(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025146363
(43)【公開日】2025-10-03
(54)【発明の名称】軟性膝装具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20250926BHJP
【FI】
A61F5/01 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047094
(22)【出願日】2024-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】和田 親宗
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕晃
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB11
4C098BC13
4C098BC18
4C098BC38
4C098BC45
4C098BD20
(57)【要約】
【課題】変形性膝関節症患者の膝関節を用いた動作を安定して補助可能な軟性膝装具を提供する。
【解決手段】人の膝に装着されて膝関節の動作を補助する軟性膝装具10であって、膝の上下を全周に亘って覆う樹脂製の温度依存性シート11を備え、温度依存性シート11は、25℃以上35℃以下の所定の温度でガラス転移する。温度依存性シート11に複数の貫通孔19が形成され、温度依存性シート11の開孔率は0.5%以上15.0%以下であるのが通気性確保の観点で好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の膝に装着されて膝関節の動作を補助する軟性膝装具であって、
前記膝の上下を全周に亘って覆う樹脂製の温度依存性シートを備え、該温度依存性シートは、25℃以上35℃以下の所定の温度でガラス転移することを特徴とする軟性膝装具。
【請求項2】
前記温度依存性シートには、複数の貫通孔が形成され、該温度依存性シートの開孔率は、0.5%以上15.0%以下であることを特徴とする請求項1記載の軟性膝装具。
【請求項3】
前記膝に密接するメッシュシートを更に備えることを特徴とする請求項1又は2記載の軟性膝装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の膝部に装着される軟性膝装具に関する。
【背景技術】
【0002】
変形性膝関節症は、膝関節軟骨の摩耗と変形が原因で、関節の変形や歩行障害が生じる疾患である。日本における変形性膝関節症の推定患者数及び推定有症状患者数はそれぞれ、2530万人及び約800万人となっている。また、要介護や要支援が必要となる原因で最も多いのは、変形性膝関節症を含む変形性関節症である。変形性膝関節症は、関節軟骨の老化により発症することが多く、関節軟骨が年齢とともに弾力性を失い、遣い過ぎにより擦り減り、関節が変形して発症する。
【0003】
変形性膝関節症を患うと、軟骨の擦り減りによって膝が不安定になったり、痛みが生じたりして、歩行が困難になる。変形性膝関節症の保存療法として、特許文献1、2等に開示されているような膝装具を用いる療法が臨床現場で広く採用されている。膝装具は軟性膝装具と硬性膝装具に大別される。軟性膝装具は硬性膝装具と比較して、膝の支持性は劣るが装着性は優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-166636号公報
【特許文献2】特開2022-113414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の発明者らは既存の膝装具についてその効果や継続使用率等の調査を行った。その結果、既存の硬性膝装具は、変形性膝関節症の症状が改善され効果的ではあるが、所有率や継続使用率が低いことが判明し、既存の軟性膝装具は、所有率や継続使用率は高いが、作用機序が不明確で研究が必要であることが判明した。
この調査結果から、本発明の発明者らは、所有率や継続使用率が高い軟性膝装具で、立ち上がり動作、歩行動作、階段昇降動作等を効果的に補助できるものが、変形性膝関節症患者にとって有益であるとの結論に至った。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、変形性膝関節症患者の膝関節を用いた動作を安定して補助可能な軟性膝装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る軟性膝装具は、人の膝に装着されて膝関節の動作を補助する軟性膝装具であって、前記膝の上下を全周に亘って覆う樹脂製の温度依存性シートを備え、該温度依存性シートは、25℃以上35℃以下の所定の温度でガラス転移する。
【発明の効果】
【0008】
従来の軟性膝装具は、一般的に、
図7(A)、(B)に示すように、伸縮性及び柔軟性のある樹脂製のシート100、シート100にそれぞれ取り付けられた面状ファスナ雄部101及び面状ファスナ雌部102を具備する。この種の軟性膝装具は、シート100が膝に巻き付けられた状態で面状ファスナ雄部101が面状ファスナ雌部102に固定させて膝に装着される。面状ファスナ雄部101を面状ファスナ雌部102に固定する位置を調整することで、軟性膝装具の膝の装着圧力の調整ができる。
図7(A)、(B)に示す例では、左右方向に間隔を空けて縦長の支柱103、104が設けられている。
【0009】
膝装具は、装着圧力が大きすぎると疼痛や血流阻害等の二次的な障害を招く。一方、装着圧力が小さすぎると筋の柔軟性促進や筋出力向上の効果が小さくなる。
本願の発明者らは、膝装具の装着圧力について、公開されている文献の調査等を含めた研究を重ね、その結果、装着圧力が30mmHg以上40mmHg以下の範囲で、二次的な障害を安定して防止した上で膝装具装着による効果を安定して享受できるとの結論に至った。
【0010】
そこで、変形性膝関節症患者31名(平均年齢83.9歳、年齢の標準±7.3歳)を対象に、従来の軟性膝装具(
図7に示す設計のもの)を膝に装着した際の装着圧力を計測する実験を行った。装着圧力の計測には、5つの圧力センサを備える株式会社ケープの携帯型接触圧力測定器PalmQ(登録商標)を利用した。5つの圧力センサは中央の1つを中心に上下左右にそれぞれ1つずつ圧力センサが配置されていた。実験では中央の圧力センサが膝蓋骨中心から5cm上側に位置するようにした。5つの圧力センサの計測値の平均は、
図8に示すようになった。
【0011】
図8において、OA(Standard)は患者自身が適度な力で(膝が適度に圧迫されるように)軟性膝装具を自分の膝に装着した場合の計測値の平均を示し、OA(Tight)は患者自身が強い力で(膝が強く圧迫されるように)軟性膝装具を自分の膝に装着した場合の計測値の平均を示し、PT(Tight)は理学療法士が強い圧力で軟性膝装具を患者の膝に装着した場合の計測値の平均を示す。
【0012】
計測結果から、患者自身が適度な力で軟性膝装具を装着した場合はもとより、患者自身が強い力で軟性膝装具を装着した場合でも、装着圧力の平均値が30mmHg未満となった。従って、患者自身が軟性膝装具を膝に装着する場合、従来の軟性膝装具では装着圧力が不足する傾向があると言える。
【0013】
これに対し、膝の上下を全周に亘って覆う樹脂製の温度依存性シートを備え、温度依存性シートが、25℃以上35℃以下の所定の温度(即ち、室温以上人の体温以下の温度)でガラス転移する本発明に係る軟性膝装具を使用すれば、変形性膝関節症患者自身が、自身の膝への装着により、安定して軟性膝装具の装着圧力を30mmHg以上40mmHg以下の範囲にできることを検証した。従って、本発明に係る軟性膝装具によれば、変形性膝関節症患者の膝関節を用いた動作を安定して補助可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A)、(B)はそれぞれ、本発明の一実施の形態に係る軟性膝装具の表側の説明図及び裏側の説明図である。
【
図2】同軟性膝装具を膝に装着した様子を示す説明図である。
【
図3】装着圧力を計測した結果を示す説明図である。
【
図4】立ち上がり動作時の足圧を計測した結果を示す説明図である。
【
図5】立ち上がり動作時の体幹前傾角度を計測した結果を示す説明図である。
【
図6】歩行動作時の外側への加速度体幹前傾角度を計測した結果を示す説明図である。
【
図7】(A)、(B)はそれぞれ、従来の軟性膝装具の表側の説明図及び裏側の説明図である。
【
図8】従来の軟性膝装具装着時の装着圧力を計測した結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)、
図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る軟性膝装具10は、人の膝Pに装着されて膝関節の動作を補助する膝装具であって、膝Pの上下を全周に亘って覆う樹脂製の温度依存性シート11を備えている。
【0016】
軟性膝装具10は、
図1(A)、(B)、
図2に示すように、中央に矩形状の開口12が形成された樹脂シート13を表側(膝Pに接しない側)に、メッシュシート14を裏側(膝Pに接する側)にそれぞれ備えている。
樹脂シート13の開口12には柔軟性及び伸縮性を有するメッシュシート15が取り付けられている。メッシュシート15は樹脂シート13と比較して通気性に優れている。軟性膝装具10が膝Pに装着された状態で、メッシュシート15は膝Pの後側(膝裏)に配される。
【0017】
開口12の左右にはそれぞれ、全体が樹脂シート13によって覆われた、上下方向に長い支柱16、17が設けられている。支柱16、17は、膝Pの関節の安定化を担うものであり、樹脂又は金属によって形成できる。
温度依存性シート11は、樹脂シート13及びメッシュシート15等からなる表面層18と、メッシュシート14との間に配されている。
【0018】
表面層18、温度依存性シート11及びメッシュシート15は大きさ及び形状が略同一である。表面層18、温度依存性シート11及びメッシュシート15(軟性膝装具10)は、
図1(A)、(B)に示すように、広げられた状態で、左側の上下及び右側の上下がそれぞれ外側(即ち、左側は左に、右側は右に)に突出している。これは、軟性膝装具10を膝Pに装着した際、
図2に示すように、膝Pの前側中央(膝蓋骨の部分)が露出し、膝P及びその周囲の膝Pの露出部分以外の領域全体(膝Pの露出部分の上側及び下側を含む)に軟性膝装具10を接触させるためである。
【0019】
樹脂シート13、温度依存性シート11及びメッシュシート14は、それぞれ外縁全体が糸によって縫い付けられている。
また、本実施の形態では、樹脂シート13全体が温度依存性シート11に圧着され(接着剤によって樹脂シート13全体を温度依存性シート11に貼り付けてもよい)、樹脂シート13及び温度依存性シート11は一体化されている。
【0020】
樹脂シート13は柔軟性及び伸縮性を有していればよく、その素材に特に限定はない。例えば、クロロプレン、ポリウレタン、ポリエステル及びナイロンからなる群の一つあるいは複数を樹脂シート13の素材に採用できる。本実施の形態では、樹脂シート13を伸縮性に優れたものにするという観点から樹脂シート13の素材としてクロロプレンを採用している。
【0021】
温度依存性シート11は、折り曲げたり伸ばしたりすることが可能な(柔軟性及び伸縮性を有する)樹脂であり、25℃以上35℃以下(好ましくは27℃以上30℃以下)の所定の温度(以下、当該温度を「T℃」と記載することもある)でガラス転移する。即ち、温度依存性シート11のガラス転移点はT℃である。本実施の形態では、温度依存性シート11が、ポリオレフィン系ポリマーを発砲させた材料によって作製された厚み0.2mm~1.0mmのシートである。
【0022】
温度依存性シート11は、T℃を超える温度(ガラス転移点より高い温度)になると、T℃未満の温度の状態と比較して、柔軟性が増し、引っ張る、曲げる、捻るといった動きに応じて容易に変形するようになる。軟性膝装具10を膝Pに装着すると、膝Pの熱が膝Pに密着しているメッシュシート14を介して温度依存性シート11に伝わる、これによって、温度依存性シート11はガラス転移点より高温になり、容易に変形する状態になる。
【0023】
そのため、軟性膝装具10は、膝Pに装着されることによって、膝Pに応じた形状となって、全体が膝Pに密着するようになる。従って、変形性膝関節症患者は、自身の膝Pへの軟性膝装具10の装着によって、軟性膝装具10の膝Pに対する装着圧力を、安定して、30mmHg以上40mmHg以下の範囲にすることができる。
また、本実施の形態において、温度依存性シート11は膝Pに装着したままの状態(つまり、T℃を超える温度の状態)で、時間の経過により徐々に記憶したもとの形状(本実施の形態では平面状)に戻るという形状記憶性を備えている。
【0024】
また、温度依存性シート11には、
図1(B)に示すように、通気性確保のために複数の貫通孔19が形成されている。温度依存性シート11の裏側にメッシュシート14を設けているのも通気性確保が主な目的である。
本実施の形態では、各貫通孔19が直径0.5mm~3.0mmの円形であり、貫通孔19が縦に等間隔、横に等間隔に形成されている。温度依存性シート11の開孔率は0.5%以上15.0%以下である。これは、開孔率が0.5%未満であると、通気性が低くなり軟性膝装具10の利用者に不快感を与え、開孔率が15.0%を超えると、温度依存性シート11が膝Pを安定させる力が不足する傾向が生じやすいためである。
【0025】
また、軟性膝装具10には、
図1(A)、(B)に示すように、軟性膝装具10を正面視して表側の左側に面状ファスナ雌部20が、軟性膝装具10を背面視して裏側の左側上下にそれぞれ面状ファスナ雄部21、22が設けられている。利用者は、膝Pに軟性膝装具10を巻き付け、面状ファスナ雄部21、22を面状ファスナ雌部20に固定して、軟性膝装具10を膝Pに装着する。
【実施例0026】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実験について説明する。
<装着圧力>
変形性膝関節症患者20名(平均年齢84.0歳、年齢の標準±8.0歳、12名がGrade2、8名がGrade3)を対象に、変形性膝関節症患者(以下、単に「患者」とも言う)に、比較例に係る軟性膝装具(
図7に示す従来品と同様のもの、以下、単に「比較例」とも言う)及び
図1(A)、(B)に示す実施例に係る軟性膝装具(以下、単に「実施例」とも言う)を自身の膝に強い力で装着させ、装着圧力を計測した。装着圧力の計測は、従来の軟性膝装具に対して実施した
図8に計測結果を示す計測と同様の条件で(同じ測定器を膝の同じ部分に配置して)行った。
【0027】
なお、上記Grade2及び3は(後述するGrade4も)、変形性膝関節症のK-L分類による重症度を示す(以下も同様)。
計測結果(5つの圧力センサの計測値の平均)を
図3に示す。
図3において、「existing orthosis」は比較例を、「development orthosis」は実施例をそれぞれ示す(以下も同様)。
【0028】
<立ち上がり動作時の足圧>
患者10名(平均年齢75.9歳、年齢の標準±11.6歳、1名がGrade2、7名がGrade3、2名がGrade4)を対象に、比較例を装着した状態及び実施例を装着した状態のそれぞれで、立ち上がり動作を行わせ、患者の健側の足圧(足裏に作用する荷重)を計測した。変形性膝関節症の患者は健側の足圧が大きくなり、患側の足圧が小さくなるという傾向がある。よって、軟性膝装具の装着によって、健側の足圧が小さくなり、患側の足圧が大きくなる結果が好ましい。
【0029】
足圧の計測にはモニタインソールPIT(リーフ株式会社のRM-P100)を使用した。患者の健側の足圧の計測は、足裏の母趾(greate toe)、母趾球(greate toe ball)、前足中央(forefoot center)、小趾球(little toe ball)、土踏まず(arch of the foot)、踵外側(lateral heel)、踵(heel)の7箇所とした。
【0030】
患者の立ち上がり動作開始前の姿勢は、下腿部が鉛直となり、両足の距離が両肩峰間の距離と等しくなるように足を置き、股関節と膝関節の中点が椅子座面の先端に位置する姿勢であった。座位中、患者は前方を見るようにし、上肢は前胸部で組ませた。立ち上がり動作は至適速度とし、立ち上がり動作中に足を動かさず、上肢を使用しないようにさせた。各患者、軟性膝装具ごとに5回(合計10回)立ち上がり動作を行わせた。
【0031】
立ち上がり動作における最大値の計測結果(患者10名それぞれの最大値を平均した値)を、
図4に示す。
図4において、各箇所の計測結果は、左側が比較例を、右側が実施例をそれぞれ示す。
図4に示す計測結果より、土踏まず及び踵の2箇所は実施例が比較例よりも足圧が大きくなったが、残りの5箇所は実施例が比較例よりも足圧が小さくなった。
【0032】
<立ち上がり動作時の体幹前傾角度>
立ち上がり動作時の足圧を計測した上記実験と同じ患者に対し、同じ条件で、立ち上がり動作を10回させた(実施例装着時及び比較例装着時それぞれで5回行わせた)。患者が3回目の立ち上がり動作において殿部が座面から離れる時の体幹前傾角度(肩峰及び大転子を結ぶ線と大転子及び大腿骨外側上顆を結ぶ線がなす角度)をカメラで患者を撮像して計測した。
【0033】
計測結果(患者10名の平均値)を
図5に示す。
図5において左側が比較例の計測結果を、右側が実施例の計測結果をそれぞれ示す。
計測の結果、比較例装着時の体幹前傾角度が81.8度で、実施例装着時の体幹前傾角度が84.9度であった。通常、体幹前傾角度は98.9度で十分と言われていることを考慮すると、実施例が比較例より効果が高いことが分かった。
【0034】
<歩行動作時の外側への加速度体幹前傾角度>
患者20名(平均年齢84.0歳、年齢の標準±8.0歳、12名がGrade2、8名がGrade3)を対象に、比較例装着時と実施例装着時で、lateral thrustの度合いを3軸加速度センサ(住友電気工業株式会社のQ’s TAG)を使用して計測した。
ここで、lateral thrustは、膝関節の外側への動揺性の出現によって歩行時の膝関節の外側が側方に押し出される現象を意味し、変形性膝関節症の患者にしばしば現れる現象である。
【0035】
立位の患者の患側の足において軟部組織の影響が少ない腓骨頭部に床面と平行に面状ファスナで加速度センサを固定した。歩行は至適速度での自由歩行とし、患者に10mの距離を1往復させた。得られた加速度センサの値は、上下方向(+:上方、-:下方)、側方方向(+:外側、-:内側)、前後方向(+:前方、-:後方)の加速度波形とし、立脚初期の急激な外側方向への加速度の変位をlateral thrustとし、その最大値を計測結果として採用した。
【0036】
計測結果(患者20名の平均値)を
図6に示す。
図6に示す計測結果より、実施例装着は、比較例装着に比べて、lateral thrustを軽減できることが確認された。
【0037】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、軟性膝装具に貫通孔を形成しなくてもよい。
また、膝に密接するメッシュシートは無くてもよい。軟性膝装具が樹脂シート、温度依存性シート及びメッシュシートを有する場合、樹脂シート、温度依存性シート及びメッシュシートのそれぞれの外縁は糸によって縫い付ける必要はない。例えば、接着剤を用いて各外縁を接着してもよい。
10:軟性膝装具、11:温度依存性シート、12:開口、13:樹脂シート、14:メッシュシート、15:メッシュシート、16:支柱、17:支柱、18:表面層、19:貫通孔、20:面状ファスナ雌部、21:面状ファスナ雄部、22:面状ファスナ雄部、P:膝