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特開2025-139779感光性樹脂組成物、感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法
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  • 特開-感光性樹脂組成物、感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139779
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20250919BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20250919BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20250919BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20250919BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250919BHJP
   C08G 59/14 20060101ALN20250919BHJP
【FI】
G03F7/027 515
G03F7/004 512
G03F7/004 501
G03F7/004 505
C08G59/17
H05K3/28 F
H05K3/28 D
G03F7/20 521
G03F7/20 501
C08G59/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038807
(22)【出願日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】代島 雄汰
(72)【発明者】
【氏名】岩淵 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 剛司
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J036
5E314
【Fターム(参考)】
2H197CA03
2H197CA04
2H197CA05
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197HA03
2H197JA22
2H225AC36
2H225AC54
2H225AD02
2H225AD06
2H225AD15
2H225AE14P
2H225AE15P
2H225AN94P
2H225AP11P
2H225BA16P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225CA13
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J036AD08
4J036CA19
4J036CA21
4J036CB20
4J036HA01
4J036JA09
4J036JA10
5E314AA25
5E314AA27
5E314AA32
5E314BB02
5E314CC01
5E314CC02
5E314CC03
5E314CC07
5E314CC15
5E314DD05
5E314DD06
5E314EE03
5E314FF01
5E314GG26
(57)【要約】
【課題】解像性及び絶縁信頼性に優れる永久レジストを形成できる感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いた感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法を提供すること。
【解決手段】本開示の一態様に係る感光性樹脂組成物は、(A)酸変性ビニル基含有樹脂、(B)熱硬化性樹脂、(C)光重合開始剤、及び(D)光重合性化合物を含有し、(A)酸変性ビニル基含有樹脂が、エチレン性不飽和基、水酸基、及びカルボキシ基を有する化合物と、水酸基と反応しうる官能基を有する化合物との反応生成物を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸変性ビニル基含有樹脂、(B)熱硬化性樹脂、(C)光重合開始剤、及び(D)光重合性化合物を含有し、
前記(A)酸変性ビニル基含有樹脂が、エチレン性不飽和基、水酸基、及びカルボキシ基を有する化合物と、水酸基と反応しうる官能基を有する化合物との反応生成物を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記水酸基と反応しうる官能基を有する化合物の水とのハンセン溶解度パラメータの距離が、30~50である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記水酸基と反応しうる官能基を有する化合物が、モノイソシアネートである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和基、水酸基、及びカルボキシ基を有する化合物が、酸変性ビニル基含有エポキシ誘導体である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(E)無機フィラーを更に含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(F)顔料を更に含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
支持フィルムと、前記支持フィルム上に形成された感光層とを備え、
前記感光層が、請求項1~6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を含む、感光性エレメント。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む永久レジストを具備する、プリント配線板。
【請求項9】
基板上に、請求項1~6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて感光層を形成する工程と、
前記感光層を露光及び現像してレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを硬化して永久レジストを形成する工程と、
を備える、プリント配線板の製造方法。
【請求項10】
基板上に、請求項7に記載の感光性エレメントを用いて感光層を形成する工程と、
前記感光層を露光及び現像してレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを硬化して永久レジストを形成する工程と、
を備える、プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板分野では、プリント配線板上に永久レジストを形成することが行われている。永久レジストは、プリント配線板の使用時において、導体層の腐食を防止したり、導体層間の電気絶縁性を保持したりする役割を有している。近年、永久レジストは、半導体素子をプリント配線板上にはんだを介してフリップチップ実装、ワイヤボンディング実装等を行う工程においても、プリント配線板の導体層の不要な部分にはんだが付着することを防ぐ、はんだレジスト膜としての役割も有している。
【0003】
従来、永久レジストは、熱硬化性樹脂組成物を用いてスクリーン印刷する方法、又は、感光性樹脂組成物を用いた写真法で作製されている。例えば、FC(Flip Chip)、TAB(Tape Automated Bonding)、COF(Chip On Film)等の実装方式を用いたフレキシブル配線板においては、ICチップ、電子部品又はLCD(液晶ディスプレイ)パネルと接続配線パターン部分を除いて、熱硬化性樹脂ペーストをスクリーン印刷し、熱硬化して永久レジストを形成している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
電子部品に搭載されているBGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)等の半導体パッケージ基板においては、(1)半導体パッケージ基板上にはんだを介して半導体素子をフリップチップ実装するために、(2)半導体素子と半導体パッケージ基板とをワイヤボンディング接合するために、(3)半導体パッケージ基板をマザーボード基板上にはんだ接合するために、接合部分の永久レジストを除去する必要がある。永久レジストの像形成には、感光性樹脂組成物を塗布し乾燥した後に選択的に紫外線等の活性光線を照射して硬化させ、未照射部分のみを現像で除去して像形成する写真法が用いられている。写真法は、作業性の良さから大量生産に適しているため、電子材料業界では感光性材料の像形成に広く用いられている。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-198105号公報
【特許文献2】特開2011-133851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリント配線板の高密度化に対応して、永久レジスト(ソルダーレジスト)にも更なる高性能化が要求されている。特に微細パターンの形成及び絶縁信頼性に関する要求は年々高まっており、これらの特性を高度に両立させることが重要になっている。しかしながら、従来の感光性樹脂組成物から形成される永久レジストは、微細パターン形成時において、解像性が十分でなく、開口部に裾引きが発生して閉口が生じたりすること、また、形成された永久レジストにおいて十分な絶縁信頼性が担保できず配線間で短絡が発生してしまうことがある。
【0007】
本開示は、解像性及び絶縁信頼性に優れる永久レジストを形成できる感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いた感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、以下の感光性樹脂組成物、感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法に関する。
[1](A)酸変性ビニル基含有樹脂、(B)熱硬化性樹脂、(C)光重合開始剤、及び(D)光重合性化合物を含有し、(A)酸変性ビニル基含有樹脂が、エチレン性不飽和基、水酸基、及びカルボキシ基を有する化合物と、水酸基と反応しうる官能基を有する化合物との反応生成物を含む、感光性樹脂組成物。
[2]水酸基と反応しうる官能基を有する化合物の水とのハンセン溶解度パラメータの距離が、30~50である、上記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]水酸基と反応しうる官能基を有する化合物が、モノイソシアネートである、上記[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]エチレン性不飽和基、水酸基、及びカルボキシ基を有する化合物が、酸変性ビニル基含有エポキシ誘導体である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5](E)無機フィラーを更に含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6](F)顔料を更に含有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[7]支持フィルムと、支持フィルム上に形成された感光層とを備え、感光層が、上記[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を含む、感光性エレメント。
[8]上記[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む永久レジストを具備する、プリント配線板。
[9]基板上に、上記[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を用いて感光層を形成する工程と、感光層を露光及び現像してレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンを硬化して永久レジストを形成する工程と、を備える、プリント配線板の製造方法。
[10]基板上に、上記[7]に記載の感光性エレメントを用いて感光層を形成する工程と、感光層を露光及び現像してレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンを硬化して永久レジストを形成する工程と、を備える、プリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、解像性及び絶縁信頼性に優れる永久レジストを形成できる感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いた感光性エレメント、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る感光性エレメントを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示について詳細に説明する。本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成される限り、他の工程と明確に区別できない工程も含む。「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」の少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」等の他の類似表現についても同様である。本明細書において、「固形分」とは、感光性樹脂組成物に含まれる揮発する物質(水、溶剤等)を除いた不揮発分を指し、室温(25℃付近)で液状、水飴状、又はワックス状の成分も含む。
【0013】
[感光性樹脂組成物]
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(A)酸変性ビニル基含有樹脂、(B)熱硬化性樹脂、(C)光重合開始剤、及び(D)光重合性化合物を含有し、(A)酸変性ビニル基含有樹脂が、エチレン性不飽和基、水酸基、及びカルボキシ基を有する化合物と、水酸基と反応しうる官能基を有する化合物との反応生成物を含む。
【0014】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、ネガ型の感光性樹脂組成物であり、感光性樹脂組成物の硬化膜は、永久レジストとして好適に用いることができる。以下、本実施形態の感光性樹脂組成物で用いられる各成分についてより詳細に説明する。
【0015】
((A)成分:酸変性ビニル基含有樹脂)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(A)成分として酸変性ビニル基含有樹脂を含有する。(A)成分は、エチレン性不飽和基、水酸基、及びカルボキシ基を有する化合物(以下、「(A1)成分」という。)と、水酸基と反応しうる官能基を有する化合物(以下、「(d)成分」という。)との反応生成物(以下、「(A2)成分」という。)を含む。(A2)成分は、(A1)成分の化合物が有する水酸基の少なくとも一部が、(d)成分の化合物により保護されている。
【0016】
(A1)成分としては、光重合性のエチレン性不飽和結合と、水酸基と、カルボキシ基とを有していれば、特に限定されない。(A1)成分が有するエチレン性不飽和結合を有する基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。これらの中でも、反応性及び解像性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0017】
(A1)成分は、(a)エポキシ樹脂(以下、「(a)成分」という。)と、(b)エチレン性不飽和基含有有機酸(以下、「(b)成分」という。)と、を反応させてなる樹脂(A’)に、(c)飽和基又は不飽和基含有多塩基酸無水物(以下、「(c)成分」という。)を反応させてなる酸変性ビニル基含有エポキシ誘導体であることが好ましい。
【0018】
酸変性ビニル基含有エポキシ誘導体としては、例えば、酸変性エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。酸変性エポキシ(メタ)アクリレートは、(a)成分と(b)成分との反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートを(c)成分で酸変性した樹脂である。酸変性エポキシ(メタ)アクリレートとして、例えば、エポキシ樹脂とビニル基含有モノカルボン酸とを反応させて得られるエステル化物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を付加した付加反応物を用いることができる。
【0019】
(A1)成分としては、例えば、(a)成分としてビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂(a1)(以下、「エポキシ樹脂(a1)」という。)を用いてなる酸変性ビニル基含有樹脂(A1-1)、及び(a)成分としてエポキシ樹脂(a1)以外のエポキシ樹脂(a2)(以下、「エポキシ樹脂(a2)」という。)を用いてなる酸変性ビニル基含有樹脂(A1-2)が挙げられる。
【0020】
エポキシ樹脂(a1)としては、例えば、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、及びビスフェノールEノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂(a1)は、下記式(I)で表される構造単位及び下記式(II)で表される構造単位のうち少なくとも一方の構造単位を有することが好ましい。
【0021】
【化1】
【0022】
式(I)及び(II)中、R11は水素原子又はメチル基を示し、複数のR11は同一でも異なっていてもよい。Y及びYはそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を示すが、Y及びYの少なくとも一方はグリシジル基である。アンダーカットの発生を抑制し、レジストパターン輪郭の直線性及び解像性を向上する観点から、R11は、水素原子であることが好ましく、耐熱衝撃性をより向上する観点から、Y及びYは、グリシジル基であることが好ましい。
【0023】
エポキシ樹脂(a1)中の式(I)又は(II)で表される構造単位数は、1以上であり、10~100、15~80、又は15~70であってもよい。構造単位数が上記範囲内であると、レジストパターン輪郭の直線性、銅基板との密着性、耐熱性及び電気絶縁性を向上し易くなる。ここで、構造単位の構造単位数は、単一の分子においては整数値を示し、複数種の分子の集合体においては平均値である有理数を示す。以下、構造単位の構造単位数については同様である。
【0024】
ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、EXA-7376シリーズ(DIC株式会社製、商品名)として商業的に入手可能であり、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、EPON SU8シリーズ(三菱ケミカル株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0025】
エポキシ樹脂(a2)は、エポキシ樹脂(a1)とは異なるエポキシ樹脂であれば特に制限されないが、アンダーカットの発生を抑制し、レジストパターン輪郭の直線性、銅基板との密着性、及び解像性を向上する観点から、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0026】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(III)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂が挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(IV)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂が挙げられる。トリフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(V)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂が挙げられる。ビフェニル型エポキシ樹脂としては、下記式(VI)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
【0027】
エポキシ樹脂(a2)としては、下記式(III)で表される構造単位を有するノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。このような構造単位を有するノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(III’)で表されるノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0028】
【化2】
【0029】
式(III)及び(III’)中、R13は水素原子又はメチル基を示し、Yは水素原子又はグリシジル基を示すが、Yの少なくとも一つはグリシジル基である。式(III’)中、nは1以上の数であり、複数のR13及びYは、同一でも異なっていてもよい。アンダーカットの発生を抑制し、レジストパターン輪郭の直線性及び解像性を向上する観点から、R13は、水素原子であることが好ましい。
【0030】
式(III’)中、水素原子であるYとグリシジル基であるYとのモル比が、アンダーカットの発生を抑制し、レジストパターン輪郭の直線性及び解像性を向上する観点から、0/100~30/70又は0/100~10/90であってもよい。nは1以上であるが、10~200、30~150、又は30~100であってもよい。nが上記範囲内であると、レジストパターン輪郭の直線性、銅基板との密着性、及び耐熱性が向上し易くなる。
【0031】
式(III’)で表されるノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。これらのノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、公知の方法でフェノールノボラック樹脂又はクレゾールノボラック樹脂と、エピクロルヒドリンとを反応させることにより得ることができる。
【0032】
式(III’)で表されるフェノールノボラック型エポキシ樹脂又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、YDCN-701、YDCN-702、YDCN-703、YDCN-704、YDCN-704L、YDPN-638、YDPN-602(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、商品名)、DEN-431、DEN-439(以上、ダウ・ケミカル社製、商品名)、EOCN-120、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1012、EOCN-1025、EOCN-1027、BREN(以上、日本化薬株式会社製、商品名)、EPN-1138、EPN-1235、EPN-1299(以上、BASF社製、商品名)、N-730、N-770、N-865、N-665、N-673、VH-4150、VH-4240(以上、DIC株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0033】
エポキシ樹脂(a2)として、下記式(IV)で表される構造単位を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく挙げられる。このような構造単位を有するエポキシ樹脂としては、例えば、下記式(IV’)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0034】
【化3】
【0035】
式(IV)及び(IV’)中、R14は水素原子又はメチル基を示し、複数存在するR14は同一でも異なっていてもよく、Yは水素原子又はグリシジル基を示す。式(IV’)中、nは1以上の数を示し、nが2以上の場合、複数のYは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一つのYはグリシジル基である。
【0036】
アンダーカットの発生を抑制し、レジストパターン輪郭の直線性及び解像性を向上する観点から、R14は水素原子であることが好ましく、耐熱衝撃性をより向上する観点から、Yはグリシジル基であることが好ましい。nは1以上を示すが、10~100、10~80又は15~60であってもよい。nが上記範囲内であると、レジストパターン輪郭の直線性、銅基板との密着性、及び耐熱性が向上し易くなる。
【0037】
式(IV)中のYがグリシジル基であるビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂は、例えば、式(IV)中のYが水素原子であるビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂の水酸基(-OY)とエピクロルヒドリンとを反応させることにより得ることができる。
【0038】
水酸基とエピクロルヒドリンとの反応を促進するためには、反応温度50~120℃でアルカリ金属水酸化物存在下、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶剤中で反応を行うことが好ましい。反応温度が上記範囲内であると、反応が遅くなりすぎることがなく、副反応を抑制することができる。
【0039】
式(IV’)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、jER807、jER815、jER825、jER827、jER828、jER834、jER1001、jER1004、jER1007、jER1009(以上、三菱ケミカル株式会社製、商品名)、DER-330、DER-301、DER-361(以上、ダウ・ケミカル社製、商品名)、YD-8125、YDF-170、YDF-175S、YDF-2001、YDF-2004、YDF-8170(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0040】
エポキシ樹脂(a2)としては、下記式(V)で表される構造単位を有するトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂が好ましく挙げられる。このような構造単位を有するトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(V’)で表されるトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0041】
【化4】
【0042】
式(V)及び(V’)中、Yは水素原子又はグリシジル基を示し、複数のYは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一つのYはグリシジル基である。式(V’)中、nは1以上の数を示す。
【0043】
アンダーカット及び上部の欠落の発生を抑制し、レジストパターン輪郭の直線性及び解像性を向上する観点から、Yにおける水素原子であるYとグリシジル基であるYとのモル比が、0/100~30/70であってもよい。このモル比からも分かるように、Yの少なくとも一つはグリシジル基である。nは1以上であるが、10~100、15~80、又は15~70であってもよい。nが上記範囲内であると、レジストパターン輪郭の直線性、銅基板との密着性、及び耐熱性が向上し易くなる。
【0044】
式(V’)で表されるトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、FAE-2500、EPPN-501H、EPPN-502H(以上、日本化薬株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0045】
エポキシ樹脂(a2)としては、下記式(VI)で表される構造単位を有するビフェニル型エポキシ樹脂が好ましく挙げられる。このような構造単位を有するビフェニル型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(VI’)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0046】
【化5】
【0047】
式(VI)及び(VI’)中、Yは水素原子又はグリシジル基を示し、複数のYは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一つのYはグリシジル基である。式(VI’)中、nは1以上の数を示す。
【0048】
式(VI’)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂としては、例えば、NC-3000、NC-3000-L、NC-3000-H、NC-3000-FH-75M、NC-3100、CER-3000-L(以上、日本化薬株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0049】
エポキシ樹脂(a2)としては、式(III)で表される構造単位を有するノボラック型エポキシ樹脂、式(IV)で表される構造単位を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び式(IV)で表される構造単位を有するビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、式(IV)で表される構造単位を有するビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0050】
(b)成分としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸の二量体、メタクリル酸、β-フルフリルアクリル酸、β-スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α-シアノ桂皮酸等のアクリル酸誘導体;水酸基含有(メタ)アクリレートと二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物;及びビニル基含有モノグリシジルエーテル又はビニル基含有モノグリシジルエステルと二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物が挙げられる。(b)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0051】
半エステル化合物は、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート、ビニル基含有モノグリシジルエーテル又はビニル基含有モノグリシジルエステルと、二塩基酸無水物とを反応させることで得られる。
【0052】
水酸基含有(メタ)アクリレート、ビニル基含有モノグリシジルエーテル、及びビニル基含有モノグリシジルエステルとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0053】
二塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及び無水イタコン酸が挙げられる。
【0054】
(a)成分と(b)成分との反応において、(a)成分のエポキシ基1当量に対して、(b)成分が0.6~1.05当量となる比率で反応させることが好ましく、0.8~1.0当量となる比率で反応させることがより好ましい。このような比率で反応させることで、光感度が大きくなり、レジストパターン輪郭の直線性に優れる傾向にある。
【0055】
(a)成分及び(b)成分は、有機溶剤に溶かして反応させることができる。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤が挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0056】
(a)成分と(b)成分との反応を促進するための触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、及びトリフェニルホスフィンが挙げられる。触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0057】
触媒の使用量は、(a)成分と(b)成分との反応を促進する観点から、(a)成分と(b)成分の合計100質量部に対して、0.01~10質量部、0.05~2質量部、又は0.1~1質量部であってもよい。
【0058】
(a)成分と(b)成分との反応には、反応中の重合を防止する目的で、重合禁止剤を用いてもよい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、及びピロガロールが挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0059】
重合禁止剤の使用量は、安定性を向上させる観点から、(a)成分と(b)成分の合計100質量部に対して、0.01~1質量部、0.02~0.8質量部、又は0.04~0.5質量部であってもよい。
【0060】
(a)成分と(b)成分との反応温度は、生産性の観点から、60~150℃、80~120℃、又は90~110℃であってもよい。
【0061】
(a)成分と(b)成分とを反応させてなる(A’)成分は、(a)成分のエポキシ基と(b)成分のカルボキシ基との開環付加反応により形成される水酸基を有している。(A’)成分に、更に(c)成分を反応させることにより、(A’)成分の水酸基((a)成分中に元来存在する水酸基も含む)と(c)成分の酸無水物基とが半エステル化された、(A1)成分である酸変性ビニル基含有樹脂が得られる。
【0062】
(c)成分としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及び無水イタコン酸が挙げられる。これらの中でも、解像性の観点から、テトラヒドロ無水フタル酸が好ましい。(c)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0063】
(A’)成分と(c)成分との反応において、例えば、(A’)成分中の水酸基1当量に対して、(c)成分を0.1~1.0当量反応させることで、(A)成分の酸価を調整することができる。
【0064】
(A’)成分と(c)成分との反応温度は、生産性の観点から、50~150℃、60~120℃、又は70~100℃であってもよい。
【0065】
必要に応じて、(a)成分として、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂を一部併用してもよく、スチレン-無水マレイン酸共重合体のヒドロキシエチル(メタ)アクリレート変性物等のスチレン-マレイン酸系樹脂を一部併用してもよい。
【0066】
(A1)成分の酸価は、特に限定されない。(A1)成分の酸価は、未露光部のアルカリ水溶液への溶解性を向上する観点から、30mgKOH/g以上、40mgKOH/g以上、又は50mgKOH/g以上であってもよい。(A)成分の酸価は、硬化膜の電気特性を向上する観点から、150mgKOH/g以下、120mgKOH/g以下、又は100mgKOH/g以下であってもよい。
【0067】
(A1)成分の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されない。(A1)成分のMwは、硬化膜の密着性を向上する観点から、3000以上、4000以上、又は5000以上であってもよい。(A)成分のMwは、感光層の解像性を向上する観点から、30000以下、25000以下、又は18000以下であってもよい。
【0068】
Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定することができる。Mwは、例えば、下記のGPC条件で測定し、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算した値をMwとすることができる。検量線の作成は、標準ポリスチレンとして5サンプルセット(「PStQuick MP-H」及び「PStQuick B」、東ソー株式会社製)を用いることができる。
GPC装置:高速GPC装置「HCL-8320GPC」(東ソー株式会社製)
検出器 :示差屈折計又はUV検出器(東ソー株式会社製)
カラム :カラムTSKgel SuperMultipore HZ-H(カラム長さ:15cm、カラム内径:4.6mm)(東ソー株式会社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)
測定温度 :40℃
流量 :0.35mL/分
試料濃度 :10mg/THF5mL
注入量 :20μL
【0069】
(d)成分としては、水酸基の保護基となる化合物であれば特に限定されない。(d)成分として、例えば、水酸基と反応してウレタン結合を形成可能なモノイソシアネート(以下、「(d1)成分」という。)及び水酸基と反応してエーテル結合を形成可能なビニル基含有化合物又はハロゲン化合物(以下、「(d2)成分」という。)が挙げられる。
【0070】
(d1)成分であるモノイソシアネートとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート等の(メタ)アクリロイル基を有するモノイソシアネート;フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、4-メトキシフェニルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、3,5-ジメチルフェニルイソシアネート、2-ビフェニルイソシアネート、1-ナフタレンイソシアネート、2-フェニルエチルイソシアネート、4-エチルフェニルイソシアネート、4-ブチルフェニルイソシアネート等の芳香環を有するモノイソシアネート;エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、tert-ブチルイソシアネート、ヘプチルイソシアネート、へキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート等のアルキル基を有するモノイソシアネート;及び1-アダマンチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、シクロペンチルイソシアネート等の脂環を有するモノイソシアネートが挙げられる。
【0071】
(d2)成分であるビニル基含有化合物又はハロゲン化合物としては、例えば、テトラヒドロピラン、クロロジメチルエーテル、クロロジエチルエーテル、クロロジメチルスルフィド、ベンジルブロミド、4-メトキシベンジルクロリド、及び2-メトキシエトキシメチルクロリドが挙げられる。
【0072】
水と(d)成分との分子間の分散力によるエネルギー(δD)、分子間の双極子相互作用によるエネルギー(δP)、分子間の水素結合によるエネルギー(δH)から求められる三次元空間座標のハンセン溶解度パラメータ(HSP)の距離を比較することで、(d)成分の疎水性を算出できる。(d)成分の疎水性は、本実施形態に係る硬化性樹脂の疎水性に相当する。
【0073】
HSPiPソフトウェアによるY-MBで算出した具体的な(d)成分のHSPと水とのHSP距離を表1に示す。硬化性樹脂の疎水性を高める観点から、(d)成分の水とのHSP距離は、30~50であってよく、32~48が好ましく、34~46がより好ましく、36~43が更に好ましい。
【0074】
【表1】
【0075】
(A2)成分は、(A1)成分に(d)成分を反応させることで得られる。(A2)成分は、(A1)成分が有する水酸基の少なくとも一部が(d)成分により保護された酸変性ビニル基含有樹脂である。(A1)成分と(d)成分との反応において、例えば、(A1)成分中の水酸基1当量に対して、(d1)成分のイソシアネート基を0.1~2.0当量反応させることで、硬化性樹脂の疎水性を高めることができる。
【0076】
(A1)成分の水酸基と(d1)成分のイソシアネート基によるウレタン結合の形成反応の起こり易さは、(d1)成分のイソシアネートの構造に依存する。一般的に芳香環の電子吸引性の影響により、芳香環を有するイソシアネートは、水酸基との反応性が高く、芳香環を有しないイソシアネートは、水酸基と反応性が低い傾向にある。
【0077】
水酸基との反応性が低いイソシアネートを用いる場合は、触媒存在下で反応を行ってもよい。触媒としては、例えば、ジブチルラウリン酸スズ等の錫系触媒、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒、ナフテン酸鉛等のカルボキシレート触媒、及びトリエチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン触媒が挙げられる。触媒の使用量は、(A1)成分及び(d1)成分の総量を基準として10~1000ppm程度であり、100~200ppmが好ましい。
【0078】
(d)成分を反応させる際には、溶剤を添加してもよい。溶剤の添加量は、(A1)成分100質量部に対して10~100質量部であってもよい。溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0079】
(A1)成分と(d)成分との反応温度は、25~100℃であってよく、40~90℃が好ましく、50~90℃がより好ましく、60~80℃が更に好ましい。反応時間は、0.5~15時間であってよい。(A1)成分と(d)成分との反応は、大気雰囲気下で実施することができるが、窒素ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0080】
(A2)成分の水酸基の保護率が高くなることで、水酸基価が小さくなり、(A2)成分の耐加水分解性を向上することができる。水酸基価は、50mgKOH/g以下、40mgKOH/g以下、又は35mgKOH/g以下であってもよい。水酸基価は、JIS K0070に準じて、電位差滴定法により測定することができる。
【0081】
(A2)成分の水酸基の保護率は、耐加水分解性をより向上する観点から、30%以上、40%以上、又は50%以上であってもよい。水酸基の保護率は、13C NMR又は電位差滴定法により測定することで算出することができる。
【0082】
(A)成分は、アンダーカットの発生を抑制し、銅基板との密着性、耐熱衝撃性及び解像性をより向上する観点から、(A2)成分と共に(A1)成分を含んでもよい。
【0083】
(A)成分として(A1)成分及び(A2)成分とを組み合わせて用いる場合、(A1/(A2)の質量比は、特に限定されないが、レジストパターン輪郭の直線性、耐無電解めっき性及び耐熱性を向上する観点から、20/80~90/10、30/70~80/20、40/60~75/25、又は50/50~70/30であってもよい。
【0084】
感光性樹脂組成物における(A)成分の含有量は、永久レジストの耐熱性、電気特性、及び耐薬品性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、20~70質量%、25~60質量%、28~55質量%、又は30~50質量%であってもよい。
【0085】
((B)成分:熱硬化性樹脂)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(B)成分として熱硬化性樹脂を用いることで、感光性樹脂組成物から形成される硬化膜(永久レジスト)の耐熱性、接着性、及び耐薬品性を向上させることができる。(B)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0086】
(B)成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、及びメラミン樹脂が挙げられる。
【0087】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、及びビキシレノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0088】
(B)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、2~30質量%、5~25質量%、又は8~20質量%であってもよい。(B)成分の含有量を、上記範囲内であると、良好な現像性を維持しつつ、形成される硬化膜の耐熱性をより向上することができる。
【0089】
((C)成分:光重合性化合物)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(C)成分として、光重合性化合物を含有する。(C)成分は、光重合性を示す官能基を有する化合物であれば特に限定されない。光重合性を示す官能基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。反応性の観点から、(C)成分は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含んでもよい。
【0090】
(C)成分としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート化合物;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート化合物;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート化合物;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール化合物のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート化合物;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート化合物;及びメラミン(メタ)アクリレートが挙げられる。(C)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0091】
(C)成分の含有量は、より高い解像性と良好なレジストパターン形状を示しつつ、耐熱性及び耐熱衝撃性に優れる永久レジストを形成する観点から、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、1~15質量%、2~10質量%、又は4~8質量%であってもよい。(C)成分の含有量が1質量%以上であると、光感度が向上し、露光部が現像中に溶出し難くなり、15質量%以下であると、永久レジストの耐熱性を向上し易くなる。
【0092】
((D)成分:光重合開始剤)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(D)成分として光重合開始剤を含有する。(D)成分としては、(A)成分及び(C)成分を重合させることができれば、特に限定されない。(D)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0093】
(D)成分としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン化合物;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン化合物;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール化合物;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン化合物;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等のイミダゾール化合物;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン1-(O-アセチルオキシム)、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-[O-(エトキシカルボニル)オキシム]等のオキシムエステル化合物;及びN,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン化合物が挙げられる。
【0094】
(D)成分の含有量は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.2~15質量%、0.5~10質量%、又は1~5質量%であってもよい。(D)成分の含有量が、0.2質量%以上であると、露光部が現像中に溶出し難くなり、15質量%以下であると耐熱性の低下を抑制し易くなる。
【0095】
((E)成分:無機フィラー)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(E)成分として無機フィラーを更に含有してもよい。(E)成分を含有することで、永久レジストの接着強度及び硬度を向上することができる。(E)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0096】
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化タンタル、ジルコニア、窒化ケイ素、チタン酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛、酸化ガリウム、スピネル、ムライト、コーディエライト、タルク、チタン酸アルミニウム、イットリア含有ジルコニア、ケイ酸バリウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、チタン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、雲母、焼成カオリン、及びカーボンが挙げられる。
【0097】
(E)成分は、永久レジストの耐熱性を向上する観点から、シリカを含んでもよく、永久レジストの耐熱性及び接着強度を向上する観点から、硫酸バリウムを含んでもよく、シリカと硫酸バリウムとを含んでもよい。無機フィラーの分散性を向上する観点から、予めアルミナ又は有機シラン化合物で表面処理された無機フィラーを用いてもよい。
【0098】
無機フィラーの平均粒径は、解像性の観点から、0.01~5.0μm、0.05~3.0μm、0.1~2.0μm、又は0.15~1.0μmであってもよい。
【0099】
(E)成分の平均粒径は、感光性樹脂組成物中に分散した状態での無機フィラーの平均粒径であり、以下のように測定して得られる値とする。まず、感光性樹脂組成物をメチルエチルケトンで1000倍に希釈した後、サブミクロン粒子アナライザ(ベックマン・コールター株式会社製、商品名:N5)を用いて、国際標準規格ISO13321に準拠して、屈折率1.38で、溶剤中に分散した粒子を測定し、粒度分布における積算値50%(体積基準)での粒子径を平均粒径とする。
【0100】
(E)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として5~70質量%、6~60質量%、又は10~50質量%であってもよい。(E)成分の含有量が上記範囲内であると、低熱膨張率、耐熱性、及び膜強度をより向上させることができる。
【0101】
(E)成分としてシリカを用いる場合のシリカの含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、5~60質量%、10~55質量%、又は15~50質量%であってもよい。(E)成分として硫酸バリウムを用いる場合の硫酸バリウムの含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、5~30質量%、5~25質量%、又は10~20質量%であってよい。シリカ及び硫酸バリウムの含有量が上記範囲内であると、低熱膨張率、はんだ耐熱性、及び接着強度に優れる傾向にある。
【0102】
((F)成分:顔料)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、製造装置の識別性又は外観を向上させる観点から、(F)成分として顔料を更に含有してもよい。(F)成分としては、配線(導体パターン)を隠蔽する等の際に所望の色を発色する着色剤を用いることができる。(F)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0103】
(F)成分としては、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、及びナフタレンブラックが挙げられる。
【0104】
(F)成分の含有量は、製造装置を識別し易くし、配線をより隠蔽させる観点から、感光性樹脂組成物中の固形分全量を基準として、0.01~5.0質量%、0.03~3.0質量%、又は0.05~2.0質量%であってもよい。
【0105】
((G)成分:エラストマー)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(G)成分としてエラストマーを更に含有してもよい。(G)成分を含有することにより、(A)成分の硬化収縮による樹脂内部の歪み(内部応力)に起因する可とう性及び接着強度の低下を抑えることができる。
【0106】
(G)成分としては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びシリコーン系エラストマーが挙げられる。これらのエラストマーは、耐熱性及び強度に寄与するハードセグメント成分と、柔軟性及び強靭性に寄与するソフトセグメント成分から構成されている。これらの中でも、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマーが好ましい。
【0107】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、及びスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマーが挙げられる。スチレン系エラストマーを構成する成分としては、スチレンの他に、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン等のスチレン誘導体を用いることができる。
【0108】
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-α-オレフィン-非共役ジエン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、ブテン-α-オレフィン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等の非共役ジエンとα-オレフィンとの共重合体、エポキシ変性ポリブタジエン、及びカルボン酸変性ブタジエン-アクリロニトリル共重合体が挙げられる。
【0109】
エポキシ変性ポリブタジエンは、分子末端に水酸基を有することが好ましく、分子両末端に水酸基を有することがより好ましく、分子両末端にのみ水酸基を有することが更に好ましい。エポキシ変性ポリブタジエンが有する水酸基の数は、1つ以上であってよく、好ましくは1~5、より好ましくは1又は2、更に好ましくは2である。
【0110】
ウレタン系エラストマーとして、低分子(短鎖)ジオール及びジイソシアネートからなるハードセグメントと、高分子(長鎖)ジオール及びジイソシアネートからなるソフトセグメントとから構成される化合物を用いることができる。
【0111】
短鎖ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、及びビスフェノールAが挙げられる。短鎖ジオールの数平均分子量は、48~500が好ましい。
【0112】
長鎖ジオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(エチレン-1,4-ブチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,6-ヘキシレンカーボネート)、及びポリ(1,6-ヘキシレン-ネオペンチレンアジペート)が挙げられる。長鎖ジオールの数平均分子量は、500~10000が好ましい。
【0113】
ポリエステル系エラストマーとしては、ジカルボン酸又はその誘導体と、ジオール化合物又はその誘導体とを重縮合した化合物を用いることができる。
【0114】
ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸;及びシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0115】
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール等の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジオール等の脂環族ジオール;及びビスフェノールA、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、レゾルシン等の芳香族ジオールが挙げられる。
【0116】
ポリエステル系エラストマーとして、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)をハードセグメント成分に、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)をソフトセグメント成分にしたマルチブロック共重合体を用いることができる。ハードセグメント及びソフトセグメントの種類、比率、分子量の違いによりさまざまなグレードのポリエステル系エラストマーがある。
【0117】
ポリアミド系エラストマーは、ハードセグメントにポリアミドを、ソフトセグメントにポリエーテル又はポリエステルを用いた、ポリエーテルブロックアミド型とポリエーテルエステルブロックアミド型との2種類に大別される。ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド-6、ポリアミド-11、及びポリアミド-12が挙げられる。ポリエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0118】
アクリル系エラストマーは、(メタ)アクリル酸エステルに基づく構成単位を主成分として含む化合物を用いることができる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、及びエトキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。アクリル系エラストマーは、(メタ)アクリル酸エステルと、アクリロニトリルとを共重合した化合物であってもよく、架橋点となる官能基を有するモノマーを更に共重合した化合物であってもよい。官能基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート及びアリルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0119】
アクリル系エラストマーとしては、例えば、アクリロニトリル-ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル-ブチルアクリレート-エチルアクリレート共重合体、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-メタクリル酸共重合体、及びアクリロニトリル-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレート共重合体が挙げられる。アクリル系エラストマーとして、アクリロニトリル-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレート共重合体又はメチルメタクリレート-ブチルアクリレート-メタクリル酸共重合体が好ましく、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-メタクリル酸共重合体がより好ましい。
【0120】
シリコーン系エラストマーは、オルガノポリシロキサンを主成分とする化合物である。オルガノポリシロキサンとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、及びポリジフェニルシロキサンが挙げられる。シリコーン系エラストマーは、オルガノポリシロキサンの一部をビニル基、アルコキシ基等で変性した化合物であってもよい。
【0121】
(G)成分は、硬化膜の密着性を向上する観点から、カルボン酸変性ブタジエン-アクリロニトリル共重合体又は水酸基を有するポリエステル系エラストマーを含んでもよい。
【0122】
(G)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、2~40質量部、4~30質量部、6~20質量部、又は10~15質量部であってもよい。(G)成分の含有量が上記範囲内であると、硬化膜の高温領域での弾性率が低くなり、かつ未露光部が現像液でより溶出し易くなる。
【0123】
(その他の成分)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物には、必要に応じて、各種添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等の重合禁止剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系の消泡剤;シランカップリング剤;及び臭素化エポキシ化合物、酸変性臭素化エポキシ化合物、アンチモン化合物、ホスフェート化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等の難燃剤が挙げられる。
【0124】
(溶剤)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、各成分を溶解・分散させるため溶剤を含有することにより、基板上への塗布を容易にし、均一な厚さの塗膜を形成できる。
【0125】
溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;及び石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤が挙げられる。溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0126】
溶剤の配合量は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物中の溶剤の割合が10~50質量%、20~40質量%、又は25~35質量%であってもよい。
【0127】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述の各成分をロールミル、ビーズミル等で均一に混合することにより調製することができる。
【0128】
[感光性エレメント]
本実施形態に係る感光性エレメントは、支持フィルムと、上述した感光性樹脂組成物を含む感光層とを備える。図1は、本実施形態に係る感光性エレメントを模式的に示す断面図である。図1に示されるように、感光性エレメント1は、支持フィルム10と、支持フィルム10上に形成された感光層20とを備えている。
【0129】
感光性エレメント1は、本実施形態に係る感光性樹脂組成物を、リバースロールコート、グラビアロールコート、コンマコート、カーテンコート等の公知の方法で支持フィルム10上に塗布した後、塗膜を乾燥して感光層20を形成することで作製することができる。
【0130】
支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。支持フィルムの厚さは、例えば、5~100μmであってもよい。支持フィルムの表面粗さは特に限定されないが、算術平均粗さ(Ra)が1000nm以下、500nm以下、又は250nm以下であってもよい。
【0131】
感光層の厚さは、例えば、5~50μm、5~40μm、又は10~30μmであってもよい。
【0132】
塗膜の乾燥は、熱風乾燥、遠赤外線又は近赤外線を用いた乾燥を用いることができる。乾燥温度は、60~120℃、70~110℃、又は80~100℃であってもよい。乾燥時間は、1~60分、2~30分、又は5~20分であってもよい。
【0133】
感光層20上には、感光層20を被覆する保護フィルム30を更に備えていてもよい。感光性エレメント1は、感光層20の支持フィルム10と接する面とは反対側の面に保護フィルム30を積層することもできる。保護フィルム30としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムを用いてもよい。
【0134】
[プリント配線板]
本実施形態に係るプリント配線板は、本実施形態に係る感光性樹脂組成物の硬化物を含む永久レジストを具備する。
【0135】
本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、基板上に、上述の感光性樹脂組成物又は感光性エレメントを用いて感光層を形成する工程と、感光層を露光及び現像してレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンを硬化して永久レジストを形成する工程と、を備える。以下、各工程の一例について説明する。
【0136】
まず、銅張積層板等の基板を準備し、該基板上に、感光層を形成する。感光層は、基板上に感光性樹脂組成物を塗布し乾燥することで形成してもよい。感光性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、カーテンコート法、及び静電塗装法が挙げられる。乾燥温度は、60~120℃、70~110℃、又は80~100℃であってもよい。乾燥時間は、1~7分間、1~6分間、又は2~5分間であってよい。
【0137】
感光層は、基板上に、感光性エレメントから保護フィルムを剥離して感光層をラミネートすることで形成してもよい。感光層をラミネートする方法としては、例えば、ラミネータを用いて熱ラミネートする方法が挙げられる。
【0138】
次に、感光層にネガフィルムを直接接触又は支持フィルムを介して接触させて、活性光線を照射して露光する。活性光線としては,例えば、電子線、紫外線、及びX線が挙げられ、好ましくは紫外線である。光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ等を使用することができる。露光量は、10~2000mJ/cm、100~1500mJ/cm、又は300~1000mJ/cmであってもよい。
【0139】
露光後、未露光部を現像液で除去することにより、レジストパターンを形成する。現像方法としては、例えば、ディッピング法及びスプレー法が挙げられる。現像液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0140】
レジストパターンに対して、後露光及び後加熱の少なくとも一方の処理することによって、パターン硬化膜(永久レジスト)を形成することができる。後露光の露光量は、100~5000mJ/cm、500~2000mJ/cm、又は700~1500J/cmであってもよい。後加熱の加熱温度は、100~200℃、120~180℃、又は135~165℃であってもよい。後加熱の加熱時間は、5分~12時間、10分~6時間、又は30分~2時間であってもよい。
【0141】
本実施形態に係る永久レジストは、半導体素子の層間絶縁層又は表面保護層として用いることができる。上述の感光性樹脂組成物の硬化膜から形成された層間絶縁層又は表面保護層を備える半導体素子、該半導体素子を含む電子デバイスを作製することができる。半導体素子は、例えば、多層配線構造、再配線構造等を有する、メモリ、パッケージ等であってよい。電子デバイスとしては、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、パソコン、及びハードディスクサスペンションが挙げられる。本実施形態に係る感光性樹脂組成物により形成されるパターン硬化膜を備えることで、信頼性に優れた半導体素子及び電子デバイスを提供することができる。
【実施例0142】
以下、実施例により本開示をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0143】
(合成例1)
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えたフラスコに、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名「EXA-7376」、エポキシ当量:186)350質量部、アクリル酸70質量部、メチルハイドロキノン0.5質量部及びカルビトールアセテート120質量部を加え、90℃で加熱攪拌して混合物を完全に溶解した。次に、得られた溶液を60℃に冷却し、トリフェニルホスフィン2質量部を加え、100℃に加熱して、溶液の酸価が1mgKOH/g以下になるまで反応させた。反応後の溶液に、テトラヒドロ無水フタル酸(THPAC)98質量部及びカルビトールアセテート85質量部を加え、80℃で6時間反応させた。その後、室温まで冷却し、固形分が73質量%である酸変性ビニル基含有樹脂(A1-1)の溶液を得た。
【0144】
(合成例2)
撹拌機及び温度計を備えたフラスコに、酸変性ビニル基含有樹脂(A1-1)の溶液397.6gを加え、窒素雰囲気下、70℃で撹拌しながら、ジブチルラウリン酸スズの10質量%酢酸エチル溶液0.8gをフラスコ内に滴下した。次いで、(d)成分として2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(株式会社レゾナック製、商品名「カレンズMOI」)33.4gをフラスコ内に滴下し、70℃で1時間撹拌して、酸変性ビニル基含有樹脂(A2-1)の溶液を得た。
【0145】
(合成例3)
撹拌機及び温度計を備えたフラスコに、トリスフェノールメタン型酸変性エポキシアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「TCR-1348H」)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液407.4gを加え、窒素雰囲気下、70℃で撹拌した。次いで、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート20.1gをフラスコ内に滴下し、70℃で30分撹拌して、酸変性ビニル基含有樹脂(A2-2)の溶液を得た。
【0146】
(合成例4)
撹拌機及び温度計を備えたフラスコに、クレゾールノボラック型酸変性エポキシアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「CCR-1235」)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液398.3gを加え、窒素雰囲気下、70℃で撹拌した。次いで、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート19.8gをフラスコ内に滴下し、70℃で30分撹拌して、酸変性ビニル基含有樹脂(A2-3)の溶液を得た。
【0147】
(合成例5)
(d)成分としてフェニルイソシアネート(東京化成工業株式会社製)25.9gをフラスコ内に滴下し、70℃で0.5時間撹拌した以外は、合成例2と同様にして、酸変性ビニル基含有樹脂(A2-4)の溶液を得た。
【0148】
(合成例6)
(d)成分としてベンジルイソシアネート(東京化成工業株式会社製)18.3gをフラスコ内に滴下し、70℃で1時間撹拌した以外は、合成例2と同様にして、酸変性ビニル基含有樹脂(A2-5)の溶液を得た。
【0149】
(合成例7)
(d)成分としてシクロヘキシルイソシアネート(東京化成工業株式会社製)20.7gをフラスコ内に滴下し、70℃で3時間撹拌した以外は、合成例2と同様にして、酸変性ビニル基含有樹脂(A2-6)の溶液を得た。
【0150】
(合成例8)
(d)成分としてオクチルイソシアネート(東京化成工業株式会社製)17.6gをフラスコ内に滴下し、70℃で2.5時間撹拌した以外は、合成例2と同様にして、酸変性ビニル基含有樹脂(A2-7)の溶液を得た。
【0151】
(A)~(F)成分として、以下の材料を準備した。
A2-1:合成例2の酸変性ビニル基含有樹脂(A2-1)
A2-2:合成例3の酸変性ビニル基含有樹脂(A2-2)
A2-3:合成例4の酸変性ビニル基含有樹脂(A2-3)
A2-4:合成例5の酸変性ビニル基含有樹脂(A2-4)
A2-5:合成例6の酸変性ビニル基含有樹脂(A2-5)
A2-6:合成例7の酸変性ビニル基含有樹脂(A2-6)
A2-7:合成例8の酸変性ビニル基含有樹脂(A2-7)
A1-1:合成例1の酸変性ビニル基含有樹脂(A1-1)
A1-2:トリスフェノールメタン型酸変性エポキシアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「TCR-1348H」)
B-1:ノボラック型多官能エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名「RE-306」)
B-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、商品名「YD-8125」)
C-1:ジペンタエリストールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「DPHA」)
D-1:2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]モルホリノ-1-プロパノン(IGM Resins B.V.製、商品名「Omirad 907」)
D-2:2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬株式会社製、商品名「DETX-S」)
D-3:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(BASFジャパン株式会社製、商品名「Irgacure OXE02」)
E-1:シリカ(デンカ株式会社製、商品名「SFP20M」、平均粒径:0.3μm)
F-1:フタロシアニングリーン(山陽色素株式会社製)
【0152】
[感光性樹脂組成物]
表2又は表3に示す配合量(質量部、固形分換算量)で各成分を配合し、3本ロールミルで混練した。その後、固形分濃度が70質量%になるようにカルビトールアセテートを加えて、感光性樹脂組成物を調製した。
【0153】
[感光性エレメント]
支持フィルムとして、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡フィルムソリューション株式会社製、商品名「G2-25」)を準備した。支持フィルム上に、感光性樹脂組成物にメチルエチルケトンを加えて希釈した溶液を、乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、熱風対流式乾燥機を用いて75℃で30分間乾燥し、感光層を形成した。次いで、感光層の支持フィルムと接している側とは反対側の表面上に、ポリプロピレンフィルム(王子エフテックス株式会社製、商品名「アルファンMAM-430」)を保護フィルムとして貼り合わせ、感光性エレメントを得た。
【0154】
(解像性)
厚さ0.6mmの銅張積層基板(株式会社レゾナック製、商品名「MCL-E-67」)を準備した。感光性エレメントから保護フィルムを剥離除去しながら、銅張積層基板上に、プレス式真空ラミネータ(株式会社名機製作所製、商品名「MVLP-500」)を用いて、圧着圧力0.4MPa、プレス熱板温度80℃、真空引き時間25秒間、ラミネートプレス時間25秒間で、感光層をラミネートして、積層体を得た。次いで、所定サイズの開口パターン(開口径サイズ:30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、150、200μm)を有するネガマスクを上記積層体の支持フィルムに密着させ、紫外線露光装置(オーク株式会社製、商品名「EXM-1201」)を用いて、41段ステップタブレット(株式会社レゾナック製)における完全硬化段数が13段となる露光量で感光層を露光した。その後、感光層から支持フィルムを剥離し、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、60秒間、1.765×10Paの圧力でスプレー現像し、未露光部を溶解現像した。次に、紫外線露光装置を用いて、現像後の感光層を2000mJ/cmの露光量で露光した後、170℃で1時間加熱して、銅張積層基板上に、所定サイズの開口パターンが形成さられた硬化膜を有する試験片1を作製した。上記試験片1を、光学顕微鏡を用いて観察し、以下の基準で評価した。
A:最小の開口径が30μm以下であった。
B:最小の開口径が30μmを超え、50μm以下であった。
C:最小の開口径が50μmを超えた。
【0155】
(電気絶縁性)
銅張積層基板の代わりに、くし型電極(ライン/スペース=10μm/10μm)が形成されたビスマレイミドトリアジン基板を用いたこと以外は、試験片1の作製と同様にして、試験片2を作製した。次に、試験片2を135℃、85%、5Vの条件下に晒した。その後、永久レジストにおけるマイグレーションの発生の程度を、100倍の金属顕微鏡により観察し、以下の基準で電気絶縁性を評価した。
S:400時間を超えても永久レジストにマイグレーションが発生しないまま、抵抗値が10-6Ω以下に低下することがなかった。
A:200時間以上400時間未満、永久レジストにマイグレーションが発生しないまま、抵抗値が10-6Ω以下に低下することがなかった。
B:100時間以上200時間未満、永久レジストにマイグレーションが発生しないまま、抵抗値が10-6Ω以下に低下することがなかった。
C:100時間未満に、永久レジストにマイグレーションが発生し、抵抗値が10-6Ω以下に低下した。
【0156】
【表2】
【0157】
【表3】
【符号の説明】
【0158】
1…感光性エレメント、10…支持フィルム、20…感光層、30…保護フィルム。
図1