(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013036
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】半導体素子の観測装置、半導体素子の観測方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/265 20060101AFI20250117BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20250117BHJP
G01N 21/66 20060101ALI20250117BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
G01R31/265
G01R31/26 C
G01N21/66
H01L21/66 X
H01L21/66 V
G01R31/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116309
(22)【出願日】2023-07-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・大阪公立大学 PRESS RELEASE、発光効率の向上へ!有機ELの「再結合過程」観測に成功、発行日:令和5年2月28日 ・大阪公立大学 プレスリリース 理学研究科(URL:https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-04783.html)、発光効率の向上へ!有機ELの「再結合過程」観測に成功、公開日:令和5年3月1日 ・Nature Communications volume 14,Article number:992(2023)(URL:https://www.nature.com/articles/s41467-023-36472-6)、Visualizing electroluminescence process in light-emitting electrochemical cells、公開日:令和5年3月1日
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】鐘本 勝一
【テーマコード(参考)】
2G003
2G043
4M106
【Fターム(参考)】
2G003AA04
2G003AA06
2G003AF03
2G043AA03
2G043BA14
2G043CA07
2G043EA06
2G043FA03
2G043FA06
2G043GA09
2G043GB11
2G043GB21
2G043HA03
2G043JA01
2G043JA08
2G043KA01
2G043KA02
2G043LA01
2G043NA04
4M106AA07
4M106AB01
4M106AB09
4M106AB11
4M106BA04
4M106CA21
4M106DH12
4M106DH31
(57)【要約】
【課題】ダイオードやLEDを駆動させた際に発生するホールや電子等の電子状態を直接、スペクトルの時間変化として計測できる半導体素子の観測装置及び半導体素子の観測方法を提供する。
【解決手段】ダイオード又は発光ダイオードを駆動させる電源2と、駆動状態のダイオード又は発光ダイオードに白色光を照射する光源3と、ダイオード又は発光ダイオードを透過した白色光を任意の波長の光に分光する分光器4と、分光器4によって分光された任意の波長の光の強度を計測する第1の検出器5と、白色光の照射によってダイオード又は発光ダイオードから発生した電界発光の強度を計測する第2の検出器6と、第1の検出器5によって計測された任意の波長の光の強度に関する電気信号及び第2の検出器6によって計測された電界発光の強度に関する電気信号の時間変化を観測するオシロスコープ7と、を備える半導体素子の観測装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオードまたは発光ダイオードを駆動させる電源と、
駆動状態のダイオードまたは発光ダイオードに白色光を照射する光源と、
前記ダイオードまたは前記発光ダイオードを透過した白色光を任意の波長の光に分光する分光器と、
前記分光器によって分光された前記任意の波長の光の強度を計測する第1の検出器と、
白色光の照射によって、前記ダイオードまたは前記発光ダイオードから発生した電界発光の強度を計測する第2の検出器と、
前記第1の検出器によって計測された前記任意の波長の光の強度に関する電気信号、および前記第2の検出器によって計測された前記電界発光の強度に関する電気信号の時間変化を観測するオシロスコープと、
を備える、半導体素子の観測装置。
【請求項2】
電界効果トランジスタを駆動させる電源と、
駆動状態の電界効果トランジスタに白色光を照射する光源と、
前記電界効果トランジスタを透過した白色光を任意の波長の光に分光する分光器と、
前記分光器によって分光された前記任意の波長の光の強度を計測する検出器と、
前記検出器によって計測された前記任意の波長の光の強度に関する電気信号の時間変化を観測するオシロスコープと、
を備える、半導体素子の観測装置。
【請求項3】
駆動状態のダイオードまたは発光ダイオードに白色光を照射する工程と、
前記ダイオードまたは前記発光ダイオードを透過した白色光を任意の波長の光に分光する工程と、
分光された前記任意の波長の光の強度を計測する工程と、
白色光の照射によって、前記ダイオードまたは前記発光ダイオードから発生した電界発光の強度を計測する工程と、
計測された前記任意の波長の光の強度に関する電気信号、および計測された前記電界発光の強度に関する電気信号の時間変化を観測する工程と、
を有する半導体素子の観測方法。
【請求項4】
駆動状態の電界効果トランジスタに白色光を照射する工程と、
前記電界効果トランジスタを透過した白色光を任意の波長の光に分光する工程と、
分光された前記任意の波長の光の強度を計測する工程と、
計測された前記任意の波長の光の強度に関する電気信号の時間変化を観測する工程と、
を有する半導体素子の観測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオードやLEDを駆動させた際に発生するホールや電子等の電子状態を観測する半導体素子の観測装置および半導体素子の観測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体の代表例であるダイオードが動作する際には、電極からのキャリヤ注入が生じ、そこから電気伝導を経る。キャリヤ注入の発生は、ダイオードへの直流電圧の印加に伴って発生する電流の計測や、ダイオードへの交流電圧の印加に対するインピーダンスの計測によって評価することができる(例えば、非特許文献1参照)。また、発光ダイオード(LED)における再結合の過程では、前記の電流の計測や前記のインピーダンスの計測と、発光強度とから、キャリヤ注入の発生を評価することができる(例えば、非特許文献2参照)。
【0003】
上記のような電気信号等の評価では、有用な知見が得られる場合がある。しかしながら、半導体素子の駆動時に、キャリヤトラップの発生や素子の劣化等の望ましくない過程が生じた際に、その電気系送信号のみからキャリヤに関する詳細な情報を引き出すことは難しい。LEDにおける再結合や半導体素子の劣化等の過程は、ダイオードの電子状態の変化を伴うため、ダイオードの電子状態の評価と組み合わせることが望ましい。ダイオードの電子状態は、例えば、光電子分光法によって評価することができる。光電子分光法による評価では、ダイオードに紫外光やX線を照射した際の光電効果による電子信号から、ダイオードの電子状態を評価することが知られている。光電子分光法による評価は、半導体の動作と組わせられることも知られている(例えば、非特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、半導体の動作と組わせた光電子分光法による評価では、半導体を動作させている状態から光電子分光信号を得ることが容易ではなく、さらに、キャリヤの電子準位を示す信号を得ることが難しい。なぜならば、この評価では、そもそも半導体を動作させた際に生じるキャリヤが、分子全体の一部から得られているに過ぎないからである。また、ダイオードに紫外光やX線を照射すると、半導体素子が劣化する可能性がある。さらに、光電子分光法による評価では、時間分解計測の方法が十分に確立されていない。そのため、半導体素子の動作に伴うホールや電子等の電子状態の時間変化そのものを計測することが難しい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】H.C.F.Martens,W.F.Pasveer,H.B.Brom,J.N.Huiberts and P.W.M.Blom,“Crossover from space-charge-limited to recombination-limited transport in polymer light-emitting diodes”,PHYSICAL REVIEW B, VOLUME 63,125328(2001).
【非特許文献2】M.Takata,K.Takagi,T.Nagase,T.Kobayashi,and H.Naito,“Effects of Bimolecular Recombination on Impedance Spectra in Organic Semiconductors: Analytical Approach”,Journal of Nanoscience and Nanotechnology,Vol.16,3322-3326,2016.
【非特許文献3】S.Jiang,Q.Dai,J.Guo,and Y.Li,“In-situ/operando characterization techniques for organic semiconductors and devices”,Journal of Semiconductors(2022)43(4),04110.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダイオードやLEDの開発現場では、半導体素子の性能を電流や発光輝度等の計測により評価することが多いが、半導体素子の性能向上や劣化条件改善に向けては、ダイオードの動作に伴うホールや電子等の電子状態の時間変化の評価を併用して行うことが有効である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ダイオードやLEDを駆動させた際に発生するホールや電子等の電子状態を直接、スペクトルの時間変化として計測することができる半導体素子の観測装置および半導体素子の観測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]ダイオードまたは発光ダイオードを駆動させる電源と、
駆動状態のダイオードまたは発光ダイオードに白色光を照射する光源と、
前記ダイオードまたは前記発光ダイオードを透過した白色光を任意の波長の光に分光する分光器と、
前記分光器によって分光された前記任意の波長の光の強度を計測する第1の検出器と、
白色光の照射によって、前記ダイオードまたは前記発光ダイオードから発生した電界発光の強度を計測する第2の検出器と、
前記第1の検出器によって計測された前記任意の波長の光の強度に関する電気信号、および前記第2の検出器によって計測された前記電界発光の強度に関する電気信号の時間変化を観測するオシロスコープと、
を備える、半導体素子の観測装置。
[2]電界効果トランジスタを駆動させる電源と、
駆動状態の電界効果トランジスタに白色光を照射する光源と、
前記電界効果トランジスタを透過した白色光を任意の波長の光に分光する分光器と、
前記分光器によって分光された前記任意の波長の光の強度を計測する検出器と、
前記検出器によって計測された前記任意の波長の光の強度に関する電気信号の時間変化を観測するオシロスコープと、
を備える、半導体素子の観測装置。
[3]駆動状態のダイオードまたは発光ダイオードに白色光を照射する工程と、
前記ダイオードまたは前記発光ダイオードを透過した白色光を任意の波長の光に分光する工程と、
分光された前記任意の波長の光の強度を計測する工程と、
白色光の照射によって、前記ダイオードまたは前記発光ダイオードから発生した電界発光の強度を計測する工程と、
計測された前記任意の波長の光の強度に関する電気信号、および計測された前記電界発光の強度に関する電気信号の時間変化を観測する工程と、
を有する半導体素子の観測方法。
[4]駆動状態の電界効果トランジスタに白色光を照射する工程と、
前記電界効果トランジスタを透過した白色光を任意の波長の光に分光する工程と、
分光された前記任意の波長の光の強度を計測する工程と、
計測された前記任意の波長の光の強度に関する電気信号の時間変化を観測する工程と、
を有する半導体素子の観測方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ダイオードやLEDを駆動させた際に発生するホールや電子等の電子状態を直接、スペクトルの時間変化として計測することができる半導体素子の観測装置および半導体素子の観測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る半導体素子の観測装置を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る半導体素子の観測装置を示す模式図である。
【
図3】実験例1において、ダイオードや発光ダイオードを駆動するための方形波電圧の時間変化を示した波形に関する図である。
【
図4】実験例1において、駆動電圧印加後の半導体素子の吸収スペクトルを示す図である。
【
図5】実験例2において、電圧を印加しない状態での半導体素子の吸収スペクトルと半導体素子の電界発光スペクトルを示す図である。
【
図6】実験例3において、半導体素子をヨウ素ガスで化学酸化したときの吸収スペクトルを示す図である。
【
図7】実験例4において、半導体素子をカルシウム電極で挟んだ状態で電圧を印加したときの半導体素子の吸収スペクトルを示す図である。
【
図8】実験例5において、半導体素子の電流電圧特性と、電界発光の強度と電圧との関係とを測定した結果を示す図である。
【
図9】実験例6において、半導体素子に印加する電圧を0.8Vから2Vに増加させたときの半導体素子の吸収スペクトルの時間による変化を測定した結果を示す図である。
【
図10】実験例7において、電界効果トランジスタの動作中に半導体層にて発生するキャリヤを、ゲートバイアス印加と同期させて計測したした結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の半導体素子の観測装置および半導体素子の観測方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0012】
(1)第1の実施形態
[半導体素子の観測装置]
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体素子の観測装置を示す模式図である。以下、本実施形態の半導体素子の観測装置を「観測装置」と言うこともある。
図1に示すように、本実施形態の観測装置1は、電源2と、光源3と、分光器4と、第1の検出器5と、第2の検出器6と、オシロスコープ7と、を備える。また、本実施形態の観測装置1は、第1の凹面鏡8と、第2の凹面鏡9と、を備えていることが好ましい。また、本実施形態の観測装置1は、集光レンズ10を備えていることが好ましい。
【0013】
本実施形態の観測装置1は、半導体素子200の電子状態を観測する装置である。
半導体素子200は、ダイオードまたは発光ダイオードを含む。
半導体素子200は、導線11を介して電源2と接続されている。
【0014】
電源2は、半導体素子200に含まれるダイオードまたは発光ダイオードを駆動させるためのものである。電源2としては、パルス電圧を発生することができるものであれば特に限定されない。
【0015】
光源3は、電源2によって電圧が印加されて駆動状態のダイオードまたは発光ダイオードに白色光を照射するためのものである。光源3としては、白色光を発生することができるものであれば特に限定されない。
【0016】
分光器4は、白色光の照射によって、駆動状態のダイオードまたは発光ダイオードを透過した白色光を任意の波長の光(可視光、近赤外光)に分光するためのものである。分光器4としては、白色光を任意の波長の光に分光することができるものであれば特に限定されない。
【0017】
第1の検出器5は、分光器4によって分光された任意の波長の光の強度を計測するためのものである。第1の検出器5としては、任意の波長の光の強度を計測することができるものであれば特に限定されないが、例えば、フォトダイオードが挙げられる。第1の検出器5は、導線12を介してオシロスコープ7と接続されている。また、第1の検出器5は、アンプを備え、そのアンプにより、前記任意の波長の光を増幅することもできる。
【0018】
第2の検出器6は、白色光の照射によって、ダイオードまたは発光ダイオードから発生した電界発光の強度を計測するためのものである。第2の検出器6としては、ダイオードまたは発光ダイオードから発生した電界発光の強度を計測することができるものであれば特に限定されないが、例えば、フォトダイオードが挙げられる。第2の検出器6は、導線12を介してオシロスコープ7と接続されている。また、第2の検出器6は、アンプを備え、そのアンプにより、前記電界発光を増幅することもできる。
【0019】
オシロスコープ7は、第1の検出器5によって計測された任意の波長の光の強度に関する電気信号、および第2の検出器6によって計測された電界発光の強度に関する電気信号の時間変化を観測するためのものである。オシロスコープ7としては、前記電気信号の時間変化を観測することができるものであれば特に限定されない。
【0020】
第1の凹面鏡8は、光源3から発生した白色光を集光して、半導体素子200に含まれるダイオードまたは発光ダイオードに照射するためのものである。半導体素子200に対する白色光の照射をレンズで行うと、波長による屈折率の違い(色収差)により、波長に空間分布が生じる。そこで、第1の凹面鏡8を用いることにより、波長に空間分布が生じることを抑制する。
【0021】
第2の凹面鏡9は、半導体素子200に含まれるダイオードまたは発光ダイオードを透過した白色光を集光して、分光器4に入射するためのものである。
【0022】
集光レンズ10は、白色光の照射によって、ダイオードまたは発光ダイオードにおいて、ホールと電子の再結合が生じることによって発生した電界発光を集光して、第2の検出器6に入射するためのものである。
【0023】
通常、光源3から発生する白色光の強度は小さいため、白色光による半導体素子200の劣化は生じにくい。しかしながら、白色光の強度が高く、白色光による半導体素子200の劣化が想定される場合には、半導体素子200におけるエネルギーギャップ以下の光を、半導体素子200に透過させればよい。そこで、この場合には、白色光の光量を低減するために、色ガラスフィルター等の光量低減用フィルターを、光源3と半導体素子200の間に配置する。なお、半導体素子200の動作中に発生するキャリヤ等は、通常、半導体素子200におけるエネルギーギャップよりも小さい遷移エネルギーをもつため、光量低減用フィルターを配置しても観測することができる。また、電界発光の計測では、光源3と半導体素子200の間に配置した光量低減用フィルターで可視光をカットし、半導体素子200における第2の検出器6側では、干渉フィルター等で、電界発光のうち可視光のみが検出されるようにする。
【0024】
本実施形態の観測装置1では、光源3から発生した白色光が第1の凹面鏡8で集光される。第1の凹面鏡8で集光された白色光は、半導体素子200に含まれるダイオードまたは発光ダイオードに照射される。ダイオードまたは発光ダイオードを透過した白色光は第2の凹面鏡9で集光される。第2の凹面鏡9で集光された白色光は、分光器4に入射される。
【0025】
分光器4では、白色光を任意の波長の光(可視光、近赤外光)に分光する。分光器4にて、白色光を任意の波長の光(または光学エネルギー)に分けた後、第1の検出器5で任意の波長の光の強度を計測するとともに、その任意の波長の光を増幅した後、その任意の波長の光の電気信号をオシロスコープ7に伝送する。
【0026】
第1の検出器5では、ダイオードまたは発光ダイオードを透過した白色光の強度に比例する電流の信号(電気信号)が得られる。また、第1の検出器5のアンプは、前記電流から電圧への変換と同時に、電気信号の増幅も行う。
【0027】
白色光の照射によって、ダイオードまたは発光ダイオードから発生した電界発光は、集光レンズ10によって集光され、第2の検出器6に入射される。
【0028】
第2の検出器6では、電界発光の強度に比例する電流の信号(電気信号)が得られる。また、第2の検出器6に内蔵されたアンプは、前記電流から電圧への変換と同時に、電気信号の増幅も行う。
【0029】
オシロスコープ7では、各時間の電気信号を連続的に記録・出力する機能を用いる。具体的には、各時間位置における、分光器4を通過したアンプ増幅後の透過光の信号が、連続的にオシロスコープ上で出力される。そこで、この連続記録の開始と同時に、分光器4の波長スイープを同期すると、各時間における、ダイオードまたは発光ダイオードを透過した白色光に関する電気信号の波長変化が記録される。また、各時間における、ダイオードまたは発光ダイオードから発生した電界発光に関する電気信号の波長変化が記録される。
【0030】
本実施形態の半導体素子の観測装置1は、ダイオードまたは発光ダイオードを駆動させることによって発生する電子やホールの直接観測を可能とする可視・近赤外分光を、ダイオードまたは発光ダイオードの動作と組わせて実施し、ダイオードまたは発光ダイオードが劣化しない実験条件下にて、ダイオードまたは発光ダイオードが動作した際に生じる電子状態の変化の情報を観測することができる。また、本実施形態の半導体素子の観測装置1は、上記可視・近赤外分光を、オシロスコープと組わせることによって、ダイオードまたは発光ダイオードが駆動してから、電子やホールが発生し、再結合する過程を、スペクトル変化として直接観測することができる。
【0031】
[半導体素子の観測方法]
本発明の一実施形態に係る半導体素子の観測方法は、駆動状態のダイオードまたは発光ダイオードに白色光を照射する工程(以下、「工程A1」と言う。)と、前記ダイオードまたは前記発光ダイオードを透過した白色光を任意の波長の光に分光する工程(以下、「工程B1」と言う。)と、分光された前記任意の波長の光の強度を計測する工程(以下、「工程C1」と言う。)と、白色光の照射によって、前記ダイオードまたは前記発光ダイオードから発生した電界発光の強度を計測する工程(以下、「工程D1」と言う。)と、計測された前記任意の波長の光の強度に関する電気信号、および計測された前記電界発光の強度に関する電気信号の時間変化を観測する工程(以下、「工程E1」と言う。)と、を有する。
【0032】
以下、
図1を参照して、本実施形態の半導体素子の観測方法を説明する。
【0033】
「工程A1」
工程A1では、電源2によって電圧が印加され、駆動状態にあるダイオードまたは発光ダイオードに、光源3から白色光を照射する。
【0034】
「工程B1」
工程B1では、分光器4にて、ダイオードまたは発光ダイオードを透過した白色光を任意の波長の光(可視光、近赤外光)に分光する。
【0035】
「工程C1」
工程C1では、分光器4にて分光された任意の波長の光の強度に比例する電流の信号(電気信号)を、第1の検出器5で得るとともに、第1の検出器5で電気信号の強度を計測する。また、第1の検出器5に備えられたアンプで、前記電流から電圧への変換と同時に、電気信号の増幅も行う。
【0036】
「工程D1」
工程D1では、白色光の照射によって、ダイオードまたは発光ダイオードから発生した電界発光の強度に比例する電流の信号(電気信号)を、第2の検出器6で得るとともに、第2の検出器6で電気信号の強度を計測する。また、第2の検出器6に備えられたアンプで、電流から電圧への変換と同時に、電気信号の増幅も行う。
【0037】
「工程E1」
工程E1では、オシロスコープ7で、第1の検出器5で計測された任意の波長の光の強度に関する電気信号、および第2の検出器6で計測された電界発光の強度に関する電気信号の時間変化を観測する。
「任意の波長の光の強度に関する電気信号」とは、白色光の照射によって、ダイオードまたは発光ダイオードから発生した等からの吸収信号を計測する信号のことである。その信号と電界発光強度の時間依存性を比較することで、キャリヤがどのタイミングで発生し、そのときに電界発光に寄与するのか等を評価する。
【0038】
本実施形態の半導体素子の観測方法は、ダイオードまたは発光ダイオードを駆動させることによって発生する電子やホールの直接観測を可能とする可視・近赤外分光を、ダイオードまたは発光ダイオードの動作と組わせて実施し、ダイオードまたは発光ダイオードが劣化しない実験条件下にて、ダイオードまたは発光ダイオードが動作した際に生じる電子状態の変化の情報を観測することができる。また、本実施形態の半導体素子の観測方法は、上記可視・近赤外分光を、オシロスコープを用いた電気信号の時間変化の観測と組わせることによって、ダイオードまたは発光ダイオードが駆動してから、電子やホールが発生し、再結合する過程を、スペクトル変化として直接観測することができる。
【0039】
(2)第1の実施形態
[半導体素子の観測装置]
図2は、本発明の一実施形態に係る半導体素子の観測装置を示す模式図である。以下、本実施形態の半導体素子の観測装置を「観測装置」と言うこともある。
図2に示すように、本実施形態の観測装置100は、電源21と、光源22と、分光器23と、検出器24と、オシロスコープ25と、を備える。また、本実施形態の観測装置100は、第1の凹面鏡26と、第2の凹面鏡26と、を備えていることが好ましい。
【0040】
本実施形態の観測装置100は、半導体素子300の電子状態を観測する装置である。
図2に示すように、半導体素300は、例えば、ガラス基板310と、ゲート層320と、透明性誘電体層330と、半導体層340とを備える。半導体素子300では、ガラス基板310上に、ゲート層320と、透明性誘電体層330と、半導体層340とがこの順に積層されている。半導体層340は、電界効果トランジスタを含む。
半導体素子300には、半導体層340上に、半導体層340に電圧を印加するための一対の電極410,420が設けられている。電極410,420は、導線28を介して電源21と接続されている。電極410,420としては、例えば、金からなる電極膜が挙げられる。
【0041】
電源21は、半導体層340に含まれる電界効果トランジスタを駆動させるためのものである。電源21としては、上記の電源2と同様のものを用いることができる。
【0042】
光源22は、電源21によって電圧が印加されて駆動状態の電界効果トランジスタに白色光を照射するためのものである。光源22としては、上記の光源3と同様のものを用いることができる。
【0043】
分光器23は、白色光の照射によって、駆動状態の電界効果トランジスタを透過した白色光を任意の波長の光(可視光、近赤外光)に分光するためのものである。分光器23としては、上記の分光器4と同様のものを用いることができる。
【0044】
検出器24は、分光器23によって分光された任意の波長の光の強度を計測するためのものである。検出器24としては、上記の第1の検出器5と同様のものを用いることができる。
【0045】
オシロスコープ25は、検出器24によって計測された任意の波長の光の強度に関する電気信号の時間変化を観測するためのものである。オシロスコープ25としては、上記のオシロスコープ7と同様のものを用いることができる。
【0046】
第1の凹面鏡26は、光源22から発生した白色光を集光して、半導体素子300の半導体層340に含まれる電界効果トランジスタに照射するためのものである。第1の凹面鏡26としては、上記の第1の凹面鏡8と同様のものを用いることができる。
【0047】
第2の凹面鏡27は、半導体素子300を透過した白色光を集光して、分光器23に入射するためのものである。第2の凹面鏡27としては、上記の第2の凹面鏡9と同様のものを用いることができる。
【0048】
本実施形態の観測装置100においても、白色光の強度が高く、白色光による半導体素子300の劣化が想定される場合には、白色光の光量を低減するために、色ガラスフィルター等の光量低減用フィルターを、光源22と半導体素子300の間に配置してもよい。
【0049】
本実施形態の観測装置100では、光源22から発生した白色光が第1の凹面鏡26で集光される。第1の凹面鏡26で集光された白色光は、半導体素子300の半導体層340に含まれる電界効果トランジスタに照射される。電界効果トランジスタを透過した白色光は第2の凹面鏡27で集光される。第2の凹面鏡27で集光された白色光は、分光器23に入射される。
【0050】
分光器23では、白色光を任意の波長の光(可視光、近赤外光)に分光する。分光器23にて、白色光を任意の波長の光(または光学エネルギー)に分けた後、検出器24で任意の波長の光の強度を計測するとともに、その任意の波長の光を増幅した後、その任意の波長の光の電気信号をオシロスコープ25に伝送する。
【0051】
検出器24では、電界効果トランジスタを透過した白色光の強度に比例する電流の信号(電気信号)が得られる。また、検出器24のアンプは、前記電流から電圧への変換と同時に、電気信号の増幅も行う。
【0052】
オシロスコープ25では、各時間の電気信号を連続的に記録・出力する機能を用いる。具体的には、各時間位置における、分光器23を通過したアンプ増幅後の透過光の信号が、連続的にオシロスコープ上で出力される。そこで、この連続記録の開始と同時に、分光器23の波長スイープを同期すると、各時間における、電界効果トランジスタを透過した白色光に関する電気信号の波長変化が記録される。また、各時間における、電界効果トランジスタから発生した電界発光に関する電気信号の波長変化が記録される。
【0053】
本実施形態の半導体素子の観測装置100は、電界効果トランジスタを駆動させることによって発生する電子やホールの直接観測を可能とする可視・近赤外分光を、電界効果トランジスタの動作と組わせて実施し、電界効果トランジスタが劣化しない実験条件下にて、電界効果トランジスタが動作した際に生じる電子状態の変化の情報を観測することができる。また、本実施形態の半導体素子の観測装置100は、上記可視・近赤外分光を、オシロスコープと組わせることによって、電界効果トランジスタが駆動してから、電子やホールが発生し、再結合する過程を、スペクトル変化として直接観測することができる。
【0054】
[半導体素子の観測方法]
本発明の一実施形態に係る半導体素子の観測方法は、駆動状態の電界効果トランジスタに白色光を照射する工程(以下、「工程A2」と言う。)と、前記電界効果トランジスタを透過した白色光を任意の波長の光に分光する工程(以下、「工程B2」と言う。)と、分光された前記任意の波長の光の強度を計測する工程(以下、「工程C2」と言う。)と、計測された前記任意の波長の光の強度に関する電気信号の時間変化を観測する工程(以下、「工程D2」と言う。)と、を有する。
【0055】
以下、
図2を参照して、本実施形態の半導体素子の観測方法を説明する。
【0056】
「工程A2」
工程A2では、電源21によって電圧が印加され、駆動状態にある電界効果トランジスタに、光源22から白色光を照射する。
【0057】
「工程B2」
工程B2では、分光器23にて、ダイオードまたは発光ダイオードを透過した白色光を任意の波長の光(可視光、近赤外光)に分光する。
【0058】
「工程C2」
工程C2では、分光器23にて分光された任意の波長の光の強度に比例する電流の信号(電気信号)を、検出器24で得るとともに、検出器24で電気信号の強度を計測する。また、検出器24に備えられたアンプで、前記電流から電圧への変換と同時に、電気信号の増幅も行う。
【0059】
「工程D2」
工程D2では、オシロスコープ25で、検出器24で計測された任意の波長の光の強度に関する電気信号の時間変化を観測する。
【0060】
本実施形態の半導体素子の観測方法は、電界効果トランジスタを駆動させることによって発生する電子やホールの直接観測を可能とする可視・近赤外分光を、半導体素子の動作と組わせて実施し、電界効果トランジスタが劣化しない実験条件下にて、電界効果トランジスタが動作した際に生じる電子状態の変化の情報を観測することができる。また、本実施形態の半導体素子の観測方法は、上記可視・近赤外分光を、オシロスコープを用いた電気信号の時間変化の観測と組わせることによって、電界効果トランジスタが駆動してから、電子やホールが発生し、再結合する過程を、スペクトル変化として直接観測することができる。
【実施例0061】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0062】
[実験例1]
通常、オシロスコープは、時間軸を横軸として電圧を記録する。
図3は、ダイオードや発光ダイオードを駆動するための方形波電圧の時間変化を示した波形に関する図である。例えば、
図3に示した矢印の時間におけるスペクトルを記録する計測を行う場合について検討する。
本実験例では、
図1に示す観測装置と同様の装置を用いた。ここで、オシロスコープにおいて、各時間の信号を連続的に記録・出力する機能を用いる。具体的には、各時間位置における、分光器を通過し、検出器のアンプで増幅された後の光の信号が、連続的にオシロスコープ上で出力される(この場合は5つの出力信号が出力)。そこで、この連続記録の開始と同時に、分光器の波長スイープを同期して起こさせると、各時間における半導体素子を透過した光(以下、「透過光」と言う。)の信号の波長変化が記録される。
【0063】
図3において、一番左の矢印(1)は、半導体素子を駆動させる直前の時間位置を示しており、この時間の信号は駆動前の透過光の強度の情報を与える。そこで、
図3の矢印(1)以外の矢印(2)~(5)の透過光の信号から、矢印(1)の位置での信号を差し引くと、各時間位置での透過光の強度の変化を計算することができる。
各時間、各波長での透過光の強度をI(t,λ)とする。tは時間、λは波長を表す。上記の差し引きによって得られる変化分ΔI(t,λ)は、ΔI(t,λ)=I(t,λ)-I(0,λ)である。ただし、実際には、もともと白色ランプの強度は波長による強度のばらつきが大きく、I(t,λ)はその寄与を含んでいる。そのため、実際には、ΔI(t,λ)/I(0,λ)を計算して規格化する。さらに、-log
10eをかけることで、吸光度変化ΔODとなる。以上の計算から、
図4に示す駆動電圧印加後の吸収スペクトルが得られる。ただし、実際には、観測される吸光度変化は、10
-3から10
-4程度と非常に小さいため、信号の取得には工夫が必要となる。具体的には、一般に信号の増幅を大きくするほど高速信号が追随しないため、信号の時間変化を消さないギリギリの範囲で信号の増幅を行う。また、オシロスコープ等のローパスフィルターで高速信号のノイズも除去するが、ここでも信号の時間変化を消さない程度の時定数のものを用いる。以上を考慮して得た
図4に示す駆動電圧印加後の吸収スペクトルでは、1.6eVにてホールの信号、2.3eV付近にて電子の信号が時間変化する様子が示されている。さらに、1.2eV付近の信号は、電極として用いた透明電極からの信号である。
図4に示す駆動電圧印加後のスペクトルでは、時間とともに信号が成長し、駆動時間とともに電極上に電子やホールが蓄積する様子を捉えている。
半導体素子としては、正極を透明電極(Indium tin oxide:ITO)とし、負極をアルミニウム電極として、正極と負極の間に、ポリマー型半導体のsuperyellow ポリパラフェニレンビニレンをイオン液体と混合した電気化学発光セルを発光層として配置したものを用いた。
発光のスペクトルの測定波長範囲を400nm~1000nm、吸収のスペクトルの測定波長範囲を400nm~900nmとした。
【0064】
[実験例2]
図1に示す観測装置と同様の装置を用いて、電圧を印加しない状態での半導体素子の吸収スペクトルと、半導体素子の電界発光スペクトルとを測定した。結果を
図5に示す。
図5において、破線で示す線は電圧を印加しない状態での半導体素子の吸収スペクトルを示し、実線で示す線は半導体素子の電界発光スペクトルを示す。
図5に示すように、吸収スペクトルと電界発光スペクトルでは、ピークが一致しないことが分かった。
【0065】
[実験例3]
図1に示す観測装置と同様の装置を用いて、半導体をヨウ素ガスで化学酸化したときの吸収スペクトルを測定した。
半導体としては、ポリマー型半導体のsuperyellow ポリパラフェニレンビニレンの薄膜を用いた。
ヨウ素ガスによる化学酸化では、固体ヨウ素を上記薄膜付近に配置し、ヨウ素から発生する気体が上記薄膜にかかるようにすることで酸化反応を起こした。
吸収スペクトルの測定波長範囲を、400nm~1600nmとした。結果を
図6に示す。
図6に示すように、酸化状態によりホール状態が発生することが分かった。
【0066】
[実験例4]
図1に示す観測装置と同様の装置を用いて、半導体素子をカルシウム電極で挟んだ状態で電圧を印加し、半導体素子の吸収スペクトルを測定した。
半導体素子としては、ITO/Ca/superyellow/Caの積層構造を有し、大きさが7mm×7mmのものを用いた。
吸収スペクトルの測定波長範囲を、400nm~1600nmとした。
1kHzで1Vから1.5Vに交流方形波電圧を変調し、それに同期するフォトダイオードからの透過光出力をアンプ増幅後ロックインアンプで計測し、波長変化と合わせることでスペクトルを得た。結果を
図7に示す。
図7に示すように、半導体素子をカルシウム電極で挟んだ状態で電圧を印加した場合、ホールが注入されにくく、電子だけが注入され、電子キャリヤのスペクトルが得られることが分かった。
【0067】
なお、実際には、ホールと電子のスペクトル構造は似ている。これは想定される結果である。
図4に示すように、駆動電圧印加後の吸収スペクトルでは、1.6eVにてホールの信号が時間変化する様子が示され、2.3eV付近にて電子の信号が時間変化する様子が示されている。従って、
図5~
図7において、ホールの遷移を示すピークは1.5eV付近ではやや低エネルギー側にあり、電子の遷移を示すピークは2.4eV付近にてやや高エネルギー側にある。これらの事象は、ホールと電子が発生した証拠である。
【0068】
[実験例5]
図1に示す観測装置と同様の装置を用いて、半導体素子の電流電圧特性と、電界発光の強度と電圧との関係とを測定した。
半導体素子としては、正極を透明電極(Indium tin oxide:ITO)とし、負極をアルミニウム電極として、正極と負極の間に、ポリマー型半導体のsuperyellow ポリパラフェニレンビニレンをイオン液体と混合した電気化学発光セルを発光層として配置したものを用いた。
電流電圧特性は、電圧を0.1V刻みで0Vから4Vまで変化させて、その都度、電流を計測して得た。
電界発光強度の電圧依存性は、電圧を変化させながらフォトダイオードで電界発光を計測し、そのうちの1点の電圧値における発光輝度を輝度計で計測することで、全体を輝度計の数値に変換した。結果を
図8に示す。
図8において、破線で示す線は半導体素子の電流電圧特性を示し、実線で示す線は電界発光の強度と電圧との関係を示す。
図8に示すように、電流は0.5Vで、電界発光の強度は2.5Vでそれぞれ立ち上がる。この違いは、電流の場合には、ホールのみが最初注入され、2.5Vにて電子注入も始まり、発光再結合が始まることにより生じる。そのため、2.5V未満では、ホールのみが注入されるダイオードとみすことができる。
【0069】
[実験例6]
図1に示す観測装置と同様の装置を用いて、半導体素子に印加する電圧を0.8Vから2Vに増加させて、半導体素子の吸収スペクトルの時間による変化を測定した。
半導体素子としては、正極を透明電極(Indium tin oxide:ITO)とし、負極をアルミニウム電極として、正極と負極の間に、ポリマー型半導体のsuperyellow ポリパラフェニレンビニレンをイオン液体と混合した電気化学発光セルを発光層として配置したものを用いた。
1kHzで0.8Vから2.0に変調した交流方形波を半導体素子に印加した際の透過分光信号の変化を、アンプ増幅後、オシロスコープに取り込むことで、時間分解信号を得た。その計測を、470nm~1100nmの波長変化と同期させて行うことでスペクトルを得た。結果を
図9に示す。
図9に示すように、本実験例では、ホールの信号のみが観測されていると考えられる。
【0070】
[実験例7]
図2に示す観測装置と同様の装置を用いて、電界効果トランジスタ(FET)の動作中に半導体層にて発生するキャリヤを、ゲートバイアス印加と同期させて計測した。結果を
図10に示す。
図10に示すように、1.6eV付近のホールの吸収以外に、半導体素子内の電子がゲート電場を受けることに起因する吸収波形の微分形スペクトルが1.85eV付近に現れることが分かった。
図10に示す1stと2ndは、一次微分と二次微分の略である。