(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025147615
(43)【公開日】2025-10-07
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20250930BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047952
(22)【出願日】2024-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】時田 佑太
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE11
4C601LL25
(57)【要約】
【課題】多関節アームに支持されたモニタを備えた超音波診断装置において、多関節アームおよびモニタをロックする機構を簡易なものとする。
【解決手段】ロック機構は、通常時は多関節アームの第1リンク42に収容され、ロック時には進出して起立するロックレバー68を有する。ロックレバー68のアームベース係合ピン80と、ベーススタブ94のアームベース係合ノッチ96を係合して、アームベース40に対する第1リンク42の旋回をロックする。ロックレバー68の上端とレバー受け部70のレバー係合部74を係合し、さらにモニタ係合ピン72をモニタ係合穴78挿入して、モニタ16の傾動、昇降および旋回をロックする。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像を表示するモニタと、
装置本体に設けられたアームベースと、
一端において前記アームベースに支持され、他端において前記モニタを支持する多関節アームと、
前記モニタの動きと、前記多関節アームの動きとをロックするロック機構と、
を含み、
前記多関節アームは、
前記モニタを傾動可能に支持するモニタベースと、
一端において前記アームベースに旋回可能に支持された第1リンクと、
一端において前記第1リンクの他端に旋回可能に支持され、前記モニタベースを他端において旋回可能に支持し、かつ前記モニタベースを昇降可能に支持する第2リンクと、
を有し、
前記ロック機構は、
前記第1リンクに搭載され、進出位置と退避位置の間で回動可能なロックレバーと、
前記ロックレバーが進出位置にあるとき、当該ロックレバーと前記アームベースを係合して、前記第1リンクの旋回をロックする第1係合機構と、
前記ロックレバーが進出位置にあるとき、当該ロックレバーと前記モニタを係合して前記モニタの傾動と、前記モニタの前記モニタベースと一体の旋回および昇降と、前記第2リンクの旋回とをロックする第2係合機構と、
を有する、
超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記第2係合機構は、前記進出位置にある前記ロックレバーの一端を受け入れる前記モニタの下縁部に設けられたレバー受け部を有し、
前記ロックレバーが、ロックレバー横断方向の前記レバー受け部の動きを規制することによって前記モニタの旋回と前記第2リンクの旋回とがロックされる、
超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置であって、
前記第2係合機構は、前記ロックレバーと前記レバー受け部の一方に設けられたモニタ係合ピンと、前記ロックレバーと前記レバー受け部の他方に設けられ、前記ロックレバーが進出位置にあるとき前記モニタ係合ピンを受け入れるモニタ係合凹部とを有し、
前記モニタ係合ピンと前記モニタ係合凹部が係合することによって前記モニタの昇降がロックされ、
前記モニタ係合ピンと前記モニタ係合凹部が係合し、かつ前記ロックレバーがロックレバー長手方向の前記レバー受け部の動きを規制することによって、前記モニタの傾動がロックされる、
超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波診断装置であって、
前記レバー受け部の、前記ロックレバーを受け入れる側には、前記ロックレバーが前記レバー受け部に進入する方向において先細となるテーパ形状部が設けられている、
超音波診断装置。
【請求項5】
請求項3に記載の超音波診断装置であって、
前記モニタ係合ピンと前記モニタ係合凹部は、前記モニタが下を向いた状態のときに係合可能となるよう配置されている、
超音波診断装置。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記第1係合機構は、前記ロックレバーと前記アームベースの一方に設けられたアームベース係合ピンと、前記ロックレバーと前記アームベースの他方に設けられ、前記ロックレバーが進出位置にあるとき前記アームベース係合ピンを受け入れるアームベース係合凹部とを有し、
前記アームベース係合ピンと前記アームベース係合凹部が係合することによって前記第1リンクの旋回がロックされる、
超音波診断装置。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波診断装置であって、
前記ロックレバーは、退避位置にあるとき前記第1リンク内に収容され、進出位置にあるときは一端が前記第1リンクから突出し前記レバー受け部に受け入れられる、
超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置に関し、特に超音波画像を表示するモニタと、当該モニタを支持する多関節アームの動きをロックするロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野で用いられる超音波診断装置は、一般に、装置本体と、患者に対して超音波を送受する超音波プローブと、超音波画像を表示するモニタとを備える。モニタは、一端が装置本体に支持された多関節アームにより支持される。多関節アームに支持されることにより、医師や検査技師であるユーザは、モニタを所望の位置および姿勢とすることができる。下記特許文献1には、多関節アーム(アーム機構14)に支持されたモニタ(16)を有する超音波診断装置(10)が示されている。また、超音波診断装置(10)を移動させる際、モニタ(16)や多関節アーム(14)の動きを規制するロック機構が示されている。なお、上記の括弧内の部材名および符号は、下記特許文献1にて用いられたものであり、本願の実施形態の説明で用いられる部材名および符号とは関連しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多関節アームで支持されたモニタを含む超音波診断装置において、移動時にモニタが予期しない動きをしないように多関節アームおよびモニタの動きをロックすることが望まれる。
【0005】
本発明は、モニタおよびモニタを支持する多関節アームの動きロックする簡易な構成のロック機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る超音波診断装置は、超音波画像を表示するモニタと、装置本体に設けられたアームベースと、一端においてアームベースに支持され、他端においてモニタを支持する多関節アームと、モニタの動きと前記多関節アームの動きとをロックするロック機構と、を含む。多関節アームは、モニタを傾動可能に支持するモニタベースと、一端においてアームベースに旋回可能に支持された第1リンクと、一端において第1リンクの他端に旋回可能に支持され、モニタベースを他端において旋回可能に支持し、かつモニタベースを昇降可能に支持する第2リンクと、を有する。ロック機構は、第1リンクに搭載されて進出位置と退避位置の間で回動可能なロックレバーと、ロックレバーが進出位置にあるとき、当該ロックレバーとアームベースを係合して、第1リンクの旋回をロックする第1係合機構と、ロックレバーが進出位置にあるとき、当該ロックレバーとモニタを係合してモニタの傾動と、モニタのモニタベースと一体の旋回および昇降と、第2リンクの旋回とをロックする第2係合機構と、を有する。
【0007】
1つのロックレバーにより、多関節アームおよびモニタの動きをロックすることでき、ロック機構を簡易な構成とすることができる。
【0008】
第2係合機構は、進出位置にあるロックレバーの一端を受け入れるモニタの下縁部に設けられたレバー受け部を有してよい。ロックレバーが、ロックレバー横断方向のレバー受け部の動きを規制することによってモニタの旋回と第2リンクの旋回とがロックされる。
【0009】
第2係合機構は、さらに、ロックレバーとレバー受け部の一方に設けられたモニタ係合ピンと、ロックレバーとレバー受け部の他方に設けられ、ロックレバーが進出位置にあるときモニタ係合ピンを受け入れるモニタ係合凹部とを有してよい。モニタ係合ピンとモニタ係合凹部が係合することによってモニタの昇降がロックされる。また、モニタ係合ピンとモニタ係合凹部が係合し、かつロックレバーがロックレバー長手方向のレバー受け部の動きを規制することによって、モニタの傾動がロックされる。
【0010】
レバー受け部の、ロックレバーを受け入れる側には、ロックレバーがレバー受け部に進入する方向において先細となるテーパ形状部が設けられてよい。ロックレバーとレバー受け部の位置がずれていても、ロックレバーを所定の位置に導くことができる。
【0011】
モニタ係合ピンとモニタ係合凹部は、モニタが下を向いた状態のときに係合可能となるよう配置されてよい。下を向いた状態でロックすることにより、モニタの表示面の損傷を抑制することができる。
【0012】
第1係合機構は、ロックレバーとアームベースの一方に設けられたアームベース係合ピンと、ロックレバーとアームベースの他方に設けられ、ロックレバーが進出位置にあるときアームベース係合ピンを受け入れるアームベース係合凹部とを有してよい。アームベース係合ピンとアームベース係合凹部が係合することによって第1リンクの旋回がロックされる。
【0013】
ロックレバーは、退避位置にあるとき第1リンク内に収容され、進出位置にあるときは一端が第1リンクから突出しレバー受け部に受け入れられてよい。
【発明の効果】
【0014】
1つのロックレバーにより、多関節アームおよびモニタの動きをロックすることでき、ロック機構を簡易な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】多関節アームの動作、特に1つの鉛直軸線周りの動作を示す平面図である。
【
図5】多関節アームの動作、特に複数の鉛直軸線周りの動作を組み合わせた動作を示す平面図である。
【
図6】モニタを上下させる際の多関節アームの動作を示す図である。
【
図8】多関節アームおよびモニタをロックした状態を示す図である。
【
図9】多関節アームおよびモニタをロックする機構を拡大して示す図である。
【
図10】モニタを限界まで前傾させた状態を示す図である。
【
図11】
図10中の矢印Aの方向に見たモニタ底部を示す図である。
【
図12】ロックレバーおよびこれに関連する部品の組立体を示す図である。
【
図13】ロックレバーによる多関節アームおよびモニタのロック状態を示す図である。
【
図15】第2係合機構の係合状態を示す図であり、特に水平断面を示す図である。
【
図16】第2係合機構の係合状態を示す図であり、特に垂直断面を示す図である。
【
図17】ロックレバーとレバー受け部の係合前の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る実施形態を図面に従って説明する。
図1および
図2は、超音波診断装置10の外観を示す図であり、
図1は斜視図、
図2は側面図である。
図1,2において、矢印FRで示す方向を前方、矢印UPで示す方向を上方、矢印LHで示す方向を左方とする。
【0017】
超音波診断装置10は、装置本体12と、装置本体12に支持された多関節アーム14と、多関節アーム14に支持された超音波画像を表示するモニタ16を含む。
【0018】
装置本体12は、概略箱形のベースユニット18と、ベースユニット18に支持されたパネル支持アーム20と、パネル支持アーム20に支持された操作パネルベース22を含む。ベースユニット18は、電源回路(不図示)や、超音波送受に係る信号処理を行う信号処理回路、超音波画像を形成する画像処理回路等が実施された電子回路基板を収容している。ベースユニット18の前面には、超音波の送受信を行う超音波プローブ24が着脱されるプローブコネクタ26が設けられている。プローブコネクタ26は、複数設けられてよい。ベースユニット18の前面下部には前脚部28が設けられ、後面下部に後脚部30が設けられている。前脚部28と、後脚部30には、それぞれ2個のキャスタ32が設けられ、合計4個のキャスタ32がベースユニット18の4つの角に対応して配置される。ベースユニット18の後面には、手押しハンドル34が上方に延びて設けられている。
【0019】
パネル支持アーム20は、操作パネルベース22を昇降可能に支持してよく、さらに延長軸線周りに旋回可能に支持してよい。操作パネルベース22上には、操作パネル36とサブモニタ38が配置されている。操作パネル36は、超音波診断装置10を操作するための複数のスイッチ、トラックボール等のポインティングデバイス等の操作子を備える。サブモニタ38は、液晶ディスプレイであってよく、例えば設定された診断条件を表示する。サブモニタ38はタッチパネルディスプレイであってよい。操作パネルベース22の後端部には、多関節アーム14を支持するアームベース40が設けられている。
【0020】
図1および
図2は、ベースユニット18の、プローブコネクタ26が配置された面である前面に操作者が位置し、その操作者に対して、操作パネル36およびモニタ16が正対した超音波診断装置10の状態を示している。
図1,2に示す多関節アーム14およびモニタ16の位置および姿勢を「基準位置」と記す。基準位置において、多関節アーム14は、折り畳まれた状態で前後方向に沿って延びており、モニタ16は前方を向いている。以下の説明において、前後左右上下等の位置関係および方向を表す語句は、特段の断りがない限り、
図1,2に示す状態における位置関係および方向を表す。
【0021】
図3は、基準位置にある多関節アーム14とモニタ16を拡大した側面図である。多関節アーム14は、一端においてアームベース40に支持された第1リンク42と、一端において第1リンク42の他端に支持された第2リンク44と、第2リンク44の他端に支持されたモニタベース46を有する。モニタベース46はモニタ16を支持している。第1リンク42、第2リンク44、モニタベース46と順に接続された多関節アーム14に沿う経路において、多関節アーム14を構成する各要素のアームベース40に近い側の端部を近位端、反対側の端部を遠位端と記す。
【0022】
第1リンク42は、近位端42aにおいてアームベース40に支持され、より高い位置にある遠位端42bに向けて延びるよう傾斜して配置されている。第1リンク42は、アームベース40を鉛直方向に沿って貫くように規定された第1鉛直軸線48周りに旋回可能、つまり水平面内で回動可能である。以下の説明において、鉛直方向に延びる軸線周りの回動を「旋回」と記す。第2リンク44は、近位端44aにおいて、第1リンク42の遠位端42bに支持され、この遠位端42bを鉛直方向に沿って貫くように規定された第2鉛直軸線50周りに旋回可能である。よって、多関節アーム14は、平面視において、第1リンク42と第2リンク44が連結する部分で屈伸する。多関節アーム14が基準位置にあるとき、
図3に示すように、第2リンク44は第1リンク42と平行に配置される。第2リンク44は、その近位端44aを水平方向に沿って、かつ第2リンク44の長手方向に直交する方向に沿って貫くよう規定された第1水平軸線52周りに回動可能である。この回動により第2リンク44の遠位端44bは、円弧を描くように上下方向に移動する。アームベース40は、第2リンク44の遠位端44bに支持され、この遠位端44bを鉛直方向に沿って貫くように規定された第3鉛直軸線54周りに旋回可能である。モニタ16は、アームベース40の旋回と共に左右方向において向きを変える。また、モニタ16は、アームベース40を水平方向に沿って、かつモニタ16と平行な方向に沿って貫くように規定された第2水平軸線56周りに傾動する。この傾動により、モニタ16を下方に、および上方に向けることができる。
【0023】
モニタ16は、液晶パネルなどのディスプレーユニット58(
図1参照)と、ディスプレーユニット58の表示面が露出するように、かつ背面を覆うようにディスプレーユニット58を収容するモニタハウジング60を有する。モニタハウジング60の、左右方向において中央の下縁には、モニタハンドル62が装着されている。モニタハンドル62は、モニタハウジング60に固定されるハンドル基部64と、ハンドル基部64から前方に、ディスプレーユニット58の前面を越えて延びるグリップ部66を有する。グリップ部66は、平面視においてコの字形の形状を有し(
図4参照)、コの字の縦画に相当する部分を操作者が握ってモニタ16を動かし、モニタ16の位置および向きを調整する。
【0024】
図4および
図5は、多関節アーム14の各要素およびモニタ16の旋回の様子を示す図である。基準位置にある多関節アーム14-1とモニタ16-1が一点鎖線で示されている。
【0025】
図4の(a)には、多関節アーム14を、基準位置から第1鉛直軸線48周りに旋回させて、モニタ16を斜め左方に向けた状態が示されている。この状態の多関節アーム14-2の各要素(第1リンク42、第2リンク44、モニタベース46)の位置関係、および多関節アーム14-2とモニタ16-2と位置関係は、これらが基準位置にあるときと同じであり、第1鉛直軸線48を中心に多関節アーム14およびモニタ16全体が一体となって回転移動している。
【0026】
図4の(b)には、第2リンク44を基準位置から第2鉛直軸線50周りに旋回させて、モニタ16を左方に向けた状態が示されている。この状態の多関節アーム14-3は、
第1リンク42が基準位置にあり、第1リンク42と第2リンク44が平面視において角度をなして位置する。また、この状態の第2リンク44とモニタ16-3の関係は、基準位置と同じである。
【0027】
図4の(c)には、モニタベース46を基準位置から第3鉛直軸線54周りに旋回させて、モニタ16を左方に向けた状態が示されている。この状態の多関節アーム14-4は、第1リンク42および第2リンク44が基準位置にあり、平面視において第1リンク42および第2リンク44とモニタベース46とが角度をなして位置する。この結果、第2リンク44とモニタ16-4の位置関係が基準位置から変化している。
【0028】
図4の(a)、(b)、(c)に示された多関節アーム14およびモニタ16は、多関節アーム14の、1つのみの鉛直軸線に関する旋回により達成される状態である。これに対して、
図5は、多関節アーム14の、複数の鉛直軸線に関する動作によって達成された状態を示している。複数の鉛直軸線に関する動作によって、基準位置にあるモニタ16を平行移動した位置とすることができ、モニタ16-5が左方に平行移動した状態、モニタ16-6が前方に平行移動した状態を示している。
【0029】
図6は、モニタ16を上下移動させる際の多関節アーム14の動きを説明する図である。基準位置にあるモニタ16-1が上方に移動すると、多関節アーム14の第2リンク44が、第1水平軸線52を中心にして回動する。第2リンク44は平行リンク構造を有し、このため第2リンク44が回動してもモニタベース46は姿勢を維持たまま上下する。モニタベース46に支持されたモニタ16も、その向きを維持したまま上下する。
図6に、上方に平行移動したモニタ16-7が示されている。
【0030】
図7は、モニタ16の傾動を説明する図である。モニタ16は第2水平軸線56周りに傾動する。
図7には、水平方向前方を向いたモニタ16-1の位置から前傾して下方を向いたモニタ16-8、後傾して上方を向いたモニタ16-9が示されている。モニタ16-8は俯角が10°、モニタ16-9は仰角が30°の状態を示している。
【0031】
図8および
図9は、多関節アーム14およびモニタ16の動きをロックした状態を示す図である。
図8は側面図、
図9はロック時のロックに係る機構部分の拡大図である。ロックされた多関節アーム14およびモニタ16の位置を以下「ロック位置」と記す。ロック時には、通常時第1リンク42内に収容されているロックレバー68が起こされ、起こされた状態のロックレバー68が、モニタ16に設けられたレバー受け部70に受け入れられる。
図8において、第1リンク42内に収容されたロックレバー68が破線で示されており、起こされたロックレバー68が実線で示されている。レバー受け部70は、モニタハウジング60に固定されたモニタハンドル62のハンドル基部64に設けられている。ロック位置においては、モニタ16は、ストッパで規制される限界まで前傾した状態であり、モニタ16の底部に設けられたレバー受け部70が、起こされたロックレバー68の上端と略前後方向において対向する。
【0032】
図10は、ロック前の状態であって、限界位置まで前傾した状態のモニタ16と、そのときの多関節アーム14の状態を示す図である。また、
図11には、
図10に示す矢印Aの方向から見たモニタ16底部が示されている。
図10において、起こされたロックレバー68上端の全体が現れている。ロックレバー68は上端に、ロック位置にあるモニタ16の底部に向かって延びるモニタ係合ピン72を有している。レバー受け部70は溝形状であり、
図11において上部に、ロックレバー68の上端と係合するレバー係合部74を有し、下部に下方に向かって左右方向に広がるテーパ形状のテーパ部76を有する。レバー係合部74の溝底面には、モニタ係合ピン72を受け入れる係合凹部であるモニタ係合穴78が形成されている。
【0033】
図12は、ロックレバー68およびその周囲の部品の詳細構造を示す図である。
図12の(a)にはロックレバー68が第1リンク42内に収容されたときの状態が示されており、(b)には第1リンク42から進出して起立し、モニタ16等をロックするときの状態が示されている。(c)には細部構造が拡大して示されている。
図12は、ロックレバー68およびその周囲の部品を、多関節アーム14が基準位置にあるときの状態で示している。ロックレバー68が起立した状態、つまり(b)に示す状態において、上側の端を上端、下側の端を下端と記す。
【0034】
ロックレバー68は、略柱状の形状を有している。ロックレバー68の上端部にモニタ係合ピン72が進退可能に設けられ、下端部にアームベース係合ピン80が進退可能に設けられている。モニタ係合ピン72は、ロックレバー68の長手方向に略直交する方向に沿って進退可能であり、アームベース係合ピン80は、ロックレバー68の長手方向にほぼ沿って進退可能である。モニタ係合ピン72およびアームベース係合ピン80は、ばね、特にコイルばねによって進出方向に付勢されている。
【0035】
ロックレバー68の下端部をレバーシャフト82が貫いている。ロックレバー68とレバーシャフト82は、レバーシャフト82の中心軸線周りに一体となって回動するが、レバーシャフト82の長手方向、すなわち中心軸線に沿う方向においては相対移動が可能に結合している。ロックレバー68の一方の端には、レバー操作ハンドル84が固定されている。レバー操作ハンドル84は、第1リンク42の側面に配置される(
図3,9等参照)。レバーシャフト82は、第1リンク42、特にその内部のフレーム部材に固定されたレバーベース86に回動可能に支持され、またレバーシャフト82の中心軸線に沿った移動も所定の範囲で許容されている。一方、ロックレバー68は、レバーベース86によって、レバーシャフト82の中心軸線に沿った動きは拘束されている。さらに、レバーシャフト82と同軸にコイルばね88が配置されている。コイルばね88は、レバー操作ハンドル84とレバーシャフト82を左方LHに付勢している。
【0036】
レバーシャフト82の、レバー操作ハンドル84が設けられた端とは反対側の端には、レバー規制ピン90が設けられている。レバー規制ピン90は、レバーシャフト82の軸線に対して直交する方向に突出しており、レバーシャフト82の中心軸線周りにレバーシャフト82と一体となって回動する。レバーベース86には、レバー規制ピン90と係合する規制ピン受け92が設けられている。規制ピン受け92には、レバー規制ピン90を受け入れるピン受け部92a,92bが2箇所に形成されている。レバー規制ピン90が、第1ピン受け部92aに受け入れられているとき、ロックレバー68は第1リンク42に収容された退避位置に位置決めされて、その位置に維持される((a)参照)。また、レバー規制ピン90が、第2ピン受け部92bに受け入れらているとき、ロックレバー68は、起立した進出位置に位置決めされて、その位置に維持される((b)参照)。
【0037】
ロックレバー68を収容位置から起立させるためには、まずレバー操作ハンドル84をコイルばね88の付勢力に抗して押し込み、レバーシャフト82を矢印Bの方向に動かす。このレバーシャフト82の動きにより、レバー規制ピン90が規制ピン受け92の第1ピン受け部92aから外れ、レバーシャフト82の中心軸線周りの回動が許容される。次に、レバー操作ハンドル84を矢印Cの方向に回動させると、レバー操作ハンドル84の動きがレバーシャフト82、そしてロックレバー68を回動させる。ロックレバー68が起立したら、レバー操作ハンドル84を押し込む力を解放する。これにより、レバー規制ピン90が第2ピン受け部92bに係合して、ロックレバー68が進出位置に位置決めされる。ロックレバー68を進出位置から退避位置に動かす場合も同様に、レバー操作ハンドル84を押し込み、矢印Cと逆向きに回動させた後、押し込む力を解放する。
【0038】
図13は、多関節アーム14およびモニタ16がロックレバー68によって、ロックされた状態を示す断面図である。アームベース40は、上方に向けて延びるベーススタブ94を含む。ベーススタブ94は円筒形状であり、第1リンク42は軸受を介してベーススタブ94に回動可能に支持されている。よって、ベーススタブ94の中心軸線が第1鉛直軸線48である。ベーススタブ94の円環形状の頂面94aには、周上の1箇所にノッチ96が形成されている。ロックレバー68が進出位置にあるとき、ロックレバー68の下端からばねの付勢力によってアームベース係合ピン80が進出してノッチ96と係合し、第1リンク42の第1鉛直軸線48周りの旋回をロックする。ノッチ96は、ロックレバー68が進出位置にあるときアームベース係合ピン80を受け入れる凹部である。以下、ノッチ96をアームベース係合ノッチ96と記す。アームベース係合ピン80とアームベース係合ノッチ96は、ロックレバー68とアームベース40を係合して、第1リンク42の旋回をロックする係合機構を構成する。この係合機構を第1係合機構98と記す。
【0039】
図14は、アームベース係合ピン80とアームベース係合ノッチ96の周方向における位置がずれた状態から、第1リンク42の旋回をロックする過程を説明するための図である。
図14の(a)は、ロックレバー68が進出位置に至る手前の状態を示し、(b)および(c)は、ロックレバー68が進出位置に到達した状態を示している。
【0040】
第1リンク42が基準位置から旋回してずれた位置(例えば、
図4の(a)参照)にあるとき、ロックレバー68を起こすと、アームベース係合ピン80はアームベース係合ノッチ96からずれた位置でベーススタブ94に当たる。このときの状態が(a)に示されている。アームベース係合ピン80は、ロックレバー68の回動に伴ってベーススタブ94の頂面94aに押され、ばねの付勢力に抗して退避し頂面94aに乗り上げる。このときの状態が(b),(c)に示されている。アームベース係合ピン80が、ベーススタブの頂面94aに乗り上げ易くするために、ベーススタブの頂面94aの外周側の縁に面取りを設けてよい。また、アームベース係合ピン80の端面を球面等の曲面としてよい。アームベース係合ピン80がベーススタブの頂面94aに乗り上げた状態で、第1リンク42を基準位置に向けて第1鉛直軸線48周りに回動させる。これにより、アームベース係合ピン80は、ベーススタブの頂面94a上を周方向に移動する。アームベース係合ピン80は、アームベース係合ノッチ96の位置まで移動すると、ばねの付勢力によってアームベース係合ノッチ96内に進出し、これと係合する。
【0041】
第1リンク42のロックを解除するには、ロックレバー68を回動させて退避位置とする。ロックレバー68の回動により、アームベース係合ピン80は、ベーススタブ94の径方向外向きに移動し、アームベース係合ノッチ96から抜け出てこれとの係合が解除される。
【0042】
図13に戻ってモニタ16とロックレバー68の係合について説明する。進出位置にあるロックレバー68はその上端が、モニタ16の底部、より具体的にはモニタハンドル62に設けられたレバー受け部70のレバー係合部74に係合している。また、モニタ係合ピン72がばねに付勢されて、モニタ係合穴78内に進入している。モニタ係合ピン72がモニタ係合穴78と係合することにより、ロックレバー68に対するモニタ16の上下方向および左右方向の動きが規制される。つまり、モニタ16の、第2鉛直軸線50周りの旋回、第3鉛直軸線54周りの旋回、および第2リンク44の第1水平軸線52周りの回動がロックされる。さらに、
図15の水平断面に示されるように、ハンドル基部64に形成されたレバー係合部74の左右の側面74a,74bがロックレバー68の上端の左右側面に当接することにより、レバー受け部70の左右の動き、つまりロックレバー68を横断する方向の動きが規制される。よって、モニタ16の左右の動きが規制される。つまり、モニタ16の、第2鉛直軸線50周りの旋回および第3鉛直軸線54周りの旋回がロックされる。そして、ロックレバー68は、第1リンク42上に設けられているため、モニタ16は、第1リンク42に対しても上下左右の動きがロックされ、第2リンク44の第1リンク42に対する第2鉛直軸線50周りの旋回および第1水平軸線52周りの回動もロックされる。さらに、第1係合機構98により第1リンク42の旋回がロックされていれば、モニタ16は、装置本体12に対する昇降および旋回がロックされ、第2リンク44は、装置本体12に対する鉛直軸線周りの旋回および水平軸線周りの回動がロックされる。
【0043】
下限まで前傾したモニタ16の上方への傾動は、ロックレバー68およびモニタ係合ピン72と、レバー受け部70、特にレバー係合部74との係合によりロックされる。
図16に示されるように、モニタ16が矢印Dのように上方に向けて傾動しようとすると、モニタ係合穴78の下側部分がモニタ係合ピン72に当接し、さらに、レバー係合部74の上側面74cがロックレバー68の上端面68aに当接する。これにより、モニタ16の傾動がロックされる。
【0044】
モニタ係合穴78およびレバー係合部74を有するレバー受け部70と、モニタ係合ピン72を備えたロックレバー68の上端部が、モニタ16の傾動と、モニタ16の旋回および昇降と、第2リンク44の旋回および回動をロックする係合機構を構成する。この係合機構を第2係合機構100と記す。
【0045】
第2係合機構100をロック状態とするには、まず
図10に示すように、モニタ16を、ロック位置よりも高い位置にて限界まで前傾させる。その後、モニタ16を下方に向けて降ろす。
【0046】
図17は、モニタ16を降ろす過程で、レバー受け部70がロックレバー68に近接した状態を示す図である。レバー受け部70は、
図17において、上方に位置するレバー係合部74と、下方に位置するテーパ部76を有する。レバー受け部70は、ハンドル基部64の底面に形成された溝であり、
図17において溝の上端は閉じており、下端は開放している。レバー係合部74の側面74a,74bは、ロックレバー68の上端が係合したとき、ロックレバー68を相対的に左右方向において動かないようにする。テーパ部76は、溝の左右の側壁すなわち側面76a,76bと、溝の底となる底面76cにより既定されている。テーパ部76の側面76a,76bの互いの間隔は、下方が広く上方が狭い。テーパ部76の側面76a,76bはそれぞれ、上端において、レバー係合部の側面74a,74bの下端につながっている。テーパ部76の底面76cも上端において、レバー係合部の底面の下端につながっている。
【0047】
前傾させたモニタ16が下降すると、ロックレバー68がレバー受け部70に下方から進入する。ロックレバー68がレバー受け部70に進入すると、モニタ係合ピン72の先端がレバー受け部70のテーパ部の底面76cに当接して押される。そして、モニタ16の下降と共に、モニタ係合ピン72が退避位置に向けて移動する。モニタ16がさらに下降して、モニタ係合ピン72とモニタ係合穴78の位置が合うと、モニタ係合ピン72は、ばねの付勢力によってモニタ係合穴78内に進出し、モニタ係合ピン72とモニタ係合穴78が係合する。ロックレバー68とレバー受け部70が左右方向において位置がずれていた場合、モニタ係合ピン72またはロックレバー68の上端が、レバー受け部70のテーパ部の側面76a,76bに当接する。さらに、モニタ16が下降すると、ロックレバー68が側面76a,76bによってレバー係合部74に案内される。
【0048】
ロックレバー68の上端がレバー受け部70のレバー係合部74に係合し、モニタ係合ピン72がレバー係合部74の底面に形成されたモニタ係合穴78に係合することで、第2係合機構100が係合状態となる。これにより、モニタ16の傾動がロックされ、モニタ16のモニタベース46と一体の旋回および昇降がロックされ、さらに第1リンク42に対する第2リンク44の旋回がロックされる。
【0049】
超音波診断装置10の使用状態から、多関節アーム14およびモニタ16をロック状態とするには、まず、レバー操作ハンドル84を回動させてロックレバー68を起こして進出位置とする。アームベース係合ピン80と、アームベース係合ノッチ96が周方向にずれていた場合には、第1リンク42を第1鉛直軸線48周りに旋回させて、アームベース係合ピン80とアームベース係合ノッチ96の位置を合わせて、これらを係合させる。これにより、第1リンク42が第1係合機構98によってロックされる。
【0050】
次に、第2係合機構100によるモニタ16および第2リンク44のロックを行う。まず、モニタ16を限界まで前傾させる。このとき、モニタハンドル62のグリップ部66が、進出位置にあるロックレバー68の上端より高い位置にあるようにする。前傾したモニタ16を下降させると、ロックレバー68の上端およびモニタ係合ピン72がレバー受け部70のテーパ部76によって案内されて、ロックレバー68がレバー係合部74に達する。また、モニタ係合ピン72は、テーパ部76の底面76cによって押されて退避し、モニタ係合穴78と正対する位置に達すると、モニタ係合穴78内に進出する。これにより、モニタ16と第2リンク44が第2係合機構100によりロックされる。また、第2リンク44と第1リンク42もロックさる。この結果、多関節アーム14自身の動きと、モニタ16との相対的な動きがロックされ、多関節アーム14とモニタ16が一体となる。第1係合機構98および第2係合機構100によるロックにより、多関節アーム14およびモニタ16が装置本体に対して固定される。
【0051】
第1係合機構98によるロックと、第2係合機構100によるロックの順序は逆であってもよい。すなわち、モニタ16を前に倒し、下降させて、モニタ16および第2リンク44をロック状態とし、その後、多関節アーム14とモニタ16を一体に旋回させてアームベース係合ピン80とアームベース係合ノッチ96を係合させて、一体となった多関節アーム14とモニタ16が装置本体に対して固定される。
【0052】
第1係合機構98において、アームベース係合ピン80とアームベース係合ノッチ96の配置を入れ替えてもよい。つまり、ノッチを有するベーススタブを第1リンク42と一体に回転するものとし、ノッチに対して進退する係合ピンは、アームベース40に設けるようにしてよい。第2係合機構100において、モニタ係合ピン72とモニタ係合穴78の配置を入れ替えてもよい。つまり、レバー受け部70の底面に進退する係合ピンを配置し、ロックレバーの上端に係合ピンと係合する係合穴を配置してよい。
【符号の説明】
【0053】
10 超音波診断装置、12 装置本体、14 多関節アーム、16 モニタ、18 ベースユニット、20 パネル支持アーム、22 操作パネルベース、36 操作パネル、40 アームベース、42 第1リンク、44 第2リンク、46 モニタベース、48 第1鉛直軸線、50 第2鉛直軸線、52 第1水平軸線、54 第3鉛直軸線、56 第2水平軸、62 モニタハンドル、64 ハンドル基部、66 グリップ部、68 ロックレバー、70 レバー受け部、72 モニタ係合ピン、74 レバー係合部、76 テーパ部、78 モニタ係合穴(モニタ係合凹部)、80 アームベース係合ピン、84 レバー操作ハンドル、94 ベーススタブ、96 アームベース係合ノッチ(アームベース係合凹部)、98 第1係合機構、100 第2係合機構。