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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014127
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】ガス拡散電極
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/032 20210101AFI20250123BHJP
   C25B 1/27 20210101ALI20250123BHJP
   C25B 11/054 20210101ALI20250123BHJP
   C25B 11/065 20210101ALI20250123BHJP
   C25B 11/075 20210101ALI20250123BHJP
【FI】
C25B11/032
C25B1/27
C25B11/054
C25B11/065
C25B11/075
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204664
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 章一
(72)【発明者】
【氏名】前田 真一
(72)【発明者】
【氏名】志賀 紀仁
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA23
4K011AA29
4K011AA31
4K011BA06
4K011BA07
4K011DA11
4K021AB25
4K021BA02
4K021DB16
4K021DB31
4K021DB36
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC15
(57)【要約】
【課題】
アンモニア電解合成における目的物のアンモニアとカソードに供給されるプロトンにより生成するアンモニウムイオンを、カソード及びカソード触媒層にて制御して、反応速度を向上させることを課題とする。
【解決手段】
カソード触媒層用材料の群から選択した材料を使用した、触媒層との一体型のガス拡散電極であり、カソード触媒層用材料の例としては、焼成体が挙げられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード触媒層用材料を含む触媒層及びカソード電極触媒から構成されるガス拡散電極。
【請求項2】
カソード触媒層用材料が、高分子電解質、及び、含窒素化合物成分と導電性を有する炭素材料とを含む混合物の焼成体からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のガス拡散電極。
【請求項3】
カソード触媒層用材料及びカソード電極触媒を含んだ触媒層向けインクを用いたカソード触媒層用材料を含む触媒層を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス拡散電極。
【請求項4】
カソード触媒層用材料及びカソード電極触媒を含んだ触媒層向けインクへの添加成分が、結着剤、導電性カーボン材料、及びイオン液体からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~3のいずれか1項に記載のガス拡散電極。
【請求項5】
カソード触媒層用材料を含んだ触媒層向けインクを用いたカソード触媒層用材料を含む触媒層を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス拡散電極。
【請求項6】
カソード触媒層用材料を含んだ触媒層向けインクへの添加成分が、結着剤、導電性カーボン材料、及びイオン液体からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1、2又は5のいずれか1項に記載のガス拡散電極。
【請求項7】
ガス拡散電極の製造工程において、カソード触媒層用材料を含む触媒層の作製を行う工程を持つことを特徴とする請求項1~6に記載のガス拡散電極の製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載のガス拡散電極を備えることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項9】
請求項8に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とするアンモニアを電気化学的に合成するアンモニア製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解合成向けのガス拡散層と触媒層の一体型のガス拡散電極、並びに該ガス拡散電極を含む膜電極接合体及びアンモニアを電気化学的に合成する製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今後、再生可能エネルギーの供給が世界的に拡大することが見込まれており、再生可能エネルギー由来のグリーンアンモニアが主流となるため、再生可能エネルギーの供給価格や製造方法の効率化により、グリーンアンモニアの供給価格が低減すると期待されている。これまでは、水電解技術により水を電気分解して水素を製造した後、ハーバー・ボッシュ法(=HB法と略す)でアンモニア製造を実施していたが、将来的には、水から直接アンモニアを製造する電解合成技術が従来の製造方法を簡略化する非連続な技術として求められている。
【0003】
窒素ガスと水を原料から、アンモニアを電気化学的に合成するアンモニア製造方法及びアンモニア製造装置が報告されており、製造装置の隔膜に陽イオン交換膜としてナフィオン(登録商標)が用いられている(特許文献1)。
【0004】
燃料電池の研究にて、アンモニアは水素中に低濃度で含まれると発電性能の低下に与える影響があることが報告されており、例えば、アンモニウムイオンが、アノード触媒層のナフィオン(登録商標)のスルホン酸基において、プロトンと置換され、プロトン伝導性が低下したことが、発電性能の低下の主な要因でことが、Uribeらにより報告されている(非特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5966762号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Electrochemical Soc., 2002年、149巻3号、A293~A296
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アンモニアを電気化学的に合成するアンモニア製造方法において、窒素ガスと水を原料にする際、還元剤となる電子はアンモニア製造装置の電源より、プロトンは水より供給して反応を進行させる事が理想である。以下に、アンモニア電解合成反応を示す。アノードでは水の電気分解が進行し、Oと共にプロトン(H)と電子(e)が生成する(反応式1)。その際、プロトンは隔膜である電解質膜を通じてカソード側に伝導し、電子は外部回路へ伝導する。一方、カソードでは窒素、プロトン、及び電子による窒素還元反応が進行しアンモニアが生成する(反応式2)。
アノード: HO → 1/2O+2H+2e (反応式1)
カソード: N+6H+6e → 2NH (反応式2)
【0008】
アンモニア電解合成を製造装置にて定電位電解を行う場合、アンモニアの反応速度の低下する事が多い。
【0009】
本発明は、アンモニア電解合成を製造装置にて定電位電解を行う場合に目的物のアンモ
ニアとカソードに供給されるプロトンにより生成するアンモニウムイオンを、カソード及びカソード触媒層にて制御して、反応速度を向上させ反応が停止しないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが検討を重ねた結果、アンモニアが生成するカソードやカソード触媒層にて、カソード触媒層用材料の群から選択した材料を使用して、新規の電解合成向けである、触媒層との一体型のガス拡散電極を用いることで、アンモニア生成の反応速度を向上できる事を見出した。
【0011】
これらの知見に基づく本発明は、例えば以下の[1]~[9]である。
[1]
カソード触媒層用材料を含む触媒層及びカソード電極触媒から構成されるガス拡散電極。
[2]
カソード触媒層用材料が、高分子電解質、及び、含窒素化合物成分と導電性を有する炭素材料とを含む混合物の焼成体からなる群から選択される少なくとも1種である[1]に記載のガス拡散電極。
[3]
カソード触媒層用材料及びカソード電極触媒を含んだ触媒層向けインクを用いたカソード触媒層用材料を含む触媒層を備えることを特徴とする[1]又は[2]に記載のガス拡散電極。
[4]
カソード触媒層用材料及びカソード電極触媒を含んだ触媒層向けインクへの添加成分が、結着剤、導電性カーボン材料、及びイオン液体からなる群から選択される少なくとも1種である[1]~[3]のいずれか1項に記載のガス拡散電極。
[5]
カソード触媒層用材料を含んだ触媒層向けインクを用いたカソード触媒層用材料を含む触媒層を備えることを特徴とする[1]又は[2]に記載のガス拡散電極。
[6]
カソード触媒層用材料を含んだ触媒層向けインクへの添加成分が、結着剤、導電性カーボン材料、及びイオン液体からなる群から選択される少なくとも1種である[1]、[2]又は[5]のいずれか1項に記載のガス拡散電極。
[7]
ガス拡散電極の製造工程において、カソード触媒層用材料を含む触媒層の作製を行う工程を持つことを特徴とする[1]~[6]に記載のガス拡散電極の製造方法。
[8]
[1]~[6]のいずれかに記載のガス拡散電極を備えることを特徴とする膜電極接合体。
[9]
[8]に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とするアンモニアを電気化学的に合成するアンモニア製造装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガス拡散電極は、カソード及びカソード触媒層に用いる、カソード触媒層用材料の群から選択した材料を活用して、触媒層におけるイオン伝導、電子伝導及び電解反応に関わる物質輸送等を調整できるため、アンモニア電解合成にて、生成した目的物のアンモニアとカソードに供給されるプロトンから生成するアンモニウムイオンが、電解質膜、カソード及びカソード触媒層に存在する電解質由来のスルホン酸基とのアンモニウム塩を形成することによるプロトン伝導性の低下、反応速度低下を抑制でき、アンモニア生成量
を向上できる。また、触媒層とガス拡散層が一体であるため、集電性に優れており、装置全体の電子伝導性に優れるという利点を持ち、当該ガス拡散電極を用いた膜電極接合体を備えたアンモニア製造装置は、アンモニア生成量を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】窒素ガスと水を原料にして、アンモニアを電気化学的に合成するアンモニア製造装置100の構成を模式的に示す断面図
図2】窒素ガスと水を原料にして、アンモニアを電気化学的に合成するアンモニア製造装置200の構成を模式的に示す断面図
図3】ガス拡散電極及び膜電極接合体の構成を記載した模式図1
図4】熱圧着後のガス拡散電極及び膜電極接合体の構成を記載した模式図2
図5】ガス拡散電極及び膜電極接合体の構成を記載した模式図3
図6】ガス拡散電極及び膜電極接合体の構成を記載した模式図4
図7】ガス拡散電極及び膜電極接合体の構成を記載した模式図5
図8】窒素ガスと水を原料にして、アンモニアを電気化学的に合成するアンモニア製造装置300
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書における「n-」はノルマル、「s-」はセカンダリー、「t-」はターシャリーを意味し、「o-」はオルト、「m-」はメタ、「p-」はパラを意味する。本明細書において「重合体」とは、単独重合体及び共重合体のいずれも意味する。
【0015】
アンモニアを電気化学的に合成するアンモニア製造装置について説明する。
<<アンモニアを電気化学的に合成するアンモニア製造装置>>
図1は、窒素ガスと水を原料にして、アンモニアを電気化学的に合成するアンモニア製造装置の構成を模式的に示す断面図である。電解質膜102がカチオン交換膜(後述する)の場合の構成を記載したアンモニア製造装置100は、電源装置101、カソード触媒層103、アノード触媒層203及び両触媒層に挟持された電解質膜102を有し、各触媒層は外側にガス拡散層(Gas Diffusion Layer、以下「GDL」と略称する事がある)であるカソードガス拡散層104、アノードガス拡散層204を有しており、この構成を膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly、以下「MEA」と略称する事がある)という。アンモニア製造装置は、このMEAがセパレータであるカソードセパレータ105、アノードセパレータ205に挟持されている。電解質膜102中を、アノード触媒層203からカソード触媒層103の方向で、プロトンが伝導していることを記載した。
カソード側流路106とカソード側流路107にて、原料になる窒素ガス、電解液及び反応混合物を流すことができ、カソード側流路107の先に回収槽を設定することで、アンモニアやアンモニウムイオンの形で生成したアンモニアを回収できる。前記回収槽には、水や硫酸水溶液が溜めてあり、ここでアンモニアやアンモニウムイオンを補足できる。アノード側流路206とアノード側流路207にて、電解液、反応混合物及び生成した酸素ガスを流すことができ、アノード側流路207の先に回収槽を設定することで、電解液、反応混合物及び生成した酸素を回収できる。供給する窒素ガスは、加湿した窒素ガスも使用できる。
【0016】
カソード側における電解液は、水、水蒸気、希硫酸水溶液、イオン液体等が挙げられ、カソード側における反応混合物は、具体的には水、硫酸、アンモニア、アンモニウムイオン、窒素ガス、水蒸気、副生した水素ガス等が挙げられる。アノード側における電解液は、水、希硫酸水溶液、イオン液体等が挙げられ、アノード側における反応混合物は、具体的には水、硫酸、水蒸気、生成した酸素ガス等が挙げられる。
【0017】
図2は、窒素ガスと水を原料にして、アンモニアを電気化学的に合成するアンモニア製
造装置の構成を模式的に示す断面図である。電解質膜302がアニオン交換膜(後述する)の場合の構成を記載したアンモニア製造装置200は、前記製造装置100と同じ構成であるが、電解質膜302中を、カソード触媒層103からアノード触媒層203の方向で、水酸化物イオンが伝導している事と、カソードにて、窒素と水の供給が必要である事を記載した。
【0018】
カソード側流路106とカソード側流路107にて、原料になる窒素ガス、水、電解液及び反応混合物を流すことができ、カソード側流路107の先に回収槽を設定することで、アンモニアやアンモニウムイオンの形で生成したアンモニアを回収できる。前記回収槽には、水や硫酸水溶液が溜めてあり、ここでアンモニアやアンモニウムイオンを補足できる。アノード側流路206とアノード側流路207にて、電解液、反応混合物及び生成した酸素ガスを流すことができ、アノード側流路207の先に回収槽を設定することで、電解液、反応混合物及び生成した酸素を回収できる。供給する窒素ガスは、加湿した窒素ガスも使用できる。
【0019】
カソード側における電解液は、水、水蒸気、希水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、イオン液体等が挙げられ、カソード側における反応混合物は、具体的には水、アンモニア、アンモニア水、窒素ガス、水蒸気、副生した水素ガス等が挙げられる。アノード側における電解液は、水、希水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、イオン液体等が挙げられ、アノード側における反応混合物は、具体的には水、希水酸化ナトリウム水溶液、水蒸気、生成した酸素ガス等が挙げられる。
【0020】
イオン液体としては、例えば、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ピロリジニウム塩、ピペリジニウム塩、又はスルホニウム塩等、前記の触媒担体に記載したイオン液体が挙げられる。イオン液体に、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸を添加して用いる事も可能であり、酸を添加するイオン液体として好ましいものは、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロトリフルオロホスファートである。
【0021】
電解液中に含まれる電解質であるカチオンは、プロトン、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオンが好ましく、前記電解質であるアニオンは過塩素酸イオン、硫酸イオンが好ましい。
【0022】
アンモニアを電気化学的に合成する触媒層での電解反応について説明する。電源装置101から供給される電子と、窒素ガスを供給できる装置と接続されたカソード側流路106より供給される窒素ガスと、電解質膜102を通じてカソード触媒層103に供給されるプロトンとの3つより、アンモニアが生成する反応がカソード触媒層の触媒にて起こる。反応式は、カソード触媒層の触媒が置かれている環境が酸性の場合は、「N+6e+6H→2NH」又は、「N+6e+6H→2NH+6HO」であり、カソード触媒層の触媒の置かれている環境がアルカリ性の場合は、「N+6e+6HO→2NH+6OH」にて、形式的に記載できる。カソード触媒層の触媒が置かれている環境は、電解質膜の選択により設定できる。カソード触媒層中では、「2e+2H→H」による副生水素の発生もあり、前記水素を介した反応式「N+3H→2NH」も想定される。
【0023】
次にアノード触媒層203における電解反応について説明する。アノード側流路206から供給される水又は希水酸化ナトリウム水溶液等からの水酸化物イオンより反応が起こり、反応式は、アノード触媒層の触媒が置かれている環境が酸性の場合は、「2HO→
+4e+4H」であり、アノード触媒層の触媒の置かれている環境がアルカリ性の場合は、「4OH→O+4e+2HO」にて、形式的に記載できる。アノード触媒層の触媒が置かれている環境は、電解質膜の選択により設定できる。
【0024】
<<ガス拡散電極>>
本発明はガス拡散電極であり、炭素材料からなるシート状のガス拡散層を有するガス拡散層と触媒層の一体型のガス拡散電極に関する。
【0025】
本発明のガス拡散電極は、窒素ガスと水を原料にして、アンモニアを電気化学的に合成するアンモニア製造装置の電極部材として好適であり、電解質膜の種類と触媒層で生成する目的物の特性に応じて、後述するカソード触媒層用材料の群から選択した材料を使用して、ガス拡散電極を作製する事で、アンモニア電解合成の電気化学反応にも使用でき、更には、それ以外の反応にも使用することができる。
【0026】
次に、本発明のガス拡散電極の構成について、図面を参照しながら説明する。図3に本発明のガス拡散電極及び膜電極接合体の構成を記載した模式図を示す。本発明のガス拡散電極は、炭素材料からなるシート状のガス拡散層104(前記カソードガス拡散層104と同じ)、カソード触媒層用材料を含む触媒層11及びカソード電極触媒12から構成される。本明細書では、カソード電極触媒12として、触媒担体に担持された触媒を表す場合と、ガス拡散電極の構成を示すため、触媒担体に担持されていない触媒を表す場合がある。触媒担体に担持されていない触媒を表す場合は「カソード触媒12」で記載する。カソードガス拡散層104は、マイクロポーラス層(Micro Porous Layer、以下「MPL」と略称する事がある)を持つものも使用でき、マイクロポーラス層側と電解質膜102の間に、カソード触媒層用材料を含む触媒層11及びカソード電極触媒12を挟み込む配置で用いることもできる。
【0027】
マイクロポーラス層は、前記ガス拡散層の片面に設けられ、平均粒径10~100nm程度の炭素微粒子の集合体及び撥水剤からなる層である。炭素微粒子は撥水処理されていてもよい。マイクロポーラス層は、上記ガス拡散層(炭素系シート状部材)よりも平均細孔径が小さく、高密度で表面平坦性に優れる。マイクロポーラス層は、好適には1nm~900nmの細孔径分布を有する。
【0028】
<<ガス拡散層及びMPL層付きガス拡散層>>
ガス拡散層及びMPL層付きガス拡散層には、原料である窒素ガスを触媒に供給するためのガス拡散性やガス透過性、電解反応により生成するアンモニア、アンモニウムイオン、電解液及び反応混合物を輸送しつつ、電源装置及びセパレータから来る電子をカソード触媒層と導電する役割を有している。
【0029】
ガス拡散層及びMPL層付きガス拡散層は、100nm~90μm程度の細孔径分布を有する導電性の炭素系シート状部材であり、例えば、燃料電池分野の固体高分子形燃料電池のガス拡散層として使用されている公知の炭素系シート状部材を使用できる。炭素系シート状部材としては、例えば、東レ社のTGP-H-060、TGP-H-090、TGP-H-120、TGP-H-060H、TGP-H-090H、TGP-H-120H、エレクトロケム社のEC-TP1-030T、EC-TP1-060T、EC-TP1-090T、EC-TP1-120T、SIGRACET社の22BB、28BC、36BB、39BB等が挙げられる。これらの中でも、TGP-H-060、TGP-H-090、TGP-H-060H、TGP-H-090H、EC-TP1-060T、SIGRACET社の22BB、28BC、36BB、39BBが好ましい。
【0030】
<<カソード電極触媒>>
本発明のガス拡散電極の構成であるカソード電極触媒12は、触媒担体に担持された触媒を表し、前記触媒としては、例えば、金属触媒、酸化物触媒、金属錯体等が挙げられ、これらの触媒を複数、組み合わせて利用することも可能である。電解反応及び電解質膜等の条件に応じて、後述する触媒担体及び触媒をそれぞれ設定して、カソード電極触媒として使用できる。
【0031】
<触媒担体>
触媒担体は、アンモニアを電気化学的に合成する触媒層での電解反応を担う触媒を担持できるものであればよく、担体の種類に応じて、イオン伝導を担ってもよく、電子伝導を担ってもよく、本実施形態の触媒を担持するものであれば特に限定されない。触媒担体としては、カーボンブラック、炭素材料、金属メッシュ、金属発泡体、金属酸化物、複合酸化物、高分子電解質、イオン液体等が挙げられる。また、前記の触媒担体を電極で用いた場合、触媒を担持する役目を担うのみならず、電極で起こる反応に触媒又は助触媒として関与することも可能である。イオンとしては、プロトン、ヒドロキソニウムイオン、アンモニウムイオン、水酸化物イオン等が挙げられ、触媒層の置かれている環境が酸性の場合は、プロトン及びヒドロキソニウムイオンの少なくとも1種であるイオンを供給できるものが好ましく、触媒層の置かれている環境がアルカリ性の場合は、水酸化物イオンを供給できるものが好ましい。
【0032】
カーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ケッチェンブラックEC等が挙げられる。
【0033】
炭素材料としては、例えば、種々の炭素原子を含む材料を炭化し賦活処理した活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛、グラファイト化カーボン等が挙げられる。
金属メッシュとしては、ニッケル、タングステン、チタン、ジルコニウム又はハフニウム等の金属メッシュが挙げられる。
金属発泡体としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛、鉄、錫、鉛又はこれらを含む合金等の金属発泡体が挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、五酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、酸化銀、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化オスミウム、酸化イリジウム、酸化インジウム、酸化白金、酸化金、酸化マグネシウム又はシリカ等が挙げられる。
複合酸化物としては、例えば、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア等が挙げられる。
【0034】
高分子電解質としては、フッ素系高分子電解質、炭化水素系高分子電解質、カルボキシル基含有アクリル系共重合体、カルボキシル基含有メタアクリル系共重合体又はアニオン伝導電解質等が挙げられる。
【0035】
フッ素系高分子電解質としては、例えば、デュポン社のナフィオン(登録商標)、ソルヴェイ社のアクイヴィオン(登録商標)、AGC社のフレミオン(登録商標)、旭化成社のアシプレックス(登録商標)等のフッ素系スルホン酸ポリマー、炭化水素系スルホン酸ポリマー、部分フッ素系導入型炭化水素系スルホン酸ポリマー、アニオン伝導電解質等が挙げられる。フッ素系高分子電解質の種類としては、パーフルオロスルホン酸タイプとパーフルオロカルボン酸タイプが挙げられ、選択して使うことができ、好ましくは、アンモニウムイオンとの酸塩基の親和性の観点より、弱酸であるフッ素系高分子電解質が挙げられ、具体的には、デュポン社のナフィオン(登録商標)、AGC社のフレミオン(登録商
標)のラインナップにパーフルオロカルボン酸を持つフッ素系高分子電解質が挙げられる。
【0036】
炭化水素系高分子電解質としては、例えば、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等が挙げられる。
カルボキシル基含有アクリル系共重合体としては、具体的に、カルボキシル基及び共重合可能な二重結合を有する、アクリル酸、プロピオル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸ダイマー、2-アクリロイオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイオキシエチルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、アトロパ酸、けい皮酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-Y-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸、2,2,2-トリスアクリロイロキシメチルコハク酸、2-トリスアクリロイロキシメチルエチルフタル酸等の単独重合、又は共重合物、また、さらに、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル等のアクリル酸アルキルエステル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-フェニルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリロイルモルホリン、アクリロイルピペリジン等のアクリルアミド類、[3-(アクリロイルオキシ)プロピル]ホスホン酸、[3-(メタクリロイルオキシ)プロピル]ホスホン酸等のホスホン酸類、アクリロニトリル及びビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルアクリレート、スチレン、ビニルトルエン等の共重合可能な二重結合を有する化合物を加えた共重合物が挙げられる。上記、単独重合、又は共重合は、例えば、ラジカル重合開始剤によりラジカルを発生させることにより進行させることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジンメチル]テトラヒドラート等のアゾ系化合物、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
カルボキシル基含有メタクリル系共重合体としては、具体的に、カルボキシル基及び共重合可能な二重結合を有する、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノメタクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸ダイマー、2-メタクリロイオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイオキシエチルコハク酸等の単独重合、又は共重合物、また、さらに、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターシャリー
ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル等のメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等のメタアクリルアミド類、α-ホスホノ-ω-(メタクリロイルオキシ)ポリ(n=1~15)(オキシプロピレン)等のホスホン酸類、メタクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン等共重合可能な二重結合を有する化合物を加えた共重合物が挙げられる。上記、単独重合、又は共重合は、例えば、ラジカル重合開始剤によりラジカルを発生させることにより進行させることができる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジンメチル]テトラヒドラート等のアゾ系化合物、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0037】
アニオン伝導電解質としては、FUMATECH BWT GmbH社製のFumion(登録商標)FAA-3-SOLUT-10、トクヤマ社製のA3ver.2、AS-4(A3ver.2及びAS-4は、例えば雑誌「水素エネルギーシステム」、Vo1.35、No.2、2010年、9ページに記載がある。)、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体等のオレフィン系高分子に4級アンモニウム基を導入したアニオン伝導電解質、ポリスルホン系高分子に4級アルキルアンモニウム基を導入したアニオン伝導電解質(非特許文献:Angew.Chem.Int.Ed. 2007年、46巻,8024-8027ページ、非特許文献:Fuel Cell 2005年、5巻(2号)、187-200ページ)が挙げられ、後述する電解質膜として、陽イオン交換膜(以下、カチオン交換膜ともいう)を用いる場合は、ナフィオン(登録商標)及びアクイヴィオン(登録商標)が好ましく、陰イオン交換膜(以下、アニオン交換膜ともいう)を用いる場合は、FAA-3-SOLUT-10及びAS-4が好ましい。
【0038】
高分子電解質としては、これらの前記の高分子電解質を複数、組み合わせて利用することも可能であり、2種以上の高分子が混じりあったものポリマーアロイとしては、例えば、2種以上の高分子が物理的に混合したポリマーブレンド、網目構造が絡み合ったInterpenetrated Polymer Network(IPN)を包含していてもよい。
【0039】
好ましい高分子電解質としては、アンモニウムイオンとの酸塩基の親和性の観点より、弱酸の官能基を持つ高分子電解質が好ましく、具体的には、パーフルオロカルボン酸を持つフッ素系高分子電解質、パーフルオロカルボン酸を持つフッ素系高分子電解質、カルボキシル基含有メタクリル系共重合体が挙げられる。弱酸の官能基としては、カルボキシル基、水酸基及びフェノール性水酸基が挙げられる。デュポン社のナフィオン(登録商標)パーフルオロスルホン酸基を持つフッ素系高分子電解質のpKa値は-6であり(非特許文献:膜 2002年、27巻、3号、131-138ページ)、カルボキシル基のpKa値は4~5、水酸基のpKa値は16~17、フェノール性水酸基のpKa値は8~11(非特許文献:マーチ有機化学(上) 2003年、234-235ページ)に記載がり、pKaとは、酸解離定数であり、酸の強さや、水素イオンの解離しやすさを定量的に表した指標である。
【0040】
イオン液体について以下に説明する。イオン液体としては、例えば、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ピロリジニウム塩、ピペリジニウム塩、又はスルホニウム塩等が挙げられる。
【0041】
イミダゾリウム塩の具体例としては、式(1):
【化1】
で表されるものが挙げられる。
【0042】
式(1)中、R1a~R5aは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、C~C10アルキル基、アリル基、又はビニル基等が挙げられる。また、式(1)中のXとしては、例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、テトラフルオロボレート、トリフルオロ(トリフルオロメチル)ボレート、ジメチルホスファートイオン、ジエチルホスファートイオン、ヘキサフルオロホスファート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスファート、トリフルオロアセテート、メチルスルファート、トリフルオロメタンスルホナート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0043】
式(1)の具体例としては、例えば、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムイオン、3-エチル-1-ビニルイミダゾリウムイオン、1-メチルイミダゾリウムイオン、1-エチルイミダゾリウムイオン、1-n-プロピルイミダゾリウムイオン、1,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2,3-トリメチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリウムイオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-n-プロピルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、2-エチル-1,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1,3-ジメチル-n-プロピルイミダゾリウムイオン、1,3,4-トリメチルイミダゾリウムイオン、2-エチル-1,3,4-トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウムイオン等のイミダゾリウムイオンと前記式(1)におけるXとの塩が挙げられる。
【0044】
ピリジニウム塩の具体例としては、式(2):
【化2】
で表されるものが挙げられる。
【0045】
式(2)中、R1b~R6bは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、ヒドロキシメチル基、又はC~Cアルキル基が挙げられる。また、式(2)中のXとしては、前記式(1)と同じものが挙げられる。
【0046】
式(2)の具体例としては、例えば、1-ブチル-3-メチルピリジニウムイオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムイオン、1-ブチル-ピリジニウムイオン、1-エチル-3-メチルピリジニウムイオン、1-エチルピリジニウムイオン、1-エチル-3-(ヒドロキシメチル)ピリジニウムイオン等のピリジニウムイオンと前記式(1)におけるXとの塩が挙げられる。
【0047】
アンモニウム塩の具体例としては、式(3):
【化3】
で表されるものが挙げられる。
【0048】
式(3)中、R1c~R4cは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、メトキシエチル基、フェニルエチル基、メトキシプロピル基、シクロヘキシル基、又はC~Cアルキル基が挙げられる。また、式(3)中のXとしては、前記式(1)と同じものが挙げられる。
【0049】
式(3)の具体的としては、例えば、トリエチルペンチルアンモニウムイオン、ジエチル(メチル)プロピルアンモニウムイオン、メチルトリ-n-オクチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムイオン、ジエチル(2-メトキシエチル)-メチルアンモニウムイオン、エチル(2-メトキシエチル)-ジメチルアンモニウムイオン、エチル(3-メトキシプロピル)ジメチル-アンモニウムイオン、エチル(ジメチル)(2-フェニルエチル)-アンモニウムイオン等のアンモニウムイオンと前記式(1)におけるXとの塩が挙げられる。
【0050】
ホスホニウム塩の具体例としては、式(4):
【化4】
で表されるものが挙げられる。
【0051】
式(4)中、R1d~R4dは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、メトキシエチル基、又はC~C10アルキル基が挙げられる。また、式(3)中のXとしては、前記式(1)と同じものが挙げられる。
【0052】
式(4)の具体的としては、例えば、トリブチルメチルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムイオン、トリヘキシル(エチル)ホスホニウムイオン、トリブチル(2-メトキシエチル)-ホスホニウムイオン等のホスホニウムイオンと前記式(1)におけるXとの塩が挙げられる。
【0053】
ピロリジニウム塩の具体例としては、式(5):
【化5】
で表されるものが挙げられる。
【0054】
式(5)中、R1e~R2eは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アリル基、メトキシエチル基、又はC~Cアルキル基が挙げられる。また、式(5)中のXとしては、前記式(1)と同じものが挙げられる。
【0055】
式(5)の具体的としては、例えば、1-アリル-1-メチルピロリジニウムイオン、1-(2-メトキシエチル)-1-メチルピロリジニウムイオン、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムイオン、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムイオン、1-オクチル-1-メチルピロリジニウムイオン、1-ヘキシル-1-メチルピロリジニウムイオン等のピロリジニウムイオンと前記式(1)におけるXとの塩が挙げられる。
【0056】
ピペリジニウム塩の具体例としては、式(6):
【化6】
で表されるものが挙げられる。
【0057】
式(6)中、R1f~R2fは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、又はC~Cアルキル基が挙げられる。また、式(6)中のXとしては、前記式(1)と同じものが挙げられる。
【0058】
式(6)の具体的としては、例えば、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムイオン、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムイオン等のピペリジニウムイオンと前記式(1)におけるXとの塩が挙げられる。
【0059】
スルホニウム塩の具体例としては、式(7):
【化7】
で表されるものが挙げられる。
【0060】
式(7)中、R1g~R3gは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、又はC~Cアルキル基が挙げられる。また、式(3)中のXとしては、前記式(1)と同じものが挙げられる。
【0061】
式(7)の具体的としては、例えば、トリエチルスルホニウムイオン、トリスルホニウムイオン、等のスルホニウムイオンと前記式(1)におけるXとの塩が挙げられる。
【0062】
イオン液体として更に具体的には、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヨージド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロトリフルオロホスファート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロ(トリフルオロメチル)ボレート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムメチルスルファート、1,3-ジメチルイミダゾリウムジメチルホスファート、2,3-ジメチル-1-プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-デシ
ル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,3-ジメチルイミダゾリウムメチルスルファート、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホナート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロ(トリフルオロメチル)ボラート、3-エチル-1-ビニルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロアセタート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメチルスルファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチルホスファート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムヨージド、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムヨージド、1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウムブロミド、1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウムクロリド、1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムブロミド、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-メチル-3-ペンチルイミダゾリウムブロミド、1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルピリジニウムエチルスルファート、1-エチル-3-(ヒドロキシメチル)ピリジニウムエチルスルファート、1-エチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジエチル(メチル)プロピルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ジエチル(2-メトキシエチル)メチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、エチル(2-メトキシエチル)ジメチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、エチル(2-メトキシエチル)ジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチル(3-メトキシプロピル)ジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチル(ジメチル)(2-フェニルエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、メチルトリ-n-オクチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリブチルメチルホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-アリル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-(2-メトキシエチル)-1-メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)
イミド、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、若しくは、トリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、又は前記のイオン液体の組み合わせが挙げられる。
【0063】
<金属触媒>
金属触媒は、アンモニアを電気化学的に合成する触媒層での電解反応を担うものであればよく、単一組成で利用される場合と合金触媒のように複数の金属成分を混合する場合を有する金属触媒が挙げられる。
【0064】
金属触媒としては、具体的には、白金触媒、金触媒、銀触媒、ルテニウム触媒、イリジウム触媒、ロジウム触媒、パラジウム触媒、オスミウム触媒、タングステン触媒、鉛触媒、鉄触媒、クロム触媒、コバルト触媒、ニッケル触媒、マンガン触媒、バナジウム触媒、モリブデン触媒、ガリウム触媒、アルミニウム触媒等の金属及びこれらの合金、又は前記の金属触媒の組み合わせなどが挙げられる。好ましい金属触媒としては、白金触媒、金触媒、ルテニウム触媒、イリジウム触媒、ロジウム触媒、パラジウム触媒、モリブデン触媒、これらの合金、及び前記の金属触媒の組み合わせが挙げられる。
【0065】
金属触媒と他の金属との合金において、金属触媒と合金を構成する金属としては、選択した金属触媒以外であれば特に制限されず、例えば、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0066】
金属触媒をシェル部とするコアシェル型の金属触媒は、コア部が白金以外の金属からなり、シェル部が白金である。コア部に用いられる金属としては選択した金属触媒以外であれば特に制限されず、例えば、ニッケル、銅、パラジウム、銀、金、イリジウム、チタン、鉄、コバルト、ルテニウム、オスミウム、クロム、モリブデン、タングステンが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0067】
金属触媒としては、界面活性剤等より金属ナノ粒子を形成したものや、チオール化合物を利用して、金属とチオールとの結合により自己組織化した部分を有する金属粒子、金属ナノ粒子、金属膜、金属箔等を利用することも可能である。チオール化合物としては、例えば、R-SH(Rは下記と同義である。)で表される化合物を用いることができる。ここでRは、R-SHの沸点、クロマトグラフィーによる単離のしやすさ等を考慮して、特に限定されず適宜のものとすることができるが、炭素数1~20の有機基が好ましく、炭素数6~16の有機基がより好ましい。有機基としては、例えば、炭化水素基、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、環式不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基や、これらの基の炭素-炭素結合の一部がヘテロ原子で中断されたもの、あるいはヘテロ原子を含む置換基で置換されたもの等が挙げられる。
【0068】
チオール化合物の具体的な化合物としては、例えば、2-メチルベンゼンチオール、3-メチルベンゼンチオール、4-メチルベンゼンチオール、フェニルメタンチオール、1-ブタンチオール、1-デカンチオール、1-ドデカンチオール、1-ヘプタンチオール、1-ヘキサデカンチオール、1-ヘキサンチオール、1-ノナンチオール、1-オクタデカンチオール、1-オクタンチオール、1-ペンタデカンチオール、1-ペンタンチオール、1-プロパンチオール、1-テトラデカンチオール、1-ウンデカンチオール、1
1-メルカプトウンデシルトリフルオロアセテート、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデカンチオール、2-エチルヘキサンチオール、2-メチル-1-プロパンチオール、2-メチル-2-プロパンチオール、3-メチル-1-ブタンチオール、3-メルカプトプロピオン酸メチル、tert-ドデシルメルカブタン、(11-メルカプトウンデシル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロミド、(11-メルカプトウンデシル)ヘキサ(エチレングリコール)、(11-メルカプトウンデシル)テトラ(エチレングリコール)、1-(11-メルカプトウンデシル)イミダゾール、1-メルカプト-2-プロパノール、11-(1H-ピロール-1-イル)ウンデカン-1-チオール、11-アミノ-1-ウンデカンチオール塩酸塩、11-メルカプト-1-ウンデカノール、11-メルカプトウンデカンアミド、11-メルカプトウンデカン酸、11-メルカプトウンデシルヒドロキノン、11-メルカプトウンデシルホスホン酸、12-メルカプトドデカン酸、16-アミノ-1-ヘキサデカンチオール塩酸塩、16-メルカヘキサデカンアミド、16-メルカプトヘキサデカン酸、3-アミノ-1-プロパンチオール塩酸塩、3-クロロ-1-プロパンチオール、3-メルカプト-1-プロパノール、3-メルカプトプロピオン酸、6-アミノ-1-ヘキサンチオール塩酸塩、6-メルカプト-1-ヘキサノール、6-メルカプトヘキサン酸、8-アミノ-1-オクタンチオール塩酸塩、8-メルカプト-1-オクタノール、8-メルカプトオクタン酸、9-メルカプト-1-ノナノール、トリエチレングリコールモノ-11-メルカプトウンデシルエーテル、1,4-ブタンジオールジアセタート、[11-(メチルカルボニルチオ)ウンデシル]ヘキサ(エチレングリコール)、[11-(メチルカルボニルチオ)ウンデシル]テトラ(エチレングリコール)、[11-(メチルカルボニルチオ)ウンデシル]トリ(エチレングリコール)酢酸、ヘキサ(エチレングリコール)モノ-11-(アセチルチオ)ウンデシルエーテル、S,S’-[1,4-フェニレンビス(2,1-エチンジイル-4,1-フェニレン)]ビス(チオアセテート)、S-[4-[2-[4-(2-フェニルエチニル)フェニル]エチニルフェニル]チオアセテート、S-(10-ウンデシル)チオアセテート、チオ酢酸S-(11-ブロモウンデシル)、S-(4-アジドブチル)チオアセテート、S-(4-ブロモブチル)チオアセテート、チオ酢酸S-(4-シアノブチル)、1,1’,4’,1’’-テルフェニル-4-チオール、1,4-ベンゼンジメタンチオール、1-アダマンタンチオール、1-ナフタレンチオール、2-フェニルエタンチオール、4’-ブロモ-4-メルカプトフェニル、4’-メルカプトフェニルカルボニトリル、4,4’-ビス(メルカプトメチル)ビフェニル、4,4’-ジメルカプトスチルベン、4-(6-メルカプトヘキシルオキシ)ベンジルアルコール、4-メルカプト安息香酸、9-フルオレニルメチルチオール、9-メルカプトフルオレン、ビフェニル-4,4-ジチオール、ビフェニル-4-チオール、シクロヘキサンチオール、シクロペンタンチオール、p-テルフェニル-4,4’’-ジチオール、チオフェノール、アミノエタンチオール、アミノプロパンチオール、アミノブタンチオール、メチルアミノエタンチオール、イソプロピルエチルアミノエタンチオール、ジメチルアミノエタンチオール、ジエチルアミノエタンチオール、ジブチルアミノエタンチオール、メルカプトエチルイミダゾール、メルカプトプロピルイミダゾール、メルカプトブチルイミダゾール、メルカプトヘキシルイミダゾール、メルカプトトリアゾール、メルカプトエチルトリアゾール、メルカプトプロピルトリアゾール、メルカプトブチルトリアゾール、カプトヘキシルトリアゾール、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0069】
<酸化物触媒>
酸化物触媒は、アンモニアを電気化学的に合成する触媒層での電解反応を担うものであればよく、典型元素の金属酸化物で利用される場合、遷移金属酸化物で利用される場合又は複数の金属酸化物を混合する場合を有する酸化物触媒等が挙げられ、触媒層での電解反応で用いる触媒の担体として利用されてもよい。
【0070】
酸化物触媒としては、具体的には、酸化イリジウム(IV)粉末触媒、酸化イリジウム触媒、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、五酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、酸化銀、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化オスミウム、酸化イリジウム、酸化インジウム、酸化白金、酸化金、酸化マグネシウム、シリカ、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、前記の酸化物触媒の組み合わせ又は前記の金属触媒の組み合わせなどが挙げられる。
【0071】
<金属錯体>
金属錯体は、アンモニアを電気化学的に合成する触媒層での電解反応を担うものであればよく、電極の近傍にて窒素分子が反応する際、窒素分子を捉える役割と、その後、プロトンと電子を与え還元する役割を担ってよく、前記金属錯体の金属中心にて窒素分子が配位した化合物になるものであれば特に限定されない。前記化合物は窒素錯体と呼ばれることもある。具体的には、1965年に初めて、非特許文献のChem.Commun.,1965年,621-622ページに記載の[Ru(NH3)5N2]2+が見出されて以降、非特許文献のScience,1968年,159巻,320-322ページ、J. Am. Chem. Soc.,1968年,90巻,3263-3264ページ、J. Am. Chem. Soc.,1968年,90巻,5295-5296ページ、Chem.Lett.,1993年,22巻,1329-1332ページ、Polyhedron,1996年,24巻,4421-4423ページ、Chem. Rev.,2004年,104巻,385-401ページにて、窒素錯体が報告されており、これらが、上記の窒素錯体になった例として挙げる事ができる。
【0072】
更に具体的には、非特許文献の Science 2003年, 301巻 76-78ページに記載のトリアミドモノアミン四座配位子を有するモリブデン窒素錯体、非特許文献の Nature 2013年, 501巻 84-87ページに記載のトリホスフィンボラン四座配位子を有する鉄窒素錯体、特許文献の特許5729022号に記載のビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド等に代表されるメタロセン化合物、ハーフメタロセン化合物等が挙げられる。メタロセン化合物は、シクロペンタジエン、ベンゼン、シクロオクタテトラエン、前記誘導体等の環を2つ持ち、前記環の間に金属原子が挟まれた構造であり、サンドイッチ化合物と呼ばれることもある。ハーフメタロセン化合物は、前記環を1つ持つ構造であり、オープンサンドイッチ化合物と呼ばれることもある。
【0073】
メタロセン化合物としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、μ-クロロ-μ-メチレン[ビス(シクロペンタジエニル)チタン]ジメチルアルミニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリドヒドリド、ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド、デカメチルジルコノセンジクロリドビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド、1,1’-イソプロピリデンジルコノセンジクロリド、ハフノセンジクロリド、1,1’-ジプロピルハフノセンジクロリドビス(プロピルシクロペンタジエニル)ハフニウム(IV)ジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジクロリド等が挙げられ、ハーフメタロセン化合物としては、シクロペンタジエニルチタニウム(IV)トリクロリド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(IV)トリクロリド、(インデニル)チタニウム(IV)トリクロリドトリクロロ(インデニル)チタニウム(IV)、シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)トリクロリド、ジメチルシリルビス(1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac-ジメチルシリルビス(1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、ra
c-エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド等が挙げられる。このうち、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、rac-ジメチルシリルビス(1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac-エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジルコニウムジクロリドが好ましい。
【0074】
前記の金属錯体に加えて、金属錯体が担持された様態を持つものも使用でき、例えば、非特許文献の Journal of Organometallic Chemistry 655巻 2002年 167-171ページに記載のビニル基を有する式(S1)で表される錯体を、スチレンとラジカル重合した式(S2)
【化8】
で表される錯体が挙げられる。更には、メタロセン化合物がポリマーに担持された様態は、例えば、非特許文献のComprehensive Organometallic Chemistry III(2007年)の728~738ページに記載があり、ポリマーに担持された様態のものを用いることも可能である。
【0075】
<<アノード電極触媒>>
アノード電極触媒としては、カソード電極触媒にて記載した触媒担体と同じものが挙げられ、触媒としては、カソード電極触媒にて記載した金属触媒及び酸化物触媒が挙げられ、これらの触媒を複数、組み合わせて利用することも可能である。電解反応及び電解質膜等の条件に応じて、後述する触媒担体及び触媒をそれぞれ設定して、アノード電極触媒として使用できる。アノード触媒としては、白金触媒及び酸化イリジウム触媒が好ましい。更に、アノード電極触媒、アノード触媒層及びアノードガス拡散層まで作製された、アノードガス拡散電極(ケミックス社製、酸化イリジウムの目付量が2mg/cmであり、ナフィオン固形分の目付量が0.8mg/cmである)を入手して使用する事もでき、酸化イリジウムとナフィオン固形分の目付量も調整できる。
【0076】
<<ガス拡散電極及び膜電極接合体の作製方法>>
本発明のガス拡散電極の作製方法及び膜電極接合体の作製方法を記載する。図3のガス拡散電極及び膜電極接合体は、熱圧着する前の模擬図であり、図4したガス拡散電極及び膜電極接合体2は、熱圧着した後の模擬図である。カソード触媒層用材料を含む触媒層11及びカソード電極触媒12(図3及び図4中の黒丸であり、担持していないカソード触媒12である場合もある)が、電解質膜102とカソードガス拡散層104の間に配置された様態のガス拡散電極が作製できればよく、熱圧着した後では、触媒層11及びカソード電極触媒12は同じ薄層中の領域に配置された様態となり、カソード触媒層103が作製される。アノード触媒層203の作製は、公知技術である水電解や燃料電池等のMEA作製に準じた作製方法で実施できる。アノードガス拡散層204、アノード触媒層203及び電解質膜102による領域では、電解質膜と同類の電解質を用いた接合を行うことが
好ましく、カソードガス拡散層104、カソード触媒層103及び電解質膜102による領域では、本発明のカソード触媒層用材料を用いた接合を行うことが特徴である。接合は熱圧着できる機器であればよく、ホットプレス装置又は精密加熱加圧装置にて実施する事が好ましい。
【0077】
<<カソード触媒層用材料を含む触媒層の作製>>
図3及び図4に示したガス拡散電極中における、カソード触媒層用材料を含む触媒層11の作製は、電解質膜の種類及び触媒の担持に応じて、カソード触媒層用材料からなる群から選択される少なくとも1種である材料を使用して、触媒層向けインクを作製し塗布して、熱圧着する事で、ガス拡散電極中のカソード触媒層用材料を含む触媒層を作製できる。触媒層向けインクの作製は、選択したカソード触媒層用材料以外に、結着剤、導電性カーボン材料、イオン液体等を添加してインクを調整する事も可能である。触媒層向けインクの塗布面は、電解質膜102の片面、カソードガス拡散層104の片面又は電解質膜の片面及びカソードガス拡散層の片面に塗布できる。カソード電極触媒12としてカーボン等の触媒担体に担持された触媒を用いる場合は、担持された触媒を、触媒層向けインクに添加して、インクを調整してもよい。
【0078】
<カソード触媒層用材料を含む触媒層の作製A>
カソードガス拡散層104の片側にカソード触媒12を担持する方法としては、例えば、スパッタリング蒸着法、アークプラズマ蒸着法、電子線蒸着法、熱加熱蒸着法、パルスレーザー蒸着法等を挙げられ、触媒の担持量は、触媒の種類を考慮して、蒸着条件を制御して適宜調節することができる。図5に示した、カソード触媒12が、カソードガス拡散層104に直接担持されたガス拡散電極401(Gas Diffusion Electrode、以下「GDE」と略称する事がある)を経由して、カソード触媒層用材料を含む触媒層11である前記の触媒層向けインクを塗布した後、熱圧着する事でガス拡散電極を作製できる。
【0079】
<カソード触媒層用材料を含む触媒層の作製B>
カソード電極触媒12して、カーボン等の触媒担体に担持された触媒を用いる場合、例えば、市販品として利用できるカーボンに担持された白金触媒である電極触媒(田中貴金属工業社製、白金含有量:46.5重量%、品名「TEC10E50E」)を用いる事が挙げられ、カソード触媒層用材料を含む触媒層11とカーボン担持の白金触媒との触媒層向けインクを作製して塗布した後、熱圧着する事でガス拡散電極を作製できる。前記の触媒層向けインクを塗布する面は、図6に示した触媒被覆膜402(Catalyst Coated Membrane、以下「CCM」と略称する事がある)を経由する際は、電解質膜102の片面に塗布し、ガス拡散電極4中に記載した触媒被覆膜402(Catalyst Coated Membrane、以下「CCM」と略称する事がある)を経由して作製でき、更には、図7に示したガス拡散電極5中に記載したガス拡散電極403を経由する際は、カソードガス拡散層104の片面に塗布する。
【0080】
<カソード触媒層用材料>
前記のカソード触媒層用材料について説明する。カソード触媒層用材料は、アンモニアを電気化学的に合成する触媒層での電解反応にて、イオン伝導、電子伝導、イオン及び電子の伝導を担うものであればよく、アンモニア電解合成に関係する原料、窒素ガス、生成物、電解液、反応液等の輸送を担うものでもよい。前記イオンとしては、プロトン、ヒドロキソニウムイオン、アンモニウムイオン、水酸化物イオン等が挙げられ、触媒層の置かれている環境が酸性の場合は、プロトン及びヒドロキソニウムイオンの少なくとも1種であるイオンを供給できるものが好ましく、触媒層の置かれている環境がアルカリ性の場合は、水酸化物イオンを供給できるものが好ましい。アンモニア電解合成に関係する原料や生成物としては、窒素ガス、水、プロトン、ヒドロキソニウムイオン、アンモニア、アンモニウムイオン、水酸化物イオン等が挙げられる。
カソード触媒層用材料の群としては、高分子電解質、含窒素化合物成分と導電性を有する炭素材料とを含む混合物の焼成体(焼成体Aと略称する)等が挙げられる。
【0081】
<高分子電解質>
前記の触媒担体に記載したイ高分子電解質が挙げられる。好ましい高分子電解質としては、アンモニウムイオンとの酸塩基の親和性の観点より、弱酸の官能基を持つ高分子電解質が好ましく、具体的には、パーフルオロカルボン酸を持つフッ素系高分子電解質、パーフルオロカルボン酸を持つフッ素系高分子電解質、カルボキシル基含有メタクリル系共重合体が挙げられる。弱酸の官能基としては、カルボキシル基、水酸基及びフェノール性水酸基が挙げられる。デュポン社のナフィオン(登録商標)パーフルオロスルホン酸基を持つフッ素系高分子電解質のpKa値は-6であり(非特許文献:膜 2002年、27巻、3号、131-138ページ)、カルボキシル基のpKa値は4~5、水酸基のpKa値は16~17、フェノール性水酸基のpKa値は8~11(非特許文献:マーチ有機化学(上) 2003年、234-235ページ)に記載がり、pKaとは、酸解離定数であり、酸の強さや、水素イオンの解離しやすさを定量的に表した指標である。
【0082】
カソード触媒層において、スルホン酸基のような強酸性下では、生成したアンモニアがアンモニウムイオンとなり、酸性度の強いスルホン酸基のアニオン部位との親和性が強くなる傾向がある一方で、カルボキシル基、フェノール性水酸基及び水酸基のような弱酸性下では、弱酸の官能基のアニオン部位とアンモニウムイオンとの親和性が弱まるため、弱酸の官能基のアニオン部位の近傍にあるアンモニウムイオンは、ヒドロキソニウムイオンや水等との交換が起こりやすくなると推察しており、これにより、反応が終わったアンモニウムイオンはカソード触媒層から排出されやすくなり、次の窒素ガスやプロトンの供給も進むと考えている。
【0083】
<焼成体A>
焼成体Aは、含窒素化合物、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物又はその両方を含む導電性を有する炭素材料を含む混合物を焼成することで製造した焼成体である。イオン伝導、電解合成に関係する原料や生成物の輸送を担うものとして設計した材料である。
【0084】
含窒素化合物としては、尿素、芳香族尿素化合物、グアニジン化合物、トリアジン系複素環化合物、含窒素縮環化合物等が挙げられる。芳香族尿素化合物としては、例えば、フェニル尿素、ベンジル尿素、N-エチル-N’-フェニル尿素、p-エトキシフェニル尿素、N,N’-ジフェニル尿素、N,N-ジフェニル尿素、テトラフェニル尿素、及びベンゾイル尿素等が挙げられる。グアニジン化合物としては、例えば、グアニジン、メチルグアニジン、ニトログアニジン、アミノグアニジン、ビグアニド、ジシアンジアミド、カルバモイルグアニジン、グリコシアミン、クレアチン、N,N’-ジフェニルグアニジン、及びトリフェニルグアニジン等が挙げられ、グアニジン及びアミノグアニジンが好ましい。トリアジン系複素環化合物としては、例えば、1,3,5-トリアジン、塩化シアヌル、シアヌル酸、シアヌル酸トリメチル、イソシアヌル酸メチル、イソシアヌル酸エチル、メラミン、メレム、メラム、アンメリン、アンメリド、ベンゾグアナミン、メチルグアナミン、1,3,5-トリメチルトリアジン、1,3,5-トリフェニルトリアジン、アメリン、アメリド、チオシアヌル酸、ジアミノメルカプトトリアジン、ジアミノメチルトリアジン、ジアミノフェニルトリアジン、又はジアミノイソプロポキシトリアジン等が挙げられ、メラミンが好ましい。
【0085】
導電性を有する炭素材料は、アンモニアを電気化学的に合成する触媒層での電子伝導を担うものであればよく、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンナノプレートレット等があげられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、ケッチェンブラック
EC、チャンネルブラック、オイルファーネスブラック、バルカン、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、黒鉛化ブラック、酸化ブラック等が挙げられ、導電性が良好であることから、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ケッチェンブラックECが好ましく、ケッチェンブラック、ケッチェンブラックECがより好ましい。カーボンブラックは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。カーボンブラックは表面処理されたものであってもよい。カーボンブラックとして具体的には、デンカブラック(デンカ社製);LACK PEARLS(登録商標)2000、VULCAN(登録商標)XC-72、VULCAN(登録商標)P、TERLING(登録商標)C(キャボット社製);旭HS-500、旭♯8、旭♯15、旭♯15HS、旭♯22K、アサヒサーマル、旭♯35、旭#50、旭#50U、旭#50HG、旭#51、旭#52、旭#55、旭#60U、旭#60HN、旭#65、旭F-200GS、旭#70、旭#80、旭#95、旭AX-015、旭♯15HS(旭カーボン製);ケッチェンブラック EC300J、カーボンECP、ケッチェンブラックEC600JD、カーボンECP600JD(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製);ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC-600JD(ケッチェンブラックインターナショナル製);Carbon black CP(アルドリッチ製)、TOKABLACK#5500、TOKABLACK#4500、TOKABLACK#4400、Aqua-black001(東海カーボン製)等が挙げられる。
【0086】
カーボンナノチューブとしては、例えば、気相成長法、触媒気相成長法、触媒的化学気相成長法、化学気相成長法、スーパー増殖法、触媒炭素蒸着法、アーク放電法、レーザー蒸発法などにより得られる単層ナノチューブ、多層カーボンナノチューブが挙げられ、これらは、針状、コイル状、チューブ状の形態など任意の形態をとることができる。カーボンナノチューブのチューブに関しては、炭素六角網面のグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、3層以上に巻いた多層カーボンナノチューブ(マルチウォールカーボンナノチューブ)、グラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ:SWNT)、2層に巻いた2層カーボンナノチューブ(ダブルウォールカーボンナノチューブ:DWNT)、気相成長炭素繊維(VGCF、昭和電工社製の登録商標)等が挙げられる。具体的には、スパーグロース法CNT(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構製)、eDIPS-CNT(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構製)、SWNTシリーズ((株)名城ナノカーボン製:商品名)、VGCF、VGCF-H、VGCF-X等のVGCF(登録商標)シリーズ(昭和電工(株)製:登録商標)、FloTubeシリーズ(CNano Technology社製:商品名)、AMC(宇部興産(株)製:商品名)、NANOCYL NC7000シリーズ(Nanocyl S.A.社製:商品名)、Baytubes(Bayer社製:商品名)、GRAPHISTRENGTH(アルケマ社製:商品名)、MWNT7(保土谷化学工業(株)製:商品名)、ハイペリオンCNT(Hypeprion Catalysis International社製:商品名)等が挙げられる。VGCF、VGCF-H、VGCF-X等のVGCF(登録商標)シリーズが好ましい。カーボンナノチューブは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。カーボンナノチューブは表面処理されたものであってもよい。更には、カーボンブラックとカーボンナノチューブとを組み合わせて用いてもよい。
【0087】
グラフェンナノプレートレットとしては、例えば、xGnP C-grade(750)、xGnP Dispersion, xGnP R-grade、xGnP graphene nanoplatelets-grade C-500、xGnP graphene nanoplatelets-grade C-300、xGnP M-5、等のxGnP(登録商標:XG Sciences社製)、Cheap Tubes社製のグラフェンナノプレートレット、ストレム社製のグラフェンナノプレートレット等が挙げられる。
【0088】
フェノール性水酸基を有する芳香族化合物は、単環式の芳香族化合物であり、3つのフェノール性水酸基を有するフェノール類としては、例えば、ピロガロール、1,2,4-ベンゼントリオール、フロログルシノール、2-メチルフロログルシノール、m-キシレ
ン-2,4,6-トリオール又は2,4,6-トリメチルフロログルシノール等が挙げられる。単環式の芳香族化合物であり、4つのフェノール性水酸基を有するフェノール類としては、例えば、1,2,3,5-ベンゼンテトラオール又は1,2,4,5-ベンゼンテトラオール等が挙げられる。単環式の芳香族化合物であり、6つのフェノール性水酸基を有するフェノール類としては、例えば、ヘキサヒドロキシベンゼンが挙げられる。フェノール性水酸基を有する単環式の芳香族化合物としては、3~6個のフェノール性水酸基を有する3~6フェノール類が挙げられ、単環式の芳香族化合物が、3個のフェノール性水酸基を有するフェノール類がさらに好ましく、下記式(I)で表されるフロログルシノールが特に好ましい。
【化9】
縮合多環式の芳香族化合物としては、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラセン、ペリレン、ペンタセン、ピセン又はコロネン等が挙げられ、ナフタレン、アントラセン及びトリフェニレンが好ましい。フェノール性水酸基を有する縮合多環式の芳香族化合物としては、例えば、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,4-ジヒドロキシナフタレン、2,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,3,8-トリヒドロキシナフタレン、9,10-アントラセン又はエラグ酸、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン等が挙げられ、好ましくは、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,3,8-トリヒドロキシナフタレン、9,10-アントラセン及びエラグ酸、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレンが挙げられ、より好ましくは、下記式(II)で表されるエラグ酸、下記式(III)で表される2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレンが挙げられる。
【化10】
フェノール性水酸基を有する芳香族化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、単環式、縮合多環式のいずれであっても、3個以上のフェノール性水酸基を有することが好ましく、3~6個のフェノール水酸基を有することがより好ましく、三次元重合体を形成することが可能であると推察している。
【0089】
焼成体Aの製造方法を説明する。焼成体Aは、含窒素化合物、フェノール性水酸基を有
する芳香族化合物又はその両方を含む導電性を有する炭素材料を含む混合物を焼成することにより得られる。焼成温度は含窒素化合物系及び任意のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物を重合反応できる温度、又は炭化できる温度であればよく、150~1000℃が好ましく、200~800℃がより好ましく、250~600℃が更により好ましい。焼成は焼成温度にて、好ましくは1~10時間、より好ましくは1~5時間にて行う。焼成は、空気下又は不活性ガス下にて行うことでき、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられる。
【0090】
<焼成体Aの構造>
原料の含窒素化合物系成分及び好ましい原料のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物は、焼成体において、原料の母核構造のまま含まれていてもよい。
又は、原料の含窒素化合物系成分及び好ましい原料のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物は、その少なくとも一部が、それぞれの三次元重合体として焼成体中に含まれていてもよい。原料の含窒素化合物系成分及び好ましい原料のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物は、焼成によって、熱縮合反応及び熱重合反応して、それぞれフェノール性水酸基を有する芳香族化合物の三次元重合体、及び原料の含窒素化合物系成分にを構成する含窒素化合物の三次元重合体となる場合があると考えられる。三次元にて、熱縮合反応及び熱重合反応する場合は、原料のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物は、3個以上のフェノール性水酸基を有し、原料の含窒素化合物系成分を構成する含窒素化合物は、3個以上の官能基を有する。
【0091】
フェノール性水酸基を有する芳香族化合物の三次元重合体としては、下記式(I)で表されるフロログルシノールを原料とした場合、例えば、下記式(a)で表される。
【化11】
【0092】
含窒素化合物の三次元重合体は、例えば、メラミン(i)を原料にして焼成することで、アンモニアを脱離しながら、脱アンモニア縮合物である下記式(ii)で表されるメラム、下記式(iii)で表されるメレム、下記式(iv)又は式(v)で表される化合物、下記式(vi)、式(vii)又は式(viii)で表されるメロン等を経て生成される。
【化12】
含窒素化合物の三次元重合体としては、これら(i)~(viii)等の構造が多数連なった構造が挙げられ、例えば、下記式(ix)で表される。重合反応を進めることで、下記式(x)で表されるグラファイト状窒化炭素であるg-Cの構造体となり層状となる。
【化13】
【0093】
グラファイト状窒化炭素の構造は、次の非特許文献を参考にすることができる。
(非特許文献A)工業化学雑誌 1963年、66巻、6号、804-809ページ
(非特許文献B)Chem.Eur.J. 2007年、13巻、4969-4980ページ
【0094】
焼成体Aにて、式(a)のような多数のフェノール性水酸基を持った三次元重合体を形成する反応と、式(ix)のような多数のアミノ基を持った三次元重合体を形成する反応とは、オルソゴナルな反応であると推察され、それぞれの三次元重合体が独立して形成されると考えている。
【0095】
焼成体Aは、導電性を有する炭素材料の表層に、式(a)のような多数のフェノール性
水酸基を持った三次元重合体、式(ix)のような多数のアミノ基を持った三次元重合体、又はその両方の構造を持っているため、電子伝導とイオン伝導の機能を、カソード触媒層にて発揮できていると推定している。
【0096】
<触媒層向けインク>
前記のカソード触媒層用材料を含む触媒層向けインクに添加する材料としては、結着剤、導電性カーボン材料、イオン液体等が挙げられる。
【0097】
<結着剤:触媒層向けインクに添加する材料>
結着剤は、インクを塗布して溶媒成分を留去し触媒層が形成される際に、イオンと電子とを伝導できる材料、担持された触媒又はインクに添加した材料同士を結着でき、更にはインクの固形分を電解質膜及びガス拡散層の表面で結着できてもよい。結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、親水性高分子、ナフィオン(登録商標、デュポン株式会社製)、アクイヴィオン(登録商標、ソルベイ株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)等のフッ素系スルホン酸ポリマーなどが挙げられる。
親水性高分子は、高分子中に極性又は荷電官能基を含むことで親水性を示すものであり、水との強い相互作用を有する官能基を該高分子中に多数有する。水との強い相互作用を有する官能基の例としては、イオン性基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、エーテル基等が挙げられる。また、ゲルパーミェーションクロマトグラフィで測定した重量平均分子量は、10,000~3,000,000であり、20,000~2,000,000が好ましく、30,000~1,500,000がより好ましく、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリピリジン、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(4-ビニルピリジン-co-スチレン)等が挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリ(2-ビニルピリジン)が好ましく、ポリビニルピロリドンがより好ましい。
【0098】
<導電性カーボン材料:触媒層向けインクに添加する材料>
導電性カーボン材料は、アンモニアを電気化学的に合成する触媒層での電子伝導を担うものであればよく、前記の焼成体Aの導電性を有する炭素材料に記載したものが挙げられる。
【0099】
<イオン液体:触媒層向けインクに添加する材料>
前記の触媒担体に記載したイオン液体が挙げられる。
【0100】
<触媒層向けインクに使用する溶剤>
触媒層向けインクに使用する溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、ペンタノール、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。前記溶剤としては、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール及びイソブチルアルコールが好ましい。上述した溶剤のうち二種以上を混合して用いることもできる。インクの再凝集が抑制され塗布しやすく、更に触媒層中に溶剤が残留を抑制できる観点から、触媒インクに使用する溶剤としては、水、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノールがより好ましい。
【0101】
<電解質膜>
電解質膜としては、高分子電解質膜、補強膜等が挙げられ、1枚の膜中の固定化した荷電構造の違いより、カチオン交換膜及びアニオン交換膜の他に、1枚の膜中のカチオン交換膜及びアニオン交換膜の構造が存在する複合荷電膜として、バイポーラ膜、モザイク荷電膜が挙げられ、本実施形態のアンモニアの製造装置に任意に選択して使用することが可能である。こうした電解質膜の具体例としては、デュポン社のナフィオン膜(登録商標)、ソルヴェイ社のアクイヴィオン膜(登録商標)、AGC社のフレミオン膜(登録商標)、旭化成社のアシプレックス(登録商標)、ダウ社のダウ膜(登録商標)、スルホン化ポリエーテルケトンポリマー膜、スルホン化ポリエーテルスルホンポリマー膜、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホンポリマー膜、スルホン化ポリスルフィドポリマー膜、スルホン化ポリフェニレンポリマー膜、補強材としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔体を用いてパーフルオロスルホン酸ポリマーを含浸させた日本ゴア合同会社のゴアセレクト膜(登録商標)、PTFE織布で補強した膜、ポリエチレン(PE)多孔体やポリプロピレン(PP)多孔体を補強材として用いる膜(例えば、特許文献のWO98/20063記載)、PTFEフィブリルを用いるフィブリル補強膜(例えば、特許文献のUS2001-026883A1、非特許文献の工業材料、2001年、49巻、31ページ記載)、アストム社のネオセプタ(登録商標)、AGC社のセレミオン膜(登録商標)、旭化成社のアシプレックス膜(登録商標)、FUMATECH BWT GmbH社のFumasep膜(登録商標)、FUMATECH BWT GmbH社のfumapem膜(登録商標)等が挙げられる。
【0102】
カチオン交換膜である電解質膜102としては、デュポン社のナフィオン膜(登録商標)、ソルヴェイ社のアクイヴィオン膜(登録商標)及び日本ゴア合同会社のゴアセレクト膜(登録商標)が好ましく、アニオン交換膜である電解質膜302としては、FUMATECH BWT GmbH社のFumasep膜(登録商標)のFAP-450膜、FAA-3膜、AGC社のセレミオン膜(登録商標)のASVN膜、及びAHO膜が好ましい。
【0103】
アンモニアの製造方法における電解液中に含まれる電解質について説明する。電解質としては、例えば、プロトン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、4級アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ホスホニウムイオン等の単独、若しくは複数を組み合わせたカチオンが挙げられ、一方、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、テトラフルオロボレート、トリフルオロ(トリフルオロメチル)ボレート、ジメチルホスファートイオン、ジエチルホスファートイオン、ヘキサフルオロホスファート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスファート、トリフルオロアセテート、メチルスルファート、トリフルオロメタンスルホナート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、過塩素酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等の単独、若しくは複数を組み合わせたアニオンが挙げられる。前記電解質は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0104】
前記電解質における4級アンモニウムイオンとしては、トリエチルペンチルアンモニウムイオン、ジエチル(メチル)プロピルアンモニウムイオン、メチルトリ-n-オクチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムイオン、ジエチル(2-メトキシエチル)-メチルアンモニウムイオン、エチル(2-メトキシエチル)-ジメチルアンモニウムイオン、エチル(3-メトキシプロピル)ジメチル-アンモニウムイオン、エチル(ジメチル)(2-フェニルエチル)-アンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、トリエチルペンチルアンモニウムイオン、テトラ-n-ブチルアンモニウムイオン、ジエチル(メチル)プロピルアンモニウムイオン、メチルトリ-n-オクチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムイオン、ジエチル(2-メトキシエチル)-メチルアンモニウムイオン、エチル(2
-メトキシエチル)-ジメチルアンモニウムイオン、エチル(3-メトキシプロピル)ジメチル-アンモニウムイオン、エチル(ジメチル)(2-フェニルエチル)-アンモニウムイオン等が挙げられる。
【0105】
前記電解質におけるイミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオン、ピロリジニウムイオン及びホスホニウムイオンの具体例としては、前記のものが挙げられる。
【0106】
電解液中に含まれる電解質であるカチオンは、プロトン、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオンが好ましく、前記電解質であるアニオンは過塩素酸イオン、硫酸イオンが好ましい。
【0107】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0108】
[合成例1:焼成体(1)の製造]
ケッチェンブラックEC(ライオン社製、EC300J、1.00g)、メラミン(日産化学社製、0.50g)及びフロログルシノール(東京化成工業社製、0.50g)を、乳鉢で混合した混合物をアルミナるつぼに入れた。該るつぼを卓上型高速昇温電気炉MSFT-1520-P-TR(山田電機社製)に設置して、毎分10℃で昇温し、焼成温度400℃で2時間の焼成を行った。焼成後は、黒色の焼成物(1.32g、仕込み重量を100%とした場合66%回収)を得た。
【0109】
[実施例1]
1.ガス拡散電極(「GDE-Cathode-1」)
カソード電極触媒12を、カソードガス拡散層104であるカーボンペーパー(東レ社製、品名「TGP-H-060H」)に作製した。反応性マグネトロンスパッタリング装置(サンユー電子社製、SRS-7000T)を用いて、カーボンペーパー上に0.636nm/秒の速度で成膜した。成膜条件は、ターゲット:モリブデン(φ106mm、純度99.95%)、電力:DC300W、雰囲気:アルゴン(圧力1Pa)とした。このようにして、モリブデン触媒(1.8mg)が担持された、2.8×2.8cmのガス拡散電極401を「GDE-Cathode-1A」とした。
触媒層向けインクの調製は、焼成体(1)及び2-プロパノール(和光純薬工業社製)を用いて調製した。ガラス製のバイアル瓶に、焼成体、2-プロパノールを、この順番で加えた分散溶液を、アズワン社製の超音波洗浄器ASU-6を用いて、発振パワーをHighに設定して30分間、超音波を照射することで触媒層向けインクを調製した。具体的には、焼成体(1)(30mg)、2-プロパノール(1.2mL)と設定した「インク1A」とした。次に、「インク1A」を、前記のガス拡散電極401「GDE-Cathode-1A」に塗って、インクの溶剤を乾燥させて、カソードガス拡散電極403を「GDE-Cathode-1」として作製した。
【0110】
アノード触媒層203を以下のようにして作製した。アノード触媒層203を作製するためのインクを「インク1B」として以下のようにして作製した。電極触媒としてのカーボンブラック担持白金触媒(田中貴金属工業社製、白金含有量:46.5重量%、品名「TEC10E50E」、以降、カーボン担持白金触媒と略称する)、脱イオン水、エタノール及びナフィオン分散溶液(富士フイルム和光純薬社製、品名「5%ナフィオン分散溶液 DE520 CSタイプ」)を用いて「インク1B」を調製した。ガラス製のバイアル瓶に、カーボン担持白金触媒、脱イオン水、ナフィオン分散溶液及びエタノールを、この順序で加えて、得られた分散溶液を、マイクロテック・ニチオン社製の超音波ホモジナイザーSmurt NR-50Mを用いて超音波を出力40%に設定して30分間照射することで、「インク1
B」を調製した。具体的には、カーボン担持白金触媒(100.0mg)、ナフィオン分散溶液(837μL、ナフィオン固形分38.9mg)、脱イオン水(0.6mL)、エタノール(5mL)と設定した。次に、この「インク1B」を、80℃にしたホップレートに固定した、アノードガス拡散層204であるカーボンペーパー(東レ社製、品名「TGP-H-060H」)に塗布し、インクの溶剤を乾燥させた。塗布量は1cmあたりの白金量が1.0mgとなるように調整した。このようにして、金属触媒である白金触媒(7.8mg)が塗布された、2.8×2.8cmのアノードガス拡散電極を「GDE-Aode-1」として作製した。
【0111】
2.膜電極接合体(「MEA-1」の作製)
電解質膜102、カソードガス拡散電極403である「GDE-Cathode-1」及びアノードガス拡散電極である「GDE-Aode-1」とからなる膜電極接合体「MEA-1」を以下のようにして作製した。電解質膜102に用いるイオン交換膜は、市販品として入手できる、デュポン社のナフィオン212膜(登録商標)(膜厚50μm、5cm×4cm)を使用した。電解質膜の一方の面に「GDE-Cathode-1」を配置し、もう一方の面に「GDE-Anode-1」を配置した後、精密加熱加圧装置(新東工業社製、CYPT10)を用いて、上下盤温度134℃、荷重5.4kN、圧着時間240秒の条件で熱圧着して、膜電極接合体である「MEA-1」を作製した。
【0112】
3.アンモニアを電気化学的に合成する製造装置の作製
得られた「MEA-1」の両面に、25個の直径2.5mmの円状の穴をあけたステンレス鋼製の集電体をガスケットであるテフロン(登録商標)のシートと共に電解槽に取り付け、図1の模擬図に示した構成を持つ製造装置(日産化学社製)及び図8のアンモニア製造装置300を組み上げた。
【0113】
4.アンモニアを電気化学的に合成する製造装置によるアンモニア製造
以上のようにして製造装置を用いて以下の条件でアンモニアの電解合成を定電位電解にて実施した。
装置本体の温度:25~28℃(室温)
電源装置101:Princeton Applied Research社製のVersa STAT4を使用して、定電位電解を行い、電圧と電流の測定を行った。
反応条件:-2.3Vの定電位電解、1時間
カソード電解液槽303:硫酸水溶液(0.02mol/L、6mL)中に10mL/分の窒素をバブリングで流した。
アノード電解液槽313:硫酸水溶液(0.02mol/L、6mL)
アンモニア捕集用槽308:硫酸水溶液(0.02mol/L、10mL)
反応条件:-2.3Vの定電位電解
アンモニアの定量は、Thermo社製のThermo Scientific Dionex イオンクロマトグラフィー(IC)システム、Dionex Integrionを使用した。アンモニア捕集用の希硫酸水溶液槽308の硫酸水溶液、及びカソード電解液槽303の硫酸水溶液のアンモニア量を定量してアンモニア生成量を求めた。アンモニア生成量は、0.36μmolであった。
【0114】
[実施例2]
1.ガス拡散電極(「GDE-Cathode-2」)
カソード触媒層103を以下のようにして作製した。カソード触媒層103を作製するためのインクを「インク2A」として以下のようにして作製した。電極触媒としてのカーボン担持白金触媒(田中貴金属工業社製、白金含有量:46.5重量%、品名「TEC10E50E」)、焼成体(1)、ポリビニルピロリドン(東京化成社製、K30、重量平均分子量40,000)、ナフィオン分散溶液(富士フイルム和光純薬社製、品名「5%ナフィオン分散溶液 DE520 CSタイプ」)、2-プロパノール(和光純薬工業社製)を、この順番
で加えた後に、超音波ホモジナイザーSmurt NR-50Mを用いて超音波を出力40%に設定して30分間照射して、「インク2A」を調製した。具体的には、カーボン担持白金触媒(100.0mg)、ナフィオン分散溶液(276.0mg、ナフィオン固形分13.8mg)、焼成体(1)(48.6mg)、ポリビニルピロリドン(6.6mg)、2-プロパノール(4mL)と設定した。次に、この「インク2A」を、80℃にしたホップレートに固定した、カソードガス拡散層104であるカーボンペーパー(東レ社製、品名「TGP-H-060H」)に塗布し、インクの溶剤を乾燥させた。塗布量は1cmあたりの白金量が1.0mgとなるように調整した。このようにして、金属触媒である白金触媒(7.8mg)が塗布された、2.8×2.8cmのアノードガス拡散電極を「「GDE-Cathode-2」として作製した以外は、実施例1と同様にして、電解によるアンモニアの製造を実施した。アンモニア生成量は、0.41μmolであった。
【0115】
[比較例1]
カソード触媒層103を以下のように作製した。実施例1で作製した「インク1B」と同じ方法で作製し、同じ方法でカーボンペーパー(東レ社製、品名「TGP-H-060H」)に、インクの塗布量を調整して塗布することで、金属触媒である白金触媒(1.8mg)及び固形分としてのナフィオン(7.8mg)が塗布された、2.8×2.8cmのカソードガス拡散電極403を「GDE-Cathode-1C」として作製した以外は、実施例1と同様にして、電解によるアンモニアの製造を実施した。アンモニア生成量は、0.11μmolであった。
【0116】
実施例2と比較例1とのアンモニア生成量の比較において、4倍程度の向上があったことから、カソード触媒層用材料の群から選択した材料を使用した、本発明のガス拡散電極による改善の効果があったと推察している。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明のガス拡散電極は、窒素ガスと水を原料にして、アンモニアを電気化学的に合成するアンモニア製造装置の電極部材として利用でき、アンモニアの製造方法にも利用可能である。
【符号の説明】
【0118】
1 ガス拡散電極及び膜電極接合体の構成を記載した模式図
2 熱圧着後のガス拡散電極及び膜電極接合体の構成を記載した模式図2
3 ガス拡散電極及び膜電極接合体の構成を記載した模式図3
4 ガス拡散電極及び膜電極接合体の構成を記載した模式図4
5 ガス拡散電極及び膜電極接合体の構成を記載した模式図5
11 カソード触媒層用材料を含む触媒層
12 カソード電極触媒
100 窒素ガスと水を原料にして、アンモニアを電気化学的に合成する製造装置
101 電源装置
102 電解質膜(カチオン交換膜)
103 カソード触媒層
104 カソードガス拡散層
105 カソードセパレータ
106 カソード側流路(各種供給装置と接続)
107 カソード側流路(回収槽及び排気装置と接続)
200 窒素ガスと水を原料にして、アンモニアを電気化学的に合成する製造装置
203 アノード触媒層
204 アノードガス拡散層
205 アノードセパレータ
206 アノード側流路(各種供給装置と接続)
207 アノード側流路(回収槽及び排気装置と接続)
300 窒素ガスと水を原料にして、アンモニアを電気化学的に合成する製造装置
301 配管
302 電解質膜(アニオン交換膜)
303 カソード側の電解液槽
304 カソード側の電解液
313 アノード側の電解液槽
314 アノード側の電解液
305 窒素ガスのマスフローコントローラ
306 窒素ボンベのレギュレーター
307 窒素ボンベ
308 アンモニア捕集槽
309 ドラフト装置
401 カソード電極触媒とカソードガス拡散層によるガス拡散電極
402 カソード触媒層と電解質膜による触媒被覆膜
403 カソード触媒層とカソードガス拡散層によるガス拡散電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8