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特開2025-13209超音波カップリング材組成物、超音波カップリング材膜、及び超音波検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013209
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】超音波カップリング材組成物、超音波カップリング材膜、及び超音波検査方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20250117BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20250117BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61B8/00
C08L83/04
B32B27/00 101
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024101654
(22)【出願日】2024-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2023114770
(32)【優先日】2023-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】畠山 潤
(72)【発明者】
【氏名】池田 譲
(72)【発明者】
【氏名】黒田 泰嘉
【テーマコード(参考)】
4C601
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4C601EE11
4C601GC04
4F100AB24B
4F100AK52
4F100AK52B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ42
4F100EJ67
4F100EJ67B
4F100EJ86
4F100EK13
4F100GB66
4F100JA06B
4F100JL08B
4F100JL11B
4F100YY00B
4J002CP03W
4J002CP043
4J002CP14X
4J002CP17W
4J002GB04
4J002GF00
(57)【要約】
【課題】肌の凹凸を埋めて超音波伝達性と感度が高く及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで超音波カップリング材膜を製造することができ、水に濡れても乾燥しても超音波伝達性が大幅に低下することがなく、柔らかく伸縮性に優れ、剥がした後に肌上に残渣が残ることが無く、肌荒れが生じることもない。
【解決手段】(A)シリコーン粘着剤と(B)架橋点を有さないシリコーンオイルとを含有する超音波カップリング材組成物であって、前記(A)成分が、25℃での粘度が100,000mPa・s以上のジオルガノポリシロキサン(a)と、MQレジンと有機溶剤を含む樹脂組成物(b)との混合物又は縮合反応生成物であり、前記(B)成分が、25℃における動粘度が10~100000mm/sの範囲にある架橋点を有さないシリコーンオイルである超音波カップリング材組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シリコーン粘着剤と(B)架橋点を有さないシリコーンオイルとを含有する超音波カップリング材組成物であって、
前記(A)シリコーン粘着剤が、25℃での粘度が100,000mPa・s以上のジオルガノポリシロキサン(a)と、
SiO1/2及びSiO単位を有する樹脂(Rは水素原子又は置換又は非置換の炭素数1~10の1価炭化水素基である。)と有機溶剤を含む樹脂組成物(b)との混合物又は縮合反応生成物であり、
前記(B)架橋点を有さないシリコーンオイルが、25℃における動粘度が10~100000mm/sの範囲である架橋点を有さないシリコーンオイル
であることを特徴とする超音波カップリング材組成物。
【請求項2】
前記ジオルガノポリシロキサン(a)がアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン(a1)であることを特徴とする請求項1に記載の超音波カップリング材組成物。
【請求項3】
更に、(C)成分として、SiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むものであることを特徴とする請求項2に記載の超音波カップリング材組成物。
【請求項4】
更に、白金系触媒を含有するものであることを特徴とする請求項3に記載の超音波カップリング材組成物。
【請求項5】
前記(C)成分のSiH基のモル数を(A)成分のアルケニル基のモル数で割った値が0.5~20の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の超音波カップリング材組成物。
【請求項6】
前記(B)成分が、アルケニル基及びSiH基を有さない直鎖状又は分岐状のジオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項2に記載の超音波カップリング材組成物。
【請求項7】
前記(B)成分の質量を、前記(a)成分と前記(b)成分の固形分量と前記(B)成分と前記(C)成分の合計の質量で割った値が0.2~0.8の範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の超音波カップリング材組成物。
【請求項8】
更に、前記(a)成分と前記(b)成分の固形分量と前記(B)成分と前記(C)成分の合計100質量部に対して乾式シリカを0.1~10質量部含有するものであることを特徴とする請求項3に記載の超音波カップリング材組成物。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の超音波カップリング材組成物の硬化物からなる超音波カップリング材膜。
【請求項10】
前記超音波カップリング材膜の膜厚が10~10000μmの範囲であることを特徴とする請求項9に記載の超音波カップリング材膜。
【請求項11】
請求項9に記載の超音波カップリング材膜が支持体から分離独立している自立膜であることを特徴とする単独超音波カップリング材膜。
【請求項12】
支持体と、前記支持体上に直に接する請求項9に記載の超音波カップリング材膜とから構成される積層構造体。
【請求項13】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の超音波カップリング材組成物をリリースライナー膜上に塗布し、加熱硬化して超音波カップリング材膜とし、次いで、前記超音波カップリング材膜から前記リリースライナー膜を剥がして超音波カップリング材膜を他の支持体上に張り付け、前記他の支持体に接する面と反対側の面に超音波プローブを付着させて積層構造とすることを特徴とする積層構造の形成方法。
【請求項14】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の超音波カップリング材組成物をリリースライナー膜上に塗布し、加熱硬化して超音波カップリング材膜とし、次いで、前記超音波カップリング材膜から前記リリースライナー膜を剥がして超音波カップリング材膜を超音波プローブに張り付けて積層構造とすることを特徴とする積層構造の形成方法。
【請求項15】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の超音波カップリング材組成物を超音波プローブ上に塗布し、加熱硬化して超音波カップリング材膜を形成して積層構造とすることを特徴とする積層構造の形成方法。
【請求項16】
請求項14に記載の積層構造の形成方法に続いて、前記超音波プローブを前記超音波カップリング材膜が形成された面を肌上に付着させて超音波検査を行うことを特徴とする検査方法(ヒトを手術、治療又は診断する方法を除く)。
【請求項17】
請求項15に記載の積層構造の形成方法に続いて、前記超音波プローブを前記超音波カップリング材膜が形成された面を肌上に付着させて超音波検査を行うことを特徴とする検査方法(ヒトを手術、治療又は診断する方法を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波カップリング材組成物、超音波カップリング材膜、及び超音波検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT(Internet of Things)の普及と共にウェアラブルデバイスの開発が進んでいる。インターネットに接続できる時計や眼鏡がその代表例である。また、医療分野やスポーツ分野においても、体の状態を常時モニタリングできるウェアラブルデバイスが必要とされており、今後の成長分野である。
【0003】
例えば、光学センサ、静電容量センサ、超音波センサ、感圧センサ等を搭載した時計型ウェアラブルデバイスが提案されている(特許文献1)。
【0004】
超音波診断が可能なウェアラブルデバイスも検討されている。この場合、体内の臓器や血管の状況を可視化し、脈拍や血圧を常時測定することが可能となる(特許文献2)。
【0005】
超音波診断計は、超音波プローブ(探触子)を肌に密着させ、超音波発信機を通じてプローブ表面から発せられた超音波が体内ではね返り、プローブを通じて受信機で体内の情報を検知することが出来る。超音波測定時、被測定面に凹凸が有って超音波プローブの表面が被測定面の凹凸を覆うことが出来ずに空気の層が存在すると、超音波プローブ表面から発せられた超音波は空気層で反射して体内に届かない。そのため、超音波診断時には超音波プローブ表面と肌との間に水溶性のゲルベースのカップリング材が挿入される(特許文献3)。特許文献4では、多くの水溶性カップリング材料が例示されている。
【0006】
一度だけの超音波の測定であれば、水溶性のゲルベースのカップリング材を皮膚上に塗布し、その上に超音波プローブを密着させて測定を行い、測定後の皮膚表面のゲルを、水を含んだ布や紙で拭きとったり水洗によって洗い流せば良い。しかしながら、超音波プローブを長期間張り付けて測定する場合だと、貼り付けたまま汗をかく運動をしたりシャワーや入浴をしたりすると水溶性ゲルが溶解してしまい、カップリング材が無くなると超音波信号を受信出来なくなるため、長期装着の用途にはゲルベースのカップリング材が使えない問題がある。
【0007】
このため、非水溶性のカップリング材が提案されている。例えば、パラフィン系の材料(特許文献5)やシリコーンゲルベースの材料が提案されている(特許文献6)。
【0008】
水溶性ゲルのカップリングであれば上記のように測定後に簡単に除去可能であるが、パラフィンやシリコーンが肌に残った場合、これを除去するのにパラフィンオイル等がしみ込んだ紙や布で拭く必要があり簡便ではない。シリコーンゲルは低架橋なシリコーンゴムであるが、これにシリコーンオイルが添加されている場合はシリコーンオイルが肌に残存する可能性が有り、剥がした後に残ったシリコーンオイルを除去する必要がある。
【0009】
従って、長期装着用途に非水溶性の超音波測定用のカップリング材が望まれており、超音波測定後に肌からカップリング材を剥がした後に肌上の残渣がなく、肌の凹凸を覆うことによって超音波の透過性と感度が高いカップリング材の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2021-093127号公報
【特許文献2】国際公開第2020/049934号
【特許文献3】特開昭46-000146号公報
【特許文献4】特表2005-532871号公報
【特許文献5】特開昭63-019135号公報
【特許文献6】米国特許第9211106号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、肌の凹凸を埋めて超音波伝達性と感度が高く及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで超音波カップリング材膜を製造することができ、水に濡れても乾燥しても超音波伝達性が大幅に低下することがなく、柔らかく伸縮性に優れ、剥がした後に肌上に残渣が残ることが無く、肌荒れが生じることもない超音波カップリング材組成物、超音波カップリング材膜、及び超音波検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明では、(A)シリコーン粘着剤と(B)架橋点を有さないシリコーンオイルとを含有する超音波カップリング材組成物であって、
前記(A)シリコーン粘着剤が、25℃での粘度が100,000mPa・s以上のジオルガノポリシロキサン(a)と、
SiO1/2及びSiO単位を有する樹脂(Rは水素原子又は置換又は非置換の炭素数1~10の1価炭化水素基である。)と有機溶剤を含む樹脂組成物(b)との混合物又は縮合反応生成物であり、
前記(B)架橋点を有さないシリコーンオイルが、25℃における動粘度が10~100000mm/sの範囲である架橋点を有さないシリコーンオイル
であることを特徴とする超音波カップリング材組成物を提供する。
【0013】
このような超音波カップリング材組成物であれば、肌の凹凸を埋めて超音波伝達性と感度が高く及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで超音波カップリング材膜を製造することができ、水に濡れても乾燥しても超音波伝達性が大幅に低下することがなく、柔らかく伸縮性に優れ、剥がした後に肌上に残渣が残ることが無く、肌荒れが生じることもない。
【0014】
本発明では、前記ジオルガノポリシロキサン(a)がアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン(a1)であることが好ましい。
【0015】
このようなジオルガノポリシロキサン(a)を含むものであれば、アルケニル基が架橋点となるため、好ましい超音波カップリング材膜を形成できる。
【0016】
この場合、更に、(C)成分として、SiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むものであることが好ましく、更に、白金系触媒を含有するものであることがより好ましい。
【0017】
アルケニル基を有するジオルガノシロキサン(a1)と、SiH基を複数有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)とは、白金系触媒による付加反応によって架橋させることができる。
【0018】
この場合、前記(C)成分のSiH基のモル数を(A)成分中のアルケニル基のモル数で割った値が0.5~20の範囲であることが好ましい。
【0019】
このような組成物であれば、付加硬化反応により、好ましい超音波カップリング材膜を得ることができる。
【0020】
また、本発明では、前記(B)成分が、アルケニル基及びSiH基を有さない直鎖状又は分岐状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0021】
本発明では、このような(B)成分であることが好ましい。
【0022】
また、前記(B)成分の質量を、前記(a)成分と前記(b)成分の固形分量と前記(B)成分と前記(C)成分の合計の質量で割った値が0.2~0.8の範囲にあることが好ましい。
【0023】
(B)成分の質量をこのような範囲することで、好ましい超音波カップリング材膜を得ることができる。
【0024】
更に、前記(a)成分と前記(b)成分の固形分量と前記(B)成分と前記(C)成分の合計100質量部に対して乾式シリカを0.1~10質量部含有するものであるが好ましい。
【0025】
本発明の組成物が乾式シリカを含有することによって、得られる超音波カップリング材膜の強度が向上し、リリースライナーから剥がしたときに膜が千切れづらくなり、肌や超音波プローブ上に貼りやすくなる。
【0026】
また、本発明は、上記超音波カップリング材組成物の硬化物からなる超音波カップリング材膜を提供する。
【0027】
本発明の超音波カップリング材膜は、肌の凹凸を埋めて超音波伝達性と感度が高く及び生体適合性に優れ、軽量であり、水に濡れても乾燥しても超音波伝達性が大幅に低下することがなく、柔らかく伸縮性に優れ、剥がした後に肌上に残渣が残ることが無く、肌荒れが生じることもない。
【0028】
この場合、上記超音波カップリング材膜の膜厚が10~10000μmの範囲であることが好ましい。
【0029】
膜厚が上記範囲であると、超音波伝達性と感度に優れ、軽量で、柔軟性と伸縮性に優れ、剥がした後に肌上に残渣が残ることが無く、肌荒れが生じることもないという効果がより高まる。
【0030】
また、本発明は、上記超音波カップリング材膜が支持体から分離独立している自立膜であることを特徴とする単独超音波カップリング材膜を提供する。
【0031】
本発明の超音波カップリング材膜は、自立膜(単独膜)として用いることもでき、超音波検査において取扱い易い。
【0032】
また、本発明は、支持体と、前記支持体上に直に接する上記超音波カップリング材膜とから構成される積層構造体を提供する。
【0033】
本発明の超音波カップリング材膜は、自立膜として用いることもできるが、支持体に上記超音波カップリング材膜を積層した構成(積層構造体)として用いることもでき、超音波検査において取扱い易い。
【0034】
また、本発明は、上記超音波カップリング材組成物をリリースライナー膜上に塗布し、加熱硬化して超音波カップリング材膜とし、次いで、前記超音波カップリング材膜から前記リリースライナー膜を剥がして超音波カップリング材膜を他の支持体上に張り付け、前記他の支持体に接する面と反対側の面に超音波プローブを付着させて積層構造とすることを特徴とする積層構造の形成方法を提供する。
また、上記超音波カップリング材組成物をリリースライナー膜上に塗布し、加熱硬化して超音波カップリング材膜とし、次いで、前記超音波カップリング材膜から前記リリースライナー膜を剥がして超音波カップリング材膜を超音波プローブに張り付けて積層構造とすることもでき、上記超音波カップリング材組成物を超音波プローブ上に塗布し、加熱硬化して超音波カップリング材膜を形成して積層構造とすることもできる。
【0035】
本発明では、超音波カップリング材組成物をリリースライナー膜や超音波プローブ上に塗布し、加熱硬化して用いることができるので、超音波検査において上記のように所望の態様を選択して積層構造とすることもできる。
【0036】
また、本発明は、上記積層構造の形成方法に続いて、前記超音波プローブを前記超音波カップリング材膜が形成された面を肌上に付着させて超音波検査を行うことを特徴とする検査方法(ヒトを手術、治療又は診断する方法を除く)を提供する。
【0037】
本発明の超音波カップリング材組成物を用いて形成した超音波カップリング材膜は、優れた超音波透過性と感度を持ちながら耐水性にも優れ、測定後に肌上の残渣がなく、被験者の負担を低減できるので、長期装着用途など、様々な超音波検査において非常に有用である。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明の超音波カップリング材組成物であれば、肌の凹凸を埋めて超音波伝達性と感度が高く及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで製造することができ、水に濡れても乾燥しても超音波伝達性が大幅に低下することがなく、柔らかく伸縮性に優れ、剥がした後に肌上に残渣が残ることが無く、肌荒れが生じることもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明のカップリング材膜の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明のカップリング材膜の他の一例を示す概略断面図である。
図3】本発明のカップリング材膜を肌上に貼り付けた使用の一例を示す概略断面図である。
図4】本発明のカップリング材膜を超音波プローブ上に貼り付けた使用の一例を示す概略断面図である。
図5】超音波プローブと肌との間に本発明のカップリング材膜を付着させた使用の一例を示す概略断面図である。
図6】超音波プローブと肌との間に本発明のカップリング材膜を付着させた状態で超音波診断を行っている一例を示す概略断面図である。
図7】超音波プローブと肌との間に従来のカップリング材膜を付着させた状態で超音波診断を行っている一例を示す概略断面図である。
図8】本発明のカップリング材膜を腕上に張り付けた写真である。
図9】比較例5の水溶性ゲルのグリースを腕上にディスペンスした写真である。
図10】ハンディタイプの超音波診断計(装置)を超音波プローブ面から見た写真である。
図11図1の断面図状態の超音波カップリング材膜を、リリースライナーを剥がしながら超音波プローブに貼り付けている写真である。
図12】カップリング材膜上に超音波測定装置を乗せて超音波診断を行っている写真である。
図13】超音波信号が良好に得られている場合の超音波画像の写真である。
図14】超音波信号がうまく得られていない場合の超音波画像の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
上述のように、非水溶性で肌の凹凸の埋め込み性と音波透過性と生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで製造することができ、柔らかくて伸縮性と強度があり、長期間肌に接し入浴や汗をかいたりして水に濡れても乾燥しても超音波信号を安定的に採取できるカップリング材組成物、該カップリング積層膜、及びその超音波測定方法の開発が求められていた。
【0041】
非水溶性で音波透過性と生体適合性に優れるカップリング材料としては、シリコーン材料を挙げることが出来る。前述の特許文献6にはシリコーンゲルを用いるカップリング材が示されている。シリコーンゲルは、超低密度な架橋の非常に柔らかいシリコーンゴムである。しかしながら、柔らかい肌のミクロン単位の微細な凹凸を埋め込むためには、柔らかいだけでは不十分である。
【0042】
シリコーンゲルを更に柔らかくするために、特開2015-028178号公報に記載されているように、非架橋型のシリコーンオイルや炭化水素系のミネラルオイルを添加する方法を挙げることができる。非架橋のシリコーンオイルの添加は肌の凹凸の埋め込み特性を向上させ、超音波カップリング材として用いた場合に超音波測定の感度が向上する。しかしながら、非架橋のシリコーンオイルを大量に添加した場合は、これがブリードアウトし、超音波の測定が終わってカップリング材膜を肌から剥がした時に肌上にシリコーンオイルの残渣が生じる。シリコーンオイルの残渣があると、これを取り除くためにミネラルオイルが染み込んだタオルや脱脂綿で肌を拭いてやる必要があり、手間がかかるため好ましくない。
【0043】
そこで、本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、非架橋のシリコーンオイルを大量に添加してもブリードアウトすることが無いようにするために、シリコーンゲルではなくシリコーン粘着剤をベースにすることを考案した。このシリコーン粘着剤は、架橋性のシリコーンと、R SiO1/2及びSiO単位を有するMQレジンとの反応物又は混合物であり、非架橋のシリコーンオイルがブリードアウトすることを防ぐものである。本発明者らは、このようなシリコーン粘着剤と架橋点を有さないシリコーンオイルとを含有する超音波カップリング材組成物であれば上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0044】
即ち、本発明は、(A)シリコーン粘着剤と(B)架橋点を有さないシリコーンオイルとを含有する超音波カップリング材組成物であって、
前記(A)シリコーン粘着剤が、25℃での粘度が100,000mPa・s以上のジオルガノポリシロキサン(a)と、
SiO1/2及びSiO単位を有する樹脂(Rは水素原子又は置換又は非置換の炭素数1~10の1価炭化水素基である。)と有機溶剤を含む樹脂組成物(b)との混合物又は縮合反応生成物であり、
前記(B)架橋点を有さないシリコーンオイルが、25℃における動粘度が10~100000mm/sの範囲である架橋点を有さないシリコーンオイル
であることを特徴とする超音波カップリング材組成物である。
【0045】
このように、本発明は、生体の皮膚に接触し、体内の臓器や血管の状況を可視化し、脈拍や血圧を測定するために用いられる超音波診断計と皮膚の間に挿入するカップリング材膜、これを与えるカップリング材組成物、及びカップリング材膜の製造方法に関する。
【0046】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
<超音波カップリング材組成物>
本発明の超音波カップリング材組成物は、シリコーン粘着剤と架橋点を有さないシリコーンオイルと有機溶剤を含有するものである。
本発明の超音波カップリング材組成物において、シリコーン粘着剤(A)が(a)成分、(b)成分の混合物又は縮合反応生成物と有機溶剤との混合物であり、(a)成分がジオルガノポリシロキサン、(b)成分がR SiO1/2及びSiO単位を有する樹脂と有機溶剤から成り、25℃における動粘度が10~100000mm/sの範囲の架橋点を有さないシリコーンオイル(B)成分と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)成分と、白金系触媒を含有することが好ましい。Rは水素原子又は置換又は非置換の炭素数1~10の1価炭化水素基である。
以下、各成分について、更に詳細に説明する。
【0048】
[(A)成分]
(A)シリコーン粘着剤は、25℃での粘度が100,000mPa・s以上のジオルガノポリシロキサン(a)と、R SiO1/2及びSiO単位を有する樹脂(Rは水素原子又は置換又は非置換の炭素数1~10の1価炭化水素基である。)と有機溶剤を含む樹脂組成物(b)との混合物又は縮合反応生成物である。
【0049】
((a)成分)
本発明の超音波カップリング材組成物に配合される(a)成分は、25℃での粘度が100,000mPa・s以上のジオルガノポリシロキサンであり、このようなものであれば特に限定されないが、アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン(a1)であることが好ましい。アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンとしては、特開2015-193803号公報に記載されている成分(A1)に対応し、25℃での粘度が100,000mPa・s以上であるジオルガノポリシロキサンを用いることが出来る。
【0050】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基及びビニルオキシプロピル基等が挙げられ、特にビニル基が好ましく用いられる。
【0051】
アルケニル基以外の基としては、置換又は非置換の炭素数1~10の1価炭化水素基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基又はトリル基等のアリール基、ならびにこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン、アミノ基、水酸基又はシアノ基等の他の基で置換したもの、例えば、3-アミノプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基及び3-シアノプロピル基等が挙げられる。特にメチル基及びフェニル基が好ましい。
【0052】
更に、(a)成分として、特開2015-193803号公報に記載されている成分(A2)に対応し、25℃での粘度が100,000mPa・s以上であり、アルケニル基を有さないジオルガノポリシロキサン(a2)を含有していても良い。A1とA2のポリマーの末端がヒドロキシ基又はアルコキシ基であり、(b)成分のMQレジン中のシラノール基と縮合反応させることによって結合させても良い。この場合は(a)成分と(b)成分が独立した成分ではなく、一体化した成分となる。縮合反応は、酸触媒又はアルカリ性の触媒を用い加熱によって行うことが出来る。
【0053】
a1、a2のポリシロキサンは直鎖状であっても分岐状であっても良い。
【0054】
粘着性のシリコーン系の樹脂としては、付加反応硬化型又はラジカル架橋反応硬化型のものが挙げられる。付加硬化型ではアルケニル基とSiH基とが付加反応によって架橋するが、ラジカル硬化型ではアルケニル基が存在する場合だけでなくアルケニル基が存在しなくても架橋が進行する。この場合、架橋基を有さないシリコーンオイル(B)成分との架橋も起こり得る。これによって、シリコーンオイルの流動性が低下して肌の埋め込み性能が低下し、超音波カップリング材としての感度が低下する可能性が有る。このため、ラジカル架橋型より付加硬化型が好ましい。
【0055】
また、(a)成分として、アミノ基、オキシラン基、オキセタン基、ポリエーテル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、メタクリル基、アクリル基、フェノール基、シラノール基、カルボン酸無水物基、アリール基、アラルキル基、アミド基、エステル基、ラクトン環から選ばれる基を有する変性シロキサンを添加することもできる。変性シロキサンはシロキサンの片末端、両末端、側鎖のいずれが変性されたものでも構わない。
【0056】
(a)成分中のオクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンの量を低減することは、肌刺激性の低減のために有効である。これの低減方法は特開2015-193803号公報に記載されている。
【0057】
(a1)及び(a2)成分は、オイル状又は生ゴム状のいずれでもよい。生ゴム状の場合において、粘度が500,000mPa・s超と高い場合には、30質量%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度(30質量%溶解粘度)が100,000mPa・s以下であることが好ましい。更に、30質量%溶解粘度が1,000~60,000mPa・sであることが好ましい。30質量%溶解粘度が100,000mPa・sを超えると、組成物が高粘度となりすぎて製造時の撹拌が困難になる。なお、本発明において、粘度(絶対粘度)は、回転粘度計により測定される25℃での値である。
【0058】
[(b)成分]
(b)成分は、R SiO1/2及びSiO単位を有する樹脂(Rは水素原子又は置換又は非置換の炭素数1~10の1価炭化水素基である。)と有機溶剤を含む樹脂組成物である。
【0059】
(b)成分中の樹脂は、R SiO1/2単位(M単位)及びSiO単位(Q単位)を有するいわゆるMQレジンであり、有機溶剤に溶解している形態である。Rは水素原子又は置換又は非置換の炭素数1~10の1価炭化水素基である。MQレジンを溶解する有機溶剤としては、後述する有機溶剤を適宜選択すればよい。
【0060】
は水素原子又は置換又は非置換の炭素数1~10の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ビニル基、アリル基及びヘキセニル基等のアルケニル基が挙げられる。更に、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン、アミノ基、水酸基又はシアノ基等の他の基で置換したもの、例えば3-アミノプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基及び3-シアノプロピル基等も例示される。
【0061】
好ましくは、R SiO1/2単位/SiO単位の個数比が0.6~1.7である。上記個数比が上記下限以上では粘着力やタックが低下することもなく、上記上限以下であれば粘着力や保持力も良好である。
【0062】
(b)成分はOH基を有していてもよく、OH基含有量は(B)成分の総質量の0.01~4.0質量%であるのが好ましい。OH基含有量が上記下限以上では粘着剤の凝集力が高く、上記上限以下であると、粘着剤のタックが低下することもない。通常(b)成分のMQレジンはシラノール基を持っており、このシラノール基は(a)成分中のジオルガノポリシロキサンのヒドロキシ基又はアルコキシ基末端と縮合反応することによって化学結合を形成することができる。
【0063】
(b)成分は2種以上を併用してもよい。また、必要に応じて、RSiO3/2単位(T単位)及び/又はR SiO単位(D単位)を(b)成分中に含有させることも可能である。
【0064】
(b)成分の存在によって粘着性が発現し、(B)成分のブリードアウトや、カップリング材を剥がした後に(B)成分が肌上に残存することを防止する。
【0065】
(a)成分と(b)成分の固形分の割合((A)成分中の有機溶剤以外のものの割合)は、(A)成分全体の120質量部当たり(a)成分が20~100質量部であるに対して(b)成分が1~20質量部であることができる。
【0066】
[(B)成分]
(B)成分は、架橋点を有さない(非架橋型)シリコーンオイルであって、25℃における動粘度が10~100000mm/sの範囲内のものであり、好ましくは50~50000mm/sである。なお、本発明において、動粘度はオストワルド粘度計による25℃の測定値である。
【0067】
(B)成分は単体では流動性のオイルであり、(B)成分を添加することによって、超音波カップリング材膜を肌に張り付けた時に肌の微細な凹凸を埋め込んで超音波の透過性を向上させることが出来る。
【0068】
(B)成分の非架橋型シリコーンオイルは、25℃における動粘度が上記範囲内のものであればよく、特に限定されないが、アルケニル基及びSiH基を有さない直鎖状又は分岐状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。このような(B)成分であれば、シリコーン粘着剤(A)との親和性が良く、特に、非架橋型シリコーンオイルを大量に添加してもブリードアウトすることが無いため、オイルがブリードアウトすることを防ぐことができる。
【0069】
(B)成分の質量を、(a)成分、(b)成分の固形分量、(B)成分及び(C)成分の合計質量((A)~(C)成分の固形分の合計質量)で割った値が0.2~0.8(0.20~0.80)の範囲であることが好ましく、更には0.3~0.78の範囲であることが好ましい。
【0070】
[(C)成分]
(C)成分は、(C)成分として、SiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。シリコーン粘着剤がアルケニル基を有する場合、アルケニル基とSiH基とが付加反応(ヒドロシリル化反応)によって架橋(付加硬化)するが、この場合の(C)成分は、架橋剤として機能し得る。(C)成分は、SiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば特に限定されないが、例えば、特開2015-193803号公報に記載されている成分(C)(分子中にSiH基を2個以上、好ましくは3個以上持つ)を用いることができる。
(C)成分の25℃における粘度は1~1,000mPa・sであることが好ましく、2~500mPa・sが更に好ましい。また、(C)成分は2種以上の混合物でもよい。直鎖状でも分岐状や環状構造であってもよい。SiH基の数は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中に2つ以上有することが好ましい。より好ましくは3個以上である。組成物が付加硬化型である場合は、このような(C)成分が好ましい。(b)成分のMQレジンがSiH基を有している場合、(C)成分は必ずしも必要ではない。
【0071】
アルケニル基を有するジオルガノシロキサン(a1)と、SiH基を複数有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)とは、白金系触媒による付加反応によって架橋させることができる。SiH基のモル数をアルケニル基のモル数で割った比としては、0.5~20の範囲が好ましく、より好ましくは1~15の範囲である。
【0072】
白金系触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物、白金-オレフィン錯体、白金-ビニル基含有シロキサン錯体等の白金系触媒、ロジウム錯体及びルテニウム錯体等の白金族金属系触媒などが挙げられる。また、これらの触媒をアルコール系、炭化水素系、シロキサン系溶剤に溶解・分散させたものを用いてもよい。
【0073】
なお、白金系触媒の添加量は、(A)、(B)、(C)と有機溶剤を合わせた樹脂溶液(超音波カップリング材組成物)100質量部に対して5~2,000ppm、特には10~500ppmの範囲とすることが好ましい(金属質量換算)。
【0074】
また、付加硬化型のシリコーン樹脂を用いる場合には、付加反応制御剤を添加してもよい。この付加反応制御剤は、溶液中及び塗膜形成後の加熱硬化前の低温環境下で、白金系触媒が作用しないようにするためのクエンチャーとして添加するものである。具体的には、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロヘキサノール、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ブチン、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ペンチン、3,5-ジメチル-3-トリメチルシロキシ-1-ヘキシン、1-エチニル-1-トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2-ジメチル-3-ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン等が挙げられる。
【0075】
付加反応制御剤の添加量は、樹脂溶液100質量部に対して0~10質量部、特に0.05~3質量部の範囲とすることが好ましい。
【0076】
[シリカ粒子]
本発明の組成物には、乾式シリカ粒子を添加することも出来る。乾式シリカを添加することによって、超音波カップリング材膜の強度が向上し、リリースライナーから剥がしたときに膜が千切れづらくなり、肌や超音波プローブ上に貼りやすくなる。乾式シリカの比表面積としては50~500m/gの範囲であり、100~400m/gが好ましい。比表面積は、BET法で測定すればよい。シリカ表面のシラノールをトリメチルシリル基やジメチルシリル基、ジメチルシリコーンで置換したシリカは分散性が高くて好ましい。乾式シリカは市販品を用いてもよく、例えば、AEROSIL RX200(日本アエロジル製)を用いることができる。
乾式シリカの添加量は、(a)成分、(b)成分の固形分量、(B)成分及び(C)成分の合計((A)~(C)成分の固形分の合計)100質量部に対して乾式シリカを0.1~10質量部添加することが好ましい。
【0077】
[有機溶剤]
また、本発明の組成物には、上記(b)成分に含まれる有機溶剤のほか、更に同一または他の有機溶剤を添加することができる。本発明の組成物に含まれる有機溶剤の種類、量を調整することで、作業性が好ましいものとなる。
有機溶剤としては、特に限定されないが、以下のものを挙げることができる。具体的には、トルエン、キシレン、クメン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、スチレン、αメチルスチレン、ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼン、2-エチル-p-キシレン、2-プロピルトルエン、3-プロピルトルエン、4-プロピルトルエン、1,2,3,5-テトラメチルトルエン、1,2,4,5-テトラメチルトルエン、テトラヒドロナフタレン、4-フェニル-1-ブテン、tert-アミルベンゼン、アミルベンゼン、2-tert-ブチルトルエン、3-tert-ブチルトルエン、4-tert-ブチルトルエン、5-イソプロピル-m-キシレン、3-メチルエチルベンゼン、tert-ブチル-3-エチルベンゼン、4-tert-ブチル-o-キシレン、5-tert-ブチル-m-キシレン、tert-ブチル-p-キシレン、1,2-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジプロピルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、1,3,5-トリエチルベンゼン等の芳香族系炭化水素系溶剤、n-ヘプタン、イソヘプタン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、1,6-ヘプタジエン、5-メチル-1-ヘキシン、ノルボルナン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1-メチル-1,4-シクロヘキサジエン、1-ヘプチン、2-ヘプチン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、1,3-ジメチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1-メチル-1-シクロヘキセン、3-メチル-1-シクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、4-メチル-1-シクロヘキセン、2-メチル-1-ヘキセン、2-メチル-2-ヘキセン、1-ヘプテン、2-ヘプテン、3-ヘプテン、n-オクタン、2,2-ジメチルヘキサン、2,3-ジメチルヘキサン、2,4-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,3-ジメチルヘキサン、3,4-ジメチルヘキサン、3-エチル-2-メチルペンタン、3-エチル-3-メチルペンタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、シクロオクタン、シクロオクテン、1,2-ジメチルシクロヘキサン、1,3-ジメチルシクロヘキサン、1,4-ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、イソプロピルシクロペンタン、2,2-ジメチル-3-ヘキセン、2,4-ジメチル-1-ヘキセン、2,5-ジメチル-1-ヘキセン、2,5-ジメチル-2-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、2-エチル-1-ヘキセン、2-メチル-1-ヘプテン、1-オクテン、2-オクテン、3-オクテン、4-オクテン、1,7-オクタジエン、1-オクチン、2-オクチン、3-オクチン、4-オクチン、n-ノナン、2,3-ジメチルヘプタン、2,4-ジメチルヘプタン、2,5-ジメチルヘプタン、3,3-ジメチルヘプタン、3,4-ジメチルヘプタン、3,5-ジメチルヘプタン、4-エチルヘプタン、2-メチルオクタン、3-メチルオクタン、4-メチルオクタン、2,2,4,4-テトラメチルペンタン、2,2,4-トリメチルヘキサン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,2-ジメチル-3-ヘプテン、2,3-ジメチル-3-ヘプテン、2,4-ジメチル-1-ヘプテン、2,6-ジメチル-1-ヘプテン、2,6-ジメチル-3-ヘプテン、3,5-ジメチル-3-ヘプテン、2,4,4-トリメチル-1-ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、1-エチル-2-メチルシクロヘキサン、1-エチル-3-メチルシクロヘキサン、1-エチル-4-メチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,1,3-トリメチルシクロヘキサン、1,1,4-トリメチルシクロヘキサン、1,2,3-トリメチルシクロヘキサン、1,2,4-トリメチルシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルシクロヘキサン、アリルシクロヘキサン、ヒドリンダン、1,8-ノナジエン、1-ノニン、2-ノニン、3-ノニン、4-ノニン、1-ノネン、2-ノネン、3-ノネン、4―ノネン、n-デカン、3,3-ジメチルオクタン、3,5-ジメチルオクタン、4,4-ジメチルオクタン、3-エチル-3-メチルヘプタン、2-メチルノナン、3-メチルノナン、4-メチルノナン、tert-ブチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、4-イソプロピル-1-メチルシクロヘキサン、ペンチルシクロペンタン、1,1,3,5-テトラメチルシクロヘキサン、シクロドデカン、1-デセン、2-デセン、3-デセン、4-デセン、5-デセン、1,9-デカジエン、デカヒドロナフタレン、1-デシン、2-デシン、3-デシン、4-デシン、5-デシン、1,5,9-デカトリエン、2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン、リモネン、ミルセン、1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエン、α-フェランドレン、ピネン、テルピネン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、5,6-ジヒドロジシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、1,4-デカジイン、1,5-デカジイン、1,9-デカジイン、2,8-デカジイン、4,6-デカジイン、n-ウンデカン、アミルシクロヘキサン、1-ウンデセン、1,10-ウンデカジエン、1-ウンデシン、3-ウンデシン、5-ウンデシン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-4-エン、n-ドデカン、n-トリデカン、n-ペンタデカン、n-ヘキサデカン、2-メチルウンデカン、3-メチルウンデカン、4-メチルウンデカン、5-メチルウンデカン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、1,3-ジメチルアダマンタン、1-エチルアダマンタン、1,5,9-シクロドデカトリエン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系溶剤を挙げることが出来る。これらは任意の混合物であってもよい。
【0078】
炭化水素系溶剤としては、脂肪族系溶剤であり、芳香族系溶剤は含まれず、より具体的には主に、ノルマルパラフィン類、イソパラフィン類、ナフテン類の何れかもしくはそれらの混合物であるものが好ましい。ノルマルパラフィン類や、イソパラフィン類は、ナフテン類と比較してより臭気が少ないため、ノルマルパラフィン類、イソパラフィン類、もしくは両者の混合物を用いると、臭気を端に少なくする事が出来、環境や人体への負荷を低減することができるので好ましい。ここでいう、ノルマルパラフィン類、イソパラフィン類もしくは両者の混合物とは、高度に精製された、ノルマルパラフィン類、イソパラフィン類もしくは両者の混合物を主成分とする溶剤を意味するが、一般には非常に高度に精製されたこれらの溶剤にも、ppmレベルから最大0.5%以下程度(質量基準)の微量のナフテン類、芳香族類が混入している。しかしながら、これら微量の成分が臭気に与える影響は非常に小さくほぼ無視できる。従って、ここでいうノルマルパラフィン類、イソパラフィン類もしくは両者の混合物とは、上記のような微量不純物レベル以上の量のナフテン類および芳香族類を実質含まないものを意味する。
【0079】
また、市販の有機溶剤を用いてもよく、商品名“アイソパーM”(ISOPARTM M)、“アイソパーG”(ISOPARTM G)(エクソンモービルコーポレーション)、“IPソルベント2028”(出光興産)のような分枝状パラフィン溶媒混合物、特にイソパラフィン系炭化水素、又は“エクソールD110”(ExxsolTM)(エクソンモービルコーポレーション)、“AFソルベント4号”(ENEOS)のようなナフテン系炭化水素であることができる。イソパラフィン系溶剤のISOPAR(登録商標)シリーズのものが好ましい。これらは、反応性が低く安定であり、低毒性で安全性が高く、臭気も少ないという特徴がある。
【0080】
なお、有機溶剤の添加量は、(a)と(b)の樹脂((b)樹脂組成物の固形分)との合計100質量部に対して10~50,000質量部の範囲とすることが好ましい。
【0081】
[その他添加剤]
本発明の超音波カップリング材組成物には、上記乾式シリカのほか、湿式シリカ、アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子や顔料を混合することも出来る。湿式シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子の添加によって強度が向上する。着色する場合は顔料を添加する。アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子は乾式、湿式どちらでも好ましく用いることが出来、表面を撥水性のシリル化剤で処理した方が分散性に優れる。湿式シリカ、アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子の形状は、球状、楕円状、不定形状、中空状、多孔質のいずれであっても構わない。
【0082】
<超音波カップリング材膜>
本発明の超音波カップリング材膜は、上記超音波カップリング材組成物の硬化物からなる。
本発明では、上記超音波カップリング材組成物を用いてリリースライナー膜などの支持体上に超音波カップリング材膜を形成し、これを肌と超音波プローブの間に挿入して肌と超音波プローブ間の超音波の伝達を行うことができる。
【0083】
以下、本発明の超音波カップリング材(膜)について、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
図1は、本発明の超音波カップリング材膜の一例を示す概略断面図である。図1の超音波カップリング材1は、リリースライナー(支持体)2上に形成された形態を示すものである。
【0085】
リリースライナーの基材としては、紙やプラスチック製のプラスチックフィルム、ガラス、金属、布等が選択される。紙としては、上質紙、コート紙、アート紙、グラシン紙、ポリエチレンラミネート紙、クラフト紙、和紙、合成紙等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム等が挙げられる。ガラスについては、厚みや種類等について特に制限はなく、化学強化処理等をしたものでもよい。また、ガラス繊維も適用でき、ガラス繊維は単体でも他の樹脂と複合したものを使用してもよい。布としては、天然繊維布、合成繊維布及び人工皮革などが挙げられ、金属としては、アルミ箔、銅箔、金箔、銀箔、ニッケル箔等が例示される。これらの中でも、紙及びプラスチックフィルムが好ましく、特にポリエステルフィルムが好ましい。
【0086】
リリースライナーの基材上に特開2020-100763号公報、特開2020-100764号公報に記載のフッ素系の剥離剤を塗布することができ、これによって剥離力を低減することが出来る。
【0087】
<超音波カップリング材膜の製造方法>
本発明の超音波カップリング材膜の製造方法については特に限定されないが、以下では、図面を参照しながら製造例について説明する。
【0088】
まず、本発明の超音波カップリング材組成物をリリースライナーなどの支持体(基材)上に塗布する。リリースライナーなどの基材上に超音波カップリング材組成物を塗布する方法は、特に限定されないが、例えばディップコート、スプレーコート、スピンコート、バーコート、コンマコート、スリットコート、ロールコート、フローコート、ドクターコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の方法が好適である。
【0089】
次に、支持体(基材)上に塗布した超音波カップリング材組成物を硬化する。
超音波カップリング材組成物の硬化方法は、特に限定されず、例えば、塗布後の膜を熱及び光のいずれか、又はこれらの両方で硬化させることが好ましい。
【0090】
なお、加熱する場合の温度は、特に限定されず、例えば50~250℃程度が好ましい。加熱は温風、ホットプレート等の電熱方式や、赤外線やマイクロ波の照射等の発熱方式を挙げることが出来る。
【0091】
また、加熱と光照射や赤外線やマイクロ波照射を組み合わせる場合は、加熱と光照射や赤外線やマイクロ波照射を同時に行ってもよいし、光照射や赤外線やマイクロ波照射後に加熱を行ってもよいし、加熱後に光照射や赤外線やマイクロ波照射を行ってもよい。また、塗膜後の加熱の前に溶剤を蒸発させる目的で風乾を行ってもよい。
【0092】
加熱硬化した超音波カップリング材膜の膜厚は10~10000μmが好ましく、10~4000μmの範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは20~3000μmの範囲である。前記各膜厚の数値範囲において、その上限は、任意に5000μm、2000μm、500μm、又は400μmとすることもでき、その下限は、任意に30μm、50μm、100μm、又は120μmとすることもでき、これらを任意に組み合わせてもよい。
【0093】
超音波カップリング材組成物をリリースライナー上に塗布するのではなく、超音波プローブ上に塗布しても良い。
【0094】
図2に示されるように、超音波カップリング材膜1の上下をリリースライナー2で挟んだ構造にすることができる。これによって、粘着性のある超音波カップリング材膜を輸送することが容易になる。
【0095】
<超音波カップリング材膜の使用方法>
図3に示されるように、図2の片側のリリースライナー2を剥がし、超音波カップリング材膜1を肌3上に張り付けることができる。
【0096】
図4に示されるように、超音波カップリング材膜1を超音波プローブ4上に張り付けることもできる。
【0097】
超音波診断時は、図5に示されるように、肌3と超音波プローブ4の間に超音波カップリング材膜1を挟んだ構造になる。
【0098】
超音波診断において、超音波プローブから発せられた超音波が、超音波カップリング材膜を介して肌の中に伝達する様子について、図6と7を用いて説明する。なお、超音波の周波数は、一般に、超音波診断で使用される3MHz以上の周波数の音である。
【0099】
図6は肌3と超音波プローブ4の間に超音波カップリング材膜1を挟んだ状態の概略断面図である。超音波カップリング材膜1が肌3の凹凸を埋め込んでいるために、超音波プローブ4から発信された超音波5が肌中に伝達している。
【0100】
一方、図7も肌3と超音波プローブ4の間に超音波カップリング材膜1を挟んだ状態の概略断面図であるが、この場合は超音波カップリング材膜1が肌3の凹凸を埋め込んでいないために超音波5が肌中に伝達していない。
【0101】
図8は、リリースライナーの片面を剥がし、前腕内側の肌上に超音波カップリング材膜1を貼り付け、もう一方のリリースライナーを剥がした状態の写真である。
【0102】
図9は、水溶性の超音波カップリングゲル(水溶性ゲルカップリング材6)をチューブから前腕内側の肌上にディスペンスした状態の写真である。ディスペンした後に指で伸ばして超音波カップリング材膜を形成する。
【0103】
図10は、ハンディタイプの超音波診断計10を超音波プローブ4側から眺めた写真である。
【0104】
図11は、リリースライナー2を剥がしながら超音波診断計10の超音波プローブ上に超音波カップリング材膜1を張り付けている写真である。超音波カップリング材膜が独立膜になっていることが解る。
【0105】
図12は、カップリング材膜上にハンディタイプの超音波診断計を置き、超音波画像の測定を行っている写真である。
【0106】
図13、14は測定した超音波画像である。
超音波診断は、超音波プローブを肌に密着させ、超音波発信機を通じてプローブ表面から発せられた超音波が体内ではね返り、プローブを通じて受信機で体内の情報を検知することで行われる。超音波が体内に伝達して対象部ではね返ると、図13に示すような超音波画像を得ることができる。一方、超音波測定時、被測定面に有る凹凸などにより空気の層が介在すると、超音波プローブ表面から発せられた超音波は空気層で反射して体内に届かず、図14に示すような不鮮明な超音波画像となってしまう。
つまり、図6のように、肌3と超音波プローブ4の間に超音波カップリング材膜1を挟んだ状態で、超音波カップリング材膜1が肌3の凹凸を埋め込んでいると、超音波5が肌中に伝達しているので図13に示すような超音波画像となる。
一方、図7のように、超音波カップリング材膜1が肌3の凹凸を埋め込んでいないと超音波5が肌中に伝達していないので図14に示すような超音波画像となる。
【実施例0107】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、測定対象の粘度が500,000mPa・s超と高い場合には、30質量%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度(30%溶解粘度)を示す。つまり、30%溶解粘度により粘度を示している場合は、測定対象の粘度が500,000mPa・sを超えることを意味する。上記絶対粘度は、回転粘度計により測定される25℃での値である。
【0108】
[実施例1~12、比較例1~5]
実施例と比較例において用いた各成分を以下に示す。
【0109】
(A成分(シリコーン粘着剤))
(a成分)
30質量%トルエン溶液での粘度が27,000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.02モル/100gであり、分子鎖末端がSiMeVi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサンをシロキサン化合物1とした。
30質量%トルエン溶液での粘度が27,000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.01モル/100gであり、分子鎖末端がSiMeVi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサンをシロキサン化合物2とした。
なお、シロキサン化合物1,2そのままでの25℃での粘度はいずれも100,000mPa・s以上である。
【0110】
(b成分)
MeSiO0.5単位及びSiO単位からなるMQレジンのポリシロキサン(MeSiO0.5単位/SiO単位=0.8)の60質量%トルエン溶液をMQレジン1とした。
MeSiO0.5単位及びSiO単位からなるMQレジンのポリシロキサン(MeSiO0.5単位/SiO単位=0.8)の60質量%ヘキサン溶液をMQレジン2とした。
MeSiO0.5単位及びSiO単位からなるMQレジンのポリシロキサン(MeSiO0.5単位/SiO単位=0.8)の60質量%イソパラフィン系溶剤ISOPAR(登録商標)G溶液をMQレジン3とした。
【0111】
(A成分(シリコーン粘着剤))
30質量%トルエン溶液での粘度が42,000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.02モル/100gであり、分子鎖末端がOHで封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン40質量部、MeSiO0.5単位及びSiO単位からなるMQレジンのポリシロキサン(MeSiO0.5単位/SiO単位=0.8)の60質量%トルエン溶液100質量部、及びトルエン26.7質量部からなる溶液を還流させながら4時間加熱後、冷却して、MQレジンにポリジメチルシロキサンを結合させたものをシロキサン化合物3とした。
【0112】
(B成分)
非架橋型シリコーンオイルとして、表1に示す信越化学工業製KF-96を用いた。その25℃における動粘度は、表中のCSの直前の数字に対応しており、例えば、”KF-96 1,000CS”の動粘度は1,000mm/sであり、”KF-96 100CS”の動粘度は100mm/sである。なお、動粘度は、オストワルド粘度計による25℃の測定値である。
【0113】
(C成分)
メチルハイドロジェンシリコーンオイルとして、信越化学工業製KF-99、KF-9901を用いた。
【0114】
(添加剤)
乾式シリカ:AEROSIL RX200(日本アエロジル製、トリメチルシリル基で表面処理したもの)
【0115】
(有機溶剤)
ISOPARTM G(エクソンモービルコーポレーション)
【0116】
表1に記載のカップリング材溶液(超音波カップリング材組成物)を混合し、これの100質量部に信越化学工業製の白金触媒PL-56を1質量部加えてさらに混合した。
【0117】
【表1】
【0118】
(カップリング材膜の形成)
ニッパ(株)製PETセパレーターSS1A(50μm厚み)のリリースライナー上に前記超音波カップリング材溶液をバーコーターで塗布し、風乾10分後に熱風オーブンで125℃で10分間ベークして硬化を行い、図1に示されるカップリング材膜を形成した。硬化後、ニッパ(株)製PETセパレーターSS1A(50μm厚み)のリリースライナーを被せて、図2に示されるリリースライナーで挟まれた超音波カップリング材膜を作成した。
【0119】
(比較例5)
比較例5では、超音波カップリング材として従来のグリース状の水溶性ゲルカップリング材6を用いた。
【0120】
(生体接触層の厚さ測定)
上記で作製した超音波カップリング材膜の厚さを、マイクロメーターを用いて測定した。結果を表2示す。
【0121】
片方のリリースライナーを剥がし、超音波カップリング材膜面を前腕の肌上に貼り付け、肌に張り付けた後にもう片方のリリースライナーを剥がし、図8に示されるように超音波カップリング材膜を肌上に形成した。
【0122】
比較例5のゲルの超音波カップリング材は、グリース状の水溶性ゲルゲルカップリング材6を図9に示されるように腕上に付着させ、指で伸ばして平滑な膜にした。カップリング材膜の膜厚を測定することは出来なかった。
【0123】
(超音波シグナルの測定)
超音波シグナルの測定に用いるハンディタイプの超音波診断装置(超音波診断計)としては、Healcerion社製のSONON 500Lを用いた。図12に示されるように、腕上の超音波カップリング材膜上に超音波診断装置のプローブ面を接触させ、8.5MHzの周波数での超音波診断を行った。
【0124】
カップリング材を腕上に貼り付けて上記超音波診断を行い、その後腕を水中に1分間浸漬した後に腕を乾かして超音波診断を行った。その後カップリング材膜を肌から剥がし、肌上に残渣があるかどうかを目視で観察した。
【0125】
(耐水性評価)
上記水浸漬後の超音波診断を行った際に、上述の図13で示されるような鮮明な画像が発現した場合を良好、図14のような不鮮明な画像の場合を不良と判断した。
【0126】
表1に記載の超音波カップリング材の評価結果を表2に示す。
【表2】
【0127】
表2に示されるように、(a)成分と(b)成分からなるシリコーン粘着剤に(B)成分のシリコーンオイルを添加した実施例1~12に示される超音波カップリング材膜を肌に付着した場合は、良好な超音波画像を得ることができ、腕を水に浸漬しても同様の画像を得ることができ、超音波カップリング材膜を肌から剥がした後の肌上の残渣が無かった。一方、(B)成分が添加されていない比較例1のシリコーン粘着剤の場合は超音波診断による画像が不良であった。比較例2に示される(b)成分のMQレジンが添加されていないシリコーンゲルを含むものの場合は、超音波画像が良好であったが、肌から剥がした後に添加した(B)成分のシリコーンオイルの残渣が生じた。(B)成分の動粘度が大きすぎる比較例3では、超音波画像が不良になり、反対に(B)成分の動粘度が小さすぎる比較例4では、超音波画像は良好になるが、超音波カップリング材膜を肌から剥がした後に残渣が生じた。比較例5の従来の水溶性ゲルカップリング材は、カップリング材塗布後の超音波画像は良好であったが、腕を水に浸けるとカップリング材が溶解してしまい、超音波画像が不良であった。
【0128】
本発明の超音波カップリング材は、肌の凹凸を埋めて良好な超音波画像を与えることができ(即ち、超音波伝達性と感度が高く)、シリコーンを主成分とするため生体適合性に優れ、軽量である。そして、本発明の超音波カップリング材組成物(溶液)を、必要に応じて支持体上に塗布し、硬化するなどにより低コストで超音波カップリング材膜を製造することができる。この超音波カップリング材膜は、水溶性材料を含まないので、水に濡れても乾燥しても超音波伝達性が大幅に低下することがない。(A)シリコーン粘着剤由来の硬化物であるため、柔らかく伸縮性に優れ、剥がした後に肌上に残渣が残ることが無く、肌荒れが生じることもない。このように、本発明の超音波カップリング材組成物は、優れた特徴を有する。
【0129】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]:(A)シリコーン粘着剤と(B)架橋点を有さないシリコーンオイルとを含有する超音波カップリング材組成物であって、
前記(A)シリコーン粘着剤が、25℃での粘度が100,000mPa・s以上のジオルガノポリシロキサン(a)と、
SiO1/2及びSiO単位を有する樹脂(Rは水素原子又は置換又は非置換の炭素数1~10の1価炭化水素基である。)と有機溶剤を含む樹脂組成物(b)との混合物又は縮合反応生成物であり、
前記(B)架橋点を有さないシリコーンオイルが、25℃における動粘度が10~100000mm/sの範囲である架橋点を有さないシリコーンオイル
であることを特徴とする超音波カップリング材組成物。
[2]:前記ジオルガノポリシロキサン(a)がアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン(a1)であることを特徴とする[1]の超音波カップリング材組成物。
[3]:更に、(C)成分として、SiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むものであることを特徴とする[2]の超音波カップリング材組成物。
[4]:更に、白金系触媒を含有するものであることを特徴とする[3]の超音波カップリング材組成物。
[5]:前記(C)成分のSiH基のモル数を(A)成分のアルケニル基のモル数で割った値が0.5~20の範囲であることを特徴とする[4]の超音波カップリング材組成物。
[6]:前記(B)成分が、アルケニル基及びSiH基を有さない直鎖状又は分岐状のジオルガノポリシロキサンであることを特徴とする[2]から[5]のいずれか1つの超音波カップリング材組成物。
[7]:前記(B)成分の質量を、前記(a)成分と前記(b)成分の固形分量と前記(B)成分と前記(C)成分の合計の質量で割った値が0.2~0.8の範囲にあることを特徴とする[3]から[6]のいずれか1つの超音波カップリング材組成物。
[8]:更に、前記(a)成分と前記(b)成分の固形分量と前記(B)成分と前記(C)成分の合計100質量部に対して乾式シリカを0.1~10質量部含有するものであることを特徴とする[3]から[7]のいずれか1つの超音波カップリング材組成物。
[9]:[1]から[8]のいずれか1つの超音波カップリング材組成物の硬化物からなる超音波カップリング材膜。
[10]:前記超音波カップリング材膜の膜厚が10~10000μmの範囲であることを特徴とする[9]の超音波カップリング材膜。
[11]:[9]又は[10]の超音波カップリング材膜が支持体から分離独立している自立膜であることを特徴とする単独超音波カップリング材膜。
[12]:支持体と、前記支持体上に直に接する[9]又は[10]の超音波カップリング材膜とから構成される積層構造体。
[13]:[1]から[8]のいずれか1つの超音波カップリング材組成物をリリースライナー膜上に塗布し、加熱硬化して超音波カップリング材膜とし、次いで、前記超音波カップリング材膜から前記リリースライナー膜を剥がして超音波カップリング材膜を他の支持体上に張り付け、前記他の支持体に接する面と反対側の面に超音波プローブを付着させて積層構造とすることを特徴とする積層構造の形成方法。
[14]:[1]から[8]のいずれか1つの超音波カップリング材組成物をリリースライナー膜上に塗布し、加熱硬化して超音波カップリング材膜とし、次いで、前記超音波カップリング材膜から前記リリースライナー膜を剥がして超音波カップリング材膜を超音波プローブに張り付けて積層構造とすることを特徴とする積層構造の形成方法。
[15]:[1]から[8]のいずれか1つの超音波カップリング材組成物を超音波プローブ上に塗布し、加熱硬化して超音波カップリング材膜を形成して積層構造とすることを特徴とする積層構造の形成方法。
[16]:[13]から[15]のいずれか1つの積層構造の形成方法に続いて、前記超音波プローブを前記超音波カップリング材膜が形成された面を肌上に付着させて超音波検査を行うことを特徴とする検査方法(ヒトを手術、治療又は診断する方法を除く)。
【0130】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0131】
1…カップリング材(膜)、 2…支持体(リリースライナー)、 3…肌、
4…超音波プローブ、 5…超音波、 6…水溶性ゲルカップリング材、
10…超音波診断計。
図1
図2
図3
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