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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025148856
(43)【公開日】2025-10-08
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/40 20060101AFI20251001BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20251001BHJP
【FI】
H05K3/40 K
B32B7/025
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049184
(22)【出願日】2024-03-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 雄一
【テーマコード(参考)】
4F100
5E317
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB10A
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA41C
4F100JG01C
4F100JG04C
4F100JL11B
4F100YY00C
5E317AA01
5E317AA24
5E317BB01
5E317BB03
5E317BB04
5E317BB05
5E317BB11
5E317BB12
5E317BB13
5E317BB14
5E317BB15
5E317GG20
(57)【要約】
【課題】個片化した際に取り扱いが良好な異方導電性部材を有する積層体を提供する。
【解決手段】支持体と、接着層と、異方導電性部材とがこの順で積層された積層体であって、異方導電性部材は、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材と、絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに電気的に絶縁された状態で設けられた、複数の導通路とを有し、複数の導通路は、それぞれ導電性物質で構成されており、かつ絶縁性基材の厚み方向における一方の面の直径と、厚み方向における他方の面の直径とが異なっており、導通路の一方の面の直径及び他方の面の直径のうち、直径が小さい小径と、直径が大きい大径との比である小径/大径の値をRとするとき、0.1≦R≦0.98である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、接着層と、異方導電性部材とがこの順で積層された積層体であって、
前記異方導電性部材は、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材と、前記絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに電気的に絶縁された状態で設けられた、複数の導通路とを有し、
前記複数の前記導通路は、それぞれ導電性物質で構成されており、かつ前記絶縁性基材の前記厚み方向における一方の面の直径と、前記厚み方向における他方の面の直径とが異なっており、
前記導通路の前記一方の面の直径及び前記他方の面の直径のうち、前記直径が小さい小径と、前記直径が大きい大径との比である小径/大径の値をRとするとき、0.1≦R≦0.98である、積層体。
【請求項2】
前記異方導電性部材は、前記導通路の前記一方の面の直径及び前記他方の面の直径のうち、前記直径が大きい側の面を前記接着層に向けて積層されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記接着層は、接着力が特定の温度範囲で低下するか、又は接着力が紫外線により低下する、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記接着層は、温度が110℃以上で前記接着力が低下する、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記絶縁性基材は、バルブ金属の陽極酸化膜である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項6】
前記絶縁性基材の前記一方の面及び前記他方の面における前記導通路の密度が、1×106~1×1010/mm2であり、前記導通路の前記直径は、10nm以上500nm以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項7】
前記絶縁性基材は、厚みが10μm以上30μm以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項8】
前記小径/大径の値Rが、0.1≦R≦0.95である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項9】
前記支持体は、金属層を有する接合部材であり、前記金属層が前記接着層から露出している、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項10】
前記異方導電性部材は、前記絶縁性基材にクラックを有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項11】
前記導通路は、前記絶縁性基材の前記厚み方向において対向する面のうち、少なくとも一方の面から突出する突出部を有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体と、接着層と、異方導電性部材とがこの順で積層された積層体に関し、特に、異方導電性部材の導通路の直径が対向する面で異なる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性基材に設けられた複数の貫通孔に金属等の導電性物質が充填された導通路を有する異方導電性部材がある。
異方導電性部材は、半導体素子等の電子部品と回路基板との間に挿入し、加圧するだけで電子部品と回路基板間の電気的接続が得られるため、半導体素子等の電子部品等の電気的接続部材、及び機能検査を行う際の検査用コネクタ等として広く使用されている。
特に、半導体素子等の電子部品は、ダウンサイジング化が顕著である。従来のワイヤーボンディングのような配線基板を直接接続する方式、フリップチップボンディング、及びサーモコンプレッションボンディング等では、電子部品の電気的な接続の安定性を十分に保証することができない場合があるため、電子接続部材として異方導電性部材が注目されている。
【0003】
異方導電性部材として、例えば、特許文献1に、無機材料からなる絶縁性基材と、導電性部材からなる複数の導通路と、絶縁性基材の表面の全面に設けられた樹脂層とを具備する異方導電性接合部材が記載されている。導通路は互いに絶縁された状態で絶縁性基材を厚み方向に貫通して設けられている。導通路は、互いに平行であり、かつ絶縁性基材の表面から突出した突出部分を有しており、突出部分の端部が樹脂層に埋設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-037509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1の異方導電性接合部材を電子接続部材に用いた場合、異方導電性接合部材は、接続対象である半導体素子毎に設けられるため、異方導電性接合部材の大きさを半導体素子の大きさに応じた大きさにする必要がある。このため、特許文献1の異方導電性接合部材は、半導体素子の大きさに応じた大きさに個片化される。
個片化された異方導電性接合部材を用いて、半導体素子と回路基板とを電気的に接続する場合、個片化した異方導電性接合部材を、例えば、回路基板の予め定められた位置に移送する必要がある。しかしながら、個片化した異方導電性接合部材を、損傷させることなく把持して搬送することが難しい。このため、異方導電性部材を個片化した際に、損傷させることなく把持又は搬送できる等、取り扱いに優れたものが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、個片化した際に取り扱いが良好な異方導電性部材を有する積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、発明[1]は、支持体と、接着層と、異方導電性部材とがこの順で積層された積層体であって、異方導電性部材は、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材と、絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに電気的に絶縁された状態で設けられた、複数の導通路とを有し、複数の導通路は、それぞれ導電性物質で構成されており、かつ絶縁性基材の厚み方向における一方の面の直径と、厚み方向における他方の面の直径とが異なっており、導通路の一方の面の直径及び他方の面の直径のうち、直径が小さい小径と、直径が大きい大径との比である小径/大径の値をRとするとき、0.1≦R≦0.98である、積層体である。
【0008】
発明[2]は、異方導電性部材は、導通路の一方の面の直径及び他方の面の直径のうち、直径が大きい側の面を接着層に向けて積層されている、発明[1]に記載の積層体である。
発明[3]は、接着層は、接着力が特定の温度範囲で低下するか、又は接着力が紫外線により低下する、発明[1]又は[2]に記載の積層体である。
発明[4]は、接着層は、温度が110℃以上で接着力が低下する、発明[3]に記載の積層体である。
発明[5]は、絶縁性基材は、バルブ金属の陽極酸化膜である、発明[1]~[4]のいずれか1つに記載の積層体である。
発明[6]は、絶縁性基材の一方の面及び他方の面における導通路の密度が、1×106~1×1010/mm2であり、導通路の直径は、10nm以上500nm以下である、発明[1]~[5]のいずれか1つに記載の積層体である。
【0009】
発明[7]は、絶縁性基材は、厚みが10μm以上30μm以下である、発明[1]~[6]のいずれか1つに記載の積層体である。
発明[8]は、絶縁性基材は、小径/大径の値Rが、0.1≦R≦0.95である、発明[1]~[7]のいずれか1つに記載の積層体である。
発明[9]は、支持体は、金属層を有する接合部材であり、金属層が接着層から露出している、発明[1]~[8]のいずれか1つに記載の積層体である。
発明[10]は、異方導電性部材は、絶縁性基材にクラックを有する、発明[1]~[9]のいずれか1つに記載の積層体である。
発明[11]は、導通路は、絶縁性基材の厚み方向において対向する面のうち、少なくとも一方の面から突出する突出部を有する、発明[1]~[10]のいずれか1つに記載の積層体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、個片化した際に取り扱いが良好な異方導電性部材を有する積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の積層体の第1例を示す模式的断面図である。
図2】本発明の実施形態の積層体の第1例を示す模式的平面図である。
図3】本発明の実施形態の積層体の第1例の切断形態の一例を示す模式的平面図である。
図4】個片化された異方導電性部材の一例を示す模式図である。
図5】本発明の実施形態の積層体の第1例の異方導電性部材の他の例を示す模式的平面図である。
図6】本発明の実施形態の積層体の第2例を示す模式的断面図である。
図7】本発明の実施形態の積層体の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
図8】本発明の実施形態の積層体の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
図9】本発明の実施形態の積層体の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
図10】本発明の実施形態の積層体の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
図11】本発明の実施形態の積層体の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
図12】本発明の実施形態の積層体の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
図13】本発明の実施形態の積層体の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
図14】本発明の実施形態の積層体の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
図15】本発明の実施形態の積層体の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の積層体を詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、本発明を説明するために簡略化している。このため、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
なお、以下において数値範囲を示す「~」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値εα~数値εβとは、εの範囲は数値εαと数値εαを含む範囲であり、数学記号で示せばεα≦ε≦εαである。
平行については、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
温度及び時間について、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
また、「同一」とは、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。また、「全面」等は、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
以下、積層体について具体的に説明する。
【0013】
[積層体の第1例]
図1は本発明の実施形態の積層体の第1例を示す模式的断面図であり、図2は本発明の実施形態の積層体の第1例を示す模式的平面図である。図2図1の絶縁性基材20の表面20a側から見た平面図であり、樹脂層18がない状態を示す。
図1に示す積層体10は、支持体12と、接着層14と、異方導電性部材16とがこの順で積層されたものである。支持体12の表面12aに接着層14が設けられ、接着層14の表面14aに異方導電性部材16が設けられている。積層体10は、更に異方導電性部材16上に樹脂層18が設けられている。
支持体12と、接着層14と、異方導電性部材16とが積層された方向が積層方向Dsである。
【0014】
支持体12は、異方導電性部材16を支持するものである。支持体12を設けることにより、異方導電性部材16を単体で扱う場合に比して異方導電性部材16の取り扱いが良好になる。支持体12は、アーム又は搬送治具等を用いた機械による搬送が可能な剛性及び大きさを有することが好ましい。
ここで、取り扱いとは、異方導電性部材16を把持及び保持すること、並びに異方導電性部材16の移送、搬送及び運搬等の異方導電性部材16を移動させることである。取り扱いについては、異方導電性部材16を個片した異方導電性部材17についても、異方導電性部材16と同様である。
取り扱いが良好とは、上述の異方導電性部材16の把持及び保持の際、並びに上述の異方導電性部材16の移動、搬送及び運搬等の際に、異方導電性部材16の損傷等を抑制できることをいう。
支持体12は、搬送及び各種の加工機器への設置等の取り扱い性の観点から、外形及び大きさが、異方導電性部材16の外形及び大きさと同じであることが好ましい。この場合、異方導電性部材16の外形が特定の直径の円形である場合、支持体12の外形も、特定の直径の円形であることが好ましい。
【0015】
接着層14は、支持体12と異方導電性部材16とを接着する。異方導電性部材16の導通路22が絶縁性基材20から突出する突出部を有する場合、突出部を保護する保護層としての機能を果たす。
また、異方導電性部材16を支持体12から容易に剥離するために、接着層14は、接着力が特定の温度範囲で低下するか、又は接着力が紫外線により接着力が低下することが好ましい。接着層14については後に説明する。
【0016】
異方導電性部材16は、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材20と、絶縁性基材20の厚み方向Dtに貫通し、互いに電気的に絶縁された状態で設けられた、複数の導通路22とを有する。
この場合、例えば、絶縁性基材20は、厚み方向Dtに貫通する複数の細孔21を有する。複数の細孔21に導電性物質が充填されて、複数の導通路22が構成される。導通路22は、導電性物質で構成された、電気導電性を有する柱状の導電体である。
異方導電性部材16は、異方導電性を有するものであり、厚み方向Dtに導電性を有するが、絶縁性基材20の表面20aに平行な方向xにおける導電性が十分に低い。
ここで、絶縁性基材20の表面20aと絶縁性基材20の裏面20bとは、絶縁性基材20の厚み方向Dtにおいて対向する面である。絶縁性基材20は、例えば、バルブ金属の陽極酸化膜で構成される。
【0017】
例えば、導通路22は、絶縁性基材20の表面20aから突出した突出部22aを有する。導通路22は、絶縁性基材20の裏面20bから突出した突出部22bを有する。導通路22の突出部22aは樹脂層18に埋設されている。導通路22の突出部22bは接着層14に埋設されている。
導通路22は、突出部22aと突出部22bを有する構成としたが、これに限定されるものではない。導通路22は、絶縁性基材20の厚み方向Dtにおいて対向する面のうち、少なくとも一方の面から突出する突出部を有する構成でもよい。すなわち、突出部22a及び突出部22bのうち、少なくとも一方を有する構成でもよい。更には、導通路22は、突出部22a及び突出部22bがない構成でもよい。
【0018】
積層体10は、図2に示すように、例えば、外形が円形である。なお、積層体10の外形は、円形に限定されるものではなく、例えば、四角形でもよい。積層体10の外形は、用途、作製しやすさ等に応じた形状とすることができる。積層体10において、例えば、支持体12にシリコンウエハを用いる場合、異方導電性部材16の外形は円形とする。
【0019】
異方導電性部材16において、複数の導通路22は、それぞれ、上述のように導電性物質で構成されており、かつ絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける一方の面の直径と、厚み方向Dtにおける他方の面の直径とが異なっている。すなわち、導通路22は、絶縁性基材20の表面20aにおける直径Daと、絶縁性基材20の裏面20bにおける直径Dbとが異なっている。図1に示す異方導電性部材16では、直径Da<直径Dbの関係にあり、直径Daが小径であり、直径Dbが大経である。異方導電性部材16は、導通路22の直径Dbが大きい側の面である絶縁性基材20の裏面20bを接着層14に向けて積層されている。
【0020】
上述のように導通路22は、絶縁性基材20の表面20aにおける直径Daと、絶縁性基材20の裏面20bにおける直径Dbとが異なっている。導通路22の側面22cは、一例として、絶縁性基材20の厚み方向Dtに対して傾斜した斜面で構成されており、屈曲部等がない構成である。側面22cは、図1に示す断面では、厚み方向Dtにおいて絶縁性基材20の裏面20bから表面20aに向かって連続的に間隔が狭まっており、テーパー状である。側面22cは、図1に示すテーパー状の構成に特に限定されるものではない。
導通路22の絶縁性基材20の表面20aにおける形状が円ではない場合、絶縁性基材20の表面20aにおける直径Daは、円相当径の直径とする。
また、導通路22の絶縁性基材20の裏面20bにおける形状が円ではない場合、絶縁性基材20の裏面20bにおける直径Dbは、円相当径の直径とする。
なお、図1に示す導通路22は、突出部22a及び突出部22bを有する構成である。導通路22が突出部22a及び突出部22bを有する場合でも、導通路22が突出部22a及び突出部22bを有さない場合でも、直径Daは絶縁性基材20の表面20aにおける直径であり、直径Dbは絶縁性基材20の裏面20bにおける直径である。
【0021】
導通路22の一方の面の直径及び他方の面の直径のうち、直径が小さい小径と、直径が大きい大径との比である小径/大径の値をRとするとき、0.1≦R≦0.98であり、好ましくは0.1≦R≦0.95であり、より好ましくは0.1≦R≦0.85であり、更に好ましくは0.5<R≦0.85である。
なお、上述の小径/大径の値Rは、R=Da/Dbで表される。この場合、0.1≦R≦0.98は、0.1Db≦Da≦0.98Dbとなる。
【0022】
小径/大径の値Rが0.1≦R≦0.98であると、絶縁性基材20の表面20aと裏面20bとで導通路22が占める割合が異なる。これにより、絶縁性基材20の表面20a内に作用する力と、絶縁性基材20の裏面20b内に作用する力とに違いが生じる。絶縁性基材20の表面20a内と、絶縁性基材20の裏面20b内とに生じる力の差に基づいて、絶縁性基材20の表面20aに生じる応力と、絶縁性基材20の裏面20bに生じる応力とについて応力差が生じる。この応力差に基づいて、異方導電性部材16が個片化されると反る。個片化された異方導電性部材17が反ることで、異方導電性部材17の一部が、支持体の表面等の設置面から離れて浮く。これにより、異方導電性部材は個片化した際に、取り外しやすく取り扱いが容易になる。すなわち、取り扱いが良好となる。
また、小径/大径の値Rが0.1≦R≦0.85であると、異方導電性部材を個片化した際に、更に取り外しやすくなり、取り扱いが更に良好なものとなる。小径/大径の値Rが0.5<R≦0.85であると、異方導電性部材を個片化した際に、更に取り外しやすく取り扱いが更に良好なことに加えて、個片化した異方導電性部材を取り出した後の異方導電性部材の品質が良好であった。
【0023】
ここで、図3は本発明の実施形態の積層体の第1例の切断形態の一例を示す模式的平面図であり、図4は個片化された異方導電性部材の一例を示す模式図である。図3及び図4において、図1及び図2に示す積層体10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。図3は樹脂層18の図示を省略している。
図3に示す積層体10の異方導電性部材16を、例えば、レーザー又はダイシングソーを用いて、例えば、四角形状に切断する。これにより、異方導電性部材16は個片化される。切断された異方導電性部材16のうち、個片化された異方導電性部材17は、互い独立しており、絶縁性基材20の表面20a(図1参照)と平行な方向において拘束を受けていない。
【0024】
異方導電性部材16が個片化された後、例えば、接着層14(図1参照)が温度により接着力が弱くなる性質である場合、加熱処理を施して、接着層14による接着力を弱める。これにより、個片化された異方導電性部材17は接着層14による支持体12への拘束力が小さくなり、個片化された異方導電性部材17を支持体12(図1参照)から容易に取り外すことができる。このとき、上述のように0.1≦R≦0.98であると、絶縁性基材20の表面20aにおける直径Daと、絶縁性基材20の裏面20bにおける直径Dbとの違いに基づく応力差により、図4に示すように個片化した異方導電性部材17に反りが生じる。直径Da<直径Dbの関係にある異方導電性部材16は、図4に示すように個片化すると支持体12の表面12aに対して凸に反り、個片化された異方導電性部材17の一部が、支持体12の表面12aから離れて浮く。
例えば、フリップチップボンディング装置(図示せず)のヘッド(図示せず)を用いてチップトレイにある個片化された異方導電性部材17を搬送する場合、又はチップマウンター(図示せず)のヘッド(図示せず)を用いて個片化された異方導電性部材17を搬送する場合、反った異方導電性部材17は、反っていない異方導電性部材に比して、反っている分、ヘッド等で把持等がしやすくなり、取り外しが容易になることから、取り扱いが優れる。
このように、異方導電性部材において導通路22の一方の面の直径及び他方の面の直径との差により生じる応力差を利用して、0.1≦R≦0.98とすることにより、個片化された異方導電性部材17を反る構成として、異方導電性部材17を容易に取り扱うことができ、取り扱いを良好にできる。
【0025】
図1に示す樹脂層18は、絶縁性基材20の表面20a上に設けられており、例えば、表面20aの全面が樹脂層18に覆われている。樹脂層18は、例えば、導通路22が突出部22aを有するものであれば、突出部22aを埋設する。すなわち、樹脂層18は、絶縁性基材20の表面20aから突出した導通路22の端部を被覆し、突出部22aを保護する。
【0026】
以下、積層体の構成についてより具体的に説明する。
(支持体)
支持体12は、上述のように異方導電性部材16を支持するものであり、例えば、シリコン基板で構成されている。シリコン基板には、例えば、シリコンウエハと呼ばれるものが用いられる。支持体12としては、シリコン基板以外に、例えば、SiC、SiN、GaN及びアルミナ(Al)等のセラミックス基板、ガラス基板、繊維強化プラスチック基板、並びに金属基板を用いることができる。繊維強化プラスチック基板には、プリント配線基板であるFR-4(Flame Retardant Type 4)基板等も含まれる。
また、支持体12としては、可撓性を有し、かつ透明であるものを用いることができる。可撓性を有し、かつ透明な支持体12としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン及びTAC(トリアセチルセルロース)等のプラスチックフィルムが挙げられる。
ここで、透明とは、位置合せに使用する波長の光で透過率が80%以上であることをいう。このため、波長400~800nmの可視光全域で透過率が低くてもよいが、波長400~800nmの可視光全域で透過率が80%以上であることが好ましい。なお、透過率は、分光光度計により測定される。
接着層14に紫外線により接着力が低下するものを用いた場合、支持体12が上述のように透明であると、すなわち、支持体12の紫外線の透過率が80%以上であると、接着層14に紫外線を照射しやすくなるため好ましい。
ここで、紫外線とは、波長が10~400nmの光のことである。紫外線の好ましい波長範囲は200~400nmであり、より好ましい紫外線の波長範囲は300~400nmである。
【0027】
(接着層)
接着層は、接着力が特定の温度範囲で低下するか、又は接着力が紫外線により接着力が低下するものであることが好ましい。例えば、接着層は、剥離可能な粘着層付きフィルムであることが好ましく、特定の温度範囲にする処理又は紫外線露光処理により粘着性が弱くなり、剥離可能となる粘着層付きフィルムであることがより好ましい。
また、接着層は、例えば、温度が110℃以上で接着力が低下するものが用いられる。
【0028】
上述の粘着層付きフィルムは特に限定されず、熱剥離型の樹脂層、及び紫外線(ultraviolet:UV)剥離型の樹脂層等が挙げられる。
ここで、熱剥離型の樹脂層は、常温では粘着力があり、加熱するだけで容易に剥離可能なもので、主に発泡性のマイクロカプセル等を用いたものが多い。
また、粘着層を構成する粘着剤としては、具体的には、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤等が挙げられる。
【0029】
また、UV剥離型の樹脂層は、UV硬化型の接着層を有するもので硬化により粘着力が失われて剥離可能になるというものである。
UV硬化型の接着層としては、ベースポリマーに、炭素-炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に導入したポリマー等が挙げられる。炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とすることが好ましい。
更に、アクリル系ポリマーは、架橋させるため、多官能性モノマー等も、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。
炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーは単独で使用することができるが、UV硬化性のモノマー又はオリゴマーを配合することもできる。
UV硬化型の接着層は、UV照射により硬化させるために光重合開始剤を併用することが好ましい。光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル系化合物;ケタール系化合物;芳香族スルホニルクロリド系化合物;光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。
【0030】
熱剥離型の樹脂層の市販品としては、例えば、WS5130C02、WS5130C10等のインテリマー〔登録商標〕テープ(ニッタ株式会社製);ソマタック〔登録商標〕TEシリーズ(ソマール株式会社製);No.3198、No.3198LS、No.3198M、No.3198MS、No.3198H、No.3195、No.3196、No.3195M、No.3195MS、No.3195H、No.3195HS、No.3195V、No.3195VS、No.319Y-4L、No.319Y-4LS、No.319Y-4M、No.319Y-4MS、No.319Y-4H、No.319Y-4HS、No.319Y-4LSC、No.31935MS、No.31935HS、No.3193M、No.3193MS等のリバアルファ〔登録商標〕シリーズ(日東電工株式会社製);等が挙げられる。
【0031】
UV剥離型の樹脂層の市販品としては、例えば、ELP DU-300、ELP DU-2385KS、ELP DU-2187G、ELP NBD-3190K、ELP UE-2091J等のエレップホルダー〔登録商標〕(日東電工株式会社製);Adwill D-210、Adwill D-203、Adwill D-202、Adwill D-175、Adwill D-675(いずれもリンテック株式会社製);スミライト〔登録商標〕FLSのN8000シリーズ(住友ベークライト株式会社製);UC353EP-110(古河電気工業株式会社製);等のダイシングテープ、ELP RF-7232DB、ELP UB-5133D(いずれも日東電工株式会社製);SP-575B-150、SP-541B-205、SP-537T-160、SP-537T-230(いずれも古河電気工業株式会社製);等のバックグラインドテープを利用することができる。
【0032】
また、上述の粘着層付きフィルムを貼り付ける方法は特に限定されず、従来公知の表面保護テープ貼付装置及びラミネーターを用いて貼り付けることができる。
接着層14の平均厚みhmは、10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。接着層14の平均厚みhmが上述の10μm以下であれば、導通路22の突出部を保護し、かつ支持体12に対して十分な接着力を発揮できる。
接着層14の平均厚みhmは、絶縁性基材20の裏面20bからの平均距離である。
接着層14の平均厚みhmは、以下のように測定する。まず、接着層14を異方導電性部材16の厚み方向Dtに切断し、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて切断断面の撮影画像を取得する。撮影画像において、接着層に該当する絶縁性基材20の裏面20bからの距離を10箇所測定し、測定した10箇所の長さの平均値を求める。この平均値を接着層14の平均厚みhmとする。
【0033】
(絶縁性基材)
絶縁性基材20は、電気的な絶縁性を有するものであり、導電性物質で構成された、複数の導通路22を互いに電気的に絶縁された状態に保つ。絶縁性基材20は、導通路22が形成される複数の細孔21を有する。絶縁性基材の組成等については後に説明する。
絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける長さ、すなわち、絶縁性基材20の厚みhtは、1~1000μmの範囲内であるのが好ましく、5~500μmの範囲内であるのがより好ましく、10~300μmの範囲内であるのが更に好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。絶縁性基材20の厚みがこの範囲であると、絶縁性基材20の取り扱い性が良好となる。
【0034】
絶縁性基材の厚みは、以下のように測定する。まず、絶縁性基材を厚み方向Dtに対して集束イオンビーム(FIB)を用いて切削加工し、その断面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率50000倍の撮影画像を取得する。撮影画像において、絶縁性基材の厚みに相当する箇所の長さを10箇所測定し、測定した10箇所の長さの平均値を求める。この平均値を絶縁性基材の厚みとする。
【0035】
絶縁性基材20は、例えば、無機材料からなり、従来公知の異方導電性フィルム等を構成する絶縁性基材と同程度の電気抵抗率(1014Ω・cm程度)を有するものであれば特に限定されない。
なお、「無機材料からなり」とは、後述する樹脂層を構成する高分子材料と区別するための規定であり、無機材料のみから構成された絶縁性基材に限定する規定ではなく、無機材料を主成分(50質量%以上)とする規定である。
【0036】
絶縁性基材としては、例えば、金属酸化物基材、金属窒化物基材、ガラス基材、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド等のセラミックス基材、ダイヤモンドライクカーボン等のカーボン基材、ポリイミド基材、これらの複合材料等が挙げられる。絶縁性基材としては、これ以外に、例えば、貫通孔を有する有機素材上に、セラミックス材料又はカーボン材料を50質量%以上含む無機材料で成膜したものであってもよい。
【0037】
絶縁性基材は、所望の平均開口径を有するマイクロポア(細孔)が貫通孔として形成される。絶縁性基材は、導通路を形成しやすいという理由から、金属酸化物基材であることが好ましく、バルブ金属の陽極酸化膜であることがより好ましい。
ここで、バルブ金属としては、具体的には、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン等が挙げられる。これらのうち、寸法安定性がよく、比較的安価であることからアルミニウムの陽極酸化膜(基材)であることが好ましい。このため、アルミニウム基板を用いて、絶縁性基材である陽極酸化膜を形成し、異方導電性部材を製造することが好ましい。
陽極酸化膜の厚みは、上述の絶縁性基材20の厚みである。
【0038】
<アルミニウム基板>
絶縁性基材である陽極酸化膜を形成するためのアルミニウム基板は、特に限定されず、その具体例としては、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハ、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等が挙げられる。
【0039】
アルミニウム基板のうち、陽極酸化処理工程により陽極酸化膜を設ける表面は、アルミニウム純度が、99.5質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上であることがより好ましく、99.99質量%以上であることが更に好ましい。アルミニウム純度が上述の範囲であると、貫通孔配列の規則性が十分となる。マイクロポアは、細孔となるものである。
アルミニウム基板は、陽極酸化膜を形成することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、JIS(Japanese Industrial Standards) 1050材が用いられる。
【0040】
また、アルミニウム基板のうち陽極酸化処理工程を施す片側の表面は、あらかじめ熱処理、脱脂処理及び鏡面仕上げ処理が施されることが好ましい。
ここで、熱処理、脱脂処理及び鏡面仕上げ処理については、特開2008-270158号公報の[0044]~[0054]段落に記載された各処理と同様の処理を施すことができる。
陽極酸化処理の前の鏡面仕上げ処理は、例えば、電解研磨であり、電解研磨には、例えば、リン酸を含有する電解研磨液が用いられる。
【0041】
<細孔の平均直径>
細孔の平均直径は、1μm以下であることが好ましく、5~500nmであることがより好ましく、20~400nmであることが更に好ましく、40~200nmであることがより一層好ましく、50~100nmであることが最も好ましい。細孔21の平均直径が1μm以下であり、上述の範囲であると、上述の平均直径を有する導通路22を得ることができる。
細孔21の平均直径は、走査型電子顕微鏡を用いて絶縁性基材20の表面を真上から倍率100~10000倍で撮影し撮影画像を得る。撮影画像において、周囲が環状に連なっている細孔を少なくとも20個抽出し、その直径を測定し開口径とし、これら開口径の平均値を細孔の平均直径として算出する。
なお、倍率は、細孔を20個以上抽出できる撮影画像が得られるように上述した範囲の倍率を適宜選択することができる。また、開口径は、細孔部分の端部間の距離の最大値を測定する。すなわち、細孔の開口部の形状は略円形状に限定はされないので、開口部の形状が非円形状の場合には、細孔部分の端部間の距離の最大値を開口径とする。従って、例えば、2以上の細孔が一体化したような形状の細孔の場合にも、これを1つの細孔とみなし、細孔部分の端部間の距離の最大値を開口径とする。
【0042】
<導通路>
複数の導通路22は、上述のように絶縁性基材20、例えば、陽極酸化膜において、それぞれ互いに電気的に絶縁された状態で設けられている。
複数の導通路22は、それぞれ電気導電性を有する柱状の導電体であり、導電性物質で構成される。導電性物質は、特に限定されるものではなく、例えば、金属が挙げられる。金属の具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)及びコバルト(Co)等が好適に例示される。電気伝導性の観点から、銅、金、アルミニウム、ニッケル及びコバルトが好ましく、銅及び金がより好ましく、銅が最も好ましい。
金属は酸化物導電体に比して延性等に優れ変形しやすく、接合の際の圧縮でも変形しやすいため、導体は金属で構成することが好ましい。
厚み方向Dtにおける導通路22の高さは、10~300μmであることが好ましく、20~30μmであることがより好ましい。導通路22の高さは、突出部22aの突出長さha+絶縁性基材20の厚みht+突出部22bの突出長さhbである。
【0043】
<導通路の形状>
導通路22は、絶縁性基材20の表面20aにおける直径Daと、絶縁性基材20の裏面20bにおける直径Dbとが異なっている。しかしながら、導通路22の平均直径は、1μm以下であることが好ましく、10nm以上500nm以下であることがより好ましく、20~400nmであることがさらに好ましく、40~200nmであることがより一層好ましく、50~100nmであることが最も好ましい。
絶縁性基材20の一方の面及び他方の面における導通路22の密度、すなわち、絶縁性基材20の表面20a及び裏面20bにおける導通路22の密度は、半導体素子等の電子部品の検査用コネクタ等として使用することができる点から、1×106~1×1010/mm2であることが好ましい。上述の導通路22の密度は、2×106~8×109/mm2であることがより好ましく、5×106~5×109/mm2であることが更に好ましい。
さらに、隣接する各導通路22の中心間距離p(図1参照)は、20nm~500nmであることが好ましく、40nm~200nmであることがより好ましく、50nm~140nmであることがさらに好ましい。
導通路22に関し、隣接する突出部との間隔w(図1参照)は、20nm~200nmであり、40nm~100nmであることが好ましい。隣接する突出部との間隔が上述の範囲であると、導通路22の絶縁性基材20の表面20a又は裏面20bでも導通路22の間隔を維持できる。これにより、接合時において、導通路22の短絡が抑制され、接合時の信頼性が増す。
【0044】
導通路22における絶縁性基材20の表面20aにおける直径Daと、絶縁性基材20の裏面20bにおける直径Dbとは、それぞれ、以下のように測定する。
まず、異方導電性部材16の絶縁性基材20を厚み方向Dtに対して集束イオンビームを用いて切削加工し、その断面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率50000倍の撮影画像を取得する。撮影画像において、導通路22に相当するものを10個選択し、選択した10個の導通路22に相当するものにおいて、それぞれ直径Da及び直径Dbに該当する箇所の長さを測定する。測定した10個の導通路22について直径Daに該当する長さの平均値を求め、これを直径Daとする。また、10個の導通路22について直径Dbに該当する長さの平均値を求め、これを直径Dbとする。
また、導通路22における絶縁性基材20の表面20aにおける直径Daは、絶縁性基材20の表面20aについての電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)により得られた表面画像から測定できる。導通路22における絶縁性基材20の裏面20bにおける直径Dbは、絶縁性基材20の裏面20bについての電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)により得られた裏面画像から測定できる。
上述のように表面画像及び裏面画像を用いる場合に、突出部により直径Da、及び直径Dbの測定を行いにくい場合、溶解等により突出部を除去する。これにより、細孔が現れる。この状態の表面画像の細孔の開口径を測定して、表面の細孔の開口径を直径Daの代わりに用いることができる。また、同様に、この状態の裏面画像の細孔の開口径を測定して、裏面の細孔の開口径を直径Dbの代わりに用いることができる。
上述の細孔の開口径は、以下のように測定する。まず、細孔に相当するものを50個選択し、選択した50個の細孔に相当するものについて、細孔の開口に相当する箇所の直径を測定する。測定した細孔の開口に相当する箇所の直径の平均値を算出し、この平均値を細孔の開口径とする。
【0045】
隣接する各導通路22の中心間距離p及び間隔wは、以下のように測定する。まず、走査電子顕微鏡を用いて絶縁性基材20の表面20aを真上から倍率100~10000倍で撮影し撮影画像を得る。絶縁性基材20の撮影画像において、測定対象の導通路22を任意に選択する。選択した導通路22の中心位置(図示せず)を特定する。隣接する導通路の中心位置の間の距離を10箇所に求めた。この平均値を、隣接する各導通路22の中心間距離pとする。中心位置は、上述の撮影画像において導通路22に相当する領域の中心位置である。なお、撮影画像において、領域の中心位置の算出には、公知の画像解析法を用いることができる。
また、選択した導通路22において隣接する導通路の間隔wに相当する距離を10箇所測定する。測定した10箇所の長さの平均値を、上述の間隔wとする。
なお、上述のいずれの撮影画像の倍率も、導通路22を20個以上抽出できる撮影画像得られるように上述した範囲の倍率を適宜選択することができる。
【0046】
導通路22において、突出部22aの突出長さha(図1参照)及び突出部22bの突出長さhbは、10nm~1000nmであることが好ましく、50nm~500nmがより好ましい。突出長さha及び突出長さhbが10nm~1000nmであれば、被接合部材との接合性が良好になる。
突出長さhaは、絶縁性基材20の表面20aからの導通路22の突出量である。すなわち、突出長さhaは、絶縁性基材20の表面20aからの突出部22aの長さである。
突出長さhbは、絶縁性基材20の裏面20bからの導通路22の突出量である。すなわち、突出長さhbは、絶縁性基材20の裏面20bからの突出部22bの長さである。
突出長さha及び突出長さhbは、それぞれ絶縁性基材20を厚み方向Dtに対して集束イオンビームを用いて切削加工し、その断面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率50000倍の撮影画像を取得する。撮影画像において、導通路22に相当するものを10個選択し、選択した10個の導通路22に相当するものにおいて、それぞれ突出部22aの長さ及び突出部22bの長さに該当する箇所の長さを測定する。測定した10個の導通路22の突出部22aの長さに該当する長さの平均値を求め、これを突出部22aの長さとする。また、突出部22bの長さに該当する長さの平均値を求め、これを突出部22bの長さとする。
【0047】
〔樹脂層〕
樹脂層は、上述のように絶縁性基材の表面及び裏面のうち、少なくとも一方の面を覆うものであり、絶縁性基材及び導通路を保護する。樹脂層は、例えば、導通路が突出部を有するものであれば、突出部を埋設する。すなわち、樹脂層は、絶縁性基材から突出した導通路の端部を被覆し、突出部を保護する。
樹脂層は、上述の機能を発揮するために、例えば、50℃~200℃の温度範囲で流動性を示し、200℃以上で硬化するものであることが好ましい。樹脂層は、例えば、熱可塑性樹脂等で構成される熱可塑性層であるが、樹脂層については後に詳細に説明する。
樹脂層18の平均厚みhjは、10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。樹脂層18の平均厚みhjが上述の10μm以下であれば、導通路22の突出部を保護し、かつ半導体デバイス等の接合の際に電極の周囲を充填する効果を十分に発揮できる。
樹脂層18の平均厚みhjは、絶縁性基材20の表面20aからの平均距離である。
樹脂層18の平均厚みhjは、以下のように測定する。まず、樹脂層18を異方導電性部材16の厚み方向Dtに切断し、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて切断断面の撮影画像を取得する。撮影画像において、樹脂層に該当する絶縁性基材20の表面20aからの距離を10箇所測定し、測定した10箇所の長さの平均値を求める。この平均値を樹脂層18の平均厚みhjとする。
【0048】
樹脂層は、以下に示す組成を用いることもできる。以下、樹脂層の組成について説明する。例えば、樹脂層は、高分子材料を含有するものであり、酸化防止材料を含んでもよい。
樹脂層を構成する樹脂材料としては、具体的には、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、及びセルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。樹脂層を構成する樹脂材料として、ポリアクリロニトリルも用いることができる。
樹脂層としては、上述のもの以外に、例えば、国際公開第2022/163260号に記載のアクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物とを含む主組成物を含有するものを用いることができる。
樹脂層は、搬送性の観点と、異方導電性部材として使用しやすくする観点から、上述の樹脂層は、剥離可能な粘着層付きフィルムであることが好ましく、加熱処理又は紫外線露光処理により粘着性が弱くなり、剥離可能となる粘着層付きフィルムであるのがより好ましい。剥離可能となる粘着層付きフィルムは、上述の接着層と同様のものを用いることができる。
樹脂層には、更に特開2019-153415号公報の[0110]~[0125]段落に記載された組成のものを用いることができる。
【0049】
(異方導電性部材の他の例)
図5は本発明の実施形態の積層体の第1例の異方導電性部材の他の例を示す模式的平面図である。なお、図5において、図1及び図2に示す積層体10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図5に示す異方導電性部材16aは、図1に示す異方導電性部材16に比して絶縁性基材20にクラック23がある点が異なるが、それが以外の構成は、図1に示す異方導電性部材16と同様である。異方導電性部材16はクラック23があってもよい。図5に示す異方導電性部材16aを個片化した異方導電性部材にもクラックがある。
上述のように個片化した異方導電性部材17(図4参照)は反っており、これを電子接続部材として用いた場合、異方導電性部材は平らな状態になる。このとき、異方導電性部材に歪みが生じる。異方導電性部材に生じた歪みはクラック23で吸収される。このため、絶縁性基材20の変形能が小さい場合、異方導電性部材16aにクラック23があることは有効である。
【0050】
異方導電性部材16aは、電極と接続される電極接続領域において、単位面積当りの合計クラック長の平均値が1μm/mm以下であることが好ましい。
また、異方導電性部材16は、電極と接続されない電極非接続領域において、単位面積当りの合計クラック長の平均値が0.01μm/mm以上であることが好ましい。
電極とは、接続対象の電極のことであり、例えば、半導体素子及びインターポーザー等の電極である。
【0051】
上述の単位面積当りの合計クラック長の平均値は、個片化した異方導電性部材の状態での値である。単位面積当りの合計クラック長の平均値の測定方法については後に説明する。なお、クラックとは、長さが10μm以上のもののことをいう。
【0052】
異方導電性部材16aでは、電極と接続される電極接続領域において、上述のように単位面積当りの合計クラック長の平均値が1μm/mm以下であれば、導通及び電気絶縁性が維持される。
なお、電極接続領域ではクラックがない方が好ましいことから、電極接続領域における単位面積当りの合計クラック長の平均値の下限としては、ゼロに近いことが好ましく、理想的にはゼロである。
【0053】
また、異方導電性部材16aでは、電極と接続されない電極非接続領域において、上述のように単位面積当りの合計クラック長の平均値が0.01μm/mm以上であっても、導通及び電気絶縁性が維持される。
なお、電極非接続領域の合計クラック長の平均値が1000μm/mmを超えると、異方導電部材の脱落又は重なりが発生し、接合性が悪化する傾向にある。
【0054】
例えば、異方導電性部材16aでは、クラック23があるが、電極と接続される電極接続領域と、電極と接続されない電極非接続領域とでは、クラック23の量が異なる。電極接続領域の単位面積当りの合計クラック長の平均値は、電極非接続領域の単位面積当りの合計クラック長の平均値よりも小さいことが好ましい。電極接続領域の単位面積当りの合計クラック長の平均値の方が小さいことにより、異方導電性部材16の導電性を確保することができる。この場合、電極非接続領域の方が相対的に合計クラック長の平均値が大きくなり、クラック23が多い。異方導電性部材16aではクラック23があることにより導電性が低下し、結果として、クラック23が多い電極非接続領域における、絶縁性基材20(図1参照)の方向x(図1参照)での電気絶縁性が高くなる。このことから、個片化した異方導電性部材を電子接続部材として用いた場合、導電性及び電気絶縁性が維持される。
【0055】
上述のように単位面積当りの合計クラック長の平均値は、個片化した異方導電性部材の状態での値である。単位面積当りの合計クラック長の平均値の測定方法について説明する。
まず、異方導電性部材16aを赤外線顕微鏡で観察する。異方導電性部材16aは赤外線を透過しないため、赤外線を用いると異方導電性部材16aのクラック23を明確に検出できる。
赤外線顕微鏡を用いて、個片化した異方導電性部材の平面視全域の検査画像を取得する。取得した検査画像に対して二値化処理を施し、検査画像の二値化画像を得る。二値化画像における黒色部のうち、10μm以上のものがクラックに相当する。二値化画像の黒色部の長さを測長する。上述のようにクラックは長さが10μm以上であるため、黒色部のなかから、10μmを閾値としてクラックを抽出する。抽出したクラックについて合計の長さを得る。また、二値化画像の面積を視野面積から求める。クラック長さと、二値化画像の面積とから単位面積当りの合計クラック長を得ることができる。そして、得られた単位面積当りの合計クラック長の平均値を求める。このようにして、単位面積当りの合計クラック長の平均値を得ることができる。
【0056】
[積層体の第2例]
図6は本発明の実施形態の積層体の第2例を示す模式的断面図である。なお、図6において、図1及び図2に示す積層体10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図6に示す積層体11は、図1に示す積層体10に比して、支持体12が、金属層30を有する接合部材32であり、金属層30が接着層14から露出している点が異なり、それ以外の構成は、図1に示す積層体10と同様の構成である。
支持体12を、接着層14から露出した金属層30を有する接合部材32とし、異方導電性部材16との接着面積が少ない構成でも、反りが生じる異方導電性部材16を接着できる。このため、個片化した異方導電性部材を電子接続部材として用いた場合、接続対象が、金属層30に相当する電極と、接着層14に相当する樹脂層とがある構成であれば、個片化した異方導電性部材の反りを、接着層14に相当する樹脂層が吸収して、好適に接続対象に接合できる。
【0057】
((異方導電性部材の接続対象物))
異方導電性部材を電子接続部材として用いた場合、接続対象物は、例えば、半導体素子、電極又は素子領域を有するものである。電極を有するものとしては、例えば、単体で特定の機能を発揮する半導体素子等が例示されるが、複数のものが集まって特定の機能を発揮するものも含まれる。更には、配線部材等の電気信号を伝達するだけのものも含まれ、プリント配線板等も電極を有するものに含まれる。
素子領域とは、電子素子として機能するための各種の素子構成回路等が形成された領域である。素子領域には、例えば、フラッシュメモリ等のようなメモリ回路、マイクロプロセッサ及びFPGA(field-programmable gate array)等のような論理回路が形成された領域、無線タグ等の通信モジュールならびに配線が形成された領域である。素子領域には、これ以外にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が形成されてもよい。MEMSとしては、例えば、センサー、アクチュエーター及びアンテナ等が挙げられる。センサーには、例えば、加速度、音、及び光等の各種のセンサーが含まれる。光センサーは、光を検出することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサー又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーが用いられる。
上述のように、素子領域は素子構成回路等が形成されており、半導体チップを外部と電気的に接続するために電極(図示せず)が設けられている。素子領域は電極が形成された電極領域を有する。なお、素子領域の電極とは、例えば、Cuポストである。電極領域とは、基本的には、形成された全ての電極を含む領域のことである。しかしながら、電極が離散して設けられていれば、各電極が設けられている領域のことも電極領域という。
構造体の形態としては、半導体チップのように個片化されたものでも、半導体ウエハのような形態でもよく、配線層の形態でもよい。
また、構造体は、接続対象物と接合されるが、接続対象物は、上述の半導体素子等に特に限定されるものではなく、例えば、ウエハ状態の半導体素子、チップ状態の半導体素子、プリント配線板、及びヒートシンク等が接続対象物となる。
【0058】
((半導体素子))
半導体素子は、上述のもの以外に、例えば、ロジックLSI(Large Scale Integration)(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASSP(Application Specific Standard Product)等)、マイクロプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等)、メモリ(例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、HMC(Hybrid Memory Cube)、MRAM(Magnetic RAM:磁気メモリ)とPCM(Phase-Change Memory:相変化メモリ)、ReRAM(Resistive RAM:抵抗変化型メモリ)、FeRAM(Ferroelectric RAM:強誘電体メモリ)、フラッシュメモリ(NAND(Not AND)フラッシュ)等)、LED(Light Emitting Diode)、(例えば、携帯端末のマイクロフラッシュ、車載用、プロジェクタ光源、LCDバックライト、一般照明等)、パワー・デバイス、アナログIC(Integrated Circuit)、(例えば、DC(Direct Current)-DC(Direct Current)コンバータ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、(例えば、加速度センサー、圧力センサー、振動子、ジャイロセンサ等)、ワイヤレス(例えば、GPS(Global Positioning System)、FM(Frequency Modulation)、NFC(Nearfield communication)、RFEM(RF Expansion Module)、MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)、WLAN(Wireless Local Area Network)等)、ディスクリート素子、BSI(Back Side Illumination)、CIS(Contact Image Sensor)、カメラモジュール、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、Passiveデバイス、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ、RF(Radio Frequency)フィルタ、RFIPD(Radio Frequency Integrated Passive Devices)、BB(Broadband)等が挙げられる。
半導体素子は、例えば、1つで完結したものであり、半導体素子単体で、回路又はセンサー等の特定の機能を発揮するものである。半導体素子は、インターポーザー機能を有するものであってもよい。また、例えば、インターポーザー機能を有するデバイス上に、論理回路を有する論理チップ、及びメモリーチップ等の複数のデバイスを積層することも可能である。また、この場合、それぞれのデバイスごとに電極サイズが異なっていても接合することができる。
【0059】
(積層体の製造方法の一例)
次に、積層体の製造方法について説明する。図7図15は本発明の実施形態の積層体の製造方法の一例を工程順に示す模式的断面図である。なお、図7図15において、図1及び図2に示す積層体10の構成と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
積層体の製造方法の一例では、図1に示す積層体10の異方導電性部材16において、絶縁性基材20がアルミニウムの陽極酸化膜で構成されるものを例にして説明する。アルミニウムの陽極酸化膜を形成するために、アルミニウム基板を用いる。このため、積層体の製造方法の一例では、まず、図7に示すように、アルミニウム基板40を用意する。
アルミニウム基板40は、最終的に得られる異方導電性部材16(図1参照)の絶縁性基材20(図1参照)の厚み、加工する装置等に応じて大きさ及び厚みが適宜決定されるものである。アルミニウム基板40は、例えば、外形が円形状の板材である。なお、アルミニウム基板に限定されるものではなく、電気的に絶縁な絶縁膜を形成できる金属基板を用いることができる。陽極酸化により陽極酸化膜を形成できるバルブ金属を用いることができる。
【0060】
次に、アルミニウム基板40の片側の表面40a(図7参照)を陽極酸化処理する。これにより、アルミニウム基板40の片側の表面40a(図7参照)が陽極酸化されて、図8に示すように、アルミニウム基板40の厚み方向Dtに延在する複数の細孔21を有する陽極酸化膜44が形成される。陽極酸化膜44の細孔21は、アルミニウム基板40側よりも陽極酸化膜44の表面44a側の方が直径が大きい。
陽極酸化膜44は、上述の絶縁性基材20(図1参照)である。図8に示すように各細孔21の底部にはバリア層43が存在する。上述の陽極酸化する工程を陽極酸化処理工程という。
複数の細孔21を有する陽極酸化膜44には、上述のようにそれぞれ細孔21の底部にバリア層43が存在するが、バリア層43を除去する。これにより、バリア層43がない、複数の細孔21を有する陽極酸化膜44(図9参照)を得る。なお、上述のバリア層43を除去する工程をバリア層除去工程という。
【0061】
バリア層除去工程において、アルミニウムよりも水素過電圧の高い金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いることにより、陽極酸化膜44のバリア層43を除去すると同時に、細孔21の底部42c(図9参照)の面42d(図9参照)に金属(金属M1)からなる金属層45a(図10参照)を形成する。これにより、細孔21に露出したアルミニウム基板40は金属層45aにより被覆される。これにより、細孔21へめっきによる金属充填の際に、めっきが進行しやすくなり、細孔に金属が十分に充填されないことが抑制され、細孔21への金属の未充填等が抑制され、導通路22(図1参照)の形成不良が抑制される。
なお、上述の金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液は更にアルミニウムイオン含有化合物(アルミン酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等)を含んでもよい。アルミニウムイオン含有化合物の含有量は、アルミニウムイオンの量に換算して0.1~20g/Lが好ましく、0.3~12g/Lがより好ましく、0.5~6g/Lが更に好ましい。
【0062】
次に、厚み方向Dtに延在する複数の細孔21を有する陽極酸化膜44の表面44aからめっきを行う。この場合、金属層45aを電解めっきの電極として用いることができる。めっきには金属45bを用い、細孔21の底部42c(図9参照)の面42d(図9参照)に形成された金属層45aを起点にして、めっきが進行する。これにより、図10に示すように、陽極酸化膜44の細孔21の内部に、導通路22を構成する導電性物質として金属45bが充填される。細孔21の内部に金属45bを充填することにより、導電性を有する導通路22が形成される。なお、金属層45aと金属45bとをまとめて充填した金属45という。
陽極酸化膜44の複数の細孔21に金属45bを充填して、複数の導通路22を形成する工程を、金属充填工程という。上述のように導通路22は導電性物質で構成されるものであり、金属を充填することに限定されるものではない。金属充填工程には、電解めっきが用いられ、金属充填工程については後に詳細に説明する。なお、陽極酸化膜44の表面44aが絶縁性基材20の一方の面に相当する。陽極酸化膜44の複数の細孔21に、金属、及び金属以外も含め導電性物質を充填して、複数の導通路22を形成する工程を、単に充填工程という。
【0063】
金属充填工程の後に、図10に示す陽極酸化膜44の表面44aを研磨して平滑化する研磨工程を実施する。研磨には、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)処理が用いられる。
次に、研磨工程の後に、図11に示すように、陽極酸化膜44のアルミニウム基板40が設けられていない側の表面20aを厚み方向Dtに一部除去し、金属充填工程で充填した金属45を陽極酸化膜44の表面44aよりも突出させる。すなわち、導通路22を陽極酸化膜44の表面44aよりも突出させる。これにより、突出部22bが得られる。導通路22を陽極酸化膜44の表面44aよりも突出させる工程を、表面突出工程という。なお、表面突出工程は、必ずしも実施する必要はない。表面突出工程を実施しない場合、上述の突出部22bが形成されない。
【0064】
表面突出工程の後に、図12に示すようにアルミニウム基板40を除去する。アルミニウム基板40を除去する工程を基板除去工程という。
次に、図13に示すように、陽極酸化膜44の表面44aを支持体12の表面12aに向けて、接着層14を用いて陽極酸化膜44と支持体12とを接着する。この場合、例えば、支持体12の表面12aに、接着層14として粘着層付きフィルムを貼り付けた後に、粘着層付きフィルムに、陽極酸化膜44の表面44aを支持体12の表面12aに向けて貼り付ける。上述の接着層14を用いて陽極酸化膜44と支持体12とを接着する工程を支持体形成工程という。
支持体形成工程の後に、陽極酸化膜44の裏面44bを研磨して平滑化する研磨工程を実施する。研磨には、例えば、CMP処理が用いられる。
【0065】
ここで、上述のように細孔21は、アルミニウム基板40側よりも陽極酸化膜44の表面44a側の方が直径が大きく、陽極酸化膜44の表面44aと、陽極酸化膜44の裏面44bとでは細孔21の直径が異なる。陽極酸化膜44では、裏面44bよりも表面44a側の方が、細孔21の直径が大きい。このことから、陽極酸化膜44の表面44aと、陽極酸化膜44の裏面44bとでは導通路22の直径が異なるものとなり、陽極酸化膜44の表面44a側の方が導通路22の直径が大きい。
陽極酸化膜44の表面44aが絶縁性基材20の裏面20bに相当し、陽極酸化膜44の裏面44bが絶縁性基材20の表面20aに相当する。このため、陽極酸化膜44の表面44a又は陽極酸化膜44の裏面44bの研磨量を調整することにより、導通路22の直径を調整できる。例えば、陽極酸化膜44の裏面44bの研磨量を調整することにより、上述の直径Daと直径Dbとの比を調整できる。また、上述の直径Daと直径Dbとの比の調整は、陽極酸化膜44の表面44aの研磨量、及び陽極酸化膜44の裏面44bの研磨量を調整することでも実現できる。研磨量は、例えば、研磨時間で調整できる。
【0066】
次に、陽極酸化膜44の裏面44bの研磨工程の後に、図14に示すように陽極酸化膜44の裏面44bを厚み方向Dtに一部除去し、金属充填工程で充填した金属45、すなわち、導通路22を陽極酸化膜44の裏面44bよりも突出させる。これにより、突出部22aが得られ、異方導電性部材16が形成される。
図14に示すように、陽極酸化膜44の表面44a及び裏面44bから、それぞれ導通路22が突出しており、導通路22は、突出部22aと突出部22bとを有する。
上述の導通路22を陽極酸化膜44の裏面44bよりも突出させる工程を、裏面突出工程という。なお、裏面突出工程は、必ずしも実施する必要はない。裏面突出工程を実施しない場合、上述の突出部22aが形成されない。
上述の表面突出工程及び裏面突出工程は、両方の工程を有する態様であってもよいが、表面突出工程及び裏面突出工程のうち、一方の工程を有する態様であってもよい。表面突出工程及び裏面突出工程が「突出工程」に該当しており、表面突出工程及び裏面突出工程はいずれも突出工程である。突出工程のことをトリミング工程ともいう。
突出工程を実施する場合、突出工程後の陽極酸化膜44の厚みが、絶縁性基材の厚みである。
【0067】
次に、図15に示すように、突出部22aが突出している陽極酸化膜44の裏面44b全面を覆う樹脂層18を形成する。これにより、積層体10が製造される。樹脂層18は、例えば、上述の接着層14と同様にして形成できる。
【0068】
〔陽極酸化処理工程〕
陽極酸化処理は、従来公知の方法を用いることができるが、マイクロポア配列の規則性を高くし、構造体の異方導電性を担保する観点から、自己規則化法又は定電圧処理を用いることが好ましい。これにより、例えば、細孔及び導通路が六角形状の配置となる。
ここで、陽極酸化処理の自己規則化法及び定電圧処理については、特開2008-270158号公報の[0056]~[0108]段落及び[図8]に記載された各処理と同様の処理を施すことができる。
【0069】
〔保持工程〕
異方導電性部材を製造する場合、保持工程を有してもよい。保持工程は、上述の陽極酸化処理工程の後に、1V以上かつ上述の陽極酸化処理工程における電圧の30%未満の範囲から選択される保持電圧の95%以上105%以下の電圧に通算5分以上保持する工程である。言い換えると、保持工程は、上述の陽極酸化処理工程の後に、1V以上かつ上述の陽極酸化処理工程における電圧の30%未満の範囲から選択される保持電圧の95%以上105%以下の電圧で通算5分以上電解処理を施す工程である。
ここで、「陽極酸化処理における電圧」とは、アルミニウム基板と対極間に印加する電圧であり、例えば、陽極酸化処理による電解時間が30分であれば、30分の間に保たれている電圧の平均値をいう。
【0070】
陽極酸化膜の側壁厚み、すなわち、細孔の深さに対してバリア層の厚みを適切な厚みに制御する観点から、保持工程における電圧が、陽極酸化処理における電圧の5%以上25%以下であることが好ましく、5%以上20%以下であることがより好ましい。
【0071】
また、面内均一性がより向上する理由から、保持工程における保持時間の合計が、5分以上20分以下であることが好ましく、5分以上15分以下であることがより好ましく、5分以上10分以下であることが更に好ましい。
また、保持工程における保持時間は、通算5分以上であればよいが、連続5分以上であることが好ましい。
【0072】
更に、保持工程における電圧は、陽極酸化処理工程における電圧から保持工程における電圧まで連続的又は段階的に降下させて設定してもよいが、面内均一性が更に向上する理由から、陽極酸化処理工程の終了後、1秒以内に、上述の保持電圧の95%以上105%以下の電圧に設定することが好ましい。
【0073】
上述の保持工程は、例えば、上述の陽極酸化処理工程の終了時に電解電位を降下させることにより、上述の陽極酸化処理工程と連続して行うこともできる。
上述の保持工程は、電解電位以外の条件については、上述の従来公知の陽極酸化処理と同様の電解液及び処理条件を採用することができる。
特に、保持工程と陽極酸化処理工程とを連続して施す場合は、同様の電解液を用いて処理することが好ましい。
【0074】
複数の細孔(マイクロポア)を有する陽極酸化膜には、上述のように細孔の底部にバリア層(図示せず)が存在する。このバリア層を除去するバリア層除去工程を有する。
【0075】
〔バリア層除去工程〕
バリア層除去工程は、例えば、アルミニウムよりも水素過電圧の高い金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いて、陽極酸化膜のバリア層を除去する工程である。
上述のバリア層除去工程により、バリア層が除去され、かつ、細孔の底部に、金属M1からなる導電体層が形成されることになる。
ここで、水素過電圧(hydrogen overvoltage)とは、水素が発生するのに必要な電圧をいい、例えば、アルミニウム(Al)の水素過電圧は-1.66Vである(日本化学会誌,1982、(8),p1305-1313)。なお、アルミニウムの水素過電圧よりも高い金属M1の例及びその水素過電圧の値を以下に示す。
<金属M1及び水素(1N H2SO4)過電圧>
・白金(Pt):0.00V
・金(Au):0.02V
・銀(Ag):0.08V
・ニッケル(Ni):0.21V
・銅(Cu):0.23V
・錫(Sn):0.53V
・亜鉛(Zn):0.70V
【0076】
上述のバリア層除去工程において、アルミニウムよりも水素過電圧の高い金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いてバリア層を除去することにより、バリア層43を除去するだけでなく、細孔21の底部に露出したアルミニウム基板40にアルミニウムよりも水素ガスが発生しにくい金属M1の金属層45aが形成される。その結果、金属充填の面内均一性が良好となる。これは、めっき液による水素ガスの発生が抑制され、電解めっきによる金属充填が進行しやすくなったと考えられる。
また、バリア層除去工程において、陽極酸化処理工程における電圧の30%未満の範囲から選択される電圧(保持電圧)の95%以上105%以下の電圧に通算5分以上保持する保持工程を設け、金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を適用することを組み合わせることにより、めっき処理時の金属充填の均一性が大きく良化することを見出している。このため、保持工程があることが好ましい。
詳しいメカニズムは不明だが、バリア層除去工程において、金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いることでバリア層下部に金属M1の層が形成され、これによりアルミニウム基板と陽極酸化膜との界面がダメージを受けることを抑制することができ、バリア層の溶解の均一性が向上したためと考えられる。
【0077】
なお、バリア層除去工程において、細孔21の底部に金属(金属M1)からなる金属層45aを形成したが、これに限定されるものではなく、バリア層43だけを除去し、細孔21の底にアルミニウム基板40を露出させる。アルミニウム基板40を露出させた状態で、アルミニウム基板40を電解めっきの電極として用いてもよい。
【0078】
細孔21は、マイクロポアを拡径し、かつバリア層を除去して形成することもできる。この場合、マイクロポアの拡径には、ポアワイド処理が用いられる。ポアワイド処理は、陽極酸化膜を、酸水溶液又はアルカリ水溶液に浸漬させることにより、陽極酸化膜を溶解させ、マイクロポアの孔径を拡大する処理である、ポアワイド処理には、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸又はこれらの混合物の水溶液、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等の水溶液を用いることができる。
なお、ポアワイド処理でも、マイクロポアの底部のバリア層を除去することができ、ポアワイド処理において水酸化ナトリウム水溶液を用いることにより、マイクロポアが拡径され、かつバリア層が除去される。
【0079】
〔充填工程〕
充填工程は、厚み方向に延在する複数の細孔を有する陽極酸化膜、すなわち、絶縁性基材に対して、細孔に導電性物質を充填して、複数の導通路を形成する工程である。導通路は、例えば、柱状の導電体である。充填工程において、導電性物質として金属を充填する場合、金属充填工程という。
<充填工程に用いられる金属>
充填工程において、導通路を形成するために、上述の陽極酸化膜44の細孔21の内部に導電性物質として充填される金属は、電気抵抗率が103Ω・cm以下の材料であることが好ましい。上述の金属の具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)及びコバルト(Co)が好適に例示される。
なお、導電性物質としては、電気伝導性、及びめっき法による形成の観点から、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)が好ましく、銅(Cu)、及び金(Au)がより好ましく、銅(Cu)が更に好ましい。
【0080】
<めっき法>
厚み方向Dtに延在する複数の細孔21を有する陽極酸化膜44に対して、細孔21の内部に金属を充填するめっき法としては、例えば、電解めっき法又は無電解めっき法を用いることができる。
ここで、着色等に用いられる従来公知の電解めっき法では、選択的に孔中に金属を高アスペクトで析出(成長)させることは困難である。これは、析出金属が孔内で消費され一定時間以上電解を行なってもめっきが成長しないためと考えられる。
そのため、電解めっき法により金属を充填する場合は、パルス電解又は定電位電解の際に休止時間をもうける必要がある。休止時間は、10秒以上必要で、30~60秒であることが好ましい。
また、電解液のかくはんを促進するため、超音波を加えることも望ましい。
【0081】
更に、電解電圧は、通常20V以下であって望ましくは10V以下であるが、使用する電解液における目的金属の析出電位を予め測定し、その電位+1V以内で定電位電解を行なうことが好ましい。なお、定電位電解を行なう際には、サイクリックボルタンメトリを併用できるものが望ましく、Solartron社、BAS株式会社、北斗電工株式会社、IVIUM社等のポテンショスタット装置を用いることができる。
【0082】
(めっき液)
めっき液は、従来公知のめっき液を用いることができる。
具体的には、銅を析出させる場合には硫酸銅水溶液が一般的に用いられるが、硫酸銅の濃度は、1~300g/Lであることが好ましく、100~200g/Lであるのがより好ましい。また、電解液中に塩酸を添加すると析出を促進することができる。この場合、塩酸濃度は10~20g/Lであることが好ましい。
また、金を析出させる場合、テトラクロロ金の硫酸溶液を用い、交流電解でめっきを行なうのが望ましい。
【0083】
めっき液は、界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤としては公知のものを使用することができる。従来メッキ液に添加する界面活性剤として知られているラウリル硫酸ナトリウムをそのまま使用することもできる。親水性部分がイオン性(カチオン性・アニオン性・双性)のもの、非イオン性(ノニオン性)のものいずれも利用可能であるが、メッキ対象物表面への気泡の発生等を回避する点でカチオン線活性剤が望ましい。めっき液組成における界面活性剤の濃度は1質量%以下であることが望ましい。
なお、無電解めっき法では、アスペクトの高い細孔からなる孔中に金属を完全に充填には長時間を要するので、電解めっき法を用いて細孔に金属を充填することが望ましい。
【0084】
〔基板除去工程〕
基板除去工程は、充填工程の後に、上述のアルミニウム基板を除去する工程である。アルミニウム基板を除去する方法は特に限定されず、例えば、溶解により除去する方法等が好適に挙げられる。
【0085】
<アルミニウム基板の溶解>
上述のアルミニウム基板の溶解は、陽極酸化膜を溶解しにくく、アルミニウムを溶解しやすい処理液を用いることが好ましい。
このような処理液は、アルミニウムに対する溶解速度が、1μm/分以上であることが好ましく、3μm/分以上であることがより好ましく、5μm/分以上であることが更に好ましい。同様に、陽極酸化膜に対する溶解速度が、0.1nm/分以下となることが好ましく、0.05nm/分以下となるのがより好ましく、0.01nm/分以下となるのが更に好ましい。
具体的には、アルミよりもイオン化傾向の低い金属化合物を少なくとも1種含み、かつ、pHが4以下又は8以上となる処理液であることが好ましく、そのpHが3以下又は9以上であることがより好ましく、2以下又は10以上であることが更に好ましい。
【0086】
アルミニウムを溶解する処理液としては、酸又はアルカリ水溶液をベースとし、例えば、マンガン、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、銅、水銀、銀、パラジウム、白金、金の化合物(例えば、塩化白金酸)、これらのフッ化物、これらの塩化物等を配合したものであることが好ましい。
中でも、酸水溶液ベースが好ましく、塩化物をブレンドすることが好ましい。
特に、塩酸水溶液に塩化水銀をブレンドした処理液(塩酸/塩化水銀)、塩酸水溶液に塩化銅をブレンドした処理液(塩酸/塩化銅)が、処理ラチチュードの観点から好ましい。
なお、アルミニウムを溶解する処理液の組成は、特に限定されるものではく、例えば、臭素/メタノール混合物、臭素/エタノール混合物、及び王水等を用いることができる。
【0087】
また、アルミニウムを溶解する処理液の酸又はアルカリ濃度は、0.01~10mol/Lが好ましく、0.05~5mol/Lがより好ましい。
更に、アルミニウムを溶解する処理液を用いた処理温度は、-10℃~80℃が好ましく、0℃~60℃が好ましい。
【0088】
また、上述のアルミニウム基板の溶解は、上述のめっき工程後のアルミニウム基板を上述の処理液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸漬法が好ましい。このときの接触時間としては、10秒~5時間が好ましく、1分~3時間がより好ましい。
【0089】
なお、異方導電性部材を形成する際に陽極酸化膜44に、例えば、支持基材を設けてもよい。支持基材は陽極酸化膜44と同じ外形状であることが好ましい。支持基材を取り付けることにより、異方導電性部材を形成する際に、陽極酸化膜44の取り扱い性が増す。
【0090】
〔突出工程〕
突出工程は、研磨工程の後に、導通路を、絶縁性基材の一方の面及び他の面のうち、少なくとも1つの面から突出させる工程である。
具体例には、上述の陽極酸化膜44の一部を除去する。陽極酸化膜44の一部の除去には、例えば、導通路22を構成する金属を溶解せず、陽極酸化膜44、すなわち、酸化アルミニウム(Al)を溶解する酸水溶液又はアルカリ水溶液が用いられる。上述の酸水溶液又はアルカリ水溶液を、金属が充填された細孔21を有する陽極酸化膜44に接触させることにより、陽極酸化膜44を一部除去する。上述の酸水溶液又はアルカリ水溶液を陽極酸化膜44に接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法及びスプレー法が挙げられる。中でも浸漬法が好ましい。
【0091】
酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸及び塩酸等の無機酸又はこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。中でもクロム酸を含有しない水溶液が安全性に優れる点で好ましい。酸水溶液の濃度は1~10質量%であることが好ましい。酸水溶液の温度は、25~60℃であることが好ましい。
また、アルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1~5質量%であることが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20~35℃であることが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液又は0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
【0092】
酸水溶液又はアルカリ水溶液への浸漬時間は、8~120分であることが好ましく、10~90分であるのがより好ましく、15~60分であるのが更に好ましい。ここで、浸漬時間は、短時間の浸漬処理を繰り返した場合には、各浸漬時間の合計をいう。なお、各浸漬処理の間には、洗浄処理を施してもよい。
【0093】
また、金属45、すなわち、導通路22を陽極酸化膜44の表面44a又は裏面44bより突出させる程度であるが、上述のように導通路22を陽極酸化膜44の表面44a又は裏面44bよりも、10nm~1000nm突出させることが好ましい。すなわち、突出部22aの表面44aからの突出長さhb、突出部22bの裏面44bからの導通路22の突出長さhaは、被接合部材との接合性が良好になるため、それぞれ10nm~1000nmであることが好ましく、50nm~500nmがより好ましい。
【0094】
導通路22の突出部の突出長さha、hbを厳密に制御する場合は、細孔21の内部に、金属等の導電性物質を充填した後、陽極酸化膜44と、金属等の導電性物質の端部とを同一平面状になるように加工した後、陽極酸化膜等の絶縁性基材を選択的に除去することが好ましい。
また、上述の金属の充填後、又は突出工程の後に、金属の充填に伴い発生した導通路22内の歪みを軽減する目的で、加熱処理を施すことができる。
加熱処理は、金属の酸化を抑制する観点から還元性雰囲気で施すことが好ましく、具体的には、酸素濃度が20Pa以下で行うことが好ましく、真空下で行うことがより好ましい。ここで、真空とは、大気よりも、気体密度及び気圧のうち、少なくとも一方が低い空間の状態をいう。
また、加熱処理は、矯正の目的で、陽極酸化膜44に応力を加えながら行うことが好ましい。
【0095】
〔樹脂層の形成工程〕
樹脂層18の形成工程には、例えば、インクジェット法、転写法、スプレー法、又はスクリーン印刷法等を用いられる。インクジェット法は、樹脂層18を絶縁性基材20に直接形成するため、樹脂層18の形成工程を簡素化することができるため、好ましい。また、樹脂層18は、例えば、従来公知の表面保護テープ貼付装置及びラミネーターを用いて形成することができる。また、樹脂層の形成工程では、絶縁性基材の表面の全面に、樹脂層を形成する。樹脂層18を構成する樹脂材料は、上述のとおりである。
【0096】
樹脂層18の形成方法としては、上述の方法以外に、例えば、後述の酸化防止材料、高分子材料、溶媒(例えば、メチルエチルケトン等)等を含有する樹脂組成物を絶縁性基材の表面の全面に塗布し、乾燥させ、必要に応じて焼成する方法等が挙げられる。
樹脂組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、エアナイフコート法、スクリーンコート法、バーコート法、及びカーテンコート法等の従来公知のコーティング方法が使用できる。
また、塗布後の乾燥方法は特に限定されず、例えば、大気下において0℃~100℃の温度で、数秒~数十分間、加熱する処理、減圧下において0℃~80℃の温度で、十数分~数時間、加熱する処理等が挙げられる。
また、乾燥後の焼成方法は、使用する高分子材料により異なるため特に限定されないが、ポリイミド樹脂を用いる場合には、例えば、160℃~240℃の温度で2分間~60分間加熱する処理等が挙げられ、エポキシ樹脂を用いる場合には、例えば、30℃~80℃の温度で2分間~60分間加熱する処理等が挙げられる。
【0097】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の積層体について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例0098】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、及び、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、実施例1~10の積層体及び比較例1~3の積層体を作製した。実施例1~10の積層体、及び比較例1~3の積層体について、個片化した異方導電性部材の剥離を、個片化した異方導電性部材の取り扱いの指標として評価した。個片化した異方導電性部材の剥離の評価結果を下記表1に示す。更に、個片化した異方導電性部材の接合を評価した。
次に、個片化した異方導電性部材の剥離の評価及び個片化した異方導電性部材の接合の評価について説明する。
【0099】
(個片化した異方導電性部材の剥離)
作製した積層体について、異方導電性部材を10mm×10mmのサイズに切断した。切断後、積層体を大気下で温度110℃で1分間加熱し、熱剥離型の接着層を発泡させて、10mm×10mmのサイズに個片化した異方導電性部材を剥離させた。このときの個片化した異方導電性部材の剥離の成功率を、下記評価基準にて評価した。
なお、個片化した異方導電性部材の剥離が成功したとは、フリップチップボンディング装置(東レエンジニアリング株式会社製FC3000)のヘッド(10mm×10mm、吸気孔の直径1mm)を用いて、個片化した異方性導電部材を、-80kPa(ゲージ圧)で真空吸着した際に、異方性導電部材が接着層から剥離できたことを示す。
評価基準
A:剥離の成功率が100%
B:剥離の成功率が95%以上100%未満
C:剥離の成功率が85%以上95%未満
D:剥離の成功率が85%未満
【0100】
積層体の切断には、以下に示す切削装置を用いた。
切削装置としては株式会社ディスコ社製DAD3230(製品名)を使用した。回転数を1500rpm(revolution per minute)とし、送り速度を0.5mm/秒として、粘着層付き樹脂基材を含む異方性導電部材を10mm×10mmのサイズにカットした。
【0101】
(個片化した異方導電性部材の接合)
接合の評価について説明する。
デイジーチェインを評価できるTEGチップ(Test Element Group chip)を用意した。TEGチップはデイジーチェインを1000有するものとした。
異方導電性部材を2つのTEGチップで積層し、ウェハボンダーのチャンバー内に設置した。チャンバー内を一旦、10-3Paの真空とした後、5%水素を含有する窒素ガスをチャンバー内に導入し、チャンバー内の圧力を5KPaで安定化させた。その後、圧力20MPa、温度200℃の条件で加圧加熱し、30分間保持して接合した。
接合は、以下に示す評価基準にて評価した。
評価基準
A:接合品のデイジーチェインの1000のうち、全て繋がる。
B:接合品のデイジーチェインの1000のうち、75%以上100%未満繋がる。
C:接合品のデイジーチェインの1000のうち、50%以上75%未満繋がる。
D:接合品のデイジーチェインの1000のうち、25%以上50%未満繋がる。
【0102】
以下、個片化した異方導電性部材の単位面積当りの合計クラック長の平均値の測定方法について説明する。
異方導電性部材は赤外線を透過しないため、赤外線を用いると異方導電性部材のクラックを明確に検出できる。
赤外線顕微鏡に、オリンパス株式会社製 半導体/FPD検査顕微鏡MX61(商品名)を使用した。レンズには、オリンパス株式会社製 近赤外領域(700nm~1300nm)観察用の対物レンズLMRLN5XIR(商品名)を用いた。また、ステージには、メルツホイザー社製 正立顕微鏡用自動XYステージを使用した。
【0103】
赤外線顕微鏡を用いて半導体デバイスの平面視全域の検査画像を取得し、取得した検査画像に対して二値化処理を施し、検査画像の二値化画像を得た。二値化画像の黒色部の長さを測長した。黒色部のなかから、10μmを閾値としてクラックを抽出した。抽出したクラックについて合計の長さを得た。また、二値化画像の面積を視野面積から求めた。クラック長さと、二値化画像の面積とから単位面積当りの合計クラック長を得た。そして、得られた単位面積当りの合計クラック長の平均値を求めた。
また、半導体デバイスにおいて、電極が接続する電極接続領域と、電極が接続しない電極非接続領域とを予め特定しておいた。電極が接続する電極接続領域における単位面積当りの合計クラック長の平均値を電極部クラック長とし、電極が接続しない電極非接続領域における単位面積当りの合計クラック長の平均値を非電極部クラック長とした。
なお、実施例1~10及び比較例1~3において、クラックがないものについては、下記表1の「非電極部クラック長」及び「電極部クラック長」の欄に「-」と記した。
【0104】
以下、実施例1~10及び比較例1~3について説明する。
(実施例1)
実施例1の積層体について説明する。
[構造体]
<アルミニウム基板の作製>
Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.005質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理及びろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC(Direct Chill)鋳造法で作製した。
次いで、表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。
更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ1.0mmに仕上げ、JIS 1050材のアルミニウム基板を得た。
アルミニウム基板を、直径200mm(8インチ)のウエハ状に形成した後、以下に示す各処理を施した。
【0105】
<電解研磨処理>
上述のアルミニウム基板に対して、以下組成の電解研磨液を用いて、電圧25V、液温度65℃、液流速3.0m/分の条件で電解研磨処理を施した。
陰極はカーボン電極とし、電源は、GP0110-30R(株式会社高砂製作所社製)を用いた。また、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22-10PCW(アズワン株式会社製)を用いて計測した。
【0106】
(電解研磨液組成)
・85質量%リン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
【0107】
<陽極酸化処理工程>
次いで、電解研磨処理後のアルミニウム基板に、特開2007-204802号公報に記載の手順に従って、自己規則化法による陽極酸化処理を施した。
電解研磨処理後のアルミニウム基板に、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度16℃、液流速3.0m/分の条件で、5時間のプレ陽極酸化処理を施した。
その後、プレ陽極酸化処理後のアルミニウム基板を、0.2mol/L無水クロム酸、0.6mol/Lリン酸の混合水溶液(液温:50℃)に12時間浸漬させる脱膜処理を施した。
その後、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度16℃、液流速3.0m/分の条件で、3時間45分の再陽極酸化処理を施し、膜厚30μmの陽極酸化膜を得た。
なお、プレ陽極酸化処理及び再陽極酸化処理は、いずれも陰極はステンレス電極とし、電源はGP0110-30R(株式会社高砂製作所製)を用いた。また、冷却装置にはNeoCool BD36(ヤマト科学株式会社製)、かくはん加温装置にはペアスターラー PS-100(EYELA東京理化器械株式会社製)を用いた。更に、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22-10PCW(アズワン株式会社製)を用いて計測した。
【0108】
<バリア層除去工程>
次いで、上述の陽極酸化処理と同様の処理液および処理条件で、電圧を40Vから0Vまで連続的に電圧降下速度0.2V/秒で降下させながら電解処理(電解除去処理)を施した。
その後、5質量%リン酸に30℃、30分間浸漬させるエッチング処理(エッチング除去処理)を施し、陽極酸化膜のマイクロポアの底部にあるバリア層を除去し、マイクロポアを介してアルミニウムを露出させた。
【0109】
ここで、バリア層除去工程後の陽極酸化膜に存在するマイクロポアの平均開口径は60nmであった。なお、平均開口径は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率50000倍の表面画像を取得し、表面画像においてマイクロポアに相当するものを50個選択し、選択した50個のマイクロポアに相当するものについて、それぞれ開口に相当する箇所の直径を測定した。測定したマイクロポアの開口に相当する箇所の直径の平均値を算出した。この平均値を平均開口径とした。
また、バリア層除去工程後の陽極酸化膜の平均厚みは80μmであった。なお、平均厚みは、陽極酸化膜を厚さ方向に対して集束イオンビーム(FIB)を用いて切削加工し、その断面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率50000倍の断面画像を取得した。断面画像において、陽極酸化膜の厚みに相当する箇所の長さを10箇所測定し、測定した10箇所の長さの平均値を求めた。この平均値を、バリア層除去工程後の陽極酸化膜の平均厚みとした。
また、陽極酸化膜に存在するマイクロポアの密度は、約1億個/mm2であった。なお、マイクロポアの密度は、特開2008-270158号公報の[0168]および[0169]段落に記載された方法で測定し、算出した。
また、陽極酸化膜に存在するマイクロポアの規則化度は、92%であった。なお、規則化度は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率20000倍の表面画像を取得し、特開2008-270158号公報の[0024]~[0027]段落に記載された方法を用いて測定し、算出した。
【0110】
<金属充填工程>
次いで、アルミニウム基板を陰極にし、白金を正極にして電解めっき処理を施した。
具体的には、以下に示す組成の銅めっき液を使用し、定電流電解を施すことにより、細孔(マイクロポア)の内部に銅が充填されて導通路が形成された金属充填微細構造体を作製した。
ここで、定電流電解は、株式会社山本鍍金試験器社製のめっき装置を用い、北斗電工株式会社製の電源(HZ-3000)を用い、めっき液中でサイクリックボルタンメトリを行って析出電位を確認した後に、以下に示す条件で処理を施した。
(銅めっき液組成および条件)
・硫酸銅 100g/L
・硫酸 50g/L
・塩酸 15g/L
・温度 25℃
・電流密度 10A/dm2
【0111】
<研磨工程>
次いで、金属が充填されて導通路が形成された金属充填微細構造体の陽極酸化膜の表面に、CMP処理を施し表面から5μm研磨することにより、表面を平滑化した。CMPスラリーとしては、株式会社フジミインコーポレイテッド社製のPNANERLITE-7000を用いた。
細孔(マイクロポア)に金属を充填した後の陽極酸化膜の表面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)で観察し、1000個のマイクロポアにおける金属による封孔の有無を観察して封孔率(封孔マイクロポアの個数/1000個)を算出したところ、96%であった。
また、細孔(マイクロポア)に金属を充填した後の陽極酸化膜を厚さ方向に対してFIBで切削加工し、その断面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率50000倍で断面画像を取得し、細孔(マイクロポア)の内部を確認したところ、封孔された細孔(マイクロポア)においては、その内部が金属で完全に充填されていることが分かった。
【0112】
<トリミング工程>
研磨工程後の金属充填微細構造体を、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:5質量%、液温度:20℃)に浸漬させ、突出部の高さが500nmとなるように浸漬時間を調整してアルミニウムの陽極酸化膜の表面を選択的に溶解し、次いで、水洗し、乾燥して、導通路である銅の円柱を突出させた。
【0113】
<基板除去工程>
次いで、20質量%塩化水銀水溶液(昇汞)に20℃、3時間浸漬させることによりアルミニウム基板を溶解して除去することにより構造体を作製した。
【0114】
<樹脂基板形成工程>
次いで、直径200mm(8インチ)のシリコンウエハ上に、熱剥離型の粘着層付き樹脂基材(リバアルファ 3195MS、日東電工株式会社製)を貼り付け、その上に金属充填微細構造体を貼り付けた。その際、構造体において導通路の直径が大きい大径側の面を粘着層に向けて貼り付けた。
【0115】
<研磨工程>
次いで、構造体において導通路の直径が小さい小径側の面、すなわち、陽極酸化膜の裏面に、CMP処理を施し、金属充填微細構造体を平滑化した。CMPスラリーとしては、株式会社フジミインコーポレイテッド社製のPNANERLITE-7000を用いた。
その際、小径/大径の値が0.98になるように研磨量を調整した。研磨量は、研磨時間により調整した。
【0116】
<トリミング工程>
基板除去工程後、構造体を、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:5質量%、液温度:20℃)に浸漬させ、突出部の高さが500nmとなるように浸漬時間を調整してアルミニウムの陽極酸化膜の表面を選択的に溶解し、次いで、水洗し、乾燥して、導通路である銅の円柱を突出させた。
【0117】
<粘着層形成工程>
トリミング工程後の構造体に、以下に示す方法で樹脂層を形成し積層体を作製した。
<樹脂層>
ガンマブチロラクトンを溶媒としたポリアミド酸エステル溶液(ジメチルスルホキシド、トリアルコキシアミドカルボキシシラン、オキシム誘導体を含む)の市販品として、LTC9320(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社製)を用いた。
この溶液を導通路が突出している絶縁性基材の表面に塗布し、乾燥させて成膜した後に、窒素置換した反応炉中(酸素濃度10ppm以下)で200℃3時間イミド化反応を進行させることにより、ポリイミド樹脂層からなる粘着層を、500nmの厚みに形成した。なお、樹脂層の厚みは溶媒(MEK(メチルエチルケトン))を追添することで調整した。
【0118】
(実施例2)
実施例2は、実施例1に比して、小径/大径の値が0.95である点が異なる。それ以外は、実施例1と同じとした。
実施例2では、実施例1に比して、陽極酸化膜の表面の研磨量を少なくし、陽極酸化膜の裏面の研磨量を多くして、陽極酸化膜の厚みを実施例1と同等にして、小径/大径の値を0.95とした。
(実施例3)
実施例3は、実施例1に比して、小径/大径の値が0.9である点が異なる。それ以外は、実施例1と同じとした。
実施例3では、実施例1に比して、陽極酸化膜の表面の研磨量を少なくし、陽極酸化膜の裏面の研磨量を多くして、陽極酸化膜の厚みを実施例1と同等にして、小径/大径の値を0.9とした。
(実施例4)
実施例4は、実施例1に比して、小径/大径の値が0.85である点が異なる。それ以外は、実施例1と同じとした。
実施例4では、実施例1に比して、陽極酸化膜の表面の研磨量を少なくし、陽極酸化膜の裏面の研磨量を多くして、陽極酸化膜の厚みを実施例1と同等にして、小径/大径の値を0.85とした。
(実施例5)
実施例5は、実施例1に比して、小径/大径の値が0.6である点が異なる。それ以外は、実施例1と同じとした。
実施例5では、実施例1に比して、陽極酸化膜の表面の研磨量を少なくし、陽極酸化膜の裏面の研磨量を多くして、陽極酸化膜の厚みを実施例1と同等にして、小径/大径の値を0.6とした。
(実施例6)
実施例6は、実施例1に比して、小径/大径の値が0.5である点が異なる。それ以外は、実施例1と同じとした。
実施例6では、実施例1に比して、陽極酸化膜の表面の研磨量を少なくし、陽極酸化膜の裏面の研磨量を多くして、陽極酸化膜の厚みを実施例1と同等にして、小径/大径の値を0.5とした。
【0119】
(実施例7)
実施例7は、実施例1に比して、小径/大径の値が0.2である点が異なる。それ以外は、実施例1と同じとした。
実施例7では、実施例1に比して、陽極酸化膜の表面の研磨量を少なくし、陽極酸化膜の裏面の研磨量を多くして、陽極酸化膜の厚みを実施例1と同等にして、小径/大径の値を0.2とした。
(実施例8)
実施例8は、実施例1に比して、小径/大径の値が0.1である点が異なる。それ以外は、実施例1と同じとした。
実施例8では、実施例1に比して、陽極酸化膜の表面の研磨量を少なくし、陽極酸化膜の裏面の研磨量を多くして、陽極酸化膜の厚みを実施例1と同等にして、小径/大径の値を0.1とした。
(実施例9)
実施例9は、実施例4に比して、非電極部クラック長が1(μm/mm)であり、電極部クラック長が1(μm/mm)である点が異なる。それ以外は、実施例4と同じとした。
(実施例10)
実施例10は、実施例4に比して、非電極部クラック長が5(μm/mm)であり、電極部クラック長が1(μm/mm)である点が異なる。それ以外は、実施例4と同じとした。
【0120】
(比較例1)
比較例1は、実施例1に比して、小径/大径の値が1.0である点が異なる。それ以外は、実施例1と同じとした。
比較例1では、実施例1に比して、陽極酸化膜の表面の研磨量を多くし、陽極酸化膜の裏面の研磨量を少なくして、陽極酸化膜の厚みを実施例1と同等にして、小径/大径の値を1.0とした。
(比較例2)
比較例2は、比較例1に比して、非電極部クラック長が1(μm/mm)であり、電極部クラック長が1(μm/mm)である点が異なる。それ以外は、比較例1と同じとした。
(比較例3)
比較例3は、比較例1に比して、非電極部クラック長が5(μm/mm)であり、電極部クラック長が1(μm/mm)である点が異なる。それ以外は、比較例1と同じとした。
【0121】
【表1】
【0122】
表1に示すように、実施例1~10は、比較例1~3に比して、個片化した異方導電性部材を取り外しやすく剥離の成功率が高く、更には、接合について良好な結果が得られた。
比較例1~3は、小径/大径の値が1.0であるため、すなわち、導通路の直径が均一であり、個片化した異方導電性部材に反りが生じることがないため、取り外しにくく、剥離できないものが多かった。
実施例1~10から、小径/大径の値が0.1~0.95の範囲にあると、より取り外しやすくなり、剥離の成功率がより高くなり、好ましい。小径/大径の値が0.1~0.85の範囲にあると、更に取り外しやすくなり、剥離の成功率が更に高くなり、より好ましい。小径/大径の値が0.5超え0.85以下では、剥離の成功率が高いことに加えて、個片化した異方導電性部材を取り出した後の異方導電性部材の品質が良好であった。
また、実施例4、9及び10から、クラックがあっても剥離の成功率は高いが、接合はクラックがない方が良好であった。
【符号の説明】
【0123】
10、11 積層体
12 支持体
12a、14a、20a、40a、44a 表面
14 接着層
16、16a、17 異方導電性部材
18 樹脂層
20 絶縁性基材
20b、44b 裏面
21 細孔
22 導通路
22a、22b 突出部
22c 側面
23 クラック
30 金属層
32 接合部材
40 アルミニウム基板
42c 底部
42d 面
43 バリア層
44 陽極酸化膜
45、45b 金属
45a 金属層
Da、Db 直径
Ds 積層方向
Dt 厚み方向
hj、hm 平均厚み
ht 厚み
p 中心間距離
x 方向
w 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2025-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、接着層と、異方導電性部材とがこの順で積層された積層体であって、
前記異方導電性部材は、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材と、前記絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに電気的に絶縁された状態で設けられた、複数の導通路とを有し、
前記異方導電性部材は、前記導通路の前記一方の面の直径及び前記他方の面の直径のうち、前記直径が大きい側の面を前記接着層に向けて積層され、
前記絶縁性基材は、バルブ金属の陽極酸化膜であり、
前記複数の前記導通路は、それぞれ導電性物質で構成されており、かつ前記絶縁性基材の前記厚み方向における一方の面の前記直径と、前記厚み方向における他方の面の前記直径とが異なっており、
前記導通路の前記一方の面の前記直径及び前記他方の面の前記直径のうち、前記直径が小さい小径と、前記直径が大きい大径との比である小径/大径の値をRとするとき、0.5≦R≦0.85である、積層体。
【請求項2】
前記接着層は、接着力が特定の温度範囲で低下するか、又は接着力が紫外線により低下する、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記接着層は、温度が110℃以上で前記接着力が低下する、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記絶縁性基材の前記一方の面及び前記他方の面における前記導通路の密度が、1×106~1×1010/mm2であり、前記導通路の前記一方の面の前記直径及び前記他方の面の前記直径は、10nm以上500nm以下である、請求項に記載の積層体。
【請求項5】
前記絶縁性基材は、厚みが10μm以上30μm以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項6】
前記支持体は、金属層を有する接合部材であり、前記金属層が前記接着層から露出している、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項7】
前記異方導電性部材は、前記絶縁性基材にクラックを有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項8】
前記導通路は、前記絶縁性基材の前記厚み方向において対向する面のうち、少なくとも一方の面から突出する突出部を有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【手続補正書】
【提出日】2025-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、接着層と、異方導電性部材とがこの順で積層された積層体であって、
前記異方導電性部材は、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材と、前記絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに電気的に絶縁された状態で設けられた、複数の導通路とを有し、
前記絶縁性基材は、バルブ金属の陽極酸化膜であり、
前記複数の前記導通路は、それぞれ導電性物質で構成されており、かつ前記絶縁性基材の前記厚み方向における一方の面の直径と、前記厚み方向における他方の面の直径とが異なっており、
前記導通路の前記一方の面の前記直径及び前記他方の面の前記直径のうち、前記直径が小さい小径と、前記直径が大きい大径との比である小径/大径の値をRとするとき、0.5≦R≦0.85であ
前記異方導電性部材は、前記導通路の前記一方の面の前記直径及び前記他方の面の前記直径のうち、前記直径が大きい側の面を前記接着層に向けて積層されている、積層体。
【請求項2】
前記接着層は、接着力が特定の温度範囲で低下するか、又は接着力が紫外線により低下する、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記接着層は、温度が110℃以上で前記接着力が低下する、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記絶縁性基材の前記一方の面及び前記他方の面における前記導通路の密度が、1×106~1×1010/mm2であり、前記導通路の前記一方の面の前記直径及び前記他方の面の前記直径は、10nm以上500nm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記絶縁性基材は、厚みが10μm以上30μm以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項6】
前記支持体は、金属層を有する接合部材であり、前記金属層が前記接着層から露出している、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項7】
前記異方導電性部材は、前記絶縁性基材にクラックを有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項8】
前記導通路は、前記絶縁性基材の前記厚み方向において対向する面のうち、少なくとも一方の面から突出する突出部を有する、請求項1又は2に記載の積層体。