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特開2025-14599無線通信システム、送信機、無線通信方法、および無線通信用プログラム
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  • 特開-無線通信システム、送信機、無線通信方法、および無線通信用プログラム 図1
  • 特開-無線通信システム、送信機、無線通信方法、および無線通信用プログラム 図2
  • 特開-無線通信システム、送信機、無線通信方法、および無線通信用プログラム 図3
  • 特開-無線通信システム、送信機、無線通信方法、および無線通信用プログラム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014599
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】無線通信システム、送信機、無線通信方法、および無線通信用プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20250123BHJP
   H04L 27/00 20060101ALI20250123BHJP
   H04L 1/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H04J99/00 100
H04L27/00 Z
H04L1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117290
(22)【出願日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 仁
(72)【発明者】
【氏名】宮城 利文
(72)【発明者】
【氏名】栗山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】鬼沢 武
(72)【発明者】
【氏名】前原 文明
【テーマコード(参考)】
5K014
【Fターム(参考)】
5K014FA12
(57)【要約】
【課題】本開示は無線通信システムに関し、チャネルの帯域を拡張できる無線通信システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の無線通信システムは、複数のチャネルを用いて無線通信を行う送信機と受信機とを備える。送信機は、複数のチャネル全体として必要帯域が確保されているかを判定する。必要帯域が確保されているとは認められない場合に、複数のチャネルのそれぞれにおいて、ナイキストレート以下のレートでシンボルを多重化するナイキスト多重化処理を施しているか、ナイキストレートより高速なレートでシンボルを多重化するFTN多重化処理を施しているかを判定する。ナイキスト多重化処理が施されているチャネルに対しFTN多重化処理を施すように切り替える。もしくはFTN多重化処理が施されているチャネルの圧縮率を必要帯域が確保できる圧縮率に変更する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャネルを用いて無線通信を行う送信機と受信機とを備え、
前記送信機は、
前記複数のチャネル全体として必要帯域が確保されているかを判定する処理と、
前記必要帯域が確保されているとは認められない場合に、ナイキストレート以下のレートでシンボルを多重化するナイキスト多重化処理を施しているか、ナイキストレートより高速なレートでシンボルを多重化するFTN多重化処理を施しているかを前記複数のチャネルのそれぞれに対して判定する処理と、
前記ナイキスト多重化処理が施されているチャネルに対し前記FTN多重化処理を施すように切り替える切替処理、および前記FTN多重化処理が施されているチャネルの圧縮率を前記必要帯域が確保できる圧縮率に変更したうえで前記FTN多重化処理を再び施す変更処理の少なくとも一方を選択し実行する選択処理と、
前記切替処理または前記変更処理が実施されたチャネルを介してトラフィックを前記受信機に送信する処理と、
を実行するように構成される、無線通信システム。
【請求項2】
前記送信機は、前記選択処理においては、
前記ナイキスト多重化処理が施されているチャネルにおいて、前記必要帯域が確保できる多値数があるか否かを判定する処理をさらに実行するように構成され、
前記必要帯域を確保できる多値数がある場合に、現行の多値数を該多値数に変更し、
前記必要帯域を確保できる多値数がない場合に、前記切替処理を実行する請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記送信機は、前記複数のチャネルの通信品質に応じて、前記必要帯域が確保可能な範囲で前記レートを遅くするように圧縮率を変更する処理をさらに実行する、請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記送信機は、前記FTN多重化処理が施されているチャネル同士および前記ナイキスト多重化処理が施されているチャネル同士をチャネル多重化する処理をさらに実行するように構成される、請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
複数のチャネルを用いて受信機と無線通信を行う送信機であって、
前記複数のチャネル全体として必要帯域が確保されているかを判定する処理と、
前記必要帯域が確保されているとは認められない場合に、ナイキストレート以下のレートでシンボルを多重化するナイキスト多重化処理を施しているか、ナイキストレートより高速なレートでシンボルを多重化するFTN多重化処理を施しているかを前記複数のチャネルのそれぞれに対して判定する処理と、
前記ナイキスト多重化処理が施されているチャネルに対し前記FTN多重化処理を施すように切り替える切替処理、および前記FTN多重化処理が施されているチャネルの圧縮率を前記必要帯域が確保できる圧縮率に変更したうえで前記FTN多重化処理を再び施す変更処理の少なくとも一方を選択し実行する選択処理と、
前記切替処理または前記変更処理が実施されたチャネルを介してトラフィックを前記受信機に送信する処理と、
を実行するように構成される、送信機。
【請求項6】
前記選択処理においては、
前記ナイキスト多重化処理が施されているチャネルにおいて、前記必要帯域が確保できる多値数があるか否かを判定する処理をさらに実行するように構成され、
前記必要帯域を確保できる多値数がある場合に、現行の多値数を該多値数に変更し、
前記必要帯域を確保できる多値数がない場合に、前記切替処理を実行する、請求項5に記載の送信機。
【請求項7】
複数のチャネルを用いて受信機と無線通信を行う送信機が、
前記複数のチャネル全体として必要帯域が確保されているかを判定することと、
前記必要帯域が確保されているとは認められない場合に、ナイキストレート以下のレートでシンボルを多重化するナイキスト多重化処理を施しているか、ナイキストレートより高速なレートでシンボルを多重化するFTN多重化処理を施しているかを前記複数のチャネルのそれぞれに対して判定することと、
前記ナイキスト多重化処理が施されているチャネルに対し前記FTN多重化処理を施すように切り替える切替処理、および前記FTN多重化処理が施されているチャネルの圧縮率を前記必要帯域が確保できる圧縮率に変更したうえで前記FTN多重化処理を再び施す変更処理の少なくとも一方を選択し実行することと、
前記切替処理または前記変更処理が実施されたチャネルを介してトラフィックを前記受信機に送信することと、
を含む、無線通信方法。
【請求項8】
複数のチャネルを用いて受信機と無線通信を行う送信機に実行させる無線通信用プログラムであって、
送信機に、
前記複数のチャネル全体として必要帯域が確保されているかを判定する処理と、
前記必要帯域が確保されているとは認められない場合に、ナイキストレート以下のレートでシンボルを多重化するナイキスト多重化処理を施しているか、ナイキストレートより高速なレートでシンボルを多重化するFTN多重化処理を施しているかを前記複数のチャネルのそれぞれに対して判定する処理と、
前記ナイキスト多重化処理が施されているチャネルに対し前記FTN多重化処理を施すように切り替える切替処理、および前記FTN多重化処理が施されているチャネルの圧縮率を前記必要帯域が確保できる圧縮率に変更したうえで前記FTN多重化処理を再び施す変更処理の少なくとも一方を選択し実行する選択処理と、
前記切替処理または前記変更処理が実施されたチャネルを介してトラフィックを前記受信機に送信する処理と、
を実行させるプログラムを含む、無線通信用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、FTN(Faster Than Nyquist)伝送を用いる無線通信システム、送信機、無線通信方法、および無線通信用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ナイキストレート以下のレートでシンボルを多重する第1の無線リソース領域と、ナイキストレートより高速なレートでシンボルを多重する第2の無線リソース領域とに信号を時間分割多重する技術が開示されている。これにより、第1の無線リソース領域への干渉の影響を低減しながらFTNによる大容量伝送を実現することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-164257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の方法では、圧縮率が固定であるためチャネルの帯域を拡張できない。
【0005】
本開示は上述の問題を解決するため、チャネルの帯域を拡張できる無線通信システムを提供することを第一の目的とする。
【0006】
また本開示は、チャネルの帯域を拡張できる送信機を提供することを第二の目的とする。
【0007】
また本開示は、チャネルの帯域を拡張できる無線通信方法を提供することを第三の目的とする。
【0008】
また本開示は、チャネルの帯域を拡張できる無線通信用プログラムを提供することを第四の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第一の態様は、
複数のチャネルを用いて無線通信を行う送信機と受信機とを備え、
前記送信機は、
前記複数のチャネル全体として必要帯域が確保されているかを判定する処理と、
前記必要帯域が確保されているとは認められない場合に、ナイキストレート以下のレートでシンボルを多重化するナイキスト多重化処理を施しているか、ナイキストレートより高速なレートでシンボルを多重化するFTN多重化処理を施しているかを前記複数のチャネルのそれぞれに対して判定する処理と、
前記ナイキスト多重化処理が施されているチャネルに対し前記FTN多重化処理を施すように切り替える切替処理、および前記FTN多重化処理が施されているチャネルの圧縮率を前記必要帯域が確保できる圧縮率に変更したうえで前記FTN多重化処理を再び施す変更処理の少なくとも一方を選択し実行する選択処理と、
前記切替処理または前記変更処理が実施されたチャネルを介してトラフィックを前記受信機に送信する処理と、
を実行するように構成される、無線通信システムであることが好ましい。
【0010】
また第二の態様は、
複数のチャネルを用いて受信機と無線通信を行う送信機であって、
前記複数のチャネル全体として必要帯域が確保されているかを判定する処理と、
前記必要帯域が確保されているとは認められない場合に、ナイキストレート以下のレートでシンボルを多重化するナイキスト多重化処理を施しているか、ナイキストレートより高速なレートでシンボルを多重化するFTN多重化処理を施しているかを前記複数のチャネルのそれぞれに対して判定する処理と、
前記ナイキスト多重化処理が施されているチャネルに対し前記FTN多重化処理を施すように切り替える切替処理、および前記FTN多重化処理が施されているチャネルの圧縮率を前記必要帯域が確保できる圧縮率に変更したうえで前記FTN多重化処理を再び施す変更処理の少なくとも一方を選択し実行する選択処理と、
前記切替処理または前記変更処理が実施されたチャネルを介してトラフィックを前記受信機に送信する処理と、
を実行するように構成されることが好ましい。
【0011】
また第三の態様は、
複数のチャネルを用いて受信機と無線通信を行う送信機が、
前記複数のチャネル全体として必要帯域が確保されているかを判定することと、
前記必要帯域が確保されているとは認められない場合に、ナイキストレート以下のレートでシンボルを多重化するナイキスト多重化処理を施しているか、ナイキストレートより高速なレートでシンボルを多重化するFTN多重化処理を施しているかを前記複数のチャネルのそれぞれに対して判定することと、
前記ナイキスト多重化処理が施されているチャネルに対し前記FTN多重化処理を施すように切り替える切替処理、および前記FTN多重化処理が施されているチャネルの圧縮率を前記必要帯域が確保できる圧縮率に変更したうえで前記FTN多重化処理を再び施す変更処理の少なくとも一方を選択し実行することと、
前記切替処理または前記変更処理が実施されたチャネルを介してトラフィックを前記受信機に送信することと、
を含む、無線通信方法であることが好ましい。
【0012】
また第四の態様は、
複数のチャネルを用いて受信機と無線通信を行う送信機に実行させる無線通信用プログラムであって、
送信機に、
前記複数のチャネル全体として必要帯域が確保されているかを判定する処理と、
前記必要帯域が確保されているとは認められない場合に、ナイキストレート以下のレートでシンボルを多重化するナイキスト多重化処理を施しているか、ナイキストレートより高速なレートでシンボルを多重化するFTN多重化処理を施しているかを前記複数のチャネルのそれぞれに対して判定する処理と、
前記ナイキスト多重化処理が施されているチャネルに対し前記FTN多重化処理を施すように切り替える切替処理、および前記FTN多重化処理が施されているチャネルの圧縮率を前記必要帯域が確保できる圧縮率に変更したうえで前記FTN多重化処理を再び施す変更処理の少なくとも一方を選択し実行する選択処理と、
前記切替処理または前記変更処理が実施されたチャネルを介してトラフィックを前記受信機に送信する処理と、
を実行させるプログラムを含むであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本開示の第一から第四の態様によれば、チャネルの帯域を拡張できる無線通信システム、送信機、無線通信方法、および無線通信用プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施の形態1に係る、無線通信システムの構成例である。
図2】本開示の実施の形態1に係る、無線通信システムの詳細な構成例を示すブロック図である。
図3】本開示の実施の形態1に係る、送信機による伝送手法決定処理を説明する模式図である。
図4】本開示の実施の形態1に係る、送信機が実行する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施の形態について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0016】
実施の形態1
図1は、本開示の実施の形態1に係る、無線通信システム100の構成例である。無線通信システム100は、送信機110および受信機120を備える。送信機110および受信機120は、複数のチャネル10を用いて無線通信を行う。
【0017】
必要帯域が確保可能な場合において、送信機110は、ナイキストレート以下のレートでシンボルを多重化する処理(以下、ナイキスト多重化処理と称する)を優先的に実行する。さらに、ナイキスト多重化処理が施されたチャネル10を介して、トラフィックを受信機120に送信する。これにより、シンボル間干渉を避けてトラフィックを伝送することができる。
【0018】
一方、ナイキスト多重化処理では必要帯域が確保できない場合に、送信機110は、ナイキストレートより高速なレートで、所定の圧縮率となるようにシンボルを多重化する処理(以下、FTN多重化処理と称する)を実行する。すなわち、FTNによるシンボルの多重化を行う。さらに、送信機110はFTN多重化処理が施されたチャネル10を介して、トラフィックを受信機120に送信する。これにより、信号の高圧縮化が実現できる。
【0019】
なお、FTN多重化処理が施されたチャネル同士、およびナイキスト多重化処理が施されたチャネル同士は、それぞれに対して決定された多重数に従い、送信機110によってチャネル多重化されてもよい。これにより大容量の伝送が可能となる。
【0020】
受信機120は、送信機110からトラフィックを受信する。
【0021】
図2は、本開示の実施の形態1に係る、無線通信システム100の詳細な構成例を示すブロック図である。送信機110において、インタフェース部111は、上位レイヤまたは他の装置から、トラフィックを受信する。異常検知部117は、チャネル10の通信品質に基づきチャネル故障を検知する。
【0022】
伝送手法決定部112は、複数のチャネル10全体として必要帯域が確保されているかを判定する判定処理を行う。さらに、必要帯域が確保されていない場合に、ナイキスト多重化処理を施すか、FTN多重化処理を施すかを複数のチャネル10のそれぞれにつき決定する伝送手法決定処理を実行する。
【0023】
切替部113は、第一信号処理部114および第二信号処理部115の少なくとも一方へ、トラフィックを出力する。
【0024】
第一信号処理部114は、上述のナイキスト多重化処理を実行する。第二信号処理部115は、伝送手法決定処理により決定された圧縮率に基づき、上述のFTN多重化処理を実行する。送信部116は、ナイキスト多重化処理またはFTN多重化処理が施されたチャネルによりトラフィックを送信する。
【0025】
受信機120において、受信部121は送信機110から送信されたトラフィックを受信する。第一信号処理部122は、ナイキスト多重化処理の施されたチャネル由来のトラフィックに対して信号処理を実行する。第二信号処理部123は、FTN多重化処理の施されたチャネル由来のトラフィックに対して信号処理を実行する。インタフェース部124は、上位レイヤまたは他の装置にトラフィックを送信する。
【0026】
図3は、本開示の実施の形態1に係る、送信機110による伝送手法決定処理を説明する模式図である。送信機110は、7つのチャネル10すべてに対して変調方式を16QAMとするナイキスト多重化処理を施している。複数のチャネル10のそれぞれは150Mbpsの帯域を有している。これにより、複数のチャネル10全体として必要帯域1Gbpsが確保されている。なお、チャネル10の数、複数のチャネル10それぞれの帯域、および必要帯域の値は一例である。
【0027】
ところが、第1チャネル11および第2チャネル12において故障が発生し、チャネル10全体として必要帯域が確保できなくなる。
【0028】
伝送手法決定処理においては、ナイキスト多重化処理における変調多値数(以下、多値数と称する)の引き上げにより必要帯域が確保可能であると判断される場合は、ナイキスト多重化処理が採用される。
【0029】
図3の例において、送信機110は、16QAMから64QAMへと多値数を引き上げている。その結果、故障したチャネル10を除くチャネル10のそれぞれにおいて、帯域が200Mbpsに拡張される。これにより、チャネル10全体として1Gbps以上の帯域が維持される。
【0030】
ところが、今度は第3チャネル13において故障が発生し、チャネル10全体として必要帯域が確保できなくなる。
【0031】
伝送手法決定処理においては、ナイキスト多重化処理における多値数の引き上げでは必要帯域が確保できない場合に、FTN多重化処理が採用される。
【0032】
なお、多値数の引き上げにより必要帯域が確保できない場合とは、現行の多値数以上に高い多値数が存在しない場合を含む。また現行以上に高い多値数はあるが、C/N等の制約で変更できない場合を含む。さらには、現行以上に高い多値数に変更可能であるが、該多値数に変更しても複数のチャネル10全体として必要帯域が確保できない場合を含む。
【0033】
図3の例において、送信機110は、ナイキスト多重化処理からFTN多重化処理へシンボル多重化の手法を切り替えている。そこでの圧縮率は2.5、変調方式は8PSKとしている。その結果、故障したチャネル10を除く複数のチャネル10のそれぞれにおいて、帯域が250Mbpsに拡張される。ナイキスト多重化処理の範囲では対応できなくなった場合でも、FTN多重化処理に切り替えることで必要帯域が確保される。
【0034】
ところが、今度は第4チャネル14において故障が発生し、チャネル10全体として必要帯域が確保できなくなる。
【0035】
伝送手法決定処理においては、チャネル10全体として必要帯域が確保できるように、FTN多重化処理における圧縮率を決定する。
【0036】
図3の例において、送信機110は、圧縮率を2.5から3.5に変更している。その結果、故障したチャネル10を除く複数のチャネル10のそれぞれにおいて、帯域が350Mbpsに拡張される。これにより、チャネル10全体として1Gbps以上の帯域が確保される。
【0037】
このように、本開示では、必要帯域が確保可能な場合はナイキスト多重化処理を優先的に行って高品質な伝送を実現する。必要帯域を確保する必要がある場合に、ナイキスト多重化処理からFTN多重化処理へ切り替える。FTN多重化処理においては、チャネル10全体として必要帯域が確保できるように圧縮率が決定される。これにより、必要帯域を確保するための最適制御を実現することができる。
【0038】
なお、図3では、チャネル10に故障が発生した場合を例に送信機110が実行する処理を説明した。しかしながら周波数利用圧縮率向上のために、意図的にチャネル10の数を減らす場合においても、上述の処理は有効である。すなわち周波数利用効率を向上させることができ、消費電力の低減に貢献することができる。
【0039】
図4は、本開示の実施の形態1に係る、送信機110が実行する処理のフローチャートである。まず、判定処理を実行する(ステップS01)。必要帯域が確保されていると認められる場合、複数のチャネル10のそれぞれに対して、ナイキスト多重化処理が施されているか、FTN多重化処理が施されているかを判定する(ステップS02)。ナイキスト多重化処理が施されているチャネルには、現行通りナイキスト多重化処理を施す(ステップS03)。FTN多重化処理が施されているチャネルには、現行通りFTN多重化処理を施す(ステップS04)。さらに、トラフィックを受信機120に送信する(ステップS05)。
【0040】
一方、必要帯域が確保されているとは認められない場合も、複数のチャネル10のそれぞれに対して、ナイキスト多重化処理が施されているか、FTN多重化処理が施されているかを判定する(ステップS06)。ナイキスト多重化処理が施されているチャネル10においては、必要帯域が確保できる多値数があるか否かを判定する(ステップS07)。必要帯域を確保できる多値数がある場合は、現行の多値数を該多値数に変更する(ステップS08)。さらに、ステップS03に進む。
【0041】
一方、必要帯域を確保できる多値数がない場合は、FTN多重化処理における圧縮率を初期値に設定する(ステップS09)。さらに、ステップS04に進む。これにより、ナイキスト多重化処理からFTN多重化処理への切り替えが実施される。
【0042】
一方、ステップS06においてFTN多重化処理が施されていると判定されたチャネル10においては、必要帯域が確保できる圧縮率があるか否かをさらに判定する(ステップS10)。必要帯域が確保できる圧縮率がある場合、現行の圧縮率を該圧縮率に変更する(ステップS11)。さらに、ステップS04に進む。一方、必要帯域が確保できる圧縮率が無い場合は、現行の圧縮率を変更することなく、そのままステップS04に進む。
【0043】
なお、送信機110および受信機120が行う処理は、CPUとメモリを備え、メモリにプログラムを記憶したコンピュータを用いて、通信用プログラムで実行するようにしてもよい。もしくはFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を用いて、通信用プログラムで実行するようにしてもよい。尚、通信用プログラムは、記憶媒体に記録して提供されてもよいし、ネットワークを通して提供されてもよい。
【0044】
以上説明したように、本開示によれば、チャネルの帯域を拡張できる無線通信システム、送信機、無線通信方法、および無線通信用プログラムを提供できる。
【0045】
〈変形例1〉
なお、必要帯域が確保可能な範囲であれば、複数のチャネル10の通信品質に応じて、送信機110はシンボル多重化のレートを遅くするように圧縮率を変更してもよい。これにより、FTN多重化処理が施されたチャネル10におけるシンボル間干渉を低減することができる。
【0046】
〈変形例2〉
上述では、必要帯域を確保できる多値数がない場合に、ナイキスト多重化処理からFTN多重化処理への切替えを行うことを述べた。しかしながら、必要帯域を確保できる多値数がある場合であっても、送信機110においてナイキスト多重化処理からFTN多重化処理への切替えを行ってもよい。必要帯域が確保されていないと認められる場合に素早くFTN多重化処理へ切り替えることにより、迅速な対応が可能となる。すなわち送信機110は、ナイキスト多重化処理が施されているチャネルに対し、FTN多重化処理へと切り替える処理、およびFTN多重化処理が施されているチャネルの圧縮率を必要帯域が確保できる圧縮率に変更する処理の少なくとも一方を選択し実行すればよい。
【0047】
〈変形例3〉
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。
【符号の説明】
【0048】
10 チャネル、11 第1チャネル、12 第2チャネル、13 第3チャネル、14 第4チャネル、100 無線通信システム、110 送信機、111 インタフェース部、112 伝送手法決定部、113 切替部、114 第一信号処理部、115 第二信号処理部、116 送信部、117 異常検知部、120 受信機、121 受信部、122 第一信号処理部、123 第二信号処理部、124 インタフェース部
図1
図2
図3
図4