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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025132779
(43)【公開日】2025-09-10
(54)【発明の名称】圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/30 20230101AFI20250903BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20250903BHJP
   H10N 30/87 20230101ALI20250903BHJP
【FI】
H10N30/30
H10N30/853
H10N30/87
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024030568
(22)【出願日】2024-02-29
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 孝英
(72)【発明者】
【氏名】桝本 尚己
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏
(72)【発明者】
【氏名】掛札 尚
(72)【発明者】
【氏名】白石 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】榎本 哲也
(57)【要約】
【課題】音響圧力に対して圧電膜を適切に歪ませることができる圧電デバイスを提供する。
【解決手段】本発明の1つの側面にかかる圧電デバイスは、第1の主面と前記第1の主面の反対側の第2の主面とそれぞれが前記第1の主面から前記第2の主面まで貫通し2以上の環状列を形成する複数のスリットとを有する圧電膜と、前記圧電膜の外縁を保持する保持部と、前記第1の主面における前記複数のスリット間の領域を覆う第1の電極パターンと、前記第2の主面における前記複数のスリット間の領域を覆う第2の電極パターンとを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と前記第1の主面の反対側の第2の主面とそれぞれが前記第1の主面から前記第2の主面まで貫通し2以上の環状列を形成する複数のスリットとを有する圧電膜と、
前記圧電膜の外縁を保持する保持部と、
前記第1の主面における前記複数のスリット間の領域を覆う第1の電極パターンと、
前記第2の主面における前記複数のスリット間の領域を覆う第2の電極パターンと、
を備えた圧電デバイス。
【請求項2】
前記複数のスリットは、千鳥状に配される
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記第1の電極パターンは、前記第1の主面の同一の環状列における複数のスリット間の領域を覆い、
前記第2の電極パターンは、前記第2の主面の同一の環状列における複数のスリット間の領域を覆う
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記第1の電極パターンは、前記第1の主面の同一の環状列における前記複数のスリット間の周辺の領域をさらに覆い、
前記第2の電極パターンは、前記第2の主面の同一の環状列における前記複数のスリット間の周辺の領域をさらに覆う
請求項3に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記環状列の列数、列間隔、列内における各スリットの長さは、要求される性能に応じて決められる
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項6】
前記保持部は、前記圧電膜の外縁を全周で保持する
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項7】
前記保持部は、前記圧電膜の外縁を全周の一部で保持する
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項8】
前記スリットの幅は、周方向について略一定である
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項9】
前記スリットは、第1の周方向位置で第1の幅を有し、第2の周方向位置で第2の幅を有する
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項10】
前記スリットの曲率は、周方向について略一定である
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項11】
前記スリットは、第1の周方向位置で第1の曲率を有し、第2の周方向位置で第2の曲率を有する
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項12】
前記圧電膜は、前記2以上の環状列の内側にスリットを有しない
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項13】
前記第1の主面における前記2以上の環状列の内側の領域を覆う第1のダミー電極パターンと、
前記第2の主面における前記2以上の環状列の内側の領域を覆う第2のダミー電極パターンと、
をさらに備えた
請求項1に記載の圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電膜を有する圧電デバイスは、圧電膜が音響圧力を受けると、圧電膜が歪み、その歪み量に応じて圧電膜内に電圧が発生する。圧電デバイスでは、圧電膜の電圧変化を信号として取り出すことで、音響圧力に応じた信号を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/024865号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電デバイスでは、圧電膜による音響圧力の検知特性を向上させるためには、音響圧力に対して圧電膜を適切に歪ませることが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、音響圧力に対して圧電膜を適切に歪ませることができる圧電デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の1つの側面にかかる圧電デバイスは、第1の主面と前記第1の主面の反対側の第2の主面とそれぞれが前記第1の主面から前記第2の主面まで貫通し2以上の環状列を形成する複数のスリットとを有する圧電膜と、前記圧電膜の外縁を保持する保持部と、前記第1の主面における前記複数のスリット間の領域を覆う第1の電極パターンと、前記第2の主面における前記複数のスリット間の領域を覆う第2の電極パターンとを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、音響圧力に対して圧電膜を適切に歪ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る圧電デバイスの構成を示す斜視図。
図2】実施形態に係る圧電デバイスの構成を示す平面図。
図3】実施形態に係る圧電デバイスの構成を示す断面図。
図4】実施形態に係る圧電デバイスの構成を示す断面図。
図5】実施形態における電極パターン及び圧電膜の構成を示す平面方向の断面図。
図6】実施形態の第1の変形例に係る圧電デバイスの構成を示す平面図。
図7】実施形態の第2の変形例に係る圧電デバイスの構成を示す平面図。
図8】実施形態の第3の変形例に係る圧電デバイスの構成を示す平面図。
図9】実施形態の第4の変形例に係る圧電デバイスの構成を示す平面図。
図10】実施形態の第5の変形例に係る圧電デバイスの構成を示す平面図。
図11】実施形態の第6の変形例における電極パターン及び圧電膜の構成を示す平面方向の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、圧電デバイスの実施形態について詳細に説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作を行うものとして、重複する説明は適宜省略する。
【0010】
(実施形態)
実施形態に係る圧電デバイスは、圧電膜を有し、圧電膜が音響圧力を受けると、圧電膜が歪み、その歪み量に応じて圧電膜内に電圧が発生し、圧電膜の電圧変化を信号として出力するが、音響圧力に対して圧電膜を適切に歪ませるための工夫が施される。
【0011】
圧電デバイス1は、図1図4に示すように構成され得る。図1は、実施形態に係る圧電デバイスの構成を示す斜視図である。図2は、実施形態に係る圧電デバイスの構成を示す平面図である。図3は、実施形態に係る圧電デバイスの構成を示す断面図である。図4は、実施形態に係る圧電デバイスの構成を示す断面図である。
【0012】
圧電デバイス1は、圧電膜2,3、電極パターン4,5,6、ダミー電極パターン7,8,9及び保持部10を有する。
【0013】
以下では、圧電膜2の主面2aに垂直な方向をZ方向とし、Z方向に垂直な面内で直交する2方向をX方向及びY方向とする。
【0014】
圧電デバイス1において、保持部10、圧電膜3、圧電膜2が順にZ方向に積層される。保持部10は、圧電膜3の外縁を保持する。圧電膜2は、Z方向における保持部10の反対側で圧電膜3を覆う。
【0015】
保持部10は、XY平面視で矩形枠形状を有する。保持部10は、+Z側に主面10aを有する。圧電膜3は、XY方向に延び、+Z側に主面3aを有し、-Z側に主面3bを有する。圧電膜2は、XY方向に延び、+Z側に主面2aを有し、-Z側に主面2bを有する。
【0016】
保持部10は、主面10aが圧電膜3の主面3bにおける縁部近傍に接触する。これにより、保持部10は、圧電膜3の外縁を保持する。圧電膜2は、圧電膜3を外縁近傍まで覆っている。これにより、保持部10は、圧電膜3を介して圧電膜2の外縁を保持する。
【0017】
圧電膜2,3は、それぞれ、圧電効果を有する任意の圧電材料で形成され得る。圧電材料は、AlN、ScAlN、ZnO、PZT(Pb(Zr,Ti)O3:チタン酸ジルコン酸亜鉛)、KN(KNbO3:ニオブ酸カリウム)、LN(LiNbO3:ニオブ酸リチウム)、KNN((K,Na)NbO3)、BaTiO3を含んでもよい。
【0018】
圧電膜2の主面2bは、圧電膜3の主面3aを覆う。これにより、圧電デバイス1において、複数の圧電膜2,3がZ方向に積層された積層体SST(図4参照)が形成される。積層体SSTは、圧電素子として機能する。積層体SSTでは、複数の圧電膜2,3が複数の電極パターン4,5,6によりZ方向に挟まれたバイモルフ構造を形成している。
【0019】
圧電膜2,3は、複数のスリット21と複数のスリット22とを有する。
【0020】
図5(a)~図5(c)に示すように、各スリット21は、圧電膜2及び圧電膜3で共通に形成される。各スリット22は、圧電膜2及び圧電膜3で共通に形成される。図5は、電極パターン及び圧電膜の構成を示す平面方向の断面図である。図5(a)は、図3をC-C線に沿って切ったXY断面図であり、電極パターン4_1~4_8及び圧電膜2のXY断面構成を示す。図5(b)は、図3をD-D線に沿って切ったXY断面図であり、圧電膜2のXY断面構成を示す。図5(c)は、図3をE-E線に沿って切ったXY断面図であり、電極パターン5_1~5_8及び圧電膜3のXY断面構成を示す。
【0021】
複数のスリット21は、2以上の環状列を形成する。図1図2では、複数のスリット21が3つの環状列を形成する構成が例示される。
【0022】
すなわち、スリット21_(1,1)~21_(1,8)に対して径方向外側に離間して、スリット21_(2,1)~21_(2,8)が配される。スリット21_(2,1)~21_(2,8)に対して径方向外側に離間して、スリット21_(3,1)~21_(3,8)が配される。
【0023】
3つの環状列のうち、スリット21_(1,1)~21_(1,8)は、内側から1列目の環状列を形成する。内側から1列目の環状列において、スリット21_(1,1)~21_(1,8)は、周方向に略均等な配置ピッチで配される。スリット21_(1,1)~21_(1,8)は、周方向に、略均等なクリアランスで互いに離間する。
【0024】
各スリット21_(1,1)~21_(1,8)は、長さが1つの電極パターン4,5,6に対応した長さであり、例えば中心角45度に対応した長さである。各スリット21_(1,1)~21_(1,8)は、幅が周方向について略一定であってもよい。各スリット21_(1,1)~21_(1,8)は、径方向における中点を結ぶ仮想的な線を軸とよぶことにする。各スリット21_(1,1)~21_(1,8)は、軸の曲率が周方向について略一定であってもよい。
【0025】
スリット21_(2,1)~21_(2,8)は、内側から2列目の環状列を形成する。内側から2列目の環状列において、スリット21_(2,1)~21_(2,8)は、周方向に略均等な配置ピッチで配される。スリット21_(2,1)~21_(2,8)は、周方向に、略均等なクリアランスで互いに離間する。
【0026】
各スリット21_(2,1)~21_(2,8)は、長さが1つの電極パターン4,5,6に対応した長さであり、例えば中心角45度に対応した長さである。各スリット21_(2,1)~21_(2,8)は、幅が周方向について略一定であってもよい。各スリット21_(2,1)~21_(2,8)は、径方向における中点を結ぶ仮想的な線を軸とよぶことにする。各スリット21_(2,1)~21_(2,8)は、軸の曲率が周方向について略一定であってもよい。
【0027】
スリット21_(3,1)~21_(3,8)は、内側から3列目の環状列を形成する。内側から3列目の環状列において、スリット21_(3,1)~21_(3,8)は、周方向に略均等な配置ピッチで配される。スリット21_(3,1)~21_(3,8)は、周方向に、略均等なクリアランスで互いに離間する。
【0028】
各スリット21_(3,1)~21_(3,8)は、長さが1つの電極パターン4,5,6に対応した長さであり、例えば中心角45度に対応した長さである。各スリット21_(3,1)~21_(3,8)は、幅が周方向について略一定であってもよい。各スリット21_(3,1)~21_(3,8)は、径方向における中点を結ぶ仮想的な線を軸とよぶことにする。各スリット21_(3,1)~21_(3,8)は、軸の曲率が周方向について略一定であってもよい。
【0029】
複数のスリット21は、2以上の環状列において、千鳥状に配される。内側から1列目の環状列における各スリット21_(1,1)~21_(1,8)は、内側から2列目の環状列における各スリット21_(2,1)~21_(2,8)に対して、配置位置が配置ピッチの約半分で周方向にシフトしている。内側から2列目の環状列における各スリット21_(2,1)~21_(2,8)は、内側から3列目の環状列における各スリット21_(3,1)~21_(3,8)に対して、配置位置が配置ピッチの約半分で周方向にシフトしている。
【0030】
複数のスリット22は、2以上の環状列に沿って、放射状に配される。複数のスリット22は、主面2a内で電極パターン4を周方向に電気的に分離し、主面2b,3a内で電極パターン5を周方向に電気的に分離し、主面3b内で電極パターン6を周方向に電気的に分離する。
【0031】
図1図2では、8つのスリット22_1~22_8が放射状に配される構成が例示される。8つのスリット22_1~22_8は、主面2a内で8つの電極パターン4_1~4_8を周方向に電気的に分離し(図5(a)参照)、主面2b,3a内で8つの電極パターン5_1~5_8を周方向に電気的に分離し(図5(c)参照)、主面3b内で8つの電極パターン6_1~6-8を周方向に電気的に分離する。
【0032】
圧電膜2,3は、図1図2に示すように、複数のスリット21と複数のスリット22とを有することで、-Z方向又は+Z方向から音響圧力を受けた際に、その内部に残留応力が残ることを抑制できる。
【0033】
圧電膜2,3は、2以上の環状列の内側にスリットを有しない。これに応じて、Z軸を含む断面視において、圧電膜2,3は、図3図4に示すように、XY方向両端が保持部10で支持された両持ち梁状の構造を有している。立体視において、圧電膜2,3は、図1に示すように、XY方向外縁が全周で保持部10により保持されたフルクランプ構造を有している。これにより、圧電膜2,3が-Z方向又は+Z方向から音響圧力を受けた際に、低周波成分を含む所望の周波数範囲の音響圧力に応じて圧電膜2,3を適度に歪ませることができ、歪みによる応力に応じた電圧を効果的に圧電膜2,3内に発生でき、圧電デバイス1の音響圧力に対する検知の精度を向上できる。
【0034】
これに関して、検討を行ったところ、圧電膜2,3が音響圧力を受けた際の歪みは一様ではなく、歪みによる応力が複数のスリット21間の領域に集中する傾向にある。これに応じて、圧電膜2,3における歪みによる応力に応じた電圧も複数のスリット21間の領域に集中する傾向にある。
【0035】
このため、電極パターン4は、図3図4図5(a)に示すように、圧電膜2の主面2aにおける複数のスリット21間の領域を覆う。電極パターン4は、主面2aの同一の環状列における複数のスリット21間の領域を覆ってもよい。例えば、電極パターン4_1は、スリット21_(1,8)及びスリット21_(1,1)間の領域、スリット21_(1,1)及びスリット21_(1,2)間の領域、スリット21_(2,1)及びスリット21_(2,2)間の領域、スリット21_(3,8)及びスリット21_(3,1)間の領域、スリット21_(3,1)及びスリット21_(3,2)間の領域を覆う。
【0036】
電極パターン4は、主面2aの同一の環状列における複数のスリット21間の周辺の領域をさらに覆ってもよい。例えば、電極パターン4_1は、スリット21_(1,8)及びスリット21_(1,1)間の領域とスリット21_(2,1)との間の領域、スリット21_(1,1)及びスリット21_(1,2)間の領域とスリット21_(2,2)との間の領域、スリット21_(2,1)及びスリット21_(2,2)間の領域とスリット21_(1,1)・スリット21_(3,1)との間の領域、スリット21_(3,8)及びスリット21_(3,1)間の領域とスリット21_(2,1)との間の領域、スリット21_(3,1)及びスリット21_(3,2)間の領域とスリット21_(2,2)との間の領域を覆う。
【0037】
電極パターン5は、図3図4に示すように、圧電膜2の主面2bにおける複数のスリット21間の領域を覆う。電極パターン5は、主面2bの同一の環状列における複数のスリット21間の領域を覆ってもよい。電極パターン5は、主面2bの同一の環状列における複数のスリット21の周辺の領域をさらに覆ってもよい。
【0038】
電極パターン5は、図3図4図5(c)に示すように、圧電膜3の主面3aにおける複数のスリット21間の領域を覆う。電極パターン5は、主面3aにおける複数のスリット21の周辺の領域をさらに覆ってもよい。
【0039】
電極パターン6は、図3図4に示すように、圧電膜3の主面3bにおける複数のスリット21間の領域を覆う。電極パターン6は、主面3bの同一の環状列における複数のスリット21間の領域を覆ってもよい。電極パターン6は、主面3bの同一の環状列における複数のスリット21の周辺の領域をさらに覆ってもよい。
【0040】
これにより、各主面2a,2b,3a,3bにおいて、歪みによる応力に応じた電圧を効果的に圧電デバイス1で検知でき、圧電デバイス1の所望の周波数範囲の音響圧力に対する検知の感度を向上できる。なお、所望の周波数範囲は、圧電膜2,3の共振周波数より若干低くなる範囲に設けられ得る。
【0041】
ダミー電極パターン7は、図3図4に示すように、圧電膜2の主面2aにおけるスリット21の2以上の環状列に対して、その内側の領域を覆う。ダミー電極パターン7は、電極パターン4_1~4_8から径方向内側に離間して配される。
【0042】
ダミー電極パターン8は、図3図4に示すように、圧電膜2の主面2bにおけるスリット21の2以上の環状列に対して、その内側の領域を覆う。ダミー電極パターン8は、電極パターン5_1~5_8から径方向内側に離間して配される。
【0043】
ダミー電極パターン8は、図3図4図5(c)に示すように、圧電膜3の主面3aにおけるスリット21の2以上の環状列に対して、その内側の領域を覆う。ダミー電極パターン8は、電極パターン5_1~5_8から径方向内側に離間して配される。
【0044】
ダミー電極パターン9は、図3図4に示すように、圧電膜3の主面3bにおけるスリット21の2以上の環状列に対して、その内側の領域を覆う。ダミー電極パターン9は、電極パターン6_1~6_8から径方向内側に離間して配される。
【0045】
これにより、各主面2a,2b,3a,3bにおいて、圧電膜2,3の強度を補強できる。
【0046】
以上のように、実施形態では、圧電デバイス1において、外縁が保持部10で保持された圧電膜2,3に2以上の環状列に沿って複数のスリット21が配され、各主面2a,2b,3a,3bにおける複数のスリット21間の領域を電極パターン4,5,6が覆う。これにより、圧電膜2,3が-Z方向又は+Z方向から音響圧力を受けた際に、圧電膜2,3を適度に歪ませることができ、歪みによる応力に応じた電圧を効果的に圧電デバイス1で検知でき、圧電デバイス1の音響圧力に対する検知の精度及び感度を向上できる。
【0047】
なお、電極パターン4,5,6の分割数は、8個に限定されず、例えば、4個でもよいし、16個でもよい。
【0048】
保持部10は、圧電膜2,3の外縁を全周の一部で保持してもよい。例えば、保持部10は、圧電膜2,3の外縁を角部近傍で選択的に保持してもよいし、圧電膜2,3の外縁を所定ピッチで離間する複数点で選択的に保持してもよい。
【0049】
各スリット21の幅は、周方向位置で異なる幅が混在していてもよい。例えば、スリット21は、第1の周方向位置で第1の幅を有し、第2の周方向位置で第2の幅を有してもよい。スリット21は、さらに、第3の周方向位置で第3の幅を有してもよい。
【0050】
各スリット21の曲率は、周方向位置で異なる曲率が混在していてもよい。例えば、スリット21は、第1の周方向位置で第1の曲率を有し、第2の周方向位置で第2の曲率を有してもよい。スリット21は、さらに、第3の周方向位置で第3の曲率を有してもよい。各スリット21は、多角形孤状に延びてもよいし、波型に蛇行しながら延びてもよいし、折れ線状に蛇行しながら延びてもよい。
【0051】
スリット21で形成される環状列の列数、列間隔、列内における各スリットの長さは、圧電デバイス1に要求される性能に応じて決められ得る。すなわち、要求される性能に応じて、複数のスリット21の配置構成が変えられ、圧電デバイス1の剛性が変えられ、共振周波数が変えられることで、圧電デバイス1で検知すべき音響圧力の周波数範囲が調整されてもよい。
【0052】
例えば、圧電デバイス101において、複数のスリット121の配置構成が図6のように変えられてもよい。図6は、実施形態の第1の変形例に係る圧電デバイス101の構成を示す平面図である。
【0053】
図6では、複数のスリット121が2つの環状列を形成する構成が例示される。2つの環状列のうち、スリット121_(1,1)~121_(1,8)は、内側から1列目の環状列を形成する。スリット121_(2,1)~121_(2,8)は、内側から2列目の環状列を形成する。
【0054】
電極パターン104は、主面2aの同一の環状列における複数のスリット121間の領域を覆ってもよい。例えば、電極パターン104_1は、スリット121_(1,1)及びスリット121_(1,2)間の領域、スリット121_(2,8)及びスリット121_(2,1)間の領域、スリット121_(2,1)及びスリット121_(2,2)間の領域を覆う。電極パターン105(図示せず)は、主面2bの同一の環状列における複数のスリット121間の領域を覆ってもよい。電極パターン106(図示せず)は、主面3bの同一の環状列における複数のスリット121間の領域を覆ってもよい。
【0055】
図6の構成は、図2の構成に比べると、環状列の列数が少なくなっている。これにより、図6の構成は、図2の構成に比べて、共振周波数が高くなり、感度が低くなり得る。
【0056】
このような構成によれば、圧電デバイス101で検知すべき音響圧力の感度を圧電デバイス1より低く調整できる。
【0057】
あるいは、圧電デバイス201において、複数のスリット221の配置構成が図7のように変えられてもよい。図7は、実施形態の第2の変形例に係る圧電デバイス201の構成を示す平面図である。
【0058】
図7では、複数のスリット221が3つの環状列を形成する構成が例示される。3つの環状列のうち、スリット221_(1,1)~221_(1,4)は、内側から1列目の環状列を形成する。各スリット221_(1,1)~221_(1,4)は、長さが2つの電極パターン204,205,206に対応した長さであり、例えば中心角90度に対応した長さである。スリット221_(2,1)~221_(2,4)は、内側から2列目の環状列を形成する。各スリット221_(2,1)~221_(2,4)は、長さが2つの電極パターン204,205,206に対応した長さであり、例えば中心角90度に対応した長さである。スリット221_(3,1)~221_(3,4)は、内側から2列目の環状列を形成する。各スリット221_(3,1)~221_(3,4)は、長さが2つの電極パターン204,205,206に対応した長さであり、例えば中心角90度に対応した長さである。
【0059】
電極パターン204は、主面2aの同一の環状列における複数のスリット221間の領域を覆ってもよい。例えば、電極パターン204_1は、スリット221_(1,4)及びスリット221_(1,1)間の領域、スリット221_(2,1)及びスリット221_(2,2)間の領域、スリット221_(3,4)及びスリット221_(3,1)間の領域を覆う。電極パターン205(図示せず)は、主面2bの同一の環状列における複数のスリット221間の領域を覆ってもよい。電極パターン206(図示せず)は、主面3bの同一の環状列における複数のスリット221間の領域を覆ってもよい。
【0060】
図7の構成は、図2の構成に比べると、列内における各スリットの長さが長くなっている。これにより、図7の構成は、図2の構成に比べて、共振周波数が低くなり、感度が高くなり得る。
【0061】
このような構成によれば、圧電デバイス101で検知すべき音響圧力の感度を圧電デバイス1より高く調整できる。
【0062】
あるいは、圧電デバイス301において、複数のスリット321の配置構成が図8のように変えられてもよい。図8は、実施形態の第3の変形例に係る圧電デバイス301の構成を示す平面図である。
【0063】
図8では、複数のスリット321が4つの環状列を形成する構成が例示される。4つの環状列のうち、スリット321_(1,1)~321_(1,4)は、内側から1列目の環状列を形成する。スリット321_(2,1)~321_(2,4)は、内側から2列目の環状列を形成する。スリット321_(3,1)~321_(3,4)は、内側から3列目の環状列を形成する。スリット321_(4,1)~321_(4,4)は、内側から4列目の環状列を形成する。
【0064】
電極パターン304は、主面2aの同一の環状列における複数のスリット321間の領域を覆ってもよい。例えば、電極パターン304_1は、スリット321_(1,1)及びスリット321_(1,2)間の領域、スリット321_(2,4)及びスリット321_(2,1)間の領域、スリット321_(3,1)及びスリット321_(3,2)間の領域、スリット321_(4,4)及びスリット321_(4,1)間の領域を覆う。電極パターン305(図示せず)は、主面2bの同一の環状列における複数のスリット321間の領域を覆ってもよい。電極パターン306(図示せず)は、主面3bの同一の環状列における複数のスリット321間の領域を覆ってもよい。
【0065】
図8の構成は、図2の構成に比べると、環状列の列数が多くなっている。これにより、図8の構成は、図2の構成に比べて、共振周波数が低くなり、感度が高くなり得る。
【0066】
このような構成によれば、圧電デバイス301で検知すべき音響圧力の感度を圧電デバイス1より高く調整できる。
【0067】
あるいは、圧電デバイス401において、複数のスリット421の配置構成が図9のように変えられてもよい。図9は、実施形態の第4の変形例に係る圧電デバイス401の構成を示す平面図である。
【0068】
図9では、複数のスリット421が2つの環状列を形成する構成が例示される。2つの環状列のうち、スリット421_(1,1)~421_(1,4)は、内側から1列目の環状列を形成する。各スリット421_(1,1)~421_(1,4)は、長さが2つの電極パターン404,405,406に対応した長さであり、例えば中心角90度に対応した長さである。スリット421_(2,1)~421_(2,4)は、内側から2列目の環状列を形成する。各スリット421_(2,1)~421_(2,4)は、長さが2つの電極パターン204,205,206に対応した長さであり、例えば中心角90度に対応した長さである。
【0069】
電極パターン404は、主面2aの同一の環状列における複数のスリット421間の領域を覆ってもよい。例えば、電極パターン404_1は、スリット421_(1,1)及びスリット421_(1,2)間の領域、スリット421_(2,4)及びスリット421_(2,1)間の領域を覆う。電極パターン405(図示せず)は、主面2bの同一の環状列における複数のスリット421間の領域を覆ってもよい。電極パターン406(図示せず)は、主面3bの同一の環状列における複数のスリット421間の領域を覆ってもよい。
【0070】
図9の構成は、図6の構成に比べると、列内における各スリットの長さが長くなっている。これにより、図9の構成は、図6の構成に比べて、共振周波数が低くなり、感度が高くなり得る。
【0071】
このような構成によれば、圧電デバイス401で検知すべき音響圧力の感度を圧電デバイス101より高く調整できる。
【0072】
あるいは、圧電デバイス501において、複数のスリット521の配置構成が図10のように変えられてもよい。図10は、実施形態の第5の変形例に係る圧電デバイス501の構成を示す平面図である。
【0073】
図10では、複数のスリット521が2つの環状列を形成する構成が例示される。2つの環状列のうち、スリット521_(1,1)~521_(1,4)は、内側から1列目の環状列を形成する。スリット421_(2,1)~421_(2,4)は、内側から2列目の環状列を形成する。
【0074】
電極パターン504は、主面2aの同一の環状列における複数のスリット521間の領域を覆ってもよい。例えば、電極パターン504_1は、スリット521_(1,1)及びスリット521_(1,2)間の領域、スリット521_(2,4)及びスリット521_(2,1)間の領域を覆う。電極パターン505(図示せず)は、主面2bの同一の環状列における複数のスリット521間の領域を覆ってもよい。電極パターン506(図示せず)は、主面3bの同一の環状列における複数のスリット521間の領域を覆ってもよい。
【0075】
図10の構成は、図6の構成に比べると、列間隔が広くなっている。これにより、図10の構成は、図6の構成に比べて、強度が強くなり、感度が低くなり得る。
【0076】
このような構成によれば、圧電デバイス501で検知すべき音響圧力の感度を圧電デバイス401より低く調整できる。
【0077】
あるいは、圧電デバイス601において、図11に示すように、電極パターン604,605,606が同一の環状列における複数のスリット21間の領域を選択的に覆ってもよい。図11は、実施形態の第6の変形例における電極パターン及び圧電膜の構成を示す平面方向の断面図である。図11(a)に示す電極パターン604_1a,604_1bは、それぞれ、スリット21_(1,8)及びスリット21_(1,1)間の領域、スリット21_(3,8)及びスリット21_(3,1)間の領域を選択的に覆う。電極パターン604_2は、スリット21_(2,1)及びスリット21_(2,2)間の領域を選択的に覆う。
【0078】
図11(c)に示す電極パターン605_1a,605_1bは、それぞれ、スリット21_(1,8)及びスリット21_(1,1)間の領域、スリット21_(3,8)及びスリット21_(3,1)間の領域を選択的に覆う。電極パターン605_2は、スリット21_(2,1)及びスリット21_(2,2)間の領域を選択的に覆う。
【0079】
なお、図11(b)は、図5(b)と同様である。
【0080】
このような構成によれば、圧電膜2,3における歪による応力が集中する箇所をさらに選択的に覆うことができ、歪みによる応力に応じた電圧をさらに効果的に圧電デバイス1で検知でき、圧電デバイス1の所望の周波数範囲の音響圧力に対する検知の感度をさらに向上できる。
【0081】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1、101,201,301,401,501,601 圧電デバイス
2,3 圧電膜
4~6,104~106,204~206,304~306,404~406,504~506,604~606 電極パターン
10 保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11