(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139327
(43)【公開日】2025-09-26
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 53/00 20060101AFI20250918BHJP
B24B 53/12 20060101ALI20250918BHJP
B24D 18/00 20060101ALI20250918BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20250918BHJP
B24D 3/28 20060101ALI20250918BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20250918BHJP
【FI】
B24B53/00 K
B24B53/12 Z
B24D18/00
B24D3/00 320A
B24D3/00 320B
B24D3/28
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038204
(22)【出願日】2024-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今泉 祐介
【テーマコード(参考)】
3C047
3C063
5F063
【Fターム(参考)】
3C047AA16
3C047AA32
3C047EE04
3C047EE18
3C063AA10
3C063AB10
3C063BB02
3C063BB03
3C063BB04
3C063BC03
3C063EE01
3C063FF30
5F063AA40
5F063DD22
5F063FF27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】切削加工とは別にドレッシングを実施する必要がなくなり、実質的にドレッシングに掛かる時間を0にする。
【解決手段】切削ブレード83をドレッシングするドレッシング機構20は、流動性を有するバインダーにドレッシング砥粒が混錬したドレッシング部材30を貯留する貯留部22と、貯留部22からドレッシング部材30を送り出すドレッシング部材送り出し手段23と、ドレッシング部材30を受け入れるチューブ87と、ドレッシング部材30を冷却して半固化させる冷却部89と、チューブ87に形成され切削ブレード83の切り刃を収容するスリットと、を備え、切削ブレード83の切り刃をドレッシングする際は、ドレッシング部材送り出し手段23を作動させて、該ドレッシング手段に対してドレッシング部材30を送り込むと共に、切削手段8に装着された切削ブレード83を回転させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切り刃を外周に配設した切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、を含む切削装置であって、
切削ブレードをドレッシングするドレッシング機構を備え、
該ドレッシング機構は、流動性を有するバインダーにドレッシング砥粒が混錬したドレッシング部材を貯留する貯留部と、該貯留部からドレッシング部材を送り出すドレッシング部材送り出し手段と、該ドレッシング部材送り出し手段により送り出されたドレッシング部材でドレッシングを遂行するドレッシング手段と、と含み、
該ドレッシング手段は、ドレッシング部材を受け入れるチューブと、該ドレッシング部材を冷却して半固化させる冷却部と、該チューブに形成され切削ブレードの切り刃を収容するスリットと、を備え、
切削ブレードの切り刃をドレッシングする際は、該ドレッシング部材送り出し手段を作動させて、該ドレッシング手段に対してドレッシング部材を送り込むと共に、該切削手段に装着された切削ブレードを回転させる切削装置。
【請求項2】
該ドレッシング機構は、ドレッシング部材を該ドレッシング手段から該貯留部に回収する回収経路を備える請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
該ドレッシング部材は、流動性を有するバインダーにドレッシング砥粒を混錬して構成されており、該バインダーは、熱可塑性樹脂、ゲル化剤のいずれかを含み、ドレッシング砥粒は、炭化ケイ素、アルミナ、ダイヤモンドのうちいずれかを含む請求項1に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切り刃を外周に配設した切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、を含む切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、切削装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
切削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を含み構成されていて、ウエーハを高精度に個々のデバイスチップに分割することができる(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
従来の切削装置では、切削ブレードの切削能力が低下した場合、切削ブレードの目立てや、切削ブレードの整形を行うために、切削装置にドレッシングボードを搬入してチャックテーブルに載置して吸引保持し、該ドレッシングボードに切削ブレードを切り込ませて切削ブレードの目立てや整形を行う、いわゆるドレッシングを実施し、該ドレッシングが終了した後は、該チャックテーブルからドレッシングボードを搬出して、ドレッシングボードを所定の収容箇所に収容しており、手間が掛かるという問題がある。
【0005】
また、ドレッシングボードは、セラミックスを形成する素材にドレッシング砥粒を混錬して焼結することから湾曲する場合があり、該ドレッシングボードが湾曲した場合は、チャックテーブルに適正に吸引保持することが困難になることから、ドレッシングボードが湾曲しないように品質管理する必要があるという問題がある。
【0006】
さらに、ウエーハ等の被加工物を保持するチャックテーブルとは別に、ドレッシングボードを保持する専用のテーブルを備える切削装置も提案されている(特許文献2を参照)。しかし、前記した従来技術と同様に、ドレッシングボードが湾曲している場合は、該専用のテーブルに保持することが困難であることに加え、使用済みドレッシングボードを新しいドレッシングボードに交換しなければならず手間が掛かるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-203429号公報
【特許文献2】特開2015-216324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、切削ブレードの切削能力が低下した場合にドレッシングを実施する切削装置において、ドレッシングボードが湾曲している場合にチャックテーブルに保持することが困難であることに加え、使用済みドレッシングボードを新しいドレッシングボードに交換しなければならず手間が掛かる、という問題が解消される切削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切り刃を外周に配設した切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、を含む切削装置であって、切削ブレードをドレッシングするドレッシング機構を備え、該ドレッシング機構は、流動性を有するバインダーにドレッシング砥粒が混錬したドレッシング部材を貯留する貯留部と、該貯留部からドレッシング部材を送り出すドレッシング部材送り出し手段と、該ドレッシング部材送り出し手段により送り出されたドレッシング部材でドレッシングを遂行するドレッシング手段と、と含み、該ドレッシング手段は、ドレッシング部材を受け入れるチューブと、該ドレッシング部材を冷却して半固化させる冷却部と、該チューブに形成され切削ブレードの切り刃を収容するスリットと、を備え、切削ブレードの切り刃をドレッシングする際は、該ドレッシング部材送り出し手段を作動させて、該ドレッシング手段に対してドレッシング部材を送り込むと共に、該切削手段に装着された切削ブレードを回転させる切削装置が提供される。
【0010】
該ドレッシング機構は、ドレッシング部材を該ドレッシング手段から該貯留部に回収する回収経路を備えることが好ましい。また、該ドレッシング部材は、流動性を有するバインダーにドレッシング砥粒を混錬して構成されており、該バインダーは、熱可塑性樹脂、ゲル化剤のいずれかを含み、ドレッシング砥粒は、炭化ケイ素、アルミナ、ダイヤモンドのうちいずれかを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切り刃を外周に配設した切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、を含む切削装置であって、切削ブレードをドレッシングするドレッシング機構を備え、該ドレッシング機構は、流動性を有するバインダーにドレッシング砥粒が混錬したドレッシング部材を貯留する貯留部と、該貯留部からドレッシング部材を送り出すドレッシング部材送り出し手段と、該ドレッシング部材送り出し手段により送り出されたドレッシング部材でドレッシングを遂行するドレッシング手段と、と含み、該ドレッシング手段は、ドレッシング部材を受け入れるチューブと、該ドレッシング部材を冷却して半固化させる冷却部と、該チューブに形成され切削ブレードの切り刃を収容するスリットと、を備え、切削ブレードの切り刃をドレッシングする際は、該ドレッシング部材送り出し手段を作動させて、該ドレッシング手段に対してドレッシング部材を送り込むと共に、該切削手段に装着された切削ブレードを回転させることから、切削加工とは別にドレッシングを実施する必要がなくなり、実質的にドレッシングに掛かる時間を0にすることができる。すなわち、ドレッシングボードをチャックテーブルに載置し吸引保持してドレッシングを実施し、ドレッシングを実施した後にドレッシングボードを搬出するという手間が掛かるという問題が解消し、さらには、ドレッシングボードが湾曲してチャックテーブルに適正に保持できない、という問題も解消する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1に示す切削装置に装着される切削手段の一部拡大斜視図、及び分解図である。
【
図3】
図2に示す切削手段に装着されるドレッシング機構の概念図である。
【
図4】
図1に示す切削装置によって加工されるウエーハ10の斜視図である。
【
図5】切削加工及びドレッシングを実施する態様を示す斜視図である。
【
図6】(a)
図5において実施されるドレッシングの態様を示す斜視図、(a)に示すドレッシングの態様の示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に基づいて構成される切削装置に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0014】
図1には、本実施形態の切削装置1の全体斜視図が示されている。図示の切削装置1は、被加工物を保持するチャックテーブル7と、チャックテーブル7に保持された被加工物を切削する切り刃を外周に配設した切削ブレード83を回転可能に備えた切削手段8とを含み構成されていて、切削ブレード83をドレッシングするドレッシング機構(追って詳細に説明する)を備えている。図示の切削装置1によって加工される被加工物は、例えば、半導体のウエーハ10であり、粘着性を有するテープTによって環状のフレームFと一体にされている。
【0015】
切削装置1は、
図1に示すように、略直方体形状のハウジング2を備え、昇降可能なカセットテーブル4aに載置されるカセット4と、カセット4からフレームFに保持されたウエーハ10を仮置きテーブル5に搬出する搬出入手段3と、仮置きテーブル5に搬出されたウエーハ10を、保持面7aを有するチャックテーブル7に搬送する旋回アームを有する搬送手段6と、チャックテーブル7に保持されたウエーハ10を加工する加工手段として配設された切削ブレード83を含む切削手段8と、チャックテーブル7上に保持されたウエーハ10を撮像し、切削手段8の切削ブレード83によって切削される加工位置を検出するアライメント手段9と、
図1においてチャックテーブル7が位置付けられた搬出入位置から搬出された加工後のウエーハ10を洗浄する洗浄装置11(詳細は省略されている)と、ウエーハ10を洗浄装置11に搬送する洗浄搬出手段12と、図示を省略する制御手段と、を備えている。
【0016】
チャックテーブル7の保持面7aは、X軸方向及び該X軸方向に直交するY軸方向によって規定されるXY平面であって、実質上水平である。保持面7aは、通気性を有する素材で形成され、該保持面7aには、図示を省略する吸引手段が接続されており、該吸引手段を作動することにより、保持面7aに負圧が生成される。チャックテーブル7の外周には、ウエーハ10を支持するフレームFを把持するクランプ7bが、均等な間隔で複数(図示の形態では4つ)配設されている。また、ハウジング2の内部には、該チャックテーブル7をX軸方向に移動するX軸送り手段、切削手段8をY軸方向に移動するY軸送り手段、切削手段8をZ軸方向(上下方向)に移動するZ軸送り手段、チャックテーブル7を回転させる回転駆動手段等が配設されている(いずれも図示はされていない)。
【0017】
上記の制御手段には、切削装置1の上記の各作動部が少なくとも接続されている。該制御手段は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、検出した検出値、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている(詳細についての図示は省略する)。
【0018】
図2を参照しながら、上記の切削装置1に配設された切削手段8について、より具体的に説明する。
図2の下方に切削手段8の斜視図を示し、上方に該切削手段8の分解図を示している。
【0019】
図2の下方に示すように、切削手段8は、スピンドルハウジング81と、スピンドルハウジング81の先端に装着されたブレードカバー82と、Y軸方向を軸心として回転自在にスピンドルハウジング81に支持され、先端に切削ブレード83を備えたスピンドル84と、切削ブレード83によって切削加工される領域に、切削ブレード83の表面側及び裏面側から切削水を供給する一対の切削水供給ノズル85(反対側の切削水供給ノズル85は見えていない)と、スピンドル84を回転させる図示を省略するスピンドルモータと、を備えている。ブレードカバー82には、上記の一対の切削水供給ノズル85に切削水を導入する一対の切削水導入口86が配設されると共に、後述するドレッシング機構の一部を構成するチューブ87と、該チューブ87をブレードカバー82の上面側で囲繞し、チューブ87を冷却する冷却部89が配設されている。
【0020】
図2の上方側に示す分解図から理解されるように、ブレードカバー82は、スピンドルハウジング81の先端に固定された固定カバー82aと、固定カバー82aの先端にねじ88aを介して装着される着脱カバー82bと、固定カバー82aの上部にねじ88bを介して装着される切削ブレード83の切り刃の状態を検出するブレード検出ブロック82cと、を含み、固定カバー82aと着脱カバー82bとの対向面に、切削ブレード83の切り刃を収容可能なスリット87c(後述する)を備えた略L字形状のチューブ87を形成する半割状のL字部材87a、87bが配設される。該L字部材87a、87bは、例えばSUS等の金属で形成される。冷却部89も、該L字部材87a、87bと同様に、半割状の二つの部材89a、89bによって構成されており、合体することで、円柱状の冷却部89を構成する。
【0021】
該L字部材87a、87bのコーナー部の外側には、割断面に沿って凹部が形成されており、該L字部材87a、87bを合体して、略L字形状のチューブ87を形成したとき、該凹部によって、上記の切削ブレード83の切り刃の先端を収容して、チューブ87の内部を通過させることが可能な縦長のスリット87cが形成される。このようにL字形状のチューブ87を形成することで、一端側には、後述するドレッシング部材30を導入する導入口87dが形成され、他端側には、ドレッシング部材30を排出する排出口87eが形成される。
【0022】
切削装置1は、
図3に示すように、上記の切削手段8に配設されたチューブ87、及び冷却部89を含むドレッシング機構20を備えている。ドレッシング機構20は、流動性を有するバインダーにドレッシング砥粒を混錬したドレッシング部材30を貯留する貯留部22と、該貯留部22からドレッシング部材30を送り出すドレッシング部材送り出し手段23と、送り出されたドレッシング部材30で切削ブレード83のドレッシングを遂行するドレッシング手段(追って説明する)とを備えている。
【0023】
該貯留部22には、貯留したドレッシング部材30の流動性を適正に維持すべく、必要に応じて該貯留部22に貯留されたドレッシング部材30を加熱する加熱ヒータ(例えばペルチェ素子)22a、及び該貯留部22に振動を与えて貯留部22に貯留されたドレッシング部材30を攪拌する振動付与手段(例えばピエゾ素子)22bが配設されている。
【0024】
ドレッシング部材送り出し手段23は、貯留部22からドレッシング部材30を送り出す経路231と、該経路231上に配設された開閉弁232と、該経路231上に配設されドレッシング部材30を吸引して吐出するポンプ233とを備え、上記の制御手段によって制御される。該制御手段によって開閉弁232を開にすると共にポンプ233を作動することで、貯留部22に貯留されたドレッシング部材30を、経路231を通じて矢印R1で示す方向に送り出すことができる。
【0025】
ドレッシング部材送り出し手段23によって送り出されたドレッシング部材30は、ドレッシング部材30を受け入れる上記のチューブ87と、該チューブ87に形成され切削ブレード83の切り刃を収容する上記のスリット87cと、該チューブ87に導入されたドレッシング部材30を冷却して半固化させる冷却部89とを含むドレッシング手段に送られる。該ドレッシング手段に送られたドレッシング部材30は、チューブ87の一端側の導入口87dから導入されて冷却部89によって冷却されて半固化した状態にされると共に、他端側の排出口87e(
図2を参照)から排出される。
【0026】
本実施形態のドレッシング機構20は、チューブ87の排出口87eに接続される回収経路26を備え、該回収経路26は、上記の貯留部22に接続されている。これにより、ドレッシング機構20によって切削ブレード83をドレッシングし、その後に排出されるドレッシング部材30を、回収経路26を介して矢印R2で示す方向に送り出し、貯留部22に回収して再利用することができる。該回収経路26上には、図示のように、ヒータ25を配設することが好ましい。該ヒータ25によって回収経路26に送られたドレッシング部材30を加熱して流動性を高め、回収経路26を介してドレッシング部材30を貯留部22に回収しやすくなる。
【0027】
貯留部22に貯留されるドレッシング部材30は、流動性を有するバインダーにドレッシング砥粒を混錬して構成することができる。該バインダーは、例えば、熱可塑性樹脂、ゲル化剤のいずれかであり、ドレッシング砥粒は、炭化ケイ素、アルミナ、ダイヤモンドのうちいずれかにより構成された砥粒を含んで上記のドレッシング部材30が構成される。
【0028】
上記の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリ乳酸、ポリエーテルイミド、ポリアミドナイロン、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリテート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミドのうちいずれかを採用することが好ましい。
【0029】
また、ゲル化剤としては、例えば、ペクチ、グアーガム(グァーガム)、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、寒天のうちいずれかを採用することが好ましい。
【0030】
なお、上記した実施形態の構成では、経路231上にポンプ233を配設して、貯留部22に貯留されたドレッシング部材30をチューブ87に向けて送り出したが、本発明はこれに限定されず、他の手段によって送り出すことができる。例えば、経路231上に上記のポンプ233を配設せず、貯留部22の内部を密閉状態にすると共に、内部に圧縮した空気を導入して高圧状態とし、開閉弁232を開とすることで、圧縮した空気の作用によって貯留部22に貯留されたドレッシング部材30をノズル21Aに向けて送り出すことができる。
【0031】
上記のチューブ87に導入されたドレッシング部材30を冷却して半固化させる冷却部89は、例えばペルチェ素子によって構成することができる。経路231内で流動性が維持されたドレッシング部材30を、チューブ87の導入口87cにて冷却して、後述するドレッシング部材30として機能する程度の固さであって、L字形状のチューブ87を通過できる程度の固さとする。なお、該冷却部89は、ペルチェ素子によって構成することに限定されない。例えば、チューブ87の導入口87c側の周囲に5-10℃程度に冷却された液体(水でよい)を通過させる冷却部を構成し、チューブ87に導入されるドレッシング部材30を冷却して、上記のようにドレッシング部材30を半固化させるようにしてもよい。
【0032】
本実施形態の切削装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、本発明に基づいて構成されたドレッシング機構20により切削手段8の切削ブレード83をドレッシングする実施形態について具体的に説明する。
【0033】
上記した切削装置1の被加工物であるウエーハ10は、半導体のウエーハであり、例えば、厚みが200μm、直径が300mmであって、
図4に示すように、複数のデバイスDが分割予定ラインLによって区画され表面10aに形成されている。このウエーハ10を収容可能な開口部Faを備えた環状のフレームFの開口部Faの中央に、該ウエーハ10の表面10aを上方に向けて収容し、テープTをウエーハ10とフレームFの裏面に貼着して一体とする。
【0034】
ウエーハ10を切削加工するに際しては、上記した搬出入手段3によってカセット4から、上記のフレームFに支持されたウエーハ10を仮置きテーブル5上に搬出して位置合わせを行う。次いで、搬送手段6によってフレームFを吸着して、
図1に示す搬出入位置に位置付けられたチャックテーブル7の保持面7a上に搬送して載置し、上記の吸引手段を作動してチャックテーブル7の保持面7aに負圧を生成してウエーハ10を吸引すると共に、クランプ7bによってフレームFを把持してウエーハ10を保持する。
【0035】
上記したようにチャックテーブル7にウエーハ10を保持したならば、上記のX軸送り手段を作動してウエーハ10をアライメント手段9の直下に位置付けて、ウエーハ10を撮像し、加工すべき分割予定ラインLの位置を検出する。
【0036】
ここで、切削手段8に装着された切削ブレード83の切り刃にドレッシングを実施する場合は、上記の制御手段によってドレッシング機構20を作動し、上記の貯留部22からドレッシング部材30を送り出し、チューブ87に導入する。次いで、該チューブ87に導入されたドレッシング部材30を上記の冷却部89によって冷却しながら半固化状態とし、半固化状態とされたドレッシング部材30が、チューブ87内を所定の速度で移動させられる。
【0037】
上記したようにドレッシング機構20を作動させた状態で、上記アライメント手段9によって検出された所定の分割予定ラインLをX軸方向に整合させると共に、上記のX軸送り手段を作動してチャックテーブル7をX軸方向に移動して、切削手段8の直下に位置付ける。そして、上記のY軸送り手段を作動して切削手段8の位置をY軸方向で調整し、
図5に示すように、加工すべき分割予定ラインL上に切削ブレード83を位置付けると共に、該スピンドルモータを作動して、切削ブレード83を矢印R3で示す方向に高速回転させる。
【0038】
次いで、上記したZ軸送り手段を作動して、
図5に示すように、X軸方向に整合させた分割予定ラインLに対し、ウエーハ10の厚み(200μm)を僅かに超える所定の深さで切り込ませると共に、上記したX軸送り手段を作動してウエーハ10をX軸方向に加工送りして、該分割予定ラインLに沿って切削溝100を形成する。
【0039】
さらに、Y軸送り手段を作動して、切削溝100を形成した分割予定ラインLとY軸方向で隣接し、切削溝100が形成されていない未加工の分割予定ラインLとの間隔(例えば5mm)にしたがって切削手段8の切削ブレード83をY軸方向に割り出し送りして、該未加工の分割予定ラインLに切削ブレード83を位置付けて切込み送りし、上記と同様に切削加工を施して切削溝100を形成する。これらを繰り返すことにより、X軸方向に沿うすべての分割予定ラインLに沿って切削溝100を形成する。次いで、ウエーハ10を保持するチャックテーブル7を90度回転し、先に切削溝100を形成した方向と直交する方向をX軸方向に整合させる。そして、上記した切削加工を、新たにX軸方向に整合させたすべての分割予定ラインLに対して実施して、ウエーハ10に形成されたすべての分割予定ラインLに沿って切削溝100を形成し、ウエーハ10を個々のデバイスチップに分割する。
【0040】
このとき、
図6(a)に示すように(説明の都合上、チューブ87と、切削ブレード83が配設された領域のみを示し、他の構成は省略している)、矢印R3で示す方向に高速回転する切削ブレード83の切り刃の先端が、上記したスリット87cの内部に収容された状態でチューブ87の内部を高速で通過し、
図6(b)から理解されるように、チューブ87内を矢印R4で示す方向に流動するドレッシング部材30に切削ブレード83が切り込まれて、切削ブレード83の切り刃のドレッシングが実施される。
【0041】
上記したドレッシングは、オペレータによって、任意のタイミングで指示することができる。オペレータは、例えば、切削ブレード83によってウエーハ10に形成された切削溝100の状態を検査し、その検査結果に基づき、切削ブレード83に対してドレッシングを実施すべきタイミングが到来していることを判断し、指示することができる。また、上記の制御手段が、切削ブレード83にドレッシングを実施すべきタイミングが到来していることをオペレータに対して報知し、ドレッシングの実施を促すことができる。該制御手段は、例えば、切削加工を施したウエーハの枚数が所定の枚数に達したこと、切削加工を実施した時間が所定の時間に達したこと等により、切削ブレード83に対してドレッシングを実施すべきタイミングが到来していることを判定し、オペレータに報知することができる。
【0042】
上記したように、切削手段8によってウエーハ10が個々のデバイスチップに分割されたならば、上記の搬出入位置に位置付けられたチャックテーブル7から、洗浄搬出手段12によってウエーハ10を搬出して、洗浄装置11に搬送して、洗浄、乾燥する。次いで、搬送手段6によって洗浄装置11からウエーハ10を仮置きテーブル5に搬送して、搬出入手段3を作動して、カセット4の所定の位置に収容し、ウエーハ10に対する切削加工が完了する。
【0043】
上記した切削装置1によれば、上記の切削ブレード83によってウエーハ10の所定の分割予定ラインLを切削して切削溝100を形成するのと同時に、スリット87cに収容された切削ブレード83を、チューブ87内を流動するドレッシング部材30に切り込ませて、ドレッシングを実施することができる。これにより、切削加工とは別にドレッシングを実施する必要がなくなり、実質的にドレッシングに掛かる時間を0にすることができる。すなわち、ドレッシングボードをチャックテーブル7に載置し吸引保持してドレッシングを実施し、ドレッシングを実施した後にドレッシングボードを搬出するという手間が掛かるという問題が解消し、さらには、ドレッシングボードが湾曲してチャックテーブル7に適正に保持できない、という問題も解消する。また、ドレッシングボードを保持する専用のテーブルを配設する必要もない。
【0044】
なお、本実施形態の切削装置1によれば、必ずしも、切削ブレード83に対するドレッシングを、ウエーハ10に対する切削加工と同時に実施する必要はなく、切削加工を実施していない合間に、上記のドレッシング機構20を作動させると共に切削ブレード83を高速で回転させることにより、ドレッシングのみを実施することも可能である。その場合であっても、ドレッシングを実施するために、ドレッシングボードをチャックテーブル7に載置し吸引保持する手間が掛からず、ドレッシングを実施した後にドレッシングボードを搬出する必要もない。さらには、ドレッシングボードが湾曲してチャックテーブル7に適正に保持できずドレッシングが実施できない、という問題が生じることなく、ドレッシングボードを保持する専用のテーブルを配設する必要もない。
【0045】
更にいえば、本実施形態の切削装置1では、ドレッシングを実施していない状態でウエーハ10に対する切削加工を実施している状態から、切削加工を中断せずに、ドレッシングを開始することが可能であり、また、切削加工を中断することなく、ドレッシングを完了させることができ、ドレッシングの開始、終了の自由度が極めて高い。
【符号の説明】
【0046】
1:切削装置
2:ハウジング
3:搬出入手段
4:カセット
5:仮置きテーブル
6:搬送手段
7:チャックテーブル
7a:保持面
7b:クランプ
8:切削手段
81:スピンドルハウジング
82:ブレードカバー
83:切削ブレード
84:スピンドル
85:切削水供給ノズル
86:切削水導入口
87:チューブ
87a:L字部材
87b:L字部材
87c:スリット
87d:導入口
87e:排出口
9:アライメント手段
10:ウエーハ
10a:表面
11:洗浄装置
12:洗浄搬出手段
20:ドレッシング機構
22:貯留部
23:ドレッシング部材送り手段
231:経路
232:開閉弁
233:ポンプ
23:開閉弁
30:ドレッシング部材
100:切削溝
D:デバイス
F:フレーム
L:分割予定ライン