(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025139939
(43)【公開日】2025-09-29
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 7/12 20060101AFI20250919BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250919BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20250919BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20250919BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20250919BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20250919BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
B32B7/12
B32B27/00 D
B32B27/18 Z
C09J7/30
C09J11/04
C09J201/00
C09J133/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039040
(22)【出願日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100218855
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 政輝
(72)【発明者】
【氏名】彼谷 美千子
(72)【発明者】
【氏名】青柳 翔太
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA01
4F100AA01A
4F100AA01C
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4F100AB00A
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4J040KA16
4J040KA42
4J040LA08
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】反りを低減することができる積層体を提供する。
【解決手段】第一の部材と、フィルム状接着剤と、第二の部材と、をこの順に備える積層体であって、フィルム状接着剤が、第一の部材と第二の部材とを接合しており、フィルム状接着剤が、熱硬化性を有し且つフィラーを含有する樹脂組成物で構成されており、第一の表面及び第二の表面を有する単層構造であり、フィルム状接着剤の第一の表面の近傍の領域であって、第二の表面側から第一の表面側に向かうにしたがってフィラーの含有率が減少する領域を有する、積層体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の部材と、フィルム状接着剤と、第二の部材と、をこの順に備える積層体であって、
前記フィルム状接着剤が、前記第一の部材と前記第二の部材とを接合しており、
前記フィルム状接着剤が、熱硬化性を有し且つフィラーを含有する樹脂組成物で構成されており、第一の表面及び第二の表面を有する単層構造であり、
前記フィルム状接着剤の前記第一の表面の近傍の領域であって、前記第二の表面側から前記第一の表面側に向かうにしたがって前記フィラーの含有率が減少する領域を有する、積層体。
【請求項2】
第一の部材と、フィルム状接着剤と、第二の部材と、をこの順に備える積層体であって、
前記フィルム状接着剤が、前記第一の部材と前記第二の部材とを接合しており、
前記フィルム状接着剤が、熱硬化性を有し且つフィラーを含有する樹脂組成物で構成されており、第一の表面及び第二の表面を有する単層構造であり、
前記フィルム状接着剤を加熱することによって硬化させたとき、熱硬化後の前記フィルム状接着剤の前記第一の表面の近傍の領域であって、前記第二の表面側から前記第一の表面側に向かうにしたがって前記フィラーの含有率が減少する領域を有する、積層体。
【請求項3】
第一の部材と、接着剤層と、第二の部材と、をこの順に備える積層体であって、
前記接着剤層が、前記第一の部材と前記第二の部材とを接合しており、
前記接着剤層が、熱硬化性を有し且つフィラーを含有する樹脂組成物の少なくとも一部が硬化した樹脂層であり、且つ第一の表面及び第二の表面を有する単層構造であり、
前記接着剤層の前記第一の表面の近傍の領域であって、前記第二の表面側から前記第一の表面側に向かうにしたがって前記フィラーの含有率が減少する領域を有する、積層体。
【請求項4】
前記フィルム状接着剤の全体の厚さに対する前記領域の厚さの割合が25%以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項5】
前記接着剤層の全体の厚さに対する前記領域の厚さの割合が25%以下である、請求項3に記載の積層体。
【請求項6】
前記領域の厚さが2μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記領域は、前記第一の表面からの深さが2μmの位置よりも浅い位置にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
前記樹脂組成物の全質量を基準として、前記フィラーの含有率が3~55質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
前記樹脂組成物がアクリルゴムを含有し、
前記樹脂組成物の全質量を基準として、前記アクリルゴムの含有率が50~85質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
前記第一の部材が、金属、ガラス、樹脂、及びセラミックからなる群より選ばれる少なくとも一種で構成されており、
前記第二の部材が、金属、ガラス、樹脂、及びセラミックからなる群より選ばれる少なくとも一種で構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器等の部材の放熱や導電を目的として、金属シート等の部材をフィルム状接着剤を介して貼り合わせ、積層体を形成する技術が知られている。通常の接着剤では、電子部品と金属シートとを十分な接着強度で結合することが難しいため、接着強度を向上させる目的で熱硬化性接着剤組成物からなるフィルム状接着剤の使用が検討されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のフィルム状接着剤では、部材間の熱膨張率の違いや部材の発熱による温度分布の不均一性等の要因により、積層体に反りが生じることがある。そこで、本発明は、反りを低減することができる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、以下の[1]~[8]に関する。
[1] 第一の部材と、フィルム状接着剤と、第二の部材と、をこの順に備える積層体であって、
前記フィルム状接着剤が、前記第一の部材と前記第二の部材とを接合しており、
前記フィルム状接着剤が、熱硬化性を有し且つフィラーを含有する樹脂組成物で構成されており、第一の表面及び第二の表面を有する単層構造であり、
前記フィルム状接着剤の前記第一の表面の近傍の領域であって、前記第二の表面側から前記第一の表面側に向かうにしたがって前記フィラーの含有率が減少する領域を有する、積層体。
[2] 第一の部材と、フィルム状接着剤と、第二の部材と、をこの順に備える積層体であって、
前記フィルム状接着剤が、前記第一の部材と前記第二の部材とを接合しており、
前記フィルム状接着剤が、熱硬化性を有し且つフィラーを含有する樹脂組成物で構成されており、第一の表面及び第二の表面を有する単層構造であり、
前記フィルム状接着剤を加熱することによって硬化させたとき、熱硬化後の前記フィルム状接着剤の前記第一の表面の近傍の領域であって、前記第二の表面側から前記第一の表面側に向かうにしたがって前記フィラーの含有率が減少する領域を有する、積層体。
[3] 第一の部材と、接着剤層と、第二の部材と、をこの順に備える積層体であって、
前記接着剤層が、前記第一の部材と前記第二の部材とを接合しており、
前記接着剤層が、熱硬化性を有し且つフィラーを含有する樹脂組成物の少なくとも一部が硬化した樹脂層であり、且つ第一の表面及び第二の表面を有する単層構造であり、
前記接着剤層の前記第一の表面の近傍の領域であって、前記第二の表面側から前記第一の表面側に向かうにしたがって前記フィラーの含有率が減少する領域を有する、積層体。
[4] 前記フィルム状接着剤の全体の厚さに対する前記領域の厚さの割合が25%以下である、[1]又は[2]に記載の積層体。
[5] 前記接着剤層の全体の厚さに対する前記領域の厚さの割合が25%以下である、[3に記載の積層体。
[6] 前記領域の厚さが2μm以下である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の積層体。
[7] 前記領域は、前記第一の表面からの深さが2μmの位置よりも浅い位置にある、[1]~[6]のいずれか一つに記載の積層体。
[8] 前記樹脂組成物の全質量を基準として、前記フィラーの含有率が3~55質量%である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の積層体。
[9] 前記樹脂組成物がアクリルゴムを含有し、
前記樹脂組成物の全質量を基準として、前記アクリルゴムの含有率が50~85質量%である、[1]~[8]のいずれか一つに記載の積層体。
[10] 前記第一の部材が、金属、ガラス、樹脂、及びセラミックからなる群より選ばれる少なくとも一種で構成されており、
前記第二の部材が、金属、ガラス、樹脂、及びセラミックからなる群より選ばれる少なくとも一種で構成されている、[1]~[9]のいずれか一つに記載の積層体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、反りを低減することができる積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は本発明に係る積層体の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は
図1に示す積層体におけるフィルム状接着剤を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3はフィルム状接着剤の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は
図1に示すフィルム状接着剤を備える接着フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0009】
本明細書における数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリル共重合体等の他の類似表現についても同様である。
【0010】
<積層体>
図1は本実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。この図に示す積層体10は、第一の部材11と、フィルム状接着剤1と、第二の部材12と、をこの順に備える。フィルム状接着剤1は、第一の部材11と第二の部材12とを接合している。
<フィルム状接着剤>
図2は
図1に示す積層体におけるフィルム状接着剤を模式的に示す断面図である。フィルム状接着剤1は、熱硬化性を有し且つフィラーを含有する樹脂組成物で構成された単層構造を有する。フィルム状接着剤1の厚さは、50μm以下であればよく、例えば、40μm以下、30μm以下、20μm以下又は10μm以下であってもよい。フィルム状接着剤1の厚さが50μm以下であると、フィルム状接着剤の厚さに対して、フィラーの含有率が減少する領域の比率が増大する傾向にあるため、本発明の効果が得られ易い。フィルム状接着剤1の厚さの下限は、特に制限されないが、例えば、2μm以上である。フィルム状接着剤1の厚さが2μm以上であると、部材との密着力が保持されやすい傾向にある。
【0011】
フィルム状接着剤1は、第一の表面F1の近傍に、第二の表面F2側から第一の表面F1側に向かうにしたがってフィラーの含有率が減少する領域R1(
図2に示す拡大図において矢印で厚さを示した領域)を有する。このとき、フィルム状接着剤1は硬化前であってもよく、硬化後であってもよい。
【0012】
領域R1は、複数のフィラー1fと、樹脂成分とによって構成されている。領域R1において、フィラーの含有率は連続的に減少していてもよいし、段階的に減少していてもよい。第一の表面F1の近傍に位置する領域R1のフィラーの含有率が相対的に低いということは、言い換えれば、第一の表面F1の近傍において、樹脂成分の含有率が相対的に高い領域(樹脂リッチの領域)が厚さ方向に局所的に形成されており、他方、面方向には連続的な広がりを持って形成されているということができる。領域R1は他の領域と比較すると面方向に緻密で柔軟であることから、応力を緩和することができ、積層体の反りを低減することができると推察される。第一の表面F1は、第一の部材11側の表面であってもよく、第二の部材12側の表面であってもよい。
【0013】
領域R1は、フィルム状接着剤1の厚さによって変化するが、第一の表面F1からの深さが2μmの位置よりも浅い位置にある。言い換えれば、本実施形態でいう「第一の表面F1の近傍」は第一の表面F1からの深さが2μmの位置よりも浅い領域を意味する。なお、第一の表面F1の近傍に領域R1が存在していればよく、例えば、第一の表面F1にフィラーの含有率が高い領域が局所的に存在していてもよい。
【0014】
領域R1の存在及び厚さは、例えば、第一の表面F1に対して砥粒を含むスラリーを高速で衝突させて、摩耗速度を測定することによって確認することができ、あるいは、剛体振り子型物性試験器による測定によって確認してもよい。特に砥粒を含むスラリーを高速で衝突させて摩耗速度を測定する方法はフィルム状接着剤1に対する熱の影響を十分に小さくすることができる。領域R1の存在及び厚さについて、フィルム状接着剤1を加熱によって硬化させた後でも確認することができる。具体的には、熱硬化後のフィルム状接着剤と、熱硬化後のフィルム状接着剤の第一の表面F1の近傍を物理的に除去したものとを準備し、ATRのクリスタルを変更し、潜り込み深さを変えて測定することで両者の組成差を把握することができる。また、領域R1の存在及び厚さは、積層体10の断面を観察することにより確認することも可能である。
【0015】
領域R1の厚さは、積層体の反りをより軽減することができる観点から、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.8μm以上、又は1μm以上であってもよい。領域R1の厚さは、積層体の機械強度がより優れる観点から、2μm以下、1.5μm以下、又は1μm以下であってもよい。領域R1の厚さは、フィルム状接着剤1を形成する際の風の速度、乾燥温度を調整することにより、調整することができる。
【0016】
フィルム状接着剤1の全体の厚さに対する領域R1の厚さの割合は、積層体の反りをより軽減することができる観点から、3%以上、4%以上、又は5%以上であってもよい。フィルム状接着剤1の全体の厚さに対する領域R1の厚さの割合は、積層体の機械強度がより優れる観点から、25%以下、20%以下、又は15%以下であってもよい。
【0017】
フィルム状接着剤は、
図3に示すように、第二の表面F2の近傍にも領域R1と同様の領域R2が形成されていてもよい。
図3に示すフィルム状接着剤1Aは、第二の表面F2の近傍の領域であって、第一の表面F1側から第二の表面F2側に向かうにしたがってフィラーの含有率が減少する領域R2を更に有することの他は、フィルム状接着剤1と同様の構成を有する。領域R2は、第二の表面F2からの深さが2μmの位置よりも浅い位置にある。言い換えれば、「第二の表面F2の近傍」は第二の表面F2からの深さが2μmの位置よりも浅い領域を意味する。なお、第二の表面F2の近傍に領域R2が存在していればよく、例えば、第二の表面F2にフィラーの含有率が高い領域が局所的に存在していてもよい。領域R2の厚さは、フィルム状接着剤1を形成する際の風の速度、乾燥温度を調整することにより、効果的に調整することができる。また、乾燥時のフィルム状接着剤1が接触する支持フィルムを変更することでも調整することができる。領域R2の厚さ、及びフィルム状接着剤1の全体の厚さに対する領域R2の厚さの割合は、上述した領域R1と同様の範囲内であってもよい。
【0018】
領域R1及び領域R2の合計の厚さは、積層体の反りをより軽減することができる観点から、0.5μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.8μm以上、1μm以上、1.2μm以上、又は1.4μm以上であってもよい。領域R1及び領域R2の合計の厚さは、積層体の機械強度がより優れる観点から、4μm以下、3μm以下、2μm以下、又は1.5μm以下であってもよい。
【0019】
フィルム状接着剤1の全体の厚さに対する、領域R1及び領域R2の合計の厚さの割合は、積層体の反りをより軽減することができる観点から、6%以上、7%以上、又は8%以上であってもよい。フィルム状接着剤1の全体の厚さに対する、領域R1及び領域R2の合計の厚さの割合は、積層体の機械強度がより優れる観点から、45%以下、40%以下、又は35%以下であってもよい。
【0020】
フィルム状接着剤1は(A)熱硬化性樹脂成分と、(B)フィラーとを含有する接着剤組成物によって構成されている。フィルム状接着剤1は半硬化(Bステージ)状態であってもよく、硬化(Cステージ)状態であってもよい。(A)熱硬化性樹脂成分は、一実施形態において、(A1)熱硬化性樹脂と、(A2)硬化剤と、(A3)エラストマとを含むものであってよい。
【0021】
フィルム状接着剤1が硬化(Cステージ)状態である場合、フィルム状接着剤1の少なくとも一部が硬化しており、フィルム状接着剤1の全部が硬化していてもよい。フィルム状接着剤1が硬化(Cステージ)状態である場合、積層体は、第一の部材と、接着剤層と、第二の部材と、をこの順に備えるといえる。すなわち、本発明の他の実施形態は、第一の部材と、接着剤層と、第二の部材と、をこの順に備える積層体であって、接着剤層が、第一の部材と第二の部材とを接合しており、接着剤層が、熱硬化性を有し且つフィラーを含有する樹脂組成物の少なくとも一部が硬化した樹脂層であり、且つ第一の表面及び第二の表面を有する単層構造であり、接着剤層の第一の表面の近傍の領域であって、第二の表面側から第一の表面側に向かうにしたがってフィラーの含有率が減少する領域を有する、積層体である。なお、接着剤層は、フィルム状接着剤が硬化物であることから、接着剤層に関する構成は、上述したフィルム状接着剤に関する記載において、フィルム状接着剤を接着剤に置き換えて適用することができる。
【0022】
(A1)成分:熱硬化性樹脂
(A1)成分は、接着性の観点から、エポキシ樹脂であってよい。エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、多官能フェノール類、アントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(A1)成分は、フィルムのタック性、柔軟性などの観点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、又はビスフェノールA型エポキシ樹脂であってもよい。
【0023】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に制限されないが、90~300g/eq又は110~290g/eqであってよい。エポキシ樹脂のエポキシ当量がこのような範囲にあると、フィルム状接着剤のバルク強度を維持しつつ、流動性を確保することができる傾向にある。
【0024】
(A2)成分:硬化剤
(A2)成分は、エポキシ樹脂の硬化剤となり得るフェノール樹脂であってよい。フェノール樹脂は、分子内にフェノール性水酸基を有するものであれば特に制限なく用いることができる。フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化ナフタレンジオール、フェノールノボラック、フェノール等のフェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、フェノール樹脂は、フェノール樹脂は、フェノールノボラック型フェノール樹脂又はナフトールアラルキル樹脂であってもよい。
【0025】
フェノール樹脂の水酸基当量は、70g/eq以上又は70~300g/eqであってよい。フェノール樹脂の水酸基当量が70g/eq以上であると、フィルムの貯蔵弾性率がより向上する傾向にあり、300g/eq以下であると、発泡、アウトガス等の発生による不具合を防ぐことが可能となる。
【0026】
エポキシ樹脂のエポキシ当量とフェノール樹脂の水酸基当量との比(エポキシ樹脂のエポキシ当量/フェノール樹脂の水酸基当量)は、硬化性の観点から、0.30/0.70~0.70/0.30、0.35/0.65~0.65/0.35、0.40/0.60~0.60/0.40、又は0.45/0.55~0.55/0.45であってよい。当該当量比が0.30/0.70以上であると、より充分な硬化性が得られる傾向にある。当該当量比が0.70/0.30以下であると、粘度が高くなり過ぎることを防ぐことができ、より充分な流動性を得ることができる。
【0027】
(A1)成分及び(A2)成分の合計の含有量は、(A)成分の総質量100質量部に対して、5~50質量部、10~40質量部、又は15~30質量部であってよい。(A1)成分及び(A2)成分の合計の含有量が5質量部以上であると、架橋によって弾性率が向上する傾向にある。(A1)成分及び(A2)成分の合計の含有量が50質量部以下であると、フィルム取扱い性を維持できる傾向にある。
【0028】
(A3)成分:エラストマ
(A3)成分は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を主成分として有するアクリルゴムであってよい。(A3)成分における(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量は、構成単位全量を基準として、例えば、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよい。アクリルゴムは、エポキシ基、アルコール性又はフェノール性水酸基、カルボキシル基等の架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含むものであってよい。
【0029】
(A3)成分のガラス転移温度(Tg)は、-50~50℃又は-30~30℃であってよい。(A3)成分のTgが-50℃以上であると、接着剤の柔軟性が高くなり過ぎることを防ぐことができる傾向にある。これにより、ウェハダイシング時にフィルム状接着剤を切断し易くなり、バリの発生を防ぐことが可能となる。(A3)成分のTgが50℃以下であると、接着剤の柔軟性の低下を抑制できる傾向にある。これによって、フィルム状接着剤をウェハに貼り付ける際に、ボイドを充分に埋め込み易くなる傾向にある。また、ウェハの密着性の低下によるダイシング時のチッピングを防ぐことが可能となる。ここで、ガラス転移温度(Tg)は、DSC(熱示差走査熱量計)(例えば、株式会社リガク製、Thermo Plus 2)を用いて測定した値を意味する。
【0030】
(A3)成分の重量平均分子量(Mw)は、10万~300万又は20万~200万であってよい。(A3)成分のMwがこのような範囲にあると、フィルム形成性、フィルム状における強度、可撓性、タック性等を適切に制御することができるとともに、リフロー性に優れ、埋め込み性を向上することができる。ここで、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値を意味する。
【0031】
(A3)成分の市販品としては、例えば、SG-P3改良品及びSG-80H(いずれもナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる。
【0032】
(A3)成分の含有量は、(A)成分の総質量100質量部に対して、50~95質量部、60~90質量部、又は70~85質量部であってよい。(A3)成分がアクリルゴムである場合、接着剤組成物の全質量を基準として、アクリルゴムの含有率は、例えば、50~85質量%であり、55~80質量%又は60~80質量%であってもよい。この含有率が50質量%以上であることで、領域R1が形成され易いという効果が奏され、他方、85質量%以下であることで、フィルム状接着剤1の製造における作業性を維持し易いという効果が奏される。
【0033】
(A)熱硬化性樹脂成分は、他の実施形態において、エポキシ基、アルコール性又はフェノール性水酸基、カルボキシル基等の架橋性官能基を有するエラストマと、架橋性官能基と反応し得る硬化剤とを含むものであってよい。架橋性官能基を有するエラストマ及び架橋性官能基と反応し得る硬化剤の組み合わせとしては、例えば、エポキシ基を有するアクリルゴム及びフェノール樹脂の組み合わせ等が挙げられる。
【0034】
(B)成分:フィラー
(B)成分は、無機フィラー及び有機フィラーのいずれであってもよい。無機フィラーとして、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミウィスカ、窒化ホウ素、シリカ等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(B)成分は、溶融粘度の調整の観点から、シリカであってもよい。有機フィラーとして、カーボン、ゴム系フィラー、シリコーン系微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子等が挙げられる。(B)成分の形状は、特に制限されないが、球状であってよい。
【0035】
(B)成分の平均粒径は、流動性の観点から、0.01~1μm、0.01~0.8μm、又は0.03~0.5μmであってよい。ここで、平均粒径は、BET比表面積から換算することによって求められる値を意味する。
【0036】
(B)成分の含有量は、(A)成分の総質量100質量部に対して、0.1~50質量部、0.1~30質量部、又は0.1~20質量部であってよい。接着剤組成物の全質量を基準として、(B)成分の含有率は、例えば、3~55質量%であり、5~50質量%又は7~40質量%であってもよい。この含有率が3質量%以上であることで、フィルム状接着剤1の機械強度を保持できるという効果が奏され、他方、55質量%以下であることで、フィルム状接着剤1の良好な外観が保持されるという効果が奏される。
【0037】
フィルム状接着剤(接着剤組成物)は、(C)カップリング剤(D)硬化促進剤等を更に含有していてもよい。
【0038】
(C)成分:カップリング剤
(C)成分は、シランカップリング剤であってよい。シランカップリング剤としては、例えば、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(D)成分:硬化促進剤
(D)成分は、特に限定されず、一般に使用されるものを用いることができる。(D)成分としては、例えば、イミダゾール類及びその誘導体、有機リン系化合物、第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、反応性の観点から(D)成分は、イミダゾール類及びその誘導体であってよい。イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
フィルム状接着剤1は、その他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、レベリング剤、顔料、イオン補捉剤、酸化防止剤等が挙げられる。(C)成分、(D)成分、及びその他の成分の含有量は、(A)成分の総質量100質量部に対して、0~30質量部であってよい。
【0041】
フィルム状接着剤1は、接着剤組成物を支持フィルムに塗布することによって形成することができる。接着剤組成物のワニス(接着剤ワニス)を用いる場合は、(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて添加される他の成分を溶剤中で混合し、混合液を混合又は混練して接着剤ワニスを調製し、接着剤ワニスを支持フィルム5に塗布し、溶剤を乾燥によって除去する工程を経てフィルム状接着剤1を得ることができる。
図4に示す接着シート100は、支持フィルム5と、支持フィルム5の表面上に設けられたフィルム状接着剤1とによって構成されている。
【0042】
接着剤ワニスの塗膜からフィルム状接着剤1を形成する際、塗膜の表面に風を当てながら乾燥によって溶剤を除去することにより、第一の表面F1の近傍に領域R1を形成することができる。塗膜の上面と並行して流れる風の速度は、例えば、3~20m/秒である。この速度が3m/秒以上であることで、風が当たる塗膜の表面における(A)成分の乾燥が促進され、フィルム状接着剤1の第一の表面F1の近傍に十分な厚さを有する領域R1が形成され易いという効果が奏され、他方、20m/秒以下であることで、塗膜表面の外観が良好に保持され易いという効果が奏される。
【0043】
接着剤ワニスの乾燥温度は、例えば、25~150℃であり、50~145℃であってもよい。乾燥温度が50℃以上であることで、生産性を保持し易いという効果が奏され、他方、150℃以下であることで、外観不良を抑制し易いという効果が奏される。
【0044】
支持フィルム5は、上記の加熱乾燥に耐えるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム等であってよい。支持フィルム5は、2種以上を組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。支持フィルム5の厚さは、例えば、10~200μm又は20~170μmであってよい。
【0045】
混合又は混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を用い、これらを適宜組み合わせて行うことができる。接着剤ワニスの調製に用いられる溶剤は、各成分を均一に溶解、混練又は分散できるものであれば制限はなく、従来公知のものを使用することができる。このような溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、トルエン、キシレン等が挙げられる。溶剤は、乾燥速度が速く、価格が安い点でメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等であってよい。接着剤ワニスを支持フィルムに塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0046】
接着剤ワニスの表面張力は、例えば、27~44mN/mであり、28~40mN/m又は28~38mN/mであってもよい。この値が上記範囲であることで、良好な外観のフィルムを製造し易く、また、製造上の作業性が保持され易いという効果が奏される。なお、接着剤ワニスの表面張力は風のない室温22~28℃、湿度40~60%下の条件において懸滴法によって測定された値を意味する。接着剤ワニスの表面張力は、例えば、接着剤ワニスにレベリング剤を配合することによって調整することができる。
【0047】
<第一の部材、第二の部材>
第一の部材11及び第二の部材12を構成する材料としては、金属、ガラス、樹脂、セラミック等が挙げられる。すなわち。第一の部材11は、金属、ガラス、樹脂、及びセラミックからなる群より選ばれる少なくとも一種で構成されていてもよく、第二の部材12は、金属、ガラス、樹脂、及びセラミックからなる群より選ばれる少なくとも一種で構成されていてもよい。
【0048】
金属としては、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等が挙げられる。これらの金属は合金であってもよい。樹脂としては、ガラスエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シアノエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。セラミックとしては、アルミナ、ジルコニア、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド、炭化ケイ素、窒化ケイ素、フェライト、窒化ホウ素等が挙げられる。
【0049】
第一の部材11及び第二の部材12は、同じ材料で構成されていてもよく、異なる材料で構成されていてもよい。第一の部材11の硬さと第二の部材12の硬さが異なる場合、積層体10の反りを軽減する観点から、フィルム状接着剤1の第一の表面F1は、より硬い部材側の表面であってもよい。なお、本明細書において「硬さ」とはモース硬度を意味する。
【0050】
第一の部材11及び第二の部材12の形状は、特に限定されず、例えばフィルム状であってもよい。第一の部材11及び第二の部材12がフィルム状である場合、第一の部材11及び第二の部材12の厚さはそれぞれ独立に、20~2500μmであってもよい。
【実施例0051】
以下に、本発明について実施例及び比較例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1~3)
[フィルム状接着剤の作製]
<接着剤ワニスの準備>
表1に示すアクリルゴム溶液を、接着剤ワニスとして用いた。なお、表1に示す組成に関する数値はアクリルゴム溶液の固形分の質量部を意味する。
【0053】
(A1)エポキシ樹脂
・N-500P-10(商品名、DIC株式会社製、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:203g/eq)
(A2)硬化剤(フェノール樹脂)
・MEH-7800M(商品名、明和化学株式会社製、フェノールノボラック型フェノール樹脂、水酸基当量:175g/eq、軟化点:61~90℃)
・SG-P3改良品1(商品名、ナガセケムテックス株式会社製)
(B)無機フィラー
・R972(商品名、日本アエロジル株式会社製、シリカ粒子、平均粒径:0.016μm)
(C)カップリング剤
・Z-6119(商品名、ダウ・東レ株式会社製、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン)
・A-189(商品名、日本ユニカー株式会社製、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)
(D)硬化促進剤
・2PZ-CN(商品名、四国化成工業株式会社製、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール)
【0054】
<フィルム状接着剤の作製>
表1に示す組成の接着剤ワニスを100メッシュのフィルターでろ過し、真空脱泡した。得られた接着剤ワニスの表面張力(懸滴法)は36mN/mであった。基材フィルムとして、厚み38μmの離型処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、真空脱泡後の接着剤ワニスをPETフィルム上に塗布した。乾燥後の厚さ10μmになるように接着剤ワニスの塗布量を調整した。塗布した接着剤ワニスの上面と並行となるように速度が3m/秒以上の風を流しながら、表1の温度で乾燥させることによってBステージ状態にあるフィルム状接着剤を得た。
【0055】
[領域の厚さ]
フィルム状接着剤を170℃で3時間加熱し、硬化させた。次いで、硬化後のフィルム状接着剤を原子間力顕微鏡(SPM400、株式会社日立ハイテク製)の試料台に固定し、カンチレバー(株式会社日立ハイテク製、商品名SI-DF-40、材質Si、バネ定数40N/m、先端曲率半径8nm)をカンチレバーホルダーに設置し、フィルム状接着剤の膜厚方向に設置しているスキャナの稼働可能な範囲内でフィルム状接着剤の表面F1(又はF2)から押し込み、フォースカーブを得た。押し込み量は領域R1(又はR2)の厚さ以上、スキャナの稼働範囲以下で設定した。試料にカンチレバーを押し込んでいる領域のフォースカーブからHertz接触理論を用いて弾性率と表面F1(又はF2)からの距離(カンチレバーの押し込み深さ)との関係を示す曲線に変換した。このとき、カンチレバーバネ定数は補正したものを用い、カンチレバーの状態をモニターし、明らかな摩耗及び劣化が見られないことを確認しながら行った。得られた曲線の飽和に到達したときの表面F1(又はF2)からの距離を領域R1(又はR2)の厚さとして読み取った。上記の測定を20回行い、明らかに異常な点を排除した上で、領域R1及びR2の厚さの合計の平均値を算出した。領域R1及びR2の厚さの合計の平均値を領域の厚さとして表1に示す。
【0056】
[反り量の変化]
ガラスエポキシ樹脂の基材(74mm×80mm×105μm)に、40個の半導体チップ(4mm×12mm×30μm)を各実施例で作製したフィルム状接着剤を介して、120℃、0.1MPa、1秒の条件で貼り付け、積層体を得た。次いで、積層体を加熱炉内で加熱した。積層体の加熱は、25℃から90℃まで5分かけて昇温した後、90℃で5分保持し、90℃から140℃まで2分かけて昇温した後、140℃で35分保持し、140℃から80℃まで10分かけて降温した。加熱炉で加熱する前後の積層体の反り量はシャドーモアレ法を用いて測定し、反り量の変化を測定した。測定結果を表1に示す。
【0057】