中でも、6フッ化リン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、パーフルオロブタンスルホン酸アニオンが好ましく、6フッ化リン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオンがより好ましい。
【0151】
本実施形態の分離層形成用組成物においては、(T)成分として、例えば商品名がサンエイドSI-45、SI-47、SI-60、SI-60L、SI-80、SI-80L、SI-100、SI-100L、SI-110、SI-110L、SI-145、I-150、SI-160、SI-180L、SI-B3、SI-B2A、SI-B3A、SI-B4、SI-300(以上、三新化学工業株式会社製);CI-2921、CI-2920、CI-2946、CI-3128、CI-2624、CI-2639、CI-2064(日本曹達株式会社製);CP-66、CP-77(株式会社ADEKA製);FC-520(3M社製);K―PURE TAG-2396、TAG-2713S、TAG-2713、TAG-2172、TAG-2179、TAG-2168E、TAG-2722、TAG-2507、TAG-2678、TAG-2681、TAG-2679、TAG-2689、TAG-2690、TAG-2700、TAG-2710、TAG-2100、CDX-3027、CXC-1615、CXC-1616、CXC-1750、CXC-1738、CXC-1614、CXC-1742、CXC-1743、CXC-1613、CXC-1739、CXC-1751、CXC-1766、CXC-1763、CXC-1736、CXC-1756、CXC-1821、CXC-1802-
60、CXC-2689(以上、KING INDUSTRY社製)等の市販品を用いることができる。
【0152】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する(T)成分は、1種でもよく2種以上でもよい。
本実施形態の分離層形成用組成物においては、上記の中でも、(T)成分として六フッ化リン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、パーフルオロブタンスルホン酸塩が好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸塩がより好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸の第4級アンモニウム塩がさらに好ましい。
本実施形態の分離層形成用組成物が(T)成分を含有する場合、(T)成分の含有量は、(P)成分100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、1~15質量部がより好ましく、2~10質量部がさらに好ましい。
本実施形態の分離層形成用組成物は、(T)成分を含有しないことが好ましい。
【0153】
・・光酸発生剤
本実施形態の分離層形成用組成物は、光酸発生剤を含有してもよい。
光酸発生剤としては、例えば、スルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤が好適に挙げられる。
【0154】
オニウム塩系酸発生剤における、好ましいカチオン部としては、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンが挙げられる。
【0155】
オニウム塩系酸発生剤における、好ましいアニオン部としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C6F5)4]-);テトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([B(C6H4CF3)4]-);ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C6F5)2BF2]-);トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C6F5)BF3]-);テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート([B(C6H3F2)4]-)等が挙げられる。また、下記一般式(b0-2a)で表されるアニオンも好ましい。
【0156】
【化14】
[式中、R
bf05は、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基である。nb
1は、1~5の整数である。]
【0157】
前記式(b0-2a)中、Rbf05におけるフッ素化アルキル基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、炭素原子数1~8であることがより好ましく、炭素原子数1~5であることがさらに好ましい。なかでもRbf05としては、炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、炭素原子数1~5のパーフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基がさらに好ましい。
前記式(b0-2a)中、nb1は、1~4の整数が好ましく、2~4の整数がより好ましく、3が最も好ましい。
nb1が2以上の場合、複数のRbf05は、同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
【0158】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する光酸発生剤は、1種でもよく2種以上でもよい。
本実施形態の分離層形成用組成物が光酸発生剤を含有する場合、光酸発生剤の含有量は、(P)成分100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、1~15質量部がより好ましく、2~10質量部がさらに好ましい。
本実施形態の分離層形成用組成物は、光酸発生剤を含有しないことが好ましい。
【0159】
・・感光剤成分
本実施形態の分離層形成用組成物は、感光剤成分を含有してもよい。
感光剤成分(以下「(C)成分」ともいう。)としては、例えば、下記化学式(c1)で表されるフェノール性水酸基含有化合物と、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物と、のエステル化反応生成物(以下「(C1)成分」ともいう。)が好適なものとして挙げられる。
【0160】
【0161】
1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物としては、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル化合物、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホニル化合物等が挙げられ、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル化合物が好ましい。
【0162】
以下に、(C1)成分の好適な具体例を示す。
【0163】
【化16】
[式(c1-1)中、D
1~D
4は、それぞれ独立に水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基を表す。D
1~D
4のうち少なくとも1つは、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基を表す。]
【0164】
前記(C1)成分のエステル化率は、50~70%であることが好ましく、55~65%であることがより好ましい。該エステル化率が50%以上であると、アルカリ現像後の膜減りがより抑制され、残膜率が高まる。該エステル化率が70%以下であれば、保存安定性がより向上する。
ここでいう「エステル化率」とは、前記式(c1-1)で表される化合物については、式(c1-1)中のD1~D4が1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基で置換されている割合を示す。
前記(C1)成分は、非常に安価でありながら、高感度化を図れる点からも好ましい。
【0165】
また、(C)成分としては、前記(C1)成分以外のその他感光剤成分(以下これを「(C2)成分」ともいう。)を用いることができる。
(C2)成分としては、例えば、下記のフェノール性水酸基含有化合物((c2-phe)成分)と、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物(好ましくは、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル化合物、又は、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホニル化合物)と、のエステル化反応生成物が好適なものとして挙げられる。
【0166】
前記(c2-phe)成分としては、例えば、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(2,3,5-トリメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、1-[1-(4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]-4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1-[1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]-4-[1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(2’,3’,4’-トリヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(2’,4’-ジヒドロキシフェニル)プロパン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-2-(3’-フルオロ-4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジメチルフェニル)プロパン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、2,3,4-トリヒドロキシフェニル-4’-ヒドロキシフェニルメタン、1,1-ジ(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,4-ビス[1-(4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]-5-ヒドロキシフェノール等が挙げられる。
【0167】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する(C)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態の分離層形成用組成物においては、上記の中でも、(C)成分として(C1)成分を用いることが好ましい。
本実施形態の分離層形成用組成物が(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量は、(P)成分100質量部に対して、95質量部以下であることが好ましく、50~95質量部がより好ましく、60~90質量部がさらに好ましい。
本実施形態の分離層形成用組成物は、(C)成分を含有しないことが好ましい。
【0168】
・・有機溶剤成分
本実施形態の分離層形成用組成物は、塗布作業性等を調整するため、有機溶剤成分(以下「(S)成分」ともいう。)を含有してもよい。
(S)成分としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素;炭素原子数4から15の分岐鎖状の炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン等の環状炭化水素;p-メンタン、o-メンタン、m-メンタン、ジフェニルメンタン、1,4-テルピン、1,8-テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、テルピネン-1-オール、テルピネン-4-オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4-シネオール、1,8-シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d-リモネン、l-リモネン、ジペンテン等のテルペン系溶剤;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等が挙げられる。
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する(S)成分は、1種でもよく2種以上でもよい。
【0169】
本実施形態の分離層形成用組成物において、(S)成分の使用量は、特に限定されず、支持基体等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚や塗布性に応じて適宜設定される。好ましくは、分離層形成用組成物中の上記(P)成分の総量が、該組成物の全質量(100質量%)に対して、70質量%以下、好ましくは5~50質量%の範囲内、より好ましくは10~50質量%の範囲内となるように(S)成分は用いられる。
【0170】
・・界面活性剤
本実施形態の分離層形成用組成物は、塗布作業性等を調整するため、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられる。シリコーン系界面活性剤には、例えばBYK-077、BYK-085、BYK-300、BYK-301、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-335、BYK-341、BYK-344、BYK-345、BYK-346、BYK-348、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358、BYK-361、BYK-370、BYK-371、BYK-375、BYK-380、BYK-390(以上、BYK Chemie社製)等を用いることができる。フッ素系界面活性剤としては、例えばF-114、F-177、F-410、F-411、F-450、F-493、F-494、F-443、F-444、F-445、F-446、F-470、F-471、F-472SF、F-474、F-475、F-477、F-478、F-479、F-480SF、F-482、F-483、F-484、F-486、F-487、F-172D、MCF-350SF、TF-1025SF、TF-1117SF、TF-1026SF、TF-1128、TF-1127、TF-1129、TF-1126、TF-1130、TF-1116SF、TF-1131、TF-1132、TF-1027SF、TF-1441、TF-1442(以上、DIC株式会社製);ポリフォックスシリーズのPF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520(以上、オムノバ社製)等を用いることができる。
【0171】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する界面活性剤は、1種でもよく2種以上でもよい。
本実施形態の分離層形成用組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、(P)成分100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.02~2質量部がより好ましく、0.03~1質量部がさらに好ましい。
界面活性剤の含有量が、前記の好ましい範囲内であれば、分離層形成用組成物を支持基体上に塗布した際に、平坦性の高い分離層を容易に形成することができる。
【0172】
本実施形態の分離層形成用組成物において、層周縁部を構成する材料としては、光吸収性樹脂が好ましく、主鎖もしくは側鎖に芳香環又は縮合多環骨格を含む樹脂が好適に挙げられる。縮合多環骨格としては、芳香環と芳香環との縮合環構造、芳香環と脂肪族環との縮合環構造が好ましい。層周縁部を構成する材料の中では、例えば、上述した一般式(p1)で表される繰り返し単位を有する樹脂成分((P1)成分)がより好ましい。
層中央部を構成する材料としては、フルオロカーボンを含む材料が好ましい。
本明細書において「光吸収性樹脂」とは、波長190~1300nmの範囲の光を吸収する特性を持つ樹脂をいう。
【0173】
(第2の態様:電子部品の製造方法)
本発明の第2の態様に係る電子部品の製造方法は、上述した第1の態様に係る支持基体分離方法を使用することにより、前記積層体から前記支持基体を分離する分離工程と、前記分離工程の後、前記基板に付着する前記接着層を除去する除去工程と、を有する製造方法である。
図4A及び
図4Bは、半導体パッケージ(電子部品)の製造方法の一例を説明する概略図である。
図4Aは、分離工程を説明する図である。
図4Bは、除去工程を説明する図である。
【0174】
[分離工程]
分離工程では、例えば上述した第1~3実施形態の支持基体分離方法を使用することにより、前記積層体から前記支持基体を分離する。
図4Aは、第1実施形態の支持基体分離方法を使用して、積層体10から支持基体11を分離した後の状態を示している。
【0175】
[除去工程]
除去工程では、前記分離工程の後、基板に付着する接着層及び分離層を除去する。
図4Aでは、分離工程の後、基板16に接着層14及び分離層12が付着している。
本実施形態では、除去工程において、基板16に付着する接着層14及び分離層12を除去することにより、
図4Bに示す電子部品40が得られている。
【0176】
基板16に付着する接着層14等を除去する方法としては、例えば、洗浄液を用いて接着層14及び分離層12の残渣を除去する方法、又はプラズマを照射する方法が挙げられる。洗浄液には、有機溶剤を含有する洗浄液が好適に用いられる。有機溶剤としては、分離層形成用組成物に配合の有機溶剤、接着層形成用組成物に配合の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0177】
本実施形態の電子部品の製造方法は、上記の除去工程の後、さらに、電子部品に対してソルダーボール形成、ダイシング又は酸化膜形成等の処理を行う工程を有してもよい。
【実施例0178】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0179】
<積層体からの支持基体の分離性についての評価(1)>
基板に支持基体を貼り合わせた積層体を使用して、光の照射による、積層体からの支持基体の分離性について評価した。
支持基体として、ガラス基板を用いた。
分離層形成用組成物として、フルオロカーボンを含む材料(商品名:US244、東京応化工業株式会社製)、一般式(p1)で表される繰り返し単位を有する樹脂GSP-01及びGSP―02を含む材料(商品名:CTRL9、群栄化学工業株式会社製)を用いた。
接着層形成用組成物として、H1051(旭化成株式会社製)及びSepton2002(株式会社クラレ製)を含むエラストマー接着剤[商品名:TZNR(登録商標)-A4017(東京応化工業株式会社製)]を用いた。H1051は、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンのトリブロック共重合体である。Septon2002は、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマーである。
支持体分離装置として、特許第6470414号公報に開示される、
図1の(a)に示す支持体分離装置100と同一形態のものを用いた。
【0180】
(実施例1)
・積層体の作製
上述の第1実施形態における分離層と同一の形態、すなわち、層周縁部が層中央部の外周に面一に配置されている形態とした分離層を備えた積層体、を以下のようにして作製した。
ガラス基板上に、US244を塗布して製膜し、層中央部を形成した。
次いで、層中央部の外周の長さ(L1)5mmまでの範囲である領域に、CTRL9を塗布した。その後、300℃/10minで硬化を行い、層中央部の外周に面一に層周縁部を形成した。次いで、層中央部と層周縁部とからなる分離層の全面に、接着層形成用組成物(TZNR(登録商標)-A4017)を塗布して接着層を形成し、その後、被加工基板と貼り付けを行い、積層体を得た。
【0181】
・積層体から支持基体を分離する工程
前記の支持体分離装置を用い、得られた積層体に対し、ガラス基板側から層周縁部にレーザ光を照射した。レーザ光照射の条件は、波長532nm、繰り返し周波数40kHzに設定した。
その後、クランプによりガラス基板を持ち上げ、基板とガラス基板との間に形成された隙間にドライエアーを吹き付けた。これにより、積層体からガラス基板が分離した。そのときの剥離界面はUS244/接着層であった。
【0182】
(実施例2)
・積層体の作製
上述の第2実施形態における分離層と同一の形態、すなわち、第1分離層と第2分離層とが積層し、かつ、前記第2分離層が前記第1分離層の側面を覆う層とされている形態とした分離層を備えた積層体、を以下のようにして作製した。
ガラス基板上に、層周縁部となる領域(長さ(L2)5mmまでの範囲である領域)を除いてCTRL9を塗布し、350℃/1hrで硬化を行い、層中央部を構成する第1分離層を形成した。次いで、第1分離層の全体を覆うように、層周縁部となる領域までCTRL9を塗布した。その後、300℃/10minで硬化を行い、第1分離層の上面及び側面を覆う第2分離層を形成した(ガラス基板側から見た平面視で、第1分離層が、層中央部を構成し、第1分離層の側面を覆う第2分離層部分が、層周縁部を構成している)。
次いで、分離層におけるガラス基板と反対側の全面、すなわち、第2分離層の全面に、接着層形成用組成物(TZNR(登録商標)-A4017)を塗布して接着層を形成し、その後、被加工基板と貼り付けを行い、積層体を得た。
【0183】
・積層体から支持基体を分離する工程
前記の支持体分離装置を用い、得られた積層体に対し、ガラス基板側から層周縁部にレーザ光を照射した。レーザ光照射の条件は、波長532nm、繰り返し周波数40kHzに設定した。
その後、クランプによりガラス基板を持ち上げ、基板とガラス基板との間に形成された隙間にドライエアーを吹き付けた。これにより、積層体からガラス基板が分離した。そのときの剥離界面はガラス基板/第1分離層(CTRL9(350℃/1hr硬化))であった。
【0184】
(実施例3)
・積層体の作製
上述の第3実施形態における分離層と同一の形態、すなわち、第3分離層と第4分離層とが、平面視で前記第4分離層の外周に前記第3分離層が露出するように積層した層である形態とした分離層を備えた積層体、を以下のようにして作製した。
ガラス基板の全面に、CTRL9を塗布し、300℃/10minで硬化を行い、第3分離層を形成した。次いで、第3分離層上に、US244を塗布して製膜し、層周縁部となる領域(長さ(L3)5mmまでの範囲である領域)をSL-Removerでエッジカットして、第4分離層を形成した(分離層側のガラス基板の上方から見た平面視で、第4分離層が層中央部を構成し、第4分離層の外周に露出する第3分離層部分が、層周縁部を構成している)。
次いで、分離層におけるガラス基板と反対側の全面、すなわち、第4分離層及び第3分離層部分に、接着層形成用組成物(TZNR(登録商標)-A4017)を塗布して接着層を形成し、その後、被加工基板と貼り付けを行い、積層体を得た。
【0185】
・積層体から支持基体を分離する工程
前記の支持体分離装置を用い、得られた積層体に対し、ガラス基板側から層周縁部(第3分離層部分)にレーザ光を照射した。レーザ光照射の条件は、波長532nm、繰り返し周波数40kHzに設定した。
その後、クランプによりガラス基板を持ち上げ、基板とガラス基板との間に形成された隙間にドライエアーを吹き付けた。これにより、積層体からガラス基板が分離した。そのときの剥離界面は第4分離層(US244)/接着層であった。
【0186】
(比較例1)
ガラス基板の全面に、CTRL9を塗布し、300℃/10minで硬化を行い、CTRL9層を形成した。
次いで、CTRL9層上に、接着層形成用組成物(TZNR(登録商標)-A4017)を塗布して接着層を形成し、その後、被加工基板と貼り付けを行い、積層体を得た。
前記の支持体分離装置を用い、得られた積層体に対し、ガラス基板側からCTRL9層にレーザ光を照射した。レーザ光照射の条件は、波長532nm、繰り返し周波数40kHzに設定した。
その後、クランプによりガラス基板を持ち上げようとしたができなかった。
【0187】
<支持基体と基板との密着性についての評価(1):試験例1~6>
サイズ10cm×10cmのEXGガラス基板上に、表1に示すように硬化条件を変えて各分離層を製膜した。
次いで、製膜した膜上に、接着層形成用組成物(TZNR(登録商標)-A4017)を、膜厚50μmになるようにスピン塗布し、90℃,160℃,220℃の温度で各4分間加熱することにより接着層を形成した。
次いで、前記接着層を、カッターにより10mm幅の帯状にカットした。
次いで、ガラス基板と帯状接着層との間に挟まれた角度(ピール角度)を、常に90度に維持しつつ、ガラス基板に対して帯状接着層を、200mm/秒の速度で垂直方向に引っ張ることにより、ガラス基板から帯状接着層を剥離した。このときの接着強度(N)を測定して、そのときの剥離界面のピール強度を求めた。この結果を表1に示した。
【0188】
【0189】
上述の実施例1~3における分離層において、層周縁部は、いずれも、材料としてCTRL9が用いられ、300℃/10minの硬化条件で形成されている(試験例2に相当)。
実施例1における層中央部は、材料としてUS244が用いられている(試験例1に相当)。実施例2における層中央部は、材料としてCTRL9が用いられ、350℃/1hrの硬化条件で形成されている(試験例3に相当)。実施例3における層中央部は、材料としてUS244が用いられている(試験例1に相当)。
表1に示す結果から、実施例1~3における分離層は、支持基体又は接着層に対する接着力が異なる、層中央部と層周縁部とからなること;層周縁部は、層中央部に比べて前記接着力が高いこと;を確認することができる。
【0190】
<積層体からの支持基体の分離性についての評価(2)>
基板に支持基体を貼り合わせた積層体を使用して、光の照射による、積層体からの支持基体の分離性について評価した。
支持基体として、ガラス基板を用いた。
分離層形成用組成物として、CTRL9を用いた。
離型層形成用組成物として、シリコーン系樹脂を使用した離型層コーティング剤TOMAX FS9309L(日本化工塗料株式会社製)と、硬化剤との混合物(質量比100/4)を用いた。
接着層形成用組成物として、TZNR(登録商標)-A4017(東京応化工業株式会社製)を用いた。
支持体分離装置として、特許第6470414号公報に開示される、
図1の(a)に示す支持体分離装置100と同一形態のものを用いた。
【0191】
(実施例4)
・積層体の作製
上述のその他実施形態における分離層と同一の形態、すなわち、第3分離層と離型層とが、平面視で前記離型層の外周に前記第3分離層が露出するように積層した層である形態とした分離層を備えた積層体、を以下のようにして作製した。
ガラス基板の全面に、CTRL9を塗布し、90℃/2minで乾燥させた後、300℃/10minで硬化を行い、第3分離層を形成した。次いで、第3分離層上に、前記離型層形成用組成物を塗布して製膜し、層周縁部となる領域(長さ(L3)5mmまでの範囲である領域)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)でエッジカットし、150℃/5minで硬化を行い、離型層を形成した(分離層側のガラス基板の上方から見た平面視で、離型層が層中央部を構成し、離型層の外周に露出する第3分離層部分が、層周縁部を構成している)。
次いで、分離層におけるガラス基板と反対側の全面、すなわち、離型層及び第3分離層部分に、接着層形成用組成物(TZNR(登録商標)-A4017)を塗布して接着層を形成し、その後、被加工基板と貼り付けを行い、積層体を得た。
【0192】
・積層体から支持基体を分離する工程
前記の支持体分離装置を用い、得られた積層体に対し、ガラス基板側から層周縁部(第3分離層部分)にレーザ光を照射した。レーザ光照射の条件は、波長532nm、繰り返し周波数40kHzに設定した。
その後、クランプによりガラス基板を持ち上げ、基板とガラス基板との間に形成された隙間にドライエアーを吹き付けた。これにより、積層体からガラス基板が分離した。そのときの剥離界面は離型層/接着層であった。
【0193】
<支持基体と基板との密着性についての評価(2):試験例7>
12インチのガラス基板上に、CTRL9を塗布し、90℃/2minで乾燥させた後、300℃/10minで硬化を行い、第3分離層であるCTRL9層を形成した。
CTRL9層上に、前記離型層形成用組成物を、膜厚2μmとなるようにスピン塗布を行い、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)でエッジ5mmがカットできるようにエッジリンスを行った後、150℃/5minで硬化を行うことにより、離型層を製膜した。
次いで、製膜した分離層上に、接着層形成用組成物(TZNR(登録商標)-A4017)を、膜厚50μmになるようにスピン塗布し、90℃,160℃,220℃の温度で各4分間加熱することにより接着層を形成した。
次いで、前記接着層を、カッターにより10mm幅の帯状にカットした。
次いで、ガラス基板と帯状接着層との間に挟まれた角度(ピール角度)を、常に90度に維持しつつ、ガラス基板に対して帯状接着層を、200mm/秒の速度で垂直方向に引っ張ることにより、ガラス基板から帯状接着層を剥離した。このときの接着強度(N)を測定して、そのときの剥離界面のピール強度を求めた。この結果を表2に示した。
【0194】
【0195】
上述の実施例4における積層体において、層周縁部は、材料としてCTRL9が用いられ、300℃/10minの硬化条件で形成されている(試験例2に相当)。層中央部は、材料として離型剤が用いられている(試験例7に相当)。
表2に示す結果から、実施例4における分離層は、接着層に対する接着力が異なる、層中央部と層周縁部とからなること;層周縁部は、層中央部に比べて前記接着力が高いこと;を確認することができる。
【0196】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。