(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025148930
(43)【公開日】2025-10-08
(54)【発明の名称】二液混合型モルタル組成物、モルタル硬化物、カートリッジ、吐出装置、及びモルタル組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/06 20060101AFI20251001BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20251001BHJP
C04B 14/04 20060101ALI20251001BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20251001BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20251001BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20251001BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20251001BHJP
B28C 7/06 20060101ALI20251001BHJP
B28C 7/12 20060101ALI20251001BHJP
【FI】
C04B28/06
C04B22/14 B
C04B14/04 Z
C04B18/14 Z
C04B18/14 A
C04B18/08 Z
C04B14/10 A
C04B22/06 Z
B28C7/06
B28C7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049300
(22)【出願日】2024-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】秋藤 哲
(72)【発明者】
【氏名】高橋 恵輔
(72)【発明者】
【氏名】弟子丸 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】西田 聖二
【テーマコード(参考)】
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CB01
4G056CB15
4G056CB28
4G056CC02
4G056CD02
4G112MA00
4G112MB23
4G112PA02
4G112PA03
4G112PA06
4G112PA27
4G112PA28
4G112PA29
4G112PB03
4G112PB11
4G112PE01
(57)【要約】
【課題】高温環境下に曝された後も、高い引張強度を維持し得るモルタル硬化物を得ることが可能な二液混合型モルタル組成物を提供すること。
【解決手段】第一の混合物と第二の混合物とを混合して使用される二液混合型モルタル組成物であって、第一の混合物が、アルミナセメント、石膏、細骨材及び無機フィラーを含み、第二の混合物が、アルカリ溶液を含む、二液混合型モルタル組成物を提供する。また、第一の混合物と第二の混合物とを混合して使用される二液混合型モルタル組成物であって、第一の混合物が、アルミナセメント及び石膏と、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、メタカオリン、及び水酸化アルミニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む無機フィラーと、を含み、第二の混合物がアルカリ溶液を含む、二液混合型モルタル組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の混合物と第二の混合物とを混合して使用される二液混合型モルタル組成物であって、
前記第一の混合物が、アルミナセメント、石膏、細骨材、及び無機フィラーを含み、
前記第二の混合物が、アルカリ溶液を含む、二液混合型モルタル組成物。
【請求項2】
第一の混合物と第二の混合物とを混合して使用される二液混合型モルタル組成物であって、
前記第一の混合物が、アルミナセメント及び石膏と、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、メタカオリン、及び水酸化アルミニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む無機フィラーと、を含み、
前記第二の混合物がアルカリ溶液を含む、二液混合型モルタル組成物。
【請求項3】
前記無機フィラーが、シリカ粉末、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、メタカオリン、及び水酸化アルミニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、請求項1に記載の二液混合型モルタル組成物。
【請求項4】
前記第一の混合物における前記無機フィラーの含有量が4質量%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の二液混合型モルタル組成物。
【請求項5】
前記第一の混合物が抑制剤を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の二液混合型モルタル組成物。
【請求項6】
前記第二の混合物の液相における水酸化物の濃度が5.0体積%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の二液混合型モルタル組成物。
【請求項7】
前記第二の混合物が無機フィラーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の二液混合型モルタル組成物。
【請求項8】
硬化後の温度20℃の環境付着試験による引張強度をTS0、100℃の環境付着試験による引張強度をTS1としたときに、TS1/TS0×100で算出される比率が120%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の二液混合型モルタル組成物。
【請求項9】
硬化後の温度20℃の環境付着試験による引張強度をTS0、200℃の環境付着試験による引張強度をTS2としたときに、TS2/TS0×100で算出される比率が120%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の二液混合型モルタル組成物。
【請求項10】
硬化後の温度20℃の環境付着試験による引張強度をTS0、500℃の環境付着試験による引張強度をTS5としたときに、TS5/TS0×100で算出される比率が80%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の二液混合型モルタル組成物。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか一項に記載の二液混合型モルタル組成物を硬化して得られるモルタル硬化物。
【請求項12】
アルミナセメント、石膏、細骨材、及び無機フィラーを含み、
温度20℃の環境付着試験による引張強度をTS0、100℃の環境付着試験による引張強度をTS1としたときに、TS1/TS0×100で算出される比率が120%以上である、モルタル硬化物。
【請求項13】
第一の混合物を収容する第一の収容部と、第二の混合物を収容する第二の収容部と、を備えるカートリッジであって、
前記第一の混合物が、アルミナセメント、石膏、細骨材、及び無機フィラーを含み、
前記第二の混合物が、アルカリ溶液を含む、カートリッジ。
【請求項14】
第一の混合物を収容する第一の収容部と、第二の混合物を収容する第二の収容部と、を備えるカートリッジであって、
前記第一の混合物が、
アルミナセメント及び石膏と、
シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ、カオリン、及び水酸化アルミニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む無機フィラーと、を含み、
前記第二の混合物がアルカリ溶液を含む、カートリッジ。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のカートリッジが取り付けられる吐出装置であって、
前記第一の混合物と前記第二の混合物とを混合する混合部と、
前記第一の混合物と前記第二の混合物とを含むモルタル組成物を吐出する吐出口と、を備える吐出装置。
【請求項16】
以下の不等式(1)で示される条件を満たすように、前記混合部において前記第一の混合物と前記第二の混合物とが混合される、請求項15に記載の吐出装置。
1≦V1/V2≦10…(1)
[式(1)中、V1は前記第一の混合物の体積を示し、V2は前記第二の混合物の体積を示す。]
【請求項17】
第一の混合物と第二の混合物とを混合する工程を有するモルタル組成物の製造方法であって、
前記第一の混合物が、アルミナセメント、石膏、細骨材、及び無機フィラーを含み、
前記第二の混合物が、アルカリ溶液を含む、製造方法。
【請求項18】
第一の混合物と第二の混合物とを混合する工程を有するモルタル組成物の製造方法であって、
前記第一の混合物が、
アルミナセメント及び石膏と、
シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、メタカオリン、及び水酸化アルミニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む無機フィラーと、を含み、
前記第二の混合物がアルカリ溶液を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二液混合型モルタル組成物、モルタル硬化物、カートリッジ、吐出装置、及びモルタル組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナセメントを含む主材と、アルミナセメントの硬化を開始させるアルカリ溶液である活性剤とによって構成される二液混合型のモルタル組成物が知られている。例えば、特許文献1には、硬化性水相アルミナセメント成分Aと、硬化過程を開始するための水相状態にある開始剤成分Bとを含む2成分モルタル系留付け材を開示されている。特許文献2には、アルミナセメントを含む第一の液と細骨材とセルロース系増粘剤とを含むアルカリ溶液である第二の液とを混合して使用される二液混合型モルタル組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-500297号公報
【特許文献2】特開2022-146459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載されるような二液混合型モルタル組成物は、種々の構造物に用いられる。構造物の中には高温環境下に曝されるものもあり、そのような場合でも高い強度を維持することが求められる。そこで、本開示は、高温環境下に曝された後も、高い引張強度を維持し得るモルタル硬化物、並びにそのようなモルタル硬化物を得ることが可能な二液混合型モルタル組成物及びモルタル組成物の製造方法を提供する。また、そのような二液混合型モルタル組成物を構成する第一の混合物と第二の混合物を混合してモルタル組成物を円滑に調製することが可能なカートリッジ及び吐出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、第一の混合物と第二の混合物とを混合して使用される二液混合型モルタル組成物であって、第一の混合物が、アルミナセメント、石膏、細骨材、及び無機フィラーを含み、第二の混合物が、アルカリ溶液を含む、二液混合型モルタル組成物を提供する。
【0006】
上述の二液混合型モルタル組成物は、第二の混合物と混合される第一の混合物が細骨材と無機フィラーとを含む。これによって、第一の混合物と第二の混合物を混合したときに各成分の分散性が良好となり、細骨材を含みつつも、得られる二液混合型モルタル組成物の組成の均一性が向上する。その結果、高温環境下に曝された後も、高い引張強度を維持することが可能なモルタル硬化物を得ることができる。
【0007】
本開示の一側面は、第一の混合物と第二の混合物とを混合して使用される二液混合型モルタル組成物であって、第一の混合物が、アルミナセメント及び石膏と、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、メタカオリン、及び水酸化アルミニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む無機フィラーと、を含み、第二の混合物がアルカリ溶液を含む、二液混合型モルタル組成物を提供する。
【0008】
上述の二液混合型モルタル組成物は、第二の混合物と混合される第一の混合物が特定の無機フィラーを含む。これによって、第一の混合物と第二の混合物を混合したときに各成分の分散性が良好となり、得られる二液混合型モルタル組成物の組成の均一性が向上する。その結果、高温環境下に曝された後も、高い引張強度を維持することが可能なモルタル硬化物を得ることができる。
【0009】
本開示の一側面は、第一の混合物を収容する第一の収容部と、第二の混合物を収容する第二の収容部と、を備えるカートリッジであって、第一の混合物が、アルミナセメント、石膏、細骨材及び無機フィラーを含み、第二の混合物が、アルカリ溶液を含む、カートリッジを提供する。
【0010】
上述のカートリッジは、第一の混合物を収容する第一の収容部と、第二の混合物を収容する第二の収容部と、を備える。このため、第一の混合物と第二の混合物とが混合されたモルタル組成物を円滑に調製することができる。
【0011】
本開示の一側面は、上述のカートリッジが取り付けられる吐出装置であって、第一の混合物と第二の混合物とを混合する混合部と、第一の混合物と第二の混合物とを含むモルタル組成物を吐出する吐出口と、を備える吐出装置を提供する。
【0012】
上述の吐出装置は、カートリッジが取り付けられるとともに、混合部と吐出口とを備える。このため、第一の混合物と第二の混合物が混合されたモルタル組成物を円滑に調製して施工することができる。
【0013】
本開示の一側面は、第一の混合物と第二の混合物とを混合する工程を有するモルタル組成物の製造方法であって、第一の混合物が、アルミナセメント、石膏、細骨材、及び無機フィラーを含み、第二の混合物が、アルカリ溶液を含む、製造方法を提供する。
【0014】
上述の製造方法では、細骨材と無機フィラーとを含む第一の混合物と第二の混合物を混合する。これによって、混合したときの各成分の分散性が良好となり、細骨材を含みつつも、組成の均一性に優れるモルタル組成物が得られる。このようなモルタル組成物の硬化物は、高温環境下に曝された後も、高い引張強度を維持することができる。
【0015】
本開示の一側面は、第一の混合物と第二の混合物とを混合する工程を有するモルタル組成物の製造方法であって、第一の混合物が、アルミナセメント及び石膏と、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、メタカオリン、及び水酸化アルミニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む無機フィラーと、を含み、第二の混合物がアルカリ溶液を含む、製造方法を提供する。
【0016】
上述の製造方法では、特定の無機フィラーを含む第一の混合物と第二の混合物を混合する。これによって、混合したときの各成分の分散性が良好となり、組成の均一性に優れるモルタル組成物が得られる。このようなモルタル組成物の硬化物は、高温環境下に曝された後も、高い引張強度を維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一側面によれば、高温環境下に曝された後も、高い引張強度を維持し得るモルタル硬化物、並びにそのようなモルタル硬化物を得ることが可能な二液混合型モルタル組成物及びモルタル組成物の製造方法を提供することができる。また、そのような二液混合型モルタル組成物を構成する第一の混合物と第二の混合物を混合してモルタル組成物を円滑に調製することが可能なカートリッジ及び吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は吐出装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の幾つかの実施形態を以下に説明する。ただし、以下の各実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す符号の向きを基準とする位置関係に基づくものとする。各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。「a~b」で例示する数値範囲は、下限をa、上限をbとし、a,bを含む数値範囲である。各数値範囲の上限又は下限をいずれかの実施例の数値で置き換えたものも、本開示に含まれる。複数の材料が例示されている場合、そのうちの一種を単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本開示における「二液混合型モルタル組成物」は、第一の混合物と第二の混合物とが混合される前のもの、及び、第一の混合物と第二の混合物とが混合された後のものの双方の総称である。例えば、キットのように、第一の混合物と第二の混合物が個別に包装されたものも、両者が混合して使用されるのであれば、二液混合型モルタル組成物に該当する。また、個別の収容部に収容された第一の混合物及び第二の混合物も、両者が混合して使用されるのであれば、二液混合型モルタル組成物に該当する。
【0021】
上述の「二液混合型モルタル組成物」のうち、第一の混合物と第二の混合物とが混合された後のものは、「モルタル組成物」とも称される。「二液混合型モルタル組成物」及び「モルタル組成物」は流動性を有するのに対し、モルタル組成物の硬化が進行して流動性がなくなったものを「モルタル硬化物」と称する。
【0022】
[二液混合型モルタル組成物]
二液混合型モルタル組成物の第1実施形態は、第一の混合物と第二の混合物とを混合して使用される二液混合型モルタル組成物であって、第一の混合物が、アルミナセメント、石膏、細骨材及び無機フィラーを含み、第二の混合物が、アルカリ溶液を含む。第一の混合物及び第二の混合物は、液体を含んでおり、流動性を有する。第一の混合物及び第二の混合物は、それぞれ、第一のスラリー及び第二のスラリーであってよい。
【0023】
アルミナセメントは、主に水硬性カルシウムアルミネートで構成されるカルシウムアルミネートセメントである。カルシウムアルミネートセメントの主な有効成分としては、モノカルシウムアルミネート(CaO・Al2O3)、及びモノカルシウムジアルミネート(CaO・2Al2O3)が挙げられる。アルミナセメントの市販品として、ターナルホワイト(登録商標、イメリスアルミネート社、フランス)を例示できる。第一の混合物の流動性を十分に維持しつつ一層高い引張強度を有するモルタル硬化物を得る観点から、第一の混合物におけるアルミナセメントの含有量は、20~60質量%、25~55質量%、又は30~50質量%であってよい。
【0024】
石膏は、二水石膏、半水石膏及び無水石膏からなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでよい。アルミナセメント中のカルシウムアルミネートが石膏と反応することでエトリンガイトという水和物が生成する。エトリンガイトの生成は硬化組成物の膨張を誘致することが知られており、アルミナセメントの収縮を補償する働きを有する。第一の混合物の流動性を十分に維持しつつ一層高い引張強度を有するモルタル硬化物を得る観点から、第一の混合物における石膏の含有量は、5~30質量%、10~25質量%、又は12~20質量%であってよい。アルミナセメント100質量部に対する石膏の含有量は、15~60質量部、20~50質量部、又は25~45質量部であってよい。
【0025】
第一の混合物が細骨材を含むことによって、二液混合型モルタル組成物を硬化して得られるモルタル硬化物の引張強度を高くすることができる。細骨材は特に限定されず、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、硬質高炉スラグ細骨材、高炉スラグ細骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ細骨材等が挙げられる。これらのうち、一種を単独で又は二種以上を併用してもよい。
【0026】
本開示の細骨材は、JIS A 0203:2014「コンクリート用語」に規定されるように、10mm網ふるいを全部とおり、5mm網ふるいを質量で85%以上とおる骨材である。細骨材の粒径は、細骨材の沈降及び凝集を抑制する観点から、0.4mm以下、0.35mm以下、又は0.3mm以下であってよい。細骨材の具体例としては、7号珪砂(最大粒径:0.3mm程度)、8号珪砂(最大粒径:0.25mm程度)が挙げられる。
【0027】
第一の混合物の分散性を一層良好にする観点から、第一の混合物における細骨材の含有量は、5~40質量%、10~35質量%、又は15~30質量%であってよい。同様の観点から、アルミナセメント100質量部に対する細骨材の含有量は10~85質量部、20~77質量部、又は35~65質量部であってよい。
【0028】
無機フィラーは、シリカ粉末、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、メタカオリン、及び水酸化アルミニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでよい。シリカ粉末としては、例えば、石英粉末、シリカフューム、ガラス粉末が挙げられる。本開示において、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される無機フィラーの最大粒子径は5μm以下である。無機フィラーは、細骨材よりも粒子径が小さいため、第一の混合物が固液分離することを十分に抑制することができる。高温環境下に曝された後のモルタル硬化体の引張強度を十分に高く維持する観点から、無機フィラーは、シリカフューム、フライアッシュ、メタカオリン、及び水酸化アルミニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。無機フィラーの平均粒子径は、0.05~4.00μm、又は0.08~3.00μmであってよい。
【0029】
本開示の最大粒子径及び粒子径分布は、JIS Z 8825:2013「粒子径解析-レーザー回折・散乱法」に記載の方法に基づいて求められる。粒子径分布(累積分布)は、上記方法に基づいて、横軸を対数目盛の粒子径[μm]、縦軸を頻度[体積%]として示される。本開示の平均粒子径は、このような累積分布において、小粒径からの積算値が全体の50%に達したときの粒子径(メディアン径)である。最大粒子径は、積算値が100%に達したときの粒子径である。
【0030】
高温環境下に曝された後も、高い引張強度を十分に維持し得るモルタル硬化物を得る観点から、第一の混合物における無機フィラーの含有量は、4質量%以上、又は5質量%以上であってよい。第一の混合物の分散性を一層良好にする観点から、第一の混合物における無機フィラーの含有量は、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下であってよい。同様の観点から、アルミナセメント100質量部に対する無機フィラーの含有量は、10~100質量部、12~80質量部、又は14~70質量部であってよい。
【0031】
第一の混合物における細骨材と無機フィラーの合計含有量は、8~60質量%、15~50質量%、又は20~45質量%であってよい。同様の観点から、アルミナセメント100質量部に対する細骨材と無機フィラーの合計含有量は30~150質量部、40~130質量部、又は60~120質量部であってよい。
【0032】
第一の混合物は水を含んでよい。水は特に限定されず、例えば、水道水、蒸留水、脱イオン水等が挙げられる。第一の混合物の分散性を一層良好にする観点から、第一の混合物における水の含有量は、5~40質量%、10~30質量%、又は、15~25質量%であってよい。同様の観点から、アルミナセメント100質量部に対する水の含有量は10~100質量部、20~85質量部、又は30~70質量部であってよい。
【0033】
第一の混合物は、遮断剤、分散剤、抑制剤、促進剤、及び増粘剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでもよい。
【0034】
遮断剤とは、第一の混合物においてアルミナセメントの水和を防止する機能を有する。遮断剤としては、例えば、リン酸、メタリン酸、亜リン酸、ホスホン酸が挙げられる。これらの成分の一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。アルミナセメントの水和を適度に抑制する観点から、第一の混合物における遮断剤の含有量は、0.2~1.2質量%、0.4~1.0質量%、又は0.5~0.9質量%であってよい。同様の観点から、アルミナセメント100質量部に対する遮断剤の含有量は、0.3~6.0質量部、0.5~5.0質量部、又は1.0~4.0質量部であってよい。
【0035】
分散剤とは、第一の混合物における各成分の分散性を向上する機能を有する。分散剤は、ポリマーであってよく、例えば、ナフタレンスルホン酸系化合物、ナフタレンスルホン酸カルシウム系化合物、メラミンスルホン酸系化合物、アルキルアリルスルホン酸系化合物、ポリカルボン酸系化合物等が挙げられる。第一の混合物における分散剤の含有量は、材料分離を十分に抑制しつつ分散性を十分良好に維持する観点から、0.2~3.0質量%、0.4~2.0質量%、又は0.7~1.5質量%であってよい。同様の観点から、アルミナセメント100質量部に対する分散剤の含有量は、0.5~8.0質量部、1.0~7.0質量部、又は1.5~6.0質量部であってよい。
【0036】
抑制剤は、アルミナセメントの水和を遅延させる機能を有する。抑制剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、グルコン酸及びこれらの塩が挙げられる。これらの成分のうち、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。第一の混合物が抑制剤を含むことによって、第一の混合物の貯蔵安定性を向上することができる。第一の混合物における抑制剤の含有量は、貯蔵安定性を一層高くする観点から、0.01~0.2質量%、0.02~0.15質量%、又は0.04~0.1質量%であってよい。同様の観点から、アルミナセメント100質量部に対する抑制剤の含有量は、0.01~1.5質量部、0.03~1.0質量部、又は0.05~0.5質量部であってよい。
【0037】
促進剤は、アルミナセメントの硬化を促進させる機能を有する。促進剤と抑制剤を併用することで、モルタル組成物の硬化時間を調整することができる。促進剤としては、例えば、硫酸リチウム、ギ酸リチウム、亜硝酸リチウム、リン酸リチウム、炭酸リチウム等のリチウム金属塩、硫酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等のナトリウム金属塩、及び、硫酸カルシウム、ギ酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、リン酸カルシウム等のカルシウム金属塩が挙げられる。これらの成分は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。アルミナセメントの硬化を適度に進行させる観点から、第一の混合物における促進剤の含有量は、0.05~1質量%、0.08~0.8質量%、又は0.1~0.5質量%であってよい。同様の観点から、アルミナセメント100質量部に対する促進剤の含有量は、0.1~4.0質量部、0.3~3.0質量部、又は0.5~2.0質量部であってよい。
【0038】
増粘剤は、第一の混合物の粘度を調整する機能を有する。増粘剤として、キサンタンガム、ダイユータンガム、スターチエーテル、グアガム、ポリアクリルアミド、カラギーナンガム、寒天、粘土鉱物系のベントナイト、セルロース系、蛋白質系、ラテックス系、水溶性ポリマー系増粘剤等を使用できる。これらのうちの一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。第一の混合物の粘度を適度は範囲にする観点から、第一の混合物における増粘剤の含有量は、0.01~0.8質量%、0.03~0.5質量%、又は0.05~0.3質量%であってよい。同様の観点から、アルミナセメント100質量部に対する増粘剤の含有量は、0.01~1.6質量部、0.03~1.2質量部、又は0.05~0.8質量部であってよい。
【0039】
第一の混合物は、上述の成分以外の成分を含んでもよい。そのような成分としては、例えば、膨張材、収縮低減剤、凝結調整剤、消泡剤、防腐剤、インク、及び顔料が挙げられる。また、アルミナセメント以外のセメントを含んでいてもよい。
【0040】
第二の混合物と混合される際の第一の混合物の粘度範囲は、30~130Pa・s、35~110Pa・s、45~90Pa・s、又は、50~80Pa・sであってよい。第二の混合物と混合される際の第一の混合物のTi値(チキソトロピーインデックス)は、2.0~9.0であってよく、3.0~8.0であってよく、3.5~7.0であってよい。
【0041】
本開示における粘度は、測定条件が特に明示されていない場合は、B型粘度計を使用し、20℃、回転数20rpmの条件で測定される値であり、Ti値は回転数20rpmの粘度(20℃)に対する回転数2rpm(20℃)の粘度の比である。粘度及びTi値が上記範囲内の第一の混合物は、貯蔵時における固液の分離が十分に抑制されているということができる。このような第一の混合物は、吐出装置等において吐出抵抗を小さくできるとともに、モルタル組成物の吐出量を安定的に維持することができる。
【0042】
第二の混合物は、第一の混合物に含まれるアルミナセメントの硬化を開始させる活性剤として、アルカリ溶液を含む。アルカリ溶液は、水酸化物、アミン、アルカノールアミン、オルトケイ酸ナトリウム、及びアミノメチルプロパノールからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む溶液であってよい。水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでよい。アルカリ溶液は水溶液であってよく、水以外の溶媒を含んでいてもよい。第二の混合物の液相のpHは、7より大きく14以下であってよく、9~14であってもよい。
【0043】
第二の混合物の液相が水酸化物を含む場合、当該液相における水酸化物の濃度は、好ましくは4.0体積%以上且つ5.0体積%未満であり、より好ましくは、4.5体積%以上且つ5.0体積%未満である。これによって、液相が水酸化物を含んでいても第二の混合物の安全性と強度発現性を高い水準で両立することができる。第二の混合物におけるアルカリ溶液の含有量は、10~40質量%、15~35質量%、又は20~30質量%であってよい。
【0044】
第二の混合物も、第一の混合物と同様に細骨材を含んでよい。これによって、第一の混合物との混合性を十分に良好にすることができる。第二の混合物に含まれる細骨材も、第一の混合物で例示したものと同様であってよい。第二の混合物に含まれる細骨材の種類及び粒子径は、第一の混合物に含まれる細骨材と同じであってよく、異なっていてもよい。第一の混合物との混合性を良好にする観点から、第二の混合物における細骨材の含有量は、40~80質量%、45~75質量%、又は50~70質量%であってよい。同様の観点から、アルカリ溶液100質量部に対する細骨材の含有量は、70~300質量部、120~280質量部、又は150~250質量部であってよい。
【0045】
第二の混合物も、第一の混合物と同様に無機フィラーを含んでよい。第二の混合物における無機フィラーも、細骨材よりも粒子径が小さく、最大粒子径が5μm以下である。第二の混合物が無機フィラーを含むことによって、細骨材が沈降することを抑制することができる。第二の混合物に含まれる無機フィラーも、第一の混合物で例示したものと同様であってよい。第二の混合物に含まれる無機フィラーの種類及び平均粒子径は、第一の混合物に含まれる無機フィラーと同じであってよく、異なっていてもよい。
【0046】
第二の混合物における細骨材の沈降を十分に抑制するとともに流動性を高く維持する観点から、第二の混合物における無機フィラーの含有量は、5~30質量%、又は10~20質量%であってよい。同様の観点から、アルカリ溶液100質量部に対する無機フィラーの含有量は、10~200質量部、25~150質量部、又は30~120質量部であってよい。
【0047】
第二の混合物も、第一の混合物と同様に増粘剤を含んでよい。増粘剤は、第二の混合物の粘度を調整するとともに、細骨材の沈降及び凝集を抑制する機能を有する。第二の混合物に含まれる増粘剤も、第一の混合物で例示したものと同様であってよく、例えばセルロース系増粘剤を含んでよい。セルロース系増粘剤の具体例として、メチルセルロース系増粘剤、ヒドロキシエチルセルロース系増粘剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤及びヒドロキシエチルメチルセルロース系増粘剤が挙げられる。これらのうち、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
第二の混合物の粘度を好適な範囲にする観点から、第二の混合物における増粘剤の含有量は、0.1~2質量%、0.2~1.5質量%、又は0.3~1.0質量%であってよい。同様の観点から、アルカリ溶液100質量部に対する増粘剤の含有量は、0.1~10.0質量部、0.2~7.0質量部、又は0.5~4.0質量部であってよい。
【0049】
第二の混合物は、上述の成分以外の成分を含んでもよい。そのような成分としては、例えば、消泡剤、防腐剤、及び着色剤等が挙げられる。
【0050】
第一の混合物と混合される際の第二の混合物の粘度範囲は、45~120Pa・s、55~100Pa・s、又は、60~90Pa・sであってよい。第一の混合物と混合される際の第二の混合物のTi値(チキソトロピーインデックス)は、2.0~9.0であってよく、3.0~8.0であってよく、3.5~7.0であってよい。このような第二の混合物は、吐出装置等において吐出抵抗を小さくできるとともに、モルタル組成物の吐出量を安定的に維持するができる。また、このような第二の混合物は、第一の混合物との混合性に優れ、高い均一性を有するモルタル組成物を得ることができる。
【0051】
二液混合型モルタル組成物の第2実施形態は、第一の混合物と第二の混合物とを混合して使用される二液混合型モルタル組成物であって、第一の混合物が、アルミナセメント及び石膏と、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、メタカオリン、及び水酸化アルミニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む無機フィラーと、を含み、第二の混合物がアルカリ溶液を含む。
【0052】
この第2実施形態では、第一の混合物における無機フィラーが、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、メタカオリン、及び水酸化アルミニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む。第一の混合物の分散性を一層良好にする観点から、第一の混合物における無機フィラーの含有量は、8~60質量%、15~50質量%、又は20~45質量%であってよい。同様の観点から、アルミナセメント100質量部に対する無機フィラーの含有量は30~150質量部、40~130質量部、又は60~120質量部であってよい。このような第一の混合物と第二の混合物を混合することによって、高温環境下に曝された後も高い引張強度を維持することが可能なモルタル硬化物を得ることができる。本開示における高温環境とは、100~500℃の温度環境をいう。
【0053】
本実施形態における第二の混合物の性状、含有成分の種類及び含有成分の含有量は、第一実施形態と同様であってよい。本実施形態の第一の混合物は、上述の無機フィラーを含むこと、及び、細骨材を含まなくてもよいこと以外は、第一実施形態と同様であってよい。
【0054】
[モルタル組成物及びその製造方法、並びにモルタル硬化物]
モルタル組成物の製造方法は、上記第一の混合物と上記第二の混合物とを混合する工程を有する。このような工程によって、モルタル組成物が得られる。第一の混合物と第二の混合物は、下記不等式(1)で示される条件を満たすように混合されることが好ましい。すなわち、モルタル組成物は、第一の混合物と第二の混合物を、下記不等式(1)で示される条件を満たすように含むことが好ましい。
1≦V1/V2≦10…(1)
【0055】
上記不等式(1)中、V1は第一の混合物の体積を示し、V2は第二の混合物の体積を示す。V1/V2の値が1以上であることで、モルタル組成物から高い引張強度を有するモルタル硬化物を得ることができる。他方、V1/V2の値が10以下であることで、第一の液と第二の液を短時間で十分均一に混合することができる。V1/V2は、1.2~6.0であってよく、1.4~4.0であってもよい。
【0056】
このようにして得られるモルタル組成物を硬化して得られるモルタル硬化物は、常温(20℃)でも十分な引張強度を有しつつ、高温環境下に曝された後も、十分に高い引張強度を維持することができる。このため、例えば、建築構造物や土木構造物をこのモルタル硬化物で構成すれば、例えば火災によるひび割れ及び崩落等のリスクを十分に低減することができる。
【0057】
本開示において、高温環境下に曝された後のモルタル硬化物の引張強度は、一般社団法人日本建設あと施工アンカー協会(JCAA)において実施される高温環境付着試験(建築研究所)の接着系あと施工アンカーに使用する接着剤の接着力試験方法に準拠して測定される。この試験方法の手順は以下のとおりである。高ナットM24の孔(呼び径×長さ=36mm×70mm)に、第一の混合物と第二の混合物を混合して得られたモルタル組成物を注入する。アンカー筋(直径×長さ=12mm×100mm)を注入したモルタル組成物中に埋め込んで、20℃で7日間静置し(気中養生)、高ナット試験体を得る。その後、電気炉又は乾燥機内で、高ナット試験体を3℃/minの昇温速度で昇温し、電気炉内又は乾燥機内が所定の温度(T0)に到達したら、炉内温度と試験体内部の温度が定常になるまで保持する。その後、所定の温度(T0)で2時間保持した後、高ナット試験体を室温(20℃)まで自然放冷する。自然放冷後、高ナット試験体のアンカー筋をモルタル硬化物から引き抜く際の引張強度を以下の手順で測定する。
【0058】
100kN万能試験機((株)島津製作所製)に高ナット試験体の上下を固定し、載荷速度を0.5±0.1kN/secとし、高ナット試験体のアンカー筋に引張力を載荷する。試験結果から、以下の式(2)を用いてτbを求める。このようにして求められるτbがモルタル硬化物の引張強度である。
【0059】
τb=F/(d×π×L)…(2)
上記式(2)中、τbは引張強度(N/mm2)を示し、Fは引張試験において高ナット試験体のアンカー筋がモルタル硬化物から引き抜かれるまでの最大荷重(N)を示し、dはアンカー筋の直径(mm)を示し、Lは埋込み長さ(mm)を示す。
【0060】
温度(T0)は、例えば20~500℃の間で適宜設定することができる。温度(T0)が20℃の場合の引張強度(τb)は、加熱をせずにそのまま上述の時間、保持することで測定することができる。以下、温度(T0)において上記方法で測定される引張強度を、「温度T0の環境付着試験による引張強度」と称する。「温度T0の環境付着試験による引張強度」は、複数個の高ナット試験体(例えば3個)を用いて求められる平均値であることが好ましい。これによって、十分に高い精度を有する値を得ることができる。
【0061】
本実施形態のモルタル硬化物は、温度20℃の環境付着試験による引張強度(以下、「引張強度TS0」という。)は、10N/mm2を超えてよく、13N/mm2以上、14N/mm2以上、又は15N/mm2以上であってよい。温度100℃の環境付着試験による引張強度(以下、「引張強度TS1」という。)は、15N/mm2以上、18N/mm2以上、又は20N/mm2以上であってよい。温度200℃の環境付着試験による引張強度(以下、「引張強度TS2」という。)は、17N/mm2以上、20N/mm2以上、又は22N/mm2以上であってよい。温度300℃の環境付着試験による引張強度(以下、「引張強度TS3」という。)は、11N/mm2以上、13N/mm2以上、又は15N/mm2以上であってよい。温度500℃の環境付着試験による引張強度(以下、「引張強度TS5」という。)は、9N/mm2以上、11N/mm2以上、又は13N/mm2以上であってよい。
【0062】
本実施形態のモルタル硬化物は、引張強度TS0に対する引張強度をTS1の比率、すなわち、TS1/TS0×100で算出される比率が、120%以上、130%以上、又は140%以上であってよい。また、引張強度TS0に対する引張強度TS2の比率、すなわち、TS2/TS0×100で算出される比率が、120%以上、140%以上、又は150%以上であってよい。
【0063】
火災等が発生したときに、アンカー筋が埋め込まれている深さにおけるモルタル硬化物の内部温度の一例は100~200℃程度と想定される。このため、TS1/TS0×100又はTS2/TS0×100で算出される比率が十分に高いモルタル硬化物は、火災等で高温環境下にさらされた後も、十分に高い引張強度を維持することができる。このため、このようなモルタル硬化物をアンカー材として用いれば、例えば火災等によるひび割れ及び崩落等を十分に抑制することができる。
【0064】
本実施形態のモルタル硬化物は、引張強度TS0に対する引張強度TS5の比率、すなわち、TS5/TS0×100で算出される比率が80%以上、90%以上、又は95%以上であってよい。このようなモルタル硬化物はさらに高い温度環境下に曝された後も、十分に高い引張強度を維持することができる。このため、特に過酷な環境に曝される構造物のアンカー材として好適に用いることができる。
【0065】
[カートリッジ及び吐出装置]
図1は、一実施形態に係るカートリッジ及び吐出装置を模式的に示す断面図である。
図1の吐出装置50は、カートリッジ10が取り付けられる装着部8と、第一の混合物11と第二の混合物12とを混合する混合部3と、混合部3で得られるモルタル組成物を吐出するノズル7と、を備える。カートリッジ10は、第一の混合物11を収容する第一の収容部1と、第二の混合物12を収容する第二の収容部2と、を備える。カートリッジ10は、吐出装置50の装着部8と着脱可能に構成される。吐出装置50は、ノズル7の先端における吐出口7aから、モルタル組成物を、単位時間あたり0.01~10L/分程度吐出してよい。
【0066】
吐出装置50は、例えば、あと施工アンカー工法に使用されてよい。吐出装置50は、孔にモルタル組成物を注入する工程において使用されてよい。あと施工アンカー工法は以下の工程を含む。
(A)既設建築物の所定の位置にドリルで孔を形成する。
(B)孔の内面を清掃する。
(C)孔の深さを確認する。
(D)孔内に所定量のモルタル組成物を注入する。
(E)モルタル組成物が収容された孔内にアンカー筋を埋め込む。
(F)モルタル組成物を硬化させてアンカー筋を固定する。
あと施工アンカー工法においては、決められた深さの孔を形成すること、及び、この孔に決められた量のモルタル組成物を注入することによって、十分な強度を有するアンカーを構築することができる。ただし、吐出装置50は、あと施工アンカー工法とは異なる工法に使用されてもよい。
【0067】
吐出装置50は、第一の収容部1及び第二の収容部2の内部には、それぞれ、ピストン1a及びピストン2aが挿入されている。ピストン1a及びピストン2aの上部にはそれぞれシャフト1b及びシャフト2bが取り付けられている。手動、電動、油圧、又はエア式(ブランジャ)等の動力源が、シャフト1b,2bを下方に駆動する。これによって、ピストン1a及びピストン2aは、その外周面が第一の収容部1及び第二の収容部2の内壁面と摺動しながら、第一の収容部1及び第二の収容部2内を下方に移動する。第一の収容部1及び第二の収容部2の下部には、それぞれ、第一の混合物11及び第二の混合物12が流通可能な流路1d及び流路2dが形成されている。ピストン1a及びピストン2aの下降に伴って、流路1d及び流路2dから第一の混合物11及び第二の混合物12が混合部3に押し出される。
【0068】
流路1d及び流路2dは、混合部3に連通している。混合部3は、例えば、スタティックミキサーであってよい。スタティックミキサーは動力が不要であることから、設置スペース及び消費エネルギーを低減することができる。混合部3は、第一の混合物と第二の混合物を十分に混合できるものであればよい。例えば、変形例では、第一の混合物11と第二の混合物12とを収容するタンクと、タンク内の液体を攪拌するプロペラとによって構成されるものであってもよい。また、別の変形例では、流路1d及び流路2dと、混合部3とは、ホースを介して接続されてもよい。
【0069】
シャフト1b及びシャフト2bの上端(不図示)を連結して、シャフト1b及びシャフト2bを駆動する動力源を一つにしてもよい。この場合、ピストン1a及びピストン2aの移動距離が同じになるため、第一の収容部1及び第二の収容部2の断面積によって、第一の混合物11と第二の混合物12の混合比率を調整することができる。変形例では、ピストン1a及びピストン2aの移動距離が個別に制御されるようにしてもよい。この場合、ピストン1a及びピストン2aの移動距離によって、第一の混合物11と第二の混合物12の混合比率を調整することができる。
【0070】
第一の収容部1に収容された第一の混合物11、及び、第二の収容部2に収容された第二の混合物の少なくとも一方の全て又は大部分が、流路1d又は流路2dから吐出されたら、カートリッジ10を装着部8から取り外してよい。ピストン1a及びシャフト1bは、第一の収容部1に対して挿抜可能に構成されていてよい。ピストン2a及びシャフト2bも、第二の収容部2に対して挿抜可能に構成されていてよい。これによって、カートリッジ10の交換作業を円滑に行うことができる。なお、変形例では、カートリッジ10と、ピストン1a及びシャフト1b、並びに、ピストン2a及びシャフト2bが一体となっており、これらをまとめて交換できるように構成されていてもよい。
【0071】
このように吐出装置50は、交換可能なカートリッジ10を備えることから、施工現場での作業を簡略することができる。例えば、設備が整った製造工場で第一の混合物11及び第二の混合物12を調製し、これらを第一の収容部1及び第二の収容部2に収容したカートリッジ10を施工現場に配送することで、モルタル組成物の製造及び吐出を円滑に継続することができる。なお、第一の収容部1及び第二の収容部2は、分離可能であってよく、一体化されたものであってもよい。
【0072】
第一の収容部1及び第二の収容部2の収容量は、第一の混合物11液及び第二の混合物12の使用量に応じて適宜設定すればよい。モルタル組成物の調製に使用する第二の混合物12の使用量を1体積部とすると、第一の混合物11の使用量は、例えば、1~10体積部であってよい(上記不等式(1)参照)。
【0073】
ノズル7は、モルタル組成物を吐出するためのものであり、混合部3の先端に対して着脱自在に設けられてよい。ノズル7の吐出口7aの形状は、モルタル組成物の粘度及び吐出速度、並びに、充填孔の態様等により適宜設定してよい。あと施工アンカー工法においては、孔に所定量のモルタル組成物を確実に注入することが好ましい。したがって、例えば、モルタル組成物の充填時に孔内に空隙が生じないように、モルタル組成物を孔の底部に供給してもよい。すなわち、ノズル7を孔に挿入し、ノズル7の吐出口7aを孔の底部に近づけた状態でモルタル組成物を孔に供給してもよい。ノズル7は、
図1に示すように、細長い形状を有する。ノズル7の長さは、例えば、30~450mm、又は45~420mmであってよい。ノズル7の外径は、例えば、3~65mm、又は7~60mmであってよい。
【0074】
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、本開示は、以下の実施形態を含む。
[1]第一の混合物と第二の混合物とを混合して使用される二液混合型モルタル組成物であって、
前記第一の混合物が、アルミナセメント、石膏、細骨材、及び無機フィラーを含み、
前記第二の混合物が、アルカリ溶液を含む、二液混合型モルタル組成物。
[2]第一の混合物と第二の混合物とを混合して使用される二液混合型モルタル組成物であって、
前記第一の混合物が、アルミナセメント及び石膏と、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、メタカオリン、及び水酸化アルミニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む無機フィラーと、を含み、
前記第二の混合物がアルカリ溶液を含む、二液混合型モルタル組成物。
[3]前記無機フィラーが、シリカ粉末、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、メタカオリン、及び水酸化アルミニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、[1]に記載の二液混合型モルタル組成物。
[4]前記第一の混合物における前記無機フィラーの含有量が4質量%以上である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の二液混合型モルタル組成物。
[5]前記第一の混合物が抑制剤を更に含む、[1]~[4]のいずれか一つに記載の二液混合型モルタル組成物。
[6]前記第二の混合物の液相における水酸化物の濃度が5.0体積%未満である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の二液混合型モルタル組成物。
[7]前記第二の混合物が無機フィラーを含む、[1]~[6]のいずれか一つに記載の二液混合型モルタル組成物。
[8]硬化後の温度20℃の環境付着試験による引張強度をTS0、100℃の環境付着試験による引張強度をTS1としたときに、TS1/TS0×100で算出される比率が120%以上である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の二液混合型モルタル組成物。
[9]硬化後の温度20℃の環境付着試験による引張強度をTS0、200℃の環境付着試験による引張強度をTS2としたときに、TS2/TS0×100で算出される比率が120%以上である、[1]~[8]のいずれか一つに記載の二液混合型モルタル組成物。
[10]硬化後の温度20℃の環境付着試験による引張強度をTS0、500℃の環境付着試験による引張強度をTS5としたときに、TS5/TS0×100で算出される比率が80%以上である、[1]~[9]のいずれか一つに記載の二液混合型モルタル組成物。
[11]上記[1]~[10]のいずれか一つに記載の二液混合型モルタル組成物を硬化して得られるモルタル硬化物。
[12]アルミナセメント、石膏、細骨材、及び無機フィラーを含み、
温度20℃の環境付着試験による引張強度をTS0、100℃の環境付着試験による引張強度をTS1としたときに、TS1/TS0×100で算出される比率が120%以上である、モルタル硬化物。
[13]第一の混合物を収容する第一の収容部と、第二の混合物を収容する第二の収容部と、を備えるカートリッジであって、
前記第一の混合物が、アルミナセメント、石膏、細骨材、及び無機フィラーを含み、
前記第二の混合物が、アルカリ溶液を含む、カートリッジ。
[14]第一の混合物を収容する第一の収容部と、第二の混合物を収容する第二の収容部と、を備えるカートリッジであって、
前記第一の混合物が、
アルミナセメント及び石膏と、
シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ、カオリン、及び水酸化アルミニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む無機フィラーと、を含み、
前記第二の混合物がアルカリ溶液を含む、カートリッジ。
[15]上記[13]又は[14]に記載のカートリッジが取り付けられる吐出装置であって、
前記第一の混合物と前記第二の混合物とを混合する混合部と、
前記第一の混合物と前記第二の混合物とを含むモルタル組成物を吐出する吐出口と、を備える吐出装置。
[16]以下の不等式(1)で示される条件を満たすように、前記混合部において前記第一の混合物と前記第二の混合物とが混合される、[15]に記載の吐出装置。
1≦V1/V2≦10…(1)
[式(1)中、V1は前記第一の混合物の体積を示し、V2は前記第二の混合物の体積を示す。]
[17]第一の混合物と第二の混合物とを混合する工程を有するモルタル組成物の製造方法であって、
前記第一の混合物が、アルミナセメント、石膏、細骨材、及び無機フィラーを含み、
前記第二の混合物が、アルカリ溶液を含む、製造方法。
[18]第一の混合物と第二の混合物とを混合する工程を有するモルタル組成物の製造方法であって、
前記第一の混合物が、
アルミナセメント及び石膏と、
シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、メタカオリン、及び水酸化アルミニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む無機フィラーと、を含み、
前記第二の混合物がアルカリ溶液を含む、製造方法。
【実施例0075】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0076】
(実施例1~9,比較例1)
以下の材料を準備した。
[1]第一の混合物(アルミナセメント含有スラリー)用の材料
(1)結合材
・アルミナセメント(商品名:Ternal White、Imerys社製、Al2O3:68.7%)
・半水石膏(商品名:MB12RG、Imerys社製)
(2)無機フィラー
・シリカフューム(商品名:シリカフュームC-W、SKWイーストアジア社製、平均粒子径:0.40μm)
・フライアッシュ(商品名:四電フライアッシュ、四国電力株式会社製、平均粒子径:0.10μm)
・高炉スラグ微粉末(商品名:千葉リバ-メント Gx、千葉リバーメント株式会社製、平均粒子径:0.10μm)
・メタカオリン(ナカライテスク株式会社製のカオリンを、空気中、700℃で1時間焼成したもの。平均粒子径:0.10μm)
・水酸化アルミニウム粉末(商品名:BF013、日本軽金属株式会社製、平均粒子径:1.64μm)
(3)増粘剤
・ガム系増粘剤(商品名:Kelco vis DG、KELCO社製)
(4)細骨材
・7号珪砂(商品名:N70珪砂、株式会社瓢屋製、最大粒径:290μm、平均粒子径:118.6μm)
・8号珪砂(商品名:N80珪砂、株式会社瓢屋製、最大粒径:240μm、平均粒子径:96.8μm)
(5)その他
・水:水道水
・抑制剤:酒石酸ナトリウム(商品名:L-酒石酸ナトリウム、扶桑化学工業株式会社製)
・遮断剤:リン酸(濃度:85wt%)
・促進剤:硫酸リチウム(商品名:Peramin AXL80、Peramin社製)
・分散剤:ポリアクリル酸系流動化剤(Sokalan PA25CL-FR(Sokalanは登録商標)、BASF社製)
・防腐剤:有機窒素硫黄系化合物(商品名:スラオフEx、日本エンバイロケミカルズ(株)製)
【0077】
[2]第二の混合物(アルカリ含有スラリー)用の材料
(1)アルカリ溶液
・水酸化ナトリウム水溶液(濃度:5wt%)
・2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(商品名:AMP-90、ANGUS社製)
(2)細骨材
・7号珪砂(商品名:N70珪砂、株式会社瓢屋製、最大粒径:290μm、平均粒子径:118.6μm)
・8号珪砂(商品名:N80珪砂、株式会社瓢屋製、最大粒径:240μm、平均粒子径:96.8μm)
(3)無機フィラー
・水酸化アルミニウム粉末(商品名:BF013、日本軽金属株式会社製、平均粒径:1.64μm)
(4)増粘剤
・増粘剤:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:メトローズ90SH-4000(メトローズは登録商標)、信越化学工業株式会社製)
(5)混和剤
・消泡剤:非イオン性消泡剤(商品名:アデカネートB317F、ADEKA社製)
【0078】
[3]二液混合型モルタル組成物の製造
二液混合型モルタル組成物を製造するため、表1に示す第一の混合物と表2に示す第二の混合物を調製した。表1,表2に記載の値の単位は、質量%である。第二の混合物である試料No.1及びNo.2の液相における水酸化物の濃度は、どちらも4.5体積%であった。
【0079】
【0080】
【0081】
表1に示す各第一の混合物について、B型粘度計(BROOKFIELD社製)を使用し、温度20℃において回転数が2rpm及び20rpmのときの粘度を測定した。測定結果を表3に示す。表3中のTi値は「チキソトロピーインデックス」を意味し、回転数20rpmでの粘度に対する回転数2rpmでの粘度の比である。
【0082】
【0083】
[4]モルタル組成物及びモルタル硬化体の製造、並びに評価
モルタル組成物及びモルタル硬化体を製造し、一般社団法人日本建設あと施工アンカー協会(JCAA)において実施される高温環境付着試験の試験方法に準拠して引張強度の測定を行った。まず、
図1に示すようなカートリッジ及び吐出装置を準備した。カートリッジの第一の収容部(容量:300ml)に表4に示す第一の混合物を、カートリッジの第二の収容部(容量:150ml)に表4に示す第二の混合物を、それぞれ収容した。なお、表4に示す試料No.は、表1及び表2に記載のものである。このカートリッジを吐出装置に取り付けて、各収容部にピストンを挿入することによって、第一の混合物と第二の混合物を混合し、ノズル先端の吐出口からモルタル組成物を吐出した。第一の混合物と第二の混合物の混合比は、表4に示すとおり2:1(体積基準)とした。
【0084】
モルタル硬化物の引張強度を、上述の「一般社団法人日本建設あと施工アンカー協会(JCAA)において実施される高温環境付着試験(建築研究所)の接着系あと施工アンカーに使用する接着剤の接着力試験方法」に準拠して測定した。まず、高ナット試験体を以下の手順で作製した。吐出装置の吐出口から実施例1~8及び比較例1の各モルタル組成物を吐出して、高ナットM24の孔(呼び径×長さ=36mm×70mm)に注入した。モルタル組成物が充填された高ナットM24の孔に、アンカー筋(直径×長さ=12mm×100mm)を埋め込んで、20℃で7日間静置して(気中養生)、高温環境付着試験用の高ナット試験体を得た。高ナット試験体は、各実施例及び比較例で15個ずつ、合計で135個(=9×15個)作製した。
【0085】
このようにして作製した高ナット試験体と100kN万能試験機((株)島津製作所製)とを用いて、上述の手順で温度(T0)=100℃、200℃、300℃、及び500℃としたときの引張強度(τb)をそれぞれ測定した。各温度において3つの試験体の引張強度(τb)を測定し、その平均値を、それぞれ、TS1、TS2、TS3、及びTS5として表5に示す。また、電気炉内で加熱せずに20℃で2時間保持して得た3つの試験体の引張強度(τb)の平均値をTS0として表5に示す。表6に、TS0に対する、TS1、TS2、TS3、及びTS5のそれぞれの比率を示す。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
表5及び表6に示すとおり、比較例1では、200℃の環境付着試験による引張強度が、加熱していない20℃の引張強度よりも小さく、500℃に加熱した後の引張強度は50%未満となっていた。一方、各実施例のモルタル組成物は、比較例1に比べて100℃以上の高温に曝されたときの引張強度の低下割合が小さく、200℃の環境付着試験による引張強度が20N/mm2を超え、且つ、500℃の環境付着試験による引張強度が9N/mm2を超えていた。このことから、高温環境下に曝された後も、高い引張強度を維持し得ることが確認された。このため、例えば火災等によるひび割れ及び崩落等のリスクを十分に低減することができる。
1a,2a…ピストン、1b,2b…シャフト、1d,2d…流路、3…混合部、7…ノズル、7a…吐出口、8…装着部、10…カートリッジ、11…第一の混合物、12…第二の混合物、50…吐出装置。