(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014046
(43)【公開日】2025-01-28
(54)【発明の名称】異方性磁性粉末の製造方法および異方性磁性粉末
(51)【国際特許分類】
B22F 9/20 20060101AFI20250121BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20250121BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20250121BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20250121BHJP
H01F 1/059 20060101ALI20250121BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20250121BHJP
【FI】
B22F9/20 D
B22F1/00 Y
B22F1/14 200
B22F1/14 100
H01F41/02 G
H01F1/059 160
C22C38/00 303D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024191379
(22)【出願日】2024-10-31
(62)【分割の表示】P 2020163867の分割
【原出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前原 永
(57)【要約】
【課題】粒度分布が狭く、高残留磁化の磁性粉末とその製造方法を提供する。
【解決手段】SmとFeを含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、部分酸化物を得る前処理工程、前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程、および、前記合金粒子を窒素またはアンモニア含有雰囲気下、400℃以上470℃以下の第一温度で熱処理した後、480℃以上610℃以下の第二温度で熱処理して窒化物を得る工程を含む、異方性磁性粉末の製造方法に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SmとFeを含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、部分酸化物を得る前処理工程、
前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程、および、
前記合金粒子を窒素またはアンモニア含有雰囲気下、400℃以上470℃以下の第一温度で熱処理した後、480℃以上610℃以下の第二温度で熱処理して窒化物を得る工程
を含む、異方性磁性粉末の製造方法。
【請求項2】
SmとFeを含む酸化物が、さらにLaを含む請求項1に記載の異方性磁性粉末の製造方法。
【請求項3】
SmとFeを含む酸化物が、さらにCo、W、およびTiからなる群から選択される少なくとも一つを含む請求項1又は2に記載の異方性磁性粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性磁性粉末の製造方法および異方性磁性粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、SmFeN系焼結磁石が開示されており、焼結に使用する磁性粉末として平均粒径が小さく、酸素含有量が少ない磁性粉末が開示されている。しかしながら、平均粒径が20μm以上である磁性粉末をジェットミルで粉砕して磁性粉末を作製しており、粒度分布の幅が広い粉末しか作製することができない。
【0003】
特許文献2には、SmFeN系異方性磁性粉末、SmFeLaN系異方性磁性粉末、SmFeLaCoN系異方性磁性粉末の製造方法が開示され、特許文献3には、SmFeN系異方性磁性粉末、SmFeLaN系異方性磁性粉末、SmFeWN系異方性磁性粉末の製造方法が開示されている。これらの特許文献で得られる磁性粉末は、磁気特性に優れているものの、さらなる高残留磁化の磁性粉末が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017- 55072号公報
【特許文献2】特開2019-112716号公報
【特許文献3】特開2020-102606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、粒度分布が狭く、高残留磁化の磁性粉末とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる異方性磁性粉末の製造方法は、
SmとFeを含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、部分酸化物を得る前処理工程、
前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程、および、
前記合金粒子を窒素またはアンモニア含有雰囲気下、400℃以上470℃以下の第一温度で熱処理した後、480℃以上610℃以下の第二温度で熱処理して窒化物を得る工程
を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の異方性磁性粉末の製造方法では、窒化を2つの温度で行うため、粒度分布が狭く、高残留磁化の異方性磁性粉末を製造することができる。特に、Laを含み、平均粒子径の大きな磁性粉末の場合に、大きな効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳述する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための一例であり、本発明を以下のものに限定するものではない。なお、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0009】
本実施形態の異方性磁性粉末の製造方法は、
SmとFeを含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、部分酸化物を得る前処理工程、
前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程、および、
前記合金粒子を窒素またはアンモニア含有雰囲気下、400℃以上470℃以下の第一温度で熱処理した後、480℃以上610℃以下の第二温度で熱処理して窒化物を得る工程
を含むことを特徴とする。特に酸化物として粒子径の大きな酸化物、たとえばLaを含む酸化物では、窒化が酸化物粒子の内部にまで充分に進行しないことがあるが、2段階の温度で窒化すると、酸化物粒子の内部も充分に窒化され、粒度分布が狭く、高残留磁化の磁性粉末を得ることができる。
【0010】
[前処理工程]
前処理工程で使用するSmとFeを含む酸化物は、例えば、Sm酸化物とFe酸化物を混合することにより作製してもよいが、SmとFeを含む溶液と沈殿剤を混合し、SmとFeとを含む沈殿物を得る工程(沈殿工程)、および、前記沈殿物を焼成することにより、SmとFeを含む酸化物を得る工程(酸化工程)によって、製造することが好ましい。
【0011】
[沈殿工程]
沈殿工程では、強酸性の溶液にSm原料、Fe原料を溶解して、SmとFeを含む溶液を調製する。Sm2Fe17N3を主相として得る場合、SmおよびFeのモル比(Sm:Fe)は1.5:17~3.0:17が好ましく、2.0:17~2.5:17がより好ましい。La、W、Co、Ti、Sc、Y、Pr、Nd、Pm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Luなどの原料を上述した溶液に加えても良い。残留磁束密度の点で、Laを含むことが好ましい。保持力と角型比の点で、Wを含むことが好ましい。温度特性の点で、Co、Tiを含むことが好ましい。
【0012】
Sm原料、Fe原料としては、強酸性の溶液に溶解できるものであれば限定されない。例えば、入手のしやすさの点で、Sm原料としては酸化サマリウムが、Fe原料としてはFeSO4が挙げられる。SmとFeを含む溶液の濃度は、Sm原料とFe原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整することができる。酸性溶液としては溶解性の点で硫酸などが挙げられる。
【0013】
SmとFeを含む溶液と沈殿剤を反応させることにより、SmとFeを含む不溶性の沈殿物を得る。ここで、SmとFeを含む溶液は、沈殿剤との反応時にSmとFeを含む溶液となっていればよく、たとえばSmとFeを含む原料を別々の溶液として調製し、各々の溶液を滴下して沈殿剤と反応させても良い。別々の溶液として調製する場合においても各原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整する。沈殿剤としては、アルカリ性の溶液でSmとFeを含む溶液と反応して沈殿物が得られるものであれば限定されず、アンモニア水、苛性ソーダなどが挙げられ、苛性ソーダが好ましい。
【0014】
沈殿反応は、沈殿物の粒子の性状を容易に調整できる点から、SmとFeを含む溶液と、沈殿剤とを、それぞれ水などの溶媒に滴下する方法が好ましい。SmとFeを含む溶液と沈殿剤との供給速度、反応温度、反応液濃度、反応時のpH等を適宜制御することにより、構成元素の分布が均質で、粒度分布が狭く、粉末形状の整った沈殿物が得られる。このような沈殿物を使用することによって、最終製品である磁性粉末の磁気特性が向上する。反応温度は、0℃以上50℃以下とすることができ、35℃以上45℃以下が好ましい。反応液濃度は、金属イオンの総濃度として0.65mol/L以上0.85mol/L以下が好ましく、0.7mol/L以上0.85mol/L以下がより好ましい。反応pHは、5以上9以下が好ましく、6.5以上8以下がより好ましい。
【0015】
SmとFeを含む溶液は、磁気特性の点で、さらにLa、W、CoおよびTiからなる群から選ばれる1種以上の金属を含むことが好ましい。例えば、残留磁束密度の点で、Laを含むことが好ましく、保持力の点で、Wを含むことが好ましく、温度特性の点で、Co、Tiを含むことが好ましい。La原料としては、強酸性の溶液に溶解できるものであれば限定されず、例えば、入手のしやすさの点で、La2O3、LaCl3などが挙げられる。Sm原料とFe原料とともに、La原料、W原料、Co原料、Ti原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整し、酸性溶液としては溶解性の点で硫酸が挙げられる。W原料としては、タングステン酸アンモニウムが挙げられ、Co原料としては、硫酸コバルトが挙げられ、チタン原料としては硫酸チタニアが挙げられる。
【0016】
SmとFeを含む溶液が、さらにLa、W、CoおよびTiからなる群から選ばれる1種以上の金属を含む場合、Sm、Feと、La、W、CoおよびTiからなる群から選ばれる1種以上を含む不溶性の沈殿物を得る。ここで、該溶液は、沈殿剤との反応時にLa、W、CoおよびTiからなる群から選ばれる1種以上を含んでいればよく、例えば各原料を別々の溶液として調製し、各々の溶液を滴下して沈殿剤と反応させても良いし、SmとFeを含む溶液と一緒に調整しても良い。
【0017】
沈殿工程で得られた粉末により、最終的に得られる磁性粉末の粉末粒子径、粉末形状、粒度分布がおよそ決定される。得られた粉末の粒子径をレーザー回折式湿式粒度分布計により測定した場合、全粉末が0.05μm以上20μm以下、好ましくは0.1μm以上10μm以下の範囲にほぼ入るような大きさと分布であることが好ましい。
【0018】
沈殿物を分離した後は、続く酸化工程の熱処理において残存する溶媒に沈殿物が再溶解して、溶媒が蒸発する際に沈殿物が凝集したり、粒度分布、粉末粒子径等が変化したりすることを抑制するために、分離物を脱溶媒しておくことが好ましい。脱溶媒する方法として具体的には、例えば溶媒として水を使用する場合、70℃以上200℃以下のオーブン中で5時間以上12時間以下の時間、乾燥する方法が挙げられる。
【0019】
沈殿工程の後に、得られる沈殿物を分離洗浄する工程を含んでもよい。洗浄する工程は上澄み溶液の導電率が5mS/m2以下となるまで適宜行う。沈殿物を分離する工程としては、例えば、得られた沈殿物に溶媒(好ましくは水)を加えて混合した後、濾過法、デカンテーション法等を用いることができる。
【0020】
[酸化工程]
酸化工程とは、沈殿工程で形成された沈殿物を焼成することにより、SmとFeとを含む酸化物を得る工程である。例えば、熱処理により沈殿物を酸化物に変換することができる。沈殿物を熱処理する場合、酸素の存在下で行われる必要があり、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。また、酸素存在下で行われる必要があるため、沈殿物中の非金属部分に酸素原子を含むことが好ましい。
【0021】
酸化工程における熱処理温度(以下、酸化温度)は特に限定されないが、700℃以上1300℃以下が好ましく、900℃以上1200℃以下がより好ましい。700℃未満では酸化が不十分となり、1300℃を超えると、目的とする磁性粉末の形状、平均粒子径および粒度分布が得られない傾向にある。熱処理時間も特に限定されないが、1時間以上3時間以下が好ましい。
【0022】
得られる酸化物は、酸化物粒子内においてSm、鉄の微視的な混合が充分になされ、沈殿物の形状、粒度分布等が反映された酸化物粒子である。
【0023】
[前処理工程]
前処理工程とは、上述のSmとFeを含む酸化物を、還元性ガス含有雰囲気下で熱処理することにより、酸化物の一部が還元された部分酸化物を得る工程である。
【0024】
ここで、部分酸化物とは、酸化物の一部が還元された酸化物をいう。部分酸化物の酸素濃度は特に限定されないが、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。10質量%を超えると、還元工程においてCaとの還元発熱が大きくなり、焼成温度が高くなることで異常な粒子成長をした粒子ができてしまう傾向がある。ここで、部分酸化物の酸素濃度は、非分散赤外吸収法(ND-IR)により測定することができる。
【0025】
還元性ガスは、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)等の炭化水素ガスなどから適宜選択されるが、コストの点で水素ガスが好ましく、ガスの流量は、酸化物が飛散しない範囲で適宜調整される。前処理工程における熱処理温度(以下、前処理温度)は、300℃以上950℃以下が好ましく、下限は400℃以上がより好ましく、750℃以上がさらに好ましい。上限は900℃未満がより好ましい。前処理温度が300℃以上であるとSmとFeを含む酸化物の還元が効率的に進行する。また950℃以下であると酸化物粒子が粒子成長、偏析することが抑制され、所望の粒子径を維持することができる。熱処理時間は、特に限定されないが、1時間以上50時間以下とすることができる。
また、還元性ガスとして水素を用いる場合、使用する酸化物層の厚みを20mm以下に調整し、更に反応炉内の露点を-10℃以下に調整することが好ましい。
【0026】
[還元工程]
還元工程とは、前記部分酸化物を、還元剤の存在下で熱処理することにより、合金粒子を得る工程であり、例えば部分酸化物をカルシウム融体またはカルシウムの蒸気と接触することで還元が行われる。熱処理温度は、磁気特性の点より、920℃以上1200℃以下が好ましく、950℃以上1150℃以下がより好ましく、980℃以上1100℃以下がさらに好ましい。
【0027】
還元工程における上述の熱処理とは別の熱処理として、1000℃以上1090℃以下の第一温度で熱処理した後、第一温度よりも低い980℃以上1070℃以下の第二温度で熱処理してもよい。第一温度は、1010℃以上1080℃以下が好ましく、第二温度は、990℃以上1060℃以下が好ましい。第一温度と第二温度の温度差は、第二温度が第一温度よりも15℃以上60℃以下の範囲で低いことが好ましく、15℃以上30℃以下の範囲で低いことがより好ましい。第一温度による熱処理と第二温度による熱処理は連続で行っても良く、これらの熱処理間において、第二温度より低い温度での熱処理を含むこともできるが、生産性の点で、連続で行うことが好ましい。各熱処理時間は、還元反応をより均一に行う観点から、120分未満が好ましく、90分未満がより好ましく、熱処理時間の下限は10分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。
【0028】
還元剤である金属カルシウムは、粒状又は粉末状の形で使用されるが、その粒子径は10mm以下が好ましい。これにより還元反応時における凝集をより効果的に抑制することができる。また、金属カルシウムは、反応当量(希土類酸化物を還元するのに必要な化学量論量であり、Fe成分が酸化物の形である場合には、これを還元するために必要な分を含む)の1.1~3.0倍量の割合で添加することが好ましく、1.5~2.5倍量がより好ましい。
【0029】
還元工程では、還元剤である金属カルシウムとともに、必要に応じて崩壊促進剤を使用することができる。この崩壊促進剤は、後述する水洗工程に際して、生成物の崩壊、粒状化を促進させるために適宜使用されるものであり、例えば、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩、酸化カルシウム等のアルカリ土類酸化物などが挙げられる。これらの崩壊促進剤は、サマリウム酸化物当り1質量%以上30質量%以下、好ましくは5質量%以上30質量%以下の割合で使用される。
【0030】
[窒化工程]
窒化工程とは、還元工程で得られた合金粒子を、窒素またはアンモニア含有雰囲気下、400℃以上470℃以下の第一温度で熱処理した後、480℃以上610℃以下の第二温度で熱処理して窒化処理することにより、異方性の磁性粒子を得る工程である。上述の沈殿工程で得られる粒子状の沈殿物を用いていることから、還元工程にて多孔質塊状の合金粒子が得られる。これにより、粉砕処理を行うことなく直ちに窒素雰囲気中で熱処理して窒化することができるため、窒化を均一に行うことができる。第一温度で窒化することなく、第二温度の高温で熱処理すると、窒化が急激に進行することにより異常発熱が生じ、SmFeNが分解し、磁気特性が大きく低下することがある。また、窒化工程における雰囲気は窒化の進行をより遅くできることから、実質的に窒素含有雰囲気下であることが好ましい。ここでいう実質的にとは、不純物の混入等に起因して不可避的に窒素以外の元素が含まれることを考慮して使用しており、例えば、雰囲気における窒素の割合が95%以上であり、97%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。
【0031】
窒化工程における第一温度は、400℃以上470℃以下であるが、410℃以上450℃以下が好ましい。400℃未満では、窒化の進行が非常に遅く、470℃を超えると、発熱により過窒化または分解が起こりやすくなる。第一温度での熱処理時間は、特に限定されないが、1時間以上40時間以下が好ましく、20時間以下がより好ましい。1時間未満では、窒化が十分に進行しない場合があり、40時間を超えると、生産性が悪くなる。
【0032】
第二温度は、480℃以上610℃以下であるが、500℃以上550℃以下が好ましい。480℃未満では、粒子が大きいと窒化が十分に進行しない場合があり、610℃を超えると、過窒化または分解が起こりやすい。第二温度での熱処理時間は、15分以上5時間以下が好ましく、30分以上2時間以下がより好ましい。15分未満では、窒化が十分に進行しない場合があり、5時間を超えると、生産性が悪くなる。
【0033】
第一温度による熱処理と第二温度による熱処理は連続で行っても良く、これらの熱処理間において、第二温度より低い温度での熱処理を含むこともできるが、生産性の点で、連続で行うことが好ましい。
【0034】
[後処理工程]
窒化工程後に得られる生成物には、磁性粒子に加えて、副生するCaO、未反応の金属カルシウム等が含まれ、これらが複合した焼結塊状態となっている場合がある。窒化工程後に得られる生成物を冷却水中に投入して、CaO及び金属カルシウムを水酸化カルシウム(Ca(OH)2)懸濁物として磁性粉末から分離することができる。さらに残留する水酸化カルシウムは、磁性粉末を酢酸等で洗浄して充分に除去してもよい。生成物を水中に投入した際には、金属カルシウムの水による酸化及び副生CaOの水和反応によって、複合した焼結塊状の反応生成物の崩壊、すなわち微粉化が進行する。
【0035】
[アルカリ処理工程]
窒化工程後に得られる生成物をアルカリ溶液中に投入してもよい。アルカリ処理工程に用いるアルカリ溶液としては、たとえば水酸化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などが挙げられる。なかでも、排水処理、高pHの点で、水酸化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。生成物のアルカリ処理により、酸素をある程度含有するSmリッチ層が残存して保護層として機能するため、アルカリ処理による酸素濃度が増大することを抑制している。
【0036】
アルカリ処理工程に用いるアルカリ溶液のpHは特に限定されないが、9以上が好ましく、10以上がより好ましい。pHが9未満では、水酸化カルシウムになる際の反応速度が速く、発熱が大きくなるため、最終的に得られる異方性磁性粉末の酸素濃度が高くなる傾向がある。
【0037】
アルカリ処理工程において、アルカリ溶液で処理した後に得られた磁性粉末は、必要によりデカンテーションなどの方法で水分を低減することもできる。
【0038】
[酸処理工程]
アルカリ処理工程の後に、さらに酸で処理する酸処理工程を含んでもよい。酸処理工程では、前述のSmリッチ層の少なくとも一部を除去して、磁性粉末全体中の酸素濃度を低減する。また、本発明の実施形態にある製造方法では、粉砕等を行わないため、異方性磁性粉末の平均粒子径が小さく、粒度分布が狭く、また粉砕等で生じる微粉を含まないため、酸素濃度の増加を抑制することが可能となる。
【0039】
酸処理工程に用いる酸としては、特に限定されず、たとえば塩化水素、硝酸、硫酸、酢酸などが挙げられる。なかでも、不純物が残留しない点で、塩化水素、硝酸が好ましい。
【0040】
酸処理工程に用いる酸の使用量は、磁性粉末100質量部に対して3.5質量部以上13.5質量部以下が好ましく、4質量部以上10質量部以下がより好ましい。3.5質量部未満では、磁性粉末表面の酸化物が残り、酸素濃度が高くなり、13.5質量部を超えると、大気に暴露した際に再酸化が起こりやすく、また、磁性粉末を溶解するため、コストも高くなる傾向がある。酸の量を磁性粉末100質量部に対して3.5質量部以上13.5質量部以下とすることにより、酸処理後に大気に暴露した際に再酸化が起こりにくい程度に酸化されたSmリッチ層が磁性粉末表面を覆うようにすることができるので、酸素濃度が低く、平均粒子径が小さく、粒度分布の狭い異方性磁性粉末が得られる。
【0041】
酸処理工程において、酸で処理した後に得られた磁性粉末は、必要によりデカンテーションなどの方法で水分を低減することもできる。
【0042】
[脱水工程]
酸処理工程の後に、脱水処理する工程を含むことが好ましい。脱水処理によって、真空乾燥前の固形分中の水分を低減させ、真空乾燥前の固形分が水分をより多く含むことにより生じる乾燥時の酸化の進行を抑制することができる。ここで、脱水処理は、圧力や遠心力を加えることで、処理前の固形分に対して処理後の固形分に含まれる水分値を低減する処理のことを意味し、単なるデカンテーションや濾過や乾燥は含まない。脱水処理方法は特に限定されないが、圧搾、遠心分離などが挙げられる。
【0043】
脱水処理後の磁性粉末に含まれる水分量は特に限定されないが、酸化の進行を抑制する点から13質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0044】
酸処理して得られた磁性粉末、または、酸処理後、脱水処理して得られた磁性粉末は、真空乾燥することが好ましい。乾燥温度は特に限定されないが、70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。乾燥時間も特に限定されないが、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましい。
【0045】
[表面処理工程]
後処理工程で得られた磁性粉末に対して表面処理を行っても良い。たとえば、表面処理剤としてリン酸溶液を窒化工程で得られた磁性粒子固形分に対してPO4として0.10~10wt%の範囲で投入する。適宜溶液から分離し乾燥することで表面処理された磁性粉末が得られる。
【0046】
本発明の一態様にかかる異方性磁性粉末は、
レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて乾式条件で測定した平均粒子径が2μm以上6μm以下であり、下記式
スパン=(D90-D10)/D50
(ここで、D10、D50、D90は、体積基準による粒度分布の積算値がそれぞれ10%、50%、90%に相当する粒子径である。)
で定義されるスパンが1.6以下であり、
Sm、Fe、La、Nを含み、
Nの含有量が3.3質量%以上3.5質量%以下であり、
残留磁化σrが145emu/g以上である。
【0047】
本実施形態における異方性磁性粉末は、例えば前述の製造方法により作製することができるが、磁性粉末を粉砕等による機械的な破砕を行っていないために酸素濃度が低く、平均粒子径が小さく、粒度分布が狭く(スパンが小さく)、残留磁束密度が高い異方性磁性粉末となる。
【0048】
本実施形態における異方性磁性粉末は、典型的には下記一般式
SmvFe(100-v―w-x-y-z-u)NwLaxWyCozTiu
(式中、3≦v≦30、5≦w≦15、0.1≦x≦0.3、0≦y≦2.5、0≦z≦2.5、0≦u≦2.5である。)
で表される。
【0049】
一般式において、vを3以上30以下と規定するのは、3未満では鉄成分の未反応部分(α-Fe相)が分離して磁性粉末の保磁力が低下し、実用的な磁石ではなくなり、30を超えると、Smの元素が析出し、磁性粉末が大気中で不安定になり、残留磁束密度が低下するからである。また、wを5以上15以下と規定するのは、5未満では、ほとんど保磁力が発現できず、15を越えるとSmや、鉄自体の窒化物が生成するからである。
【0050】
Laを含む場合、Laの含有量は、残留磁束密度の点から、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.15質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0051】
Wを含む場合、Wの含有量は、保磁力の点から、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.15質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0052】
Coを含む場合、温度特性の点から、Coの含有量は、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.15質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0053】
Tiを含む場合、Tiの含有量は、温度特性の点から、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.15質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0054】
Nの含有量は、3.3質量%以上3.5質量%以下が好ましい。3.5質量%を超えると、過窒化となり、3.3質量%未満では、窒化不十分となりともに磁気特性が低下する傾向がある。
【0055】
異方性磁性粉末の平均粒子径は2μm以上6μm以下であるが、3μm以上6μm以下が好ましく、4μm以上6μm以下がより好ましい。2μm未満では、表面積が多いので酸化が起こりやすく、6μmを超えると、磁性粉末が多磁区構造になることで、磁気特性が低下する傾向がある。ここで、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて乾式条件で測定した粒子径を意味する。
【0056】
異方性磁性粉末の下記式
スパン=(D90-D10)/D50
(ここで、D10、D50、D90は、体積基準による粒度分布の積算値がそれぞれ10%、50%、90%に相当する粒子径である。)
で定義されるスパンは1.6以下であるが、1.3以下が好ましい。1.6を超えると、大きな粒子が存在しており、磁気特性が低下する傾向がある。
【0057】
磁性粉末の円形度の平均値が、0.50以上が好ましく、0.70以上がより好ましく、0.75以上が特に好ましい。円形度が0.50を下回った場合、流動性が悪くなることで、磁場成形時に粒子間で応力がかかるため磁気特性が低下する。円形度の測定には、走査電子顕微鏡(SEM)を用い、住友金属テクノロジーの粒子解析Ver.3を画像解析ソフトとして用いる。3000倍で撮影したSEM画像を画像処理で二値化し、粒子1個に対して、円形度を求める。本発明で規定する円形度とは、1000個~10000個程度の粒子を計測して求めた円形度の平均値を意味する。一般的に粒子径が小さい粒子が多くなるほど円形度は高くなるため、1μm以上の粒子について円形度の測定を行った。円形度の測定においては定義式:円形度=(4πS/L2)を用いる。但し、Sは、粒子の二次元投影面積、Lは二次元投影周囲長である。
【0058】
磁性粉末の残留磁化σrは、145emu/g以上が好ましく、147emu/g以上がより好ましい。また、飽和磁化σmは、148emu/g以上が好ましく150emu/g以上がより好ましい。さらに、σr/σmは、0.96以上が好ましく、0.98以上がより好ましい。
【0059】
本実施形態の異方性磁性粉末は、高い残留磁化を有するため、例えば、焼結磁石やボンド磁石として使用することができる。
【0060】
ボンド磁石は、本実施形態の異方性磁性粉末と、樹脂より作製される。この異方性磁性粉末を含むことで、高い磁気特性を有する複合材料を構成することができる。
【0061】
複合材料に含まれる樹脂は、熱硬化性樹脂であっても、熱可塑性樹脂であってもよいが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等を挙げることができる。
【0062】
複合材料を得る際の異方性磁性粉末と樹脂の重量比(樹脂/磁性粉末)は、0.10~0.15であることが好ましく、0.11~0.14であることがより好ましい。
【0063】
複合材料は、例えば、混練機を用いて、280~330℃で異方性磁性粉末と樹脂とを混合することにより得ることができる。
【0064】
複合材料を用いることにより、ボンド磁石を製造することができる。具体的には例えば、複合材料を熱処理しながら配向磁場で磁化容易磁区を揃える工程(配向工程)、次いで着磁磁場でパルス着磁する工程(着磁工程)により、ボンド磁石を得ることができる。
【0065】
配向工程における熱処理温度は、例えば90~200℃であることが好ましく、100~150℃であることがより好ましい。配向工程における配向磁場の大きさは、例えば720kA/mとすることができる。また、着磁工程における着磁磁場の大きさは、例えば1500~2500kA/mとすることができる。
【0066】
焼結磁石は、本実施形態の異方性磁性粉末を成形し焼結することにより作製される。本実施形態の異方性磁性粉末は、酸素濃度が低く、平均粒子径が小さく、粒度分布が狭く、残留磁束密度が高いことから焼結磁石に適している。
【0067】
焼結磁石は、例えば特開2017-055072号公報に示されるように、磁性粉末を酸素濃度が0.5体積ppm以下の雰囲気中、300℃より高く600℃未満の温度、および1000MPa以上1500MPa以下の圧力下で焼結することにより作製される。
【0068】
焼結磁石は、例えば国際公開2015/199096号に示されるように、磁性粉末を6kOe以上の磁場中で予備圧縮した後、600℃以下の温度、1~5GPaの成形面圧で温間圧密成形することにより作製される。
【0069】
焼結磁石は、例えば特開2016-082175号公報に示されるように、磁性粉末と金属バインダを含む混合物を、1~5GPaの成形面圧で冷間圧密成形した後、350~600℃の温度で、1~120分加熱することにより作製される。
【実施例0070】
以下、実施例について説明する。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0071】
[評価]
各金属の含有量、窒素濃度、平均粒子径、粒度分布、残留磁化σr、飽和磁化σmは、以下の方法で評価した。
【0072】
<各金属の含有量>
各金属(Sm、Fe、La、Co等)の含有量は、塩酸溶解してICP-AES法(装置名:Optima8300)により測定した。
<窒素濃度>
窒素濃度は、熱伝導度法(株式会社堀場製作所製のEMGA-820)により測定した。
【0073】
<平均粒子径および粒度分布>
平均粒子径および粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日本レーザー株式会社のHELOS&RODOS)により測定した。
【0074】
<残留磁化σr、飽和磁化σm>
得られた磁性粉末を、パラフィンワックスと共に試料容器に詰め、ドライヤーにてパラフィンワックスを溶融させた後、16kA/mの配向磁場にてその磁化容易磁区を揃えた。この磁場配向した試料を32kA/mの着磁磁場でパルス着磁し、最大磁場16kA/mのVSM(振動試料型磁力計)を用いて、残留磁化σr、飽和磁化σmを測定した。
【0075】
製造例1
純水2.0kgにFeSO4・7H2O 5.0kgを混合溶解した。さらにSm2O3 0.49kg、70%硫酸0.74kgを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFe濃度が0.726mol/L、Sm濃度が0.112mol/Lとなるように調整し、SmFe硫酸溶液とした。
【0076】
[沈殿工程]
温度が40℃に保たれた純水20kg中に、調製したSmFe硫酸溶液全量を反応開始から70分間で攪拌しながら滴下し、同時に15%アンモニア液を滴下させ、pHを7~8に調整した。これにより、SmFe水酸化物を含むスラリーを得た。得られたスラリーをデカンテーションにより純水で洗浄した後、水酸化物を固液分離した。分離した水酸化物を100℃のオーブン中で10時間乾燥した。
【0077】
[酸化工程]
沈殿工程で得られた水酸化物を大気中1000℃で1時間、焼成処理した。冷却後、原料粉末として赤色のSmFe酸化物を得た。
【0078】
製造例2
La2O30.035kgを加えたこと以外は製造例1と同様に行い、赤色のSmFeLa酸化物を得た。
【0079】
製造例3
31.8%のLaCl30.071kgと、20.8%の硫酸コバルト0.015kgを加えたこと以外は、製造例1と同様に行い、赤色のSmFeLaCo酸化物を得た。
【0080】
実施例1
[前処理工程]
製造例1で得られたSmFe酸化物100gを、嵩厚10mmとなるように鋼製容器に入れた。容器を炉内に入れ、100Paまで減圧した後、水素ガスを導入しながら、前処理温度の850℃まで昇温し、そのまま15時間保持した。非分散赤外吸収法(ND-IR)(株式会社堀場製作所製のEMGA-820)により酸素濃度を測定したところ、5質量%であった。これにより、Smと結合している酸素は還元されず、Feと結合している酸素のうち、95%が還元される黒色の部分酸化物を得たことがわかった。
【0081】
[還元工程]
前処理工程で得られた部分酸化物60gと平均粒子径約6mmの金属カルシウム19.2gとを混合して炉内に入れた。炉内を真空排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入した。1045℃の第一温度まで上昇させて、45分間保持し、その後、1000℃の第二温度に冷却して30分間保持することにより、SmFe合金粒子を得た。
【0082】
[窒化工程]
引き続き、炉内温度を100℃まで冷却した後、真空排気を行い、窒素ガスを導入しながら、第一温度の430℃まで上昇させて、3時間保持した。続いて第二温度の500℃まで上昇させて1時間保持した後、冷却して磁性粒子を含む塊状生成物を得た。
【0083】
[後処理工程]
窒化工程で得られた塊状の生成物を純水3kgに投入し、30分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを10回繰り返した。次いで99.9%酢酸2.5gを投入して15分間攪拌する。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを2回繰り返した。
【0084】
[表面処理工程]
得られたスラリーに対して、リン酸溶液を加えた。リン酸溶液を、磁性粒子固形分に対してPO4として1wt%分投入した。5分攪拌後、固液分離した後80℃で真空乾燥を3時間行い、磁性粉末を得た。得られた磁性粉末の含有量および組成式を表1に示す。なお組成式については、各金属の含有量および窒素分析より計算を行った。
【0085】
実施例2
実施例1の窒化工程における第二温度を520℃に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0086】
比較例1
実施例1の窒化工程において第一温度の430℃まで上昇させて、3時間保持した後、冷却して磁性粒子を含む塊状生成物を得たこと以外は実施例1と同様に行った。
【0087】
実施例1、2および比較例1で得られた磁性粉末を用いて、上述した方法により残留磁化σr、窒素濃度および粒度分布を測定した。評価結果を表2に示す。
【0088】
【0089】
【0090】
表2の結果から、実施例1および実施例2において、430℃で窒化した後に500℃または520℃で窒化すると、比較例1と比べて窒素濃度が上昇し、残留磁化σrが高くなった。
【0091】
実施例3
製造例2で得られたSmFeLa酸化物を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。得られた磁性粉末の含有量および組成式を表3に示す。
【0092】
実施例4
実施例3の窒化工程における第二温度を520℃に変更したこと以外は実施例3と同様に行った。
【0093】
実施例5
実施例3の窒化工程における第二温度を550℃に変更したこと以外は実施例3と同様に行った。
【0094】
実施例6
実施例3の窒化工程における第二温度を600℃に変更したこと以外は実施例3と同様に行った。
【0095】
比較例2
実施例3の窒化工程において第一温度の430℃まで上昇させて、3時間保持した後、冷却して磁性粒子を含む塊状生成物を得たこと以外は実施例3と同様に行った。
【0096】
実施例3~6および比較例2で得られた磁性粉末を用いて、上述した方法により残留磁化σr、窒素濃度および粒度分布を測定した。評価結果を表4に示す。
【0097】
【0098】
【0099】
表4の結果から、実施例3~6において、実施例1や2より平均粒子径が大きい磁性粉末でも、430℃で窒化した後に500~600℃で窒化すると、比較例2と比べて窒素濃度が上昇した。残留磁化σrは、実施例1や2よりもさらに高くなった。
【0100】
実施例7
製造例3で得られたSmFeLaCo酸化物を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。得られた磁性粉末の含有量および組成式を表5に示す。
【0101】
実施例8
実施例7の窒化工程における第二温度を520℃に変更したこと以外は実施例7と同様に行った。
【0102】
実施例9
実施例7の窒化工程における第二温度を550℃に変更したこと以外は実施例7と同様に行った。
【0103】
実施例10
実施例7の窒化工程における第二温度を600℃に変更したこと以外は実施例7と同様に行った。
【0104】
比較例3
実施例7の窒化工程において第一温度の430℃まで上昇させて、3時間保持した後、冷却して磁性粒子を含む塊状生成物を得たこと以外は実施例7と同様に行った。
【0105】
実施例7~10および比較例3で得られた磁性粉末を用いて、上述した方法により残留磁化σr、窒素濃度および粒度分布を測定した。評価結果を表6に示す。
【0106】
【0107】
【0108】
表6の結果から、実施例7~9において、実施例1や2より平均粒子径が大きい磁性粉末でも、430℃で窒化した後に500~600℃で窒化すると、比較例3と比べて、窒素濃度が上昇した。残留磁化σrは、実施例1や2よりもさらに高くなった。
本発明の製造方法によって得られた異方性磁性粉末は、平均粒子径が小さく、粒度分布が狭く、残留磁化σrが高い異方性磁性粉末であるので、特にボンド磁石に好適に適用することができる。