(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025148123
(43)【公開日】2025-10-07
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20250930BHJP
A61B 6/50 20240101ALI20250930BHJP
【FI】
A61B6/03 570B
A61B6/50 500B
A61B6/03 550U
A61B6/03 550R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048733
(22)【出願日】2024-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】森 義樹
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA13
4C093CA18
4C093CA35
4C093DA02
4C093FA19
4C093FA34
4C093FA47
4C093FE13
(57)【要約】
【課題】処理に要する時間を抑制しつつ、静止位相を精度良く特定することができる画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】画像処理装置が備えるプロセッサが、被写体の撮影部位に対して複数の方向から順次照射された放射線により、前記被写体の心電図と同期して撮影され、前記心電図により特定される位相に対応する投影データを取得し、前記位相のうち、第1の位相範囲に含まれる位相に対応する前記投影データから再構成された第1の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相と仮定する仮静止位相を特定し、前記位相のうち、前記第1の位相範囲に含まれ、かつ前記仮静止位相を含む第2の位相範囲に含まれる位相に対応する前記投影データから再構成され、前記被写体の動きが補正された第2の再構成画像を生成し、前記第2の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相を特定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
被写体の撮影部位に対して複数の方向から順次照射された放射線により、前記被写体の心電図と同期して撮影され、前記心電図により特定される位相に対応する投影データを取得し、
前記位相のうち、第1の位相範囲に含まれる位相に対応する前記投影データから再構成された第1の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相と仮定する仮静止位相を特定し、
前記位相のうち、前記第1の位相範囲に含まれ、かつ前記仮静止位相を含む第2の位相範囲に含まれる位相に対応する前記投影データから再構成され、前記被写体の動きが補正された第2の再構成画像を生成し、
前記第2の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相を特定する
画像処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
第1の再構成条件により前記第2の再構成画像を生成し、
前記第2の再構成画像に対応する位相から、前記被写体の静止位相が含まれる第3の位相範囲を特定し、
前記第3の位相範囲に含まれる位相に対応する、前記投影データから第2の再構成条件により再構成され、前記被写体の動きが補正された第3の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相を特定し、
前記第2の再構成条件は、前記第1の再構成条件よりも高画質な再構成画像が得られる処理条件である
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記被写体の動きが予め定められた閾値よりも少ない位相に応じた範囲を前記第3の位相範囲として特定する
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
第1の位相間隔で前記第1の再構成画像を生成し、
前記第1の位相間隔よりも広い第2の位相間隔で前記第2の再構成画像を生成し、
前記第2の再構成画像を生成した位相に対応する前記投影データから再構成された第3の再構成画像を生成し、
対応する位相毎の、前記第2の再構成画像と前記第3の再構成画像とのずれに基づいて、前記被写体の静止位相を特定する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記第2の再構成画像と前記第3の再構成画像とのずれが最小となる位相を前記被写体の静止位相として特定する
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1の位相範囲は、前記被写体の拡張期、及び収縮期の少なくとも一方に対応する範囲である
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像処理装置が備えるプロセッサが、
被写体の撮影部位に対して複数の方向から順次照射された放射線により、前記被写体の心電図と同期して撮影され、前記心電図により特定される位相に対応する投影データを取得し、
前記位相のうち、第1の位相範囲に含まれる位相に対応する前記投影データから再構成された第1の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相と仮定する仮静止位相を特定し、
前記位相のうち、前記第1の位相範囲に含まれ、かつ前記仮静止位相を含む第2の位相範囲に含まれる位相に対応する前記投影データから再構成され、前記被写体の動きが補正された第2の再構成画像を生成し、
前記第2の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相を特定する
画像処理方法。
【請求項8】
画像処理装置が備えるプロセッサに、
被写体の撮影部位に対して複数の方向から順次照射された放射線により、前記被写体の心電図と同期して撮影され、前記心電図により特定される位相に対応する投影データを取得し、
前記位相のうち、第1の位相範囲に含まれる位相に対応する前記投影データから再構成された第1の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相と仮定する仮静止位相を特定し、
前記位相のうち、前記第1の位相範囲に含まれ、かつ前記仮静止位相を含む第2の位相範囲に含まれる位相に対応する前記投影データから再構成され、前記被写体の動きが補正された第2の再構成画像を生成し、
前記第2の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相を特定する
処理を実行させるための画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線CT(Computed Tomography)装置を用いた検査において、撮影中に得られた被検体の心電情報から心臓の周期的な運動を解析し、最も動きの少ない位相である静止位相を特定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特定した静止位相を用いて、例えば、静止位相に同期するように撮影を行ったり、静止位相での投影データを用いて診断用の画像を再構成したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、より高精度に静止位相を検出しようとすると、処理に多大な時間を要してしまう場合があった。
【0005】
本開示は、上記事情を考慮して成されたもので、処理に要する時間を抑制しつつ、静止位相を精度良く特定することができる画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本開示の第1の態様の画像処理装置は、少なくとも1つのプロセッサを備え、プロセッサは、被写体の撮影部位に対して複数の方向から順次照射された放射線により、被写体の心電図と同期して撮影され、心電図により特定される位相に対応する投影データを取得し、位相のうち、第1の位相範囲に含まれる位相に対応する投影データから再構成された第1の再構成画像に基づいて、被写体の静止位相と仮定する仮静止位相を特定し、位相のうち、第1の位相範囲に含まれ、かつ仮静止位相を含む第2の位相範囲に含まれる位相に対応する投影データから再構成され、被写体の動きが補正された第2の再構成画像を生成し、第2の再構成画像に基づいて、被写体の静止位相を特定する。
【0007】
第2の態様の画像処理装置は、第1の態様の画像処理装置において、プロセッサは、第1の再構成条件により第2の再構成画像を生成し、第2の再構成画像に対応する位相から、被写体の静止位相が含まれる第3の位相範囲を特定し、第3の位相範囲に含まれる位相に対応する、前記投影データから第2の再構成条件により再構成され、被写体の動きが補正された第3の再構成画像に基づいて、被写体の静止位相を特定し、第2の再構成条件は、第1の再構成条件よりも高画質な再構成画像が得られる処理条件である。
【0008】
第3の態様の画像処理装置は、第2の態様の画像処理装置において、プロセッサは、被写体の動きが予め定められた閾値よりも少ない位相に応じた範囲を第3の位相範囲として特定する。
【0009】
第4の態様の画像処理装置は、第1の態様の画像処理装置において、プロセッサは、第1の位相間隔で第1の再構成画像を生成し、第1の位相間隔よりも広い第2の位相間隔で第2の再構成画像を生成し、第2の再構成画像を生成した位相に対応する投影データから再構成された第3の再構成画像を生成し、対応する位相毎の、第2の再構成画像と第3の再構成画像とのずれに基づいて、被写体の静止位相を特定する。
【0010】
第5の態様の画像処理装置は、第4の態様の画像処理装置において、プロセッサは、第2の再構成画像と第3の再構成画像とのずれが最小となる位相を被写体の静止位相として特定する。
【0011】
第6の態様の画像処理装置は、第1の態様の画像処理装置において、第1の位相範囲は、被写体の拡張期、及び収縮期の少なくとも一方に対応する範囲である。
【0012】
上記目的を達成するために本開示の第7の態様の画像処理方法は、画像処理装置が備えるプロセッサが、被写体の撮影部位に対して複数の方向から順次照射された放射線により、被写体の心電図と同期して撮影され、心電図により特定される位相に対応する投影データを取得し、位相のうち、第1の位相範囲に含まれる位相に対応する投影データから再構成された第1の再構成画像に基づいて、被写体の静止位相と仮定する仮静止位相を特定し、位相のうち、第1の位相範囲に含まれ、かつ仮静止位相を含む第2の位相範囲に含まれる位相に対応する投影データから再構成され、被写体の動きが補正された第2の再構成画像を生成し、第2の再構成画像に基づいて、被写体の静止位相を特定する。
【0013】
上記目的を達成するために本開示の第8の態様の画像処理プログラムは、画像処理装置が備えるプロセッサに、被写体の撮影部位に対して複数の方向から順次照射された放射線により、被写体の心電図と同期して撮影され、心電図により特定される位相に対応する投影データを取得し、位相のうち、第1の位相範囲に含まれる位相に対応する投影データから再構成された第1の再構成画像に基づいて、被写体の静止位相と仮定する仮静止位相を特定し、位相のうち、第1の位相範囲に含まれ、かつ仮静止位相を含む第2の位相範囲に含まれる位相に対応する投影データから再構成され、被写体の動きが補正された第2の再構成画像を生成し、第2の再構成画像に基づいて、被写体の静止位相を特定する処理を実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、処理に要する時間を抑制しつつ、静止位相を精度良く特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の放射線CT撮影装置の構成の一例を表した構成図である。
【
図2】実施形態のコンソールの構成の一例を表した構成図である。
【
図3】実施形態のコンソールの機能の一例を表す機能ブロック図である。
【
図4A】心位相の画像の例について模式的に示した図である。
【
図4B】仮最適心位相(CardioHarmony(登録商標)における最適心位相)の特定方法について説明するための図である。
【
図5】実施形態の画像処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は本発明を限定するものではない。
【0017】
〔第1実施形態〕
まず、本実施形態の放射線CT(Computed Tomography)撮影装置の構成の一例について説明する。
図1には、本実施形態の放射線CT撮影装置10の構成の一例を表す構成図が示されている。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の放射線CT撮影装置は、ガントリ20、寝台27、及びコンソール30を備える。なお、以下の説明では、
図1における横方向をX軸、縦方向をY軸、及びXY面に直交する方向をZ軸とする。
【0019】
ガントリ20は、開口部26を有しており、撮影対象の被検体Sは、寝台27に載せられた状態で、開口部26内に配置される。ガントリ20と寝台27とはZ軸方向に相対的に移動が可能とされている。
【0020】
ガントリ20の内部には、放射線管(図示省略)を有する放射線発生装置23、ボウタイフィルタ24、及びコリメータ25と、検出器パネル28とが被検体Sを挟んで対向する状態で配置されている。放射線発生装置23から照射された放射線Rは、ボウタイフィルタ24及びコリメータ25により被検体Sの大きさに適したビーム形状に成形されて被検体Sに照射される。検出器パネル28は、被検体Sを透過した放射線を検出し、検出した放射線の線量に応じた投影データを生成する。
【0021】
放射線発生装置23と検出器パネル28とは、ガントリ20の回転駆動部(図示省略)により被検体Sの周りを回転させられる。放射線発生装置23からの放射線照射と検出器パネル28での放射線の検出が両者の回転とともに繰り返されることにより、様々な投影角度での投影データが取得される。検出器パネル28により取得された複数の投影データは、コンソール30に出力される。
【0022】
なお、放射線発生装置23から照射される放射線の線量、ガントリ20の回転速度、及びガントリ20と寝台27との相対移動速度等は、技師等のユーザが入力したスキャン条件に基づいてコンソール30により設定される。ECG(Electrocardiogram)同期撮影の場合は、被検体Sに装着された心電計(図示省略)の情報に基づき、心臓の動きの位相(心位相)に同期して撮影が行われ、非同期撮影の場合には、自動露光制御のもとで撮影が行われる。
【0023】
本実施形態のコンソール30は、投影データの取得に関する制御、静止位相の特定、及び医用画像の生成等を行う。本実施形態のコンソール30が、本開示の画像形成装置の一例である。一例として本実施形態のコンソール30は、サーバーコンピュータである。
【0024】
コンソール30は、
図2に示すように、制御部32、記憶部34、I/F(Interface)部35、操作部36、及び表示部38を備えている。制御部32、記憶部34、I/F部35、操作部36、及び表示部38はシステムバスやコントロールバス等のバス39を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0025】
本実施形態の制御部32は、コンソール30の全体の動作を制御する。制御部32は、CPU(Central Processing Unit)32A、ROM(Read Only Memory)32B、及びRAM(Random Access Memory)32Cを備える。ROM32Bには、CPU32Aで実行される、後述する画像処理プログラム33を含む各種のプログラム等が予め記憶されている。RAM32Cは、各種データを一時的に記憶する。
【0026】
記憶部34には、検出器パネル28から出力された投影データ、及びその他の各種情報等が記憶される。記憶部34の具体例としては、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)及びフラッシュメモリ等の記憶媒体によって実現される。
【0027】
I/F部35は、有線通信又は無線通信により、ガントリ20の回転駆動部(図示省略)、放射線発生装置23、検出器パネル28との間で各種情報の通信を行う。本実施形態のコンソール30は、I/F部35を介して、検出器パネル28から投影データを受信する。受信した投影データは、心位相に対応づけられた状態で記憶部34に記憶される。
【0028】
コンソール30は、I/F部35を介して検出器パネル28から複数の投影データを取得する。制御部32は、取得した複数の投影データを再構成処理し、被検体Sの断層画像を生成する。
【0029】
操作部36は、投影データを取得するためのスキャン条件や、画像の生成及び表示等に関する指示や各種情報等をユーザが入力するために用いられる。操作部36は、特に限定されるものではなく、例えば、各種スイッチ、ボタン、タッチパネル、タッチペン、キーボード、及びマウス等が挙げられる。表示部38は、各種情報や、医用画像等を表示する。なお、操作部36と表示部38とを一体化してタッチパネルディスプレイとしてもよい。また例えば、操作部36は、ユーザによる音声入力を受け付けてもよい。
【0030】
図3には、コンソール30の機能の一例を表す機能ブロック図が示されている。コンソール30は、取得部40、仮静止位相特定部42、補正処理部44、及び静止位相特定部46を備える。一例として本実施形態のコンソール30は、制御部32のCPU32Aが画像処理プログラム33を実行することにより、CPU32Aが、取得部40、仮静止位相特定部42、補正処理部44、及び静止位相特定部46として機能する。
【0031】
取得部40は、検出器パネル28から投影データを取得する機能を有する。具体的には、取得部40は、上述したように、被検体Sに対して複数の方向から順次照射された放射線により、被検体Sの心電図と同期して撮影され、心電図により特定される位相に対応する投影データを、I/F部35を介して検出器パネル28から取得する。なお、取得部40は、事前に検出器パネル28から取得して、記憶部34に心位相と対応づけて記憶させておいた投影データを、記憶部34から取得する形態としてもよい。取得部40は、取得した投影データを、仮静止位相特定部42及び補正処理部44に出力する。
【0032】
仮静止位相特定部42は、位相のうち、心臓の拡張期及び収縮期の各々に含まれる位相に対応する投影データから再構成された第1の再構成画像に基づいて、静止位相と仮定する仮静止位相を特定する機能を有する。なお、静止位相とは、全位相中で心臓の動きが最も小さい位相または、静止に近い位相のことをいう。また、静止位相のことを最適心位相という場合もある。本実施形態の心臓の拡張期及び収縮期の各々が、本開示の第1の位相範囲の一例である。また、仮静止位相特定部42が再構成する第1の再構成画像が、本開示の第1の再構成画像の一例である。
【0033】
なお、仮静止位相特定部42が仮静止位相を特定する方法は、限定されない。例えば、位相自動検索技術であるCardioHarmony(登録商標)により最適心位相として検出された位相を仮静止位相として特定してもよい。CardioHarmony(登録商標)とは、心位相毎に作成された画像(再構成画像)から心臓全体の動きの量を抽出し、これが最小となる位相を最適心位相として検出する技術である。具体的には、まず、心臓全体について、
図4Aに示すように、0~99%の心位相の画像を生成する。そして、作成した画像の造影部分を中心に各位相で動き量を抽出する。さらに
図4Bに示したグラフのように動き量と位相との対応関係を特定し、動き量が最小となる位相を最適心位相として検出する。なお、心臓の拡張期及び収縮期の各々について、最適心位相を検出する。すなわち、心臓の拡縮の1サイクルにおいて、2つの最適心位相が検出される。また、例えば、特許第4157302号公報に記載されている技術を用いてもよい。
【0034】
仮静止位相特定部42は、特定した仮静止位相を、補正処理部44に出力する。
【0035】
補正処理部44は、位相のうち、心臓の拡張期及び収縮期の各々に含まれ、かつ仮静止位相を含む位相範囲に含まれる位相に対応する投影データから再構成され、心臓の動きが補正された第2の再構成画像を生成する機能を有する。一例として、本実施形態の補正処理部44は、仮静止位相の±10%の範囲(
図4B参照)について、当該範囲に含まれる位相に対応する投影データを、撮影時における心臓の動きを補正しながら再構成することで、第2の再構成画像を生成する。具体例として、拡張期の仮静止位相が77%の場合、67%以上、87%以下の位相範囲に含まれる位相に対応する投影データを用いる。また、収縮期の仮静止位相が44%の場合、34%以上、54%以下の位相範囲に含まれる位相に対応する投影データを用いる。本実施形態における仮静止位相の±10%の範囲が、本開示の第2の位相範囲の一例である。
【0036】
なお、補正処理部44が、心臓の動きを補正する方法、換言すると、心臓の動きを補正しながら投影データを再構成する方法は、限定されない。例えば、心臓の動き情報を画像から取得し、当該画像の撮影に用いられた管電流の比と、動き情報とを用いて投影データを再構成することにより、心臓の動きが補正された第2の再構成画像を生成してもよい。
【0037】
仮静止位相の±10%の範囲に含まれる位相に対応する投影データ用いて、正対する位置の第一画像および第二画像を生成し、第一画像及び第二画像のそれぞれに対し、ノイズ低減処理及びノイズ低減後のレジストレーション処理を行い、被写体の動き情報を取得する。その際、第一画像及び第二画像を取得したときの管電流の比に基づいて、ノイズ低減処理に用いるノイズ低減フィルタの種類及びパラメータの少なくとも一方、及び、レジストレーション処理に用いる非剛体レジストレーションアルゴリズムのパラメータを調整し、動き情報を用いて投影データ再構成することにより、第2の再構成画像を生成してもよい。静止位相特定部46が再構成する再構成画像が、本開示の第2の再構成画像の一例である。
【0038】
補正処理部44によって生成された第2の再構成画像は、静止位相特定部46に出力される。
【0039】
静止位相特定部46は、第2の再構成画像に基づいて、心臓の静止位相を特定する機能を有する。なお、静止位相特定部46が、静止位相を特定する方法は、限定されない。例えば、上述したCardioHarmony(登録商標)を用いて最適心位相として検出された位相を静止位相として特定してもよい。なお、本実施形態の静止位相特定部46が、心臓の拡張期における静止位相と、縮小期における静止位相とを特定する。
【0040】
次に、本実施形態のコンソール30の作用について説明する。
【0041】
本実施形態のコンソール30は、一例として、ユーザが操作部36により入力した、表示させたい放射線画像X及び超音波画像Uの表示条件を受け付けた場合、制御部32のCPU32Aが、ROM32Bに記憶されている画像処理プログラム33を実行することにより、
図5に一例を示した画像処理を実行する。
図5には、本実施形態のコンソール30おける画像処理の流れの一例を表したフローチャートが示されている。
【0042】
まず、
図5のステップS100で取得部40は、上述したように、被検体Sの心臓を放射線CT撮影装置10により撮影することにより得られた、心位相が対応づけられた投影データを取得する。
【0043】
次のステップS102で、仮静止位相特定部42は、上述したように、第1の再構成画像を生成する。位相のうち、心臓の拡張期及び収縮期の各々(
図4B参照)に含まれる位相に対応する投影データを再構成して、第1の再構成画像を生成する。
【0044】
次のステップS104で、仮静止位相特定部42は、上述したように、上記ステップS102で生成した第1の再構成画像を用い、仮静止位相を特定する。
【0045】
なお、上述した仮静止位相特定部42が、CardioHarmony(登録商標)を用いる場合、ステップS102、S104の処理は、まとめて行われることになる。
【0046】
次のステップS106で、補正処理部44は、上述したように、上記ステップS104で特定した仮静止位相の±10%の位相範囲(
図4B参照)の位相に対応する投影データを、上記ステップS100で取得した投影データの中から抽出する。
【0047】
次のステップS108で、補正処理部44は、上述したように、上記ステップS106で抽出した投影データについて、撮影時における心臓の動きを補正しながら再構成し、第2の再構成画像を生成する。
【0048】
次のステップS110で、静止位相特定部46は、上記ステップS108で生成した第2の再構成画像に基づいて、静止位相を特定する。ここで特定した静止位相は所定の出力先に出力される。例えば、コンソール30の表示部38に出力する場合、静止位相を表す情報と、静止位相における第2の再構成画像とを表示部38に表示させるようにしてもよい。また、記憶部34に出力する場合、取得部40が取得した投影データ及び静止位相における第2の再構成画像の少なくとも一方に対応づけて記憶部34に記憶させるようにしてもよい。ステップS110の処理が終了すると、
図5に示した画像処理が終了する。
【0049】
このように本実施形態のコンソール30によれば、比較的、処理負荷が小さく、処理時間を要さない方法により、仮静止位相を特定し、特定した仮位相により絞り込んだ位相範囲の位相について、心臓の動きが補正された再構成画像を生成する。そして、心臓の動きが補正された再構成画像から静止位相を特定する。これにより、本実施形態のコンソール30によれば、処理に要する時間を抑制しつつ、静止位相を精度良く特定することができる。
【0050】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、補正処理部44及び静止位相特定部46の処理が異なるため異なる処理について説明する。
【0051】
本実施形態の補正処理部44は、上述した、被写体の動きが補正された第2の再構成画像を生成する際に、第1再構成条件により第2の再構成画像を生成する。そして、補正処理部44は、第2の再構成画像に対応する位相から、被写体の静止位相が含まれる位相範囲を特定する。この第3の位相範囲は、心臓の動きが予め定められた閾値よりも少ない位相範囲である。なお、第3の位相範囲は、仮静止位相の±10%の位相範囲以下の範囲であり、仮静止位相の±10%の位相範囲に含まれる範囲である。
【0052】
また、補正処理部44は、新たに特定した仮位相範囲の±5%の位相範囲に含まれる位相に対応する、投影データから第2の再構成条件により再構成され、被写体の動きが補正された第3の再構成画像を生成する。
【0053】
こでこ、第2の再構成条件は、第1の再構成条件よりも、再構成により得られた再構成画像が高画質となるための条件である。この場合、高画質の画像を得るための処理負荷が大きくなるため、処理に要す時間が、比較的、長くなる。この場合の再構成条件としては、スライス厚や、スライス間隔に係わる条件等が挙げられる。
【0054】
一方、第1の再構成条件は、位相の検出が十分に行える画質が得られればよく、第2の再構成条件により得られた再構成画像よりも画質が低い条件である。この場合、画質を抑えることができるため、処理に要する時間を短縮することができる。この場合の再構成条件としては、FOV(field of view)、フィルタ、及びマトリクサイズに係わる条件等が挙げられる。
【0055】
さらに、補正処理部44は、生成した第3の再構成画像に基づいて、上述したように心臓の静止位相を特定する。
【0056】
このように、本実施形態では、心臓の動きが補正された補正画像を再構成する場合においても、比較的、処理時間を要さない方法により位相範囲をさらに絞り込み、絞り込まれた位相範囲について、より高画質の再構成を生成する。そのため、本実施形態のコンソール30によれば、処理時間が増加するのを抑制しつつ、より高精度に静止位相を特定することができる。
【0057】
なお、本実施形態とことなり、仮静止位相特定部42の処理を省略してもよい。すなわち、全位相範囲について、本実施形態の補正処理部44及び静止位相特定部46の処理を実行してもよい。
【0058】
〔第3実施形態〕
本実施形態では、仮静止位相特定部42、補正処理部44、及び静止位相特定部46の処理が異なるため異なる処理について説明する。
【0059】
仮静止位相特定部42は、第1の再構成画像を第1の位相間隔で生成する。
【0060】
補正処理部44は、仮静止位相特定部42は、第1の位相間隔よりも広い第2の位相間隔で第2の再構成画像を生成する。
【0061】
また、補正処理部44は、第2の再構成画像を生成した位相に対応する投影データから再構成された第3の再構成画像を生成する。なお、第3の再構成画像は、心臓の動きが補正されていない再構成画像である。
【0062】
そして、静止位相特定部46は、対応する位相毎の、第2の再構成画像と第3の再構成画像とのずれに基づいて、心臓の静止位相を特定する。この場合、静止位相特定部46は、第2の再構成画像と第3の再構成画像とのずれが最小となる位相を心臓の静止位相として特定するとよい。
【0063】
このように、本実施形態では、動きが補正された第2の再構成画像と、動きが補正されていない第3の再構成画像とを比較しながら静止位相を特定する。これにより、本実施形態のコンソール30では、比較的容易な処理により、静止位相を特定することができる。
【0064】
以上説明したように、上記各実施形態のコンソール30によれば、処理に要する時間を抑制しつつ、静止位相を精度良く特定することができる。
【0065】
なお、上記各実施形態において、取得部40、仮静止位相特定部42、補正処理部44、及び静止位相特定部46といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0066】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0067】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態が挙げられる。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態が挙げられる。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0068】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0069】
また、上記実施形態では、画像処理プログラム33がコンソール30の記憶部34に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。画像処理プログラム33は、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、画像処理プログラム33は、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0070】
また、上記各実施形態で説明した放射線CT撮影装置10、及びコンソール30等の構成及び動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることはいうまでもない。また、上記各実施形態を適宜組み合わせてもよいこともいうまでもない。
【0071】
以上の上記実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
被写体の撮影部位に対して複数の方向から順次照射された放射線により、前記被写体の心電図と同期して撮影され、前記心電図により特定される位相に対応する投影データを取得し、
前記位相のうち、第1の位相範囲に含まれる位相に対応する前記投影データから再構成された第1の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相と仮定する仮静止位相を特定し、
前記位相のうち、前記第1の位相範囲に含まれ、かつ前記仮静止位相を含む第2の位相範囲に含まれる位相に対応する前記投影データから再構成され、前記被写体の動きが補正された第2の再構成画像を生成し、
前記第2の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相を特定する
画像処理装置。
【0072】
(付記2)
前記プロセッサは、
第1の再構成条件により前記第2の再構成画像を生成し、
前記第2の再構成画像に対応する位相から、前記被写体の静止位相が含まれる第3の位相範囲を特定し、
前記第3の位相範囲に含まれる位相に対応する、前記投影データから第2の再構成条件により再構成され、前記被写体の動きが補正された第3の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相を特定し、
前記第2の再構成条件は、前記第1の再構成条件よりも高画質な再構成画像が得られる処理条件である
付記1に記載の画像処理装置。
【0073】
(付記3)
前記プロセッサは、
前記被写体の動きが予め定められた閾値よりも少ない位相に応じた範囲を前記第3の位相範囲として特定する
付記2に記載の画像処理装置。
【0074】
(付記4)
前記プロセッサは、
第1の位相間隔で前記第1の再構成画像を生成し、
前記第1の位相間隔よりも広い第2の位相間隔で前記第2の再構成画像を生成し、
前記第2の再構成画像を生成した位相に対応する前記投影データから再構成された第3の再構成画像を生成し、
対応する位相毎の、前記第2の再構成画像と前記第3の再構成画像とのずれに基づいて、前記被写体の静止位相を特定する
付記1に記載の画像処理装置。
【0075】
(付記5)
前記プロセッサは、
前記第2の再構成画像と前記第3の再構成画像とのずれが最小となる位相を前記被写体の静止位相として特定する
付記4に記載の画像処理装置。
【0076】
(付記6)
前記第1の位相範囲は、前記被写体の拡張期、及び収縮期の少なくとも一方に対応する範囲である
付記1から付記5のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0077】
(付記7)
画像処理装置が備えるプロセッサが、
被写体の撮影部位に対して複数の方向から順次照射された放射線により、前記被写体の心電図と同期して撮影され、前記心電図により特定される位相に対応する投影データを取得し、
前記位相のうち、第1の位相範囲に含まれる位相に対応する前記投影データから再構成された第1の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相と仮定する仮静止位相を特定し、
前記位相のうち、前記第1の位相範囲に含まれ、かつ前記仮静止位相を含む第2の位相範囲に含まれる位相に対応する前記投影データから再構成され、前記被写体の動きが補正された第2の再構成画像を生成し、
前記第2の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相を特定する
画像処理方法。
【0078】
(付記8)
画像処理装置が備えるプロセッサに、
被写体の撮影部位に対して複数の方向から順次照射された放射線により、前記被写体の心電図と同期して撮影され、前記心電図により特定される位相に対応する投影データを取得し、
前記位相のうち、第1の位相範囲に含まれる位相に対応する前記投影データから再構成された第1の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相と仮定する仮静止位相を特定し、
前記位相のうち、前記第1の位相範囲に含まれ、かつ前記仮静止位相を含む第2の位相範囲に含まれる位相に対応する前記投影データから再構成され、前記被写体の動きが補正された第2の再構成画像を生成し、
前記第2の再構成画像に基づいて、前記被写体の静止位相を特定する
処理を実行させるための画像処理プログラム。
【符号の説明】
【0079】
10 放射線CT撮影装置
20 ガントリ
23 放射線発生装置
24 ボウタイフィルタ
25 コリメータ
26 開口部
27 寝台
28 検出器パネル
30 コンソール
32 制御部、32A CPU、32B ROM、32C RAM
33 画像処理プログラム
34 記憶部
35 I/F部
36 操作部
38 表示部
39 バス
40 取得部
42 仮静止位相特定部
44 補正処理部
46 静止位相特定部
R 放射線
S 被検体